(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164065
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】駆動ユニット
(51)【国際特許分類】
H02K 5/10 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
H02K5/10
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075373
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】花岡 大輔
【テーマコード(参考)】
5H605
【Fターム(参考)】
5H605AA02
5H605BB01
5H605BB05
5H605BB10
5H605CC01
5H605DD16
5H605DD32
5H605DD33
5H605EC01
5H605EC05
5H605GG06
(57)【要約】
【課題】コネクタの防水性能を向上させることができる駆動ユニットを提供する。
【解決手段】駆動ユニット1は、第1回転電機10及び第2回転電機20と、第1回転電機10及び第2回転電機20を制御するPCU40と、第1回転電機10及び第2回転電機20とPCU40とを電気的に接続するコネクタ端子73を有するコネクタ70と、を備える。コネクタ70は、第1回転電機10及び第2回転電機20を収容する回転電機ハウジング50の上面に固定されたベース部71と、コネクタ端子73を囲むようにしてベース部71に設けられ、シール部材92が配置される上側シール溝714と、上側シール溝714に連通し、上側シール溝714に沿って流れる液体を排出する排出部715と、を有する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
前記回転電機を収容する第1ハウジングと、
前記回転電機を制御する電力制御装置と、
前記第1ハウジングの上面に取り付けられ、前記電力制御装置を収容する第2ハウジングと、
前記回転電機及び前記電力制御装置を電気的に接続するコネクタ端子を有し、前記第1ハウジングの上面に固定されたコネクタと、を備える駆動ユニットであって、
前記コネクタは、
前記第1ハウジングの上面に固定されたベース部と、
前記ベース部に設けられた前記コネクタ端子と、
前記コネクタ端子を囲むようにして前記ベース部に設けられ、シール部材が配置されるシール溝と、
前記シール溝に連通し、前記シール溝に沿って流れる液体を排出する排出部と、を有する、駆動ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動ユニットであって、
前記シール部材は、前記第2ハウジングの下面と当接し、
前記第2ハウジングには、前記第2ハウジングの下面と前記シール部材との当接面よりも下方に突出する凸部が設けられている、駆動ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の駆動ユニットであって、
前記ベース部には、前記コネクタを前記第1ハウジングに固定する固定部材が挿通する挿通孔が設けられており、
前記排出部は、前記挿通孔を有する、駆動ユニット。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の駆動ユニットであって、
前記シール溝は下方に傾斜して設けられ、
前記排出部は前記シール溝の下端に連通する、駆動ユニット。
【請求項5】
請求項3に記載の駆動ユニットであって、
前記シール溝は下方に傾斜して設けられ、
前記排出部は前記シール溝の下端に連通する、駆動ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両などに搭載される駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、低炭素社会又は脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化し、車両においてもCO2排出量の削減やエネルギー効率の改善のために、電動車両に関する研究開発が行われている。
【0003】
電動車両には、駆動ユニットが搭載される。例えば、特許文献1に記載される駆動ユニットは、エンジンからの動力で発電可能な発電機と、車輪を駆動する電動機と、発電機及び電動機を制御する電力制御装置とを備える。発電機や電動機といった回転電機は、コネクタにより電力制御装置に電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
駆動ユニットのコネクタに雨水等の液体が浸入すると、短絡を引き起こして故障に繋がるため、コネクタには防水のためのシール構造が設けられる。しかしながら、コネクタの搭載位置や搭載方向によっては、コネクタのシール面等に液体が溜まる虞がある。防水性能が不十分であると、錆の発生を誘発し、シール構造によるコネクタのシール機能が低下することや、コネクタの固定が十分に担保できないことがあった。
