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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164077
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ヘッドレスト及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/38 20060101AFI20231102BHJP
   B60N 2/853 20180101ALI20231102BHJP
   B60N 2/829 20180101ALI20231102BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A47C7/38
B60N2/853
B60N2/829
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075398
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金 東鉉
(72)【発明者】
【氏名】今成 勝利
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084DB01
3B084DB09
3B084DC01
3B087AA02
3B087BD03
3B087DC06
3B087DC07
3B087DC08
(57)【要約】
【課題】乗員の体格差に応じてサポート部の位置を調節する。また、サポート部の不使用時に当該サポート部を格納する。
【解決手段】ヘッドレスト24は、着座乗員の頭部を後方側から支持するヘッドレスト本体部40と、サポート部38と、位置調節部50と、を備えている。サポート部38は、ヘッドレスト本体部40に格納されている格納位置Kからヘッドレスト本体部40に対して着座乗員Pの頭部P1側へ突出している状態に移動可能に設けられ、着座乗員Pの頭部P1において後頭骨から頸部にかけての範囲の少なくとも一部を支持する。位置調節部50は、ヘッドレスト本体部40とサポート部38との間に設けられ、サポート部38を前後方向及び上下方向へ移動可能に支持する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の頭部を後方側から支持するヘッドレスト本体部と、
前記ヘッドレスト本体部に格納されている格納位置から前記ヘッドレスト本体部に対して着座乗員の頭部側へ突出している状態に移動可能に設けられ、着座乗員の頭部において後頭骨から頸部にかけての範囲の少なくとも一部を支持するサポート部と、
前記ヘッドレスト本体部と前記サポート部との間に設けられ、前記サポート部を前後方向及び上下方向へ移動可能に支持する位置調節部と、
を備えたヘッドレスト。
【請求項2】
前記位置調節部は、前記サポート部を前後方向にスライド可能に支持するスライド支持部と、前記スライド支持部を上下方向に移動可能に支持する上下方向支持部と、を含んで構成されている請求項1に記載のヘッドレスト。
【請求項3】
着座乗員の臀部を下方側から支持するシートクッションと、
前記シートクッションの後部に取付けられ、着座乗員の背部を後方側から支持するシートバックと、
前記シートバックの上部に取付けられたヘッドレストと、
を備え、
前記ヘッドレストは、
着座乗員の頭部を後方側から支持するヘッドレスト本体部と、
前記ヘッドレスト本体部に格納されている格納位置から前記ヘッドレスト本体部に対して着座乗員の頭部側へ突出している状態に移動可能に設けられ、着座乗員の頭部において後頭骨から頸部にかけての範囲の少なくとも一部を支持するサポート部と、
前記ヘッドレスト本体部と前記サポート部との間に設けられ、前記サポート部を前後方向及び上下方向へ移動可能に支持する位置調節部と、
を備えた車両用シート。
【請求項4】
前記シートバックは、前記シートクッションに対して前後方向へリクライニング可能に設けられ、
前記シートバックの後方側へのリクライニングと連動して前記位置調節部が作動して、前記サポート部の位置が調節される請求項3に記載の車両用シート。
【請求項5】
前記シートバックの後方側へのリクライニング角度が定められた角度を超えた際に、前記位置調節部が作動して、前記サポート部の位置が調節される請求項4に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドレスト及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、ヘッドレストに取付けることができると共に当該ヘッドレストから取外すことができるヘッドレスト用枕が開示されている。この文献に記載されたヘッドレスト用枕は、頭部を支持する枕本体を備えており、この枕本体の上半部にはヘッドクッション部が設けられている。また、ヘッドクッション部の上端部には第1ベルト部が設けられ、ヘッドクッション部の下端部には第2ベルト部が設けられている。