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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164197
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】蓄圧式スプレイヤ
(51)【国際特許分類】
   B05B 11/00 20230101AFI20231102BHJP
   B65D 47/34 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B05B11/00 102E
B65D47/34 100
B05B11/00 102G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075601
(22)【出願日】2022-04-29
(71)【出願人】
【識別番号】390028196
【氏名又は名称】キャニヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】赤築 充昭
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA12
3E084AA24
3E084AB01
3E084BA02
3E084DA01
3E084DB12
3E084DC03
3E084FA09
3E084FB01
3E084GA01
3E084GB01
3E084HA03
3E084HB03
3E084HC03
3E084HD01
3E084KB01
3E084KB06
3E084LB02
3E084LC01
3E084LD22
3E084LD25
(57)【要約】
【課題】スプリング部に初期セット状態で加わる初期セット圧をなくし、これによりスプリング部を有するバルブ構造体(弁体)の塑性変形を、極力、抑制することができる蓄圧式スプレイヤを提供すること。
【解決手段】メインシリンダ部B1とサブシリンダ部B2を有するシリンダボディ部Bと、シリンダボディ部Bを覆うように取り付けられたカバー部Cと、を有する蓄圧式スプレイヤXであって、蓄圧式スプレイヤXが、容器Jに取り付けて、容器J内の液を、ファーストバルブFVを介してメインシリンダ部B1に吸い上げ、メインシリンダ部B1内の液に圧を加えて、一定圧を超えた時点でバルブ構造体Aを介してノズル部Fから噴出するものであり、バルブ構造体Aがサブシリンダ部B2の下支持部B23と、カバー部Cの上支持部C1と、の間に装着されており、バルブ構造体Aの無負荷状態における長さL1及び、下支持部B23と上支持部C1との最短距離L2が、L1<L2の関係式を満たすものである蓄圧式スプレイヤX。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブ構造体が装着された蓄圧式スプレイヤにおいて、
初期セット状態で該バルブ構造体が上方で支持される部分である上支持部、及び下方で支持される部分である下支持部の少なくとも一方に接触しないように装着されている蓄圧式スプレイヤ。
【請求項2】
メインシリンダ部とサブシリンダ部を有するシリンダボディ部と、該シリンダボディ部を覆うように取り付けられたカバー部と、を有する蓄圧式スプレイヤであって、
該蓄圧式スプレイヤが、容器に取り付けて、該容器内の液を、ファーストバルブを介して前記メインシリンダ部に吸い上げ、前記メインシリンダ部内の前記液に圧を加えて、一定圧を超えた時点でバルブ構造体を介してノズル部から噴出するものであり、
前記バルブ構造体が前記サブシリンダ部の下支持部と、前記カバー部の上支持部と、の間に装着されており、
前記バルブ構造体の無負荷状態における長さL1及び、前記下支持部と前記上支持部との最短距離L2が、
L1<L2
の関係式を満たすものである蓄圧式スプレイヤ。
【請求項3】
前記バルブ構造体が、逆ドーム状のスプリング部と、該スプリング部から垂下したバルブピストン部と、よりなり、
前記バルブピストン部が、芯棒部と、該芯棒部の外周から下方に延びる外スカート部と、該外スカート部より長い内スカート部と、よりなる請求項2記載の蓄圧式スプレイヤ。
