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特開2023-164329X線CT装置、X線CT装置の信号伝送方法、及び記憶媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164329
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】X線CT装置、X線CT装置の信号伝送方法、及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
A61B6/03 340A
A61B6/03 321A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023068366
(22)【出願日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】202210462283.6
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポン フェイユー
(72)【発明者】
【氏名】チー シウシウ
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA27
4C093CA35
4C093EC44
4C093FA34
4C093FA44
4C093FA55
4C093FH06
4C093GA05
(57)【要約】
【課題】データ伝送の安定性、高速データ伝送を実現すること。
【解決手段】本実施形態に係るX線CT装置は、回転部と、固定部と、スリップリングと、パラメータ決定部と、信号伝送制御部と、を備える。前記回転部は、X線管と検出器とを搭載して回転する。前記固定部は、前記回転部を支持する。前記スリップリングは、前記回転部と前記固定部との間で電力伝送及び電力線通信による通信信号の伝送を行う。前記パラメータ決定部は、前記通信信号が送信された時刻の前記回転部の回転角度に基づいて、前記通信信号に応じた通信チャンネル推定パラメータを決定する。前記信号伝送制御部は、前記通信チャンネル推定パラメータを用いて前記通信信号の変調・復調を行い、前記通信信号の伝送を行うように制御する。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線管と検出器とを搭載して回転する回転部と、
前記回転部を支持する固定部と、
前記回転部と前記固定部との間で電力伝送及び電力線通信による通信信号の伝送を行うスリップリングと、
前記通信信号が送信された時刻の前記回転部の回転角度に基づいて、前記通信信号に応じた通信チャンネル推定パラメータを決定するパラメータ決定部と、
前記通信チャンネル推定パラメータを用いて前記通信信号の変調・復調を行い、前記通信信号の伝送を行うように制御する信号伝送制御部と、
を備えるX線CT装置。
【請求項2】
前記パラメータ決定部は、前記通信信号が送信された時刻の前記回転部の回転速度及び前記回転角度に基づいて、前記通信チャンネル推定パラメータを決定する、
請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項3】
前記パラメータ決定部は、前記回転速度及び前記回転角度から、チャンネル推定データモデルに基づいて、前記通信チャンネル推定パラメータを決定する、
請求項2に記載のX線CT装置。
【請求項4】
参照信号を用いることによって、前記チャンネル推定データモデルを取得するモデル取得部、
をさらに備える請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項5】
前記モデル取得部は、信号の送信側で前記通信信号に対して前記参照信号を挿入し、受信側で前記参照信号を抽出し、チャンネル推定演算を行ってチャンネルパラメータを収集し、収集した前記チャンネルパラメータに基づいて前記チャンネル推定データモデルを取得する、
請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項6】
前記モデル取得部は、信号の送信側で前記参照信号を送信し、受信側で前記参照信号を抽出し、チャンネル推定演算を行ってチャンネルパラメータを収集し、収集した前記チャンネルパラメータに基づいて前記チャンネル推定データモデルを取得する、
請求項4に記載のX線CT装置。
【請求項7】
前記X線CT装置に対して複数の回転速度が設定されている場合、前記モデル取得部は、前記複数の回転速度のそれぞれについて、所定の回転角度だけ離間した所定位置毎に前記チャンネルパラメータを収集する、
請求項5または6に記載のX線CT装置。
【請求項8】
前記モデル取得部は、前記複数の回転速度のそれぞれに対し、前記所定位置毎に所定回数以上の前記チャンネルパラメータを収集する、
請求項7に記載のX線CT装置。
【請求項9】
前記チャンネルパラメータの収集は、前記固定部から前記回転部へのチャンネルパラメータの収集と、前記回転部から前記固定部へのチャンネルパラメータの収集とを含む、
請求項5または6に記載のX線CT装置。
【請求項10】
前記チャンネル推定データモデルは、前記X線CT装置の出荷前に構築され、出荷後に定期的に更新される、
請求項3に記載のX線CT装置。
【請求項11】
前記固定部に設けられ、前記固定部から前記回転部へ通信信号の伝送を行う際に、前記回転角度を検出するロータリーエンコーダ、
をさらに備える請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項12】
前記回転部から前記固定部へ通信信号の伝送を行う際に、前記回転角度を測定する測定部、
をさらに備える請求項1に記載のX線CT装置。
【請求項13】
前記測定部は、ジャイロスコープと加速度計の組み合わせ、2軸傾斜角センサ、またはエンコーダのいずれかである、
請求項12に記載のX線CT装置。
【請求項14】
X線管と検出器とを搭載して回転する回転部と、前記回転部を支持する固定部と、前記回転部と前記固定部との間で電力伝送及び電力線通信による通信信号の伝送を行うスリップリングと、を備えるX線CT装置の信号伝送方法において、
前記通信信号が送信された時刻の前記回転部の回転角度に基づいて、前記通信信号に応じた通信チャンネル推定パラメータを決定するパラメータ決定ステップと、
前記通信チャンネル推定パラメータを用いて前記通信信号の変調・復調を行い、前記通信信号の伝送を行うように制御する信号伝送制御ステップと、
を含むX線CT装置の信号伝送方法。
【請求項15】
X線管と検出器とを搭載して回転する回転部と、前記回転部を支持する固定部と、前記回転部と前記固定部との間で電力伝送及び電力線通信による通信信号の伝送を行うスリップリングと、を備えるX線CT装置に搭載されたコンピュータに、
前記通信信号が送信された時刻の前記回転部の回転角度に基づいて、前記通信信号に応じた通信チャンネル推定パラメータを決定するパラメータ決定処理と、
前記通信チャンネル推定パラメータを用いて前記通信信号の変調・復調を行い、前記通信信号の伝送を行うように制御する信号伝送制御処理と、
を実行させるプログラムがコンピュータ読み取り可能に記憶された記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線CT(Computed Tomography)装置、X線CT装置の信号伝送方法、及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、医療器械には回転しながら電力と信号を伝送する構造が必要であるシステムが多くある。このようなシステムでは、スリップリングが不可欠である。スリップリングは、連続的に回転することが要求されるとともに、固定位置から回転位置への電力及び信号の伝送することが可能な部材である。CTシステムにおいて、大電力電流、通信信号及び高速映像デジタル信号を確実に伝送する必要があるため、スリップリングの技術の複雑さ及び難度に対する要求が高い。一般的に、医療システムにおけるスリップリングは、電流の大きさ、回転速度の速さ、占有スペースの大きさなどの点でいずれも要求される。
【0003】
X線CT装置では、例えば、スリップリングをPLC通信媒体として利用し、固定部と回転部との通信を実現することができる。PLC通信とは、電力線通信(Power Line Communication)である。電力線通信とは電力線を利用し、搬送波方式でアナログ又はデジタル信号を高速に伝送する技術である。
【0004】
