(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164292
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】付加加工装置、付加加工装置の制御方法、および付加加工装置の制御プログラム
(51)【国際特許分類】
B22F 10/31 20210101AFI20231102BHJP
B22F 10/20 20210101ALI20231102BHJP
B22F 12/41 20210101ALI20231102BHJP
B22F 12/90 20210101ALI20231102BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20231102BHJP
B29C 64/268 20170101ALI20231102BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20231102BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20231102BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231102BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231102BHJP
B23K 26/34 20140101ALI20231102BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20231102BHJP
B23K 26/046 20140101ALI20231102BHJP
【FI】
B22F10/31
B22F10/20
B22F12/41
B22F12/90
B29C64/153
B29C64/268
B29C64/393
B33Y50/02
B33Y10/00
B33Y30/00
B23K26/34
B23K26/21 Z
B23K26/046
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023029197
(22)【出願日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】63/336,279
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/389,773
(32)【優先日】2022-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/889,815
(32)【優先日】2022-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)電気通信回線を通じて発表 掲載年月日 令和4年3月2日 掲載アドレス https://www.jstage.jst.go.jp/article/pscjspe/2022S/0/2022S_365/_article/-char/ja/ (2)電気通信回線を通じて発表 掲載年月日 令和4年5月5日 掲載アドレス https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjspe/88/5/88_409/_article/-char/ja/
(71)【出願人】
【識別番号】300035331
【氏名又は名称】インテリジェント マニュファクチャリング システムズ インターナショナル
(71)【出願人】
【識別番号】000146847
【氏名又は名称】DMG森精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100185719
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 悠樹
(74)【代理人】
【識別番号】100150072
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 賢司
(72)【発明者】
【氏名】青山 英樹
(72)【発明者】
【氏名】山崎 和雄
(72)【発明者】
【氏名】岡本 絵里香
(72)【発明者】
【氏名】相澤 研吾
(72)【発明者】
【氏名】上田 真広
【テーマコード(参考)】
4E168
4F213
4K018
【Fターム(参考)】
4E168BA35
4E168BA81
4E168CA06
4E168CB03
4E168CB07
4E168CB15
4E168CB22
4E168FA01
4E168FB01
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL45
4F213WL76
4F213WL80
4F213WL85
4F213WL92
4K018CA44
4K018EA51
4K018KA53
(57)【要約】
【課題】認識したワークの高さに基づいて従来よりも造形精度を改善するための技術を提供する。
【解決手段】供給される粉末材料を融解して積層することによりワークを造形することが可能な付加加工装置は、ワークに粉末材料を供給するとともにワークにレーザ光を照射するレーザヘッドと、レーザヘッドを駆動するための駆動部と、レーザヘッドがワークのN層目(Nは自然数)を造形している最中において、積層方向におけるワークの高さを認識するための認識部と、認識された高さに基づいて、ワークのN+1層目の造形時におけるレーザヘッドの駆動パスを生成するための生成部と、駆動パスに基づいて駆動部を制御するための制御部とを備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給される粉末材料を融解して積層することによりワークを造形することが可能な付加加工装置であって、
前記ワークに前記粉末材料を供給するとともに前記ワークにレーザ光を照射するレーザヘッドと、
前記レーザヘッドを駆動するための駆動部と、
前記レーザヘッドが前記ワークのN層目(Nは自然数)を造形している最中において、積層方向における前記ワークの高さを認識するための認識部と、
前記認識された高さに基づいて、前記ワークのN+1層目の造形時における前記レーザヘッドの駆動パスを生成するための生成部と、
前記駆動パスに基づいて前記駆動部を制御するための制御部とを備える、付加加工装置。
【請求項2】
前記付加加工装置は、さらに、カメラを備え、前記カメラは、当該カメラの光軸が前記レーザヘッドの光軸と交差するように前記付加加工装置に設けられており、
前記認識部は、
前記レーザヘッドが前記ワークのN層目を造形している最中に前記カメラから得られた画像内において前記粉末材料の溶融池の位置を特定し、
前記画像内における前記溶融池の位置に基づいて、前記ワークの積層方向における高さを認識する、請求項1に記載の付加加工装置。
【請求項3】
前記カメラには、遮光プレートが設けられている、請求項2に記載の付加加工装置。
【請求項4】
前記生成部は、
前記ワークの完成形状を表わす3次元モデルを取得し、
前記認識された高さに基づいて、N+1層目の造形時における前記ワークの高さを推定し、
当該推定された高さに相当する平面であり、かつ前記積層方向に垂直な平面を第1平面とした場合、当該第1平面と前記3次元モデルとの交差部分の形状に基づいて、前記駆動パスを生成する、請求項2または3に記載の付加加工装置。
【請求項5】
前記生成部は、前記積層方向に平行でかつ等間隔に並べられた平面群を第2平面群とした場合、前記3次元モデルと、前記第1平面と、前記第2平面群との交線に基づいて、前記駆動パスを生成する、請求項4に記載の付加加工装置。
【請求項6】
前記付加加工装置は、さらに、前記レーザヘッドが前記ワークのN層目を造形している最中に前記カメラから得られた画像内で前記溶融池のサイズを特定するための特定部を備え、
前記生成部は、前記溶融池のサイズが大きいほど前記第2平面群を構成する各平面の間隔を広くする、請求項5に記載の付加加工装置。
【請求項7】
前記認識部は、前記ワークのN層目における複数箇所において積層方向における前記ワークの高さを認識し、
前記制御部は、さらに、前記複数箇所の第1箇所における前記高さが前記複数箇所の第2箇所における前記高さよりも低い場合には、前記ワークのN+1層目の造形時において当該第1箇所の積層量が当該第2箇所の積層量よりも多くなるように前記レーザヘッドを制御する、請求項1または2に記載の付加加工装置。
【請求項8】
供給される粉末材料を融解して積層することによりワークを造形することが可能な付加加工装置の制御方法であって、
前記付加加工装置は、
前記ワークに前記粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射するレーザヘッドと、
前記レーザヘッドを駆動するための駆動部とを備え、
前記制御方法は、
前記レーザヘッドが前記ワークのN層目(Nは自然数)を造形している最中において、積層方向における前記ワークの高さを認識するステップと、
前記認識するステップで認識された高さに基づいて、前記ワークのN+1層目の造形時における前記レーザヘッドの駆動パスを生成するステップと、
前記駆動パスに基づいて前記駆動部を制御するステップとを備える、制御方法。