【請求項4】
前記芯棒部が、前記スプリング部と前記外スカート部との間で筒状に形成されたものである請求項3記載の蓄圧式スプレイヤ。
【請求項5】
前記スプリング部の中心部に筒状突起が形成されているものである請求項3記載の蓄圧式スプレイヤ。
【請求項6】
前記バルブピストン部に上方が解放された中心穴が形成されている請求項2~5いずれか1項に記載の蓄圧式スプレイヤ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄圧式スプレイヤに関し、更に詳しくは、バルブ構造体にトリガーを引いていない状態(初期セット状態、すなわちバルブが開いていない状態)で加わる押圧力(すなわち初期セット圧)をなくし、これによりバルブ構造体の変形を抑制することができる蓄圧式スプレイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、液を噴出するためのトリガーを備えた蓄圧式スプレイヤが広く知られている。
この蓄圧式スプレイヤは、トリガーを引き込み、シリンダに対してピストンをスライドさせることでシリンダ内の液の圧を高め、一定圧を超えた時点でシリンダ内の液を勢いよくノズルから噴出させる構造となっている。
【0003】
より具体的には、シリンダは2つの一方向弁(すなわち、ファーストバルブとセカンドバルブ)の中間に配設されており、ファーストバルブを介して導入されたシリンダ内の液が一定以上に蓄圧されると、セカンドバルブの弁体と弁座との間が解放されて開弁し、液がシリンダ内から勢いよく押し出されてノズルを介して外部に噴出される構造である。
【0004】
この場合、セカンドバルブの弁体はバネが発揮する弾発力によって弁座に常に押圧されており、ファーストバルブが閉じている状態でシリンダ内の液圧が当該弾発力を超えると、セカンドバルブが開弁して液が勢いよく通過する。
ノズルから液が噴出され、シリンダ内が放圧されることで液圧より弾発力が勝り、バネが弁体を弁座に対して押圧することでセカンドバルブは再び閉弁する。
トリガーを備えた蓄圧式スプレイヤは、このようにしてシリンダ内の液を勢いよく外部に噴出することができ、有用である。
【0005】
このような蓄圧式スプレイヤとしては、例えば出願人によるものがいくつか開発されている。
【0006】
例えば、特許文献1の発明は、容器内の液を吸い上げて噴出するためのトリガースプレイヤーであって、液の圧力に応じて開閉する第2バルブを備え、該第2バルブが第2バルブピストン部と該第2バルブピストン部を付勢するための逆ドーム状のドームスプリング部とを備えるものでる。また、特許文献2の発明も同様のものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特願2020-219863号
【特許文献2】特願2020-219864号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1や特許文献2に記載されているバルブ構造体においては、トリガーを引いていない状態(初期セット状態、すなわちバルブが開いていない状態)においても、スプリング部が弁体を弁座に対して押圧し、セカンドバルブが閉弁していることが通常である。
ここで、本明細書においては当該初期セット状態で弁体に加わっている押圧力を「初期セット圧」という。
すなわち、スプリング部には初期セット状態においても常に一定の初期セット圧による負荷が加わっており、このことはスプリング部が塑性変形を起こす原因となる。スプリング部に塑性変形による歪みが生じると、スプリング部自体の弾発力が低下して弁の締まりが甘くなり、結果的に液の不適正な噴出や液漏れの原因となる。
【0009】
本発明は、上述の課題を受けて開発されたものである。すなわち、本発明はスプリング部に初期セット状態で加わる初期セット圧をなくし、これによりスプリング部を有するバルブ構造体(弁体)の塑性変形を、極力、抑制することができる蓄圧式スプレイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討の結果、バルブ構造体の無負荷状態における長さL1及び、当該バルブ構造体が装着される下支持部と上支持部との最短距離L2が、L1<L2の関係を満たすものとすることで上記課題を解決可能であることを見出した。本発明はこの知見に基づく。