PLCのキャリア周波数は2MHZ~80MHZの間にあり、それは主にOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing、直交周波数分割多重)技術を用いて通信を実現する。OFDM技術とは、データストリームをいくつかの独立した低速ビットストリームに分割し、周波数領域では複数のサブキャリアに分割し、次に並列に送信することである。OFDM技術における各サブキャリアは一つの周波数情報に対応し、すなわちキャリア伝送の品質が通信品質に影響を与える。
【0005】
X線CT装置では、信号送信側と信号受信側の位置がスリップリングに対して固定されているため、架台装置の回転部が回転すると、スリップリングによるチャンネルのパラメータが時刻毎に異なり、スリップリングによるチャンネルが時変チャンネルとなる。そこで、架台装置の回転部が高速に回転する場合、スリップリングは高速時変チャンネルになる。この場合、各時刻のチャンネルパラメータが異なるが、いずれの時刻のチャンネルにもノイズ、マルチパス効果及びインピーダンス不整合の影響があり、かついずれの時刻もリアルタイムの回転角度θに対応し、各時刻に対応する回転角度θは現在のX線CT装置の回転速度により決定される。マルチパス効果は、スリップリングのサイズがキャリア波長に相当することに起因する。インピーダンス不整合は、スリップリングの各接続点に反射が存在することにより発生する。ノイズ影響の大きさは、X線CT装置が位置する環境状況に依存する。このように、多くの干渉が存在する時にチャンネルが伝送速度を大幅に低下させる。
【0006】
現在、チャンネルを推定する既知のアルゴリズムとして、リアルタイムに適応するチャンネル推定(Adaptive channel estimation)アルゴリズムが存在するが、X線CT装置における時変チャンネルという特性に対しては適用することができない。例えば、既知のチャンネル推定アルゴリズムをX線CT装置で利用する場合、データ伝送が不安定にある。具体的には、送信側で信号を変調して送信する際、当該信号の送信時刻t1のチャンネル推定パラメータを利用して当該信号の変調を行う。しかし、架台装置の回転部が高速回転するため、信号の伝送時刻t2において実際に経過したチャンネルは、時刻t1のチャンネルに対して変化する。具体的には、架台装置の回転部が高速回転する時、時刻t1及び時刻t2に対応するチャンネル推定パラメータが異なる。このため、送信側から送信された信号が、時刻t2にチャンネルを介して伝送された後、受信側が信号を得たときに、受信側で時刻t2のチャンネル推定パラメータを利用して当該信号の復調を行うことになる。したがって、受信側で信号を復調したときの精度が大幅に低下し、既知のチャンネル推定アルゴリズムに基づくチャンネル推定は、チャンネルの時間に伴って変化する速度に常に追従できないため、データ伝送が不安定になり、伝送速度が大幅に低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-145620号公報
【特許文献2】特開2004-202201号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、データ伝送の安定性、高速データ伝送を実現することである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決される課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本実施形態に係るX線CT装置は、回転部と、固定部と、スリップリングと、パラメータ決定部と、信号伝送制御部と、を備える。前記回転部は、X線管と検出器とを搭載して回転する。前記固定部は、前記回転部を支持する。前記スリップリングは、前記回転部と前記固定部との間で電力伝送及び電力線通信による通信信号の伝送を行う。前記パラメータ決定部は、前記通信信号が送信された時刻の前記回転部の回転角度に基づいて、前記通信信号に応じた通信チャンネル推定パラメータを決定する。前記信号伝送制御部は、前記通信チャンネル推定パラメータを用いて前記通信信号の変調・復調を行い、前記通信信号の伝送を行うように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A図1Aは、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示す図である。
図1B図1Bは、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成の一例を示す図である。
図2A図2Aは、第1の実施形態に係るX線CT装置のデータ伝送の手順を説明するための模式図である。
図2B図2Bは、比較例のX線CT装置のデータ伝送の手順を説明するための模式図である。
図3図3は、第2の実施形態に係るX線CT装置の構成を示す図である。
図4図4は、本実施形態のチャンネルパラメータの推定を行う方法の一例を説明するための模式図である。
図5図5は、本実施形態のチャンネルパラメータの推定を行う方法の別の一例を説明するための模式図である。
図6図6は、チャンネル推定データモデルの取得手順を説明するための模式図である。
図7図7は、回転角度の取得を説明するための実施例1の模式図である。
図8図8は、回転角度の取得を説明するための実施例2の模式図である。
図9図9は、回転角度の取得を説明するための実施例3の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本実施形態に係るX線CT装置、X線CT装置の信号伝送方法、及び記憶媒体について説明する。
【0012】
なお、本明細書及び図面において、同一又は類似の機能を有する部材には、同一の符号を付することにより重複説明を適宜省略する。
【0013】
(第1の実施形態)
図1A図1Bは、第1の実施形態に係るX線CT装置1の構成の一例を示す図である。
【0014】
X線CT装置1は、被検体のCT画像データを収集する。具体的には、X線CT装置1は、被検体を略中心にX線管及びX線検出器を旋回移動させ、被検体を透過したX線を検出して投影データを収集する。そして、X線CT装置1は、収集した投影データに基づいて、CT画像データを生成する。図1Aに示すように、X線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。
【0015】
なお、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向とする。また、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とする。なお、図1Aは、説明のために架台装置10を複数方向から描画したものであり、X線CT装置1が架台装置10を1つ有する場合を示す。
【0016】
架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、コリメータ17と、データ収集システム(Data Acquisition System:DAS)18と、固定フレーム19とを有する。
【0017】
X線管11は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することで、被検体Pに対し照射するX線を発生する。例えば、X線管11には、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管がある。
【0018】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16は、ウェッジフィルタ(wedge filter)やボウタイフィルタ(bow-tie filter)であり、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウム等を加工したフィルタである。
【0019】
コリメータ17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等であり、複数の鉛板等の組み合わせによってスリットを形成する。なお、コリメータ17は、X線絞りと呼ばれる場合もある。また、図1Aにおいては、X線管11とコリメータ17との間にウェッジ16が配置される場合を示すが、X線管11とウェッジ16との間にコリメータ17が配置される場合であってもよい。この場合、ウェッジ16は、X線管11から照射され、コリメータ17により照射範囲が制限されたX線を透過して減衰させる。
【0020】
