(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164188
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】吐出不良判定方法、情報処理装置、3次元造形装置及び3次元造形システム
(51)【国際特許分類】
B29C 64/386 20170101AFI20231102BHJP
B29C 64/112 20170101ALI20231102BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231102BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231102BHJP
B29C 64/209 20170101ALI20231102BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20231102BHJP
B22F 10/80 20210101ALI20231102BHJP
B22F 12/50 20210101ALI20231102BHJP
B22F 12/53 20210101ALI20231102BHJP
B22F 12/57 20210101ALI20231102BHJP
B22F 12/52 20210101ALI20231102BHJP
B22F 12/90 20210101ALI20231102BHJP
B22F 10/10 20210101ALI20231102BHJP
【FI】
B29C64/386
B29C64/112
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/209
B33Y50/00
B22F10/80
B22F12/50
B22F12/53
B22F12/57
B22F12/52
B22F12/90
B22F10/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075584
(22)【出願日】2022-04-29
(71)【出願人】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】平松 直比古
【テーマコード(参考)】
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4F213AP13
4F213AQ01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL32
4F213WL74
4F213WL96
4K018BA01
4K018BD04
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】3次元造形において流体の吐出不良の有無を判定することが可能となる技術を提供する。
【解決手段】吐出不良判定方法は、インクジェットヘッドから樹脂を吐出することにより行われる3次元造形に用いる吐出不良判定方法であって、3次元造形データから層毎の設計上の樹脂使用量を算出する算出工程と(S14)、層毎にインクジェットヘッドから吐出された実樹脂使用量を取得する取得工程と(S24)、算出工程により算出された設計上の樹脂使用量と取得工程により取得された実樹脂使用量とを層毎に比較することにより、インクジェットヘッドからの樹脂の吐出不良の有無を判定する判定工程と(S26,S28)、を含んでいる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐出ヘッドから流体を吐出することにより行われる3次元造形に用いる吐出不良判定方法であって、
造形データから所定の区分毎の設計上の流体使用量を算出する算出工程と、
前記所定の区分毎に前記吐出ヘッドから吐出された実流体使用量を取得する取得工程と、
前記算出工程により算出された前記設計上の流体使用量と前記取得工程により取得された前記実流体使用量とを、前記所定の区分毎に比較することにより、前記吐出ヘッドからの前記流体の吐出不良の有無を判定する判定工程と、
を含む吐出不良判定方法。
【請求項2】
前記造形データは、3次元造形データであり、
前記3次元造形は、前記吐出ヘッドから吐出された前記流体を積層して行い、
前記所定の区分は、前記積層に係る一層または複数層の所定層数の区分であり、
前記算出工程では、前記3次元造形データから前記積層の層毎の2次元造形データを抽出して、該2次元造形データから前記所定層数の区分の設計上の流体使用量を算出し、
前記取得工程では、前記所定層数の区分毎に前記吐出ヘッドから吐出された実流体使用量を取得する、
請求項1に記載の吐出不良判定方法。
【請求項3】
前記所定層数の区分は、一層の区分である、
請求項2に記載の吐出不良判定方法。
【請求項4】
前記算出工程では、前記2次元造形データから前記層毎の総ピクセル数を取得し、取得した前記総ピクセル数と1ピクセル当たりの流体使用量とに基づいて、前記設計上の流体使用量を算出する、
請求項2に記載の吐出不良判定方法。
【請求項5】
