(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164180
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ブレーキシステム
(51)【国際特許分類】
B60T 8/96 20060101AFI20231102BHJP
B60T 17/22 20060101ALI20231102BHJP
B60T 8/171 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B60T8/96
B60T17/22 Z
B60T8/171 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075562
(22)【出願日】2022-04-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】吉田 拓人
(72)【発明者】
【氏名】深見 翔
【テーマコード(参考)】
3D049
3D246
【Fターム(参考)】
3D049BB02
3D049CC02
3D049HH39
3D049HH47
3D049HH51
3D049QQ04
3D049RR08
3D049RR11
3D049RR13
3D246BA02
3D246DA01
3D246GA01
3D246GA25
3D246GC14
3D246HA03A
3D246HA03C
3D246HC13
3D246JB11
3D246LA02Z
3D246MA08
3D246MA18
(57)【要約】
【課題】複数のセンサを有するブレーキシステムにおいて、2つ以上のセンサが故障する場合であっても、冗長性を確保可能なブレーキシステムを提供すること。
【解決手段】
ブレーキ回路10を制御するブレーキシステムは、ブレーキペダルの操作量に応じた検出信号を出力する4つ以上のセンサ21、22、23、24と、1つの所定のセンサを除く3つ以上のセンサが接続される第1電子制御装置31と、所定のセンサおよび共通のセンサが接続される第2電子制御装置32とを含み、センサが検出する操作量に基づいてブレーキ回路を制御する電子制御装置30と、を備える。電子制御装置は、第1電子制御装置が、3つ以上のセンサに正常状態であるセンサが存在すると判定せず、第2電子制御装置が、2つのセンサのいずれも正常状態であると判定する場合、所定のセンサおよび共通のセンサのうち少なくとも一方のセンサが検出する操作量に基づいてブレーキ回路を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両を制動するブレーキ回路(10)を制御するブレーキシステムであって、
運転者に操作されるブレーキペダル(91)の操作量を検出し、検出した前記操作量に応じた検出信号を生成して出力する4つ以上のセンサ(21、22、23、24)と、
前記4つ以上のセンサのうちの1つの所定のセンサ(23)を除く3つ以上のセンサ(21、22、24)が接続される第1電子制御装置(31)と、前記所定のセンサおよび前記3つ以上のセンサのうちの1つの共通のセンサ(24)の2つのセンサが接続される第2電子制御装置(32)とを含み、前記4つ以上のセンサが検出する前記操作量に基づいて前記ブレーキ回路を制御する電子制御装置(30)と、を備え、
前記第1電子制御装置は、前記3つ以上のセンサそれぞれが検出する前記操作量に基づいて、前記3つ以上のセンサに正常状態であるセンサが存在することを判定可能であって、
前記第2電子制御装置は、前記2つのセンサそれぞれが検出する前記操作量に基づいて、前記2つのセンサのいずれも正常状態であることを判定可能であって、
前記電子制御装置は、
前記第1電子制御装置が、前記3つ以上のセンサに正常状態であるセンサが存在すると判定せず、前記第2電子制御装置が、前記2つのセンサのいずれも正常状態であると判定する場合、前記所定のセンサおよび前記共通のセンサのうち少なくとも一方のセンサが検出する前記操作量に基づいて前記ブレーキ回路を制御するブレーキシステム。
【請求項2】
前記電子制御装置は、
前記第1電子制御装置および前記第2電子制御装置によって前記共通のセンサが正常状態であると判定された後状態で、前記第1電子制御装置が、前記3つ以上のセンサに正常状態であるセンサが存在すると判定せず、前記第2電子制御装置が、前記2つのセンサのいずれも正常状態であると判定しない場合、前記所定のセンサが検出する前記操作量に基づいて前記ブレーキ回路を制御する請求項1に記載のブレーキシステム。
【請求項3】
前記第1電子制御装置は、前記3つ以上のセンサが検出する前記操作量それぞれの差が予め定められる許容誤差以内か否かに基づいて、前記共通のセンサが正常状態であるか否かを判定し、
前記第2電子制御装置は、前記2つのセンサが検出する前記操作量それぞれの差が予め定められる許容誤差以内か否かに基づいて、前記共通のセンサが正常状態であるか否かを判定する請求項2に記載のブレーキシステム。
【請求項4】
前記第1電子制御装置および前記第2電子制御装置は、相互通信可能であって、互いの正常状態および異常状態を送受信可能に構成されており、
前記第1電子制御装置および前記第2電子制御装置のうち一方の電子制御装置が異常状態である場合、他方の電子制御装置に送信される前記操作量に基づいて前記ブレーキ回路を制御する請求項1ないし3のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【請求項5】
前記第1電子制御装置および前記第2電子制御装置のいずれも正常状態である場合、前記第1電子制御装置および前記第2電子制御装置のどちらか一方に送信される前記検出信号に基づいてブレーキ回路を制御する請求項4に記載のブレーキシステム。
【請求項6】
前記第1電子制御装置に接続される前記3つ以上のセンサは、前記ブレーキペダルの操作量を検出する検出方式が互いに異なるセンサを少なくとも2つ含み、
前記第2電子制御装置に接続される前記2つのセンサは、前記ブレーキペダルの操作量を検出する検出方式が互いに異なる請求項1に記載のブレーキシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ブレーキシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブレーキペダルを測定するペダル測定ユニットと、ペダル測定ユニットが測定する測定結果に基づいて、ブレーキの目標値を求めるコンピュータ装置とを備える車両ブレーキ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この車両ブレーキ装置が備えるペダル測定ユニットは、相互に独立して構成され、ペダル操作に応じた信号を供給する第1の測定装置および第2の測定装置と、第1の測定装置および第2の測定装置が測定した測定値を検査するモニタ要素とを備える。モニタ要素は、自身が測定するブレーキペダルの測定結果と、第1の測定装置および第2の測定装置それぞれが測定するブレーキペダルの測定結果とを比較することで、第1の測定装置および第2の測定装置それぞれの測定結果が正常か異常かを判定する。
【0003】
コンピュータ装置は、第1の測定装置の測定結果および第2の測定装置の測定結果のうち、モニタ要素によって正常に機能していると判定された測定装置の測定結果に基づいてブレーキの目標値を求める。これにより、車両を制動するブレーキ回路を制御するブレーキシステムとしての冗長性を確保している。以下、ブレーキペダルの測定を行う測定装置をセンサとも呼ぶ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、ブレーキシステムが3つのセンサを有する場合において、3つのうちの2つのセンサが故障して異常状態となると、異常状態となったセンサが特定されていない状態で3つのセンサそれぞれの検出信号を単に比較しても、正常な検出信号を特定できない。この場合、ブレーキシステムとしての冗長性を確保することができない。
【0006】
本開示は、複数のセンサを有するブレーキシステムにおいて、2つ以上のセンサが故障する場合であっても、冗長性を確保可能なブレーキシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
車両を制動するブレーキ回路(10)を制御するブレーキシステムであって、
運転者に操作されるブレーキペダル(91)の操作量を検出し、検出した操作量に応じた検出信号を生成して出力する4つ以上のセンサ(21、22、23、24)と、
4つ以上のセンサのうちの1つの所定のセンサ(23)を除く3つ以上のセンサ(21、22、24)が接続される第1電子制御装置(31)と、所定のセンサおよび3つ以上のセンサのうちの1つの共通のセンサ(24)の2つのセンサが接続される第2電子制御装置(32)とを含み、4つ以上のセンサが検出する操作量に基づいてブレーキ回路を制御する電子制御装置(30)と、を備え、
第1電子制御装置は、3つ以上のセンサそれぞれが検出する操作量に基づいて、3つ以上のセンサに正常状態であるセンサが存在することを判定可能であって、
第2電子制御装置は、2つのセンサそれぞれが検出する操作量に基づいて、2つのセンサのいずれも正常状態であることを判定可能であって、
電子制御装置は、
第1電子制御装置が、3つ以上のセンサに正常状態であるセンサが存在すると判定せず、第2電子制御装置が、2つのセンサのいずれも正常状態であると判定する場合、所定のセンサおよび共通のセンサのうち少なくとも一方のセンサが検出する操作量に基づいてブレーキ回路を制御する。
【0008】
これによれば、第1電子制御装置に接続される3つ以上のセンサのうちの2つのセンサが異常状態であっても、第2電子制御装置に接続される所定のセンサおよび共通のセンサが検出する操作量に基づいてブレーキ回路を制御することができる。このため、ブレーキシステムとしての冗長性を確保することができる。
【0009】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るブレーキシステムの概略構成図である。
【
図2】本実施形態に係るブレーキペダル装置の外観図である。
【
図3】本実施形態の第1ECUが実行する第1差分フラグ、第2差分フラグ、第3差分フラグを更新する制御処理を示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態の第1ECUが実行する多数決判定処理を示すフローチャートである。
【
図5】第1センサ、第2センサおよび第4センサが正常状態である場合の各センサが検出する操作量の一例を示す図である。
【
図6】第1センサが異常状態である場合の各センサが検出する操作量の一例を示す図である。
【
図7】第1センサ、第2センサおよび第4センサのうち少なくとも2つが異常状態である場合の各センサが検出する操作量の一例を示す図である。
【
図8】第1センサ、第2センサおよび第4センサのうち少なくとも2つが異常状態である場合の各センサが検出する操作量のその他の例を示す図である。
【
図9】第1ECUが決定するブレーキペダルの操作量を示す一覧表である。
【
図10】本実施形態の第2ECUが実行する第4差分フラグを更新する制御処理を示すフローチャートである。
【
図11】本実施形態の第2ECUが実行するセンサ異常判定処理を示すフローチャートである。
【
図12】第2ECUが決定するブレーキペダルの操作量を示す一覧表である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本開示の一実施形態について
図1~
図12に基づいて説明する。本開示のブレーキシステム1は、
図2に示すブレーキペダル91の操作量に基づいて車両のブレーキを制御するブレーキバイワイヤシステムである。ブレーキシステム1は、
図1に示すように、車両を制動するブレーキ回路10と、ブレーキ回路10によって作動が制御されるホイールシリンダW1~W4とを備える。また、ブレーキシステム1は、
図1および
図2に示すように、ブレーキペダル91を有するブレーキペダル装置90と、ブレーキペダル91の操作量を検出する第1センサ21~第4センサ24と、ブレーキ回路10を駆動制御する電子制御装置30とを備える。さらに、ブレーキシステム1は、ブレーキ回路10および電子制御装置30に電力を供給する電源部40を有する。第1センサ21~第4センサ24は、ブレーキペダル装置90に設けられる。以下、電子制御装置30をECU30とも呼ぶ。ECUは、Electronic Control Unitの略である。なお、ECUは、BCU(Brake Control Unit)と呼ばれることもある。
【0012】
ホイールシリンダW1~W4は、車両の各車輪にそれぞれ配置される。また、各ホイールシリンダW1~W4には、図示しないブレーキパッドが取り付けられている。
【0013】