【請求項9】
供給される粉末材料を融解して積層することによりワークを造形することが可能な付加加工装置の制御プログラムであって、
前記付加加工装置は、
前記ワークに前記粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射するレーザヘッドと、
前記レーザヘッドを駆動するための駆動部とを備え、
前記制御プログラムは、前記付加加工装置に、
前記レーザヘッドが前記ワークのN層目(Nは自然数)を造形している最中において、積層方向における前記ワークの高さを認識するステップと、
前記認識するステップで認識された高さに基づいて、前記ワークのN+1層目の造形時における前記レーザヘッドの駆動パスを生成するステップと、
前記駆動パスに基づいて前記駆動部を制御するステップとを実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、付加加工装置、付加加工装置の制御方法、および付加加工装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、供給される粉末材料を融解して積層することによりワーク(造形物)を造形することが可能な付加加工装置が普及している。このような造形方式は、DED(Directed Energy Deposition)方式と呼ばれる。DED方式の付加加工装置は、レーザヘッドを有する。レーザヘッドは、移動しながら粉末材料をワークに吐出するとともに、ワークに向けてレーザ光を照射する。これにより、ワーク上におけるレーザ光の照射部分が融解する。粉末材料は、当該融解部分に供給されることで融解および凝固し、ワーク上に積層される。
【0003】
レーザヘッドは、一層の付加加工が終了すると、その層の厚さの分だけ積層方向に駆動されることが好ましい。このとき、一層の実際の高さと、レーザヘッドの移動量とに誤差があると、当該誤差は、積層の度に累積される。この誤差が大きくなるにつれて、レーザ光の焦点位置がワークの表面からずれていき、結果として、造形精度が落ちる。
【0004】
センサによって実際に認識したワークの高さに基づいて、上記誤差を補正する方法がある。当該方法に関し、日本国で公開された特開2018-8403号公報は、造形速度優先モードと造形精度優先モードとを有する立体物製造装置を開示している。当該立体物製造装置は、造形速度優先モードにおいては、5層ごとに、ワークの高さを認識する。一方で、当該立体物製造装置は、造形精度優先モードにおいては、1層ごとに、ワークの高さ認識する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公報に開示される立体物製造装置は、認識したワークの高さに基づいて、当該ワークの造形精度を評価する。このように、当該立体物製造装置は、ワークの造形精度を評価するだけで、ワークの造形精度を改善することはできない。したがって、認識したワークの高さに基づいて従来よりも造形精度を改善するための技術が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例では、供給される粉末材料を融解して積層することによりワークを造形することが可能な付加加工装置は、上記ワークに上記粉末材料を供給するとともに上記ワークにレーザ光を照射するレーザヘッドと、上記レーザヘッドを駆動するための駆動部と、上記レーザヘッドが上記ワークのN層目(Nは自然数)を造形している最中において、積層方向における上記ワークの高さを認識するための認識部と、上記認識された高さに基づいて、上記ワークのN+1層目の造形時における上記レーザヘッドの駆動パスを生成するための生成部と、上記駆動パスに基づいて上記駆動部を制御するための制御部とを備える。
【0008】
本開示の他の例では、供給される粉末材料を融解して積層することによりワークを造形することが可能な付加加工装置の制御方法が提供される。上記付加加工装置は、上記ワークに上記粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射するレーザヘッドと、上記レーザヘッドを駆動するための駆動部とを備える。上記制御方法は、上記レーザヘッドが上記ワークのN層目(Nは自然数)を造形している最中において、積層方向における上記ワークの高さを認識するステップと、上記認識するステップで認識された高さに基づいて、上記ワークのN+1層目の造形時における上記レーザヘッドの駆動パスを生成するステップと、上記駆動パスに基づいて上記駆動部を制御するステップとを備える。
【0009】
本開示の他の例では、供給される粉末材料を融解して積層することによりワークを造形することが可能な付加加工装置の制御プログラムを格納したコンピュータ読取可能な記録媒体が提供される。上記付加加工装置は、上記ワークに上記粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射するレーザヘッドと、上記レーザヘッドを駆動するための駆動部とを備える。上記制御プログラムは、上記付加加工装置に、上記レーザヘッドが上記ワークのN層目(Nは自然数)を造形している最中において、積層方向における上記ワークの高さを認識するステップと、上記認識するステップで認識された高さに基づいて、上記ワークのN+1層目の造形時における上記レーザヘッドの駆動パスを生成するステップと、上記駆動パスに基づいて上記駆動部を制御するステップとを実行させる。
【0010】
本発明の上記および他の目的、特徴、局面および利点は、添付の図面と関連して理解される本発明に関する次の詳細な説明から明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】付加加工装置の装置構成の一例を示す図である。
【
図2】付加加工機の装置構成の一例を示す図である。
【
図3】付加加工中におけるレーザヘッドの断面図を示す。
【
図4】ワークの造形処理の流れを概略的に示す図である。
【
図5】制御装置のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【
図6】付加加工機の駆動機構の一例を示すブロック図である。
【
図7】CNC(Computer Numerical Control)装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【
図8】付加加工装置の機能構成を説明するための図である。
【
図9】付加加工機のレーザヘッドと、ワークとの位置関係の一例を示す図である。
【
図10】カメラから得られた画像の一例を示す図である。
【
図12】
図11に示される距離「d」と、SOD(Standoff Distance)との関係を示す図である。
【
図13】レーザヘッドの駆動パスの生成方法を説明するための図である。
【
図14】駆動パスの生成方法をさらに詳細に説明するための図である。
【
図15】付加加工装置による造形処理の流れを示すフローチャートである。
【
図16】実験1,2を行った際におけるワークの造形条件を示す図である。
【
図17】実験1に従う実験結果と、実験2に従う実験結果とを示す図である。
【
図18】提案手法を用いて実験1を行った際に造形されたワークを示す図である。
【
図19】関連手法を用いて実験1を行った際に造形されたワークを示す図である。
【
図21】提案手法を用いて実験2を行った際に造形されたワークを示す図である。
【
図22】関連手法を用いて実験2を行った際に造形されたワークを示す図である。
【
図24】変形例1に従う付加加工装置の機能構成を説明するための図である。
【
図25】積層方向におけるワークの断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しつつ、本発明に従う各実施の形態について説明する。以下の説明では、同一の部品および構成要素には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、これらについての詳細な説明は繰り返さない。なお、以下で説明される各実施の形態および各変形例は、適宜選択的に組み合わされてもよい。
【0013】
<A.付加加工装置10>
まず、
図1を参照して、付加加工装置10の装置構成について説明する。
図1は、付加加工装置10の装置構成の一例を示す図である。
【0014】
図1に示されるように、付加加工装置10は、制御装置100と、付加加工機200とを含む。
【0015】
制御装置100は、付加加工機200に制御指令を逐次的に出力し、付加加工機200を制御する。制御装置100は、たとえば、デスクトップ型のPC(Personal Computer)、ノート型のPC、タブレット端末、または、通信機能を備えたその他のコンピュータである。
【0016】
付加加工機200は、たとえば、ワークの付加加工(AM(Additive manufacturing)加工)と、ワークの除去加工(SM(Subtractive manufacturing)加工)とが可能なAM/SMハイブリッド加工機である。付加加工機200が有するSM加工機能は、たとえば、ミーリング機能と、固定工具を用いた旋削機能との少なくとも一方を含む。なお、付加加工機200は、SM機能を有さない装置であってもよい。