前記判定工程により前記流体の吐出不良が有ると判定された場合、前記流体の吐出不良が発生した前記所定の区分を特定して報知する報知工程をさらに含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の吐出不良判定方法。
【請求項6】
吐出ヘッドから流体を吐出することにより行われる3次元造形に用いる吐出不良判定処理であって、造形データから所定の区分毎の設計上の流体使用量を算出する算出処理と、前記所定の区分毎に前記吐出ヘッドから吐出された実流体使用量を取得する取得処理と、前記算出処理により算出された前記設計上の流体使用量と前記取得処理により取得された前記実流体使用量とを、前記所定の区分毎に比較することにより、前記吐出ヘッドからの前記流体の吐出不良の有無を判定する判定処理と、を含む吐出不良判定処理を実行する情報処理装置。
【請求項7】
流体を吐出する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドに供給する流体を貯蔵する容器と、
前記容器内の前記流体の量を測定するためのセンサと、
請求項6に記載の情報処理装置と、
を備えた3次元造形装置。
【請求項8】
流体を吐出する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドに供給する流体を貯蔵する容器と、前記容器内の前記流体の量を測定するためのセンサと、を有する3次元造形装置と、
請求項6に記載の情報処理装置と、
を備えた3次元造形システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吐出ヘッドから流体を吐出することにより行われる3次元造形に係る技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、3次元造形物の3次元モデルをスライスして生成したスライス画像に基づいて形成される樹脂層の形成に必要な必須樹脂量を算出し、算出した必須樹脂量から各層の形成に必要な量の樹脂を樹脂収納容器から槽に供給して3次元造形物を造形する3次元造形装置が記載されている。そして、この3次元造形装置は、樹脂収納容器内に収容された樹脂の残量を検出するセンサを備え、センサにより次の3次元造形物の造形に必要な必須樹脂量が樹脂収納容器に残っていないことが検出された場合、樹脂収納容器の交換を通知するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の3次元造形装置では、樹脂の供給不良については考慮していないので、造形された3次元造形物に樹脂の供給不良による品質不良等が生ずる虞がある。
【0005】
本開示は、3次元造形において流体の吐出不良の有無を判定することが可能となる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の吐出不良判定方法は、吐出ヘッドから流体を吐出することにより行われる3次元造形に用いる吐出不良判定方法であって、造形データから所定の区分毎の設計上の流体使用量を算出する算出工程と、所定の区分毎に吐出ヘッドから吐出された実流体使用量を取得する取得工程と、算出工程により算出された設計上の流体使用量と取得工程により取得された実流体使用量とを、所定の区分毎に比較することにより、吐出ヘッドからの流体の吐出不良の有無を判定する判定工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、3次元造形において流体の吐出不良の有無を判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る3次元印刷装置の概略構成を示す図である。
【
図2】
図1の3次元印刷装置の制御装置を示すブロック図である。
【
図3】
図1の3次元印刷装置に含まれるインクジェットヘッド周辺の構成を示す図である。
【
図4】3次元造形データの一例((a))とそれを変換した2次元造形データ((b))を示す図である。
【
図5】吐出不良のない3次元造形物((a))と吐出不良のある3次元造形物((b))の各一例を示す図である。
【
図6】吐出不良判定処理を説明するための図である。
【
図7】PCが実行する吐出不良判定処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本開示の一実施形態に係る3次元印刷装置10の概略構成を示している。3次元印刷装置10は、搬送装置20と、第1造形ユニット22と、第2造形ユニット24と、制御装置28(
図2参照)とを備える。それら搬送装置20と第1造形ユニット22と第2造形ユニット24とは、3次元印刷装置10のベース29の上に配置されている。ベース29は、概して長方形状をなしており、以下の説明では、ベース29の長手方向をX軸方向、ベース29の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。なお、Z軸方向は、鉛直方向と同じ方向である。
【0011】
搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32とを備えている。そのX軸スライド機構30は、X軸スライドレール34とX軸スライダ36とを有している。X軸スライドレール34は、X軸方向に延びるように、ベース29の上に配設されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、X軸スライド機構30は、電磁モータ38(
