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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164204
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】生成装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/24 20060101AFI20231102BHJP
   B01J 19/00 20060101ALI20231102BHJP
   C10L 3/08 20060101ALN20231102BHJP
   C07C 1/04 20060101ALN20231102BHJP
   C07C 1/12 20060101ALN20231102BHJP
   C07C 9/04 20060101ALN20231102BHJP
   C07C 41/05 20060101ALN20231102BHJP
   C07C 43/04 20060101ALN20231102BHJP
   C07C 31/04 20060101ALN20231102BHJP
   C07C 29/152 20060101ALN20231102BHJP
   G05B 23/02 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
B01J19/24 Z
B01J19/00 321
C10L3/08
C07C1/04
C07C1/12
C07C9/04
C07C41/05
C07C43/04 D
C07C31/04
C07C29/152
G05B23/02 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022075611
(22)【出願日】2022-04-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】安田 裕
(72)【発明者】
【氏名】薮花 優棋
【テーマコード(参考)】
3C223
4G075
4H006
【Fターム(参考)】
3C223AA05
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223EB03
3C223FF05
3C223FF26
3C223FF46
3C223GG01
3C223HH02
4G075AA03
4G075AA13
4G075AA65
4G075AA67
4G075BA10
4G075BB07
4G075DA01
4G075DA02
4G075EB50
4H006AA02
4H006AA04
4H006AC29
4H006BD80
4H006BE20
4H006BE40
4H006BE41
(57)【要約】
【課題】即時に状態を監視できる生成装置を提供する。
【解決手段】生成装置は、液体および気体の少なくとも1種の原料から化学反応または精製により目的物を得るものであって、生成装置に入力された第1の変数と、原料から目的物を得る過程で生成される中間体および目的物に関する少なくとも1つの状態変数を含む第2の変数と、を取得する変数取得部と、変数取得部が取得した第1の変数および第2の変数に基づき生成装置の状態を推定する推定部と、を備える。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体および気体の少なくとも1種の原料から化学反応または精製により目的物を得る生成装置であって、
前記生成装置に入力された第1の変数と、前記原料から前記目的物を得る過程で生成される中間体および前記目的物に関する少なくとも1つの状態変数を含む第2の変数と、を取得する変数取得部と、
前記変数取得部が取得した前記第1の変数および前記第2の変数に基づき前記生成装置の状態を推定する推定部と、を備える生成装置。
【請求項2】
前記推定部は、前記生成装置を構成する部品の寿命を推定する寿命推定部を含む請求項1記載の生成装置。
【請求項3】
前記第2の変数は、前記気体を圧縮する圧縮機の負荷率、前記中間体の濃度、前記中間体の生成量、前記目的物の濃度、前記目的物の生成量、及び、前記目的物を得る過程で生成される水の量の少なくとも1種の特定変数を含み、
前記寿命推定部は、前記第1の変数および前記特定変数に基づき前記部品の寿命を推定する請求項2記載の生成装置。
【請求項4】
前記寿命推定部は、前記特定変数と前記部品の寿命とを関連付ける機械学習が施された学習済みのニューラルネットワークを含む請求項3記載の生成装置。
【請求項5】
前記寿命推定部の出力に基づき寿命が到来する前記部品を発注する発注部をさらに備える請求項2から4のいずれかに記載の生成装置。
【請求項6】
前記推定部の出力に基づき前記生成装置に入力する前記第1の変数を変更する変更部をさらに備える請求項1から4のいずれかに記載の生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学反応または精製により目的物を得る生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体または気体の少なくとも1種の原料から化学反応または精製により目的物を得る生成装置として、特許文献1には水素と排ガスから分離回収した二酸化炭素とを使って燃料を製造する生成装置に係る先行技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-77457号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