そして、第1ベルト部及び第2ベルト部がヘッドレストに巻付けられることで、ヘッドレスト用枕がヘッドレストに取付けられるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-153350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、頭部を支持する部分であるサポート部を備えたヘッドレストにおいては、乗員の体格差に応じてサポート部の位置を調節できることが望ましいが、上記特許文献1に記載されたヘッドレスト用枕は、この点で改善の余地がある。また、サポート部を備えたヘッドレストにおいては、サポート部の不使用時に当該サポート部を格納できることが望ましい。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、乗員の体格差に応じてサポート部の位置を調節することができると共に、サポート部の不使用時に当該サポート部を格納することができるヘッドレスト及び車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様のヘッドレストは、着座乗員の頭部を後方側から支持するヘッドレスト本体部と、前記ヘッドレスト本体部に格納されている格納位置から前記ヘッドレスト本体部に対して着座乗員の頭部側へ突出している状態に移動可能に設けられ、着座乗員の頭部において後頭骨から頸部にかけての範囲の少なくとも一部を支持するサポート部と、前記ヘッドレスト本体部と前記サポート部との間に設けられ、前記サポート部を前後方向及び上下方向へ移動可能に支持する位置調節部と、を備えている。
【0007】
第1の態様のヘッドレストによれば、着座乗員の頭部がヘッドレスト本体部によって後方側から支持される。また、サポート部を格納位置から着座乗員の頭部側へ突出している状態に移動させることで、着座乗員の頭部において後頭骨から頸部にかけての範囲の少なくとも一部がサポート部によって支持される。ここで、ヘッドレスト本体部とサポート部との間には、位置調節部が設けられている。これにより、サポート部を前後方向及び上下方向へ移動させることができ、着座乗員の体格差に応じてサポート部の位置を調節することができる。
【0008】
第2の態様のヘッドレストは、第1の態様のヘッドレストにおいて、前記位置調節部は、前記サポート部を前後方向にスライド可能に支持するスライド支持部と、前記スライド支持部を上下方向に移動可能に支持する上下方向支持部と、を含んで構成されている。
【0009】
第2の態様のヘッドレストによれば、サポート部をスライド支持部に支持させると共に、スライド支持部を上下方向支持部に支持させるという構成によって、サポート部の前後方向への移動及び上下方向へ移動を実現することができる。
【0010】
第3の態様の車両用シートは、着座乗員の臀部を下方側から支持するシートクッションと、前記シートクッションの後部に取付けられ、着座乗員の背部を後方側から支持するシートバックと、前記シートバックの上部に取付けられたヘッドレストと、を備え、前記ヘッドレストは、着座乗員の頭部を後方側から支持するヘッドレスト本体部と、前記ヘッドレスト本体部に格納されている格納位置から前記ヘッドレスト本体部に対して着座乗員の頭部側へ突出している状態に移動可能に設けられ、着座乗員の頭部において後頭骨から頸部にかけての範囲の少なくとも一部を支持するサポート部と、前記ヘッドレスト本体部と前記サポート部との間に設けられ、前記サポート部を前後方向及び上下方向へ移動可能に支持する位置調節部と、を備えている。
【0011】
第3の態様の車両用シートによれば、着座乗員の臀部がシートクッションによって下方側から支持される。また、着座乗員の背部がシートバックによって後方側から支持される。さらに、着座乗員の頭部がヘッドレストのヘッドレスト本体部によって後方側から支持される。また、ヘッドレストのサポート部を格納位置から着座乗員の頭部側へ突出している状態に移動させることで、着座乗員の頭部において後頭骨から頸部にかけての範囲の少なくとも一部がサポート部によって支持される。ここで、ヘッドレスト本体部とサポート部との間には、位置調節部が設けられている。これにより、サポート部を前後方向及び上下方向へ移動させることができ、着座乗員の体格差に応じてサポート部の位置を調節することができる。
【0012】
第4の態様の車両用シートは、第3の態様の車両用シートにおいて、前記シートバックは、前記シートクッションに対して前後方向へリクライニング可能に設けられ、前記シートバックの後方側へのリクライニングと連動して前記位置調節部が作動して、前記サポート部の位置が調節される。
【0013】
第4の態様の車両用シートによれば、シートバックを後方側へリクライニングさせると、位置調節部が作動して、サポート部の位置が調節される。これにより、シートバックの後方側へのリクライニング角度に応じて、サポート部の位置を調節することができる。
【0014】
第5の態様の車両用シートは、第4の態様の車両用シートにおいて、前記シートバックの後方側へのリクライニング角度が定められた角度を超えた際に、前記位置調節部が作動して、前記サポート部の位置が調節される。