【0006】
本発明は、コネクタの防水性能を向上させることができる駆動ユニットを提供する。そして、延いてはエネルギーの効率化に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
回転電機と、
前記回転電機を収容する第1ハウジングと、
前記回転電機を制御する電力制御装置と、
前記第1ハウジングの上面に取り付けられ、前記電力制御装置を収容する第2ハウジングと、
前記回転電機及び前記電力制御装置を電気的に接続するコネクタ端子を有し、前記第1ハウジングの上面に固定されたコネクタと、を備える駆動ユニットであって、
前記コネクタは、
前記第1ハウジングの上面に固定されたベース部と、
前記ベース部に設けられた前記コネクタ端子と、
前記コネクタ端子を囲むようにして前記ベース部に設けられ、シール部材が配置されるシール溝と、
前記シール溝に連通し、前記シール溝に沿って流れる液体を排出する排出部と、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コネクタの防水性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態における駆動ユニット1を搭載したハイブリッド車両Vの動力システムを示すブロック図である。
【
図2】エンジンENGが接続された駆動ユニット1の斜視図である。
【
図3】駆動ユニット1における回転電機ハウジング50の内部を左方から見た要部断面図である。
【
図4】PCU40及びPCUハウジング60を取り外したときの駆動ユニット1の斜視図である。
【
図6】コネクタ70の上側シール溝714に沿って流れる液体の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の駆動ユニットが搭載された電動車両の一実施形態を、添付図面に基づいて説明する。本実施形態では、電動車両として、ハイブリッド車両である場合を一例として示す。なお、図中の符号Fr、Rr、L、R、U、Dは、ハイブリッド車両の運転者から見た方向に従い、前方、後方、左方、右方、上方、下方をそれぞれ示している。
【0011】
(ハイブリッド車両)
図1及び
図2に示すように、ハイブリッド車両Vは、基本的に、エンジンENGと、駆動ユニット1と、制御装置2と、補機3と、を備える。エンジンENG及び駆動ユニット1は、例えば、車両前部のエンジンルーム内に配置される。なお、
図1中、太い実線は機械連結を示し、二重実線は電力配線を示し、細い実線は制御信号を示す。
【0012】
駆動ユニット1は、ベクトル制御される3相の埋込磁石構造の回転電機である第1回転電機10及び第2回転電機20と、駆動力伝達状態切替部30と、減速機Dと、パワーコントロールユニット40(Power Control Unit、以下PCUとも称する)と、を備える。第1回転電機10及び第2回転電機20は、モータジェネレータ(Motor Generator)であり、それぞれ
図1においてMG1及びMG2と表記する。PCU40は、電圧コントロールユニット41(Voltage Control Unit、以下VCUとも称する)と、第1インバータINV1と、第2インバータINV2と、を備え、第1回転電機10及び第2回転電機20を制御する。
【0013】
駆動力伝達状態切替部30は、エンジンENGと減速機Dとを直結させるクラッチ(不図示)と、クラッチと減速機Dとの間に介装される変速機又は固定ギヤ段と、を備える。
【0014】
エンジンENGは、第2回転電機20を発電機として駆動する。この場合、第2回転電機20は、エンジンENGの回転動力により駆動され電力を発生する。
【0015】
また、エンジンENGは、ハイブリッド車両Vの制動時に電動機として動作する第2回転電機20により駆動され、空回り状態でクランク軸が回転する機械的負荷としても機能する場合がある。
【0016】
ハイブリッド車両Vの駆動用の第1回転電機10は、高電圧バッテリBATh及び第2回転電機20の少なくとも一方からの電力供給によって電動機として動作(力行)し、ハイブリッド車両Vが走行するためのトルクを発生する。第1回転電機10で発生したトルクは、減速機Dを介して車輪Wに駆動力として伝達される。また、第1回転電機10は、ハイブリッド車両Vの制動時には発電機として動作する。
【0017】
高電圧バッテリBAThは、直列に接続された複数の蓄電セルを有し、例えば、100~300[V]の高電圧を供給する。前記蓄電セルは、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池のセルである。高電圧バッテリBAThは、キャパシタとしてもよい。
【0018】
