(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016425
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】作業機械、作業機械の制御方法
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20230126BHJP
E02F 9/20 20060101ALI20230126BHJP
F01P 7/04 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
E02F9/00 C
E02F9/00 M
E02F9/20 C
F01P7/04 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120722
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡島 一道
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003DA04
2D015CA02
(57)【要約】
【課題】冷却ファンの冷却能力を確保する制御を実現できる作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械は、給電装置と、給電装置からの給電により駆動される複数の電気機器と、電気機器の消費電流を検出するセンサと、給電装置からの給電により駆動され、空気の流れを発生させる冷却ファンと、冷却ファンを制御するコントローラとを備えている。電気機器は、センサが設けられる第1の機器を含んでいる。コントローラは、センサが検出した第1の機器の消費電流を含む電気機器の消費電流と、冷却ファンの消費電流と、の総和が、給電装置の出力電流を超えるか否かを判断する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
給電装置と、
前記給電装置からの給電により駆動される複数の電気機器と、
前記電気機器の消費電流を検出するセンサと、
前記給電装置からの給電により駆動され、空気の流れを発生させる冷却ファンと、
前記冷却ファンを制御するコントローラとを備え、
前記電気機器は、前記センサが設けられる第1の機器を含み、
前記コントローラは、前記センサが検出した前記第1の機器の消費電流を含む前記電気機器の消費電流と前記冷却ファンの消費電流との総和が前記給電装置の出力電流を超えるか否かを判断する、作業機械。
【請求項2】
前記コントローラは、前記判断の結果、前記電気機器の消費電流と前記冷却ファンの消費電流との総和が前記給電装置の出力電流を超える場合、前記冷却ファンの設定を変更して前記電気機器の消費電流と前記冷却ファンの消費電流との総和が前記給電装置の出力電流を越えないようにし、変更された消費電流に対応する回転数に基づいて前記冷却ファンを制御する、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
熱を発生し、前記冷却ファンによって冷却される加熱源をさらに備え、
前記コントローラは、前記判断の結果、前記電気機器の消費電流と前記冷却ファンの消費電流との総和が前記給電装置の出力電流を超える場合、前記加熱源の出力を制限する、請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記コントローラは、前記判断の結果、前記電気機器の消費電流と前記冷却ファンの消費電流との総和が前記給電装置の出力電流を超えない場合、その消費電流に対応する回転数に基づいて前記冷却ファンを制御する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項5】
前記電気機器は、前記センサが設けられない第2の機器を含み、
前記コントローラは、前記センサが検出した前記第1の機器の消費電流と、予め記憶されている前記第2の機器の消費電流の設定値との総和を、前記電気機器の消費電流として算出する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項6】
冷却対象流体が内部を流通する熱交換器と、
前記冷却対象流体の温度を計測する温度センサとをさらに備え、
前記冷却ファンの発生する空気の流れが前記熱交換器を冷却し、
前記コントローラは、前記温度センサの検出値に基づいて前記冷却ファンの回転数を設定し、設定された回転数から前記冷却ファンの消費電流を求める、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の作業機械。
【請求項7】
給電装置と、
前記給電装置からの給電により駆動される複数の電気機器と、
