(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164307
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】工具および加工装置
(51)【国際特許分類】
B23F 21/16 20060101AFI20231102BHJP
B23F 5/16 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B23F21/16
B23F5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023049406
(22)【出願日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】P 2022074152
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】315017775
【氏名又は名称】ニデックマシンツール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138689
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 慶
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼木 達朗
(72)【発明者】
【氏名】パラスランプリア ゴビンダ
【テーマコード(参考)】
3C025
【Fターム(参考)】
3C025AA18
3C025FF01
3C025FF02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】歯車の歯面を加工するときに、歯車の一方の歯面と工具との干渉を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】工具30は、工具軸Bに沿って延びる工具本体部31と、工具軸を中心とする螺旋状に配置された条32とを有する。条は、螺旋方向の一方側に配置された第1領域81と、第1領域よりも螺旋方向の他方側に配置された基準領域84とを有する。第1領域は、一方側刃面と、他方側刃面とを有する。基準領域は、一方側刃面と、他方側刃面とを有する。基準領域の歯形における一方側刃面及び他方側刃面の少なくとも一方において、工具軸側に配置される内側領域と工具本体部の外側面との角度が、内側領域よりも工具軸から離れる方向に配置される外側領域と工具軸本体部の外側面との角度よりも小さい。第1領域における他方側刃面は、基準領域における他方側刃面よりも凹んでいる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具軸に沿って延びる工具本体部と、
前記工具本体部の外側面において、前記工具軸から離れる方向へ突出し、前記工具軸を中心とする螺旋状に配置された条と、
を有し、
前記条は、
前記螺旋方向の一方側に配置された第1領域と、
前記第1領域よりも前記螺旋方向の他方側に配置された基準領域と、
を有し、
前記第1領域は、
前記工具軸方向の一方側の面である一方側刃面と、
前記工具軸方向の他方側の面である他方側刃面と、
を有し、
前記基準領域は、
前記工具軸方向の一方側の面である一方側刃面と、
前記工具軸方向の他方側の面である他方側刃面と、
を有し、
前記基準領域の歯形における前記一方側刃面及び前記他方側刃面の少なくとも一方において、前記工具軸側に配置される内側領域と前記工具本体部の外側面との角度が、前記内側領域よりも工具軸から離れる方向に配置される外側領域と前記工具本体部の外側面との角度よりも小さく、
前記第1領域における前記他方側刃面は、前記基準領域における前記他方側刃面よりも凹んでいる、工具。
【請求項2】
請求項1に記載の工具であって、
前記条は、前記第1領域と前記基準領域との前記螺旋方向の間に配置される第2領域を有し、
前記第2領域は、
前記工具軸方向の一方側の面である一方側刃面と、
前記工具軸方向の他方側の面である他方側刃面と、
を有し、
前記第2領域における前記他方側刃面は、前記基準領域における前記他方側刃面よりも凹んでおり、
前記第1領域における前記他方側刃面は、前記第2領域における前記他方側刃面よりも凹んでいる、工具。
【請求項3】
請求項2に記載の工具であって、
前記第1領域の歯形と前記基準領域の歯形とを重ねた場合における前記他方側刃面における形状の差異を他方側の逃がし部とし、
前記第2領域の歯形と前記基準領域の歯形とを重ねた場合における前記他方側刃面における形状の差異を他方側の逃がし部とした場合に、
前記第1領域における前記他方側の逃がし部の前記工具軸側端は、前記第2領域における前記他方側の逃がし部の前記工具軸側端よりも、前記工具軸側に配置される、工具。
【請求項4】
請求項1に記載の工具であって、
前記第1領域の歯形と前記基準領域の歯形とを重ねた場合における前記他方側刃面における形状の差異を他方側の逃がし部とし、
前記第1領域の歯形と前記基準領域の歯形とを重ねた場合に、前記第1領域の前記他方側の逃がし部の全体は、前記基準領域の歯形に含まれる、工具。
【請求項5】
請求項4に記載の工具であって、
前記第1領域の歯形と前記基準領域の歯形を重ねた場合に、前記第1領域の歯形における、前記一方側刃面の前記工具軸側端と、前記他方側刃面の前記工具軸側端と、前記工具軸を基準とする径方向外端と、は、それぞれ、前記基準領域の歯形における、前記一方側刃面の前記工具軸側端と、前記他方側刃面の前記工具軸側端と、前記工具軸を基準とする径方向外端と、に一致する、工具。
【請求項6】
請求項1に記載の工具であって、
前記第1領域の歯形における前記一方側刃面の形状は、前記基準領域の歯形における前記一方側刃面の形状と一致する、工具。
【請求項7】
請求項1に記載の工具であって、
前記基準領域における前記一方側刃面は、前記第1領域における前記一方側刃面よりも凹んでいる、工具。
【請求項8】
請求項7に記載の工具であって、
前記第1領域の歯形と前記基準領域の歯形とを重ねた場合における前記一方側刃面における形状の差異を前記基準領域における一方側の逃がし部とした場合に、
前記第1領域の歯形と前記基準領域の歯形とを重ねた場合に、前記基準領域における一方側の逃がし部の全体は、前記第1領域の歯形に含まれる、工具。
【請求項9】
歯車を加工する加工装置であって、
請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載の工具と、
前記工具を、前記工具軸を中心として回転させる工具駆動部と、
前記歯車を、前記工具軸と非平行に配置された歯車軸を中心として回転させる歯車駆動部と、
を備える、加工装置。
【請求項10】
歯車を加工する加工装置であって、
工具と、
前記工具を、工具軸を中心として回転させる工具駆動部と、
前記歯車を、前記工具軸と非平行に配置された歯車軸を中心として回転させる歯車駆動部と、
を備え、
前記工具は、
前記工具軸に沿って延びる工具本体部と、
前記工具本体部の外側面において、前記工具軸から離れる方向へ突出し、前記工具軸を中心とする螺旋状に配置された条と、
を有し、
前記条は、前記螺旋に沿って異なる位置に配置された第1領域および第2領域を含み、
前記条は、
前記工具軸方向の一方側の面である右刃面と、
前記工具軸方向の他方側の面である左刃面と、
を有し、
前記歯車は、複数の歯を有し、
前記第1領域の前記右刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向一方側の面における歯底部を加工し、前記第2領域の前記右刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向一方側の面における歯底部よりも歯先側を加工する加工構成と、
前記第1領域の前記左刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向他方側の面における歯先部を加工し、前記第2領域の前記左刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向他方側の面における前記歯先部よりも歯底側を加工する加工構成と、
の少なくとも一方の加工構成を有し、
前記条は、前記左刃面において、前記第1領域の歯形が、前記第2領域の歯形よりも凹んでいる工具構成と、前記右刃面において、前記第2領域の歯形が、前記第1領域の歯形よりも凹んでいる工具構成と、の少なくとも一方の工具構成を有する、加工装置。
【請求項11】
請求項10に記載の加工装置であって、
前記第1領域の前記右刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向一方側の面における歯底部を加工し、前記第2領域の前記右刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向一方側の面における歯底部よりも歯先側を加工する加工構成と、
前記第1領域の前記左刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向他方側の面における歯先部を加工し、前記第2領域の前記左刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向他方側の面における前記歯先部よりも歯底側を加工する加工構成と、
の両方の加工構成を有する、加工装置。
【請求項12】
請求項10に記載の加工装置であって、
前記条は、前記左刃面において、前記第1領域の歯形が、前記第2領域の歯形よりも凹んでいる工具構成と、前記右刃面において、前記第2領域の歯形が、前記第1領域の歯形よりも凹んでいる工具構成と、の両方の工具構成を有する、加工装置。
【請求項13】
請求項11に記載の加工装置であって、
前記条は、前記左刃面において、前記第1領域の歯形が、前記第2領域の歯形よりも凹んでいる工具構成と、前記右刃面において、前記第2領域の歯形が、前記第1領域の歯形よりも凹んでいる工具構成と、の両方の工具構成を有する、加工装置。
【請求項14】
請求項10から請求項13までのいずれか1項に記載の加工装置であって、
前記条は、前記第2領域を基準として、前記螺旋に沿って前記第1領域とは反対側の位置に配置され、歯形が最も凸となる最大領域を含み、
前記第2領域の歯形は、前記最大領域の歯形よりも凹んでいる、加工装置。
【請求項15】
請求項14に記載の加工装置であって、
前記左刃面のうち、前記歯における前記歯車軸の周方向他方側の面に接触しない部分に、前記最大領域の歯形から欠けた逃がし部がある、加工装置。
【請求項16】
請求項14に記載の加工装置であって、
前記右刃面のうち、前記歯における前記歯車軸の周方向一方側の面に接触しない部分に、前記最大領域の歯形から欠けた逃がし部がある、加工装置。
【請求項17】
請求項10から請求項13までのいずれか1項に記載の加工装置であって、
前記歯車は、はすば歯車である、加工装置。
【請求項18】
請求項10から請求項13までのいずれか1項に記載の加工装置であって、
前記条が、前記歯の周方向一方側の面を加工した後、
前記工具駆動部または前記歯車駆動部が、前記歯車の回転に対する前記工具の回転の位相をずらす、または、前記工具と前記歯車との相対位置を前記歯車軸と交差する方向にずらすことにより、前記条が前記歯車の歯底を加工する、加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具および加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、歯車の歯切り加工後に、当該加工によって生じるバリの除去や、鋭利な角部を除去するために、歯車端面と歯面との間の歯縁に面取り加工が施される場合がある。面取り加工の工具の一例として、歯車の左右の歯縁を単一の工程で加工できる面取りホブが知られている(特許文献1)。
【特許文献1】特開昭55-031571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、左右の歯縁を単一の工程で加工する面取りホブの場合、ホブカッタの形状に課される制約が多い。よって、左右の歯縁を別々の工程において片方ずつ面取り加工する場合がある。このとき、ホブカッタと歯車を同期回転させ、ホブカッタの個別の条が順次歯車を加工する際に、条の一部と歯車の一部が干渉する場合がある。当該干渉を避けるためには、条の刃面の形状に設計上の制約を受ける場合がある。
【0004】
本発明の目的は、歯車の歯面を加工するときに、歯車の一方の歯面と工具との干渉を抑制できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の第1発明は、工具であって、工具軸に沿って延びる工具本体部と、前記工具本体部の外側面において、前記工具軸から離れる方向へ突出し、前記工具軸を中心とする螺旋状に配置された条と、を有し、前記条は、前記螺旋方向の一方側に配置された第1領域と、前記第1領域よりも前記螺旋方向の他方側に配置された基準領域と、を有し、前記第1領域は、前記工具軸方向の一方側の面である一方側刃面と、前記工具軸方向の他方側の面である他方側刃面と、を有し、前記基準領域は、前記工具軸方向の一方側の面である一方側刃面と、前記工具軸方向の他方側の面である他方側刃面と、を有し、前記基準領域の歯形における前記一方側刃面及び前記他方側刃面の少なくとも一方において、前記工具軸側に配置される内側領域と前記工具本体部の外側面との角度が、前記内側領域よりも工具軸から離れる方向に配置される外側領域と前記工具軸本体部の外側面との角度よりも小さく、前記第1領域における前記他方側刃面は、前記基準領域における前記他方側刃面よりも凹んでいる。
【0006】