低電圧バッテリBATlは、コンバータCONVによって降圧された電圧を蓄電し、例えば12[V]の定電圧を補機3に含まれるライト等の電装品4に供給するとともに、制御装置2等の直流電源とされる。コンバータCONVは、高電圧バッテリBAThの直流出力電圧を直流のまま降圧するDC/DCコンバータである。
【0019】
VCU41は、高電圧バッテリBAThの出力電圧であるV1電圧を、第1回転電機10が電動機として動作する際の第1回転電機10用の入力電圧であるV2電圧に昇圧する。
【0020】
また、VCU41は、ハイブリッド車両Vの制動時に第1回転電機10が発電機として動作する際の第1回転電機10の出力電圧であるV2電圧を降圧し、V1電圧にする。
【0021】
さらに、VCU41は、エンジンENGの駆動によって第2回転電機20が発電し直流に変換されたV2電圧を降圧し、V1電圧にする。
【0022】
つまり、VCU41は、高電圧バッテリBATh、第1回転電機10及び第2回転電機20の間での昇降圧コンバータ(双方向電圧変換器)として機能する。
【0023】
VCU41によって降圧されたV1電圧での電力は、補機3に含まれる電動エアコンプレッサ5(A/C)の駆動用電力及び/又は高電圧バッテリBAThの充電用電力として供給される。
【0024】
第1インバータINV1は、V2電圧を交流電圧に変換して3相電流を第1回転電機10に供給する(力行)。さらに、第1インバータINV1は、ハイブリッド車両Vの制動時に第1回転電機10が発電した交流電圧をV2電圧に変換する(回生)。
【0025】
第2インバータINV2は、エンジンENGの駆動によって第2回転電機20が発電した交流電圧を直流電圧であるV2電圧に変換する。また、第2インバータINV2は、ハイブリッド車両Vの制動時に第1回転電機10で発電され第1インバータINV1によって変換されたV2電圧を交流電圧に変換し3相電流を第2回転電機20に供給する場合もある。
【0026】
制御装置2は、第1インバータINV1、第1回転電機10、第2インバータINV2、第2回転電機20、及びVCU41を含むベクトル制御を行う他、エンジンENG、駆動力伝達状態切替部30及び補機3の制御を行う。
【0027】
このハイブリッド車両Vにおいて、駆動力伝達状態切替部30と、該駆動力伝達状態切替部30から両側に延びる機械連結は、エンジンENGを動力源として駆動力伝達状態切替部30を介し減速機Dを通じて車輪Wを駆動するときのみ使用される。なお、加速時には、エンジンENGと第1回転電機10を利用するようにすることもできる。
【0028】
(駆動ユニット)
次に、
図3から
図5を参照して、駆動ユニット1に含まれる第1回転電機10、第2回転電機20、及びPCU40について説明する。
【0029】
第1回転電機10は、ロータ11と、ロータ11の外周を取り囲むステータ12と、を備える。ステータ12は、ステータコア13と、ステータコア13に装着され、3相(U相、V相、W相)からなるコイル14と、を有する。各相のコイル14は、一端同士が結線され、他端(コイル端部14a)が後述する第1コネクタ70aのコイル接続端子72に接続される。
【0030】
第2回転電機20は、ロータ21と、ロータ21の外周を取り囲むステータ22と、を備える。ステータ22は、ステータコア23と、ステータコア23に装着され、3相(U相、V相、W相)からなるコイル24と、を有する。各相のコイル24は、一端同士が結線され、他端(コイル端部24a)が後述する第2コネクタ70bのコイル接続端子72に接続される。
【0031】
第1回転電機10及び第2回転電機20は、回転電機ハウジング50に収容されている。より詳細には、第1回転電機10及び第2回転電機20は、それぞれの回転軸X1及び回転軸X2が平行となるようにして、回転電機ハウジング50に収容されている。ここでは、回転軸X1及び回転軸X2は、左右方向(軸方向とも称する)に延びている。
【0032】
第2回転電機20は、軸方向から見て、回転軸X2が第1回転電機10の回転軸X1よりも下方かつ前方に位置するように配置されている。そして、第1回転電機10及び第2回転電機20は、上下方向及び前後方向において、一部が重なるように配置されている。また、第1回転電機10及び第2回転電機20は、左右方向(軸方向)において、少なくとも一部が重なるように配置されている。
【0033】
PCU40は、上述のとおり、第1回転電機10及び第2回転電機20を制御する各種部品を備える。PCU40は、PCUハウジング60に収容されており、PCUハウジング60は回転電機ハウジング50の上面に載置される。
【0034】
回転電機ハウジング50の上面は、水平面に対して、所定の傾斜角θ(例えば5度)で前方かつ下方に傾斜している。したがって、PCUハウジング60は、回転電機ハウジング50の上面に、前方かつ下方に傾斜して載置される。
【0035】
回転電機ハウジング50の上面には、第1回転電機10及び第2回転電機20とPCU40とを電気的に接続するコネクタ70が設けられている。また、
