(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164228
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】印刷インキセット、印刷物、及び包装材料
(51)【国際特許分類】
C09D 11/02 20140101AFI20231102BHJP
【FI】
C09D11/02
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022095094
(22)【出願日】2022-06-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2022075272
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】坂本 昌平
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AD01
4J039AD03
4J039AD09
4J039AE04
4J039AE06
4J039BC07
4J039BC16
4J039BC50
4J039BC51
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE22
4J039EA15
4J039EA17
4J039EA35
4J039EA42
4J039FA01
4J039FA02
4J039GA03
4J039GA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】耐光性に優れ、優れた色再現性を有する、印刷インキセットを提供する。
【解決手段】式(1)で表されるイソインドリン化合物又はC.I.ピグメントイエロー180と分散媒体とを含むイエローインキ、フタロシアニン顔料と分散媒体とを含むシアンインキ、C.I.ピグメントレッド122と分散媒体とを含むマゼンタインキA、及びC.I.ピグメントバイオレット19と分散媒体とを含むマゼンタインキBを備えた印刷インキセット。式中、R
1~R
4は、独立して、水素原子、アルキル基、アルコキシ基を表す。R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。X
1は-O-又は-NH-を表し、R
7は水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるイソインドリン化合物又はC.I.ピグメントイエロー180と分散媒体とを含むイエローインキ、
フタロシアニン顔料と分散媒体とを含むシアンインキ、
C.I.ピグメントレッド122と分散媒体とを含むマゼンタインキA、及び
C.I.ピグメントバイオレット19と分散媒体とを含むマゼンタインキBを備えた、印刷インキセット。
【化1】
[一般式(1)中、R
1~R
4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表す。R
5及びR
6は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。X
1は-O-又は-NH-を表し、R
7は水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。]
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるイソインドリン化合物が、下記式(4)及び(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、請求項1に記載の印刷インキセット。
【化2】
【請求項3】
グラビア印刷用に使用される、請求項1に記載の印刷インキセット。
【請求項4】
フレキソ印刷用に使用される、請求項1に記載の印刷インキセット。
【請求項5】
基材と、請求項1~4のいずれか1項に記載の印刷インキセットから形成された印刷層とを有する、印刷物。
【請求項6】
請求項5に記載の印刷物を備えた包装材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、少なくとも3原色の印刷インキを備えた印刷インキセット、印刷物、及び包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷インキは、主材として顔料と分散媒体とを含み、各種プラスチック及び紙等の基材に印刷層を形成するために用いられる。印刷インキは、その印刷方式、又は用途の観点から大別される。例えば、印刷方法の観点からは、オフセット印刷用インキ、フレキソ印刷用インキ、グラビア印刷用インキ、及びシルクスクリーン印刷用インキが挙げられる。
また、印刷インキは、各種用途に合わせて構成され、分散媒体の形態に応じて大別することもできる。例えば、分散媒体として樹脂を含む無溶剤系(活性エネルギー線硬化性)印刷インキ、及び分散媒体として有機溶剤を含む溶剤系印刷インキが挙げられる。さらに、分散媒体として樹脂及び水を含む水性印刷インキが挙げられる。
【0003】
このように印刷インキは、様々な印刷方法で使用され、また様々な形態で構成される。印刷インキの用途としては、印刷物、及び印刷物を用いた包装材料が挙げられる。印刷物としては、例えば、ポスター、ラベル、及び薬箱など、基材上に印刷層を形成したものが挙げられる。また、包装材料としては、例えば、食料品、飲料品、生活用品、文化用品、及び電子部品等の物品を包装するための包装材料が挙げられる。
印刷物及び包装材料の用途で使用される印刷インキには、少なくとも色再現性が求められる。しかし、近年、印刷物及び包装材料の用途拡大は著しく、印刷物及び包装材料の使用形態は多岐にわたる。そのため、印刷物及び包装材料の用途に使用される印刷インキに対しても、様々な性能が要求されている。
【0004】
例えば、包装材料については、内容物の品質保持機能、及び輸送の効率化等に加えて、内容物の製品情報を適切に表示する機能が求められる。製品情報を適切に表示するために、包装材料には、装飾、美感の付与、内容物、賞味期限、製造者又は販売者の表示等を目的とした印刷層が形成されている。このような印刷層による表示は、物流関係者及び消費者にとって非常に重要な情報である。製品情報として、ブランドマーク又はブランドカラーが使用されることもあり、この場合、美感の付与も含めて、印刷物及び包装材料には高い意匠性が求められる。したがって、印刷物及び包装材料の用途で好適に使用できる色再現性を有する印刷インキが必要となる。
【0005】
また、例えば、印刷物又は包装材料が屋外で使用される場合、日光による変色又は退色が起こる問題が生じることがある。さらに、包装材料及び包装物は、長期にわたって光照射下で保存される場合がある。このような保存条件下においても、退色が起こり、企図された包装の外見から乖離してしまう問題が生じることがある。また、包装材料の用途では、保存時の光照射によって発生するラジカルの影響で、印刷層の凝集力低下又は密着力低下が発生し、ラミネート強度が低下する場合がある。その結果、光照射下で長期保存された包装物及び包装材料を開封する際に、積層体の相間剥離が発生する問題が生じることもある。
【0006】
このような観点から、印刷物又は包装材料の用途で使用する印刷インキは、優れた色再現性に加えて、耐候性、及び耐光性といった耐久性に優れることが望ましい。特に、保存時の光照射については、照射の光源として、従来は太陽光又は蛍光灯が一般的であったが、近年は屋内照射に白色LEDが使用されることが非常に増えている。そのため、印刷インキには、従来とは異なる耐光性などの耐久性が求められる場合もある。
【0007】
上述のように、印刷インキの性能として、代表的に、優れた色再現性と、耐候性、及び耐光性などの耐久性が求められており、様々な検討が進められている。
例えば、包装材料に耐光性を付与する方法が検討されている。例えば、特許文献1では、特定の顔料とポリウレタン樹脂とを含む印刷インキを使用し、耐光性に優れた包装材料を提供できることを開示している。また、特許文献2では、紫外線吸収剤又は光安定化剤を一定量添加した印刷インキを使用し、光照射による塗膜の劣化が抑制され、耐光性に優れた包装材料を提供できることを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2012-136582号公報
【特許文献2】特開2006-70190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1に記載の方法のように、特定の顔料を含む印刷インキを使用した場合、包装材料に用いられる代表的な印刷インキと比較して再現可能な色域が低下し、所望とする意匠性を得ることは難しい傾向がある。また、特許文献2の方法では、使用する紫外線吸収剤又は光安定化剤が高価であるため、印刷インキの製造コストが高くなる。さらに、印刷インキ中に紫外線吸収剤又は光安定化剤を添加した場合、インキの経時安定性が低下してゲル化が生じる場合もある。
このように、色再現性に優れ、かつ耐候性、及び耐光性といった耐久性に優れる印刷インキの実現に向けて、さらなる検討が望まれている。また、包装材料のように高度な意匠性が求められる用途に向けて、より広い色域を再現でき、かつ経時による色変化が少ない、印刷インキセットに対するニーズもある。
【0010】
そこで、上述の状況に鑑み、本発明は、耐光性に優れ、優れた色再現性を有する、印刷インキセットを提供する。また、本発明は、上記印刷インキセットを使用して、意匠性に優れ、かつ耐光性、及び印刷層の接着性に優れる印刷物、及び包装材料を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態は以下に関する。ただし、本発明の実施形態は以下に限定されず、様々な実施形態を含む。
[1]下記一般式(1)で表されるイソインドリン化合物又はC.I.ピグメントイエロー180と分散媒体とを含むイエローインキ、
フタロシアニン顔料と分散媒体とを含むシアンインキ、
C.I.ピグメントレッド122と分散媒体とを含むマゼンタインキA、及び
C.I.ピグメントバイオレット19と分散媒体とを含むマゼンタインキBを備えた、印刷インキセット。
【0012】
【0013】
一般式(1)中、R1~R4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表す。R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。X1は-O-又は-NH-を表し、R7は水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
【0014】
[2]上記一般式(1)で表されるイソインドリン化合物が、下記式(4)及び(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含む、上記[1]に記載の印刷インキセット。
【0015】
【0016】
[3]グラビア印刷用に使用される、上記[1]又は[2]に記載の印刷インキセット。
【0017】
[4]フレキソ印刷用に使用される、上記[1]又は[2]に記載の印刷インキセット。
【0018】
[5]基材と、上記[1]~[4]のいずれか1つに記載の印刷インキセットから形成された印刷層とを有する、印刷物。
【0019】
[6]上記[5]に記載の印刷物を備えた包装材料。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、従来の印刷インキと同等又はそれ以上の色域を有し、耐光性に優れ、高い色再現性を有する印刷インキセットを提供することができる。また、上記印刷インキセットを使用して、意匠性に優れ、かつ耐光性に優れる印刷物、及び包装材料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
まず、本明細書で使用する用語を定義する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル」と表記した場合、特に説明がない限り、それぞれ、「アクリロイル及び/又はメタクリロイル」、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。同様に、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、又は「(メタ)アクリルアミド」と標記した場合、それぞれ、「アクリル酸及び/又はメタクリル酸」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」、又は「アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド」を意味する。
また、「C.I.」は、カラーインデックス(C.I.)を意味する。
本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。
本明細書中に記載する各種成分は、特に注釈しない限り、それぞれ独立に、1種を単独で、あるいは2種以上を組合せて用いてもよい。
【0022】
なお、顔料の平均一次粒子径は、透過型(TEM)電子顕微鏡を使用して、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測した値である。これは、後述する実施例の項に記載する方法にしたがって測定することができる。
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。但し、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、様々な実施形態を含む。
<印刷インキセット>
本発明の一実施形態は、少なくとも3原色の印刷インキを備えた印刷インキセットに関する。上記印刷インキセットは、一般式(1)で表されるイソインドリン化合物又はC.I.ピグメントイエロー180と分散媒体とを含むイエローインキ、フタロシアニン顔料と分散媒体とを含むシアンインキ、C.I.ピグメントレッド122と分散媒体とを含むマゼンタインキA、及びC.I.ピグメントバイオレット19と分散媒体とを含むマゼンタインキB、を備える。
【0024】
一実施形態において、印刷インキセットは、上記4つの印刷インキに加えて、墨インキ(ブラックインキ)、白インキ(ホワイトインキ)、特色インキ等の、その他インキをさらに備えてもよい。
【0025】
本実施形態の印刷インキセットは、様々な印刷方法に適用することができる。印刷インキセットは、例えば、オフセット印刷用インキ、フレキソ印刷用インキ、グラビア印刷用インキ、スクリーン印刷用インキ等の印刷インキセットとして使用できる。なかでも、グラビア印刷用の印刷インキセット(以下、グラビア印刷インキセットともいう)、及びフレキソ印刷用の印刷インキセット(以下、フレキソ印刷インキセットともいう)が好ましく、これらは包装材料の用途に好適に使用することができる。
【0026】
以下、本実施形態の印刷インキセットにおける各色のインキについて説明する。
<イエローインキ>
印刷インキセットにおけるイエローインキは、下記一般式(1)で表されるイソインドリン化合物、又はC.I.ピグメントイエロー180と、後述する分散媒体とを含む。
【0027】
[イソインドリン化合物(1)]
以下、一般式(1)で表されるイソインドリン化合物を、イソインドリン化合物(1)という。
【0028】
【0029】
一般式(1)中、R1~R4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表す。R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。X1は-O-又は-NH-を表し、R7は水素原子、アルキル基、又はアリール基を表す。
【0030】
イソインドリン化合物(1)は、単独で、又は2種類以上を組合せて使用できる。
【0031】
一般式(1)中、R1~R4におけるアルキル基(-R)の炭素数は、1~20が好ましく、1~10がより好ましく、1~4がさらに好ましく、1~3がさらに好ましい。炭素数1又は2のアルキル基が最も好ましい。
アルキル基は、直鎖構造、分岐構造、単環構造、又は縮合多環構造のいずれであってもよい。
アルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、2-エチルヘキシル基、2-ヘキシルドデシル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アダマンチル基、ノルボルニル基、ボロニル基、又は4-デシルシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0032】
上記アルキル基は、少なくとも1つの水素原子が、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基、スルホ基、スルファニル基、スルファモイル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基などの他の置換基で置換されてもよい。また、置換基は複数存在していてもよい。なお、置換基は上記に限定されるものではない。
【0033】
上記アルキル基は、2以上のアルキル基(但し、一方はアルキレン基となる)が連結基を介して互いに結合した構造を有してもよい。連結基の具体例として、エステル結合(-COO-)、エーテル結合(-O-)、スルフィド結合(-S-)が挙げられる。すなわち、本明細書において、アルキル基は、例えば、「-R’-O-R」で表される基が挙げられる(R’は上記アルキル基から水素原子を1つ除いた原子団を表す)。具体例として、-C2H4-O-C2H5が挙げられる。
【0034】
一般式(1)中、R1~R4におけるアルコキシ基は、上述のアルキル基(-R)に酸素原子が結合した基(-OR)である。
【0035】
一般式(1)中、R5~R7におけるアルキル基(-R)は、R1~R4におけるアルキル基と同様である。
【0036】
一般式(1)中、R7におけるアリール基(-Ar)は、芳香族炭化水素から水素原子を1つ除いた原子団である。炭素数は6~30が好ましく、6~20がより好ましい。
上記アリール基は、例えば、フェニル基、トリル基、ビフェニリル基、ターフェニリル基、クオーターフェニリル基、ペンタレニル基、インデニル基、ナフチル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、クオーターナフタレニル基、アズレニル基、ヘプタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセフェナントリレニル基、アセアントリレニル基、フェナレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、クオーターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、ピレニル基、クリセニル基、ナフタセニル基、プレイアデニル基、ピセニル基、ペリレニル基、ペンタフェニル基、ペンタセニル基、テトラフェニレニル基、ヘキサフェニル基、ヘキサセニル基、ルビセニル基、コロネニル基、トリナフチレニル基、ヘプタフェニル基、ヘプタセニル基、ピラントレニル基、又はオバレニル基等が挙げられる。これらのなかでも、フェニル基及びトリル基が好ましい。
【0037】
上記アリール基は、少なくとも1つの水素原子がハロゲン原子、ヒドロキシル基、アルコキシ基、カルボキシル基、エステル基、スルホ基、スルファニル基、スルファモイル基、アミノ基、アルキルアミノ基、アミド基などの他の置換基で置換されてもよい。また、置換基は複数有していてもよい。なお、置換基は上記に限定されるものではない。
【0038】
一般式(1)中、X1は、-O-又は-NH-を表しており、好ましくは-NH-である。
【0039】
一般式(1)で表されるイソインドリン化合物は、下記式(4)及び(5)からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
【0040】
【0041】
式(4)で表されるイソインドリン化合物(以下、イソインドリン化合物(4))、又は式(5)で表されるイソインドリン化合物(以下、イソインドリン化合物(5))を使用することで、より高い色再現性と耐光性とを両立できる。
【0042】
[イソインドリン化合物(1)の製造方法]
イソインドリン化合物(1)は、下記スキーム1に示すように、式(6)で表される1,3-ジイミノイソインドリン(以下、化合物(6)という)を出発原料として合成できる。
以下、イソインドリン化合物(1)の具体例に沿って、合成方法を説明する。以下の説明では、各式で記載した番号を化合物の番号として記載する。
【0043】
【0044】
スキーム1-1は、アンモニア水溶液の存在下で、化合物(6)と、化合物(7)とを反応させる第一工程(S1);次いで、酢酸の存在下で、化合物(8)と、化合物(9)と反応させる第二工程(S2)を含んでよい。
スキーム1-1の第一工程(S1)において、アンモニア水溶液の使用量は、28%アンモニア水溶液を用いる場合、化合物(6)の100質量部に対して、1~20倍の量が好ましく、1~5倍の量がより好ましい。
スキーム1-1における各工程での反応温度は、10~100℃程度が好ましい。
【0045】
イソインドリン化合物(1)の置換基R1とR4の関係、置換基R2とR3の関係、又は置換基R5とR6の関係が非対称となる場合、最終生成物は、異性体を含む混合物として得られる。イソインドリン化合物(1)は、異性体を含む混合物、及びそれぞれ単一の化合物のいずれであってもよい。
【0046】
イソインドリン化合物(1)は、公知の方法で整粒化処理や表面処理を行うことで、顔料を調製することが好ましい。例えば、アシッドペースティングに代表される溶解析出法やソルベントソルトミリング、ドライミリング等が挙げられる。
【0047】
[C.I.ピグメントイエロー180]
C.I.ピグメントイエロー180は、下記式(10)で示される化合物からなる顔料であり、公知の方法により製造される。
【0048】
【0049】
C.I.ピグメントイエロー180の平均一次粒子径は、70~250nmが好ましく、100~200nmがより好ましい。平均一次粒子径が250nm以下であることで、透明性が向上し、高い色再現性を得ることができる。また、平均一次粒子径が70nm以上であることで、より耐光性が向上する。
【0050】
イエローインキは、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、上記顔料以外の黄色顔料(以下、その他の黄色顔料という)、樹脂、有機溶剤、顔料分散剤、及びその他の添加剤等を含有してもよい。
【0051】
その他の黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー174等が挙げられる。また、下記一般式(2-1)及び(2-2)で表されるイソインドリン化合物も挙げられる。ただし、耐光性又は再現色域が低下する恐れがあるため、これらその他の黄色顔料の使用は最小限にとどめた方がよい。
【0052】
イエローインキに含まれる顔料中、イソインドリン化合物(1)及びC.I.ピグメントイエロー180の含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらにより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。イソインドリン化合物(1)及びC.I.ピグメントイエロー180を両方含む場合には、合計が、上記範囲であることが好ましい。
【0053】
【0054】
一般式(2-1)中、R11~R14は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、又はアルコキシ基を表す。R15~R18は、それぞれ独立して、水素原子、又はアルキル基を表す。
また、一般式(2-2)中、R19は、置換基を有してもよいアルキル基を表す。
【0055】
上式(2-1)中、R11~R14におけるアルキル基(-R)、アルコキシ基は、式(1)中のR1~R4におけるアルキル基、アルコキシ基と同様である。また、上式(2-1)中、R15~R18におけるアルキル基(-R)は、式(1)中のR5~R6におけるアルキル基と同様である。
また、上式(2-2)中、R19におけるアルキル基(-R)は、式(1)中のR1~R4におけるアルキル基と同様であり、置換基についても同様である。
【0056】
<シアンインキ>
印刷インキセットにおけるシアンインキは、フタロシアニン顔料と、後述する分散媒体とを含む。
【0057】
[フタロシアニン顔料]
フタロシアニン顔料は、下記一般式(3)で示される化合物からなる顔料であり、公知の方法により製造することができる。
【0058】
【0059】
一般式(3)中、R101~R116は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、並びに、置換基を有してもよい、アルキル基、アリール基、アルコキシル基、及びアリールオキシ基を表す。Mは、2つの水素原子、2つの1価の金属原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、又は酸化金属原子を表す。一実施形態において、フタロシアニン顔料は、金属フタロシアニン顔料であることが好ましい。すなわち、Mは、2つの1価の金属原子、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、又は酸化金属原子であることが好ましい。Mは、2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、又は酸化金属原子であることがより好ましく、2価の金属原子であることがさらに好ましい。
【0060】