【0011】
本発明は、バルブ構造体が装着された蓄圧式スプレイヤにおいて、初期セット状態でバルブ構造体が上方で支持される部分である上支持部、及び下方で支持される部分である下支持部の少なくとも一方に接触しないように装着されている蓄圧式スプレイヤに存する。
【0012】
本発明は、メインシリンダ部B1とサブシリンダ部B2を有するシリンダボディ部Bと、シリンダボディ部Bを覆うように取り付けられたカバー部Cと、を有する蓄圧式スプレイヤXであって、蓄圧式スプレイヤXが、容器Jに取り付けて、容器J内の液を、ファーストバルブFVを介してメインシリンダ部B1に吸い上げ、メインシリンダ部B1内の液に圧を加えて、一定圧を超えた時点でバルブ構造体Aを介してノズル部Fから噴出するものであり、バルブ構造体Aがサブシリンダ部B2の下支持部B23と、カバー部Cの上支持部C1と、の間に装着されており、バルブ構造体Aの無負荷状態における長さL1及び、下支持部B23と上支持部C1との最短距離L2が、L1<L2の関係式を満たすものである蓄圧式スプレイヤXに存する。
【0013】
本発明は、バルブ構造体Aが、逆ドーム状のスプリング部1と、スプリング部1から垂下したバルブピストン部2と、よりなり、バルブピストン部2が、芯棒部21と、芯棒部21の外周から下方に延びる外スカート部22と、外スカート部22より長い内スカート部23と、よりなる上記記載の蓄圧式スプレイヤXに存する。
【0014】
本発明は、芯棒部21が、スプリング部1と外スカート部22との間で筒状に形成されたものである上記記載の蓄圧式スプレイヤXに存する。
【0015】
本発明は、スプリング部1の中心部に筒状突起1Aが形成されているものである上記記載の蓄圧式スプレイヤXに存する。
【0016】
本発明は、バルブピストン部2に上方が解放された中心穴1Bが形成されている上記記載の蓄圧式スプレイヤXに存する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蓄圧式スプレイヤは、初期セット状態でバルブ構造体が上支持部及び下支持部の少なくとも一方に接触しないように装着されていることにより、初期セット圧を低減し、これによりバルブ構造体の塑性変形を、極力、抑制することができる
【0018】
本発明の蓄圧式スプレイヤXは、バルブ構造体Aの無負荷状態における長さL1及び、当該バルブ構造体Aが装着される下支持部B23と上支持部C1との最短距離L2が、L1<L2の関係を満たすことにより、バルブピストン部2に初期セット状態でスプリング部1に加わる押圧力をゼロ(すなわち、初期セット圧をゼロ)とすることができる。そのため、バルブ構造体Aに初期セット状態で加わる負荷が低減し、塑性変形を、極力、抑制することが可能となる。
なお、ここで無負荷状態とは、バルブ構造体Aが閉弁方向又は開弁方向のいずれにも押圧されていない状態をいう。
【0019】
本発明の蓄圧式スプレイヤXにおいては、逆ドーム状のスプリング部1と、スプリング部1から垂下したバルブピストン部2と、よりなることで、スプリング部1の弾発力が、バルブピストン部2に対して均等に加わる。そのため、押圧力が適正に伝わり、バルブピストン部2の軸心が安定し、上下移動時の横ブレが防止される。
【0020】
本発明の蓄圧式スプレイヤXにおいては、芯棒部21が、スプリング部1と外スカート部22との間で筒状に形成されたものであることにより、バルブ構造体Aが上下に移動する場合にサブシリンダ部B2の壁面に接触するものがなく、移動の妨げとならずに、バルブ構造体Aによる開弁及び閉弁がスムーズに行われる。
【0021】
本発明の蓄圧式スプレイヤXにおいては、スプリング部1の中心部に筒状突起1Aが形成されているものであることにより、バルブ構造体Aが上死点に至った場合に、スプリング部1の変形が一定の範囲内に抑制され、スプリング部1に加わる負荷を低減することが可能となる。