ブレーキ回路10は、種々の機構を採用することができる。例えば、本実施形態のブレーキ回路10は、ホイールシリンダW1~W4にブレーキ液圧を発生させることで、車両を減速させる制動力を発生させる。なお、ブレーキ回路10は、電動モータを駆動させてブレーキパッドをディスクブレーキロータに押し付けることで各車輪を制動する電動ブレーキを採用してもよい。ブレーキ回路10は、ECU30からの制御信号に応じて、通常制御、ABS制御およびVSC制御などを行うことも可能である。ABSはAnti-lock Braking Systemの略であり、VSCはVehicle Stability Controlの略である。
【0014】
ブレーキ回路10は、互いに独立して構成される第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を有する。第1ブレーキ回路11は、左前輪に配置される左前輪ホイールシリンダW1および右前輪に配置される右前輪ホイールシリンダW2にブレーキ液圧を発生させる。第2ブレーキ回路12は、左後輪に配置される左後輪ホイールシリンダW3および右後輪に配置される右後輪ホイールシリンダW4にブレーキ液圧を発生させる。
【0015】
第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12は、電源部40から駆動用の電力が供給される。また、第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12それぞれは、ECU30に接続され、ECU30から送信される制御信号によって制御される。
【0016】
電源部40は、互いに独立して構成される第1電源部41および第2電源部42を有する。第1電源部41は、第1ブレーキ回路11に接続されており、第1ブレーキ回路11に電力を供給する。第2電源部42は、第2ブレーキ回路12に接続されており、第2ブレーキ回路12に電力を供給する。本実施形態のブレーキシステム1は、このように第1ブレーキ回路11への電力供給源および第2ブレーキ回路12への電力供給源を異なる構成とすることによって、ブレーキ回路10への電力供給源を冗長化させている。
【0017】
ECU30は、制御処理や演算処理を行うプロセッサ、プログラムやデータ等を記憶するROM、RAM等の記憶部を含むマイクロコンピュータ、およびその周辺回路で構成されている。記憶部は、非遷移的実体的記憶媒体で構成されている。ECU30は、第1ECU31および第2ECU32を有する。第1ECU31および第2ECU32は、記憶部に記憶されたプログラムに基づいて各種制御処理および演算処理を行い、ブレーキ回路10の作動を制御する。
【0018】
第1ECU31は、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24それぞれから送信される検出信号を受信する3つの第1ECU受信部311と、3つの第1ECU受信部311それぞれが受信する検出信号を処理する第1ECU処理部312を有する。また、第1ECU31は、第1ECU31とブレーキ回路10との接続をオンオフする第1ECUスイッチ313を有する。第1ECU31は、3つの第1ECU受信部311が互いに独立して設けられており、この3つの第1ECU受信部311に第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24が直接接続されている。また、第1ECU31は、第1ECUスイッチ313を介して第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12が接続されている。第1ECU31は、第1電源部41に接続されており、第1電源部41から駆動用電力が供給される。本実施形態において、第1ECU31は、第1電子制御装置として機能する。
【0019】
第2ECU32は、第3センサ23および第4センサ24から送信される検出信号を受信する2つの第2ECU受信部321と、2つの第2ECU受信部321が受信する検出信号を処理する第2ECU処理部322を有する。また、また、2ECU30は、第2ECU32とブレーキ回路10との接続をオンオフする第2ECUスイッチ323を有する。第2ECU32は、2つの第2ECU受信部321が互いに独立して設けられており、この2つの第2ECU受信部321に第3センサ23および第4センサ24が直接接続されている。また、第2ECU32は、第2ECUスイッチ323を介して第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12が接続されている。第2ECU32は、第2電源部42に接続されており、第2電源部42から駆動用電力が供給される。このように、第1ECU31および第2ECU32には、互いに異なる電源部41、42から駆動用電力が供給される。本実施形態において、第2ECU32は、第2電子制御装置として機能する。
【0020】
また、第1ECU31および第2ECU32は、相互通信可能に構成されている。第1ECU31は、第1ECU処理部312の処理内容を第2ECU32に送信可能であるとともに、第2ECU32における第2ECU処理部322の処理内容を受信可能に構成されている。これに対して、第2ECU32は、第2ECU処理部322の処理内容を第1ECU31に送信可能であるとともに、第1ECU31における第1ECU処理部312の処理内容を受信可能に構成されている。
【0021】
図2では、ブレーキペダル装置90の一例として、ペンダント式のものを示している。ペンダント式のブレーキペダル装置90とは、ブレーキペダル91のうち運転者に踏込操作されるペダル911が搖動の軸心CLに対して車両搭載時の天地方向における下方に配置されるものである。なお、
図2に記載した矢印は、ブレーキペダル装置90が車両に搭載された状態の上下方向を示すものである。
【0022】
ブレーキペダル装置90は、ブレーキペダル91、ハウジング92などを備えている。ハウジング92は、不図示のボルトなどによりダッシュパネルに固定される。ブレーキペダル91は、板状に形成され、車両のフロアに対して斜めに配置されている。具体的には、ブレーキペダル91は、その上端部が車両前方となり、下端部が車両後方となるように斜めに配置されている。ブレーキペダル91のうち下側の部位には、運転者に踏込操作されるペダル911が設けられている。
【0023】
ブレーキペダル91は、ハウジング92の内側に設けられた不図示の回転軸に固定されている。このため、ブレーキペダル91は、ハウジング92内に設けられた回転軸の所定の軸心CLまわりに搖動可能に設けられる。なお、本明細書において、搖動とは、所定の軸心CLまわりに所定角度範囲で正方向および逆方向に回転動作することをいう。
【0024】
なお、
図2において図示は省略するが、ハウジング92の内側には、運転者がブレーキペダル91に印加する踏力に対する反力を発生させる反力発生機構などが設けられている。
【0025】
図1に示す第1センサ21~第4センサ24は、ブレーキペダル装置90に設けられ、運転者に踏込操作されるブレーキペダル91の操作量を検出し、検出した操作量に応じた検出信号を生成してECU30へ出力する。
【0026】
第1センサ21は、自身のセンサ内で生成されたセンサ出力信号を送信する第1センサ送信部211を有する。第1センサ送信部211は、第1ECU受信部311に接続されている。第1センサ21は、生成した検出信号を第1センサ送信部211から第1ECU受信部311に送信する。
【0027】
第2センサ22は、自身のセンサ内で生成されたセンサ出力信号を送信する第2センサ送信部221を有する。第2センサ送信部221は、第1ECU受信部311に接続されている。第2センサ22は、生成した検出信号を第2センサ送信部221から第1ECU受信部311に送信する。
【0028】
第3センサ23は、自身のセンサ内で生成されたセンサ出力信号を送信する第3センサ送信部231を有する。第3センサ送信部231は、第2ECU受信部321に接続されている。第3センサ23は、生成した検出信号を第3センサ送信部231から第2ECU受信部321に送信する。
【0029】
第4センサ24は、自身のセンサ内で生成されたセンサ出力信号を送信する2つの第4センサ送信部241を有する。2つの第4センサ送信部241は、一方が第1ECU受信部311に接続されており、他方が第2ECU受信部321に接続されている。第4センサ24は、自身のセンサ内で生成された1つの検出信号をセンサ内の集積回路で複製することで2つに分配し、2つの検出信号を生成する。この2つの検出信号は同一の信号である。そして、第4センサ24は、生成した2つの検出信号のうち一方の検出信号を一方の第4センサ送信部241から第1ECU受信部311に送信する。また、第4センサ24は、生成した2つの検出信号のうち他方の検出信号を他方の第4センサ送信部241から第2ECU受信部321に送信する。
【0030】
第1センサ21~第4センサ24は、一意の比較可能な物理量を検出可能なセンサであれば、それぞれ異なる物理量を検出するセンサを採用してもよい。なお、本実施形態では、冗長性の観点から、第1センサ21~第4センサ24は、ペダル操作量として、3種の物理量(例えば、ペダル揺動角と、ペダルストローク量と、ペダル圧力)をそれぞれ異なる検出方式で検出するセンサが採用されている。具体的には、ペダル揺動角を検出するセンサとして、例えば、ホール素子または磁気抵抗素子などを用いた磁気センサが採用される。ペダルストローク量を検出するセンサとして、例えば、インダクティブセンサが採用される。ブレーキペダル91が踏込操作される際の圧力を検出するセンサとして、例えば、圧力センサが採用される。例えば、第1センサ21が磁気センサで構成される場合、ハウジング92の内部に配置される。例えば、第2センサ22がインダクティブセンサで構成される場合、ハウジング92の外部に配置される。例えば、第4センサ24が圧力センサで構成される場合、ペダル911の内部に配置される。
【0031】
そして、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24は、互いに異なる検出方式で検出する3つのセンサが組み合わされて構成されている。換言すれば、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24は、互いに異なる検出方式で検出するセンサを少なくとも2つ含んでいる。さらに、第2ECU32に接続される第3センサ23および第4センサ24は、互いに異なる検出方式で検出する2つのセンサが組み合わされて構成されている。例えば、第3センサ23は、第1センサ21と同じ磁気センサで構成されてもよく、この場合、ハウジング92の内部に配置される。
【0032】
なお、第1センサ21~第4センサ24の種類は、上記のものに限らず、例えば、光電センサ、歪みセンサなど、種々のものを採用することが可能である。なお、第1センサ21~第4センサ24の呼称は、ブレーキペダル装置90への搭載位置や種類などを限定するものではない。第1ECU31および第2ECU32の呼称も、搭載位置などを限定するものではない。
【0033】
第1センサ21~第4センサ24と第1ECU31および第2ECU32とのとの通信方式として、アナログ通信、デジタル通信、光通信などを採用することができる。デジタル通信として、SPI、I2C、UART、SENTなどが例示される。SPIは、Serial Peripheral Interface の略である。I2Cは、Inter-Integrated Circuit の略である。UARTは、Universal Asynchronous Receiver/Transmitter の略である。SENTは、Single Edge Nibble Transmission の略である。
【0034】
なお、第1センサ21および第2センサ22は、第1ECU31から電源が供給されて動作する。また、第3センサ23および第4センサ24は、第2ECU32から電源が供給されて動作する。そして、第4センサ24は、第1ECU31が故障しても、第2ECU32から電源が供給されるため動作を続けることが可能であるが、第2ECU32が故障して第2ECU32からの電源供給が停止すると、動作を続けることが不可能となる。本実施形態では、第1センサ21および第2センサ22は、第1ECU31から5Vの電圧が印加される。また、第3センサ23および第4センサ24は、第2ECU32から5Vの電圧が印加される。
【0035】
続いて、
図3~
図12を参照して、本実施形態の第1ECU31および第2ECU32によって制御されるブレーキシステム1の作動について説明する。運転者によってブレーキペダル91が踏込操作されると、第1センサ21~第4センサ24それぞれは、ブレーキペダル91の操作量を検出し、検出した操作量に応じた検出信号を生成して自身が接続された第1ECU31および第2ECU32へ出力する。
【0036】