X線検出器12は、X線を検出する検出素子を複数有する。X線検出器12における各検出素子は、X線管11から照射されて被検体Pを通過したX線を検出し、検出したX線量に対応した信号をDAS18へと出力する。X線検出器12は、例えば、X線管11の焦点を中心とした1つの円弧に沿ってチャンネル方向(チャネル方向)に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。X線検出器12は、例えば、チャンネル方向に複数の検出素子が配列された検出素子列が列方向(スライス方向、row方向)に複数配列された構造を有する。
【0021】
例えば、X線検出器12は、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接変換型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。シンチレータは入射X線量に応じた光子量の光を出力するシンチレータ結晶を有する。グリッドは、シンチレータアレイのX線入射側の面に配置され、散乱X線を吸収するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドはコリメータ(1次元コリメータ又は2次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、シンチレータからの光量に応じた電気信号に変換する機能を有し、例えば、フォトダイオード等の光センサを有する。なお、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であっても構わない。
【0022】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する高電圧発生装置と、X線管11が発生するX線に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。なお、X線高電圧装置14は、回転フレーム13に設けられてもよいし、固定フレーム19に設けられても構わない。ここで、固定フレーム19は、回転フレーム13を回転可能に支持するフレームであり、回転フレーム13を回転させるための回転機構を有する。
【0023】
DAS18は、X線検出器12が有する各検出素子によって検出されるX線の信号を収集する。例えば、DAS18は、各検出素子から出力される電気信号に対して増幅処理を行う増幅器と、電気信号をデジタル信号に変換するA/D変換器とを有し、検出データを生成する。DAS18は、例えば、プロセッサにより実現される。
【0024】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを対向支持し、制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる円環状のフレームである。例えば、回転フレーム13は、アルミニウムを材料とした鋳物である。なお、回転フレーム13は、X線管11及びX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14やウェッジ16、コリメータ17、DAS18等を更に支持することもできる。更に、回転フレーム13は、図1Aにおいて図示しない種々の構成を更に支持することもできる。
【0025】
回転フレーム13、及び、架台装置10の非回転部分である固定フレーム19には、それぞれ、後述の通信ユニットが設けられている。例えば、DAS18が生成したデータ(収集したX線の信号)は、回転フレーム13に設けられた通信ユニットから、無線通信によって、固定フレーム19に設けられた通信ユニットに送信され、コンソール装置40へ転送される。また、例えば、コンソール装置40が送信した回転フレーム13に対する制御信号は、固定フレーム19に設けられた通信ユニットから、無線通信によって、回転フレーム13に設けられた通信ユニットに送信される。
【0026】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う。例えば、制御装置15は、回転フレーム13の回転や架台装置10のチルト、寝台装置30及び天板33の動作等について制御を行う。一例を挙げると、制御装置15は、架台装置10をチルトさせる制御として、入力された傾斜角度(チルト角度)情報により、X軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させる。なお、制御装置15は架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0027】
寝台装置30は、撮影対象の被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を、天板33の長軸方向に移動する駆動機構であり、モータ及びアクチュエータ等を含む。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0028】
コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。なお、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の各構成要素の一部が含まれてもよい。
【0029】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、投影データやCT画像データを記憶する。また、例えば、メモリ41は、X線CT装置1に含まれる回路がその機能を実現するためのプログラムを記憶する。なお、メモリ41は、X線CT装置1とネットワークを介して接続されたサーバ群(クラウド)により実現されることとしてもよい。
【0030】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された各種の画像を表示したり、操作者から各種の操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)を表示したりする。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。なお、ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。また、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。
【0031】
入力インターフェース43は、操作者から各種の入力操作を受け付けて、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、CT画像データを再構成する際の再構成条件や、CT画像データから後処理画像を生成する際の画像処理条件等の入力操作を操作者から受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、操作面へ触れることで入力操作を行うタッチパッド、表示画面とタッチパッドとが一体化されたタッチスクリーン、光学センサを用いた非接触入力回路、音声入力回路等により実現される。なお、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されることにしても構わない。また、入力インターフェース43は、マウスやキーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、コンソール装置40とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を処理回路44へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェース43の例に含まれる。
【0032】
処理回路44は、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、システム制御機能440、スキャン制御機能441、前処理機能442、再構成処理機能443、及び、表示制御機能444を実行する。
【0033】
システム制御機能440は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、処理回路44の各種機能を制御する。
【0034】
