(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164098
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ドレッシング装置
(51)【国際特許分類】
B24B 53/017 20120101AFI20231102BHJP
B24B 53/12 20060101ALI20231102BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B24B53/017 A
B24B53/12 Z
H01L21/304 622M
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075432
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000107745
【氏名又は名称】スピードファム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕介
(72)【発明者】
【氏名】小田桐 茂
(72)【発明者】
【氏名】田山 遊
(72)【発明者】
【氏名】武居 裕樹
【テーマコード(参考)】
3C047
5F057
【Fターム(参考)】
3C047AA34
3C047EE05
5F057AA21
5F057AA25
5F057DA03
5F057EB27
5F057FA39
(57)【要約】
【課題】ドレッシング時に研磨パッドの平坦度の向上や研磨パッドの削り量の均一化ができるドレッシング装置を提供すること。
【解決手段】ワークを研磨する円環状の上定盤11に取り付けられた研磨パッド11aを、上定盤11の外周縁14及び内周縁15に交差する円弧状の軌道2cに沿って移動しながらドレッシングするドレッサー3を備えたドレッシング装置1において、ドレッサー3は、研磨パッド11aに接触するドレッシング領域33を有し、ドレッシング領域33と研磨パッド11aとの定盤周方向αに沿った接触長さS1、S2は、ドレッサー3が上定盤11の外周縁14に位置するとき、定盤径方向βの外側から内側に向かうにつれて次第に短くなり、ドレッサー3が上定盤11の内周縁15に位置するとき、定盤径方向βの内側から外側に向かうにつれて次第に短くなる。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを研磨する円環状の定盤に取り付けられた研磨パッドを、前記定盤の外周縁及び前記定盤の内周縁に交差する円弧状の軌道に沿って移動しながらドレッシングするドレッサーを備えたドレッシング装置において、
前記ドレッサーは、前記研磨パッドに接触するドレッシング領域を有し、
前記ドレッシング領域と前記研磨パッドとの前記定盤の周方向に沿った接触長さは、
前記ドレッサーが前記定盤の外周縁に位置するとき、前記定盤の径方向の外側から前記定盤の径方向の内側に向かうにつれて次第に短くなり、
前記ドレッサーが前記定盤の内周縁に位置するとき、前記定盤の径方向の内側から前記定盤の径方向の外側に向かうにつれて次第に短くなる
ことを特徴とするドレッシング装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたドレッシング装置において、
前記軌道に直交する方向を第1方向とし、前記第1方向に直交すると共に前記軌道の接線方向に沿う方向を第2方向とするとき、
前記ドレッシング領域は、前記第1方向の一方の端縁である第1端縁と、前記第1方向の他方の端縁である第2端縁と、前記第2方向の一方の端縁である第3端縁と、前記第2方向の他方の端縁である第4端縁と、を有し、
前記第1端縁は、前記第2方向の中間部に、両端部よりも前記第2端縁に近い位置に設定される中間点を有し、
前記第3端縁と前記第4端縁とは、平面視で、前記第1端縁から前記第2端縁に向かうにつれて次第に近づく
ことを特徴とするドレッシング装置。
【請求項3】
請求項2に記載されたドレッシング装置において、
前記ドレッシング領域は、前記ドレッサーが前記定盤の外周縁に位置するとき、前記第3端縁が前記定盤の外周縁の接線方向に沿い、前記ドレッサーが前記定盤の内周縁に位置するとき、前記第4端縁が前記定盤の内周縁の接線方向に沿い、
前記中間点は、前記定盤の内周縁の接線方向に平行な第1直線と、前記定盤の外周縁の接線方向に平行な第2直線との交点上に設定されている
ことを特徴とするドレッシング装置。
【請求項4】
請求項3に記載されたドレッシング装置において、
前記第1端縁と前記第3端縁とでなす角と、前記第1端縁と前記第4端縁とでなす角とは、同一の角度に設定され、
前記第3端縁と前記第1直線とでなす角と、前記第4端縁と前記第2直線とでなす角とは、同一の角度に設定されている
ことを特徴とするドレッシング装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載されたドレッシング装置において、
前記ドレッシング領域は、ドレッシング実施時に供給される流体が流動可能であって、前記ドレッサーの側方に開放した溝部が形成されている
ことを特徴とするドレッシング装置。
【請求項6】
請求項5に記載されたドレッシング装置において、
前記軌道に直交する方向を第1方向とし、前記第1方向に直交すると共に前記軌道の接線方向に沿う方向を第2方向とするとき、
前記溝部は、前記第1方向に沿う第1溝部を有する
ことを特徴とするドレッシング装置。
【請求項7】
請求項5に記載されたドレッシング装置において、
前記軌道に直交する方向を第1方向とし、前記第1方向に直交すると共に前記軌道の接線方向に沿う方向を第2方向とするとき、
前記ドレッシング領域は、前記第1方向の一方の端縁である第1端縁と、前記第1方向の他方の端縁である第2端縁と、前記第2方向の一方の端縁である第3端縁と、前記第2方向の他方の端縁である第4端縁と、を有し、
前記溝部は、前記第2方向の中央位置から前記第3端縁又は前記第4端縁の少なくとも一方に向かって、前記定盤の回転に対して下流方向に倣う向きに延びる第2溝部を有する
ことを特徴とするドレッシング装置。
【請求項8】
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載されたドレッシング装置において、
