(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164152
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 69/02 20060101AFI20231102BHJP
A01D 67/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A01D69/02
A01D67/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075502
(22)【出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 学
【テーマコード(参考)】
2B076
【Fターム(参考)】
2B076AA03
2B076BA07
2B076BA08
(57)【要約】
【課題】
バッテリと充電用の配線の接続作業が容易に行え、充電作業による刈取収穫作業の中断時間を短縮することができるコンバインを提供すること。
【解決手段】
走行装置2で走行する機体の前側に刈取装置3と操縦部5を設け、刈取装置3で刈り取った穀稈から穀粒を分離する選別装置4を機体左右一側に寄せて設け、選別装置4で回収された穀粒を貯留する貯留装置7を機体左右他側に寄せて設け、貯留装置7から穀粒を機外に排出する排出装置70を設け、機体に設ける複数の装置のうち、一部または全部に駆動力を供給する電動アクチュエータを設け、電動アクチュエータの電源である充放電バッテリ60を設け、充放電バッテリ60は、選別装置4と貯留装置7の左右間に設けると共に、充放電バッテリ60に給電するプラグ61は、機体の左右他側または後側に設けて構成する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行装置(2)で走行する機体の前側に刈取装置(3)と操縦部(5)を設け、該刈取装置(3)で刈り取った穀稈から穀粒を分離する選別装置(4)を機体左右一側に寄せて設け、該選別装置(4)で回収された穀粒を貯留する貯留装置(7)を機体左右他側に寄せて設け、該貯留装置(7)から穀粒を機外に排出する排出装置(70)を設けたコンバインにおいて、
機体に設ける前記複数の装置のうち、一部または全部に駆動力を供給する電動アクチュエータを設け、該電動アクチュエータの電源である充放電バッテリ(60)を設け、
該充放電バッテリ(60)は、前記選別装置(4)と貯留装置(7)の左右間に設けると共に、該充放電バッテリ(60)に給電するプラグ(61)は、機体の左右他側または後側に設けることを特徴とするコンバイン。
【請求項2】
前記排出装置(70)は、機体側に設けられる固定排出部材(72a)と、該固定排出部材(72a)に摺動自在に設けられる移動排出部材(72b)で伸縮可能に構成し、
前記排出装置(70)から排出される穀粒を回収する補助作業機(81)を圃場内または圃場外に随伴させ、該補助作業機(81)には、機体に搭載される前記充放電バッテリ(60)に電力を供給する電源装置(82)を設け、
該移動排出部材(72b)の端部である排出口(75a)に外部コネクタ(77)を設け、該外部コネクタ(77)を前記電源装置(82)に接続し、穀粒の排出作業中に充放電バッテリ(60)の充電を行えることを特徴とする請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記外部コネクタ(77)は穀粒の排出口(75a)よりも排出装置(70)の端部側に設け、外部コネクタ(77)と排出口(75a)の間には防護部材(75b)を設け、
前記外部コネクタ(77)の上部には、前記排出装置(70)の周辺を照らし撮影するカメラユニット(84)を設けることを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記排出装置(70)は機体上下方向の縦軸を中心に回転可能に設け、穀稈の刈取作業時に前記排出装置(70)を非作業位置に移動させると排出装置(70)の端部が機体左右一側で且つ機体の左右幅よりも外側寄りに位置すると共に、
前記排出装置(70)の排出口(75a)は、前記刈取装置(3)よりも機体上方に位置する構成としたことを特徴とする請求項2に記載のコンバイン。
【請求項5】
前記貯留装置(7)の機体左右一側の外壁の下部には、機体左右他側から左右一側に向かう上方傾斜面を形成し、
前記充放電バッテリ(60)は、上方傾斜面と前記選別装置(4)の左右間に形成される載置空間部(63)に設けることを特徴とする請求項1または2に記載のコンバイン。
【請求項6】
前記充放電バッテリ(60)の機体左右他側で、且つ前記充放電バッテリ(60)よりも機体上側に送風ファン(86,87)を設け、
該送風ファン(86,87)が発生させる風を充放電バッテリ(60)側に案内するガイド壁(88)を設けたことを特徴とする請求項5に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体を構成する各装置の駆動を電動モータで行うコンバインに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のコンバインにおいて、駆動源をエンジンから電動モータに変更すると共に、刈取装置の引起装置の駆動を各々引起し電動モータにて行なう技術が知られている。(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の技術では、エンジンの代わりに用いる電動モータや、引起し装置の各々駆動させる引起し電動モータに電気を供給するバッテリの配置に言及が無く、従来のエンジン始動や前照灯の点灯に用いるバッテリだけでは、刈取収穫作業を行う時間が限られる問題がある。
【0005】
また、バッテリの配置位置によっては、充電用の配線を接続しにくく充電作業に時間がかかってしまい、刈取収穫作業が中断される時間が長くなると共に、作業者が余分に労力を費やす必要がある。
【0006】
本願発明は、上記の問題を解消すべく、バッテリと充電用の配線の接続作業が容易に行え、充電作業による刈取収穫作業の中断時間を短縮することができるコンバインを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決した本発明は次のとおりである。
すなわち、請求項1の発明は、走行装置(2)で走行する機体の前側に刈取装置(3)と操縦部(5)を設け、該刈取装置(3)で刈り取った穀稈から穀粒を分離する選別装置(4)を機体左右一側に寄せて設け、該選別装置(4)で回収された穀粒を貯留する貯留装置(7)を機体左右他側に寄せて設け、該貯留装置(7)から穀粒を機外に排出する排出装置(70)を設けたコンバインにおいて、機体に設ける前記複数の装置のうち、一部または全部に駆動力を供給する電動アクチュエータを設け、該電動アクチュエータの電源である充放電バッテリ(60)を設け、該充放電バッテリ(60)は、前記選別装置(4)と貯留装置(7)の左右間に設けると共に、該充放電バッテリ(60)に給電するプラグ(61)は、機体の左右他側または後側に設けることを特徴とするコンバインである。
【0008】
請求項2の発明は、前記排出装置(70)は、機体側に設けられる固定排出部材(72a)と、該固定排出部材(72a)に摺動自在に設けられる移動排出部材(72b)で伸縮可能に構成し、前記排出装置(70)から排出される穀粒を回収する補助作業機(81)を圃場内または圃場外に随伴させ、該補助作業機(81)には、機体に搭載される前記充放電バッテリ(60)に電力を供給する電源装置(82)を設け、該移動排出部材(72b)の端部である排出口(75a)に外部コネクタ(77)を設け、該外部コネクタ(77)を前記電源装置(82)に接続し、穀粒の排出作業中に充放電バッテリ(60)の充電を行えることを特徴とする請求項1に記載のコンバインである。