アルキル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基、2-エチルヘキシル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、tert-オクチル基、ネオペンチル基等を挙げることができる。アルキル基の炭素数は1~30の範囲内であることが好ましい。
【0061】
上記アルキル基における置換基としては、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、水酸基、アミノ基、ニトロ基、ホルミル基、シアノ基、カルボキシル基等の他、後述するアリール基、シクロアルキル基、複素環基が挙げられる。また、構造の一部が、エステル結合(-COO-)又はエーテル結合(-O-)で置換されたものも置換基として含めるものとする。
【0062】
したがって、置換アルキル基としては、上記の置換基で置換されたアルキル基を意味する。一つ又は二つ以上の置換基で置換されたものであってもよい。例えば、ハロゲン原子で置換されたアルキル基の具体例としては、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、-(CF2)4CF3、-(CF2)5CF3、-(CF2)6CF3、-(CF2)7CF3、-(CF2)8CF3、トリクロロメチル基、2,2-ジブロモエチル基等を挙げることができる。
【0063】
アリール基としては、単環又は縮合多環のアリール基が挙げられる。例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、p-ビフェニル基、m-ビフェニル基、2-アントリル基、9-アントリル基、2-フェナントリル基、3-フェナントリル基、9-フェナントリル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、9-フルオレニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、3-ペリレニル基、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基、4-メチルビフェニル基、ターフェニル基、4-メチル-1-ナフチル基、4-tert-ブチル-1-ナフチル基、4-ナフチル-1-ナフチル基、6-フェニル-2-ナフチル基、10-フェニル-9-アントリル基、スピロフルオレニル基、2-ベンゾシクロブテニル基等が挙げられる。アリール基の炭素数は6~18の範囲内であることが好ましい。置換アリール基の置換基としては、上述したアルキル基における置換基と同じ置換基が挙げられる。
【0064】
アルコキシル基としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシル基が挙げられる。具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ネオペンチルオキシ基、2,3-ジメチル-3-ペンチルオキシ基、n-へキシルオキシ基、n-オクチルオキシ基、ステアリルオキシ基、2-エチルへキシルオキシ基等が挙げられる。アルコキシル基の炭素数は1~6の範囲内であることが好ましい。置換アルコキシル基の置換基としては、上述したアルキル基における置換基と同じ置換基が挙げられる。
【0065】
アリールオキシ基としては、単環又は縮合多環のアリールオキシ基が挙げられる。具体例としては、フェノキシ基、p-メチルフェノキシ基、ナフチルオキシ基、アンスリルオキシ基等が挙げられる。アリールオキシ基は、単環のアリールオキシ基が好ましい。また、炭素数6~12のアリールオキシ基が好ましい。
【0066】
Mの1価の金属原子としては、例えば、Na、K、Li等が挙げられる。
Mの2価の金属原子、3価の置換金属原子、4価の置換金属原子、又は酸化金属原子に含まれる金属原子としては、例えば、周期律表第2族~第15族に属する金属原子が挙げられる。2価の金属原子としては、具体的には、Cu、Zn、Fe、Co、Ni、Ru、Pb、Rh、Pd、Pt、Mn、Sn、Pb、Ca、Mg等が挙げられる。
3価の置換金属原子としては、例えば、Al、Ga、In、Tl、Cr、Mn、Fe、Ru等の金属原子に、ハロゲン原子(-F、-Cl、-Br、-I)、水酸基、置換基を有してもよいアリール基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ホスフィニル基、ホスホニル基等の置換基が結合したものが挙げられる。
4価の置換金属原子としては、例えば、Cr、Si、Zr、Ge、Sn、Ti、Mn等の金属原子に、ハロゲン原子(-F、-Cl、-Br、-I)、水酸基、置換基を有してもよいアリール基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ホスフィニル基、ホスホニル基等の置換基2つが結合したものが挙げられる。
酸化金属原子としては、例えば、VO、MnO、TiO等が挙げられる。
Mは、好ましくはCu、Zn、Fe、Ca、Mg、Al-OH、又はTiOであり、より好ましくはCu、Al-OH、又はTiOであり、さらに好ましくはCuである。
【0067】
一般式(3)のなかでも、MがCuである銅フタロシアニン(化合物(11))、MがAl-OHであるアルミニウムフタロシアニン(化合物(12))、MがTiOであるチタニルフタロシアニン(化合物(13))が好ましい。
【0068】
【0069】
一実施形態において、フタロシアニン顔料として、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16、などが挙げられる。なかでも、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、及びC.I.ピグメントブルー15:6からなる群から選択される少なくとも1種の銅フタロシアニン顔料を含むことが好ましく、C.I.ピグメントブルー15:3、又はC.I.ピグメントブルー15:4を含むことがより好ましい。
【0070】
シアンインキは、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、上記顔料以外の青色顔料(以下、その他の青色顔料という)、樹脂、有機溶剤、顔料分散剤、及びその他の添加剤等を含有できる。
【0071】
その他の青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー60等が挙げられる。
【0072】
シアンインキに含まれる顔料中、フタロシアニン顔料の含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらにより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0073】
本実施形態の印刷インキセットは、マゼンタインキとして、後述するマゼンタインキAと、マゼンタインキBとの2種のマゼンタインキを備えることを特徴とする。
<マゼンタインキA>
本実施形態の印刷インキセットにおけるマゼンタインキAは、C.I.ピグメントレッド122と、後述する分散媒体とを含む。
【0074】
C.I.ピグメントレッド122は、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントバイオレット19等、その他のキナクリドン化合物との混晶であっても構わない。ただし、本発明の効果を最大限に発揮するためには、顔料としてはC.I.ピグメントレッド122単独であることが好ましい。
【0075】
マゼンタインキAに含まれる顔料中、C.I.ピグメントレッド122の含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらにより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0076】
C.I.ピグメントレッド122の平均一次粒子径は、50~150nmが好ましく、60~130nmがより好ましい。平均一次粒子径が150nm以下であることで、透明性が向上し、高い色再現性を得ることができる。また、平均一次粒子径が50nm以上であることで、より耐光性が向上する。
【0077】
<マゼンタインキB>
本実施形態の印刷インキセットにおけるマゼンタインキBは、C.I.ピグメントバイオレット19と、後述する分散媒体とを含む。
【0078】
C.I.ピグメントバイオレット19は結晶多型を有するが、結晶形はγ型であることが好ましい。
【0079】
C.I.ピグメントバイオレット19は、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド209等、その他のキナクリドン化合物との混晶であっても構わない。ただし、本発明の効果を最大限に発揮するためには、顔料としてはC.I.ピグメントバイオレット19単独であることが好ましい。
【0080】
マゼンタインキBに含まれる顔料中、C.I.ピグメントバイオレット19の含有率は、70質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらにより好ましく、95質量%以上であることが特に好ましい。
【0081】
C.I.ピグメントバイオレット19の平均一次粒子径は、30~120nmが好ましく、40~100nmがより好ましい。平均一次粒子径が120nm以下であることで、透明性が向上し、高い色再現性を得ることができる。また、平均一次粒子径が30nm以上であることで、より耐光性が向上する。
【0082】
一実施形態において、マゼンタインキA及びマゼンタインキBは、下記式(A)に基づいて算出される色相角(H°)が、0°以上90°未満であるインキ、又は300°以上360°未満であるインキの組合せであってよい。式(A)において、a*及びb*は、CIE(国際照明委員会)により規定されたL*a*b*表色系におけるa*及びb*を測定して得られた値を表している。
a*及びb*の値は、例えば、分光光度計(商品名:Spectrolino;Gretag Macbeth製)を用いて測定することができる。勿論、a*及びb*の測定に使用する分光光度計は、上記に限られるものではない。
式(A)
a*≧0、b*≧0(第一象現)では、H°=tan-1(b*/a*)
a*≦0、b*≧0(第二象現)では、H°=180+tan-1(b*/a*)
a*≦0、b*≦0(第三象現)では、H°=180+tan-1(b*/a*)
a*≧0、b*≦0(第四象現)では、H°=360+tan-1(b*/a*)
【0083】
また、一実施形態において、マゼンタインキAの色相角(HA°)とマゼンタインキB(HB°)の関係は、以下の基準を満たすことが好ましい。
(1)300≦HA°<360、300≦HB°<360の場合は、HA°<HB°
(2)300≦HA°<360、0≦HB°<90の場合は、HA°>HB°
(3)0≦HA°<90、0≦HB°<90の場合は、HA°<HB°
【0084】
マゼンタインキA及びマゼンタインキBは、それぞれ、本発明の効果を損なわない範囲で、さらに、上記顔料以外の赤色顔料(以下、他の赤色顔料という)、樹脂、有機溶剤、顔料分散剤、及びその他の添加剤等を含有してもよい。
【0085】
その他の赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド174、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド184、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド214、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド221、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド238、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド260、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド269、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントバイオレット19等が挙げられる。ただし、耐光性や再現色域が低下する恐れがあるため、使用は最小限にとどめた方がよい。
【0086】
以下、上記必須顔料以外の成分について説明する。後述する成分は、本実施形態の印刷インキに含まれるか、又は必要に応じて追加できる。
<顔料>
本実施形態の印刷インキセットは、上記顔料以外にも、下記に示す顔料をさらに含んでもよい。追加する顔料としては、上記顔料以外の有機顔料、無機顔料が挙げられる。
【0087】
[有機顔料]
追加する顔料は、有機顔料が好ましい。有機顔料は、例えば、溶性アゾ系、不溶性アゾ系、アゾ系、フタロシアニン系、ハロゲン化フタロシアニン系、アントラキノン系、アンサンスロン系、ジアンスラキノニル系、アンスラピリミジン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、フラバンスロン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリン系、インダンスロン系等が挙げられる。
【0088】
上述した顔料以外の例を、C.I.ピグメントナンバーで示す。
【0089】
紫色顔料は、例えば、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット37等が挙げられる。
【0090】
緑色顔料は、例えば、C.I.ピグメントグリーン7等が挙げられる。
【0091】
橙色顔料は、例えば、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ64等が挙げられる。
【0092】
特色インキとしては、シアン、マゼンタ、イエロー以外の、紫、草、及び朱などのインキが挙げられる。一実施形態において、特色インキは、上記の紫色顔料、緑色顔料、橙色顔料等を含むことが好ましい。
【0093】
[無機顔料]
無機顔料は、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカ、リトボン、アンチモンホワイト、石膏等の白色無機顔料、カーボンブラック、鉄黒、銅・クロム複合酸化物等の黒色無機顔料、アルミニウム粒子、マイカ(雲母)、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺青、ベンガラ、黄色酸化鉄、ジルコン等が挙げられる。
【0094】
墨インキ(ブラックインキ)には、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性に優れる観点から、カーボンブラックを使用することが好ましく、例えば、C.I.ピグメントブラック7等が挙げられる。また、白インキ(ホワイトインキ)には、着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性に優れる観点から、酸化チタンを使用することが好ましい。酸化チタンは、印刷性能の観点から、シリカ及び/又はアルミナで表面処理されているものが好ましい。
【0095】
各インキは、目的の色調を得るため、顔料を単独で又は2種類以上を組合せて使用できる。
【0096】
顔料の平均一次粒子径は、好ましくは10~200nmの範囲であり、より好ましくは50~150nmの範囲である。
インキ中の顔料の含有率は、インキの濃度及び着色力を確保するために、インキの質量を基準として、好ましくは0.1~60質量%の範囲であり、インキの不揮発分質量を基準として、好ましくは10~90質量%の範囲である。
【0097】
[色素誘導体]
本実施形態の印刷インキセットを構成する各インキは、色素誘導体を含有してもよい。
色素誘導体は、有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などを有する公知の化合物である。色素誘導体は、例えば、スルホ基、カルボキシル基、リン酸基などの酸性置換基を有する化合物及びこれらのアミン塩、スルホンアミド基及び末端に3級アミノ基などの塩基性置換基を有する化合物、並びに、フェニル基及びフタルイミドアルキル基などの中性置換基を有する化合物が挙げられる。
有機色素は、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チアジンインジゴ系顔料、トリアジン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、ベンゾイソインドール等のインドール系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ナフトール系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料等が挙げられる。
色素誘導体は、公知の色素誘導体であってよく、具体的には、例えば、以下の文献に記載されている。
ジケトピロロピロール系色素誘導体:特開2001-220520号公報、WO2009/081930号パンフレット、WO2011/052617号パンフレット、WO2012/102399号パンフレット、及び特開2017-156397号公報
フタロシアニン系色素誘導体:特開2007-226161号公報、WO2016/163351号パンフレット、特開2017-165820号公報、及び特許第5753266号公報
アントラキノン系色素誘導体:特開昭63-264674号公報、特開平09-272812号公報、特開平10-245501号公報、特開平10-265697号公報、特開2007-079094号公報、及びWO2009/025325号パンフレット
キナクリドン系色素誘導体:特開昭48-54128号公報、特開平03-9961号公報、及び特開2000-273383号公報
ジオキサジン系色素誘導体:特開2011-162662号公報
チアジンインジゴ系色素誘導体:特開2007-314785号公報
トリアジン系色素誘導体:特開昭61-246261号公報、特開平11-199796号公報、特開2003-165922号公報、特開2003-168208号公報、特開2004-217842号公報、及び特開2007-314681号公報
ベンゾイソインドール系色素誘導体:特開2009-57478号公報
キノフタロン系色素誘導体:特開2003-167112号公報、特開2006-291194号公報、特開2008-31281号公報、及び特開2012-226110号公報
ナフトール系色素誘導体:特開2012-208329号公報、及び特開2014-5439号公報
アゾ系色素誘導体:特開2001-172520号公報、及び特開2012-172092号公報
酸性置換基については、特開2004-307854号公報に記載されている。また、塩基性置換基については、特開2002-201377号公報、特開2003-171594号公報、特開2005-181383号公報、及び特開2005-213404号公報、などに記載されている。
なお、上記文献では、色素誘導体を、誘導体、顔料誘導体、分散剤、顔料分散剤、又は単に化合物などと記載している場合がある。しかし、上記有機色素残基に酸性基、塩基性基、中性基などの置換基を有する化合物は、色素誘導体と同義である。
【0098】
色素誘導体は、単独で又は2種類以上を混合して使用できる。
【0099】
<分散媒体>
本実施形態の印刷インキセットを構成する各インキは、分散媒体を含む。分散媒体とは、顔料を適切に分散し、インキとしての性能を発揮したり、性状を安定化させたりするものである。分散媒体の具体例として、樹脂、溶剤、及び重合性化合物が挙げられる。樹脂は、樹脂型分散剤、及びバインダー樹脂等であってよい。溶剤は、水、及び有機溶剤であってよい。また、各インキは、分散媒体として、必要に応じて、界面活性剤等の低分子分散剤を含んでもよい。
分散媒体は、印刷インキの形態に応じて適宜選択することができる。
【0100】
以下、分散媒体について、より具体的に説明する。
[樹脂型分散剤]
樹脂型分散剤は、顔料に吸着する顔料親和性部位と、顔料以外の成分に対する親和性が高く、かつ分散粒子間を立体反発させる緩和部位とを有する。樹脂型分散剤は、酸性基又は塩基性基を有する。酸性基は、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基等が挙げられる。塩基性基は、1級~3級のアミノ基、4級アンモニウム塩基等が挙げられる。
酸性樹脂型分散剤は、例えば、ポリウレタン等のウレタン系分散剤、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステルや、これらの変性物;ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミドやその塩;(メタ)アクリル酸-スチレン共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、ポリビニルアルコ-ル、ポリビニルピロリドン等;ポリエステル、変性ポリアクリレート、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド付加化合物、リン酸エステル系等が挙げられる。
塩基性樹脂型分散剤は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂等の樹脂種に対して、窒素原子含有グラフト共重合体、側鎖に3級アミノ基、4級アンモニウム塩基、含窒素複素環などを含む官能基を有する、窒素原子含有アクリル系ブロック共重合体又はウレタン系高分子分散剤等が挙げられる。
【0101】
樹脂型分散剤は、市販品として入手することができる。例えば、以下が挙げられる。
BASFジャパン社製のJONCRYL67、JONCRYL678、JONCRYL586、JONCRYL611、JONCRYL683、JONCRYL690、JONCRYL57J、JONCRYL60J、JONCRYL61J、JONCRYL62J、JONCRYL63J、JONCRYLHPD-96J、JONCRYL501J、JONCRYLPDX-6102B、
ビックケミー社製のDISPERBYK180、DISPERBYK187、DISPERBYK190、DISPERBYK191、DISPERBYK194、DISPERBYK2010、DISPERBYK2015、DISPERBYK2090、DISPERBYK2091、DISPERBYK2095、DISPERBYK2155、
日本ルーブリゾール社製のSOLSPERSE24000、SOLSPERSE32000、SOLSPERSE39000、SOLSPERSE41000、
サートマー社製のSMA1000H、SMA1440H、SMA2000H、SMA3000H、SMA17352H等。
【0102】
[バインダー樹脂]
バインダー樹脂は、印刷で被膜が形成可能であればよい。例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン共重合体、アクリル樹脂、及びこれらの変性樹脂であってよい。具体的には、高密度ポリエチレン(HDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;スチレン-p-クロルスチレン共重合体、スチレン-ビニルトルエン共重合体、スチレン-ビニルナフタレン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン-ビニルメチルケトン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-アクリロニトリル-インデン共重合体等のスチレン共重合体;アクリル樹脂、メタクリル樹脂等のアクリル樹脂;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、塩素化ポリオレフィン樹脂、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、アミノ樹脂、石油樹脂、及びこれらの変性樹脂等が挙げられる。
【0103】
[有機溶剤]
有機溶剤は、水溶性溶剤と、非水溶性溶剤とに分類できる。
水溶性溶剤は、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、及びグリセリン等が挙げられる。
非水溶性溶剤は、例えば、トルエン、キシレン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ブチルアルコール、及び脂肪族炭化水素等が挙げられる。
【0104】
[水]
水は、金属イオン等を除去したイオン交換水、及び蒸留水が好ましい。
【0105】
[重合性化合物]
重合性化合物は、分子内にエチレン性不飽和結合を1つ以上有する化合物である。重合性化合物として、モノマー及びオリゴマーを含有する。
【0106】
(モノマー)
モノマーは、分子内に(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基、ビニルエーテル基などの重合性基を有する。モノマーは、硬化性の点で、(メタ)アクリロイル基及びビニル基の何れかを有するモノマーを含むことが好ましく、分子内に3つ以上6つ以下の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含むことがより好ましく、分子内に6つの(メタ)アクリロイル基を有するモノマーを含むことがさらにより好ましい。
【0107】
(メタ)アクリロイル基を有するモノマーの具体例としては、以下が挙げられる。但し、以下に限定されるものではない。