本願の第2発明は、歯車を加工する加工装置であって、工具と、前記工具を、工具軸を中心として回転させる工具駆動部と、前記歯車を、前記工具軸と非平行に配置された歯車軸を中心として回転させる歯車駆動部と、を備え、前記工具は、前記工具軸に沿って延びる工具本体部と、前記工具本体部の外側面において、前記工具軸から離れる方向へ突出し、前記工具軸を中心とする螺旋状に配置された条と、を有し、前記条は、前記螺旋に沿って異なる位置に配置された第1領域および第2領域を含み、前記条は、軸方向の一方側の面である右刃面と、軸方向の他方側の面である左刃面と、を有し、前記歯車は、複数の歯を有し、前記第1領域の前記右刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向一方側の面における歯底部を加工し、前記第2領域の前記右刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向一方側の面における歯底部よりも歯先側を加工する加工構成と、前記第1領域の前記左刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向他方側の面における歯先部を加工し、前記第2領域の前記左刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向他方側の面における前記歯先部よりも歯底側を加工する加工構成と、の少なくとも一方の加工構成を有し、前記条は、前記左刃面において、前記第1領域の歯形が、前記第2領域の歯形よりも凹んでいる工具構成と、前記右刃面において、前記第2領域の歯形が、前記第1領域の歯形よりも凹んでいる工具構成と、の少なくとも一方の工具構成を有する。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、歯車の歯面を加工するときに、歯車の一方の歯面と工具との干渉を抑制できる
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図13】
図13は、加工装置の動作の流れを示すフローチャートである。
【
図14】
図14は、加工処理の流れを示したフローチャートである。
【
図17】
図17は、条の右刃面に逃がし部がある工具の斜視図である。
【
図18】
図18は、条の両面に逃がし部がある工具の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<1.加工装置の構成>
図1は、一実施形態に係る加工装置1の正面図である。
図2は、当該加工装置1の平面図である。
図1および
図2には、x方向、y方向、およびz方向が示されている。本実施形態において、x方向およびy方向は、水平方向であり、かつ互いに直交する方向である。また、本実施形態において、z方向は、鉛直方向である。ただし、このx方向、y方向、およびz方向の定義は、本発明に係る加工装置の姿勢を限定するものではない。すなわち、x方向およびy方向は、水平方向以外の方向であってもよい。また、z方向は、鉛直方向以外の方向であってもよい。
【0010】
加工装置1は、歯車9を加工する装置である。
図3は、歯車9の斜視図である。
図3の歯車9は、はすば歯車である。歯車9は、歯車軸Aを中心とする環状である。歯車9は、第1端面91と第2端面92とを有する。第1端面91は、歯車軸Aと平行な方向における歯車9の一端面である。第2端面92は、歯車軸Aと平行な方向における歯車9の他端面である。また、歯車9は、複数の外歯90を有する。複数の外歯90は、歯車9の外側面において、歯車軸Aから離れる方向に突出する。
【0011】
なお、本実施形態においては、歯車9は複数の外歯90を有するが、歯車は、複数の内歯を有していてもよい。その場合、加工装置及び加工装置が有する工具は、歯車の内歯を加工するために用いられる。以下の説明においては、加工装置1が、外歯90を有する歯車9を加工する場合について記述する。
【0012】
図3に示すように、複数の外歯90は、歯車軸Aを中心として螺旋状に延びる。各外歯90は、第1歯面901と第2歯面902とを有する。第1歯面901は、歯車軸Aを中心とする周方向における外歯90の一方側の面である。第2歯面902は、歯車軸Aを中心とする周方向における外歯90の他方側の面である。第1歯面901は、第2端面92から第1端面91へ向かうにつれて、周方向の一方側に向かって延びる。つまり、歯車軸Aに沿って第1端面91から第2端面92に向かって見た場合、第1歯面901は、鋭角面となる。第2歯面902は、第2端面92から第1端面91へ向かうにつれて、周方向の他方側に向かって延びる。つまり、歯車軸Aに沿って第1端面91から第2端面92に向かって見た場合、第2歯面902は、鈍角面となる。
【0013】
本実施形態の加工装置1は、歯車9の第1端面91の外縁部および第2端面92の外縁部を、切削により面取り加工する。換言すると、本実施形態の加工装置1は、外歯90の第1端面91側の端部と、外歯90の第2端面92側の端部とを、切削により面取り加工する。
【0014】
図1および
図2に示すように、加工装置1は、工具駆動部20、2つの工具30、および歯車駆動部40を備える。また、本実施形態の加工装置1は、ベッド10、チェンジャ50、位相センサ60、および制御部70をさらに備える。なお、工具30は1つ、または、3つ以上であってもよい。これにより、例えば、複数種類の歯車を加工することが可能である。加工装置1が工具30を有することによって、後述するメカニズムによって、工具30と歯車9との接触を抑制しつつ、歯車9を適切に加工できる。
【0015】
ベッド10は、工具駆動部20および歯車駆動部40を支持する支持台である。ベッド10は、剛性の高い圧延鋼により形成される。ベッド10は、歯車9を製造する工場の床面に設置される。
図1では、ベッド10が平坦な板状であり、その上面に、工具駆動部20および歯車駆動部40が支持されている。ただし、ベッド10を、底板部、側壁部、および天板部を有する筐体状とし、その内部に、工具駆動部20および歯車駆動部40を収容してもよい。工具駆動部20および歯車駆動部40は、x方向に並んで配置されている。
【0016】
工具駆動部20は、工具30を移動および回転させる機構である。工具駆動部20は、工具30を、x方向、y方向、およびz方向に移動させる。また、工具駆動部20は、工具30を、工具軸Bを中心として回転させる。
図1および
図2に示すように、工具駆動部20は、コラム21、サドル22、および工具ヘッド23を有する。
【0017】
コラム21は、図示を省略した第1駆動機構により、ベッド10に対してx方向に移動可能となっている。サドル22は、コラム21の歯車駆動部40と対向する面に、設けられている。サドル22は、図示を省略した第2駆動機構により、コラム21に対してz方向に移動可能となっている。
【0018】
工具ヘッド23は、サドル22に取り付けられている。工具ヘッド23は、図示を省略した第3駆動機構により、サドル22に対してy方向に移動可能となっている。また、工具ヘッド23は、図示を省略した第4駆動機構により、y方向に延びる回転軸を中心として、回転可能となっている。また、工具ヘッド23は、図示を省略した第5駆動機構により、回転軸を、yz平面内において、y方向から傾斜させることができる。
【0019】
工具30は、歯車9を加工するための部品である。本実施形態の工具30は、歯車9の面取り加工を行うホブカッタである。ホブカッタは、面取り加工による2次的なバリが発生しないことや、面取りの品質に優れること、生産性が高いことから好まれる。工具30は、高速度鋼や超硬合金などの合金で形成される。工具30は、工具ヘッド23に対して、着脱可能となっている。工具ヘッド23に工具30が装着された状態において、工具ヘッド23の回転軸と、工具30の中心軸である工具軸Bとは、同軸に配置される。
【0020】
工具ヘッド23に工具30を装着した状態で、上述した第1駆動機構、第2駆動機構、および第3駆動機構を動作させると、工具ヘッド23とともに工具30が、x方向、y方向、およびz方向に移動する。また、工具ヘッド23に工具30を装着した状態で、第5駆動機構を動作させると、工具30の工具軸Bが、y方向に対して傾斜する。そして、上述した第4駆動機構を動作させると、工具30が、工具軸Bを中心として回転する。工具30の工具軸B方向の位置と回転位相は管理されている。これにより、後述する工具30と歯車90との位相合わせが可能となる。
【0021】
本実施形態では、工具ヘッド23に2つの工具30が装着されている。2つの工具30の一方は、歯車9の第1端面91の外縁部を面取り加工するために使用される。2つの工具30の他方は、歯車9の第2端面92の外縁部を面取り加工するために使用される。2つの工具30の形状は同一である。工具30の詳細な形状については、後述する。
【0022】
歯車駆動部40は、歯車9を、歯車軸Aを中心として回転させる機構である。歯車駆動部40は、工具駆動部20から、x方向に間隔をあけて配置されている。
図1に示すように、歯車駆動部40は、テーブル41、カウンタコラム42、およびテールストック43を有する。なお、
図2では、カウンタコラム42およびテールストック43の図示が省略されている。
【0023】
テーブル41は、歯車9を下側から支持するユニットである。テーブル41は、コラム21とカウンタコラム42との間に配置されている。テーブル41の上端部には、歯車9を下側から支持する下側クランパ411が設けられている。
【0024】
カウンタコラム42は、ベッド10の上面に固定されている。カウンタコラム42は、ベッド10の上面から、上方へ向けて延びる。テールストック43は、歯車9を上側から支持するユニットである。テールストック43は、カウンタコラム42の工具駆動部20と対向する面に、上下移動可能に設けられている。テールストック43の下端部には、歯車9を上側から支持する上側クランパ431が設けられている。
【0025】
歯車9は、テーブル41の下側クランパ411と、テールストック43の上側クランパ431との間に挟まれる。これにより、歯車9は、歯車軸Aが鉛直方向に配置された姿勢で、保持される。また、下側クランパ411および上側クランパ431は、図示を省略した第1回転機構により、z方向に延びる回転軸を中心として、回転可能となっている。したがって、下側クランパ411および上側クランパ431で歯車9を保持した状態で、第1回転機構を動作させることにより、歯車9を、z方向に延びる歯車軸Aを中心として、回転させることができる。
【0026】
このように、歯車駆動部40は、歯車9を、工具軸Bと非平行に配置された歯車軸Aを中心として回転させる。
【0027】
チェンジャ50は、歯車9を搬送する機構である。
図1および
図2に示すように、チェンジャ50は、ターンテーブル51を有する。ターンテーブル51は、複数のアーム52を有する。歯車9は、各アーム52の先端に、グリッパを介して保持される。ターンテーブル51は、各アーム52に歯車9を保持しつつ、図示を省略した第2回転機構により、z方向に延びる回転軸を中心として回転する。これにより、歯車9を、テーブル41とテールストック43の間の加工位置P1と、加工位置P1から側方へ離れた待機位置P2との間で、搬送することができる。
【0028】
なお、
図2の例では、ターンテーブル51が、3本のアーム52を有している。しかしながら、ターンテーブル51が有するアーム52の数は、1本、2本、または4本以上であってもよい。
【0029】
位相センサ60は、歯車9の回転の位相(回転角度)を検出するためのセンサである。位相センサ60には、例えば、レーザ変位計などの光学式センサが使用される。第2回転機構により歯車9が回転すると、歯車9の複数の外歯90が、位相センサ60の検出位置を順次に通過する。位相センサ60は、検出位置を通過する外歯90を検出する。これにより、位相センサ60は、歯車9の回転の位相に応じた検出信号を出力する。
【0030】
制御部70は、加工装置1の各部を動作制御するための手段である。制御部70は、例えば、CPU等のプロセッサ71、RAM等のメモリ72、およびハードディスクドライブ等の記憶部73を有するコンピュータにより構成される。記憶部73には、加工装置1の各部を動作制御するためのコンピュータプログラムPが記憶されている。
【0031】
また、制御部70は、上述した第1駆動機構、第2駆動機構、第3駆動機構、第4駆動機構、第5駆動機構、第1回転機構、第2回転機構、および位相センサ60と、通信可能に接続されている。制御部70は、上記のコンピュータプログラムPに従って、これらの各部を動作制御する。これにより、加工装置1における歯車9の加工処理が進行する。
【0032】
なお、加工装置1の詳細な動作手順については、後述する。
【0033】
<2.工具の形状について>
続いて、工具30のより詳細な形状について、説明する。
図4および
図5は、工具30の斜視図である。
図6は、工具30の側面図である。
図7は、工具30の平面図である。
【0034】
図4、
図5、
図6、および
図7に示すように、工具30は、工具本体部31と、条32とを有する。工具本体部31は、工具軸Bに沿って延びる。本実施形態の工具本体部31は、工具軸Bを中心とする円筒状である。ただし、工具本体部31は、多角筒状などの他の形状であってもよい。
【0035】
条32は、歯車9を加工するための刃である。本実施形態の工具30は、複数の条32を有する。より具体的には、本実施形態の工具30は、3条の条32を有する。ただし、工具30が有する条32の数は、1条、2条、または4条以上であってもよい。なお、条32は、後述する第1歯面901又は第2歯面902以外における歯との干渉を避けるため、軸方向に2ピッチ以下、特に1ピッチであることが好ましい。また、条32が配置される、工具軸Bの周方向における工具軸Bを中心とする中心角は、360度の約数であることが好ましい。これにより、工具30が工具軸B周りに1回転した場合に、歯車9を過不足なく加工できる。
【0036】
各条32は、工具本体部31の外側面において、工具軸Bから離れる方向へ突出する。また、各条32は、工具軸Bを中心とする螺旋状に配置される。条32は、第1領域81および第2領域82を含む。第1領域81および第2領域82は、条32の螺旋に沿って。異なる位置に配置される。
【0037】
本実施形態では、条32は、第1領域81、第2領域82、第3領域83、および第4領域84を有する。第1領域81、第2領域82、第3領域83、および第4領域84は、条32の螺旋に沿って、この順に配置される。また、第1領域81と第2領域82の間、第2領域82と第3領域83の間、および第3領域83と第4領域84の間には、溝が形成されている。したがって、本実施形態では、第1領域81、第2領域82、第3領域83、および第4領域84は、条32の螺旋に沿って、間隔をあけて配置されている。
【0038】
図8は、工具軸Bを含む平面で条32を切断したときの断面形状(以下「歯形」と称する)を示した図である。
