(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164199
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】トリガースプリング構造体及びトリガースプレイヤ
(51)【国際特許分類】
B05B 11/00 20230101AFI20231102BHJP
【FI】
B05B11/00 102E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075603
(22)【出願日】2022-04-29
(71)【出願人】
【識別番号】390028196
【氏名又は名称】キャニヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103805
【弁理士】
【氏名又は名称】白崎 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100211753
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 紳吾
(72)【発明者】
【氏名】赤築 充昭
(57)【要約】
【課題】保管や搬送時に折れ曲がり難いトリガースプリング構造体、及び、部品の製造に必要な金型の数を減らすことができるトリガースプレイヤを提供すること。
【解決手段】本発明は、トリガー部1と、スプリング部2と、トリガー部1及びスプリング部2を連結する連結部3と、からなり、トリガー部1、スプリング部2及び連結部3が同じ素材で一体となるように射出成形されたものであり、連結部3が剛体であるトリガースプリング構造体100、及び、これの連結部3を切断し、分離したトリガー部1及びスプリング部2を部品として用いるトリガースプレイヤ101である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリガー部と、
スプリング部と、
前記トリガー部及び前記スプリング部を連結する連結部と、からなり、
前記トリガー部、前記スプリング部及び前記連結部が同じ素材で一体となるように射出成形されたものであり、
前記連結部を切断し、分離した前記トリガー部及び前記スプリング部をトリガースプレイヤの部品として用いるものであり、
前記連結部が剛体であるトリガースプリング構造体。
【請求項2】
前記トリガー部が、把持部と、該把持部の上端の両側にそれぞれ設けられた左翼部及び右翼部とを有し、
前記スプリング部が、前記トリガー部を付勢するための左右方向に延びる付勢バーと、該付勢バーの両側にそれぞれ取り付けられた左弓状バネ部及び右弓状バネ部とを有し、
前記連結部が、左連結部及び右連結部からなり、
前記左連結部の一端が、前記左翼部に取り付けられ、他端が、前記左弓状バネ部の後端に取り付けられ、
前記右連結部の一端が、前記右翼部に取り付けられ、他端が、前記右弓状バネ部の後端に取り付けられている請求項1記載のトリガースプリング構造体。
【請求項3】
前記左連結部及び前記右連結部が、何れも多角柱状であり、
前記左連結部及び前記右連結部の長さが1.5~3.5mmである請求項2記載のトリガースプリング構造体。
【請求項4】
容器に取り付けて用いられ、該容器内の液をノズル口部から噴霧するためのトリガースプレイヤにおいて、
請求項1~3のいずれか1項に記載のトリガースプリング構造体の前記連結部を切断して得られる前記トリガー部及び前記スプリング部と、
液を流通させる流路、該流路に形成されたシリンダ部及び該流路の先端に位置する前記ノズル口部が形成された本体部と、
前記トリガー部に連結されるピストン部と、
を備え、
前記左翼部及び前記右翼部には、それぞれ、支持穴部が設けられており、
前記支持穴部には、前記本体部の両側面に設けられた支持軸部が挿入されており、
前記トリガー部の前記支持軸部を中心とする前後方向への回動に基づいて、前記ピストン部が前記シリンダ部の内壁に沿って摺動するトリガースプレイヤ。
【請求項5】
前記左翼部及び右翼部には、切り欠き穴部が設けられており、
前記切り欠き穴部には、前記付勢バーが取り付けられており、
前記左弓状バネ部及び前記右弓状バネ部それぞれの後端近傍の当接部が、前記本体部に設けられたスプリング受け部に当接されており、
前記トリガー部の前記支持軸部を中心とする前後方向への回動に基づいて、前記左弓状バネ部及び前記右弓状バネ部が屈曲する請求項4記載のトリガースプレイヤ。
【請求項6】
少なくとも、前記本体部、前記左翼部及び前記右翼部、並びに、前記スプリング部、を覆うカバー部を更に備え、
前記トリガー部と、その上方に位置する前記カバー体の上壁との間には、前記トリガー部の回動の際に、前記左翼部及び前記右翼部に残存する前記連結部を切断した第1連結片が前記カバー体に干渉しないようにするための第1空隙部と、