【0015】
第5の態様の車両用シートによれば、シートバックを後方側へリクライニングさせて、シートバックの後方側へのリクライニング角度が定められた角度を超えると、位置調節部が作動して、サポート部の位置が調節される。これにより、シートバックの後方側へのリクライニング角度に応じて、サポート部の位置を調節することができる。また、リクライニング角度が定められた角度に満たない場合においては、位置調節部が作動しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るヘッドレスト及び車両用シートは、乗員の体格差に応じてサポート部の位置を調節することができると共に、サポート部の不使用時に当該サポート部を格納することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態のヘッドレストを備えた車両用シートを示す側面図である。
図2図1に示された車両用シートを示す斜視図であり、サポート部が格納された状態を示している。
図3図1に示された車両用シートを示す斜視図であり、サポート部が着座乗員側へ突出している状態を示している。
図4】第1実施形態のヘッドレストの位置調節部等を示す斜視図である。
図5】第1実施形態のヘッドレストの位置調節部等を示す側面図である。
図6】第1実施形態のヘッドレストが使用されている状態を模式的に示す側面図である。
図7】第2実施形態のヘッドレストの位置調節部等を示す斜視図である。
図8】第3実施形態のヘッドレストを備えた車両用シートを示す側面図である。
図9図8に対応する車両用シートの側面図であり、シートバックが図8に示された位置から後方側へリクライニングされた状態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1図5を用いて第1実施形態のヘッドレスト24及び当該ヘッドレスト24を備えた車両用シート10について説明する。
【0019】
図1に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、着座乗員Pの臀部を下方側から支持するシートクッション20と、着座乗員Pの背部を後方側から支持するシートバック22と、着座乗員の頭部P1を後方側から支持するヘッドレスト24と、を備えている。シートバック22はシートクッション20に対して前後方向へリクライニング可能となっている。これにより、シートバック22のシートクッション20に対するリクライニング角度θsを調節することが可能となっている。ここで、リクライニング角度θsとは、シート側面視における(左側又は右側から見た場合における)シートバック22の上下方向に対する後方側への傾倒角度のことである。図1に示された一点鎖線L1は、リクライニング角度θsの基準線である。この基準線である一点鎖線L1は、シートバック22を構成するバックレスト表面と対応している。ここで、バックレスト表面とは、シートバック22において着座乗員Pの腰部をシート後方側から支持する面のシート幅方向の中央部のことである。リクライニング角度θsは、乗員が車両用シート10に着座していない状態で測定される。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印RH及び矢印LHは、シートバック22のリクライニング角度が後述する基準角度に設定された車両用シート10に着座した乗員から見たシート前方側、上方側、右側及び左側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。また、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右は、ヘッドレスト24の前後、上下、左右の方向と一致している。
【0020】
図1図4に示されるように、ヘッドレスト24は、ヘッドレスト本体部40と、ヘッドレストステー26と、サポート部38と、位置調節部50と、を含んで構成されている。
【0021】
図2及び図3に示されるように、ヘッドレスト本体部40は、所定の形状に形成されたヘッドレストパッドに表皮材が取付けられた構成となっている。このヘッドレスト本体部40の下部における左右方向の中央部には、下方側、前方側及び後方側が開放された格納凹部40Aが形成されている。この格納凹部40A内には、後述するサポート部38が格納されるようになっている。
【0022】
図4に示されるように、ヘッドレストステー26は、金属製の棒状の部材が曲げられることによって形成されており、下方側が開放されたU字状に形成されている。このヘッドレストステー26は、左右方向に伸びる第1ステー部26Aと、第1ステー部26Aの左右の両端部から下方側へ向けてそれぞれ伸びる左右一対の第2ステー部26Bと、を備えている。ヘッドレスト本体部40は、第1ステー部26A及び左右一対の第2ステー部26Bの上部に固定されている。
【0023】
