(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016432
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】運転計画作成装置および運転計画作成装置用コンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/00 20060101AFI20230126BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20230126BHJP
G16Y 10/35 20200101ALI20230126BHJP
G16Y 20/30 20200101ALI20230126BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20230126BHJP
G16Y 40/30 20200101ALI20230126BHJP
【FI】
H02J3/00 170
G06Q50/06
G16Y10/35
G16Y20/30
G16Y40/10
G16Y40/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120738
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520320446
【氏名又は名称】中部電力パワーグリッド株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000213297
【氏名又は名称】中部電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(74)【代理人】
【識別番号】100112564
【弁理士】
【氏名又は名称】大熊 考一
(74)【代理人】
【識別番号】100163500
【弁理士】
【氏名又は名称】片桐 貞典
(74)【代理人】
【識別番号】230115598
【弁護士】
【氏名又は名称】木内 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】久保田 雅之
(72)【発明者】
【氏名】廣政 勝利
(72)【発明者】
【氏名】西入 秀明
(72)【発明者】
【氏名】木谷 元紀
(72)【発明者】
【氏名】森田 佑樹
(72)【発明者】
【氏名】末成 展康
(72)【発明者】
【氏名】杉山 健太
(72)【発明者】
【氏名】板垣 悟
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G066AA03
5G066AE03
5G066AE09
5L049CC06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】複数の単価が設定された複数の発電機に対して、数理計画問題を解くことにより複数の発電機の運転計画を作成する運転計画作成装置及び運転計画作成装置用コンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】運転計画作成装置1は、記憶部20に記憶された、需要予測データ21、発電予測データ22、系統データ23、発電機データ24のうち少なくとも一つと、コスト関数データ25及び基準値データ26に基づき、複数の発電機の夫々に対し調整コストを定義する調整コスト定義部11と、需要予測データ、発電予測データ、系統データ、発電機データのうち少なくとも一つと、コスト関数データ及び基準値データと、調整コスト定義部により定義された調整コストに基づき問題に関する数式を生成する問題生成部12と、問題生成部により生成された数式に基づき計算を行い発電機の運転計画を作成する計画作成部13と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を送電する電力系統の将来の電力需要を予測する需要予測データ、
前記電力系統に電力を供給する複数の発電機の発電量を予測する発電予測データ、
前記電力系統の状態を表す系統データ、
複数の前記発電機の仕様を表す発電機データ、
のうち少なくとも一つと、
複数の前記発電機により発電される電力と単価の関係を表すコスト関数データと、
複数の前記発電機から出力される電力の基準値を表す基準値データと、
を記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された、前記需要予測データ、前記発電予測データ、前記系統データ、前記発電機データのうち少なくとも一つと、前記コスト関数データおよび前記基準値データに基づき、複数の前記発電機のそれぞれに対し調整コストを定義する調整コスト定義部と、
前記記憶部に記憶された、前記需要予測データ、前記発電予測データ、前記系統データ、前記発電機データのうち少なくとも一つと、前記コスト関数データおよび前記基準値データと、前記調整コスト定義部により定義された調整コストに基づき問題に関する数式を生成する問題生成部と、
前記問題生成部により生成された数式に基づき計算を行い発電機の運転計画を作成する計画作成部と、
を有する運転計画作成装置。
【請求項2】
複数の前記コスト関数データは、区分線形関数で表され、前記区分線形関数の傾きは、単調増加である、
請求項1に記載の運転計画作成装置。
【請求項3】
複数の前記コスト関数データは、基準値データにより区切られた電力の量に対応して複数設定され、
前記調整コスト定義部は、複数の前記コスト関数データに基づき、前記調整コストを定義する、
請求項1または2に記載の運転計画作成装置。
【請求項4】
複数の前記コスト関数データは、区分線形関数で表され、
前記調整コスト定義部は、変数を有する項と変数を有する項が乗算された項を、変数を有する項と定数項が乗算された項に置き換えた前記区分線形関数に基づき、調整コストとしてコスト関数の生成を行い、
前記問題生成部は、前記調整コスト定義部により生成された前記コスト関数に基づき、混合整数線形計画問題に変形し目的関数を生成する、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の運転計画作成装置。
【請求項5】
前記調整コスト定義部は、所定時間における発電出力の平均値に対するコストを調整コストとしてコスト関数の生成を行い、
