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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164086
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】揺動装置及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   A47C 3/025 20060101AFI20231102BHJP
   B60N 2/04 20060101ALI20231102BHJP
   B60N 2/22 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A47C3/025
B60N2/04
B60N2/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075414
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】加藤 靖弘
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮男
(72)【発明者】
【氏名】播田 貴広
(72)【発明者】
【氏名】阿部 高志
【テーマコード(参考)】
3B087
3B091
【Fターム(参考)】
3B087AA02
3B087BA12
3B087BB17
3B087BD03
3B087DE10
3B091AA03
3B091AB03
3B091AC01
3B091AD03
(57)【要約】
【課題】座席シート等を揺動する場合において、加速度変化の衝撃を十分に緩和することができる揺動装置を実現する。
【解決手段】本開示の一態様に係る揺動装置(1)は、ユーザの身体を支持する座席シート(3)と、回転軸を、第1回転方向と、第1回転方向とは逆回転の第2回転方向とに回転させることによって、回転軸に取り付けられたギアを介して座席シート(3)を揺動させるための動力を供給するモータ(5)と、モータ(5)を介して座席シート(3)の揺動を制御するコントローラ(7)と、を備え、座席シート(3)は、回転軸が第1回転方向に回転したことに連動して、第1移動方向に移動する第1動作を実行し、回転軸が第2回転方向に回転したことに連動して、第2移動方向に移動する第2動作を実行し、コントローラ(7)は、第1動作と第2動作との間に所定の停止期間を設けて、座席シート(3)の揺動を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの身体を支持する支持部材と、
回転軸を、第1回転方向と、前記第1回転方向とは逆回転の第2回転方向とに回転させることによって、前記回転軸に取り付けられたギアを介して前記支持部材を揺動させるための動力を供給するモータと、
前記モータを介して前記支持部材の揺動を制御するコントローラと、を備え、
前記支持部材は、
前記回転軸が第1回転方向に回転したことに連動して、第1移動方向に移動する第1動作を実行し、
前記回転軸が第2回転方向に回転したことに連動して、第2移動方向に移動する第2動作を実行し、
前記コントローラは、
前記第1動作と前記第2動作との間に所定の停止期間を設けて、前記支持部材の揺動を制御する、揺動装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記第1動作又は前記第2動作を前記支持部材に開始させた場合に、当該動作の速度が所定速度に達するまでの期間において前記動作の速度を単調増加させ、
前記第1動作又は前記第2動作を前記支持部材に終了させる場合に、当該動作の速度がゼロに達するまでの期間において前記動作の速度を単調減少させる、請求項1に記載の揺動装置。
【請求項3】
前記支持部材は、
揺動しているとき、揺動装置が設けられた床面に対する角度が一定であり、
前記第1移動方向及び前記第2移動方向として、前記支持部材の前後方向に移動する、請求項1又は2に記載の揺動装置。
【請求項4】
前記支持部材は、
前記第1移動方向及び前記第2移動方向として、前記床面を基準とした上下方向に移動する、請求項1又は2に記載の揺動装置。
【請求項5】
前記支持部材は、
座面と背面とを備える座席シートであり、
前記座面と前記背面と間の角度が変化するリクライニング機能によって揺動する、請求項1又は2に記載の揺動装置。
【請求項6】
当該揺動装置は、移動体に設けられた装置である、請求項1又は2に記載の揺動装置。
【請求項7】