図1図3に示されるように、サポート部38は、ヘッドレスト本体部40と同様に、所定の形状に形成されたパッドに表皮材が取付けられた構成となっている。このサポート部38の前端部38Aは、着座乗員Pの頭部P1において後頭骨から頸部にかけての範囲の少なくとも一部を支持する部分となっている。サポート部38の前端部38Aにおける左右方向の中央部には、前方側及び上方側が開放された窪み38Bが形成されている。この窪み38Bには、着座乗員Pの頭部P1において後頭骨から頸部にかけての範囲の少なくとも一部が嵌まり込むようになっている。
【0024】
図2図4に示されるように、位置調節部50は、ヘッドレスト本体部40とサポート部38との間に設けられており、サポート部38を前後方向及び上下方向へ移動可能に支持する。図4に示されるように、位置調節部50は、サポート部38を前後方向にスライド可能に支持するスライド支持部52と、スライド支持部52を上下方向に移動可能に支持する上下方向支持部54と、を含んで構成されている。
【0025】
スライド支持部52は、ヘッドレストステー26に固定された左右一対のスライドベース56と、左右一対のスライドベース56にそれぞれ固定された左右一対のスライドピン58と、左右一対のスライドピン58に係止されたスライド板60と、を含んで構成されている。
【0026】
左右一対のスライドベース56は、矩形板状の金属板がL字状に折り曲げられること等により形成されている。左右一対のスライドベース56の一端部は、ヘッドレストステー26の左右一対の第2ステー部26Bにそれぞれ溶接等により固定されている。また、左右一対のスライドベース56の他端部には、左右一対のスライドピン58が挿通された状態で固定されている。左右一対のスライドピン58は、左右一対のスライドベース56の他端部に対してシート幅方向の中央部側へ向けて突出している。
【0027】
スライド板60は、所定の形状の金属板が折り曲げられること等により形成されている。このスライド板60は、左右方向に間隔をあけて配置された左右一対のレール部60Aと、レール部60Aの前端部を左右方向につなぐ左右方向接続部60Bと、左側のレール部60Aの前後方向の中間部から延出する連結部60Cと、を備えている。
【0028】
左右一対のレール部60Aは、左右方向を厚み方向として前後方向に延在する矩形板状に形成されている。また、左右一対のレール部60Aには、前後方向を長手方向とする長孔60Dがそれぞれ形成されている。そして、左右一対のスライドピン58が、左右一対のレール部60Aの長孔60Dにそれぞれ挿通されることで、スライド板60がヘッドレストステー26に対して前後方向にスライド(移動)することが可能となっている。また、図2図4に示されるように、スライド板60には、前述のサポート部38が取付けられている。これにより、サポート部38がスライド板60と共に前後方向に移動するようになっている。
【0029】
図4に示されるように、連結部60Cにおける左側のレール部60Aとは反対側の端部は、左右一対のレール部60Aの間において上方側へ向けて折曲げられている。連結部60Cにおける左側のレール部60Aとは反対側の端部には、後述する連結板64の下端部が左右方向を軸方向として回動可能に連結されている。
【0030】
図4及び図5に示されるように、上下方向支持部54は、ヘッドレストステー26に固定される支持ベース62と、支持ベース62に連結された連結板64と、連結板64に固定されたラチェット板66と、支持ベース62に支持されたラチェット片68と、を含んで構成されている。
【0031】
支持ベース62は、所定の形状の金属板が折り曲げられること等により形成されている。この支持ベース62は、ヘッドレストステー26の第1ステー部26Aの左右方向の中央部に溶接等により固定される固定板部62Aを備えている。また、支持ベース62は、固定板部62Aの左右方向の両端部からそれぞれ下方側へ向けて延びる左右一対の支持板部62Bを備えている。
【0032】
連結板64は、上下方向を長手方向とする矩形板状に形成されている。前述したように、この連結板64の下端部は、スライド板60の連結部60Cに左右方向を軸方向として回動可能に連結されている。また、連結板64の上端部は、支持ベース62の左右一対の支持板部62Bの間に配置された状態で、左右一対の支持板部62Bに左右方向を軸方向として回動可能に連結されている。
【0033】
図5に示されるように、ラチェット板66は、連結板64と同様の金属板を用いて形成されている。このラチェット板66は、連結板64の上端部に溶接等により固定されている。また、ラチェット板66は、支持ベース62の左右一対の支持板部62Bの間に配置された状態で、左右一対の支持板部62Bに左右方向を軸方向として回動可能に連結されている。ラチェット板66の上端部には、複数のラチェット歯66Aが形成されている。このラチェット歯66Aには、後述するラチェット片68が噛合うようになっている。
【0034】
ラチェット片68は、ラチェット板66と同様の金属板を用いて形成されている。このラチェット片68は、ラチェット板66の上方側かつ支持ベース62の左右一対の支持板部62Bの間に配置されている。また、ラチェット片68の上端部は、左右一対の支持板部62Bに左右方向を軸方向として回動可能に連結されている。また、ラチェット片68の下端部は、ラチェット板66のラチェット歯66Aに噛合うようになっている。