【0022】
本発明の蓄圧式スプレイヤXにおいては、バルブピストン部2に上方が解放された中心穴1Bが形成されていることにより、バルブ構造体Aを軽量化することが可能となる。また、バルブ構造体Aが押圧された場合に軸曲がりが防止される。
また、過度の屈曲変形が抑制され、極端にはスプリング部1が裏返しになることを防止することができる。そのため、バルブ構造体Aによる開弁及び閉弁がスムーズに行われる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本実施形態に係る蓄圧式スプレイヤを示す縦断面図である。
図2図2は、図1の状態のバルブ構造体を拡大して示す縦断面図である。
図3図3は、バルブ構造体が上方へ移動した状態の蓄圧式スプレイヤを示す縦断面図である。
図4図4は、図3の状態のバルブ構造体を拡大して示す縦断面図である。
図5図5は、サブシリンダ部の内周壁を示す説明図である。
図6図6は、バルブ構造体が上死点へ至った状態の蓄圧式スプレイヤを示す縦断面図である。
図7図7は、図6の状態のバルブ構造体を拡大して示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0025】
本発明の蓄圧式スプレイヤXは、容器Jに取り付けて、容器J内の液を、ファーストバルブFVを介してメインシリンダ部B1に吸い上げ、メインシリンダ部B1内の液に圧を加えて、液圧が一定圧を超えた時点でバルブ構造体Aを介してノズル部Fから勢いよく噴出するものである。
【0026】
図1は、本実施形態に係る蓄圧式スプレイヤXを示す縦断面図である。また、図2は、図1の状態のバルブ構造体Aを拡大して示す縦断面図である。
蓄圧式スプレイヤXは、ノズル部Fと、シリンダボディ部B(メインシリンダ部B1、サブシリンダ部B2、第1通路部P1、第2通路部P2、及び第3通路部P3等を有する)と、ピストン部Dと、カバー部Cと、トリガー部Eと、ファーストバルブFVと、セカンドバルブと、導入管Hと、トリガー用復帰バネIと、キャップ部Gと、を備えている。
【0027】
シリンダボディ部Bは、液の流れる通路を有する部分であり、ピストン部Dを受け入れるメインシリンダ部B1と、容器J内の液をメインシリンダ部B1に導入する第1通路部P1と、液をメインシリンダ部B1からバルブ構造体Aが装着されるサブシリンダ部B2に導入する第2通路部P2と、液をサブシリンダ部B2からノズル部Fに導入する第3通路部P3と、を備える。
【0028】
導入管Hは円筒状であり、シリンダボディ部Bの下方に嵌合されている。導入管Hは第1通路部P1を介してメインシリンダ部B1と連通している。
【0029】
メインシリンダ部B1は円筒形状の部材である。メインシリンダ部B1には、トリガー部Eの動きに連動してメインシリンダ部B1内を摺動するピストン部Dが挿入されている。
メインシリンダ部B1と第1通路部P1との間にはファーストバルブFVが設けられている。
ファーストバルブFVは第1通路部P1からメインシリンダ部B1内へ液を通過させる一方向弁である。
メインシリンダ部B1は、第2通路部P2を介してサブシリンダ部B2と連通している。
【0030】
サブシリンダ部B2は、上方が解放した筒状に形成されている。サブシリンダ部B2にはバルブ構造体Aが装着される。具体的には、サブシリンダ部B2の底部はバルブ構造体Aを支持する下支持部B23となっており、バルブ構造体Aは下支持部B23に載置される。
ここで後述するように、サブシリンダ部B2の内壁が弁座として機能し、バルブ構造体Aのバルブピストン部2、より具体的には内スカート部23が弁体として機能することで、いわゆるセカンドバルブが形成されている。
サブシリンダ部B2のノズル部F側には、後述する縦溝部B21及び貫通孔B22が設けられ、該貫通孔B22が第3通路部P3と連通している。
【0031】
なお、シリンダボディ部Bの下端には鍔部が設けられており(図1参照)、この鍔部を容器Jの上端部とキャップ部Gとで挟み込むことで蓄圧式スプレイヤXが容器Jに固定される。
【0032】