前記電気機器の消費電流を検出するセンサと、
前記給電装置からの給電により駆動され、空気の流れを発生させる冷却ファンとを備える、作業機械の制御方法であって、
前記電気機器は、前記センサが設けられる第1の機器を含み、
前記センサにより前記第1の機器の消費電流を検出することと、
前記センサが検出した前記第1の機器の消費電流を含む前記電気機器の消費電流と、前記冷却ファンの消費電流と、の総和を算出することと、
算出された消費電流の総和が前記給電装置の出力電流を超えるか否かを判断することと、を備える、作業機械の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械と、作業機械の制御方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
特開2021-50666号公報(特許文献1)には、複数の冷却ファンを制御する冷却ファン制御装置が記載されている。冷却ファン制御装置は、コントローラを備える。コントローラは、給電源の電力容量と、複数の冷却ファン毎の冷却対象の冷却状態に応じた必要電力の総和と、に基づき、冷却ファンの消費電力が給電源の電力容量を超えない範囲で各冷却ファンの目標回転数を最適化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発電機の発電する電力で冷却ファンと電気機器とが駆動される場合でも、冷却ファンによる冷却対象の冷却能力を確保する必要がある。
【0005】
本開示では、冷却ファンの冷却能力を確保する制御を実現できる、作業機械、および作業機械の制御方法が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のある局面に従うと、給電装置と、給電装置からの給電により駆動される複数の電気機器と、電気機器の消費電流を検出するセンサと、給電装置からの給電により駆動され、空気の流れを発生させる冷却ファンと、冷却ファンを制御するコントローラとを備える、作業機械が提案される。電気機器は、電気機器の消費電流を検出するセンサが設けられる第1の機器を含んでいる。コントローラは、センサが検出した第1の機器の消費電流を含む電気機器の消費電流と、冷却ファンの消費電流と、の総和が、給電装置の出力電流を超えるか否かを判断する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の作業機械および制御方法によると、冷却ファンの冷却能力を確保する制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】油圧ショベルの構成を概略的に示す側面図である。
【
図2】油圧ショベルのシステム構成を示す概略ブロック図である。
【
図3】冷却ファンの制御の一例を示すフローチャートである。
【
図4】エンジンの冷却水の温度に対する冷却ファンの回転数のテーブルの一例を示す図である。
【
図5】冷却ファンの回転数に対する冷却ファンの消費電流のテーブルの一例を示す図である。
【
図6】エンジントルクカーブの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、明細書および図面において、同一の構成要素または対応する構成要素には、同一の符号を付し、重複する説明を繰り返さない。また、図面では、説明の便宜上、構成を省略または簡略化している場合もある。
【0010】
<全体構成>
実施形態においては、作業機械の一例として油圧ショベル1について説明する。
図1は、油圧ショベル1の構成を概略的に示す側面図である。
【0011】
図1に示されるように、油圧ショベル1は、作業機2と、車体3とを備えている。車体3は、走行体31と、スイングサークル32と、旋回体33と、油圧モータ35とを含んでいる。
【0012】
走行体31は、左右一対の履帯装置311を有している。この左右一対の履帯装置311の各々は、履帯を有している。左右一対の履帯が回転駆動されることにより、油圧ショベル1が自走する。
【0013】
スイングサークル32は、油圧モータ35に接続されている。スイングサークル32は、油圧モータ35の回転駆動によって回転する。油圧モータ35は、油圧源(図示していない油圧ポンプおよび油タンク)から供給される作動油によって駆動する。
【0014】
旋回体33は、スイングサークル32を介して、走行体31に設置されている。旋回体33は、スイングサークル32の回転に伴い、走行体31に対して旋回する。
【0015】
旋回体33は、作業機2が取り付けられたフレーム331と、運転室332と、油圧ショベル1の動作を制御するコントローラ80(
図2参照)とを有している。運転室332は、旋回体33のたとえば前方左側(車両前側)に配置されている。
【0016】
