(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164094
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】繰り出し容器
(51)【国際特許分類】
A45D 40/04 20060101AFI20231102BHJP
A45D 40/20 20060101ALI20231102BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A45D40/04 A
A45D40/20 G
B65D83/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075427
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】加瀬 舞
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014AC05
(57)【要約】
【課題】保持筒部内に残った内容物を容易に使い切ることが可能な繰り出し容器を提供する。
【解決手段】本開示の繰り出し容器100は、筒状形状を有する容器本体10と、容器本体10の内側に設けられ、内容物Cを保持する保持筒部20と、中心軸線O周りに回転させることで保持筒部20を中心軸線Oに沿って繰り上げる回転部30と、保持筒部20に保持された内容物Cを覆う蓋体60とを備え、蓋体60の内面及び保持筒部20の外面は、保持筒部20が所定高さまで繰り上げられたとき、周方向に相対回転不能な状態で互いに係合する係合部を有し、保持筒部20側の係合部は、保持筒部20の筒部本体21の上端部に弱化部25cを介して連なる係合筒25の外面に形成されることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状形状を有する容器本体と、
前記容器本体の内側に設けられ、内容物を保持する保持筒部と、
中心軸線周りに回転させることで前記保持筒部を中心軸線に沿って繰り上げる回転部と、
前記保持筒部に保持された内容物を覆う蓋体と
を備え、
前記蓋体の内面及び前記保持筒部の外面は、前記保持筒部が所定高さまで繰り上げられたとき、周方向に相対回転不能な状態で互いに係合する係合部を有し、
前記保持筒部側の前記係合部は、前記保持筒部の筒部本体の上端部に弱化部を介して連なる係合筒の外面に形成されている、繰り出し容器。
【請求項2】
前記保持筒部側の前記係合部の下端部には、径方向外側に向かって上方に傾斜する傾斜部が形成されており、
前記保持筒部が所定高さまで繰り上げられた状態で前記蓋体を装着すると、前記蓋体側の前記係合部の下端部が前記傾斜部に当接し、前記係合筒の上部が径方向外側に開く方向の回転モーメントを作用させる、請求項1に記載の繰り出し容器。
【請求項3】
前記弱化部は、径方向外側に切り欠き部を有するヒンジ状に構成されている、請求項2に記載の繰り出し容器。
【請求項4】
前記保持筒部の前記係合筒には、薄肉部を介して周方向に間欠的に前記保持筒部側の前記係合部が配置されている、請求項2又は3に記載の繰り出し容器。
【請求項5】
前記蓋体側の前記係合部は、前記蓋体の頂壁から垂下する嵌合筒部の内面から径方向内側に突出する縦リブである、請求項1から3のいずれか一項に記載の繰り出し容器。
【請求項6】
前記保持筒部側の前記係合部は、前記係合筒の外面において周方向に所定ピッチで形成され上下方向に延びる歯部である、請求項1から3のいずれか一項に記載の繰り出し容器。
【請求項7】
前記保持筒部及び前記回転部の一方は、径方向に延びる突起部を有し、
前記保持筒部及び前記回転部の他方は、前記突起部が係合する螺旋状の溝部を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の繰り出し容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、繰り出し容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特許文献1に示す繰り出し容器が知られている。この繰り出し容器は、内筒部と当該内筒部に相対的に回転可能に外装された外筒部とを有する容器本体と、外筒部との相対回転が規制された状態で内筒部に対して相対回転可能に配設された保持部材とを備え、内筒部と保持部材とに備えた雄ねじ部と雌ねじ部との圧接力が、保持部材の容器軸方向(螺旋方向)によらず同等に維持して操作性を向上させた、繰り出し容器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の繰り出し容器を用いて化粧料を使用する際には、化粧料を収容する保持筒部内に内容物が残ってしまい、これを容易に使い切ることが難しく、この点において改善の余地があった。