【0017】
制御装置100および付加加工機200は、たとえば、工場内に設置されており、互いに通信可能に構成される。制御装置100および付加加工機200は、たとえば、産業通信データ交換のための通信規格に従って互いに通信を行う。当該通信規格としては、国際標準規格OPCUA(Object Linking and Embedding for Process Control Unified Architecture)などが挙げられる。付加加工機200は、制御装置100からの制御指令に従ってワークの付加加工を行う。
【0018】
なお、
図1には、付加加工装置10が1つの制御装置100で構成されている例が示されているが、付加加工装置10を構成する制御装置100の数は、2つ以上であってもよい。
【0019】
また、上述では、制御装置100が工場内に設置されている例が示されているが、制御装置100は、工場外に設置されてもよい。
【0020】
また、
図1には、付加加工装置10が1つの付加加工機200で構成されている例が示されているが、付加加工装置10を構成する付加加工機200の数は、2つ以上であってもよい。
【0021】
<B.付加加工機200の装置構成>
次に、
図2を参照して、
図1に示される付加加工機200の装置構成の一例について説明する。
図2は、付加加工機200の装置構成の一例を示す図である。
【0022】
説明の便宜のために、以下では、水平面上の一方向を「X方向」と称する。また、X方向に直交する水平面上の方向を「Y方向」と称する。また、X方向およびY方向の両方に直交する方向(すなわち、重力方向)を「Z方向」と称する。
【0023】
付加加工機200は、機械ベッド211を備える。機械ベッド211上には、旋回テーブル212が設けられている。旋回テーブル212は、回転テーブル213を有する。回転テーブル213は、旋回テーブル212に回転可能に取り付けられている。回転テーブル213上には、付加加工対象のワークWがクランプされる。
【0024】
一例として、付加加工機200は、回転テーブル213上にクランプされたワークWの回転に関して制御可能な2つの軸線(旋回軸線および回転軸線)を有する。旋回軸線は、機械ベッド211の上面に平行な軸線である。回転軸線は、旋回テーブル212の上面に直交する軸線である。回転テーブル213は、旋回軸線回りおよび回転軸線回りに回転可能に構成される。
【0025】
付加加工機200は、第1スライド機構214を有する。第1スライド機構214は、機械ベッド211の後側の機械コラムに配置される。第1スライド機構214は、当該機械コラムに取り付けられたスライドガイドに沿ってY方向に移動可能に構成される。
【0026】
第1スライド機構214には、X方向にアライメントされた複数のスライドガイドが配置される。第2スライド機構215は、当該複数のスライドガイドに沿ってX方向に移動可能に構成される。
【0027】
第2スライド機構215には、除去加工用ヘッド216が設けられている。除去加工用ヘッド216は、第2スライド機構215に沿ってZ方向に駆動可能に構成される。付加加工機200は、Y方向における第1スライド機構214の駆動と、X方向における第2スライド機構215の駆動と、Z方向における除去加工用ヘッド216の駆動とを制御することにより、X方向、Y方向、およびZ方向の任意の位置に除去加工用ヘッド216を駆動する。これらの駆動は、たとえば、サーボモータなどにより駆動される。
【0028】
付加加工機200は、工具218Aなどの様々なユニットを収容するマガジン218と、自動工具交換装置(ATC:Automatic Tool Changer)219とを有する。工具218Aは、未使用時には、マガジン218に収容されている。自動工具交換装置219は、工具交換指示を受け付けたことに基づいて、装着対象のユニットをマガジン218から引き抜き、当該ユニットを主軸224に装着する。
【0029】
付加加工機200は、DED方式により付加加工を行なうためのレーザヘッド231をさらに有する。レーザヘッド231は、付加加工中のワークWに粉末材料を供給するとともに、ワーク表面にレーザ光を照射する。当該粉末材料は、金属粉末であってもよいし、樹脂粉末であってもよいし、レーザ光によって融解するその他の種類の粉末であってもよい。
【0030】
レーザヘッド231は、ヘッド本体232と、レーザノズル236とを有する。ヘッド本体232には、ケーブルCBを介して粉末材料が供給される。レーザノズル236は、ワークに向けてレーザ光を照射するとともに、ワークにおけるレーザ光の照射領域を定める。レーザヘッド231に供給された粉末材料は、レーザノズル236を通じてワークWに向けて吐出される。
【0031】
レーザヘッド231は、第3スライド機構234に設けられる。第3スライド機構234は、スライドガイド233に設けられ、X方向に駆動可能に構成される。レーザヘッド231は、第3スライド機構234の駆動に連動してX方向の任意の位置に駆動される。レーザヘッド231は、付加加工時において、主軸224の下方に位置するように駆動され、主軸224に取り付けられる。主軸224に装着されたレーザヘッド231は、除去加工用ヘッド216と連動して、X方向、Y方向、およびZ方向に駆動される。
【0032】
<C.レーザヘッド231>
次に、
図3を参照して、レーザヘッド231による付加加工について説明する。
図3は、付加加工中におけるレーザヘッド231の断面図を示す。
【0033】
図3には、付加加工中のワークWが基準面BS上に示されている。基準面BSは、任意の物体の表面を表わす。一例として、基準面BSは、基板の表面であってもよいし、付加加工中のワークの表面であってもよい。
【0034】
レーザヘッド231は、XY平面上に移動しながらワークWの表面にレーザ光311を照射する。その結果、レーザ光311の照射部分が融解し、溶融池MPがワークWの表面上に形成される。並行して、レーザヘッド231は、粉末材料312を溶融池MPに供給する。粉末材料312は、レーザヘッド231から吐出されるガス313によって溶融池MPに導かれる。その結果、粉末材料312は、溶融池MPにおいて融解および液状化する。その後、溶融池MPが固まることで、ワークW上に層SLが形成される。なお、ガス313は、シールドガスとしての機能も有し、積層物であるワークWの酸化を防ぐ。
【0035】
層SLの付加加工が終了すると、レーザヘッド231は、ワークWの積層方向に駆動される。「積層方向」とは、各層に直交する方向に相当する。異なる言い方をすれば、「積層方向」とは、層を積み重ねる方向に相当する。以下では、積層方向がZ方向(すなわち、重力方向)であることを前提として説明を行なうが、積層方向は、Z方向に限定されない。
【0036】
XY平面上の駆動とZ方向との駆動とが繰り返されることで、粉末材料312が積層されていく。Z方向におけるレーザヘッド231の駆動量が、形成した層SLの高さと一致していない場合、レーザ光311の焦点位置は、積層の度にワーク表面からずれることになる。その結果、造形精度が低下する。一方で、Z方向におけるレーザヘッド231の駆動量が、形成した層SLの高さと一致している場合には、レーザ光311の焦点が常にワーク表面上に位置することになり、造形精度が低下しない。そのため、レーザヘッド231とワーク表面との間の距離は、常に一定であることが好ましい。
【0037】
<D.概要>
次に、
図4を参照して、本実施の形態に従う造形処理の概要について説明する。
図4は、ワークの造形処理の流れを概略的に示す図である。
【0038】
ステップS110において、付加加工装置10は、上述のレーザヘッド231を制御することでワークWのN層目を造形する。「N」は、自然数である。「N」の初期値は、「1」である。
【0039】
一例として、付加加工装置10は、ワークの1層目(すなわち、N=1)の造形時においては、予め準備されている制御プログラムに従ってレーザヘッド231を駆動する。一方で、付加加工装置10は、ワークの2層目以降(すなわち、N≧2)の造形時においては、後述のステップS114で生成された駆動パスに従ってレーザヘッド231を駆動する。
【0040】
ステップS112において、付加加工装置10は、レーザヘッド231がワークのN層目を造形している最中に、積層方向におけるワークWの高さ(以下、「現ワーク高さ」ともいう。)を認識する。現ワーク高さは、たとえば、所定の基準面と、ワークWのN層目の上面との間の距離で示される。当該所定の基準面は、上述の基準面BSであってもよいし、レーザノズル236における粉末材料の吐出口を含む水平面であってもよい。
【0041】
ステップS114において、付加加工装置10は、ステップS112で認識された現ワーク高さに基づいて、ワークWのN+1層目の造形時におけるレーザヘッド231の駆動パスを生成する。当該駆動パスは、上述のレーザヘッド231がワークのN層目を造形している最中に生成される。
【0042】
ステップS116において、付加加工装置10は、「N」をインクリメントする。すなわち、付加加工装置10は、「N」に1を加算する。
【0043】
その後、付加加工装置10は、ステップS110,S112,S114,S116の処理を再び実行する。当該処理は、現ワーク高さが予め設定されている目標高さに達するまで繰り返し実行される。付加加工装置10は、現ワーク高さが予め定められた目標高さに達した場合、
