(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164113
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 50/451 20210101AFI20231102BHJP
H01M 50/423 20210101ALI20231102BHJP
H01M 50/443 20210101ALI20231102BHJP
H01M 50/434 20210101ALI20231102BHJP
H01M 50/446 20210101ALI20231102BHJP
H01M 50/42 20210101ALI20231102BHJP
H01M 50/489 20210101ALI20231102BHJP
H01M 50/457 20210101ALI20231102BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20231102BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H01M50/451
H01M50/423
H01M50/443 M
H01M50/434
H01M50/446
H01M50/42
H01M50/443 B
H01M50/443 E
H01M50/489
H01M50/457
B32B5/18
B32B27/30 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075457
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 真人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恵美
(72)【発明者】
【氏名】西川 聡
【テーマコード(参考)】
4F100
5H021
【Fターム(参考)】
4F100AA07A
4F100AK01A
4F100AK04C
4F100AK12B
4F100AK19B
4F100AK25B
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4F100AK50A
4F100BA02
4F100BA03
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4F100DJ00A
4F100DJ00C
4F100GB41
4F100JJ03A
4F100JL11B
4F100YY00A
4F100YY00B
5H021CC03
5H021CC04
5H021EE06
5H021EE07
5H021EE15
5H021EE21
5H021EE23
5H021HH00
5H021HH03
5H021HH05
(57)【要約】
【課題】ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても電極との接着性に優れ、ガス発生が抑制される非水系二次電池用セパレータを提供する。
【解決手段】非水系二次電池用セパレータは、芳香族系樹脂及び無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と、前記耐熱性多孔質層上に設けられ、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子を含有し、前記フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子が前記耐熱性多孔質層に付着してなる接着層と、を備え、前記無機粒子が、硫酸バリウム粒子を含むものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族系樹脂及び無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と、
前記耐熱性多孔質層上に設けられ、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子を含有し、前記フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子が前記耐熱性多孔質層に付着してなる接着層と、を備え、
前記無機粒子が、硫酸バリウム粒子を含む、非水系二次電池用セパレータ。
【請求項2】
前記フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子が、(i)アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含む共重合体である樹脂粒子、及び、(ii)アクリル系樹脂及びスチレン系樹脂を含む混合体である樹脂粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項3】
前記フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子の、前記耐熱性多孔質層への付着量が、0.1g/m2~5.0g/m2である、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項4】
前記接着層のフーリエ変換赤外分光法による、フェニル基のピーク面積S1が0.01~3であり、カルボニル基のピーク面積S2が4以下である、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項5】
前記芳香族系樹脂が、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項6】
前記無機粒子の平均一次粒径が、0.01μm以上1μm以下である、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項7】
多孔質基材を更に備え、前記耐熱性多孔質層が前記多孔質基材の片面又は両面に設けられている、請求項1に記載の非水系二次電池用セパレータ。
【請求項8】
正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非水系二次電池用セパレータ及び非水系二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池は、ノートパソコン、携帯電話、デジタルカメラ、カムコーダ等の携帯型電子機器の電源として広く用いられている。また、リチウムイオン二次電池に代表される非水系二次電池は、エネルギー密度が高いという特徴から、電力貯蔵用や電動車両用の電池としての適用が検討されている。
【0003】
非水系二次電池の普及に伴い、安全性と安定した電池特性とを確保することがますます求められている。安全性と安定した電池特性を確保するための具体的方策としては、電極とセパレータとの接着性を高めることが挙げられる。
【0004】
電極との接着性を高めたセパレータとして、電極に対する接着性を有する樹脂を含有する接着層を備えたセパレータが知られている。例えば、特許文献1及び2に開示されているセパレータは、耐熱性多孔質層と接着層とを両方備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2019/130994号
【特許文献2】国際公開第2020/246497号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電極に対して接着性を示す接着層を有するセパレータを用いた電池の製造方法には、正極と負極との間にセパレータを配置した積層体を、セパレータに電解液を含浸させずに熱プレス(以下、「ドライヒートプレス」ともいう。)する方法と、正極と負極との間にセパレータを配置した積層体を外装材に収容し、セパレータに電解液を含浸させた状態で熱プレス(以下、「ウェットヒートプレス」ともいう。)する方法と、がある。
【0007】
ドライヒートプレスによって電極とセパレータとが良好に接着すると、電池の製造工程において電極とセパレータとが位置ずれし難くなり、電池の製造歩留りを向上させることが可能となる。しかし、ドライヒートプレスによって電極とセパレータとを接着させていても、電解液を含浸させた際に電極とセパレータとが剥離する場合がある。電極とセパレータとが剥離すると、外部からの衝撃、充放電に伴う電極の膨張及び収縮等によって短絡が発生する場合がある。このため、ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても、電池とセパレータとを良好に接着できる技術の開発が期待される。
さらに、非水系二次電池への充放電を繰り返すと、電池内で電解液又は電解質の分解によりガスが発生し、非水系二次電池の正極-負極間の距離にばらつきが生じて充放電反応の均一性が失われることがある。また、ガス発生により非水系二次電池に膨らみや変形が生じると、短絡が発生する場合がある。したがって、非水系二次電池の性能を安定させるためには、電池内のガス発生の抑制が重要である。
【0008】
本開示は、上記のような状況に鑑みてなされたものである。
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても電極との接着性に優れ、ガス発生が抑制される非水系二次電池用セパレータを提供することにある。
本開示の他の実施形態が解決しようとする課題は、上記非水系二次電池用セパレータを備えた非水系二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
課題を解決するための具体的手段には、以下の態様が含まれる。
<1> 芳香族系樹脂及び無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と、
前記耐熱性多孔質層上に設けられ、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子を含有し、前記フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子が前記耐熱性多孔質層に付着してなる接着層と、を備え、
前記無機粒子が、硫酸バリウム粒子を含む、非水系二次電池用セパレータ。
<2> 前記フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子が、(i)アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含む共重合体である樹脂粒子、及び、(ii)アクリル系樹脂及びスチレン系樹脂を含む混合体である樹脂粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種である、<1>に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<3> 前記フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子の、前記耐熱性多孔質層への付着量が、0.1g/m2~5.0g/m2である、<1>又は<2>に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<4> 前記接着層のフーリエ変換赤外分光法による、フェニル基のピーク面積S1が0.01~3であり、カルボニル基のピーク面積S2が4以下である、<1>~<3>のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<5> 前記芳香族系樹脂が、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、<1>~<4>のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<6> 前記無機粒子の平均一次粒径が、0.01μm以上1μm以下である、<1>~<5>のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<7> 多孔質基材を更に備え、前記耐熱性多孔質層が前記多孔質基材の片面又は両面に設けられている、<1>~<6>のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータ。
<8> 正極と、負極と、前記正極及び前記負極の間に配置された<1>~<7>のいずれか1項に記載の非水系二次電池用セパレータと、を備え、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一実施形態によれば、ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても電極との接着性に優れ、ガス発生が抑制される非水系二次電池用セパレータが提供される。
本開示の他の実施形態によれば、上記非水系二次電池用セパレータを備えた非水系二次電池が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本開示の実施形態について説明する。これらの説明及び実施例は実施形態を例示するものであり、実施形態の範囲を制限するものではない。
【0012】
本開示において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。
本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0013】
本開示において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0014】
本開示において組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
【0015】
本開示において、2つ以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0016】
本開示において「固形分」との語は、溶媒を除く成分を意味し、溶剤以外の低分子量成分等の液状の成分も本開示における「固形分」に含まれる。
本開示において「溶媒」との語は、水、有機溶剤、及び水と有機溶剤との混合溶媒を包含する意味で用いられる。
【0017】
本開示において、「MD(machine direction)」とは、長尺状に製造される多孔質基材及びセパレータにおいて長尺方向を意味し、「TD(transverse direction)」とは、多孔質基材及びセパレータの面方向においてMDに直交する方向を意味する。本開示では、「TD」を「幅方向」ともいう。
【0018】
本開示において「耐熱性樹脂」とは、融点が200℃以上の樹脂、又は、融点を有さず分解温度が200℃以上の樹脂を指す。つまり、本開示における耐熱性樹脂とは、200℃未満の温度領域おいて、溶融及び分解を起こさない樹脂である。
【0019】
本開示において「(メタ)アクリル」との表記は、「アクリル」又は「メタクリル」を意味する。
【0020】
本開示において、共重合体又は樹脂の「単量体単位」とは、共重合体又は樹脂の構成単位であって、単量体が重合してなる構成単位を意味する。
【0021】
本開示では、「ドライヒートプレスにより接着した場合の接着強度」を「ドライ接着強度」ともいい、「ウェットヒートプレスにより接着した場合の接着強度」を「ウェット接着強度」ともいう。
【0022】
本開示では、「ドライヒートプレスにより接着する機能」を「ドライ接着性」ともいい、「ウェットヒートプレスにより接着する機能」を「ウェット接着性」ともいう。
【0023】
[非水系二次電池用セパレータ]
本開示の非水系二次電池用セパレータ(以下、単に「セパレータ」ともいう。)は、芳香族系樹脂及び無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と、上記耐熱性多孔質層上に設けられ、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子を含有し、上記フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子が上記耐熱性多孔質層に付着してなる接着層と、を備え、上記無機粒子が、硫酸バリウム粒子を含むセパレータである。
本開示のセパレータは、上記のような構成を有することにより、ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても電極との接着性に優れ、ガス発生が抑制される。
