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  • 特開-周波数同期回路 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164111
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】周波数同期回路
(51)【国際特許分類】
   H03L 7/10 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
H03L7/10 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075453
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】立津 璃久
【テーマコード(参考)】
5J106
【Fターム(参考)】
5J106AA05
5J106CC01
5J106CC21
5J106CC31
5J106DD09
5J106FF08
5J106GG01
5J106KK03
(57)【要約】
【課題】クロック信号の周波数におけるオーバーシュートの発生を低減できる周波数同期回路を提供する。
【解決手段】周波数同期回路は、基準クロック信号、逓倍数信号、及び周波数同期ループのための帰還信号を受けて発振周波数を規定する出力信号を提供するデジタル回路と、出力信号に応じた周波数を有するクロック信号を生成すると共にクロック信号を帰還入力及び出力に提供するように構成されたデジタル制御発振回路とを備え、デジタル回路は、閉ループ動作又は開ループ動作を行い、デジタル回路は、閉ループ動作では帰還信号、逓倍数信号、及び基準クロック信号に基づき特定されるループ値を出力信号に提供し、開ループ動作ではループ値とは異なる値を出力信号に提供するように構成され、開ループ動作における値は、デジタル制御発振回路が基準周波数及び逓倍数に関連付けられた目標周波数に等しい又はより小さい周波数で発振することを可能にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数同期回路であって、
前記周波数同期回路の基準入力から基準周波数の基準クロック信号を受けるように構成された第1入力と、前記周波数同期回路の逓倍入力から逓倍数を示す逓倍数信号を受けるように構成された第2入力と、帰還信号を受けるように構成された帰還入力と、発振周波数を規定する出力信号を提供するように構成されたループ出力と、を含むデジタル回路であって、前記デジタル回路は、前記周波数同期回路の周波数同期ループが閉じられる閉ループ動作及び前記周波数同期ループが開かれる開ループ動作のいずれか一方を行うように構成される、デジタル回路と、
前記出力信号に応じた周波数を有するクロック信号を生成すると共に前記クロック信号を前記周波数同期回路の出力及び前記帰還入力に提供するように構成された信号出力を有するデジタル制御発振回路と、
を備え、
前記デジタル回路は、前記閉ループ動作において前記帰還信号、前記逓倍数信号、及び前記基準クロック信号に基づき特定されるループ値を前記出力信号に提供すると共に、前記開ループ動作において前記ループ値とは異なる値を前記出力信号に提供するように構成され、
前記開ループ動作における前記値は、前記デジタル制御発振回路が前記基準周波数及び前記逓倍数に関連付けられた目標周波数に等しい又はより小さい周波数で発振することを可能にする、
周波数同期回路。
【請求項2】
前記デジタル回路は、
前記デジタル制御発振回路からの前記クロック信号及び前記基準クロック信号を受けて、前記基準クロック信号の波形変化エッジのうち第1エッジと第2エッジとの間において前記クロック信号の波形変化エッジの数をカウントすると共にカウント数を示すデジタル信号を生成する、ように構成されたTDC回路と、
前記逓倍数信号及び前記デジタル信号を処理して前記ループ値を生成すると共に前記ループ値に基づき前記閉ループ動作又は前記開ループ動作を選択するように構成された信号処理回路と、
変更可能なフィルタ係数を用いて前記信号処理回路からの信号を処理するように構成されたデジタルフィルタ回路と、を含む、
請求項1に記載された周波数同期回路。
【請求項3】
前記信号処理回路は、
前記逓倍数信号と前記デジタル信号との差分に係る差信号を生成するように構成された第1演算回路と、