具体的に、第1センサ21は、検出したブレーキペダル91の操作量に応じた検出信号を第1ECU31の第1ECU受信部311へ出力する。第2センサ22は、検出したブレーキペダル91の操作量に応じた検出信号を第1ECU31の第1ECU受信部311へ出力する。第3センサ23は、検出したブレーキペダル91の操作量に応じた検出信号を第2ECU32の第2ECU受信部321へ出力する。第4センサ24は、検出したブレーキペダル91の操作量に応じた検出信号を第1ECU31の第1ECU受信部311および第2ECU32の第2ECU受信部321へ出力する。
【0037】
第1ECU31および第2ECU32は、第1センサ21~第4センサ24それぞれからからブレーキペダル91の操作量に応じた検出信号が入力されると、入力された検出信号に基づいて、後述の目標減速度決定処理において車両の目標減速度を算出する。そして、第1ECU31および第2ECU32は、算出した目標減速度の情報を第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12に出力することで、第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御する。
【0038】
第1ブレーキ回路11は、目標減速度の情報が入力されると、目標減速度に応じたブレーキ液圧を左前輪ホイールシリンダW1および右前輪ホイールシリンダW2に発生させる。また、第2ブレーキ回路12は、目標減速度の情報が入力されると、目標減速度に応じたブレーキ液圧を左後輪ホイールシリンダW3および右後輪ホイールシリンダW4に発生させる。これにより、ブレーキシステム1は、車両を減速させるための制動力を左前輪、右前輪、左後輪および右後輪に発生させる。
【0039】
続いて、目標減速度決定処理について説明する。第1ECU31および第2ECU32は、例えば、車両のイグニッションスイッチまたは電源スイッチなどの走行スイッチがオンされると、制御処理を開始する。そして、第1ECU31は、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24が送信する検出信号を受信すると、目標減速度決定処理において、
図3および
図4に示す制御処理を所定の制御周期毎に繰り返し実行する。また、第2ECU32は、第2センサ22および第4センサ24が送信する検出信号を受信すると、目標減速度決定処理において、後述の
図10および
図11に示す制御処理を所定の制御周期毎に繰り返し実行する。以下、第1センサ21が送信する検出信号を第1信号S1、第2センサ22が送信する検出信号を第2信号S2、第3センサ23が送信する検出信号を第3信号S3、第4センサ24が送信する検出信号を第4信号S4とも呼ぶ。
【0040】
ところで、本実施形態のブレーキシステム1では、ECU30が第1ECU31および第2ECU32を備える構成によって、システムとしての冗長性を確保している。すなわち、本実施形態のブレーキシステム1は、第1ECU31によって目標減速度が算出可能であるとともに、第2ECU32によって目標減速度を算出可能に構成されている。このため、例えば第1ECU31が故障することで目標減速度を算出できない場合、第2ECU32によって目標減速度を算出することができる。ただし、第1ECU31および第2ECU32は、接続されるセンサの数が多い第1ECU31が主要側の制御装置として設定されており、第2ECU32が予備側の制御装置として設定されている。このため、第1ECU31および第2ECU32のいずれも正常に目標減速度を算出可能である場合、第1ECU31がブレーキシステム1の制御主導権を保持しており、第1ECU31によって目標減速度が算出される。
【0041】
まず、第1ECU31が実行する制御処理について説明する。最初に、ステップS10において、第1ECU31は、自身の動作状態が正常状態か異常状態かを判定する。正常状態とは、第1ECU31が第1信号S1、第2信号S2および第4信号S4を正常に受信可能であって、第1センサ21および第2センサ22へ正常に電源を供給可能である状態である。
【0042】
また、正常状態とは、第1信号S1、第2信号S2および第4信号S4を受信した際に、第1ECU処理部312が第1信号S1、第2信号S2および第4信号S4に基づいて正常な処理動作を可能な状態である。これに対して、異常状態とは、第1信号S1、第2信号S2および第4信号S4の受信が不可能、第1センサ21および第2センサ22へ電源を供給不可能、第1ECU処理部312が正常に動作不可能のいずれか1つまたは複数が組み合わされた状態である。ステップS11において、第1ECU31は、判定した自身の動作状態の情報を第2ECU32へ出力する。また、ステップS12において、第1ECU31は、後述する第2ECU32の制御処理において判定される第2ECU32の動作状態の情報を第2ECU32から取得する。
【0043】
第1ECU31が正常状態である場合、ステップS13において、第1ECU31は、第1センサ21から送信される第1信号S1と、第2センサ22から送信される第2信号S2と、第4センサ24から送信される第4信号S4とを取得する。なお、図示しないが、第1ECU31が異常状態である場合、ステップS13以降の処理を全てスキップする。
【0044】
第1ECU31は、第1信号S1、第2信号S2および第4信号S4を取得すると、ステップS14において、第1ECU処理部312が第1信号S1、第2信号S2および第4信号S4それぞれに基づいて、ブレーキペダル91の操作量を算出する。具体的に、第1ECU処理部312は、第1信号S1を取得すると、この第1信号S1および予め定められた制御マップに基づいて、第1センサ21が検出したブレーキペダル91の操作量を算出する。また、第1ECU処理部312は、第2信号S2を取得すると、この第2信号S2および予め定められた制御マップに基づいて、第2センサ22が検出したブレーキペダル91の操作量を算出する。さらに、第1ECU処理部312は、第4信号S4を取得すると、この第4信号S4および予め定められた制御マップに基づいて、第4センサ24が検出したブレーキペダル91の操作量を算出する。
【0045】
以下、第1信号S1に基づいて算出されるブレーキペダル91の操作量を第1操作量Fs1、第2信号S2に基づいて算出されるブレーキペダル91の操作量を第2操作量Fs2とも呼ぶ。また、第4信号S4に基づいて算出されるブレーキペダル91の操作量を第4操作量Fs4とも呼ぶ。そして、後述するように、第2ECU32が第3信号S3に基づいて算出するブレーキペダル91の操作量を第3操作量Fs3とも呼ぶ。
【0046】
ステップS15において、第1ECU処理部312は、算出した第1操作量Fs1と、第2操作量Fs2と、第4操作量Fs4とに基づいて、第1ECU31に接続された第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24に故障が含まれるか否かの判定を行う。すなわち、第1ECU処理部312は、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち、全てのセンサが正常状態であるか、および異常状態であるセンサが1つであるか複数であるかを検出する。また、第1ECU処理部312は、異常状態であるセンサが1つである場合、異常状態である1つのセンサを検出し、異常状態であるセンサが複数である場合、異常状態の可能性があるセンサを検出する。
【0047】
具体的には、ステップS15において、第1ECU処理部312は、第1操作量Fs1および第2操作量Fs2が正常か異常かを判定するとともに、第1操作量Fs1と第2操作量Fs2との差分値である第1差分値Δs1が許容誤差より小さいか否かを判定する。第1操作量Fs1および第2操作量Fs2は、例えば、予め想定される操作量の最小値以上、且つ、予め想定される想定量の最大値以下である場合に正常と判定される。これに対して、第1操作量Fs1および第2操作量Fs2は、例えば、予め想定される操作量の最小値より小さい、または、予め想定される想定量の最大値より大きい場合に異常と判定される。なお、後述する第3操作量Fs3および第4操作量Fs4が正常か異常かも同様に判定される。
【0048】
また、第1差分値Δs1は、第1操作量Fs1から第2操作量Fs2を減算して得らえる値であって、絶対値として算出される。第1差分値Δs1の許容誤差は、例えば、第1センサ21自体の検出誤差と第2センサ22センサ自体の検出誤差が重なる範囲で定められる。
【0049】
なお、後述する第1操作量Fs1と第4操作量Fs4との差分値である第2差分値Δs2、第2操作量Fs2と第4操作量Fs4との差分値である第3差分値Δs3も同様の算出方法によって得られる。第3操作量Fs3と第4操作量Fs4との差分値である第4差分値Δs4も同様の算出方法によって得られる。また、第2差分値Δs2の許容誤差は、例えば、第1センサ21自体の検出誤差と第4センサ24センサ自体の検出誤差が重なる範囲で定められる。第3差分値Δs3の許容誤差は、例えば、第2センサ22および第4センサ24それぞれのセンサ自体の検出誤差によって定められる。第4差分値Δs4の許容誤差は、例えば、第3センサ23自体の検出誤差と第4センサ24センサ自体の検出誤差が重なる範囲で定められる。
【0050】
第1操作量Fs1が異常でない、且つ、第2操作量Fs2が異常でない、且つ、第1差分値Δs1が許容誤差より小さい場合、ステップS16において、第1ECU処理部312は、第1差分値Δs1が正常か異常かを示す第1差分フラグを正常にする。これに対して、第1操作量Fs1が異常である、第2操作量Fs2が異常である、第1差分値Δs1が許容誤差以上、の少なくとも1つが該当する場合、ステップS17において、第1ECU処理部312は、第1差分フラグを異常にする。
【0051】
続いて、ステップS18において、第1ECU処理部312は、第1操作量Fs1および第4操作量Fs4が正常か異常かを判定するとともに、第2差分値Δs2が許容誤差より小さいか否かを判定する。
【0052】
第1操作量Fs1が異常でない、且つ、第4操作量Fs4が異常でない、且つ、第2差分値Δs2が許容誤差より小さい場合、ステップS19において、第1ECU処理部312は、第2差分値Δs2が正常か異常かを示す第2差分フラグを正常にする。これに対して、第1操作量Fs1が異常である、第4操作量Fs4が異常状態である、第2差分値Δs2が許容誤差以上、の少なくとも1つが該当する場合、ステップS20において、第1ECU処理部312は、第2差分フラグを異常にする。
【0053】
続いて、ステップS21において、第1ECU処理部312は、第2操作量Fs2および第4操作量Fs4が正常か異常かを判定するとともに、第3差分値Δs3が許容誤差より小さいか否かを判定する。
【0054】
第2操作量Fs2が異常でない、且つ、第4操作量Fs4が異常でない、且つ、第3差分値Δs3が許容誤差より小さい場合、ステップS22において、第1ECU処理部312は、第3差分値Δs3が正常か異常かを示す第3差分フラグを正常にする。これに対して、第2操作量Fs2が異常である、第4操作量Fs4が異常である、第3差分値Δs3が許容誤差以上、の少なくとも1つが該当する場合、ステップS23において、第1ECU処理部312は、第3差分フラグを異常にする。
【0055】
なお、第1差分値Δs1、第2差分値Δs2、第3差分値Δs3が許容誤差より小さいか否かを判定するためのそれぞれの許容誤差は、互いに異なる大きさであってもよいし、同じ大きさであってもよい。例えば、第1差分値Δs1が許容誤差より小さいか否かを判定するための許容誤差と第2差分値Δs2が許容誤差より小さいか否かを判定するための許容誤差とは互いに異なる大きさであってもよいし、同じ大きさであってもよい。また、第2差分値Δs2が許容誤差より小さいか否かを判定するための許容誤差と第3差分値Δs3が許容誤差より小さいか否かを判定するための許容誤差とは互いに異なる大きさであってもよいし、同じ大きさであってもよい。
【0056】
第1ECU処理部312は、ステップS10~ステップS23において、第1差分フラグ、第2差分フラグ、第3差分フラグそれぞれの状態を更新すると、多数決判定処理を行う。多数決判定処理は、第1操作量Fs1、第2操作量Fs2および第4操作量Fs4それぞれに対して目標減速度を算出するために用いることが可能か否かを判定する処理である。換言すれば、多数決判定処理は、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24内に、正常状態であるセンサが存在することを確認できるか否かを判定する処理である。
【0057】
具体的に、ステップS30において、第1差分フラグ、第2差分フラグおよび第3差分フラグが正常であるか否かを判定する。ここで、第1操作量Fs1と、第2操作量Fs2と、第4操作量Fs4とがそれぞれ比較的近い値であって、第1差分フラグ、第2差分フラグおよび第3差分フラグの全てが正常である場合の一例を
図5に示す。なお、
図5の横軸は、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24それぞれを示す。縦軸は、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24それぞれから送信される検出信号に基づいて算出されるブレーキペダル91の操作量を示す。なお、このような縦軸および横軸が示すものは、後述の説明で参照する