【0009】
請求項3の発明は、前記外部コネクタ(77)は穀粒の排出口(75a)よりも排出装置(70)の端部側に設け、外部コネクタ(77)と排出口(75a)の間には防護部材(75)を設け、前記外部コネクタ(77)の上部には、前記排出装置(70)の周辺を照らし撮影するカメラユニット(84)を設けることを特徴とする請求項2に記載のコンバインである。
【0010】
請求項4の発明は、前記排出装置(70)は機体上下方向の縦軸を中心に回転可能に設け、穀稈の刈取作業時に前記排出装置(70)を非作業位置に移動させると排出装置(70)の端部が機体左右一側で且つ機体の左右幅よりも外側寄りに位置すると共に、前記排出装置(70)の排出口(75a)は、前記刈取装置(3)よりも機体上方に位置する構成としたことを特徴とする請求項2に記載のコンバインである。
【0011】
請求項5の発明は、前記貯留装置(7)の機体左右一側の外壁の下部には、機体左右他側から左右一側に向かう上方傾斜面を形成し、前記充放電バッテリ(60)は、上方傾斜面と前記選別装置(4)の左右間に形成される載置空間部(63)に設けることを特徴とする請求項1または2に記載のコンバインである。
【0012】
請求項6の発明は、前記充放電バッテリ(60)の機体左右他側で、且つ前記充放電バッテリ(60)よりも機体上側に送風ファン(86,87)を設け、該送風ファン(86,87)が発生させる風を充放電バッテリ(60)側に案内するガイド壁(88)を設けたことを特徴とする請求項5に記載のコンバインである。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、充放電バッテリ(60)を選別装置(4)と貯留装置(7)の間に配置することにより、空きスペースを活用して容量の大きい充放電バッテリ(60)を配置することができるので、刈取作業時間の延長が図られる。
【0014】
また、充放電バッテリ(60)のプラグ(61)を、機体左右他側または後側に設けたことにより、妨げる部材の無い箇所でプラグ(61)の取り出しや収納を行えるので、充電作業を能率よく行える。
【0015】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明による効果に加えて、排出装置(70)の移動排出部材(72b)側に外部コネクタ(77)を設け、排出装置(70)から排出される穀粒を回収する補助作業機(81)に搭載した電源装置(82)と接続可能としたことにより、穀粒の排出作業中に充放電バッテリ(60)の充電を行うことができるので、刈取収穫作業が中断される時間の短縮が図られる。
【0016】
請求項3の発明によれば、請求項2の発明による効果に加えて、排出装置(70)から穀粒が排出される排出口(75a)と外部コネクタ(77)の間に防護部材(75b)を設けたことにより、穀粒と共に排出される茎葉部や粉体等の夾雑物が外部コネクタ(77)側に飛散することを防止できるので、外部コネクタ(77)に付着した夾雑物が充電を妨げることが防止される。
【0017】
また、カメラユニット(84)を設けたことにより、排出口(75a)から排出される穀粒や、補助作業機(81)の回収部の様子を映像や画像で確認できるので、作業者は穀粒が回収部外に落下していないかどうかを監視できると共に、問題が生じても速やかに対応できるので、穀粒が圃場に落下することが防止される。
【0018】
また、外部コネクタ(77)と電源装置(82)の接続が外れているかどうかを確認できるので、穀粒の排出作業時間を利用して充放電バッテリ(60)の電気残量を増やし、刈取収穫作業の継続時間を延長することができる。
【0019】
請求項4の発明によれば、請求項2の発明による効果に加えて、刈取収穫作業時に排出装置(70)を非作業位置に移動させると、排出装置(70)の端部を機体左右一側で且つ機体の左右幅よりも外側寄りに位置すると共に、排出口(75a)は、刈取装置(3)よりも機体上方に位置する構成としたことにより、刈取装置(3)による穀稈の刈取時に生じる茎葉部の破片や粉体が排出口(75a)付近に届くことを防止できるので、外部コネクタ(77)に茎葉部の破片や粉体が付着し、充電や放電を妨げることが防止される。
【0020】
請求項5の発明によれば、請求項1または2の発明による効果に加えて、充放電バッテリ(60)を、貯留装置(7)の機体左右一側の下部に形成される上方傾斜面と、選別装置(4)の左右間に形成される載置空間部(63)に設けることにより、機体の左右方向中央部付近に重量物である充放電バッテリ(60)を配置することができるので、機体の重量バランスが安定し、刈り取り位置のズレにより穀稈の刈り残しが生じにくくなる。
【0021】
請求項6記載の発明によれば、請求項5の発明による効果に加えて、送風ファン(86,87)を設けたことにより、充放電バッテリ(60)が負荷を受けた際に発する熱や、機体の駆動により生じる熱を冷却風で覚ますことができるので、充放電バッテリ(60)を劣化しにくくしつつ、高温による電気消費の増大を防止できる。
【0022】
また、充放電バッテリ(60)に案内するガイド壁(88)を設けたことにより、冷却風を確実に充放電バッテリ(60)に当てることができ、冷却効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図5】エンジンEの出力回転の走行装置と刈取装置への伝動図
【
図8】(a)主変速レバーの姿勢と角度センサの測定値の関係を示すグラフ (b)角度センサの測定値とトラニオン軸の開度の関係を示すグラフ (c)トラニオン軸の開度と走行装置の設定走行速度の関係を示すグラフ
【
図9】バッテリを脱穀装置とグレンタンクの空間部に配置したコンバインの背面図
【
図10】バッテリを脱穀装置とグレンタンクの空間部に配置したコンバインの平面図
【
図11】バッテリを脱穀装置とグレンタンクの空間部に配置したコンバインの側面図
【
図12】カプラにより機体側方と機体後方に充電用のケーブルを選択的に配置可能なバッテリの模式図
【
図13】充電台にバッテリを着脱可能なコンバインの側面図
【
図14】コンバインと給電バッテリを備える回収作業車を示す背面図
【
図15】コンバインと給電バッテリを備える回収作業車を示す側面図
【
図16】コンバインと給電バッテリを備える回収作業車を示す平面図
【
図17】排出オーガの端部構成と給電バッテリを備える回収作業車を示す要部平面図
【
図18】バッテリの冷却ファンを備えるコンバインの側面図
【
図19】バッテリの冷却ファンをバッテリよりも上方位置に備えるコンバインの背面図
【
図20】バッテリの冷却ファンを備えるコンバインの平面図
【
図21】バッテリの冷却ファンを備えるコンバインの側面図
【
図22】着脱バッテリを着脱可能なコンバインの背面図
【
図23】着脱バッテリを着脱可能なコンバインの側面図
【
図24】着脱バッテリを着脱可能なコンバインの平面図
【
図25】複数の着脱バッテリを装着可能な接続ケースを示す概略図
【
図26】複数の着脱バッテリを装着可能な接続ケースを備えるコンバインの背面図
【
図27】(a)バッテリ残量をパーセンテージで表示する表示パネル (b)バッテリ残量をグラフで表示する表示パネル
【
図28】バッテリマネジメントシステムと各バッテリ、及び各電動モータの繋がりを示すブロック図
【
図30】(a)燃料タンクの配置を示す要部斜視図 (b)燃料タンクの配置を示す要部側面図 (c)燃料タンクを外した状態を示す要部斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1から