分子内に(メタ)アクリロイル基を1つ有する単官能(メタ)アクリレートモノマー:2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、β-カルボキシルエチル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキサノール(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ノルボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(オキシエチル)(メタ)アクリレート、1,4-シクロヘキサンジメタノール(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、EO変性(2)ノニルフェノールアクリレート、(2-メチル-2-エチル-1、3-ジオキソラン-4-イル)メチルアクリレート、アクリロイルモルフォリン等
分子内に(メタ)アクリロイル基を2つ有する2官能(メタ)アクリレートモノマー:1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,12-ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(200)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(300)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(600)ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性(2)1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性(2)ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、(ネオペンチルグリコール変性)トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、EO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性(4)ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジメチロール-トリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等
分子内に(メタ)アクリロイル基を3つ有する3官能(メタ)アクリレートモノマー:トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性(6)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性(3)トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等
分子内にアクリロイル基を4つ有する4官能(メタ)アクリレートモノマー:ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、EO変性(4)ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等
分子内に(メタ)アクリロイル基を5つ有する5官能(メタ)アクリレートモノマー:ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等
分子内に(メタ)アクリロイル基を6つ有する6官能(メタ)アクリレートモノマー:ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等
【0108】
ビニル基を有するモノマーの具体例としては、N-ビニル-2-ピロリドン、N-ビニルカプロラクタム等が挙げられる。
【0109】
(オリゴマー)
オリゴマーは、例えば、脂肪族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、芳香族ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー等のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、(メタ)アクリルエステルオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられる。オリゴマーは、エチレン性不飽和結合を2~16個程度を含むことが好ましい。なかでも、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーが好ましく、(メタ)アクリロイル基が6~12個であるウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーがより好ましい。
【0110】
オリゴマーの重量平均分子量(Mw)は、400~10,000が好ましく、500~5,000がより好ましく、800~4,000がより好ましく、1,000~2,000がより好ましい。ここで、「重量平均分子量(Mw)」は、一般的なゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPC)によりポリスチレン換算分子量として求めることができる。
【0111】
上記6~12官能のウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは、市販品として入手することもできる。具体例としては、例えば、ダイセル・オルネクス株式会社製のEBECRYL1290(6官能、Mw1,000)、EBECRYL5129(6官能、Mw800)、EBECRYL8254(6官能、1,200)、KRM8200(6官能、Mw1,000)、KRM8904(9官能、Mw1,800)、EBECRYL8602(9官能、2,000)、KRM8452(10官能、Mw1,200)、EBECRYL225(10官能、Mw1,200)、EBECRYL8415(10官能、Mw1,200)、が挙げられる。また、Miwon Speacialty Chemical Co.,Ltd.製のMiramerPU5000(6官能、Mw1,800)、MiramerPU610(6官能、Mw1,800)、MiramerPU6140(6官能、Mw1,500)、MiramerMU9800(9官能、3,500)、MiramerMU9500(10官能、Mw3,200)が挙げられる。
【0112】
[その他成分]
本実施形態の印刷インキセットを構成する各インキは、用途に応じて、本発明の効果が低下しない範囲で、上記成分に加えて各種添加剤などのその他成分をさらに含んでよい。その他成分として、例えば、体質顔料、ワックス、ブロッキング防止剤、界面活性剤、レベリング剤、消泡剤、防腐剤、pH調整剤、紫外線吸収剤、難燃剤、及び酸化防止剤等が挙げられる。必要に応じて、これら各種添加剤をインキにさらに加えることができる。
【0113】
体質顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、タルク、マイカ等が挙げられる。体質顔料を添加することで、ブロッキング防止性、ラミネート強度、乾燥性、塗膜隠蔽性等を向上させることができる。
【0114】
ワックスとしては、例えば、天然ワックス及び合成ワックスがある。天然ワックスは、例えば、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。合成ワックスは、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックスシリコーン化合物等が挙げられる。ワックスを添加することで、耐摩擦性、ブロッキング防止性、スベリ性、スリキズ防止性等を向上させることができる。
【0115】
ブロッキング防止剤としては、例えば、シリカ粒子、ポリエチレンワックス、脂肪酸アミド、セルロースアセテートブチレート樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、硝化綿等が挙げられる。
【0116】
界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
アニオン性界面活性剤は、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、及びポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
ノニオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、及びポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0117】
レベリング剤としては、例えば、フッ素系レベリング剤、アクリルポリマー系レベリング剤、シリコーン系レベリング剤などが挙げられる。
【0118】
消泡剤としては、例えば、ミネラルオイル系消泡剤、シリコーン系消泡剤、非シリコーンポリマー系消泡剤、アセチレングリコール系消泡剤などが挙げられる。
【0119】
防腐剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ソジウムピリジンチオン-1-オキサイド、ジンクピリジンチオン-1-オキサイド、1,2-ベンズイソチアゾリン-3-オン、1-ベンズイソチアゾリン-3-オンのアミン塩等が挙げられる。
【0120】
pH調整剤としては、例えば、各種アミン、無機塩基、アンモニア、各種緩衝液等が挙げられる。
【0121】
紫外線吸収剤としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0122】
難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤、ホウ素系難燃剤、臭素系難燃剤などが挙げられる。
【0123】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤、ジチオカルバミン酸系酸化防止剤等が挙げられる。
【0124】
特に限定するものではないが、一実施形態において、印刷インキセットにおける各色印刷インキの組合せは、式(1)で表されるイソインドリン化合物と分散媒体とを含むイエローインキ;先に説明した銅フタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、及びチタニルフタロシアニンからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属フタロシアニン顔料と分散媒体とを含むシアンインキ;C.I.ピグメントレッド122と分散媒体とを含むマゼンタインキA;及びC.I.ピグメントバイオレット19と分散媒体とを含むマゼンタインキBであってよい。
他の実施形態において、各色印刷インキの組合せは、C.I.ピグメントイエロー180と分散媒体とを含むイエローインキ;先に説明した銅フタロシアニン、アルミニウムフタロシアニン、及びチタニルフタロシアニンからなる群から選択される少なくとも1種を含む金属フタロシアニン顔料と分散媒体とを含むシアンインキ;C.I.ピグメントレッド122と分散媒体とを含むマゼンタインキA;及びC.I.ピグメントバイオレット19と分散媒体とを含むマゼンタインキBであってよい。
これらの実施形態において、シアンインキ中の金属フタロシアニン顔料は、銅フタロシアニンであることがより好ましい。
これら各印刷インキにおける顔料(色材)の組合せによれば、優れた耐光性と優れた色再現性とを容易に両立することができる。また、特に、マゼンタインキAとマゼンタインキBとの組合せによる効果として、印刷層(インキ被膜)の接着性の向上も挙げられる。上記実施形態において、分散媒体として、ポリウレタン樹脂を使用した場合は、印刷層(インキ被膜)の接着性を高めることが容易となる。また、分散媒体として、ポリウレタン樹脂に加えてポリブチルビニラールを使用した場合は、上記接着性をさらに高めることが容易となる傾向がある。
【0125】
<印刷インキの製造>
本実施形態の印刷インキセットを構成する印刷インキは、顔料を分散媒体中に分散することにより製造することができる。その後、得られた分散体に、必要に応じて、添加剤、水及び/又は有機溶剤等を配合することにより印刷インキを製造することができる。
【0126】
分散機としては、一般に使用されるものを用いることができる。例えば、ローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミル、及びその他のビーズミルが挙げられる。なかでも、ビーズミルの使用が好ましい。顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機のメディアビーズのサイズ、メディアビーズの充填率、分散時間、顔料分散体の流出速度、顔料分散体の粘度等を適宜調節することにより、調整することができる。
【0127】
本実施形態の印刷インキセットは、グラビア印刷インキセット及びフレキソ印刷インキセットの形態が好ましい。これら印刷インキセットを構成する印刷インキの形態としては、グラビアインキ、水性フレキソインキ、フレキソインキ、及び活性エネルギー線硬化性フレキソインキが好ましい。以下、これら各種インキについて具体的に説明する。
【0128】
<グラビアインキ>
グラビアインキは、顔料、及び分散媒体として、バインダー樹脂を含有し、さらに有機溶剤を含有することが好ましい。
【0129】
(顔料)
グラビアインキ中の顔料の含有率は、特に限定されないが、4~20質量%であることが好ましく、5~15質量%であることがより好ましい。
【0130】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、例えば、ポリウレタン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ニトロセルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、ブチラール樹脂、石油樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
【0131】
バインダー樹脂の含有率は、グラビアインキ中、4~25質量%が好ましく、6~20質量%がより好ましい。
【0132】
[ポリウレタン樹脂]
グラビアインキに使用するバインダー樹脂は、ポリウレタン樹脂が好ましい。なお、ポリウレタン樹脂は、ポリウレタンウレア樹脂を含む。
ポリウレタン樹脂の合成は、例えば、
(1)ポリオールとジイソシアネート化合物とをイソシアネート基が過剰となる割合で反応させて得られる末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成する。次いで溶剤中でイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーに前記アミノ基を有する鎖伸長剤及び/又は末端封鎖剤と反応させて合成する二段法、
(2)ポリプロピレングリコール、ポリオール、ジイソシアネート化合物、ならびにアミノ基を有する鎖伸長剤及び/又は末端封鎖剤を、適切な溶剤中で一度に反応させる一段法等が挙げられる。
合成に使用する溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶剤;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n-ブタノールなどのアルコール系溶剤;メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤;あるいはこれらの混合溶剤;が挙げられる。
これらの方法のなかでも、より均一なポリウレタン樹脂が得られるという観点から、二段法が好ましい。ポリウレタン樹脂を二段法で製造する場合、ウレタンプレポリマーのイソシアネート基と、鎖伸長剤及び末端封鎖剤のアミノ基との当量比(イソシアネート基のモル/アミノ基のモル)は、1/1.3~1/0.9が好ましい。イソシアネート基とアミノ基との当量比が1/1.3以上であると、未反応のまま残存する鎖伸長剤及び/又は末端封鎖剤が低減し、ポリウレタン樹脂の黄変、及び印刷後臭気を抑制することができる。イソシアネート基とアミノ基との当量比が1/0.9以下であると、得られるポリウレタン樹脂の分子量が適切となり、印刷後に好適な膜強度をもたらす樹脂を得ることができる。
【0133】
上記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは、15,000~100,000の範囲である。ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が15,000以上であると、インキの耐ブロッキング性、印刷被膜の強度、及び耐油性に優れ、100,000以下であると、得られるインキの粘度が適切な範囲となり、印刷被膜の光沢に優れる。
【0134】
また、上記ポリウレタン樹脂は、印刷適性及びラミネート強度の観点から、アミン価を有するものが好ましい。アミン価は、0.5~20mgKOH/gが好ましく、1~15mgKOH/gがより好ましい。
【0135】
一実施形態において、本実施形態の印刷インキセットを包装材料の用途に使用する場合、ポリウレタン樹脂の含有率は、インキにおけるバインダー樹脂を基準として、80質量%以上であることが好ましい。ポリウレタン樹脂の含有率を上記範囲にすることによって、ボイルレトルト性及びポリエステルフィルムへの接着性を容易に向上させることができる。
【0136】
[ポリビニルブチラール樹脂]
一実施形態において、グラビアインキに使用するバインダー樹脂は、さらにポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。このような実施形態によれば、基材に対するインキ被膜の接着性をより高めることが容易となる傾向がある。
ポリビニルブチラール樹脂は、ポリビニルアルコールをブチルアルデヒド又はホルムアルデヒドと反応させてアセタール化して得ることができる。
【0137】
ポリビニルブチラール樹脂中のアセチル基含有率は、4質量%以下が好ましい。また、水酸基含有率は、1質量%~30質量%が好ましく、1質量%~25質量%がより好ましい。ポリビニルブチラール樹脂の重量平均分子量は、10,000~50,000が好ましい。
【0138】
ポリビニルブチラール樹脂の含有量は、インキにおけるバインダー樹脂を基準として、1.0~15.0質量%の範囲が好ましい。バインダー樹脂中のポリビニルブチラール樹脂の含有率を1.0質量%以上にすることで、得られる印刷インキの耐ブロッキング性やポリエステルフィルムへの接着性を容易に向上できる。また、上記含有率を15.0質量%以下にすることで、インキの貯蔵安定性を容易に向上できる。
【0139】
[有機溶剤]
グラビアインキに使用する有機溶剤は、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等エステル系有機溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール系有機溶剤;エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;シクロメチルヘキサン等の脂肪族有機溶剤;等が挙げられる。これらの有機溶剤は、2種以上を混合して使用することが好ましい。
グラビアインキにおいては、エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤との混合溶剤を使用することが好ましい。エステル系有機溶剤とアルコール系有機溶剤との質量比(エステル系有機溶剤の質量:アルコール系有機溶剤の質量)は、好ましくは95:5~40:60であり、より好ましくは90:10~50:50である。
インキにおける、有機溶剤の含有率は、インキの質量を基準として、好ましくは60~90質量%であり、より好ましくは70~85質量%の範囲である。
【0140】
グラビアインキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、顔料を適度に分散させる観点から、好ましくは10mPa・s以上であってよい。一方、インキ製造時又は印刷時の作業性効率の観点から、グラビアインキの粘度は、好ましくは1,000mPa・s以下であってよい。上記粘度は、トキメック社製のB型粘度計で25℃において測定された値である。
【0141】
[水]
一実施形態において、グラビアインキは、さらに、水を含むことができる。所定量の水を含むことで、ポリウレタン樹脂による顔料分散性が向上し、ハイライト転移性、版かぶり性、トラッピング性等の印刷適性が向上する。
水の含有率は、グラビアインキの質量を基準として、好ましくは0.1~10質量%であり、より好ましくは0.5~7質量%であり、さらに好ましくは0.5~5質量%であり、特に好ましくは0.5~4質量%である。
【0142】
[シリカ粒子]
一実施形態において、グラビアインキは、さらに、シリカ粒子を含有できる。シリカ粒子を含むことで、重ね印刷時のインキの濡れ及び広がりが促進され、トラッピング性が向上し、ハイライト転移性も維持される。
シリカ粒子は、天然産及び合成品のいずれでもよい。また、結晶性、又は非結晶性、あるいは疎水性、又は親水性のいずれであってもよい。シリカ粒子の合成法は、乾式、及び湿式法がある。乾式法では、燃焼法、及びアーク法、並びに湿式法では、沈降法、及びゲル法が知られており、いずれの方法で合成されたものでもよい。また、シリカ粒子は、表面に親水性官能基を有する親水性シリカでもよい。あるいは、シリカ粒子は、親水性官能基をアルキルシラン等で変性して疎水化した疎水性シリカでもよい。好ましくは、親水性シリカである。
このようなシリカ粒子は、市販品として入手することもできる。例えば、東ソー・シリカ社製のニップジェルシリーズ、及びニップシルシリーズ、並びに、水澤化学社製のミズカシルシリーズが挙げられる。
【0143】
シリカ粒子は、インキ層の表面に凹凸を作るため、平均粒子径が1~10μmであることが好ましい。より好ましくは1~8μmであり、さらに好ましくは1~6μmである。シリカ粒子の平均粒子径は、粒度分布における積算値50%(D50)での粒径を意味し、コールターカウンター法によって求めることができる。
シリカ粒子の比表面積は、BET法で50~600m2/gであることが好ましい。より好ましくは100~450m2/gである。グラビアインキで使用するシリカ粒子は、平均粒子径又はBET法比表面積の異なるものを2種以上組合せて使用できる。
【0144】
シリカ粒子の含有率は、グラビアインキ中、好ましくは0.1~3質量%であり、より好ましくは0.2~2.5質量%であり、さらに好ましくは0.2~2質量%であり、特に好ましくは0.2~1.5質量%である。
【0145】
[その他成分]
グラビアインキは、必要に応じて、上記成分に加えて、各種添加剤等のその他成分をさらに含んでもよい。その他成分として、例えば、体質顔料、顔料分散剤、ワックス、ブロッキング防止剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、及び紫外線吸収剤、芳香剤、及び難燃剤等の各種添加剤が挙げられる。必要に応じて、これら各種添加剤をインキにさらに加えてもよい。
【0146】
<グラビア印刷方法及び印刷物>
グラビア印刷は公知の方法から適宜選択できる。すなわち、輪転する凹版(グラビア版)及びそれに接触するドクターブレードを備えた複数色印刷可能なグラビア印刷機を用い、グラビアインキはインキ容器(インキパン)から供給される。粘度調整として専用の粘度コントローラーを用いてもよい。また、印刷用の基材は巻き取り方式で供給され、印刷物は印刷後に乾燥ユニットを通る。乾燥ユニットの温度としては30~100℃であることが好ましい。また、印刷速度は50~250m/分であることが好ましい。
【0147】
グラビア印刷の方式は、表刷り印刷と裏刷り印刷とに大別される。例えば、表刷り印刷において、基材が白色紙又は白色フィルムである場合、基材上に、イエローインキ、マゼンタインキ、シアンインキ、ブラックインキの順で印刷を行うことで、印刷物を得ることができる。
また、例えば、裏刷り印刷において、基材が透明フィルムである場合、基材上に、ブラックインキ、シアンインキ、マゼンタインキ、イエローインキ、白インキの順で印刷し、印刷物を作製することが好ましい。
印刷層の厚みは、用途、使用するインキの種類及び数、さらに重ね印刷の回数によって適宜選択できる。一実施形態において、印刷層の厚みは、通常、0.5~10μmの範囲であってよい。
【0148】
[基材]
基材は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン基材;ポリカーボネート基材;ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル基材;ポリスチレン基材;AS、ABS等のポリスチレン系樹脂基材;ナイロン等のポリアミド基材;ポリ塩化ビニル基材;ポリ塩化ビニリデン基材;セロハン基材;紙基材;アルミニウム箔基材;これらの複合材料からなる複合基材;が挙げられる。基材は、フィルム、シートのいずれの形状であってもよい。なかでも、ガラス転移温度が高い、ポリエステル基材及びポリアミド基材が好適に用いられる。
【0149】
上記基材の表面は、金属酸化物等が蒸着処理されていてもよく、ポリビニルアルコール等がコート処理されていてもよい。このような表面処理がされている基材としては、例えば、酸化アルミニウムを表面に蒸着させた凸版印刷社製GL-AE、大日本印刷社製IB-PET-PXBが挙げられる。基材は、必要に応じて、帯電防止剤、及び紫外線防止剤などの添加剤で処理されていてもよく、コロナ処理又は低温プラズマ処理されていてもよい。
【0150】
基材の厚みは、特に制限されず、通常、5~100μmの範囲であってよい。
【0151】
<水性フレキソインキ>
水性フレキソインキは、少なくとも、顔料と、分散媒体としてバインダー樹脂及び水性溶剤を含有する。
【0152】
水性フレキソインキ中の顔料組成物の含有率は、特に限定されないが、10~30質量%であることが好ましく、15~25質量%であることがより好ましい。
【0153】
