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特開2023-164189筆記具用水性インキ組成物およびそれを収容した筆記具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164189
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】筆記具用水性インキ組成物およびそれを収容した筆記具
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/16 20140101AFI20231102BHJP
   B43K 7/00 20060101ALI20231102BHJP
   B43K 8/02 20060101ALI20231102BHJP
   B43K 5/00 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
C09D11/16
B43K7/00
B43K8/02 100
B43K8/02 110
B43K8/02 130
B43K5/00 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075587
(22)【出願日】2022-04-29
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】福嶋 梓
(72)【発明者】
【氏名】大野 いつ香
(72)【発明者】
【氏名】北岡 伸之
【テーマコード(参考)】
2C350
4J039
【Fターム(参考)】
2C350GA01
2C350GA03
2C350GA04
2C350GA06
2C350HA01
2C350HA08
2C350HA14
2C350HA15
4J039AB01
4J039BA04
4J039BC09
4J039BE01
4J039BE14
4J039BE22
4J039BE30
4J039EA15
4J039EA19
4J039EA42
4J039EA44
4J039GA28
(57)【要約】

【課題】 裏映りを抑えつつ乾燥性が良好な筆跡を形成可能であり、さらに、掠れや途切れが抑制された鮮明な筆跡を形成できる、筆記具用水性インキ組成物と前記インキ組成物を収容した筆記具を提供すること。
【解決手段】着色材と、水と、粘性調整剤と、特定のアセチレングリコール系界面活性剤を含有し、20℃での条件で測定された粘度が5.0mPa・s未満である、筆記具用水性インキ組成物、およびそれを収容した筆記具とする。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色材と、水と、下記一般式(1)で示されるアセチレングリコール系界面活性剤と、サクシノグリカン及び/またはキサンタンガムを含有し、20℃の条件で測定された粘度が5.0mPa・s未満である、筆記具用水性インキ組成物。
【化1】
式中、R~Rは炭化水素基を示し、Rはエチレン基を示す。
m、pは0以上の整数である。
【請求項2】
前記アセチレングリコール系界面活性剤が9~17のHLB値を有する、請求項1に記載のインキ組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載のインキ組成物を収容してなる筆記具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筆記具用水性インキおよびそれを収容した筆記具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、水を主溶媒としたインキ(水性インキ)を用いた筆記具が盛んに利用されている。しかしながら、水は紙面に速やかに浸透しにくいことから、前記筆記具は乾燥性に優れる筆跡を紙面に形成し難いことがあり、未乾燥の筆跡に触れて手指や筆跡、紙面を汚すことが多かった。このため、水性インキの分野においては、筆跡の乾燥性を高める検討が行われている。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
特許文献1には、特定の多価アルコールおよびグリコールエーテル類から選ばれる有機溶剤を含有した水性インキが記載されている。このインキは前記した特定の有機溶剤によって紙面に対する濡れ性が高められてインキの紙面浸透性が良好とされたインキであり、乾燥性に優れる筆跡を形成可能とされている。しかしながら、前記従来技術のインキはビヒクルとともに着色剤が紙面に浸透しやすく、筆跡の裏映りが生じることがあった。また、このインキはペン先からの吐出性が十分であるとはいえず、筆跡に掠れや途切れが生じることがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-193688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の欠点を鑑みて成されたものである。即ち、裏映りを抑えつつ乾燥性が良好な筆跡を形成可能であり、さらに、掠れや途切れが抑制された鮮明な筆跡を形成できる、筆記具用水性インキ組成物とそれを収容した筆記具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、