前記問題生成部は、前記調整コスト定義部により生成されたコスト前記コスト関数に基づき、目的関数を生成する、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の運転計画作成装置。
【請求項6】
前記計画作成部は、数理最適化計算の手法を用いて前記問題生成部により生成された数式にかかる制約式を満たす解を算出し、発電機の運転計画を作成する、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の運転計画作成装置。
【請求項7】
記憶部に記憶された、
電力を送電する電力系統の将来の電力需要を予測する需要予測データ、
前記電力系統に電力を供給する複数の発電機の発電量を予測する発電予測データ、
前記電力系統の状態を表す系統データ、
複数の前記発電機の仕様を表す発電機データ、
のうち少なくとも一つと、
複数の前記発電機により発電される電力と単価の関係を表すコスト関数データと、
複数の前記発電機から出力される電力の基準値を表す基準値データと、に基づき、複数の前記発電機のそれぞれに対し調整コストを定義する調整コスト定義手段と、
前記記憶部に記憶された、前記需要予測データ、前記発電予測データ、前記系統データ、前記発電機データのうち少なくとも一つと、前記記憶部に記憶された、前記コスト関数データおよび前記基準値データと、前記調整コスト定義手段により定義された調整コストに基づき問題に関する数式を生成する問題生成手段と、
前記問題生成手段により生成された数式に基づき計算を行い発電機の運転計画を作成する計画作成手段と、
を有する運転計画作成装置用コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電力系統に電力を供給する複数の発電機の運転計画を作成する運転計画作成装置および運転計画作成装置用コンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統に電力を供給する複数の発電機により需給制御を行う電力需給制御システムが知られている。運転計画は、電力需給制御システムによる需給制御に基づき作成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今の電力自由化により、新規電気事業者が電気事業に参入し、従来に比べ複雑な電力供給および電力消費がなされるようになった。このため、電力需要量と供給量(以降「電力需給」と総称する場合がある)の調整は、きめ細かに行うことが必要とされる。電力需給の調整は、適切なコストにより行われることが好ましい。
【0005】
電力系統の周波数は、系統内の電力の需要と供給を一致させることにより保たれる。電力の需要と供給の均衡が保たれない場合、電力システムの周波数が変動し、場合によっては停電を引き起こす可能性もある。従来、発電所は各発電機の燃料費を考慮して燃料費コストを最小とするような経済負荷配分制御(Economic load Dispatching Control)を実施してきた。複数の発電機の燃料費をコスト関数として最適化手法を用いた発電計画作成手法が知られているが、この発電計画作成手法によれば、一つの発電機に対して一つコスト関数が用いられる。
【0006】
電力供給地域における周波数制御、需給制御を行うための能力は、一般的に調整力と呼ばれる。昨今、調整力に応じた料金により電力の取引が行われる制度が整備されつつある。この制度によれば、一般送配電事業者(TSO)が電力需給一致のために発電機出力を上げる調整を行った場合、発電事業者は、一般送配電事業者により第1の単価(V1)により費用が支払われる。また、一般送配電事業者が発電機出力を下げる調整を行った場合、一般送配電事業者は発電事業者により第2の単価(V2)により費用が支払われる。
【0007】
従来技術において、複数の単価が設定された複数の発電機に対して、数理計画問題を解くことにより複数の発電機の運転計画を作成することは、人手を介することとなり非常に煩雑であった。
【0008】
本実施形態は、複数の単価が設定された複数の発電機に対して、数理計画問題を解くことにより複数の発電機の運転計画を作成することができる運転計画作成装置および運転計画作成装置用コンピュータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態の運転計画作成装置は、次のような特徴を有する。
(1)電力を送電する電力系統の将来の電力需要を予測する需要予測データ、前記電力系統に電力を供給する複数の発電機の発電量を予測する発電予測データ、前記電力系統の状態を表す系統データ、複数の前記発電機の仕様を表す発電機データ、のうち少なくとも一つと、複数の前記発電機により発電される電力と単価の関係を表すコスト関数データと、複数の前記発電機から出力される電力の基準値を表す基準値データと、を記憶する記憶部。
(2)前記記憶部に記憶された、前記需要予測データ、前記発電予測データ、前記系統データ、前記発電機データのうち少なくとも一つと、前記コスト関数データおよび前記基準値データに基づき、複数の前記発電機のそれぞれに対し調整コストを定義する調整コスト定義部。
(3)前記記憶部に記憶された、前記需要予測データ、前記発電予測データ、前記系統データ、前記発電機データのうち少なくとも一つと、前記コスト関数データおよび前記基準値データと、前記調整コスト定義部により定義された調整コストに基づき問題に関する数式を生成する問題生成部。
(4)前記問題生成部により生成された数式に基づき計算を行い発電機の運転計画を作成する計画作成部。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態にかかる運転計画作成装置の構成を示す図
【
図2】第1実施形態にかかる運転計画作成装置の処理手順を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[第1実施形態]
[1-1.構成]
図1を参照して本実施形態の一例として、運転計画作成装置1の構成について説明する。運転計画作成装置1は、コンピュータにより構成される。複数の単価が設定された複数の発電機に対して、数理計画問題を解くことにより複数の発電機の運転計画を作成する。
【0012】