スキャン制御機能441は、当該被検体Pに対してX線を利用したスキャンを実行する。例えば、スキャン制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、スキャンを制御する。具体的には、スキャン制御機能441は、入力操作に基づいて、X線高電圧装置14に制御信号を送信することで、高電圧発生装置からの出力電圧を制御する。また、スキャン制御機能441は、DAS18に制御信号を送信することで、DAS18によるデータ収集を制御する。
【0035】
前処理機能442は、DAS18から送信されたX線検出データに対して前処理を行うことで、前処理を施したデータを生成する。具体的には、前処理機能442は、対数変換処理や、オフセット補正、感度補正、ビームハードニング補正等の補正処理を行なうことで、前処理を施したデータを生成する。なお、前処理前のデータ(X線検出データ)及び前処理後のデータを総称して、投影データと称する場合もある。
【0036】
再構成処理機能443は、前処理機能442により生成された投影データを種々の再構成法(例えば、FBP(Filtered Back Projection)などの逆投影法や、逐次近似法など)によって再構成することでCT画像データを生成する。また、再構成処理機能443は、生成したCT画像データをメモリ41に格納する。
【0037】
表示制御機能444は、処理回路44によって生成された各種の画像をディスプレイ42に表示させる。例えば、表示制御機能444は、再構成処理機能443によって生成されたCT画像データをディスプレイ42に表示させる。
【0038】
図1Aに示すX線CT装置1においては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41へ記憶されている。処理回路44は、メモリ41からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能を実現するプロセッサである。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、読み出したプログラムに対応する機能を有することとなる。
【0039】
上記説明において用いた「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)等の回路を意味する。また、「プロセッサ」という文言は、プログラマブル論理デバイス等の回路を意味する。プログラマブル論理デバイスとして、例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)が挙げられる。また、プログラマブル論理デバイスとして、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))が挙げられる。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサはメモリ41に保存されたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。一方、プロセッサが例えばASICである場合、メモリ41にプログラムを保存する代わりに、プロセッサの回路内にプログラムが直接組み込まれる。なお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成し、その機能を実現するようにしてもよい。さらに、図1Aにおける複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合してその機能を実現するようにしてもよい。
【0040】
図1Bに示すように、第1の実施形態に係るX線CT装置1は、回転部101と、固定部102と、スリップリング103と、回転部101に設けられた通信ユニットと、固定部102に設けられた通信ユニットとを備える。図1Bに示す回転部101、固定部102は、それぞれ、図1Aに示す回転フレーム13、固定フレーム19に相当する。
【0041】
ここで、回転部101に設けられた通信ユニットを「通信ユニットPLC1」と記載し、固定部102に設けられた通信ユニットを「通信ユニットPLC2」と記載する。通信ユニットPLC1及び通信ユニットPLC2は、それぞれ、パラメータ決定部104と、信号伝送制御部110とを備える。
【0042】
なお、本実施形態では、通信ユニットPLC1、PLC2がそれぞれ備えるパラメータ決定部及び信号伝送制御部を区別せずに同一の符号を付している。また、本実施形態では、回転部101から固定部102へ信号が伝送される場合を例に詳述するので、以下に述べるパラメータ決定部104及び信号伝送制御部110は、回転部101の通信ユニットPLC1が備えるパラメータ決定部104及び信号伝送制御部110を指すものとする。一方、固定部102から回転部101へ信号が伝送される場合であれば、以下に述べるパラメータ決定部104及び信号伝送制御部110に代えて、固定部102の通信ユニットPLC2が備えるパラメータ決定部104及び信号伝送制御部110が用いられる。
【0043】
また、図1Bに示すように、通信ユニットPLC1、PLC2は、処理回路121、メモリ120を備える。処理回路121は、通信ユニット全体の動作を制御する。例えば、処理回路121は、パラメータ決定部104及び信号伝送制御部110を実行する。図1Bに示す通信ユニットにおいては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ120(記憶媒体)へ記憶されている。即ち、通信ユニットは、X線CT装置1に搭載されたコンピュータである。処理回路121は、メモリ120からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能としてパラメータ決定部104及び信号伝送制御部110を実現するプロセッサである。
【0044】
上述のように、図1Bに示す回転部101は、X線管11とX線を受けるX線検出器12とを搭載して回転する。ここで、複数の動作モードとして、X線CT装置1に対して複数の回転速度が設定されているものとする。この場合、回転部101は、制御装置15の制御により、複数の動作モードのうち、選択された動作モードの回転速度で回転する。各モードでは、回転部101の回転速度は一定である。
【0045】
上述のように、図1Bに示す固定部102は、回転部101を支持する。
【0046】
図1Bに示すスリップリング103は、導電性の材料で構成されており、回転部101と固定部102との間の電力伝送及び電力線通信(PLC通信)による通信信号の伝送を行うために用いられる。
【0047】
X線CT装置1における通信信号伝送は双方向通信であり、回転部101から固定部102へ通信信号が伝達される際の通信と、固定部102から回転部101へ通信信号が伝達される際の通信とを含む。X線CT装置1では、信号送信側と信号受信側の位置がスリップリング103に対して固定されているため、回転部101が回転すると、スリップリング103によるチャンネルのパラメータが時刻毎に異なり、スリップリング103によるチャンネルが時変チャンネルとなる。
【0048】
ここで、回転部101から固定部102に通信信号が伝達される際の通信、および、固定部102から回転部101に通信信号が伝達される際の通信では、一般に、通信信号は、送信された後、変調器により変調されてからチャンネルを介して伝送され、チャンネルを通過した後、復調器により復調されてから受信側に受信される。しかし、変調も復調も時間がかかるため、スリップリング103を用いた時変チャンネルによる通信では、信号の送信時刻と信号の伝送時刻とが異なる。
【0049】
パラメータ決定部104は、例えばCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics processing Unit)、MCU(Micro Control Unit)等のプロセッサで構成される。パラメータ決定部104は、通信信号が送信された時刻の回転部101の回転角度に基づいて、通信信号に応じた通信チャンネル推定パラメータを決定する。具体的には、パラメータ決定部104は、通信信号が送信された時刻の回転部101の回転速度、回転角度から、チャンネル推定データモデルに基づいて、通信信号に応じた通信チャンネル推定パラメータを決定する。
【0050】
ここで、チャンネル推定データモデルは、通信信号が回転部101から固定部102へ伝達される際の通信モデルと、通信信号が固定部102から回転部101へ伝達される際の通信モデルとを含む。このチャンネル推定データモデルは、X線CT装置1によるPLC通信に利用され、かつ、通信チャンネル推定パラメータをパラメータ決定部104が決定するために用いられる。具体的には、パラメータ決定部104は、回転速度及び回転角度から、チャンネル推定データモデルに基づいて、通信チャンネル推定パラメータを決定する。ここで、通信チャンネル推定パラメータは、後述の信号伝送制御部110による変調および復調に利用される。