前記スプリング部の後端と、その下方に位置する本体部の底部との間には、前記スプリング部の屈曲の際に、前記左弓状バネ部及び前記右弓状バネ部の後端に残存する前記連結部を切断した第2連結片が前記本体部に干渉しないようにするための第2空隙部と、が設けられている請求項5記載のトリガースプレイヤ。
【請求項7】
前記シリンダ部に収納され、該シリンダ部と前記流路との間を開閉可能な第1バルブ部と、
前記流路に形成されたバルブシリンダ部に収納され、該バルブシリンダ部と前記流路との間を開閉可能な第2バルブ部と、
前記ノズル口部に取り付けられたノズルキャップ部と、
を更に備え、
前記流路において、前記バルブシリンダ部が、前記シリンダ部よりも前記ノズル口部側に形成されている請求項4~6のいずれか1項に記載のトリガースプレイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリガースプレイヤに用いられるトリガースプリング構造体、及び、容器に取り付けて用いられ、該容器内の液をノズル口部から噴霧するためのトリガースプレイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
容器に取り付け、当該容器に収容された液を吸い上げると共に、当該液をスプレー(噴霧)させる、いわゆるスプレイヤが知られている。
ここで、スプレイヤの中でも、トリガー部を操作して液を噴霧させるトリガースプレイヤが知られている。
かかるトリガースプレイヤは、所望の対象物に対して、的確に簡単な操作で液を噴霧できるという点で汎用されている。
【0003】
ところで、トリガースプレイヤは、一般に、部品毎に、金型を用いて製造するため、必要な金型の数が多いという欠点がある。
これに対し、トリガー部及びスプリング部を1つの金型で一体成形したものが開示されている。
例えば、トリガースプレーに組み込まれて取り付けられるバネ構造体であって、トリガー部とバネ部とが一体化されてなり、バネ体はトリガー部の両側面から薄肉部を介して互いに平行に且つアーチ状に延出する一対のブリッジ部と該ブリッジ部を終端で結合する連結部とよりなるバネ構造体が知られている(例えば、特許文献1参照)。
また、容器から液体を分注するための装置において、トリガーとリセット手段とが一体的に製造され、トリガーとリセット手段との連結部分の1つが破損した場合でも、トリガー及びリセット手段がフックカップリングを形成するように適合されている装置が知られている(例えば、特許文献2参照)。
これらによれば、トリガースプレイヤの部品の製造に必要な金型の数を減らすことが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-255215号公報
【特許文献2】国際公開第2006/073307号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のバネ構造体においては、トリガー部とバネ部との連結部分が薄く、特許文献2記載の装置(トリガースプレイヤー)においては、トリガーとリセット手段との連結部分が薄いため、保管や配送時に、折れ曲がり易いという欠点がある。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、保管や搬送時に折れ曲がり難いトリガースプリング構造体、及び、部品の製造に必要な金型の数を減らすことができるトリガースプレイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、連結部を、力の作用の下で変形しない剛体とし、連結部を積極的に切断して、分離されたトリガー部及びスプリング部をトリガースプレイヤの部品として用いるものとすることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明は、トリガー部と、スプリング部と、トリガー部及びスプリング部を連結する連結部と、からなり、トリガー部、スプリング部及び連結部が同じ素材で一体となるように射出成形されたものであり、連結部を切断し、分離したトリガー部及びスプリング部をトリガースプレイヤの部品として用いるものであり、連結部が剛体であるトリガースプリング構造体である。
【0009】
本発明のトリガースプリング構造体においては、トリガー部が、把持部と、該把持部の上端の両側にそれぞれ設けられた左翼部及び右翼部とを有し、スプリング部が、トリガー部を付勢するための左右方向に延びる付勢バーと、該付勢バーの両側にそれぞれ取り付けられた左弓状バネ部及び右弓状バネ部とを有し、連結部が、左連結部及び右連結部からなり、左連結部の一端が、左翼部に取り付けられ、他端が、左弓状バネ部の後端に取り付けられ、右連結部の一端が、右翼部に取り付けられ、他端が、右弓状バネ部の後端に取り付けられていることが好ましい。
【0010】
