(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164262
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】自動車用ドアウェザーストリップ
(51)【国際特許分類】
B60J 10/86 20160101AFI20231102BHJP
【FI】
B60J10/86
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022192523
(22)【出願日】2022-12-01
(31)【優先権主張番号】P 2022075523
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105175
【弁理士】
【氏名又は名称】山広 宗則
(74)【代理人】
【識別番号】100105197
【弁理士】
【氏名又は名称】岩本 牧子
(72)【発明者】
【氏名】生見 健太
(72)【発明者】
【氏名】平川 雄三
【テーマコード(参考)】
3D201
【Fターム(参考)】
3D201AA06
3D201AA23
3D201AA37
3D201CA23
3D201DA23
3D201EA04
3D201FA05
(57)【要約】
【課題】遮音性及びドア閉じ性を向上させるとともに切りカスの発生を防止する。
【解決手段】自動車用ドア100に取付けられる取付基部21と、取付基部21に一体成形されドア閉時にボディ200に弾接する中空シール部22を有し、中空シール部22は、車外側に向けて膨出湾曲した外側中空壁22Aと、車内側に向けて膨出湾曲した内側中空壁22Bと、頂部中空壁22Cと、連結中空壁22Dからなり、中空シール部22に内側の空気を外側に抜くためのエア抜き穴Hが設定されたもので、中空シール部22の内周面に、外側中空壁22A,内側中空壁22B,頂部中空壁22C及び連結中空壁22Dよりも低比重のスポンジ層30を、エア抜き穴Hが設定される部位を外して設定した。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車用ドアに取付けられる取付基部と、その取付基部に一体成形され前記ドア閉時にボディに弾接する中空シール部を有し、前記中空シール部は、車外側に向けて膨出湾曲した外側中空壁と、車内側に向けて膨出湾曲した内側中空壁と、前記外側中空壁と前記内側中空壁の先端側を連結する頂部中空壁と、前記外側中空壁と前記内側中空壁の付け根側を連結する連結中空壁からなり、前記中空シール部に内側の空気を外側に抜くためのエア抜き穴が設定された自動車用ドアウェザーストリップであって、
前記中空シール部の内周面に、前記外側中空壁,前記内側中空壁,前記頂部中空壁,及び前記連結中空壁よりも低比重のスポンジ層を、前記エア抜き穴が設定される部位を外して設定したことを特徴とする自動車用ドアウェザーストリップ。
【請求項2】
前記エア抜き穴を、前記内側中空壁の前記連結中空壁寄りの部分に設定し、
前記スポンジ層を、前記外側中空壁と前記頂部中空壁と前記内側中空壁の前記頂部中空壁寄りの部分に設定したことを特徴とする請求項1に記載の自動車用ドアウェザーストリップ。
【請求項3】
自動車用ドアに取付けられる取付基部と、その取付基部に一体成形され前記ドア閉時にボディに弾接する中空シール部を有し、前記中空シール部は、車外側に向けて膨出湾曲した外側中空壁と、車内側に向けて膨出湾曲した内側中空壁と、前記外側中空壁と前記内側中空壁の先端側を連結する頂部中空壁と、前記外側中空壁と前記内側中空壁の付け根側を連結する連結中空壁からなり、前記中空シール部に内側の空気を外側に抜くためのエア抜き穴及び内側に溜まった水を外側に抜くための水抜き穴が設定された自動車用ドアウェザーストリップであって、
前記中空シール部の内周面に、前記外側中空壁,前記内側中空壁,前記頂部中空壁,及び前記連結中空壁よりも低比重のスポンジ層を、前記エア抜き穴及び前記水抜き穴が設定される部位を外して設定したことを特徴とする自動車用ドアウェザーストリップ。
【請求項4】
前記エア抜き穴を、前記内側中空壁の前記連結中空壁寄りの部分に設定するとともに、前記水抜き穴を、前記外側中空壁の前記頂部中空壁寄りの部分に設定し、
前記スポンジ層を、前記外側中空壁の前記連結中空壁寄りの部分及び、前記エア抜き穴と前記水抜き穴の間部分に設定したことを特徴とする請求項3に記載の自動車用ドアウェザーストリップ。
【請求項5】
前記請求項1乃至4のうちいずれか一つに記載の自動車用ドアウェザーストリップにおいて、