【0024】
本開示のセパレータがこのような効果を奏し得る理由については明らかでないが、本発明者らは以下のように推測している。但し、以下の推測は、本開示のセパレータを限定的に解釈するものではなく、一例として説明するものである。
【0025】
本開示のセパレータは、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子を含有する接着層が、芳香族系樹脂及び無機粒子を含有する耐熱性多孔質層上に設けられており、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子が耐熱性多孔質層に付着している。耐熱性多孔質層に付着している接着性樹脂粒子に含まれるアクリル系樹脂は、ドライ状態において、耐熱性多孔質層に含まれる芳香族系樹脂が有する芳香環及び電極との親和性が高く、また、接着性樹脂粒子に含まれるアクリル系樹脂が有するフェニル基は、電解液存在下(所謂、ウェット状態)において、耐熱性多孔質層に含まれる芳香族系樹脂が有する芳香環及び電極との親和性が高い。これらの結果として、本開示のセパレータは、ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても電極との接着性に優れると推測される。
さらに、硫酸バリウム粒子は、水酸化マグネシウム粒子又はアルミナ粒子に比べて、電解液又は電解質の分解を起こしにくく、したがって、ガス発生を起しにくい。それ故、硫酸バリウム粒子を耐熱性多孔質層の無機フィラーとして用いることにより、サイクル特性の劣化を起こしにくく、電池の膨らみや変形を起しにくいセパレータが得られる。
【0026】
〔耐熱性多孔質層〕
本開示における耐熱性多孔質層は、芳香族系樹脂及び無機粒子を含有する。
耐熱性多孔質層は、多数の微細孔を有し、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能となった被膜である。
【0027】
本開示において「芳香族系樹脂」とは、主鎖又は側鎖に芳香環を有する樹脂を意味する。芳香環としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられ、これらの中でも、ベンゼン環が好ましい。
芳香族系樹脂は、耐熱性に優れる観点から、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド及びポリイミドからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0028】
芳香族系樹脂の中でも、全芳香族ポリアミドは、耐久性の観点から、耐熱性多孔質層に好適である。全芳香族ポリアミドとは、主鎖がベンゼン環及びアミド結合のみから構成されているポリアミドを意味する。但し、全芳香族ポリアミドには、少量の脂肪族単量体が共重合されていてもよい。全芳香族ポリアミドは、「アラミド」とも呼ばれる。
【0029】
全芳香族ポリアミドは、メタ型でもパラ型でもよい。
メタ型全芳香族ポリアミドとしては、ポリメタフェニレンイソフタルアミド等が挙げられる。パラ型全芳香族ポリアミドとしては、コポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミド、ポリパラフェニレンテレフタラミド等が挙げられる。
全芳香族ポリアミドとしては、耐熱性多孔質層を形成しやすい観点及び電極反応において耐酸化還元性に優れる観点から、メタ型全芳香族ポリアミドが好ましい。
全芳香族ポリアミドは、具体的には、ポリメタフェニレンイソフタルアミド又はコポリパラフェニレン・3,4’オキシジフェニレン・テレフタラミドであることが好ましく、ポリメタフェニレンイソフタルアミドであることがより好ましい。
【0030】
芳香族系樹脂の中でも、ポリアミドイミド及びポリイミドは、いずれも耐熱性の観点から、耐熱性多孔質層に好適である。
【0031】
耐熱性多孔質層に含まれる芳香族系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1×103~1×107であることが好ましく、5×103~5×106であることがより好ましく、1×104~1×106であることが更に好ましい。
【0032】
耐熱性多孔質層に含まれる芳香族系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される値である。具体的には、以下の方法により測定する。ジメチルホルムアミド(DMF)に塩化リチウムを0.01モル/L(リットル;以下、同じ。)の濃度になるように溶解させた溶液に、ポリマーを1質量%濃度になるように溶解し、試料溶液を調製する。調製した試料溶液を測定サンプルとしてGPC測定を実施し、分子量分布を算出する。測定には、(株)島津製作所製のクロマトグラフ用データ処理装置「島津クロマトパックC-R4A」、及び昭和電工(株)製のGPCカラム「GPC・KD-802」を用い、検出波長280nmで測定した。リファレンスには、ポリスチレン分子量標準物質を用いた。なお、多孔質基材を含む試料を測定する場合には、塩化リチウムを0.01モル/Lの濃度になるように溶解させたDMFを加えて、80℃で芳香族系樹脂のみを加熱溶解させたものを測定サンプルとした。
【0033】
芳香族系樹脂は、上市されている市販品を用いてもよい。
全芳香族ポリアミドの市販品の例としては、帝人(株)製のコーネックス(登録商標;メタ型)、テクノーラ(登録商標;パラ型)、トワロン(登録商標;パラ型)等が挙げられる。ポリアミドイミドの市販品の例としては、Solvay社製のTorlon(登録商標) 4000TF等が挙げられる。ポリイミドの市販品の例としては、(株)ピーアイ技術研究所製のQ-VR-X1444等が挙げられる。
【0034】
耐熱性多孔質層は、芳香族系樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0035】
耐熱性多孔質層に占める芳香族系樹脂の体積割合は、耐熱性多孔質層の全体積に対して、15体積%~85体積%であることが好ましく、20体積%~80体積%であることがより好ましく、25体積%~75体積%であることが更に好ましい。
なお、耐熱性多孔質層に占める芳香族系樹脂の体積割合Vb(体積%)は、下記の式により求める。
Vb={(Xb/Db)/(Xa/Da+Xb/Db+Xc/Dc+…+Xn/Dn)}×100
ここに、耐熱性多孔質層の構成材料のうち、芳香族系樹脂がbであり、その他の構成材料がa、c、…、nであり、所定面積の耐熱性多孔質層に含まれる各構成材料の質量がXa、Xb、Xc、…、Xn(g)であり、各構成材料の真密度がDa、Db、Dc、…、Dn(g/cm3)である。
上記の式に代入するXa等は、所定面積の耐熱性多孔質層の形成に使用する構成材料の質量(g)、又は、所定面積の耐熱性多孔質層から取り出した構成材料の質量(g)である。
上記の式に代入するDa等は、耐熱性多孔質層の形成に使用する構成材料の真密度(g/cm3)、又は、耐熱性多孔質層から取り出した構成材料の真密度(g/cm3)である。
【0036】
耐熱性多孔質層に占める芳香族系樹脂の体積割合は、耐熱性多孔質層に含まれる全樹脂の総体積に対して、50体積%以上であることが好ましく、70体積%以上であることがより好ましく、90体積%以上であることが更に好ましい。上記体積割合は、50体積%~100体積%とすることができる。
【0037】
耐熱性多孔質層は、芳香族系樹脂以外の耐熱性樹脂を含有していてもよい。
芳香族系樹脂以外の耐熱性樹脂としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド、セルロース、ポリフッ化ビニリデン系樹脂等が挙げられる。
【0038】
耐熱性多孔質層は、芳香族系樹脂以外の耐熱性樹脂を含む場合、芳香族系樹脂以外の耐熱性樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0039】
耐熱性多孔質層に占める芳香族系樹脂以外の耐熱性樹脂の体積割合は、芳香族系樹脂の効果を維持するため、耐熱性多孔質層に含まれる全樹脂の総体積に対して、0体積%~50体積%であることが好ましく、0体積%~30体積%であることがより好ましく、1体積%~10体積%であることが更に好ましい。
【0040】
耐熱性多孔質層は、耐熱性の観点から、無機粒子を含有する。無機粒子は、硫酸バリウム粒子を含む。耐熱性多孔質層に含まれる無機粒子全体に占める硫酸バリウム粒子の割合は、50体積%以上が好ましく、70体積%以上がより好ましく、90体積%以上がさらに好ましく、99体積%以上が特に好ましい。
また、無機粒子が上記範囲で硫酸バリウムを含むことにより、電池内でガスが発生した際の破損のおそれを抑えることができ、かつ、内部短絡のおそれを把握するため、電極とセパレータとの位置ずれをX線照射による簡易な方法で検知しやすくなる。
無機粒子は、例えば、芳香族系樹脂によって結着され、かつ、覆われた状態で、耐熱性多孔質層に含まれる。
【0041】
耐熱性多孔質層が硫酸バリウム以外のその他の無機粒子を含有する場合、その他の無機粒子は、金属水酸化物、金属酸化物、金属窒化物、金属炭酸塩、及び金属硫酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化クロム、水酸化ジルコニウム、水酸化セリウム、水酸化ニッケル、水酸化ホウ素等が挙げられ、水酸化マグネシウムが好ましい。金属酸化物としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、酸化マグネシウム等が挙げられる。金属窒化物としては、窒化ホウ素、窒化アルミニウム等が挙げられる。金属炭酸塩としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。金属硫酸塩としては、硫酸カルシウム等が挙げられる。
無機粒子は、シランカップリング剤等により表面修飾されたものであってもよい。
【0042】
無機粒子の粒子形状は、特に限定されず、例えば、球形、楕円形、板状、針状、又は不定形のいずれであってもよい。耐熱性多孔質層に含まれる無機粒子は、電池の短絡抑制の観点から、板状の粒子であることが好ましい。また、耐熱性多孔質層に含まれる無機粒子は、凝集粒子であっても凝集していない一次粒子であってもよく、電池の短絡抑制の観点から、凝集していない一次粒子であることが好ましい。
【0043】
無機粒子の平均一次粒径は、0.01μm以上1.0μm以下が好ましい。無機粒子の平均一次粒径が0.01μm以上であると、無機粒子同士の凝集が抑制され、より均一性の高い耐熱性多孔質層を形成し得る。このような観点から、無機粒子の平均一次粒径は、0.02μm以上であることが好ましく、0.03μm以上であることがより好ましく、0.05μm以上であることが更に好ましい。また、無機粒子の平均一次粒径が1.0μm以下であると、高温に曝された際の耐熱性多孔質層の収縮がより抑制され、更には耐熱性多孔質層の接着層側の面の平滑性が向上し、結果として接着強度も向上する。このような観点から、無機粒子の体積平均粒径は、0.9μm以下が好ましく、0.8μm以下がより好ましく、0.7μm以下が更に好ましい。
【0044】
耐熱性多孔質層は、平均一次粒径の異なる無機粒子を2種以上含んでいてもよい。平均一次粒径の異なる2種以上の無機粒子の材質は、同一であってもよく、異なっていてもよい。耐熱性多孔質層が平均一次粒径の異なる無機粒子を2種以上含む場合、それぞれの平均一次粒径が上記範囲内であることが好ましく、それぞれの平均一次粒径が上記範囲内であり、かつ、全体(即ち、平均一次粒径の異なる無機粒子の混合粒子)の平均一次粒径が上記範囲内であることが好ましい。
【0045】
無機粒子の平均一次粒径は、以下の方法により測定される値である。
耐熱性多孔質層に含まれる無機粒子の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察において無作為に選んだ無機粒子100個の長径を計測し、100個の長径を平均することで求める。SEM観察に供する試料は、耐熱性多孔質層を形成する材料である無機粒子、又は、セパレータの耐熱性多孔質層から取り出した無機粒子である。セパレータの耐熱性多孔質層から無機粒子を取り出す方法に制限はない。当該方法は、例えば、セパレータから剥がした耐熱性多孔質層を、樹脂を溶解する有機溶剤に浸漬して有機溶剤で樹脂を溶解させ無機粒子を取り出す方法;セパレータから剥がした耐熱性多孔質層を800℃程度に加熱して樹脂を消失させ無機粒子を取り出す方法;などである。
【0046】
耐熱性多孔質層に占める無機粒子の体積割合は、特に限定されないが、例えば、耐熱性多孔質層の全体積に対して、15体積%~85体積%であることが好ましく、20体積%~80体積%であることがより好ましく、25体積%~75体積%であることが更に好ましい。耐熱性多孔質層に占める無機粒子の体積割合が、耐熱性多孔質層の全体積に対して15体積%以上であると、セパレータの耐熱性を好適に高めることができる。また、耐熱性多孔質層に占める無機粒子の体積割合が、耐熱性多孔質層の全体積に対して85体積%以下であると、多孔質基材から耐熱性多孔質層がより剥がれ難くなる。
【0047】
耐熱性多孔質層に占める無機粒子の体積割合Vb(体積%)は、下記の式により求める。
Vb={(Xb/Db)/(Xa/Da+Xb/Db+Xc/Dc+…+Xn/Dn)}×100
ここに、耐熱性多孔質層の構成材料のうち、無機粒子がbであり、その他の構成材料がa、c、…、nであり、所定面積の耐熱性多孔質層に含まれる各構成材料の質量がXa、Xb、Xc、…、Xn(g)であり、各構成材料の真密度がDa、Db、Dc、…、Dn(g/cm3)である。
上記の式に代入するXa等は、所定面積の耐熱性多孔質層の形成に使用する構成材料の質量(g)、又は、所定面積の耐熱性多孔質層から取り出した構成材料の質量(g)である。
上記の式に代入するDa等は、耐熱性多孔質層の形成に使用する構成材料の真密度(g/cm3)、又は、耐熱性多孔質層から取り出した構成材料の真密度(g/cm3)である。
【0048】
耐熱性多孔質層は、必要に応じて、既述の芳香族系樹脂及び無機粒子以外の成分(所謂、その他の成分)を含んでいてもよい。その他の成分としては、各種添加剤が挙げられる。添加剤としては、界面活性剤等の分散剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤などが挙げられる。分散剤は、耐熱性多孔質層を形成するための塗工液に、分散性、塗工性又は保存安定性を向上させる目的で添加される。湿潤剤、消泡剤、及びpH調整剤は、それぞれ多孔質基材とのなじみをよくする目的、塗工液へのエア噛み込みを抑制する目的、及びpHを調整する目的で、塗工液に添加される。
【0049】
〔耐熱性多孔質層の特性〕
<<厚さ>>
耐熱性多孔質層の厚さは、セパレータの耐熱性又はハンドリング性の観点から、片面当たり0.5μm以上であることが好ましく、片面当たり1.0μm以上であることがより好ましい。また、耐熱性多孔質層の厚さは、セパレータのハンドリング性又は電池のエネルギー密度の観点から、片面当たり5.0μm以下であることが好ましく、片面当たり4.0μm以下であることがより好ましい。
【0050】
多孔質基材の両面に耐熱性多孔質層が設けられている場合、耐熱性多孔質層の厚さは、両面の合計として、1.0μm以上であることが好ましく、2.0μm以上であることがより好ましく、3.0μm以上であることが更に好ましい。また、耐熱性多孔質層の厚さは、両面の合計として、10.0μm以下であることが好ましく、8.0μm以下であることがより好ましく、7.0μm以下であることが更に好ましい。
【0051】
多孔質基材の両面に耐熱性多孔質層が設けられている場合、一方の面における耐熱性多孔質層の厚さと、他方の面における耐熱性多孔質層の厚さとの差は、小さいことが好ましく、例えば、両面合計の厚さの20%以下であることが好ましい。
【0052】
<<単位面積当たりの質量>>