図2参照)を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36がX軸方向の任意の位置に移動する。また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール50とテーブル52とを有している。Y軸スライドレール50は、Y軸方向に延びるように、ベース29の上に配設されており、X軸方向に移動可能とされている。そして、Y軸スライドレール50の一端部が、X軸スライダ36に連結されている。そのY軸スライドレール50には、テーブル52が、Y軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、Y軸スライド機構32は、電磁モータ56(
図2参照)を有しており、電磁モータ56の駆動により、テーブル52がY軸方向の任意の位置に移動する。これにより、テーブル52は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、ベース29上の任意の位置に移動する。
【0012】
テーブル52は、基台60と、保持装置62と、昇降装置64(
図2参照)とを有している。基台60は、平板状に形成され、上面にパレット(図示せず)が載置される。保持装置62は、基台60のX軸方向の両側部に設けられている。そして、基台60に載置されたパレットのX軸方向の両縁部が、保持装置62によって挟まれることで、パレットが固定的に保持される。また、昇降装置64は、基台60の下方に配設されており、基台60を昇降させる。
【0013】
第1造形ユニット22は、回路基板の配線を造形するユニットであり、第1印刷部72と、焼成部74とを有している。第1印刷部72は、インクジェットヘッド200(
図2参照)を有しており、インクジェットヘッド200が金属インクを線状に吐出する。金属インクは、ナノメートルサイズの金属、例えば、銀の微粒子が溶剤中に分散されたものである。なお、金属微粒子の表面は分散剤によりコーティングされており、溶剤中での凝集が防止されている。また、インクジェットヘッド200は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから金属インクを吐出する。
【0014】
焼成部74は、赤外線照射装置78(
図2参照)を有している。赤外線照射装置78は、吐出された金属インクに赤外線を照射する装置であり、赤外線が照射された金属インクは焼成し、配線が形成される。なお、金属インクの焼成とは、エネルギーを付与することによって、溶媒の気化や金属微粒子の保護膜、つまり、分散剤の分解等が行われ、金属微粒子が接触または融着をすることで、導電率が高くなる現象である。そして、金属インクが焼成することで、金属製の配線が形成される。
【0015】
また、第2造形ユニット24は、回路基板の樹脂層を造形するユニットであり、第2印刷部84と、硬化部86とを有している。第2印刷部84は、インクジェットヘッド300(
図2参照)を有しており、インクジェットヘッド300は紫外線硬化樹脂を吐出する。紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により硬化する樹脂である。なお、インクジェットヘッド300は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でもよく、樹脂を加熱して気泡を発生させ複数のノズルから吐出するサーマル方式でもよい。
【0016】
硬化部86は、平坦化装置90(
図2参照)と照射装置92(
図2参照)とを有している。平坦化装置90は、インクジェットヘッド300によって吐出された紫外線硬化樹脂の上面を平坦化するものであり、例えば、紫外線硬化樹脂の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラもしくはブレードによって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂の厚みを均一させる。また、照射装置92は、光源として水銀ランプもしくはLEDを備えており、吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、樹脂層が形成される。
【0017】
また、制御装置28は、
図2に示すように、コントローラ110と、複数の駆動回路112と、I/OIF(input/output interface)113とを備えている。複数の駆動回路112は、上記電磁モータ38,56、保持装置62、昇降装置64、インクジェットヘッド200、赤外線照射装置78、インクジェットヘッド300、平坦化装置90、照射装置92に接続されている。I/OIF113は、液面センサ340,350に接続されている。コントローラ110は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路112に接続されている。これにより、搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット24の作動が、コントローラ110によって制御される。さらに、制御装置28は、PC400と接続されている。なお、PC400は、一般的なPCであるので、その具体的な構成の説明は省略する。