先行技術では生成装置の状態を即時に監視できないという問題点がある。
【0005】
本発明はこの問題点を解決するためになされたものであり、即時に状態を監視できる生成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の生成装置は、液体および気体の少なくとも1種の原料から化学反応または精製により目的物を得るものであって、生成装置に入力された第1の変数と、原料から目的物を得る過程で生成される中間体および目的物に関する少なくとも1つの状態変数を含む第2の変数と、を取得する変数取得部と、変数取得部が取得した第1の変数および第2の変数に基づき生成装置の状態を推定する推定部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
第1の態様によれば、変数取得部により、生成装置に入力された第1の変数と、原料から目的物を得る過程で生成される中間体および目的物に関する少なくとも1つの状態変数を含む第2の変数とが取得され、推定部は、変数取得部が取得した第1の変数および第2の変数に基づき生成装置の状態を推定する。よって即時に状態を監視できる。
【0008】
第2の態様によれば、第1の態様において、推定部は、生成装置を構成する部品の寿命を推定する寿命推定部を含む。推定した部品の寿命に応じて、消耗部品などの交換すべき部品を準備できる。
【0009】
第3の態様によれば、第2の態様において、第2の変数は、気体を圧縮する圧縮機の負荷率、中間体の濃度、中間体の生成量、目的物の濃度、目的物の生成量、及び、目的物を得る過程で生成される水の量の少なくとも1種の特定変数を含む。寿命推定部は、第1の変数および特定変数に基づき部品の寿命を推定する。これにより部品の寿命を推定する精度を向上できる。
【0010】
第4の態様によれば、第3の態様において、寿命推定部は、特定変数と部品の寿命とを関連付ける機械学習が施された学習済みのニューラルネットワークを含む。部品の交換時期を最適化し、生成装置の稼働率を向上できる。
【0011】
第5の態様によれば、第2から第4の態様のいずれかにおいて、発注部は、寿命推定部の出力に基づき寿命が到来する部品を発注する。よって消耗部品などの交換すべき部品の管理を容易にできる。
【0012】
第6の態様によれば、第1から第4の態様のいずれかにおいて、変更部は、推定部の出力に基づき生成装置に入力する第1の変数を変更する。よって部品の寿命を向上させつつ生成装置の稼働率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施の形態における生成装置のブロック図である。
図2】機械装置の斜視図である。
図3】機械装置のブロック図である。
図4】監視装置のブロック図である。
図5】生成装置のブロック図である。
図6】記憶装置に記憶される情報の一例を示す図である。
図7】ニューロンのモデルを模式的に示す図である。
図8】ニューロンを組み合わせて構成したニューラルネットワークを模式的に示す図である。
図9】(a)は部品の交換の間隔と機械装置の稼働率との相関を模式的に示す図であり、(b)はヒーターの交換の間隔とヒーターのワット密度との相関を模式的に示す図であり、(c)は部品の交換の間隔と圧縮機の負荷率との相関を模式的に示す図であり、(d)は部品の交換の間隔と目的物のガス分圧との相関を模式的に示す図であり、(e)は部品の交換の間隔と目的物を得る過程で生成される水の量との相関を模式的に示す図である。
図10】(a)及び(b)は機械装置の稼働率と目的物のガス分圧との関係を報酬に変換した模式的な図である。
図11】監視装置の動作の一例を示すフローチャートである。
図12】行動価値テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1は一実施の形態における機械装置11のブロック図である。機械装置11は、化学反応または精製により原料から目的物を得る機械装置11と、機械装置11を監視する監視装置12と、を備えている。機械装置11及び監視装置12は、ネットワーク13を介して相互に接続されている。ネットワーク13は、携帯電話網、無線LAN、有線LAN、固定電話網、インターネット、イントラネット、イーサネット(登録商標)が例示される。
【0015】
図1では機械装置11から監視装置12が独立しているが、監視装置12又はその一部が、機械装置11に含まれていても良い。図1では監視装置12は1つの装置として図示されているが、監視装置12は相互に協働して動作する複数の装置により構成され得る。この場合も監視装置12又はその一部が機械装置11に含まれていて良い。機械装置11から離れて配置された監視装置12を使って機械装置11を遠隔監視しても良い。
【0016】
図2は機械装置11の斜視図である。機械装置11は、輸送コンテナ15と、輸送コンテナ15に収納される複数の機能ユニット21と、を備えている。本実施形態では4つの機能ユニット21が輸送コンテナ15に配置されている。
【0017】
輸送コンテナ15は貨物輸送に使用される、主に鋼材で作られた直方体の大型容器である。輸送コンテナ15に機能ユニット21が収容されているので、工場で機械装置11を組み立ててそのまま現地に搬送し、現地に据え付けることができる。よって現地での据え付けのための大規模な工事を不要にできる。また、機械装置11を積み重ねたり横に並べたりすれば設備の能力を簡易に増強できる。
【0018】