運転計画作成装置1は、演算部10、記憶部20、格納部30、受信部40、送信部50を有する。記憶部20、格納部30、受信部40、送信部50は、演算部10に接続される。演算部10は、記憶部20、格納部30、受信部40、送信部50の制御を行う。
【0013】
記憶部20は、半導体メモリやハードディスクのような記憶媒体にて構成される。記憶部20は、演算部10に接続される。記憶部20は、演算部10によりデータの書き込み、読出しが制御される。
【0014】
記憶部20は、需要予測データ21、発電予測データ22、系統データ23、発電機データ24、コスト関数データ25、基準値データ26を記憶する。
【0015】
需要予測データ21は、需要家に設置された電力測定器等で測定された過去の電力使用に関するデータ、気象情報、過去のイベント日時等に基づき作成された、電力の需要を予測したデータである。
【0016】
発電予測データ22は、風力発電機や太陽光発電装置などの再生エネルギーにより発電される電力を予測したデータである。
【0017】
系統データ23は、所定のエリアにおける発電機により発電される電力の計画値と、電力需要の予測値との差分等に基づき算出されるエリアインバランス想定量を含む。また、系統データ23は、管轄エリア外と送受電される電力の量を示す調整量、発電機の発電計画値、系統の周波数調整のため余力として確保すべき発電出力である予備力、系統制約等を含む。発電機の発電計画値は、発電機ごと個別に設定されるものである。発電機の発電計画値は、一定値であってもよいし、一定値ではなく、例えば30分毎など時間的に変化してもよい。
【0018】
予備力は、発電機全体として確保すべき量である。予備力は、個々の発電機が個別に確保すべき電力の量であってもよいし、発電機の変化速度が考慮された電力の量であってもよい。また、予備力は、これらのうちいずれかもしくは複数を組合せたものであってもよい。系統制約は、送電線の接続状態を示す情報や、各送電線に流せる電力の限界値、各送電線の電圧変動の限界値のデータを含む。
【0019】
発電機データ24は、各発電機から出力される電力の変化速度の上下限値、各発電機から出力される電力の上下限値、最小起動時間と最小停止時間、出力される電力と燃料費との関係を表す関係式、発電機の起動停止計画を含む。
【0020】
出力される電力に応じ、燃料費は変化する。出力される電力と燃料費との関係を表す関係式は、二次関数で表される場合が多いが、一次関数であっても良いし、定数であってもよい。発電機の起動停止計画は、発電機が起動する時刻、停止する時刻に関する情報である。運転計画作成装置1は、起動停止計画が与えられない場合であっても、後述する計画作成部13により、起動停止計画と運転計画とを併せて算出するようにしてもよい。
【0021】
コスト関数データ25は、ある時間における個々の発電機による発電の出力計画である発電機の運転計画において、指標となる関数である。例えば、増分燃料費よりΔC1円高い価格をコスト関数f1(p)、増分燃料費よりΔC2円低い価格をコスト関数f2(p)で表すものとする。増分燃料費とは、燃料費関数を出力で微分した値である。上記では一例として、価格を示すコスト関数は、増分燃料費を基準として、増分燃料費より高い価格と増分燃料費より低い価格の2つの区分に分け定義されるものとした。しかしながらコスト関数は、これに限られない。コスト関数は、増分燃料費と無関係に任意に設定されるものであってもよい。また、コスト関数は、増分燃料費と同一であってもよいし、定数であってもよい。
【0022】
基準値データ26は、コスト関数f1(p)、コスト関数f2(p)を切替えるための基準となるデータである。基準値データ26は、発電機毎に個別に設定される値であり、発電機の最大出力以下の値で設定される。基準値データ26は、時間的に常に一定ではなく、例えば30分毎に変化するものであってもよい。例えば、発電機から出力される電力が計画値より大きいときにコスト関数f1(p)、計画値より小さいときにコスト関数f2(p)とする場合、基準値データは、計画値とされる。本実施形態では一例として、コスト関数f1(p)、コスト関数f2(p)は、一次関数であるものとする。
【0023】
演算部10は、マイクロコンピュータ等により構成される。演算部10は、記憶部20、格納部30、受信部40、送信部50に接続される。演算部10は、記憶部20、格納部30、受信部40、送信部50の制御を行う。
【0024】
演算部10は、調整コスト定義部11、問題生成部12、計画作成部13を有する。調整コスト定義部11、問題生成部12、計画作成部13は、演算部10内のソフトウェアモジュールまたはハードウェアにより構成される。ソフトウェアモジュールは、調整コスト定義手段、問題生成手段、計画作成手段にかかるコンピュータプログラムにより構成される。
【0025】
調整コスト定義部11は、記憶部20に記憶された、需要予測データ21、発電予測データ22、系統データ23、発電機データ24のうち少なくとも一つと、記憶部20に記憶された、コスト関数データ25および基準値データ26に基づき、複数の発電機のそれぞれに対し調整コストを定義する。
【0026】
問題生成部12は、記憶部20に記憶された、需要予測データ21、発電予測データ22、系統データ23、発電機データ24のうち少なくとも一つと、記憶部20に記憶された、コスト関数データ25および基準値データ26と、調整コスト定義部11により定義された調整コストに基づき、問題に関する数式を生成する。
【0027】
問題生成部12は、最適化計算における目的関数と制約式の生成を行う。目的関数は、調整コストの最小化を目的とする関数である。
【0028】
計画作成部13は、問題生成部12により生成された数式である目的関数と制約式に基づき計算を行い、発電機の運転計画を作成する。
【0029】
格納部30は、半導体メモリやハードディスクのような記憶媒体にて構成される。格納部30は、演算部10に接続される。格納部30は、演算部10によりデータの書き込み、読出しが制御される。
【0030】
格納部30は、問題データ格納部31、計画データ格納部32を有する。問題データ格納部31は、問題生成部12により生成された数式である目的関数と制約式を格納し記憶する。計画データ格納部32は、計画作成部13により作成された発電機の運転計画に関する目的関数と制約式を格納し記憶する。
【0031】