図8に示すように、条32の歯形は、略三角形状である。具体的には、条32の工具軸Bと平行な方向(以下「軸方向」と称する)の寸法は、工具軸Bから離れるにつれて、徐々に小さくなる。条32は、工具軸B方向の一方側の面である右刃面321と、工具軸B方向の他方側の面である左刃面322とを有する。右刃面321は、
図8における条32の右側の面である。左刃面322は、
図8における条32の左側の面である。
【0039】
工具30では、第4領域84から第1領域81にかけて、条32の歯形が、徐々に凹んでいる。すなわち、第1領域81、第2領域82、第3領域83、および第4領域84のうち、歯形が最も凸となる最大領域は、第4領域84である。最大領域は、第2領域82を基準として、条32の螺旋に沿って第1領域81とは反対側の位置に配置される。ここで、歯形が最も凸となるとは、歯形の断面積が最大になるという意味である。
【0040】
図8では、第1領域81、第2領域82、および第3領域83の歯形に、第4領域84の歯形を重ねて、破線で示している。
図8に示すように、第1領域81、第2領域82、および第3領域83には、最大領域である第4領域84の歯形から欠けた逃がし部85がある。したがって、第3領域83の歯形は、最大領域の歯形より凹んでいる。第2領域82の歯形も、最大領域の歯形より凹んでいる。第1領域81の歯形も、最大領域の歯形より凹んでいる。これにより、条32の複数の領域において、工具30と歯車9との接触を抑制しつつ、歯車9を適切に加工できる。
【0041】
逃がし部85の大きさは、第3領域83から第1領域81にかけて、徐々に大きくなる。したがって、第3領域83の歯形は、第4領域84の歯形よりも凹んでいる。第2領域82の歯形は、第3領域83の歯形よりも凹んでいる。第1領域81の歯形は、第2領域82の歯形よりも凹んでいる。これにより、後述する原理によって、工具30と歯車9との接触を抑制しつつ、歯車を適切に加工できる。
【0042】
特に、本実施形態では、条32の左刃面322に、逃がし部85がある。したがって、本実施形態では、左刃面322において、第3領域83の歯形が、第4領域84の歯形よりも凹んでいる。また、左刃面322において、第2領域82の歯形が、第3領域83の歯形よりも凹んでいる。また、左刃面322において、第1領域81の歯形が、第2領域82の歯形よりも凹んでいる。
【0043】
ここで、
図9から
図12を用いて、工具30の形状についてより詳細に説明する。
図9は、工具30の側面図である。
図10は、工具30の底面図である。
図11は、条32の歯形を示した図である。
図12は、条32の歯形を重ねた図である。
【0044】
図9に記載されている通り、工具30は、工具本体部31と、条32と、を有する。工具本体部31は、工具軸Bに沿って延びる。本実施形態においては、工具本体部31は、略円筒状である。本説明においては、条32は、工具軸Bの周りを螺旋方向に一周するように3条配列される。ただし、工具軸B周りの条の数は3以外であってもよい。
【0045】
条32は、工具本体部31の外側面において、工具軸Bから離れる方向へ突出する。つまり、条32は、工具本体部31の外側面において、工具軸Bを基準とする径方向の外方へ向かって突出する。条32は、工具軸Bを中心とする螺旋状に配置される。
【0046】
本実施形態においては、工具30は、ホブである。よって、条32は、螺旋状に配置される独立した刃を複数有する。本実施形態においては、1つの条32が有する刃の数は4である。つまり、条32は、第1領域81と、第2領域82と、第3領域83と、第4領域84と、を有する。第1領域81は、螺旋方向の一方側に配置される。第2領域82は、第1領域81よりも螺旋方向の他方側に配置される。第3領域83は、第2領域82よりも螺旋方向の他方側に配置される。第4領域84は、第3領域83よりも螺旋方向の他方側に配置される。なお、条が有する領域の数は4以外であってもよい。本実施形態においては、第4領域84が、条32の歯形が最大となる最大領域であり、条32の歯形の基準となる基準領域である。
【0047】
第1領域81は、工具軸B方向の一方側の面である一方側刃面321と、工具軸B方向の他方側の面である他方側刃面322と、を有する。つまり、一方側刃面321は、工具軸Bの一方側から他方側を見た場合に見える刃面であり、他方側刃面322は、工具軸Bの他方側から一方側を見た場合に見える刃面である。同様に、第2領域82は、工具軸B方向の一方側の面である一方側刃面321と、工具軸B方向の他方側の面である他方側刃面322と、を有する。第3領域83は、工具軸B方向の一方側の面である一方側刃面321と、工具軸B方向の他方側の面である他方側刃面322と、を有する。第4領域84は、工具軸B方向の一方側の面である一方側刃面321と、工具軸B方向の他方側の面である他方側刃面322と、を有する。
【0048】
各領域の一方側刃面321は、工具軸Bを基準とする螺旋方向に沿って配置される。よって、第1領域81の一方側刃面321における工具軸B側端3213と、第2領域82の一方側刃面321における工具軸B側端3213と、第3領域83の一方側刃面321における工具軸B側端3213と、第4領域84の一方側刃面321における工具軸B側端3213と、は、工具軸Bを中心とする螺旋状に配置される。ここで、一方側刃面321における工具軸B側端3213は、一方側刃面321における、工具軸Bを基準とする径方向の内端である。別の表現をすると、一方側刃面321における工具軸B側端3213は、一方側刃面321における根元である。一方側刃面321における工具軸B側端3213は、条32と工具本体部31の外側面との境界であるとも言える。つまり、条32の一方側刃面321における工具軸B側端3213は、工具軸Bを中心とする螺旋状に配置される。すなわち、条32の一方側刃面321における工具軸B側端3213は、仮想線V1に沿って配列される。仮想線V1は、工具軸Bを基準とする螺旋方向である。換言すると、工具本体部31の外側面を、工具軸Bを基準とする周方向に展開した場合に、条32の一方側刃面321における工具軸B側端3213は、直線状に並ぶ。これにより、ワークの形状や加工方法に合わせて、螺旋方向の複数の領域において、一方側刃面321の工具軸端3213でワークを加工できる。よって、ワークを加工する際に、一方側刃面321の特定の領域に負荷が集中することを抑制でき、創成運動によりインボリュートに沿った形状の面取り加工ができる。なお、ワークを加工する際の様子については後述する。
【0049】
同様に、第1領域81の他方側刃面322における工具軸B側端3223と、第2領域82の他方側刃面322における工具軸B側端3223と、第3領域83の他方側刃面322における工具軸B側端3223と、第4領域84の他方側刃面321における工具軸B側端3223と、は、工具軸Bを中心とする螺旋状に配置される。ここで、他方側刃面322における工具軸B側端3223は、他方側刃面322における、工具軸Bを基準とする径方向の内端である。別の表現をすると、他方側刃面322における工具軸B側端3223は、他方側刃面322における根元である。他方側刃面322における工具軸B側端3223は、条32と工具本体部31の外側面との境界であるとも言える。つまり、条32の他方側刃面322における工具軸B側端3223は、工具軸Bを中心とする螺旋状に配置される。すなわち、条32の他方側刃面322における工具軸B側端3223は、仮想線V2に沿って配列される。仮想線V2は、工具軸Bを基準とする螺旋方向である。換言すると、工具本体部31の外側面を、工具軸Bを基準とする周方向に展開した場合に、条32の他方側刃面322における工具軸B側端3223は、直線状に並ぶ。これにより、ワークの形状や加工方法に合わせて、螺旋方向の複数の領域において、他方側刃面322の工具軸B側端3223でワークを加工できる。よって、ワークを加工する際に、他方側刃面322の特定の領域における工具軸B側端に負荷が集中することを抑制でき、創成運動によりインボリュートに沿った形状の面取り加工ができる。
【0050】
図10は、工具30を、工具軸B方向の他方側から工具軸B方向の一方側に向かって見た様子を示す。
図10に記載されている通り、第1領域81の歯丈と、第2領域82の歯丈と、第3領域83の歯丈と、第4領域84の歯丈と、は全て等しい。つまり、第1領域81の螺旋方向の一方側面における、工具軸Bを基準とする径方向の内端と径方向外端との距離L1と、第2領域82の螺旋方向の一方側面における、工具軸Bを基準とする径方向の内端と径方向外端との距離L2と、第3領域83の螺旋方向の一方側面における、工具軸Bを基準とする径方向の内端と径方向外端との距離L3と、第4領域84の螺旋方向の一方側面における、工具軸Bを基準とする径方向の内端と径方向外端との距離L4と、は全て等しい。換言すると、工具軸Bを基準とする径方向において、第1領域81と第2領域82と第3領域83と第4領域84の径方向内端から径方向外端までの長さが全て等しい。これにより、一方側刃面321と他方側刃面322の両方の刃面において、歯車の歯底迄加工することができる。ただし、他の実施形態においては、条32の少なくとも1つの領域における径方向内端から径方向外端までの長さが他の領域における径方向内端から径方向外端までの長さと異なっていてもよい。これにより、ワークの加工に必要な範囲である領域と別の領域の歯丈を一致させ、その他の領域で歯丈を異ならせることにより、ワークと工具30との不要な接触を回避しつつ、必要な加工を実現できる。
【0051】
第1領域81と第2領域82と第3領域83と第4領域84のすくい角は、全て等しい。つまり、
図10において、第1領域81の螺旋方向の一方側面と工具本体部31の外側面とが成す角度θ1と、第2領域82の螺旋方向の一方側面と工具本体部31の外側面とが成す角度θ2と、第3領域83の螺旋方向の一方側面と工具本体部31の外側面とが成す角度θ3と、第4領域84の螺旋方向の一方側面と工具本体部31の外側面とが成す角度θ4と、は全て等しい。これにより、工具30を製造しやすくなる。よって、工具30の製造効率が向上する。ただし、ワークの形状又はワークの加工方法によっては、少なくとも一つ以上の領域におけるすくい角が、他の領域におけるすくい角と異なっていてもよい。これにより、ワークの形状又はワークの加工方法に合わせて工具の形状を最適化できる。本実施形態においては、角度θ1と、角度θ2と、角度θ3と、角度θ4と、は全て略90度である。本実施形態においては、工具本体部31の外側面は工具軸Bを基準とする円筒状である。よって、第1領域81の螺旋方向の一方側面と工具軸Bとは、同一面に配置される。同様に、第2領域82の螺旋方向の一方側面と、第2領域82の螺旋方向の一方側面と工具軸B、第3領域83の螺旋方向の一方側面と工具軸B、第4領域84の螺旋方向の一方側面と工具軸Bは、それぞれ、工具軸Bに沿う仮想面上に配置される。
【0052】
本実施形態においては、第1領域81と第2領域82と第3領域83と第4領域84の逃げ角は、全て等しい。つまり、第1領域81の螺旋方向の他方側面と工具本体部31の外側面とが成す角度と、第2領域82の螺旋方向の他方側面と工具本体部31の外側面とが成す角度と、第3領域83の螺旋方向の他方側面と工具本体部31の外側面とが成す角度と、第4領域84の螺旋方向の他方側面と工具本体部31の外側面とが成す角度と、は全て等しい。これにより、条32の全ての領域において、ワークとの不要な接触を抑制しつつ、全ての領域の強度をできるだけ均一にできる。ただし、ワークの形状又はワークの加工方法によっては、少なくとも一つ以上の領域における逃げ角が、他の領域における逃げ角と異なっていてもよい。これにより、ワークの形状又はワークの加工方法、条における任意の領域に求められる強度に合わせて工具の形状を最適化できる。
【0053】
工具軸Bを基準とする周方向において、第1領域81と第2領域82とのピッチP1と、第2領域82と第3領域83とのピッチP2と、第3領域83と第4領域84とのピッチP3と、は全て等しい。つまり、工具軸Bを基準とする周方向において、第1領域81の螺旋方向一方側面における径方向内端と第2領域82の螺旋方向一方側面における径方向内端との長さと、第2領域82の螺旋方向一方側面における径方向内端と第3領域83の螺旋方向一方側面における径方向内端との長さと、第3領域83の螺旋方向一方側面における径方向内端と第4領域84の螺旋方向一方側面における径方向内端との長さと、は全て等しい。これにより、工具30を製造しやすくなる。よって、工具30の製造効率が向上する。
【0054】
図11は、
図10において、X1-X1断面における第1領域81の歯形と、X2-X2断面における第2領域82の歯形と、X3-X3断面における第3領域83の歯形と、X4-X4断面における第4領域の歯形と、を並べた図である。X1-X1断面は、第1領域81の螺旋方向一方側面と一致しており、X2-X2断面は、第2領域82の螺旋方向一方側面と一致しており、X3-X3断面は、第3領域83の螺旋方向一方側面と一致しており、X4-X4断面は、第4領域84の螺旋方向一方側面と一致している。すなわち、X1-X2断面と、X2-X2断面と、X3-X3断面と、X4-X4断面は、それぞれ、第1領域81の螺旋方向一方側面に沿って工具軸Bと交わる断面、第2領域82の螺旋方向一方側面に沿って工具軸Bと交わる断面、第3領域83の螺旋方向一方側面に沿って工具軸Bと交わる断面、第4領域84の螺旋方向一方側面に沿って工具軸Bと交わる断面、である。なお、本実施形態では各領域の螺旋方向一方側面が工具軸Bを中心とする放射状に広がっているが、各領域の螺旋方向一方側面が工具軸Bを中心とする放射方向と交わる方向に延びている場合、各領域における、工具軸Bを中心とする放射方向の断面によって各領域の歯形を定義すればよい。
【0055】
図12は、X1-X1断面における第1領域81の歯形と、X2-X2断面における第2領域82の歯形と、X3-X3断面における第3領域83の歯形と、X4-X4断面における第4領域84の歯形と、を重ねたものである。
図9から
図12を参照して、第1領域81と、第2領域82と、第3領域83と、はそれぞれ逃がし部85を有する。つまり、第1領域81における他方側の逃がし部851は、第1領域81の歯形と第4領域84の歯形とを重ねた場合における他方側刃面322における形状の差異である。本実施形態においては、第4領域84は、基準領域であり、最大領域である。よって、