前記軌道に直交する方向を第1方向とし、前記第1方向に直交すると共に前記軌道の接線方向に沿う方向を第2方向とするとき、
前記ドレッシング領域は、前記第1方向の一方の端縁である第1端縁と、前記第1方向の他方の端縁である第2端縁と、前記第2方向の一方の端縁である第3端縁と、前記第2方向の他方の端縁である第4端縁と、を有すると共に、前記第2端縁に、平面視でR加工が施されている
ことを特徴とするドレッシング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークを研磨する研磨機の定盤に取り付けられた研磨パッドをドレッシングするドレッシング装置に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、シリコンウェーハ等のワークを研磨する円環状の定盤に取り付けられた研磨パッドのドレッシングを行うドレッシング装置が知られている。従来のドレッシング装置では、例えば、
図14(a)、(b)に示されるように、上下定盤の間に配置されるドレッサー100が、上定盤に対向するドレッシング面101aを有する棒状の第1砥石101と、下定盤に対向するドレッシング面102aを有する棒状の第2砥石102と、を備えている。そして、従来のドレッサー100では、弾性部材(板バネ等)103を介して第1、第2砥石101、102が押圧用の同軸シリンダ104でそれぞれ上下定盤に向けて押圧される(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、
図14(a)、(b)に示された例では、第1砥石101と第2砥石102とが同一の長さに設定されているが、例えば、
図15(a)、(b)に示された変形例のドレッサー200のように、棒状の第1砥石201と第2砥石202との長さが異なっているドレッシング装置も存在する。
図15(a)、(b)に示された従来のドレッサー200においても、第1砥石201が上定盤に対向するドレッシング面201aを有し、第2砥石202が下定盤に対向するドレッシング面202aを有している。そして、ドレッサー200は、弾性部材(板バネ等)203を介して第1砥石201を押圧用の第1シリンダ204aで上定盤に向けて押圧し、第2砥石202を押圧用の第2シリンダ204bで下定盤に向けて押圧する。
【0004】
さらに、従来、ドレッシング面が、ドレッシング中に定盤の内縁側に位置する内側領域部と、ドレッシング中に定盤の外縁側に位置する外側領域部と、内側領域部と外側領域部との間に位置する中間領域部とを有するドレッシング装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。ここで、内側領域部は、定盤径方向に所要長さで延びると共に、定盤の内縁に沿う形状に形成されている。外側領域部は、定盤径方向に所要長さで延びると共に、定盤の外縁に沿う形状に形成されている。さらに、中間領域部は、定盤径方向に所要長さで延びると共に、定盤周方向に延びる長さが、内側領域部及び外側領域部の定盤周方向に延びる長さよりも短くなるように設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-124750号公報
【特許文献2】特許第6535529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、例えば、特許文献1に記載のドレッシング装置では、定盤の外周部及び内周部で、定盤径方向の中間部よりも研磨パッドの削り量が少なくなるため、定盤の外周部及び内周部と、定盤径方向の中間部とで、研磨パッドの削り量に差が生じる。そのため、研磨パッドの全面を一様に平坦化することが難しいという問題がある。また、例えば特許文献2に記載のドレッシング装置では、ドレッシング時、定盤の外周縁及び内周縁の近傍位置で研磨パッドを削り過ぎる傾向があり、定盤の外周部及び内周部で研磨パッドの削り量が大きく変動する。
【0007】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、ドレッシング時に研磨パッドの平坦度を向上させることや、研磨パッドの削り量を均一にさせることができるドレッシング装置を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、ワークを研磨する円環状の定盤に取り付けられた研磨パッドを、前記定盤の外周縁及び前記定盤の内周縁に交差する円弧状の軌道に沿って移動しながらドレッシングするドレッサーを備えたドレッシング装置において、前記ドレッサーは、前記研磨パッドに接触するドレッシング領域を有し、前記ドレッシング領域と前記研磨パッドとの前記定盤の周方向に沿った接触長さは、前記ドレッサーが前記定盤の外周縁に位置するとき、前記定盤の径方向の外側から前記定盤の径方向の内側に向かうにつれて次第に短くなり、前記ドレッサーが前記定盤の内周縁に位置するとき、前記定盤の径方向の内側から前記定盤の径方向の外側に向かうにつれて次第に短くなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のドレッシング装置では、ドレッシング時に研磨パッドの平坦度を向上させることや、研磨パッドの削り量を均一にさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1のドレッシング装置及び両面研磨機を模式的に示す説明図である。
【
図2】実施例1のドレッシング装置及び両面研磨機を模式的に示す平面図である。
【
図3】実施例1のドレッサーの第1ドレッシング面を示す平面図である。
【
図4】実施例1のドレッサーの第2ドレッシング面を示す平面図である。
【
図5】実施例1のドレッサーが定盤外周縁に位置した状態を示す説明図である。
【
図6】実施例1のドレッサーが定盤内周縁に位置した状態を示す説明図である。
【
図7】ドレッシング領域の形状を示す説明図である。
【
図8】(a)ドレッシング領域が定盤外周縁に位置しているときの、定盤径方向位置における、ドレッシング領域と研磨パッドとの定盤周方向の接触長さ(第1接触長さ)を示す図である。(b)第1接触長さを示す説明図である。
【