以下に、水性フレキソインキに含まれる各成分について説明する。
【0154】
[バインダー樹脂]
水性フレキソインキは、バインダー樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂としては、例えば、水性ポリウレタン樹脂、水性アクリルウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、スチレン-アクリル樹脂、スチレン-無水マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、セルロース系樹脂、及び塩素化ポリオレフィン等の水性樹脂が挙げられる。なかでも、少なくとも水性ポリウレタン樹脂を含むことが好ましい。バインダー樹脂は、単独で、又は2種類以上を組合せて使用できる。
【0155】
(水性ポリウレタン樹脂)
ポリウレタン樹脂は、一般に、1分子中に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、1分子中に2以上のヒドロキシル基を有するヒドロキシル基含有化合物とを反応させることにより得られる樹脂である。一実施形態において、水性ポリウレタン樹脂は、以下に述べる構成を備えている。こうした構成は、ヒドロキシル基含有化合物の構造及び種類等を適宜選択することにより、好ましく導入することができる。
【0156】
水性ポリウレタン樹脂のウレタン結合数(mmol/g)は、特に限定はされない。一実施形態において、水性ポリウレタン樹脂の分子量、及び塗膜の硬さの調整等の観点から、ウレタン結合数は2.2~3.0mmol/gが好ましく、2.3~2.9mmol/gがより好ましい。このウレタン結合数は、ヒドロキシル基含有化合物及びポリイソシアネートの量、並びに反応条件を適宜調整することにより、所望の範囲とすることができる。
【0157】
水性ポリウレタン樹脂のガラス転移温度(Tg)は、特に限定はされないが、-70℃以下が好ましく、さらに好ましくは-70℃~-90℃である。水性ポリウレタン樹脂のTgが-70℃以下であることにより、インキの成膜性が向上し、塗膜の密着性が向上する。
【0158】
水性ポリウレタン樹脂の重量平均分子量(GPC測定、標準ポリスチレン換算)は、特に限定はされないが、10,000~100,000であることが好ましく、30,000~70,000であることがより好ましい。
【0159】
水性ポリウレタン樹脂の水酸基価(mgKOH/g)は、特に限定はされないが、耐水性等の観点から、35mgKOH/g以下であることが好ましく、20mgKOH/g以下であることがより好ましい。一実施形態において、上記水酸基価(mgKOH/g)は、0mgKOH/gであってもよい。
【0160】
水性ポリウレタン樹脂は、水溶性であっても、水性エマルジョンであってもよいが、水溶性であることが好ましい。ここで、水性エマルジョンとは、水へ難溶解性の樹脂が粒子状に乳濁安定化した状態の樹脂溶液をいう。
水性ポリウレタン樹脂の含有量は、水性フレキソインキの全質量を基準として、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、7質量%以上がさらに好ましい。一方、水性ポリウレタン樹脂の含有量は、水性フレキソインキの全質量を基準として、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、17質量%以下がさらに好ましい。
【0161】
(ポリビニルブチラール樹脂)
一実施形態において、水性フレキソインキに使用するバインダー樹脂は、さらにポリビニルブチラール樹脂を含むことが好ましい。このような実施形態によれば、基材に対するインキ被膜の接着性をより高めることが容易となる傾向がある。ポリビニルブチラール樹脂としては、上記のグラビアインキの説明に記載したポリビニルブチラール樹脂が好ましい。
【0162】
[水性溶剤]
水性フレキソインキは、水性溶剤を含有する。水性溶剤は、水;n-プロパノール、イソプロパノール等のアルコール溶剤;プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール溶剤;プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールモノアルキルエーテル溶剤;等が挙げられる。
【0163】
水性溶剤の含有量は、水性フレキソインキの全質量を基準として、40~70質量%であることが好ましい。
【0164】
[その他成分]
水性フレキソインキは、必要に応じて、上記成分に加えて各種添加剤等のその他成分をさらに含んでもよい。その他成分として、体質顔料、顔料分散剤、ワックス、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、pH調整剤、硬化剤、及び紫外線吸収剤等の公知の各種添加剤が挙げられる。必要に応じて、これら各種添加剤をインキにさらに加えてもよい。また、課題を解決できる範囲内であれば、アルコール溶剤以外の非水系溶剤(例えば、ケトン系溶剤、及びエステル系溶剤)を加えてもよい。非水系溶剤の含有量は、インキの全質量を基準として、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましい。
【0165】
<フレキソ印刷方法及び印刷物>
フレキソ印刷の方式は特に制限されず、公知の方法から適宜選択できる。例えば、2ロール方式、ドクター方式、ドクターチャンバー方式等が挙げられる。ドクター方式、ドクターチャンバー方式では、表面にセルが形成されたアニロックスロールにフレキソインキを供給し、アニロックスロール表面の余分なフレキソインキをドクターブレードによって掻き落とす工程を経て、樹脂版を通して、最終的に基材にインキが印刷(塗布)される。
【0166】
フレキソ印刷に使用されるアニロックスとしては、セル彫刻が施されたセラミックアニロックスロール、クロムメッキアニロックスロール等を使用することができる。セルの形状は、ハニカムパターン、ダイヤパターン、ヘリカルパターン等があり、いずれのパターンを使用することができる。
【0167】
フレキソ印刷に使用される版としては、UV光源による紫外線硬化を利用する感光性樹脂版、及びダイレクトレーザー彫刻方式を使用するエラストマー素材版が挙げられる。版を貼るスリーブ及びクッションテープについては、任意のものを使用することができる。
【0168】
フレキソ印刷機としては、CI型多色フレキソ印刷機、及びユニット型多色フレキソ印刷機等がある。インキ供給方式については、チャンバー方式、及び2ロール方式が挙げられる。これらを適宜組合せた印刷機を使用することができる。
【0169】
[基材]
基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等のプラスチックフィルム、セロハン、紙、アルミニウム箔等、もしくはこれらの複合材料からなるフィルム、シート等が挙げられる。紙基材としては、ノンコート紙、基材の片側が処理されている片艶クラフト紙、晒しクラフト紙、未晒しクラフト紙等から選ばれる紙基材であることが好ましい。その他のプラスチックフィルム等の基材は、グラビアインキの印刷物と同様のものを使用することができる。
【0170】
<フレキソインキ>
フレキソインキは、顔料、及び分散媒体としてバインダー樹脂を含有し、さらに有機溶剤を含有することが好ましい。
【0171】
(顔料)
フレキソインキ中の顔料の含有率は、特に限定されないが、4~25質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
【0172】
(バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、例えば、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキッド樹脂、ロジン系樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ケトン樹脂、環化ゴム、ブチラール樹脂、石油樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。
なかでも、バインダー樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、セルロースエステル樹脂を含むことが好ましい。
【0173】
ポリウレタン樹脂及びポリビニルアセタール樹脂としては、上記のグラビアインキの説明に記載したポリウレタン樹脂及びポリビニルアセタール樹脂が好ましい。
【0174】
セルロースエステル樹脂としては、ニトロセルロース樹脂、セルロースアセテートプロピオネート樹脂、又はセルロースアセテートブチレート樹脂が好ましい。
【0175】
ニトロセルロース樹脂は、セルロースの水酸基を一部又は大部分を硫酸と硝酸の混酸により硝酸エステル化(硝化)することにより得られる。硝化度によってニトロセルロース樹脂の溶剤に対する溶解性は変化する。通常、硝化度の高いものは炭化水素系溶剤又はエステル系溶剤に使用される。また、硝化度の低いものは、アルコール系溶剤に使用される。
【0176】
セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、セルロースを酢酸及びプロピオン酸でトリエステル化した後、加水分解することによって得られる。一般的には、アセチル化が0.6~2.5質量%、プロピオネート化が42~46質量%、水酸基が1.8~5質量%の樹脂が市販されている。本発明の一実施形態では、ポリウレタン樹脂との相溶性の観点から、プロピオニル基含有率が40~50質量%(中心値45%)、アセチル基含有率が0.5~3質量%(中心値2.5%)、水酸基含有率が2~6質量%(中心値2.5%)、粘度が0.05~0.2Pa・sのセルロースアセテートプロピオネート樹脂を使用することが好ましい。
【0177】
セルロースアセテートブチレート樹脂は、セルロースを酢酸及び酪酸でトリエステル化した後、加水分解することによって得られる。一般的には、アセチル化が2~30質量%、ブチリル化が17~53質量%、水酸基が1~5質量%の樹脂が市販されている。
【0178】
[有機溶剤]
フレキソインキに使用する有機溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等エステル系有機溶剤;メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコール系有機溶剤;エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤;シクロメチルヘキサン等の脂肪族有機溶剤;等が挙げられる。これらの有機溶剤は、2種以上を混合して使用することが好ましい。
【0179】
[その他成分]
フレキソインキは、必要に応じて、上記成分に加えて各種添加剤などのその他成分を含んでもよい。その他成分として、例えば、体質顔料、顔料分散剤、ワックス、ブロッキング防止剤、レベリング剤、消泡剤、可塑剤、帯電防止剤、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、芳香剤、難燃剤等の各種添加剤が挙げられる。必要に応じて、これら各種添加剤をインキにさらに加えてもよい。
【0180】
<活性エネルギー線硬化性フレキソインキ>
活性エネルギー線硬化性フレキソインキは、顔料と、分散媒体として重合性化合物と、光重合開始剤とを含有する。
【0181】
活性エネルギー線硬化性フレキソインキ中の顔料組成物の含有率は、特に限定されないが、5~30質量%であることが好ましく、10~25質量%であることがより好ましい。
【0182】
以下に記載する成分は、本実施形態の活性エネルギー線硬化性フレキソインキに含まれるか、又は必要に応じてインキに加えられる。
【0183】
[重合性化合物]
重合性化合物は、上述の通りである。
【0184】
重合性化合物は、単独で、又は2種類以上を組合せて使用できる。
【0185】
重合性化合物の含有量は、活性エネルギー線硬化性フレキソインキの全質量に対して、25~90質量%が好ましく、35~80質量%がより好ましい。
【0186】
[重合開始剤]
活性エネルギー線硬化性フレキソインキは、重合開始剤を含有する。上記重合開始剤としては、ラジカル重合の重合開始剤を含有することが好ましく、光重合開始剤を含有することがより好ましい。重合開始剤は、光の作用、又は増感色素の電子励起状態との相互作用を経て、化学変化を生じ、ラジカルを生成する化合物である。なかでも、露光という手段で重合開始させることができることから、光ラジカル重合開始剤が好ましい。
【0187】
上記光ラジカル重合開始剤は、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体例としては、ベンゾフェノン系化合物、ジアルコキシアセトフェノン系化合物、α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物、α-アミノアルキルフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チオキサントン系化合物等が挙げられる。
【0188】
上記ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、[4-(メチルフェニルチオ)フェニル]-フェニルメタノン等が挙げられる。
【0189】
上記ジアルコキシアセトフェノン系化合物としては、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、ジメトキシアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン等が挙げられる。
【0190】
上記α-ヒドロキシアルキルフェノン系化合物としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-[4-(2-ヒドロキシメトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン等が挙げられる。
【0191】
上記α-アミノアルキルフェノン系化合物としては、2-メチル-1-[4-(メトキシチオ)-フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルフォリニル)フェニル]-1-ブタノン等が挙げられる。
【0192】
上記アシルフォスフィンオキサイド系化合物としては、ジフェニルアシルフェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0193】
上記チオキサントン系化合物としては、2-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン等が挙げられる。
【0194】
上記重合開始剤は、単独で、又は2種以上を組合せて使用できる。
【0195】
重合開始剤の含有率は、活性エネルギー線硬化性フレキソインキの全質量に対して、0.5~20質量%が好ましく、5~15質量%がより好ましい。
【0196】
[分散剤]
活性エネルギー線硬化性フレキソインキは、顔料分散性をより向上させるために、分散剤をさらに含むことが好ましい。分散剤としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。
具体例として、ポリオキシアルキレンポリアルキレンポリアミン、ビニル系ポリマー及びコポリマー、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、アミン系ポリマーなどを主成分とする高分子分散剤が挙げられる。なかでも、顔料の分散安定性の観点から、ブロック構造又はくし型構造の塩基性官能基含有の顔料分散剤が好ましい。
このような顔料分散剤は市販品として入手することもできる。例えば、味の素ファインテクノ株式会社製のアジスパーシリーズ(アジスパーPB821、PB822、PB824等)、日本ルーブリゾール社製のソルスパーズシリーズ(SOLSPERSE24000、SOLSPERSE32000、SOLSPERSE38500、SOLSPERSE39000等)、ビックケミー社製のディスパービックシリーズ(BYK-162、BYK-168、BYK-183等)等が挙げられる。
【0197】
上記分散剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性フレキソインキの全質量に対して、0.1~10質量%であることが好ましい。
【0198】
[重合開始助剤]
活性エネルギー線硬化性フレキソインキは、重合開始助剤を含有することもできる。重合開始助剤を含有することで、硬化性をさらに高めることができる。重合開始助剤としては、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、脂肪族アミン、2-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、ジブチルエタノールアミン等が挙げられる。
【0199】
上記重合開始助剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性フレキソインキの全質量に対して、0.1~5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5~3質量%である。
【0200】
[ワックス]
活性エネルギー線硬化性フレキソインキは、耐摩擦性、ブロッキング防止性、スベリ性、及びスリキズ防止性をより高めるために、ワックスを含むことが好ましい。ワックスとしては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。例えば、天然ワックス及び合成ワックスがある。天然ワックスは、例えば、カルナバワックス、木ろう、ラノリン、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。合成ワックスは、例えば、フィッシャー・トロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、ポリテトラフルオロエチレンワックス、ポリアミドワックスシリコーン化合物等が挙げられる。
【0201】
上記ワックスの含有量は、耐摩擦性、光沢、パイリングのバランスの観点から、活性エネルギー線硬化性フレキソインキの全質量に対して、0.1~5質量%であることが好ましく、0.5~4質量%であることがより好ましい。
【0202】
[バインダー樹脂]
活性エネルギー線硬化性フレキソインキは、バインダー樹脂を含んでもよい。バインダー樹脂を含むことで、硬化時に生じる塗膜の硬化収縮を緩和し、基材のカールを抑制し、さらに、基材への密着性が向上する。
【0203】
バインダー樹脂としては、ポリ塩化ビニル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロース誘導体(例えば、エチルセルロース、酢酸セルロース、ニトロセルロース)、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、ロジン変性アルキッド樹脂、石油樹脂、尿素樹脂、ブタジエン-アクリルニトリル共重合体のような合成ゴム等が挙げられる。なかでも、ジアリルフタレート樹脂、ポリエステル樹脂が好ましい。より好ましくは、ジアリルフタレート樹脂である。
【0204】
バインダー樹脂の重量平均分子量は、1,000~100,000であることが好ましい。より好ましくは、2,000~70,000である。
【0205】
上記バインダー樹脂は、単独又は2種類以上を併用できる。また、硬化性の観点から、バインダー樹脂の含有量は、活性エネルギー線硬化性フレキソインキの全質量に対して、1~15質量%であることが好ましい。より好ましくは、1~5質量%である。
【0206】
[重合禁止剤]
活性エネルギー線硬化性フレキソインキは、重合禁止剤を含んでもよい。重合禁止剤は、例えば、4-メトキシフェノール、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、t-ブチルハイドロキノン、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、フェノチアジン、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩等が挙げられる。
【0207】
重合禁止剤の含有量は、硬化性を維持する一方で、活性エネルギー線硬化性フレキソインキの保存安定性を高める観点から、活性エネルギー線硬化性フレキソインキの全質量に対して、0.01~2質量%が好ましい。
【0208】
[その他の成分]
活性エネルギー線硬化性フレキソインキは、本発明の効果が低下しない範囲で、必要に応じて、上記成分に加えて各種添加剤などを含んでもよい。各種添加剤として、体質顔料、レベリング剤、界面活性剤、消泡剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、及び酸化防止剤などを、必要に応じてインキに添加することができる。
【0209】
なお、活性エネルギー線硬化性フレキソインキは、水を実質的に含有しないことが好ましい。実質的に含有せずとは、インキ組成物の全質量に対して、1質量%以下である。
【0210】
<活性エネルギー線硬化性フレキソインキの印刷方法及び印刷物>
活性エネルギー線硬化性フレキソインキは、フレキソ印刷方式によって、被記録媒体上に印刷し、活性エネルギー線で硬化させることにより、印刷物を形成することができる。上記被記録媒体としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体的には、アート紙、コート紙、キャスト紙などの塗工紙や上質紙、中質紙、新聞用紙などの非塗工紙、ユポ紙などの合成紙、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PP(ポリプロピレン)、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)のようなプラスチックフィルムなどが挙げられる。
【0211】
活性エネルギー線硬化性フレキソインキを硬化させる方法には、特に制限はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、α線、γ線、電子線、X線、紫外線、可視光又は赤外光等を照射することで、インキを硬化させることができる。なかでも、紫外線、電子線が好ましく、より好ましくは紫外線である。活性エネルギー線のピーク波長は、200~600nmであることが好ましく、より好ましくは350~420nmである。
【0212】
活性エネルギー線源としては、特に制限はなく、公知のものを用いることができる。具体的には、水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハイドライドランプ、紫外線発光ダイオード(UV-LED)、紫外線レーザーダイオード(UV-LD)等のLED(発光ダイオード)やガス・固体レーザー等が挙げられる。なかでも、紫外線発光ダイオード(UV-LED)が、小型、長寿命、高効率、低コストである点で好ましい。
【0213】
<包装材料>
本発明の一実施形態は、包装材料に関する。包装材料は、少なくともその一部に印刷物を含む。包装材料における印刷物は、先に説明したように、様々な印刷方法にしたがって、上記実施形態の印刷インキセットを用いて形成される。
一実施形態において、包装材料は、基材に印刷層を形成した印刷物そのものの形態で使用することができる。このような包装材料として、例えば、シール、ラベル等が挙げられる。他の実施形態において、包装材料は、例えば、少なくとも、印刷物、接着剤層、及びシーラント基材を順次積層した積層構造を有してもよい。このような積層構造を有する包装材料を加工することによって、包装体を得ることができる。
包装体として、例えば、四方シール包装体、三方シール包装体、ピロー包装体、スティック袋、ガセット袋、角底袋、スタンディングパウチ、深絞り容器、真空包装体、スキンパック、チャック袋、スパウトパウチ、ひねり包装、包み包装、シュリンク包装、ラベル、液体紙パック、及び紙トレー等が挙げられる。一実施形態において包装材料は、様々な形状を有する包装体に好適に用いることができる。
【0214】
包装材料の被包装物は、例えば、食料品(例えば、米穀、菓子、調味料、食用油脂、調理食品等)、飲料(例えば、アルコール飲料、清涼飲料水、ミネラルウオーター等)、生活用品及び文化用品(例えば、医薬品、化粧品、文具等)、並びに電子部品等が挙げられる。
【0215】
以下、上記積層構造を有する包装材料について、より具体的に説明する。[接着剤層]
上記積層構造を有する包装材料において、接着剤層の形成に使用できる接着成分としては、ラミネート接着剤、ホットメルト接着剤、及び熱可塑性樹脂が挙げられる。上記接着成分のうち、ラミネート接着剤、及びホットメルト接着剤として、例えば、ポリエーテル系接着剤;ポリウレタン系接着剤;エポキシ系接着剤;ポリ酢酸ビニル系接着剤;セルロース系接着剤;(メタ)アクリル系接着剤;が挙げられる。これらの接着成分のなかでも、ポリウレタン系接着剤が好ましく用いられる。
【0216】
接着成分は、単独で、又は2種類以上を組合せて使用できる。
【0217】
上記ポリウレタン系接着剤は、ポリオールとポリイソシアネートとを含む反応性接着剤であり、脱離性を有するものであってもよい。脱離性を有するポリウレタン接着剤は、例えば、特開2020-084130号公報に記載のラミネート接着剤が挙げられる。
このような脱離性を有するポリウレタン接着剤は、酸価が、5~45mgKOH/gであることが好ましい。また、ポリウレタン系接着剤を構成するポリオールがポリエステルポリオールを含み、ポリイソシアネートが脂肪族ポリイソシアネート及び芳香脂肪族ポリイソシアネートからなる群より選ばれる1種を含むことが好ましい。
接着剤層の厚みは、通常1~6μmの範囲であってよい。