図4に示される処理を終了する。
【0044】
以上のように、付加加工装置10は、N層目の造形時における現ワーク高さに基づいて、ワークWのN+1層目の造形時におけるレーザヘッド231の駆動パスを逐次生成する。これにより、付加加工装置10は、予め定められた制御プログラムに従ってレーザヘッド231を駆動するよりもワークの造形精度を改善することができる。
【0045】
<E.制御装置100のハードウェア構成>
次に、
図5を参照して、制御装置100のハードウェア構成について説明する。
図5は、制御装置100のハードウェア構成の一例を示す模式図である。
【0046】
制御装置100は、制御回路101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、通信インターフェイス104と、表示インターフェイス105と、入力インターフェイス107と、補助記憶装置120とを含む。これらのコンポーネントは、バス110に接続される。
【0047】
制御回路101は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU(Central Processing Unit)、少なくとも1つのGPU(Graphics Processing Unit)、少なくとも1つのASIC(Application Specific Integrated Circuit)、少なくとも1つのFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
【0048】
制御回路101は、制御プログラム122やオペレーティングシステムなどの各種プログラムを実行することで制御装置100の動作を制御する。制御プログラム122は、実施の形態に従う各種機能を実現するためのプログラムである。制御回路101は、制御プログラム122の実行命令を受け付けたことに基づいて、補助記憶装置120またはROM102からRAM103に制御プログラム122を読み出す。RAM103は、ワーキングメモリとして機能し、制御プログラム122の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0049】
通信インターフェイス104は、付加加工機200などの各種装置と通信を実現するためのインターフェイスである。一例として、制御装置100は、通信インターフェイス104を介して上述のネットワークNW(
図1参照)に接続される。これにより、制御装置100は、付加加工機200とデータをやり取りする。
【0050】
表示インターフェイス105には、ディスプレイ106が接続される。表示インターフェイス105は、制御回路101などからの指令に従って、ディスプレイ106に対して、画像を表示するための画像信号を送出する。ディスプレイ106は、たとえば、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ、またはその他の表示機器である。なお、ディスプレイ106は、制御装置100と一体的に構成されてもよいし、制御装置100とは別に構成されてもよい。
【0051】
入力インターフェイス107には、入力デバイス108が接続される。入力デバイス108は、たとえば、マウス、キーボード、タッチパネル、またはユーザの操作を受け付けることが可能なその他の装置である。なお、入力デバイス108は、制御装置100と一体的に構成されてもよいし、制御装置100とは別に構成されてもよい。
【0052】
補助記憶装置120は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。補助記憶装置120は、制御プログラム122、およびワークの完成形状を表わす3次元モデル124などを格納する。補助記憶装置120に記憶される各種データの格納場所は、補助記憶装置120に限定されない。当該各種データは、制御回路101の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリなど)、ROM102、RAM103、外部機器(たとえば、付加加工機200や外部サーバー)などに格納されていてもよい。
【0053】
なお、制御プログラム122は、単体のプログラムとしてではなく、任意のプログラムの一部に組み込まれて提供されてもよい。このような一部のモジュールを含まないプログラムであっても、本実施の形態に従う制御プログラム122の趣旨を逸脱するものではない。さらに、制御プログラム122によって提供される機能の一部または全部は、専用のハードウェアによって実現されてもよい。さらに、少なくとも1つのサーバーが制御プログラム122の処理の一部を実行する所謂クラウドサービスのような形態で制御装置100が構成されてもよい。
【0054】
<F.付加加工機200の駆動機構>
次に、
図6を参照して、付加加工機200の駆動機構の一例について説明する。
図6は、付加加工機200の駆動機構の一例を示すブロック図である。
【0055】
付加加工機200は、CNC装置200Aと、駆動部240と、上述の第1スライド機構214と、上述の第2スライド機構215と、上述の除去加工用ヘッド216と、上述の主軸224とを含む。
【0056】
CNC装置200Aは、後述の制御プログラム222(
図7参照)など各種プログラムを実行することで駆動部240の動作を制御する。
【0057】
駆動部240は、付加加工機200内の各種機構を駆動するための機構である。駆動部240の装置構成は、任意である。駆動部240は、単体の駆動ユニットで構成されてもよいし、複数の駆動ユニットで構成されてもよい。
図6の例では、駆動部240は、サーボドライバ241A~241Dと、サーボモータ242A~242Dと、エンコーダ243A~243Dとで構成されている。
【0058】
サーボドライバ241Aは、CNC装置200Aから目標回転数(または目標位置)の入力を逐次的に受け、サーボモータ242Aが目標回転数で回転するようにサーボモータ242Aを制御し、第1スライド機構214をY方向に駆動する。
【0059】
より具体的には、サーボドライバ241Aは、エンコーダ243Aのフィードバック信号からサーボモータ242Aの実回転数(または実位置)を算出し、当該実回転数が目標回転数よりも小さい場合にはサーボモータ242Aの回転数を上げ、当該実回転数が目標回転数よりも大きい場合にはサーボモータ242Aの回転数を下げる。このように、サーボドライバ241Aは、サーボモータ242Aの回転数のフィードバックを逐次的に受けながらサーボモータ242Aの回転数を目標回転数に近付ける。サーボドライバ241Aは、第1スライド機構214をY方向に移動し、主軸224に取り付けられたレーザヘッド231をY方向の任意の位置に移動する。
【0060】
サーボドライバ241Bは、サーボドライバ241Aと同様のモータ制御により、CNC装置200Aからの制御指令に従って第2スライド機構215をX方向に移動し、主軸224に取り付けられたレーザヘッド231をX方向の任意の位置に移動する。
【0061】
サーボドライバ241Cは、サーボドライバ241Aと同様のモータ制御により、CNC装置200Aからの制御指令に従って除去加工用ヘッド216をZ軸方向に移動し、主軸224に取り付けられたレーザヘッド231をZ軸方向の任意の位置に移動する。
【0062】
サーボドライバ241Dは、サーボドライバ241Aと同様のモータ制御により、CNC装置200Aからの制御指令に従って、主軸224の回転速度を制御する。
【0063】
付加加工機200は、さらに、上述の回転テーブル213(
図2参照)を旋回軸線周りに駆動するための第1駆動機構(図示しない)を含む。当該旋回軸線は、機械ベッド211(
図2参照)の上面に平行な軸線である。第1駆動機構は、たとえば、サーボドライバ、サーボモータ、およびエンコーダなどで構成される。当該サーボドライバは、サーボドライバ241Aと同様のモータ制御により、CNC装置200Aからの制御指令に従って、回転テーブル213の旋回軸周りの回転角度を制御する。
【0064】
付加加工機200は、さらに、上述の回転テーブル213(
図2参照)を回転軸線周りに駆動するための第2駆動機構(図示しない)を含む。当該回転軸線は、旋回テーブル212の上面に直交する軸線である。第2駆動機構は、たとえば、サーボドライバ、サーボモータ、およびエンコーダなどで構成される。当該サーボドライバは、サーボドライバ241Aと同様のモータ制御により、CNC装置200Aからの制御指令に従って、回転テーブル213の回転軸周りの回転角度を制御する。
【0065】
<G.CNC装置200Aのハードウェア構成>
次に、
図7を参照して、
図6に示されるCNC装置200Aのハードウェア構成について説明する。
図7は、CNC装置200Aのハードウェア構成の一例を示す図である。
【0066】
CNC装置200Aは、制御回路201と、ROM202と、RAM203と、通信インターフェイス204と、フィールドバスコントローラ205と、補助記憶装置220とを含む。これらのコンポーネントは、内部バス209に接続される。
【0067】