【0051】
チャンネル推定データモデルは、予め作成されて記憶されていてもよいし、X線CT装置1の通信ユニットPLC1、PLC2内の図示しないメモリに予め記憶されていてもよいし、X線CT装置1と通信可能なX線CT装置1以外の機器に記憶されていてもよい。
【0052】
例えば、本実施形態では、チャンネル推定データモデルは、X線CT装置1の出荷前に構築され、出荷後に定期的に更新される。例えば、X線CT装置1で信号の変調と復調を行う際に、対応するチャンネル推定(Channel Estimation)パラメータを送信側の通信ユニットが予め決定するために、X線CT装置1の出荷前に、チャンネル推定データモデルが不揮発性メモリ(Flash、EEPROM、SDカードなど)に格納される。また、X線CT装置1の出荷後は、X線CT装置1の稼動環境や条件等に一定の変化があるため、伝送チャンネルが変化する。このため、X線CT装置1で使用する通信チャンネル推定パラメータのリアルタイム性を確保するために、チャンネル推定データモデルを定期的にメンテナンスして更新する必要がある。
【0053】
また、本実施形態では、出荷前であっても出荷後であっても、チャンネル推定データモデルの初期構築と定期的な更新は、コマンドの送信により実現可能である。すなわち、外部からネットワークを介してX線CT装置1にチャンネル推定データモデル構築コマンドを送信するだけで、当該コマンドに応じて、X線CT装置1は、自動的に現在のチャンネルのデータモデル構築操作を行い、チャンネル推定データモデルの初期構築と定期的な更新を完了する。
【0054】
なお、上述したように、X線CT装置1の回転部101の回転速度は、X線CT装置1のいくつかの固定パターンに応じて決定される。すなわち、X線CT装置1としては、いくつかの一定の回転速度を備えている。
【0055】
なお、X線CT装置1の回転部101の回転角度は、リアルタイムに測定することで取得することができる。回転角度とは、回転部101上のX線管11が基準位置に対して回転した角度であり、回転部101の回転位置を表すことができる。
【0056】
信号伝送制御部110は、例えばCPU、GPU、MCU等のプロセッサで構成される。信号伝送制御部110は、例えば、パラメータ決定部104により決定された通信チャンネル推定パラメータを用いて通信信号の変調・復調を行い、通信信号の伝送を行うように制御する。
【0057】
図2Aは、本実施形態に係るX線CT装置1のデータ伝送の手順を説明するための模式図である。図2Bは、比較例に係るX線CT装置のデータ伝送の手順を説明するための模式図である。
【0058】
まず、図2A及び図2Bに用いられるパラメータについて説明する。
【0059】
図2A及び図2Bにおいて、t1は、送信側の通信ユニットに信号が入力される時刻を表す。t2は、送信側の通信ユニットが信号を伝送する時刻、すなわち入力された信号を変調してから伝送する時刻を表す。θt1は、時刻t1に対応する回転角度を表す。図2A及び図2Bに示すDt1(n)は、時刻t1の入力信号を表し、nはサンプリング数である。図2Bの上段に示す下記式(1)、図2Aの上段に示す下記式(2)は、それぞれ回転速度v、vの場合の時刻t1の通信チャンネル推定パラメータを表す。
【0060】
【数1】

【数2】
【0061】
図2A及び図2Bに示すSt1(n)は、送信側の通信ユニットにより時刻t1に変調された信号を表し、チャンネルの入力信号である。図2Bの中段に示すH(v,θt2)(n)、図2Aの中段に示すH(v,θ)(n)は、それぞれ回転速度v、vの場合の時刻t2の実際のチャンネルである。
【0062】
図2A及び図2Bに示すSt2(n)は、チャンネルの出力信号であり、t3は、受信側の通信ユニットが信号を復調して復調後の信号を得た時刻を表す。図2Bの下段に示す下記式(3)、図2Aの下段に示す式(上記式(2)を参照)は、それぞれ回転速度v、vの場合の時刻t2のチャンネル推定パラメータであり、図2A及び図2Bに示すDt3(n)は、受信側の通信ユニットにより時刻t3に得られた復調後の信号である。
【0063】
【数3】
【0064】
また、図2A及び図2Bは、いずれも回転部101が固定部102に信号を伝送する時に、回転部101に設けられた通信ユニットPLC1が、時刻t1に信号を入力し、変調した後に、時刻t2に信号を伝送し、固定部102に設けられた通信ユニットPLC2が、時刻t3に信号を受信して復調した場合を例としている。また、図2Aに示す例では、回転部101が速度vで回転し、図2Bに示す例では、回転部101が速度vで回転するものとする。また、速度vと速度vは同じであってもよく、異なってもよい。
【0065】
次に、図2Aを用いて、本実施形態に係るX線CT装置1のデータ伝送について説明する。
【0066】
図2Aに示すように、本実施形態に係るX線CT装置1では、回転部101が固定部102に信号を伝送するデータ伝送時において、回転部101に設けられた通信ユニットPLC1は、時刻t1に信号Dt1(n)を変調して変調後の信号St1(n)を送信する。
【0067】
上述のように、複数の動作モードとして、X線CT装置1に対して複数の回転速度が設定されている。そこで、通信ユニットPLC1のパラメータ決定部104は、選択された動作モードとして、現在のX線CT装置1の動作モードに基づいて、回転部101の回転速度v、信号を入力する時刻t1における回転角度θ、信号を伝送する時刻t2における回転角度θを取得することができる。ここで、回転角度θは、センサによりリアルタイムに測定することで取得され、回転角度θは、以下の式(4)で計算することにより取得される。
【0068】
【数4】
【0069】
ここで、ωは、現在の回転速度vに対応する角速度であり、ω=2π/vを満たし、τは変調計算に必要な時間であり、定数であり、τ=t2-t1を満たす。
【0070】
そこで、通信ユニットPLC1のパラメータ決定部104は、チャンネル推定データモデルに基づいて、回転角度θの時刻に対応する通信チャンネル推定パラメータ(上記式(2)を参照)を決定する。
【0071】
さらに、通信ユニットPLC1の信号伝送制御部110は、信号Dt1(n)を送信する時に、通信チャンネル推定パラメータ(上記式(2)を参照)を利用することにより、当該信号を変調し、変調された信号St1(n)を得る。そして、通信ユニットPLC1の信号伝送制御部110は、変調後の信号St1(n)を送信する。
【0072】
その後、信号St1(n)は、時刻t2にチャンネルH(v,θ)(n)を介して伝送された後、固定部102に設けられた通信ユニットPLC2が、信号St2(n)を得る。
【0073】
その後、通信ユニットPLC2の信号伝送制御部110は、通信チャンネル推定パラメータ(上記式(2)を参照)を利用することにより、当該信号St2(n)を復調し、時刻t3で復調された信号Dt3(n)を得る。
【0074】
このように、本実施形態に係るX線CT装置1は、信号が送信された時刻t1のX線CT装置1の回転部101の回転速度v、回転角度θから、チャンネル推定データモデルに基づいて、当該信号に対応する実際の通信チャンネル推定パラメータ(上記式(2)を参照)を決定し、信号を送信する際の変調、及び、信号を受信する際の復調を行う。これにより、本実施形態に係るX線CT装置1では、スリップリング103の時変チャンネルの特性を考慮することで、信号の変調及び復調の際に適用されるチャンネルと実際に伝送する時刻のチャンネルの誤差を低減し、さらに送信信号Dt1(n)と復調により得られた信号Dt3(n)の誤差を低減し、伝送品質を向上させることができる。また、本実施形態に係るX線CT装置1は、信号伝送過程においてチャンネル推定を行うのではなく、事前に確立されたチャンネル推定データモデルを直接応用して通信信号に対応する実際の通信チャンネル推定パラメータを決定し、それにより伝送安定性及び伝送速度を向上させる。また、信号の送信側である回転部101に設けられたパラメータ決定部104及び信号伝送制御部110が、実際に信号が伝送されるチャンネルに類似するように通信チャンネル推定パラメータを決定することによって、伝送品質、伝送安定性及び伝送速度を確実に向上させることができる。
【0075】
次に、図2Bを用いて、比較例に係るX線CT装置のデータ伝送について説明する。
【0076】