前記差信号の値に基づき前記閉ループ動作及び前記開ループ動作のいずれで前記周波数同期回路を動作させるかを判定するように構成された判定回路と、
前記判定回路の判定結果に応答して前記閉ループ動作において前記ループ値及び前記開ループ動作において前記開ループ動作における前記値を前記出力信号に提供するように構成された切替回路と、
を備える、
請求項2に記載された周波数同期回路。
【請求項4】
前記デジタル回路は、前記目標周波数に関連付けられた基準値を受けるように構成された第3入力を有し、
前記判定回路は、前記ループ値を前記基準値と比較して、前記基準値と前記ループ値との比較の結果が前記デジタル制御発振回路の発振周波数におけるオーバーシュートの発生を示すか否かの判定信号を前記判定結果として生成する、
請求項3に記載された周波数同期回路。
【請求項5】
前記デジタル回路は、前記開ループ動作における前記値を演算する際に用いる規定値を受ける第3入力を有し、
前記デジタル回路は、
前記判定回路の前記判定結果に応答して、前記閉ループ動作においてゼロ値を提供すると共に前記開ループ動作において前記規定値を提供するように構成されたセレクタ回路と、
前記セレクタ回路からの前記ゼロ値又は前記規定値、及び前記ループ値を演算して、前記出力信号を生成するように構成された第2演算回路と、
を含む、
請求項4に記載された周波数同期回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数同期回路に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電圧制御発振器を備える位相同期ループ回路を開示する。この位相同期ループ回路では、発振開始直後の周波数を安定させるために、電圧制御発振回路に初期値を与える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-326967号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
周波数同期回路は、逓倍数を示す信号及び基準クロック信号から、逓倍された周波数のクロック信号を生成する。クロック信号は、デジタル制御発振回路によって生成される。デジタル制御発振回路は、デジタルフィルタ回路からのフィルタ出力値によって制御される。周波数同期回路は、基準クロック信号とクロック信号との位相差ではなく、基準クロック信号とクロック信号との周波数差からのフィードバックに基づき、デジタル制御発振回路によりクロック信号を生成する。周波数同期回路のロックアップ過程において、クロック信号の周波数にオーバーシュートが生じ得る。
【0005】
本発明は、クロック信号の周波数におけるオーバーシュートの発生を低減できる周波数同期回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1形態に係る周波数同期回路は、前記周波数同期回路の基準入力から基準周波数の基準クロック信号を受けるように構成された第1入力と、前記周波数同期回路の逓倍入力から逓倍数を示す逓倍数信号を受けるように構成された第2入力と、帰還信号を受けるように構成された帰還入力と、発振周波数を規定する出力信号を提供するように構成されたループ出力と、を含むデジタル回路であって、前記デジタル回路は、前記周波数同期回路の周波数同期ループが閉じられる閉ループ動作及び前記周波数同期ループが開かれる開ループ動作のいずれか一方を行うように構成される、デジタル回路と、前記出力信号に応じた周波数を有するクロック信号を生成すると共に前記クロック信号を前記周波数同期回路の出力及び前記帰還入力に提供するように構成された信号出力を有するデジタル制御発振回路と、を備え、前記デジタル回路は、前記閉ループ動作において前記帰還信号、前記逓倍数信号、及び前記基準クロック信号に基づき特定されるループ値を前記出力信号に提供すると共に、前記開ループ動作において前記ループ値とは異なる値を前記出力信号に提供するように構成され、前記開ループ動作における前記値は、前記デジタル制御発振回路が前記基準周波数及び前記逓倍数に関連付けられた目標周波数に等しい又はより小さい周波数で発振することを可能にする。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明によれば、クロック信号の周波数におけるオーバーシュートの発生を低減できる周波数同期回路が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施の形態に係る周波数同期回路の構成を示す図面である。