図6~
図8でも同様である。
【0058】
ところで、本実施形態では、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24は、互いに異なる検出方式でブレーキペダル91の操作量を検出する3つのセンサが組み合わされて構成されている。このため、互いに検出方式が異なる3つの第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24が、外部要因によって、同時に故障する可能性が比較的低い。
【0059】
このため、第1操作量Fs1、第2操作量Fs2および第4操作量Fs4それぞれの値が比較的近い値や略同様の値であって第1差分フラグ、第2差分フラグおよび第3差分フラグの全てが正常である場合、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24それぞれは、故障していない可能性が高い。すなわち、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24それぞれは正常状態である可能性が高い。そして、これら正常状態である第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24から送信される検出信号に基づいて算出される第1操作量Fs1、第2操作量Fs2、第3操作量Fs3それぞれは、正常値である可能性が高い。
【0060】
このため、ステップS30において、第1ECU処理部312は、第1差分フラグ、第2差分フラグおよび第3差分フラグの全てが正常である場合、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24の全てが正常であると判定する。すなわち、第1ECU処理部312は、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24内に正常状態であるセンサが存在すると判定するとともに、正常状態であるセンサを特定する。そして、ステップS31において、第1ECU処理部312は、多数決判定処理結果を示す多数決フラグにおいて、接続される全てのセンサが正常であることを示す正常にし、多数決フラグが正常である情報を第2ECU32に送信する。
【0061】
そして、ステップS32において、第1ECU処理部312は、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち、正常状態と判定されたセンサから送信される検出信号に基づいて、ブレーキ制御指令値となるブレーキペダル91の操作量を決定する。本実施形態では、正常と判定されたセンサが複数存在する場合、正常と判定された複数のセンサのうち、予め定められる優先度が最も高いセンサから送信される検出信号に基づいて、ブレーキペダル91の操作量を決定する。例えば、本実施形態の優先度は、互いに異なる検出方式でブレーキペダル91の操作量を検出する第1センサ21、第2センサ22、第4センサ24のうち、検出精度が高いと想定される順に、第1センサ21、第2センサ22、第4センサ24となっている。
【0062】
このため、ステップS31で多数決フラグが正常とされた場合、ステップS32において、第1ECU処理部312は、ブレーキペダル91の操作量を第1センサ21が検出する操作量に基づいて算出される第1操作量Fs1に決定する。そして、第1ECU処理部312は、決定したブレーキペダル91の操作量である第1操作量Fs1および予め定められた制御マップに基づいて、車両の目標減速度を算出する。
【0063】
なお、ブレーキペダル91の操作量を決定する優先度は、この順に限定されず、第1センサ21、第2センサ22、第4センサ24の順とは異なる順に、例えば、第2センサ22、第4センサ24、第1センサ21の順に定められてもよい。また、ブレーキペダル91の操作量を決定する優先度は、第4センサ24、第1センサ21、第2センサ22の順や、第1センサ21、第4センサ24、第2センサ22の順等に定められてもよい。
【0064】
また、ブレーキペダル91の操作量を決定する優先度は、検出精度が高いと想定される順とは異なる順であって、例えば、故障発生頻度の低いと想定される順、外部環境からの影響を受け難い順等に設定されてもよい。
【0065】
また、ブレーキペダル91の操作量は、センサの優先度とは異なる方法で決定してもよい。例えば、ブレーキペダル91の操作量は、正常状態と判定されたセンサそれぞれから送信される検出信号に基づいて算出される操作量のうち、最大値に決定されてもよいし、最小値に決定されてもよい。また、ブレーキペダル91の操作量は、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24の全てが正常状態である場合、全てのセンサそれぞれから送信される検出信号から算出される操作量のうち、最大値および最小値と異なる値に決定されてもよい。
【0066】
例えば、ブレーキペダル91の操作量は、正常状態と判定されたセンサそれぞれから送信される検出信号および予め定められる関数に基づいて決定されてもよい。関数を用いる一例として、ブレーキペダル91の操作量は、正常状態と判定されたセンサそれぞれから送信される検出信号に基づいて算出される操作量の平均値に決定されてもよい。また、ブレーキペダル91の操作量は、正常状態と判定されたセンサそれぞれから送信される検出信号に基づいて算出される操作量のうち、最大値および最小値を検出するセンサとは異なるセンサが検出する操作量に基づいて決定されてもよい。
【0067】
また、本実施形態の第1ECU31および第2ECU32は、接続されるセンサの数が多い第1ECU31が主要側の制御装置で設定されており、第2ECU32が予備側の制御装置で設定されている。このため、第1ECU31側で車両の目標減速度を算出可能である場合、車両の目標減速度は、第1ECU31で算出された目標減速度に設定される。そして、第1ECU31は、第1ECUスイッチ313によって第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12との接続がオンされる。また、第2ECU32は、第2ECUスイッチ323によって第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12との接続がオフされる。そして、第1ECU31は、ステップS32において算出した目標減速度の情報を第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12に出力することで、第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御する。
【0068】
ステップS30で第1差分フラグ、第2差分フラグおよび第3差分フラグの全てが正常であると判定されない場合、第1ECU処理部312は、ステップS33の処理を実行する。
【0069】
ステップS33において、第1ECU処理部312は、第1差分フラグが異常、且つ、第2差分フラグが異常、且つ、第3差分フラグが正常であるか否かを判定する。ここで、第2操作量Fs2および第4操作量Fs4が互いに比較的近い値で第3差分値Δs3が許容誤差より小さい場合の一例を
図6に示す。この
図6に示す例では、第1操作量Fs1の値が第2操作量Fs2および第4操作量Fs4それぞれの値から比較的大きく乖離しており、第1差分値Δs1および第2差分値Δs2それぞれが許容誤差以上である。このような場合に、第1差分フラグおよび第2差分フラグが異常、且つ、第3差分フラグが正常となる。
【0070】
そして、このような、3つの操作量のうち、2つの操作量が比較的近い値や略同様の値であって、残り1つの操作量が2つの操作量から大きく乖離している場合、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のいずれか1つが故障している可能性が高い。そして、2つのセンサは故障していない可能性が高い。すなわち、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち2つのセンサは正常状態であって、これら正常状態である2つのセンサから送信される検出信号に基づいて算出されるブレーキペダル91の操作量それぞれは、正常値である可能性が高い。これに対して、残り1つのセンサは異常状態であって、この異常状態である残り1つのセンサから送信される検出信号に基づいて算出されるブレーキペダル91の操作量は、異常値である可能性が高い。
【0071】
このため、第1ECU処理部312は、第1差分フラグ、第2差分フラグ、第3差分フラグのうち、2つの差分フラグが異常である場合、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22、第4センサ24のいずれか1つが異常状態であると判定する。具体的に、第1ECU処理部312は、異常である2つ差分フラグを算出するために用いられる共通の操作量を検出したセンサが異常状態であると判定する。そして、異常状態であると判定されないかったセンサが正常状態であると判定する。
【0072】
すなわち、第1ECU処理部312は、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24内に正常状態であるセンサが存在すると判定するとともに、正常状態であるセンサを特定する。例えば、
図6に示す一例では、第1ECU処理部312は、異常である第1差分フラグおよび第2差分フラグを算出するために用いられる第1操作量Fs1を検出した第1センサ21が異常状態であると判定する。また、第1ECU処理部312は、第2センサ22および第4センサ24が正常状態であると判定する。
【0073】
そして、ステップS34において、多数決フラグを第1センサ21が異常状態であることを示す第1センサ異常にし、多数決フラグが第1センサ異常である情報を第2ECU32に送信する。
【0074】
そして、ステップS35において、第1ECU処理部312は、第1センサ21、第2センサ22、第4センサ24のうち、正常状態と判定された第2センサ22および第4センサ24から送信される検出信号に基づいて、ブレーキペダル91の操作量を決定する。具体的に、第1ECU処理部312は、予め定められる優先度に基づいて、ブレーキペダル91の操作量を第2操作量Fs2に決定する。
【0075】
そして、第1ECU処理部312は、決定したブレーキペダル91の操作量である第2操作量Fs2および予め定められた制御マップに基づいて、車両の目標減速度を算出する。そして、第1ECU31は、第1ECUスイッチ313によって第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12との接続がオンされる。また、第2ECU32は、第2ECUスイッチ323によって第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12との接続がオフされる。そして、第1ECU31は、算出した目標減速度の情報を第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12に出力することで、第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御する。
【0076】
また、ステップS33で第1差分フラグが異常、且つ、第2差分フラグが異常、且つ、第3差分フラグが正常であると判定されない場合、第1ECU処理部312は、ステップS36の処理を実行する。
【0077】
ステップS36において、第1ECU処理部312は、第1差分フラグが異常、且つ、第3差分フラグが異常、且つ、第2差分フラグが正常であるか否かを判定する。第1差分フラグが異常、且つ、第3差分フラグが異常、且つ、第2差分フラグが正常である場合、第1ECU処理部312は、第1差分フラグおよび第3差分フラグを算出するために用いる第2操作量Fs2を検出した第2センサ22が異常状態であると判定する。また、第1ECU処理部312は、第1センサ21および第4センサ24が正常状態であると判定する。
【0078】
すなわち、第1ECU処理部312は、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24内に正常状態であるセンサが存在すると判定するとともに、正常状態であるセンサを特定する。
【0079】
そして、ステップS37において、多数決判定処理を示す多数決フラグを第2センサ22が異常状態であることを示す第2センサ異常にし、多数決フラグが第2センサ異常である情報を第2ECU32に送信する。
【0080】