【0005】
本開示の目的とするところは、保持筒部内に残った内容物を容易に使い切ることが可能な繰り出し容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本開示の繰り出し容器は、
[1]
筒状形状を有する容器本体と、
前記容器本体の内側に設けられ、内容物を保持する保持筒部と、
中心軸線周りに回転させることで前記保持筒部を中心軸線に沿って繰り上げる回転部と、
前記保持筒部に保持された内容物を覆う蓋体と
を備え、
前記蓋体の内面及び前記保持筒部の外面は、前記保持筒部が所定高さまで繰り上げられたとき、周方向に相対回転不能な状態で互いに係合する係合部を有し、
前記保持筒部側の前記係合部は、前記保持筒部の筒部本体の上端部に弱化部を介して連なる係合筒の外面に形成されていることを特徴とする。
【0007】
また、本開示の繰り出し容器は、
[2]
上記[1]の構成において、前記保持筒部側の前記係合部の下端部には、径方向外側に向かって上方に傾斜する傾斜部が形成されており、
前記保持筒部が所定高さまで繰り上げられた状態で前記蓋体を装着すると、前記蓋体側の前記係合部の下端部が前記傾斜部に当接し、前記係合筒の上部が径方向外側に開く方向の回転モーメントを作用させることが好ましい。
【0008】
また、本開示の繰り出し容器は、
[3]
上記[2]の構成において、前記弱化部は、径方向外側に切り欠き部を有するヒンジ状に構成されていることが好ましい。
【0009】
また、本開示の繰り出し容器は、
[4]
上記[2]又は[3]の構成において、前記保持筒部の前記係合筒には、薄肉部を介して周方向に間欠的に前記保持筒部側の前記係合部が配置されていることが好ましい。
【0010】
また、本開示の繰り出し容器は、
[5]
上記[1]から[4]のいずれかの構成において、前記蓋体側の前記係合部は、前記蓋体の頂壁から垂下する嵌合筒部の内面から径方向内側に突出する縦リブであることが好ましい。
【0011】
また、本開示の繰り出し容器は、
[6]
上記[1]から[5]のいずれかの構成において、前記保持筒部側の前記係合部は、前記係合筒の外面において周方向に所定ピッチで形成され上下方向に延びる歯部であることが好ましい。
【0012】
また、本開示の繰り出し容器は、
[7]
上記[1]から[6]のいずれかの構成において、前記保持筒部及び前記回転部の一方は、径方向に延びる突起部を有し、前記保持筒部及び前記回転部の他方は、前記突起部が係合する螺旋状の溝部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、保持筒部内に残った内容物を容易に使い切ることが可能な繰り出し容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本開示の一実施形態である繰り出し容器の正面断面図である。
【
図2】
図1の状態から保持筒部を上方に繰り出した使用状態を示す正面断面図である。
【
図3】
図2の状態から更に保持筒部を上方に繰り出して上死点に到達した状態を示す正面断面図である。
【
図4】
図3の状態から蓋体を装着し、回転部に対して蓋体を中心軸線周りに回転させている状態を示す正面断面図である。
【
図5】
図4における、係合部部分の拡大断面図である。
【
図6】本開示の一実施形態である繰り出し容器における保持筒部の平面図である。
【
図7】
図4の操作により保持筒部から係合筒を取り去った状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本開示の一実施形態を詳細に説明する。なお、本明細書、特許請求の範囲、要約書および図面では、蓋体60が位置する側を上方(
図1における上側)とし、回転部30が設けられる側を下方(
図1における下側)とする。また、径方向外側とは、