当該揺動装置は、自動運転車両に設けられた装置である、請求項6に記載の揺動装置。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記第1動作又は前記第2動作の速度を単調増加させ、当該動作の速度が前記所定速度に達した場合、前記所定速度での前記動作を所定期間継続させる、請求項2に記載の揺動装置。
【請求項9】
ユーザの身体を支持する支持部材と、
回転軸を、第1回転方向と、前記第1回転方向とは逆回転の第2回転方向とに回転させることによって、前記回転軸に取り付けられたギアを介して前記支持部材を揺動させるための動力を供給するモータと、
を備え、
前記支持部材は、
前記回転軸が第1回転方向に回転したことに連動して、第1移動方向に移動する第1動作を実行し、
前記回転軸が第2回転方向に回転したことに連動して、第2移動方向に移動する第2動作を実行する揺動装置において、前記モータを介して前記支持部材の揺動を制御する制御方法であって、
前記第1動作と前記第2動作との間に所定の停止期間を設けて、前記支持部材の揺動を制御する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、揺動装置及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
座席シート等を一定周期で揺動させることによってユーザをリラックスさせ、睡眠への誘導等に寄与する揺動装置が従来技術として知られている。特許文献1では、座席の揺動幅に適度のゆらぎを与える振幅ゆらぎ揺動制御装置が開示されている。特許文献2では、揺動台の揺動を滑らかにし、幼児に、より快感を与える自動揺動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-345606号公報
【特許文献2】特開平8-89377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、揺動において加速度が急速に変化するため、その加速度変化によりユーザに衝撃をあたえてしまうという問題がある。
【0005】
本開示の一態様は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、座席シート等を揺動する場合において、加速度変化の衝撃を緩和することができる揺動装置を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の態様1に係る揺動装置は、ユーザの身体を支持する支持部材と、回転軸を、第1回転方向と、前記第1回転方向とは逆回転の第2回転方向とに回転させることによって、前記回転軸に取り付けられたギアを介して前記支持部材を揺動させるための動力を供給するモータと、前記モータを介して前記支持部材の揺動を制御するコントローラと、を備え、前記支持部材は、前記回転軸が第1回転方向に回転したことに連動して、第1移動方向に移動する第1動作を実行し、前記回転軸が第2回転方向に回転したことに連動して、第2移動方向に移動する第2動作を実行し、前記コントローラは、前記第1動作と前記第2動作との間に所定の停止期間を設けて、前記支持部材の揺動を制御する。
【0007】
上記の構成によれば、支持部材である座席シート等が揺動において反対方向に折り返す際に一時的に停止する。これにより、座席シート等を揺動する場合において、加速度変化の衝撃を緩和することができる揺動装置を実現できる。
【0008】
本開示の態様2に係る揺動装置は、上記態様1において、前記コントローラは、前記第1動作又は前記第2動作を前記支持部材に開始させた場合に、当該動作の速度が所定速度に達するまでの期間において前記動作の速度を単調増加させ、前記第1動作又は前記第2動作を前記支持部材に終了させる場合に、当該動作の速度がゼロに達するまでの期間において前記動作の速度を単調減少させる。
【0009】
上記の構成によれば、座席シート等を揺動する場合において、加速度変化の衝撃をより緩和することができる。
【0010】
本開示の態様3に係る揺動装置は、上記態様1又は2において、前記支持部材は、揺動しているとき、揺動装置が設けられた床面に対する角度が一定であり、前記第1移動方向及び前記第2移動方向として、前記支持部材の前後方向に移動する。
【0011】
上記の構成によれば、例えば、支持部材を傾けずに揺動を行うことができる。
【0012】
本開示の態様4に係る揺動装置は、上記態様1又は2において、前記支持部材は、前記第1移動方向及び前記第2移動方向として、前記床面を基準とした上下方向に移動する。
【0013】
上記の構成によれば、揺動装置を設けるために要する平面的なスペースを少なくすることに寄与する。
【0014】