本発明のトリガースプリング構造体においては、左連結部及び右連結部が、何れも多角柱状であり、左連結部及び右連結部の長さが1.5~3.5mmであることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、容器に取り付けて用いられ、該容器内の液をノズル口部から噴霧するためのトリガースプレイヤにおいて、上述のトリガースプリング構造体の連結部を切断して得られるトリガー部及びスプリング部と、液を流通させる流路、該流路に形成されたシリンダ部及び該流路の先端に位置するノズル口部が形成された本体部と、トリガー部に連結されるピストン部と、を備え、左翼部及び右翼部には、それぞれ、支持穴部が設けられており、支持穴部には、本体部の両側面に設けられた支持軸部が挿入されており、トリガー部の支持軸部を中心とする前後方向への回動に基づいて、ピストン部がシリンダ部の内壁に沿って摺動するトリガースプレイヤである。
【0012】
本発明のトリガースプレイヤにおいては、左翼部及び右翼部には、切り欠き穴部が設けられており、切り欠き穴部には、付勢バーが取り付けられており、左弓状バネ部及び右弓状バネ部それぞれの後端近傍の当接部が、本体部に設けられたスプリング受け部に当接されており、トリガー部の支持軸部を中心とする前後方向への回動に基づいて、左弓状バネ部及び右弓状バネ部が屈曲することが好ましい。
【0013】
本発明のトリガースプレイヤにおいては、少なくとも、本体部、左翼部及び右翼部、並びに、スプリング部、を覆うカバー部を更に備え、トリガー部と、その上方に位置するカバー体の上壁との間には、トリガー部の回動の際に、左翼部及び右翼部に残存する連結部を切断した第1連結片がカバー体に干渉しないようにするための第1空隙部と、スプリング部の後端と、その下方に位置する本体部の底部との間には、スプリング部の屈曲の際に、左弓状バネ部及び右弓状バネ部の後端に残存する連結部を切断した第2連結片が本体部に干渉しないようにするための第2空隙部と、が設けられていることが好ましい。
【0014】
本発明のトリガースプレイヤにおいては、シリンダ部に収納され、該シリンダ部と流路との間を開閉可能な第1バルブ部と、流路に形成されたバルブシリンダ部に収納され、該バルブシリンダ部と流路との間を開閉可能な第2バルブ部と、ノズル口部に取り付けられたノズルキャップ部と、を更に備え、流路において、バルブシリンダ部が、シリンダ部よりもノズル口部側に形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のトリガースプリング構造体においては、トリガー部及びスプリング部を連結する連結部を、力の作用の下で変形しない剛体としているので、保管や搬送時に折れ曲がることを防止することができる。
また、トリガースプリング構造体においては、トリガー部及びスプリング部をトリガースプレイヤの部品として用いる場合、連結部が剛体であるので、連結部を残存させるのではなく、積極的に切断することにしている。すなわち、予め連結部を切断するので、使用時に連結部が破損することが防止できる。
また、トリガースプリング構造体においては、トリガー部及びスプリング部をトリガースプレイヤの部品として用いる場合、1つの金型で射出成形されたトリガースプリング構造体から、トリガー部及びスプリング部を部品として用いることができるので、トリガースプレイヤの部品の製造に必要な金型の数を減らすことが可能となる。
【0016】
本発明のトリガースプリング構造体においては、左連結部の一端が、左翼部に取り付けられ、他端が、左弓状バネ部の後端に取り付けられ、右連結部の一端が、右翼部に取り付けられ、他端が、右弓状バネ部の後端に取り付けられているので、連結部を切断することにより残存する連結片が、トリガー部及びスプリング部をトリガースプレイヤの部品として用いた場合に、邪魔になることを防止することができる。
例えば、トリガー部においては、剛体である連結片が左翼部及び右翼部ではなく把持部にあると、把持する際に手を引っ掻ける恐れがあり、スプリング部においては、剛体である連結片が弓状バネ部の付勢バー側にあると、スプリング部によるトリガー部への前方への付勢を阻害する恐れがある。
【0017】
本発明のトリガースプリング構造体において、スプリング部の左弓状バネ部及び右弓状バネ部は、その一端が連結部により連結され、他端が左右方向に延びる付勢バーと連結されている。この場合、トリガースプリング構造体においては、左弓状バネ部及び右弓状バネ部の他端が自由端とはならず、付勢バーにより拘束されることになるので、保管や搬送時に左弓状バネ部及び右弓状バネ部が変形することを防止することができる。
【0018】
本発明のトリガースプリング構造体においては、左連結部及び右連結部を、何れも多角柱状とすることにより、切断時に、刃が連結部に当接した瞬間に滑ることを抑制することができる。
すなわち、切断位置がずれることを抑制することができる。
このとき、左連結部及び右連結部の長さを所定の長さとすることにより、切断し易く、且つ、連結部が十分な剛性を発揮することができる。
