(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164338
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】時計の切り替え式表示機構
(51)【国際特許分類】
G04B 19/02 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
G04B19/02 Z
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023069927
(22)【出願日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】22170928.0
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501475413
【氏名又は名称】グラスヒュッテ・ウーレンベトリーブ・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】マックス・ヨアヒム
(72)【発明者】
【氏名】トニー・ブラウン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可能な限り普遍的であり幅広い用途に使用可能な切り替え機構を提供する。
【解決手段】第1の機構及び第1の出力ホイールセットと、第2の機構及び第2の出力ホイールセットとを備える時計機構であって、第1の機構又は第2の機構に固有の第1又は第2の示度を表示手段上に表示するための、時計機構に関し、切り替え・連結機構は、少なくとも1つの連結シャフト上に、出力ホイールセットに接続された2つの入力ホイールセットと、これらの入力ホイールセットの間において一定の張力下で移動できる、スライド式ホイールセットとを備え、スライド式ホイールセットは、1回転につき1つの角度位置でのクリックによって、制御手段に対するユーザからのコマンドの作用下で選択された一方と、交互かつ排他的に協働して、所与の瞬間にスライド式ホイールセットと係合している入力ホイールセットと、表示手段との間に、駆動接続を確立する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枢動可能な第1の出力ホイールセット(101)を備える第1の機構(100)と、枢動可能な第2の出力ホイールセット(102)を備える第2の機構(200)とを備え、前記第1の出力ホイールセット(101)の位置は第1の入力変数に関連付けられ、前記第2の出力ホイールセット(102)の位置は第2の入力変数に関連付けられ、前記第1の機構(100)及び前記第2の機構(200)は、それぞれ順に、第3の機構の運動と、前記第3の機構が備える少なくとも1つの第3の出力ホイールセットの駆動とを制御するために配設される、時計機構(1000)であって、
前記時計機構(1000)は、それぞれ連続的に動作する2つの入力を構成する前記第1の機構(100)又は前記第2の機構(200)と、出力を構成する前記第3の機構との間の、交互の排他的な連結のために配設される、切り替え・連結機構(500)を備えること;
前記時計機構(1000)は、前記第3の機構と係合した前記第1の機構(100)及び第2の機構(200)のうちの一方の前記機構を連結解除して、前記第3の機構と係合した前記第1の機構(100)及び第2の機構(200)のうちのもう一方を前記第3の機構と係合させるために、ユーザが操作できる、制御手段(300)を備え、前記切り替え・連結機構(500)は、前記第1の機構(100)又は前記第2の機構(200)と、前記第3の機構とを、1回転につき1つの角度位置において連結するための機械的手段を備え、前記機械的連結手段は前記1つの角度位置のみにおいて連結を可能にすること
を特徴とする、時計機構(1000)。
【請求項2】
前記機構(1000)は、切り替え式ディスプレイを形成するために前記切り替え・連結機構(500)を備えること;
前記第3の機構は、前記第1の入力変数又は前記第2の入力変数の特徴である第1の示度又は第2の示度の、表示手段(800、8、28)である前記少なくとも1つの第3の出力ホイールセット上での各表示のための、表示機構であること
を特徴とする、請求項1に記載の時計機構(1000)。
【請求項3】
前記切り替え・連結機構(500)は、それぞれ前記出力ホイールセット(101;102)によって構成されるか、又は前記出力ホイールセット(101;102)によって直接駆動される、2つの入力ホイールセット(1;2)を備え、また前記2つの入力ホイールセット(1;2)の間において一定の張力下で軸方向に移動できるスライド式ホイールセット(5、935、936)を備え、前記スライド式ホイールセット(5、935、936)は、1回転につき1つの角度位置での、前記スライド式ホイールセット(5、935、936)の軸方向の移動方向における正面クリックによって、前記時計機構(1000)が備える前記制御手段(300)にユーザが与えるコマンドの作用下で選択される前記2つの入力ホイールセット(1;2)のうちの一方と交互かつ排他的に協働するように配設され、これにより、所与の瞬間に前記スライド式ホイールセット(5、935、936)と係合している前記入力ホイールセット(1;2)と、前記少なくとも1つの第3の出力ホイールセットとの間の駆動接続を確立して、場合に応じて前記第1の入力変数又は前記第2の入力変数に特徴的なストロークだけ、前記第3の出力ホイールセットを枢動させることを特徴とする、請求項1に記載の時計機構(1000)。