【0035】
そして、ラチェット片68の下端部がラチェット板66のラチェット歯66Aに噛合っている状態では、左側面視で、ラチェット板66の反時計回りへの回転が制限される。これに対して、左側面視で、ラチェット板66が時計回りへ回転すると、ラチェット片68の下端部がラチェット板66のラチェット歯66Aを乗越えて、ラチェット片68の下端部が他のラチェット歯66Aに噛合うようになっている。なお、図示しない解除操作部を操作することにより、ラチェット片68の下端部をラチェット板66のラチェット歯66Aから離脱させることが可能となっている。
【0036】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0037】
図1に示されるように、以上説明した本実施形態の車両用シート10では、着座乗員Pの臀部、背部及び頭部P1が、シートクッション20、シートバック22及びヘッドレスト24によって支持される。
【0038】
ここで、図2に示されるように、サポート部38を使用する必要がない場合においては、サポート部38をヘッドレスト本体部40の格納凹部40A内に格納する。なお、サポート部38がヘッドレスト本体部40の格納凹部40A内に格納された状態における当該サポート部38の位置を格納位置Kと呼ぶことにする。サポート部38が格納位置Kに位置している状態では、当該サポート部38の前端部38Aがヘッドレスト本体部40に対して前方側へ突出していない状態になっている。
【0039】
また、図3に示されるように、サポート部38を使用する必要がある場合においては、サポート部38をヘッドレスト本体部40の格納凹部40A内から前方側へ移動させる。なお、サポート部38の移動は手動で行われてもよいしモータ等により自動で行われてもよい。
【0040】
図5及び図6に示されるように、サポート部38を格納位置Kから前方側へ移動させると、スライド板60も前方側へ移動する。スライド板60を前方側へ移動させると、左側面視で、連結板64が右側へ傾倒すると共にラチェット板66が時計回りに回転する。そして、ラチェット片68の下端部がラチェット板66のラチェット歯66Aに噛合うことで、ラチェット板66の反時計回りへの回転が制限される。これにより、スライド板60の後方側への移動が制限されて、サポート部38の後方側への移動が制限される。これにより、サポート部38の前端部38Aがヘッドレスト本体部40に対して前方側へ突出している状態が保たれる。その結果、着座乗員Pの頭部P1において後頭骨から頸部にかけての範囲の少なくとも一部をサポート部38によって支持することができる。
【0041】
ところで、本実施形態では、サポート部38を格納位置Kから前方側へ移動させると、左側面視で、サポート部38の前端部38Aが下方側へ移動するように当該サポート部38が傾く。なお、連結板64の寸法や姿勢(サポート部38が格納位置Kに位置している状態における連結板64の姿勢)等が適宜設定されることにより、サポート部38の上記移動軌跡を実現することが可能となっている。
【0042】
そして、図6に示されるように、本実施形態では、サポート部38の前端部38Aのヘッドレスト本体部40からの前方側への突出量及びサポート部38の前端部38Aの上下位置を調節することにより、着座乗員Pの体格差に応じてサポート部38の前端部38Aの前後及び上下位置を調節することができる。なお、図6においては、大柄な乗員Pと小柄な乗員Pとを重ねて図示している。
【0043】
また、本実施形態では、サポート部38をスライド支持部52のスライド板60に支持させると共に、スライド板60を上下方向支持部54に支持させるという構成によって、サポート部38の前後方向への移動及び上下方向へ移動を実現することができる。
【0044】
(第2実施形態のヘッドレストの位置調節部50)
次に、第2実施形態のヘッドレストの位置調節部50について説明する。なお、第2実施形態のヘッドレストの位置調節部50において前述の第1実施形態のヘッドレスト24の位置調節部50と対応する部材及び部分には、第1実施形態のヘッドレスト24の位置調節部50と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0045】
図7に示されるように、本実施形態の位置調節部50のスライド支持部52では、左右一対のスライドピン58とスライド板60との間にロック部70が設けられている。このロック部70を有することによって、スライド板60の前後方向への位置を任意の位置に保つことが可能となっている。
【0046】
また、スライド板60の左右方向接続部60Bの上面には、連結部60Cが固定されている。本実施形態の連結部60Cは、金属製の棒状の部材が折り曲げられることにより形成されており、左右方向から見て下方側が開放されたU字状に形成されている。この連結部60Cの下端部は、スライド板60の左右方向接続部60Bの上面に溶接等により接合されている。