図9】ドレッシング領域が定盤内周縁に位置しているときの、ドレッシング領域と研磨パッドとの定盤周方向の接触長さ(第2接触長さ)を示す説明図である。
【
図10】(a)実施例1のドレッシング装置による研磨パッドの削り量を示す図である。(b)研磨パッドの削り量の測定位置を示す説明図である。
【
図11】(a)第1比較例のドレッサーのドレッシング領域を示す平面図である。(b)第1比較例のドレッサーの第1接触長さを示す図である。(c)第1比較例のドレッサーによる研磨パッドの削り量を示す図である。
【
図12】(a)第2比較例のドレッサーのドレッシング領域を示す平面図である。(b)第2比較例のドレッサーの第1接触長さを示す図である。(c)第2比較例のドレッサーによる研磨パッドの削り量を示す図である。
【
図13】(a)第1変形例のドレッシング領域を示す平面図である。(b)第1変形例のドレッシング領域における第1接触長さを示す図である。(c)第1変形例のドレッシング領域による研磨パッドの削り量を示す図である。
【
図14】(a)従来のドレッシング装置のドレッサーを示す第1の斜視図である。(b)従来のドレッシング装置のドレッサーを示す第2の斜視図である。
【
図15】(a)従来のドレッシング装置のドレッサーの変形例を示す第1の斜視図である。(b)従来のドレッシング装置のドレッサーの変形例を示す第2の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のドレッシング装置を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0012】
実施例1のドレッシング装置1は、薄板状のワークの表裏両面を研磨する両面研磨機10用のドレッシング装置である。すなわち、実施例1のドレッシング装置1は、回転可能な上定盤11に取り付けられた研磨パッド11aと、回転可能な下定盤12に取り付けられた研磨パッド12aとを同時にドレッシングする。なお、ドレッシングとは、研磨パッド11a、12aの表面を研削や粗化などをして、研磨パッド11a、12aのスラリーの保持性を回復させ、両面研磨機10の研磨能力を維持させることをいう。研磨パッド11a、12aの表面は、ドレッシングを行うことで一様に平坦化される、若しくは、研磨パッド11a、12aの削り量が均一にされることが望ましい。
【0013】
ドレッシング時、ドレッシング装置1は、上下定盤11、12の間にドレッサー3を入れる。そして、両面研磨機10は、ドレッサー3を上定盤11と下定盤12で挟んだ状態で、回転軸13によって上定盤11を第1の方向(例えば反時計回り方向、以下「上定盤回転方向CCW」という)に回転させ、下定盤12を第1の方向に対して逆向きの第2の方向(例えば時計回り方向、以下「下定盤回転方向CW」という)に回転させる。これにより、研磨パッド11a、12aとドレッサー3とが摺接し、研磨パッド11a、12aがドレッシングされる。また、上定盤11及び下定盤12は、中心に回転軸13が取り付けられた円環状(ドーナツ円盤形状)を呈している。ドレッシング中、ドレッサー3は、上下定盤11、12の外周縁14と内周縁15との間を移動する。
【0014】
ドレッシング装置1は、
図1及び
図2に示されるように、アーム部材2と、アーム部材2の先端部2bに設けられたドレッサー3と、アーム部材2を回動する駆動機構4と、駆動機構4を制御する制御部(図示せず)とを備えている。
【0015】
アーム部材2は、両面研磨機10の近傍に配置された駆動機構4に基部2aが保持され、駆動機構4から水平方向に延びたパイプ部材である。アーム部材2は、駆動機構4によって回動し、先端部2bを上下定盤11、12の間に進退可能に進入させる。このとき、アーム部材2の先端部2bは、
図2に示されたように、上下定盤11、12の外周縁14及び内周縁15に交差する円弧状の軌道2cを描く。これにより、アーム部材2の先端部2bに設けられたドレッサー3は、ドレッシング中、軌道2cに沿って、上下定盤11、12の外周縁14及び内周縁15に位置するまで移動させられる。なお、アーム部材2は、ドレッシング時以外は上下定盤11、12の間からドレッサー3を退避させる位置に回動させられる。
【0016】
ドレッサー3は、ドレッシング部材3aと、洗浄水噴射機構3bとを有している。ドレッシング部材3aは、研磨パッド11a、12aをドレッシングする機能を有する。ドレッシング部材3aは、ドレッシング時に上定盤11に対向する第1ドレッシング面31(
図3参照)と、ドレッシング時に下定盤12に対向する第2ドレッシング面32(
図4参照)と、を備えている。そして、第1ドレッシング面31には、ドレッシング時に上定盤11に接触するドレッシング領域33が設定され、第2ドレッシング面32には、ドレッシング時に下定盤12に接触するドレッシング領域33が設定されている。
【0017】
洗浄水噴射機構3bは、ドレッシング時に高圧の洗浄水を噴射する機能を有する。洗浄水噴射機構3bは、一対の第1噴射口34(
図3参照)と、三カ所の第2噴射口35(
図4参照)と、不図示の洗浄水通路(不図示)等と、を備えている。第1噴射口34は、第1ドレッシング面31に設けられ、ドレッシング中に洗浄水を噴射する。第2噴射口35は、第2ドレッシング面32に設けられ、ドレッシング中に洗浄水を噴射する。洗浄水通路は、ドレッシング部材3aを貫通し、第1噴射口34及び第2噴射口35に連通している。洗浄水は、アーム部材2の内部を介して供給され、洗浄水通路を通って第1噴射口34及び第2噴射口35から噴射される。ここで、第1噴射口34は、ドレッシング領域33よりも、上定盤回転方向CCWの上流側に配置されている。また、第2噴射口35は、ドレッシング領域33よりも、下定盤回転方向CWの上流側に配置されている。さらに、第1、第2噴射口34、35の先端は、いずれもドレッシング時に研磨パッド11a、12aに接触しない位置に設けられている。
【0018】
ドレッシング領域33は、第1ドレッシング面31と第2ドレッシング面32とでほぼ同じ形状であり、
図3及び
図4に示されたように、中央線Oを対称軸にして線対称となる平面視でほぼ凹多角形状を呈している。「凹多角形」とは、一つ以上の凹角(内角が180°以上の角)を有する多角形である。実施例1のドレッシング領域33は、平面視で一つの凹角50と、第1隅角部51~第4隅角部54までの四つの凸角と、を有するほぼ五角形(凹五角形状)を呈している。