図11において、第1領域81の歯形と、破線で記載される第4領域84の歯形と、によって囲まれる領域が他方側の逃がし部851である。同様にして、第2領域82における他方側の逃がし部852は、第2領域82の歯形と第4領域84の歯形とを重ねた場合における他方側刃面322における形状の差異であり、第3領域83における他方側の逃がし部853は、第3領域83の歯形と第4領域84の歯形とを重ねた場合における他方側刃面322における形状の差異である。つまり、
図11において、第2領域82の歯形と、破線で記載される第4領域84の歯形と、によって囲まれる領域が第2領域82における他方側の逃がし部852であり、第3領域83の歯形と、破線で記載される第4領域84の歯形と、によって囲まれる領域が第3領域83における他方側の逃がし部853である。
【0056】
図12に記載している通り、第1領域81の歯形における一方側刃面321の形状は、第4領域84の歯形における一方側刃面321の形状と一致する。本実施形態においては、第1領域81の一方側刃面321と、第2領域82の一方側刃面321と、第3領域83の一方側刃面321と、第4領域84の一方側刃面321と、が全て一致する。つまり、第1領域81の工具軸Bを基準とする径方向外端811から工具軸B方向の一方側の形状と、第2領域82の工具軸Bを基準とする径方向外端821から工具軸B方向の一方側の形状と、第3領域83の工具軸Bを基準とする径方向外端831から工具軸B方向の一方側の形状と、第4領域84の工具軸Bを基準とする径方向外端841から工具軸B方向の一方側の形状と、は全て一致する。すなわち、条32の各領域の一方側刃面321においては、逃がし部が無い。これにより、創成加工に必要な切れ刃のアウトラインを維持しつつ、条32の他方側刃面322に逃がし部85を設けることで、工具30と、歯車における非加工側の歯面と、の干渉を抑制できる。この特徴は、工具30によって歯車の歯面を片歯面ずつ切削面取り加工する際に特に有用である。
【0057】
第1領域81における他方側刃面322は、第2領域82における他方側刃面322よりも凹んでおり、第2領域82における他方側刃面322は、第3領域83における他方側刃面322よりも凹んでおり、第3領域83における他方側刃面322は、第4領域84における他方側刃面322よりも凹んでいる。つまり、他方側刃面322において、第2領域82の歯形は第1領域81の歯形よりも大きく、第3領域83の歯形は第2領域82の歯形よりも大きく、第4領域84の歯形は第3領域83の歯形よりも大きい。逃がし部85は、第3領域83から第1領域81に向かうにつれて広くなる。これにより、第1領域81においては、第1領域81における工具軸B側の部位によってワークにおける工具30側の部位を加工しつつ、第1領域81とワークとの接触を回避するための他方側の逃がし部851を広く確保することができる。第2領域82及び第3領域83においても、各領域における工具軸B側の部位によってワークの所定領域を加工しつつ、各領域とワークとの接触を回避するために必要とされる他方側の逃がし部852、853を確保できる。第4領域84の歯形は、条32において最大となるため、第4領域84の工具軸Bを基準とする径方向外端近傍の部位を用いてワークを加工できる。よって、第1領域81から第4領域84において、各領域の歯形を段階的に大きくすることで、条32とワークとの無用な接触を避けつつ、第1領域81から第4領域84に向かうにつれて、条32による加工箇所を、工具軸Bを基準として径方向外方に変化させることが可能となる。
【0058】
条32の他方側刃面322においては、各領域における逃がし部85の形状が異なる分だけ、各領域の形状が異なる。つまり、
図12を参照して、工具軸Bを基準として、第1領域81における他方側の逃がし部851の径方向外端8511は、第2領域82における他方側の逃がし部852の径方向外端8521よりも工具軸B方向の一方側に配置される。同様に、工具軸Bを基準として、第2領域82における他方側の逃がし部852の径方向外端8521は、第3領域83における他方側の逃がし部853の径方向外端8531よりも工具軸B方向の一方側に配置される。ただし、ワークの形状や加工方法に合わせて、例えば、第2領域82における他方側の逃がし部852の径方向外端8521が、第3領域83における他方側の逃がし部853の径方向外端8531と、工具軸B方向の同じ位置に配置されてもよい。他の領域においても同様にして、ワークの形状や加工方法に合わせて、工具軸B方向の位置を変更してもよい。
【0059】
一方、工具軸Bを基準とする径方向についても、第1領域81における他方側の逃がし部851の径方向外端8511は、第2領域82における他方側の逃がし部852の径方向外端8521よりも径方向外方に配置される。同様に、第2領域82における他方側の逃がし部852の径方向外端8521は、第3領域83における他方側の逃がし部853の径方向外端8531よりも径方向外方に配置される。これにより、第1領域81から第4領域84において、各領域の歯形を段階的に大きくすることで、条32とワークとの無用な接触を避けつつ、第1領域81から第4領域84に向かうにつれて、条32による加工箇所を、工具軸を基準として径方向外方に変化させることが可能となる。ただし、ワークの形状や加工方法に合わせて、例えば、第2領域82における他方側の逃がし部852の径方向外端8521が、第3領域83における他方側の逃がし部853の径方向外端8531と、径方向の同じ位置に配置されてもよい。他の領域においても同様にして、ワークの形状や加工方法に合わせて、径方向位置を変更してもよい。
【0060】
第1領域81における他方側の逃がし部851の径方向内端8512は、第2領域82における他方側の逃がし部852の径方向内端8522よりも径方向内方かつ工具軸B方向の他方側に配置され、第2領域82における他方側の逃がし部852の径方向内端8522は、第3領域83における他方側の逃がし部853の径方向内端8532よりも径方向内方かつ工具軸B方向の他方側に配置される。これにより、これにより、第1領域81から第4領域84において、各領域の歯形を段階的に大きくすることで、条32とワークとの無用な接触を避けつつ、第1領域81から第4領域84に向かうにつれて、条32による加工箇所を、工具軸を基準として径方向外方に変化させることが可能となる。また、前記工具軸側に配置される第1領域81の他方側の逃がし部851における、工具軸Bを基準とする径方向内端8512と、第2領域82の他方側の逃がし部852における、工具軸Bを基準とする径方向内端8522と、第3領域83の他方側の逃がし部853における、工具軸Bを基準とする径方向内端8532は、中点M1よりも工具軸B方向の他方側に配置される。ここで、中点M1は、第1領域81の一方側刃面321の径方向内端3213と、第1領域81の他方側刃面322の径方向内端3223の工具軸B方向の中点である。これにより、条32の各領域における逃がし部85を適切な位置に配置できる。よって、後述する原理によって、条32とワークとの不要な接触を回避しつつ、ワークの適切な箇所を加工できる。なお、他方側の逃がし部851の径方向外端8511と、他方側の逃がし部852の径方向外端8521と、他方側の逃がし部853の径方向外端8531と、の少なくとも一つが中点M1よりも工具軸B方向の他方側に配置されていてもよく、他方側の逃がし部851の径方向内端8512と、他方側の逃がし部852の径方向内端8522と、他方側の逃がし部853の径方向内端8532と、の少なくとも一つが中点M1よりも工具軸B方向の一方側に配置されていてもよい。これにより、ワークの形状や加工方法に合わせて、条32の形状を最適化できる。
【0061】
第1領域81の一方側刃面321の径方向内端3213と第1領域81の一方側刃面322の径方向内端3223とを結ぶ線と、第1領域81の径方向外端811と、の径方向の中点をM2とすると、第1領域81の他方側の逃がし部851の径方向内端8512と、第2領域82の他方側の逃がし部852の径方向内端8522と、第3領域83の他方側の逃がし部853の径方向内端8532は、中点M2よりも径方向外方に配置される。つまり、逃がし部85は、中点M2よりも径方向外方に配置される。換言すると、第1領域81の他方側の逃がし部851の径方向内端8512よりも径方向内方、すなわち、中点M2よりも径方向内方においては、第1領域81の他方側刃面322の形状と、第2領域82の他方側刃面322の形状と、第3領域83の他方側刃面322の形状と、は一致する。これにより、ワークの形状や加工したい領域に合わせて、条32の任意の領域において、他方側刃面322を用いてワークを加工できる。なお、第1領域81の他方側の逃がし部851の径方向内端8512と、第2領域82の他方側の逃がし部852の径方向内端8522と、第3領域83の他方側の逃がし部853の径方向内端8532のうち、少なくとも1つは、中点M2よりも径方向内方に配置されていてもよい。
【0062】
第1領域81における一方側刃面321と、第2領域82における一方側刃面321と、第3領域83における一方側刃面321と、第4領域84における一方側刃面321は、工具軸B方向の他方側かつ工具軸Bに向かう方向に凹む。条32の一方側刃面321は、工具軸Bを基準とする径方向の内方に配置される、一方側刃面321の内側領域3211と、工具軸Bを基準とする径方向の外方に配置される、外側領域3212と、を有する。つまり、内側領域3211は、工具軸B側に配置される領域であり、外側領域3212は、一方側刃面321の内側領域3211よりも工具軸Bから離れる方向に配置される領域である。本実施形態においては、一方側刃面321と工具本体部31の外側面との角度は、工具軸Bから離れるにつれて単調増加する。よって、第4領域84の歯形における一方側刃面321において、内側領域3211と工具本体部31の外側面との角度Φ11は、外側領域3212と工具本体部31の外側面との角度Φ12よりも小さい。これにより、一方側刃面321の内側領域3211とワークとの不要な接触を抑制しつつ、適切にワークを加工できる。特に、当該形状は、ワークの加工の一例として、歯車の切削面取りする際に有用である。つまり、通常の歯切り加工では、ワークの歯溝と条の向きを一致させるため、一方側刃面が直線状に延びる歯形の条を用いて、インボリュート状のワーク歯形を得ることができる。一方で、切削面取り加工では、歯溝の向きと条の向きが一致しない状態で面取り加工をする必要があるため、一方側刃面の全体が直線状に延びる歯形の条ではインボリュート状の面取り形状を得られず、この傾向は条の長さが1巻等短い場合に顕著になる。その点、本実施形態においては、一方側刃面321が上記の構成を有するため、インボリュート状の面取り形状を得ることができる。なお、ワークの形状や加工方法に合わせて、第1領域81における一方側刃面321と、第2領域82における一方側刃面321と、第3領域83における一方側刃面321と、第4領域84における一方側刃面321と、の少なくとも1つが、工具軸B方向の他方側かつ工具軸Bに向かう方向に凹んでいればよい。また、角度が単調増加するという表現は、一方側刃面321の歯形の少なくとも一部の部位が直線状に述べており、当該部位の角度が一定となる場合を含む。つまり、工具軸Bから離れるにつれて、一方側刃面321と工具本体部31の外側面との角度が減少しなければよい。
【0063】
本実施形態においては、第1領域81の歯形における一方側刃面321の形状と、第2領域82の歯形における一方側刃面321の形状と、第3領域83の歯形における一方側刃面321の形状と、第4領域84の歯形における一方側刃面321の形状は、一致する。これにより、各領域の一方側刃面321の任意の部位によってワークを加工できる。つまり、他方側刃面322に逃がし部85を設けることによって、ワークの形状や加工方法に合わせて、最適な領域によって他方側刃面322によってワークを加工できる一方で、一方側刃面321の全ての領域によってワークの対象領域を加工可能である。
【0064】
第1領域81における他方側刃面322と、第2領域82における他方側刃面322と、第3領域83における他方側刃面322と、第4領域84における他方側刃面322は、工具軸B方向の一方側かつ工具軸Bに向かう方向に凹む。第1領域81の歯形における当該凹みの形状と、第2領域82の歯形における当該凹みの形状と、第3領域83の歯形における当該凹みの形状と、第4領域84の歯形における当該凹みの形状は、一致する。条32の他方側刃面322は、工具軸Bを基準とする径方向の内方に配置される他方側刃面322の内側領域3221と、工具軸Bを基準とする径方向の外方に配置される外側領域3222と、を有する。つまり、内側領域3221は、工具軸B側に配置される領域であり、外側領域3222は、内側領域3221よりも工具軸Bから離れる方向に配置される領域である。本実施形態においては、他方側刃面322と工具本体部31の外側面との角度は、工具軸Bから離れるにつれて単調増加する。よって、第4領域84の歯形における他方側刃面322において、内側領域3221と工具本体部31の外側面との角度Φ21が、外側領域3222と工具本体部31の外側面との角度Φ22よりも小さい。これにより、後述する原理によって、他方側刃面322の内側領域3221とワークとの不要な接触を抑制しつつ、適切にワークを加工できる。特に、当該形状は、ワークの加工の一例として、歯車の切削面取りする際に有用である。つまり、通常の歯切り加工では、ワークの歯溝と条の向きを一致させるため、他方側刃面が直線状に延びる歯形の条を用いて、インボリュート状のワーク歯形を得ることができる。一方で、切削面取り加工では、歯溝の向きと条の向きが一致しない状態で面取り加工をする必要があるため、他方側刃面の全体が直線状に延びる歯形の条ではインボリュート状の面取り形状を得られず、この傾向は条の長さが1巻等短い場合に顕著になる。その点、本実施形態においては、他方側刃面322が上記の構成を有するため、インボリュート状の面取り形状を得ることができる。なお、ワークの形状や加工方法に合わせて、第1領域81における他方側刃面322と、第2領域82における他方側刃面322と、第3領域83における他方側刃面322と、第4領域84における他方側刃面322と、の少なくとも1つが、工具軸B方向の他方側かつ工具軸Bに向かう方向に凹んでいればよい。また、角度が単調増加するという表現は、他方側刃面322の歯形の少なくとも一部の部位が直線状に述べており、当該部位の角度が一定となる場合を含む。つまり、工具軸Bから離れるにつれて、他方側刃面322と工具本体部31の外側面との角度が減少しなければよい。なお、本実施形態においては、一方側刃面321と他方側刃面322の両方が凹んでいる形状を有しているが、一方側刃面321と他方側刃面322の一方のみが凹んでいる形状を有していても良い。