輸送コンテナ15は、平面視が矩形のベース16と、ベース16の長辺に設けられた後壁17と、ベース16の短辺に設けられた2つの側壁18と、後壁17と側壁18とをつなぐ屋根19と、後壁17に対向してベース16の長辺に設けられた観音開きの前扉20と、を備えている。前扉20の一部は図示が省略されている。通常は前扉20を閉じた状態で機械装置11を作動する。本実施形態では後壁17及び側壁18は観音開きの扉からなる。しかし、後壁17や側壁18を開閉不能な板にすることは当然可能である。
【0019】
機能ユニット21は、特定の役割を果たす装置の単位である。機械装置11は、複数の機能ユニット21の組合せにより原料から目的物を生成する。複数の機能ユニット21は輸送コンテナ15の側壁18の片方からもう片方の側壁18に向かって横方向に一列に並んでいる。機能ユニット21は、ほぼ同じ大きさの縦長の直方体である。本実施形態では、機能ユニット21は、電源ユニット22、電解ユニット23、回収ユニット24及び生成ユニット25を含む。
【0020】
図3は機械装置11のブロック図である。以下、一例として、排ガス源26が発生した排ガスに含まれる二酸化炭素を回収し、二酸化炭素を炭素化合物として再利用し目的物を得る機械装置11について説明する。排ガス源26は、二酸化炭素を含む排ガスを発生するものであれば、特に制限はない。排ガス源26は、発電所、工場、廃棄物処理施設、天然ガス田、油田が例示される。
【0021】
機械装置11が備える電源ユニット22(図2参照)は各装置に電力を分配する。電解ユニット23は、水の電気分解によって水素と酸素とを製造する電解装置を含む。回収ユニット24は、排ガスの水分を除去する除去装置、排ガスに含まれる窒素酸化物を分離する分離装置、排ガスに含まれる二酸化炭素を分離して二酸化炭素を濃縮する回収装置、気体を圧縮してその圧力を高める圧縮機を含む。生成ユニット25は、二酸化炭素を水素で還元して目的物を生成する生成装置を含む。機械装置11が生成する可燃性生成物はメタン、一酸化炭素、メタノール、ホルムアルデヒド等が例示される。
【0022】
回収ユニット24の除去装置において排ガスから水分(水蒸気)を除去する方法は、凝縮、物理吸着、化学反応が例示される。分離装置において排ガスから窒素酸化物を除去する方法は、苛性ソーダ等を使用する湿式法、脱硝触媒と還元剤とを用いて窒素酸化物と窒素に還元する乾式法が一般的である。除去装置によって排ガスの水分を除去したり排ガスから窒素酸化物を除去したりすると、回収装置による二酸化炭素の濃縮効率を確保できる。
【0023】
回収装置において排ガスから分離回収された二酸化炭素を含む第1の混合ガスは、生成ユニット25(生成装置)に供給される。生成装置では、例えば触媒を使って活性化エネルギーを低下させ、二酸化炭素から目的物への化学反応を進行させる。
【0024】
第1の混合ガスは、二酸化炭素以外の不純物を、第1の混合ガスの10vol%以上含んでいても良い。第1の混合ガスの不純物は少ない方が、生成装置が排出する第2の混合ガスに含まれる目的物の純度が高まるため好ましいが、第1の混合ガスから不純物を分離する装置の複雑化を招くためである。従って機械装置11の簡素化という観点においては一定程度の不純物の混合は許容される。
【0025】
電解ユニット23(電解装置)において水を電気分解する方法は、アルカリ水電解、固体高分子電解質水電解の他、固体酸化物形電解セル(SOEC)による高温水蒸気電解が例示される。高温水蒸気電解は、アルカリ水電解や固体高分子電解質水電解に比べ、少ない電力で多くの水素が製造できるので好ましい。電解装置がSOECによる高温水蒸気電解を行うものであり、その水蒸気の生成に、生成装置で生じた化学反応熱を利用していると、機械装置11のエネルギー効率を向上できるので好ましい。
【0026】
生成装置が排出する第2の混合ガスには、目的物以外に、水素および第1の混合ガスの成分が含まれていても良いが、第2の混合ガスのうち、目的物以外のガスの量は、第2の混合ガスの量の45vol%以下が好ましい。
【0027】
機械装置11が生成した第2の混合ガスを、排ガス源26を含む敷地内の施設が利用するようにすれば、ガスの運搬に係るコストを低減できるので好ましい。機械装置11を簡易にすることにより小型化できるので、機械装置11の設置に必要なスペースを小さくできる。排ガス源26ごとに機械装置11を設置できるので、排ガス源26が排出する二酸化炭素を炭素資源として排ガス源26ごとに再利用できる。機械装置11によれば、販売の目的となる可燃性生成物を製造するのではなく、排ガス源26を含む敷地内の施設が利用できる程度の必要最低限の品質の可燃性生成物を製造しながら、二酸化炭素の排出量を削減できる。
【0028】
本実施形態の機械装置11における主な化学反応は以下の通りである。
【0029】
水素製造:2HO→2H+O
メタン製造(メタネーション):CO+4H→CH+2H
水素製造においては水が原料であり、水素が目的物である。メタン製造においては二酸化炭素および水素が原料であり、メタンが目的物である。
【0030】
また、以下に例示するいくつかの反応が起こるように機械装置11を構成できる。
【0031】
水蒸気改質による合成ガス製造:CH+HO→CO+3H
ドライリフォーミングによる合成ガス製造:CH+CO→2CO+2H
メタンの部分酸化による合成ガス製造:2CH+O→2CO+4H
メタノール合成:CO+2H→CHOH
フィッシャー・トロプシュ(FT)合成:CO+2H→-(CH)-+H
-(CH)-は直鎖炭化水素を意味する
ジメチルエーテル(DME)合成:2CO+4H→CHOCH+H