【0019】
また、ドレッシング領域33には、砥粒が電着され、例えば#50~325等の任意の番手の粒度に設定されている。ドレッシング領域33に電着される砥粒は、ダイヤモンドやCBN砥粒等が使用可能である。また、
図3及び
図4に示された第1ドレッシング面31及び第2ドレッシング面32に設けられた複数の円形の穴3cは、任意に形成されるネジ穴である。
【0020】
そして、ドレッサー3は、
図2に示されたように、ドレッシング領域33に設定された中央線Oが、軌道2cに直交する第1方向Xに沿う向きに配置される。また、以下の説明では、軌道2cの接線方向に沿い、第1方向Xに直交する方向を第2方向Yとする。
【0021】
そして、ドレッシング領域33は、第1方向Xの一方の端縁である第1端縁41と、第1方向Xの他方の端縁である第2端縁42と、第2方向Yの一方の端縁である第3端縁43と、第2方向Yの他方の端縁である第4端縁44と、を有する。ここで、第1隅角部51は、第1端縁41と第3端縁43とで形成される。第2隅角部52は、第1端縁41と第4端縁44とで形成される。第3隅角部53は、第2端縁42と第3端縁43とで形成される。第4隅角部54は、第2端縁42と第4端縁44とで形成される。また、ドレッサー3が上下定盤11、12の間に配置されたとき、ドレッシング領域33の第3端縁43が外周縁14に臨み、第4端縁44が内周縁15に臨む。
【0022】
そして、ドレッシング領域33は、第1端縁41に、内角が180°以上の凹角50が設定されている。つまり、第1端縁41は、第2方向Yの中間部に、両端部(第1隅角部51及び第2隅角部52)よりも第2端縁42に近い位置に設定される中間点Pを有し、中間点Pに凹角50の頂点が設定されている。このため、第1端縁41は、平面視で途中位置が屈曲した直線状に延びている。
【0023】
また、実施例1では、第3端縁43、第4端縁44は、平面視で直線状に延びている。さらに、第2端縁42には平面視でR加工が施されている。また、実施例1では、第1隅角部51~第4隅角部54は、いずれも平面視でR状に湾曲している。
【0024】
また、ドレッシング領域33では、第3端縁43と第4端縁44とが、平面視で、第1端縁41側から第2端縁42側に向かうにつれて次第に近づくように傾斜している。すなわち、第3端縁43から第4端縁44までの第2方向Yに沿った長さは、第1端縁41側から第2端縁42側に向かうにつれて次第に短くなっている。
【0025】
また、ドレッシング領域33は、
図5に示されたように、ドレッサー3が上下定盤11、12の外周縁14に位置するとき、外周縁14に臨む第3端縁43が、外周縁14の接線方向(以下、「第1接線方向Lα」という)に沿う。なお、「ドレッサー3が上下定盤11、12の外周縁14に位置する」とは、ドレッサー3が軌道2cに沿って上下定盤11、12の最外周まで移動した状態になることである。「第1接線方向Lα」は、平面視で、外周縁14に第3端縁43が接する位置である交点Paにおける外周縁14の接線方向である。なお、
図5では、上定盤11と第1ドレッシング面31に設定されたドレッシング領域33との位置関係が示されているが、下定盤12と第2ドレッシング面32に設定されたドレッシング領域33との位置関係も、
図5に示された位置関係と同様である。つまり、第2ドレッシング面32に設定されたドレッシング領域33も、ドレッサー3が上下定盤11、12の外周縁14に位置するとき、第3端縁43が第1接線方向Lαに沿う。
【0026】
また、ドレッシング領域33は、
図6に示されたように、ドレッサー3が上下定盤11、12の内周縁15に位置するとき、内周縁15に臨む第4端縁44が、内周縁15の接線方向(以下、「第2接線方向Lβ」という)に沿う。なお、「ドレッサー3が上下定盤11、12の内周縁15に位置するとき」とは、ドレッサー3が軌道2cに沿って上下定盤11、12の最内周まで移動した状態となることである。「第2接線方向Lβ」は、平面視で、内周縁15に第4端縁44が接する位置である交点Pbにおける内周縁15の接線方向である。なお、
図6では、上定盤11と第1ドレッシング面31に設定されたドレッシング領域33との位置関係が示されているが、下定盤12と第2ドレッシング面32に設定されたドレッシング領域33との位置関係も、
図6に示された位置関係と同様である。つまり、第2ドレッシング面32に設定されたドレッシング領域33も、ドレッサー3が上下定盤11、12の内周縁15に位置するとき、第4端縁44が第2接線方向Lβに沿う。
【0027】
そして、凹角50の頂点(中間点P)は、
図7に示されたように、ドレッシング領域33上に設定される第1直線L1と、第2直線L2との交点上に設定されている。ここで、第1直線L1は、第2接線方向Lβ(第4端縁44)に平行であって、第3隅角部53を通る直線である。また、第2直線L2は、第1接線方向Lα(第3端縁43)に平行であって、第4隅角部54を通る直線である。
【0028】
そして、実施例1では、
図7に示されたように、第1端縁41と第3端縁43(第1接線方向Lα)とでなす角θ1(第1隅角部51の内角)と、第1端縁41と第4端縁44(第2接線方向Lβ)とでなす角θ2(第2隅角部52の内角)とが、同一の角度に設定されている。また、第3端縁43(第1接線方向Lα)と第1直線L1とでなす角θ3と、第4端縁44(第2接線方向Lβ)と第2直線L2とでなす角θ4とが、同一の角度に設定されている。なお、
図7では、角θ1~角θ4を明確に示すため、ドレッシング領域33が模式的に示され、第1隅角部51~第4隅角部54がR状に湾曲していない。また、
図7では、第1ドレッシング面31に設定されたドレッシング領域33が示されているが、第2ドレッシング面32に設定されたドレッシング領域33においても同様である。
【0029】
また、実施例1では、第3端縁43と第4端縁44、つまり第1接線方向Lαと第2接線方向Lβとでなす角θ5も、角θ3及び角θ4と同一角度に設定されている。なお、角θ5は、アーム部材2の長さや上下定盤11、12の半径の大きさ等に応じて設定され、例えばゼロ°よりも大きく、100°程度までの角度に設定される。
【0030】
そして、実施例1のドレッシング装置1では、ドレッサー3が上下定盤11、12の外周縁14に位置しているとき、