そして、ステップS38において、第1ECU処理部312は、第1センサ21、第2センサ22、第4センサ24のうち、正常状態と判定された第1センサ21および第4センサ24から送信される検出信号に基づいて、ブレーキペダル91の操作量を決定する。具体的に、第1ECU処理部312は、予め定められる優先度に基づいて、ブレーキペダル91の操作量を第1操作量Fs1に決定する。
【0081】
そして、第1ECU処理部312は、決定したブレーキペダル91の操作量である第1操作量Fs1および予め定められた制御マップに基づいて、車両の目標減速度を算出する。そして、第1ECU31は、第1ECUスイッチ313によって第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12との接続がオンされる。また、第2ECU32は、第2ECUスイッチ323によって第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12との接続がオフされる。そして、第1ECU31は、算出した目標減速度の情報を第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12に出力することで、第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御する。
【0082】
また、ステップS36で第1差分フラグが異常、且つ、第3差分フラグが異常、且つ、第2差分フラグが正常であると判定されない場合、第1ECU処理部312は、ステップS39の処理を実行する。
【0083】
ステップS39において、第1ECU処理部312は、第2差分フラグが異常、且つ、第3差分フラグが異常、且つ、第1差分フラグが正常であるか否かを判定する。第2差分フラグが異常、且つ、第3差分フラグが異常、且つ、第1差分フラグが正常である場合、第1ECU処理部312は、第2差分フラグおよび第3差分フラグを算出するために用いる第4操作量Fs4を検出した第4センサ24が異常状態であると判定する。また、第1ECU処理部312は、第1センサ21および第2センサ22が正常状態であると判定する。
【0084】
すなわち、第1ECU処理部312は、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24内に正常状態であるセンサが存在すると判定するとともに、正常状態であるセンサを特定する。
【0085】
そして、ステップS40において、多数決フラグを第4センサ24が異常状態であることを示す第4センサ異常にし、多数決フラグが第4センサ異常である情報を第2ECU32に送信する。
【0086】
そして、ステップS41において、第1ECU処理部312は、第1センサ21、第2センサ22、第4センサ24のうち、正常状態と判定された第1センサ21および第2センサ22から送信される検出信号に基づいて、ブレーキペダル91の操作量を決定する。具体的に、第1ECU処理部312は、予め定められる優先度に基づいて、ブレーキペダル91の操作量を第1操作量Fs1に決定する。
【0087】
そして、第1ECU処理部312は、決定したブレーキペダル91の操作量である第1操作量Fs1および予め定められた制御マップに基づいて、車両の目標減速度を算出する。そして、第1ECU31は、第1ECUスイッチ313によって第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12との接続がオンされる。また、第2ECU32は、第2ECUスイッチ323によって第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12との接続がオフされる。そして、第1ECU31は、算出した目標減速度の情報を第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12に出力することで、第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御する。
【0088】
また、ステップS39で第2差分フラグが異常、且つ、第3差分フラグが異常、且つ、第1差分フラグが正常であると判定されない場合、第1ECU処理部312は、ステップS42の処理を実行する。ステップS42の処理は、第1差分フラグ、第2差分フラグ、第3差分フラグのうちの3つの差分フラグの全てが異常、または、いずれか2つの差分フラグが異常である場合に実行される。
【0089】
ここで、第1操作量Fs1、第2操作量Fs2および第4操作量Fs4それぞれが互いに比較的大きく乖離しており、第1差分値Δs1、第2差分値Δs2、第3差分値Δs3の全てが許容誤差以上である場合の一例を
図7に示す。このような場合に、第1差分フラグ、第2差分フラグおよび第3差分フラグの全てが異常となる。
【0090】
このような、3つの操作量それぞれが互いに大きく乖離している場合、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち、全てのセンサ、または、いずれか2つのセンサが故障している可能性が高い。すなわち、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち全てのセンサまたは2つのセンサは異常状態である可能性が高い。
【0091】
仮に、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち全てが異常状態である場合、これら異常状態である3つのセンサから送信される検出信号に基づいて算出されるブレーキペダル91の操作量は、異常値である可能性が高い。
【0092】
また、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち2つのセンサが異常状態である場合、正常状態である1つのセンサから送信される検出信号に基づいて算出されるブレーキペダル91の操作量は、正常値である可能性が高い。しかし、このような第1操作量Fs1、第2操作量Fs2および第4操作量Fs4それぞれの値が互いに比較的大きく乖離している場合、第1操作量Fs1、第2操作量Fs2、第4操作量Fs4を比較するのみで正常状態であるセンサを特定することができない。
【0093】
このため、第1ECU処理部312は、第1差分フラグ、第2差分フラグ、第3差分フラグの全てが異常である場合、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22、第4センサ24のうちの複数のセンサが異常状態であると判定する。すなわち、第1ECU処理部312は、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24内に正常状態であるセンサが存在すると判定せず、正常状態であるセンサを特定しない。
【0094】
そして、ステップS42において、第1ECU処理部312は、多数決フラグを、正常状態であるセンサが特定できないことを示す多数決失敗にし、多数決フラグが多数決失敗である情報を第2ECU32に送信する。そして、第1ECU処理部312は、ブレーキペダル91の操作量を決定することなく、処理を終える。すなわち、第1ECU処理部312は、目標減速度の情報を第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12に出力しない。
【0095】
また、第2操作量Fs2が第1操作量Fs1および第4操作量Fs4に比較的近い値であって、第1差分値Δs1および第3差分値Δs3が許容誤差より小さい場合の一例を
図8に示す。この
図8に示す例では、第1操作量Fs1の値が第4操作量Fs4の値から比較的大きく乖離しており、第1差分値Δs1が許容誤差以上である。このような場合に、第1差分フラグおよび第3差分フラグが正常、且つ、第2差分フラグが異常となる。
【0096】
このような、3つの差分フラグのうち、2つの差分フラグが正常あって、残り1つの差分フラグが異常である場合、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち1つまたは2つのセンサが故障している可能性が高い。すなわち、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち1つまたは2つのセンサは異常状態であって、この異常状態である2つのセンサから送信される検出信号に基づいて算出されるブレーキペダル91の操作量は、異常値である可能性が高い。
【0097】
しかし、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24それぞれの検出信号に基づいて算出されるブレーキペダル91のそれぞれの操作量を比較しても、異常状態であるセンサの数や異常状態であるセンサを特定できない。
【0098】
したがって、第1ECU処理部312は、3つの差分フラグのうち、2つの差分フラグが正常あって、残り1つの差分フラグが異常である場合、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち1つまたは複数のセンサが異常状態であると判定する。すなわち、第1ECU処理部312は、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24内に正常状態であるセンサが存在すると判定せず、正常状態であるセンサを特定しない。
【0099】
このため、ステップS42において、第1ECU処理部312は、多数決フラグを多数決失敗にし、多数決フラグが多数決失敗である情報を第2ECU32に送信する。そして、第1ECU処理部312は、ブレーキペダル91の操作量を決定することなく、処理を終える。すなわち、第1ECU処理部312は、目標減速度の情報を第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12に出力しない。
【0100】
以上のように、ステップS30~ステップS42において実行される多数決判定処理では、
図9に示す表のようにブレーキペダル91の操作量が決定される。基本的には、本実施形態のブレーキシステム1では、主要側で設定される第1ECU31によって正常状態であるセンサを特定可能な場合、正常状態であるセンサの内、優先度が最も高いセンサの検出信号に基づいてブレーキペダル91の操作量が決定される。すなわち、多数決判定処理において多数決失敗と判定されない場合、第2ECU32が正常状態であるか異常状態であるかに関わらず、目標減速度を算出することができる。
【0101】
ただし、第1ECU31の多数決判定処理において多数決失敗と判定され、正常状態であるセンサを特定可能できない場合、第1ECU31はブレーキペダル91の操作量を決定することができない。このため、第2ECU32が正常状態である場合、第2ECU32が実行する制御処理によってブレーキペダル91の操作量を決定する。
【0102】
続いて、第2ECU32が実行する制御処理について
図10および
図11を参照して説明する。最初に、ステップS50において、第2ECU32は、自身の動作状態が正常状態か異常状態かを判定する。正常状態とは、第2ECU32が第3信号S3および第4信号S4を正常に受信可能であって、第3センサ23および第4センサ24へ正常に電源を供給可能である状態である。
【0103】
また、正常状態とは、第3信号S3および第4信号S4を受信した際に、第2ECU処理部322が第3信号S3および第4信号S4に基づいて正常な処理動作を実行可能な状態である。これに対して、異常状態とは、第3信号S3および第4信号S4の受信が不可能、第3センサ23および第4センサ24へ電源を供給不可能、第2ECU処理部322が正常な処理動作を実行不可能のいずれか1つまたは複数が組み合わされた状態である。ステップS51において、第2ECU32は、判定した自身の動作状態の情報を第1ECU31へ出力する。また、ステップS52において、第2ECU32は、第1ECU31のステップS11の処理において判定される第1ECU31の動作状態の情報を第1ECU31から取得する。
【0104】
ステップS53において、第2ECU32は、第1ECU31の多数決判定処理において設定される多数決フラグの情報を取得する。
【0105】
第2ECU32が正常状態である場合、ステップS54において、第2ECU32は、第3センサ23から送信される第3信号S3および第4センサ24から送信される第4信号S4を取得する。なお、図示しないが、第2ECU32が異常状態である場合、ステップS54以降の処理を全てスキップする。
【0106】
ステップS54において、第2ECU32は、第3信号S3および第4信号S4を取得すると、第2ECU処理部322が第3信号S3および第4信号S4それぞれに基づいて、ブレーキペダル91の操作量を算出する。具体的に、第2ECU処理部322は、第3信号S3を取得すると、この第3信号S3および予め定められた制御マップに基づいて、第3操作量Fs3を算出する。さらに、第2ECU処理部322は、第4信号S4を取得すると、この第4信号S4および予め定められた制御マップに基づいて、第4操作量Fs4を算出する。第2ECU処理部322がステップS54において算出する第4操作量Fs4は、第1ECU処理部312がステップS14において算出する第4操作量Fs4と等しい。