図1の上下方向に沿う繰り出し容器100の中心軸線Oを通り中心軸線Oに垂直な直線に沿って中心軸線Oを離れる方向であり、径方向内側とは、当該直線に沿って中心軸線Oに向かう方向を意味するものとする。
【0016】
図1は、本開示の一実施形態に係る繰り出し容器100を示す。本実施形態に係る繰り出し容器100は、上下方向に延びる筒状の容器本体10と、容器本体10の内側に配置され、内容物Cを保持する保持筒部20と、中心軸線O周りに回転させることで保持筒部20及びこれに収容された内容物Cを中心軸線Oに沿って繰り上げる回転部30とを備えている。本実施形態に係る繰り出し容器100は、例えば化粧料(コンシーラー、口紅、リップクリーム、若しくはスティックアイシャドウ等)、糊、又は薬剤等の棒状に形成された内容物Cを収容し、利用者が必要量だけ内容物Cを繰り出して使用するものである。
【0017】
容器本体10は、
図1等に示すように、略円筒形状を有し、上端に開口13bを有する先端壁13と、先端壁13の下端部から下方に延び先端壁13よりも薄肉化された基端壁15とを備えている。
【0018】
容器本体10の基端壁15には、周方向の対向する2か所に案内溝15aが設けられており、後述する保持筒部20から径方向外側に突出する突起部21aが上下方向を長手方向とする案内溝15aを貫通することによって、保持筒部20の容器本体10に対する中心軸線O周りの回転を制限している。
【0019】
なお、容器本体10の材料には、各種合成樹脂のほか、アルミニウム等の金属材料を用いることができる。
【0020】
容器本体10の先端壁13の上端部には、後述する回転部30の外筒部31に対する容器本体10の上方への移動を規制する第1規制リング41及び第2規制リング43が設けられている。
【0021】
第1規制リング41は、先端壁13を径方向外側から囲む上周壁41aと、上周壁41aの下端部から径方向外側に延びるアーム部41bと、上周壁41aの下端部から下方に延びる下周壁41cとを備えている。下周壁41cは、回転部30の外筒部31の上端部内面に嵌合している。アーム部41bの上面及び上周壁41aの外面には、
図1に示す未使用時において内容物Cを上方及び径方向外側から覆う蓋体60が装着されている。
【0022】
第1規制リング41の下周壁41cの内面には、第2規制リング43が配置され、第2規制リング43は下周壁41cの下端部を下方から覆っている。第2規制リング43の下端部が容器本体10の先端壁13の下端部から径方向外側に突出する係止突起17に当接することで、外筒部31に対する容器本体10の上方への移動を規制している。なお、第1規制リング41及び第2規制リング43は、一体形成してもよい。
【0023】
保持筒部20は、
図1に示すように、筒部本体21と、内容物Cの収容空間を形成するとともに内容物Cを保持する保持皿部23と、筒部本体21の上端部から上方に向けて立設され保持皿部23とともに内容物Cの収容空間を形成する係合筒25とを備えている。係合筒25の外面には、周方向の4か所において上下に延びる歯部25aが形成されている(
図6参照)。この係合筒25に形成された歯部25aは、後述するように蓋体60に設けられた縦リブ62bと係合するように構成されている。
【0024】
保持皿部23は、
図6にも示すように、周方向4か所において筒部本体21の上端部から径方向内側に突出しており、図の下方から内容物Cを充填することによって保持皿部23の周囲及び保持皿部23の上方で内容物Cが固化して保持筒部20に固定される。保持皿部23は、周方向に3か所以下又は5か所以上設けてもよく、また周方向に連続的に設けられていてもよい。保持皿部23は、固化された内容物Cを保持することができる様々な形状を取り得る。
【0025】
係合筒25は、
図5に拡大して示すように、筒部本体21の上端部に弱化部25cを介して立設されている。係合筒25は、その外面に、蓋体60の縦リブ62bと係合可能な係合部としての歯部25aを備えている。
【0026】
歯部25aは、
図6に示すように係合筒25の外面において、薄肉部25dを介して周方向に間欠的に設けられている。歯部25aは、周方向に所定ピッチで形成されており、上下方向に略同一形状で延在している。
図5に示す蓋体60の縦リブ62bと保持筒部20の歯部25aとの係合状態において、縦リブ62bが歯部25a同士の間の周方向位置に入り込むことによって周方向に相対回転不能な状態で係合している。