本開示の態様5に係る揺動装置は、上記態様1又は2において、前記支持部材は、座面と背面とを備える座席シートであり、前記座面と前記背面との間の角度が変化するリクライニング機能によって揺動する。
【0015】
上記の構成によれば、例えば揺動装置における消費電力を低減し、比較的簡易な構成で揺動を実現することができる。
【0016】
本開示の態様6に係る揺動装置は、上記態様1又は2において、移動体に設けられた装置である。
【0017】
上記の構成によれば、例えば移動体の座席シートにおいて、ユーザに快適な睡眠を促すことに寄与する。
【0018】
本開示の態様7に係る揺動装置は、上記態様6において、自動運転車両に設けられた装置である。
【0019】
上記の構成によれば、例えば自動運転車両の座席シートにおいて、ユーザ全員に快適な睡眠を促すことに寄与する。
【0020】
本開示の態様8に係る揺動装置は、上記態様2において、前記コントローラは、前記第1動作又は前記第2動作の速度を単調増加させ、当該動作の速度が前記所定速度に達した場合、前記所定速度での当該動作を所定期間継続させる。
【0021】
上記の構成によれば、揺動装置において、ユーザが感じる加速度変化を減少させることに寄与する。
【0022】
本開示の態様9に係る制御方法は、ユーザの身体を支持する支持部材と、回転軸を、第1回転方向と、前記第1回転方向とは逆回転の第2回転方向とに回転させることによって、前記回転軸に取り付けられたギアを介して前記支持部材を揺動させるための動力を供給するモータと、を備え、前記支持部材は、前記回転軸が第1回転方向に回転したことに連動して、第1移動方向に移動する第1動作を実行し、前記回転軸が第2回転方向に回転したことに連動して、第2移動方向に移動する第2動作を実行する揺動装置において、前記モータを介して前記支持部材の揺動を制御する制御方法であって、前記第1動作と前記第2動作との間に所定の停止期間を設けて、前記支持部材の揺動を制御する。
【0023】
上記の構成によれば、上記態様1に係る揺動装置と同様な効果を奏する。
【0024】
本開示の各態様に係る揺動装置のコントローラは、コンピュータによって実現してもよく、この場合には、コンピュータを前記コントローラ(ソフトウェア要素)として動作させることにより前記コントローラをコンピュータにて実現させる制御プログラム、およびそれを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本開示の範疇に入る。
【発明の効果】
【0025】
本開示の一態様によれば、座席シート等を揺動する場合において、加速度変化の衝撃を緩和することができる揺動装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】揺動装置の外観の一例を示す図である。
図2】座席シートのフレームの一例を示す図である。
図3】座席シートにおけるピッチング方向の揺動の一例を示す図である。
図4】ピニオンギア及びセクターギアの一例を示す図である。
図5】座席シートのフレームを含む図面の一例である。
図6】コントローラが座席シートを揺動させる速度の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本開示の一実施形態について、詳細に説明する。
【0028】
〔1.揺動装置の構成例及び処理例〕
図1は、本開示に係る揺動装置1の外観の一例を示す図である。図1に示すように、揺動装置1は、座席シート3、モータ5、及びコントローラ7等の部材を備えている。
【0029】
座席シート3は、ユーザの身体を支持する支持部材である。以下、支持部材として座席シートを例に説明するが、これに限定されず、ベッド、ソファ、又はこれらに準ずる、ユーザが上側に乗ることが可能なその他の部材として実現される構成であってもよい。
【0030】
また、座席シート3も含め、揺動装置1は、移動体に設けられているものとして説明するが、これに限定されず、建物等の移動しない場所に設けられる構成であってもよい。また、移動体は、車両であるものとして説明するが、これに限定されず、船舶又は航空機等であってもよい。また、揺動装置1は、運転席に設けられる構成に限定されず、客席に設けられる構成であってもよい。
【0031】
座席シート3は、台座9上において支点11を軸として固定されており、支点11を軸としてピッチング方向12に揺動する。ここで、座席シート3の揺動とは、座席シート3が、後述する第1動作と第2動作とを交互に繰り返す往復運動を行うことを意味している。座席シート3が揺動することによって、着座するユーザをリラックスさせる効果、及びユーザの平衡感覚に関与する耳石を刺激して眠気を誘う効果が生じる。また、以降において、図1の例における右方向を、座席シート3の「前(前方)」とし、図1の例における左方向を、座席シート3の「後ろ(後方)」として説明する。