また、分離されたトリガー部及びスプリング部をトリガースプレイヤの部品として用いる場合、邪魔になり難い。
【0019】
本発明のトリガースプレイヤは、トリガー部を、後方向に回動させることにより、これに連動して、シリンダ部に貯留された液がピストン部により押し出されて噴霧されるようになっている。
また、トリガー部を、前方向に回動させることにより、これに連動して、容器内の液が吸い上げられてシリンダ部に貯留されるようになっている。
したがって、トリガー部の支持軸部を中心とする前後方向への回動に基づいて、繰り返し、容器内の液を噴霧することが可能となっている。
【0020】
本発明のトリガースプレイヤにおいては、上述したトリガースプリング構造体の分離されたトリガー部及びスプリング部をトリガースプレイヤの部品として用いることにより、部品の製造に必要な金型の数を減らすことができる。
【0021】
本発明のトリガースプレイヤにおいては、左弓状バネ部及び右弓状バネ部の当接部が、スプリング受け部に当接されているので、トリガー部を、後方向に回動されることにより、これに連動して、左弓状バネ部及び右弓状バネ部が屈曲することになる。これにより、左弓状バネ部及び右弓状バネ部においては、より十分な前方への付勢力が発揮されるため、後方向に引かれたトリガー部を、確実に前方向に復帰回動させることができる。
【0022】
本発明のトリガースプレイヤは、少なくとも、本体部、左翼部及び右翼部、並びに、スプリング部、を覆うカバー部を更に備えるので、外部からの衝撃により、これらが破損することを抑制することができる。
このとき、トリガースプレイヤにおいては、第1空隙部及び第2空隙部を設けることにより、対応する第1連結片及び第2連結片が邪魔になることを確実に防止することができる。
【0023】
本発明のトリガースプレイヤにおいては、第1バルブ部を備えることにより、容器内への液の逆流を抑止することができ、第2バルブ部を備えることにより、蓄圧された液をノズルキャップ部から噴霧することができる。
本発明のトリガースプレイヤにおいては、ノズル口部に取り付けられるノズルキャップ部を備えることにより、ノズル口部を保護することができる。
また、ノズルキャップ部に、流路開閉機能や噴霧方向調整機能等を設けることにより、これらの機能をトリガースプレイヤに付与することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るトリガースプリング構造体を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、本実施形態に係るトリガースプリング構造体の左連結部を拡大して示す側面図である。
【
図3】
図3は、本実施形態に係るトリガースプリング構造体の連結部を切断する方法を説明するための説明図である。
【
図4】
図4は、本実施形態に係るトリガースプリング構造体を切断して得られるトリガー部及びスプリング部を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るトリガースプレイヤを示す側面断面図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るトリガースプレイヤにおいて、トリガー部に残存する第1連結片の位置を説明するための破断側面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係るトリガースプレイヤにおいて、スプリング部に残存する第2連結片の位置を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。
また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。
更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0026】
まず、本発明に係るトリガースプリング構造体について説明する。
図1は、本実施形態に係るトリガースプリング構造体を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態に係るトリガースプリング構造体100は、トリガー部1と、スプリング部2と、トリガー部1及びスプリング部2を連結する連結部3と、からなる。すなわち、トリガースプリング構造体100は、トリガー部1とスプリング部2とが連結部3を介して一体となった構造体である。
【0027】
トリガースプリング構造体100においては、トリガー部1、スプリング部2及び連結部3が同じ素材であり、射出成形により製造される。
ここで、トリガースプリング構造体100の素材は、射出成形可能な樹脂であれば特に限定されないが、当該樹脂の中でも、ポリオレフィンであることが好ましく、リサイクル性の観点から、ポリエチレン又はポリプロピレンであることがより好ましく、耐熱性、耐薬品性等の観点から、ポリプロピレンであることが更に好ましい。
【0028】