【0107】
ステップS55において、第2ECU処理部322は、算出した第3操作量Fs3および第4操作量Fs4に基づいて、第2ECU32におけるセンサ異常判定処理を行う。第2ECU32のセンサ異常判定は、第2ECU32に接続される第3センサ23および第4センサ24のいずれも正常状態であるか、および少なくとも一方が異常状態であるかを判定するために実行される。
【0108】
具体的に、ステップS55において、第2ECU処理部322は、第3操作量Fs3および第4操作量Fs4が正常か異常かを判定するとともに、第4操作量Fs4と第4操作量Fs4との差分値である第4差分値Δs4が許容誤差より小さいか否かを判定する。
【0109】
ここで、本実施形態では、第2ECU32に接続される第3センサ23および第4センサ24は、互いに異なる検出方式でブレーキペダル91の操作量を検出する2つのセンサが組み合わされて構成されている。このため、互いに検出方式が異なる2つの第3センサ23および第4センサ24が、外部要因によって、同時に故障する可能性が比較的低い。
【0110】
このため、第3操作量Fs3および第4操作量Fs4それぞれの値が比較的近い値や略同様の値であって、第4差分値Δs4が許容誤差より小さい場合、第3センサ23および第4センサ24それぞれは、故障していない可能性が高い。すなわち、第3センサ23および第4センサ24それぞれは正常状態であって、これら正常状態である第3センサ23および第4センサ24から送信される検出信号に基づいて算出される2つのブレーキペダル91の操作量それぞれは、正常値である可能性が高い。
【0111】
このため、第2ECU処理部322は、第3操作量Fs3および第4操作量Fs4が正常であって、第4差分値Δs4が許容誤差より小さい場合、第2ECU32に接続される第3センサ23および第4センサ24のいずれも正常状態であると判定する。すなわち、第2ECU処理部322は、第2ECU32に接続される第3センサ23および第4センサ24内に正常状態であるセンサが存在すると判定するとともに、正常状態であるセンサを特定する。
【0112】
これに対して、第3操作量Fs3の値および第4操作量Fs4の値が比較的大きく乖離しており、第4差分値Δs4が許容誤差以上である場合、第3センサ23および第4センサ24の少なくとも一方が故障している可能性が高い。すなわち、第3センサ23および第4センサ24の少なくとも一方は異常状態であって、第3センサ23および第4センサ24から送信される検出信号に基づいて算出される2つのブレーキペダル91の操作量の少なくとも一方は、異常値である可能性が高い。
【0113】
さらに、第4差分値Δs4が許容誤差以上である場合、第3センサ23および第4センサ24のいずれも故障している可能性がある。そして、第3センサ23および第4センサ24から送信される検出信号に基づいて算出される2つのブレーキペダル91の操作量のいずれも異常値である可能性がある。
【0114】
このため、第2ECU処理部322は、第3操作量Fs3および第4操作量Fs4が異常、または第4差分値Δs4が許容誤差以上である場合、第2ECU32に接続され第3センサ23および第4センサ24の少なくとも一方が異常状態であると判定する。すなわち、第2ECU処理部322は、第2ECU32に接続される第3センサ23および第4センサ24内に正常状態であるセンサが存在すると判定せず、正常状態であるセンサを特定しない。
【0115】
このため、第3操作量Fs3および第4操作量Fs4が異常でない、且つ、第4差分値Δs4が許容誤差より小さい場合、ステップS56で第2ECU処理部322は、第3センサ23および第4センサ24が正常であることを示す第4差分フラグを正常にする。そして、第2ECU処理部322は、ステップS58の処理を実行する。
【0116】
これに対して、第3操作量Fs3が異常でない、且つ、第4操作量Fs4が異常でない、且つ、第4差分値Δs4が許容誤差より小さいと判定しない場合、ステップS57において、第2ECU処理部322は、第4差分フラグを異常にする。そして、第2ECU処理部322は、ステップS58およびステップS59の処理をスキップする。
【0117】
なお、第1ECU31が多数決判定処理を実行する際に用いる許容誤差の大きさおよび第2ECU32がセンサ異常判定処理を実行する際に用いる許容誤差の大きさは、互いに異なる大きさであってもよいし、同じ大きさであってもよい。
【0118】
ステップS58において、第2ECU処理部322は、第1ECU31から送信される多数決フラグの情報に基づいて、第4センサ24が異常状態であると判定された、または異常状態の可能性があると判定されたか否かを判定する。ステップS58の処理は、ステップS58が実行される時点より前に第1ECU31で実施された多数決判定処理において、第4センサ24が正常状態であったか否かを判定するために実行される。
【0119】
第2ECU処理部322は、第1ECU31から送信される多数決フラグの情報が第4センサ異常でない、且つ、多数決失敗でないと判定する場合、ステップS59の処理を実行する。換言すれば、第1ECU31から送信される多数決フラグの情報が正常、または、第1センサ異常、または、第2センサ異常と判定される場合、ステップS59の処理を実行する。
【0120】
ステップS59において、第2ECU処理部322は、車両のイグニッションスイッチがオンされた後に実行される第1ECU31の多数決判定処理において、第4センサ24が正常状態と判定されたことを示す正常経験フラグをオンする。正常経験フラグは、車両のイグニッションスイッチがオンされた後に第4センサ24の状態が正常状態であった異常状態であったかを判定するためフラグである。
【0121】
そして、正常経験フラグは、車両のイグニッションスイッチがオンされた後に実行される第1ECU31の多数決判定処理において第4センサ24が正常状態であった場合、イグニッションスイッチがオフされるまでオンの状態を維持する。換言すれば、正常経験フラグは、車両のイグニッションスイッチがオンされた後、第4センサ24の状態が正常状態であったことを第1ECU31の多数決判定処理によって確認できた場合にオンの状態が維持される。
【0122】
なお、ステップS58の判定処理は、ステップS55の判定処理において第3センサ23および第4センサ24のどちらも正常状態と判定された場合に実行される。このため、正常経験フラグである場合、車両のイグニッションスイッチがオンされた後、第4センサ24の状態が正常状態であっただけでなく、第3センサ23の状態も正常状態であったことを示す。
【0123】
また、図示しないが、正常経験フラグは、車両のイグニッションスイッチがオンされた際の初期値がオフに設定されるフラグである。このため、車両のイグニッションスイッチがオンされた際の第3センサ23または第4センサ24の一方でも異常状態である場合、ステップS55で否定判定が為されることで、正常経験フラグは、イグニッションスイッチがオフされるまでオフの状態が維持される。また、車両のイグニッションスイッチがオンされた後に実行される第1ECU31の多数決判定処理において第4センサ24が正常状態であったと判定されない場合、正常経験フラグは、イグニッションスイッチがオフされるまでオフの状態が維持される。
【0124】
ステップS60において、第2ECU処理部322は、第1ECU31から送信される第1ECU31の動作状態の情報に基づいて、第1ECU31が正常状態であるか否かを判定する。また、ステップS61において、第2ECU処理部322は、第1ECU31から送信される多数決フラグの情報が多数決失敗であるかを判定する。
【0125】
第1ECU31が正常状態であって、且つ、多数決フラグの情報が多数決失敗でないと判定される場合、車両の目標減速度は、第1ECU31によって算出される。これは、第1ECU31が第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち少なくとも2つの正常状態であるセンサから正常な検出信号を受信できるためである。このため、第1ECU31は、この正常状態であるセンサからの検出信号によってブレーキペダル91の操作量を算出することができる。したがって、ステップS60およびステップS61において、否定判定がされない場合、第2ECU処理部322は、ブレーキペダル91の操作量を決定することなく、処理を終える。すなわち、第2ECU処理部322は、目標減速度の情報を第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12に出力しない。
【0126】
これに対して、第1ECU31が正常状態であると判定されず、且つ、多数決フラグの情報が多数決失敗でないと判定されない場合、車両の目標減速度は、第1ECU31によって算出することができない。これは、第1ECU31が第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24内に正常状態であるセンサを特定することができないためである。この場合、第1ECU31は、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24からの検出信号によってブレーキペダル91の操作量を算出することができない。したがって、ステップS60またはステップS61において、否定判定がされる場合、制御主導権が第1ECU31から第2ECU32へ移譲される。そして、第2ECU処理部322は、
図11に示す以下の処理を実行する。
【0127】
ステップS70において、第2ECU処理部322は、第4差分フラグが正常であるか否かを判定する。すなわち、ステップS70において、第2ECU処理部322は、第3センサ23および第4センサ24のいずれも正常状態であるか否かを判定する。ステップS71において第4差分フラグが正常であると判定された場合、第2ECU処理部322は、第3センサ23および第4センサ24から送信される検出信号に基づいて、ブレーキペダル91の操作量を決定する。本実施形態では、第3センサ23が第4センサ24に比較して優先度が高く設定されている。このため、第2ECU処理部322は、第4センサ24に比較して優先度が高い第3センサ23から送信される検出信号に基づいて、ブレーキペダル91の操作量を第3操作量Fs3に決定する。
【0128】
なお、第3センサ23は、第4センサ24に比較して優先度が低く設定されてもよい。この場合、第2ECU処理部322は、第4センサ24から送信される検出信号に基づいて、ブレーキペダル91の操作量を第4操作量Fs4に決定する。
【0129】
そして、第2ECU処理部322は、決定したブレーキペダル91の操作量である第3操作量Fs3および予め定められた制御マップに基づいて、車両の目標減速度を算出する。そして、第2ECU32は、第2ECUスイッチ323によって第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12との接続がオンされる。また、第1ECU31は、第1ECUスイッチ313によって第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12との接続がオフされる。そして、第2ECU32は、算出した目標減速度の情報を第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12に出力することで、第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御する。
【0130】
これに対して、ステップS70で第4差分フラグが正常であると判定されない場合、第2ECU処理部322は、ステップS72において正常経験フラグがオンであるか否かを判定する。
【0131】
ステップS72で正常経験フラグがオンであると判定された場合、ステップS73において、第2ECU処理部322は、第3センサ23から送信される検出信号に基づいて、ブレーキペダル91の操作量を決定する。そして、第2ECU処理部322は、決定したブレーキペダル91の操作量である第3操作量Fs3および予め定められた制御マップに基づいて、車両の目標減速度を算出する。そして、第2ECU32は、第2ECUスイッチ323によって第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12との接続がオンされる。また、第1ECU31は、第1ECUスイッチ313によって第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12との接続がオフされる。そして、第2ECU32は、算出した目標減速度の情報を第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12に出力することで、第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御する。
【0132】