【0032】
図2は、座席シート3のフレームの一例を示す図である。座席シート3は、座面4と背面6とを有しており、リクライニング機能によって、座面4と背面6と間の角度14を調節することができる。
【0033】
また、図3の各図は、前述したピッチング方向の揺動の一例を示す図である。座席シート3は、揺動において、側面図301に示すように後方に傾く動作と、側面図302に示すように前方に傾く動作とを交互に繰り返す。必須の構成ではないが、図3に例示するように、座面4と背面6との角度を固定した状態で揺動が行われることが望ましい。なお、図3の各図に示すように、座席シート3の背面6は、シートバック61とヘッドレスト62とを備える構成であってもよい。
【0034】
図1において、床面10に固定された台座9には、モータ5、及びセクターギア13を含む複数のギアが設けられている。モータ5は、コントローラ7の制御に基づいて、回転軸を、第1回転方向と、第1回転方向とは逆回転の第2回転方向とに回転させることによって、回転軸に取り付けられたピニオンギア20を介して座席シート3を揺動させるための動力を供給する。一例として、第1回転方向が左回転(反時計周りの回転)であり、第2回転方向が右回転(時計周りの回転)であるものとして規定してもよいし、この逆に規定してもよい。
【0035】
図4は、図1に示す構成とは異なる形状におけるピニオンギア及びセクターギアの一例を示す図である。図4において、モータ5の回転軸にはピニオンギア22が設けられており、ピニオンギア22の動力は、セクターギア24に伝えられる。一態様において、セクターギア24は、座席シート3の下方に対して間接的に力を加えるための板16に対して固定されている。或いは、セクターギア24は、前記の板16と一体となっている。なお、ピニオンギア22とセクターギア24との間に1又は複数の別のギアが設けられる構成であってもよい。
【0036】
図1の例においては、セクターギア13が固定された第1の板15、第2の板17、及びブラケット18を介して、座席シート3の下方に対して力が加えられる。第1の板15と第2の板17との間の角度、及び第2の板17とブラケット18との間の角度は可変である。第1の板15は、支点19を軸として、一定範囲において回転する。つまり、第1の板15の前方が上方に位置する場合は、後方が下方に位置し、第1の板15の後方が上方に位置する場合は、前方が下方に位置する。セクターギア13が左右に回転することによって第1の板15の前方が上下し、座席シート3が、支点11を軸とした往復運動を繰り返す。
【0037】
座席シート3の下方に上下方向に力が加えられることは、揺動装置1が、モータ5に設けられたピニオンギア20の回転運動を、座席シート3の前方を上下させる直線運動に変換するラックアンドピニオン機構を有していることを示している。
【0038】
座席シート3は、モータ5の回転軸が第1回転方向に回転したことに連動して、第1移動方向に移動する第1動作を実行する。また、座席シート3は、モータ5の回転軸が第2回転方向に回転したことに連動して、第2移動方向に移動する第2動作を実行する。ここで、前記の移動には、揺動装置1が設けられた床面10に対する座席シート3の角度のみが変化することが含まれる。図1のピッチング方向12の矢印の各々の向きは、第1移動方向及び第2移動方向の一例である。
【0039】
セクターギア13は、モータ5の回転軸が第1回転方向に回転した場合、モータ5の回転軸が第2回転方向に回転した場合とは逆方向に回転する。例えば、図1において、モータ5の回転軸が第1回転方向に回転して、セクターギア13が左回転(反時計周りに回転)した場合、第1の板15の前方が上方に持ち上げられ、座席シート3は後方に傾く。この場合において、座席シート3が後方に傾く動作は、座席シート3が第1移動方向に移動する第1動作の一例である。
【0040】
また、モータ5の回転軸が第2回転方向に回転して、セクターギア13が右回転(時計周りに回転)した場合、第1の板15の前方が下方に押し下げられ、座席シート3は前方に傾く。この場合において、座席シート3が前方に傾く動作は、座席シート3が第2移動方向に移動する第2動作の一例である。
【0041】