前記スポンジ層を、前記エア抜き穴または前記水抜き穴に近づくにつれて肉厚が徐変して薄くなるように設定したことを特徴とする自動車用ドアウェザーストリップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用ドアに取付けられ、ドア閉時にボディに弾接して車内外をシールする自動車用ドアウェザーストリップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7及び
図8に示すように、自動車のドア100の周縁部には、ドア100の閉時にそのドア100に相対向するボディ200に弾接する自動車用ドアウェザーストリップ10が取付けられている。
【0003】
自動車用ドアウェザーストリップ10は、
図9に示すように、ドア100に取付けられる取付基部11とその取付基部11に一体成形されボディ200に弾接する中空シール部12を備えるものであるが、中空シール部12の内周面に高発泡の(低比重の)スポンジ材13を設けて遮音性を向上させたものが開示されている(例えば、特許文献1)。
【0004】
一方、自動車用ドアウェザーストリップ10の中空シール部12にドア100の閉力を上げないように間隔をあけて中空シール部12の内側から外側に空気を抜くためのエア抜き穴Hを設定したり(例えば、特許文献2)、中空シール部12の内側に溜まった水を外側に抜くための水抜き穴Sを設定する(例えば、特許文献3)ことが知られている。
エア抜き穴Hは、環状にされた自動車用ドアウェザーストリップ10の全周にわたって設けることもできるが、ここでは、
図8に示すように、ドア100のルーフ側と前側を除いた部分に設けられた例を示している。水抜き穴Sは、ドア100の下側に設けられている。
【0005】
ここで、
図9に示した自動車用ドアウェザーストリップ10のように中空シール部12の内周面に高発泡の(低比重の)スポンジ材13を設けると中空シール部12の圧縮荷重が高くなるので、中空シール部12にエア抜き穴Hを設定することが望まれるが、ドリルで穴明けすると(例えば、特許文献2)、中空シール部12の中に切りカスが残るといった問題がある。切りカスが残ってしまうとこれを取り除くにはかなりの時間を要し作業効率が悪くなる。
また、中空シール部12の内周面に高発泡の(低比重の)スポンジ材13を設けた部位をドリルで穴明けすると、高発泡の(低比重の)スポンジ材13の部分は、通常比重のスポンジ材の部分よりも、より軟質な為、切りカスがより残り易くなるとともに、高発泡の(低比重の)スポンジ材13の一部がドリル(回転刃物)に巻き付いたりして、狙いの真円形状の穴が開きにくくなるという、不具合が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-58819号公報
【特許文献2】特公平7-8637号公報
【特許文献3】特開2021-46099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明の目的は、遮音性及びドア閉じ性を向上させるとともに切りカスの発生を防止し、穴の形状を真円形状に安定させることのできる、自動車用ドアウェザーストリップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は、自動車用ドア(100)に取付けられる取付基部(21)と、その取付基部(21)に一体成形され前記ドア(100)閉時にボディ(200)に弾接する中空シール部(22)を有し、前記中空シール部(22)は、車外側に向けて膨出湾曲した外側中空壁(22A)と、車内側に向けて膨出湾曲した内側中空壁(22B)と、前記外側中空壁(22A)と前記内側中空壁(22B)の先端側を連結する頂部中空壁(22C)と、前記外側中空壁(22A)と前記内側中空壁(22B)の付け根側を連結する連結中空壁(22D)からなり、前記中空シール部(22)に内側の空気を外側に抜くためのエア抜き穴(H)が設定された自動車用ドアウェザーストリップ(20)であって、
前記中空シール部(22)の内周面に、前記外側中空壁(22A),前記内側中空壁(22B),前記頂部中空壁(22C),及び前記連結中空壁(22D)よりも低比重のスポンジ層(30)を、前記エア抜き穴(H)が設定される部位を外して設定したことを特徴とする。
【0009】
また本発明は、前記エア抜き穴(H)を、前記内側中空壁(22B)の前記連結中空壁(22D)寄りの部分に設定し、
前記スポンジ層(30)を、前記外側中空壁(22A)と前記頂部中空壁(22C)と前記内側中空壁(22B)の前記頂部中空壁(22C)寄りの部分に設定したことを特徴とする。
【0010】