「1.着色材と、水と、下記一般式(1)で示されるアセチレングリコール系界面活性剤と、サクシノグリカン及び/またはキサンタンガムとを含有し、20℃の条件で測定された粘度が5.0mPa・s未満である、筆記具用水性インキ組成物。
【化1】
式中、R~Rは炭化水素基を示し、Rはエチレン基を示す。
m、pは0以上の整数である。
2.前記アセチレングリコール系界面活性剤が9~17のHLB値を有する、第1項に記載のインキ組成物。
3.第1項または第2項に記載のインキ組成物を収容してなる筆記具。」とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、裏映りを抑えつつ乾燥性が良好な筆跡を形成可能であり、さらに、掠れや途切れが抑制された鮮明な筆跡を形成できる、筆記具用水性インキ組成物とそれを収容した筆記具を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本明細書において、配合を示す「部」、「%」、「比」などは特に断らない限り質量基準である。
【0009】
本発明の水性インキ組成物(以下、場合により、「インキ組成物」と表すことがある。)は、着色材と、アセチレングリコール系界面活性剤と、粘性調整剤と、水を含有する。以下、本発明による水性インキ組成物を構成する各成分について説明する。
【0010】
(着色材)
本発明の水性インキ組成物は、従来からの染料、顔料を着色材として用いることができる。
染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料、反応染料、バット染料、硫化染料、含金染料、カチオン染料、および分散染料等が挙げられる。
【0011】
顔料としては、無機顔料として、カーボンブラックや酸化チタン、酸化亜鉛、鉄黒、黄色酸化鉄、弁柄、複合酸化物系顔料等の金属酸化物、および群青などが、また有機顔料として、アゾ系顔料、インジゴ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、チオインジゴ系顔料、スレン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、フタロン系顔料、ジオキサン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体系顔料、メチン・アゾメチン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などが挙げられる。カーボンブラックや有機顔料は、顔料粒子の表面が物理的処理または化学的処理によって親水性の官能基で修飾され、分散剤無しでも分散媒に分散可能とされた、所謂自己分散型であっても良い。さらに顔料としては、蛍光顔料や、アルミニウム顔料、ガラスフレーク顔料、パール顔料、ラメ顔料等の光輝性顔料、熱変色性カプセル顔料等も適用できる。
【0012】
顔料は、溶媒に分散させて顔料分散体としたものであっても良い。本発明に用いられる顔料分散体としては、例えば、SPシリーズ(冨士色素株式会社製)、FUJI JETBlackシリーズ(冨士色素株式会社製)、SANDYE SUPERCOLOURシリーズ(山陽色素株式会社製)、EMACOLシリーズ(山陽色素株式会社製)、ルミコールシリーズ(日本蛍光化学株式会社製)MICROPIGMOシリーズ、(オリヱント化学工業株式会社製)、WAシリーズ(大日精化工業株式会社製)、MICROJETシリーズ(オリヱント化学工業株式会社製)、Aquq Blackシリーズ(東海カーボン株式会社製)、CAB-O-JETシリーズ(キャボット社製)、などが挙げられる。
【0013】
熱変色性カプセル顔料としては(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記両者の呈色反応の生起温度を決める反応媒体からなる可逆熱変色性組成物が好適であり、マイクロカプセルに内包させて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料として適用される。
前記可逆熱変色性組成物としては、特公昭51-44706号公報、特公昭51-44707号公報、特公平1-29398号公報等に記載された、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、前記両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱又は冷熱が適用されている間は維持されるが、前記熱又は冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る、ヒステリシス幅が比較的小さい特性(ΔH=1~7℃)を有する可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル中に内包させた加熱消色型のマイクロカプセル顔料が適用できる。
更に、特公平4-17154号公報、特開平7-179777号公報、特開平7-33997号公報、特開平8-39936号公報等に記載されている比較的大きなヒステリシス特性(ΔH=8~50℃)を示すものや、特開2006-137886号公報、特開2006-188660号公報、特開2008-45062号公報、特開2008-280523号公報、等に記載されている大きなヒステリシス特性を示す、即ち、温度変化による着色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度以下の低温域での発色状態、又は完全消色温度以上の高温域での消色状態が、特定温度域で色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物を内包させ加熱消色型のマイクロカプセル顔料も適用できる。