図3に示すとおり、コンバインは、機体フレーム1の下側に左右一対のクローラからなる走行装置2が設けられ、機体フレーム1の前側に圃場に植生する穀稈を収穫する刈取装置3が設けられている。また、刈取装置3の後方左側部に刈取装置3で収穫された穀稈を脱穀・選別処理する脱穀装置4が設けられ、刈取装置3の後方右側部に作業者が搭乗する操縦部5が設けられる。
【0025】
操縦部5の下側には、エンジンEを搭載するエンジンルーム6が設けられ、操縦部5の後側には、脱穀装置4で脱穀・選別処理された穀粒を貯留するグレンタンク7が設けられ、グレンタンク7に貯留された穀粒は、グレンタンク7に連結された排出オーガ70によって外部に排出される。そして、操縦部5の操縦席の前方にはフロントパネル10が設けられると共に、操縦席の左方にはサイドパネル15が設けられる。
【0026】
フロントパネル10の左部には、エンジンのEの出力回転等を表示するモニタ11が設けられ、右部には、走行装置2の旋回や刈取装置3の昇降を操作する操作レバー12が設けられている。なお、操作レバー12の姿勢は、操作レバー12の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ12Sで測定される。
【0027】
また、フロントパネル10の下側に位置するフロアにおける前側左部には、後述するトランスミッション21に設けられた左右一対のブレーキ装置38の作動と作動解除を行う駐車ブレーキペダル13が設けられ、フロアにおける前側右部には、後述する刈取クラッチの接続と接続解除を行う掻込ペダル14が設けられている。
【0028】
なお、駐車ブレーキペダル13の踏込み姿勢は、駐車ブレーキペダル13の下部に装着されたリミットスイッチや接触センサ等のセンサ13Sで測定され、近接センサ等のポテンションメータ等の角度センサ12Sで測定され、掻込ペダル14の踏込み姿勢は、掻込ペダル14の下部に装着されたリミットスイッチや接触センサ等のセンサ14Sで測定される。
【0029】
サイドパネル15の前部には、エンジンEの出力回転の増減速と回転方向の切替えを行う無段変速装置20を操作する主変速レバー(請求項の「変速レバー」)16が設けられ、主変速レバー16の後側には、無段変速装置20の出力回転の増減速を行うトランスミッション21を操作する副変速レバー17が設けられ、副変速レバー17の後側には、刈取クラッチ22と脱穀クラッチ23の接続と接続解除を操作する刈脱レバー18が設けられている。
【0030】
図4に示すとおり、エンジンEから出力された出力回転は、伝動経路(請求項の「第1伝動経路」)A上に設けられた無段変速装置20に伝動される。無段変速装置20の入力軸44に伝動されたエンジンEの出力回転は、無段変速装置20で増減速と回転方向の切替えが行われてトランスミッション21に伝動される。
【0031】
トランスミッション21の入力軸30に伝動された無段変速装置20の出力回転は、トランスミッション21の多段ギヤで増減速されて出力軸34から出力されて走行装置2に伝動される。なお、走行装置2の走行速度vは、トラックホイールに装着されたタコジェネレータや機体フレーム1に装着されたジャイロ等の速度センサ2Sで測定される。トランスミッション21の出力軸31から出力された出力回転は、刈取クラッチ22を介して刈取装置3される。
【0032】
また、エンジンEから出力された出力回転は、伝動経路(請求項の「第2伝動経路」)B上に設けられた脱穀クラッチ23を介して脱穀装置4に伝動される。
【0033】
図5に示す、無段変速装置20の出力回転は、トランスミッション21の入力軸30に伝動される。この入力軸30に伝動された出力回転は、ギヤ30Aと、ギヤ31Aと、ギヤ32Aを介してカウンタ軸32に伝動される。ギヤ30Aは入力軸30に設けられ、ギヤ31Aは出力軸31に回転自在に設けられ、ギヤ32Aはカウンタ軸32に設けられている。
【0034】
カウンタ軸32に伝動された出力回転は、ギヤ32Bとギヤ33Aを介してカウンタ軸33に伝動される。ギヤ32Bはカウンタ軸32に設けられ、ギヤ33Aはカウンタ軸33に設けられている。
【0035】
カウンタ軸33に伝動された出力回転は、ギヤ33Aの両側に設けられた左右一対のギヤ33Bと左右一対の34Aを介して出力軸34に伝動される。ギヤ33Bはカウンタ軸33に設けられ、ギヤ34Aは出力軸34に左右方向に摺動可能に設けられている。
【0036】
カウンタ軸33の左右一対のギヤ33Bの両側部には、カウンタ軸33の回転を制動するブレーキ装置33Cが設けられている。これにより、操作レバー12を左側に傾斜させた場合には、左側のギヤ33Bの回転速度が右側のギヤ33Bの回転速度よりも遅くなり走行装置2を進行方向の左側に旋回させ、操作レバー12を右側に傾斜させた場合には、右側のギヤ33Bの回転速度が左側のギヤ33Bの回転速度よりも遅くなり走行装置2を進行方向の右側に旋回させることができる。
【0037】
出力軸34に伝動された出力回転は、ギヤ34Aの外側に設けられた左右一対のギヤ34Bと左右一対の35Aを介して走行装置2の入力軸35に伝動される。ギヤ34Bは出力軸34に左右方向に摺動可能に設けられ、ギヤ35Aは入力軸35に設けられている。
【0038】
カウンタ軸32に伝動された出力回転は、ギヤ32Cとギヤ31B、又は、ギヤ32Dとギヤ31Cを介して出力軸31に伝動される。ギヤ32Cとギヤ32Dはカウンタ軸32に設けられ、ギヤ31Bとギヤ31Cは出力軸31に左右方向に摺動可能に設けられている。また、ギヤ31Bとギヤ31Cはシフタ装置(図示省略)を操作してシフタ36を介して左右方向に移動させることができる。
【0039】
出力軸31に伝動された出力回転は、刈取クラッチ22を介して刈取装置3の入力軸37に伝動される。
【0040】
図6に示すように、主変速レバー16を中立姿勢にした場合には、無段変速装置20の出力回転はゼロになる。主変速レバー16を中立姿勢から前側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置20の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と同じ正回転となり、前側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置20の出力回転は増速され、前側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置20の出力回転は減速される。また、主変速レバー16を中立姿勢から後側傾斜姿勢した場合には、無段変速装置20の出力回転の回転方向はエンジンEの出力回転の回転方向と逆さの逆回転となり、後側傾斜姿勢の傾斜角度を大きくすると無段変速装置20の出力回転は増速され、後側傾斜姿勢の傾斜角度を小さくすると無段変速装置20の出力回転は減速される。なお、主変速レバー16の姿勢は、主変速レバー16の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ16Sで測定される。
【0041】
副変速レバー17を中立姿勢にした場合には、トランスミッション21の出力回転は増減速されない。副変速レバー17を中立姿勢から前側傾斜姿勢にした場合には、トランスミッション21の出力回転は増速され、副変速レバー17を中立姿勢から後側傾斜姿勢にした場合には、無段変速装置20から伝動された出力回転は減速される。なお、副変速レバー17の姿勢は、副変速レバー17の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ17Sで測定される。
【0042】