図5は、座席シート3のフレームを含む図面の一例である。図5は、座席シート3に対して、図1に示す構成とは異なる形状のギアが接続されている例を示している。図5の例において、セクターギアは、第1の板21と一体となっている。また、ピニオンギアの歯車部分は、第1の板21の歯車部分と噛み合わせられている。第1の板21には、固定軸29が貫通する穴部31が設けられている。固定軸29の位置は、固定されており、第1の板21は、穴部31内を固定軸29が相対的に移動可能な範囲で、支点33を軸として回転する。これにより、第1の板21の前方が上下し、座席シート3の揺動が行われる。
【0042】
また、図5に例示するように、第1の板21及び第2の板23の各々と、座席シート3の左右方向において対向する位置に、第3の板25及び第4の板27が設けられる構成であってもよい。これにより、揺動装置1の強度を向上させることができる。また、必須の構成ではないが、第3の板25においても、セクターギアと一体となった形状を有し、モータ5から供給された動力を第4の板27を介して座席シート3の下方に伝える構成であってもよい。
【0043】
図6は、コントローラ7が座席シート3を揺動させる速度の一例を示す図である。図6のグラフにおいて、横軸は、時間(秒)を示しており、縦軸は、揺動の速度を示している。また、縦軸の正の値は、第1動作の速度を示しており、負の値は、第2動作の速度を示している。加えて、縦軸の「100」の値は、モータ5の回転軸が第1回転方向に回転する場合における最高回転数に対応する速度を示しており、「-100」の値は、モータ5の回転軸が第2回転方向に回転する場合における最高回転数に対応する速度を示している。また、横軸の「0」の値は、座席シート3の揺動中における或る一時点を示している。
【0044】
図6の例において、コントローラ7は、0~2秒の間、速度を単調増加させつつ、座席シート3を第1移動方向に移動させ、2~4秒の間、所定速度で、座席シート3を第1移動方向に移動させる。図6に示すように、0~2秒に対応するグラフの部分が、滑らかな曲線(SIN波)を描いている。また、速度が変化する他の部分も同様である。
【0045】
このように、コントローラ7は、第1動作を座席シート3に開始させた場合に、第1動作の速度が所定速度に達するまでの期間において第1動作の速度を単調増加させ、第1動作の速度が所定速度に達した場合、所定速度での第1動作を所定期間継続させる。図6の例において、前記の所定期間は2秒であるが、これに限定されず1秒であってもよいし、3秒以上であってもよい。
【0046】
また、コントローラ7は、4~6秒の間、速度を単調減少させつつ、座席シート3を第1移動方向に移動させる。つまり、コントローラ7は、第1動作を座席シート3に終了させる場合に、第1動作の速度がゼロに達するまでの期間において第1動作の速度を単調減少させる。
【0047】
このように、コントローラ7は、0~6秒の間、モータ5の回転軸を第1回転方向に回転させ、前述したように座席シート3に第1動作を実行させる制御を行う。なお、前述の「第1動作の速度」を「モータ5の回転軸の第1回転方向の回転速度」とそれぞれ読み替えて説明を適用してもよい。
【0048】
また、コントローラ7は、6~8秒の間、座席シート3を停止させる。6~8秒の間、座席シート3は、揺動する範囲の一端に位置している。
【0049】
続いて、コントローラ7は、8~10秒の間、速度を単調増加させつつ、座席シート3を第2移動方向に移動させ、10~12秒の間、所定速度で、座席シート3を第2移動方向に移動させる。
【0050】
このように、コントローラ7は、第2動作を座席シート3に開始させた場合に、第2動作の速度が所定速度に達するまでの期間において第2動作の速度を単調増加させ、第2動作の速度が所定速度に達した場合、所定速度での第2動作を所定期間継続させる。
【0051】
また、コントローラ7は、12~14秒の間、速度を単調減少させつつ、座席シート3を第1移動方向に移動させる。つまり、コントローラ7は、第2動作を座席シート3に終了させる場合に、第2動作の速度がゼロに達するまでの期間において第2動作の速度を単調減少させる。
【0052】
このように、コントローラ7は、8~14秒の間、モータ5の回転軸を第2回転方向に回転させ、前述したように座席シート3に第2動作を実行させる制御を行う。なお、前述の「第2動作の速度」を「モータ5の回転軸の第2回転方向の回転速度」とそれぞれ読み替えて説明を適用してもよい。
【0053】
また、コントローラ7は、14~16秒の間、座席シート3を停止させる。14~16秒の間、座席シート3は、揺動する範囲の一端であって、6~8秒の間に位置する反対側の一端に位置する。また、コントローラ7は、16秒以降において、0~16秒と同様の揺動を繰り返す。
【0054】