尚、前記水性インキに適用される色彩記憶性を有する可逆熱変色性組成物として具体的には、完全発色温度を冷凍室、寒冷地等でしか得られない温度、即ち-50~0℃、好ましくは-40~-5℃、より好ましくは-30~-10℃、且つ、完全消色温度を摩擦体による摩擦熱、ヘアドライヤー等身近な加熱体から得られる温度、即ち50~95℃、好ましくは50~90℃、より好ましくは60~80℃の範囲に特定し、ΔH値を40~100℃に特定することにより、常態(日常の生活温度域)で呈する色彩の保持に有効に機能させることができる。
【0014】
(アセチレングリコール系界面活性剤)
インキ組成物は、下記一般式(1)に示されるアセチレングリコール系界面活性剤を含有する。
【化1】
式中、R~Rは炭化水素基を示し、Rはエチレン基を示す。
m、pは0以上の整数である。
前記アセチレングリコール系界面活性剤は、ビヒクルの紙面浸透性を高めて筆跡の乾燥性を良好にできる。
【0015】
また、前記アセチレングリコール系界面活性剤はインキの、ガラス、金属、合成樹脂、ゴム等の非浸透面に対する濡れ性を高めることもでき、ペン先に通ずるインキ流路が金属や合成樹脂からなる筆記具において、ペン先へのインキ供給を円滑にしてインキ吐出を良好にできる。アセチレングリコール系界面活性剤は複数種を併用しても良い。
【0016】
インキへの溶解性を高めてインキの安定性を良好としつつ、乾燥性に優れる筆跡を形成させることを考慮すると、前記アセチレングリコール系界面活性剤はHLB値が9~17であるものが好ましく、12~16であるものがより好ましく、13~16であるものがさらに好ましい。尚、前記HLB値はグリフィン法によって算出される値である。
【0017】
前記アセチレングリコール系界面活性剤の含有率は、インキの安定性を損なうことなく、筆跡の乾燥性を良好としつつ筆跡の裏映りを抑制することを考慮すると、インキ組成物全質量を基準として0.01~2質量%とすることが好ましく、0.05~1.5質量とすることがより好ましく、0.1~1質量%とすることがさらに好ましい。
【0018】
(粘性調整剤)
インキ組成物には、粘性調整剤としてキサンタンガム及び/または構成単糖がグルコースとガラクトースの有機酸修飾ヘテロ多糖体であるサクシノグリカンが適用される。
前記粘性調整剤は、理由が定かではないが、ペン先からの良好なインキ吐出性を損なうことなく、裏映りが抑制された筆跡を形成させることができる。
【0019】
インキ組成物には、水に相溶性のある従来汎用の有機溶剤を用いることもできる。具体的には、エタノール、1-プロパノール、ブタノール、グリセリン、ソルビトール、2-エチルヘキサノール、および3-メトキシ-3-メチルブタノール等の、アルキル基および/またはオキシアルキル基で構成された側鎖を有する、炭素数の総和が3~8である脂肪族1価アルコール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、2-メチルペンタン-1,3-ジオール等の、炭素数が1若しくは2であるアルキル基を側鎖に有する、炭素数の総和が5~12である分岐脂肪族2価アルコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジアルキレングリコール、チオジエチレングリコール、エチレングリコール、ヘキシレングリコール、1,3-ブタンジオール、ネオプレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、およびトリエチレングリコールブチルメチルエーテル等のアルキレングリコールジアルキルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。
【0020】
前記した有機溶剤の中でもインキ組成物に好ましい有機溶剤は、アルキル基および/またはオキシアルキル基を側鎖に有する、炭素数の総和が3~8である脂肪族1価アルコール、炭素数が1若しくは2であるアルキル基を側鎖に有する、炭素数の総和が5~12の分岐2価アルコール、ジアルキレングリコール、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、およびアルキレングリコールジアルキルエーテルであり、アルキル基および/またはオキシアルキル基を側鎖に有する、炭素数の総和が3~8である脂肪族1価アルコール、および炭素数が1若しくは2であるアルキル基を側鎖に有する、炭素数の総和が5~12である分岐2価アルコール、およびジアルキレングリコールがより好ましい。これらの有機溶剤は、インキの紙面浸透性を高めて筆跡の乾燥性をより良好にできる。
【0021】
前記有機溶剤の含有率は、乾燥性に優れる、裏映りが抑えられた鮮明な筆跡を形成させることを考慮すると、インキ組成物全質量を基準として、例えば、0.5~15質量%であり、0.5~12質量%が好ましく、1~12質量%とすることがより好ましく、2~10質量%とすることがさらに好ましい。