刈脱レバー18を前側傾斜姿勢にした場合には、刈取クラッチ22と脱穀クラッチ23の接続は解除される。刈脱レバー18を後側傾斜姿勢にした場合には、刈取クラッチ22と脱穀クラッチ23が接続される。また、刈脱レバー18を前側傾斜姿勢と後側傾斜姿勢の間に位置する中立姿勢にした場合には、刈取クラッチ22の接続は解除され、脱穀クラッチ23は接続される。なお、刈脱レバー18の姿勢は、刈脱レバー18の下部に装着されたポテンションメータ等の角度センサ18Sで測定される。
【0043】
図7に示すとおり、無段変速装置20のトラニオン軸40には、扇形ギヤ41が支持され、扇形ギヤ41の外周部に形成されたギヤには、前進用モータ(請求項の「駆動手段」)42の出力軸に設けられたギヤ42Aと、後進用モータ(請求項の「駆動手段」)43の出力軸に設けられたギヤ43Aが係合している。これにより、主変速レバー16の姿勢、すなわち、角度センサ16Sの測定値に基づいて前進用モータ42と後進用モータ43を駆動して無段変速装置20のトラニオン軸40を回動してエンジンEの出力回転の増減速と回転方向の切替えを行うことができる。なお、エンジンEの出力回転は、無段変速装置20の入力軸44に伝動される。
【0044】
また、
図7には、無段変速装置20のトラニオン軸40を扇形ギヤ41を介して前進用モータ42と後進用モータ43で回動させる形態を図示しているが、無段変速装置20のトラニオン軸40に径方向に延在するアームを支持し、このアームの外周部に前進用ソレノイドで駆動される前進用シリンダと後進用ソレノイドで駆動される後進用シリンダを連結する形態にすることもできる。
【0045】
図8(a)は、横軸に主変速レバー16の姿勢を示し、縦軸に角度センサ16Sの測定値θを示している。主変速レバー16を中立姿勢から前側傾斜姿勢に移動した場合には、角度センサ16Sの測定値θは直線的に増加する。本実施形態では、主変速レバー16を中立姿勢に移動した場合には、角度センサ16Sの測定値θはθ1に設定され、主変速レバー16を最も前側に傾斜させた最大前側傾斜姿勢に移動した場合には、角度センサ16Sの測定値θはθ2に設定されている。
【0046】
図8(b)は、横軸に角度センサ16Sの測定値θを示し、縦軸に無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを示している。主変速レバー16を中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に移動させて角度センサ16Sの測定値θがθ1からθ2に増加した場合には、トラニオン軸40の開度βも直線的に増加する。本実施形態では、角度センサ16Sの測定値θがθ1の場合には、トラニオン軸40の開度βはβ1に設定され、角度センサ16Sの測定値θがθ2の場合には、トラニオン軸40の開度βはβ2に設定されている。
【0047】
トラニオン軸40の開度βは、β1からからβ2よりも大きいβ3まで直線的に増加するように設定されている。これにより、主変速レバー16を最大前側傾斜姿勢に移動した場合に、走行装置2の走行速度v2が設定走行速度V2よりも低速の場合には、トラニオン軸40の開度βをβ2よりもさらに大きくして走行速度v2を設定走行速度V2に増速することができる。
【0048】
図8(c)は、横軸に無段変速装置20のトラニオン軸40の開度βを示し、縦軸に走行装置2の設定走行速度Vを示している。トラニオン軸40の開度βがβ1からβ2に増加した場合には、走行装置2の設定走行速度Vも直線的に増加する。
【0049】
本実施形態では、トラニオン軸40の開度βがβ1の場合には、走行装置2の設定走行速度VはV1に設定され、トラニオン軸40の開度βがβ2の場合には、走行装置2の設定走行速度VはV2に設定され、トラニオン軸40の開度βがβ3では、V2よりも高速のV3に設定されている。これにより、主変速レバー16を中立姿勢から最大前側傾斜姿勢に移動させると走行装置2の設定走行速度VはV1からV2に増速して、理想的には走行装置2の走行速度vもv1からv2に増速することができる。
【0050】
なお、
図8(c)は、副変速レバー17が中立姿勢に移動され、トランスミッション21で出力回転の増減速を行われない場合を図示している。
【0051】
上記のコンバインは、エンジンEで発生させた駆動力で走行装置2、刈取装置3、脱穀装置4等を作動させており、エンジンEや無段変速装置20の出力の増減により走行速度や穀稈の搬送速度等を変更できる構成である。
【0052】
しかしながら、エンジンEの動作には軽油やガソリン等の化石燃料が必要であり、各装置の作動スピードを適切に連携させるべく、チェーン等の伝動部材や変速ギアボックス等の変速機構を配置せねばならず、部品数が必然的に多くなり、資源使用量が多いものとなっている。
【0053】
したがって、化石燃料を使用しない、あるいは使用量を削減しつつ、各装置の動作速度を穀稈の刈取作業や脱穀・選別作業に適したものに合わせるべく、電動モータ等の駆動源を1つまたは複数設け、MDU(モータードライバユニット)を介して作業者の操作に対応する制御が可能な構成とすることが考えられる。その際、電動モータ等の駆動源は動作に電気を必要とするので、電気を充放電可能なバッテリ60を機体に搭載する必要がある。バッテリ60は、取り外して機外で充電作業を行うものでもよいが、複数の電動モータ等に十分な電気を供給するにはバッテリ60の搭載数を多くするか、あるいは大型且つ重い大容量なものを搭載する必要があるので、充電時の脱着作業に費やす時間や労力が増加する問題が生じる。
【0054】
この問題の発生を防止すべく、充放電可能なバッテリ60に、機体外部の電源に接続することで充電が可能となる、充電プラグ61を設ける。この充電プラグ61とバッテリ60の間には、ある程度の長さを有するケーブル62を設け、機体から離れた位置の電源に容易に接続可能とする。
【0055】
上記のバッテリ60は、複数積み込む場合でも、大型のものを少数積み込む場合でも、総合的に重量が機体のバランスに影響し得るものである。また、充電プラグ61は、機体外に引き出しやすい位置に設けられる必要がある。
【0056】
コンバインの基本的なレイアウトとして、
図1から
図3に示すとおり、機体フレーム1の左右一側には刈取装置3で刈り取った穀稈の脱穀及び選別搬送を行う脱穀装置4が設けられ、左右他側には脱穀された穀粒を貯留するグレンタンク7が配置されている。そして、このグレンタンク7の下部は、
図9の背面視において、機体左右他側、即ち脱穀装置4に隣接する側が、機体左右一側から左右他側に向かう上方傾斜姿勢となっている。したがって、
図9から
図11に示すとおり、脱穀装置4とグレンタンク7の左右間には、機体前後方向に亘って開放空間63が形成されるので、この開放空間63に機体前後方向を長手方向として、充放電可能なバッテリ60を設けることが望ましい。なお、このバッテリ60の操縦部5の操縦席の下方まで延長し、更に大容量化するものとしてもよい。
【0057】
また、グレンタンク7の下部は、排出オーガ70のうち穀粒を垂直搬送する縦オーガ71の搬送基部側から機体左右他側、即ち機体外側に向かっても上方傾斜部を有している。したがって、グレンタンク7の下方で且つ機体左右他側には、充電プラグ61及びケーブル62を収納でき、且つ作業者が手を差し込んで出し入れする作業空間が確保されていることになる。
【0058】
これにより、充電プラグ61及びケーブル62、及びケーブル62を定位置で出し入れ可能に保持するリール(図示省略)をバッテリ60の機体左右他側面に設けると、充電の際に充電プラグ61を容易に機外に取り出すことができると共に、充電後はグレンタンク7の下部付近に戻すことができるので、バッテリ60の充電作業の能率が向上する。
【0059】
また、重量物であるバッテリ60を脱穀装置4とグレンタンク7の左右間、即ち機体左右方向の中央部付近に前後方向に亘って設けることにより、機体の下部側で且つ前後及び左右の中心に重心を置くことができ、グレンタンク7に貯留される穀粒が増加して重量が増えた際にも機体がグレンタンク7側に傾きにくく走行姿勢が安定することで、穀稈の刈り残しが防止される。