【0218】
[シーラント基材]
上記積層構造を有する包装材料において、シーラント基材は、ラミネートフィルムの最内層を構成する基材である。シーラント基材としては、熱によって相互に融着し得る(ヒートシール性を有する)樹脂材料が使用される。上記シーラント基材としては、例えば、無延伸ポリプロピレン(CPP)、蒸着無延伸ポリプロピレンフィルム(VMCPP)、低密度ポリエチレン(LDPE)、リニアー低密度ポリエチレン(LLDPE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
シーラント基材の厚みは特に限定されない。包装材料への加工性、及びヒートシール性等を考慮して、上記厚みは、10~200μmの範囲が好ましく、15~150μmの範囲がより好ましい。また、シーラント基材に対して、高低差5~20μmの凸凹を設けることで、シーラント基材に滑り性及び包装材料の引き裂き性などの特性を付与することが可能である。
また、シーラント基材を積層する方法は、特に限定されない。例えば、接着剤層とシーラント基材フィルムとを熱によってラミネートする方法(熱ラミネート、ドライラミネート)、又はシーラント基材樹脂を溶融させて接着剤層の上に押出し、冷却固化させて積層する方法(押出ラミネーション法)等が挙げられる。
【0219】
包装材料に用いられる従来の印刷インキは、様々な光源に対する耐光性が十分でない場合がある。そのため、退色といった意匠性の低下が生じる場合がある。また、保存時の光照射によって発生するラジカルの影響で、印刷層の凝集力低下又は密着力低下が起こり、ラミネート強度が低下する場合がある。その結果、光照射下で長期保存された包装物及び包装材料を開封する際に、積層体の相間剥離が発生する問題が生じることもある。これに対し、本実施形態の包装材料は、印刷インキセットが優れた色再現性を有することにより、高い意匠性を維持することができる。また、印刷インキセットを用いて形成される印刷層が優れた耐光性を有し、かつ優れた接着性を有することにより、従来の包装材料で見られるような層間剥離といった不具合の発生を抑制することができる。このような観点から、一実施形態において、上記実施形態の印刷インキセットは、積層構造を有する包装材料の用途に好適に使用することができる。このような実施形態によれば、ラミネート強度が高い包装材料を容易に提供することができる。
【実施例0220】
以下、本発明の実施形態を実施例で詳細に説明するが、本発明の実施形態は、以下の実施例に限定されない。なお、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を意味する。
また、表中の配合量は、質量部であり、溶剤以外は、不揮発分換算値である。なお、表中の空欄は配合していないことを表す。
【0221】
(顔料の平均一次粒子径)
顔料の平均一次粒子径は、透過型(TEM)電子顕微鏡を使用して、電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で測定した。具体的には、個々の顔料の一次粒子の短軸径と長軸径を計測し、平均をその顔料一次粒子の粒径とした。次に、100個以上の顔料粒子について、それぞれ求めた粒径の立方体と近似して体積を求め、体積平均粒子径を平均一次粒子径とした。
【0222】
<イソインドリン化合物の製造>
(製造例1-1)
(工程1)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した4口フラスコに、水800部、1,3-ジイミノイソインドリン60部、28%アンモニア水120部の順に加え、撹拌した。そこへ2-シアノ-N-メチルアセトアミド42.58部を水160部に溶解させた溶液を、滴下漏斗を使用して30分間で滴下した。30℃にて原料の1,3-ジイミノイソインドリンが消失するまで加熱撹拌した。この反応スラリーを、ブフナー漏斗を用いて濾別した。さらに、濾過物を水1600部に加え、40℃にて30分撹拌し、未反応の2-シアノ-N-メチルアセトアミドを取り除いた。そのスラリーを濾別し不揮発分を得た。なお、1,3-ジイミノイソインドリンの消失はUPLC(超高速高分離液体クロマトグラフィ Waters社製)にて確認した。
(工程2)
還流冷却管、滴下漏斗及び、撹拌機を具備した4口フラスコに、上記不揮発分60部相当、水480部を加え、撹拌した。一方で、ガラス製フラスコに、水461部、80%酢酸194部、バルビツール酸35.67部を加え、65℃にて撹拌した。この混合物の加熱溶液を上記不揮発分の撹拌液の中に投入し、さらに反応を完結させるために85℃まで昇温し撹拌を行った。加熱撹拌は、原料として使用した上記不揮発分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、スラリーを濾別し、水2400部で3回洗浄を行い、不揮発分を得た。この不揮発分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物(1-1)を89.45部得た。
【0223】
(製造例1-2)
製造例1-1の工程2において、バルビツール酸35.67部を、1,3-ジメチルバルビツール酸43.48部に変更した以外は製造例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物(1-2)を92.05部得た。
【0224】
(製造例1-3)
製造例1-1の工程2において、バルビツール酸35.67部を、バルビツール酸33.89部及び1,3-ジメチルバルビツール酸2.17部に変更した以外は製造例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物(1-3)を85.34部得た。
【0225】
(製造例1-4)
(工程1)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した4口フラスコに、水800部、1,3-ジイミノイソインドリン60部、28%アンモニア水120部の順に加え、撹拌した。そこへ2-シアノ-N-メチルアセトアミド42.58部を水160部に溶解させた溶液を、滴下漏斗を使用して30分間で滴下した。30℃にて原料の1,3-ジイミノイソインドリンが消失するまで加熱撹拌した。この反応スラリーを、ブフナー漏斗を用いて濾別した。さらに、濾過物を水1600部に加え、40℃にて30分撹拌し、未反応の2-シアノ-N-メチルアセトアミドを取り除いた。そのスラリーを濾別し不揮発分を得た。なお、1,3-ジイミノイソインドリンの消失はUPLCにて確認した。
(工程2)
還流冷却管、滴下漏斗及び、撹拌機を具備した4口フラスコに、原料として先の調製で得た不揮発分60部相当、水480部、80%酢酸162部を加え、撹拌した。一方で、ガラス製フラスコに、水480部、80%酢酸162部を加え、そこへバルビツール酸33.89部を加え、65℃にて撹拌した。この混合物の加熱溶液を上記不揮発分の撹拌液の中に投入し、30℃にて3時間撹拌を行った。さらに別で用意したガラス製フラスコに、水48部、80%酢酸16部を加え、そこへ1,3-ジメチルバルビツール酸2.17部を加え、65℃にて撹拌した。この混合物の加熱溶液を先の反応撹拌液の中に投入し、さらに反応を完結させるために85℃まで昇温し撹拌を行った。加熱撹拌は、原料として使用した上記不揮発分が消失するまで行った。なお、原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、スラリーを濾別し、水2400部にて3回洗浄を行い、不揮発分を得た。この不揮発分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物(1-4)を85.45部得た。
【0226】
(製造例1-5)
製造例1-1の工程1において、2-シアノ-N-メチルアセトアミド42.58部を、2-シアノ-N-メチルアセトアミド40.45部及び2-シアノ-アセトアミド1.82部に、工程2において不揮発分60部相当を59.81部相当に変更した以外は製造例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物(1-5)を84.81部得た。
【0227】
(製造例1-6)
製造例1-1の工程1において、2-シアノ-N-メチルアセトアミド42.58部を、2-シアノ-N-メチルアセトアミド40.45部及び2-シアノ-N-フェニルアセトアミド3.48部に、工程2において不揮発分60部相当を60.82部相当に変更した以外は製造例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物(1-6)を85.76部得た。
【0228】
(製造例1-7)
製造例1-1の工程1において、2-シアノ-N-メチルアセトアミド42.58部を、2-シアノ-N-メチルアセトアミド40.45部及びシアノ酢酸フェニル3.50部に、工程2において不揮発分60部相当を60.84部相当に変更した以外は製造例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物(1-7)を85.78部得た。
【0229】
(製造例1-8)
製造例1-1の工程1において、1,3-ジイミノイソインドリン60部を、1,3-ジイミノイソインドリン57部及び5-メチル-1,3-ジイミノイソインドリン3.29部に、工程2において不揮発分60部相当を60.19部相当に変更した以外は製造例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物(1-8)を85.16部得た。
【0230】
(製造例1-9)
製造例1-1の工程1において、1,3-ジイミノイソインドリン60部を、1,3-ジイミノイソインドリン57部及び5-メトキシ-1,3-ジイミノイソインドリン3.62部に、工程2において不揮発分60部相当を60.40部相当に変更した以外は製造例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物(1-9)を85.36部得た。
【0231】
(製造例1-10)
製造例1-1の工程1において、1,3-ジイミノイソインドリン60部を、1,3-ジイミノイソインドリン57部及び4-メトキシ-1,3-ジイミノイソインドリン3.62部に、工程2において不揮発分60部相当を60.40部相当に変更した以外は製造例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物(1-10)を85.36部得た。
【0232】
(製造例1-11)
製造例1-1の工程2において、バルビツール酸35.67部を、バルビツール酸33.89部及び1-メチルバルビツール酸1.98部に変更した以外は製造例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物(1-11)を85.16部得た。
【0233】
(製造例1-12)
製造例1-1の工程2において、バルビツール酸35.67部を、バルビツール酸33.89部及び1,3-ジエチルバルビツール酸2.56部に変更した以外は製造例1-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物(1-24)を85.34部得た。
【0234】
製造例1-1~1-12で得られたイソインドリン化合物に含まれる構造を表1に示す。なお、表において、Hは水素、Meはメチル基、Etはエチル基、Phはフェニル基、OMeはメトキシ基を表す。
【0235】
【0236】
得られたイソインドリン化合物の同定は、マススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数(理論値)とを比較することによって実施した。マススペクトラムの分子イオンピークの測定は、Waters社のACQUITY UPLS H-Class(使用カラム:ACQUITY UPLC BEH C18 Column 130Å、1.7μm、2.1mm×50mm)/Ms TAP XEVO TQDを用いて実施した。イソインドリン化合物(製造例1-1~1-12)について、理論分子量と、それぞれ質量分析を行った測定値を表1に示す。測定値は測定の性質上、化合物のH(プロトン)が脱離するため、理論分子量の質量数-(マイナス)1の値であれば、化合物が一致することになる。
【0237】
(製造例1-13)
イソインドリン化合物(1-1)95部、イソインドリン化合物(1-2)5部、塩化ナトリウム1000部、及びジエチレングリコール150部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、60℃で8時間混練した。次に、混練した混合物を約70℃の温水に投入し、1時間撹拌してスラリー状として、濾過及び水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ、粉砕することによりイソインドリン化合物(1-13)95部を得た。
【0238】
(製造例2-1)
還流冷却管、滴下漏斗及び、撹拌機を具備した4口フラスコに、水800部、80%酢酸800部を加え、撹拌した。そこへバルビツール酸111.18部を加え、65℃にて撹拌し、バルビツール酸を溶解させた。一方で、ガラス製フラスコに、水800部、1,3-ジイミノイソインドリン60.00部を加え、30℃にて撹拌した。この撹拌液を上記加熱溶解液の中に投入し、さらに反応を完結させるために85℃まで昇温し撹拌を行った。加熱撹拌は、原料として使用した上記不揮発分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、水2000部にて3回洗浄を行い、不揮発分を得た。この不揮発分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物(2-1)を133.59部得た。
【0239】
(製造例2-2)
製造例2-1のバルビツール酸111.18部を1,3-ジメチルバルビツール酸135.53部に変更した以外は製造例2-1と同様に反応操作を行い、イソインドリン化合物(2-2)を154.00部得た。
【0240】
製造例2-1、2-2で得られたイソインドリン化合物に含まれる構造を表2に示す。なお、表において、Hは水素、Meはメチル基を表す。
【0241】
【0242】
得られたイソインドリン化合物の同定は、上記同様にマススペクトラムの分子イオンピークと、計算によって得られる質量数(理論値)とを比較することによって実施した。
【0243】
(製造例2-3)
(工程1)
還流冷却管、滴下漏斗、及び撹拌機を具備した4口フラスコに、水800部、1,3-ジイミノイソインドリン60部、28%アンモニア水120部の順に加え、撹拌した。そこへ2-シアノ-N-メチルアセトアミド42.58部を水160部に溶解させた溶液を、滴下漏斗を使用して30分間で滴下した。30℃にて原料の1,3-ジイミノイソインドリンが消失するまで加熱撹拌した。この反応スラリーを、ブフナー漏斗を用いて濾別し、不揮発分を得た。なお、1,3-ジイミノイソインドリンの消失はUPLC(超高速高分離液体クロマトグラフィ Waters社製)にて確認した。
(工程2)
還流冷却管、滴下漏斗及び、撹拌機を具備した4口フラスコに、上記不揮発分60部相当、水480部を加え、撹拌した。そこへ40%メチルアミン水溶液53.54部を加え、40℃にて攪拌した。撹拌は、原料として使用した上記不揮発分が消失するまで行った。原料の消失はUPLCにて確認した。
その後、水2400部で3回洗浄を行い、不揮発分を得た。この不揮発分を80℃の熱風乾燥機にて乾燥させ、イソインドリン化合物(2-3)を58.62部得た。
【0244】
<C.I.ピグメントイエロー180の製造>
(製造例3-1)PY180-2
水1300部を撹拌しながら1,2-ビス(2-アミノフェノキシ)-エタン 100部を加えて分散し、1時間後に35%塩酸223.9部を加えた。さらに1時間撹拌後、氷を加えて温度を0~5℃に調整し、38%亜硝酸ソーダ水溶液148.7部を加えてジアゾ化反応を行った。過剰な亜硝酸塩を除去するためにスルファミン酸を加えて30分以上撹拌し、ジアゾ成分を得た。
一方、5-アセトアセチルアミノ-ベンズイミダゾロン 190.9部をメタノール1500部に分散後、25%水酸化ナトリウム水溶液393.0部を加えて溶解させ、さらにジアルキルスルホコハク酸ナトリウム(ペレックスOT-P、花王社製)4.4部を加えて、カップラー成分を得た。
別途、80%酢酸水溶液813.5部に、氷500を加え、さらに撹拌しながら25%水酸化ナトリウム水溶液223.9部を加えて、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液を調製した。20℃に保持した緩衝液を撹拌している中に、ジアゾ成分及びカップラー成分を同時に滴下してカップリング反応を行った。滴下速度は、ジアゾ成分及びカップラー成分それぞれが2時間で滴下終了する速度に調整した。カップリング反応終了後、未反応のジアゾ成分が反応溶液中に含まれていないことを確認し、90℃に加熱し30分保持した。次いで、濾過、水洗を行い、含水ウェットケーキを得た。
攪拌装置付きの加圧可能な反応容器に、上記の含水状態のウェットケーキを全量仕込んだ。水を加えて容器内の質量を3500部にして撹拌し、さらにオルト-キシレン200部とヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド(トーホールN-220、東邦化学工業社製)20部を加えた後、150℃2時間、オートクレーブ中、自己圧力下で加熱した。水蒸気蒸留によりオルト-キシレンを除去した後、濾過、水洗し、80℃で乾燥させ、粉砕してPY180-2を257.9部得た。平均一次粒子径は、260nmであった。
【0245】
(製造例3-2)PY180-3
攪拌装置付きの加圧可能な反応容器に、製造例3-1で得られた含水状態のウェットケーキを全量仕込んだ。水を加えて容器内の質量を3500部にして撹拌し、さらにイソブタノールを1800部加えた後、110℃2時間、オートクレーブ中、自己圧力下で加熱した。水蒸気蒸留によりイソブタノールを除去した後、濾過、水洗し、80℃で乾燥させ、粉砕してPY180-3を258.2部得た。平均一次粒子径は、208nmであった。
【0246】
(製造例3-3)PY180-4
PY180-2を100部、塩化ナトリウム1000部、及びジエチレングリコール150部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、80℃で8時間混練した。次に、混練した混合物を約70℃の温水に投入し、1時間撹拌してスラリー状として、濾過及び水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ、粉砕することによりPY180-4 95部を得た。平均一次粒子径は、93nmであった。
【0247】
(製造例3-4)PY180-5
PY180-3を100部、塩化ナトリウム1000部、及びジエチレングリコール150部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、60℃で8時間混練した。次に、混練した混合物を約70℃の温水に投入し、1時間撹拌してスラリー状として、濾過及び水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ、粉砕することによりPY180-5 95部を得た。平均一次粒子径は、65nmであった。
【0248】
<フタロシアニン顔料の製造>
(製造例4-1)アルミニウムフタロシアニン
反応容器に、n-アミルアルコール1250部、フタロジニトリル225部、及び塩化アルミニウム無水物78部を加えて混合撹拌した。これに、DBU(1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン)266部を加え、昇温し、136℃で5時間還流した。撹拌したまま30℃まで冷却した反応溶液を、メタノール5000部、水10000部からなる混合溶剤中へ撹拌しながら注入し、青色のスラリーを得た。このスラリーを濾過し、メタノール2000部、水4000部からなる混合溶剤で洗浄し、乾燥して、135部の下記化学式(14)で示されるクロロアルミニウムフタロシアニンを得た。
【0249】
【0250】
次いで、反応容器中に、濃硫酸1500部を加え、次いで上記クロロアルミニウムフタロシアニン100部を氷浴下にて加え、25℃で4時間撹拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水9000部に注入し、生成した析出物を濾過、水洗、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、乾燥して、98部の下記化学式(12)で示されるアルミニウムフタロシアニンを得た。
【0251】
【0252】
(製造例4-2)チタニルフタロシアニン
反応容器に、1-ヘキサノール1280部、キノリン320部、1,3-ジイミノイソインドリン320部、及びオルトチタン酸テトラブチル206.3部を加えて混合撹拌した。155℃まで昇温し、8時間還流した。なお、系内から発生したn-ブタノールは系内に戻らないように回収した。撹拌したまま60℃まで冷却した反応溶液に、メタノール1000部を加え、スラリーを濾過し、メタノール1000部、N-メチルピロリドン500部、メタノール1000部の順で洗浄し、乾燥して、250部の下記化学式(13)で示されるチタニルフタロシアニンクルードを得た。
【0253】
【0254】
次いで、反応容器中に、濃硫酸1500部を加え、次いで上記チタニルフタロシアニンクルード100部を氷浴下にて加え、25℃で4時間撹拌を行った。続けて、この硫酸溶液を3℃の冷水9000部に注入し、生成した析出物を濾過、水洗、1%水酸化ナトリウム水溶液洗浄、水洗の順で処理を行い、ケーキを得た。次いで、反応容器中にジエチレングリコール1000部及び得られたケーキを加えて撹拌しスラリーとし、120℃で3時間撹拌を行った。60℃まで冷却したスラリーを濾過し、水5000部で洗浄して乾燥し、87部のチタニルフタロシアニンを得た。
【0255】
<C.I.ピグメントレッド122の製造>
(製造例5-1)PR122-3
よく乾燥した1,4-シクロヘキサンジオン-2,5-ジ(カルボン酸メチルエステル)45.60部(0.2モル)とp-トルイジン53.5部(0.5モル)、メタノール500部、35%塩酸4.65部(0.045モル)を1リットルの耐圧ガラスオートクレーブに計り入れ、密封した後、窒素ガスで十分に反応容器内の酸素を置換してからゲージ圧で0kg/cm2に設定し、強力に撹拌しながら室温から100℃まで15分で昇温した後、3時間反応を行った。反応中の反応容器の圧力は最高で3.8kg/cm2であった。反応後、30℃以下に冷却してから大気圧に開放して、10%水酸化ナトリウム水溶液18部を投入して10分間撹拌後、生成物を濾過した。濾過したケーキは60℃に加熱したメタノールで十分に洗浄した。生成した2,5-ジ-p-トルイジノ-3,6-ジヒドロテレフタル酸ジメチルエステルの収量は75.07部で理論収量の99.3%であった。また純度は99.5%であった。
次いで、上記で得られた2,5-ジ-p-トルイジノ-3,6-ジヒドロテレフタル酸ジメチルエステル30部、ジメチルナフタレン異性体混合物150部を、200ミリリットルの底部に出口バルブを有するフラスコ中、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、120~170℃に加熱した。一方、ジメチルナフタレン異性体混合物150部を、500ミリリットルフラスコ中、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら280℃以上に加熱した。そこに、上記の熱混合液を20~40分掛けて導入した後、混合物を280~283℃(還流)で30分保持した。沸騰したジメチルナフタレン異性体混合物に、120~170℃の2,5-ジアニリノ-3,6-ジヒドロテレフタル酸ジメチルエステルとジメチルナフタレン異性体混合物を導入した瞬間から、メタノールの発生を伴いながら2,9-ジメチル-6,13-ジヒドロキナクリドンの生成反応が開始し、メタノールの発生は283℃での還流開始直後には殆どなくなった。100℃に冷却後、窒素ガス雰囲気を解除し、内容物を濾過し、熱メタノール500部で洗浄し、乾燥して2,9-ジメチル-6,13-ジヒドロキナクリドン24.44部(理論量の96.71%)を得た。
上記で得られた2,9-ジメチル-6,13-ジヒドロキナクリドン10部とメタノール80部を還流器付200ミリリットルフラスコに仕込み撹拌した。50%水酸化ナトリウム水溶液12部を加え40℃で30分撹拌し、次いで10%硫酸26部を滴下、加水分解した後、速やかにm-ニトロベンゼンスルホン酸ソーダ10部を加え、すぐに50%水酸化ナトリウム水溶液3部を加えたのち4時間還流した。混合物を濾過、水洗、乾燥、及び粉砕を経て、粗製2,9-ジメチル-キナクリドン9.60部を得た。
次いで、氷浴で10℃以下に冷やし、フラスコ中で撹拌された98%硫酸90部に上記で得られた粗製2,9-ジメチル-キナクリドン9部を、温度が30℃以上にならないよう注意しながら添加した。これらを全量加えた後、30℃以下で1時間撹拌した。撹拌された10℃の水1000部に対して、上記硫酸溶液を突沸に注意しながら滴下した。滴下終了後、濾過し、中性になるまで水洗を行い、プレスケーキを得た。得られたプレスケーキに水を添加し、水酸化ナトリウムによってpHを9.0に調整した。次いで、ステアリン酸クロリドとタウリンとの縮合生成物を0.09部、35%イソブタノール水混合溶液中の顔料固形分が4%懸濁液になるように水とイソブタノールを加えた。この懸濁液を4時間還流させ、その後、液温が99℃になるまでイソブタノールを留去した。70℃まで冷却後、濾過、60℃温水洗、乾燥、及び粉砕を経て、PR122-3 8.9部を得た。平均一次粒子径は、163nmであった。