また本発明は、自動車用ドア(100)に取付けられる取付基部(21)と、その取付基部(21)に一体成形され前記ドア(100)閉時にボディ(200)に弾接する中空シール部(22)を有し、前記中空シール部(22)は、車外側に向けて膨出湾曲した外側中空壁(22A)と、車内側に向けて膨出湾曲した内側中空壁(22B)と、前記外側中空壁(22A)と前記内側中空壁(22B)の先端側を連結する頂部中空壁(22C)と、前記外側中空壁(22A)と前記内側中空壁(22B)の付け根側を連結する連結中空壁(22D)からなり、前記中空シール部(22)に内側の空気を外側に抜くためのエア抜き穴(H)及び内側に溜まった水を外側に抜くための水抜き穴(S)が設定された自動車用ドアウェザーストリップであって、
前記中空シール部(22)の内周面に、前記外側中空壁(22A),前記内側中空壁(22B),前記頂部中空壁(22C),及び前記連結中空壁(22D)よりも低比重のスポンジ層(30)を、前記エア抜き穴(H)及び前記水抜き穴(S)が設定される部位を外して設定したことを特徴とする。
【0011】
また本発明は、前記エア抜き穴(H)を、前記内側中空壁(22B)の前記連結中空壁(22D)寄りの部分に設定するとともに、前記水抜き穴(S)を、前記外側中空壁(22A)の前記頂部中空壁(22C)寄りの部分に設定し、
前記スポンジ層(30)を、前記外側中空壁(22A)の前記連結中空壁(22D)寄りの部分及び、前記エア抜き穴(H)と前記水抜き穴(S)の間部分に設定したことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記スポンジ層(30)を、前記エア抜き穴(H)または前記水抜き穴(S)に近づくにつれて肉厚が徐変して薄くなるように設定したことを特徴とする。
【0013】
なお、括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に記載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0014】
本発明の自動車用ドアウェザーストリップによれば、中空シール部の内周面に、その中空シール部を構成する外側中空壁,内側中空壁,頂部中空壁,及び連結中空壁よりも低比重のスポンジ層を設けたので遮音性能が向上する。
しかもスポンジ層は、中空シール部の内周面に全周にわたって設定されるものではなく、エア抜き穴が設定される部位を外して設定されるので、圧縮荷重増大が抑制されドア閉じ性の悪化が抑制される。また、エア抜き穴をドリルなどで穴明けしても内周側にはスポンジ層が存在しないので切りカスが発生することもなく、穴形状の品質のよい製品(自動車用ドアウェザーストリップ)を提供することができる。また切りカスが中空シール部内に残りこれを取り除く作業も不要となる。
【0015】
また本発明によれば、エア抜き穴を、内側中空壁の連結中空壁寄りの部分に設定し、スポンジ層を、外側中空壁と頂部中空壁と内側中空壁の頂部中空壁寄りの部分に設定して、スポンジ層を、連結中空壁には設定しないようにしたので、さらに圧縮荷重増大が抑制されドア閉じ性が向上する。それに加え、スポンジ層が連結中空壁に設定されると、エア抜き穴を明けるときにドリルの先端が連結中空壁内周側のスポンジにあたり切りカスが発生する恐れがあるがスポンジ層を連結中空壁に設定しないことでこれを回避することができる。
【0016】
また本発明によれば、エア抜き穴に加えて水抜き穴が設けられた中空シール部において、中空シール部の内周面に、外側中空壁,内側中空壁,頂部中空壁,及び連結中空壁よりも低比重のスポンジ層を、エア抜き穴及び水抜き穴が設定される部位を外して設定したので、エア抜き穴及び水抜き穴の穴明け時に切りカスが発生することがない。また、遮音性とドア閉じ性の両方の機能を向上させることができる。
エア抜き穴を、内側中空壁の連結中空壁寄りの部分に設定するとともに、水抜き穴を、外側中空壁の頂部中空壁寄りの部分に設定し、スポンジ層を、外側中空壁の連結中空壁寄りの部分及び、エア抜き穴と水抜き穴の間部分に設定することがより好ましい。
【0017】
また本発明によれば、スポンジ層を、エア抜き穴または水抜き穴に近づくにつれて肉厚が徐変して薄くなるように設定したので徐変することなくスポンジ層が急になくなる場合と比較して、自動車用ドアウェザーストリップの押出成形時に、中空シール部の外表面側にスジや溝などが発生することが抑制され外観上見栄えがよい。また、中空シール部の圧縮荷重が急激に変化することを防止するので良好なシール機能を発揮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る自動車用ドアウェザーストリップを示す、