【0022】
(その他)
また、水性インキ組成物は、必要に応じて以下の添加剤を用いることができる。
具体的には、カオリン、タルク、マイカ、クレー、ベントナイト、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、セリサイト、およびチタン酸カリウムなどの体質材、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の酸性物質、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウム、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の塩基性物質、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、およびサポニンなどの防錆剤、尿素、リン酸エステル系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、アセチレン結合を有する界面活性剤、フッ素系界面活性剤等の各種界面活性剤、還元又は非還元デンプン加水分解物、トレハロース等の二糖類、オリゴ糖、ショ糖、サイクロデキストリン、ぶどう糖、デキストリン、ソルビット、マンニット、およびピロリン酸ナトリウムなどの湿潤剤、エチレンジアミン四酢酸およびその塩等のキレート剤、潤滑剤、防腐剤、気泡抑制剤、気泡吸収剤などの添加剤を用いることができる。
【0023】
インキ組成物の粘度は、20℃の条件で、5.0mPa・s未満である。インキ粘度がこのような範囲にあると、インキ吐出性を良好として掠れや途切れが抑制された鮮明な筆跡を形成できるとともに、インキの紙面浸透性を高めて筆跡の乾燥性を良好としながら筆跡の裏抜けを抑えることができる。
掠れ、途切れを抑えて鮮明な筆跡を形成することや、裏映りが抑制された、乾燥性が良好な筆跡を形成させることをより考慮すれば、インキ組成物の粘度は前記条件で4.5mPa・s以下であることが好ましく、4.0mPa・s以下であることがより好ましく、また、1.0mPa・s以上であることが好ましく、1.5mPa・s以上であることがより好ましい。インキ粘度をこのような範囲内にすると、筆跡の乾燥性を良好としながら筆跡の裏抜けを抑制でき、さらに、適用されるインキが極低粘度を有することが要求される筆記具、例えば、万年筆等の櫛溝状のインキ流量調節部材を備える筆記具においてもインキ吐出を良好とし、掠れ、途切れが抑制された鮮明な筆跡を形成できる。
インキ組成物の粘度は、BL型粘度計を用いて測定する。
【0024】
水性インキ組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、前記各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、またはホモミキサーなどの各種攪拌機やビーズミルなどの各種分散機などにて混合し、製造することができる。
【0025】
(筆記具)
本発明のインキ組成物は、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ、ボールペンチップを筆記先端部に装着したマーキングペンやボールペン、更には万年筆(キャップ式や出没式)、筆ペン等に充填される。
【0026】
マーキングペンに充填する場合、マーキングペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、繊維チップ、フェルトチップ、プラスチックチップ等のマーキングペン用ペン先(砲弾型、チゼル型、筆ペン型等)を筆記先端部に装着し、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)等の合成樹脂からなる櫛溝状のインキ流量調節部材や、繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させて筆記先端部に所定量のインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容して、弁機構により筆記先端部に所定量のインキを供給する構造のマーキングペンが挙げられる。
また、ペン先を1本備えるものの他、太さや形状の異なるペン先を軸筒の両端に備えた両頭式形態であってもよい。尚、前記両頭式形態においては、一端をボールペンとしたものであってもよい。
【0027】
ボールペンに充填する場合、ボールペン自体の構造、形状は特に限定されるものではなく、例えば、軸筒内部に収容した繊維束からなるインキ吸蔵体にインキを含浸させ、筆記先端部にインキを供給する構造、軸筒内部に直接インキを収容し、前記した櫛溝状のインキ流量調節部材や、繊維束からなるインキ流量調節部材を介在させる構造、軸筒内にインキ組成物を充填したインキ収容管を有し、該インキ収容管はボールを先端部に装着したチップに連通しており、さらにインキの端面にはインキ逆流防止体が密接している構造のボールペンが挙げられる。
【0028】
前記インキ逆流防止体としては、液状または固体のいずれを用いることもでき、前記液状のインキ逆流防止体としては、ポリブテン、シリコーン油等の不揮発性媒体が挙げられ、所望により前記媒体中にシリカ、珪酸アルミニウム等を添加することもできる。
【0029】