【0018】
3次元印刷装置10では、上述した構成によって、テーブル52の基台60に載置されたパレットの上に樹脂積層体が形成され、その樹脂積層体の上面に配線が形成されることで、回路基板が形成される。
【0019】
図3は、第2印刷部84のインクジェットヘッド300周辺の構成を示している。インクジェットヘッド300には、インク流路330を介して、第1及び第2のシリンジ310,320が接続されている。なお、インク流路330は、インクジェットヘッド300の内部にも形成され、その内部に形成されたインクの流路部(図示せず)の底面に流路部内のインクを吐出する複数のノズル(図示せず)が、本実施形態では、
図3の紙面前後に2列形成されている。つまり、インク流路330は、インクジェットヘッド300の外部の流路部330aと、前列の複数のノズル部分の流路部(図示せず)と、後列の複数のノズル部分の流路部(図示せず)と、インクジェットヘッド300の外部の流路部330bとを連結して1つの流路を構成している。ここで、インクは、上記紫外線硬化樹脂のことである。
【0020】
第1のシリンジ310は、インクCをインクジェットヘッド300に供給するために貯留する。第1のシリンジ310は、外筒部311と、外筒部311の上面を覆う透明の蓋部312とにより主として構成されている。そして、外筒部311の側壁には、圧力ライン(図示せず)を接続する圧力ライン取付口313が設けられるとともに、インクCを注入するインク注入口314が設けられている。また、外筒部311の内部には、フロート360が入れられている。フロート360は、本実施形態では、外筒部311の内径より短い径を有する円盤状に形成され、インクCの液面上に浮かぶ部材である。
【0021】
また、インクCの液面上に浮かんだフロート360の垂直上方であって、第1のシリンジ310の蓋部312の外部には、液面センサ340が設けられている。液面センサ340は、例えば、光センサであり、フロート360に光を照射した後、フロート360からの反射光を受光するまでの時間を計測することにより、液面センサ340とフロート360との間の距離を計測し、インクCの液面位置を検出する。
【0022】
第2のシリンジ320は、第1のシリンジ310に対して、外筒部321の側壁にインク注入口が設けられていない点のみが異なっている。したがって、第2のシリンジ320及びその周辺の構成の説明は省略する。なお、第2のシリンジ320にインク注入口が設けられていないのは、第1のシリンジ310にインクCを注入できれば、第1のシリンジ310に注入されたインクCはインク流路330を通って第2のシリンジ320にも供給され、時間の経過に従って第1のシリンジ310内のインクCの液面の高さと第2のシリンジ320内のインクCの液面の高さが同じになるからである。
【0023】
圧力ライン取付口313,323には、圧力ラインを介して、正圧と負圧のいずれかが選択されて印加される。インク流路330内のインクCを上記ノズルに供給するときには、圧力ライン取付口313,323に正圧を印加して、第1及び第2のシリンジ310,320内のインクCの液面に正圧を加える。一方、インクジェットヘッド300による印刷時には、圧力ライン取付口313,323に負圧を印加して、第1及び第2のシリンジ310,320内のインクCの液面に負圧を加える。これによりインクCは上方に引かれるので、インクCに加わる上向きの力と重力とのバランスにより、ノズル内に供給されたインクCの外面がメニスカスとなって、印刷可能状態となるからである。
【0024】
以上のように構成された3次元印刷装置10、制御装置28及びPC400が実行する制御処理を、
図4~
図7に基づいて詳細に説明する。
図7は、PC400が実行する吐出不良判定処理の手順を示している。この吐出不良判定処理は、例えば、3次元印刷装置10が印刷を開始する準備が整ったときを契機に開始される。以降、各処理の手順の説明において、ステップを「S」と表記する。
【0025】
図7において、まずPC400は、3次元造形データから2次元造形データを抽出する(S10)。
図4(a)は、3次元造形データ510を基板500上に可視化した様子を示している。そして、
図4(b)は、3次元造形データ510から抽出した2次元造形データ620を可視化した様子を示している。インクジェットヘッド300は、樹脂を積層して3次元造形物を造形するので、2次元造形データ620は、3次元造形データ510を層毎にスライスすることにより抽出される。つまり、S10の抽出は、本実施形態では、3次元造形データを層毎にスライスして2次元造形データを抽出する処理に相当する。
【0026】
次にPC400は、層毎の2次元造形データから印刷個所のpixcel数をカウントする(S12)。
図4(b)の2次元造形データ620では、“ABC”の記載された印刷領域620が印刷個所に該当する。なお、
図4(b)の例では、造形領域610は、2,840×2,840pixcelとなっている。このうち、印刷領域620のpixcel数が、例えば1.2×10