耐熱性多孔質層の単位面積当たりの質量は、両面の合計として、1.0g/m2~10.0g/m2であることが好ましい。耐熱性多孔質層の単位面積当たりの質量は、セパレータの耐熱性又はハンドリング性の観点から、両面の合計として、1.0g/m2以上であることが好ましく、2.0g/m2以上であることがより好ましく、3.0g/m2以上であることが更に好ましい。また、耐熱性多孔質層の単位面積当たりの質量は、セパレータのハンドリング性又は電池のエネルギー密度の観点から、10.0g/m2以下であることが好ましく、8.0g/m2以下であることがより好ましく、7.0g/m2以下であることが更に好ましい。
【0053】
多孔質基材の両面に耐熱性多孔質層が設けられている場合、一方の面における耐熱性多孔質層の単位面積当たりの質量と、他方の面における耐熱性多孔質層の単位面積当たりの質量との差は、セパレータのカールを抑制する観点から、両面合計に対して20質量%以下であることが好ましい。
【0054】
<<空孔率>>
耐熱性多孔質層の空孔率は、30%~80%であることが好ましい。耐熱性多孔質層の空孔率は、セパレータのイオン透過性の観点から、30%以上であることが好ましく、35%以上であることがより好ましく、40%以上であることが更に好ましい。また、耐熱性多孔質層の空孔率は、耐熱性多孔質層の力学的強度の観点から、80%以下であることが好ましく、70%以下であることがより好ましく、60%以下であることが更に好ましい。
【0055】
耐熱性多孔質層の空孔率ε(%)は、下記の式により求める。
ε={1-(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
式中、耐熱性多孔質層の構成材料がa、b、c、…、nであり、各構成材料の質量がWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm2)であり、各構成材料の真密度がda、db、dc、…、dn(g/cm3)であり、耐熱性多孔質層の厚さがt(μm)である。
【0056】
〔接着層〕
本開示における接着層は、耐熱性多孔質層の面上に配置された層であり、セパレータの最外層として存在する。本開示における接着層は、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子(即ち、特定接着性樹脂粒子)を含有し、特定接着性樹脂粒子が耐熱性多孔質層に付着してなる層である。
本開示のセパレータにおいて、接着層は、特定接着性樹脂粒子が耐熱性多孔質層の面上に互いに隣接して多数並ぶことで層に形成された構造を有していてもよく、特定接着性樹脂粒子が耐熱性多孔質層の面上に多数点在した構造を有していてもよい。また、接着層は、特定接着性樹脂粒子が耐熱性多孔質層の面上に互いに隣接して多数並ぶことで層に形成された構造を有している場合、特定接着性樹脂粒子が厚み方向に重ならない単層の構造を有していてもよく、特定接着性樹脂粒子が厚み方向に複数個重なって2層以上の重層構造を有していてもよい。本開示における接着層は、電極への接着性により優れる観点から、特定接着性樹脂粒子が耐熱性多孔質層の面上に互いに隣接して多数並んだ構造を有していることが好ましく、電池のエネルギー密度を高め、かつ、イオン透過性を確保する観点から、特定接着性樹脂粒子が厚み方向に重ならない単層の構造を有していることが好ましい。
【0057】
本開示における接着層は、特定接着性樹脂粒子間に存在する隙間によって、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能となっている。
特定接着性樹脂粒子が耐熱性多孔質層に付着した構造とは、完成したセパレータにおいて、樹脂が粒子形状を保持している態様の他、接着層の材料として樹脂粒子を用いて完成したセパレータにおいて熱処理又は乾燥処理により樹脂粒子が一部溶融して粒子形状を保持していない態様も含む。
【0058】
本開示における接着層は、特定接着性樹脂粒子が耐熱性多孔質層に付着した構造であることにより、耐熱性多孔質層と接着層との間の界面破壊が発生し難い。また、本開示における接着層は、特定接着性樹脂粒子同士が互いに付着し連結した構造である場合には、接着層が靭性に優れ、接着層の凝集破壊が発生し難い。
【0059】
本開示のセパレータは、接着層がフェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子(特定接着性樹脂粒子)を含有する層であり、特定接着性樹脂粒子が芳香族系樹脂を含有する耐熱性多孔質層に付着してなる層であるため、電解液の存在する環境下において、接着層に含まれるフェニル基含有アクリル系樹脂に由来するフェニル基と、耐熱性多孔質層に含まれる芳香族系樹脂に由来する芳香環との高い親和性に起因する相互作用により、特定接着性樹脂粒子が耐熱性多孔質層に接着し続けることができ、その結果、電極とのドライ接着性のみならず、電極とのウェット接着性にも優れる。
【0060】
特定接着性樹脂粒子は、フェニル基含有アクリル系樹脂を含み、電池の電極に対して接着性を有する粒子形状の樹脂である。特定接着性樹脂粒子は、電解液に対して安定で電気化学的にも安定な樹脂粒子であることが好ましい。
【0061】
フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子(特定接着性樹脂粒子)は、(i)アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含む共重合体である樹脂粒子、及び、(ii)アクリル系樹脂及びスチレン系樹脂を含む混合体である樹脂粒子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
以下、(i)アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含む共重合体である樹脂粒子を「樹脂粒子A」、(ii)アクリル系樹脂及びスチレン系樹脂を含む混合体である樹脂粒子を「樹脂粒子B」ともいう。
【0062】
樹脂粒子Aは、アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含む共重合体の粒子である。アクリル系単量体単位は、ドライ接着性に寄与し、スチレン系単量体単位は、ウェット接着性に寄与し得る。共重合体は、単量体単位として、アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位以外の単量体単位を含んでいてもよい。
【0063】
アクリル系単量体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。
(メタ)アクリル酸塩としては、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム、(メタ)アクリル酸マグネシウム、(メタ)アクリル酸亜鉛等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)メタクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2-(ジエチルアミノ)エチル、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
共重合体は、単量体単位として、アクリル系単量体単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0064】
スチレン系単量体は、フェニル基を有する単量体である。
スチレン系単量体としては、スチレン、メタクロロスチレン、パラクロロスチレン、パラフルオロスチレン、パラメトキシスチレン、メタ-tert-ブトキシスチレン、パラ-tert-ブトキシスチレン、パラビニル安息香酸、パラメチル-α-メチルスチレン、スチレンスルホン酸及びその塩(例:スチレン酸ナトリウム)等が挙げられる。これらの中でも、スチレン系単量体としては、スチレンが好ましい。
共重合体は、単量体単位として、スチレン系単量体単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0065】
共重合体に含まれるスチレン系単量体単位の含有量は、ドライ接着性とウェット接着性とを両立させる観点から、スチレン系単量体単位及びアクリル系単量体単位の合計含有量に対して、10質量%~99質量%であることが好ましく、15質量%~95質量%であることがより好ましく、20質量%~90質量%であることが更に好ましい。
【0066】
共重合体は、共重合体調製時の分散安定性の観点から、単量体単位として、酸基含有単量体単位を含むことが好ましい。
酸基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のカルボキシ基を有する単量体;ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体;リン酸-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル-2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル-(メタ)アクリロイルオキシエチル等のリン酸基を有する単量体;(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル等の水酸基を有する単量体;などが挙げられる。これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボキシ基を有する単量体が好ましい。
共重合体は、単量体単位として、酸基含有単量体単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0067】
共重合体に含まれる酸基含有単量体単位の含有量は、全構成単位に対して、0.1質量%~20質量%であることが好ましく、1質量%~10質量%であることがより好ましく、3質量%~7質量%であることが更に好ましい。
【0068】
共重合体は、電解液に対する膨潤度調整の観点から、単量体単位として、架橋性単量体単位を含むことが好ましい。架橋性単量体単位とは、加熱又はエネルギー線の照射により、重合中又は重合後に架橋構造を形成し得る単量体である。
架橋性単量体としては、例えば、2個以上の重合反応性基を有する単量体(所謂、多官能単量体)が挙げられる。このような多官能単量体としては、ジビニルベンゼン等のジビニル化合物;ジエチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート等のジ(メタ)アクリル酸エステル化合物;トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等のトリ(メタ)アクリル酸エステル化合物;アリルグリシジルエーテル、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体;などが挙げられる。これらの中でも、架橋性単量体としては、膨潤度を容易に制御する観点から、ジメタクリル酸エステル化合物及びエポキシ基を含有するエチレン性不飽和単量体からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、ジメタクリル酸エステル化合物から選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
共重合体は、単量体単位として、架橋性単量体単位を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0069】
共重合体中の架橋性単量体単位の割合が増えると、その共重合体の電解液に対する膨潤度は小さくなる傾向がある。したがって、共重合体中の架橋性単量体単位の割合は、使用する単量体の種類及び量を考慮して決定することが好ましい。
共重合体に含まれる架橋性単量体単位の含有量は、全構成単位に対して、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.2質量%~4質量%であることがより好ましく、0.5質量%~3質量%であることが更に好ましい。
【0070】
樹脂粒子Bは、アクリル系樹脂及びスチレン系樹脂を含む混合体の粒子である。アクリル系樹脂は、ドライ接着性に寄与し、スチレン系樹脂は、ウェット接着性に寄与し得る。混合体は、アクリル系樹脂及びスチレン系樹脂以外の樹脂を含んでいてもよい。
樹脂粒子Bは、例えば、アクリル系樹脂粒子の表面の一部又は全体がスチレン系樹脂で被覆されているものであってもよく、スチレン系樹脂粒子の表面の一部又は全体がアクリル系樹脂で被覆されているものであってもよく、1つの粒子の全体にアクリル系樹脂及びスチレン系樹脂が混在しているものであってもよい。樹脂粒子Bは、耐ブロッキング性の観点から、アクリル系樹脂粒子の表面の一部又は全体がスチレン系樹脂で被覆されているものであることが好ましい。
【0071】
本開示において「アクリル系樹脂」は、アクリル系単量体単位を含む樹脂を意味し、アクリル系単量体のみを重合した重合体、及び、アクリル系単量体と他の単量体とを重合した共重合体のいずれも含む。
【0072】
アクリル系樹脂としては、ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸塩、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、架橋ポリ(メタ)アクリル酸、架橋ポリ(メタ)アクリル酸塩、架橋ポリ(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる。アクリル系樹脂は、変性されたアクリル系樹脂であってもよい。混合体は、アクリル系樹脂を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0073】
アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、及び(メタ)アクリル酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種のアクリル系単量体に由来する構成単位(アクリル系単量体単位)を含むことが好ましい。(メタ)アクリル酸塩及び(メタ)アクリル酸エステルの具体例は、既述のとおりである。
【0074】
アクリル系樹脂に含まれるアクリル系単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、50質量%~100質量%であることが好ましい。
【0075】
本開示において「スチレン系樹脂」は、スチレン系単量体単位を含む樹脂を意味し、スチレン系単量体のみを重合した重合体、及び、スチレン系単量体と他の単量体とを重合した共重合体のいずれも含む。
スチレン系単量体の具体例は、既述のとおりである。
【0076】
スチレン系樹脂に含まれるスチレン系単量体単位の含有量は、全単量体単位に対して、50質量%~100質量%であることが好ましい。
【0077】
混合体に含まれるスチレン系樹脂の含有量は、ドライ接着性とウェット接着性とを両立させる観点から、スチレン系樹脂及びアクリル系樹脂の合計含有量に対して、10質量%~99質量%であることが好ましく、20質量%~95質量%であることがより好ましく、30質量%~90質量%であることが更に好ましい。
【0078】
混合体に含まれるアクリル系樹脂及び/又はスチレン系樹脂は、酸基含有単量体単位及び/又は架橋性単量体単位を含むことが好ましい。酸基含有単量体単位及び架橋性単量体単位については、既述のとおりである。
【0079】
特定接着性樹脂粒子のガラス転移温度は、10℃~150℃であることが好ましい。特定接着性樹脂粒子のガラス転移温度が10℃~150℃であると、接着層のブロッキングを抑制しつつ、電極に対する接着層の接着性(ドライ接着性及びウェット接着性)を向上させることができる。特定接着性樹脂粒子のガラス転移温度は、20℃~130℃であることがより好ましく、30℃~110℃であることが更に好ましい。
【0080】
特定接着性樹脂粒子のガラス転移温度は、FOX式を指針にして、共重合体又は樹脂におけるアクリル系単量体、スチレン系単量体等の共重合比を調整することにより制御できる。
【0081】
特定接着性樹脂粒子のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求める。測定装置には、示差走査熱量計〔Q20 Differential Scanning Calorimeter、TA Instruments社製〕を用い、樹脂粒子10mgを試料とする。低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、階段状変化部分の曲線の接線であって勾配が最大の接線とが交わる点の温度を樹脂粒子のガラス転移温度とする。