図7に示すように、PCU40の下部には、PCUハウジング60の下面の開口から露出する3相のPCU側コネクタ42が設けられている。コネクタ70はPCU側コネクタ42と嵌合し、第1回転電機10及び第2回転電機20とPCU40とは電気的に接続される。
【0036】
より詳細には、コネクタ70は、第1回転電機10と接続する第1コネクタ70aと、第2回転電機20と接続する第2コネクタ70bと、を含む。第1コネクタ70aと第2コネクタ70bとは、回転電機ハウジング50の上面において、第1コネクタ70aが後側、第2コネクタ70bが前側となるように、前後方向に並んで設けられている。
【0037】
図5は、第2コネクタ70bを示す。第2コネクタ70bは、ベース部71と、ベース部71に設けられた3相(U相、V相、W相)のコイル接続端子72と、ベース部71に設けられた3相(U相、V相、W相)のコネクタ端子73と、を備える。
【0038】
ベース部71は、回転電機ハウジング50の上面の傾斜方向(前後方向)に延在するプレート部材である。ベース部71には、前端及び後端において挿通孔711、712が設けられており、ボルトB等を挿通孔711、712に挿入して、ベース部71を回転電機ハウジング50の上面に固定する。コイル接続端子72は、ベース部71の下方に設けられ、第2回転電機20の各相のコイル端部24aと接続する。コネクタ端子73は、コイル接続端子72と電気的に繋がっており、ベース部71の上方に設けられている。コネクタ端子73は、PCU40の下部における前側に設けられた3相のPCU側コネクタ42と嵌合して接続する。これにより、第2回転電機20とPCU40とが、第2コネクタ70bを介して、電気的に接続する。
【0039】
第1コネクタ70aも第2コネクタ70bと同一の構成を有する。第1コネクタ70aのコイル接続端子72は、第1回転電機10の各相のコイル端部14aと接続する。また、第1コネクタ70aのコネクタ端子73は、PCU40の下部における後側に設けられた3相のPCU側コネクタ端子(不図示)と嵌合して接続する。これにより、第1回転電機10とPCU40とが、第1コネクタ70aを介して、電気的に接続する。
【0040】
(コネクタのシール構造)
回転電機ハウジング50の上面とPCUハウジング60の下面との隙間には、外部から液体(例えば雨水等の水滴)が浸入することがある。コネクタ70のコイル接続端子72やコネクタ端子73に液体が浸入すると、短絡を引き起こして故障に繋がる虞がある。そこで、コイル接続端子72及びコネクタ端子73に液体が浸入するのを防止するために、コネクタ70にはシール構造が設けられている。以下では、回転電機ハウジング50の上面における前側に設けられた第2コネクタ70bのシール構造について説明するが、後側に設けられた第1コネクタ70aについても同一の構成を有する。また、第2コネクタ70bを単にコネクタ70とも称する。
【0041】
まず、ベース部71の下側におけるコイル接続端子72のシール構造について、
図7を参照して説明する。
【0042】
ベース部71の下面には、コイル接続端子72を連続的に囲む下側シール溝713が設けられている。下側シール溝713には、シール部材91が配置されている。シール部材91は、例えば、ゴム等の弾性部材である。
【0043】
シール部材91は、コネクタ70が回転電機ハウジング50に固定されると回転電機ハウジング50の上面に当接し、コイル接続端子72をシールする。これにより、外部からコイル接続端子72に液体が浸入することを防止することができる。
【0044】
次に、ベース部71の上側におけるコネクタ端子73のシール構造について、
図5から
図7を参照して説明する。
【0045】
図5及び
図6に示すように、ベース部71の上面には、コネクタ端子73を連続的に囲む上側シール溝714が設けられている。上側シール溝714には、シール部材92が配置されている。シール部材92は、例えば、ゴム等の弾性部材である。
【0046】
図7に示すように、シール部材92は、コネクタ70がPCU側コネクタ42に接続されるとPCUハウジング60の下面に当接し、コネクタ端子73をシールする。これにより、外部から液体が浸入して上側シール溝714を流れる場合であっても、コネクタ端子73に液体が浸入することを防止することができる。
【0047】
図5及び
図6に示すように、ベース部71の上面には、上側シール溝714に連通し、上側シール溝714に沿って流れる液体を排出する排出部715が設けられている。排出部715は、ベース部71の前端に設けられ、挿通孔711を有する構成である。
【0048】
より詳細には、排出部715は、ベース部71の上面に設けられた略円形の凹部である。排出部715は、連通部715aにおいて上側シール溝714の前端部と接続している。このとき、上述のとおり、回転電機ハウジング50の上面は、水平面に対して前方かつ下方に傾斜しており、それに伴って、コネクタ70に設けられる上側シール溝714も水平面に対して前方かつ下方に傾斜している。よって、上側シール溝714の前端部は、上側シール溝714の下端部となる。したがって、排出部715の連通部715aは、上側シール溝714の下端部に連通する。