制御回路201は、たとえば、少なくとも1つの集積回路によって構成される。集積回路は、たとえば、少なくとも1つのCPU、少なくとも1つのGPU、少なくとも1つのASIC、少なくとも1つのFPGA、またはそれらの組み合わせなどによって構成され得る。
【0068】
制御回路201は、制御プログラム222などの各種プログラムを実行することでCNC装置200Aの動作を制御する。制御プログラム222は、ワークの付加加工を実現するためのプログラムである。制御回路201は、制御プログラム222の実行命令を受け付けたことに基づいて、ROM202からRAM203に制御プログラム222を読み出す。RAM203は、ワーキングメモリとして機能し、制御プログラム222の実行に必要な各種データを一時的に格納する。
【0069】
通信インターフェイス204は、制御装置100などの各種装置と通信を実現するためのインターフェイスである。一例として、付加加工機200は、通信インターフェイス204を介して上述のネットワークNW(
図1参照)に接続される。これにより、付加加工機200は、制御装置100とデータをやり取りする。
【0070】
フィールドバスコントローラ205は、フィールドバスに接続される各種ユニットとの通信を実現するための通信ユニットである。当該フィールドバスに接続されるユニットの一例として、ワークの付加加工を実現するための各種駆動ユニット(たとえば、上述のサーボドライバ241A~241Dなど)が挙げられる。
【0071】
補助記憶装置220は、たとえば、ハードディスクやフラッシュメモリなどの記憶媒体である。補助記憶装置220は、制御プログラム222などを格納する。制御プログラム222の格納場所は、補助記憶装置220に限定されず、制御回路201の記憶領域(たとえば、キャッシュメモリ)、ROM202、RAM203、外部機器(たとえば、サーバー)などに格納されていてもよい。
【0072】
<H.付加加工装置10の機能構成>
次に、
図8~
図14を参照して、ワークの造形処理を実現するための機能構成について説明する。
図8は、付加加工装置10の機能構成を説明するための図である。
【0073】
上述のように、付加加工装置10は、制御装置100と、付加加工機200とを含む。制御装置100は、機能構成として、認識部152と、生成部154とを含む。付加加工機200は、上述のCNC装置200Aと、上述の回転テーブル213と、上述のレーザヘッド231と、上述の駆動部240とを含む。CNC装置200Aは、機能構成として、制御部252を含む。また、CNC装置200Aには、ワークの付加加工を行うための制御プログラム222が格納されている。
【0074】
以下では、認識部152の機能と、生成部154の機能と、制御部252の機能とについて順に説明する。
【0075】
なお、認識部152および生成部154は、必ずしも制御装置100に実装される必要はない。一例として、認識部152または生成部154は、CNC装置200Aに実装されてもよいし、その他の装置に実装されてもよい。
【0076】
また、制御部252は、必ずしもCNC装置200Aに実装される必要はない。一例として、制御部252は、制御装置100に実装されてもよいし、その他の装置に実装されてもよい。
【0077】
(H1.認識部152)
まず、
図9~
図12を参照して、
図8に示される認識部152の機能について説明する。
図9は、付加加工機200のレーザヘッド231と、ワークWとの位置関係の一例を示す図である。
【0078】
認識部152は、レーザヘッド231がワークWのN層目(Nは自然数)を造形している最中において、積層方向におけるワークWの高さ(すなわち、現ワーク高さ)を認識する。現ワーク高さは、任意の方法で認識され得る。
【0079】
一例として、現ワーク高さは、カメラ250を用いて認識される。カメラ250は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラであってもよいし、その他の種類のカメラであってもよい。
【0080】
カメラ250は、レーザヘッド231と連動するように構成される。好ましくは、カメラ250は、その光軸AXCがレーザヘッド231の光軸AXLと交差するように付加加工機200に設けられている。レーザヘッド231の光軸AXLは、レーザの照射方向に相当する。カメラ250の光軸AXCは、レンズ255の光学中心と、カメラ250の結像面の中心とを結ぶ軸に相当する。
【0081】
カメラ250のレンズ255には、溶接用の遮光プレート257が設けられている。DED方式での造形では、溶融池の輝度が非常に高く、スパッタが多く飛散する。そのため、撮影画像内の溶融池部分の輝度は、非常に高くなる傾向にあり、白飛びが発生する。遮光プレート257がレンズ255に設けられることで、溶融池部分の輝度が低くなり、白飛びを防ぐことができる。なお、遮光プレート257の代わりに、減光可能なその他の部材がレンズ255に設けられてもよい。
【0082】
認識部152は、レーザヘッド231がワークWのN層目(Nは自然数)を造形している最中において、溶融池MPを写す画像をカメラ250から取得する。
図10は、カメラ250から得られた画像IM1の一例を示す図である。
図10の例では、画像IM1内に溶融池MPが写っている。
【0083】
画像IM1は、レーザヘッド231がワークWのN層目を造形している最中の任意のタイミングに取得される。一例として、認識部152は、付加加工機200からレーザヘッド231の座標値(X,Y,Z)を定期的に取得し、当該座標値が予め定められた座標値に達したタイミングにおいてカメラ250に撮影指示を出力する。当該予め定められた座標値は、層ごとに設定されている。カメラ250は、当該撮影指示を受けたことに基づいて、ワーク表面の溶融池MPを撮影し、画像IM1を認識部152に送信する。
【0084】
認識部152とカメラ250との間の通信は、有線で実現されてもよいし、無線で実現されてもよい。一例として、カメラ250には、USB(Universal Serial Bus)2.0などの通信インターフェイスが設けられており、画像IM1は、当該通信インターフェイスを介して認識部152に送られる。画像IM1は、静止画像であってもよいし、動画像であってもよい。
【0085】
認識部152は、画像IM1に対して二値化処理を実行することで、
図11に示される画像IM2を生成する。
図11は、画像IM1から生成された画像IM2の一例を示す図である。
【0086】
画像IM1がカラー画像である場合、認識部152は、画像IM1内の各画素のRGB値を二値化処理する。このとき、認識部152は、RGB値のそれぞれが所定閾値(たとえば、100)以上である画素に「0」(黒色)を割り当て、それ以外の画素に「255」(白色)を割り当てる。当該閾値は、溶融池の融点温度に応じて予め決められる。これにより、認識部152は、画像IM1から画像IM2を生成する。
【0087】
次に、認識部152は、画像IM2内において粉末材料の溶融池MPの位置を特定し、当該特定した位置に基づいて現ワーク高さを認識する。より具体的な処理として、認識部152は、まず、下記式(1)に基づいて、レーザヘッド231と溶融池との間の距離(以下、「SOD」ともいう。)を算出する。
【0088】
図9を参照して、溶融池MPがカメラ250で斜めから撮影される場合、溶融池MPが理想的な位置P0にあるときと、溶融池MPが位置P0から「x」mmずれた位置P1にあるときとで、画像IM2内における溶融池MPの位置が変わる。そこで、認識部152は、三角測量法を用いた下記式(1)に基づいて、SODを算出する。
【0089】
x=(d・D)/(f・sinθ+d・cosθ)・・・(1)
式(1)に示される「d」は、カメラ250撮影素子中心から、カメラ250の撮影素子上に結像している溶融池MPまでの距離を示す。異なる言い方をすれば、距離「d」は、画像内における予め定められた基準点と、画像内における溶融池の位置との間の距離に相当する。「d」の単位は、「pixel」で示される。
【0090】
「D」は、基準となる溶融池MPの位置P0と、カメラ250のレンズ255との間の距離を示す。「D」の単位は、「mm」で示される。「D」は、既知の値であり、予め定められている。一例として、「D」は、70mmである。
【0091】
「f」は、カメラ250のレンズ255カメラと、カメラ250の撮影素子との間の距離を示す。「f」の単位は、「mm」で示される。「f」は、既知の値であり、予め定められている。一例として、「f」は、8.8mmである。
【0092】
「θ」は、カメラ250の光軸AXCとレーザヘッド231の光軸AXLとが成す角度を示す。「θ」の単位は、「°」で示される。「θ」は、既知の値であり、予め定められている。一例として、「θ」は、60°である。
【0093】
距離「d」は、たとえば、画像IM2に基づいて算出される。より具体的には、まず、認識部152は、予め定められた画像IM2内から楕円形状を探索する。楕円形状の探索アルゴリズムには、ハフ変換などの種々の画像処理アルゴリズムが用いられ得る。その後、認識部152は、楕円形状の中心点を溶融池の位置として認識し、当該位置と予め定められた基準位置との間の距離を「d」として算出する。
【0094】