【0065】
なお、本実施形態においては、各領域の歯形において、一方側刃面321における内側領域3211と外側領域3212の形状は、他方側刃面322のおける内側領域3221と外側領域3222の形状と左右非対称である。つまり、Φ11とΦ21の角度は異なり、Φ12とΦ22の角度も異なる。面取り加工においては、上記のように歯溝の向きと条32の向きが一致しない状態で加工する必要があるため、ワークの左右歯面で均一な面取り形状を得るためには、左右非対称の歯形にする必要がある。本実施形態においては、上述の構成によって、ワークとなる歯車の左右の歯面で均一な面取り形状が実現できる。
【0066】
工具軸Bを基準とする径方向において、第1領域81における他方側の逃がし部851の径方向内端8512は、第2領域82における他方側の逃がし部852の径方向内端8522よりも径方向内方に配置される。同様に、第2領域82における他方側の逃がし部852の径方向内端8522は、第3領域83における他方側の逃がし部853の径方向内端8532よりも径方向内方に配置される。つまり、第1領域81の一方側刃面321の径方向内端3213と第1領域81の一方側刃面322の径方向内端3223とを結ぶ線を基準として、第1領域81における他方側の逃がし部851の径方向内端8512までの距離L5は、第2領域82における他方側の逃がし部852の径方向内端8522までの距離L6よりも短く、第2領域82における他方側の逃がし部852の径方向内端8522までの距離L6は、第3領域83における他方側の逃がし部853の径方向内端8532までの距離L7よりも短い。これにより、第1領域81から第4領域84において、各領域の歯形を段階的に大きくすることで、条32とワークとの無用な接触を避けつつ、第1領域81から第4領域84に向かうにつれて、条32による加工箇所を、工具軸を基準として径方向外方に変化させることが可能となる。
【0067】
本実施形態においては、第1領域81の歯形と第2領域82の歯形と第3領域83と第4領域84の歯形を重ねた場合に、他方側刃面322において、第2領域82における他方側の逃がし部852の全体は、第1領域81における他方側の逃がし部851と重なり、第3領域83における他方側の逃がし部853の全体は、第2領域82における他方側の逃がし部852と重なる。つまり、他方側の逃がし部852が他方側の逃がし部851からはみ出ることはなく、他方側の逃がし部853が他方側の逃がし部852からはみ出ることはない。換言すると、第1領域81の歯形と第2領域82の歯形を重ねた場合に、第1領域81の歯形が第2領域の歯形からはみ出ることはない。同様に、第2領域82の歯形と第3領域83の歯形を重ねた場合に、第2領域82の歯形が第3領域の歯形からはみ出ることはない。また、第3領域83の歯形と第4領域84の歯形を重ねた場合に、第3領域83の歯形が第4領域の歯形からはみ出ることはない。よって、第1領域81の歯形と第2領域82の歯形と第3領域83の歯形と第4領域84の歯形とを重ねた場合に、第1領域81の他方側の逃がし部851の全体と、第2領域82の他方側の逃がし部852の全体と、第3領域83の他方側の逃がし部853の全体は、第4領域84の歯形に含まれる。つまり、第1領域81の他方側の逃がし部851と、第2領域82の他方側の逃がし部852と、第3領域83の他方側の逃がし部853は、第4領域84の歯形からはみ出ることがない。これにより、第1領域81から第4領域84にかけて、徐々に歯形を大きくすることができるため、工具30でワークを加工する際に、第1領域81歯形を小さくすることでワークとの不要な接触を抑制しつつ第1領域81の工具軸B側の部位でワークを加工できる。同様にして、第2領域82、第3領域83、第4領域84となるにつれて、徐々に歯形を大きくしていき、ワークとの不要な接触を抑制しつつ、工具軸Bから離れる方向に向かって加工に寄与する部位を変化されることができる。
【0068】
工具軸Bを基準として、条32の径方向外端部は、径方向外方かつ工具軸B方向の一方側に凸となる突条である。より具体的に述べると、工具軸Bを基準として、第1領域81の径方向外端部は、径方向外方に凸であり、工具軸B方向の両方に向かうにつれて径方向内方に延びる突条である。同様に、工具軸Bを基準として、第2領域82の径方向外端部は、径方向外方に凸であり、工具軸B方向の両方に向かうにつれて径方向内方に延びる突条である。同様に、工具軸Bを基準として、第3領域83の径方向外端部は、径方向外方に凸であり、工具軸B方向の両方に向かうにつれて径方向内方に延びる突条である。同様に、工具軸Bを基準として、第4領域84の径方向外端部は、径方向外方に凸であり、工具軸B方向の両方に向かうにつれて径方向内方に延びる突条である。これにより、工具30でワークを加工する際に、条32の径方向外端部が工具軸Bと平行に延びている場合と比較して、条32の径方向外端部における工具軸B方向の両側が、ワークと不要な接触をすることを抑制できる。
【0069】
本実施形態においては、第1領域81の歯形における、一方側刃面321の工具軸側端3213と、他方側刃面322の工具軸B側端3223と、工具軸Bを基準とする径方向外端811と、は、それぞれ、第2領域82の歯形における、一方側刃面321の工具軸B側端3213と、他方側刃面322の工具軸B側端3223と、工具軸Bを基準とする径方向外端821と、に一致する。同様に、第3領域83の歯形における、一方側刃面321の工具軸側端3213と、他方側刃面322の工具軸B側端3223と、工具軸Bを基準とする径方向外端831と、第4領域84の歯形における、一方側刃面321の工具軸側端3213と、他方側刃面322の工具軸B側端3223と、工具軸Bを基準とする径方向外端841は、第1領域81の歯形における、一方側刃面321の工具軸側端3213と、他方側刃面322の工具軸B側端3223と、工具軸Bを基準とする径方向外端811に一致する。よって、例えば、第1領域81の歯形と第4領域84の歯形を重ねた場合に、第1領域81の歯形における、一方側刃面321の工具軸側端3213と、他方側刃面322の工具軸側端3223と、工具軸Bを基準とする径方向外端811と、は、それぞれ、第4領域84の歯形における、一方側刃面321の工具軸側端3213と、他方側刃面322の工具軸側端3223と、工具軸Bを基準とする径方向外端841と、に一致する。つまり、第1領域81から第4領域84の歯形の径方向内端と径方向外端は、全て一致する。これにより、条32の全ての領域の径方向内端近傍と径方向外端近傍によってワークを加工できる。
【0070】
工具30は、工具本体部31と条32が一体の部材として成型される。つまり、工具30は、別々の部位として成型される工具本体部と条が組み立てられて構成されるわけではない。これにより、工具30の量産性が向上し、剛性も向上する。また、工具30は、ワークとして外歯歯車を採用し、歯車の両方の歯面を別々に切削面取りする際に特に有用である。さらに、工具30が逃がし部85を有することによって、1つの工具30を用いて、歯車の両側の歯面を加工することが可能である。
【0071】
<3.加工装置の動作について>
続いて、加工装置1の動作について、説明する。
図13は、加工装置1の動作の流れを示すフローチャートである。
図13の動作は、上述した制御部70が、コンピュータプログラムPに従って、第1駆動機構、第2駆動機構、第3駆動機構、第4駆動機構、第5駆動機構、第1回転機構、第2回転機構、および位相センサ60を制御することにより、実現される。
【0072】
加工装置1は、まず、歯車9を加工位置P1へ搬入する(ステップS1)。具体的には、加工装置1は、チェンジャ50により、歯車9を、待機位置P2から加工位置P1へ搬入する。そして、加工装置1は、下側クランパ411および上側クランパ431により、歯車9を保持する。
【0073】
次に、加工装置1は、2つの工具30の一方により、歯車9の第1端面91の外縁部を面取り加工する(ステップS2)。続いて、加工装置1は、2つの工具30の他方により、歯車9の第2端面92の外縁部を面取り加工する(ステップS3)。
【0074】
その後、加工装置1は、歯車9を加工位置P1から搬出する(ステップS4)。具体的には、加工装置1は、下側クランパ411および上側クランパ431による歯車9の保持を解除する。そして、加工装置1は、チェンジャ50により、歯車9を、加工位置P1から待機位置P2へ搬出する。
【0075】
上記のステップS2およびステップS3は、歯車9の加工対象となる箇所が異なるものの、加工処理の手順自体は同等である。
図14は、ステップS2またはステップS3の当該加工処理の流れを示したフローチャートである。
【0076】
加工装置1は、第1駆動機構、第2駆動機構、および第3駆動機構により、工具30を、歯車9に接近させる。そして、加工装置1は、第5駆動機構により、工具軸Bの角度を、第1歯面901の加工に適した角度に調整する(ステップS11)。
【0077】
次に、加工装置1は、第2回転機構による歯車9の回転を開始させる。そして、加工装置1は、位相センサ60により、歯車9の回転の位相を検出する。また、加工装置1は、第4駆動機構による工具30の回転を開始させる。このとき、制御部70は、位相センサ60の検出信号に基づいて、工具30の回転を制御する。これにより、工具30の回転の位相を、歯車9の回転の位相に合わせる(ステップS12)。
【0078】
具体的には、歯車9の歯数をNとし、工具30が有する条32の数をMとすると、制御部70は、工具30を、歯車9のN/M倍の角速度で回転させる。そして、次のステップS13で、外歯90の第1歯面901に条32の右刃面321が接触する位相で、工具30を回転させる。
【0079】
続いて、加工装置1は、第1駆動機構により、工具30をx方向に移動させる。そうすると、外歯90の第1歯面901に、条32の右刃面321が接触する。これにより、歯車9の第1端面91の外縁部または第2端面92の外縁部において、外歯90の第1歯面901が面取り加工される(ステップS13)。
【0080】
図15は、ステップS13の加工処理の様子を示す図である。
図15では、歯車9の第1端面91と、工具30の断面とが示されている。また、
図15は、1条の条32が、1つの外歯90の第1歯面901を加工する様子を示している。
【0081】
まず、
図15(a)のように、第1領域81の右刃面321が、外歯90の第1歯面901の歯底部(
図15(a)において破線の丸C1で示した部分)を加工する。すなわち、第1領域81の右刃面321が、外歯90における歯車軸Aの周方向一方側の面における歯底部を加工する。このとき、第1領域81の左刃面322には、逃がし部85がある。したがって、左刃面322において、第1領域81の歯形は、第2領域82の歯形よりも凹んでいる。これにより、第1領域81の左刃面322が、隣の外歯90に接触することを抑制できる。
【0082】
特に、歯底部付近は、歯先部付近よりも、隣り合う外歯90の間隔が狭い。このため、もし、逃がし部85が無く、第1領域81、第2領域82、第3領域83、および第4領域84の歯形が同一であれば、第1歯面901の歯底部の加工中に、第1領域81の左刃面322が隣の外歯90に接触することを避けることが難しい。しかしながら、この工具30では、条32の左刃面322に、逃がし部85がある。これにより、歯底部付近の狭い空間において、右刃面321により第1歯面901を加工しつつ、左刃面322が隣の外歯90に接触することを抑制できる。
【0083】
次に、
図15(b)のように、第2領域82の右刃面321が、外歯90の第1歯面901の歯底部よりも歯先側の第1中間部(
図15(b)において破線の丸C2で示した部分)を加工する。すなわち、第2領域82の右刃面321が、外歯90における歯車軸Aの周方向一方側の面における歯底部よりも歯先側を加工する。このとき、第2領域82の左刃面322には、逃がし部85がある。したがって、左刃面322において、第2領域82の歯形は、第3領域83の歯形よりも凹んでいる。これにより、第2領域82の左刃面322が、隣の外歯90に接触することを抑制できる。
【0084】
次に、
図15(c)のように、第3領域83の右刃面321が、外歯90の第1歯面901の第1中間部よりも歯先側の第2中間部(
図15(c)において破線の丸C3で示した部分)を加工する。すなわち、第3領域83の右刃面321が、外歯90における歯車軸Aの周方向一方側の面における第1中間部よりも歯先側を加工する。このとき、第3領域83の左刃面322には、逃がし部85がある。したがって、左刃面322において、第3領域83の歯形は、第4領域84の歯形よりも凹んでいる。これにより、第3領域83の左刃面322が、隣の外歯90に接触することを抑制できる。
【0085】
次に、
図15(d)のように、第4領域84の右刃面321が、外歯90の第1歯面901の歯先部(
図15(d)において破線の丸C4で示した部分)を加工する。すなわち、第4領域84の右刃面321が、外歯90における歯車軸Aの周方向一方側の面における歯先部を加工する。このとき、第4領域84の左刃面322には、逃がし部85が無い。しかしながら、歯先部の加工時には、左刃面322と隣の外歯90との間隔が広くなる。したがって、第4領域84の左刃面322は、隣の外歯90に接触しない。
【0086】
加工装置1は、このような、
図15(a),(b),(c),(d)の加工を繰り返すことにより、歯車9の全ての外歯90の第1歯面901を加工する。
【0087】
第1歯面901の加工が完了すると、加工装置1は、第1駆動機構により、歯車9から工具30を、一旦引き離す。続いて、加工装置1は、第5駆動機構により、工具軸Bの角度を、第2歯面902の加工に適した角度に調整する(ステップS14)。また、制御部70は、位相センサ60の検出信号に基づいて、工具30の回転を制御する。これにより、工具30の回転の位相を、歯車9の回転の位相に合わせる(ステップS15)。具体的には、次のステップS16で、外歯90の第2歯面902に工具30の左刃面322が接触する位相で、工具30を回転させる。