図8(a)に示されたように、ドレッシング領域33と研磨パッド11a、12aとの上下定盤11、12の周方向(以下、「定盤周方向α」という)の接触長さ(以下、「第1接触長さS1」という、
図8(b)参照)が、上下定盤11、12の径方向(以下、「定盤径方向β」という)の外側から内側に向かうにつれて、次第に低減する。つまり、第1接触長さS1は、定盤径方向位置が、外周縁14に臨む第3端縁43側から、内周縁15に臨む第4端縁44側に向かうにつれて、次第に短くなる。
【0031】
さらに、
図8(a)において、X軸とY軸及び第1接触長さS1を示す線とで囲まれた領域(斜線を付した領域)は、ドレッシング領域33と研磨パッド11aとの接触面積を示している。ドレッサー3が上下定盤11、12の外周縁14に位置しているとき、ドレッシング領域33と研磨パッド11aとの接触面積は、
図8(a)から分かるように、上下定盤11、12の最外周から徐々に小さくなり、横軸を定盤径方向βとして図示したときにほぼ三角形状を呈する。
【0032】
なお、
図8(a)、(b)に示された第1接触長さS1は、第1ドレッシング面31に設定されたドレッシング領域33と、上定盤11に設けられた研磨パッド11aとの定盤周方向αの接触長さを示している。図示されていないが、第2ドレッシング面32に設定されたドレッシング領域33における第1接触長さS1も、
図8(a)、(b)に示された第1接触長さS1と同様である。また、第1接触長さS1は、ここでは穴3cを考慮していない。
【0033】
また、実施例1のドレッシング装置1では、ドレッサー3が上下定盤11、12の内周縁15に位置しているとき、図示しないが、ドレッシング領域33と研磨パッド11a(12a)との定盤周方向αの接触長さ(以下、「第2接触長さS2」という、
図9参照)が、定盤径方向βの内側から外側に向かうにつれて、低減する。つまり、第2接触長さS2は、定盤径方向位置が、内周縁15に臨む第4端縁44側から、外周縁14に臨む第3端縁43側に向かうにつれて、次第に短くなる。
【0034】
なお、
図9に示された第2接触長さS2は、第1ドレッシング面31に設定されたドレッシング領域33と、上定盤11に設けられた研磨パッド11aとの定盤周方向αの接触長さを示している。しかしながら、第2ドレッシング面32に設定されたドレッシング領域33における第2接触長さS2も、
図9に示された第2接触長さS2と同様である。また、第2接触長さS2は、穴3cを考慮していない。
【0035】
このように、実施例1のドレッシング装置1では、ドレッシング領域33と研磨パッド11a、12aとの定盤周方向αの接触長さ(第1接触長さS1、第2接触長さS2)は、ドレッサー3が上下定盤11、12の外周縁14に位置したときと、ドレッサー3が上下定盤11、12の内周縁15に位置したときとのいずれにおいても、定盤縁部(外周縁14或いは内周縁15)側から定盤内部(定盤径方向βの中間部)側に向かって次第に低減していく。
【0036】
さらに、ドレッシング領域33には、
図3及び
図4に示されたように、溝部60が形成されている。溝部60は、ドレッシング領域33に形成されたへこみであり、ドレッサー3の側方に開放している。溝部60は、ドレッシング実施時に供給される洗浄水等の流体が流動可能な幅及び深さに設定されている。なお、溝部60の内側には、砥粒は電着されていない。そして、実施例1の溝部60は、第1溝部61と、第2溝部62と、を有している。
【0037】
第1溝部61は、第1方向Xに沿って延び、実施例1では中央線Oに重なる位置に形成されている。
【0038】
第2溝部62は、ドレッシング領域33の第2方向Yの中央位置(中央線O)から、第3端縁43及び第4端縁44に向かって、上定盤11或いは下定盤12の回転に対して下流方向に倣う向きに延びている。なお、「上定盤11の回転に対して下流方向に倣う向き」とは、溝部60に流れ込んだ流体を上定盤回転方向CCWの下流側に流す向きである。第1ドレッシング面31に形成された第2溝部62は、上定盤11の回転に対して下流方向に倣う向きに延びている(
図3参照)。また、「下定盤12の回転に対して下流方向に倣う向き」とは、溝部60に流れ込んだ流体を下定盤回転方向CWの下流側に流す向きである。第2ドレッシング面32に形成された第2溝部62は、下定盤12の回転に対して下流方向に倣う向きに延びている(
図4参照)。すなわち、
図3及び
図4に示されたように、上定盤回転方向CCWと下定盤回転方向CWとは逆向きであるため、第1ドレッシング面31に形成された第2溝部62と、第2ドレッシング面32に形成された第2溝部62とは、平面視で異なる方向に延びている。
【0039】
以下、実施例1のドレッシング装置1の作用を説明する。
【0040】
実施例1のドレッシング装置1は、両面研磨機10の研磨パッド11a、12aをドレッシングするとき、図示しない制御部により各部を制御し、まず、駆動機構4によってアーム部材2を回動させる。そして、駆動機構4は、アーム部材2の先端部2bに設けられたドレッサー3を上定盤11と下定盤12の間に入れる。
【0041】
次に、両面研磨機10は、上定盤11と下定盤12の間の隙間高さを予め設定した所定の高さに設定する。これにより、ドレッサー3が上下定盤11、12によって挟まれ、第1ドレッシング面31に設定されたドレッシング領域33が上定盤11の研磨パッド11aに接触し、第2ドレッシング面32に設定されたドレッシング領域33が下定盤12の研磨パッド12aに接触する。
【0042】
そして、両面研磨機10は、ドレッシング領域33がそれぞれ研磨パッド11a、12aに接触した状態で、回転軸13を中心にして上定盤11及び下定盤12を互いに逆方向に回転させる。このとき、ドレッシング装置1は、駆動機構4を駆動してアーム部材2を回動させる。この結果、ドレッシング装置1は、ドレッサー3を軌道2cに沿って上下定盤11、12の外周縁14側から内周縁15側、或いは内周縁15側から外周縁14側へと移動させながら、研磨パッド11a、12aとドレッシング領域33とを摺接させ、研磨パッド11a、12aをドレッシングする。
【0043】