【0060】
なお、開放空間63は、グレンタンク7の前後長手方向に亘って形成されるので、機体後方にも充電プラグ61及びケーブル62を収納でき、且つ作業者が手を差し込んで出し入れする作業空間が確保されている。
【0061】
したがって、バッテリ60の機体後部側に充電プラグ61及びケーブル62、及びケーブル62を定位置で出し入れ可能に保持するリール(図示省略)を設けることで、充電の際に充電プラグ61を容易に機外に取り出すことができると共に、充電後はグレンタンク7の下部付近に戻すことができるので、バッテリ60の充電作業の能率が向上する。
【0062】
なお、充電を行う電源のある場所が、機体の左右他側か、機体の後部のどちらかしか接近させにくい場所である際に、ケーブル62を充電しやすい側に移設させやすくすべく、
図12に示すとおり、バッテリ60の機体左右他側と後側に各々設けるカプラ64,64のどちらか一方と連結する構成としてもよい。
【0063】
これにより、充電時にケーブル62を無理に曲げることなく電源に接続できるので、作業能率が向上すると共に、断線により充電ができなくなることが防止される。
【0064】
なお、上記バッテリ60は機体フレーム1に固定する方式とすることで、機体の重量バランスを変動しにくい構成とすることが望ましいが、作業中にバッテリ60の電気が使い切られてしまうと、穀稈の収穫作業が行えなくなる。
【0065】
したがって、
図13に示すとおり、機体フレーム1には充電台65を設け、この充電台65は充電プラグ61を介して電気が供給され、充電台65にバッテリ60がセットされていると充電が行われると共に、充電台65から電気切れのバッテリ60を取り外して、作業外の場で充電したバッテリ60をセットできる構成としてもよい。
【0066】
これにより、事前に充電したバッテリ60を用意する手間や、重量物であるバッテリ60を運ぶ労力が必要になるが、充電のために穀稈の刈取作業が長時間中断されることを防止できるので、作業時間の増加が防止される。
【0067】
また、収穫適期を逃さず収穫作業を行えるので、収穫された穀粒の商品価値が高まると共に、収穫作業ができない間に雨や強風により穀稈が倒伏し、穀稈の刈り取り損ないや脱穀不良が発生しやすくなる環境での作業が防止される。
【0068】
外部の電源から充電する方式は、比較的高寿命で且つ大容量のバッテリ60を用いることができるが、安定した電気供給が為されている電源との接続が必要である。充電を行うことができる場所が圃場から近ければ、作業を中断して充電を行っても大きな問題は生じにくいが、圃場から遠いと充電中に周囲が暗くなったり、天候が変化したりして収穫作業が継続できなくなることがある。
【0069】
天候が変化すると、上述のとおり穀稈が倒伏して引き起こしにくくなり、刈り取り損ないが生じると共に、穀稈の表面に付着した水が排藁等の夾雑物を張り付かせ、脱穀不良や選別不良が生じるおそれがある。
【0070】
また、収穫作業が翌日以降に持ち越されると、作業者が予定を変更して収穫作業を行わなければならなくなると共に、収穫に最も適したタイミングを逃してしまい、収穫した穀粒の商品価値が低下する問題がある。
【0071】
こうした問題の発生を防止すべく、圃場の傍に電源を設置することが考えられるが、自走できない発電機を持ち込むことは大がかりな作業となると共に、道路を通過する農作業機や自動車に配慮して配置せねばならず、取り扱いが困難である。
【0072】
したがって、グレンタンク7に貯留された穀粒を機外に排出する排出オーガ70から穀粒を回収する、輸送用のタンクや輸送用のフレキシブルコンテナバッグなどの穀粒回収手段80を積載して待機し、穀粒回収手段80に穀粒を回収した後搬送する搬送車両81に給電用バッテリ82を積載し、この給電用バッテリ82からコンバインに搭載するバッテリ60を充電可能な構成としてもよい。
【0073】
しかしながら、搬送車両81は基本的にコンバインが入る圃場よりも高所である農道に位置するので、ケーブル62を長くしないと充電プラグ61が届かず充電が行えない。しかし、ケーブル62を長くするとその分収容スペースが必要になると共に、断線等も生じやすくなる。
【0074】
図14から
図16に示すとおり、上記の排出オーガ70は、グレンタンク7の機体後側で且つ最下部から排出される穀粒を上方に移動させる縦オーガ71と、縦オーガ71から穀粒を引き継いで排出搬送する横オーガ72で構成されており、さらに横オーガ72は、縦オーガ71の上部に装着される固定横オーガ72aと、この固定横オーガ72aに伸縮可能に装着される可動横オーガ72bで構成される。
【0075】
また、縦オーガ71はオーガ回転モータ73によって全体が回転可能に機体フレーム1に設けられており、可動横オーガ72bはオーガ伸縮モータ74によって進退可能に固定横オーガ72aに設けられている。
【0076】
そして、可動横オーガ72bの搬送終端部、即ち固定横オーガ72aから最も離間する側には、穀粒を排出する排出口75aを備えるオーガヘッド75を回転可能に装着し、オーガヘッド75に設けるスイングモータ76により、オーガヘッド75を左右方向の所定角度に揺動させると共に、オーガヘッド75の排出口75aが上方を向く非排出状態に切替可能に構成する。
【0077】
排出オーガ70でグレンタンク7に貯留された穀粒を、搬送車両81に積載した穀粒回収手段80に排出するときは、オーガ回転モータ73により縦ズーム71を回転させて横オーガ72の向きを変更し、穀粒回収手段80に向ける。なお、このとき横オーガ72がコンバインの構成体に接触しないよう、オーガ昇降シリンダ72sにより横オーガ72を斜め上方に回動させておくとよい。
【0078】
そして、オーガ昇降シリンダ77により横オーガ72の搬送終端部が確実に穀粒回収手段80の上方に位置する角度に調整した後、オーガ伸縮モータ74を伸長方向に作動させ、オーガヘッド75が穀粒回収手段80の上側開口部の範囲内に確実に位置するまで可動横オーガ72bを移動させる。
【0079】
この状態で作業者が穀粒搬送スイッチ95を操作すると、穀粒は縦オーガ71及び横オーガ72の搬送螺旋(図示省略)により搬送され、オーガヘッド75に形成された排出口75aに到達すると、穀粒回収手段80に向けて落下し、回収される。
【0080】
なお、穀粒は非常に軽く、一般的に穀粒回収手段80で一度に回収可能な量程度では穀粒回収手段80の底に位置する穀粒が潰されることや、穀粒回収手段80内に落下した際の衝撃で傷付くことは無いが、風の影響を受けやすいので、穀粒の飛散を防止すべく、オーガヘッド75の機体下部側の一部が穀粒回収手段80の上端部よりも内側に入り込むまで横オーガ72を下方回動させておいてもよい。
【0081】
このとき、
図17に示すとおり、搬送車両81に最も接近するオーガヘッド75には、搬送車両81に積載された給電用バッテリ82の給電プラグ83と接続が可能な給電コネクタ77を設け、この給電コネクタ77からバッテリ60に向かって、排出オーガ70の外装に沿わせて送電ケーブル85を配策する。
【0082】
これにより、バッテリ60内の電気が少なくなったときに、刈取作業を中断して搬送車両81に排出オーガ70の搬送終端部側を接近させることにより、給電用バッテリ82でコンバイン側のバッテリ60に充電することができるので、刈取作業が長時間中断されることが防止される。
【0083】
なお、バッテリ60及び給電用バッテリ82は、いずれも急速充電に対応可能なものとし、短時間で大容量の電気を充電可能なものとすると、作業の中断時間が短縮される。
【0084】
また、穀粒をグレンタンク7から排出する作業時に、搬送車両81に接近する排出オーガ70のオーガヘッド75を介して充電することができるので、給電プラグ83と給電コネクタ77に設けるケーブルの長さを抑えることができる。