炭化水素製造および合成ガス製造を経るメタノール合成においては二酸化炭素および水素が原料であり、メタン及び合成ガス(CO+H)が中間体であり、メタノールが目的物である。炭化水素製造および合成ガス製造を経るFT合成においては二酸化炭素および水素が原料であり、メタン及び合成ガスが中間体であり、直鎖炭化水素が目的物である。炭化水素製造および合成ガス製造を経るDME合成においては二酸化炭素および水素が原料であり、メタン及び合成ガスが中間体であり、DMEが目的物である。機械装置11は排ガスから精製した二酸化炭素や空気から精製した酸素を、メタンや合成ガスを製造するときの原料にできる。
【0032】
図4は監視装置12のハードウェアを示すブロック図である。監視装置12は中央処理装置27、主記憶装置28、入出力インターフェイス29、入力装置30、補助記憶装置31及び出力装置32を含む。これらはデータバスや制御バスにより接続されている。
【0033】
中央処理装置27は、主記憶装置28に記憶されている命令およびデータに対して演算を行い、その演算の結果を主記憶装置28に記憶させることができる。中央処理装置27は、入出力インターフェイス29を介して、入力装置30,補助記憶装置31及び出力装置32を制御できる。
【0034】
主記憶装置28は、入力装置30、補助記憶装置31及びネットワーク13から入出力インターフェイス29を介して受信した命令やデータ、中央処理装置27の演算結果を記憶できる。主記憶装置28はランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリー(ROM)、フラッシュメモリが例示される。
【0035】
補助記憶装置31は、主記憶装置28よりも大きな容量を有する記憶装置である。補助記憶装置31は、オペレーティングシステムや特定のアプリケーションを構成する命令およびデータを記憶できる。補助記憶装置31には、機械装置11を構成する部品に関する種々の情報が記憶されている。補助記憶装置31は、磁気ディスク装置、光ディスク装置が例示される。
【0036】
入力装置30は、中央処理装置27にデータや情報、指示などを与えるための装置である。入力装置30は、タッチパネル、ボタン、キーボード、マウスが例示される。出力装置32はデータを外部に物理的に提示する装置である。出力装置32は、ディスプレイ、タッチパネル、プリンタが例示される。
【0037】
中央処理装置27は、補助記憶装置31に記憶された特定のアプリケーションを構成する命令およびデータを主記憶装置28に書き込み、命令の実行や演算などを行うことができる。中央処理装置27は入出力インターフェイス29を介して出力装置32を制御し、また入出力インターフェイス29及びネットワーク13を介して中央処理装置27と機械装置11との間で種々の情報を送受信する。
【0038】
機械装置11(図1参照)は、監視装置12と同様のハードウェアからなる制御装置(図示せず)を含む。制御装置は監視装置12との間で種々の情報を送受信すると共に、機能ユニット21の制御指示を整合し、機能ユニット21を制御する。機械装置11の制御装置は監視装置12と同様のハードウェアからなるので、制御装置の説明は省略する。
【0039】
図5は生成装置10のブロック図である。機械装置11は、電解ユニット23、回収ユニット24及び生成ユニット25が、入出力インターフェイス33を介して監視装置12に接続されている。説明を簡略にするため、本実施形態では一例として以下の場合を説明する。電解ユニット23はSOECによる高温水蒸気電解を行う。回収ユニット24は、いわゆる化学吸着法により排ガス中の二酸化炭素を吸収液に取り込んだ後、吸収液を加熱して二酸化炭素を分離し、冷却・圧縮して二酸化炭素を回収する。生成ユニット25は触媒を用いたメタネーションによりメタンを得る過程で水を生成する。
【0040】
電解ユニット23は、水を加熱して水蒸気を生成するヒーター34と、ヒーター34の温度を検知する温度計35と、水蒸気を電気分解する電解装置36と、水蒸気電解により得られた水素および酸素のガス分圧を検知する分圧計37と、を備えている。
【0041】
回収ユニット24は、吸収液を加熱するヒーター38と、吸収液から分離した二酸化炭素を圧縮する圧縮機39と、吸収液の温度を検知する温度計40と、二酸化炭素のガス分圧を検知する分圧計41と、を備えている。
【0042】
生成ユニット25は、触媒を内包する反応容器を加熱するヒーター42と、反応容器の温度を検知する温度計43と、生成されたメタンの分圧を検知する分圧計44と、メタンを得る過程で生成した水の量を検知する水量計45と、を備えている。
【0043】
監視装置12は、機械装置11が入力した種々の変数(以下「第1の変数」と称す)、及び、機械装置11が出力した種々の変数(以下「第2の変数」と称す)を取得する変数取得部46と、変数取得部46が取得した第1の変数および第2の変数に基づき機械装置11の状態を推定する推定部47と、を備える。監視装置12は、推定部47の出力に基づき機械装置11に入力する第1の変数を変更する変更部51をさらに備える。
【0044】
第1の変数は、機械装置11の目標とする稼働率を達成するための、電解ユニット23に供給する水(原料)の量、生成ユニット25に供給するガス(原料)の量、ヒーター34,38,42、電解装置36及び圧縮機39に供給する電力が例示される。機械装置11の稼働率は、機械装置11の生産能力に対して、実際にどのくらい目的物(本実施形態ではメタン)を生産できたかを示す指標である。変更部51が変更した第1の変数は、入出力インターフェイス29,33を介して機械装置11の制御装置(図示せず)に入力される。制御装置は機械装置11の機能ユニット21を制御し、目的物を生産する。
【0045】