図2図2は、閉ループ動作のみを行う周波数同期回路の構成を示す図面である。
図3図3は、図1に示された周波数同期回路のロックアップ過程を示すグラフである。
図4図4は、図2に示された周波数同期回路のロックアップ過程を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の上記の目的および他の目的、特徴、並びに利点は、添付図面を参照して進められる本発明の実施の形態の以下の詳細な記述から、より容易に明らかになる。また、本発明の知見は、例示として示された添付図面を参照して以下の詳細な記述を考慮することによって容易に理解できる。引き続いて、添付図面を参照しながら、本発明の周波数同期回路に係る実施の形態を説明する。可能な場合には、同一の部分には同一の符号を付する。
【0010】
図1は、本実施の形態に係る周波数同期回路の構成を示す図面である。周波数同期回路11は、基準入力13と、逓倍入力15と、出力17と、デジタル回路19と、デジタル制御発振回路21と、を備える。
【0011】
デジタル回路19は、周波数同期回路11の周波数同期ループが閉じられる閉ループ動作及び周波数同期ループが開かれる開ループ動作のいずれか一方を行うように構成される。デジタル回路19は、第1入力19a、第2入力19b、帰還入力19c、及びループ出力19dを含む。デジタル回路19では、第1入力19aは、基準入力13からの基準周波数の基準クロック信号CKrefを受けるように構成される。第2入力19bは、逓倍入力15からの逓倍数を示す逓倍数信号Fsetを受けるように構成される。帰還入力19cは、クロック信号DCOoutを周波数同期ループのための帰還信号CKfbとして受けるように構成される。ループ出力19dは、発振周波数を規定する出力信号DGoutを提供する。
【0012】
デジタル制御発振回路21は、信号入力21a及び信号出力21bを有する。デジタル制御発振回路21は、信号入力21aに受けた出力信号DGoutに応じた周波数を有するクロック信号DCOoutを生成すると共に信号出力21bからクロック信号DCOoutを帰還入力19c及び出力17に提供する、ように構成される。デジタル制御発振回路21は、例えばアナログ発振器を含むことができる。
【0013】
デジタル回路19は、閉ループ動作においてデジタル制御発振回路21の信号出力21bからの帰還信号CKfb(クロック信号DCOout)、逓倍数信号Fset、及び基準クロック信号CKrefに基づき特定されるループ値Vloopを出力信号DGoutに提供すると共に、開ループ動作においてループ値Vloopとは異なる値Vopenを出力信号DGoutに提供するように構成される。
【0014】
開ループ動作における値Vopenは、デジタル制御発振回路21が基準クロック信号CKref及び逓倍数信号Fsetの逓倍数に関連付けられた目標周波数Ftagt(図2)に等しい又はより小さい周波数で発振することを可能にする。
【0015】
周波数同期回路11によれば、閉ループ動作において、デジタル回路19は、帰還信号CKfb、逓倍数信号Fset、及び基準クロック信号CKrefに基づきループ値Vloopを更新している。デジタル回路19は、更新されたループ値Vloop(更新値)の信号をデジタル制御発振回路21に提供する。
【0016】
デジタル回路19は、開ループ動作において、ループ値Vloopとは異なる値Vopenの信号をデジタル制御発振回路21に提供する。この信号の値Vopenは、デジタル回路19において設定される。具体的には、値Vopenは、出力信号DGoutの値に対応する想定発振周波数が、基準クロック信号CKrefの基準周波数及び逓倍数信号Fsetの逓倍数の積に関連付けられた目標周波数Ftagtの値より低くなる、ように設定される。これ故に、帰還信号CKfb、逓倍数信号Fset、及び基準クロック信号CKrefに基づく更新値と異なる値Vopenによって、ロックアップ過程で生じる可能性のある発振周波数のオーバーシュートが、当該サイクルにおいて回避される。
【0017】