【0085】
また、穀粒の排出作業中という、作業において必須の時間で充電を行うことができるので、作業の中断時間が短くなり、収穫適期に収穫作業を終えることが可能となり、収穫物の商品価値が向上する。
【0086】
給電プラグ83と給電コネクタ77を接続した際、排出オーガ70を回動してしまうと、接続が解除されて充電が行われなくなることや、導線が切れてしまうことに繋がる。
【0087】
したがって、給電プラグ83と給電コネクタ77を接続したとき、オーガ回転モータ73の作動を受け付けなくするか、あるいは後述する表示パネル96に「充電中、排出オーガ回動禁止」と表示することが望ましい。
【0088】
上記の給電プラグ83と給電コネクタ77の位置合わせは、オーガ回転モータ73を作動させて排出オーガ70を回転させて行う必要があるが、小さな部品であるので作業者が視認し辛く、接続のための位置合わせに時間を要することがある。
【0089】
この時間を短縮すべく、給電プラグ83と給電コネクタ77に発信ビーコン97aと受信ビーコン97b設け、受信ビーコン97bが発信ビーコン97aと所定距離以内にあることを検出すると、オーガ回転モータ73を停止させ、給電プラグ83と給電コネクタ77を接近させた状態とする制御構成を加えてもよい。
【0090】
これにより、作業者がオーガ回転モータ73を正逆転操作して位置調節する必要が無く、時間の短縮が図られると共に、オーガ回転モータ73の作動頻度を低下させられるので、消費電力の削減が図られる。
【0091】
給電コネクタ77は、水や塵埃が付着していると、給電プラグ83に接続した際に接触不良で給電が行えなかったり、ショートして破損するおそれがあるので、端子部は樹脂カバー(図示省略)で普段は被覆するものとする。これに加えて、穀粒の排出作業中に排出口75aから周囲に飛散する細かい塵埃の影響を最小限とすべく、オーガヘッド75の端部にコネクタステー78を設け、給電コネクタ77が排出口75aから離間する位置に配置される構成とするとよい。
【0092】
なお、オーガヘッド75の排出口75aの外周縁部には、排出される穀粒をなるべく直下に落下させるべく、飛散防止ガイド75bを排出口75aの形状に合わせて設けるとよい。
【0093】
これにより、細かい塵埃が給電コネクタ77側に移動することを防止できるので、バッテリ60への給電が安定して行われると共に、塵埃の除去作業に要する時間と労力が軽減される。
【0094】
なお、コネクタステー78には、給電コネクタ77の周囲を照らすライト79を入切可能に装着する。
【0095】
これにより、夕方や早朝などの給電コネクタ77や給電プラグ83が見えづらい時間帯であっても、容易に連結することが可能になり、作業能率が向上する。
【0096】
上記のライト79に替えて、あるいはライト79と共に、給電コネクタ77の周囲を撮影するカメラ84を、コネクタステー78の周囲に設けてもよい。
【0097】
これにより、離れた位置、例えば操縦部5から作業者が給電コネクタ77と給電プラグ83の接続状況を確認できるので、接続が緩く充電が行われなくなっても作業者が早急に気付きやすく、余分な時間を費やすことが防止される。
【0098】
また、カメラ84で穀粒の排出状況を監視することができるので、穀粒回収手段80から穀粒を外部に落下させることなく回収することが可能になり、穀粒の回収作業に要する時間と労力の削減が図られると共に、収穫量の低下が防止される。
【0099】
さらに、給電プラグ83への排塵や夾雑物の付着を防止すべく、穀稈の刈取作業時において、給電プラグ83は、側面視で操縦部5の上方に位置すると共に、平面視で刈取装置3の機体左右一側よりも機体外側に位置するものとする。
【0100】
これにより、穀稈の刈取作業を行う際、給電プラグ83は穀稈の上端部よりもさらに上方に位置すると共に、刈取作業前の穀稈の上方に位置するので、機体後部から脱穀後に排出される排塵だけでなく、刈取の際に生じる粉塵や夾雑物が届きにくく、通電不良が生じることが防止できる。
【0101】
上記構成において、
図14から
図16に示すとおり、給電プラグ83からバッテリ60へ電気を送る送電ケーブル85は、横オーガ72の前部から後部に向かい、縦オーガ71の上端部から下方に向かうと共に、バッテリ60に向けて屈曲させて配置している。
【0102】
なお、横オーガ72は前後方向に伸縮すると共に、左右方向に回動も可能であるので、送電ケーブル85は伸縮動作や回動動作によって断線しないよう、伸縮や回動に対応する余裕を持った長さとする。
【0103】
上記により、排出オーガ70の構造体を利用して送電ケーブル85の配策が可能になるので、配策用の支持部材を余分に増やす必要が無く、部品数の削減や機体の軽量化が図られる。
【0104】
上記のバッテリ60は、劣化するほど充電中に負荷で発熱しやすくなると共に、作業中に機体各部の作動により発生する熱の影響で更に劣化が進行しやすくなる問題がある。この劣化を抑えるには、できるだけバッテリ60が外部からの発熱の影響を受けなくする、即ち必要に応じて冷却する必要がある。
【0105】
図18に示すとおり、バッテリ60の機体左右他側に、バッテリ60側に風を発生させる冷却ファン86を一つ、またはサイズの小さいものを複数、バッテリ60の長手方向に亘って配置する。
【0106】
なお、冷却ファン86の駆動力をバッテリ60から得る場合、バッテリ60の充電より消費が上回ることを防止すべく、冷却ファン86の駆動源は直流モータ(DCモータ)であることが望ましい。また。直流モータは静音性が高く、機体の作動音が大きくなることを防止できる。
【0107】
なお、バッテリ60は走行車体の下部側に配置されるので、冷却ファン86を同じ高さに設けると、穀稈の刈取作業や走行によって生じる粉塵や細かい夾雑物をバッテリ60に吹き付けてしまい、温度低下を妨げたり、高温によって発火したりする可能性がある。
【0108】
これを防止すべく、
図19に示すとおり、機体左右他側に設ける外部カバーの内側で、且つバッテリ60よりも上方位置に、冷却ファン60を機体左右一側に向けて傾斜させた姿勢、即ちバッテリ60に冷却風を吹き降ろす姿勢で設けてもよい。
【0109】
これにより、冷却ファン86が吹き出す冷却風に粉塵や夾雑物が混ざり込みにくくなるので、粉塵や夾雑物の付着によるバッテリ60の劣化や破損が防止される。
【0110】
あるいは、
図20及び
図21に示すとおり、操縦部5の後側で且つバッテリ60の前側に冷却ファン86を設け、機体前側から後側に向かって冷却風を吹き付ける構成としてもよい。
【0111】
操縦部5付近はグレンタンク7や脱穀装置4が密接して配置されていることで、夾雑物や粉塵が入り込みにくいので、冷却風に粉塵や夾雑物が混ざることを防止できる。
【0112】
なお、後側ほど冷却効率が落ちるので、冷却ファン86は大型且つ出力の高いものを一つ設けることが望ましい。
【0113】
上記の配置では、外気が入りにくいので、冷却風の温度が高いと十分にバッテリ60が冷却されない可能性がある。操縦部5の下方には、エンジンE等の冷却風を取り込むエンジンファン87が設けられているので、このエンジンファン87よりも機体左右一側、即ち脱穀装置4側に、平面視で機体左右一側に向かって傾斜する姿勢で導風板88を設け、バッテリ60の前側に配置する冷却ファン86付近に外気が取り込まれる構成とするとよい。
【0114】
なお、エンジンファン87が取り込む外気は、エンジンEの冷却を主としているが、冷却ファン86に向かう空気は全てがエンジンEの熱を帯びて加温されるわけではないので、バッテリ60の冷却に適した温度の外気が取り込まれるものとする。
【0115】