カバー部Cは、シリンダボディ部B全体を覆うように取り付けられる。カバー部Cをシリンダボディ部Bに取り付けた状態で、カバー部Cとシリンダボディ部Bのサブシリンダ部B2との間には空間が生じ、当該空間にバルブ構造体Aが装着される。
カバー部Cには、バルブ構造体Aを支持するための上支持部C1が設けられている。この上支持部C1は、スプリング部1の上端外周を支持するカバー部Cの内側上壁の部分である。
【0033】
図3は、バルブ構造体Aが上方へ移動した状態の蓄圧式スプレイヤXを示す縦断面図である。
また、図4は、図3の状態のバルブ構造体Aを拡大して示す縦断面図である。
バルブピストン部2が上方に移動すると、スプリング部1が図4のように上支持部C1に当接する。さらにバルブピストン部2が上方に移動し、スプリング部1が変形することでバルブピストン部2に対して押圧力を発揮する。
バルブ構造体Aは、逆ドーム状のスプリング部1と、スプリング部1から垂下したバルブピストン部2とよりなる。具体的にはスプリング部1の略中央から筒状の芯棒部21が垂下しており、芯棒部21の外周に連続して、下方に延びる外スカート部22が形成されている。
さらに、外スカート部22の内側には、外スカート部22より長く下方に延びるうちスカート部が形成されている。すなわち、芯棒部21、外スカート部22及び内スカート部23がバルブピストン部2を構成している。
【0034】
バルブ構造体Aは、逆ドーム状のスプリング部1と、スプリング部1から垂下したバルブピストン部2と、よりなることで、スプリング部1の弾発力が、バルブピストン部2に対して均等に加わる。そのため、スプリング部1による押圧力が適正に伝わり、バルブピストン部2の軸心が安定し、上下移動時の横ブレが防止される。
【0035】
また、蓄圧式スプレイヤXにおいては、スプリング部1と外スカート部22との間の芯棒部21が、スプリング部1と外スカート部22との間で筒状に形成されたものであることにより、バルブ構造体Aが上下に移動する場合にサブシリンダ部B2の壁面に接触するものがなく、移動の妨げとならずに、バルブ構造体Aによる開弁及び閉弁がスムーズに行われる。
【0036】
外スカート部22及び内スカート部23は、いずれも下方が外側へ拡径したテーパー状に形成されている。
後述するように、外スカート部22は封止の機能を発揮し、内スカート部23は弁体として機能する。
【0037】
芯棒部21は上端が解放され、中心穴1Bが形成されている。
また、解放された中心穴1Bの周辺は凸状となって筒状突起1Aを形成している。すなわち、スプリング部1の略中央には中心穴1B及び筒状突起1Aが形成されている。
後述するように、筒状突起1Aは弁体として機能するバルブ構造体Aのストッパとして機能する。
【0038】
蓄圧式スプレイヤXにおいては、バルブピストン部2に上方が解放された中心穴1Bが形成されていることにより、バルブ構造体Aを軽量化することが可能となる。
また、バルブ構造体Aが押圧された場合に軸曲がりが防止される。
また、過度の変形が抑制され、極端にはスプリング部1がめくれることを防止することができる。
そのため、バルブ構造体Aによる開弁及び閉弁がスムーズに行われる。
【0039】
蓄圧式スプレイヤXにおいて、バルブ構造体Aはサブシリンダ部B2に装着される。上述したように、サブシリンダ部B2は上方が解放された筒状であり、外スカート部22及び内スカート部23が、サブシリンダ部B2の内壁を押圧するように装着される。このとき、バルブ構造体Aはサブシリンダ部B2の底部に形成された下支持部B23に載置されている。
また、バルブ構造体Aの無負荷状態における長さL1はサブシリンダ部B2の壁部よりも長尺であり、その上端(すなわち、スプリング部1)はカバー部Cの上支持部C1に支持されている。
【0040】
ここで、初期セット状態においては、バルブ構造体Aは上支持部C1に当接しないようにサブシリンダ部B2に装着されている。
換言すると、バルブ構造体Aの無負荷状態における長さL1及び、サブシリンダ部B2の下支持部B23と上支持部C1との最短距離L2とが、L1<L2の関係を満たす(図2参照)。すなわち、初期セット状態において、バルブ構造体Aは上支持部C1と接触しない状態でサブシリンダ部B2に装着されている。