【0082】
特定接着性樹脂粒子の体積平均粒径は、良好な多孔構造を形成する観点から、0.01μm以上であることが好ましく、0.05μm以上であることがより好ましく、0.1μm以上であることが更に好ましい。また、特定接着性樹脂粒子の体積平均粒径は、接着層の厚みを抑える観点から、1.2μm以下であることが好ましく、1.0μm以下であることがより好ましく、0.8μm以下であることが更に好ましい。
【0083】
特定接着性樹脂粒子の体積平均粒径は、下記の方法により求める。
特定接着性樹脂粒子を、非イオン性界面活性剤を含有する水に分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて粒度分布を測定する。体積基準の粒度分布において、小径側から累積50%となる粒径(D50)を特定接着性樹脂粒子の体積平均粒径(μm)とする。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、Triton(登録商標)X-100〔化合物名:ポリエチレングリコール tert-オクチルフェニルエーテル、ダウ・ケミカル社製〕を好適に使用できる。また、レーザー回折式粒度分布測定装置としては、例えば、シスメックス(株)製のマスターサイザー2000を好適に使用できる。
【0084】
特定接着性樹脂粒子の耐熱性多孔質層への付着量は、0.1g/m2~5.0g/m2であることが好ましい。特定接着性樹脂粒子の耐熱性多孔質層への付着量が0.1g/m2以上であると、接着層と耐熱性多孔質層及び電極との間のウェット接着強度がより向上し得る。このような観点から、特定接着性樹脂粒子の耐熱性多孔質層への付着量は、0.1g/m2以上であることが好ましく、0.2g/m2以上であることがより好ましく、0.3g/m2以上であることが更に好ましく、0.4g/m2以上であることが特に好ましい。また、特定接着性樹脂粒子の耐熱性多孔質層への付着量が5.0g/m2以下であると、電解液による特定接着性樹脂粒子の膨潤が抑制され、接着層と耐熱性多孔質層及び電極との間のウェット接着性をより良好に維持し得る。このような観点から、特定接着性樹脂粒子の耐熱性多孔質層への付着量は、5.0g/m2以下であることが好ましく、4.0g/m2以下であることがより好ましく、3.0g/m2以下であることが更に好ましく、1.0g/m2以下であることが特に好ましい。耐熱性多孔質層が多孔質基材の両面に設けられる場合、特定接着性樹脂粒子の耐熱性多孔質層への両面合計の付着量が、上記範囲にあればよい。
【0085】
電解液中での特定接着性樹脂粒子の膨潤度は、接着層内のイオン透過性を十分確保する観点から、450%以下であることが好ましく、430%以下であることがより好ましく、410%以下であることが更に好ましい。電解液中での特定接着性樹脂粒子の膨潤度の下限は、例えば、110%以上であってもよい。
【0086】
電解液中での特定接着性樹脂粒子の膨潤度は、下記の方法により求める。
特定接着性樹脂粒子の水分散液を内寸50mm×70mmの金属枠を付帯したガラス板上に流し込み、150℃で1時間乾燥させて、シート状の測定用サンプルを作製する。作製した測定用サンプルを約1g分切り出し、その重量W1(g)を電子天秤で正確に測定した後、60℃の電解液〔1mol/L LiBF4 エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート(体積比3:7)〕中に、24時間浸漬させる。浸漬後の測定用サンプルを電解液から取り出し、表面に付着した電解液を拭き取った後、その重量W2(g)を電子天秤で測定し、下記の式により、樹脂粒子の膨潤度(%)を求める。
膨潤度(%)=(W2/W1)×100
【0087】
接着層は、特定接着性樹脂粒子以外の樹脂粒子を含んでいてもよい。
特定接着性樹脂粒子以外の樹脂粒子としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、フッ素系ゴム、ビニルニトリル化合物(アクリロニトリル、メタクリロニトリル等)の単独重合体又は共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル(ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等)、又はこれらの2種以上の混合物を含む粒子が挙げられる。これらの中でも、特定接着性樹脂粒子以外の樹脂粒子としては、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の粒子が好ましい。接着層が特定接着性樹脂粒子に加えてポリフッ化ビニリデン系樹脂の粒子を含むと、接着層と耐熱性多孔質層との間の接着強度(ウェット接着強度)が向上し得る。また、接着層が特定接着性樹脂粒子に加えてポリフッ化ビニリデン系樹脂の粒子を含むと、電解液による接着層の膨潤を抑制し得る。その結果、セパレータと電極との接着性(ウェット接着性)が向上するとともに、その接着性が良好に維持される。
【0088】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、フッ化ビニリデンの単独重合体(即ちポリフッ化ビニリデン)、フッ化ビニリデンと他の単量体との共重合体(ポリフッ化ビニリデン共重合体)、ポリフッ化ビニリデンとポリフッ化ビニリデン共重合体との混合物等が挙げられる。フッ化ビニリデンと共重合可能な単量体としては、例えば、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、トリクロロエチレン、フッ化ビニル、トリフルオロパーフルオロプロピルエーテル、エチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリロニトリル等が挙げられる。共重合体は、これらの単量体に由来する構成単位(単量体単位)を1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
【0089】
ポリフッ化ビニリデン共重合体は、電池製造時の加圧及び加熱に耐え得る機械的強度を得る観点から、フッ化ビニリデンに由来する構成単位(所謂、フッ化ビニリデン単位)を50モル%以上含むことが好ましい。
【0090】
ポリフッ化ビニリデン共重合体としては、フッ化ビニリデンとテトラフルオロエチレンとの共重合体、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、又はフッ化ビニリデンとトリフルオロエチレンとの共重合体が好ましく、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体がより好ましい。フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体としては、ヘキサフルオロプロピレンに由来する構成単位(所謂、ヘキサフルオロプロピレン単位)を0.1モル%~10モル%(好ましくは0.5モル%~5モル%)含む共重合体が好ましい
【0091】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、1000~500万であることが好ましく、1万~300万であることがより好ましく、5万~200万であることが更に好ましい。
【0092】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される値である。具体的には、測定装置として、日本分光(株)製のGPC装置「GPC-900」を用い、カラムとして、東ソー(株)製の「TSKgel SUPER AWM-H」を2本用い、溶離液としてN,N-ジメチルホルムアミドを用い、カラム温度40℃、流速0.6mL/分の条件にて測定を行い、ポリスチレン換算の分子量を得る。
【0093】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の粒子の融点は、110℃~180℃であることが好ましい。ポリフッ化ビニリデン系樹脂の粒子の融点が110℃~180℃であると、接着性と耐ブロッキング性とを両立することができる。このような観点から、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の粒子の融点は、120℃~170℃であることがより好ましく、130℃~160℃であることが更に好ましい。
【0094】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂の粒子の融点は、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求める。測定装置には、示差走査熱量計を用い、樹脂粒子10mgを試料とする。窒素ガス雰囲気下、試料を昇温速度5℃/分で30℃から200℃まで昇温した後、降温速度2℃/分で200℃から30℃まで降温し、更に昇温速度2℃/分で30℃から200℃まで昇温した際に得られた吸熱ピークのピークトップを樹脂粒子の融点とする。示差走査熱量計としては、例えば、TA Instruments社製のQ20 Differential Scanning Calorimeterを好適に使用できる。
【0095】
接着層がポリフッ化ビニリデン系樹脂の粒子を含む場合、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の粒子の質量割合は、接着層の全質量に対して、5質量%~95質量%であることが好ましい。
【0096】
接着層は、本開示の効果を阻害しない範囲で、既述の樹脂粒子以外の成分(所謂、他の成分)を含んでいてもよいが、接着層に占める他の成分の割合は、接着層の全質量の10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましい。更に好ましい態様は、接着層が実質的に他の成分を含まない態様である。
【0097】
他の成分としては、接着層を形成するための接着性樹脂粒子分散液に添加された添加剤が挙げられる。このような添加剤としては、界面活性剤等の分散剤、湿潤剤、消泡剤、pH調整剤などが挙げられる。
分散剤は、分散性、塗工性又は保存安定性を向上させる目的で、湿潤剤は、耐熱性多孔質層とのなじみを良好にする目的で、消泡剤は、接着性樹脂粒子分散液へのエア噛み込みを抑制する目的で、pH調整剤は、pH調整の目的で、接着層を形成するための接着性樹脂粒子分散液に添加される。
【0098】
界面活性剤については、国際公開第2019/130994号の段落[0142]及び[0143]に記載がある。これらの記載は、参照により本明細書に取り込まれる。
【0099】
接着層は、ある態様では、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)によるフェニル基のピーク面積S1が0.01~3であり、カルボニル基のピーク面積S2が4以下であることが好ましい。
フェニル基のピーク面積S1が0.01以上であり、かつ、カルボニル基のピーク面積S2が4以下であると、接着層が耐熱性多孔質層及び電極に対し、より十分なウェット接着強度を発現し得る。フェニル基のピーク面積S1が3以下であると、接着層の電解液による膨潤がより抑制し得る。このような観点から、フェニル基のピーク面積S1は、0.01以上であることが好ましく、0.02以上であることがより好ましく、0.05以上であることが更に好ましい。フェニル基のピーク面積S1は、3以下であることが好ましく、2.5以下であることがより好ましく、2以下であることが更に好ましく、0.5以下であることが特に好ましい。カルボニル基のピーク面積S2は、4以下であることが好ましく、3以下であることがより好ましく、2以下であることが更に好ましい。カルボニル基のピーク面積S2は、例えば、0.01以上、より好ましくは0.1以上であってもよい。
接着層は、他の態様では、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)によるフェニル基のピーク面積S1が0.01~3であり、FT-IRによるカルボニル基のピーク面積S2が4以下であり、FT-IRによるC-F結合のピーク面積S3が0.1~8であることが好ましい。
FT-IRによるC-F結合のピーク面積S3が0.1~8であると、接着層が特に電極に対し、より十分なウェット接着強度を発現し、電解液に対する膨潤を抑制することができる。このような観点から、FT-IRによるC-F結合のピーク面積S3は、0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましく、0.5以上であることが更に好ましい。また、FT-IRによるC-F結合のピーク面積S3は、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、4以下であることが更に好ましく、2以下であることが特に好ましい。
【0100】
フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)による接着層のフェニル基のピーク面積S1は、下記の方法により求める。下記の条件のフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により接着層の吸収スペクトルを得た後、フェニル基の吸収ピーク(694cm-1~710cm-1)に対し、ベースライン補正を行い、ベースラインと吸収スペクトル線とで囲まれた範囲の面積(単位:無次元)を求める。任意に選択した8箇所の異なる範囲の吸収スペクトルから得られた値を平均し、接着層のフェニル基のピーク面積S1とする。
また、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)による接着層のカルボニル基のピーク面積S2は、下記の方法により求める。下記の条件のフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により接着層の吸収スペクトルを得た後、カルボニル基の吸収ピーク(1707cm-1~1753cm-1)に対し、ベースライン補正を行い、ベースラインと吸収スペクトル線とで囲まれた範囲の面積(単位:無次元)を求める。任意に選択した8箇所の異なる範囲の吸収スペクトルから得られた値を平均し、接着層のカルボニル基のピーク面積S2とする。
また、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)によるC-F結合のピーク面積S3は、下記の方法により求める。下記の条件のフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により接着層の吸収スペクトルを得た後、C-F結合の吸収ピーク(862cm-1~901cm-1)に対し、ベースライン補正を行い、ベースラインと吸収スペクトル線とで囲まれた範囲の面積(単位:無次元)を求める。任意に選択した8箇所の異なる範囲の吸収スペクトルから得られた値を平均し、接着層のC-F結合のピーク面積S3とする。
各面積は、測定装置の機能により算出される。
1707cm-1~1753cm-1の範囲に観察されるカルボニル基の吸収ピークは、接着層の(メタ)アクリル由来のカルボニル基と考えられる。また、862cm-1~901cm-1の範囲に観察されるC-F結合の吸収ピークは、接着層のフッ化ビニリデン由来のC-F結合と考えられる。
【0101】
-条件-
測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計〔IRAffinity-1、(株)島津製作所製〕
測定波長範囲:400cm-1~4000cm-1
測定モード:透過率
アポダイズ関数:Happ-Genzel
分解能:4cm-1
積算回数:10回
測定サンプル数:n=8
【0102】
〔多孔質基材〕
本開示のセパレータは、多孔質基材を更に備えていることが好ましい。
本開示のセパレータが多孔質基材を更に備えている場合、既述の耐熱性多孔質層は、多孔質基材の片面又は両面に設けられていることが好ましい。