作業機2は、旋回体33の前方側であって運転室332のたとえば右側において、フレーム331に支持されている。作業機2は、ブーム21、アーム22、バケット23、ブームシリンダ211、アームシリンダ221、バケットシリンダ231などを有している。
【0017】
ブーム21は、旋回体33に取り付けられている。ブーム21の基端部は、ブームフートピン(図示せず)により旋回体33に回転可能に連結されている。
【0018】
アーム22は、ブーム21の先端に取り付けられている。アーム22の基端部は、ブーム先端ピン242によりブーム21の先端部に回転可能に連結されている。
【0019】
バケット23は、アーム22の先端に取り付けられている。バケット23は、アーム先端ピン243によりアーム22の先端部に回転可能に連結されている。バケット23は、作業機2の先端に取付可能なアタッチメントの一例である。
【0020】
ブーム21は、ブームシリンダ211により駆動可能である。ブームシリンダ211は、油圧源から供給される作動油によって駆動する。この駆動により、ブーム21は、ブームフートピン(図示せず)を中心に旋回体33に対して上下方向に回動可能である。
【0021】
アーム22は、アームシリンダ221により駆動可能である。アームシリンダ221は、油圧源から供給される作動油によって駆動する。この駆動により、アーム22は、ブーム先端ピン242を中心にブーム21に対して上下方向に回動可能である。
【0022】
バケット23は、バケットシリンダ231により駆動可能である。バケットシリンダ231は、油圧源から供給される作動油によって駆動する。この駆動によりバケット23は、アーム先端ピン243を中心にアーム22に対して上下方向に回動可能である。このように作業機2は駆動可能である。
【0023】
<システム構成>
図2は、油圧ショベル1のシステム構成を示す概略ブロック図である。エンジン40は、油圧ショベル1の動作の駆動源である。エンジン40は、内燃機関であり、たとえばディーゼルエンジンである。エンジン40の回転数は、シリンダ内に噴射する燃料量を調整することで制御される。この調整は、エンジン40の燃料噴射ポンプに付設されたガバナがコントローラ80によって制御されることで行われる。エンジン40の回転数は、回転数センサ41によって検出される。回転数センサ41の検出したエンジン40の回転数を示す検出信号が、回転数センサ41からコントローラ80に入力される。
【0024】
エンジン40の出力軸は、オルタネータ42に連結されている。オルタネータ42は、エンジン40で発生した駆動力で発電する発電機として作動する。オルタネータ42は、実施形態の給電装置に相当する。エンジン40の回転数に従って、オルタネータ42の回転数が設定される。エンジン40の回転数が高いほどオルタネータ42の回転数が高くなり、オルタネータ42の発電量も大きくなる。
【0025】
オルタネータ42とバッテリ50とは電気的に接続されている。オルタネータ42で発電した電力は、バッテリ50に蓄えられる。バッテリ50は、電力を蓄える蓄電装置である。バッテリ50は、ニッケル水素電池、リチウム水素電池などの二次電池である。
【0026】
バッテリ50は、複数の電気機器51~53と電気的に接続されている。オルタネータ42により発電された電力がバッテリ50を介して電気機器51~53に供給される。電気機器51~53は、各々、オルタネータ42からの給電により駆動される。
【0027】
電流センサ54は、電気機器51の消費電流を検出する。電流センサ55は、電気機器52の消費電流を検出する。電気機器53には、電気機器53の消費電流を検出する電流センサは設けられていない。電気機器51,52は、電気機器51,52の消費電流を検出するセンサが設けられる、実施形態の第1の機器に相当する。電気機器53は、電気機器53の消費電流を検出するセンサが設けられない、実施形態の第2の機器に相当する。たとえば、電気機器51はライトであり、電気機器52はエアコンであり、電気機器53はワイパであってもよい。消費電流が比較的大きい電気機器を電流センサが設けられる第1の機器とし、消費電流が比較的小さい電気機器を電流センサが設けられない第2の機器としてもよい。
【0028】
電流センサ54の検出した電気機器51の消費電流を示す検出信号が、電流センサ54からコントローラ80に入力される。電流センサ55の検出した電気機器52の消費電流を示す検出信号が、電流センサ55からコントローラ80に入力される。コントローラ80は、電流センサ54,55からの検出信号の入力を受けて電気機器51,52の消費電流を把握することができ、電流センサの設けられていない電気機器53の消費電流を把握することができない構成とされている。
【0029】