これにより、初期セット状態における初期セット圧がゼロとなる。
したがって、スプリング部1に加わる負荷を低減することが可能となり、バルブ構造体Aの塑性変形を抑制することができる。
【0041】
カバー部Cの上支持部C1は、カバー部Cの内壁においてスプリング部1が当接する部位である。カバー部Cにおいては、筒状突起1Aに対応する位置に凸状のストッパ部C2が設けられている。ストッパ部C2は、バルブ構造体Aの上方への移動を制限するためのものである。
バルブ構造体Aが上方へ移動し、スプリング部1が押圧されて変形すると、同様に筒状突起1Aが上方へ移動し、ストッパ部C2に当接してバルブ構造体Aの移動が止まる。
これによってバルブ構造体Aが上死点に至り、バルブ構造体Aに過度の負荷が加わってスプリング部1が屈曲変形すること、極端にはスプリング部1が裏返しになることを防止することができる。
【0042】
バルブ構造体Aは、上面視で円周方向に均等であるため、カバー部Cの上支持部C1に均等に当接し、反力を均等に受けることができる。
【0043】
バルブ構造体Aは、スプリング部1とバルブピストン部2とが一体に形成されている。
【0044】
図5は、サブシリンダ部B2の内周壁を示す説明図である。
サブシリンダ部B2の内周壁には、全方位に上下方向に延びる凹状の縦溝部B21が複数個、一定の間隔を置いて設けられている。
このうち、ノズル部F側に位置する第3通路部P3に対応する位置に設けられた縦溝部B21の底には、第3通路部P3に通じる貫通孔B22が設けられている。ノズル部Fに対応する位置以外の縦溝部B21には、貫通孔B22は設けられていない。
【0045】
縦溝部B21の間は、内壁が柱として機能する。これにより、バルプピストン部2に圧が加わった際にも、縦溝部B21周辺が変形することがなく、バルブピストン部2の摺動がスムーズに行われる。
【0046】
第3通路部P3は、サブシリンダ部B2の底部から一定の間隔をあけて設けられている。具体的には、底部から2~3mmの高さに設けられている。
これにより、初期セット状態からトリガー部Eが回動され、メインシリンダ部B1内の液圧が高まることでバルブピストン部2が移動を始めてから、内スカート部23が貫通孔B22を通過してセカンドバルブが開弁するまで、タイムラグが生じる。
このため、トリガー部Eを回動させても液が噴出されない状態(いわゆる遊び)が発生し、蓄圧式スプレイヤXの使い勝手が向上する。
【0047】
ここで、蓄圧式スプレイヤXを用いて液を噴出する場合の液の流れについて説明する。
液は、容器J、導入管H、第1通路部P1、ファーストバルブFV、メインシリンダ部B1、第2通路部P2、サブシリンダ部B2、縦溝部B21(貫通孔B22)、第3通路部P3、ノズル部Fの順に流通し、ノズル部Fから外部へと噴出される。
【0048】
初期セット状態(図1及び図2の状態)においては、ファーストバルブFV及びセカンドバルブは閉弁しており、かつ導入管Hからサブシリンダ部B2まで、液が充填された状態となっている。
また、トリガー部Eは回動されていない状態にある。
【0049】
トリガー部Eを回動させると、トリガー部Eと連動してメインシリンダ部B1内でピストン部Dが移動し、メインシリンダ部B1内の圧が高まる(蓄圧される)。このとき、メインシリンダ部B1と、バルブピストン部2の下側空間とは、第2通路部P2を通じて連通しており、液が満たされた状態である。
【0050】
液圧が十分に高まると、これに押し上げられるように、バルブピストン部2が上方へ移動し、スプリング部1が押圧されて変形する(図3及び図4参照)。
【0051】
図6は、バルブ構造体Aが上死点へ至った状態の蓄圧式スプレイヤXを示す縦断面図である。
また、図7は、図6の状態のバルブ構造体Aを拡大して示す縦断面図である。
さらに液圧によりバルブ構造体Aが上方へ移動すると、上述したように筒状突起1Aがストッパ部C2に当接することによりバルブ構造体Aの移動が制限される。
これにより、バルブ構造体Aが上死点へ至り、スプリング部1の変形が一定の範囲内に抑制される。その結果、スプリング部1の負荷を低減し、スプリング部1の屈曲変形等を抑制することができる。