第2の変数は、ヒーター34,38,42、電解装置36及び圧縮機39の消費電力、温度計35,40,43が検知したヒーター34,38,42による加熱対象の温度、圧縮機39の使用ガス量およびガスの圧力、分圧計37,41,44が検知したガス分圧(濃度)、メタンの生成量、水量計45が検知した水の量が例示される。これらの変数を使って演算した機械装置11の稼働率、圧縮機39の負荷率も第2の変数である。圧縮機39の負荷率は、圧縮機39が使用したガス量に対する圧縮機39が吐出したガス量の割合である。
【0046】
監視装置12は、変更部51により機械装置11に入力する第1の変数を変更して、機械装置11をフィードバック制御する。監視装置12の推定部47は、機械装置11を構成する部品の寿命を推定する寿命推定部48を含む。
【0047】
例えば、圧縮機39は劣化すると加圧能力が低下し、ガスを一定の圧力に高めるときの消費電力が増大する。従って寿命推定部48は、圧縮機39の負荷率および消費電力に基づいて圧縮機39の寿命を推定できる。また、ヒーター34,38,42は劣化すると加熱能力が低下し、加熱対象を一定の温度に加熱するときの消費電力が増大する。従って寿命推定部48は、加熱対象の温度とヒーター34,38,42の消費電力(例えばワット密度)との関係に基づいてヒーター34,38,42の寿命を推定できる。ワット密度はヒーター34,38,42の単位表面積あたりの電力である。
【0048】
生成ユニット25の触媒や回収ユニット24の吸収液が劣化すると、生成されるガスの濃度や精製されるガスの濃度、メタンの生成量が低下したり、メタンを得る過程で生成した水の量が増減したりする。水の量の増減は、機械装置11の内部配管の歪みや損傷によっても生じ得る。従って寿命推定部48は、ガスの濃度や水の量、メタンの生成量に基づいて触媒や吸収液の寿命を推定したり、水の量に基づいて配管の寿命を推定したりできる。
【0049】
寿命推定部48は寿命が到来する部品の情報を変更部51に出力し、変更部51の出力に基づいて発注部52は寿命が到来する部品を発注する。これにより生成装置10を構成する消耗部品などの交換すべき部品の管理を容易にできる。なお、機械装置11の回収ユニット24で使われる吸収液や生成ユニット25で使われる触媒も、生成装置10を構成する部品に含まれる。
【0050】
図6は補助記憶装置31に記憶される情報(部品テーブル53)の一例を示す図である。部品テーブル53は主記憶装置28に記憶されていても良い。発注部52は部品テーブル53を参照し、ネットワーク13(図1参照)を介して、部品テーブル53に記録された部品を自動でセンターに発注できる。センターは部品を販売する小売業者や卸売業者であり部品の注文先である。
【0051】
部品テーブル53は、部品の識別情報(部品ID)、部品の注文先であるセンターの識別情報(センターID)及びセンター情報、部品を製造するメーカー情報を含む。メーカー情報は、部品IDにより特定される部品を製造する製造業者に関する情報であり、センターがメーカーに部品を発注してから部品を入荷するまでにかかる時間であるリードタイム、及び、メーカーの休配日に関する情報を含む。センター情報は、センターの休配日に関する情報、及び、センターの倉庫にある部品の数量である在庫数の情報を含む。部品テーブル53のメーカー情報やセンター情報は、メーカーやセンターが入力できる。
【0052】
図5に戻って説明する。発注部52は、部品を交換するときまでに機械装置11の設置場所に部品が入荷されるように、部品テーブル53(図6参照)に記録されたセンターの在庫やリードタイムから逆算して、部品をセンターに発注する。発注部52は、出力装置32(図4参照)に発注を促す出力(発音や画像の表示など)をしても良い。出力を確認したオペレータはセンターに部品を発注できる。
【0053】
寿命推定部48は、変数取得部46が取得した第1の変数および第2の変数に基づいて報酬を計算する報酬計算部49、及び、報酬計算部49が計算した報酬に基づいて、劣化に伴う部品交換の間隔の最適値を決定する関数を更新する価値関数更新部50を含む。
【0054】
機械装置11を構成する部品のうち劣化した部品を新しい部品に交換することにより、機械装置11の消費電力を低減したり機械装置11が生成する目的物の品質を高めたりできる。また目的物の生産量を多くできる場合もある。従って部品を新しいものに交換すれば、劣化した部品を含む機械装置11を使って目的物を生産する場合に比べ、目的物の生産コストを低減できる。
【0055】
一方、部品の交換は機械装置11を停止した状態で行うので、部品の交換の頻度が高い(交換の間隔が短い)と機械装置11の停止時間が長くなり、機械装置11の稼働率は低下する。さらに部品の交換の頻度が高いと、部品の交換に要するコストが増加するので、生産コストが上昇する。これらを考え合わせて部品交換の最適な間隔を選択する必要がある。
【0056】
そこで報酬計算部49は、例えば、部品交換の間隔の短縮、加熱対象の実際の温度と予測値との差の拡大、ヒーターの実際の消費電力と予測値との差の拡大、ガスの実際の濃度と予測値との差の拡大、圧縮機の実際の負荷率と予測値との差の拡大、実際の水の量と予測値との差の拡大、実際の目的物の生成量と予測値との差の拡大、機械装置11の稼働率の低下に基づいて小さい報酬を与える。
【0057】
逆に報酬計算部49は、部品交換の間隔の延長、加熱対象の実際の温度と予測値との差の縮小、ヒーターの実際の消費電力と予測値との差の縮小、ガスの実際の濃度と予測値との差の縮小、圧縮機の実際の負荷率と予測値との差の縮小、実際の水の量と予測値との差の縮小、実際の目的物の生成量と予測値との差の縮小、機械装置11の稼働率の上昇に基づいて大きい報酬を与える。