【請求項4】
前記機構(1000)は、前記スライド式ホイールセット(5、935、936)がスライドするように設置される、第1のスライド軸(D1)に沿った第1の連結シャフト(937)を備えること、
第1の分表示機能を表示するために、前記スライド式ホイールセットは第1のスライド式ホイールセット(5、935)であり、前記2つの入力ホイールセット(1;2)は、第1のスライド軸(D1)を中心として同軸であり、それぞれ下側分表示用連結用ホイール(3、93)又は上側分表示用連結用ホイール(4、98)を摩擦駆動するように配設されること;並びに
前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)は、前記下側分表示用連結用ホイール(3、93)及び前記上側分表示用連結用ホイール(4、98)それぞれに関して1回転につき1つの相対角度位置で相補的凹凸部が協働することにより、前記下側分表示用連結用ホイール(3、93)及び前記上側分表示用連結用ホイール(4、98)のうち一度に一方のみと軸方向に連結でき、また前記制御手段(300)が備える少なくとも1つの板ばね(934)によって、その連結位置に保持され、前記少なくとも1つの板ばね(934)は、前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)の軸方向の位置決めを制御した後、その軸方向位置を維持するために配設されること;並びに
前記制御手段(300)は更に、前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)に回転移動を付与することによって、前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)と、前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)が押し付けられる前記連結用ホイール(3、93;4、98)との間の第1の連結位置を見つけ出すように配設されること
を特徴とする、請求項3に記載の時計機構(1000)。
【請求項5】
前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)は、前記第1の連結シャフト(937)上でスライドするように設置され、前記第1の連結シャフト(937)によって前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)の回転が割り出され、前記第1の連結シャフト(937)は、前記表示手段(800、8、28)を直接又は間接的に回転させるために配設されること;並びに
前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)は、前記下側分表示用連結用ホイール(3、93)又は前記上側分表示用連結用ホイール(4、98)との連結のための同軸のスライド式連結スリーブを構成し、前記下側分表示用連結用ホイール(3、93)及び前記上側分表示用連結用ホイール(4、98)はそれぞれ、第1の連結要素(930)及び第2の連結要素(980)を備え、前記第1の連結要素(930)及び前記第2の連結要素(980)は、一度に1つずつ、前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)が備える第1の相補的連結要素(9350)又は第2の相補的連結要素(9350)と、前記連結位置で交互に協働するように配設されること;並びに
前記制御手段(300)は、前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)に、前記下側分表示用連結用ホイール(3、93)又は前記上側分表示用連結用ホイール(4、98)に当接するまで軸方向移動を与え、また前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)に回転移動を与えることにより、前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)と、前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)が押し付けられる前記下側分表示用連結用ホイール(3、93)又は前記上側分表示用連結用ホイール(4、98)との間の、前記第1の連結位置を見つけ出すように、配設されること
を特徴とする、請求項4に記載の時計機構(1000)。
【請求項6】
前記切り替え・連結機構(500)は、弾性復帰手段を構成する少なくとも1つの前記板ばね(934)を備え、前記弾性復帰手段は、前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)を軸方向に押して、前記スライド式ホイールセット(5)が押し付けられる前記下側分表示用連結用ホイール(3、93)又は前記上側分表示用連結用ホイール(4、98)に当接させるように、配設されることを特徴とする、請求項4及び5に記載の時計機構(1000)。
【請求項7】
前記制御手段(300)は、前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)と共に回転するように一体となった中間車(99)に回転移動を与えることにより、前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)と、前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)が押し付けられる前記下側分表示用連結用ホイール(3、93)又は前記上側分表示用連結用ホイール(4、98)との間の、前記1つの連結位置を見つけ出すために配設されること;及び