【0088】
続いて、加工装置1は、第1駆動機構により、工具30を再び歯車9に接近させる。そうすると、外歯90の第2歯面902に、条32の左刃面322が接触する。これにより、歯車9の第1端面91の外縁部または第2端面92の外縁部において、外歯90の第2歯面902が面取り加工される(ステップS16)。
【0089】
図16は、ステップS16の加工処理の様子を示す図である。
図16では、歯車9の第1端面91と、工具30の断面とが示されている。また、
図16は、1つの条32が、1つの外歯90の第2歯面902を加工する様子を示している。
【0090】
まず、
図16(a)のように、第1領域81の左刃面322が、外歯90の第2歯面902の歯先部(
図16(a)において破線の丸C5で示した部分)を加工する。すなわち、第1領域81の左刃面322が、外歯90における歯車軸Aの周方向他方側の面における歯先部を加工する。
【0091】
第1領域81の左刃面322には、逃がし部85がある。しかしながら、逃がし部85は、左刃面322のうち、外歯90の第2歯面902に接触しない部分にある。すなわち、左刃面322のうち、外歯90における歯車軸Aの周方向他方側の面に接触しない部分に、最大領域の歯形から欠けた逃がし部85がある。このように、逃がし部85は、第2歯面902の歯先部の加工に寄与しない部分に設けられている。このため、第1領域81の左刃面322により、外歯90の第2歯面902の歯先部を、適切に加工できる。
【0092】
次に、
図16(b)のように、第2領域82の左刃面322が、外歯90の第2歯面902の歯先部よりも歯底側の第3中間部(
図16(b)において破線の丸C6で示した部分)を加工する。すなわち、第2領域82の左刃面322が、外歯90における歯車軸Aの周方向他方側の面における歯先部よりも歯底側を加工する。
【0093】
第2領域82の左刃面322にも、逃がし部85がある。しかしながら、逃がし部85は、左刃面322のうち、外歯90の第2歯面902に接触しない部分にある。このため、第2領域82の左刃面322により、外歯90の第2歯面902の第3中間部を、適切に加工できる。
【0094】
次に、
図16(c)のように、第3領域83の左刃面322が、外歯90の第2歯面902の第3中間部よりも歯底側の第4中間部(
図16(c)において破線の丸C7で示した部分)を加工する。すなわち、第3領域83の左刃面322が、外歯90における歯車軸Aの周方向他方側の面における第3中間部よりも歯底側を加工する。
【0095】
第3領域83の左刃面322にも、逃がし部85がある。しかしながら、逃がし部85は、左刃面322のうち、外歯90の第2歯面902に接触しない部分にある。このため、第3領域83の左刃面322により、外歯90の第2歯面902の第4中間部を、適切に加工できる。
【0096】
次に、
図16(d)のように、第4領域84の左刃面322が、外歯90の第2歯面902の歯底部(
図16(d)において破線の丸C8で示した部分)を加工する。すなわち、第4領域84の左刃面322が、外歯90における歯車軸Aの周方向他方側の面における歯底部を加工する。第4領域84の左刃面322には、逃がし部85が無い。このため、第4領域84の左刃面322は、外歯90の第2歯面902の歯底部を、適切に加工できる。
【0097】
第2歯面902の加工が完了すると、工具駆動部20の第4駆動機構が、工具30を回転させながら、工具30の回転の位相を遅延または進めることにより、歯車9の回転に対する工具30の回転の位相をずらす。
【0098】
このとき、条32の先端が歯車9の歯底に接触しながら、工具30の回転の位相と歯車9の回転の位相が変化する。これにより、歯車9の第1端面91の外縁部または第2端面92の外縁部において、歯底が滑らかに面取り加工される(ステップS17)。
【0099】
なお、上記のステップS17では、歯車駆動部40の第1回転機構が、歯車9の回転の位相を遅延または進めることにより、歯車9の回転に対する工具30の回転の位相をずらしてもよい。また、上記のステップS17では、回転の位相をずらすことなく、歯車9に対する工具30の相対位置を、歯車軸Aと交差する方向にずらすことにより、歯車9の歯底に条32の先端が接触するようにしてもよい。
【0100】
すなわち、条32が、外歯90の周方向一方側の面を加工した後、工具駆動部20または歯車駆動部40が、歯車9の回転に対する工具30の回転の位相をずらす、または、工具30と歯車9との相対位置を歯車軸Aと交差する方向にずらすことにより、条32が歯車9の歯底を加工すればよい。これにより、歯車9の歯底を、滑らかに加工できる。
【0101】
なお、特にはすば歯車を加工する際には、鈍角側の歯面を加工する際には工具30をはすば歯車の方向に傾けるため、条と反対側の歯面(鈍角側歯面を加工する場合は鋭角側の歯面)との隙間が広くなるため、鈍角側の歯面を加工した直後に歯底を加工するのが合理的である。ただし、鋭角側の歯面を加工した後でも条と歯車の歯面との隙間が十分であれば、ステップS17は、ステップS13とステップS14の間に実行してもよい。
【0102】
以上のように、本実施形態の工具30は、第1領域81の歯形と、第2領域82の歯形とが、異なる。これにより、条32が歯車9の外歯90を加工するときに、隣の外歯90に接触することを抑制できる。したがって、例えば、1つの工具30で、歯車9の外歯90の第1歯面901および第2歯面902の両方を加工することが、容易となる。
【0103】
本実施形態の工具30を使用すれば、2次的なバリを抑えて、品質・生産性の高い面取り加工を行うことができる。特に、ねじれ角が大きいはすば歯車や、歯底近傍に軸が存在するシャフト状歯車において、本実施形態の工具は、特に有用である。
【0104】
<4.変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されるものではない。
【0105】
<4-1.第1変形例>
上記の実施形態では、条32の右刃面321および左刃面322のうち、左刃面322のみに、逃がし部85があった。すなわち、上記の実施形態では、条32の左刃面322において、第1領域81の歯形と第2領域82の歯形とが異なっていた。しかしながら、
図17のように、条32の右刃面321および左刃面322のうち、右刃面321のみに、逃がし部85があってもよい。すなわち、条32の右刃面321において、第1領域81の歯形と第2領域82の歯形とが異なっていてもよい。
【0106】
その場合、右刃面321のうち、外歯90における歯車軸Aの周方向一方側の面に接触しない部分に、最大領域の歯形から欠けた逃がし部85があることが望ましい。また、右刃面321において、第2領域82の歯形が、第1領域81の歯形よりも凹んでいることが望ましい。このように、逃がし部85は、第2歯面902の歯先部の加工に寄与しない部分に設けられている。このため、第1領域81の右刃面321により、外歯90の第2歯面902の歯先部を、適切に加工できる。
【0107】
本変形例においては、第1領域81から螺旋方向に沿って第4領域84に向かうにつれて、逃がし部85が大きくなる。つまり、第2領域82の歯形は、第1領域81の歯形よりも凹んでおり、第3領域83の歯形は、第2領域82の歯形よりも凹んでおり、第4領域84の歯形は、第3領域83の歯形よりも凹んでいる。そして、第1領域81が歯車9の外歯90における第1歯面901の歯底部を加工する。第2領域82が、第1歯面901における歯底部よりも歯先側を加工する。第3領域83が、第1歯面901における、第2領域82が加工する部位よりも歯先側を加工する。第4領域が、第1歯面901における、歯先部を加工する。これにより、第2領域82から第4領域84が逃がし部85を有していても、第1歯面901の各部位を適切に加工できる。
<4-2.第2変形例>
【0108】
また、
図18のように、条32の右刃面321および左刃面322の両方に、逃がし部85があってもよい。すなわち、条32の右刃面321および左刃面322の両方において、第1領域81の歯形と第2領域82の歯形とが異なっていてもよい。このように、右刃面321および左刃面322の少なくともいずれか一方の刃面において、第1領域81の歯形と第2領域82の歯形とが異なっていることが望ましい。これにより、右刃面321と左刃面322との少なくとも一方の刃面において、工具30と歯車9との接触を抑制しつつ、歯車9を適切に加工できる。
【0109】
例えば、本実施形態においては、第1領域81から螺旋方向に沿って第4領域84に向かうにつれて、右刃面321の逃がし部85が徐々に大きくなり、左歯面322の逃がし部85が徐々に小さくなる。つまり、左刃面322の歯形は
図4から
図8と同様であり、右刃面321の逃がし部85の歯形は第1変形例と同様である。これにより、外歯90の第1歯面901と第2歯面902の各部位を適切に加工できる。
【0110】
次に、
図19から
図23を参照しつつ、第2変形例の工具30Aについて説明する。
図19は、工具30Aの側面図である。
図20は、工具30Aの底面図である。
図21は、工具30Aの平面図である。
図22は、条32Aの歯形を示した図である。
図23は、条32Aの歯形を重ねて示した図である。なお、説明の便宜上、
図19から
図23においては、上述の実施形態の工具30や変形例1にかかる工具30と同一形状である部分については、同一の符号を用いていて、その説明を省略することがあり、上述の実施形態の工具30や変形例1にかかる工具30と異なる形状や特徴を有する部分については異なる符号を用いている。
【0111】
図19から
図23に記載している通り、工具30Aは、工具本体部31と、条32Aと、を有する。工具本体部31は、工具軸Bに沿って延びる。条32Aは、工具本体部31の外側面において、工具軸Bから離れる方向へ突出し、工具軸Bを中心とする螺旋状に配置される。
【0112】
条32Aは、第1領域81Aと、第2領域82Aと、第3領域83Aと、第4領域84Aと、を有する。第1領域81Aは、螺旋方向の一方側に配置される領域である。第2領域82Aは、第1領域81Aよりも螺旋方向の他方側に配置される領域である。第3領域83Aは、第2領域82Aよりも螺旋方向の他方側に配置され、第4領域84Aは、第3領域83Aよりも螺旋方向の他方側に配置される。
【0113】
第1領域81Aは、一方側刃面321Aと、他方側刃面322と、を有する。一方側刃面321Aは、第1領域81Aにおける、工具軸B方向の一方側の面であり、他方側刃面322は、第1領域81Aにおける、工具軸B方向の他方側の面である。第2領域82Aは、一方側刃面321Aと、他方側刃面322と、を有する。一方側刃面321Aは、第2領域82Aにおける、工具軸B方向の一方側の面であり、他方側刃面322は、第2領域82Aにおける、工具軸B方向の他方側の面である。同様にして、第3領域83Aと第4領域84Aは、工具軸B方向の一方側の面である一方側刃面321Aと、工具軸B方向の他方側の面である他方側刃面322と、を有する。つまり、一方側刃面321Aは、条32Aにおける工具軸B方向の一方側の面であり、他方側刃面322は、条32Aにおける工具軸B方向の他方側の面である。
【0114】
条32Aの他方側刃面322の形状は、上記実施形態における条32の他方側刃面322の形状と同一である。よって、条32Aの他方側刃面322における他方側の逃がし部851、852、853も、上記実施形態における他方側の逃がし部851、852、853と同一であり、上記実施形態における逃がし部85と同様の特徴を有する。よって、第1領域81Aにおける他方側の逃がし部851は、第1領域81Aの他方側刃面322Aにおける第1領域81Aの歯形と第4領域84Aの歯形との形状の差異として定義される。第2領域82Aにおける他方側の逃がし部852及び第3領域83Aにおける他方側の逃がし部853についても、他方側の逃がし部851Aと同様に、他方側刃面322における第1領域81Aの歯形の形状との差異として定義すればよい。
【0115】
なお、第2変形例においては、条32Aの一方側刃面321Aの形状は、上記実施形態における条32の形状と異なる。第2変形例においては、第2領域82Aにおける一方側刃面321Aは、第1領域81Aにおける一方側刃面321Aよりも凹んでいる。同様に、第3領域83Aにおける一方側刃面321Aは、第2領域82Aにおける一方側刃面321Aよりも凹んでおり、第4領域84Aにおける一方側刃面321Aは、第3領域83Aにおける一方側刃面321Aよりも凹んでいる。よって、第4領域84Aにおける一方側刃面321Aは、第1領域81Aにおける一方側刃面321Aよりも凹んでいる。これにより、例えば、第4領域84Aの歯形における一方側刃面321Aが第1領域81Aの歯形における一方側刃面321Aよりも凹んでいることによって、第4領域84Aの一方側刃面321Aとワークとの不要な接触を抑制しつつ、第4領域84Aの一方側刃面321Aの他の部位によってワークを適切に加工できる。同様に、第2領域82A、第3領域83Aについても、凹みを有している部分においては、ワークとの不要な接触を抑制しつつ、他の部位によってワークを適切に加工できる。
【0116】
つまり、第2領域82Aは、一方側の逃がし部855を有し、第3領域83Aは、一方側の逃がし部856を有し、第4領域84Aは、一方側の逃がし部857を有する。より具体的に述べると、第1領域81Aの歯形と第2領域84Aの歯形とを重ねた場合における一方側刃面321Aにおける形状の差異を第2領域82Aにおける一方側の逃がし部855とし、第1領域81Aの歯形と第3領域83Aの歯形とを重ねた場合における一方側刃面321Aにおける形状の差異を第3領域83Aにおける一方側の逃がし部856とし、第1領域81Aの歯形と第4領域84Aの歯形とを重ねた場合における一方側刃面321Aにおける形状の差異を第4領域84Aにおける一方側の逃がし部857とすると、一方側刃面321Aにおける逃がし部857は、一方側の逃がし部856よりも大きく、一方側の逃がし部856は、一方側の逃がし部855よりも大きい。つまり、一方側刃面321Aにおいては、第1領域81Aの歯形は第2領域82Aの歯形よりも大きく、第2領域82Aの歯形は第3領域83Aの歯形よりも大きく、第3領域83Aの歯形は第4領域84Aの歯形よりも大きい。これにより、例えば、一方側刃面321Aにおける逃がし部855が工具30Aによるワークの加工に寄与しないことによって、第2領域82Aの一方側刃面321Aとワークとの不要な接触を抑制しつつ、第2領域82Aの一方側刃面321Aの他の部位によってワークを適切に加工できる。同様に、第3領域83A、第4領域84Aについても、一方側の逃がし部856、857が工具30Aによるワークの加工に寄与しないことによって、ワークとの不要な接触を抑制しつつ、他の部位によってワークを適切に加工できる。