実施形態の冷却装置60は、熱交換器70を備えている。実施形態の熱交換器70は、ラジエータ71と、オイルクーラ72と、CAC(Charge Air Cooler)73とを有している。ラジエータ71の内部には、エンジン40の冷却水が流通する。オイルクーラ72の内部には、
図1に示される油圧モータ35、ブームシリンダ211、アームシリンダ221およびバケットシリンダ231などの、油圧アクチュエータに供給される作動油が流通する。CAC73の内部には、エンジン40に供給される空気が流通する。
【0030】
エンジン40の冷却水が、ラジエータ71の冷却対象流体である。作動油が、オイルクーラ72の冷却対象流体である。エンジン40の吸気が、CAC73の冷却対象流体である。温度センサ74は、ラジエータ71を通過する冷却水の温度を検出する。温度センサ75は、オイルクーラ72を通過する作動油の温度を検出する。温度センサ76は、CAC73を通過する空気の温度を検出する。温度センサ74~76の検出した冷却対象流体の温度を示す検出信号が、温度センサ74~76からコントローラ80に入力される。
【0031】
冷却装置60は、複数の冷却ファン61~63を備えている。冷却ファン61~63は、各々、熱交換器70に対向して配置されている。具体的には、冷却ファン61はラジエータ71に対向して配置されており、ラジエータ71に空気を流す。冷却ファン61の発生する空気の流れが、ラジエータ71を冷却する。冷却ファン61は、ラジエータ71を流通するエンジン40の冷却水を冷却するためのファンである。
【0032】
エンジン40は、熱を発生し、冷却ファン61によって冷却される、実施形態の加熱源に相当する。エンジン40は、発生した熱を冷却水に伝達する。エンジン40からの熱伝達で、冷却水の温度が上昇する。温度が上昇した冷却水がラジエータ71を通過するときに、冷却ファン61の発生する空気の流れに放熱することで、冷却水が冷却され、冷却水の温度が低下する。温度が低下した冷却水がエンジン40に還流することにより、エンジン40が冷却される。
【0033】
冷却ファン62は、オイルクーラ72に対向して配置されており、オイルクーラ72に空気を流す。冷却ファン62の発生する空気の流れが、オイルクーラ72を冷却する。冷却ファン62は、オイルクーラ72を流通する作動油を冷却するためのファンである。冷却ファン63は、CAC73に対向して配置されており、CAC73に空気を流す。冷却ファン63の発生する空気の流れが、CAC73を冷却する。冷却ファン63は、CAC73を流通する空気を冷却するためのファンである。
【0034】
冷却ファン61~63は、電動ファンである。電動モータ64~66は、バッテリ50と電気的に接続されている。冷却ファン61は、電動モータ64によって駆動される。電動モータ64は、バッテリ50から給電され、コントローラ80からの制御信号を受けて駆動される。冷却ファン62は、電動モータ65によって駆動される。電動モータ65は、バッテリ50から給電され、コントローラ80からの制御信号を受けて駆動される。冷却ファン63は、電動モータ66によって駆動される。電動モータ66は、バッテリ50から給電され、コントローラ80からの制御信号を受けて駆動される。
【0035】
オルタネータ42により発電された電力が、バッテリ50を介して電動モータ64~66に供給される。冷却ファン61~63は、オルタネータ42からの給電により駆動されて、熱交換器70を通過する空気の流れを発生させる。冷却ファン61~63は、コントローラ80によって制御される。コントローラ80は、電動モータ64~66をたとえばPWM(Pulse Width Modulation)制御する。コントローラ80は、電動モータ64~66の各々の回転数を制御することにより、冷却ファン61~63の各々の回転数を制御する。
【0036】
コントローラ80は、油圧ショベル1の全体の動作を制御するコントローラであり、CPU(Central Processing Unit)、不揮発性メモリ、タイマなどを含んで構成されている。コントローラ80は、エンジン40、回転数センサ41、電流センサ54,55、電動モータ64~66、温度センサ74~76などと電気的に接続されている。
【0037】
コントローラ80には、冷却ファン61~63を制御するためのプログラムが予め記憶されている。コントローラ80には、エンジン40の回転数に対するオルタネータ42により発電され出力される電流値のテーブル、温度センサ74~76により検出される冷却対象流体の温度に対する冷却ファン61~63の回転数のテーブル、冷却ファン61~63の回転数に対する冷却ファン61~63の消費電流のテーブル、および、エンジン40の回転数に対するエンジン40の出力するトルクのテーブルなどが、予め記憶されている。上記の各種のテーブルに替えて、コントローラ80には、関数が記憶されていてもよい。コントローラ80には、電流センサの設けられていない電気機器53の消費電流の設定値が、予め記憶されている。