【0049】
排出部715の前端縁715bは、ベース部71の側面まで延在している。よって、排出部715は、前端縁715bにおいてベース部71の側面に連通している。排出部715の底面のベース部71の上面からの深さは、連通部715aにおける上側シール溝714のベース部71の上面からの深さと同一、又は、連通部715aにおける上側シール溝714のベース部71の上面からの深さよりも深くなっている。
【0050】
上述のとおり、コネクタ70に設けられる上側シール溝714も水平面に対して前方かつ下方に傾斜しているので、上側シール溝714に浸入した液体は、
図6(太矢印は液体の流れを示す)に示すように、上側シール溝714に沿って前方且つ下方に向かって円滑に流れる。上側シール溝714の下端部まで流れた液体は、連通部715aを通って排出部715まで案内される。排出部715まで案内された液体は、挿通孔711及び前端縁715bからコネクタ70の外部に排出される。
【0051】
このような構成により、上側シール溝714に液体が溜まることが抑制され、十分なシール性を確保できる。また、液体が溜まることによる錆の発生が抑制され、上側シール溝714及びシール部材92によるシール機能の低下を抑制することができる。したがって、コネクタ70の防水性能を向上させることができる。
【0052】
また、コネクタ70と回転電機ハウジング50との固定部である挿通孔711から液体を排出する構成(すなわち、排出部715が挿通孔711を有する構成)であるため、固定部を排出部715として兼用でき、別途液体を排出するための孔を設ける必要がない。
【0053】
また、コネクタ70は、外部から浸入した液体をベース部71の後端に設けられた挿通孔712からも排出することが可能となっている。なお、挿通孔712から排出しきれなかった液体は、上側シール溝714に案内され、ベース部71の前端に設けられた挿通孔711から排出可能となっている。
【0054】
以上のように、コネクタ70に、コイル接続端子72及びコネクタ端子73に液体が浸入するのを防止するためのシール構造が設けたが、これに加えて、PCUハウジング60にもシール構造を設けてもよい。
【0055】
具体的には、
図7に示すように、PCUハウジング60の下面に、下方に突出する凸部61を設けてもよい。凸部61は、上側シール溝714の外周側に設けられる。凸部61は、PCUハウジング60の下面とシール部材92との当接面よりも下方に突出している。
【0056】
このような構成により、PCUハウジング60の下面とシール部材92との当接面に液体が掛かることが抑制され、コネクタ70の防水性能を向上させることができる。
【0057】
以上、本発明の一実施形態について、添付図面を参照しながら説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0058】
上述の実施形態では、回転電機ハウジング50の上面は、水平面に対して前方かつ下方に傾斜しており、上側シール溝714も水平面に対して前方かつ下方に傾斜していたが、これに限られない。例えば、回転電機ハウジング50の上面は、傾斜していなくてもよい。なお、この場合、コネクタ70の挿通孔712近傍部分も排出部715に相当する。
【0059】
本明細書には少なくとも以下の事項が記載されている。括弧内には、上記した実施形態において対応する構成要素等を一例として示しているが、これに限定されるものではない。
【0060】
(1) 回転電機(第1回転電機10、第2回転電機20)と、
前記回転電機を収容する第1ハウジング(回転電機ハウジング50)と、
前記回転電機を制御する電力制御装置(PCU40)と、
前記第1ハウジングの上面に取り付けられ、前記電力制御装置を収容する第2ハウジング(PCUハウジング60)と、
前記回転電機及び前記電力制御装置を電気的に接続するコネクタ端子(コネクタ端子73)を有し、前記第1ハウジングの上面に固定されたコネクタ(コネクタ70)と、を備える駆動ユニット(駆動ユニット1)であって、
前記コネクタは、
前記第1ハウジングの上面に固定されたベース部(ベース部71)と、
前記ベース部に設けられた前記コネクタ端子と、
前記コネクタ端子を囲むようにして前記ベース部に設けられ、シール部材(シール部材92)が配置されるシール溝(上側シール溝714)と、
前記シール溝に連通し、前記シール溝に沿って流れる液体を排出する排出部(排出部715)と、を有する、駆動ユニット。
【0061】
(1)によれば、コネクタは、シール部材が配置されるシール溝と、シール溝に沿って流れる液体を排出する排出部とを備え、排出部はシール溝に連通する。このような構成により、シール溝に液体が溜まることが抑制され、十分なシール性を確保できる。また、液体が溜まることによる錆の発生が抑制され、シール溝及びシール部材によるシール機能の低下を抑制できる。したがって、コネクタの防水性能が向上させることができる。