図2Bに示すように、比較例のX線CT装置として、回転部101が固定部102に信号を伝送するデータ伝送の場合、回転部101に設けられた通信ユニットPLC1は、時刻t1で信号Dt1(n)を変調して送信する。
【0077】
ここで、通信ユニットPLC1は、既知のチャンネル推定アルゴリズムに基づいて得られる、信号が送信される時刻t1の通信チャンネル推定パラメータを利用することにより、当該信号を変調し、変調された信号St1(n)を得る。そして、通信ユニットPLC1の信号伝送制御部110は、変調後の信号St1(n)を送信する。
【0078】
その後、信号St1(n)は、時刻t2にチャンネルH(v,θt2)(n)を介して伝送された後、固定部102に設けられた通信ユニットPLC2が、信号St2(n)を得る。
【0079】
その後、通信ユニットPLC2は、信号St1(n)が伝送された時刻t2の通信チャンネル推定パラメータ(上記式(3)を参照)を利用することにより、当該信号St2(n)を復調し、時刻t3に復調された信号Dt3(n)を取得する。
【0080】
このように、比較例において、時間変化チャンネルに対して、既知のチャンネル推定アルゴリズムを利用し、送信側で信号変調を行う場合、該信号が送信された時刻t1の通信チャンネル推定パラメータを利用して変調し、かつ時刻t1が回転角度θt1に対応する。回転部が高速回転するため、信号が伝送される時に経過するチャンネルが既に変化し、すなわち伝送時刻t2に対応するチャンネルは、信号が伝送される実際のチャンネルであり、かつ時刻t2も回転角度θt2に対応する。また、時刻t1から時刻t2までの回転距離(回転間隔とも呼ばれる)は、現在の動作モードでX線CT装置の回転速度vにより決定され、架台装置の回転部が高速に回転する時、vが大きい場合、時刻t1及び時刻t2に対応するチャンネル推定パラメータが異なる。このため、送信側から送信された信号St1(n)が、時刻t2にチャンネル(上記式(3)を参照)を介して伝送された後、受信側が信号St2(n)を得たときに、受信側で時刻t2のチャンネル推定パラメータを利用して当該信号St2(n)の復調を行うことになる。したがって、受信側で信号を復調したときの精度が大幅に低下し、既知のチャンネル推定アルゴリズムに基づくチャンネル推定は、チャンネルの時間に伴って変化する速度に常に追従できないため、データ伝送が不安定になり、伝送速度が大幅に低下する。
【0081】
また、上記した説明において、信号が回転部101から固定部102に伝達される場合を例として説明した。信号が固定部102から回転部101に伝達される場合にも、上記過程を適用しかつ同様の技術的効果を得ることができる。相違点としては回転角度θを取得する方法が異なっている。具体的には、本実施形態に係るX線CT装置1は、回転部101に設けられた測定部をさらに備え、回転部101から固定部102へ通信信号の伝送を行う際に、測定部が回転角度θを測定することにより、パラメータ決定部104は回転角度θを取得することができる。測定部については、第3の実施形態にて詳細に説明する。また、本実施形態に係るX線CT装置1は、固定部102に設けられたロータリーエンコーダをさらに備え、固定部102から回転部101へ通信信号の伝送を行う際に、ロータリーエンコーダが回転角度θを検出することにより、パラメータ決定部104は回転角度θを取得することができる。
【0082】
(第2の実施形態)
図3は、第2の実施形態に係るX線CT装置1の構成の一部を示す模式図である。
【0083】
図3に示すように、第2の実施形態に係るX線CT装置1において、通信ユニットPLC1、PLC2は、処理回路121、メモリ120を備え、処理回路121は、パラメータ決定部104と、モデル取得部105と、信号伝送制御部110とを実行する。図3に示す通信ユニットにおいては、各処理機能がコンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ120(記憶媒体)へ記憶されている。処理回路121は、メモリ120からプログラムを読み出して実行することで各プログラムに対応する機能としてパラメータ決定部104、モデル取得部105及び信号伝送制御部110を実現するプロセッサである。
【0084】
なお、第2の実施形態では、第1の実施形態のX線CT装置1の回転部101、固定部102、スリップリング103に関する図示が省略され、パラメータ決定部104、モデル取得部105及び信号伝送制御部110の部分のみを図示する。また、回転部101、固定部102、スリップリング103、パラメータ決定部104及び信号伝送制御部110はいずれも第1の実施形態と同じであり、ここでは説明を省略する。
【0085】
モデル取得部105は、非ブラインドチャンネル推定により、チャンネル推定データモデルを取得する。非ブラインドチャンネル推定方法は、参考信号に基づく推定アルゴリズムである。このようなアルゴリズムは所定の推定基準に従って推定対象パラメータを確定し、又はある基準に従って推定対象パラメータの推定値を段階的に追跡及び調整する。非ブラインドチャンネル推定方法の特徴は参照信号を用いることである。即ち、モデル取得部105は、参照信号を用いることによって、チャンネル推定データモデルを取得する。
【0086】
例えば、参照信号として、パイロットシンボル(又は、パイロットシーケンス)、トレーニングシーケンスが挙げられる。本実施形態において、チャンネル推定データモデルは、モデル取得部105により事前に取得され、かつ、記憶され、パラメータ決定部104により呼び出される。
【0087】
例えば、モデル取得部105は、信号の送信側で通信信号に対して既知の参照信号を挿入し、受信側で参照信号を抽出し、チャンネル推定演算を行ってチャンネルパラメータの収集を行い、収集されたチャンネルパラメータに基づいてチャンネル推定データモデルを取得する。この例については、後述の実施例1にて詳細に説明する。
【0088】
また、モデル取得部105は、信号送信側で既知の参照信号を送信し、受信側で参照信号を抽出し、チャンネル推定演算を行ってチャンネルパラメータの収集を行い、収集されたチャンネルパラメータに基づいてチャンネル推定データモデルを取得する。この例については、後述の実施例2にて詳細に説明する。
【0089】
以下、図4及び図5を参照して本実施形態のモデル取得部105がチャンネルパラメータの推定を行う方法について説明する。
【0090】
(実施例1)
図4は、本実施形態のチャンネルパラメータの推定を行う方法の一例を説明するための模式図である。図4に示す例では、送信側の通信ユニットPLCが、通信信号にパイロットシンボル(パイロットシーケンス)を挿入して送信し、受信側の通信ユニットPLCが、チャンネル推定データモデルのモデルパラメータを推定する方法である。すなわち、チャンネル推定は、チャンネルが入力信号に影響を与える一つの数学的表現であり、理想的なチャンネル推定は、ある推定誤差を最小化する推定アルゴリズムである。
【0091】
例えば、最小分散(LS)アルゴリズムを選択してパイロット位置におけるチャンネルパラメータの推定を行うことができる。LSアルゴリズム理論式は以下の式(5)により表される。
【0092】
【数5】
【0093】
式(5)の右辺において、Xは、送信側の通信ユニットにより送信されるパイロットシンボルである。Yは、受信側の通信ユニットにより当該パイロット位置の受信信号が復調された後の信号(パイロットシンボル)である。式(5)の左辺は、当該パイロット位置のチャンネル応答推定値である。
【0094】
また、図4は、回転部101が固定部102に信号を伝送する時に、回転部101に設けられた通信ユニットPLC1の信号伝送制御部110が、入力された信号を変調した後に、変調後の信号を伝送し、固定部102に設けられた通信ユニットPLC2の信号伝送制御部110が、信号を受信して復調した場合を例としている。
【0095】
本実施例において、図4の上段に示すD(k)は、入力信号(データシーケンス)を表す。図4の上段に示すS(k)は、送信側の通信ユニットにより変調された信号を表し、図4の上段に示すX(m)は、送信側の通信ユニットに信号S(k)に挿入されるパイロットシンボルである。図4の下段に示すH(n)は、実際のチャンネルである。ここで、サブキャリア数をn、データシーケンスをD(k)、パイロットシンボルをパイロットシーケンスX(m)とした場合、k+m=nとする。
【0096】
図4の下段に示すS’(k)は、受信側の通信ユニットによりパイロット位置の信号S(k)が復調された信号を表し、図4の下段に示すY(m)は、受信側の通信ユニットにより当該パイロット位置の信号S(k)が復調された後の信号(パイロットシンボル)であり、図4の下段に示す式(下記式(6)を参照)は、当該パイロット位置のチャンネル応答推定値である。