【0038】
コントローラ80は、油圧ショベル1に搭載されている。コントローラ80は、油圧ショベル1に搭載されていなくてもよい。コントローラ80は、油圧ショベル1の外部に配置されていてもよい。コントローラ80は、油圧ショベル1の作業現場に配置されてもよく、油圧ショベル1の作業現場から離れた遠隔地に配置されてもよい。油圧ショベル1と、油圧ショベル1の外部に配置されたコントローラ80とが、油圧ショベル1の制御システムを構成してもよい。
【0039】
<冷却ファン61~63の制御>
以上の構成を備えている実施形態の油圧ショベル1における、コントローラ80による冷却ファン61~63の制御について、以下に説明する。
図3は、冷却ファン61~63の制御の一例を示すフローチャートである。
【0040】
図3に示されるように、ステップS1において、油水温テーブルに従った冷却ファン61~63の回転数の設定が行われる。
図4は、エンジン40の冷却水の温度に対する冷却ファン61の回転数のテーブルの一例を示す図である。
図4の横軸は、エンジン40の冷却水の温度を示す。エンジン40の冷却水の温度は、温度センサ74により検出される。
図4の縦軸は、冷却ファン61の回転数、すなわち電動モータ64の回転数を示す。
図4に示されるテーブルは、コントローラ80に記憶されている。
【0041】
図4に示されるように、エンジン40の冷却水の温度が所定の第1の温度閾値以下のとき、冷却ファン61の回転数は、所定の第1の回転数で一定とされる。エンジン40の冷却水の温度が上昇して第1の温度閾値を超えると、冷却ファン61の回転数が上昇する。エンジン40の冷却水の温度が第1の温度閾値以上、所定の第2の温度閾値以下の範囲で、冷却ファン61の回転数は、エンジン40の冷却水の温度に対して、一次関数的に増加する。エンジン40の冷却水の温度が第2の温度閾値以上のとき、冷却ファン61の回転数は、所定の第2の回転数で一定とされる。
【0042】
コントローラ80は、温度センサ74から、エンジン40の冷却水の温度の検出信号を受ける。コントローラ80は、
図4に示されるテーブルに従って、温度センサ74の検出値であるエンジン40の冷却水の温度に対応した、エンジン40を冷却するために必要な冷却ファン61の回転数を設定する。
【0043】
図5は、冷却ファン61の回転数に対する冷却ファン61の消費電流のテーブルの一例を示す図である。
図5の横軸は冷却ファン61の回転数を示し、縦軸は冷却ファン61の消費電流を示す。
図5に示されるように、冷却ファン61の消費電流は、冷却ファン61の回転数に対して一次関数的に増加する関係にあってもよい。
図5に示されるテーブルに従って、コントローラ80は、
図4のテーブルにより設定された冷却ファン61の回転数に対応した、冷却ファン61の消費電流を求める。
【0044】
作動油の温度と冷却ファン62の回転数とについても、
図4と同様のテーブルが設定されている。冷却ファン62の回転数と冷却ファン62の消費電流とについても、
図5と同様のテーブルが設定されている。エンジン40の吸気の温度と冷却ファン63の回転数とについても、
図4と同様のテーブルが設定されている。冷却ファン63の回転数と冷却ファン63の消費電流とについても、
図5と同様のテーブルが設定されている。コントローラ80は、冷却ファン62,63の回転数を設定し、冷却ファン62,63の消費電流を求める。
【0045】
図3に戻って、次にステップS2において、冷却ファン61~63の回転数の設定値が消費電流不足ラインを越えるか否かの判断が行われる。
図4に示されるように、第1の回転数と第2の回転数との間の所定の回転数に相当する、消費電流不足ラインが設定されている。本実施形態において、消費電流不足ラインは、電動モータ64~66以外の電気機器(たとえば
図2に示される電気機器51~53)の消費電流が全て最大である場合の、オルタネータ42が発電し出力する電流から電動モータ64~66以外の電気機器の消費電流を差し引いた電流値を、各冷却ファン61~63に割り当て、その割り当てられた電流値に対応する各冷却ファン61~63の回転数を示す。
【0046】
冷却ファン61の回転数が
図4に示される消費電流不足ライン以下の範囲であり、冷却ファン62,63の回転数も同様に消費電流不足ライン以下の範囲であれば、電動モータ64~66以外の電気機器を全て使用していても、電気機器の消費電流と冷却ファン61~63の消費電流との総和がオルタネータ42による発電電流を越えない。一方、冷却ファン61~63のうちのいずれか1つまたは複数の冷却ファンの回転数が消費電流不足ラインを越えていると、電動モータ64~66以外の電気機器を全て使用する場合に、電動モータ64~66以外の電気機器の消費電流と冷却ファン61~63の消費電流との総和が、オルタネータ42により発電され出力される電流を越えることがある。