【0256】
(製造例5-2)PR122-4
PR122-3を100部、塩化ナトリウム1000部、及びジエチレングリコール150部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、140℃で4時間混練した。次に、混練した混合物を約70℃の温水に投入し、1時間撹拌してスラリー状として、濾過及び水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ、粉砕することによりPR122-4 95部を得た。平均一次粒子径は、140nmであった。
【0257】
(製造例5-3)PR122-5
PR122-3を100部、塩化ナトリウム1000部、及びジエチレングリコール150部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、90℃で8時間混練した。次に、混練した混合物を約70℃の温水に投入し、1時間撹拌してスラリー状として、濾過及び水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ、粉砕することによりPR122-4 95部を得た。平均一次粒子径は、55nmであった。
【0258】
(製造例5-4)PR122-6
氷浴で10℃以下に冷やし、フラスコ中で撹拌された98%硫酸90部に、製造例5-1で得られた粗製2,9-ジメチル-キナクリドン9.5部、及び後述する製造例6-1で得られたPV19-3 0.5部を、温度が30℃以上にならないよう注意しながら添加した。これらを全量加えた後、30℃以下にて1時間撹拌した。撹拌された10℃の水1000部に対して、上記硫酸溶液を突沸に注意しながら滴下した。滴下終了後、濾過し、中性になるまで水洗を行い、プレスケーキを得た。得られたプレスケーキに水を添加し水酸化ナトリウムによってpHを9.0に調整した。次いで、ステアリン酸クロリドとタウリンとの縮合生成物を0.09部、35%イソブタノール水混合溶液中の顔料固形分が4%懸濁液になるように水とイソブタノールを加えた。この懸濁液を2時間還流させ、その後、液温が99℃になるまでイソブタノールを留去した。70℃まで冷却後、濾過、60℃温水洗、乾燥、及び粉砕を経て、PR122-6 8.9部を得た。平均一次粒子径は、44nmであった。
【0259】
<C.I.ピグメントバイオレット19の製造>
(製造例6-1)PV19-3
よく乾燥した1,4-シクロヘキサンジオン-2,5-ジ(カルボン酸メチルエステル)45.6部(0.2モル)、アニリン46.57部(0.5モル)、メタノール500部、35%塩酸4.65部(0.045モル)を1リットルの耐圧ガラスオートクレーブに計り入れ、密封した後、窒素ガスで十分に反応容器内の酸素を置換してからゲージ圧で0kg/cm2に設定し、強力に撹拌しながら室温から100℃まで15分で昇温した後、3時間反応を行った。反応中の反応容器の圧力は最高で3.8kg/cm2であった。反応後30℃以下に冷却してから大気圧に開放して、10%水酸化ナトリウム水溶液18部を投入して10分間撹拌後、生成物を濾過した。濾過したケーキは60℃に加熱したメタノールで十分に洗浄した。生成した2,5-ジアニリノ-3,6-ジヒドロテレフタル酸ジメチルエステルの収量は75.07部で理論収量の99.3%であった。また純度は99.5%であった。
次いで、上記で得られた2,5-ジアニリノ-3,6-ジヒドロテレフタル酸ジメチルエステル30部、ジメチルナフタレン異性体混合物150部を、200ミリリットルの底部に出口バルブを有するフラスコ中、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら、120~170℃に加熱した。一方、ジメチルナフタレン異性体混合物150部を、500ミリリットルフラスコ中、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら280℃以上に加熱した。そこに、上記の熱混合液を20~40分掛けて導入した後、混合物を280~283℃(還流)で30分保持した。沸騰したジメチルナフタレン異性体混合物に、120~170℃の2,5-ジアニリノ-3,6-ジヒドロテレフタル酸ジメチルエステルとジメチルナフタレン異性体混合物を導入した瞬間から、メタノールの発生を伴いながら6,13-ジヒドロキナクリドンの生成反応が開始し、メタノールの発生は283℃での還流開始直後には殆どなくなった。100℃に冷却後、窒素ガス雰囲気を解除し、内容物を濾過し、熱メタノール500部で洗浄し、乾燥して6,13-ジヒドロキナクリドン24.47部(理論量の98.2%)を得た。IR及び吸光度により純度は99%以上であった。
上記で得られた6,13-ジヒドロキナクリドン10部とメタノール80部を還流器付200ミリリットルフラスコに仕込み撹拌した。50%水酸化ナトリウム水溶液12部を加え40℃で30分撹拌し、次いで10%硫酸26部を滴下、加水分解した後、速やかにm-ニトロベンゼンスルホン酸ソーダ10部を加え、すぐに50%水酸化ナトリウム水溶液3部を加えたのち4時間還流した。混合物を濾過、水洗、乾燥、及び粉砕を経て、PV19-3 9.82部を得た。平均一次粒子径は、130nmであった。
【0260】
(製造例6-2)PV19-4
PV19-3を100部、塩化ナトリウム1000部、及びジエチレングリコール150部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、120℃で4時間混練した。次に、混練した混合物を約70℃の温水に投入し、1時間撹拌してスラリー状として、濾過及び水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ、粉砕することによりPV19-4 95部を得た。平均一次粒子径は、108nmであった。
【0261】
(製造例6-3)PV19-5
PV19-3を95部、PR122-5を5部、塩化ナトリウム1000部、及びジエチレングリコール150部を、ステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所社製)中に仕込み、60℃で4時間混練した。次に、混練した混合物を約70℃の温水に投入し、1時間撹拌してスラリー状として、濾過及び水洗を繰り返して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除いた後、80℃で一昼夜乾燥させ、粉砕することによりPV19-5 95部を得た。平均一次粒子径は、31nmであった。
【0262】
<1>グラビア印刷インキセットの評価
まず、樹脂の測定法を以下説明する。
(水酸基価)
JIS K0070に従って求めた。
(酸価)
JIS K0070に従って求めた。
(アミン価)
アミン価は、樹脂1g中に含有するアミノ基を中和するのに必要とする塩酸の当量と同量の水酸化カリウムのmg数でJIS K0070に準じて以下の方法に従って求めた。
試料を0.5~2g精秤した(試料不揮発分:Sg)。精秤した試料にメタノール/メチルエチルケトン=60/40(質量比)の混合溶液50mLを加え溶解させた。得られた溶液に指示薬としてブロモフェノールブルーを加え、得られた溶液を0.2mol/Lエタノール性塩酸溶液(力価:f)で滴定を行なった。溶液の色が緑から黄に変化した点を終点とし、この時の滴定量(AmL)を用い、下記式によりアミン価を求めた。
アミン価=(A×f×0.2×56.108)/S [mgKOH/g]
【0263】
(重量平均分子量)
重量平均分子量はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)装置(東ソー社製HLC-8220)を用いて分子量分布を測定し、ポリスチレンを標準物質に用いた換算分子量として求めた。下記に測定条件を示す。
カラム:下記カラムを直列に連結して使用した。
東ソー社製ガードカラムHXL-H
東ソー社製TSKgelG5000HXL
東ソー社製TSKgelG4000HXL
東ソー社製TSKgelG3000HXL
東ソー社製TSKgelG2000HXL
検出器:RI(示差屈折計)
測定条件:カラム温度40℃
溶離液:テトラヒドロフラン
流速:1.0mL/分
【0264】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度(Tg)は、DSC(示差走査熱量測定測定)により求めた。なお、測定機はリガク社製DSC8231を使用し、測定温度範囲-70~250℃、昇温速度10℃/分、DSC曲線におけるガラス転移に基づく吸熱開始温度と終了温度との中点をガラス転移温度とした。
【0265】
(合成例1)ポリウレタン樹脂溶液[PU1]
アジピン酸と3-メチル-1,5-ペンタンジオールから得られる数平均分子量2,000のポリエステルジオール54.719部、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」)3.989部、酢酸n-プロピル(以下「nPAc」)10.0部を窒素気流下に85℃で3時間反応させ、nPAc10.0部を加え冷却し、末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液78.708部を得た。次いでイソホロンジアミン(以下「IPDA」)1.031部、ジ-n-ブチルアミン0.261部、nPAc72.96部及びイソプロパノール(以下「IPA」)47.04部を混合したものに、得られた末端イソシアネートプレポリマーの溶剤溶液78.708部を室温で徐々に添加し、次に50℃で1時間反応させ、不揮発分30%、重量平均分子量60,000、アミン価3.0mgKOH/gのポリウレタン樹脂溶液[PU1]を得た。
【0266】
(合成例2)ポリウレタン樹脂溶液[PU2]
数平均分子量700のポリプロピレングリコール(以下「PPG700」)200部、IPDI127部、及び酢酸エチル81.8部を窒素気流下にて80℃で4時間反応させ、末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を得た。次いでIPDA49.5部、2-エタノールアミン3部、酢酸エチル/イソプロパノール(以下「IPA」)=50/50(質量比)の混合溶剤803.9部を混合したものに、得られた末端イソシアネートウレタンプレポリマーの樹脂溶液を40℃で徐々に添加し、次に80℃で1時間反応させ、不揮発分30%、アミン価3.5mgKOH/g、水酸基価7.3mgKOH/g、重量平均分子量40,000のポリウレタン樹脂溶液[PU2]を得た。ガラス転移温度は-32℃であった。
【0267】
(ポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB1]の調製)
ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びビニルブチラール単位を有し、ブチラール環基を73質量%、水酸基を26質量%含むポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量19,000)を、酢酸エチル/IPA=1/1(質量比)混合溶剤に溶解し、固形分30%のポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB1]を調製した。
【0268】
(ポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB2]の調製)
ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びビニルブチラール単位を有し、ブチラール環基を77質量%、水酸基を21質量%含むポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量33,000)を、酢酸エチル/IPA=1/1(質量比)混合溶剤に溶解し、固形分30%のポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB2]を調製した。
【0269】
(ポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB3]の調製)
ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びビニルブチラール単位を有し、ブチラール環基を84質量%、水酸基を14質量%含むポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量33,000)を、酢酸エチル/IPA=1/1(質量比)混合溶剤に溶解し、固形分30%のポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB3]を調製した。
【0270】
〔グラビアインキの製造〕
(製造例Y1-1)[イエローインキ[Y1-1]の調製]
イソインドリン化合物(1-1)7.0部、ポリウレタン樹脂溶液[PU1]29.5部、ポリウレタン樹脂溶液[PU2]5.0部、nPAc20部、及びIPA5部を撹拌混合し、サンドミルで練肉した。次いで、さらに、ポリウレタン樹脂溶液[PU2]20部、nPAc11部、及びIPA3部を添加し、混合撹拌することによって、イエローインキ[Y1-1]を得た。
【0271】
(製造例Y1-2~Y1-28、C1-1~C1-5、M1-1~M1-13)[イエローインキ[Y1-2]~[Y1-28]、シアンインキ[C1-1]~[C1-5]、マゼンタインキ[M1-1]~[M1-13]の調製]
製造例Y1-1に記載したイエローインキ[Y1-1]の調製方法において、イソインドリン化合物(1-1)7.0部を、表3に示した化合物及び表3に記載した量に変更した以外は、製造例Y1-1と同様にして、表3に記載したインキを得た。
【0272】
【0273】
(製造例Y2-1)[イエローインキ[Y2-1]の調製]
イソインドリン化合物(1-3)7.0部、ポリウレタン樹脂溶液[PU1]29.5部、ポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB1]5.0部、nPAc20部、及びIPA5部を撹拌混合し、サンドミルで練肉した。次いで、ポリウレタン樹脂溶液[PU2]20部、nPAc11部、及びIPA3部をさらに添加し、混合撹拌することによって、イエローインキ[Y2-1]を得た。
【0274】
(製造例Y2-2~Y2-5、C2-1~C2-3、M2-1~M2-9)[イエローインキ[Y2-2]~[Y2-5]、シアンインキ[C2-1]~[C2-3]、マゼンタインキ[M2-1]~[M2-9]の調製]
製造例Y2-1に記載したイエローインキ[Y2-1]の調製方法において、イソインドリン化合物(1-3)7.0部及びポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB1]5.0部を、表4に示した化合物、表4記載の量、及び表4に示したポリビニルブチラール樹脂に変更した以外は、全て製造例Y2-1と同様にして、表4に記載のインキを得た。
【0275】
【0276】
インキの製造に使用した顔料を表5に示す。
【0277】
【0278】
<インキセットの評価>
(実施例AS-1~AS-49、比較例AS-1~AS-11)
得られた各インキを表6記載の通りに組合せて、インキセットA1~A60とした。得られたインキセットについて、以下の方法に従い、ガマット、耐光性、及び接着性を評価した。結果を表7、表8、及び表9に示す。
【0279】
【0280】
[初期ガマット評価]
イエローインキ、シアンインキ、マゼンタインキを、各々、混合溶剤1(メチルエチルケトン:nPCc:IPA=40:40:20)により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。希釈した各インキを用いて、シアン、マゼンタA、マゼンタB、イエローの刷り順で印刷し、単色ベタ部(シアン、マゼンタA、マゼンタB、イエロー)、単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)を有する印刷物を得た。印刷条件を以下に示す。
【0281】
(印刷条件)
印刷機:富士機械5色機
シアン版:ヘリオ175L/inch、スタイラス角度120°、エロンゲート
マゼンタ版:ヘリオ175L/inch、スタイラス角度120°、コンプレスト
イエロー版:ヘリオ175L/inch、スタイラス角度120°、コンプレスト
印刷速度:150m/分
基材:コロナ処理二軸延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡社製パイレンP-2161、20μm)
乾燥温度:50℃
【0282】
得られた印刷物について、グレタグマクベスD196を用いて印刷物の単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)の濃度値を測定した。また、測定機としてgretagmacbeth製のSpectroEyeを使用し、D50光源、2度観測視野、ホワイトバック(標準白色板使用)、フィルター類未使用の条件で、単色ベタ部及び重ね刷り部を測色した。
a*を横軸、b*縦軸とした2次元空間に、単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)、及び、単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)計6色又は7色のa*対b*の値を、プロットし面積を求めた。基準となる比較例AS-1の面積を100%とした場合の面積比を求め、その面積比から、以下の基準で評価した。結果を表7に示す。実用レベルは3以上である。
【0283】
(評価基準)
6:面積比が115%以上である
5:面積比が110%以上、115%未満である
4:面積比が105%以上、110%未満である
3:面積比が100%以上、105%未満である
2:面積比が98%以上、100%未満である
1:面積比が98%未満である
【0284】
[耐光性評価1]
(フェドメーターによる紫外線照射試験)
上記で得られた印刷物について、フェドメーター(紫外線カーボンアーク灯式耐光性試験機)により紫外線を48時間照射し、試験後に上記と同様に測色した。紫外線照射の条件は、JIS L0842:2004、JIS B7751:2007に従った。
【0285】
(ガマット)
初期ガマット評価の方法と同様にして、紫外線照射試験後の印刷物を用いて単色ベタ部及び重ね刷り部を測色し、a*対b*の値をプロットし面積を求めた。各実施例及び比較例の紫外線照射試験後における面積を、初期評価の面積で除した面積比を求め、その面積比から、以下の基準で評価した。結果を表7に示す。実用レベルは3以上である。
【0286】
(評価基準)
6:面積比が98%以上である
5:面積比が97.5%以上、98%未満である
4:面積比が97%以上、97.5%未満である
3:面積比が96.5%以上、97%未満である
2:面積比が96%以上、96.5%未満である
1:面積比が96%未満である
【0287】
(色差ΔE*)
単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)の測色結果から、紫外線照射試験前後の色差ΔE*を求め、以下の基準で評価した。結果を表7に示す。実用レベルは3以上である。
【0288】
(評価基準)
6:ΔE*が1.0未満である
5:ΔE*が1.0以上、1.5未満である
4:ΔE*が1.5以上、2.0未満である
3:ΔE*が2.0以上、3.0未満である
2:ΔE*が3.0以上、5.0未満である
1:ΔE*が5.0以上である
【0289】
(色相差ΔH*)
単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)の測色結果から、紫外線照射試験前後の色相差ΔH*を求め、以下の基準で評価した。結果を表7に示す。実用レベルは3以上である。また、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも大きい場合は「+」を、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも小さい場合は「-」を付記した。
【0290】
(評価基準)
6:ΔH*が0.5未満である
5:ΔH*が0.5以上、0.75未満である
4:ΔH*が0.75以上、1.0未満である
3:ΔH*が1.0以上、1.5未満である
2:ΔH*が1.5以上、3.0未満である
1:ΔH*が3.0以上である
【0291】
[耐光性評価2]
(白色LED照射試験)
上記で得られた印刷物について、下記の試験方法により白色LED照射試験を行った。試験後に上記と同様に測色し、白色LED照射下における色相の安定性を評価した。
(試験方法)
試験機:照明付インキュベーター FLI-2010H-LED(東京理化器械製)
光源:白色LED
照度:15000Lux
照射温度:10℃
照射湿度:70%RH
照射日数:96時間
【0292】
(ガマット)
初期ガマット評価の方法と同様にして、白色LED照射試験後の印刷物を用いて単色ベタ部及び重ね刷り部を測色し、a*対b*の値をプロットし面積を求めた。各実施例及び比較例の白色LED照射試験後における面積を、初期評価の面積で除した面積比を求め、その面積比から、以下の基準で評価した。結果を表8に示す。実用レベルは3以上である。
【0293】
(評価基準)
6:面積比が98%以上である
5:面積比が97.5%以上、98%未満である
4:面積比が97%以上、97.5%未満である
3:面積比が96.5%以上、97%未満である
2:面積比が96%以上、96.5%未満である
1:面積比が96%未満である
【0294】
(色差ΔE*)
単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)の測色結果から、白色LED照射試験前後の色差ΔE*を求め、以下の基準で評価した。結果を表8に示す。実用レベルは3以上である。
【0295】
(評価基準)
6:ΔE*が1.0未満である
5:ΔE*が1.0以上、1.5未満である
4:ΔE*が1.5以上、2.0未満である
3:ΔE*が2.0以上、3.0未満である
2:ΔE*が3.0以上、5.0未満である
1:ΔE*が5.0以上である
【0296】
(色相差ΔH*)
単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)の測色結果から、白色LED照射試験前後の色相差ΔH*を求め、以下の基準で評価した。結果を表8に示す。実用レベルは3以上である。また、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも大きい場合は「+」を、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも小さい場合は「-」を付記した。
【0297】
(評価基準)
6:ΔH*が0.5未満である
5:ΔH*が0.5以上、0.75未満である
4:ΔH*が0.75以上、1.0未満である
3:ΔH*が1.0以上、1.5未満である
2:ΔH*が1.5以上、3.0未満である
1:ΔH*が3.0以上である
【0298】
【0299】
【0300】
表7及び表8中、Yはイエロー、Cはシアン、MAはマゼンタA、MBはマゼンタBの、それぞれ単色ベタ部を表す。また、Y×Cはイエロー×シアン、C×MAはシアン×マゼンタA、Y×MBはイエロー×マゼンタB、Y×MAはイエロー×マゼンタAの、それぞれ単色ベタ刷り重ね部のことを表す。
【0301】
表7及び表8の結果から、本発明の一実施形態であるグラビア印刷インキセットは、色再現性が高く、かつ耐光性が良好であることが確認できた。特に、イソインドリン化合物(4)又はイソインドリン化合物(5)を含むイエローインキを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。また、最適な粒径のC.I.ピグメントイエロー180を含むイエローインキを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。
また、C.I.ピグメントブルー15:3又はC.I.ピグメントブルー15:4を含むシアンインキを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。
また、最適な粒径のC.I.ピグメントレッド122を含むマゼンタインキA、及び最適な粒径のC.I.ピグメントバイオレット19を含むマゼンタインキBを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。
特に、イエロー×マゼンタの領域において、比較例の印刷インキセットでは、紫外線照射による耐光性試験では色相が青味に大きく変化する(色相角が小さくなる)一方で、白色LED照射による耐光性試験では色相が黄味に大きく変化した(色相角が大きくなった)。すなわち、比較例の印刷インキセットは、光源によって色相の経時変化が異なり、十分な耐光性を得ることが困難であることがわかる。これに対し、本発明の実施形態の印刷インキセットでは、光源によらず、良好な耐光性が得られることがわかる。
【0302】
[接着性]
インキセットA3、A20、A40~A49、及びA60を用いて上記のように得られた印刷物について、それぞれ印刷3時間後に、印刷面に幅12mmの粘着テープ(ニチバン社製 セロハンテープ)を貼り付け、テープを急激に引き剥がした時のインキ被膜の剥離の程度を目視で判定した。なお、判定基準は以下の通りとした。結果を表9に示す。実用レベルは2以上である。
【0303】
(評価基準)
5:印刷面のインキ被膜が全く剥離しないもの
4:インキ被膜の剥離面積が1%以上2%未満であるもの
3:インキ被膜の剥離面積が2%以上3%未満であるもの
2:インキ被膜の剥離面積が3%以上5%未満であるもの
1:インキ被膜の剥離面積が5%以上のもの
【0304】
【0305】