ここで、実施例1のドレッシング装置1では、ドレッシング領域33と研磨パッド11a、12aとの定盤周方向αに沿った接触長さ(第1接触長さS1、第2接触長さS2)は、ドレッサー3が上下定盤11、12の外周縁14に位置したときと、ドレッサー3が上下定盤11、12の内周縁15に位置したときとのいずれにおいても、定盤縁部(外周縁14或いは内周縁15)側から定盤内部(定盤径方向βの中間部)側に向かって次第に低減する(例えば
図8(a)参照)。
【0044】
つまり、ドレッサー3が上下定盤11、12の外周縁14に位置するとき、第1接触長さS1は、定盤径方向βの外側から内側に向かうにつれて、次第に短くなる。また、ドレッサー3が上下定盤11、12の内周縁15に位置するとき、第2接触長さS2は、定盤径方向βの内側から外側に向かうにつれて、次第に短くなる。
【0045】
また、実施例1のドレッシング装置1では、ドレッシング領域33の第1方向Xの一方の端縁である第1端縁41が、第2方向Yの中間部に、両端部(第1隅角部51、第2隅角部52)よりも第3端縁43に近い位置に設定された中間点Pを有している。つまり、実施例1では、ドレッシング領域33が、平面視で凹多角形状を呈し、第1端縁41には、内角が180°以上の凹角50が設定されている。また、上下定盤11、12の外周縁14に臨む第3端縁43と、上下定盤11、12の内周縁15に臨む第4端縁44とは、平面視で、第1端縁41から第2端縁42に向かうにつれて次第に近づくように傾斜している。
【0046】
これにより、
図10(a)に示されたように、上定盤11の外周部(外周縁14の近傍位置)及び内周部(内周縁15の近傍位置)における研磨パッド11aの削り量と、上定盤11の径方向の中間部における研磨パッド11aの削り量との差を、ドレッサー3をオーバーハングさせることなく小さくすることができる。また、図示しないが、下定盤12に設けられた研磨パッド12aにおいても、実施例1のドレッシング装置1を用いてドレッシングすることで、下定盤12の外周部(外周縁14の近傍位置)及び内周部(内周縁15の近傍位置)における研磨パッド12aの削り量と、下定盤12の径方向の中間部における研磨パッド12aの削り量との差を、ドレッサー3をオーバーハングさせることなく小さくすることができる。この結果、実施例1のドレッシング装置1は、研磨パッド11a、12aの平坦度を向上させることができる。
【0047】
なお、実施例1のドレッシング装置1は、粒度の番手によるドレッシング力を用いてドレッシングを行っているが、ドレッシング時、砥粒の密度、材質、配置等によって得られるドレッシング力を用いてもよい。
【0048】
また、「オーバーハング」とは、上下定盤11、12の外周縁14及び内周縁15に対し、ドレッサー3の一部を定盤外側にはみ出させた状態でドレッシングすることである。ドレッサー3をオーバーハングさせる場合、上下定盤11、12の外周部や内周部で研磨パッド11a、12aを所望の状態にドレッシングすることが可能となる。しかしながら、この場合、ドレッサー3の位置調整が複雑になったり、インターナルギヤやサンギヤ等の構造物とドレッサー3との干渉が起こったりする等、制御が難しい。そのため、ドレッサー3のオーバーハングは行わない方が好ましい。
【0049】
また、
図10(a)に示された研磨パッド11aの削り量は、
図10(b)に示された測定線LSに沿って測定した値である。さらに、
図10(a)に示された研磨パッド11aの削り量は、ドレッシング時、第1ドレッシング面31のドレッシング領域33が上定盤11の外周縁14に接したときと、第1ドレッシング面31のドレッシング領域33が内周縁15に接したときに、ドレッサー3の軌道2cに沿った移動を所定時間(例えば10秒間)停止させた場合の値である。
【0050】
これに対し、例えば、
図11(a)に示された第1比較例のドレッサーは、平面視で長方形状を呈するドレッシング領域33Xを有している。第1比較例のドレッサーでは、ドレッサーが上下定盤11、12の外周縁14又は内周縁15に位置するとき、アーム部材2の回動によりドレッシング領域33Xが外周縁14や内周縁15に対して斜め方向に接触する。つまり、第1比較例のドレッサーが上下定盤11、12の外周縁14に位置するとき、ドレッシング領域33の第3端縁43は第1接線方向Lαに沿うことができず、上下定盤11、12の内周縁15に位置するとき、ドレッシング領域33の第4端縁44は第2接線方向Lβに沿うことができない。このため、例えば、第1比較例のドレッサーが上下定盤11、12の外周縁14に位置するとき、第1接触長さS1は、
図11(b)に示されたように、定盤径方向βの外側(第3端縁43)から、定盤径方向βの内側(第4端縁44)に向かって低減し続けることがない。
【0051】
また、
図11(b)において斜線を付して示されたドレッシング領域33Xと研磨パッド11aとの接触面積は、横軸を定盤径方向βとして図示したときに台形形状を呈する。このため、
図11(c)に示されたように、実施例1のドレッシング装置1と比べると、上定盤11の外周部及び内周部において、研磨パッド11aの削り量が少なくなる。一方、上定盤11の定盤径方向βの中間部では、実施例1と比べると、研磨パッド11aの削り量が多くなる。そして、第1比較例のドレッサーでは、下定盤12に対しても、実施例1よりも定盤外周部及び定盤内周部で研磨パッド12aの削り量が少なく、定盤径方向βの中間部で研磨パッド12aの削り量が多くなる。そのため、第1比較例のドレッサーを用いてドレッシングを行う場合、上下定盤11、12の外周部及び内周部の研磨パッド11a、12aの削り量と、上下定盤11、12の定盤径方向βの中間部の研磨パッド11a、12aの削り量との差が実施例1よりも大きくなり、研磨パッド11a、12aの平坦度を向上させることができない。
【0052】
さらに、例えば、
図12(a)に示された第2比較例のドレッサーは、平面視で二つの三角形の頂点が繋がっている形状を呈するドレッシング領域33Yを有している。第2比較例のドレッサーでは、例えば、ドレッサーが上下定盤11、12の外周縁14に位置するとき、第1接触長さS1は、
図12(b)に示されたように、定盤径方向βの外側(第3端縁43)から、定盤径方向βの内側(第4端縁44)に向かって次第に低減することはなく、途中で増加して再び低減する。
【0053】
また、