【0047】
そこで、いずれかの冷却ファン61~63の回転数の設定値が消費電流不足ラインを越えると判断されると(ステップS2においてYES)、次にステップS3において、電動モータ64~66以外の電気機器の消費電流の算出が行われる。コントローラ80は、電流センサ54から、電気機器51の消費電流の検出信号を受ける。コントローラ80は、電流センサ55から、電気機器52の消費電流の検出信号を受ける。コントローラ80は、電流センサ54が検出した電気機器51の消費電流と、電流センサ55が検出した電気機器52の消費電流と、予めコントローラ80に記憶されている電気機器53の消費電流の設定値と、の総和を、電動モータ64~66以外の電気機器の消費電流として算出する。
【0048】
次にステップS4において、ステップS3で算出した電動モータ64~66以外の電気機器の消費電流と、ステップS1で求められた冷却ファン61~63の消費電流と、の総和が、オルタネータ42による発電電流を越えるか否かの判断が行われる。
【0049】
コントローラ80は、回転数センサ41から、エンジン40の回転数の検出信号を受ける。コントローラ80は、予めコントローラ80に記憶されているエンジン40の回転数に対するオルタネータ42による発電電流のテーブルに従って、回転数センサ41により検出したエンジン40の回転数から、オルタネータ42の発電電流を算出する。コントローラ80は、算出したオルタネータ42の発電電流と、電気機器および冷却ファン61~63の消費電流の総和とを比較して、電気機器および冷却ファン61~63の消費電流がオルタネータ42の発電電流を越えているか否かを判断する。
【0050】
ステップS4の判断の結果、電気機器の消費電流と冷却ファン61~63の消費電流との総和がオルタネータ42の発電電流を越えていると判断されると(ステップS4においてYES)、ステップS5に進み、冷却ファン61~63の回転数の再設定が行われる。
【0051】
コントローラ80は、冷却ファン61~63の設定を変更する。具体的には、コントローラ80は、冷却ファン61~63の回転数を低下させる。典型的には、コントローラ80は、冷却ファン61~63の回転数を、それぞれ、消費電流不足ライン以下の値に設定する。冷却ファン61~63の回転数が低下することで、
図5に示されるように、冷却ファン61~63の消費電流が低下する。これによりコントローラ80は、電気機器の消費電流と冷却ファン61~63の消費電流との総和がオルタネータ42の発電電流を越えないようにする。
【0052】
ステップS5ではまた、エンジン40の出力の制限が行われる。冷却ファン61の回転数を低下させることで、冷却ファン61によるエンジン40の冷却水を冷却する能力が低下する。エンジン40のオーバーヒートを防止するために、コントローラ80は、エンジン40の出力を制限する。コントローラ80は、エンジン40の発熱量を制限して、エンジン40から冷却水への熱伝達を抑制する。コントローラ80は、回転数が低下しており冷却能力が低下している冷却ファン61によって、エンジン40の冷却水がラジエータ71を通過する間に十分に冷却されるように、エンジン40内での冷却水の温度上昇を抑制する。
【0053】
図6は、エンジントルクカーブの一例を示す図である。
図6の横軸は、エンジン40の回転数を示す。
図6の縦軸は、エンジン40の出力トルクを示す。
図6中に実線で示されるエンジントルクカーブTC1は、エンジン40の特性によって規定される、エンジン40が回転数に応じて出力できるトルクの上限値を示す。エンジントルクカーブTC1は、エンジン40の回転数と、エンジン40の出力トルクの上限値との関係を規定している。通常はコントローラ80は、エンジントルクカーブTC1に従ってエンジン40の出力トルクを制御するように、ガバナを制御する。
【0054】
図6中に一点鎖線で示されるディレートエンジントルクカーブTC2は、エンジントルクカーブTC1よりも低い出力トルクの上限値を規定している。エンジン40の出力を制限する場合、コントローラ80は、ディレートエンジントルクカーブTC2に従ってエンジン40の出力を制御する。エンジン40の回転数に従ってオルタネータ42の発電電流が設定されるので、コントローラ80は、エンジン40の出力を制限するに際して、エンジン40の回転数を低下させるのではなく、トルクディレートによるエンジン40の出力トルクをカットオフする制御を行っている。
【0055】