【0027】
筒部本体21の下端部近傍における外周面には、周方向の2箇所において径方向外側に延びる突起部21aが設けられている。突起部21aは、後述するように、容器本体10の案内溝15aを越えて内筒部35の螺旋状の溝部35aに係合している。このような構成によって、保持筒部20は、突起部21aの案内溝15aへの嵌合により容器本体10に対する中心軸線O周りの回転が規制されている。また、後述するように回転部30を中心軸線O周りに回転させることによって、突起部21aは螺旋状の溝部35aに沿って上方へと移動するため、内容物Cを収容した保持筒部20を中心軸線Oに沿って上方へと移動させることができる。これによって、利用者は、収容空間内の内容物Cを上方へと繰り出し、先端壁13から露出させて使用することができる。
【0028】
回転部30は、
図1に示すように、利用者が内容物Cを上方に繰り出す際に把持して回転させる筒状の外筒部31と、外筒部31の径方向内側に配置された内筒部35とを備えている。外筒部31の径方向内側面には、周方向に間欠的に設けられ上下方向に延びる外係合リブ31aが設けられている。また、内筒部35の径方向外側面には、外係合リブ31aの間に入り込むことで外係合リブ31aと係合し、内筒部35の外筒部31に対する中心軸線O周りの相対回転を制限する内係合リブ35bが設けられている。この構成によって、利用者が外筒部31を中心軸線O周りに回転させることによって、外筒部31と同期して内筒部35が回転するため、保持筒部20の突起部21aを内筒部35の螺旋状の溝部35aに沿って上方に移動させて、内容物Cを上方に繰り出すことができる。
【0029】
外筒部31の下端部には、底壁32が設けられており、繰り出し容器100は、底壁32を設置面に当接させることによって正立姿勢で置くことができる。
【0030】
内筒部35は、上下方向に延びる筒状部材であり、上述のように径方向外側面に内係合リブ35bを備えるとともに、径方向内側面に螺旋状の溝部35aを備えている。内筒部35は、その上端部が容器本体10の係止突起17に当接することによって容器本体10に対する上方への移動が制限されている。
【0031】
容器本体10の先端壁13から繰り出される内容物Cは、繰り出し容器100の未使用時において、
図1に示すように蓋体60によって覆われている。蓋体60は、第1規制リング41の上周壁41aの外周面に嵌合する筒状の側壁61と、側壁61の上端部を閉塞する頂壁62とを備えている。
【0032】
蓋体60は、頂壁62から垂下する嵌合筒部62aを備えている。また、嵌合筒部62aの内面には、径方向内側に突出する縦リブ62bが設けられている。縦リブ62bは、嵌合筒部62a内面の周方向の少なくとも一部に形成されている。本実施形態では、保持筒部20が上死点まで繰り上げられたときに(
図3参照)蓋体60を装着することによって、嵌合筒部62aの縦リブ62bが保持筒部20の係合筒25の外面に所定ピッチで形成され上下方向に延びる歯部25aに係合可能とされている(
図4及び
図5参照)。なお、蓋体60を装着する前の
図3の状態において、歯部25a同士の間には内容物Cが残った状態であるが、縦リブ62bが歯部25aの間に入り込むことによって、歯部25aの間に残っていた内容物は押しつぶされ、縦リブ62bと歯部25aとの隙間から外に押し出されるため、縦リブ62bと歯部25aとの係合には影響を与えない。この観点から、縦リブ62bと歯部25aは、平面視における形状が僅かに異なり、係合したときに隙間を有していることが好ましい。なお、保持筒部20が上死点より下方の所定高さまで繰り上げられたときに保持筒部20と蓋体60の係合部同士が係合するようにしてもよい。
【0033】
保持筒部20と蓋体60の係合部同士が係合したときの状態を
図5に拡大断面図として示している。
図3に示す保持筒部20が上死点まで繰り上げられた状態で蓋体60を装着すると(
図4及び
図5参照)、縦リブ62bが歯部25aの間に入り込んで係合するとともに、縦リブ62bの下端部が保持筒部20側の歯部25aの下端部に設けられ径方向外側に向かって上方に傾斜する傾斜部25bに当接する。この構成によって、係合筒25には、上部が径方向外側に開く方向の回転モーメントが作用する。
【0034】
係合筒25は、筒部本体21の上端部に弱化部25cを介して連なっている。本実施形態において弱化部25cは、