格納部30の問題データ格納部31、計画データ格納部32は、運転計画作成装置1の外部のデータサーバ等の記憶装置により構成されるものであってもよい。
【0032】
受信部40は、受信回路、外部メモリ接続回路、またはキーボード、マウス等の操作装置により構成される。受信部40は、演算部10に接続される。受信部40を介し、需要予測データ21、発電予測データ22、系統データ23、発電機データ24、コスト関数データ25、基準値データ26が入力される。
【0033】
送信部50は、送信回路、外部メモリ接続回路、または表示装置、プリンタ等の装置により構成される。送信部50は、計画作成部13により作成された発電機の運転計画を出力する。または、送信部50を介し、計画作成部13により作成された発電機の運転計画に基づいた制御信号が、直接発電機に送信されるようにしてもよい。
【0034】
以上が、本実施形態にかかる運転計画作成装置1の構成である。
【0035】
[1-2.作用]
【0036】
次に、
図1~2に基づき本実施形態の運転計画作成装置1の動作の概要を説明する。
【0037】
運転計画作成装置1は、記憶部20に記憶された、需要予測データ21、発電予測データ22、系統データ23、発電機データ24のうち少なくとも一つと、記憶部20に記憶された、コスト関数データ25および基準値データ26に基づき、複数の発電機のそれぞれに対し調整コスト定義部11により調整コストを定義する。
【0038】
運転計画作成装置1は、記憶部20に記憶された、需要予測データ21、発電予測データ22、系統データ23、発電機データ24のうち少なくとも一つと、記憶部20に記憶された、コスト関数データ25および基準値データ26と、調整コスト定義部11により定義された調整コストに基づき、問題生成部12により問題に関する数式を生成する。
【0039】
運転計画作成装置1は、問題生成部12により生成された数式に基づき計算を行い、計画作成部13により運転計画を作成する。
【0040】
記憶部20は、受信部40を介し予め設定された需要予測データ21、発電予測データ22、系統データ23、発電機データ24、コスト関数データ25、基準値データ26を記憶している。
【0041】
需要予測データ21は、需要家に設置された電力測定器等で測定された過去の電力使用に関するデータ、気象情報、過去のイベント日時等に基づき作成された、電力の需要を予測したデータである。
【0042】
発電予測データ22は、風力発電機や太陽光発電装置などの再生エネルギーにより発電される電力を予測したデータである。
【0043】
系統データ23は、所定のエリアにおける発電機により発電される電力の計画値と、電力需要の予測値との差分等に基づき算出されるエリアインバランス想定量を含む。また、系統データ23は、管轄エリア外と送受電される電力の量を示す調整量、発電機の発電計画値、系統の周波数調整のため余力として確保すべき発電出力である予備力、系統制約等を含む。発電機の発電計画値は、発電機ごと個別に設定されるものである。発電機の発電計画値は、一定値であってもよいし、一定値ではなく、例えば30分毎など時間的に変化してもよい。
【0044】
予備力は、発電機全体として確保すべき量である。予備力は、個々の発電機が個別に確保すべき電力の量であってもよいし、発電機の変化速度が考慮された電力の量であってもよい。また、予備力は、これらのうちいずれかもしくは複数を組合せたものであってもよい。系統制約は、送電線の接続状態を示す情報や、各送電線に流せる電力の限界値、各送電線の電圧変動の限界値のデータを含む。
【0045】
発電機データ24は、各発電機から出力される電力の変化速度の上下限値、各発電機から出力される電力の上下限値、最小起動時間と最小停止時間、出力される電力と燃料費との関係を表す関係式、発電機の起動停止計画を含む。
【0046】
出力される電力に応じ、燃料費は変化する。出力される電力と燃料費との関係を表す関係式は、二次関数で表される場合が多いが、一次関数であっても良いし、定数であってもよい。発電機の起動停止計画は、発電機が起動する時刻、停止する時刻に関する情報である。運転計画作成装置1は、起動停止計画が与えられない場合であっても、計画作成部13により、起動停止計画と運転計画とを併せて算出するようにしてもよい。
【0047】
コスト関数データ25は、ある時間における個々の発電機による発電の出力計画である発電機の運転計画において、指標となる関数である。例えば、増分燃料費よりΔC1円高い価格をコスト関数f1(p)、増分燃料費よりΔC2円低い価格をコスト関数f2(p)で表すものとする。増分燃料費とは、燃料費関数を出力で微分した値である。上記では一例として、価格を示すコスト関数は、増分燃料費を基準として、増分燃料費より高い価格と増分燃料費より低い価格の2つの区分に分け定義されるものとした。しかしながらコスト関数は、これに限られない。コスト関数は、増分燃料費と無関係に任意に設定されるものであってもよい。また、コスト関数は、増分燃料費と同一であってもよいし、定数であってもよい。
【0048】
基準値データ26は、コスト関数f1(p)、コスト関数f2(p)を切替えるための基準となるデータである。基準値データ26は、発電機毎に個別に設定される値であり、発電機の最大出力以下の値で設定される。基準値データ26は、時間的に常に一定ではなく、例えば30分毎に変化するものであってもよい。例えば、発電機から出力される電力が計画値より大きいときにコスト関数f1(p)、計画値より小さいときにコスト関数f2(p)とする場合、基準値データは、計画値とされる。本実施形態では一例として、コスト関数f1(p)、コスト関数f2(p)は、一次関数であるものとする。
【0049】
調整コスト定義部11は、記憶部20に記憶された、需要予測データ21、発電予測データ22、系統データ23、発電機データ24のうち少なくとも一つと、記憶部20に記憶された、コスト関数データ25および基準値データ26に基づき、複数の発電機のそれぞれに対し調整コスト定義部11により調整コストを定義する。
【0050】
一例として、コスト関数データ25と基準値データ26を用いて、調整コストの定義を行う場合の演算動作を以下に示す。
【0051】
調整コストを(式1)に示す。f1(p)は、第1のコスト関数である。f1(pit
bs)は、発電機iごと、時間tごとに個別に設定される基準値出力pit
