(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164132
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】液体水素気化システム
(51)【国際特許分類】
F25J 3/04 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
F25J3/04 103
F25J3/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075482
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000110099
【氏名又は名称】トキコシステムソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 純
(72)【発明者】
【氏名】高橋 強
(72)【発明者】
【氏名】蓮仏 達也
【テーマコード(参考)】
4D047
【Fターム(参考)】
4D047AA08
4D047AB02
4D047CA06
4D047DA04
4D047DA14
(57)【要約】
【課題】液体水素から水素ガスを生成する際に、液体水素の冷熱エネルギを有効活用することが可能な技術を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る液体水素気化システム100は、液体水素と気体空気との間で熱交換を行う熱交換器51と、熱交換器51から出力される気液二相の水素を気体と液体に分離する気液分離器52と、熱交換器51から出力される液体空気が保持される液体空気ドラム54と、気液分離器52で分離される液体水素を用いて、液体空気ドラム54から蒸発する気体空気を凝縮する凝縮器53と、液体空気ドラム54と凝縮器53との間に設けられ、液体空気ドラム54から蒸発する気体と凝縮器53で凝縮され還流する液体との接触により精留を行う精留塔55と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体水素と気体空気との間で熱交換を行う第1の熱交換部と、
前記第1の熱交換部から出力される気液二相の水素を気体と液体に分離する気液分離部と、
前記第1の熱交換部から出力される液体空気が保持される保持部と、
前記気液分離部で分離される液体水素を用いて、前記保持部から蒸発する気体空気を凝縮する凝縮部と、
前記保持部と前記凝縮部との間に設けられ、前記保持部から蒸発する気体と前記凝縮部で凝縮され還流する液体との接触により精留を行う精留部と、を備える、
液体水素気化システム。
【請求項2】
前記気液分離部から出力される気体水素と、気体空気との間で熱交換を行う第2の熱交換部を備え、
前記第1の熱交換部は、前記第2の熱交換部から出力される気体空気と、液体水素との間で熱交換を行う、
請求項1に記載の液体水素気化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液体水素気化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液体水素を大気との間での熱交換により気化することにより、水素ガスを利用可能に生成する技術が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、液体水素の冷熱エネルギは、大気に散逸される。そのため、省エネルギの観点で改善の余地がある。
【0005】
そこで、上記課題に鑑み、液体水素から水素ガスを生成する際に、液体水素の冷熱エネルギを有効活用することが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一実施形態では、
液体水素と気体空気との間で熱交換を行う第1の熱交換部と、
前記第1の熱交換部から出力される気液二相の水素を気体と液体に分離する気液分離部と、
前記第1の熱交換部から出力される液体空気が保持される保持部と、
前記気液分離部で分離される液体水素を用いて、前記保持部から蒸発する気体空気を凝縮する凝縮部と、
前記保持部と前記凝縮部との間に設けられ、前記保持部から蒸発する気体と前記凝縮部で凝縮され還流する液体との接触により精留を行う精留部と、を備える、
液体水素気化システムが提供される。
【発明の効果】
【0007】