図5に示すように径方向外側に切り欠き部を有するヒンジ状に構成されている。上述のような係合筒25の上部が径方向外側に開く方向の回転モーメントが作用すると、切り欠き部が上下方向に狭くなるように変形して係合筒25の上部が径方向外側に倒れることを促進する(
図5参照)。
【0035】
蓋体60の側壁61と容器本体10の先端壁13との間の径方向位置には、
図1に示すように、第3規制リング45が配置されている。第3規制リング45は、上周壁45aの下端部から径方向外側に突出するフランジ部45bが蓋体60の内面に係合することによって蓋体60に装着されている。第3規制リング45は、フランジ部45bから下方に向かって下周壁45cが側壁61の略中央高さまで延在しており、蓋体60の側壁61と容器本体10の先端壁13との間の径方向間隔を適正化するとともに、蓋体60の回動操作に際して蓋体60と容器本体10との相対回転を円滑化している。
【0036】
このような構成を有する繰り出し容器100を使用するに際しては、まず利用者が、
図1の状態から一方の手指で回転部30の外筒部31を把持し、他方の手指で蓋体60の側壁61を把持しながら上方に引き抜き、容器本体10の上端側の開口13bを開放する。次に、利用者は、一方の手指で容器本体10の先端壁13を把持しつつ他方の手指で回転部30の外筒部31を把持しながら中心軸線O周りに回転させる。
【0037】
利用者が外筒部31を回転させることによって、外係合リブ31aと内係合リブ35bとが係合し、外筒部31と同期して内筒部35が回転する。このため、保持筒部20の突起部21aを内筒部35の螺旋状の溝部35aに沿って上方に移動させて、内容物Cを先端壁13から上方に繰り出して露出させることができる。
【0038】
利用者は、内容物Cの使用(塗布面への塗布)を終了すると、繰り出された内容物Cが蓋体60に接触しないように必要に応じて回転部30を逆方向に回転させ、内容物Cを必要量だけ下方に繰り下げてから再び蓋体60を装着する。
【0039】
利用者は、
図2に示すように、保持筒部20の突起部21aが案内溝15aの上方寄りに設けられた係合突起15bに当接すると、係合筒25の上端部と残存する内容物Cの上端面とが概ね同一高さになるまで内容物Cを使用したと認識する。次に利用者は、突起部21aが係合突起15bを乗り越えるようにより強い回転力で回転部30を回転させて、
図3に示すように保持筒部20が上死点に達するまで上方に繰り出す。そして、容器本体10の開口13bを覆うように蓋体60を再び装着し、蓋体60の縦リブ62bを保持筒部20の歯部25aに係合させる。今度は回転部30を一方の手指で把持しつつ蓋体60の側壁61を中心軸線O周りに回動させる。
【0040】
蓋体60の回動操作によって、縦リブ62bは周方向に回転し始めるため、縦リブ62bに対して周方向に相対回転不能に係合する歯部25aも周方向に回転し始める。一方、歯部25aが設けられた係合筒25は、弱化部25cを介して筒部本体21に連なっているが、筒部本体21は、突起部21aが案内溝15aを貫いていることにより中心軸線O周りの回転を規制されている。このため、筒部本体21に対する係合筒25の周方向の相対回転が生じ、やがて弱化部25cが破断して係合筒25は筒部本体21から分離する。
【0041】
係合筒25は、歯部25aの下端部に設けた傾斜部25bが蓋体60の縦リブ62bの下端部により下方に押圧されて、係合筒25の上部が径方向外側に開く方向の回転モーメントが作用している。また、係合筒25は、
図6に示すように歯部25aの間の周方向位置に薄肉部25dが設けられているため比較的周方向にも伸び易く、上述の係合筒25の上部が径方向外側に開くことを助ける構造を備えている。さらに、係合筒25を支持する弱化部25cは、径方向外側に切り欠き部を有するヒンジ状に構成されているため、当該切り欠き部が上下に狭くなるように変形し易く、したがって係合筒25の上部が径方向外側に開く方向に変形し易く構成されている。この構成によって、径方向内側に残った内容物Cは外側に僅かに開いた係合筒25から容易に剥離する。そのため、
図7に示すように蓋体60を上方に移動させて再度回転部30から取り外すと、係合筒25は、歯部25aと縦リブ62bとの係合を維持したまま蓋体60とともに上方に移動し、係合筒25から剥離した内容物Cは保持皿部23に保持された状態で筒部本体21側に残る。