耐熱性多孔質層が多孔質基材の両面にあると、セパレータの耐熱性がより優れ、電池の安全性をより高めることができる。また、セパレータにカールが発生し難く、電池製造時のハンドリング性に優れる。耐熱性多孔質層が多孔質基材の片面のみにあると、セパレータのイオン透過性がより優れる。また、セパレータ全体の厚みを抑えることができ、エネルギー密度のより高い電池を製造し得る。
【0103】
本開示において「多孔質基材」とは、内部に空孔ないし空隙を有する基材を意味する。このような基材としては、微多孔膜;繊維状物からなる多孔性シート(例:不織布、紙等);などが挙げられる。
本開示における多孔質基材としては、セパレータの薄膜化及び強度の観点から、微多孔膜が好ましい。本開示において「微多孔膜」とは、内部に多数の微細孔を有し、これら細孔が連結された構造となっており、一方の面から他方の面へと気体又は液体が通過可能となった膜を意味する。
【0104】
多孔質基材の材料としては、電気絶縁性を有する材料が好ましく、有機材料又は無機材料のいずれであってもよい。
【0105】
多孔質基材は、多孔質基材にシャットダウン機能を付与するため、熱可塑性樹脂を含むことが望ましい。「シャットダウン機能」とは、電池温度が高まった際に、構成材料が溶解して多孔質基材の孔を閉塞することによりイオンの移動を遮断し、電池の熱暴走を防止する機能をいう。熱可塑性樹脂としては、融点200℃未満の熱可塑性樹脂が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;などが挙げられる。
これらの中でも、熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィンが好ましい。
【0106】
多孔質基材としては、ポリオレフィンを含む微多孔膜(「ポリオレフィン微多孔膜」ともいう。)が好ましい。ポリオレフィン微多孔膜としては、例えば、従来の電池用セパレータに適用されているポリオレフィン微多孔膜が挙げられ、これらの中から十分な力学特性及びイオン透過性を有するものを選択することが望ましい。
【0107】
ポリオレフィン微多孔膜は、シャットダウン機能を発現する観点から、ポリエチレンを含む微多孔膜(「ポリエチレン微多孔膜」ともいう。)であることが好ましい。ポリオレフィン微多孔膜がポリエチレンを含む場合、ポリエチレンの含有量は、ポリオレフィン微多孔膜全体の質量に対して95質量%以上であることが好ましい。
【0108】
ポリオレフィン微多孔膜は、高温に曝された際に容易に破膜しない耐熱性を備える観点から、ポリプロピレンを含む微多孔膜であることが好ましい。
【0109】
ポリオレフィン微多孔膜は、シャットダウン機能と、高温に曝された際に容易に破膜しない耐熱性とを備える観点から、ポリエチレン及びポリプロピレンを含む微多孔膜であることが好ましい。このようなポリオレフィン微多孔膜としては、例えば、ポリエチレンとポリプロピレンとが1つの層において混在している態様の微多孔膜、及び、2層以上の積層構造を備え、少なくとも1層はポリエチレンを含み、少なくとも1層はポリプロピレンを含む態様の微多孔膜が挙げられる。
ポリオレフィン微多孔膜がポリエチレン及びポリプロピレンを含む微多孔膜である場合、ポリエチレンの含有量及びポリプロピレンの含有量は、シャットダウン機能と上記耐熱性とをバランス良く兼ね備える観点から、ポリオレフィン微多孔膜全体の質量に対して、それぞれ95質量%以上及び5質量%以下であることが好ましい。
【0110】
ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、10万~500万であることが好ましい。
ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンのMwが10万以上であると、微多孔膜に十分な力学特性を付与できる。一方、ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンのMwが500万以下であると、微多孔膜のシャットダウン特性がより良好になるとともに、微多孔膜をより成形しやすくなる。
【0111】
ポリオレフィン微多孔膜に含まれるポリオレフィンの重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定される値である。具体的には、ポリオレフィン微多孔膜をo-ジクロロベンゼン中に加熱溶解させ、試料溶液とし、測定装置として、東ソー(株)製のGPC装置「HLC-8321GPC/HT型」、カラムとして、東ソー(株)製の「TSKgel GMH6-HT」及び「TSKgel GMH6-HTL」、並びに、溶離液としてo-ジクロロベンゼン(0.025質量%2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール含有)を用い、カラム温度140℃、流速1.0mL/分の条件にて測定を行うことで得られる。分子量の校正には、単分散ポリスチレン〔東ソー(株)製〕を用いる。
【0112】
ポリオレフィン微多孔膜の製造方法としては、溶融したポリオレフィンをT-ダイから押し出してシート化し、これを結晶化処理した後延伸し、次いで熱処理をして微多孔膜とする方法;流動パラフィン等の可塑剤と一緒に溶融したポリオレフィンをT-ダイから押し出し、これを冷却してシート化し、延伸した後、可塑剤を抽出し、次いで熱処理をして微多孔膜とする方法;等が挙げられる。
【0113】
繊維状物からなる多孔性シートとしては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;全芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の耐熱性樹脂;セルロース;などの繊維状物からなる多孔性シート(例:不織布、紙等)が挙げられる。
【0114】
多孔質基材には、多孔質基材の性質が損なわれない範囲で、各種の表面処理が施されていてもよい。多孔質基材に表面処理が施されていると、耐熱性多孔質層を形成するための塗工液又は接着層を形成するための樹脂粒子分散液との濡れ性が向上し得る。
表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、火炎処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
【0115】
〔多孔質基材の特性〕
<<厚さ>>
多孔質基材の厚さは、電池のエネルギー密度を高める観点から、10.0μm以下であることが好ましく、9.0μm以下であることがより好ましい。また、多孔質基材の厚さは、セパレータの製造歩留り及び電池の製造歩留りの観点から、3.0μm以上であることが好ましく、4.0μm以上であることがより好ましい。
【0116】
多孔質基材の厚さは、接触式の厚み計(LITEMATIC、(株)ミツトヨ製)を用い、直径5mmの円柱状の測定端子にて測定される値である。測定中は、0.01Nの荷重が印加されるように調整し、10cm×10cm内の任意の20点を測定して、その平均値を算出する。
【0117】
<<ガーレ値>>
多孔質基材のガーレ値は、良好なイオン透過性を得る観点から、50秒/100mL以上であることが好ましく、60秒/100mL以上であることがより好ましい。また、多孔質基材のガーレ値は、電池の短絡を抑制する観点から、400秒/100mL以下であることが好ましく、200秒/100mL以下であることがより好ましい。
多孔質基材のガーレ値は、JIS P8117:2009に準拠して測定される値である。測定装置としては、例えば、東洋精機(株)製のガーレ式デンソメータ G-B2Cを好適に使用できる。
【0118】
<<空孔率>>
多孔質基材の空孔率は、適切な膜抵抗及びシャットダウン機能を得る観点から、20%~60%であることが好ましい。
多孔質基材の空孔率は、下記の式により求める。なお、目付とは、単位面積当たりの質量である。
ε={1-Ws/(ds・t)}×100
式中、Wsは、多孔質基材の目付(g/m2)を示し、dsは、多孔質基材の真密度(g/cm3)を示し、tは、多孔質基材の厚さ(μm)を示す。
【0119】
<<突刺強度>>
多孔質基材の突刺強度は、セパレータの製造歩留り及び電池の製造歩留りの観点から、200g以上であることが好ましく、250g以上であることがより好ましい。
多孔質基材の突刺強度は、カトーテック社製のKES-G5ハンディー圧縮試験器を用い、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/秒の条件で突刺試験を行って測定する最大突刺荷重(g)を指す。
【0120】
[セパレータの特性]
<<厚さ>>
本開示のセパレータの厚さは、セパレータの機械的強度の観点から、6.0μm以上であることが好ましく、7.0μm以上であることがより好ましい。また、本開示のセパレータの厚さは、電池のエネルギー密度の観点から、20.0μm以下であることが好ましく、15.0μm以下であることがより好ましい。
【0121】
セパレータの厚さは、接触式の厚み計(LITEMATIC、(株)ミツトヨ製)を用い、直径5mmの円柱状の測定端子にて測定される値である。測定中は、0.01Nの荷重が印加されるように調整し、10cm×10cm内の任意の20点を測定して、その平均値を算出する。
【0122】
<<突刺強度>>
本開示のセパレータの突刺強度は、セパレータの機械的強度及び電池の耐短絡性の観点から、200g~1000gであることが好ましく、250g~600gであることがより好ましい。
【0123】
セパレータの突刺強度は、カトーテック社製のKES-G5ハンディー圧縮試験器を用い、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/秒の条件で突刺試験を行って測定する最大突刺荷重(g)を指す。
【0124】
<<空孔率>>
本開示のセパレータの空孔率は、電極に対する接着性、セパレータのハンドリング性、イオン透過性、及び機械的強度の観点から、30%~60%であることが好ましい。
【0125】
セパレータの空孔率ε(%)は、下記の式により求める。
ε={1-(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
式中、セパレータの構成材料がa、b、c、…、nであり、各構成材料の質量がWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm2)であり、各構成材料の真密度がda、db、dc、…、dn(g/cm3)であり、セパレータの厚さがt(cm)である。
【0126】
<<膜抵抗(イオン透過性)>>
本開示のセパレータの膜抵抗は、電池の負荷特性の観点から、0.5ohm・cm2~10ohm・cm2であることが好ましく、1ohm・cm2~8ohm・cm2であることがより好ましい。
【0127】
セパレータの膜抵抗は、セパレータに電解液を含浸させた状態での抵抗値を指し、交流法にて測定される値である。測定は、電解液として1mol/L LiBF4 プロピレンカーボネート/エチレンカーボネート(1/1[質量比])を用い、20℃で行う。
【0128】
<<ガーレ値>>
本開示のセパレータのガーレ値は、機械的強度とイオン透過性とのバランスの観点から、50秒/100mL~800秒/100mLであることが好ましく、80秒/100mL~500秒/100mLであることがより好ましく、100秒/100mL~400秒/100mLであることが更に好ましい。
【0129】
セパレータのガーレ値は、JIS P8117:2009に準拠して測定される値である。測定装置としては、例えば、東洋精機(株)製のガーレ式デンソメータ G-B2Cを好適に使用できる。
【0130】
本開示のセパレータは、イオン透過性の観点から、セパレータ(多孔質基材上に耐熱性多孔質層及び接着層を形成した状態)のガーレ値から多孔質基材のガーレ値を減算した値が、300秒/100mL以下であることが好ましく、280秒/100mL以下であることがより好ましく、275秒/100mL以下であることが更に好ましい。また、本開示のセパレータは、電極への接着に十分な量の接着性樹脂粒子を備える観点から、セパレータのガーレ値から多孔質基材のガーレ値を減算した値が、20秒/100mL以上であることが好ましく、50秒/100mL以上であることがより好ましく、55秒/100m以上であることが更に好ましい。
【0131】
<<熱収縮率>>
本開示のセパレータは、130℃で60分間熱処理したときのMD方向の収縮率(「熱収縮率」ともいう。)が、15%以下であることが好ましく、12%以下であることがより好ましく、9%以下であることが更に好ましい。
【0132】
セパレータの熱収縮率は、下記の方法により求める。
セパレータをMD方向100mm×TD方向100mmに切り出す。次いで、切り出したセパレータの中心を通過するように、MD方向に70mmの長さの基準線を引き、試験片とする。2枚のA4サイズの用紙の間に試験片を配置した後、130℃のオーブン中に60分間静置する。熱処理前後の試験片のMD方向の長さを測定し、下記の式により熱収縮率を算出する。以上の操作を更に2回行い、試験片3枚の熱収縮率を平均して、セパレータの熱収縮率を求める。
熱収縮率(%)={(熱処理前のMD方向の長さ-熱処理後のMD方向の長さ)÷熱処理前のMD方向の長さ}×100
【0133】
[セパレータの製造方法]
本開示のセパレータは、例えば、下記の製造方法A又は製造方法Bによって製造される。製造方法A及び製造方法Bにおいて、耐熱性多孔質層の形成方法は、湿式塗工法でもよく、乾式塗工法でもよい。
製造方法Bは、下記の形態B-1~B-7のいずれでもよい。形態B-1~B-4は、耐熱性多孔質層を湿式塗工法によって形成する形態である。形態B-5~B-7は、耐熱性多孔質層を乾式塗工法によって形成する形態である。
【0134】
本開示において、湿式塗工法とは、塗工層を凝固液中で固化させる方法であり、乾式塗工法とは、塗工層を乾燥させて塗工層を固化させる方法である。
【0135】
製造方法A(非連続的な製造方法):
ロールから繰り出された多孔質基材上に耐熱性多孔質層を形成して、多孔質基材と耐熱性多孔質層との積層体を得たのち、一旦、積層体を別のロールに巻き取る。次いで、ロールから繰り出された積層体上に接着層を形成してセパレータを得て、でき上がったセパレータを別のロールに巻き取る。
【0136】
製造方法B(連続的な製造方法):
ロールから繰り出された多孔質基材上に、耐熱性多孔質層と接着層とを連続的に又は同時に形成し、でき上がったセパレータを別のロールに巻き取る。
【0137】
形態B-1:
多孔質基材上に耐熱性多孔質層形成用塗工液を塗工し、凝固液に浸漬して塗工層を固化させ、凝固液から引き揚げ、水洗及び乾燥を行い、次いで、接着性樹脂粒子分散液を塗工し、乾燥を行う。
【0138】
形態B-2:
多孔質基材上に耐熱性多孔質層形成用塗工液を塗工し、凝固液に浸漬して塗工層を固化させ、凝固液から引き揚げ、水洗を行い、次いで、接着性樹脂粒子分散液を塗工し、乾燥を行う。
【0139】
形態B-3:
多孔質基材上に耐熱性多孔質層形成用塗工液及び接着性樹脂粒子分散液を同時に二層塗工し、凝固液に浸漬して前者の塗工層を固化させ、凝固液から引き揚げ、水洗及び乾燥を行う。
【0140】
形態B-4:
多孔質基材上に耐熱性多孔質層形成用塗工液を塗工し、凝固液に浸漬して塗工層を固化させ、凝固液から引き揚げ、接着性樹脂粒子を含む水浴を搬送することによって水洗及び接着性樹脂粒子の付着を行い、水浴から引き揚げ、乾燥を行う。
【0141】
形態B-5:
多孔質基材上に耐熱性多孔質層形成用塗工液を塗工し、乾燥を行い、次いで、接着性樹脂粒子分散液を塗工し、乾燥を行う。
【0142】
形態B-6:
多孔質基材上に耐熱性多孔質層形成用塗工液を塗工し、次いで、接着性樹脂粒子分散液を塗工し、乾燥を行う。
【0143】
形態B-7:
多孔質基材上に耐熱性多孔質層形成用塗工液及び接着性樹脂粒子分散液を同時に二層塗工し、乾燥を行う。
【0144】
以下に、形態B-1の製造方法Bを例に挙げて、製造方法に含まれる工程の詳細を説明する。
【0145】
形態B-1の製造方法Bは、多孔質基材の少なくとも一方の面に耐熱性多孔質層を湿式塗工法によって形成して、多孔質基材と耐熱性多孔質層との積層体を得て、次いで、積層体の少なくとも一方の面に接着層を乾式塗工法によって形成する。形態B-1の製造方法Bは、下記の工程(1)~(7)を含み、工程(1)~(7)を順次行う。