このようにステップS72で正常経験フラグがオンであると判定された場合、第3センサ23から送信される検出信号に基づいてブレーキペダル91の操作量を決定する理由について説明する。
【0133】
正常経験フラグは、車両のイグニッションスイッチがオンされた後に実行される第1ECU31の多数決判定処理において、第4センサ24が正常状態と判定された場合にオンされる。また、正常経験フラグを初期値オフからオンへ変更可能か否かを判定するステップS58の処理は、ステップS55で第3センサ23および第4センサ24のいずれも正常状態であると判定された際に実行される。このため、正常経験フラグがオンであるということは、車両のイグニッションスイッチがオンされた後に、第4センサ24の状態が第1ECU31および第2ECU32によって正常状態であると判定されたことを示す。そして、正常経験フラグがオンされた場合、車両のイグニッションスイッチがオンである間、正常経験フラグは、そのオン状態が維持される。
【0134】
そして、多数決判定処理において多数決失敗と判定された場合に制御主導権が第1ECU31から第2ECU32へ移譲されるところ、本実施形態では、第1ECU31に第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24が接続されている。このように第1ECU31に複数のセンサが接続される構成において、外部要因によってこれら第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24が同時に故障する可能性が比較的小さい。特に、本実施形態では、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24は、互いの検出方式が異なっている。このため、互いに検出方式が異なる3つの第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24が、外部要因によって、同時に故障する可能性が非常に低い。すなわち、3つの第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち複数のセンサが同時に故障することによって第1ECU31の多数決判定処理において多数決失敗と判定される可能性が非常に低い。
【0135】
このため、ステップS61で多数決フラグが多数決失敗でないと判定されない場合、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうちの2つのセンサが異なるタイミングで異常状態となったと想定される。例えば、第1センサ21が異常状態となってから所定期間経過後に第2センサ22または第4センサ24が異常状態となったことでステップS61において多数決フラグが多数決失敗でないと判定されなくなったと想定される。また、他の例としては、第4センサ24が異常状態となってから所定期間経過後に第1センサ21または第2センサ22が異常状態となったことでステップS61において多数決フラグが多数決失敗でないと判定されなくなったと想定される。
【0136】
例えば、第1センサ21が異常状態となってから所定期間経過後に第4センサ24が異常状態となったことでステップS61において多数決フラグが多数決失敗でないと判定されなくなったとする。この場合、第4センサ24が異常状態となることでステップS55において否定判定が為される。この場合、第4差分フラグは、ステップS57の処理で異常に変更される。ただし、正常経験フラグは、オンの状態が維持されたままである。
【0137】
また、第2ECU32には、第3センサ23および第4センサ24が接続されており、これら第3センサ23および第4センサ24が同時に故障する可能性が比較的小さい。特に、本実施形態では、第2ECU32に接続される第3センサ23および第4センサ24は、互いに異なる検出方式でブレーキペダル91の操作量を検出する2つのセンサが組み合わされて構成されている。このため、互いに検出方式が異なる2つの第3センサ23および第4センサ24が、外部要因によって、同時に故障する可能性が非常に低い。
【0138】
したがって、正常経験フラグがオンの状態で、ステップS61において否定判定が為された制御周期と同じ制御周期で実行されるステップS55において、否定判定が為される場合、第4センサ24のみが異常状態となったと想定される。すなわち、ステップS70で第4差分フラグが正常であると判定されない場合、第3センサ23および第4センサ24のうち第4センサ24が異常状態となったものの、第3センサ23は正常状態であると想定できる。
【0139】
換言すれば、第1ECU31および第2ECU32によって第4センサ24が正常状態であると判定された後状態で、第1ECU31は、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24内に正常状態であるセンサが存在すると判定できなくなったとする。また、第2ECU32は、第1ECU31および第2ECU32によって第4センサ24が正常状態であると判定された後状態で、第3センサ23および第4センサ24のいずれも正常状態であると判定できなくなったとする。
【0140】
このような場合、第1ECU31および第2ECU32に共通して接続される第4センサ24が異常状態となったことで多数決判定処理において多数決失敗と判定され、センサ異常判定において異常と判定されたと想定できる。そして、第2ECU32に接続される2つのセンサのうち、異常状態となったと想定される第4センサ24とは異なる第3センサ23は正常状態であると想定できる。
【0141】
以上より、第2ECU処理部322は、ステップS72で正常経験フラグがオンであると判定された場合、第3センサ23から送信される検出信号に基づいて、ブレーキペダル91の操作量を決定することができる。
【0142】
また、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち、最初に第4センサ24が異常状態となったとする。この場合、第4センサ24が異常状態となった時点で、ステップS55において否定判定が為され、第4差分フラグは、ステップS57の処理で異常に変更される。ただし、正常経験フラグは、オンの状態が維持されたままである。そして、第4センサ24が異常状態となってから所定期間経過後に第1センサ21または第2センサ22が異常状態となったことで、ステップS61において多数決フラグが多数決失敗でないと判定されなくなったとする。
【0143】
このように第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち2つのセンサが異常状態となった場合であっても、正常経験フラグがオンである場合、第3センサ23は正常状態であると想定する。すなわち、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち2つのセンサが異常状態となった場合でも、車両のイグニッションスイッチがオンされた後、第3センサ23の状態が正常状態であった場合、第3センサ23は正常状態であると想定する。
【0144】
このため、第2ECU処理部322は、ステップS72で正常経験フラグがオンであると判定された場合、第3センサ23から送信される検出信号に基づいて、ブレーキペダル91の操作量を決定することができる。
【0145】
これに対して、ステップS72で正常経験フラグがオンであると判定されない場合、第2ECU32は、ブレーキペダル91の操作量を決定しない。そして、ステップS74において、第2ECU32は、予め定められるフェイルセーフ動作を実行するための制御信号を第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12に出力する。これは、車両のイグニッションスイッチがオンされた後、第1ECU31および第2ECU32に共通して接続される第4センサ24の状態が正常状態であることを確認することができないためである。
【0146】
例えば、車両のイグニッションスイッチがオンされた直後にステップS74の処理が実行されるのであれば、フェイルセーフ動作は、インストルメントパネルに設けられた表示器にブレーキ異常状態の警告を表示してもよいし、車両の走行を禁止してもよい。また、例えば、車両の走行中にステップS74の処理が実行されるのであれば、フェイルセーフ動作は、インストルメントパネルに設けられた表示器にブレーキ異常状態の警告を表示してもよいし、車両の走行速度を制限してもよい。
【0147】
以上のように、ステップS50~ステップS74において実行される判定処理では、
図12に示す表のようにブレーキペダル91の操作量が決定される。基本的には、本実施形態のブレーキシステム1では、主要側で設定される第1ECU31によってブレーキペダル91の操作量を決定可能である場合、第1ECU31の制御処理によってブレーキペダル91の操作量が決定される。ただし、多数決判定処理において多数決失敗と判定され、第2ECU32によって第3センサ23および第4センサ24が正常状態と判定される場合、優先度が高い第3センサ23の検出信号に基づいてブレーキペダル91の操作量が決定される。
【0148】
また、多数決判定処理において多数決失敗と判定され、且つ、第4差分フラグが正常であると判定されない場合、正常経験フラグがオンであれば、第3センサ23の検出信号に基づいてブレーキペダル91の操作量が決定される。
【0149】
以上の如く、ブレーキシステム1は、第1ECU31の多数決判定処理において正常状態であるセンサが存在すると判定せず、第2ECU32のセンサ異常判定処理において正常と判定する場合、第3操作量Fs3に基づいてブレーキ回路10を制御する。
【0150】
これによれば、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうちの2つのセンサが異常状態であっても、第3操作量Fs3に基づいてブレーキ回路10を制御することができる。このため、ブレーキシステム1としての冗長性を確保することができる。
【0151】
また、ブレーキペダル91の操作量を検出する第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24が第1ECU31に直接接続され、第3センサ23および第4センサ24が第2ECU32に直接接続されている。このため、第1ECU31と第2ECU32との相互通信によってこれら第1センサ21~第4センサ24の検出信号を送受信する構成に比較して、第1ECU31および第2ECU32それぞれの制御処理において検出信号の同期遅れの発生を抑制できる。
【0152】
また、第1センサ21~第4センサ24のうち、第4センサ24は、第1ECU31および第2ECU32に接続されており、第3センサ23が検出するブレーキペダル91の操作量を第1ECU31および第2ECU32に出力する。このため、第1ECU31および第2ECU32に共通に接続されるセンサを含まない構成に比較してブレーキシステム1に設けられるセンサの数を減少させることができる。したがって、ブレーキシステム1の筐体の大型化およびコストの増加を抑制できる。
【0153】
また、上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
【0154】
(1)上記実施形態では、第1ECU31および第2ECU32によって第4センサ24が正常状態であると判定された後状態で、第1ECU31が第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24に正常状態であるセンサが存在すると判定せず、第2ECU32が第3センサ23および第4センサ24のいずれも正常状態であると判定しない場合、第3センサ23が検出する操作量に基づいて第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御する。
【0155】
ここで、複数のセンサが同時に異常状態になる可能性は低いため、第1ECU31に接続される第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうちの複数が異常状態になるには、異常状態となるセンサが1つずつ増加していく可能性が高い。また、第2ECU32に接続される第3センサ23および第4センサ24のいずれもが異常状態になるには、一方のセンサが異常状態となった後の所定期間経過後に他方のセンサが異常状態となる可能性が高い。
【0156】
したがって、第1ECU31および第2ECU32によって第4センサ24が正常状態であると判定された後状態で、多数決判定処理において多数決失敗と判定され、センサ異常判定処理で異常と判定される場合、第3センサ23が正常状態であると想定できる。
【0157】