ステップS6において、コントローラ80は、冷却ファン61~63の回転数を決定する。ステップS2の判断において冷却ファン61~63の回転数の設定値が消費電流不足ライン以下であると判断されると(ステップS2においてNO)、電動モータ64~66以外の電気機器の使用状況に関わらず、電気機器の消費電流と冷却ファン61~63の消費電流との総和がオルタネータ42の発電電流を越えることがない。そのため、コントローラ80は、ステップS1で設定された回転数を、冷却ファン61~63の回転数として決定する。
【0056】
ステップS4の判断において、電気機器の消費電流と冷却ファン61~63の消費電流との総和がオルタネータ42の発電電流を越えていないと判断されると(ステップS4においてNO)、コントローラ80は、ステップS1で設定された回転数を、冷却ファン61~63の回転数として決定する。コントローラ80は、電流センサ54,55からの検出信号で、電流センサ54,55の設けられている電気機器51,52の消費電流をモニタリングすることが可能とされている。電気機器の使用状況を常に監視し、電気機器で使用していない余剰の電流を冷却ファン61~63の消費電流として流用することで、消費電流不足ラインを越える回転数での冷却ファン61~63の運転が可能とされている。
【0057】
ステップS5の処理で冷却ファン61~63の回転数が再設定された場合には、コントローラ80は、再設定された回転数を、冷却ファン61~63の回転数として決定する。コントローラ80は、決定された回転数に基づいて、冷却ファン61~63を制御する。コントローラ80は、決定された回転数で冷却ファン61~63が運転するように、電動モータ64~66に制御信号を出力する。そして、処理を終了する(エンド)。
【0058】
<作用および効果>
上述した説明と一部重複する記載もあるが、本実施形態の特徴的な構成および作用効果についてまとめて記載すると、以下の通りである。
【0059】
図2に示されるように、オルタネータ42からの給電により駆動される電気機器は、電気機器の消費電流を検出するセンサが設けられる第1の機器を含んでいる。
図3に示されるように、コントローラ80は、センサが検出した第1の機器の消費電流を含む電気機器の消費電流と、冷却ファン61~63の消費電流と、の総和が、オルタネータ42の出力電流を超えるか否か、を判断する。
【0060】
オルタネータ42の発電電流により、電気機器が駆動され、また冷却ファン61~63が駆動される。電気機器の使用している電流をモニタリングし、電気機器が使用していない余剰電流を冷却ファン61~63が使用可能にし、冷却ファン61~63が使用できる電流を増加させることにより、冷却ファン61~63をより高回転で運転することが可能になる。典型的には、
図4に示される消費電流不足ライン以上の回転数で冷却ファン61~63を回転させることができるようになる。冷却ファン61~63を最大電流で運転し続けることが可能になり、冷却ファン61~63による冷却対象流体の冷却能力を確保する制御を実現することができる。
【0061】
図3に示されるように、電気機器の消費電流と冷却ファン61~63の消費電流との総和がオルタネータ42の出力電流を超える場合、コントローラ80は、電気機器の消費電流と冷却ファン61~63の消費電流との総和がオルタネータ42の出力電流を超えないように、冷却ファン61~63の設定を変更する。オルタネータ42の発電電流が不足した場合に、不足分の電流をバッテリ50から供給していると、バッテリ50が過放電してしまいバッテリ50の蓄電機能が劣化することがある。冷却ファン61~63の設定を変更、より具体的には冷却ファン61~63の回転数を制限して、冷却ファン61~63の消費電流を低減させることにより、オルタネータ42からの給電で電気機器と冷却ファン61~63との両方を運転し続けることが可能になる。
【0062】
図3に示されるように、電気機器の消費電流と冷却ファン61~63の消費電流との総和がオルタネータ42の出力電流を超える場合、コントローラ80は、エンジン40の出力を制限する。冷却ファン61~63の回転数を下げると、冷却ファン61~63による冷却対象流体の冷却能力が低下する。エンジン40の冷却水の冷却が不十分だと、エンジン40のオーバーヒートが発生する。冷却ファン61~63の回転数を下げるのに伴ってエンジン40の出力を制限して、エンジン40の発熱量を低下させるようにすることで、エンジン40のオーバーヒートを防止することができる。
【0063】
図3に示されるように、電気機器の消費電流と冷却ファン61~63の消費電流との総和がオルタネータ42の出力電流を超えない場合、コントローラ80は、その冷却ファン61~63の消費電流に対応する回転数に基づいて、冷却ファン61~63を制御する。電気機器が使用していない余剰電流を冷却ファン61~63が使用可能にしたことで、