【0117】
図23に記載されている通り、工具軸Bを基準として、第1領域81Aの径方向外端811Aと、第2領域82Aの径方向外端821Aと、第3領域83Aの径方向外端831Aと、第4領域84Aの径方向外端841Aと、は一致する。また、第2領域82Aにおける一方側の逃がし部855の径方向外端8551と、第3領域83Aにおける一方側の逃がし部856の径方向外端8561と、第4領域84Aにおける一方側の逃がし部8571は、第1領域81Aの径方向外端811Aよりも工具軸B方向の一方側に配置される。これにより、条32Aの全ての領域において、径方向外端811A、821A、831A、841Aが逃がし部を有していないため、ワークを加工できる。
【0118】
工具軸Bを基準として、一方側の逃がし部857の径方向外端8571は、一方側の逃がし部856の径方向外端8561よりも径方向外方に配置される。同様にして、工具軸Bを基準として、一方側の逃がし部856の径方向外端8561は、一方側の逃がし部855の径方向外端8551よりも径方向外方に配置される。一方、第4領域84Aにおける一方側の逃がし部857の工具軸側端8572は、第3領域83Aにおける一方側の逃がし部856の工具軸側端8562よりも工具軸B側に配置され、第3領域83Aにおける一方側の逃がし部856の工具軸側端8562は、第2領域82Aにおける一方側の逃がし部855の工具軸側端8552よりも、工具軸B側に配置される。つまり、一方側刃面321Aにおける工具軸B側端3213Aと他方側刃面322における工具軸B側端3223とを結ぶ線と、第2領域82Aにおける一方側の逃がし部855の工具軸側端8552と、の径方向の距離L21は、一方側刃面321Aにおける工具軸B側端3213Aと他方側刃面322における工具軸B側端3223とを結ぶ線と、第3領域83Aにおける一方側の逃がし部856の工具軸側端8562と、の径方向の距離L31よりも長く、径方向の距離L31は、一方側刃面321Aにおける工具軸B側端3213Aと他方側刃面322における工具軸B側端3223とを結ぶ線と、第4領域84Aにおける一方側の逃がし部857の工具軸側端8572と、の径方向の距離L41よりも長い。これにより、一方側の逃がし部855、856、857を徐々に大きくすることで、条32Aとワークとの接触を回避しつつ、各領域における加工に寄与する領域を、第1領域81Aから第4領域84Aに向かって徐々に径方向内方に移動させてワークを加工できる。なお、一方側刃面321Aにおける工具軸B側端3213Aと他方側刃面322における工具軸B側端3223とを結ぶ線と、第1領域81Aの径方向外端811と、の径方向の距離L1は、上記実施形態における距離L1と等しい。
【0119】
第1領域81Aの歯形と第2領域82Aの歯形と第3領域83Aの歯形と第4領域84Aの歯形を重ねた場合に、第2領域82Aの逃がし部855の全体は、第1領域81Aの歯形と重なる。つまり、逃がし部855は、第1領域81Aの歯形からはみ出さない。一方側刃面321Aにおける第2領域82Aの逃がし部855の全体は、第3領域83Aにおける逃がし部856と重なり、第3領域83Aにおける一方側の逃がし部856の全体は、第4領域84Aにおける一方側の逃がし部857と重なる。つまり、一方側の逃がし部855は、一方側の逃がし部856からはみ出ることなく、全ての領域が含まれており、一方側の逃がし部856は、一方側の逃がし部857からはみ出ることなく、全ての領域が含まれている。換言すると、一方側刃面321Aにおいて、第1領域81Aの歯形は第2領域82Aの歯形よりも大きく、第2領域82Aの歯形は第3領域83Aの歯形よりも大きく、第3領域83Aの歯形は第4領域84Aの歯形よりも大きい。よって、第1領域81Aの歯形と第4領域84Aの歯形とを重ねた場合に、第4領域84Aにおける一方側の逃がし部857の全体は、第1領域81Aの歯形に含まれる。これにより、一方側刃面321Aにおける逃がし部855、856、857を徐々に大きくすることで、条32Aとワークとの接触を回避しつつ、各領域における加工に寄与する部位を、第1領域81Aから第4領域84Aに向かって徐々に径方向内方に移動させてワークを加工できる。
【0120】
第1領域81Aにおける一方側刃面321Aと、第2領域82Aにおける一方側刃面321Aと、第3領域83Aにおける一方側刃面321Aと、第4領域84Aにおける一方側刃面321Aは、工具軸B方向の他方側かつ工具軸Bに向かう方向に延びるつまり、第1領域81Aと、第2領域82Aと、第3領域83Aと、第4領域84Aにおける一方側刃面321Aは、工具軸Bの他方側かつ工具軸Bに近づく方向に凹む。これにより、工具30Aでワークを加工する際に、条32Aとワークとの不要な接触を抑制しつつ、加工な必要な部位においては、条32Aとワークとを接触させて加工することができる。これは、ワークとして歯車を採用し、工具30Aで歯車の切削面取り加工をする際に特に有用である。なお、ワークの形状や加工方法に合わせて、第1領域81Aと、第2領域82Aと、第3領域83Aと、第4領域84Aと、の少なくとも1つにおける一方側刃面321Aが、工具軸Bの他方側かつ工具軸Bに近づく方向に凹んでいればよい。
【0121】
なお、一方側の逃がし部855、856、857を除いて、条32Aの一方側刃面321Aにおける当該凹みの形状は、上記実施形態における条32の一方側刃面321における当該凹みの形状と同一である。つまり、工具軸Bを基準として、一方側の逃がし部855、856、857は、中点M2よりも径方向外方にのみ配置されるため、中点M2よりも径方向内方においては、一方側刃面321Aの形状は、上記実施形態における条32の一方側刃面321Aの形状と同一である。ただし、逃がし部855、856、857の少なくとも一部は、中点M2よりも径方向内方に配置されてもよい。これにより、ワークの形状や加工方法に合わせて、一方側刃面321Aの形状を適切に変更できる。
【0122】
条32Aの一方側刃面321Aは、工具軸Bを基準とする径方向の内方に配置される、一方側刃面321Aの内側領域3211Aと、工具軸Bを基準とする径方向の外方に配置される、外側領域3212Aと、を有する。一方側刃面321Aの内側領域3211Aと外側領域3212Aの形状は、上記実施形態における条32の内側領域3211と外側領域3212の形状に一致する。他の言い方をすれば、一方側の逃がし部855、856、857の形状を除いて、一方側刃面321Aの径方向内方に配置される部位の形状は、上記実施形態における一方側刃面321の形状と同一である。これにより、条32Aにおいては、第2領域82Aから第4領域84Aにおいて一方側の逃がし部855、856、857を設けることによって、一方側刃面321Aとワークとの不要な接触を抑制しつつ、内側領域3211A及び外側領域3212Aによって適切にワークを加工できる。特に、当該形状は、ワークの加工の一例として、歯車の切削面取りする際に有用である。
【0123】
<4-3.第3変形例>
上記の実施形態の工具30は、歯車9の外歯90を面取り加工するホブカッタであった。しかしながら、本発明の工具は、ホブカッタ以外の工具であってもよい。
図24は、第3変形例に係る工具30の斜視図である。
図24の工具30は、歯車9の外歯90の表面を研削する砥石である。
【0124】
図24の例では、第1領域81と第2領域82の間、第2領域82と第3領域83の間、および第3領域83と第4領域84の間に、溝が形成されていない。したがって、
図24の例では、第1領域81、第2領域82、第3領域83、および第4領域84が、条32の螺旋に沿って、連続的に延びている。
【0125】
図24の例においても、第1領域81、第2領域82、第3領域83、および第4領域84の歯形は、上記の実施形態または変形例と同等である。すなわち、条32の右刃面321および左刃面322の少なくともいずれか一方に、逃がし部85を設けることができる。これにより、第1領域81の歯形と第2領域82の歯形とを、相違させることができる。その結果、条32が歯車9の外歯90を加工するときに、隣の外歯90に接触することを抑制できる。
【0126】
次に、
図25から
図28を参照しつつ、第3変形例の工具30Bについて説明する。
図25は、工具30Bの側面図である。
図26は、工具30Bの底面図である。
図27は、条32Bの歯形を示した図である。
図28は、条32Bの歯形を重ねて示した図である。なお、説明の便宜上、
図25から
図28においては、上述の実施形態の工具30と同一形状である部分については、同一の符号を用いていて、その説明を省略することがあり、上述の実施形態の工具30にかかる工具30と異なる形状や特徴を有する部分については異なる符号を用いている。
【0127】
図25に記載されている通り、工具30Bは、砥石である。よって、工具30Bは、主に、ホブ等で荒加工された歯車を仕上げる際に使用される。工具30Bは、工具軸B回りに延びる螺旋状に配置される条32Bを有する。条32Bは、工具軸Bに沿って配置される円筒状の工具本体部31から、工具軸Bを基準とする径方向外方に突出する部位である。
【0128】
図26に記載されている通り、上記実施形態及び第2変形例と同様に、X1-X1と、X2-X2と、X3-X3と、X4-X4は、工具軸Bを通る径方向に延びる仮想面であり、工具軸Bに沿って見た場合に、X1-X1とX2-X2が成す角度は略30度であり、X2-X2とX3-X3が成す角度は略30度であり、X3-X3とX4-X4が成す角度は略30度である。
【0129】
条32Bは、第1領域81Bと、第2領域82Bと、第3領域83Bと、第4領域84Bと、を有する。第1領域81Bは、条32BがX1-X1断面と交わる領域であり、第2領域82Bは、条32BがX2-X2断面と交わる領域であり、第3領域83Bは、条32BがX3-X3断面と交わる領域であり、第4領域84Bは、条32BがX4-X4断面と交わる領域である。図は、X1-X1断面における第1領域81Bの歯形と、X2-X2断面における第2領域82Bの歯形と、X3-X3断面における第3領域83Bの歯形と、X4-X4断面における第4領域84Bの歯形を並べたものである。
【0130】
図27と
図28を参照して、第1領域81B、第2領域82B、第3領域83B、第4領域84Bにおけるそれぞれの歯形は、上記実施形態の1領域81、第2領域82、第3領域83、第4領域84におけるそれぞれの歯形と一致する。つまり、条32Bは螺旋状に延びる形状を有しており、第1領域81Bと第2領域82Bと第3領域83Bと第4領域84Bが螺旋方向に繋がっているが、各領域の歯形は、上記実施形態における条32における各領域の歯形と一致する。なお、工具が砥石である場合の他の変形例として、第1領域、第2領域、第3領域、第4領域におけるそれぞれの歯形が、第2変形例の1領域81A、第2領域82A、第3領域83A、第4領域84Aにおけるそれぞれの歯形と一致する形状であってもよい。
【0131】
条32Bは、工具軸B方向の一方側の面である一方側刃面321Bと、工具軸B方向の他方側の面である他方側刃面322Bと、を有する。また、他方側刃面322Bは、逃がし部85Bを有する。図を参照して、第1領域81Bにおける他方側の逃がし部851Bと、第2領域82Bにおける他方側の逃がし部852Bと、第3領域83Bにおける他方側の逃がし部853Bの各々の形状は、上記実施形態における他方側の逃がし部851と、他方側の逃がし部852と、他方側の逃がし部853の各々の形状に一致する。よって、条32Bにおいても、各領域における他方側の逃がし部851B、852B、853Bがワークの加工に寄与しないことによって、条32Bとワークとの不要な接触を抑制しつつ、他の部位によってワークを適切に加工できる。当該特徴は、特にワークとして歯車を採用した場合における、歯車の面取り加工を行う際に有用である。
【0132】
工具軸Bを基準として、他方側の逃がし部851Bの径方向外端8511Bは、他方側の逃がし部852Bの径方向外端8521Bよりも径方向外方に配置され、他方側の逃がし部852Bの径方向外端8521Bは、他方側の逃がし部853Bの径方向外端8531Bのよりも径方向外方に配置される。同様に、工具軸Bを基準として、他方側の逃がし部851Bの径方向内端8512Bは、他方側の逃がし部852Bの径方向内端8522Bよりも径方向内方に配置され、他方側の逃がし部852Bの径方向内端8522Bは、他方側の逃がし部853Bの径方向内端8532Bよりも径方向内方に配置される。つまり、逃がし部85Bは、第1領域81Bから第3領域83Bに向かうにつれて小さくなる。換言すると、第1領域81Bの歯形は、第2領域82Bよりも凹んでおり、第2領域82Bの歯形は第3領域83Bの歯形よりも凹んでおり、第3領域83Bの歯形は第4領域84Bの歯形よりも凹んでいる。これにより、工具30Bでワークを加工する際に、条32Bの各領域とワークとの不要な接触を抑制しつつ、逃がし部85B以外の部位でワークを適切に加工できる。第3変形例においても、逃がし部85Bの形状は、各領域の歯形と、最大領域かつ基準領域である第4領域Bの歯形と、の差異として定義される。
【0133】
各領域における一方側刃面321Bと他方側刃面322Bの形状は、上記実施形態における一方側刃面321と他方側刃面322の形状と、それぞれ一致する。よって、一方側刃面321Bは、工具軸Bの他方側かつ工具軸Bに近づく方向に凹む。また、各領域における、一方側刃面321Bの内側領域3211Bの形状は上記実施形態における内側領域3211の形状と一致し、一方側刃面321Bの外側領域3212Bの形状は上記実施形態における外側領域3212の形状と一致する。よって、各領域において、一方側刃面321Bにおける工具軸B側端3213Bは上記実施形態における工具軸B側端3213と一致する。
【0134】