【0097】
【数6】
【0098】
図4に示すように、回転部101に設けられた通信ユニットPLC1の信号伝送制御部110は、入力された信号D(k)を変調し、変調後の信号S(k)を取得する。
【0099】
その後、通信ユニットPLC1のモデル取得部105は、信号S(k)の所定位置に既知のパイロットシーケンスX(m)を挿入して信号S(k)+X(m)を取得し、パイロットシーケンスX(m)が挿入された位置がパイロット位置である。
【0100】
信号S(k)+X(m)は、チャンネルH(n)を介して伝送される。その後に、固定部102に設けられた通信ユニットPLC2の信号伝送制御部110は、パイロット位置の信号S’(k)+Y(m)を復調して、復調後の信号S’(k)、及び、復調後のパイロットシンボルであるパイロットシーケンスY(m)を抽出する。
【0101】
その後、通信ユニットPLC2のモデル取得部105は、LSアルゴリズム理論式に基づいて、下記式(7)によりパイロットチャンネル応答を得ることができる。
【0102】
【数7】
【0103】
このように、通信ユニットPLC2のモデル取得部105は、チャンネル推定演算を行うことにより、パイロットチャンネル応答(上記式(6)を参照)に基づいて、ある角度位置の周波数帯域チャンネル応答(上記式(7)を参照)を得ることができる。これにより、X線CT装置1の回転部101を、ある特定の速度vで回転させ、360°を遍歴することができる。例えば、あるサンプリング角度になるたびに、この位置の周波数帯域チャンネル応答(上記式(7)を参照)が得られる。さらに、通信ユニットPLC2のモデル取得部105は、チャンネル推定演算を行うことにより、速度vの条件で全ての角度位置でのチャンネル応答がチャンネルパラメータとして得られ、全ての速度、角度でのチャンネルパラメータ(下記式(8)を参照)を得ることができる。
【0104】
【数8】
【0105】
(実施例2)
図5は、本実施形態のチャンネルパラメータの推定を行う方法の他の一例を説明するための模式図である。図5に示す例では、基本原理は実施例1とほぼ同じであるが、事前に通信チャンネル推定パラメータを取得することを考慮するため、送信側の通信ユニットPLCが、有用なデータを送信せずにパイロットシンボル(パイロットシーケンス)のみを送信し、受信側の通信ユニットPLCが、全帯域チャンネル推定を用いる方法である。
【0106】
実施例2では、実施例1と同様に、最小分散(LS)アルゴリズムを選択してパイロット位置におけるチャンネルパラメータの推定を行うことができる。LSアルゴリズム理論式は上記式(5)により表される。
【0107】
また、図5は、回転部101が固定部102に信号を伝送する時に、回転部101に設けられた通信ユニットPLC1の信号伝送制御部110が、信号を入力し、変調した後に、変調後の信号を伝送し、固定部102に設けられた通信ユニットPLC2の信号伝送制御部110が、信号を受信して復調した場合を例としている。
【0108】
また、サブキャリア数をnとして、全てのサブキャリアをパイロットシンボル(パイロットシーケンス)として設定することで、パイロットシーケンスX(n)が得られる。パイロットシーケンスX(n)は、既知のシーケンスであるため、変調を行う必要がなく、送信側において、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform;逆高速フーリエ変換)による演算が行われた後のパイロットシーケンスX(n)を送信することができる。
【0109】
具体的には、図5に示すように、通信ユニットPLC1のモデル取得部105は、既知のパイロットシーケンスX(n)を送信し、パイロットシーケンスX(n)が、チャンネルH(n)で伝送された後に、固定部102に設けられた通信ユニットPLC2の信号伝送制御部110により復調されて、復調後の信号Y(n)が抽出される。
【0110】
その後、通信ユニットPLC2のモデル取得部105は、LSアルゴリズム理論式に基づいて、上記式(7)により、ある角度位置での全帯域チャンネル応答を得ることができる。
【0111】
このように、実施例2においても、実施例1と同様に、通信ユニットPLC2のモデル取得部105は、チャンネル推定演算を行うことにより、ある角度位置の全帯域チャンネル応答(上記式(7)を参照)を得ることができる。これにより、X線CT装置1の回転部101を、ある特定の速度で回転させ、360°を遍歴することができる。あるサンプリング角度になるたびに、この位置の全帯域チャンネル応答(上記式(7)を参照)が得られる。さらに、通信ユニットPLC2のモデル取得部105は、チャンネル推定演算を行うことにより、速度vの条件で全ての角度位置でのチャンネル応答がチャンネルパラメータとして得られ、全ての速度、角度でのチャンネルパラメータ(上記式(8)を参照)を得ることができる。
【0112】
以下、図6を参照して、通信ユニットPLC2のモデル取得部105が、チャンネル推定演算を行ってチャンネルパラメータの収集を行い、収集されたチャンネルパラメータに基づいてチャンネル推定データモデルを取得する過程を説明する。図6は、チャンネル推定データモデルの取得手順を説明するための模式図である。
【0113】
図6に示すように、本実施形態では、複数のモードとして、X線CT装置1に対して複数の回転速度「速度1」、・・・、「速度n」が設定されているものとする。この場合、モデル取得部105は、複数の回転速度「速度1」、・・・、「速度n」のそれぞれについて、所定の回転角度「回転角度0」、「回転角度0.1」、「回転角度0.2」、・・・、「回転角度360」だけ離間した所定位置毎にチャンネル推定演算を行ってチャンネルパラメータの収集を行う。そして、モデル取得部105は、収集したチャンネルパラメータに基づいてチャンネル推定データモデルを取得する。
【0114】
例えば、X線CT装置1が複数の回転速度v、例えば1.5s/r、1.0s/r、0.75s/r、0.6s/r、0.5s/rを有するように設定されている場合、X線CT装置1に対して0°≦θ<360°の範囲内に回転間隔0.1°チャンネルパラメータ(上記式(8)を参照)の収集を行う。そして、モデル取得部105は、収集された各チャンネルパラメータのセットをチャンネル推定データモデルとして取得する。
【0115】
また、高い精度のチャンネル推定データモデルを取得するために、モデル取得部105は、複数の回転速度のそれぞれに対し、所定位置毎に、所定回数以上のチャンネルパラメータの収集を行う。ここで、所定回数は例えば15回である。上記所定回数は必要に応じて適宜変更可能である。
【0116】
モデル取得部105は、所定回数以上のチャンネルパラメータの収集を行う場合、収集されたチャンネルパラメータを利用して、さらにその各レート及び各回転角度で収集された結果をチャンネル推定データモデルに組み合わせる。
【0117】
なお、X線CT装置1の伝送は双方向通信であるため、チャンネルパラメータ収集は、固定部102から回転部101へのチャンネルパラメータの収集と、回転部101から固定部102へのチャンネルパラメータの収集とを含む。
【0118】
すなわち、X線CT装置1については、複数種の回転速度毎に、0°≦θ<360°回転角度範囲において、固定部102から回転部101までのチャンネルと回転部101から固定部102までのチャンネルについて、それぞれ通信チャンネル推定パラメータ(下記式(9)、式(10)を参照)を取得し、それぞれ、図6に示す不揮発性メモリに格納してチャンネル推定データモデルを構成する。図6に示す不揮発性メモリは、通信ユニットPLC1、PLC2のメモリ120に相当する。
【0119】
【数9】

【数10】
【0120】
第2の実施形態によれば、上記第1の実施形態の技術的効果を備え、モデル取得部105によりチャンネル推定データモデルを取得し、パラメータ決定部104に呼び出され、このように事前に確立されたチャンネル推定データモデルに基づいて通信信号に対応する実際の通信チャンネル推定パラメータを決定する。そして、第2の実施形態では、チャンネルパラメータの収集のみで、トレーニング等を行うことなくチャンネル推定データモデルを取得することができ、伝送速度を向上させることができる。
【0121】