また、導風板88は、冷却ファン86と略平行な位置で、且つバッテリ60よりも機体内側に配置されるので、冷却ファン86が発生させた風の一部をバッテリ60側に吹き戻させ、さらに冷却に活用されるものとする。
【0116】
また、バッテリ60を走行及び作業の全ての動力源とする場合は、エンジンEは配置されないので、外気をそのまま取り込むことができ、より効率よく冷却することが可能になる。
【0117】
上記のコンバインのバッテリ60により、電力不足が生じた際、圃場外の充電可能な場所まで移動すると共に、圃場まで戻ってくる必要が無く、作業が中断される時間が短く抑えられる。また、充電用の装置を圃場周辺に設置する必要がなく、道路の通行の妨げにならないよう配慮する必要もない。
【0118】
しかしながら、大型のバッテリ60を機体に組み付けていることにより、バッテリ60が経年劣化した際、交換作業に要する時間と労力がかかる問題がある。また、バッテリ60の配置に配慮しても、外装の開閉を行うことや、脱穀装置4の唐箕(図示省略)の作動による空気の流れ等により、ある程度の粉塵や夾雑物の付着は避けられないので、粉塵や夾雑物の除去作業に時間を要する問題がある。しかも、熱が籠りやすい位置に配置されるので、冷却ファン86で冷却風を不意付けていても、バッテリ60の劣化が進行しやすい問題がある。
【0119】
作業の中断時間を短く抑えるには、残存電力の少ないバッテリを取り外し、事前に十分に充電しておいたバッテリに積み替えることが考えられる。
【0120】
図22に示すとおり、グレンタンク7の機体左右他側の外側端部で、且つ機体下側に接続プラグ90を一つ、または前後方向に亘って複数設け、この接続プラグ90に、着脱バッテリ60pを接続する構成が考えらえる。このとき、グレンタンク7の機体外側のカバーの下部は、開閉部92を形成し、開口部分から着脱バッテリ60pを出し入れ可能な構成とする。
【0121】
あるいは、
図25に示す、開閉部92に設ける接続ケース93に接続プラグ90を接続し、
図26で示すとおり開閉部92を機体外側方向に回動させ、グレンタンク7の下面よりも下方に位置する姿勢として着脱バッテリ60pを接続ケース93に各々差し込んで装着するものとし、着脱バッテリ60pを装着した状態で開閉部92をグレンタンク7側に回動させ、閉じる構成としてもよい。
【0122】
着脱バッテリ60pは、着脱時に作業者一人でも簡単に運べるよう、機体前後方向に長いものではなく、板状の直方体に近い形状のものを機体前後方向に複数並べて使用することが望ましい。この構成では、カバーを閉じる際に妨げにならないように複数の着脱バッテリ60p…を前後方向に真っすぐ並べるべく、接続プラグ90を前後方向のガイドプレート91に装着するものとする。
【0123】
なお、最後尾に設けられる着脱バッテリ60pは、排出オーガ70を構成する縦オーガ71の前方に位置するものとし、排出オーガ70の動作を妨げないものとする。
【0124】
また、着脱バッテリ60pの上部は、機体の上下高さにおける中央位置と略同じか、あるいは中央位置よりも下方とし、下部は走行装置2よりも上方に配置することで、グレンタンク7の機体外側下部空間に干渉することなく配置することが可能になる。
【0125】
一つまたは複数の着脱バッテリ60pを着脱、交換することで、バッテリ切れになっても比較的速やかに穀稈の刈取作業に復帰することができ、作業能率の向上が図られるが、作業開始時に機体に搭載する着脱バッテリ60p、及び交換用の着脱バッテリ60pに事前に充電しておく必要があると共に、交換に相応の時間と労力を要するものである。
【0126】
したがって、脱穀装置4とグレンタンク7の左右間に外部から給電を受けて充電することができるバッテリ60を設けると共に、グレンタンク7の機体左右他側の下方に着脱バッテリ60pを設け、据え置き型のバッテリ60に着脱バッテリ60pが適宜電力を供給する構成としてもよい。なお、このときは過剰な電気の流入によりバッテリ60を破損させることや、着脱バッテリ60pの交換頻度を下げるべく、電気の流れはBMS103等の制御回路によって制御するものとする。
【0127】
これにより、大容量のバッテリ60に貯留された電気が一定量使用されると、着脱バッテリ60pからバッテリ60に電気が送られるので、バッテリ切れにより作業が中断されることが防止され、作業能率が向上する。
【0128】
また、穀粒の排出時等、走行しない工程で着脱バッテリ60pを交換することにより、充電のために刈取作業が中断されることがなくなり、作業能率がいっそう向上する。
【0129】
なお、充電池はある程度薄型のものも普及しているので、前後方向に一つずつ配置するだけでなく、左右にも二つ以上設ける構成としてもよい。このとき、接続プラグ90の分岐を増やし過ぎると配策が複雑化して着脱が行いにくくなるおそれがあるので、接続プラグ90を接続ケース93に接続し、各着脱バッテリ60pは、接続ケース93内に設ける端子コネクタに装着するものとする。これにより、配策の複雑化が防止され、着脱バッテリ60pの交換作業に要する時間の短縮が図られる。
【0130】
接続ケース93は、上下方向に幅を広げ、着脱バッテリ60pを上下方向に並べて配置する構成としてもよい。
【0131】
なお、機体上には、
図28に示すとおり、バッテリ60及び各着脱バッテリ60pが適切に電気を放出すべく、BMS(バッテリマネジメントシステム)103を設け、過放電でバッテリ60に負荷をかけることや、バッテリ60に送電するはずの状況で送電が行われなくなることを防止するものとする。
【0132】
着脱バッテリ60pは、防塵性だけでなく防水性も高い外装構造とし、コンバインだけでなく、トラクタや田植機等、主に圃場内で作業を行う農作業機に装着可能とすると、農作業の電動化が促進され、排気ガスの放出量や燃料消費が抑制される。
【0133】
排出オーガ70は、グレンタンク7から穀粒を排出する際に作動させるものであり、常時駆動させる必要のない装置である。したがって、
図21に示すとおり、排出オーガ70を構成する縦オーガ71及び横オーガ72を回転駆動させる動力源として、オーガ駆動モータ94を横オーガ72の機体前側端部に設ける。
【0134】
このオーガ駆動モータ94は、搬送車両81に設ける給電用バッテリ82から電気を得て駆動する構成とし、搬送車両81に近づくまでオーガ伸縮モータ74で横オーガ72の可動横オーガ72bを伸長させ、給電用バッテリ82に接近するとモータプラグ94aと接続させ、作業者が
図20に示す穀粒搬送スイッチ95を操作することでオーガ駆動モータ94を作動させて、穀粒をグレンタンク7から穀粒回収手段80に向けて移動させるための部品である。
【0135】
これにより、バッテリ60や着脱バッテリ60pの電気や、エンジンEの駆動に用いる燃料の消費を抑えることができ、環境負荷の軽い作業装置を提供できる。
【0136】
上記のバッテリ60と着脱バッテリ60pに溜められた電気は、適当に放出されていると一部ではモータ類に負荷がかかり、一部では電気が不足するといった問題が生じ、非効率に消費されることになる。
【0137】
また、全体のバッテリ残量が少なくなり、充電や着脱バッテリ60pの交換に移動する必要が生じた際、他の装置が電気を使用していると、充電や交換作業を行う位置まで機体が移動できなくなり、作業者が着脱バッテリ60pを持って移動する距離が長くなり、余分な時間と労力を費やす問題がある。
【0138】
これを防止すべく、バッテリマネジメントシステム(BMS)103を搭載し、バッテリ60から各モータへの送電量を制御させる。そして、バッテリ60の電気残量が一定値を下回ると、着脱バッテリ60pからバッテリ60に送電させ、バッテリ60に電気を補充するものとする。なお、着脱バッテリ60pのうち、一つの着脱バッテリ60pから集中的に電気を送電させると、交換作業時に交換する着脱バッテリ60pの数を減らすことができ、作業者の労力が軽減されると共に、交換作業に要する時間の短縮が図られる。