トリガースプリング構造体100において、トリガー部1は、把持部11と、当該把持部11の上端の両側にそれぞれ設けられた板状の左翼部12a及び右翼部12bとを有する。
なお、左翼部12a及び右翼部12bは、互いに向かい合うように配置される。
左翼部12a及び右翼部12bは、それぞれの略中央に、支持穴部13が設けられている。両側の支持穴部13は、左右対称であり、それぞれに、後述する本体部の両側面に設けられた支持軸部が挿入される。
左翼部12a及び右翼部12bは、それぞれの後ろ側に、半円状の切り欠き穴部14が設けられている。両側の切り欠き穴部14は、左右対称であり、それぞれに、後述するスプリング部2の付勢バーが同時に当接される。
【0029】
トリガースプリング構造体100において、スプリング部2は、トリガー部1を付勢するための左右方向に延びる円柱状の付勢バー24と、当該付勢バー24の両側にそれぞれ取り付けられた左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bとを有する。すなわち、左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bは、付勢バー24の両側をそれぞれ基点としており、互いに平行となるように、屈曲しながら後ろ方向に延びた形状となっている。
また、左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bそれぞれの後端近傍が、当接部21となっている、なお、両側の当接部21は、後述する本体部のスプリング受け部に同時に当接される。
【0030】
トリガースプリング構造体100において、連結部3は、左連結部3a及び右連結部3bからなる。
左連結部3a及び右連結部3bは、いずれも、上述した樹脂からなる肉厚の四角柱状であり、力の作用の下で変形しない剛体となっている。これにより、トリガースプリング構造体100においては、保管や搬送時に折れ曲がることを防止することが可能となっている。
【0031】
トリガースプリング構造体100においては、左連結部3aの一端が、左翼部12aに取り付けられ、他端が、左弓状バネ部25aの後端に取り付けられる。
また、右連結部3bの一端が、右翼部12bに取り付けられ、他端が、右弓状バネ部25bの後端に取り付けられている。
したがって、トリガースプリング構造体100においては、トリガー部1に取り付けられているスプリング部2の向きが、上述した従来のバネ構造体とは逆向きに取り付けられている。
【0032】
ここで、トリガースプリング構造体100においては、左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bの連結部3とは反対側の端部に付勢バー24が取り付けられているので、左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bが自由端とはなっておらず、付勢バー24により拘束されることになる。これにより、トリガースプリング構造体100においては、保管や搬送時に左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bが変形することを防止することができる。
【0033】
また、トリガースプリング構造体100においては、連結部3を切断することにより残存する連結片を、所定位置に配置することにより、トリガー部1及びスプリング部2をトリガースプレイヤの部品として用いた場合に、トリガー部1の把持やスプリング部2による付勢の邪魔になることを防止することができる。
なお、トリガー部1に残存する連結片(以下「第1連結片30a」ともいう。)及びスプリング部2に残存する連結片(以下「第2連結片30b」ともいう。)は、何れも、連結部3と同様に、剛体であるため、他の部材に干渉すると、不具合が生じ易い。
【0034】
図2は、本実施形態に係るトリガースプリング構造体の左連結部を拡大して示す側面図である。
なお、右連結部3bは、左連結部3aと面対称であること以外は同じ構造であるの図示を省略する。
トリガースプリング構造体100において、左連結部3a及び右連結部3bは、トリガー部1との連結部分からスプリング部2との連結部分までの長さHが1.5~3.5mmであることが好ましい。
左連結部3a及び右連結部3bの長さHが1.5mm未満であると、長さHが上記範囲内にある場合と比較して、切断し難くなるという欠点がある。
一方、左連結部3a及び右連結部3bの長さHが3.5mmを超えると、長さHが上記範囲内にある場合と比較して、剛体である連結部3が搬送時等に破損する恐れがある。
また、分離されたトリガー部1及びスプリング部2をトリガースプレイヤの部品として用いる場合、連結片が邪魔になり易いという欠点がある。
【0035】
上述したように、トリガースプリング構造体100においては、連結部3が剛体であるので、連結部3を残存させるのではなく、連結部3で切断することにより、分離されたトリガー部1及びスプリング部2をトリガースプレイヤの部品として用いることが可能となっている。