【0047】
本実施形態の上下方向支持部54は、支持ベース62と、支持ベース62に連結された連結部材72と、連結部材72に連結された釣上部材74と、を含んで構成されている。
【0048】
連結部材72の上端部は、支持ベース62に左右方向を軸方向として回動可能に支持されている。ここで、連結部材72と支持ベース62との間には、ラチェット機構が設けられている。このラチェット機構を有することにより、連結部材72の支持ベース62に対する位置を所定の位置に保つことが可能となっている。なお、ラチェット機構は、前述のラチェット板66及びラチェット片68を用いた構成と同様の構成となっている。
【0049】
釣上部材74は、板状に形成された釣上板76を含んで構成されている。この釣上板76は、上下方向と厚み方向として左右方向に延在する底壁部76Aと、底壁部76Aの左右方向の両端部からそれぞれ上方側へ向けて延在する左右一対の側壁部76Bと、を含んで構成されている。左右一対の側壁部76Bにおける底壁部76A側は、棒状に形成された連結軸部材78を介して左右方向に連結されている。そして、前述の連結部60Cの上部は、釣上板76の底壁部76Aと連結軸部材78との間に配置されるようになっている。また、左右一対の側壁部76Bの上部は、連結部材72の下端部に左右方向を軸方向として回動可能に連結されている。
【0050】
以上説明した本実施形態の位置調節部50では、スライド板60の前後方向への位置をロック部70によって任意の位置に保つことができる。また、本実施形態の位置調節部50では、上下方向支持部54がスライド板60を釣上げている構成となっている。そして、上下方向支持部54の連結部材72の姿勢を支持ベース62に対して変更することにより、スライド板60の上下方向への位置を調節することができる。これにより、サポート部38(図3等参照)の前後方向及び上下方向の位置を調節することが可能となっている。
【0051】
以上説明した本実施形態の位置調節部50を有する構成においても、着差乗員の体格差に応じてサポート部38の位置を調節することができると共に、サポート部38の不使用時に当該サポート部38を格納することができる。
【0052】
(第3実施形態のヘッドレスト24)
次に、第3実施形態のヘッドレスト24について説明する。なお、第3実施形態のヘッドレスト24において前述の第1実施形態のヘッドレスト24と対応する部材及び部分には、第1実施形態のヘッドレスト24と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0053】
図8及び図9に示されるように、本実施形態のヘッドレスト24の位置調節部50は、サポート部38を着座乗員Pの頭部P1側へ移動させる際に、当該サポート部38の前端部38Aを第1実施形態のサポート部38と同様の軌跡で移動させるリンク機構80を含んで構成されている。なお、本実施形態では、リンク機構80はモータ等により自動で作動するようになっている。
【0054】
また、本実施形態では、シートバック22のリクライニング角度θsが基準角度に対して後方側へ30°を超えた際にモータ等が作動して、リンク機構80が作動するようになっている。ここで、図8に示されたシートバック22のリクライニング角度θsは基準角度となっている。シートバック22のリクライニング角度θsが基準角度となっている状態では、着座乗員Pは車両の前方側を視認することが可能となっている。
【0055】
また、図9に示されるように、本実施形態では、シートバック22のリクライニング角度θsが基準角度に対して後方側へ30°を超えた際に、サポート部38が着座乗員Pの頭部P1側へ最も突出した位置に配置される。
【0056】
以上説明した本実施形態では、シートバック22の後方側へのリクライニング角度θsに応じて、サポート部38の位置を調節することができる。また、リクライニング角度θsが30°に満たない場合においては、位置調節部50が作動しないようにすることができる。
【0057】
なお、以上説明した本実施形態では、シートバック22のリクライニング角度θsが基準角度に対して後方側へ30°を超えた際に、サポート部38が着座乗員Pの頭部P1側へ最も突出した位置に配置されるようにした例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、シートバック22のリクライニング角度θsが基準角度から増加するにつれて、サポート部38が着座乗員Pの頭部P1側へ向けて徐々に移動するようにしてもよい。
【0058】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0059】
10 車両用シート
20 シートクッション
22 シートバック
24 ヘッドレスト
38 サポート部
40 ヘッドレスト本体部
50 位置調節部
52 スライド支持部
54 上下方向支持部
P 着座乗員
P1 頭部
K 格納位置
θs リクライニング角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9