図12(b)において斜線を付して示されたドレッシング領域33Yと研磨パッド11aとの接触面積は、横軸を定盤径方向βとして図示したときに二つの三角形を並べた形となる。このため、
図12(c)に示されたように、研磨パッド11aの削り量の増加が、上定盤11の外周部及び内周部において大きく変動し、いわゆる段差Dを生じる。そのため、研磨パッド11aの平坦度を向上させることができない。
【0054】
また、実施例1のドレッシング装置1では、ドレッサー3が上下定盤11、12の外周縁14に位置するとき、ドレッシング領域33の第3端縁43が第1接線方向Lαに沿う。そして、ドレッサー3が上下定盤11、12の内周縁15に位置するとき、ドレッシング領域33の第4端縁44が第2接線方向Lβに沿う。さらに、ドレッシング領域33の第1端縁41に設定された中間点P、つまり凹角50の頂点は、第2接線方向Lβに平行な第1直線L1と、第1接線方向Lαに平行な第2直線L2との交点上に設定されている。
【0055】
これにより、実施例1のドレッシング装置1では、ドレッサー3が上下定盤11、12の外周縁14に位置したときには、ドレッシング領域33と研磨パッド11a、12aとの定盤周方向αに沿った接触長さ(第1接触長さS1)を、定盤縁部(外周縁14)側から定盤内部(定盤径方向βの中間部)側に向かって次第に低減させることができ(
図8(a)参照)、ドレッサー3が上下定盤11、12の内周縁15に位置したときには、ドレッシング領域33と研磨パッド11a、12aとの定盤周方向αに沿った接触長さ(第2接触長さS2)を、定盤縁部(内周縁15)側から定盤内部(定盤径方向βの中間部)側に向かって次第に低減させることができる。この結果、
図10(a)に示されたように、実施例1のドレッシング装置1は、上定盤11の外周部及び内周部と中間部とで、研磨パッド11aの削り量の変動を抑制し、研磨パッド11aの平坦度を高めることができる。
【0056】
しかも、実施例1のドレッシング装置1では、第1端縁41と第3端縁43(第1接線方向Lα)とでなす角θ1と、第1端縁41と第4端縁44(第2接線方向Lβ)とでなす角θ2とが、同一の角度に設定されている。そして、第3端縁43(第1接線方向Lα)と第1直線L1とでなす角θ3と、第4端縁44(第2接線方向Lβ)と第2直線L2とでなす角θ4とが、同一の角度に設定されている。
【0057】
そのため、実施例1のドレッシング装置1は、ドレッシング領域33を、中央線Oを対称軸にした平面視で線対称の凹多角形状とすることができる。これにより、実施例1のドレッシング装置1は、ドレッシング領域33と研磨パッド11a、12aとの定盤周方向αに沿った接触長さ(第1接触長さS1、第2接触長さS2)を、ドレッサー3が上下定盤11、12の外周縁14に位置したときと、ドレッサー3が上下定盤11、12の内周縁15に位置したときとのいずれにおいても、定盤縁部(外周縁14或いは内周縁15)側から定盤内部(定盤径方向βの中間部)側に向かって同じように低減させていくことができる。
【0058】
なお、例えば、
図13(a)に示された第1変形例のドレッシング領域33Aのように、角θ1及び角θ2が、角θ3及び角θ4より著しく小さい角度に設定された場合では、
図13(b)に示されたように、ドレッサー3が上下定盤11、12の外周縁14に位置しているとき、定盤径方向βの外側から内側(第3端縁43から第4端縁44)に向かう途中位置(中間位置)で、第1接触長さS1の低減率が大きく変化する。また、図示しないが、ドレッサー3が上下定盤11、12の内周縁15に位置しているときには、定盤径方向βの内側から外側(第4端縁44から第3端縁43)に向かう途中位置(中間位置)で、第2接触長さS2の低減率が大きく変化する。さらに、
図13(b)において斜線を付して示されたドレッシング領域33と研磨パッド11aとの接触面積は、横軸を定盤径方向位置として図示した際、三角形を呈することはない。
【0059】
しかしながら、このような場合であっても
図13(c)に示されたように、上定盤11の外周部及び内周部と、定盤径方向βの中間部とで、研磨パッド11aの削り量の変動を抑制し、研磨パッド11aの平坦度を高めることができる。
【0060】
ただし、第3隅角部53と第4隅角部54を結んだ直線LBから中間点P(凹角50の頂点)までの最短距離Bは、第1隅角部51と第2隅角部52を結んだ直線LAから中間点P(凹角50の頂点)までの最短距離Aの10%以上の長さであることが望ましい。距離Aの10%の長さよりも距離Bが短くなると、ドレッシング領域33Aの面積が狭くなり、ドレッシング装置1のドレッシング機能が低下して実用性に乏しくなる。
【0061】
また、実施例1のドレッシング装置1では、ドレッシング領域33に、ドレッシングの実施時に供給される洗浄水(流体)が流動可能であって、ドレッサー3の側方に開放した溝部60が形成されている。
【0062】
これにより、実施例1のドレッシング装置1は、溝部60を流れる洗浄水によって、ドレッシングによって生じた研磨パッド11a、12aの研削屑や、研磨パッド11a、12aに付着した付着物や副生成物等をドレッシング領域33と研磨パッド11a、12aとの間から速やかに排出することができる。
【0063】
また、実施例1では、溝部60が、第1方向Xに沿った第1溝部61を有している。これにより、第1方向Xに沿って流れる洗浄水の排出性能を向上し、研削屑の排出性能を高めることができる。このため、ドレッサー3の目詰まりを抑制することができる。
【0064】
さらに、実施例1では、溝部60が、ドレッシング領域33の第2方向Yの中央位置から第3端縁43及び第4端縁44に向かって、上定盤11の回転に対して下流方向に倣う向き、或いは、下定盤12の回転に対して下流方向に倣う向きに延びる第2溝部62を有している。これにより、研削屑の排出性能を高め、ドレッサー3の目詰まりを抑制することができる。
【0065】
さらに、実施例1のドレッシング装置1では、ドレッシング領域33の第2端縁42に平面視でR加工が施されている。これにより、ドレッシング領域33の第2端縁42と研磨パッド11aと間で抵抗を少なくすることができる。このため、第1ドレッシング面31が研磨パッド11aに引っ掛かることを抑制し、研磨パッド11aや砥粒へのダメージを抑えることができる。
【0066】