ここで、連結部3は、四角柱状となっているので、切断時に、刃が連結部3に当接した瞬間に滑ることを抑制することができる。
すなわち、切断位置がずれることを抑制することができる。
【0036】
連結部3において、これを切断する切断位置は、トリガー部1の左翼部12aの端部と左弓状バネ部25aの端部との間の距離をAとした場合、左翼部12aの端部を起点として、(A×1/2)の位置であるA1から、(A×2/3)の位置であるA2の間であることが好ましい。
この場合、切断し易いという利点がある。また、連結片が邪魔にならない長さとなり、トリガースプレイヤ内にこれを収容可能な空隙を十分に設けることができる。
なお、かかるトリガースプレイヤ内の空隙については後述する。
【0037】
図3は、本実施形態に係るトリガースプリング構造体の連結部を切断する方法を説明するための説明図であり、
図4は、本実施形態に係るトリガースプリング構造体を切断して得られるトリガー部及びスプリング部を示す斜視図である。
図3に示すように、トリガースプリング構造体100は、トリガー部1が第1固定治具41に固定され、スプリング部2がL字状の第2固定治具42に載置され、且つ第2固定治具42に取り付けられた第3固定治具43によりスプリング部2の端部が固定される。こうして、トリガースプリング構造体100のトリガー部1及びスプリング部2が固定される。
そして、カット刃4により、連結部3が上述した切断位置で切断される。
【0038】
これにより、
図4に示すように、左翼部12a及び右翼部12bに第1連結片30aが残存するトリガー部1と、左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bの付勢バー24とは反対側の端部に第2連結片30bが残存するスプリング部2とが得られる。
なお、スプリング部2は、第2連結片30bとは反対側に位置する付勢バー24を、トリガー部1の切り欠き穴部14に取り付けた状態で、トリガースプレイヤに組み込まれる。
【0039】
次に、本発明に係るトリガースプレイヤについて説明する。
本発明に係るトリガースプレイヤは、容器に取り付けて用いられ、トリガー部の操作により、当該容器内の液をノズル口部から所定方向に所定量噴霧するためのものである。
ここで、容器の形状や材質は、特に限定されず、公知のものを適宜採用することができる。
また、液は、噴霧可能であれば特に限定されず、公知のものを適宜採用することができる。
【0040】
図5は、本実施形態に係るトリガースプレイヤを示す側面断面図である。なお、
図5は、トリガースプレイヤがキャップCを介して容器の口部Yに取り付けられた図である。
図5に示すように、本実施形態に係るトリガースプレイヤ101は、液を流通させる流路51、流路51に形成されたシリンダ部53及びバルブシリンダ部54、及び、流路51の先端に位置するノズル口部52、が形成された本体部5と、本体部5の両側面に設けられた支持軸部(図示しない)に支持されたトリガー部1と、トリガー部1に連結されたピストン部6と、トリガー部1を元の位置に復帰させるためにトリガー部1を前方向に付勢するスプリング部2と、シリンダ部53に収納され、シリンダ部53と流路51との間を開閉可能な第1バルブ部7aと、バルブシリンダ部54に収納され、バルブシリンダ部54と流路51との間を開閉可能な第2バルブ部7bと、ノズル口部52に取り付けられたノズルキャップ部8と、少なくとも、本体部1、左翼部12a及び右翼部12b、並びに、スプリング部2、を覆うカバー部9とを備える。
なお、流路51において、バルブシリンダ部54は、シリンダ部53よりもノズル口部52側に形成されている。
また、流路51は、第1流路51a、第2流路51b、第3流路51cを有している。すなわち、流路51は、容器からシリンダ部53までの第1流路51aと、シリンダ部53からバルブシリンダ部54までの第2流路51bと、バルブシリンダ部54からノズル口部52までの第3流路51cとを有している。
【0041】
トリガースプレイヤ101は、本体部5と、トリガー部1と、ピストン部6と、スプリング部2と、第1バルブ部7aと、第2バルブ部7bと、ノズルキャップ部8と、カバー部9とが組み付けられた構造となっている。
ここで、トリガー部1及びスプリング部2は、上述したトリガースプリング構造体の連結部3を切断し、分離されたものが用いられる。
このため、トリガー部1とスプリング部2とをそれぞれ金型で製造するのではなく、1つの金型でトリガースプリング構造体100を製造すればよいので、トリガースプレイヤ101の部品の製造に必要な金型の数を減らすことができる。
【0042】
トリガースプレイヤ101において、本体部5、ピストン部6、第1バルブ部7a、第2バルブ部7b、ノズルキャップ部8及びカバー部9の素材は、何れも、射出成形により製造される。