認識部152は、算出した距離「d」を上記式(1)に代入することで、距離「x」を特定する。次に、認識部152は、理想のSODである「Amm」から距離「x」を差分することで、現在のSOD(以下、「現SOD」ともいう。)を算出する。理想のSODは、予め設定されている。一例として、理想のSODは、11mmである。
【0095】
その後、認識部152は、N層目の造形時におけるレーザヘッド231のZ座標から現SODを差分することで、現ワーク高さを算出する。レーザヘッド231のZ座標は、たとえば、画像IM1の撮影タイミングにおいてCNC装置200Aから取得される。
【0096】
以上のように、認識部152は、レーザヘッド231がワークWのN層目を造形している最中にカメラ250から得られた画像内において粉末材料の溶融池の位置を特定し、当該位置に基づいて、積層方向における現ワーク高さを認識する。認識された現ワーク高さは、生成部154に出力される。
【0097】
なお、上述では、カメラ250は、その光軸AXCがレーザヘッド231の光軸AXLと交差するように配置されている例について説明を行ったが、カメラ250は、その他の位置に配置されてもよい。一例として、カメラ250は、その光軸AXCがレーザヘッド231の光軸AXLと平行になるように配置されてもよい。
【0098】
また、上述では、カメラ250がレーザヘッド231と連動するように構成されている例について説明を行ったが、カメラ250は、レーザヘッド231とは別に設けられてもよい。一例として、カメラ250は、付加加工機200内の天井に設けられていてもよい。
【0099】
また、上述では、現SODおよび現ワーク高さがカメラ250を用いて認識される例について説明を行ったが、現SODおよび現ワーク高さは、カメラ250以外のその他のセンサ(たとえば、距離センサなど)を用いて認識されてもよい。
【0100】
また、上述では、現SODが上記式(1)に基づいて算出される例について説明を行ったが、現SODは、予め定められた近似式から算出されてもよい。
【0101】
図12は、
図11に示される距離「d」と、SODとの関係を示す図である。
図12に示されるグラフの横軸は、現SODを示す。
図12に示されるグラフの縦軸は、上述の距離「d」を示す。
【0102】
図12に示されるグラフG1は、実測値である。当該実測値の測定時には、「f」が「8.8mm」、理想のSODが「11mm」、「D」が「70mm」、「θ」が「60°」である条件下で、現SODと「d」との関係が測定された。現SODは、「9mm」~「13mm」の範囲内で「1mm」単位で変えられた。
【0103】
グラフG1は、決定係数が0.99となる直線(グラフG2)で近似され得る。
図12の例では、グラフG2は、「y=40.2x-451.4」で表わされる。「x」は上述の「現SOD」に対応し、「y」は上述の「d」に対応する。認識部152は、グラフG2の近似式に対して上記「d」を代入することで、現SODを算出することができる。
【0104】
このように、現SODと「d」との関係は、予め特定され得るので、現SODは、予め定められた近似式から算出されてもよい。
【0105】
(H2.生成部154)
次に、
図13および
図14を参照して、
図8に示される生成部154の機能について説明する。生成部154は、認識部152によって認識された現ワーク高さに基づいて、ワークのN+1層目の造形時におけるレーザヘッド231の駆動パスを生成する。
【0106】
当該駆動パスは、たとえば、
図13に示される3次元モデル124を用いて生成される。
図13は、レーザヘッド231の駆動パスの生成方法を説明するための図である。
【0107】
3次元モデル124は、ワークの完成形状を表わすCAD(Computer Aided Design)データである。3次元モデル124は、制御装置100に格納されていてもよいし、CNC装置200Aに格納されていてもよい。
【0108】
3次元モデル124のデータ形式は、任意である。一例として、3次元モデル124は、3次元形状が点および線の組み合わせで規定されるワイヤーフレームモデルであってもよいし、3次元形状が面の組み合わせで規定されるサーフェイスモデルであってもよいし、物体の有無または種別を示す情報が3次元上の各座標値に関連付けられた空間格子モデルであってもよいし、粉末材料を吐出すべき3次元の座標値を識別することが可能なその他の3Dモデルであってもよい。
【0109】
より具体的な処理として、まず、生成部154は、認識部152によって認識されたN層目の現ワーク高さに基づいて、N+1層目のワーク高さを推定する。一例として、生成部154は、認識されたN層目の現ワーク高さに所定値を加算し、当該加算結果をN+1層目のワーク高さとして推定する。当該所定値は、理想的なSODにおいて積層可能な一層の厚みに応じて予め決められている。あるいは、当該所定値は、N層目の現ワーク高さからN-1層目のワーク高さを差分することで算出されてもよい。
【0110】
次に、生成部154は、平面HP(第1平面)を3次元モデル124に対して仮想的に設定する。平面HPは、N+1層目のワーク高さに相当する平面であり、かつ積層方向に垂直な平面である。その後、生成部154は、3次元モデル124と平面HPとの交差部分CSの形状に基づいて、駆動パスを生成する。当該駆動パスは、交差部分CSの輪郭内において粉末材料が吐出され、かつ、レーザの焦点が当該輪郭内で合うように規定される。
【0111】
なお、交差部分CSの輪郭内に粉末材料が吐出されるような経路であれば、駆動パスのパターンは任意である。
図14は、駆動パスの生成方法をさらに詳細に説明するための図である。
【0112】
好ましくは、生成部154は、3次元モデル124に対して平面HPを仮想的に設定するだけでなく、さらに、3次元モデル124に対して平面群VP(第2平面群)を仮想的に設定する。平面群VPは、積層方向に平行でかつ等間隔ΔYに並べられた平面群である。また、平面群VPは、平面HPに直交する平面群である。生成部154は、3次元モデル124と、平面HPと、平面群VPとの交線に基づいて、駆動パスを生成する。
【0113】
平面群VPを構成する各平面の間隔ΔYは、予め設定されていてもよいし、自動で設定されてもよい。一例として、間隔ΔYは、ビームスポットが50%オーバーラップする間隔(たとえば、1.5mm)に設定される。
【0114】
図14の例では、3次元モデル124と平面HPと平面群VPとの交線が駆動パスPAとして示されている。このように、生成部154は、当該交線に粉末材料が吐出され、かつ、レーザの焦点が当該交線上で合うように駆動パスPAを規定する。
【0115】
なお、
図14の例では、交差部分CS内を走査するような駆動パスPAが生成される例について説明を行ったが、駆動パスPAのパターンは、これに限定されない。他の例として、生成部154は、交差部分CSの中心から渦巻き状に駆動される駆動パスPAを生成してもよい。さらに他の例として、生成部154は、交差部分CSの外周から交差部分CSの中心に向けて渦巻き状に駆動されるパスを生成してもよい。
【0116】
好ましくは、駆動パスPAのパターンは、交差部分CSの輪郭形状別に予めデータベース化されていてもよい。当該データベースに規定される形状は、たとえば、「円形状」と、「円形状以外」とを含む。「円形状」に対しては、同心円経路、一方向経路、またはジグザグ経路などのパターンが対応付けられる。「円形状以外」に対しては、たとえば、一方向経路、またはジグザグ経路が対応付けられる。
【0117】
生成部154は、上記データベースを参照して、交差部分CSの輪郭形状に対応する駆動パスのパターンを特定する。なお、交差部分CSが造形平面内に複数ある場合には、駆動パスのパターンは、交差部分CSの輪郭線の各形状に応じて選択される。
【0118】
(H3.制御部252)
次に、
図8に示される制御部252の機能について説明する。
【0119】
制御部252は、生成部154によって生成された駆動パスに基づいて、レーザヘッド231の駆動部240を制御する。
【0120】
典型的には、CNC装置200Aは、制御パターンごとにシーケンス番号が付与されている制御プログラム222を準備する。各制御パターンは、外部から指定することが可能なR変数を含む。R変数は、たとえば、レーザノズル236の移動座標値(たとえば、早送りG00、直線補間G01,円弧補間G02・G03による移動点)と、レーザノズル236の移動速度(たとえば、送り速度)と、レーザのオン/オフを示す変数との少なくとも1つで定義される。
【0121】
上述の生成部154は、シーケンス番号を指定するとともに、駆動パスPAに応じたR変数をCNC装置200Aに送信する。CNC装置200Aの制御部252は、生成部154から受信したシーケンス番号とR変数とに基づいて、制御プログラム222を逐次的に生成する。
【0122】
これにより、N+1層目の造形経路点の算出と、制御装置100からCNC装置200AへのR変数の送信と、CNC装置200A内でN+1層目の造形プログラムの生成とがN層目の造形中に行われる。
【0123】
<I.制御フロー>
図15を参照して、付加加工装置10の制御フローについて説明する。
図15は、付加加工装置10による造形処理の流れを示すフローチャートである。
【0124】
図15に示される処理は、制御装置100の制御回路101で実行されてもよいし、CNC装置200Aで実行されてもよい。
【0125】