図1を参照すると、デジタル回路19は、TDC(Time-to-Digital Converter)回路23、信号処理回路25、及びデジタルフィルタ回路27を含む。
【0018】
TDC回路23は、デジタル制御発振回路21からのクロック信号DCOoutを帰還信号CKfbとして第1入力23aに受けると共に、基準クロック信号CKrefを第2入力23bに受ける。TDC回路23は、基準クロック信号CKrefの波形変化エッジのうち第1エッジと第2エッジとの間において帰還信号CKfbの波形変化エッジの数をカウントすると共にカウント数を示すデジタル信号TDCoutを生成するように構成される。基準クロック信号CKrefの波形変化エッジは、基準クロック信号CKrefのライジングエッジ又はフォーリングエッジのいずれか一方であることができ第1エッジ及び第2エッジは、隣り合うライジングエッジ、又は隣り合うフォーリングエッジであることができる。また、帰還信号CKfb(クロック信号DCOout)の波形変化エッジは、帰還信号CKfb(クロック信号DCOout)のライジングエッジ又はフォーリングエッジのいずれかであることができる。デジタル信号TDCoutは、基準クロック信号CKrefに同期して更新される。
【0019】
信号処理回路25は、逓倍数信号Fset及びデジタル信号TDCoutを処理してループ値Vloopを生成するように構成されると共に、ループ値Vloopに基づき閉ループ動作又は開ループ動作を選択するように構成される。
【0020】
デジタルフィルタ回路27は、変更可能なフィルタ係数COEFfを用いて信号処理回路25からの出力信号DGout(ループ値Vloop又は値Vopen)を処理するように構成される。フィルタ係数COEFfは、フィルタ入力19hに与えられる。
【0021】
この周波数同期回路11によれば、デジタル回路19はフルデジタル構成である。また、デジタル制御発振回路21の発振周波数は、デジタル回路19からのデジタル値を有する信号DFLoutによって制御される。デジタルフィルタ回路27は、信号処理回路25から、閉ループ動作においてループ値Vloopを受けると共に、開ループ動作において値Vopenを開ループ動作における値として受ける。
【0022】
信号処理回路25は、第1演算回路31、判定回路33、及び切替回路35を備える。第1演算回路31は、逓倍数信号Fsetとデジタル信号TDCoutとの差分に係る差信号SGoutを生成するように構成される。判定回路33は、差信号SGoutの値に基づき閉ループ動作及び開ループ動作のいずれで周波数同期回路11を動作させるかを判定するように構成される。切替回路35は、判定回路33の判定結果(SDout)に応答して閉ループ動作においてループ値Vloop及び開ループ動作において値Vopenを出力信号DGoutに提供するように構成される。判定回路33及び切替回路35は、第1演算回路31とデジタルフィルタ回路27との間に設けられる。具体的には、判定回路33は、第1演算回路31の出力に接続され、また切替回路35は、判定回路33の出力に接続されると共に、判定結果に応じてループ値Vloop及び値Vopenを出力信号DGoutに提供する。判定回路33は、デジタル演算によって2つのデジタル値を比較する。切替回路35は、例えば判定結果に応じて切り替えるセレクタを含む。
【0023】
周波数同期回路11によれば、切替回路35は、第1演算回路31とデジタルフィルタ回路27との間において、閉ループ動作及び開ループ動作のいずれかの切り替えを行う。
【0024】
デジタル回路19は、第3入力19eを有し、第3入力19eは、目標周波数Ftagtに関連付けられた基準値Vrefの信号を受けるように構成される。このように、本実施例では、基準値Vrefの信号が、デジタル回路19の外部から提供されるが、デジタル回路19(例えば、判定回路33)内に格納されていてもよい。
【0025】
判定回路33は、ループ値Vloopを基準値Vrefと比較して、基準値Vrefとループ値Vloopとの比較結果がデジタル制御発振回路21の発振周波数におけるオーバーシュートの発生を示すか否かの判定信号SDoutを判定結果として生成する。
【0026】