また、固体のインキ逆流防止体としては樹脂成形物が挙げられる。尚、前記液状および固体のインキ逆流防止体は併用することもできる。
【0030】
万年筆に充填する場合、軸筒内部に直接インキを収容し、前記した櫛溝状のインキ流量調節部材や、繊維束からなるインキ流量調節部材を万年筆型ペン先との間に介在させる構造、インキを内蔵したカートリッジを装着し、前記した櫛溝状のインキ流量調節部材や繊維束からなるインキ流量調節部材を万年筆型ペン先との間に介在させる構造が挙げられる。
【0031】
筆ペンに充填する場合、筆形態のペン先を備えるものであれば構造に特に限りはない。筆ペンの一例としては、有底筒体よりなる軸筒の前部にペン先とインキ供給機構が装着され、前記インキ供給機構の後方の軸筒内にインキ収容室が形成されてなる構造、ペン先とインキ供給機構とが装着された前軸筒とインキカートリッジからなる後軸筒とが離合可能に接続されてなる構造、ペン先とインキ供給機構とが装着された前軸筒とインキカートリッジとが離合可能に接続され、前記インキカートリッジが後軸筒で被覆されてなる構造が挙げられる。
前記インキ供給機構としては、例えば、(1)前記した櫛溝状のインキ流量調節部材や、繊維束などからなるインキ誘導芯をインキ流量調節部材として備え、インキ組成物をペン先に誘導する機構、(2)弁機構によるインキ流量調節部材を備え、インキ組成物をペン先に供給する機構、(3)ペン先を具備したインキ収容体または軸筒より、インキ組成物を直接ペン先に供給する機構および(4)インキ組成物を含侵可能な、連続気孔を有する多孔体を介してペン先へインキ組成物を供給する機構などを挙げることができる。
【実施例0032】
(実施例1)
下記原材料および配合量にて、室温で1時間攪拌混合することにより、水性インキ組成物を得た。
・黒色染料 10質量%
(商品名:ウォーターブラック191L、15質量%水溶液、オリヱント化学工業株式会社製)
・アセチレングリコール系界面活性剤 0.3質量%(商品名:オルフィンE1010、日信化学工業株式会社製、HLB値:13~14)
・サクシノグリカン(商品名:レオザン、三晶株式会社製) 0.01質量%
・トリエタノールアミン 0.2質量%
・1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン 0.1質量%
(商品名:プロキセルXL-2、ロンザジャパン株式会社製)
・水 残部
【0033】
(実施例2~5、比較例1~6)
実施例1に対して、配合する成分の種類や添加量を表1に示したとおりに変更して、実施例2~5、比較例1~6の水性インキ組成物を得た。
【0034】
得られたインキ組成物の粘度を、20℃、60rpmの条件下、BL型粘度計(商品名:BL2(2は、正規商品名ではギリシャ数字)、東機産業(株)製)を用いて測定した。
【0035】
【表1】
【0036】
上記実施例で使用した材料の詳細は以下の通りである。
(1)黒色染料水溶液(商品名:ウォーターブラック191L、15質量%水溶液、オリヱント化学工業株式会社製)
(2)赤色染料(商品名:エオシン、ダイワ化成株式会社製)
(3)日信化学工業株式会社製、商品名:オルフィンPD-002W(HLB値:9~10)
(4)日信化学工業株式会社製、商品名:オルフィンE-1010(HLB値:13~14)
(5)日信化学工業株式会社製、商品名:オルフィンE-1020(HLB値:15~16)
(6)日信化学工業株式会社製、商品名:サーフィノール485(HLB値:17)
(7)第一工業製薬株式会社製、商品名:プライサーフAL
(8)サクシノグリカン(商品名:レオザン、三晶株式会社製)
(9)キサンタンガム(商品名:モナートガムGS、住友ファーマフード&ケミカル株式会社製)
(10)ポリビニルアルコール(商品名:ゴーセノールGL-03、三菱ケミカル株式会社製)
(11)1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(商品名:プロキセルXL-2、ロンザジャパン株式会社製)
【0037】
調製したインキ組成物を万年筆(商品名:カクノ、ペン種:M、株式会社パイロットコーポレーション製)に収容し、各種評価を行った。前記万年筆はABS樹脂材料を射出成形して作製した櫛溝状のインキ流量調整部材を備えてなる。
尚、筆記用の試験紙には、旧JIS P3201に準拠した筆記用紙Aを用いた。
【0038】
(筆跡乾燥性の評価)
前記万年筆で試験紙に筆跡(筆記文字:永)を形成してから、筆跡を指で擦過したときに筆跡のインキの伸びが見られなくなるまでに要した時間を計測した。
◎:3秒以内
〇:3秒超5秒以内
×:5秒超
◎、○を合格、×を不合格とした。
【0039】
(筆跡の裏抜け性の評価)
前記筆跡乾燥性の評価で形成した筆跡(筆記文字:永)の紙面裏面部分を観察し、インキが裏面に浸透した形跡を目視で確認した。
◎:裏抜けは確認されない。
〇:裏抜けがわずかに確認されるものの、実用上問題なし。
×:顕著な裏抜けが確認される。実用上懸念がある。
◎、○を合格、×を不合格とした。
【0040】
(インキ吐出性の評価)
各万年筆で、試験紙に15cmの直線を1秒で筆記し、筆跡の状態を目視にて観察した。
〇:掠れや途切れが確認されず、鮮明である。
×:掠れや途切れが確認できる。
○を合格、×を不合格とした。
【0041】
前記評価の結果を表2に示す。
【表2】