【0058】
価値関数更新部50は、報酬計算部49が計算した報酬に基づいて、部品を交換する行動価値テーブル(価値関数)を更新する。価値関数は、主記憶装置28や補助記憶装置31に記憶されている。
【0059】
推定部47は、監視装置12に入力されるデータの集合から、その中にある有用な規則や知識表現、判断基準などを解析により抽出し、その判断結果を出力すると共に、知識の学習(機械学習)を行う機能を有することができる。機械学習の手法は様々あるが、大別すれば、教師あり学習、教師なし学習、強化学習に分けられる。さらに、これらの手法を実現するうえで特徴量そのものの抽出を学習する深層学習とよばれる手法がある。機械学習はGPGPU(General Purpose computing with Graphic Processing Unit)や大規模PCクラスター等を適用することにより実現できる。以下、強化学習を例示して説明するが、これに限られるものではない。
【0060】
強化学習は、次のように問題設定する。生成装置10は環境の状態を検知し行動(部品の交換)を決定する。環境は何らかの規則に従って変化し、さらに自分の行動が環境に変化を与えることもある。行動するたびに報酬信号が返ってくる。最大化したいのは将来にわたっての報酬の合計である。行動が引き起こす結果を全く知らない、又は、結果を不完全にしか知らない状態から学習は始まる。すなわち生成装置10は、実際に行動して初めて、その結果をデータとして得ることができる。つまり、試行錯誤しながら最適な行動を探索する。人間の動作をまねるように、事前学習(教師あり学習や逆強化学習など)した状態を初期状態として、良いスタート地点から学習を始めても良い。
【0061】
強化学習は、判定や分類だけでなく行動を学習することにより、環境に行動が与える相互作用を踏まえて最適な行動を学ぶ、すなわち将来的に得られる報酬を最大にするための方法を学ぶ。このことは、機械装置11を構成する部品を交換したことにより、生成ユニット25の状態量(目的物の濃度、水の量など)が決まるといった、未来に影響を及ぼすような行動を獲得できることを表している。強化学習での価値関数の近似アルゴリズムとして、ニューラルネットワークを用いることができる。
【0062】
図7はニューロンのモデルを模式的に示す図である。ニューロンは複数の入力xに対する出力(結果)yを出力する。各入力x(x1,x2,x3)には、入力xに対応する重みw(w1,w2,w3)が乗じられる。入力x、結果y及び重みwは全てベクトルである。
【0063】
図8はニューロンを組み合わせて構成したニューラルネットワーク54を模式的に示す図である。ニューラルネットワーク54は、ニューロンのモデルを模した演算装置およびメモリ等を含む。本実施形態では3層のニューラルネットワーク54を説明するが、これに限られるものではない。3層以上に層を増やすことは当然可能である。
【0064】
ニューラルネットワーク54は、複数の入力x(本実施形態ではx1,x2,x3)に対応する重みW1,W2,W3を順に乗じ、結果y(本実施形態ではy1,y2,y3)を出力する。重みW1,W2,W3は誤差逆伝搬法により学習可能である。
【0065】
ニューラルネットワーク54の動作には学習モードと予測モードとがある。例えば学習モードにおいて学習データセットを用いて重みWを学習し、そのパラメータを用いて予測モードにおいて行動判断を行う。予測モードでは、検出、分類、推論など多様なタスクが可能である。ニューラルネットワーク54は、予測モードで実際に生成装置10を動かして得られたデータを即時学習し、次の行動に反映できる(オンライン学習)。また、予め収集したデータ群を用いてまとめて学習を行い、以後はそのパラメータを用いて予測モードを実行しても良い(バッチ学習)。あるいはオンライン学習とバッチ学習の中間の状態であって、予測モードを実行して、ある程度データがたまるたびに学習モードを実行することも可能である。
【0066】
図9(a)から図9(e)は推定部47の動作の一例を説明するための図である。各図において、横軸に部品交換の間隔をとり、縦軸に各部品のパラメータをとる。横軸は値が大きいほど(右にいくほど)部品交換の間隔が長いことを意味し、縦軸は値が小さいほど(下にいくほど)稼働率が低い、又は、部品が劣化していることを意味する。
【0067】
図9(a)は部品の交換の間隔と機械装置11の稼働率との相関を模式的に示す図である。部品交換の間隔を延長すると、機械装置11の稼働時間が長くなるので、機械装置11の稼働率は上昇する。一方、部品交換の間隔を短縮すると、機械装置11の稼働時間が短くなるので、機械装置11の稼働率は低下する。
【0068】
図9(b)はヒーター34,38,42の交換の間隔とワット密度との相関を模式的に示す図である。ヒーター34,38,42の交換の間隔を延長すると、ヒーター34,38,42は経時的に劣化する。一方、ヒーター34,38,42の交換の間隔を短縮すると、ヒーター34,38,42は消費電力が予測値とほぼ同等の状態が維持される。
【0069】
図9(c)は圧縮機39の部品の交換の間隔と圧縮機39の負荷率との相関を模式的に示す図である。圧縮機39の部品の交換の間隔を延長すると、圧縮機39は経時的に劣化する。一方、圧縮機39の部品の交換の間隔を短縮すると、圧縮機39は負荷率が予測値とほぼ同等の状態が維持される。
【0070】
図9(d)は部品の交換の間隔と目的物のガス分圧(濃度)との相関を模式的に示す図である。部品の交換の間隔を延長すると、目的物のガス分圧は経時的に低下する(目的物の実際のガス分圧と予測値との差がしだいに拡大する)。一方、部品の交換の間隔を短縮すると、目的物のガス分圧が予測値とほぼ同等の状態が維持される。