デジタル回路19は、帰還信号CKfb(クロック信号DCOout)、逓倍数信号Fset、及び基準クロック信号CKrefに基づき、基準クロック信号CKrefの波形変化エッジのうち第1エッジと第2エッジとの間の期間(例えば、基準クロック信号CKrefの一周期)においてクロック信号DCOout(CKfb)の波形変化エッジ(ライジングエッジ又はフォーリングエッジ)の数をカウントして、基準クロック信号CKrefの周期毎に、更新されたカウント数を示すデジタル信号TDCout(更新値)を生成する。
【0027】
周波数同期回路11は、発振周波数のオーバーシュートが生じうる場合、換言すれば、判定回路33の比較結果がデジタル制御発振回路21の発振周波数におけるオーバーシュートの発生を示す場合には、周波数同期ループからのループ値Vloopを開ループ動作における値Vopenに置き換えるように動作する。これ故に、ロックアップ過程でのデジタル制御発振回路21における周波数同期ループからのループ値Vloopに起因した発振周波数のオーバーシュートの発生が低減される
【0028】
デジタル回路19は、第4入力19fを有し、第4入力19fは、開ループ動作における値Vopenを演算する際に用いる規定値Vsetを受けるように構成される。
【0029】
デジタル回路19は、セレクタ回路37、及び第2演算回路39を含むことができる。セレクタ回路37は、判定回路33の判定結果(SDout)に応答して、閉ループ動作においてゼロ値Vzeroを提供すると共に開ループ動作においては規定値Vsetを通過させるように構成される。第2演算回路39は、セレクタ回路37からの通過信号(ゼロ値Vzero又は規定値Vset)及びループ値Vloopを演算する。
【0030】
周波数同期回路11によれば、ロックアップ過程における適切な規定値Vsetが、第4入力19fを介して提供されることができる。値Vzeroは、ゼロ値を有する。
【0031】
切替回路35は、以下のように動作する。
閉ループ動作:Vloop=SGout-Vzero(Vzero=0)
開ループ動作:Vopen=SGout-Vset(例えばVset=100
この例によれば、第2演算回路39は、演算により、セレクタ回路37からの通過信号(ゼロ値Vzero又は規定値Vset)とループ値Vloopとの差信号を生成する。判定回路33及び切替回路35(セレクタ回路37及び第2演算回路39)は、例えば帰還信号CKfbに同期して動作する。
【0032】
この結果、開ループ動作では、デジタル制御発振回路21は、目標周波数Ftagtよりも低く設定された周波数において発振するように制御される。閉ループ動作では、デジタル制御発振回路21は、周波数同期ループの更新値に従って動作する。
【0033】
第1演算回路31及びデジタルフィルタ回路27は、デジタル制御発振回路21からのクロック信号DCOout(CKfb)を受け、このクロック信号を用いて動作する。
【0034】
デジタル回路19は、出力19gを有し、出力19gは、第1演算回路31の演算結果(値)を周波数同期回路11から出力することを可能にする。第1演算回路31の値に基づき基準値Vrefを特定することができる。例えば、周波数同期回路11の発振周波数が安定になった後に、第1演算回路31の値が、周波数同期回路11の安定発振周波を示す。
【0035】
また、基準値Vrefは、判定回路33の比較結果に応答してセレクタ回路37が常にゼロ値Vzeroを提供するように設定されることができる。この設定において、周波数同期回路11を起動すると、そのロックアップ過程に生じうるオーバーシュートが観察される。この観察の結果に基づき、規定値Vsetを特定するようにできる。
【0036】
周波数同期回路11では、TDC回路23は、周波数同期回路11の外部からのオリジナル基準クロック信号の1/2分周する分周器41aを介して基準クロック信号CKrefを受けることができ、これにより、基準クロック信号CKrefのデューティが揃う。また、周波数同期回路11では、デジタル制御発振回路21のクロック信号DCOoutは、1/2分周する分周器41bを介して出力17に提供されることができる。
【0037】
図2は、閉ループ動作のみを行う周波数同期回路の構成を示す図面である。図2を参照すると、周波数同期回路10が示されている。周波数同期回路10において、周波数同期回路11と同一又は類似の部分には同一又は類似の参照符号を付して、繰り返しの説明を省略する。図3は、図1に示された周波数同期回路のロックアップ過程を示すグラフである。図4は、図2に示された周波数同期回路のロックアップ過程を示すグラフである。図3及び図4では、横軸は、基準クロック信号CKrefに基づくサイクルであり、縦軸は、デジタル制御発振回路21の発振周波数を示す。