bsにある時のコストf1(p)である。f2(p)は、第2のコスト関数である。f2(pit
bs)は、発電機iごと、時間tごとに個別に設定される基準値出力pit
bsにある時のコストf2(p)である。
【0052】
δ(i,t)は、時刻tにおいてi番目の発電機出力が基準値出力pit
bsより大きい場合に「1」、基準値出力pit
bs未満である場合に「0」となる変数である。第1のコスト関数f1(p)、第2のコスト関数f2(p)は、時間毎に変化するものであってもよい。第1のコスト関数f1(p)、第2のコスト関数f2(p)は、例えば30分毎に関数の形を変えるものであってもよい。
【0053】
調整コストを最小化する目的関数を(式2)に示す。上記の(式1)、(式2)において、基準値出力pit
bsにある時のコストf1(pit
bs)またはf2(pit
bs)と、発電機iの時間tにおける出力pitのコストf1(pit
bs)との差分を調整コストと定義したが、基準値出力pit
bsにある時のコスト以外と、発電機iの時間tにおける出力pitのコストとの差分を調整コストとして定義してもよい。
【0054】
例えば、燃料費をpの関数f0(p)としたときに、出力が計画値より大きい場合、計画値のコストf0(pbs)と実際の出力のコストf1(p)との差分を、出力が計画値より小さい場合、計画値のコストf0(pbs)と実際の出力のコストf2(p)との差分を、調整コストとして定義してもよい。また、上記では、計画値のコストf0(pbs)と実際の出力のコストf1(p)との差分、計画値のコストf0(pbs)と実際の出力のコストf2(p)との差分を、調整コストとして定義するものとしたが、計画値のコストに関する関数は、必ずしも同一でなくてもよい。出力が計画値より大きい場合、計画値のコストf0a(pbs)と実際の出力のコストf1(p)との差分を、出力が計画値より小さい場合、計画値のコストf0b(pbs)と実際の出力のコストf2(p)との差分を、調整コストとして定義するものとしてもよい。
【0055】
制約式を(式3)~(式9)に示す。(式3)、(式4)は、計画値の大小に応じ、関数の場合分けを行うための式である。(式5)は、需給一致制約である。エリアインバランス想定量と調整量は、必ずしも両者が必要とされるわけではなく、いずれかが0であってもよい。(式6)は、変化速度制約である。(式7)、(式8)は、発電機調整力上下限制約であり、(式9)は、発電機出力上下限制約である。制約式である(式3)~(式9)は、需要予測データ21、発電予測データ22、系統データ23、発電機データ24、コスト関数データ25、基準値データ26に基づき定義される。
【数1】
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
【0056】
調整コスト定義部11は、コスト関数f1(p)を第1のコストとして、コスト関数f2(p)を第2のコストとして調整コストに関する(式1)を算出する演算を行う。
【0057】
問題生成部12は、上記のように最適化計算における目的関数(式2)と制約式(式3)~(式9)の生成を行い、格納部30の問題データ格納部31に格納し記憶させる。
【0058】
演算部10の計画作成部13は、数理最適化計算等の手法を用いて制約式を満たす解を算出し、発電出力の計画を作成する。演算部10の計画作成部13は、目的関数(式2)が最小となる解を算出する。演算部10の計画作成部13は、遺伝的アルゴリズム、メタヒューリスティクス手法等を適用し発電出力の計画を作成する。より厳密な解を算出するために演算部10の計画作成部13は、数理最適化計算によって解を求めることが好ましい。
【0059】
演算部10の計画作成部13は、発電機毎の発電出力の計画を作成し、格納部30の計画データ格納部32に格納し記憶させる。格納部30の計画データ格納部32はデータベースとされる。
【0060】
演算部10は、送信部50を介し、計画作成部13により作成された発電機の運転計画を出力する。送信部50は、送信電文、外部メモリへの送信信号、または表示、プリントアウト等により発電機の運転計画を出力する。または、演算部10は、送信部50を介し、計画作成部13により作成された発電機の運転計画に基づいた制御信号を、直接発電機に送信するようにしてもよい。
【0061】
以上の目的関数(式1)、(式2)と制約式(式3)~(式9)は、発電機の起動停止問題を含まない場合の一例であるが、発電機の起動停止問題を含む場合であっても、起動停止問題と運転計画を同時に解くことができる。
【0062】
以上が、本実施形態にかかる運転計画作成装置1の動作である。
【0063】
[1-3.効果]
(1)本実施形態によれば、運転計画作成装置1は、記憶部20に記憶された、需要予測データ21、発電予測データ22、系統データ23、発電機データ24のうち少なくとも一つと、コスト関数データ25および基準値データ26に基づき、複数の前記発電機のそれぞれに対し調整コストを定義する調整コスト定義部11と、需要予測データ21、発電予測データ22、系統データ23、発電機データ24のうち少なくとも一つと、コスト関数データ25および基準値データ26と、調整コスト定義部11により定義された調整コストに基づき問題に関する数式を生成する問題生成部12と、問題生成部12により生成された数式に基づき計算を行い発電機の運転計画を作成する計画作成部13と、を有するので、複数の単価が設定された複数の発電機に対して、数理計画問題を解くことにより複数の発電機の運転計画を作成することができる運転計画作成装置1を提供することができる。
【0064】
本実施形態によれば、出力される発電電力に応じ複数の料金が設定された、多様な料金体系に対応した発電計画を作成する運転計画作成装置1を提供することができる。
【0065】
本実施形態によれば、基準値と複数のコスト関数から演算される調整コストにより、複数の発電機に対し、調整コストを最小化する運転を指令することができる。
【0066】
[2.第2実施形態]
[2-1.構成および作用]
第2実施形態にかかる運転計画作成装置1について説明する。第2実施形態にかかる運転計画作成装置1は、調整コスト定義部11で生成されるコスト関数と制約式が、第1実施形態にかかる運転計画作成装置1と異なる。第2実施形態にかかる運転計画作成装置1のコスト関数と制約式は、区分線形関数で表される。その区分線形関数の傾きは、単調増加である。第2実施形態にかかる運転計画作成装置1の構成は、