【0071】
図9(e)は部品の交換の間隔と目的物を得る過程で生成される水の量との相関を模式的に示す図である。部品の交換の間隔を延長すると、目的物を得る過程で生成される水の量は予測値との差が大きくなる。一方、部品の交換の間隔を短縮すると、水の量が予測値とほぼ同等の状態が維持される。
【0072】
図10(a)は機械装置11の稼働率と目的物のガス分圧(濃度)との関係を示す。図10(a)における2つのグラフの交点は、推定部47により求める部品交換の適切な間隔を示す。図10(b)はその関係を報酬に変換した模式的な図である。推定部47は、種々の報酬を積算し、積算された報酬が最大となるように学習し、種々の部品の最適な交換の間隔を求める。部品を交換する時点が、部品の寿命が尽きたときである。
【0073】
図11は監視装置12の動作の一例を示すフローチャートである。監視装置12は、まず行動価値テーブル55(図12参照)に基づいて部品交換の間隔を決定し(S1)、機械装置11の稼働率を判定して(S2)、報酬を決める(S3-S5)。例えば機械装置11の稼働率が低い場合には報酬を0とし(S3)、機械装置11の稼働率が中程度の場合には+5の報酬を出力し(S4)、機械装置11の稼働率が高い場合には+10の報酬を出力する(S5)。出力された報酬は、これまでの報酬に積算する(S6)。
【0074】
次に目的物の実際のガス分圧と予測値とを比較し(S7)、報酬を決める(S8-S10)。例えば目的物の実際のガス分圧と予測値との差が大きい場合には-10の報酬を出力し(S8)、実際のガス分圧と予測値との差が中程度の場合には-6の報酬を出力し(S9)、実際のガス分圧と予測値との差が小さい場合には+10の報酬を出力する(S10)。出力された報酬は、これまでの報酬に積算し(S11)、報酬の積算値に基づいて行動価値テーブル55を更新する(S12)。
【0075】
S1-S12の処理は監視装置12の電源が投入されている間、繰り返し実行される。S3-S5,S8-S10の報酬の値は一例であり、適宜変更できる。また、S2-S6の処理とS7-S11の処理とを並列に実行することは当然可能である。
【0076】
図12は行動価値テーブル55の一例を示す図である。行動価値テーブル55にはNo.1-18のパターンが記されている。No.1-6は機械装置11の稼働率が高い場合であり(報酬は+10)、No.7-12は機械装置11の稼働率が中程度の場合であり(報酬は+5)、No.13-18は機械装置11の稼働率が低い場合の例である(報酬は0)。No.1-18において、部品交換の間隔の短縮を選択した場合は、機械装置11の稼働率に係る報酬を1ランク下げると共に、目的物のガス分圧に係る報酬を1ランク上げるものとし、部品交換の間隔の延長を選択した場合は、機械装置11の稼働率に係る報酬を1ランク上げ、目的物のガス分圧に係る報酬は変えないものとする。
【0077】
No.9,10を例示して説明すると、機械装置11の稼働率が中程度であり(報酬は+5)、目的物の実際のガス分圧と予測値との差が中程度のとき(報酬は+6)が記されている。いずれも今の状態の報酬の積算値は+11である。このときに部品交換の間隔の短縮を選択すると、稼働率に係る報酬は1ランク下がって0の報酬が出力され、目的物のガス分圧に係る報酬は1ランク上がって+10の報酬が出力されるので、次の状態の報酬は+10が出力される。次の状態の報酬から今の状態の報酬を減じた値(+10-11=-1)は部品交換の間隔の短縮を選択した行動価値である。
【0078】
一方、部品交換の間隔の延長を選択すると、稼働率に係る報酬は1ランク上がって+10の報酬が出力され、目的物のガス分圧に係る報酬は変わらないので+6の報酬が出力される。従って次の状態の報酬は+16が出力される。次の状態の報酬から今の状態の報酬を減じた値(+16-11=+5)は部品交換の間隔の延長を選択した行動価値である。
【0079】
部品交換の間隔の短縮を選択した行動価値(-1)と部品交換の間隔の延長を選択した行動価値(+5)とを比較すると、部品交換の間隔の延長を選択した行動価値の方が高いので、生成装置10は部品交換の間隔の延長を選択することになる。以上のようにして生成装置10は機械装置11を構成する部品の最適な交換時期を求め、機械装置11を適切にメンテナンスできるので、機械装置11の稼働率を最適化できる。但し、これらは一例なので、行動の選択や報酬の設定は様々な変形および変更が可能である。行動価値テーブル55も一例であり、様々な変形および変更が可能である。
【0080】
また、生成装置10によれば、推定部47は変数取得部46が取得した第1の変数および第2の変数に基づき機械装置11の状態を推定するので、即時に機械装置11の状態を監視できる。さらに、推定部47は機械装置11を構成する部品の寿命を推定する寿命推定部48を含むので、推定した部品の寿命に応じて、消耗部品などの交換すべき部品を準備できる。部品を適切に交換できるので、部品の劣化が原因で、機械装置11の稼働率が異常に低下したり稼働できなくなったりすることを未然に防ぐことができる。
【0081】
生成装置10の変数取得部46が取得する第2の変数は、圧縮機39の負荷率、目的物の濃度(ガス分圧)、目的物の生成量、及び、目的物を得る過程で生成される水の量の少なくとも1種の特定変数を含む。寿命推定部48は、第1の変数および特定変数に基づき部品の寿命を推定するので、部品の寿命を推定する精度を向上できる。なお、生成装置10がメタンや合成ガス等の中間体を経て目的物を生成する場合には、中間体の濃度、中間体の生成量の少なくとも1種を特定変数に含めることができる。