【0146】
工程(1):耐熱性多孔質層形成用塗工液の作製
耐熱性多孔質層形成用塗工液(以下、製造方法の説明において「塗工液」という。)は、芳香族系樹脂及び無機粒子を溶媒に溶解又は分散させて作製する。塗工液には、必要に応じて、芳香族系樹脂及び無機粒子以外の成分を溶解又は分散させる。
【0147】
塗工液の調製に用いる溶媒は、芳香族系樹脂を溶解する溶媒(以下、「良溶媒」ともいう。)を含む。良溶媒としては、N-メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド等の極性アミド溶媒が挙げられる。
【0148】
塗工液の調製に用いる溶媒は、良好な多孔構造を有する耐熱性多孔質層を形成する観点から、相分離を誘発させる相分離剤を含むことが好ましい。したがって、塗工液の調製に用いる溶媒は、良溶媒と相分離剤との混合溶媒であることが好ましい。相分離剤は、塗工に適切な粘度が確保できる範囲の量で良溶媒と混合することが好ましい。相分離剤としては、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブチルアルコール、ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0149】
塗工液の調製に用いる溶媒としては、良好な多孔構造を有する耐熱性多孔質層を形成する観点から、良溶媒と相分離剤との混合溶媒であって、良溶媒を60質量%以上含み、相分離剤を5質量%~40質量%含む混合溶媒が好ましい。
【0150】
塗工液における芳香族系樹脂の濃度は、良好な多孔構造を有する耐熱性多孔質層を形成する観点から、1質量%~20質量%であることが好ましい。
塗工液における無機粒子の濃度は、良好な多孔構造を有する耐熱性多孔質層を形成する観点から、2質量%~50質量%であることが好ましい。
【0151】
工程(2):接着性樹脂粒子分散液の作製
接着性樹脂粒子分散液は、接着性樹脂粒子を水に分散させて作製する。接着性樹脂粒子分散液には、水への接着性樹脂粒子の分散性を高めるために界面活性剤を添加してもよい。接着性樹脂粒子分散液は、市販品又は市販品の希釈液でもよい。
【0152】
接着性樹脂粒子分散液における接着性樹脂粒子の濃度は、塗工適性の観点から、1質量%~60質量%であることが好ましい。
【0153】
工程(3):塗工液の塗工
塗工液を多孔質基材の少なくとも一方の面に塗工し、多孔質基材上に塗工層を形成する。多孔質基材への塗工液の塗工方法としては、ナイフコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、リバースロールコート法、ロールコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。耐熱性多孔質層を多孔質基材の両面に形成する場合、塗工液を両面同時に多孔質基材へ塗工することが生産性の観点から好ましい。
【0154】
工程(4):塗工層の固化
塗工層を形成した多孔質基材を凝固液に浸漬し、塗工層において相分離を誘発しつつ芳香族系樹脂を固化させ、耐熱性多孔質層を形成する。これにより、多孔質基材と耐熱性多孔質層とからなる積層体を得る。
【0155】
凝固液は、塗工液の調製に用いた良溶媒及び相分離剤と、水とを含むことが一般的である。良溶媒と相分離剤の混合比は、塗工液の調製に用いた混合溶媒の混合比に合わせるのが生産上好ましい。凝固液中の水の含有量は、多孔構造の形成及び生産性の観点から、40質量%~90質量%であることが好ましい。凝固液の温度は、例えば、20℃~50℃である。
【0156】
工程(5):塗工層の水洗及び乾燥
積層体を凝固液から引き揚げ、水洗する。水洗することによって、積層体から凝固液を除去する。さらに、乾燥することによって、積層体から水を除去する。水洗は、例えば、水洗浴中に積層体を搬送することによって行う。乾燥は、例えば、高温環境中に積層体を搬送すること、積層体に風をあてること、積層体をヒートロールに接触させること等によって行う。乾燥温度は、40℃~80℃であることが好ましい。
【0157】
工程(6):接着性樹脂粒子分散液の塗工
積層体の少なくとも一方の面に、接着性樹脂粒子分散液を塗工する。接着性樹脂粒子分散液を塗工する方法としては、ナイフコート法、グラビアコート法、マイヤーバーコート法、ダイコート法、リバースロールコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、インクジェット法、スプレー法等が挙げられる。
【0158】
工程(7):接着性樹脂粒子分散液の乾燥
積層体上の接着性樹脂粒子分散液を乾燥させ、接着性樹脂粒子を積層体の表面に付着させる。乾燥は、例えば、高温環境中に積層体を搬送すること、積層体に風をあてること等によって行う。乾燥温度は、40℃~100℃であることが好ましい。
【0159】
セパレータを製造するための製造方法A又は形態B-2~形態B-7の製造方法Bは、上記の工程(1)~(7)を一部省略したり変更したりすることで実施できる。
【0160】
[非水系二次電池]
本開示の非水系二次電池は、リチウムのドープ・脱ドープにより起電力を得る非水系二次電池であり、正極と、負極と、正極及び負極の間に配置された本開示の非水系二次電池用セパレータとを備えている。
「ドープ」とは、吸蔵、担持、吸着、又は挿入を意味し、正極等の電極の活物質にリチウムイオンが入る現象を意味する。
【0161】
また、本開示の非水系二次電池は、正極と、負極と、正極及び負極の間に配置されたセパレータと、を備えた非水系二次電池であって、セパレータは、芳香族系樹脂及び無機粒子を含有する耐熱性多孔質層と、耐熱性多孔質層上に設けられ、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子が耐熱性多孔質層に付着してなる接着層と、を備えており、セパレータと正極又は負極とは接着層を介して接着しており、セパレータと電極とを剥離した場合に、耐熱性多孔質層及び電極の両方に上記接着性樹脂粒子が付着する非水系二次電池である。
ここでいう「セパレータ」は、本開示の非水系二次電池用セパレータと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0162】
本開示の非水系二次電池は、例えば、負極と正極とがセパレータを介して対向した電池素子が、電解液と共に外装材内に封入された構造を有する。本開示の非水系二次電池は、非水電解質二次電池、特にリチウムイオン二次電池に好適である。
【0163】
本開示の非水系二次電池は、本開示のセパレータがドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても電極との接着性に優れることにより、電池の生産性及び電池のサイクル特性(容量維持率)に優れる。
【0164】
以下、本開示の非水系二次電池が備える正極、負極、電解液及び外装材の形態例を説明する。
【0165】
正極の実施形態例としては、正極活物質及びバインダ樹脂を含む活物質層が集電体上に成形された構造が挙げられる。活物質層は、更に導電助剤を含んでいてもよい。
正極活物質としては、例えば、リチウム含有遷移金属酸化物が挙げられ、具体的には、LiCoO2、LiNiO2、LiMn1/2Ni1/2O2、LiCo1/3Mn1/3Ni1/3O2、LiMn2O4、LiFePO4、LiCo1/2Ni1/2O2、LiAl1/4Ni3/4O2等の化合物が挙げられる。
バインダ樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体等の樹脂が挙げられる。
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末等の炭素材料が挙げられる。
集電体としては、例えば、厚さが5μm~20μmの、アルミ箔、チタン箔、ステンレス箔等の金属箔が挙げられる。
【0166】
負極の実施形態例としては、負極活物質及びバインダ樹脂を含む活物質層が集電体上に成形された構造が挙げられる。活物質層は、更に導電助剤を含んでいてもよい。
負極活物質としては、リチウムを電気化学的に吸蔵し得る材料が挙げられ、具体的には、炭素材料;ケイ素、スズ、アルミニウム等とリチウムとの合金;ウッド合金;などが挙げられる。
バインダ樹脂としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン系樹脂、スチレン-ブタジエン共重合体等の樹脂が挙げられる。
導電助剤としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、黒鉛粉末等の炭素材料が挙げられる。
集電体としては、例えば、厚さが5μm~20μmの、銅箔、ニッケル箔、ステンレス箔等の金属箔が挙げられる。また、上記の負極に代えて、金属リチウム箔を負極として用いてもよい。
【0167】
電解液は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解した溶液である。
リチウム塩としては、例えば、LiPF6、LiBF4、LiClO4等の化合物が挙げられる。リチウム塩は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
非水系溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ジフルオロエチレンカーボネート、ビニレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、これらのフッ素置換体等の鎖状カーボネート;γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン等の環状エステル;などの溶媒が挙げられる。非水系溶媒は、一種単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
電解液としては、環状カーボネートと鎖状カーボネートとを質量比(環状カーボネート:鎖状カーボネート)20:80~40:60で混合し、リチウム塩を0.5mol/L~1.5mol/Lの範囲にて溶解した溶液が好適である。
【0168】
外装材としては、金属缶、アルミラミネートフィルム製パック等が挙げられる。
電池の形状には、例えば、角型、円筒型、コイン型等の形状があるが、本開示のセパレータは、いずれの形状にも好適である。
【0169】
[非水系二次電池の製造方法]
本開示の非水系二次電池の製造方法としては、例えば、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置した積層体を製造する積層工程と、積層体にドライヒートプレスを行って正極及び負極の少なくとも一方とセパレータとを接着させるドライ接着工程と、ドライ接着工程を経た積層体を電解液と共に外装材の内部に封止する封止工程と、を含む第1の製造方法が挙げられる。
また、本開示の非水系二次電池の製造方法としては、例えば、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置した積層体を製造する積層工程と、積層体を電解液と共に外装材の内部に封止する封止工程と、封止工程を経た積層体に外装材の上からウェットヒートプレスを行って正極及び負極の少なくとも一方とセパレータとを接着させるウェット接着工程と、を含む第2の製造方法が挙げられる。
【0170】
(第1の製造方法)
積層工程は、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置した積層体を製造する工程である。積層工程は、例えば、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置し、長さ方向に巻き回して巻回体(所謂、巻回型の積層体)を製造する工程であってもよく、正極、セパレータ、負極をこの順に少なくとも1層ずつ積層して積層体を製造する工程であってもよい。
【0171】
ドライ接着工程は、積層体にドライヒートプレスを行って正極及び負極の少なくとも一方とセパレータとを接着させる工程である。
ドライ接着工程は、積層体を外装材(例えば、アルミラミネートフィルム製パック)に収容する前に行ってもよく、積層体を外装材に収容した後に行ってもよい。つまり、ドライヒートプレスによって電極とセパレータとが接着した積層体を外装材に収容してもよく、積層体を外装材に収容した後に外装材の上からドライヒートプレスを行って電極とセパレータとを接着させてもよい。
【0172】
ドライ接着工程におけるプレス温度は、50℃~120℃であることが好ましく、60℃~110℃であることがより好ましく、70℃~100℃であることが更に好ましい。
ドライ接着工程におけるプレス温度が、上記範囲内であると、電極とセパレータとの接着が適度に良好であり、セパレータが幅方向に適度に膨張し得るので、電池の短絡が起こり難くなる傾向がある。また、電極とセパレータが適度に接着しているため、電解液の含浸を阻害し難い傾向がある。
ドライ接着工程におけるプレス圧は、0.1MPa~10MPaであることが好ましく、0.5MPa~5MPaであることがより好ましい。
ドライ接着工程におけるプレス時間は、プレス温度及びプレス圧に応じて調節することが好ましく、例えば、0.1分間~60分間の範囲で調節する。
【0173】
積層工程の後、ドライ接着工程の前に、積層体に常温プレス(常温下での加圧)を施して、積層体を仮接着してもよい。
【0174】
封止工程は、ドライ接着工程を経た積層体を電解液と共に外装材の内部に封止する工程である。
封止工程では、例えば、積層体が収容されている外装材に電解液を注入した後、外装材の開口部を封止する。外装材の開口部の封止は、例えば、外装材の開口部を接着剤で接着すること、又は、外装材の開口部を加熱加圧して熱圧着することによって行われる。外装材の開口部の封止前に、外装体の内部を真空状態にすることが好ましい。
【0175】
封止工程においては、外装材の開口部を加熱加圧して熱圧着すると同時に、外装材の上から積層体を熱プレス処理することが好ましい。積層体と電解液とが共存する状態で熱プレス処理(所謂、ウェットヒートプレス)が行われることにより、電極とセパレータとの接着がより強固になる。
【0176】
封止工程において行われるウェットヒートプレスのプレス温度は、60℃~110℃であることが好ましく、プレス圧は、0.5MPa~5MPaであることが好ましく、プレス時間は、プレス温度及びプレス圧に応じて調節することが好ましく、例えば、0.5分間~60分間の範囲で調節する。
【0177】
(第2の製造方法)
積層工程は、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置した積層体を製造する工程である。積層工程は、第1の製造方法における積層工程と同様に、例えば、正極と負極との間に本開示のセパレータを配置し、長さ方向に巻き回して巻回体(所謂、巻回型の積層体)を製造する工程であってもよく、正極、セパレータ、負極をこの順に少なくとも1層ずつ積層して積層体を製造する工程であってもよい。
【0178】
封止工程は、積層体を電解液と共に外装材の内部に封止する工程である。
封止工程では、例えば、積層体が収容されている外装材(例えば、アルミラミネートフィルム製パック)に電解液を注入した後、外装材の開口部を封止する。外装材の開口部の封止は、例えば、外装材の開口部を接着剤で接着すること、又は、外装材の開口部を加熱加圧して熱圧着することによって行われる。外装材の開口部の封止前に、外装体の内部を真空状態にすることが好ましい。
【0179】
ウェット接着工程は、封止工程を経た積層体、すなわち、外装材に電解液と共に収容されている積層体に外装材の上から熱プレス処理(所謂、ウェットヒートプレス)を行って正極及び負極の少なくとも一方とセパレータとを接着させる工程である。
【0180】
ウェット接着工程におけるプレス温度は、60℃~110℃であることが好ましく、70℃~100℃であることがより好ましく、70℃~90℃であることが更に好ましい。
ウェット接着工程におけるプレス温度が、上記範囲内であると、電解液の分解を抑制できると共に、電極とセパレータとの接着が良好となり、また、セパレータが幅方向に適度に膨張し得るので、電池の短絡が起こり難くなる傾向がある。
ウェット接着工程におけるプレス圧は、0.1MPa~5MPaであることが好ましく、0.5MPa~3MPaであることがより好ましい。