上述の実施形態によれば、液体水素から水素ガスを生成する際に、液体水素の冷熱エネルギを有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】液体水素気化システムの構成の第1例を示す図である。
【
図2】液体水素気化システムの構成の第2例を示す図である。
【
図3】水素ガス充填システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して実施形態について説明する。
【0010】
[液体水素気化システムの第1例]
図1を参照して、本実施形態に係る液体水素気化システム100の第1例について説明する。
【0011】
図1は、液体水素気化システム100の構成の第1例を示す図である。
【0012】
液体水素気化システム100は、液体水素貯槽10と、液体水素低圧ポンプ20と、空気ブロワ30と、空気ドライヤ40と、コールドボックス保冷槽50とを含む。
【0013】
液体水素気化システム100は、液体水素貯槽10の液体水素の寒冷(冷熱エネルギ)を有効利用後、液体水素を気化させて、水素ガス(気体水素)として外部に出力する。
【0014】
液体水素貯槽10は、液体水素を貯留する。
【0015】
液体水素貯槽10は、管L1によってコールドボックス保冷槽50と接続される。これにより、液体水素貯槽10は、管L1を通じて、コールドボックス保冷槽50に液体水素を供給する。管L1は、断熱構造を有している。
【0016】
液体水素低圧ポンプ20は、管L1に配置される。具体的には、管L1は、管L11,L12を含み、液体水素低圧ポンプ20は、管L11を通じて液体水素貯槽10と接続され、管L12を通じてコールドボックス保冷槽50と接続される。液体水素低圧ポンプ20は、管L11から液体水素を吸い込み、液体水素を昇圧して管L12に吐出する。昇圧された液体水素は、管L12を通じて、コールドボックス保冷槽50に供給される。これにより、液体水素低圧ポンプ20による昇圧の程度を調整することによって、後述の凝縮器53での運転圧力、即ち、液体水素側の飽和温度を調整することができる。液体水素低圧ポンプ20における液体水素の昇圧レベルは、熱交換器51で温度上昇した水素ガスが、気液分離器53に対して膨張するときに液化領域にある圧力範囲で行われる。
【0017】
空気ブロワ30は、液体水素の冷熱エネルギによって後述の如く成分分離される原料となる大気を吸入し昇圧して管L2に吐出する。
【0018】
空気ドライヤ40は、管L2と接続され、管L2を通じて供給される圧縮空気を除湿し乾燥させる。空気ドライヤ40により除湿し乾燥された圧縮空気は管L3に出力され、除湿し乾燥された空気は、管L3を通じてコールドボックス保冷槽50に供給される。
【0019】
コールドボックス保冷槽50は、熱交換器51と、気液分離器52と、凝縮器53と、液体空気ドラム54と、精留塔55とを含む。
【0020】
熱交換器51(第1の熱交換部の一例)は、管L12を通じてコールドボックス保冷槽50に供給される液体水素と、管L3を通じてコールドボックス保冷槽50に供給される圧縮空気との間で熱交換を行う。具体的には、管L12は、コールドボックス保冷槽50の内部の入力管LI1に接続され、入力管LI1を通じて、熱交換器51に液体水素が供給される。また、管L3は、コールドボックス保冷槽50の内部の入力管LI2と接続され、入力管LI2を通じて、熱交換器51に圧縮空気が供給される。
【0021】
熱交換器51は、圧縮空気から液体水素に熱エネルギを移動させ、一部が気化された気液二相の水素を中間管LM1に出力すると共に、液化された空気(液体空気)を中間管LM2に出力する。
【0022】
気液分離器52(気液分離部の一例)は、中間管LM1と接続され、中間管LM1を通じて供給される気液二相の水素を液体水素と気体の水素(水素ガス)とに分離する。気液分離器52は、その上部に分離される水素ガスを出力管LO1に出力する。これにより、出力管LO1を通じて、コールドボックス保冷槽50の外部に取り出される水素ガスを所定の用途に利用することができる(例えば、後述の
図3参照)。
【0023】
凝縮器53(凝縮部の一例)は、気液分離器52の下部に分離される液体水素を利用して、精留塔55を通じて供給される気体を凝縮させ、精留塔55に還流させる。
【0024】
液体空気ドラム54(保持部の一例)は、中間管LM2と接続され、中間管LM2を通じて供給される液体空気を保持する。
【0025】