【0038】
図1の周波数同期回路11の主要な回路における動作を説明する。一例では、基準クロック信号CKrefは、例えば32.768kHzであり、クロック信号DCOoutは、例えば32MHzであることができる。
【0039】
既に説明したように、TDC回路23は、基準クロック信号CKrefの一周期内においてクロック信号DCOout(又はCKfb)のクロック数をカウントして、デジタル信号TDCoutを生成する。第1演算回路31は、逓倍数信号Fsetとデジタル信号TDCoutとの差分Fdeltを生成する。具体的には、
Fset-TDCout→Fdelt
差信号の値Fdeltは、ロックアップ過程において徐々にゼロに近づいていく。
【0040】
図2の周波数同期回路10では、値Fdeltの差信号は、デジタルフィルタ回路27に提供される。デジタルフィルタ回路27は、前回の値Fdelt(n-1)に今回の値Fdelt(n)を順次に溜め込むように、以下のように動作する。具体的には、
Fdelt(n-1)+Fdelt(n)→Fdelt_pre
デジタルフィルタ回路27は、常に前回の値Fdelt(n-1)を格納している。
【0041】
デジタルフィルタ回路27は、溜めた結果値Fdelt_preをフィルタ係数COEFfと演算する。
Fdelt_pre/COEFf→DFLout
この例によれば、デジタルフィルタ回路27の演算は除算であることができる。
信号DFLoutの値は、除算の商であり、剰余は用いない。デジタルフィルタ回路27は、帰還信号CKfbに同期して動作する。
【0042】
図3を参照すると、このようなロックアップ過程におけるサイクル毎のデジタル制御発振回路21の発振周波数を示す。2周期目にオーバーシュートが生じている。
【0043】
周波数同期回路10及び周波数同期回路11の起動時には、TDC回路23のカウント数を示すデジタル信号TDCoutと、逓倍数を示す逓倍数信号Fsetとの差が大きい。周波数同期回路10では、大きな差信号に基づきデジタルフィルタ回路27は、デジタル制御発振回路21に高めの発振を引き起こすような信号DFLoutを与える。一方、周波数同期回路11では、判定回路33が、切替回路35が周波数同期回路11を開ループ動作に切り替える判定を行う一方で、大きな差信号がデジタルフィルタ回路27に与えられることを妨げる。
【0044】
図3を参照すると、周波数同期回路11は、起動後に閉ループ動作(Vloop=Vloop-Vzero(Vzero=0))下でロックアップを行う。このロックアップ過程における周波数同期ループの更新値に基づき発振周波数が目標周波数を超えると判定回路33が判定すると、そのサイクルでは切替回路35が開ループ動作(Vopen=Vloop-Vset)に切り替える。次のサイクルでは、判定回路33が、差信号SGoutを再び判定する。
【0045】
以上説明したように、本実施の形態によれば、クロック信号の周波数におけるオーバーシュートの発生を低減できる周波数同期回路11が提供される。
【0046】
好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【符号の説明】
【0047】
10、11・・・周波数同期回路
13・・・基準入力
15・・・逓倍入力
17・・・出力
19・・・デジタル回路
19a・・・第1入力
19b・・・第2入力
19c・・・帰還入力
19d・・・ループ出力
19e・・・第3入力
19f・・・第4入力
19g・・・出力
19h・・・フィルタ入力
21・・・デジタル制御発振回路
21a・・・信号入力
21b・・・信号出力
23・・・TDC回路
25・・・信号処理回路
27・・・デジタルフィルタ回路
31・・・第1演算回路
33・・・判定回路
35・・・切替回路
37・・・セレクタ回路
39・・・第2演算回路
CKfb・・・帰還信号
CKref・・・基準クロック信号
COEFf・・・フィルタ係数
DCOout・・・クロック信号
DGout・・・出力信号
Fset・・・逓倍数信号
Ftagt・・・目標周波数
SDout・・・判定信号
SGout・・・差信号
TDCout・・・デジタル信号
Vref・・・基準値
Vset・・・規定値
Vzero・・・ゼロ値
図1
図2
図3
図4