6pixcelであったとすると、S12では、PC400は、2次元造形データ620の印刷領域620のpixcel数として、1.2×10
6pixcelをカウントする。同様にして、PC400は、他の層の2次元造形データについても、印刷個所のpixcel数をカウントする。
【0027】
次にPC400は、各2次元造形データの設計上の樹脂使用量を算出する(S14)。インクジェットヘッド300は、本実施形態では、1pixcel当たり64×10-12L吐出し、3次元印刷装置10は、1層当たり2回重ねて印刷するので、PC400は、2次元造形データ620の設計上の樹脂使用量として、
1.2×106×64×10-12×2=1.536×10-4(L)=0.1536(mL)
を算出する。同様にして、PC400は、他の層の2次元造形データについても、設計上の樹脂使用量を算出する。
【0028】
そして、PC400は、算出した設計上の樹脂使用量をメモリに記憶する(S16)。続いてPC400は、3次元印刷装置10の印刷が開始されるまで待機し(S18:NO)、3次元印刷装置10の印刷が開始されると(S18:YES)、PC400は、層カウンタを“1”に初期化する(S20)。3次元印刷装置10の制御装置28は、本実施形態では、印刷を開始すると、印刷開始を知らせる信号を出力するので、S18では、PC400は、その信号を受信したか否かを判断している。また、層カウンタは、造形対象の3次元造形物の最下位層を第1層として、第1層から最上位層までの層数をカウントするために、メモリ上に設けられたカウンタである。
【0029】
次にPC400は、その層、つまり層カウンタにより示される層の印刷が終了したか否かを判断する(S22)。3次元印刷装置10の制御装置28は、本実施形態では、各層の印刷を終了すると、各層の印刷終了を知らせる信号を出力するので、S22では、PC400は、その信号を受信したか否かを判断している。S22の判断で、その層の印刷がまだ終了しない場合(S22:NO)、PC400は、終了するまで待機し(S22)、その層の印刷が終了すると(S22:YES)、PC400は、処理をS24に進める。
【0030】
S24では、PC400は、3次元印刷装置10からその層の実樹脂使用量、つまり、その層を印刷するために実際に使用した樹脂量を取得する。3次元印刷装置10の制御装置28は、本実施形態では、液面センサ340,350からの各検出値に基づいて、各層毎の実樹脂使用量を算出して出力するようにしている。具体的には、3次元印刷装置10の制御装置28は、第1のシリンジ310について、各層の印刷を終了する度に、液面センサ340から取得したインクCの液面位置を履歴として上記RAMに記憶する。ただし、第1層の印刷を開始するときには、コントローラ110は、その印刷の開始前に液面センサ340から取得したインクCの液面位置を初期値としてRAMに記憶する。そして、ある層の印刷が終了したときには、コントローラ110は、その時点のインクCの液面位置とその前の層の印刷が終了した時点のインクCの液面位置との差分(高さの差)に第1のシリンジ310の外筒部311を水平面で切断したときの切断面積を乗算することで、ある層の第1のシリンジ310における実樹脂使用量を算出する。同様にして、コントローラ110は、第2のシリンジ320についても、ある層の実樹脂使用量を算出する。そして、コントローラ110は、第1のシリンジ310について算出されたある層の実樹脂使用量と、第2のシリンジ320について算出されたある層の実樹脂使用量とを加算することで、ある層の実樹脂使用量を算出する。このように本実施形態では、各層の実樹脂使用量を3次元印刷装置10側で算出するようにしたが、これに限らず、3次元印刷装置10の制御装置28は、第1層の印刷が開始される前と各層の印刷が終了した時点の各タイミングで液面センサ340,350から取得した第1及び第2のシリンジ310,320内の液面位置だけ出力するようにし、各層の実樹脂使用量は、PC400側で算出するようにしてもよい。
【0031】
次にPC400は、その層の設計上の樹脂使用量と実樹脂使用量とを比較し(S26)、設計上の樹脂使用量≠実樹脂使用量である場合(S28:YES)、つまり、吐出不良と判定した場合、PC400は、3次元印刷装置10に印刷停止を指示した(S30)後、吐出不良判定処理を終了する。なお、この印刷停止の指示と併せてオペレータに、層を特定して吐出不良が生じたことを報知するようにしてもよい。報知方法は、ディスプレイ上に文字や図形で表示する方法や音声で知らせる方法など、オペレータが知ることができる方法であれば、その方法は問わない。一方、設計上の樹脂使用量=実樹脂使用量である場合(S28:NO)、つまり、吐出不良でないと判定した場合、PC400は、処理をS32に進める。
【0032】
S32では、PC400は、層カウンタを“1”だけインクリメントする。そして、PC400は、3次元印刷装置10の印刷が終了したか否かを判断する(S34)。3次元印刷装置10の制御装置28は、本実施形態では、印刷を終了すると、印刷終了を知らせる信号を出力するので、S34では、PC400は、その信号を受信したか否かを判断している。この判断で、3次元印刷装置10が印刷をまだ終了しない場合(S34:NO)、つまり、印刷をする層が残っている場合、PC400は、処理を上記S22に戻して、S22以降の処理を繰り返す。一方、3次元印刷装置10が印刷を終了した場合(S34:YES)、PC400は、吐出不良判定処理を終了する。