また、第2の実施形態では、モデル取得部105は固定部102から回転部101までのチャンネルと回転部101から固定部102までのチャンネルに対して、それぞれ通信チャンネル推定パラメータを取得してチャンネル推定データモデルを取得する。このため、第2の実施形態では、実際に合わせてチャンネル推定データモデルを確立して応用し、それにより伝送品質、伝送安定性及び伝送速度を向上させ、X線CT装置1の伝送性能をさらに向上させることができる。
【0122】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係るX線CT装置1を説明する。
【0123】
第3の実施形態に係るX線CT装置1は、更に、測定部106を備える。
【0124】
ここで、回転部101、固定部102、スリップリング103、パラメータ決定部104、モデル取得部105及び信号伝送制御部110はいずれも第2の実施形態と同じであり、ここでは図示及び説明を省略する。
【0125】
測定部106は、回転角度を測定するためのものである。例えば、測定部106は、回転部101から固定部102に通信信号が伝達される際に、取得される回転角度のリアルタイムな誤差を考慮して、回転部101に取り付けられる。
【0126】
また、測定部106は、ジャイロスコープと加速度計の組み合わせ、2軸傾斜角センサ、又はエンコーダのうちのいずれかである。以下に図7図9を参照して説明する。図7図9では、X線CT装置1の一部のみを示す。
【0127】
(実施例1)
図7は、回転角度の取得の実施例1を説明するための模式図である。
【0128】
図7に示すように、実施例1において、測定部106はジャイロスコープ311と加速度計312の組み合わせである。
【0129】
また、取得された回転角度のリアルタイムな誤差を考慮し、好ましくは回転角度を測定するためのセンサが回転部101に取り付けられる。
【0130】
ジャイロスコープ311と加速度計312の組み合わせにより、回転部101の回転角度をリアルタイムに測定することができる。それにより信号伝送における計算をさらに省略し、伝送速度及び伝送性能をさらに向上させる。
【0131】
(実施例2)
図8は、回転角度の取得の実施例2を説明するための模式図である。
【0132】
図8に示すように、実施例2において、測定部106は、2軸傾斜角センサ321である。回転部101のリアルタイム回転角度は、2軸傾斜角センサ321によって取得される。
【0133】
また、2軸傾斜角センサ321を採用して動的な傾斜角を測定する場合、回転による遠心力の干渉を回避するために、好ましくは2つの2軸傾斜角センサ321を組み合わせて測定する。
【0134】
また、2つの同じ2軸傾斜角センサ321は、感度軸322方向が逆であり、かつ軸心との間の距離が同じであるように回転部101に取り付けられる。
【0135】
(実施例3)
図9は、回転角度の取得の実施例3を説明するための模式図である。
【0136】
図9に示すように、実施例3において、測定部106はエンコーダ331であり、例えば光電回転エンコーダ、磁電回転エンコーダなどであってもよい。
【0137】
上記エンコーダ331における磁電回転エンコーダを例として、磁電回転エンコーダはX線CT装置1上の回転部101に取り付けられ、磁気誘導ユニット、回転磁石及び外付けマイクロプロセッサを含む。ここで、磁気誘導ユニットは、制御対象に設置され、制御対象表面における磁界変化に応じて電圧を生成し、さらに制御対象の回転角度の符号化値を得るために用いられる。回転磁石は磁気誘導ユニットの上方に非接触で取り付けられ、かつ回転磁石の軸心位置は固定される。外付けマイクロプロセッサは磁気誘導ユニットに接続され、磁気誘導ユニットを読み取って回転角度符号化値を計算する。
【0138】
第3の実施形態によれば、上記第1の実施形態及び第2の実施形態の技術的効果を有する。PLC機器(通信ユニットPLC)により架台の回転速度及び角度に基づく通信チャンネル推定パラメータを取得し、信号送信前に通信チャンネル推定パラメータを予知することができることにより、伝送品質が高いことが確保される。そして、先に通信チャンネル推定パラメータを予測することができるため、情報送信時に予測されれた通信チャンネル推定パラメータを利用する。理論的には、伝送速度を400Mbpsから750Mbpsに向上させることができる。
【0139】
また、第3の実施形態のX線CT装置1は、測定部106が回転部101に設けられている。回転部101から固定部102に信号が伝達される際に、回転部101から回転角度を直接得ることができ、固定部102のロータリーエンコーダ(図示せず)から得られる回転角度よりも、回転角度が取得するリアルタイムな誤差を少なくして、信号伝送速度と安定性を向上させることができる。
【0140】
また、第3の実施形態のX線CT装置1は、測定部106を備え、回転角度を取得する測定部106となるセンサ又はエンコーダはいずれも成熟した技術であり、構成が簡単であり、コストが安価である。PLCベースバンドSOCチップは既に製品化された。本実施形態ではソフトウェアの一部を改善するだけでよく、開発製造しやすい。
【0141】
また、第3の実施形態のX線CT装置1は、回転角度を取得するセンサが小型であり、PLC伝送システム内に組み込むことができるとともに、PLCがスリップリングを利用して伝送を行うため、他の部品を追加する必要がなく、X線CT装置1の設置スペースを節約することができる。エンコーダは独立した部品であり、PLC基板にインターフェースを予め設置するだけで伝送することができる。
【0142】
また、第3の実施形態のX線CT装置1は、回転角度を取得するセンサやエンコーダの消費電力が極めて低く、通信チャンネル推定パラメータの取得方法はソフトウェアの開発のみでよく、PLC機器(通信ユニットPLC)に付加的な消費電力を与えないため、機器の消費電力が低い。
【0143】
以上のように、本実施形態の技術的思想をX線CT装置1により実現する実施形態について説明した。また、本実施形態の技術的思想は、X線CT装置1の信号伝送方法、及び記憶媒体によって実現されてもよい。
【0144】
上述のように、本実施形態に係るX線CT装置は、X線管11とX線検出器12とを搭載して回転する回転部101と、回転部101を支持する固定部102と、回転部101と固定部102との間で電力伝送及び電力線通信による通信信号の伝送を行うスリップリング103と、パラメータ決定部104と、信号伝送制御部110と、を備える。パラメータ決定部104は、通信信号が送信された時刻の回転部101の回転速度、回転角度から、チャネル推定データモデルに基づいて、通信信号に応じた通信チャンネル推定パラメータを決定する。信号伝送制御部110は、通信チャンネル推定パラメータを用いて通信信号の変調・復調を行い、通信信号の伝送を行うように制御する。
【0145】
また、本実施形態に係るX線CT装置1の信号伝送方法は、X線管11とX線検出器12とを搭載して回転する回転部101と、回転部101を支持する固定部102と、回転部101と固定部102との間で電力伝送及び電力線通信による通信信号の伝送を行うスリップリング103と、を備えるX線CT装置1の信号伝送方法である。当該信号伝送方法は、通信信号が送信された時刻の回転部101の回転速度、回転角度から、チャンネル推定データモデルに基づいて、通信信号に応じた通信チャンネル推定パラメータを決定するパラメータ決定ステップと、通信チャンネル推定パラメータを用いて通信信号の変調・復調を行い、通信信号の伝送を行うように制御する信号伝送制御ステップと、を含む。
【0146】
また、本実施形態に係る記憶媒体は、上述のX線CT装置1に搭載されたコンピュータ(通信ユニットPLC1、PLC2)に、通信信号が送信された時刻の回転部101の回転速度、回転角度から、チャンネル推定データモデルに基づいて、通信信号に応じた通信チャンネル推定パラメータを決定するパラメータ決定処理と、通信チャンネル推定パラメータを用いて通信信号の変調・復調を行い、通信信号の伝送を行うように制御する信号伝送制御処理と、を実行させるプログラムをコンピュータ読み取り可能に記憶する。
【0147】
以上説明した少なくとも1つの実施形態によれば、データ伝送の安定性、高速データ伝送を実現することができる。
【0148】
なお、いくつかの実施形態および実施例を説明したが、これらの実施形態および実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0149】
1 X線CT装置
101 回転部
102 固定部
103 スリップリング
104 パラメータ決定部
110 信号伝送制御部
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9