【0052】
バルブピストン部2が十分に上昇すると、縦溝部B21の貫通孔B22と第3通路部P3とが連通し、液がノズル部Fへと移動する。このとき、液は蓄圧された状態であるため、ノズル部Fから外部へと勢いよく噴出される。
なおこのとき、ファーストバルブFVは閉弁している。
【0053】
液が噴出されることで、メインシリンダ部B1からノズル部Fまでの液圧が下がり、スプリング部1の弾発力がこれに打ち勝つと、バルブピストン部2が押し下げられる。
ピストン部Dが押し下げられると、内スカート部23が第3通路部P3を覆い、セカンドバルブが閉弁する。
【0054】
また、トリガー部Eはトリガー用復帰バネIのバネ力によって初期位置へと復帰する。
トリガー部Eが復帰に連動してメインシリンダ部B1においてピストン部Dが移動し、メインシリンダ部B1内が負圧になってファーストバルブFVが開弁する。
このとき、容器Jからメインシリンダ部B1内までが連通しているので、負圧によって容器Jから導入管H及び第1通路部P1を通じて、メインシリンダ部B1内へ液が吸い上げられる。
液の流入によってメインシリンダ部B1内の負圧状態が解消されると、ファーストバルブFVが閉弁し、液の移動が止まる。
なお、このときセカンドバルブ(バルブ構造体A)は、上述したように閉弁した状態にある。
【0055】
これによって、蓄圧式スプレイヤXは初期セット状態に復帰する。このとき、ファーストバルブFV、及びセカンドバルブは共に閉弁しており、かつ導入管Hからサブシリンダ部B2まで、液が充填された状態となっている。
【0056】
なお、以上説明したメインシリンダ部B1やサブシリンダ部B2を有するベース体Bの材質としてはPP樹脂(ポリプロピレン樹脂)等が好適に用いられる。
また、バルブ構造体Aの材質としては、PP樹脂、又はPOM樹脂(ポリアセタール樹脂)等の素材が好適に用いられる。
【0057】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0058】
本実施形態において、バルブ構造体Aは初期セット状態において下支持部B23に当接し上支持部C1に当接しないように装着されているが、これに限られない。バルブ構造体Aが上支持部C1のみに当接する、又は上支持部C1と下支持部B23のいずれにも当接しないように装着されていてもよい。
これにより、初期セット状態においてバルブ構造体Aに軸心方向(閉弁方向又は開弁方向)の負荷が加わらない。
【0059】
本実施形態においてバルブ構造体Aにおけるスプリング部1及びバルブピストン部2は上面視円形であるが、これに限られずスプリング部1がバルブピストン部2を押圧できる適宜の形状を採用できる。
【0060】
本実施形態において、スプリング部1とバルブピストン部2とは一体に形成されているが、別体に設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の蓄圧式スプレイヤXは、ファーストバルブFV及びセカンドバルブの開閉によって液を噴出する場合に広く用いることが可能であり、バルブ構造体Aの変形を抑制することで、長期間にわたって機能を維持し、好適な噴出を行うことができる。
【符号の説明】
【0062】
X・・・蓄圧式スプレイヤ
A・・・バルブ構造体
1・・・スプリング部
1A・・・筒状突起
1B・・・中心穴
2・・・バルブピストン部
21・・・芯棒部
22・・外スカート部
23・・・内スカート部
B・・・シリンダボディ部
B1・・・メインシリンダ部
B2・・・サブシリンダ部
B21・・・縦溝部
B22・・・貫通孔
B23・・・下支持部
C・・・カバー部
C1・・・上支持部
C2・・・ストッパ部
D・・・ピストン部
E・・・トリガー部
F・・・ノズル部
G・・・キャップ部
H・・導入管
I・・・トリガー用復帰バネ
J・・・容器
FV・・・ファーストバルブ
P1・・・第1通路部
P2・・・第2通路部
P3・・・第3通路部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7