図8のB-B線拡大断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る自動車用ドアウェザーストリップを示す、
図8のC-C線拡大断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る自動車用ドアウェザーストリップがドアに弾接した状態を示す、
図8のB-B線拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る他の自動車用ドアウェザーストリップを示す、
図8のB-B線拡大断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る他の自動車用ドアウェザーストリップを示す、
図8のB-B線拡大断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る他の自動車用ドアウェザーストリップを示す、
図8のB-B線拡大断面図である。
【
図8】
図7に示す自動車に取付けられる自動車用ドアウェザーストリップを示す拡大側面図である。
【
図9】従来例に係る自動車用ドアウェザーストリップを示す
図8のA-A線拡大断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る他の自動車用ドアウェザーストリップを示す、
図8のB-B線拡大断面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る他の自動車用ドアウェザーストリップでドア開時の状態を示す拡大断面図である。
【
図12】
図11に示す自動車用ドアウェザーストリップでドア閉時の状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1乃至
図3及び
図7,
図8を参照して、本発明の実施形態に係る自動車用ドアウェザーストリップ20について説明する。なお、従来で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0020】
この自動車用ドアウェザーストリップ20は、自動車用ドア100(ここではフロントドア)の周りに沿って取付けられる取付基部21と、その取付基部21の車内側に一体成形され、ドア100の閉時にそのドア100に相対向する自動車のボディ200に弾接して車内外をシールする中空シール部22を有している。また、取付基部21と中空シール部22の車外側にはドア100側に弾接するリップ部23,24が設けられ、取付基部21と中空シール部22の間には自動車用ドアウェザーストリップ20をドア100に取付ける為のクリップ(図示は省略)の頭部を収容する、中空部25が形成されている。
なお、本実施形態では、車内側とは、ドア100の閉時において、ドア100に相対向するボディ200側であり、車外側とは、その逆側のことを示している。
【0021】
自動車用ドアウェザーストリップ20は、
図8に示すように、押出成形品をコーナー部で型成形接続して環状に形成(図示は省略)したもので、ドア100の前側及び後側と下部に対応する部分には、中空シール部22の内側から外側に空気を抜くためのエア抜き穴H(
図8では黒丸で示した)が所定の間隔(ここでは100mm前後の間隔)をあけて設定されている。なお、エア抜き穴Hを自動車用ドアウェザーストリップ20の全周にわたって設定してもよい。
また、自動車用ドアウェザーストリップ20のドア100の下部に対応する部分には、中空シール部12の内側に溜まった水を外側に抜くための水抜き穴S(
図8では白丸で示した)が複数個、所定の間隔(ここでは300mm間隔で2個)をあけて設定されている。
エア抜き穴Hの位置と水抜き穴Sの位置はずらされ上下方向で重ならないようにされている。
図1はエア抜き穴Hの位置における自動車用ドアウェザーストリップ20の断面を示し、
図2は水抜き穴Sの位置における自動車用ドアウェザーストリップ20の断面を示している。ここでは水抜き穴Sの径(直径)は5mm程度で、エア抜き穴Hの径は水抜き穴Sの径よりも小さく3mm程度としている。
【0022】
中空シール部22は、
図1に示すように、車外側に向けて突出するように膨出湾曲した外側中空壁22Aと、車内側に向けて突出するように膨出湾曲した内側中空壁22Bと、外側中空壁22Aと内側中空壁22Bの先端側を連結する頂部中空壁22Cと、外側中空壁22Aと内側中空壁22Bの付け根側を連結する連結中空壁22Dからなり、エア抜き穴Hについては、内側中空壁22Bの連結中空壁22D寄りの部分に設定し(