以上、本発明のドレッシング装置を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0067】
実施例1では、溝部60が、第1溝部61と第2溝部62とを有する例が示された。しかしながら、溝部60は、第1溝部61又は第2溝部62のいずれか一方を有するものであってもよい。また、溝部60は、必ずしもドレッシング領域33に形成されていなくてもよい。また、溝部60の大きさ(幅及び深さ)は任意に設定することができる。さらに、第1溝部61及び第2溝部62の数や、これらが形成される位置についても、任意に設定することができる。
【0068】
また、実施例1では、ドレッシング装置1が、第1ドレッシング面31と第2ドレッシング面32とを有するドレッサー3を備え、両面研磨機10の上定盤11と下定盤12とを同時にドレッシングすることができる例が示された。しかしながら、ドレッサー3はこれに限らない。ドレッサー3は、例えば、上定盤11の研磨パッド11aに対向する第1ドレッシング面31のみを有するドレッサー3や、下定盤12の研磨パッド12aに対向する第2ドレッシング面32のみを有するドレッサー3であってもよい。この場合、第1、第2ドレッシング面31、32の形状を上定盤回転方向CCWや下定盤回転方向CWに応じた最適な形状とすることが可能となる。
【0069】
また、実施例1のドレッシング装置1では、ドレッシング領域33が第1端縁41に凹角50が設定された平面視で凹多角形状(凹五角形状)を呈する例が示された。しかしながら、ドレッシング領域33は、平面視で凹多角形状を呈していなくてもよい。すなわち、第1端縁41の形状は実施例1の形状に限らず、例えば、平面視で、中間点Pを頂点とする円弧線を描くように設定されてもよい。また、第1端縁41は、平面視で、第1隅角部51と中間点Pとをつなぐ階段状に折れ曲がった折れ線と、第2隅角部52と中間点Pとをつなぐ階段状に折れ曲がった折れ線を描くように設定されてもよい。
【0070】
さらに、実施例1のドレッシング装置1では、研磨パッド11a、12aの平坦度を向上させる例が示された。しかしながら、本発明のドレッシング装置は、第1端縁41に設定された中間点Pの位置を制御することにより、ドレッサー3が上下定盤11、12の外周縁14に位置したときの第1接触長さS1の低減の仕方や、ドレッサー3が上下定盤11、12の内周縁15に位置したときの第2接触長さS2の低減の仕方を制御することが可能である。つまり、研磨パッド11a、12aの外周部及び内周部を、意図的にタチ(外周部及び内周部の削り量が少ない状態)やダレ(外周部及び内周部の削り量が多い状態)等の形状に制御することも可能となる。
【0071】
また、本発明のドレッシング装置では、実際にドレッシングを行った後の研磨パッド11a、12aの外周部及び内周部の形状を解析し、研磨パッド11a、12aのドレッシング後の形状解析から、ドレッシング領域33と研磨パッド11a、12aとの接触面積の形状(X軸とY軸及び第1接触長さS1、第2接触長さS2を示す線とで囲まれた領域の形状)を適切に設定し、設定した接触面積の形状に基づいてドレッシング領域33の形状(中間点Pの位置)を設計することも可能である。これにより、研磨パッド11a、12aの形状を細かく制御することができる。
【0072】
さらに、実施例1のドレッシング装置1では、ドレッサー3が洗浄水噴射機構3bを有する例が示されたが、必ずしも洗浄水はドレッサー3から噴出可能でなくてもよい。すなわち、ドレッサー3が洗浄水噴射機構3bを有していなくてもよい。
【0073】
また、ドレッシング装置1を具備した両面研磨機10は、ドレッシング時に上定盤11を固定させる機構を持つことがある。その場合、上定盤11を所定の高さまで上昇させた位置に、上定盤11を吊下げた状態で固定する機構(以下、「上定盤吊部固定機構」という)によって、上定盤11が固定された状態で、ドレッシングを行ってもよい。
【0074】
上定盤吊部固定機構は、上定盤11及び上定盤11に設けられた上定盤吊部を吊下げた状態で支持する装置フレームに設けられる。上定盤吊部固定機構は、上定盤11の上下方向の位置(高さ)や振れを制止することができる。なお、上定盤吊部固定機構は、例えば、係止・解除する駆動が可能なU字状や円柱状、爪状などの装置フレームに設けられた係止部材が、上定盤吊部に設けられた被係止部材に係止されて装置フレームと上定盤吊部とを固定する機構や、逆に、係止・解除する駆動が可能な係止部材を上定盤吊部に設け、被係止部材を装置フレームに設けた機構など、任意の構造及び形状とすることができる。係止部材を係止・解除する際の駆動方向は、水平方向のほか、被係止部に対して係止が可能であれば、その他の方向でもよい。なお、上定盤吊部固定機構は、本発明のオートドレッシング技術に限らず、他の形態の定盤ドレッサー及びパッドドレッサーによるドレッシング、並びにあらゆる定盤のメンテナンス作業にも適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1 ドレッシング装置
2 アーム部材
2c 軌道
3 ドレッサー
3a ドレッシング部材
4 駆動機構
31 第1ドレッシング面
32 第2ドレッシング面
33 ドレッシング領域
41 第1端縁
42 第2端縁
43 第3端縁
44 第4端縁
50 凹角
51 第1隅角部
52 第2隅角部
53 第3隅角部
54 第4隅角部
60 溝部
61 第1溝部
62 第2溝部
10 両面研磨機
11 上定盤
11a 研磨パッド
12 下定盤
12a 研磨パッド
13 回転軸
14 外周縁
15 内周縁
X 第1方向(軌道に直交する方向)
Y 第2方向(軌道の接線方向)
Lα 第1接線方向(外周縁の接線方向)
Lβ 第2接線方向(内周縁の接線方向)
Pa 外周縁に第3端縁が接する位置
Pb 内周縁に第4端縁が接する位置
L1 第1直線(第2接線方向に平行で、第3隅角部を通る直線)
L2 第2直線(第1接線方向に平行で、第4隅角部を通る直線)
S1 第1接触長さ(ドレッサーが定盤外周縁に位置しているときのドレッシング領
域と研磨パッドとの定盤周方向の接触長さ)
S2 第2接触長さ(ドレッサーが定盤内周縁に位置しているときのドレッシング領
域と研磨パッドとの定盤周方向の接触長さ)
α 定盤周方向
β 定盤径方向