ここで、これらの素材は、射出成形可能な樹脂であれば特に限定されないが、当該樹脂の中でも、ポリオレフィンであることが好ましく、リサイクル性の観点から、ポリエチレン又はポリプロピレンであることがより好ましく、耐熱性、耐薬品性等の観点から、ポリプロピレンであることが更に好ましい。
また、この場合、金属を極力使用しないことになるため、トリガースプレイヤ101自体を軽量化することができる。具体的には、トリガースプレイヤ101の総重量を20g以下とすることが好ましい。
【0043】
トリガースプレイヤ101においては、トリガー部1の支持軸部を中心とする前後方向への回動により、トリガー部1に枢着されたピストン部6がシリンダ部53の内壁に沿って摺動するようになっている。
また、トリガー部1を後方向に回動させる操作は、使用者によって行われ、トリガー部1を前方向に回動させて復帰させる操作は、スプリング部2によって行われる。
なお、トリガー部2の支持軸部への取り付けについては後述する。
【0044】
トリガースプレイヤ101においては、トリガー部1を引いて、後方向に回動させることにより、ピストン部6がシリンダ部53内を加圧する方向に摺動する。
そうすると、シリンダ部53内の液が流出し、その圧力により、第2バルブ部7bがバルブシリンダ部54と第2流路51b及び第3流路51cとの間を開放し、液は、第3流路51cを流通する。
そして、液は、ノズル口部52からノズルキャップ部8を介して、外方に噴霧されることになる。
【0045】
一方で、液が噴霧されることで加圧状態が解消されると、液の噴霧が停止され、第2バルブ部7bがバルブシリンダ部54と第2流路51b及び第3流路51cとの間を閉鎖する。
そして、トリガー部1を、スプリング部2が前方向に復帰回動させることにより、ピストン部6がシリンダ部53内を減圧する方向に摺動する。
そうすると、容器内の液が吸い上げられて、その圧力により、第1バルブ部7aがシリンダ部53と第1流路51aとの間を開放し、シリンダ部53内の減圧状態が解消されるまで、シリンダ部53内に液が流入されることになる。
【0046】
本実施形態に係るトリガースプレイヤ101によれば、トリガー部1の回動に基づいて、繰り返し、容器内の液を噴霧することが可能となる。
また、第1バルブ部7aを備えるので、容器内への液の逆流を抑止することができる。
また、第2バルブ部7bを備えるので、蓄圧された液をノズルキャップ部8から噴霧することができる。
また、ノズルキャップ部8を備えるので、ノズル口部52を保護することができる。
また、ノズルキャップ部8に、流路開閉機能や噴霧方向調整機能等を設けることにより、これらの機能をトリガースプレイヤ101に付与することが可能となる。
また、カバー部9を備えるので、外部からの衝撃により、覆われている本体部1、左翼部12a及び右翼部12b、並びに、スプリング部2が破損することを抑制することができる。
【0047】
図6は、本実施形態に係るトリガースプレイヤにおいて、トリガー部に残存する第1連結片の位置を説明するための破断側面図である。
なお、
図6においては、左翼部12a側を示しているが、右翼部12b側も同じ構造である。
図6に示すように、トリガースプレイヤ101において、トリガー部1は、本体部5を左翼部12a及び右翼部12bとで挟み込むように配置され、支持穴部13に、本体部5の両側面に設けられた支持軸部13aを挿入することにより、本体部5に取り付けられる。
これにより、トリガー部1は、支持軸部13aを中心に、前後方向に回動可能となっている。
また、トリガー部1の切り欠き穴部14には、スプリング部2の付勢バー24が取り付けられている。
【0048】
トリガー部1においては、第1連結片30aが、左翼部12a及び右翼部12aから上方に突出するようにそれぞれに設けられている。
このため、把持部11を把持する際に手を引っ掻ける恐れがない。
これに対し、トリガースプレイヤ101においては、トリガー部1と、その上方に位置するカバー体9の上壁9aとの間には、第1空隙部S1が設けられている。
このため、トリガースプレイヤ101においては、トリガー部1の回動の際に、左翼部12a及び右翼部12bにそれぞれ残存する第1連結片30aがカバー体9に干渉することを防止することができる。
【0049】
図7は、本実施形態に係るトリガースプレイヤにおいて、スプリング部に残存する第2連結片の位置を説明するための側面図である。
なお、
図7においては、トリガー部1及びカバー体9の記載を省略している。
また、
図7においては、左弓状バネ部25a側を示しているが、右弓状バネ部25b側も同じ構造である。
図7に示すように、スプリング部2は、左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bが、本体部5を挟み込むように配置される。