精留塔55(精留部の一例)は、凝縮器53と液体空気ドラム54との間に設けられ、液体空気ドラム54から蒸発する空気と、凝縮器53から還流される液体との接触により、液体空気ドラム54から蒸発する空気の精留を行う。これにより、精留塔55の最上部には、相対的に沸点が低い成分、具体的には、非常に高い純度の液体窒素が生成することができ、液体空気ドラム54には、相対的に沸点が高い成分、具体的には、酸素濃度が非常に高い液体空気を蓄積させることができる。
【0026】
精留塔55の最上部には、出力管LO2が接続され、液体窒素は、出力管LO2に出力される。これにより、出力管LO2を通じて、コールドボックス保冷槽50の外部に取り出される液体窒素を所定の用途に利用することができる。
【0027】
液体空気ドラム54には、出力管LO3が接続され、酸素濃度が非常に高い液体空気を出力管LO3に出力する。これにより、出力管LO3を通じて、コールドボックス保冷槽50の外部に取り出される、酸素濃度が非常に高い液体空気を所定の用途に利用することができる。
【0028】
このように、本例では、液体水素気化システム100は、液体水素を空気との熱交換により気化させる際に、液体水素の冷熱エネルギを利用して、液体空気との熱交換により液化された空気を液体窒素と酸素濃度が非常に高い液体空気とに分離することができる。
【0029】
[液体水素気化システムの第2例]
次に、
図2を参照して、本実施形態に係る液体水素気化システム100の第2例について説明する。
【0030】
以下、上述の第1例と異なる内容を中心に説明を行い、上述の第1例と同じ或いは対応する内容の説明を簡略化或いは省略する場合がある。
【0031】
図2は、液体水素気化システム100の構成の第2例を示す図である。
【0032】
液体水素気化システム100は、上述の第1例と同様、熱交換器51と、気液分離器52と、凝縮器53と、液体空気ドラム54と、精留塔55とを含む。また、液体水素気化システム100は、上述の第1例と異なり、熱交換器56を含む。
【0033】
気液分離器52は、中間管LM3と接続され、その上部に分離される水素ガスを中間管LM3に出力する。
【0034】
熱交換器56(第2の熱交換部の一例)は、入力管LI2を通じて供給される圧縮空気と、中間管LM3を通じて供給される水素ガスとの間で熱交換を行い、水素ガスを出力管LO1に出力すると共に、圧縮空気を中間管LM4に出力する。これにより、水素ガスの温度を更に回復(上昇)させた状態で、コールドボックス保冷槽50の外部に水素ガスを取り出すことができる。
【0035】
熱交換器51は、中間管LM4と接続され、中間管LM4を通じて供給される圧縮空気と、入力管LI1を通じて供給される液体水素との間で熱交換を行う。
【0036】
このように、本例では、液体水素気化システム100は、水素ガスを圧縮空気と熱交換させることにより、より高い温度の水素ガスを外部に出力することができる。
【0037】
[液体水素気化システムの適用例]
次に、
図3を参照して、液体水素気化システム100の適用例について説明する。
【0038】
図3は、液体水素気化システム100の適用例を示す図である。具体的には、
図3は、水素ガス充填システム1の一例を示す図である。
【0039】
尚、
図3では、液体水素気化システム100の液体水素低圧ポンプ20、空気ブロワ30、空気ドライヤ40等の一部の構成の図示が省略されている。
【0040】
図3に示すように、水素ガス充填システム1は、液体水素気化システム100と、水素ガス圧縮部200と、高圧水素ガス貯蔵部300と、ディスペンサ400とを含む。
【0041】
液体水素気化システム100は、ローリRLにより運び込まれる液体水素を液体水素貯槽10に受け入れ、液体水素貯槽10の液体水素からコールドボックス保冷槽50で水素ガスを生成し出力する。
【0042】
水素ガス圧縮部200は、低圧水素ガス貯蔵タンク210と、圧縮機220とを含む。
【0043】
低圧水素ガス貯蔵タンク210は、液体水素気化システム100から出力される、相対的に低い圧力の水素ガスを貯蔵する。
【0044】
圧縮機220は、低圧水素ガス貯蔵タンク210から供給される水素ガスを圧縮し、相対的に高い圧力に昇圧された水素ガスを出力する。
【0045】
水素ガス圧縮部200(圧縮機220)から出力される高圧の水素ガスは、高圧水素ガス貯蔵部300及びディスペンサ400の少なくとも一方に供給される。
【0046】