ステップS150において、付加加工装置10は、ワークWのN層目の造形を開始する。「N」は、自然数である。「N」の初期値は、「1」である。
【0126】
付加加工装置10は、ワークの1層目(すなわち、N=1)の造形時においては、予め準備されている制御プログラムに従ってレーザヘッド231を駆動する。一方で、付加加工装置10は、ワークの2層目以降(すなわち、N≧2)の造形時においては、後述のステップS166,S168に示される処理の出力結果に従って、レーザヘッド231を駆動する。
【0127】
ステップS160において、付加加工装置10は、上述の認識部152(
図8参照)として機能し、ワークの撮影タイミングが到来したか否かを判断する。当該撮影タイミングは、たとえば、レーザヘッド231の座標値(X,Y,Z)が予め定められた座標値に達したタイミングにおいて到来する。当該予め定められた座標値は、層ごとに設定されている。付加加工装置10は、ワークの撮影タイミングが到来したと判断した場合(ステップS160においてYES)、制御をステップS162に切り替える。そうでない場合には(ステップS160においてNO)、付加加工装置10は、ステップS160の処理を再び実行する。
【0128】
ステップS162において、付加加工装置10は、上述の認識部152として機能し、カメラ250に撮影指示を出力する。カメラ250は、当該撮影指示を受けたことに基づいて、ワーク表面の溶融池を撮影する。付加加工装置10は、カメラ250から得られた上述の画像IM1に基づいて、現SODを認識する。現SODの認識方法については上述の通りであるので、その説明については繰り返さない。
【0129】
ステップS164において、付加加工装置10は、上述の認識部152として機能し、レーザヘッド231の現在のZ座標を取得し、当該Z座標から現SODを差分する。付加加工装置10は、当該差分結果を現ワーク高さとして認識する。
【0130】
ステップS166において、付加加工装置10は、上述の生成部154(
図8参照)として機能し、ステップS162で認識した現SODに基づいて、ワークのN+1層目を造形する際におけるレーザヘッド231のZ座標を算出する。このとき、当該Z座標は、各層の造形時におけるSODが常に一定になるように算出される。なお、実際の造形時には、SODは、厳密に一定である必要は無く、理想のSODを基準とする所定範囲内に収まればよい。
【0131】
ステップS168において、付加加工装置10は、上述の生成部154として機能し、ステップS164で認識した現ワーク高さに基づいて、ワークのN+1層目を造形する際におけるレーザヘッド231の駆動パスを算出する。当該駆動パスは、XY平面上におけるレーザヘッド231の経路を示す。当該駆動パスの生成方法については上述の通りであるので、その説明については繰り返さない。
【0132】
ステップS170において、付加加工装置10は、ワークのN層目の造形が完了したか否かを判断する。一例として、付加加工装置10は、レーザヘッド231の座標値がN層目の駆動パスの終端に到達したことに基づいて、ワークのN層目の造形が完了したと判断する。付加加工装置10は、ワークのN層目の造形が完了したと判断した場合(ステップS170においてYES)、制御をステップS180に切り替える。そうでない場合には(ステップS170においてNO)、付加加工装置10は、ステップS170の処理を再び実行する。
【0133】
ステップS180において、付加加工装置10は、現ワーク高さが予め定められた目標高さに達したか否かを判断する。付加加工装置10は、現ワーク高さが予め定められた目標高さに達したと判断した場合(ステップS180においてYES)、
図15に示される処理を終了する。そうでない場合には(ステップS180においてNO)、付加加工装置10は、制御をステップS182に切り替える。
【0134】
ステップS182において、付加加工装置10は、「N」をインクリメントする。すなわち、付加加工装置10は、「N」に1を加算する。
【0135】
<J.実験結果>
発明者らは、上述の実施の形態に従う造形処理の有効性を実験により確認した。以下では、
図16~
図23を参照して、当該実験の結果について説明する。
【0136】
説明の便宜のために、以下では、上述の実施の形態に従う造形手法を「提案手法」とも称し、比較対象の造形手法を「関連手法」とも称する。提案手法では、SODが常に一定になるようにレーザヘッド231が駆動される。関連手法では、積層方向における駆動量が常に一定になるようにレーザヘッド231が駆動される。
【0137】
まず、発明者らは、実験1,2を行った。
図16は、実験1,2を行った際におけるワークの造形条件を示す図である。
図17は、実験1に従う実験結果1A,1Bと、実験2に従う実験結果2A,2Bとを示す図である。
【0138】
実験1では、発明者らは、ウォール状のワークを造形した。当該ワークのサイズは、幅1ライン×長さ40mm×高さ20mmである。また、実験1における関連手法では、積層方向におけるレーザヘッド231の駆動量が0.4mmに設定された。また、実験1においては、各層におけるレーザの走査方向が一方向に設定された。
【0139】
図18は、提案手法を用いて実験1を行った際に造形されたワークを示す図である。
図19は、関連手法を用いて実験1を行った際に造形されたワークを示す図である。
【0140】
図20は、実験1に従う実験結果G1A,G1Bを示す図である。
図20に示されるグラフの横軸は、ワークの層番号を示す。
図20に示されるグラフの縦軸は、1層目を基準とするレーザヘッド231のZ座標を示す。実験結果G1Aは、提案手法を用いた際におけるレーザヘッド231のZ座標の推移を示す。実験結果G1Bは、関連手法を用いた際におけるレーザヘッド231のZ座標の推移を示す。
【0141】
図17~
図20を参照して、提案手法では、20.81mmのワークが38層の積層で造形されている。一方で、関連手法では、22.36mmのワークが50層の積層で造形されている。これらの結果は、提案手法の造形効率が関連手法の造形効率よりも改善されていることを示す。
【0142】
実験2では、発明者らは、円錐形状のワークを造形した。当該ワークの底面の直径は、20mmである。また、当該ワークの高さは、20mmである。また、実験2における関連手法では、積層方向におけるレーザヘッド231の駆動量が0.5mmに設定された。また、実験2においては、各層におけるレーザの走査方向がジグザグに設定された。
【0143】
図21は、提案手法を用いて実験2を行った際に造形されたワークを示す図である。
図22は、関連手法を用いて実験2を行った際に造形されたワークを示す図である。
【0144】
図23は、実験2に従う実験結果G2A,G2Bを示す図である。
図23に示されるグラフの横軸は、ワークの層番号を示す。
図23に示されるグラフの縦軸は、1層目を基準とするレーザヘッド231のZ座標を示す。実験結果G2Aは、提案手法を用いた際におけるレーザヘッド231のZ座標の推移を示す。実験結果G2Bは、関連手法を用いた際におけるレーザヘッド231のZ座標の推移を示す。
【0145】
図17および
図21~
図23を参照して、提案手法では、20.98mmのワークが22層の積層で造形されている。一方で、関連手法では、ワーク高さが目標の20mmに到達せずに、13.58mmとなった。この理由は、最適なSODが11mmであるのに対して、14層目の積層時においてSODが3.92mmになったためである。このように、提案手法では要求形状のワークが造形されたが、関連手法では要求形状のワークが造形されなかった。この結果は、提案手法の造形精度が関連手法の造形精度よりも改善されていることを示す。
【0146】
<K.変形例1>
次に、
図24を参照して、変形例1に従う付加加工装置10について説明する。
【0147】
上述の
図14の例では、付加加工装置10は、3次元モデル124と平面HPと平面群VPとの交線を駆動パスPAとして生成していた。このとき、平面群VPを構成する各平面の間隔ΔYは、一定であった。これに対して、本変形例に従う付加加工装置10は、画像内に写る溶融池のサイズに応じて間隔ΔYを決定する。
【0148】
図24は、変形例1に従う付加加工装置10の機能構成を説明するための図である。
図24に示される付加加工装置10は、特定部156をさらに備える点で
図8に示される付加加工装置10とは異なる。特定部156以外の構成については
図8で説明した通りであるので、それらの説明については繰り返さない。
【0149】
特定部156は、レーザヘッド231がワークのN層目(Nは自然数)を造形している最中にカメラ150から得られた画像内で溶融池のサイズを特定する。当該サイズは、画像内における溶融池の面積で示されてもよいし、画像内における溶融池の幅で示されてもよいし、その他の指標で示されてもよい。溶融池の幅は、たとえば、レーザヘッド231の駆動方向に対応する溶融池の幅と、当該駆動方向の直交方向に対応する溶融池の幅との少なくとも一方で示される。
【0150】
特定部156によって特定された溶融池のサイズは、生成部154に出力される。生成部154は、溶融池のサイズが大きいほど平面群VP(第2平面群)を構成する各平面の間隔ΔYを広くする。異なる言い方をすれば、生成部154は、溶融池のサイズが小さいほど平面群VPを構成する各平面の間隔ΔYを狭くする。これにより、生成部154は、溶融池のサイズに応じた適切な駆動パスPAを生成することができる。結果として、ワークの造形精度が改善される。