【0062】
(2) (1)に記載の駆動ユニットであって、
前記シール部材は、前記第2ハウジングの下面と当接し、
前記第2ハウジングには、前記第2ハウジングの下面と前記シール部材との当接面よりも下方に突出する凸部(凸部61)が設けられている、駆動ユニット。
【0063】
(2)によれば、第2ハウジングには、第2ハウジングの下面とシール部材との当接面よりも下方に突出する凸部が設けられているので、当接面に液体が掛かることが抑制され、コネクタの防水性能を向上させることができる。
【0064】
(3) (1)又は(2)に記載の駆動ユニットであって、
前記ベース部には、前記コネクタを前記第1ハウジングに固定する固定部材(ボルトB)が挿通する挿通孔(挿通孔711、712)が設けられており、
前記排出部は、前記挿通孔を有する、駆動ユニット。
【0065】
(3)によれば、コネクタと第1ハウジングとの固定部である挿通孔を排出部としても利用できる。したがって、液体を排出するための孔を別途設ける必要がない。
【0066】
(4) (1)又は(2)記載の駆動ユニットであって、
前記シール溝は下方に傾斜して設けられ、
前記排出部は前記シール溝の下端に連通する、駆動ユニット。
【0067】
(4)によれば、シール溝は下方に傾斜して設けられ、排出部はシール溝の下端に連通するので、シール溝に浸入した液体を排出部から下方に向かって円滑に流すことができる。
【0068】
(5) (3)記載の駆動ユニットであって、
前記シール溝は下方に傾斜して設けられ、
前記排出部は前記シール溝の下端に連通する、駆動ユニット。
【0069】
(5)によれば、シール溝は下方に傾斜して設けられ、排出部はシール溝の下端に連通するので、シール溝に浸入した液体を排出部から下方に向かって円滑に流すことができる。
【符号の説明】
【0070】
1 駆動ユニット
50 回転電機ハウジング(第1ハウジング)
60 PCUハウジング(第2ハウジング)
61 凸部
70 コネクタ
71 ベース部
714 上側シール溝(シール溝)
715 排出部
73 コネクタ端子
92 シール部材
B ボルト(固定部材)
PCU40 (電力制御装置)
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転電機と、
前記回転電機を収容する第1ハウジングと、
前記回転電機を制御する電力制御装置と、
前記第1ハウジングの上面に取り付けられ、前記電力制御装置を収容する第2ハウジングと、
前記回転電機及び前記電力制御装置を電気的に接続するコネクタ端子を有し、前記第1ハウジングの上面に固定されたコネクタと、を備える駆動ユニットであって、
前記コネクタは、
前記第1ハウジングの上面に固定されたベース部と、
前記ベース部に設けられた前記コネクタ端子と、
前記コネクタ端子を囲むようにして前記ベース部に設けられ、前記第2ハウジングの下面と当接するシール部材が配置されるシール溝と、
前記シール溝に連通し、前記シール溝に沿って流れる液体を排出する排出部と、を有する、駆動ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の駆動ユニットであって、
前記第2ハウジングには、前記第2ハウジングの下面と前記シール部材との当接面よりも下方に突出する凸部が設けられている、駆動ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の駆動ユニットであって、
前記ベース部には、前記コネクタを前記第1ハウジングに固定する固定部材が挿通する挿通孔が設けられており、
前記排出部は、前記挿通孔を有する、駆動ユニット。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の駆動ユニットであって、
前記シール溝は下方に傾斜して設けられ、
前記排出部は前記シール溝の下端に連通する、駆動ユニット。
【請求項5】
請求項3に記載の駆動ユニットであって、
前記シール溝は下方に傾斜して設けられ、
前記排出部は前記シール溝の下端に連通する、駆動ユニット。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明は、
回転電機と、
前記回転電機を収容する第1ハウジングと、
前記回転電機を制御する電力制御装置と、
前記第1ハウジングの上面に取り付けられ、前記電力制御装置を収容する第2ハウジングと、
前記回転電機及び前記電力制御装置を電気的に接続するコネクタ端子を有し、前記第1ハウジングの上面に固定されたコネクタと、を備える駆動ユニットであって、
前記コネクタは、
前記第1ハウジングの上面に固定されたベース部と、
前記ベース部に設けられた前記コネクタ端子と、
前記コネクタ端子を囲むようにして前記ベース部に設けられ、前記第2ハウジングの下面と当接するシール部材が配置されるシール溝と、
前記シール溝に連通し、前記シール溝に沿って流れる液体を排出する排出部と、を有する。