図1に示す第1実施形態にかかる運転計画作成装置1の構成と同じである。また、第2実施形態にかかる運転計画作成装置1の処理手順は、
図2に示す第1実施形態にかかる運転計画作成装置1の処理手順と同じである。
【0067】
第2実施形態にかかる演算部10の調整コスト定義部11は、第1実施形態にかかる運転計画作成装置1の第1のコスト関数f1(p)、第2のコスト関数f2(p)に代替し、(式10)に示すコスト関数f1(p)を第1のコストとして、(式11)に示すコスト関数f2(p)を第2のコストとして演算を行う。
【0068】
第1のコストにかかる(式10)に示すコスト関数f1(p)は区分線形関数により表される。第2のコストにかかる(式11)に示すコスト関数f2(p)は区分線形関数により表される。(式10)、(式11)は、(式12)に示す制約式に従う。
【数6】
【0069】
f1(p)の基準値をf1(p
it
bs)、f2(p)の基準値をf2(p
it
bs)とし、上記の(式11)は(式13)に、(式12)は(式14)のように表される。また、制約式(式12)は、(式15)のように表される。
【数7】
【0070】
上記の(式13)、(式14)、(式15)に基づき、目的関数は、(式16)に示すものとなる。
【数8】
【0071】
調整コスト定義部11は、(式10)に示すコスト関数f1(p)を第1のコストとして、(式11)に示すコスト関数f2(p)を第2のコストとして、調整コストに関する(式13)、(式14)、(式15)を算出する演算を行う。
【0072】
問題生成部12は、上記のように最適化計算における目的関数(式16)の生成を行い、格納部30の問題データ格納部31に格納し記憶させる。
【0073】
演算部10の計画作成部13は、数理最適化計算等の手法を用いて制約式を満たす解を算出し、発電出力の計画を作成する。演算部10の計画作成部13は、目的関数(式16)が最小となる解を算出する。
【0074】
演算部10の計画作成部13は、発電機毎の発電出力の計画を作成し、格納部30の計画データ格納部32に格納し記憶させる。格納部30の計画データ格納部32はデータベースとされる。
【0075】
演算部10は、送信部50を介し、計画作成部13により作成された発電機の運転計画を出力する。送信部50は、送信電文、外部メモリへの送信信号、または表示、プリンタ等により発電機の運転計画を出力する。または、演算部10は、送信部50を介し、計画作成部13により作成された発電機の運転計画に基づいた制御信号を、直接発電機に送信するようにしてもよい。
【0076】
以上が、本実施形態にかかる運転計画作成装置1の構成および動作である。
【0077】
[2-2.効果]
本実施形態によれば、複数のコスト関数データ25は、横軸を出力、縦軸をコストとした場合に区分線形関数で表され、区分線形関数の傾きは、単調増加であるので、出力される発電電力に応じ複数の料金が設定された多様な料金体系に対応した発電計画を作成する運転計画作成装置を提供することができる。区分線形関数で表したコスト関数データを、横軸を出力、縦軸をコストの出力に対する微分値に変形した場合、その特性はある出力幅における発電単価(例えば、単位は円/kWh)として表すことができる。
【0078】
コスト関数が1次関数よりも次数が大きい2次関数などの複雑な関数であるとき、数理最適化計算によって解くことは、困難であった。本実施形態によれば、区分線形化した各区分の傾きが単調増加である場合において、上記のコスト関数と制約式により演算が行われるので、運転計画作成装置1は、数理最適化計算により演算を行うことができる。その結果、基準値と複数のコスト関数から演算される複数の調整コストにより、複数の発電機に対し、調整コストを最小化する運転を指令することができる。
【0079】
[3.第3実施形態]
[3-1.構成および作用]
第3実施形態にかかる運転計画作成装置1について説明する。第3実施形態にかかる運転計画作成装置1は、調整コスト定義部11で生成されるコスト関数が、第2実施形態にかかる運転計画作成装置1と異なる。第3実施形態にかかる運転計画作成装置1のコスト関数は、区分線形関数で表される。第3実施形態にかかる運転計画作成装置1の構成は、
図1に示す第1実施形態にかかる運転計画作成装置1の構成と同じである。また、第3実施形態にかかる運転計画作成装置1の処理手順は、
図2に示す第1実施形態にかかる運転計画作成装置1の処理手順と同じである。
【0080】
第3実施形態にかかる演算部10の調整コスト定義部11は、第2実施形態にかかる(式15)に加え(式17)に示す制約式に従い、(式13)に示す第1のコスト関数f1(p)、(式14)に示す第2のコスト関数f2(p)に基づき演算を行う。
【0081】
第2実施形態にかかるコスト関数f1(p)、コスト関数f2(p)は、区分線形関数の各線分の傾きが単調増加である。このため、ある区分において傾きが減少する場合、数理最適化計算で解けないという問題点があった。この問題を解決するために、第3実施形態にかかる演算部10の調整コスト定義部11は、(式15)に加え(式17)に示す制約式に従い、(式13)に示す第1のコスト関数f1(p)、(式14)に示す第2のコスト関数f2(p)に基づき演算を行う。
【0082】
第1のコストにかかる(式13)に示すコスト関数f1(p)は区分線形関数により表される。第2のコストにかかる(式14)に示すコスト関数f2(p)は区分線形関数により表される。(式13)、(式14)は、(式15)、(式17)に示す制約式に従う。
【0083】
0または1の値を取る変数x
i,kを用い、追加する制約式(式17)は、以下のように表される。
【数9】
【0084】
目的関数は、(式16)に示すものであり、(式15)、(式17)に示す制約式に従う。
【0085】
調整コスト定義部11は、(式10)に示すコスト関数f1(p)を第1のコストとして、(式11)に示すコスト関数f2(p)を第2のコストとして、調整コストに関する(式13)、(式14)、(式15)、(式17)を算出する演算を行う。
【0086】
問題生成部12は、上記のように最適化計算における目的関数(式16)の生成を行い、格納部30の問題データ格納部31に格納し記憶させる。目的関数(式16)は、制約式(式15)、(式17)に従う。