【0042】
保持皿部23に保持された状態で筒部本体21側に残った内容物Cは、係合筒25の分離によって側方が露出した状態となる。したがって、利用者は、上方に加えて側方が露出した内容物Cの残りを容易に利用して、内容物Cの上面が保持皿部23の上面と概ね同一高さになるまで内容物Cを使い切ることができる。
【0043】
なお、
図7の状態において、蓋体60側に係合した係合筒25を取り除いて廃棄しておくことによって、再度蓋体60を回転部30に装着したときに係合筒25が内容物Cなどに当接することを抑制するようにしてもよい。
【0044】
以上述べたように、本実施形態は、筒状形状を有する容器本体10と、容器本体10の内側に設けられ、内容物Cを保持する保持筒部20と、中心軸線O周りに回転させることで保持筒部20を中心軸線Oに沿って繰り上げる回転部30と、保持筒部20に保持された内容物Cを覆う蓋体60とを備え、蓋体60の内面及び保持筒部20の外面は、保持筒部20が所定高さまで繰り上げられたとき、周方向に相対回転不能な状態で互いに係合する係合部を有し、保持筒部20側の係合部は、保持筒部20の筒部本体21の上端部に弱化部25cを介して連なる係合筒25の外面に形成されるように構成した。このような構成の採用によって、保持筒部20と蓋体60とを係合させた状態で蓋体60を回動操作することによって弱化部25cを破断させて係合筒25を除去し、係合筒25の内側に残った内容物Cの側方を露出させることができるので、保持筒部20内に残った内容物Cを容易に使い切ることができる。
【0045】
また、本実施形態では、保持筒部20側の係合部の下端部には、径方向外側に向かって上方に傾斜する傾斜部25bが形成されており、保持筒部20が所定高さ(本実施形態では保持筒部20の上死点)まで繰り上げられた状態で蓋体60を装着すると、蓋体60側の係合部の下端部が傾斜部25bに当接し、係合筒25の上部が径方向外側に開く方向の回転モーメントを作用させるように構成した。このような構成の採用によって、係合筒25の上部が径方向外側に開く方向に僅かに変位するため、係合筒25の径方向内側に残った内容物Cは外側に開いた係合筒25から容易に剥離することができる。したがって、係合筒25から剥離した内容物Cは保持皿部23に保持された状態で筒部本体21側に残るため、側方が露出した内容物Cの残りを容易に利用して、内容物Cを使い切ることができる。
【0046】
また、本実施形態では、弱化部25cは、径方向外側に切り欠き部を有するヒンジ状に構成されるように構成した。このような構成の採用によって、当該切り欠き部が上下方向に狭くなるように変形し易く、したがって係合筒25の上部が径方向外側に開く方向にさらに変形し易く構成することができる。したがって、残った内容物Cを係合筒25からさらに容易に剥離させて、側方が露出した内容物Cの残りを容易に使い切ることができる。
【0047】
また、本実施形態では、保持筒部20の係合筒25には、薄肉部25dを介して周方向に間欠的に保持筒部20側の係合部(歯部25a)が配置されるように構成した。このような構成の採用によって、歯部25aの間の周方向位置に薄肉部25dが設けられているため比較的周方向にも伸び易く、係合筒25の上部が径方向外側に開くことをさらに助けることができる。したがって、残った内容物Cを係合筒25からさらに容易に剥離させて、側方が露出した内容物Cの残りを容易に使い切ることができる。
【0048】
また、本実施形態では、蓋体60側の係合部は、蓋体60の頂壁62から垂下する嵌合筒部62aの内面から径方向内側に突出する縦リブ62bであるように構成した。このような構成の採用によって、弱化部25cを破断させて係合筒25を除去するための係合部を蓋体60と一体形成することができる。したがって、追加部材を要することなく内容物Cの残りを容易に使い切る構成を実現することができる。
【0049】
また、本実施形態では、保持筒部20側の係合部は、係合筒25の外面において周方向に所定ピッチで形成され上下方向に延びる歯部25aであるように構成した。このような構成の採用によって、蓋体60を上方から装着するという簡単な操作によって蓋体60側の係合部(縦リブ62b)と容易に係合させて、係合筒25を除去することができる。したがって、簡単な操作によって内容物Cの残りを容易に使い切る構成を実現することができる。
【0050】