ここまで前述したように、コントローラ7は、第1動作と第2動作との間に所定の停止期間を設けて、座席シート3の揺動を制御する制御方法を実行する構成である。前記の構成によれば、座席シート3が揺動において反対方向に折り返す際に一時的に停止する。これにより、座席シート3を揺動する場合において、加速度変化の衝撃を十分に緩和することが可能な揺動装置1を実現できる。加えて、揺動において停止期間を設ける構成によって、モータ5が過熱状態となることを抑制することができる。
【0055】
なお、所定の停止期間は、特定の期間に限定されず、1~5秒程度、より望ましくは2~3秒程度であってもよい。図6の例においては、停止期間は2秒である。また、モータ5の出力トルクがゼロである期間は、慣性によって座席シート3が微少に移動していたとしても、停止期間に含まれるものと見做してもよい。
【0056】
〔2.変形例〕
座席シート3の揺動、即ち第1動作及び第2動作は、揺動装置1が設けられた床面10に対する座席シート3の角度のみが変化する構成に限定されない。例えば、座席シート3は、揺動しているときに床面10に対する角度が一定のまま、第1移動方向及び第2移動方向として、座席シート3の前後方向に移動する構成であってもよい。或いは座席シート3は、第1移動方向及び第2移動方向として、床面10を基準とした上下方向に移動する構成であってもよい。
【0057】
また、座席シート3は、座面4と背面6との間の角度が変化するリクライニング機能によって揺動する構成であってもよい。一態様において、座面4が固定されており、座面4に対する背面6の角度のみが、一定範囲において増減を繰り返す構成であってもよい。また、座席シート3は、図3を参照して前述したように背面6がシートバック61とヘッドレスト62とを備える場合、シートバック61に対するヘッドレスト62の角度が変化することによって揺動する構成であってもよい。
【0058】
また、座席シート3の揺動は、複数の動きの組み合わせによって実現される構成であってもよい。例えば座席シート3は、床面10に対する角度を変化させる揺動、前後方向へ移動する揺動、上下方向へ移動する揺動、リクライニング機能による揺動、及びヘッドレスト62の角度が変化する揺動のうち、複数の揺動を組み合わせた揺動を行う構成であってもよい。
【0059】
また、座席シート3の座面4の揺動と背面6の揺動とは、別々のモータ5及びギアによって実現される構成であってもよい。換言すると、座面4を揺動させる機構と、背面6を揺動させる機構とは、各々独立した構成した構成であってもよい。座面4と背面6との間の角度が一定のまま揺動する構成においても同様である。
【0060】
また、座席シート3が背面6を備える構成は必須ではなく、座面4のみを備える座席シート3が揺動する構成であってもよい。
【0061】
また、複数の座席シート3が同一の移動体内に設けられている場合、または、複数の座席シート3が互いに近接して設けられている場合、単一のコントローラ7が複数の座席シート3の各々の揺動を制御する構成であってもよいし、座席シート3の数と同数のコントローラ7を準備し、各座席シート3と各コントローラ7とを1対1に対応させ、各コントローラ7が対応する座席シート3の揺動を制御する構成であってもよい。
【0062】
また、揺動装置1は、自動運転車両に設けられる構成であってもよい。前記の構成によれば、例えば自動運転車両の座席シート3において、ユーザ全員に快適な睡眠を促すことに寄与する。
【0063】
〔3.ソフトウェアによる実現例〕
コントローラ7(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロックとしてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0064】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも1つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも1つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0065】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0066】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本開示の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0067】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
1 揺動装置
3 座席シート
5 モータ
7 コントローラ
13、24 セクターギア
20、22 ピニオンギア
図1
図2
図3
図4
図5
図6