このため、第1ECU31で第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24に正常状態であるセンサが存在すると判定できない場合であっても、第3センサ23から送信される検出信号に基づいてブレーキペダル91の操作量を決定することができる。第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうちの2つのセンサが異常状態であっても、第3操作量Fs3に基づいてブレーキ回路10を制御することができる。このため、ブレーキシステム1としての冗長性を確保することができる。
【0158】
(2)上記実施形態では、第1ECU31が第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24が検出する操作量それぞれの差が許容値以内か否かに基づいて、第4センサ24が正常状態であるか否かを判定する。そして、第2ECU32が第3センサ23および第4センサ24が検出する操作量それぞれの差が許容値以内か否かに基づいて、第4センサ24が正常状態であるか否かを判定する。
【0159】
これによれば、第4センサ24が正常状態か異常状態かを第1ECU31が判定する判定結果および第2ECU32が判定する判定結果に基づいて行うことができるため、判定精度を向上させることができる。
【0160】
(3)上記実施形態では、第1ECU31および第2ECU32は、相互通信可能であって、互いの正常状態および異常状態を送受信可能に構成されている。また、第1ECU31および第2ECU32のうち一方のECUが異常状態である場合、他方のECUが検出する前記操作量に基づいて第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御する。
【0161】
これによれば、第1ECU31が異常状態であっても、第2ECU32が正常状態であれば、第3センサ23および第4センサ24が検出するブレーキペダル91の操作量に基づいて第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御することができる。また、第2ECU32が異常状態であっても、第1ECU31が正常状態であれば、第1センサ21、第2センサ22、第4センサ24が検出するブレーキペダル91の操作量に基づいて第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御することができる。
【0162】
(4)上記実施形態では、第1ECU31および第2ECU32のいずれも正常状態である場合、第1ECU31に送信される検出信号に基づいて第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御する。
【0163】
これによれば、第1ECU31および第2ECU32のいずれも正常状態である場合、第1ECU31および第2ECU32それぞれが算出する操作量に基づいて第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12制御する構成に比較して処理速度を上昇できる。
【0164】
(5)上記実施形態では、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24は、ブレーキペダル91の操作量を検出する検出方式が互いに異なるセンサを少なくとも2つ含む。また、第3センサ23および第4センサ24は、ブレーキペダル91の操作量を検出する検出方式が互いに異なっている。
【0165】
これによれば、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24のうち、例えば、1つのセンサが外部環境等によってブレーキペダル91の操作量を検出できなくても、その他2つのセンサによってブレーキペダル91の操作量を検出することができる。また、第3センサ23および第4センサ24のうち、例えば、一方のセンサが外部環境等によってブレーキペダル91の操作量を検出できなくても、他方のセンサによってブレーキペダル91の操作量を検出することができる。
【0166】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0167】
上述の実施形態では、第1ECU31に接続されるセンサの数が3つである例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1ECU31には、4つ以上のセンサが接続される構成であってもよい。この場合、第1ECU31は、4つ以上のセンサから送信される検出信号に基づいて多数決判定処理を実行することで、4つ以上のセンサ内に正常状態であるセンサが存在することを判定する。
【0168】
上述の実施形態では、第1ECU31および第2ECU32は、相互通信可能であって、互いの正常状態および異常状態を送受信可能に構成されている例について説明したが、これに限定されない。
【0169】
例えば、第1ECU31および第2ECU32は、互いの正常状態および異常状態を送受信不可能に構成されていてもよい。この場合、第1ECU31および第2ECU32は、互いに独立して第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12に決定した操作量を送信してもよい。
【0170】
第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12は、第1ECU31および第2ECU32のいずれからも決定された操作量を受信できない場合、フェイルセーフ動作を実行する構成であってもよい。または、第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12は、第1ECU31および第2ECU32の少なくとも一方から決定された操作量を受信した場合、受信した操作量に基づいて動作してもよい。
【0171】
上述の実施形態では、第1ECU31および第2ECU32のうち一方のECUが異常状態である場合、他方のECUが検出する前記操作量に基づいて第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御する例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1ECU31および第2ECU32のうち一方のECUが異常状態である場合、他方のECUがフェイルセーフ動作を実行するための制御信号を第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12に出力する構成であってもよい。
【0172】
上述の実施形態では、第1ECU31および第2ECU32のいずれも正常状態である場合、第1ECU31に送信される操作量に基づいて第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御する例について説明したが、これに限定されない。第1ECU31および第2ECU32のいずれも正常状態である場合、第2ECU32に送信される操作量に基づいて第1ブレーキ回路11および第2ブレーキ回路12を制御する構成であってもよい。
【0173】
上述の実施形態では、第1ECU31が正常状態である場合、第1ECU31に接続される複数のセンサのうち、正常状態であると判定されたセンサが検出する操作量に基づいて目標減速度を算出する例について説明したが、これに限定されない。例えば、第1ECU31が正常状態であって、且つ、第2ECU32が正常状態である場合、第1センサ21~第4センサ24のうち、正常状態であると判定された1つまたは複数のセンサが検出する操作量に基づいて目標減速度を算出してもよい。例えば、第1センサ21~第4センサ24の全てが正常状態であると判定された場合、これら第1センサ21~第4センサ24それぞれが検出する操作量の平均値に基づいて目標減速度を算出してもよい。
【0174】
上述の実施形態では、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24は、ブレーキペダル91の操作量を検出する検出方式が互いに異なっている例について説明したが、これに限定されない。また、第3センサ23および第4センサ24は、ブレーキペダル91の操作量を検出する検出方式が互いに異なっている例について説明したが、これに限定されない。
【0175】
例えば、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24は、ブレーキペダル91の操作量を検出する検出方式が同じ方式で構成されていてもよい。また、第1センサ21、第2センサ22および第4センサ24は、3つのセンサのうち2つがブレーキペダル91の操作量を検出する検出方式が同じであって、残り1つのセンサの検出方式が異なる構成であってもよい。さらに、第3センサ23および第4センサ24は、ブレーキペダル91の操作量を検出する検出方式が同じ方式で構成されていてもよい。
【0176】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0177】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0178】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0179】
(本発明の特徴)
[請求項1]
車両を制動するブレーキ回路(10)を制御するブレーキシステムであって、
運転者に操作されるブレーキペダル(91)の操作量を検出し、検出した前記操作量に応じた検出信号を生成して出力する4つ以上のセンサ(21、22、23、24)と、
前記4つ以上のセンサのうちの1つの所定のセンサ(23)を除く3つ以上のセンサ(21、22、24)が接続される第1電子制御装置(31)と、前記所定のセンサおよび前記3つ以上のセンサのうちの1つの共通のセンサ(24)の2つのセンサが接続される第2電子制御装置(32)とを含み、前記4つ以上のセンサが検出する前記操作量に基づいて前記ブレーキ回路を制御する電子制御装置(30)と、を備え、
前記第1電子制御装置は、前記3つ以上のセンサそれぞれが検出する前記操作量に基づいて、前記3つ以上のセンサに正常状態であるセンサが存在することを判定可能であって、
前記第2電子制御装置は、前記2つのセンサそれぞれが検出する前記操作量に基づいて、前記2つのセンサのいずれも正常状態であることを判定可能であって、
前記電子制御装置は、
前記第1電子制御装置が、前記3つ以上のセンサに正常状態であるセンサが存在すると判定せず、前記第2電子制御装置が、前記2つのセンサのいずれも正常状態であると判定する場合、前記所定のセンサおよび前記共通のセンサのうち少なくとも一方のセンサが検出する前記操作量に基づいて前記ブレーキ回路を制御するブレーキシステム。
【0180】
[請求項2]
前記電子制御装置は、
前記第1電子制御装置および前記第2電子制御装置によって前記共通のセンサが正常状態であると判定された後状態で、前記第1電子制御装置が、前記3つ以上のセンサに正常状態であるセンサが存在すると判定せず、前記第2電子制御装置が、前記2つのセンサのいずれも正常状態であると判定しない場合、前記所定のセンサが検出する前記操作量に基づいて前記ブレーキ回路を制御する請求項1に記載のブレーキシステム。
【0181】
[請求項3]
前記第1電子制御装置は、前記3つ以上のセンサが検出する前記操作量それぞれの差が予め定められる許容誤差以内か否かに基づいて、前記共通のセンサが正常状態であるか否かを判定し、
前記第2電子制御装置は、前記2つのセンサが検出する前記操作量それぞれの差が予め定められる許容誤差以内か否かに基づいて、前記共通のセンサが正常状態であるか否かを判定する請求項2に記載のブレーキシステム。
【0182】
[請求項4]
前記第1電子制御装置および前記第2電子制御装置は、相互通信可能であって、互いの正常状態および異常状態を送受信可能に構成されており、
前記第1電子制御装置および前記第2電子制御装置のうち一方の電子制御装置が異常状態である場合、他方の電子制御装置に送信される前記操作量に基づいて前記ブレーキ回路を制御する請求項1ないし3のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【0183】
[請求項5]
前記第1電子制御装置および前記第2電子制御装置のいずれも正常状態である場合、前記第1電子制御装置および前記第2電子制御装置のどちらか一方に送信される前記操作量に基づいてブレーキ回路を制御する請求項1ないし4のいずれか1つに記載のブレーキシステム。
【0184】
[請求項6]
前記第1電子制御装置に接続される前記3つ以上のセンサは、前記ブレーキペダルの操作量を検出する検出方式が互いに異なるセンサを少なくとも2つ含み、
前記第2電子制御装置に接続される前記2つのセンサは、前記ブレーキペダルの操作量を検出する検出方式が互いに異なる請求項1ないし5のいずれ1つに記載のブレーキシステム。
【符号の説明】
【0185】
10 ブレーキ回路
21 第1センサ
22 第2センサ
23 第3センサ
24 第4センサ
30 電子制御装置
31 第1電子制御装置
32 第2電子制御装置