【0033】
図6は、吐出不良判定処理を用いてシミュレーションした結果の一例を示している。
図6中、“●”を繋いだ破線は、設計上の樹脂使用量を示し、実線は、実樹脂使用量を示している。そして、破線と実線との乖離が生じた個所で、つまり第3層の印刷が終了すると、上記S28の判断で“YES”と判断されるので、S30で、3次元印刷装置10へ印刷停止が指示される。
【0034】
図5(a)は、吐出不良のない3次元造形物520を示し、
図5(b)は、吐出不良534aのある3次元造形物530を示している。3次元造形物520も3次元造形物530も、第1層521~第4層524及び第1層531~第4層534の4層を積層して造形されている。しかし、3次元造形物530の第4層534の一部に吐出不良534aが生じている。
図5(b)の例では、3次元造形物530の最上層に吐出不良534aが生じているため、吐出不良534aの発見は容易であるが、第4層534の上に、吐出不良のない層が重なって造形された場合、つまり、吐出不良のない層の間に吐出不良のある層が挟まれてしまった場合、造形が完了した3次元造形物から、その3次元造形物に吐出不良が生じているか否か判断するのは、非常に困難となる。このような3次元造形物についても、吐出不良判定処理を行いながら造形処理を実行すれば、吐出不良のある層で印刷が停止するので、オペレータは3次元造形物に吐出不良が生じていることを知ることができる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態の吐出不良判定方法は、インクジェットヘッド300から樹脂を吐出することにより行われる3次元造形に用いる吐出不良判定方法であって、3次元造形データ510から層毎の設計上の樹脂使用量を算出する算出工程と(S14)、層毎にインクジェットヘッド300から吐出された実樹脂使用量を取得する取得工程と(S24)、算出工程により算出された設計上の樹脂使用量と取得工程により取得された実樹脂使用量とを、層毎に比較することにより、インクジェットヘッド300からの樹脂の吐出不良の有無を判定する判定工程と(S26,S28)、を含んでいる。
【0036】
このように、本実施形態の吐出不良判定方法では、3次元造形において樹脂の吐出不良の有無を判定することが可能となる。
【0037】
ちなみに、本実施形態において、インクジェットヘッド300は、「吐出ヘッド」の一例である。樹脂は、「流体」の一例である。3次元造形データ510は、「造形データ」の一例である。層は、「所定の区分」の一例である。設計上の樹脂使用量は、「設計上の流体使用量」の一例である。
【0038】
また、算出工程では、2次元造形データから層毎の総ピクセル数を取得し、取得した総ピクセル数と1ピクセル当たりの樹脂使用量とに基づいて、設計上の樹脂使用量を算出する。
【0039】
これにより、樹脂の吐出不良の判定をより正確に行うことができる。
【0040】
また、本実施形態の吐出不良判定方法は、判定工程により樹脂の吐出不良が有ると判定された場合、樹脂の吐出不良が発生した層を特定して報知する報知工程をさらに含んでいる。
【0041】
これにより、オペレータは樹脂の吐出不良が発生した層がどの層であるかを知ることができるので、樹脂の吐出不良の原因を特定する手助けになる。
【0042】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0043】
(1)上記実施形態では、「特定の区分」の一例として層を例に挙げて説明したが、これに限らず、層より細かい範囲であってもよい。要するに、実樹脂使用量が測定できる範囲であればよい。また、層も、上記実施形態では、一層毎に吐出不良の有無を判定するようにしたが、これに限らず、複数層を単位として、複数層毎に吐出不良の有無を判定するようにしてもよい。
【0044】
(2)上記実施形態では、インクCとして、樹脂、特に紫外線硬化樹脂を例に挙げて説明したが、他の種類の樹脂であってもよいし、樹脂以外の流体、例えばインクジェットヘッド200により吐出される金属インクであってもよい。また、他の流体であってもよい。
【0045】
(3)上記実施形態では、実樹脂使用量を測定するためのセンサとして、光センサを例に挙げて説明したが、実樹脂使用量を測定できるものであれば、光センサ以外のセンサを用いてもよい。
【0046】
(4)上記実施形態では、PC400が吐出不良判定処理を実行するとしたが、これに限らず、3次元印刷装置10の制御装置28が吐出不良判定処理を実行するようにしてもよい。この場合、PC400を省略するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0047】
10…3次元印刷装置、84…第2印刷部、110…コントローラ、300…インクジェットヘッド、310…第1のシリンジ、320…第2のシリンジ、340,350…液面センサ、360,370…フロート、400…PC、C…インク。