図1)、水抜き穴Sについては、外側中空壁22Aの頂部中空壁22C寄りの部分に設定している(
図2)。
【0023】
そして、中空シール部22の内周面に、外側中空壁22A,内側中空壁22B,頂部中空壁22C,及び連結中空壁22Dよりも低比重のスポンジ層30を、エア抜き穴H及び水抜き穴Sが設定される部位を外して設定している。
より具体的には、スポンジ層30を、第一スポンジ層31と第二スポンジ層32の二カ所で構成し、第一スポンジ層31を、中空シール部22の断面形状において、外側中空壁22Aの連結中空壁22D寄りの部分、すなわち、外側中空壁22Aと連結中空壁22Dの連結部から外側中空壁22Aの半分程度の位置(外側中空壁22Aに連結される連結中空壁22Dから頂部中空壁22Cまでの距離の半分程度の位置)に設定し、第二スポンジ層32を、エア抜き穴Hと水抜き穴Sの間部分、すなわち、中空シール部22の断面形状において、頂部中空壁22Cを真中にして外側中空壁22A側に寄った位置から内側中空壁22B側に寄った位置に設定している。第一スポンジ層31と第二スポンジ層32は、自動車用ドアウェザーストリップ20とともに同時に押出成形される。
【0024】
なお、
図4に示すように、第一スポンジ層31を連結中空壁22Dの内周面側を覆うように内側中空壁22B側に向けて延設することもできるが、ここでは(
図1)、エア抜き穴Hから連結中空壁22D側にかけては第一スポンジ層31までスポンジ層30を一切設けていない。
図4に示すように、第一スポンジ層31を連結中空壁22Dの内周面側の全部を覆うように設けると中空シール部22の荷重が上がるとともに、エア抜き穴Hを明けるときにドリルの先端が連結中空壁22D内周側の第一スポンジ層31にあたり切りカスが発生する恐れがあるが第一スポンジ層31を連結中空壁22Dの内周面側の全部を覆うようには設定しないことでこれを回避することができる。
【0025】
また、
図5に示すように、第一スポンジ層31及び第二スポンジ層32の端面については、垂直に切りおとして第一スポンジ層31及び第二スポンジ層32の肉厚を均一にすることもできるが、ここでは(
図1)、第一スポンジ層31及び第二スポンジ層32については、エア抜き穴H及び水抜き穴Sに近づくにつれて肉厚を徐変させて薄くなるように設定している。
これによると、
図5に示すように、第一スポンジ層31及び第二スポンジ層32が急になくなる場合と比較して、自動車用ドアウェザーストリップ20の押出成形時に、中空シール部22の外表面側にスジや溝などが発生することが抑制され外観上見栄えがよい。また、中空シール部22の圧縮荷重が急激に変化することを防止するので良好なシール機能を発揮させることができる。
【0026】
本実施形態では、外側中空壁22A,内側中空壁22B,頂部中空壁22C,及び連結中空壁22Dで構成される中空シール部22を、比重0.45~0.6のスポンジ材で構成し、スポンジ層30(第一スポンジ層31及び第二スポンジ層32)をそれよりも低比重である0.1~0.3のスポンジ材で構成して、ドア閉め力の増大を抑制している。なお、外側中空壁22A,内側中空壁22B,頂部中空壁22C,及び連結中空壁22Dの比重を0.3~0.45とさらに低比重のスポンジ材で構成することで低荷重としドア閉め力を一層、低減するようにしてもよい。
【0027】
このように構成された自動車用ドアウェザーストリップ20によれば、中空シール部22の内周面に、その中空シール部22を構成する外側中空壁22A,内側中空壁22B,頂部中空壁22C,及び連結中空壁22Dよりも低比重のスポンジ層30(第一スポンジ層31及び第二スポンジ層32)を設けたので遮音性能が向上する。
しかもスポンジ層30は、
図9のように、中空シール部22の内周面に全周にわたって設定されるものではなく、エア抜き穴H及び水抜き穴Sが設定される部位を外して設定されるので、圧縮荷重増大が抑制されドア閉じ性の悪化が抑制される。また、エア抜き穴H及び水抜き穴Sを穴明けしてもその位置に対応した中空シール部22の内周側にはスポンジ層30が存在しないので切りカスが発生しにくく、穴形状の品質のよい自動車用ドアウェザーストリップ20を提供することができる。また切りカスが中空シール部22内に残りこれを取り除く作業も不要となるので作業効率の悪化を防止することができる。
【0028】
なお、本実施形態では、スポンジ層30を第一スポンジ層31と第二スポンジ層32の二カ所で構成するようにしたが、
図6に示すように、中空シール部22の内周面において、エア抜き穴Hが設定される部位だけを外して車外側に車外側スポンジ層33だけを設定することもできる。