【0151】
溶融池のサイズと間隔ΔYとの関係は、テーブル形式で規定されてもよいし、所定の算出式で規定されていてもよい。当該算出式は、溶融池のサイズを説明変数とし、間隔ΔYを目的変数とする。
【0152】
<L.変形例2>
次に、
図25を参照して、変形例2に従う付加加工装置10について説明する。
【0153】
上述の付加加工装置10は、ワークのN層目の造形時において1箇所の現ワーク高さを認識していた。これに対して、本変形例に従う付加加工装置10は、ワークのN層目の造形時において複数箇所の現ワーク高さを認識する。そして、付加加工装置10の制御部252は、各箇所の現ワーク高さに応じて、N+1層目の造形時における当該箇所の積層量を変える。
【0154】
図25は、積層方向におけるワークWの断面図を示す図である。
図25に示されるように、付加加工装置10は、N層目の造形時おいて、箇所P1(第1箇所)における現ワーク高さH1と、箇所P2(第2箇所)における現ワーク高さH2とを認識したとする。このとき、箇所P1における現ワーク高さH1は、箇所P2における現ワーク高さH2よりも低かったとする。この場合、付加加工装置10は、ワークWのN+1層目の造形時において箇所P1の積層量ΔA1が箇所P2の積層量ΔA2よりも多くなるようにレーザヘッド231を制御する。これにより、付加加工装置10は、N+1層目の造形時においてワーク高さを均一にすることができる。
【0155】
積層量ΔA1,A2は、種々の方法で変えられる。一例として、積層量ΔA1,A2は、粉末材料の吐出量に応じて変えられる。他の例として、積層量ΔA1,A2は、レーザヘッド231の移動速度に応じて変えられる。さらに他の例として、積層量ΔA1,A2は、箇所P1,P2におけるレーザヘッド231の通過回数に応じて変えられる。さらに他の例として、積層量ΔA1,A2は、レーザヘッド231の出力に応じて変えられる。
【0156】
好ましくは、付加加工装置10は、箇所P1と箇所P2との間における現ワーク高さを、現ワーク高さH1,H2を用いて補間することで推定し、当該推定結果に応じて箇所P1と箇所P2との間における積層量を決定する。
【0157】
なお、上述では、2つの箇所P1,P2の現ワーク高さH1,H2が認識される例について説明を行ったが、3つ以上の箇所の現ワーク高さが認識されてもよい。この場合、付加加工装置10は、認識された各箇所における現ワーク高さに基づいて、N+1層目の造形時におけるレーザヘッド231の駆動パスを生成する。
【0158】
<M.変形例3>
次に、変形例3に従う付加加工装置10について説明する。
【0159】
上述の
図8などでは、制御装置100がCNC装置200Aの外部に設けられている例について説明を行ったが、制御装置100は、CNC装置200Aの内部に設けられてもよい。
【0160】
<O.付記>
以上のように、本実施形態は以下のような開示を含む。
【0161】
[構成1]
供給される粉末材料を融解して積層することによりワークを造形することが可能な付加加工装置であって、
前記ワークに前記粉末材料を供給するとともに前記ワークにレーザ光を照射するレーザヘッドと、
前記レーザヘッドを駆動するための駆動部と、
前記レーザヘッドが前記ワークのN層目(Nは自然数)を造形している最中において、積層方向における前記ワークの高さを認識するための認識部と、
前記認識された高さに基づいて、前記ワークのN+1層目の造形時における前記レーザヘッドの駆動パスを生成するための生成部と、
前記駆動パスに基づいて前記駆動部を制御するための制御部とを備える、付加加工装置。
【0162】
[構成2]
前記付加加工装置は、さらに、カメラを備え、前記カメラは、当該カメラの光軸が前記レーザヘッドの光軸と交差するように前記付加加工装置に設けられており、
前記認識部は、
前記レーザヘッドが前記ワークのN層目を造形している最中に前記カメラから得られた画像内において前記粉末材料の溶融池の位置を特定し、
前記画像内における前記溶融池の位置に基づいて、前記ワークの積層方向における高さを認識する、構成1に記載の付加加工装置。
【0163】
[構成3]
前記カメラには、遮光プレートが設けられている、構成2に記載の付加加工装置。
【0164】
[構成4]
前記生成部は、
前記ワークの完成形状を表わす3次元モデルを取得し、
前記認識された高さに基づいて、N+1層目の造形時における前記ワークの高さを推定し、
当該推定された高さに相当する平面であり、かつ前記積層方向に垂直な平面を第1平面とした場合、当該第1平面と前記3次元モデルとの交差部分の形状に基づいて、前記駆動パスを生成する、構成2または3に記載の付加加工装置。
【0165】
[構成5]
前記生成部は、前記積層方向に平行でかつ等間隔に並べられた平面群を第2平面群とした場合、前記3次元モデルと、前記第1平面と、前記第2平面群との交線に基づいて、前記駆動パスを生成する、構成4に記載の付加加工装置。
【0166】
[構成6]
前記付加加工装置は、さらに、前記レーザヘッドが前記ワークのN層目を造形している最中に前記カメラから得られた画像内で前記溶融池のサイズを特定するための特定部を備え、
前記生成部は、前記溶融池のサイズが大きいほど前記第2平面群を構成する各平面の間隔を広くする、構成5に記載の付加加工装置。
【0167】
[構成7]
前記認識部は、前記ワークのN層目における複数箇所において積層方向における前記ワークの高さを認識し、
前記制御部は、さらに、前記複数箇所の第1箇所における前記高さが前記複数箇所の第2箇所における前記高さよりも低い場合には、前記ワークのN+1層目の造形時において当該第1箇所の積層量が当該第2箇所の積層量よりも多くなるように前記レーザヘッドを制御する、構成1~構成6のいずれか1項に記載の付加加工装置。
【0168】
[構成8]
供給される粉末材料を融解して積層することによりワークを造形することが可能な付加加工装置の制御方法であって、
前記付加加工装置は、
前記ワークに前記粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射するレーザヘッドと、
前記レーザヘッドを駆動するための駆動部とを備え、
前記制御方法は、
前記レーザヘッドが前記ワークのN層目(Nは自然数)を造形している最中において、積層方向における前記ワークの高さを認識するステップと、
前記認識するステップで認識された高さに基づいて、前記ワークのN+1層目の造形時における前記レーザヘッドの駆動パスを生成するステップと、
前記駆動パスに基づいて前記駆動部を制御するステップとを備える、制御方法。
【0169】
[構成9]
供給される粉末材料を融解して積層することによりワークを造形することが可能な付加加工装置の制御プログラムであって、
前記付加加工装置は、
前記ワークに前記粉末材料を供給するとともに当該ワークにレーザ光を照射するレーザヘッドと、
前記レーザヘッドを駆動するための駆動部とを備え、
前記制御プログラムは、前記付加加工装置に、
前記レーザヘッドが前記ワークのN層目(Nは自然数)を造形している最中において、積層方向における前記ワークの高さを認識するステップと、
前記認識するステップで認識された高さに基づいて、前記ワークのN+1層目の造形時における前記レーザヘッドの駆動パスを生成するステップと、
前記駆動パスに基づいて前記駆動部を制御するステップとを実行させる、制御プログラム。
【0170】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0171】
1A 実験結果、1B 実験結果、2A 実験結果、2B 実験結果、10 付加加工装置、100 制御装置、101 制御回路、102 ROM、103 RAM、104 通信インターフェイス、105 表示インターフェイス、106 ディスプレイ、107 入力インターフェイス、108 入力デバイス、110 バス、120 補助記憶装置、122 制御プログラム、124 3次元モデル、150 カメラ、152 認識部、154 生成部、156 特定部、200 付加加工機、200A CNC装置、201 制御回路、202 ROM、203 RAM、204 通信インターフェイス、205 フィールドバスコントローラ、209 内部バス、211 機械ベッド、212 旋回テーブル、213 回転テーブル、214 第1スライド機構、215 第2スライド機構、216 除去加工用ヘッド、218 マガジン、218A 工具、219 自動工具交換装置、220 補助記憶装置、222 制御プログラム、224 主軸、231 レーザヘッド、232 ヘッド本体、233 スライドガイド、234 第3スライド機構、236 レーザノズル、240 駆動部、241A サーボドライバ、241B サーボドライバ、241C サーボドライバ、241D サーボドライバ、242A サーボモータ、242B サーボモータ、242C サーボモータ、242D サーボモータ、243A エンコーダ、243B エンコーダ、243C エンコーダ、243D エンコーダ、250 カメラ、252 制御部、255 レンズ、257 遮光プレート、311 レーザ光、312 粉末材料、313 ガス。