図4に示される消費電流不足ライン以上の回転数で冷却ファン61~63を回転させることが可能になり、冷却ファン61~63による冷却対象流体の冷却能力を確保する制御を実現することができる。
【0064】
図2に示されるように、オルタネータ42からの給電により駆動される電気機器は、電気機器の消費電流を検出するセンサが設けられない第2の機器を含んでいる。
図3に示されるように、コントローラ80は、センサが検出した第1の機器の消費電流と、予め記憶されている第2の機器の消費電流の設定値との総和を、電気機器の消費電流として算出する。このようにすることで、コントローラ80は、電気機器の消費電流をより正確に算出することができる。
【0065】
図3,4に示されるように、コントローラ80は、温度センサ74~76の検出値として得られる冷却対象流体の温度に基づいて、冷却ファン61~63の回転数を設定する。
図5に示されるように、コントローラ80は、設定された冷却ファン61~63の回転数から、冷却ファン61~63の消費電流を求める。これによりコントローラ80は、冷却ファン61~63の消費電流を精度よく取得することができる。コントローラ80は、取得した冷却ファン61~63の消費電流を用いて、電気機器の消費電流と冷却ファン61~63の消費電流との総和がオルタネータ42の出力電流を超えるか否かを、正確に判断することができる。
【0066】
上記の実施形態では、電気機器および冷却ファン61~63の消費電流に対してオルタネータ42の発電電流が不足している場合に、冷却ファン61~63の回転数を低下させるとともにエンジン40の出力を制限する制御について説明した。この例に限られず、電気機器および冷却ファン61~63の消費電流に対してオルタネータ42の発電電流が不足すると判断された場合に、警報器が警報を発報する構成としてもよい。警報は、音声、視覚、触覚、またはこれらの組み合わせであってよい。警報を認識した油圧ショベル1のオペレータが、たとえば運転室332内のエアコンを一時的に停止させるなどして、電気機器の消費電流を少なくして冷却ファン61~63が使用可能な電流を増加させることができる。このようにすれば、エンジン40の出力を制限させることなく作業を継続することが可能になる。
【0067】
実施形態の冷却装置60は、3つの熱交換器70、すなわちラジエータ71、オイルクーラ72およびCAC73を備えている。熱交換器の数は2つ以下であってもよく、4つ以上であってもよい。熱交換器の例としては、上記の3つに限らず、たとえば、空調機のコンデンサ、燃料クーラなどであってもよい。
【0068】
実施形態では、冷却装置60が3つの冷却ファン61~63を有する例について説明した。冷却装置60は、2つ以下の電動の冷却ファンを有してもよく、4つ以上の電動の冷却ファンを有してもよい。熱交換器の数と冷却ファンの数とが異なってもよい。2つ以上の冷却ファンが1つの熱交換器を冷却してもよい。1つの冷却ファンが2つ以上の熱交換器を冷却してもよい。1つの冷却ファンによって冷却される2つ以上の熱交換器が、冷却ファンの発生する空気の流れに沿って並んで配置されていてもよい。
【0069】
実施形態では、熱交換器毎に温度センサが設けられているが、温度センサの設けられない熱交換器があってもよい。たとえば、1つの冷却ファンによって冷却される2つ以上の熱交換器のうちの1つの熱交換器に、その熱交換器の冷却対象流体の温度を検出する温度センサが設けられ、その温度センサの検出値に基づいて冷却ファンの回転数が制御されてもよく、この場合、2つ以上の熱交換器のうちの他の熱交換器には温度センサが設けられなくてもよい。
【0070】
実施形態では、作業機械の一例として油圧ショベル1について説明したが、油圧ショベル1に限らず、他の種類の作業機械、たとえばブルドーザ、ホイールローダ、ダンプトラックなどに本開示の思想を適用してもよい。
【0071】
以上のように実施形態について説明を行ったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0072】
1 油圧ショベル、2 作業機、3 車体、21 ブーム、22 アーム、23 バケット、31 走行体、32 スイングサークル、33 旋回体、35 油圧モータ、40 エンジン、41 回転数センサ、42 オルタネータ、50 バッテリ、51,52,53 電気機器、54,55 電流センサ、60 冷却装置、61,62,63 冷却ファン、64,65,66 電動モータ、70 熱交換器、71 ラジエータ、72 オイルクーラ、73 CAC、74,75,76 温度センサ、80 コントローラ、211 ブームシリンダ、221 アームシリンダ、231 バケットシリンダ、242 ブーム先端ピン、243 アーム先端ピン、311 履帯装置、331 フレーム、332 運転室、TC1 エンジントルクカーブ、TC2 ディレートエンジントルクカーブ。