ウェット接着工程におけるプレス時間は、プレス温度及びプレス圧に応じて調節することが好ましく、例えば、0.1分間~60分間の範囲で調節する。
【実施例0181】
以下に実施例を挙げて、本開示のセパレータ及び非水系二次電池を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理手順等は、本開示の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本開示のセパレータ及び非水系二次電池の範囲は、以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきではない。
【0182】
[測定方法及び評価方法]
実施例及び比較例で適用した測定方法及び評価方法は、以下のとおりである。
【0183】
〔多孔質基材、セパレータ及び耐熱性多孔質層の厚さ〕
多孔質基材、セパレータ及び耐熱性多孔質層の厚さ(μm)は、接触式の厚み計〔LITEMATIC VL-50、(株)ミツトヨ製〕を用いて測定した。
測定端子として直径5mmの円柱状の端子を用い、測定中に0.01Nの荷重が印加されるように調整した。10cm×10cm内の任意の20点の厚さを測定し、それらの平均値を求めた。
【0184】
〔目付〕
目付(1m2当たりの質量、g/m2)は、サンプルを10cm×30cmに切り出し、質量を測定し、質量を面積で除算して求めた。
【0185】
〔耐熱性多孔質層の単位面積あたりの質量〕
耐熱性多孔質層の単位面積あたりの質量(g/m2)は、層形成後の目付(g/m2)から層形成前の目付(g/m2)を減算して求めた。
【0186】
〔接着性樹脂粒子の耐熱性多孔質層への付着量〕
接着層に含まれる接着性樹脂粒子の耐熱性多孔質層への付着量(g/m2)は、層形成後の目付(g/m2)から層形成前の目付(g/m2)を減算して求めた。
【0187】
〔ガーレ値〕
セパレータのガーレ値(秒/100mL)は、JIS P 8117:2009に準拠した方法により測定した。測定装置には、ガーレ式デンソメータ〔G-B2C、東洋精機(株)製〕を用いた。
【0188】
〔空孔率(多孔質基材+耐熱性多孔質層)〕
空孔率ε(%)は、下記の式により求めた。
ε={1-(Wa/da+Wb/db+Wc/dc+…+Wn/dn)/t}×100
式中、多孔質基材及び耐熱性多孔質層の構成材料がa、b、c、…、nであり、各構成材料の質量がWa、Wb、Wc、…、Wn(g/cm2)であり、各構成材料の真密度がda、db、dc、…、dn(g/cm3)であり、多孔質基材及び耐熱性多孔質層の合計厚さがt(μm)である。
【0189】
〔接着層に含まれる樹脂粒子のガラス転移温度〕
接着層に含まれる樹脂粒子のガラス転移温度は、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求めた。測定装置には、示差走査熱量計〔Q20 Differential Scanning Calorimeter、TA Instruments社製〕を用い、樹脂粒子10mgを試料とした。低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、階段状変化部分の曲線の接線であって勾配が最大の接線とが交わる点の温度を樹脂粒子のガラス転移温度とした。
【0190】
〔接着層に含まれる樹脂粒子の融点〕
接着層に含まれる樹脂粒子の融点は、示差走査熱量測定(DSC:Differential Scanning Calorimetry)を行って得た示差走査熱量曲線(DSC曲線)から求めた。測定装置には、示差走査熱量計〔Q20 Differential Scanning Calorimeter、TA Instruments社製〕を用い、樹脂粒子10mgを試料とした。窒素ガス雰囲気下、試料を昇温速度5℃/分で30℃から200℃まで昇温した後、降温速度2℃/分で200℃から30℃まで降温し、更に昇温速度2℃/分で30℃から200℃まで昇温した際に得られた吸熱ピークのピークトップを樹脂粒子の融点とした。
【0191】
〔耐熱性多孔質層に含まれる無機粒子の平均一次粒径〕
耐熱性多孔質層に含まれる無機粒子の平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)による観察において無作為に選んだ無機粒子100個の長径を計測し、100個の長径を平均することで求めた。SEM観察に供する試料は、耐熱性多孔質層を形成する材料である無機粒子とした。
【0192】
〔接着層に含まれる樹脂粒子の体積平均粒径〕
樹脂粒子を、非イオン性界面活性剤であるTriton(登録商標)X-100〔化合物名:ポリエチレングリコール tert-オクチルフェニルエーテル、ダウ・ケミカル社製〕を含有する水に分散させ、レーザー回折式粒度分布測定装置〔マスターサイザー2000、シスメックス(株)製〕を用いて粒度分布を測定した。体積基準の粒度分布において、小径側から累積50%となる粒径(D50)を樹脂粒子の体積平均粒径(μm)とした。
【0193】
〔フーリエ変換赤外分光法による接着層のフェニル基のピーク面積S1〕
下記の条件のフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により接着層の吸収スペクトルを得た後、フェニル基の吸収ピーク(694cm-1~710cm-1)に対し、ベースライン補正を行い、ベースラインと吸収スペクトル線とで囲まれた範囲の面積(単位:無次元)を求めた。任意に選択した8箇所の異なる範囲の吸収スペクトルから得られた値を平均し、接着層のフェニル基のピーク面積S1とした。FT-IRの条件を以下に示す。
【0194】
-条件-
測定装置:フーリエ変換赤外分光光度計〔IRAffinity-1、(株)島津製作所製〕
測定波長範囲:400cm-1~4000cm-1
測定モード:透過率
アポダイズ関数:Happ-Genzel
分解能:4cm-1
積算回数:10回
測定サンプル数:n=8
【0195】
〔カルボニル基のピーク面積S2〕
下記の条件のフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により接着層の吸収スペクトルを得た後、カルボニル基の吸収ピーク(1707cm-1~1753cm-1)に対し、ベースライン補正を行い、ベースラインと吸収スペクトル線とで囲まれた範囲の面積(単位:無次元)を求めた。任意に選択した8箇所の異なる範囲の吸収スペクトルから得られた値を平均し、接着層のカルボニル基のピーク面積S2とした。FT-IRの条件は、ピーク面積S1と同様である。
【0196】
〔C-F結合のピーク面積S3〕
下記の条件のフーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により接着層の吸収スペクトルを得た後、C-F結合の吸収ピーク(862cm-1~901cm-1)に対し、ベースライン補正を行い、ベースラインと吸収スペクトル線とで囲まれた範囲の面積(単位:無次元)を求めた。任意に選択した8箇所の異なる範囲の吸収スペクトルから得られた値を平均し、接着層のC-F結合のピーク面積S3とした。FT-IRの条件は、ピーク面積S1と同様である。
【0197】
〔接着層に含まれる樹脂粒子の膨潤度〕
樹脂粒子の水分散液を内寸50mm×70mmの金属枠を付帯したガラス板上に流し込み、150℃で1時間乾燥させて、シート状の測定用サンプルを作製した。上記にて作製した測定用サンプルを約1g分切り出し、その重量W1(g)を電子天秤で正確に測定した後、60℃の電解液〔1mol/L LiBF4 エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート(体積比3:7)〕中に、24時間浸漬させた。浸漬後の測定用サンプルを電解液から取り出し、表面に付着した電解液を拭き取った後、その重量W2(g)を電子天秤で測定し、下記の式により、樹脂粒子の膨潤度(%)を求めた。
膨潤度(%)=(W2/W1)×100
【0198】
〔セパレータの熱収縮率〕
セパレータをMD方向100mm×TD方向100mmに切り出した。次いで、切り出したセパレータの中心を通過するように、MD方向に70mmの長さの基準線を引き、試験片とした。2枚のA4サイズの用紙の間に試験片を配置した後、130℃のオーブン中に60分間静置した。熱処理前後の試験片のMD方向の長さを測定し、下記の式により熱収縮率を算出した。以上の操作を更に2回行い、試験片3枚の熱収縮率を平均して、セパレータの熱収縮率を求めた。
熱収縮率(%)={(熱処理前のMD方向の長さ-熱処理後のMD方向の長さ)÷熱処理前のMD方向の長さ}×100
【0199】
〔電極とセパレータとの接着強度:ドライヒートプレス〕
正極活物質であるコバルト酸リチウム粉末97g、導電助剤であるアセチレンブラック1.5g、バインダであるポリフッ化ビニリデン1.5g、及び適量のN-メチルピロリドンを双腕式混合機にて撹拌混合し、正極用スラリーを作製した。この正極用スラリーを厚さ20μmのアルミ箔の片面に塗布し、乾燥後プレスして、正極活物質層を有する正極(片面塗工)を得た。
【0200】
上記で得た正極を幅15mm、長さ70mmに切り出し、セパレータをTD方向18mm、MD方向75mmに切り出し、厚さ20μmのアルミ箔を幅15mm、長さ70mmに切り出した。正極/セパレータ/アルミ箔の順に重ねて積層体を作製し、この積層体を外装材であるアルミラミネート製パックの中に収容した。次いで、真空シーラーを用いてパック内を真空状態にした後、パックを封止した。次いで、熱プレス機を用いて、パックごと積層体を熱プレス(温度85℃、荷重1MPa、プレス時間30秒)して、パックの中の正極とセパレータとを接着させた。その後、パックを開封し、積層体を取り出し、積層体からアルミ箔を取り除いたものを試験片とした。
【0201】
試験片のセパレータをテンシロン〔STB-1225S、(株)エー・アンド・デイ製〕の下部チャックに固定した。この際、試験片の長さ方向(即ち、セパレータのMD方向)が重力方向になるように、セパレータをテンシロンに固定した。正極を下部の端から2cm程度セパレータから剥がして、その端部を上部チャックに固定し、180°剥離試験を行った。180°剥離試験の引張速度は100mm/分とし、測定開始後10mmから40mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出した。さらに試験片3枚の荷重を平均して、ドライヒートプレスしたときの電極とセパレータとの接着強度(N/15mm)とした。表3及び表4中では、ドライヒートプレスしたときの電極とセパレータとの接着強度を「電極とセパレータとのドライ接着強度」と表記した。
【0202】
〔電極とセパレータとの接着強度:ウェットヒートプレス〕
正極活物質であるコバルト酸リチウム粉末97g、導電助剤であるアセチレンブラック1.5g、バインダであるポリフッ化ビニリデン1.5g、及び適量のN-メチルピロリドンを双腕式混合機にて撹拌混合し、正極用スラリーを作製した。この正極用スラリーを厚さ20μmのアルミ箔の片面に塗布し、乾燥後プレスして、正極活物質層を有する正極(片面塗工)を得た。
【0203】
上記で得た正極を幅15mm、長さ70mmに切り出し、セパレータをTD方向18mm、MD方向75mmに切り出し、厚さ20μmのアルミ箔を幅15mm、長さ70mmに切り出した。正極/セパレータ/アルミ箔の順に重ねて積層体を作製し、この積層体を外装材であるアルミラミネート製パックの中に収容した後、電解液(1mol/LのLiBF4-エチレンカーボネート:ジエチルカーボネート:プロピレンカーボネート[質量比1:1:1])を注入し、真空脱泡を5回繰り返した。次いで、余分な電解液を除去し、パックを封止後、24時間放置した。次いで、熱プレス機を用いて、パックごと積層体を熱プレス(温度85℃、荷重1MPa、プレス時間15秒)して、パックの中の正極とセパレータとを接着させた。その後、パックを開封し、積層体を取り出し、積層体からアルミ箔を取り除いたものを試験片とした。
【0204】
試験片のセパレータをテンシロン〔STB-1225S、(株)エー・アンド・デイ製〕の下部チャックに固定した。この際、試験片の長さ方向(即ち、セパレータのMD方向)が重力方向になるように、セパレータをテンシロンに固定した。正極を下部の端から2cm程度セパレータから剥がして、その端部を上部チャックに固定し、180°剥離試験を行った。180°剥離試験の引張速度は100mm/分とし、測定開始後10mmから40mmまでの荷重(N)を0.4mm間隔で採取し、その平均を算出した。さらに試験片3枚の荷重を平均して、ウェットヒートプレスしたときの電極とセパレータとの接着強度(N/15mm)とした。表3及び表4中では、ウェットヒートプレスしたときの電極とセパレータとの接着強度を「電極とセパレータとのウェット接着強度」と表記した。
【0205】
[ガス発生量]
セパレータを600cm2の大きさに切り出してアルミラミネートフィルム製パック中に入れ、パック中に電解液を注入してセパレータに電解液を含浸させ、パックを封止して試験セルを得た。電解液としては、LiPF6-エチレンカーボネート及びエチルメチルカーボネートの1mol/L混合溶液(LiPF6-エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:7[質量比])を用いた。試験セルを温度85℃の環境下に20日間置き、熱処理前後の試験セルの体積を測定した。熱処理後の試験セルの体積V2から熱処理前の試験セルの体積V1を減算することでガス発生量V(=V2-V1、単位:mL)を求めた。さらに試験セル10個のガス発生量Vを平均した。
【0206】
[X線画像内のセパレータの明瞭さ]
(負極の作製)
負極活物質である人造黒鉛300g、バインダであるスチレン-ブタジエン共重合体の変性体を40質量%含む水溶性分散液7.5g、増粘剤であるカルボキシメチルセルロース3g、及び適量の水を双腕式混合機にて攪拌し、負極用スラリーを作製した。この負極用スラリーを負極集電体である厚さ10μmの銅箔の両面に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、プレスして負極活物質層を両面に有する負極を作製した。
(正極の作製)
正極活物質であるコバルト酸リチウム粉末を89.5g、導電助剤のアセチレンブラック4.5g、バインダであるポリフッ化ビニリデン6g、及び適量のN-メチルピロリドンを双腕式混合機にて攪拌し、正極用スラリーを作製した。この正極用スラリーを正極集電体である厚さ20μmのアルミ箔の両面に塗布し、得られた塗膜を乾燥し、プレスして正極活物質層を両面に有する正極を作製した。
(観察用サンプルの作製)
正極を30mm×50mmの長方形に切り出し、負極を30mm×50mmの長方形に切り出し、セパレータを34mm×54mmの長方形に切り出した。正極、セパレータ、負極、セパレータの順に積層し、正極及び負極をそれぞれ3層有し、セパレータを5層有する積層体を作製した。積層体をアルミニウムラミネートフィルム製のパック中に挿入し、真空シーラーを用いてパック内を真空状態にして封止し、観察用サンプルを得た。
(X線CT観察)
X線CT画像撮影には、島津製作所製のマイクロフォーカスX線CTシステム(inspeXio SMX-225CT FPD HR)を用いた。X線管電圧を220kV、X線管電流を100μA、露光時間1secとして測定用サンプルの端部において積層体の厚さ方向断面を撮像した。X線CT画像からセパレータ部分のGV(グレイバリュー)値を測定し、その値から下記基準に則りX線画像内のセパレータの明瞭さをレベル分けした。GVの値は、大きいほど望ましい。
レベル5: 37301以上
レベル4: 36501以上37300以下
レベル3: 35701以上36500以下
レベル2: 35251以上35700以下
レベル1: 35250以下
【0207】
[セパレータの作製]
(実施例1)
メタ型アラミド〔ポリメタフェニレンイソフタルアミド、帝人(株)製のコーネックス(登録商標);芳香族系樹脂〕と、硫酸バリウム粒子〔平均一次粒径0.05μm;無機粒子〕とを、両者の質量比が20:80で、メタ型アラミド濃度が5質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)との混合溶媒(DMAc:TPG=90:10[質量比])に撹拌混合し、耐熱性多孔質層形成用塗工液を得た。
フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子(A)〔アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含む共重合体である樹脂粒子、共重合体中の含有質量比(スチレン系単量体単位:アクリル系単量体単位)62:38、ガラス転移温度52℃、体積平均粒径0.5μm〕と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系樹脂粒子〔融点140℃、体積平均粒径0.25μm〕とが、混合質量比50:50で、水に分散した接着層形成用樹脂粒子分散液(固形分濃度7質量%)を用意した。
一対のマイヤーバーに耐熱性多孔質層形成用塗工液を適量のせ、多孔質基材であるポリエチレン微多孔膜(厚さ8μm、空孔率33%、ガーレ値160秒/100mL)をマイヤーバー間に通して、耐熱性多孔質層形成用塗工液を両面に等量塗工した。これを、凝固液(DMAc:TPG:水=30:8:62[質量比]、液温25℃)に浸漬し塗工層を固化させ、次いで、水温25℃の水洗槽で洗浄し、乾燥した。次いで、これを、接着層形成用樹脂粒子分散液を適量のせた一対のバーコータ間に通して、接着層形成用樹脂粒子分散液を両面に等量塗工し、乾燥した。このようにして、ポリエチレン微多孔膜の両面に耐熱性多孔質層〔単位面積あたりの質量6.0g/m2(両面合計)、厚み4.0μm(両面合計)〕及び接着層〔単位面積あたりの質量0.5g/m2(両面合計)〕が形成されたセパレータ(構成:接着層/耐熱性多孔質層/多孔質基材/耐熱性多孔質層/接着層)を得た。
【0208】
(実施例2)
接着層形成用樹脂粒子分散液を、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子(B)〔アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含む共重合体である樹脂粒子、共重合体中の含有質量比(スチレン系単量体単位:アクリル系単量体単位)89:11、ガラス転移温度50℃、体積平均粒径0.5μm〕と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系樹脂粒子〔融点140℃、体積平均粒径0.25μm〕とが、混合質量比50:50で、水に分散した接着層形成用樹脂粒子分散液(固形分濃度7質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0209】
(実施例3)
接着層形成用樹脂粒子分散液を、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子(C)〔アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含む共重合体である樹脂粒子、共重合体中の含有質量比(スチレン系単量体単位:アクリル系単量体単位)18:82、ガラス転移温度54℃、体積平均粒径0.5μm〕と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系樹脂粒子〔融点140℃、体積平均粒径0.25μm〕とが、混合質量比50:50で、水に分散した接着層形成用樹脂粒子分散液(固形分濃度7質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0210】
(実施例4)
接着層形成用樹脂粒子分散液を、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子(A)〔アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含む共重合体である樹脂粒子、共重合体中の含有質量比(スチレン系単量体単位:アクリル系単量体単位)62:38、ガラス転移温度52℃、体積平均粒径0.5μm〕が水に分散した接着層形成用樹脂粒子分散液(固形分濃度7質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0211】
(実施例5)
接着層形成用樹脂粒子分散液を、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子(A)〔アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含む共重合体である樹脂粒子、共重合体中の含有質量比(スチレン系単量体単位:アクリル系単量体単位)62:38、ガラス転移温度52℃、体積平均粒径0.5μm〕と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系樹脂粒子〔融点140℃、体積平均粒径0.25μm〕とが、混合質量比90:10で、水に分散した接着層形成用樹脂粒子分散液(固形分濃度7質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0212】
(実施例6)
接着層形成用樹脂粒子分散液を、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子(A)〔アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含む共重合体である樹脂粒子、共重合体中の含有質量比(スチレン系単量体単位:アクリル系単量体単位)62:38、ガラス転移温度52℃、体積平均粒径0.5μm〕と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系樹脂粒子〔融点140℃、体積平均粒径0.25μm〕とが、混合質量比70:30で、水に分散した接着層形成用樹脂粒子分散液(固形分濃度7質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0213】
(実施例7)
接着層形成用樹脂粒子分散液を、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子(A)〔アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含む共重合体である樹脂粒子、共重合体中の含有質量比(スチレン系単量体単位:アクリル系単量体単位)62:38、ガラス転移温度52℃、体積平均粒径0.5μm〕と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系樹脂粒子〔融点140℃、体積平均粒径0.25μm〕とが、混合質量比30:70で、水に分散した接着層形成用樹脂粒子分散液(固形分濃度7質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0214】
(実施例8)
接着層形成用樹脂粒子分散液を、フェニル基含有アクリル系樹脂を含む接着性樹脂粒子(A)〔アクリル系単量体単位及びスチレン系単量体単位を含む共重合体である樹脂粒子、共重合体中の含有質量比(スチレン系単量体単位:アクリル系単量体単位)62:38、ガラス転移温度52℃、体積平均粒径0.5μm〕と、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系樹脂粒子〔融点140℃、体積平均粒径0.25μm〕とが、混合質量比10:90で、水に分散した接着層形成用樹脂粒子分散液(固形分濃度7質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0215】
(実施例9)
耐熱性多孔質層形成用塗工液を、メタ型アラミド〔ポリメタフェニレンイソフタルアミド、帝人(株)製のコーネックス(登録商標);芳香族系樹脂〕と、硫酸バリウム粒子〔平均一次粒径0.01μm;無機粒子〕とを、両者の質量比が20:80で、メタ型アラミド濃度が5質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)との混合溶媒(DMAc:TPG=90:10[質量比])に撹拌混合して得た耐熱性多孔質層形成用塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0216】
(実施例10)
耐熱性多孔質層形成用塗工液を、メタ型アラミド〔ポリメタフェニレンイソフタルアミド、帝人(株)製のコーネックス(登録商標);芳香族系樹脂〕と、硫酸バリウム粒子〔平均一次粒径0.3μm;無機粒子〕とを、両者の質量比が20:80で、メタ型アラミド濃度が5質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)との混合溶媒(DMAc:TPG=90:10[質量比])に撹拌混合して得た耐熱性多孔質層形成用塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0217】
(実施例11)
耐熱性多孔質層形成用塗工液を、メタ型アラミド〔ポリメタフェニレンイソフタルアミド、帝人(株)製のコーネックス(登録商標);芳香族系樹脂〕と、硫酸バリウム粒子〔平均一次粒径0.45μm;無機粒子〕とを、両者の質量比が20:80で、メタ型アラミド濃度が5質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)との混合溶媒(DMAc:TPG=90:10[質量比])に撹拌混合して得た耐熱性多孔質層形成用塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0218】
(実施例12)
耐熱性多孔質層形成用塗工液を、メタ型アラミド〔ポリメタフェニレンイソフタルアミド、帝人(株)製のコーネックス(登録商標);芳香族系樹脂〕と、硫酸バリウム粒子〔平均一次粒径0.7μm;無機粒子〕とを、両者の質量比が20:80で、メタ型アラミド濃度が5質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)との混合溶媒(DMAc:TPG=90:10[質量比])に撹拌混合して得た耐熱性多孔質層形成用塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0219】
(実施例13)
ポリエチレン微多孔膜の両面に形成される耐熱性多孔質層を、単位面積あたりの質量3.0g/m2(両面合計)で厚み2.0μm(両面合計)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0220】
(実施例14)
ポリエチレン微多孔膜の両面に形成される耐熱性多孔質層を、単位面積あたりの質量2.4g/m2(両面合計)で厚み1.5μm(両面合計)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0221】
(実施例15)
耐熱性多孔質層形成用塗工液を、ポリアミドイミド〔Torlon(登録商標)4000TF、Solvay社製;芳香族系樹脂〕と、硫酸バリウム粒子〔平均一次粒径0.05μm;無機粒子〕とを、両者の質量比が20:80で、ポリアミドイミド濃度が8質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)との混合溶媒(DMAc:TPG=90:10[質量比])に撹拌混合して得た耐熱性多孔質層形成用塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0222】
(実施例16)
耐熱性多孔質層形成用塗工液を、ポリイミド〔Q-VR-X1444、(株)ピーアイ技術研究所;芳香族系樹脂〕と、硫酸バリウム粒子〔平均一次粒径0.05μm;無機粒子〕とを、両者の質量比が20:80で、ポリイミド濃度が6質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)との混合溶媒(DMAc:TPG=90:10[質量比])に撹拌混合して得た耐熱性多孔質層形成用塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0223】
(実施例17)
ポリエチレン微多孔膜の両面に形成される接着層を、単位面積あたりの質量1.0g/m2(両面合計)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0224】
(実施例18)
ポリエチレン微多孔膜の両面に形成される接着層を、単位面積あたりの質量0.3g/m2(両面合計)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0225】
(比較例1)
接着層形成用樹脂粒子分散液を、フェニル基未含有アクリル系樹脂粒子〔ガラス転移温度56℃、体積平均粒径0.5μm〕が水に分散した接着層形成用樹脂粒子分散液(固形分濃度7質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0226】
(比較例2)
接着層形成用樹脂粒子分散液を、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)系樹脂粒子〔融点140℃、体積平均粒径0.25μm〕が水に分散した接着層形成用樹脂粒子分散液(固形分濃度7質量%)に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0227】
(比較例3)
耐熱性多孔質層形成用塗工液を、メタ型アラミド〔ポリメタフェニレンイソフタルアミド、帝人(株)製のコーネックス(登録商標);芳香族系樹脂〕と、水酸化マグネシウム粒子〔平均一次粒径0.3μm;無機粒子〕とを、両者の質量比が20:80で、メタ型アラミド濃度が5質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)との混合溶媒(DMAc:TPG=90:10[質量比])に撹拌混合して得た耐熱性多孔質層形成用塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0228】
(比較例4)
耐熱性多孔質層形成用塗工液を、メタ型アラミド〔ポリメタフェニレンイソフタルアミド、帝人(株)製のコーネックス(登録商標);芳香族系樹脂〕と、水酸化マグネシウム粒子〔平均一次粒径0.8μm;無機粒子〕とを、両者の質量比が20:80で、メタ型アラミド濃度が5質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)との混合溶媒(DMAc:TPG=90:10[質量比])に撹拌混合して得た耐熱性多孔質層形成用塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0229】
(比較例5)
耐熱性多孔質層形成用塗工液を、メタ型アラミド〔ポリメタフェニレンイソフタルアミド、帝人(株)製のコーネックス(登録商標);芳香族系樹脂〕と、酸化アルミニウム粒子〔平均一次粒径0.01μm;無機粒子〕とを、両者の質量比が20:80で、メタ型アラミド濃度が5質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)との混合溶媒(DMAc:TPG=90:10[質量比])に撹拌混合して得た耐熱性多孔質層形成用塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0230】
(比較例6)
耐熱性多孔質層形成用塗工液を、メタ型アラミド〔ポリメタフェニレンイソフタルアミド、帝人(株)製のコーネックス(登録商標);芳香族系樹脂〕と、酸化アルミニウム粒子〔平均一次粒径0.3μm;無機粒子〕とを、両者の質量比が20:80で、メタ型アラミド濃度が5質量%となるように、ジメチルアセトアミド(DMAc)とトリプロピレングリコール(TPG)との混合溶媒(DMAc:TPG=90:10[質量比])に撹拌混合して得た耐熱性多孔質層形成用塗工液に変更した以外は、実施例1と同様にしてセパレータを作製した。
【0231】
【0232】
【0233】
【0234】
【0235】
表3~表4に示すように、実施例のセパレータは、ドライヒートプレス及びウェットヒートプレスのいずれによっても電極との接着性に優れていた。また、実施例のセパレータは、ガス発生量が少ないものであった。