【0082】
寿命推定部48は、特定変数と部品の寿命とを関連付ける機械学習が施された学習済みのニューラルネットワーク54を含むので、部品の交換時期を最適化し、生成装置10の稼働率を向上できる。また、変更部51は推定部47の出力に基づき機械装置11に入力する第1の変数を変更するので、機械装置11を構成する部品の寿命を向上させつつ機械装置11の稼働率を向上できる。
【0083】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。
【0084】
実施形態では、電源ユニット22以外に、電解ユニット23、回収ユニット24及び生成ユニット25からなる機能ユニット21を含む機械装置11について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。機械装置11が果たす役割に応じて種々の機能ユニット21を配置し、他の役割を果たす機械装置11にすることは当然可能である。他の機械装置11としては、水を原料として水素や酸素を製造するモジュール、排ガスから二酸化炭素を精製するモジュール、二酸化炭素と水素から合成ガス、メタノール、エタノール等の中間体を製造し、中間体から軽油やガソリン等の燃料、BTX、DME、ブタジエン、化成品などを製造するモジュールが例示される。
【0085】
実施形態では、部品を交換する間隔の変更という行動によって更新された状態(機械装置11の稼働率、及び、目的物の実際のガス分圧と予測値との差)と報酬とを生成装置10にフィードバックする場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。機械装置11の稼働率や目的物の実際のガス分圧と予測値との差に代えて、又は、機械装置11の稼働率や目的物の実際のガス分圧と予測値との差に加えて、加熱対象の実際の温度と予測値との差、ヒーターの実際の消費電力と予測値との差、中間体の実際の濃度(ガス分圧)と予測値との差、目的物の実際の生成量と予測値との差、中間体の実際の生成量と予測値との差、圧縮機の実際の負荷率と予測値との差、目的物の生成に伴って生じる水の量と予測値との差などの1以上に報酬を与え、生成装置10にフィードバックすることは当然可能である。
【0086】
実施形態では、経験からの学習により自動で改善するアルゴリズム(機械学習)を推定部47が利用する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。機械装置11の稼働率、目的物の実際のガス分圧と予測値との差、目的物の実際の生成量と予測値との差、中間体の実際のガス分圧と予測値との差、中間体の実際の生成量と予測値との差、加熱対象の実際の温度と予測値との差、ヒーターの実際の消費電力と予測値との差、圧縮機の実際の負荷率と予測値との差、目的物の生成に伴って生じる水の量と予測値との差などのいずれか1以上と、部品を交換する間隔の変更と、の間の相関を予め求め、それに基づいて機械装置11を制御したり機械装置11を構成する部品の寿命を推定したりすることは当然可能である。
【0087】
実施形態では、最大4つの機能ユニット21を搭載できる輸送コンテナ15に、4つの機能ユニット21を搭載する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。輸送コンテナ15に搭載される機能ユニット21の数は、機械装置11の目的に応じて適宜設定される。輸送コンテナ15を5つ以上の機能ユニット21が搭載できるようにしても良いし、輸送コンテナ15の中に空席があっても構わない。
【0088】
本開示は、以下の形態としても実現することが可能である。
【0089】
[適用例1]
液体および気体の少なくとも1種の原料から化学反応または精製により目的物を得る生成装置であって、前記生成装置に入力された第1の変数と、前記原料から前記目的物を得る過程で生成される中間体および前記目的物に関する少なくとも1つの状態変数を含む第2の変数と、を取得する変数取得部と、前記変数取得部が取得した前記第1の変数および前記第2の変数に基づき前記生成装置の状態を推定する推定部と、を備える生成装置。
【0090】
[適用例2]
前記推定部は、前記生成装置を構成する部品の寿命を推定する寿命推定部を含む適用例1記載の生成装置。
【0091】
[適用例3]
前記第2の変数は、前記気体を圧縮する圧縮機の負荷率、前記中間体の濃度、前記中間体の生成量、前記目的物の濃度、前記目的物の生成量、及び、前記目的物を得る過程で生成される水の量の少なくとも1種の特定変数を含み、前記寿命推定部は、前記第1の変数および前記特定変数に基づき前記部品の寿命を推定する適用例2記載の生成装置。
【0092】
[適用例4]
前記寿命推定部は、前記特定変数と前記部品の寿命とを関連付ける機械学習が施された学習済みのニューラルネットワークを含む適用例3記載の生成装置。
【0093】
[適用例5]
前記寿命推定部の出力に基づき寿命が到来する前記部品を発注する発注部をさらに備える適用例2から4のいずれかに記載の生成装置。
【0094】
[適用例6]
前記推定部の出力に基づき前記生成装置に入力する前記第1の変数を変更する変更部をさらに備える適用例1から5のいずれかに記載の生成装置。
【符号の説明】
【0095】
10 生成装置
39 圧縮機
46 変数取得部
47 推定部
48 寿命推定部
51 変更部
52 発注部
54 ニューラルネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12