また、スプリング部2は、その前側の付勢バー24が、トリガー部1の切り欠き穴部14に取り付けられ、その後ろ側の左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bの当接部26が、本体部5の後端に位置するスプリング受け部5aに当接される。
なお、当接部26の位置は、左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bの後端近傍であり、後端ではない。
【0050】
ここで、左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bは、屈曲するように配置され、トリガー部1の回動に関わらず、そのバネ力により、トリガー部1を常時前方向に付勢している。
そして、スプリング部2は、トリガー部1を、後方向に回動されることにより、これに連動して、左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bがより屈曲し、より十分な前方への付勢力がトリガー部1に付与される。その結果、後ろ方向に引かれたトリガー部1を、確実に前方向に復帰回動させることが可能となる。
【0051】
スプリング部2においては、第2連結片30bが、左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bの後端から突出するようにそれぞれに設けられている。なお、第2連結片30bは、当接部26よりも後端側に設けられている。
このため、スプリング部2によるトリガー部1への前方への付勢を阻害する恐れがない。
これに対し、トリガースプレイヤ101においては、左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bの後端と、その下方に位置する本体部5の底部5bとの間には、第2空隙部S2が設けられている。
このため、トリガースプレイヤ101においては、スプリング部2の屈曲の際に、左弓状バネ部25a及び右弓状バネ部25bの後端にそれぞれ残存する第2連結部30bが本体部5に干渉することを防止することができる。
【0052】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0053】
本実施形態に係るトリガースプリング構造体100においては、トリガー部1とスプリング部2とが連結部3を介して連結されているが、更に別の部材が連結されていてもよい。
【0054】
本実施形態に係るトリガースプリング構造体100において、左連結部3a及び右連結部3bは、いずれも、四角柱状としているが、これに限定されない。その中でも、円柱を含む多角柱状であることが好ましく、切断のし易さの観点から、角数が八角以下の多角柱状であることがより好ましい。
【0055】
本実施形態に係るトリガースプリング構造体100は、
図3に示すように、固定治具により固定され、カット刃4により連結部3が切断されているが、切断の方法はこれに限定されない。
【0056】
本実施形態に係るトリガースプレイヤ101においては、本体部5と、ピストン部6と、第1バルブ部7aと、第2バルブ部7bと、ノズルキャップ部8と、カバー部9とが別体であり、互いに組み付けられた構造となっているが、これらの部材のうち、任意の部材同士が一体に成形されたものであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明に係るトリガースプリング構造体は、連結部を切断して得られるトリガー部及びスプリング部をトリガースプレイヤの部品として用いることができる。
本発明に係るトリガースプレイヤは、容器内の液を噴霧するために用いられる装置である。
本発明によれば、保管や搬送時に折れ曲がり難いトリガースプリング構造体、及び、部品の製造に必要な金型の数を減らすことができるトリガースプレイヤを提供することができる。
【符号の説明】
【0058】
1・・・トリガー部
100・・・トリガースプリング構造体
101・・・トリガースプレイヤ
11・・・把持部
12a・・・左翼部
12b・・・右翼部
13・・・支持穴部
13a・・・支持軸部
14・・・切り欠き穴部
2・・・スプリング部
21・・・当接部
24・・・付勢バー
25a・・・左弓状バネ部
25b・・・右弓状バネ部
26・・・当接部
3・・・連結部
30a・・・第1連結片
30b・・・第2連結片
3a・・・左連結部
3b・・・右連結部
4・・・カット刃
41・・・第1固定治具
42・・・第2固定治具
43・・・第3固定治具
5・・・本体部
51・・・流路
51a・・・第1流路
51b・・・第2流路
51c・・・第3流路
52・・・ノズル口部
53・・・シリンダ部
54・・・バルブシリンダ部
5a・・・スプリング受け部
5b・・・底部
6・・・ピストン部
7a・・・第1バルブ部
7b・・・第2バルブ部
8・・・ノズルキャップ部
9・・・カバー部
9a・・・上壁
C・・・キャップ
S1・・・第1空隙部
S2・・・第2空隙部
Y・・・容器の口部