高圧水素ガス貯蔵部300は、水素ガス圧縮部200から出力される高圧の水素ガスを貯蔵すると共に、ディスペンサ400に高圧の水素ガスを供給する。例えば、高圧水素ガス貯蔵部300は、非常に高い耐圧性能を有し、高圧の水素ガスを貯蔵可能な複数の水素ガス貯蔵タンクを含む。
【0047】
ディスペンサ400は、水素ガス圧縮部200及び高圧水素ガス貯蔵部300の少なくとも一方から供給される高圧の水素ガスを車両VCLの水素タンクTNKに充填する。車両VCLは、例えば、水素ガスを燃料として発電可能な燃料電池を搭載する燃料電池車である。
【0048】
ディスペンサ400は、プレクーラ410を含む。
【0049】
プレクーラ410は、水素ガス圧縮部200及び高圧水素ガス貯蔵部300の少なくとも一方から供給される高圧の水素ガスを、水素タンクTNKへの充填前に冷却し、冷却された高圧の水素ガスを水素タンクTNKに向けて出力する。これにより、水素タンクTNKの温度を所定基準以下に抑制することができる。
【0050】
プレクーラ410は、冷却部411と、冷凍機412とを含む。
【0051】
冷却部411は、水素ガス圧縮部200及び高圧水素ガス貯蔵部300の少なくとも一方から供給される高圧の水素ガスを冷却する。
【0052】
冷凍機412は、冷却部411に水素ガスを冷却するための冷熱エネルギを供給する。
【0053】
尚、液体水素気化システム100から出力される水素ガスをディスペンサ400にバイパスさせる経路を設けて、ディスペンサ400から水素タンクTNKに充填される水素ガスに対して、液体水素気化システム100から出力される水素ガスが直接混合されてもよい。これにより、液体水素気化システム100から出力される、極低温の水素ガスによって、ディスペンサ400から水素タンクTNKに充填される水素ガスの温度を低下させることができる。この場合、プレクーラ410は省略されてもよい。
【0054】
このように、液体水素気化システム100を水素ガス充填システム1に適用することができる。
【0055】
[作用]
次に、本実施形態に係る液体水素気化システム100の作用について説明する。
【0056】
本実施形態では、液体水素気化システム100は、熱交換器51と、気液分離器52と、液体空気ドラム54と、凝縮器53と、精留塔55と、を備える。具体的には、熱交換器51は、液体水素と気体空気との間で熱交換を行う。また、気液分離器52は、熱交換器51から出力される気液二相の水素を気体と液体に分離する。また、液体空気ドラム54には、熱交換器51から出力される液体空気が保持される。また、凝縮器53は、気液分離器52で分離される液体水素を用いて、液体空気ドラム54から蒸発する気体空気を凝縮する。そして、精留塔55は、液体空気ドラム54と凝縮器53との間に設けられ、液体空気ドラム54から蒸発する気体と凝縮器53で凝縮され還流する液体との接触により精留を行う。
【0057】
これにより、液体水素気化システム100は、気液分離器52で分離される液体水素の冷熱エネルギを利用して、液体空気を純度の高い液体窒素と酸素濃度の高い液体空気とに
分離し外部に供給することができる。そのため、液体水素気化システム100は、液体水素から水素ガスを生成する際に、液体水素の冷熱エネルギを有効活用することができる。
【0058】
また、本実施形態では、液体水素気化システム100は、気液分離器52から出力される気体水素(水素ガス)と、気体空気との間で熱交換を行う第2の熱交換部を備えてもよい。そして、熱交換器51は、熱交換器56から出力される気体空気と、液体水素との間で熱交換を行ってもよい。
【0059】
これにより、液体水素気化システム100は、水素ガスの温度をより高い状態で外部に出力することができる。
【0060】
以上、実施形態について詳述したが、本開示はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 水素ガス充填システム
10 液体水素貯槽
20 ポンプ
30 ブロワ
40 ドライヤ
50 コールドボックス保冷槽
51 熱交換器
52 気液分離器
53 凝縮器
54 液体空気ドラム
55 精留塔
56 熱交換器
100 液体水素気化システム
200 水素ガス圧縮部
210 低圧水素ガス貯蔵タンク
220 圧縮機
300 高圧水素ガス貯蔵部
400 ディスペンサ
410 プレクーラ
411 冷却部
412 冷凍機
LI1,LI2 入力管
LO1~LO3 出力管
RL ローリ
TNK 水素タンク
VCL 車両