表9の結果からわかるように、ポリビニルブチラール樹脂を含む印刷インキセットは、接着性がより良好であった。特に、水酸基含有率が25%以下のポリビニルブチラール樹脂を含むインキセットは接着性がさらに良好であった。比較例の印刷インキセットでは、ポリビニルブチラール樹脂を含んでいても良好な接着性は得られなかった。
【0306】
<包装材料の製造>
(実施例BP-1)[包装材料B1の作製]
シアンインキ[C1-1]、マゼンタインキ[M1-1]、マゼンタインキ[M1-7]、イエローインキ[Y1-1]を、上記混合溶剤1により、粘度が16秒(25℃、ザーンカップNo.3)となるように希釈した。
希釈した各インキを用いて、版深20μmのグラビア版を備えたグラビア校正6色機と、ブラックインキ(リオアルファ R92墨(東洋インキ社製))、シアンインキ[C1-1]、マゼンタインキ[M1-1]、マゼンタインキ[M1-7]、イエローインキ[Y1-1]、ホワイトインキ(リオアルファ R631白(東洋インキ社製))を含むインキセットB1とを用いて、厚み20μmのコロナ処理延伸ポリプロピレンフィルム(OPP基材)に対し、ブラックインキ、シアンインキ[C1-1]、マゼンタインキ[M1-1]、マゼンタインキ[M1-7]、イエローインキ[Y1-1]、ホワイトインキの順で重ね印刷し、各ユニットにおいてはそれぞれ50℃にて乾燥し、「OPP基材/ブラック、シアン、マゼンタA、マゼンタB、イエロー又はホワイトの印刷層」の構成である印刷物を得た。
次いで、得られた印刷物の印刷層上に、ウレタン系ラミネート接着剤(東洋モートン社製TM320/CAT13B、不揮発分30%酢酸エチル溶液)を、乾燥後の塗布量が2.0g/m2となるように塗工して乾燥した。次いで、接着剤層上に、厚み50μmの未延伸ポリエチレン(PE)フィルムを貼り合わせ、「OPP基材/5色重ね印刷層/接着剤層/PE基材」の構成である包装材料B1を得た。
【0307】
(実施例BP-2~BP-49、比較例BP-1~BP-2)[包装材料B2~B51の作製]
実施例BP-1で使用した印刷インキセットB1を、表10に示す印刷インキセットに変更した以外は実施例BP-1と同様にして、包装材料B2~B51を得た。
【0308】
【0309】
上述のように、本実施形態及び比較のグラビア印刷インキセットを使用した包装材料を作製した。
【0310】
これらの包装材料のうち、包装材料B3、B20、及びB40~B51について、以下の方法に従いラミネート強度を評価した。結果を表11に示す。
【0311】
[初期ラミネート強度評価]
各包装材料を、巾15mmで裁断し、印刷層と接着剤層の層間で剥離させた後、剥離強度をインテスコ製201万能引張試験機にて剥離強度の測定を行った。なお、判定基準は以下の通りとした。結果を表11に示す。実用レベルは2以上である。
【0312】
(評価基準)
5:2.0N/15mm以上
4:1.5N/15mm以上、2.0N/15mm未満
3:1.0N/15mm以上、1.5N/15mm未満
2:0.5N/15mm以上、1.0N/15mm未満
1:0.5N/15mm未満
【0313】
[耐光性試験後ラミネート強度評価1]
(フェドメーターによる紫外線照射試験)
各包装材料を、フェドメーター(紫外線カーボンアーク灯式耐光性試験機)により紫外線を48時間照射し、試験後に上記と同様に剥離強度を測定した。紫外線照射の条件は、JIS L0842:2004、JIS B7751:2007に従った。
【0314】
[耐光性試験後ラミネート強度評価2]
(白色LED照射試験)
各包装材料を、下記の試験方法により白色LED照射試験を行った。試験後に上記と同様に剥離強度を測定した。
(試験方法)
試験機:照明付インキュベーター FLI-2010H-LED(東京理化器械製)
光源:白色LED
照度:15000Lux
照射温度:10℃
照射湿度:70%RH
照射日数:96時間
【0315】
【0316】
表11に示した結果からわかるように、本実施形態の印刷インキセットを用いた包装材料は、耐光性試験後でも良好なラミネート強度を有していた。ポリビニルブチラール樹脂を含むインキセットを用いた包装材料は、耐光性試験後のラミネート強度がより良好であった。特に、水酸基含有率が25%以下のポリビニルブチラール樹脂を含む印刷インキセットを用いた包装材料は、耐光性試験後のラミネート強度がさらに良好であった。一方、比較例の印刷インキセットを用いた包装材料では、耐光性試験後のラミネート強度が実用レベルに達しておらず、またポリビニルブチラール樹脂を含んでいても良好なラミネート強度は得られなかった。
【0317】
<2>水性フレキソ印刷インキセットの評価
【0318】
(合成例3)(水性ポリウレタン樹脂[PU3]の合成)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた4ツ口の2000mlフラスコに、数平均分子量2,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール82.3部、数平均分子量2,000のポリエチレングリコール3部、ジメチロールブタン酸13部、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール1.7部を仕込み、乾燥窒素で置換し、100℃まで昇温した。撹拌下、IPDI33.3部を20分間で滴下し、温度を徐々に140℃まで昇温した(NCO/OH=0.98)。さらに30分間反応させ、ウレタン樹脂を得た。次に、冷却しながら28%アンモニア水5.3部を含む蒸留水399.8部を加え水性ポリウレタン樹脂[PU3]を得た(重量平均分子量は約40,000、不揮発分25%、酸価36.9(mgKOH/g)、水酸基価11.1(mgKOH/g))。
【0319】
(ポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB4]の調製)
ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びビニルブチラール単位を有し、ブチラール環基を73質量%、水酸基を26質量%含むポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量19,000)を、IPAに溶解し、固形分30%のポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB4]を調製した。
【0320】
(ポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB5]の調製)
ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びビニルブチラール単位を有し、ブチラール環基を77質量%、水酸基を21質量%含むポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量33,000)を、IPAに溶解し、固形分30%のポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB5]を調製した。
【0321】
(ポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB6]の調製)
ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びビニルブチラール単位を有し、ブチラール環基を84質量%、水酸基を14質量%含むポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量33,000)を、IPAに溶解し、固形分30%のポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB6]を調製した。
【0322】
〔水性フレキソインキの製造〕
(製造例Y3-1)[イエローインキ[Y3-1]の調製]
水性ポリウレタン樹脂[PU3]45部、イソインドリン化合物(1-1)15部、ポリエチレンワックス(W310 三井化学社製、粒子径9.5μm、軟化点132℃、針入度法硬度 0.8)2部、アジピン酸ジヒドラジド0.2部、アンモニア水(28%)0.2部、水18.8部、イソプロパノール18.8部を、グラインドゲージで粒度が10μm以下になるまでアイガーミルで分散し、イエローインキ[Y3-1]を製造した。
【0323】
(製造例Y3-2~Y3-28、C3-1~C3-5、M3-1~M3-13)[イエローインキ[Y3-2]~[Y3-28]、シアンインキ[C3-1]~[C3-5]、マゼンタインキ[M3-1]~[M3-13]の調製]
製造例Y3-1に記載したイエローインキ[Y3-1]の製造方法において、イソインドリン化合物(1-1)15部を、表12に示した化合物及び表12に記載した量に変更した以外は製造例Y3-1と同様にして、表12に記載したインキを得た。
【0324】
【0325】
(製造例Y4-1)[イエローインキ[Y4-1]の調製]
水性ポリウレタン樹脂[PU3]45部、イソインドリン化合物(1-3)15部、ポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB4]5部、ポリエチレンワックス(W310 三井化学社製、粒子径9.5μm、軟化点132℃、針入度法硬度 0.8)2部、アジピン酸ジヒドラジド0.2部、アンモニア水(28%)0.2部、水18.8部、イソプロパノール18.8部を、グラインドゲージで粒度が10μm以下になるまでアイガーミルで分散し、イエローインキ[Y4-1]を製造した。
【0326】
(製造例Y4-2~Y4-5、C4-1~C4-3、M4-1~M4-9)[イエローインキ[Y4-2]~[Y4-5]、シアンインキ[C4-1]~[C4-3]、マゼンタインキ[M4-1]~[M4-9]の調製]
製造例Y4-1に記載したイエローインキ[Y4-1]の調製方法において、イソインドリン化合物(1-3)15部及びポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB4]5部を、表13に示した化合物、表13に記載した量、及び表13に示したポリビニルブチラール樹脂に変更した以外は製造例Y4-1と同様にして、表13に記載したインキを得た。
【0327】
【0328】
インキの製造に使用した顔料は、グラビアインキの製造で示した表5の通りである。
【0329】
<インキセットの評価>
(実施例CS-1~CS-49、比較例CS-1~CS-11)
得られた各インキを表14に記載した通りに組合せて、インキセットC1~C60とした。得られたインキセットについて、以下の方法でガマット、耐光性、及び接着性を評価した。結果を表15、表16、及び表17に示す。
【0330】
【0331】
[初期ガマット評価]
得られた印刷インキセットを用いて、以下の印刷条件で、シアン、マゼンタA、マゼンタB、イエローの刷り順で印刷し、単色ベタ部(シアン、マゼンタA、マゼンタB、イエロー)と、単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)とを有する印刷物を得た。
【0332】
(印刷条件)
印刷機:ウインドミュラー&ヘルシャー社製 MIRAFLEX CM
フレキソ版:感光性樹脂版 KODAK社製 FLEXCEL NXHデジタルフレキソプレート 版厚1.14mm 版線数150lpi
アニロックスロール:900lpi 3cc/m2
基材:コロナ処理ポリエステル(PET)フィルム(東洋紡績社製 E5100、厚さ12μm)
速度:300m/分
乾燥温度:色間ドライヤー100℃、トンネルドライヤー100℃
【0333】
得られた印刷物について、グレタグマクベスD196を用いて印刷物の単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)の濃度値を測定した。また、測定機としてgretagmacbeth製のSpectroEyeを使用し、D50光源、2度観測視野、ホワイトバック(標準白色板使用)、フィルター類未使用の条件で、単色ベタ部及び重ね刷り部を測色した。
a*を横軸、b*縦軸とした2次元空間に、単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)、及び、単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)計6色又は7色のa*対b*の値を、プロットし面積を求めた。基準となる比較例CS-1の面積を100%とした場合の面積比を求め、その面積比から、以下の基準で評価した。結果を表15に示す。実用レベルは3以上である。
【0334】
(評価基準)
6:面積比が115%以上である
5:面積比が110%以上、115%未満である
4:面積比が105%以上、110%未満である
3:面積比が100%以上、105%未満である
2:面積比が98%以上、100%未満である
1:面積比が98%未満である
【0335】
[耐光性評価1]
(フェドメーターによる紫外線照射試験)
上記で得られた印刷物について、フェドメーター(紫外線カーボンアーク灯式耐光性試験機)により紫外線を48時間照射し、試験後に上記と同様にして測色した。紫外線照射の条件は、JIS L0842:2004、JIS B7751:2007に従った。
【0336】
(ガマット)
初期ガマット評価の方法と同様にして、紫外線照射試験後の印刷物を用いて単色ベタ部及び重ね刷り部を測色し、a*対b*の値をプロットし面積を求めた。各実施例及び比較例の紫外線照射試験後における面積を、初期評価の面積で除した面積比を求め、その面積比から、以下の基準で評価した。結果を表15に示す。実用レベルは3以上である。
【0337】
(評価基準)
6:面積比が98%以上である
5:面積比が97.5%以上、98%未満である
4:面積比が97%以上、97.5%未満である
3:面積比が96.5%以上、97%未満である
2:面積比が96%以上、96.5%未満である
1:面積比が96%未満である
【0338】
(色差ΔE*)
単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)の測色結果から、紫外線照射試験前後の色差ΔE*を求め、以下の基準で評価した。結果を表15に示す。実用レベルは3以上である。
【0339】
(評価基準)
6:ΔE*が1.0未満である
5:ΔE*が1.0以上、1.5未満である
4:ΔE*が1.5以上、2.0未満である
3:ΔE*が2.0以上、3.0未満である
2:ΔE*が3.0以上、5.0未満である
1:ΔE*が5.0以上である
【0340】
(色相差ΔH*)
単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)の測色結果から、紫外線照射試験前後の色相差ΔH*を求め、以下の基準で評価した。結果を表15に示す。実用レベルは3以上である。また、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも大きい場合は「+」を、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも小さい場合は「-」を付記した。
【0341】
(評価基準)
6:ΔH*が0.5未満である
5:ΔH*が0.5以上、0.75未満である
4:ΔH*が0.75以上、1.0未満である
3:ΔH*が1.0以上、1.5未満である
2:ΔH*が1.5以上、3.0未満である
1:ΔH*が3.0以上である
【0342】
[耐光性評価2]
(白色LED照射試験)
上記で得られた印刷物について、下記の試験方法により白色LED照射試験を行った。試験後に上記と同様に測色し、白色LED照射下における色相の安定性を評価した。
(試験方法)
試験機:照明付インキュベーター FLI-2010H-LED(東京理化器械製)
光源:白色LED
照度:15000Lux
照射温度:10℃
照射湿度:70%RH
照射日数:96時間
【0343】
(ガマット)
初期ガマット評価の方法と同様にして、白色LED照射試験後の印刷物を用いて単色ベタ部及び重ね刷り部を測色し、a*対b*の値をプロットし面積を求めた。各実施例及び比較例の白色LED照射試験後における面積を、初期評価の面積で除した面積比を求め、その面積比から、以下の基準で評価した。結果を表16に示す。実用レベルは3以上である。
【0344】
(評価基準)
6:面積比が98%以上である
5:面積比が97.5%以上、98%未満である
4:面積比が97%以上、97.5%未満である
3:面積比が96.5%以上、97%未満である
2:面積比が96%以上、96.5%未満である
1:面積比が96%未満である
【0345】
(色差ΔE*)
単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)の測色結果から、白色LED照射試験前後の色差ΔE*を求め、以下の基準で評価した。結果を表16に示す。実用レベルは3以上である。
【0346】
(評価基準)
6:ΔE*が1.0未満である
5:ΔE*が1.0以上、1.5未満である
4:ΔE*が1.5以上、2.0未満である
3:ΔE*が2.0以上、3.0未満である
2:ΔE*が3.0以上、5.0未満である
1:ΔE*が5.0以上である
【0347】
(色相差ΔH*)
単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)の測色結果から、白色LED照射試験前後の色相差ΔH*を求め、以下の基準で評価した。結果を表16に示す。実用レベルは3以上である。また、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも大きい場合は「+」を、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも小さい場合は「-」を付記した。
【0348】
(評価基準)
6:ΔH*が0.5未満である
5:ΔH*が0.5以上、0.75未満である
4:ΔH*が0.75以上、1.0未満である
3:ΔH*が1.0以上、1.5未満である
2:ΔH*が1.5以上、3.0未満である
1:ΔH*が3.0以上である
【0349】
【0350】
【0351】
表15及び表16において、Yはイエロー、Cはシアン、MAはマゼンタA、MBはマゼンタBの、それぞれ単色ベタ部を表す。また、Y×Cはイエロー×シアン、C×MAはシアン×マゼンタA、Y×MBはイエロー×マゼンタB、Y×MAはイエロー×マゼンタAの、それぞれ単色ベタ刷り重ね部のことを表す。
【0352】
表15及び表16の結果から、本発明の一実施形態である水性フレキソ印刷インキセットは、色再現性が高く、かつ耐光性が良好であることが確認できた。特に、イソインドリン化合物(4)又はイソインドリン化合物(5)を含むイエローインキを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。また、最適な粒径のC.I.ピグメントイエロー180を含むイエローインキを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。
また、C.I.ピグメントブルー15:3又はC.I.ピグメントブルー15:4を含むシアンインキを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。
また、最適な粒径のC.I.ピグメントレッド122を含むマゼンタインキA、及び最適な粒径のC.I.ピグメントバイオレット19を含むマゼンタインキBを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。
特に、イエロー×マゼンタの領域において、比較例のインキセットでは、紫外線照射による耐光性試験では色相が青味に大きく変化する(色相角が小さくなる)一方で、白色LED照射による耐光性試験では色相が黄味に大きく変化した(色相角が大きくなった)。すなわち、比較例の印刷インキセットは、光源によって色相の経時変化が異なり、十分な耐光性を得ることが困難であることがわかる。これに対し、本発明の実施形態の印刷インキセットでは、光源によらず、良好な耐光性が得られることがわかる。
【0353】
[接着性]
インキセットC3、C20、C40~C49、及びC60を用いて上記のように得られた印刷物について、それぞれ印刷3時間後に、印刷面に幅12mmの粘着テープ(ニチバン社製 セロハンテープ)を貼り付け、テープを急激に引き剥がした時のインキ被膜の剥離の程度を目視で判定した。なお、判定基準は以下の通りとした。結果を表17に示す。実用レベルは2以上である。
【0354】
(評価基準)
5:印刷面のインキ被膜が全く剥離しないもの
4:インキ被膜の剥離面積が1%以上2%未満であるもの
3:インキ被膜の剥離面積が2%以上3%未満であるもの
2:インキ被膜の剥離面積が3%以上5%未満であるもの
1:インキ被膜の剥離面積が5%以上のもの
【0355】
【0356】
表17の結果からわかるように、ポリビニルブチラール樹脂を含む印刷インキセットは、接着性がより良好であった。特に、水酸基含有率が25%以下のポリビニルブチラール樹脂を含む印刷インキセットは、接着性がさらに良好であった。比較例の印刷インキセットでは、ポリビニルブチラール樹脂を含んでいても良好な接着性は得られなかった。
【0357】
<包装材料の製造>
(実施例DP-1)[包装材料D1の作製]
フレキソ印刷機と、ブラックインキ(アクワリオナ R92F墨(東洋インキ社製))、シアンインキ[C3-1]、マゼンタインキ[M3-1]、マゼンタインキ[M3-7]、イエローインキ[Y3-1]、ホワイトインキ(アクワリオナ R63白(東洋インキ社製))を含むインキセットD1とを用いて、厚み20μmのコロナ処理延伸ポリプロピレンフィルム(OPP基材)に対し、ブラックインキ、シアンインキ[C3-1]、マゼンタインキ[M3-1]、マゼンタインキ[M3-7]、イエローインキ[Y3-1]、ホワイトインキの順で重ね印刷し、各ユニットにおいてはそれぞれ100℃にて乾燥し、「OPP基材/ブラック、シアン、マゼンタA、マゼンタB、イエロー又はホワイトの印刷層」の構成である印刷物を得た。
次いで、得られた印刷物の印刷層上に、ウレタン系ラミネート接着剤(東洋モートン社製TM320/CAT13B、不揮発分30%酢酸エチル溶液)を、乾燥後の塗布量が2.0g/m2となるように塗工して乾燥した。次いで、接着剤層上に、厚み50μmの未延伸ポリエチレン(PE)フィルムを貼り合わせ、「OPP基材/色重ね印刷層/接着剤層/PE基材」の構成である包装材料D1を得た。
【0358】
(実施例DP-2~DP-49、比較例DP-1~DP-2)[包装材料D2~D51の作製]
実施例DP-1で使用した印刷インキセットD1を、表18に示す印刷インキセットに変更した以外は実施例DP-1と同様にして、包装材料D2~D51を得た。
【0359】
【0360】
上述のように、本実施形態及び比較の水性フレキソ印刷インキセットを使用することで、包装材料を作製した。
【0361】
これらの包装材料のうち、包装材料D3、D20、及びD40~D51について、以下の方法に従いラミネート強度を評価した。結果を表19に示す。
【0362】
[初期ラミネート強度評価]
各包装材料を、巾15mmで裁断し、印刷層と接着剤層との層間で剥離させた後、剥離強度をインテスコ製201万能引張試験機にて剥離強度の測定を行った。なお、判定基準は以下の通りとした。結果を表19に示す。実用レベルは2以上である。
【0363】
(評価基準)
5:2.0N/15mm以上
4:1.5N/15mm以上、2.0N/15mm未満
3:1.0N/15mm以上、1.5N/15mm未満
2:0.5N/15mm以上、1.0N/15mm未満
1:0.5N/15mm未満
【0364】
[耐光性試験後ラミネート強度評価1]
(フェドメーターによる紫外線照射試験)
各包装材料を、フェドメーター(紫外線カーボンアーク灯式耐光性試験機)により紫外線を48時間照射し、試験後に上記と同様に剥離強度を測定した。紫外線照射の条件は、JIS L0842:2004、JIS B7751:2007に従った。
【0365】
[耐光性試験後ラミネート強度評価2]
(白色LED照射試験)
各包装材料を、下記の試験方法により白色LED照射試験を行った。試験後に上記と同様に剥離強度を測定した。
(試験方法)
試験機:照明付インキュベーター FLI-2010H-LED(東京理化器械製)
光源:白色LED
照度:15000Lux
照射温度:10℃
照射湿度:70%RH
照射日数:96時間
【0366】
【0367】
表19に示した結果からわかるように、本発明の実施形態の印刷インキセットを用いた包装材料は、耐光性試験後でも良好なラミネート強度を有していた。ポリビニルブチラール樹脂を含む印刷インキセットを用いた包装材料は、耐光性試験後のラミネート強度がより良好であった。特に、水酸基含有率が25%以下のポリビニルブチラール樹脂を含む印刷インキセットを用いた包装材料は、耐光性試験後のラミネート強度がさらに良好であった。比較例の印刷インキセットを用いた包装材料では、耐光性試験後のラミネート強度が実用レベルに達しておらず、またポリビニルブチラール樹脂を含んでいても良好なラミネート強度は得られなかった。
【0368】
<3>フレキソ印刷インキセットの評価
(合成例4)(ポリウレタン樹脂[PU4]の合成)
還流冷却管、滴下漏斗、ガス導入管、撹拌装置、及び温度計を備えた四つ口フラスコに、数平均分子量2,000のポリテトラメチレンエーテルグリコール219.6部、IPDI56.6部を仕込み、窒素ガスを導入しながら、90℃まで徐々に昇温し、NCO%が4.4%になるまで反応を行った。次に、得られた反応生成物にジエチルアミノエタノール11.6部を加え、更に90℃で3時間にわたって反応を行い、プレポリマーを得た。酢酸エチル115部を使用して、上記プレポリマーを、滴下槽に移した。
次に、反応槽にIPDA12.2部、ジブチルアミン0.002部、IPA345.0部、酢酸エチル240.0部を仕込み、上記プレポリマーを滴下槽から反応槽に30分間にわたって滴下した。滴下終了後、40℃で1時間にわたって反応を行うことによって、不揮発分30%、重量平均分子量51,000、アミン価9.5mgKOH/gのポリウレタン樹脂[PU4]を得た。