また、本実施形態では、保持筒部20は径方向外側に延びる突起部21aを有し、回転部30は突起部21aが係合する螺旋状の溝部35aを有するように構成した。このような構成の採用によって、回転部30の回転運動を簡素な構成で上下方向の並進運動に変換することができるので、繰り出し容器100の構成を簡素化することができる。
【0051】
また、本実施形態では、突起部21aは保持筒部20に設けられるとともに螺旋状の溝部35aは回転部30に設けられ、突起部21aは、容器本体10に設けられた案内溝15aを通って螺旋状の溝部35aに係合するように構成した。このような構成の採用によって、保持筒部20は、突起部21aの案内溝15aへの嵌合により容器本体10に対する中心軸線O周りの回転が規制されるため、内容物Cを上方へ繰り出す際に容器本体10に対して回転しないようにすることができる。また、回転部30を中心軸線O周りに回転させることによって、突起部21aは螺旋状の溝部35aに沿って上方へと移動するため、内容物Cを収容した保持筒部20を中心軸線Oに沿って上方へと移動させることができる。このように、突起部21aが内容物Cの回り止め機能と上方への繰り出し機能とを兼ねることができるので、繰り出し容器100の構成を簡素化することができる。
【0052】
また、本実施形態では、回転部30は、外筒部31と、外筒部31の径方向内側に配置された内筒部35とを有し、外筒部31の径方向内側面に設けられた外係合リブ31aの間に内筒部35の径方向外側面に設けられた内係合リブ35bが入り込むことによって、内筒部35は外筒部31に対して中心軸線O周りに相対回転が制限されており、内筒部35の径方向内側面には、螺旋状の溝部35aが設けられるように構成した。このような構成の採用によって、回転部30を径方向に分割して繰り出し容器100の組み立てを容易化することができる。また、外筒部31と内筒部35とを異なる材質で形成することができる。例えば、外筒部31の材料にポリプロピレン(PP)を用い、内筒部35の材料にポリアセタール(POM)を用いることができる。
【0053】
本開示を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部に含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本発明の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【0054】
例えば、本実施形態では、保持筒部20に突起部21aを設け、回転部30の内筒部35に螺旋状の溝部35aを設けるように構成したが、この態様には限定されない。保持筒部20の外周面に螺旋状の溝部を設け、回転部30の内筒部35に径方向内側に突出する突起部を設けるように構成してもよい。また、突起部21aと螺旋状の溝部35aによる係合に代えて、雄ねじ部と雌ねじ部による係合を採用してもよい。
【0055】
また、本実施形態では、回転部30が外筒部31とこれに係合する内筒部35を有するように構成したが、この態様には限定されない。外筒部31と内筒部35の機能を一部材にまとめてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本開示は、例えば、化粧料(口紅、リップクリーム、若しくはスティックアイシャドウ等)、糊、又は薬剤等の棒状に形成された内容物Cを収容し、利用者が必要量だけ内容物Cを繰り出して塗布することができる繰り出し容器100に採用することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 容器本体
13 先端壁
13b 開口
15 基端壁
15a 案内溝
15b 係合突起
17 係止突起
20 保持筒部
21 筒部本体
21a 突起部
23 保持皿部
25 係合筒
25a 歯部(保持筒部側の係合部)
25b 傾斜部
25c 弱化部
25d 薄肉部
30 回転部
31 外筒部
31a 外係合リブ
32 底壁
35 内筒部
35a 溝部
35b 内係合リブ
41 第1規制リング
41a 上周壁
41b アーム部
41c 下周壁
43 第2規制リング
45 第3規制リング
45a 上周壁
45b フランジ部
45c 下周壁
60 蓋体
61 側壁
62 頂壁
62a 嵌合筒部
62b 縦リブ(蓋体側の係合部)
100 繰り出し容器
C 内容物
O 中心軸線