同様に、他方側刃面322Bは、工具軸Bの一方側かつ工具軸Bに近づく方向に凹む。また、各領域における、他方側刃面322Bの内側領域3221Bの形状は上記実施形態における内側領域3221の形状と一致し、他方側刃面322Bの外側領域3222Bの形状は上記実施形態における外側領域3222の形状と一致する。各領域における、他方側刃面322Bにおける工具軸B側端3223Bは、上記実施形態における工具軸B側端3223と一致する。
【0135】
また、径方向外端8511B、8521B、8531Bは、全て、第1領域81Bの一方側刃面321Bの径方向内端3213Bと、第1領域81Bの他方側刃面322Bの径方向内端3223Bの工具軸B方向の中点M1よりも、工具軸B方向の一方側に配置される。同様に、径方向内端8512B、8522B、8532Bは、全て、第1領域81Bの一方側刃面321Bの径方向内端3213Bと、第1領域81Bの他方側刃面322Bの径方向内端3223Bの工具軸B方向の中点M1よりも、工具軸B方向の他方側に配置される。
【0136】
図26と
図27と
図28を参照して、工具軸Bを基準として、第1領域81Bにおける径方向外端811Bの径方向位置と、第2領域82Bにおける径方向外端821Bの径方向位置と、第3領域83Bにおける径方向外端831Bの径方向位置と、第4領域84Bにおける径方向外端841Bの径方向位置は、全て一致する。つまり、工具軸Bを基準として、径方向外端8511B、8521B、8531B、8541Bと、各領域における径方向内端3213Bと径方向内端3223Bとを結ぶ線との距離L1、L2、L3、L4は、全て等しい。また、各領域の径方向内端8512B、8522B、8532B、8542Bは、全て、各領域の一方側刃面321Bの径方向内端3213Bと各領域の一方側刃面322Bの径方向内端3223Bとを結ぶ線と、各領域の径方向外端811B、821B、831B、841Bと、の径方向の中点M2よりも径方向外方に配置される。
【0137】
工具30Bは砥石であるため、条32Bの径方向内端、つまり、条32Bの根元部分は螺旋方向に繋がる。つまり、条32Bの根元部分は、上記実施形態における仮想線V1及びV2に沿って配置される。これにより、例えば条32Bの螺旋方向の任意の領域において、条32Bの根元部分によってワークを適切に加工できる。当該特徴は、例えば工具30Bで歯車を加工する際に、一方側刃面321Bで歯車の一方側の歯面を加工し、他方側刃面322Bで歯車の他方側の歯面を加工する際に特に有用である。
【0138】
<4-4.他の変形例>
【0139】
加工装置1は、第1領域81の右刃面321が、外歯90における歯車軸Aの周方向一方側の面における歯底部を加工し、第2領域82の右刃面321が、外歯90における歯車軸Aの周方向一方側の面における歯底部よりも歯先側を加工する加工構成と、第1領域81の左刃面322が、外歯90における歯車軸Aの周方向他方側の面における歯先部を加工し、第2領域82の左刃面322が、外歯90における歯車軸Aの周方向他方側の面における歯先部よりも歯底側を加工する加工構成と、の少なくとも一方の加工構成を有していればよい。また、条21は、左刃面322において、第1領域81の歯形が、第2領域82の歯形よりも凹んでいる工具構成と、右刃面321において、第2領域82の歯形が、第1領域81の歯形よりも凹んでいる工具構成と、の少なくとも一方の工具構成を有していればよい。これにより、工具30と、外歯90の少なくとも一方の歯面との干渉を抑制できる。
【0140】
また、加工装置1は、第1領域81の右刃面321が、外歯90における歯車軸Aの周方向一方側の面における歯底部を加工し、第2領域82の右刃面321が、外歯90における歯車軸Aの周方向一方側の面における歯底部よりも歯先側を加工する加工構成と、第1領域81の左刃面322が、外歯90における歯車軸Aの周方向他方側の面における歯先部を加工し、第2領域82の左刃面322が、外歯90における歯車軸Aの周方向他方側の面における歯先部よりも歯底側を加工する加工構成と、の両方の加工構成を有していてもよい。これにより、工具30と、外歯90の両方の歯面との干渉を抑制できる。
【0141】
また、条21は、左刃面322において、第1領域81の歯形が、第2領域82の歯形よりも凹んでいる工具構成と、右刃面321において、第2領域82の歯形が、第1領域81の歯形よりも凹んでいる工具構成と、の両方の工具構成を有していてもよい。これにより、工具30と、外歯90の両方の歯面との干渉を抑制できる。
【0142】
上記の実施形態では、加工対象となる歯車9が、はすば歯車であった。しかしながら、本発明において加工対象となる歯車は、平歯車等の他の種類の歯車であってもよい。
【0143】
上記の実施形態の工具30は、外歯90の第1歯面901および第2歯面902の両方を、加工するものであった。しかしながら、本発明の工具は、外歯の第1歯面および第2歯面のいずれか一方のみを加工するものであってもよい。
【0144】
また、上記の実施形態や変形例に登場した各要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【0145】
<5.総括>
本技術は、以下の構成をとることが可能である。
【0146】
(1)工具軸に沿って延びる工具本体部と、前記工具本体部の外側面において、前記工具軸から離れる方向へ突出し、前記工具軸を中心とする螺旋状に配置された条と、を有し、前記条は、前記螺旋方向の一方側に配置された第1領域と、前記第1領域よりも前記螺旋方向の他方側に配置された基準領域と、を有し、前記第1領域は、前記工具軸方向の一方側の面である一方側刃面と、前記工具軸方向の他方側の面である他方側刃面と、を有し、前記基準領域は、前記工具軸方向の一方側の面である一方側刃面と、前記工具軸方向の他方側の面である他方側刃面と、を有し、前記基準領域の歯形における前記一方側刃面及び前記他方側刃面の少なくとも一方において、前記工具軸側に配置される内側領域と前記工具本体部の外側面との角度が、前記内側領域よりも工具軸から離れる方向に配置される外側領域と前記工具本体部の外側面との角度よりも小さく、前記第1領域における前記他方側刃面は、前記基準領域における前記他方側刃面よりも凹んでいる、工具。
【0147】
(2)(1)に記載の工具であって、前記条は、前記第1領域と前記基準領域との前記螺旋方向の間に配置される第2領域を有し、前記第2領域は、前記工具軸方向の一方側の面である一方側刃面と、前記工具軸方向の他方側の面である他方側刃面と、を有し、前記第2領域における前記他方側刃面は、前記基準領域における前記他方側刃面よりも凹んでおり、前記第1領域における前記他方側刃面は、前記第2領域における前記他方側刃面よりも凹んでいる、工具。
【0148】
(3)(2)に記載の工具であって、前記第1領域の歯形と前記基準領域の歯形とを重ねた場合における前記他方側刃面における形状の差異を他方側の逃がし部とし、前記第2領域の歯形と前記基準領域の歯形とを重ねた場合における前記他方側刃面における形状の差異を他方側の逃がし部とした場合に、前記第1領域における前記他方側の逃がし部の前記工具軸側端は、前記第2領域における前記他方側の逃がし部の前記工具軸側端よりも、前記工具軸側に配置される、工具。
【0149】
(4)(1)から(3)のいずれかに記載の工具であって、前記第1領域の歯形と前記基準領域の歯形とを重ねた場合における前記他方側刃面における形状の差異を他方側の逃がし部とした場合に、前記第1領域の歯形と前記基準領域の歯形とを重ねた場合に、前記第1領域の前記他方側の逃がし部の全体は、前記基準領域の歯形に含まれる、工具。
【0150】
(5)(1)から(4)のいずれかに記載の工具であって、前記第1領域の歯形と前記基準領域の歯形を重ねた場合に、前記第1領域の歯形における、前記一方側刃面の前記工具軸側端と、前記他方側刃面の前記工具軸側端と、前記工具軸を基準とする径方向外端と、は、それぞれ、前記基準領域の歯形における、前記一方側刃面の前記工具軸側端と、前記他方側刃面の前記工具軸側端と、前記工具軸を基準とする径方向外端と、に一致する、工具。
【0151】
(6)(1)から(5)のいずれかに記載の工具であって、前記第1領域の歯形における前記一方側刃面の形状は、前記基準領域の歯形における前記一方側刃面の形状と一致する、工具。
【0152】
(7)(1)から(5)のいずれかに記載の工具であって、前記基準領域における前記一方側刃面は、前記第1領域における前記一方側刃面よりも凹んでいる、工具。
【0153】
(8)(1)から(5)のいずれかに記載の工具であって、前記第1領域の歯形と前記基準領域の歯形とを重ねた場合における前記一方側刃面における形状の差異を前記基準領域における一方側の逃がし部とした場合に、前記第1領域の歯形と前記基準領域の歯形とを重ねた場合に、前記基準領域における一方側の逃がし部の全体は、前記第1領域の歯形に含まれる、工具。
【0154】
(9)歯車を加工する加工装置であって、(1)から(8)までのいずれかに記載の工具と、前記工具を、工具軸を中心として回転させる工具駆動部と、前記歯車を、前記工具軸と非平行に配置された歯車軸を中心として回転させる歯車駆動部と、を備える、加工装置。
【0155】
(10)歯車を加工する加工装置であって、工具と、前記工具を、工具軸を中心として回転させる工具駆動部と、前記歯車を、前記工具軸と非平行に配置された歯車軸を中心として回転させる歯車駆動部と、を備え、前記工具は、前記工具軸に沿って延びる工具本体部と、前記工具本体部の外側面において、前記工具軸から離れる方向へ突出し、前記工具軸を中心とする螺旋状に配置された条と、を有し、前記条は、前記螺旋に沿って異なる位置に配置された第1領域および第2領域を含み、前記条は、前記工具軸方向の一方側の面である右刃面と、前記工具軸方向の他方側の面である左刃面と、を有し、前記歯車は、複数の歯を有し、前記第1領域の前記右刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向一方側の面における歯底部を加工し、前記第2領域の前記右刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向一方側の面における歯底部よりも歯先側を加工する加工構成と、前記第1領域の前記左刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向他方側の面における歯先部を加工し、前記第2領域の前記左刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向他方側の面における前記歯先部よりも歯底側を加工する加工構成と、の少なくとも一方の加工構成を有し、前記条は、前記左刃面において、前記第1領域の歯形が、前記第2領域の歯形よりも凹んでいる工具構成と、前記右刃面において、前記第2領域の歯形が、前記第1領域の歯形よりも凹んでいる工具構成と、の少なくとも一方の工具構成を有する、加工装置。
【0156】
(11)(10)に記載の加工装置であって、前記第1領域の前記右刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向一方側の面における歯底部を加工し、前記第2領域の前記右刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向一方側の面における歯底部よりも歯先側を加工する加工構成と、前記第1領域の前記左刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向他方側の面における歯先部を加工し、前記第2領域の前記左刃面は、前記歯における前記歯車軸の周方向他方側の面における前記歯先部よりも歯底側を加工する加工構成と、の両方の加工構成を有する、加工装置。
【0157】
(12)(10)に記載の加工装置であって、前記条は、前記左刃面において、前記第1領域の歯形が、前記第2領域の歯形よりも凹んでいる工具構成と、前記右刃面において、前記第2領域の歯形が、前記第1領域の歯形よりも凹んでいる工具構成と、の両方の工具構成を有する、加工装置。
【0158】
(13)(11)に記載の加工装置であって、前記条は、前記左刃面において、前記第1領域の歯形が、前記第2領域の歯形よりも凹んでいる工具構成と、前記右刃面において、前記第2領域の歯形が、前記第1領域の歯形よりも凹んでいる工具構成と、の両方の工具構成を有する、加工装置。
【0159】
(14)(10)から(13)までのいずれか1項に記載の加工装置であって、前記条は、前記第2領域を基準として、前記螺旋に沿って前記第1領域とは反対側の位置に配置され、歯形が最も凸となる最大領域を含み、前記第2領域の歯形は、前記最大領域の歯形よりも凹んでいる、加工装置。
【0160】
(15)(14)に記載の加工装置であって、前記左刃面のうち、前記歯における前記歯車軸の周方向他方側の面に接触しない部分に、前記最大領域の歯形から欠けた逃がし部がある、加工装置。
【0161】
(16)(14)に記載の加工装置であって、前記右刃面のうち、前記歯における前記歯車軸の周方向一方側の面に接触しない部分に、前記最大領域の歯形から欠けた逃がし部がある、加工装置。
【0162】
(17)(10)から(16)までのいずれかに記載の加工装置であって、前記歯車は、はすば歯車である、加工装置。
【0163】
(18)(10)から(17)までのいずれかに記載の加工装置であって、前記条が、前記歯の周方向一方側の面を加工した後、前記工具駆動部または前記歯車駆動部が、前記歯車の回転に対する前記工具の回転の位相をずらす、または、前記工具と前記歯車との相対位置を前記歯車軸と交差する方向にずらすことにより、前記条が前記歯車の歯底を加工する、加工装置。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、工具および加工装置に利用できる。
【符号の説明】
【0165】
1 加工装置
9 歯車
10 ベッド
20 工具駆動部
30 工具
31 工具本体部
32 条
40 歯車駆動部
50 チェンジャ
60 位相センサ
70 制御部
81 第1領域
811 径方向外端
82 第2領域
821 径方向外端
83 第3領域
84 第4領域(基準領域)
85 逃がし部
851 他方側の逃がし部
8512 工具軸側端
852 他方側の逃がし部
855 一方側の逃がし部
8522 工具軸側端
90 外歯
91 第1端面
92 第2端面
321 右刃面(一方側刃面)
3213 工具軸側端
322 左刃面(他方側刃面)
3213 工具軸側端
901 第1歯面
902 第2歯面
A 歯車軸
B 工具軸