車外側スポンジ層33は、第一スポンジ層31と第二スポンジ層32と同様に、外側中空壁22A,内側中空壁22B,頂部中空壁22C,及び連結中空壁22Dよりも低比重で、中空シール部22の断面形状において、外側中空壁22Aと連結中空壁22Dの連結部から外側中空壁22A及び頂部中空壁22Cをわたり頂部中空壁22Cから内側中空壁22B側に寄った位置に設定している。車外側スポンジ層33も自動車用ドアウェザーストリップ20とともに同時に押出成形され、エア抜き穴Hに近づくにつれて肉厚が徐変して薄くなるように設定している。
【0029】
これによれば、車外側スポンジ層33は、中空シール部22の内周面においてエア抜き穴Hが設定される部位を外して設定されるので、圧縮荷重増大が抑制されドア閉じ性の悪化が抑制されるとともに、エア抜き穴Hを穴明けしてもその位置に対応した中空シール部22の内周側にはスポンジ層30が存在しないので切りカスが発生することがない。
【0030】
なお、これによれば車外側スポンジ層33によって低比重のスポンジ層が、水抜き穴Sが設定される部位にも設定されるが、水抜き穴Sはエア抜き穴Hと異なり一般的に数が少なく、エア抜き穴Hは自動車用ドアウェザーストリップ20の押出断面製造時に特殊形状のキリを回転させるドリル穴あけによって行われるのに対して、水抜き穴Sは押出断面製造後に打ち抜き刃を利用して打ち抜くことで形成することもできるので、軟質な、低比重のスポンジ層が存在する部位であっても、穴形状を精度よく打ち抜く事が容易である為、打ち抜いたものを取り除くだけよくドリル穴あけ時のような切りカスは発生しにくいため大きな問題はない。
【0031】
また、本発明の実施の形態例では、クリップでドア100に固定される自動車用ドアウェザーストリップ20の押出断面を例示して説明したが、両面テープでドア100に固定される押出断面にも適用が可能であり、
また、ドアサッシュに固定される、車両ルーフ部用の押出断面にも適用が可能である。
また、図示は省略するが、
図6に示した車外側スポンジ層33は、
図4に示した図と同様に、連結中空壁22Dの内周面側を覆うように内側中空壁22B側に向けて延設しても良い。
【0032】
また、
図10に示すように、車外側スポンジ層33を、中空シール部22の断面形状において、外側中空壁22Aと、その外側中空壁22Aから頂部中空壁22Cの手前に至るまでと、外側中空壁22Aから連結中空壁22Dの手前に至るまでに設定するようにしてもよい。
これによれば、遮音効果も維持しながら、荷重増大効果が抑制されドア閉じ性の悪化が抑制される。
【0033】
また、本発明の実施の形態例では、
図1から
図10に示すように、クリップでドア100に固定される自動車用ドアウェザーストリップ20の押出断面を例示して説明したが、
図11及び
図12に示すように、ドアサッシュ110に固定される車両ルーフ部用の自動車用ドアウェザーストリップ20の押出断面にも適用可能である。
図11はドア100の開時,
図12はドア100の閉時に中空シール部22がボディ200に弾接した状態を示している。
【0034】
自動車用ドアウェザーストリップ20は、取付基部21,中空シール部22,2つのリップ部23,24,中空部25からなる。
中空シール部22は、
図11に示すように、車外側に向けて突出するように膨出湾曲した外側中空壁22Aと、車内側に向けて突出するように膨出湾曲した内側中空壁22Bと、外側中空壁22Aと内側中空壁22Bの先端側を連結する頂部中空壁22Cと、外側中空壁22Aの付け根側に連結された連結中空壁22Dと、連結中空壁22Dと内側中空壁22Bの付け根側を連結する下側中空壁22Eからなり、エア抜き穴Hについては、下側中空壁22Eの部分に設定している。
【0035】
そして、内側中空壁22Bの内周面に車外内スポンジ層34を有している。
このようにすることで、
図12に示すように、遮音効果も維持しながら、荷重増大効果が抑制されドア閉じ性の悪化が抑制される。
【符号の説明】
【0036】
10 自動車用ドアウェザーストリップ
11 取付基部
12 中空シール部
13 スポンジ材
20 自動車用ドアウェザーストリップ
21 取付基部
22 中空シール部
22A 外側中空壁
22B 内側中空壁
22C 頂部中空壁
22D 連結中空壁
22E 下側中空壁
23 リップ部
24 リップ部
25 中空部
30 スポンジ層
31 第一スポンジ層(スポンジ層)
32 第二スポンジ層(スポンジ層)
33 車外側スポンジ層(スポンジ層)
34 車内側スポンジ層(スポンジ層)
100 ドア
110 ドアサッシュ
200 ボディ
H エア抜き穴
S 水抜き穴