【0087】
演算部10の計画作成部13は、数理最適化計算等の手法を用いて制約式を満たす解を算出し、発電出力の計画を作成する。演算部10の計画作成部13は、目的関数(式16)が最小となる解を算出する。
【0088】
演算部10の計画作成部13は、発電機毎の発電出力の計画を作成し、格納部30の計画データ格納部32に格納し記憶させる。格納部30の計画データ格納部32はデータベースとされる。
【0089】
演算部10は、送信部50を介し、計画作成部13により作成された発電機の運転計画を出力する。送信部50は、送信電文、外部メモリへの送信信号、または表示、プリントアウト等により発電機の運転計画を出力する。または、演算部10は、送信部50を介し、計画作成部13により作成された発電機の運転計画に基づいた制御信号を、直接発電機に送信するようにしてもよい。
【0090】
以上が、本実施形態にかかる運転計画作成装置1の構成および動作である。
【0091】
[3-2.効果]
本実施形態によれば、複数のコスト関数データ25は、基準値データ26により区切られた電力の量に対応して複数設定され、調整コスト定義部11は、複数のコスト関数データ25に基づき、調整コストを定義するので、複数の単価が設定された複数の発電機に対して、数理計画問題を解くことにより複数の発電機の運転計画を作成することができる運転計画作成装置1を提供することができる。
【0092】
本実施形態によれば、出力される発電電力に応じ複数の料金が設定された、多様な料金体系に対応した発電計画を作成する運転計画作成装置1を提供することができる。
【0093】
本実施形態によれば、区分線形化した各区分の傾きによらず、上記のコスト関数と制約式により演算が行われるので、運転計画作成装置1は、数理最適化計算により演算を行うことができる。その結果、基準値と複数のコスト関数から演算される複数の調整コストにより、複数の発電機に対し、調整コストを最小化する運転を指令することができる。
【0094】
[4.第4実施形態]
[4-1.構成および作用]
第4実施形態にかかる運転計画作成装置1について説明する。第4実施形態にかかる運転計画作成装置1は、調整コスト定義部11で生成されるコスト関数が、第1実施形態~第3実施形態にかかる運転計画作成装置1と異なる。
【0095】
第4実施形態にかかる運転計画作成装置1のコスト関数は、区分線形関数で表される。調整コスト定義部11は、変数を有する項と変数を有する項が乗算された項を、変数を有する項と定数項が乗算された項に置き換えた区分線形関数に基づき、コスト関数の生成を行う。問題生成部12は、調整コスト定義部11により生成されたコスト関数に基づき、混合整数線形計画問題に変形し目的関数を生成する。
【0096】
第4実施形態にかかる運転計画作成装置1の構成は、
図1に示す第1実施形態にかかる運転計画作成装置1の構成と同じである。また、第4実施形態にかかる運転計画作成装置1の処理手順は、
図2に示す第1実施形態にかかる運転計画作成装置1の処理手順と同じである。
【0097】
問題生成部12は、目的関数(式16)を、(式19)に基づき(式18)に変形する。問題生成部12は、さらに制約式(式20)、(式21)、(式22)に基づき、二次相当の目的関数(式18)を混合整数線形計画問題に式変形し、数理最適化計算によって最適解の算出を行う。
【数10】
【0098】
(式18)左辺に(式19)を代入することにより、(式18)右辺を得る。問題生成部12は、(式18)右辺、および制約式(式20)、(式21)、(式22)に基づき、目的関数(式18)が最小となる最適解の算出を行う。(式18)左辺は、変数を有する項と変数を有する項とが乗算された項を含み構成されているが、(式18)右辺は、変数を有する項と定数項とが乗算された項により構成される。
【数11】
【数12】
【0099】
調整コスト定義部11は、区分線形関数を切り分ける整数変数と連続変数の積を所定の変数に置き換え、コスト関数の生成を行う。調整コスト定義部11は、(式10)に示すコスト関数f1(p)を第1のコストとして、(式11)に示すコスト関数f2(p)を第2のコストとして、調整コストに関する(式13)、(式14)、(式15)、(式17)を算出する演算を行う。
【0100】
問題生成部12は、調整コスト定義部11により生成されたコスト関数に基づき、混合整数線形計画問題に変形し目的関数を生成する。問題生成部12は、上記のように最適化計算における目的関数(式18)の生成を行い、格納部30の問題データ格納部31に格納し記憶させる。目的関数(式18)は、制約式(式15)、(式17)および制約式(式20)、(式21)、(式22)に従う。
【0101】
演算部10の計画作成部13は、数理最適化計算等の手法を用いて制約式を満たす解を算出し、発電出力の計画を作成する。演算部10の計画作成部13は、目的関数(式18)が最小となる解を算出する。
【0102】
演算部10の計画作成部13は、発電機毎の発電出力の計画を作成し、格納部30の計画データ格納部32に格納し記憶させる。格納部30の計画データ格納部32はデータベースとされる。
【0103】
演算部10は、送信部50を介し、計画作成部13により作成された発電機の運転計画を出力する。送信部50は、送信電文、外部メモリへの送信信号、または表示、プリントアウト等により発電機の運転計画を出力する。または、演算部10は、送信部50を介し、計画作成部13により作成された発電機の運転計画に基づいた制御信号を、直接発電機に送信するようにしてもよい。
【0104】
以上が、本実施形態にかかる運転計画作成装置1の構成および動作である。
【0105】
[4-2.効果]
本実施形態によれば、複数のコスト関数データ25は、区分線形関数で表され、調整コスト定義部11は、変数を有する項と変数を有する項が乗算された項を、変数を有する項と定数項が乗算された項に置き換えた区分線形関数に基づき、調整コストとしてコスト関数の生成を行い、問題生成部12は、調整コスト定義部11により生成されたコスト関数に基づき、混合整数線形計画問題に変形し目的関数を生成するので、複数の単価が設定された複数の発電機に対して、数理計画問題を解くことにより複数の発電機の運転計画を作成することができる運転計画作成装置1を提供することができる。
【0106】