【0139】
一方、接続ケース93等に複数の着脱バッテリ60pを設けるものにおいては、全ての、あるいは一部の着脱バッテリ60pから少量ずつ電気をバッテリ60に送電させることにより、交換作業の頻度を減らすことができる。
【0140】
なお、バッテリ60のみを搭載する場合は、バッテリ60から適量の電気を各モータに送電する構成とする。また、複数の着脱バッテリ60pを搭載する場合は、一つの着脱バッテリ60pから集中的に電気を送電させるか、あるいは全ての、あるいは一部の着脱バッテリ60pから少量ずつ電気をバッテリ60に送電させるものとする。
【0141】
操縦部5、あるいは機外でコンバインの作業を監視する作業者が持つ通信端末に設ける表示パネル96には、
図27(a)、(b)で示すとおり、バッテリ60及び着脱バッテリ60pの残量を表示可能にする。表示内容は、バッテリ60と着脱バッテリ60pの残量を同時に表示してもよく、操作により別々に表示してもよい。また、表示は残量を数値、例えばパーセンテージで示してもよく、グラフ等で示してもよい。
【0142】
そして、残存する電気量が所定条件(例:バッテリ60の電気残量が10%未満となり作業限界点を超え、且つ複数の着脱バッテリ60pのうち過半数以上(例:5個中3個以上)の電気残量が10%未満、または複数の着脱バッテリ60pの平均電気残量が20%未満)に到達すると、BMS103は充電作業、または着脱バッテリ60pの交換作業位置に優先的に移動する必要があると判定し、ブザーやランプ等の報知装置を作動させた後、走行装置2>脱穀装置4>刈取装置3の順で、優先度の低い装置のモータへの電気の供給を遮断するか、あるいは各伝動クラッチを切って電動モータの出力を低下させる。
【0143】
なお、脱穀装置4については、現在穀稈及び穀粒の脱穀、選別を充電、交換作業位置に移動する間に行わせるべく、作業者が手動で脱穀装置4の電動モータを入にする、あるいは伝動クラッチを入にしつつ、電動モータの出力を走行装置2により走行しつつ脱穀装置4を駆動させられるまで上昇させる、脱穀個別駆動スイッチ104を表示パネル96、あるいはその周辺に設けるとよい。
【0144】
これにより、余分な電力を消費しなくなるので、確実に充電及び交換作業位置まで走行して移動することができるので、充電装置や着脱バッテリ60pを圃場内に持ち込む必要が無く、作業の中断時間が短くなる。
【0145】
また、電気の残量に余力があれば、脱穀装置4で刈取済みの穀稈から穀粒を取って選別しながら充電、交換作業位置に移動することができるので、充電や着脱バッテリ60pの交換後に脱穀装置4に残っている穀稈の脱穀作業を行う必要が無く、刈取作業が中断される時間の短縮が図られる。
【0146】
なお、バッテリ60と着脱バッテリ60pを併用する場合、BMS103はバッテリ60から先に電気を使用し、バッテリ60の電気残量が所定量未満(例:10%未満)になると、着脱バッテリ60pからバッテリ60に送電を行う方式としてもよい。このとき、複数の着脱バッテリ60pのうち、一つ分の電気を送電し切ると次の着脱バッテリ60pから送電する方式としても、複数の着脱バッテリ60pから均等に送電する方式としてもよい。
【0147】
バッテリ60の電気をほぼ送電し切ると着脱バッテリ60pから送電して補充することにより、作業者が着脱バッテリ60pを持って移動する時間と労力をかければ、バッテリ60及び着脱バッテリ60pの電気を使い切って移動できなくなった際に、比較的速やかに移動を再開できるので、刈取収穫作業の中断時間を抑えることができる。
【0148】
なお、エンジンEを設けるものにおいては、エンジンEを作動させる燃料を貯留する燃料タンクが必要となる。従来構成では、燃料を多く搭載すべく、バッテリ60の搭載位置と、脱穀装置4の下方の空間部に、完全に分割された別体の燃料タンクを各々配置している。これにより、燃料の搭載量は増えるが、部品数が多くなると共に、燃料の補充作業に時間がかかる問題がある。また、バッテリ60を積載するにあたり、グレンタンク7の機体左右一側下部の空間部に燃料タンク、またはバッテリ60が載置するスペースが限られてしまう。
【0149】
バッテリ60を搭載すると共に、大容量の燃料タンクを搭載すべく、
図29及び
図30(a)(b)(c)に示すとおり、機体フレーム1の後部に左右方向を長手方向とする燃料タンク97を配置し、左右方向の半分以上が脱穀装置4の下方に位置し、残りがグレンタンク7の左右一側下部の空間部に入り込ませる。なお、脱穀装置4の脱穀内側壁4aには、この燃料タンク97を通過させる配置切欠4bを形成する。
【0150】
さらには、燃料タンク97の取り外しが必要なときに、取り出し作業空間を確保すべく、脱穀内側壁4aの後端部側を、着脱壁プレート4cとするとよい。これにより、脱穀内側壁4aからボルト等の固定部材を取り外して着脱壁プレート4cを取り除いて作業スペースを広げることで、燃料タンク97の着脱が容易に行えるようになる。また、脱穀装置4の後部側からのメンテナンス等の作業時にも空間部が広く確保されるので、メンテナンス性の向上が図られる。
【0151】
そして、燃料タンク97の左右方向の中央部付近の下方は、機体下方に向かう突出部98を形成し、この突出部98の機体後側下部には燃料の排出ドレン99を機体後側下方に向かう傾斜姿勢で配置すると共に、機体左右他側下部に、燃料をエンジンEに供給する供給管(図示省略)の管接続部100を設ける。なお、突出部98の下端部は、走行装置2の上部と同じ、あるいはやや下方とすると共に、機体フレーム1を構成する、前後方向を長手方向とする左右のメインビーム1a,1aの下端部よりも上方に位置する構成とする。なお、この左右のメインビーム1a,1aの上面は、燃料タンク97の下面を受ける受け部材でもある。
【0152】
これにより、走行装置2で安定走行できる場所では、燃料タンク97の突出部98に土砂や夾雑物が接触しない配置となるので、燃料タンク97の破損が防止される構成でありながら、容量の増加を図ることができる。
【0153】
また、排出ドレン99や管接続部100を、突出部98に機体下方に向かう傾斜姿勢で配置したことにより、燃料の残量が僅かであってもエンジンEに燃料が吸い出されやすい、あるいは残った燃料を排出しやすくなる。
【0154】
燃料タンク97の前側上部は、機体前側ほど下方に向かう傾斜部101を形成し、脱穀装置4を構成する動作部品との干渉を防止する構成とする。また、燃料タンク97の左右両側が、機体フレーム1の左右幅から機体内側に離間する位置に配置するものとし、燃料タンク97が接触により破損することを防止すると共に、機体左右他側のグレンタンク7の下方開放空間を占有しないので、着脱バッテリ60pの配置空間、ならびに着脱バッテリ60pを出し入れするための開閉部92を配置できる。
【0155】
燃料タンク97の給油口102は、機体左右他側の側面上部に、上がり傾斜姿勢で形成するが、燃料タンク97の機体左右他側の外側面と略同じ左右位置を端部とする長さとする。
【0156】
これにより、給油口102がバッテリ60や着脱バッテリ60pの着脱や充電作業時に接触しにくくなるので、バッテリ60や着脱バッテリ60pの破損が防止される。
【符号の説明】
【0157】
2 走行装置
3 刈取装置
4 脱穀装置(選別装置)
5 操縦部
60 バッテリ(充放電バッテリ)
61 充電プラグ(プラグ)
63 開放空間(載置空間部)
70 排出オーガ(排出装置)
72a 固定横オーガ(固定排出部材)
72b 可動横オーガ(移動排出部材)
75a 排出口
77 給電コネクタ(外部コネクタ)
82 給電用バッテリ(電源装置)
84 カメラ(カメラユニット)
86 冷却ファン(送風ファン)
87 エンジンファン(送風ファン)
88 導風板(ガイド壁)