【0369】
(CAPワニスの調製)
以下に示す配合割合で、セルロースアセテートプロピオネート樹脂(以下、CAP樹脂と記す)を各溶剤と混合し溶解させることによって、CAPワニスを調製した。CAP樹脂としては、イーストマンケミカル社製の商品名「CAP-504-0.2」を使用した。このCAP樹脂のアセチル基含有率は2.5質量%、プロピオニル基含有率は45質量%、水酸基含有率は2.6質量%、ガラス転移温度は142℃であった。
(配合割合)
CAP樹脂:20%
nPAc:40%
IPA:40%
【0370】
(ポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB7]の調製)
ビニルアルコール単位、酢酸ビニル単位及びビニルブチラール単位を有し、ブチラール環基を77質量%、水酸基を21質量%含むポリビニルブチラール樹脂(重量平均分子量33,000)を、酢酸エチル/IPA=1/1(質量比)混合溶剤に溶解し、固形分20%のポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB7]を調製した。
【0371】
<フレキソインキの製造>
(製造例Y5-1)[イエローインキ[Y5-1]の調製]
下記の材料を、高速ミキサーを用いて均一な状態が得られるまで予め撹拌及び混合した後、得られた混合物を、2mm径のガラスビーズを充填した卓上サンドミルを用いて分散処理し、イエローインキ[Y5-1]を得た。
・イソインドリン化合物(1-1):13.0部
・ポリウレタン樹脂[PU4]:37.6部
・CAPワニス:1.2部
・ポリビニルブチラール樹脂溶液[PVB7]:2.4部
・ポリエチレンワックス(W310 三井化学社製):0.5部
・nPAc:13.8部
・IPA:31.5部
【0372】
(製造例Y5-2~Y5-28、C5-1~C5-5、M5-1~M5-13)[イエローインキ[Y5-2]~[Y5-28]、シアンインキ[C5-1]~[C5-5]、マゼンタインキ[M5-1]~[M5-13]の調製]
製造例Y5-1に記載したイエローインキ[Y5-1]の調製方法において、イソインドリン化合物(1-1)13.0部を、表20に示した化合物及び表20に記載した量に変更した以外は製造例Y5-1と同様にして、表20に記載したインキを得た。
【0373】
【0374】
インキの製造に使用した顔料は、グラビアインキの製造で示した表5の通りである。
【0375】
<印刷インキセットの評価>
(実施例ES-1~ES-42、比較例ES-1~ES-10)
得られた各インキを表21記載の通りに組合せて、印刷インキセットE1~E52とした。得られた印刷インキセットについて、以下の方法でガマット及び耐光性を評価した。結果を表22及び表23に示す。
【0376】
【0377】
[初期ガマット評価]
得られたインキセットを用いて、以下の印刷条件で、シアン、マゼンタA、マゼンタB、イエローの刷り順で印刷し、単色ベタ部(シアン、マゼンタA、マゼンタB、イエロー)と、単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)とを有する印刷物を得た。
【0378】
(印刷条件)
印刷機:ウインドミュラー&ヘルシャー社製 MIRAFLEX CM
フレキソ版:感光性樹脂版 KODAK社製 FLEXCEL NXHデジタルフレキソプレート 版厚1.14mm 版線数150lpi
アニロックスロール:900lpi 3cc/m2
基材:コロナ処理延伸ポリプロピレン(OPP)フィルム(東洋紡株式会社製 パイレンP2161、厚さ40μm)
速度:300m/分
乾燥温度:色間ドライヤー100℃、トンネルドライヤー100℃
【0379】
得られた印刷物について、グレタグマクベスD196を用いて印刷物の単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)の濃度値を測定した。また、測定機としてgretagmacbeth製のSpectroEyeを使用し、D50光源、2度観測視野、ホワイトバック(標準白色板使用)、フィルター類未使用の条件で、単色ベタ部及び重ね刷り部を測色した。
a*を横軸、b*縦軸とした2次元空間に、単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)、及び、単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)計6色又は7色のa*対b*の値を、プロットし面積を求めた。基準となる比較例ES-1の面積を100%とした場合の面積比を求め、その面積比から、以下の基準で評価した。結果を表22に示す。実用レベルは3以上である。
【0380】
(評価基準)
6:面積比が115%以上である
5:面積比が110%以上、115%未満である
4:面積比が105%以上、110%未満である
3:面積比が100%以上、105%未満である
2:面積比が98%以上、100%未満である
1:面積比が98%未満である
【0381】
[耐光性評価1]
(フェドメーターによる紫外線照射試験)
上記で得られた印刷物について、フェドメーター(紫外線カーボンアーク灯式耐光性試験機)により紫外線を48時間照射し、試験後に上記と同様に測色した。紫外線照射の条件は、JIS L0842:2004、JIS B7751:2007に従った。
【0382】
(ガマット)
初期ガマット評価の方法と同様にして、紫外線照射試験後の印刷物を用いて単色ベタ部及び重ね刷り部を測色し、a*対b*の値をプロットし面積を求めた。各実施例及び比較例の紫外線照射試験後における面積を、初期評価の面積で除した面積比を求め、その面積比から、以下の基準で評価した。結果を表22に示す。実用レベルは3以上である。
【0383】
(評価基準)
6:面積比が98%以上である
5:面積比が97.5%以上、98%未満である
4:面積比が97%以上、97.5%未満である
3:面積比が96.5%以上、97%未満である
2:面積比が96%以上、96.5%未満である
1:面積比が96%未満である
【0384】
(色差ΔE*)
単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)の測色結果から、紫外線照射試験前後の色差ΔE*を求め、以下の基準で評価した。結果を表22に示す。実用レベルは3以上である。
【0385】
(評価基準)
6:ΔE*が1.0未満である
5:ΔE*が1.0以上、1.5未満である
4:ΔE*が1.5以上、2.0未満である
3:ΔE*が2.0以上、3.0未満である
2:ΔE*が3.0以上、5.0未満である
1:ΔE*が5.0以上である
【0386】
(色相差ΔH*)
単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)の測色結果から、紫外線照射試験前後の色相差ΔH*を求め、以下の基準で評価した。結果を表22に示す。実用レベルは3以上である。また、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも大きい場合は「+」を、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも小さい場合は「-」を付記した。
【0387】
(評価基準)
6:ΔH*が0.5未満である
5:ΔH*が0.5以上、0.75未満である
4:ΔH*が0.75以上、1.0未満である
3:ΔH*が1.0以上、1.5未満である
2:ΔH*が1.5以上、3.0未満である
1:ΔH*が3.0以上である
【0388】
[耐光性評価2]
(白色LED照射試験)
上記で得られた印刷物について、下記の試験方法により白色LED照射試験を行った。試験後に上記と同様に測色し、白色LED照射下における色相の安定性を評価した。
(試験方法)
試験機:照明付インキュベーター FLI-2010H-LED(東京理化器械製)
光源:白色LED
照度:15000Lux
照射温度:10℃
照射湿度:70%RH
照射日数:96時間
【0389】
(ガマット)
初期ガマット評価の方法と同様にして、白色LED照射試験後の印刷物を用いて単色ベタ部及び重ね刷り部を測色し、a*対b*の値をプロットし面積を求めた。各実施例及び比較例の白色LED照射試験後における面積を、初期評価の面積で除した面積比を求め、その面積比から、以下の基準で評価した。結果を表23に示す。実用レベルは3以上である。
【0390】
(評価基準)
6:面積比が98%以上である
5:面積比が97.5%以上、98%未満である
4:面積比が97%以上、97.5%未満である
3:面積比が96.5%以上、97%未満である
2:面積比が96%以上、96.5%未満である
1:面積比が96%未満である
【0391】
(色差ΔE*)
単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)の測色結果から、白色LED照射試験前後の色差ΔE*を求め、以下の基準で評価した。結果を表23に示す。実用レベルは3以上である。
【0392】
(評価基準)
6:ΔE*が1.0未満である
5:ΔE*が1.0以上、1.5未満である
4:ΔE*が1.5以上、2.0未満である
3:ΔE*が2.0以上、3.0未満である
2:ΔE*が3.0以上、5.0未満である
1:ΔE*が5.0以上である
【0393】
(色相差ΔH*)
単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)の測色結果から、白色LED照射試験前後の色相差ΔH*を求め、以下の基準で評価した。結果を表23に示す。実用レベルは3以上である。また、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも大きい場合は「+」を、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも小さい場合は「-」を付記した。
【0394】
(評価基準)
6:ΔH*が0.5未満である
5:ΔH*が0.5以上、0.75未満である
4:ΔH*が0.75以上、1.0未満である
3:ΔH*が1.0以上、1.5未満である
2:ΔH*が1.5以上、3.0未満である
1:ΔH*が3.0以上である
【0395】
【0396】
【0397】
表22及び表23において、Yはイエロー、Cはシアン、MAはマゼンタA、MBはマゼンタBの、それぞれ単色ベタ部を表す。また、Y×Cはイエロー×シアン、C×MAはシアン×マゼンタA、Y×MBはイエロー×マゼンタB、Y×MAはイエロー×マゼンタAの、それぞれ単色ベタ刷り重ね部のことを表す。
【0398】
表22及び表23の結果から、本発明のフレキソ印刷インキセットは、色再現性が高く、かつ耐光性が良好であることが確認できた。特に、イソインドリン化合物(4)又はイソインドリン化合物(5)を含むイエローインキを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。また、最適な粒径のC.I.ピグメントイエロー180を含むイエローインキを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。
また、C.I.ピグメントブルー15:3又はC.I.ピグメントブルー15:4を含むシアンインキを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。
また、最適な粒径のC.I.ピグメントレッド122を含むマゼンタインキA、及び最適な粒径のC.I.ピグメントバイオレット19を含むマゼンタインキBを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。
特に、イエロー×マゼンタの領域において、比較例のインキセットでは、紫外線照射による耐光性試験では色相が青味に大きく変化する(色相角が小さくなる)一方で、白色LED照射による耐光性試験では色相が黄味に大きく変化した(色相角が大きくなった)。すなわち、比較例の印刷インキセットは、光源によって色相の経時変化が異なり、十分な耐光性を得ることが困難であることがわかる。これに対し、本発明の実施形態の印刷インキセットでは、光源によらず、良好な耐光性が得られることがわかる。
【0399】
<4>活性エネルギー線硬化性フレキソ印刷インキセットの評価
<活性エネルギー線硬化性フレキソインキの製造>
(製造例Y6-1)[イエローインキ[Y6-1]の調製]
下記の材料を、バタフライミキサーを用いて撹拌混合し、3本ロールにて最大粒径が15μm以下になるように分散して、イエローインキ[Y6-1]を得た。
・イソインドリン化合物(1-1):18.0部
・EBECRYL225:8.4部(有効成分で5.0部)
(10官能のウレタンアクリレートオリゴマー)
・4-アクリロイルモルフォリン:15.0部 (単官能モノマー)
・EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート:20.0部
・ジペンタエリスリトールペンタアクリレート:5.0部
・ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:16.6部
・イルガキュア369:3.0部 (光重合開始剤)
・Chemrk DEABP:3.0部 (光重合開始剤)
・SB-PI718:4.0部 (光重合開始剤)
・アジスパーPB821:3.0部 (分散剤)
・Tワックスコンパウンド:4.0部 (ワックス)
【0400】
使用した材料の詳細は以下のとおりである。
【0401】
[アクリレートオリゴマー]
・EBECRYL225:ダイセル・オルネクス株式会社製、10官能の脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、Mw1,200、有効成分60質量%[重合開始剤]
・イルガキュア369:BASF社製、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)-1-ブタノン
・Chemrk DEABP:ソート社製、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン
・SB-PI718:ソート社製、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルフォスフィンオキサイド
[分散剤]
・アジスパーPB821:味の素ファインテクノ株式会社製、塩基性官能基含有の櫛形分散剤
[ワックス]
・Tワックスコンパウンド:東新油脂株式会社製、ポリエチレンワックス
【0402】
(製造例Y6-2~Y6-28、C6-1~C6-5、M6-1~M6-13)[イエローインキ[Y6-2]~[Y6-28]、シアンインキ[C6-1]~[C6-5]、マゼンタインキ[M6-1]~[M6-13]の調製]
製造例Y6-1に記載したイエローインキ[Y6-1]の調製方法において、イソインドリン化合物(1-1)18.0部を、表24に示した化合物及び表24に記載した量に変更した以外は製造例Y6-1と同様にして、表24に記載したインキを得た。
【0403】
【0404】
インキの製造に使用した顔料は、グラビアインキの製造で示した表5の通りである。
【0405】
<インキセットの評価>
(実施例FS-1~FS-42、比較例FS-1~FS-10)
得られた各インキを表25に記載の通りに組合せて、インキセットF1~F52とした。得られたインキセットについて、以下の方法でガマット及び耐光性を評価した。結果を表26及び表27に示す。
【0406】
【0407】
[初期ガマット評価]
上記で得られたインキセットにおいて、コート紙に線数800lpi、セル容積3.72cm3/m2のアニロックスローラーとフレキシプルーフ機を用いて、シアンインキを印刷後、コンベア速度 50m/min、空冷水銀ランプ(出力160w/cm2の条件)で硬化させた。その後、シアンインキ層の上にマゼンタインキを、マゼンタインキ層の上にイエローインキを、シアンインキと同様の条件で印刷し、基材、シアンインキ層、マゼンタインキ層、イエローインキ層の順で積層された評価用印刷物を得た。
得られたインキセットを用いて、以下の印刷条件で、単色ベタ部(シアン、マゼンタA、マゼンタB、イエロー)と、単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)とを有する印刷物を得た。
【0408】
(単色ベタ部)
コート紙に線数800lpi、セル容積3.72cm3/m2のアニロックスローラーとフレキシプルーフ機を用いて、インキを印刷後、コンベア速度 50m/min、空冷水銀ランプ(出力160w/cm2の条件)で硬化させ、評価用印刷物を得た。
【0409】
(単色ベタ刷り重ね部)
コート紙に線数800lpi、セル容積3.72cm3/m2のアニロックスローラーとフレキシプルーフ機を用いて、シアンインキを印刷後、コンベア速度 50m/min、空冷水銀ランプ(出力160w/cm2の条件)で硬化させた。その後、シアンインキ層の上にマゼンタインキを、シアンインキと同様の条件で印刷し、基材、シアンインキ層、マゼンタインキ層の順で積層された評価用印刷物を得た。
また、マゼンタインキの代わりにイエローインキを用いて同様の条件で印刷し、基材、シアンインキ層、イエローインキ層の順で積層された評価用印刷物を得た。
また、シアンインキの代わりにマゼンタインキを、マゼンタインキの代わりにイエローインキを用いて同様の条件で印刷し、基材、マゼンタインキ層、イエローインキ層の順で積層された評価用印刷物を得た。
【0410】
得られた印刷物について、グレタグマクベスD196を用いて印刷物の単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)の濃度値を測定した。また、測定機としてgretagmacbeth製のSpectroEyeを使用し、D50光源、2度観測視野、ホワイトバック(標準白色板使用)、フィルター類未使用の条件で、単色ベタ部及び重ね刷り部を測色した。
a*を横軸、b*縦軸とした2次元空間に、単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)、及び、単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)計6色又は7色のa*対b*の値を、プロットし面積を求めた。基準となる比較例FS-1の面積を100%とした場合の面積比を求め、その面積比から、以下の基準で評価した。結果を表26に示す。実用レベルは3以上である。
【0411】
(評価基準)
6:面積比が115%以上である
5:面積比が110%以上、115%未満である
4:面積比が105%以上、110%未満である
3:面積比が100%以上、105%未満である
2:面積比が98%以上、100%未満である
1:面積比が98%未満である
【0412】
[耐光性評価1]
(フェドメーターによる紫外線照射試験)
上記で得られた印刷物について、フェドメーター(紫外線カーボンアーク灯式耐光性試験機)により紫外線を48時間照射し、試験後に上記と同様に測色した。紫外線照射の条件は、JIS L0842:2004、JIS B7751:2007に従った。
【0413】
(ガマット)
初期ガマット評価の方法と同様にして、紫外線照射試験後の印刷物を用いて単色ベタ部及び重ね刷り部を測色し、a*対b*の値をプロットし面積を求めた。各実施例及び比較例の紫外線照射試験後における面積を、初期評価の面積で除した面積比を求め、その面積比から、以下の基準で評価した。結果を表26に示す。実用レベルは3以上である。
【0414】
(評価基準)
6:面積比が98%以上である
5:面積比が97.5%以上、98%未満である
4:面積比が97%以上、97.5%未満である
3:面積比が96.5%以上、97%未満である
2:面積比が96%以上、96.5%未満である
1:面積比が96%未満である
【0415】
(色差ΔE*)
単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)の測色結果から、紫外線照射試験前後の色差ΔE*を求め、以下の基準で評価した。結果を表26に示す。実用レベルは3以上である。
【0416】
(評価基準)
6:ΔE*が1.0未満である
5:ΔE*が1.0以上、1.5未満である
4:ΔE*が1.5以上、2.0未満である
3:ΔE*が2.0以上、3.0未満である
2:ΔE*が3.0以上、5.0未満である
1:ΔE*が5.0以上である
【0417】
(色相差ΔH*)
単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)の測色結果から、紫外線照射試験前後の色相差ΔH*を求め、以下の基準で評価した。結果を表26に示す。実用レベルは3以上である。また、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも大きい場合は「+」を、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも小さい場合は「-」を付記した。
【0418】
(評価基準)
6:ΔH*が0.5未満である
5:ΔH*が0.5以上、0.75未満である
4:ΔH*が0.75以上、1.0未満である
3:ΔH*が1.0以上、1.5未満である
2:ΔH*が1.5以上、3.0未満である
1:ΔH*が3.0以上である
【0419】
[耐光性評価2]
(白色LED照射試験)
上記で得られた印刷物について、下記の試験方法により白色LED照射試験を行った。試験後に上記と同様に測色し、白色LED照射下における色相の安定性を評価した。
(試験方法)
試験機:照明付インキュベーター FLI-2010H-LED(東京理化器械製)
光源:白色LED
照度:15000Lux
照射温度:10℃
照射湿度:70%RH
照射日数:96時間
【0420】
(ガマット)
初期ガマット評価の方法と同様にして、白色LED照射試験後の印刷物を用いて単色ベタ部及び重ね刷り部を測色し、a*対b*の値をプロットし面積を求めた。各実施例及び比較例の白色LED照射試験後における面積を、初期評価の面積で除した面積比を求め、その面積比から、以下の基準で評価した。結果を表27に示す。実用レベルは3以上である。
【0421】
(評価基準)
6:面積比が98%以上である
5:面積比が97.5%以上、98%未満である
4:面積比が97%以上、97.5%未満である
3:面積比が96.5%以上、97%未満である
2:面積比が96%以上、96.5%未満である
1:面積比が96%未満である
【0422】
(色差ΔE*)
単色ベタ部(イエロー、マゼンタA、マゼンタB、シアン)の測色結果から、白色LED照射試験前後の色差ΔE*を求め、以下の基準で評価した。結果を表27に示す。実用レベルは3以上である。
【0423】
(評価基準)
6:ΔE*が1.0未満である
5:ΔE*が1.0以上、1.5未満である
4:ΔE*が1.5以上、2.0未満である
3:ΔE*が2.0以上、3.0未満である
2:ΔE*が3.0以上、5.0未満である
1:ΔE*が5.0以上である
【0424】
(色相差ΔH*)
単色ベタ刷り重ね部(イエロー×シアン、シアン×マゼンタA、イエロー×マゼンタB又はイエロー×マゼンタA)の測色結果から、白色LED照射試験前後の色相差ΔH*を求め、以下の基準で評価した。結果を表27に示す。実用レベルは3以上である。また、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも大きい場合は「+」を、試験後の色相角(H°)が試験前のH°よりも小さい場合は「-」を付記した。
【0425】
(評価基準)
6:ΔH*が0.5未満である
5:ΔH*が0.5以上、0.75未満である
4:ΔH*が0.75以上、1.0未満である
3:ΔH*が1.0以上、1.5未満である
2:ΔH*が1.5以上、3.0未満である
1:ΔH*が3.0以上である
【0426】
【0427】
【0428】
表26及び表27において、Yはイエロー、Cはシアン、MAはマゼンタA、MBはマゼンタBの、それぞれ単色ベタ部を表す。また、Y×Cはイエロー×シアン、C×MAはシアン×マゼンタA、Y×MBはイエロー×マゼンタB、Y×MAはイエロー×マゼンタAの、それぞれ単色ベタ刷り重ね部のことを表す。
【0429】
表26及び表27の結果から、本発明の一実施形態である活性エネルギー線硬化性フレキソ印刷インキセットは、色再現性が高く、かつ耐光性が良好であることが確認できた。特に、イソインドリン化合物(4)又はイソインドリン化合物(5)を含むイエローインキを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。また、最適な粒径のC.I.ピグメントイエロー180を含むイエローインキを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。
また、C.I.ピグメントブルー15:3又はC.I.ピグメントブルー15:4を含むシアンインキを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。
また、最適な粒径のC.I.ピグメントレッド122を含むマゼンタインキA、及び最適な粒径のC.I.ピグメントバイオレット19を含むマゼンタインキBを使用した場合、より色再現性が高く、かつ耐光性が良好であった。
特に、イエロー×マゼンタの領域において、比較例の印刷インキセットでは、紫外線照射による耐光性試験では色相が青味に大きく変化する(色相角が小さくなる)一方で、白色LED照射による耐光性試験では色相が黄味に大きく変化した(色相角が大きくなった)。すなわち、比較例の印刷インキセットは、光源によって色相の経時変化が異なり、十分な耐光性を得ることが困難であることがわかる。これに対し、本発明の実施形態の印刷インキセットでは、光源によらず、良好な耐光性が得られることがわかる。