本実施形態によれば、出力される発電電力に応じ複数の料金が設定された、多様な料金体系に対応した発電計画を作成する運転計画作成装置1を提供することができる。
【0107】
本実施形態によれば、基準値と複数のコスト関数から演算される調整コストにより、複数の発電機に対し、調整コストを最小化する運転を指令することができる。
【0108】
本実施形態によれば、目的関数が簡素な形となるため、目的関数の拡張性がより向上され、演算のより高速化を図ることができる。
【0109】
[5.第5実施形態]
[5-1.構成および作用]
第5実施形態にかかる運転計画作成装置1について説明する。第5実施形態にかかる運転計画作成装置1は、調整コスト定義部11で生成されるコスト関数が、第1実施形態~第4実施形態にかかる運転計画作成装置1と異なる。
【0110】
第1実施形態~第4実施形態にかかる運転計画作成装置1は、発電出力に対するコストをコスト関数として算出するものとしたが、第5実施形態にかかる運転計画作成装置1の調整コスト定義部11は、所定時間における発電出力の平均値に対するコストをコスト関数として算出する。問題生成部12は、調整コスト定義部11により生成されたコスト関数に基づき、目的関数を生成する。
【0111】
第4実施形態にかかる運転計画作成装置1の構成は、
図1に示す第1実施形態にかかる運転計画作成装置1の構成と同じである。また、第4実施形態にかかる運転計画作成装置1の処理手順は、
図2に示す第1実施形態にかかる運転計画作成装置1の処理手順と同じである。
【0112】
調整コスト定義部11は、(式23)に基づき所定時間における発電出力の平均値に対するコストをコスト関数として算出する。
【数13】
【0113】
例えば、精算時間が30分であり、5分刻みの発電機スケジュールを算出する場合、精算時間の平均値により、最もコストが低くなるように30分のスケジュールを算出することが好ましい。ある精算時間における平均出力pi,tc
aveは、(式23)により表される。tcは、30分刻みの時間のステップ、tは、5分刻みの時間のステップである。
【0114】
問題生成部12は、調整コスト定義部11により生成されたコスト関数に基づき、目的関数を生成する。問題生成部12は、目的関数(式2)、(式16)、または(式18)を、(式23)に基づき変形する。問題生成部12は、さらに制約式(式3)~(式9)、(式15)、(式17)、または(式20)~(式22)を(式23)に基づき変形する。
【0115】
問題生成部12は、(式23)に基づき変形された目的関数(式2)、(式16)、または(式18)が最小となる最適解の算出を行う。問題生成部12は、上記のように最適化計算における目的関数の生成を行い、格納部30の問題データ格納部31に格納し記憶させる。(式23)に基づき変形された目的関数(式2)、(式16)、または(式18)は、(式23)に基づき変形された制約式(式3)~(式9)、(式15)、(式17)、または(式20)~(式22)に従う。
【0116】
演算部10の計画作成部13は、数理最適化計算等の手法を用いて制約式を満たす解を算出し、発電出力の計画を作成する。演算部10の計画作成部13は、(式23)に基づき変形された目的関数(式2)、(式16)、または(式18)が最小となる解を算出する。
【0117】
演算部10の計画作成部13は、発電機毎の発電出力の計画を作成し、格納部30の計画データ格納部32に格納し記憶させる。格納部30の計画データ格納部32はデータベースとされる。
【0118】
演算部10は、送信部50を介し、計画作成部13により作成された発電機の運転計画を出力する。送信部50は、送信電文、外部メモリへの送信信号、または表示、プリントアウト等により発電機の運転計画を出力する。または、演算部10は、送信部50を介し、計画作成部13により作成された発電機の運転計画に基づいた制御信号を、直接発電機に送信するようにしてもよい。
【0119】
以上が、本実施形態にかかる運転計画作成装置1の構成および動作である。
【0120】
[5-2.効果]
本実施形態によれば、調整コスト定義部11は、所定時間における発電出力の平均値に対するコストを調整コストとしてコスト関数の生成を行い、問題生成部12は、調整コスト定義部11により生成されたコスト関数に基づき、目的関数を生成するので、複数の単価が設定された複数の発電機に対して、数理計画問題を解くことにより複数の発電機の運転計画を作成することができる運転計画作成装置1を提供することができる。
【0121】
本実施形態によれば、出力される発電電力に応じ複数の料金が設定された、多様な料金体系に対応した発電計画を作成する運転計画作成装置1を提供することができる。
【0122】
本実施形態によれば、精算の単位時間が、発電出力の運転スケジュールを算出する単位時間と異なる場合においても、最適な運転計画を作成することができる。例えば、発電出力の運転スケジュールを算出する単位時間を5分、精算の単位時間を30分とすることにより、5分ごとに需給一致等の制約を満たす発電出力を算出し、30分ごとに精算される金額を最小化することができる。
【0123】
[6.他の実施形態]
変形例を含めた実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下は、その一例である。
【0124】
(1)上記実施形態では、需要予測データ21、発電予測データ22、系統データ23、発電機データ24、コスト関数データ25、基準値データ26が、記憶部20に予め設定され記憶されるものとしたが、予め設定され記憶されるデータはこれに限られない。需要予測データ21、発電予測データ22、系統データ23、発電機データ24、コスト関数データ25、基準値データ26の一部のデータ、またはこれらに加えて任意のデータが記憶部20に予め設定され記憶されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0125】
1・・・運転計画作成装置
10・・・演算部
11・・・調整コスト定義部
12・・・問題生成部
13・・・計画作成部
20・・・記憶部
21・・・需要予測データ
22・・・発電予測データ
23・・・系統データ
24・・・発電機データ
25・・・コスト関数データ
26・・・基準値データ
30・・・格納部
31・・・問題データ格納部
32・・・計画データ格納部
40・・・受信部
50・・・送信部