前記第1の連結シャフト(937)は、前記中間車(99)が組み込まれた歯車列を介して、又は前記第1の連結シャフト(937)によって回転が割り出される前記中間車(99)を介して、前記表示手段(800、8、28)を回転させるように配設されること
を特徴とする、請求項4に記載の時計機構(1000)。
【請求項8】
前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)は、前記下側分表示用連結用ホイール(3、93)に面する第1の面、及び前記上側分表示用連結用ホイール(4、98)に面する第2の面上に、少なくとも1つのポスト又は少なくとも1つのスロットを備え、前記ポスト又はスロットは、前記第1のスライド式ホイールセット(5、935)の前記回転移動中に、360°以下の相対的回転中のある1つの協働位置において、前記下側分表示用連結用ホイール(3、93)及び前記上側分表示用連結用ホイール(4、98)が備えるスロット又はポストと相補的に協働するよう配設されることを特徴とする、請求項4に記載の時計機構(1000)。
【請求項9】
前記機構(1000)は、時表示のための別の時刻機能を表示するために、前記第1の連結シャフト(937)と同様に第2のスライド式ホイールセット(936)を備える、第2のスライド軸に沿った少なくとも1つの第2の連結シャフト(938)を備えること;
前記出力ホイールセット(101;102)は、それぞれ下側時表示用連結用ホイール(95)又は上側時表示用連結用ホイール(910)を摩擦駆動するように配設されること;並びに
前記第2のスライド式ホイールセット(936)は、前記下側時表示用連結用ホイール(95)及び上側時表示用連結用ホイール(910)それぞれに関して1回転につき1つの相対角度位置で相補的凹凸部が協働することにより、前記下側時表示用連結用ホイール(95)及び前記上側時表示用連結用ホイー(910)のうち一度に一方のみと軸方向に連結でき、また前記板ばね(934)によって、その連結位置に保持され、前記板ばね(934)は、前記第2のスライド式ホイールセット(936)の軸方向の位置決めを制御した後、その軸方向位置を維持するために配設されること;並びに
前記制御手段(300)は更に、前記第2のスライド式ホイールセット(936)に回転移動を付与することによって、前記第2のスライド式ホイールセット(936)と、前記第2のスライド式ホイールセット(936)が押し付けられる前記連結用ホイール(95;910)との間の第1の連結位置を見つけ出すように配設されること
を特徴とする、請求項4に記載の時計機構(1000)。
【請求項10】
前記制御手段(300)は、回転運動を制御するための歯付きセクタを備える、ユーザによって操作される制御レバー(922)と、少なくとも1つの前記スライド式ホイールセット(935、936)との接続のための少なくとも1つのフォーク(9345、9346)を備える前記板ばね(934)に対して支承力を印加するよう設計された、枢動フラップ(930)との間に、互いに関節接続された一連のレバー(923、924、925、928)を備え、前記レバーのうちの最後のもの(928)は、前記枢動フラップ(930)の回転を制御し、これにより前記枢動フラップ(930)は、全ての前記レバー(923、924、925、928)と平行な平面に対して平行な軸の周りで回転することによって、前記板ばね(934)の変形及び/又は運動を制御して、切り替えを制御することを特徴とする、請求項4に記載の時計機構(1000)。
【請求項11】
前記制御手段(300)は、休止位置へ戻るための機構を備え、前記機構は、戻りレバー(932)であって、前記戻りレバー(932)をガイドする前記制御レバー(922)に関節接続された、戻りレバー(932)と、前記戻りレバー(932)のピンに支承された戻りばね(933)とを備え、前記戻りばね(933)の寸法は、前記レバー(923、924、925、928)の中で最大のものの寸法と同等であり、また前記戻りばね(933)は、最終位置において前記制御レバー(922)を前記戻りレバー(932)に押し付けて、中立ばねを構成することを特徴とする、請求項10に記載の時計機構(1000)。
【請求項12】
前記機構(1000)は、前記下側ムーブメントの伝達歯車列を備え、これは、表示を調整するための摩擦部品を備える下側分表示用入力ホイール(91)、下側反転中間車(92)、下側分表示用連結用ホイール(93)、下側反転ホイール(94)、及び下側時表示用連結用ホイール(95)を連続的に備える、前記下側ムーブメントの伝達歯車列を備えることを特徴とする、請求項10に記載の時計機構(1000)。
【請求項13】
前記機構(1000)は、表示を調整するための摩擦部品を備える上側分表示用入力ホイール(96)、上側反転中間車(97)、上側分表示用連結用ホイール(98)、上側反転ホイール(99)、及び上側時表示用連結用ホイール(910)を連続的に備える、前記上側ムーブメントの伝達歯車列を備えることを特徴とする、請求項10に記載の時計機構(1000)。
【請求項14】
前記機構(1000)は、第1の中間車(916)及び第2の中間車(917)によって互いに接続された、時計回り方向に自由である第1のフリーホイールホイールセット(914)と、前記第1のフリーホイールホイールセット(914)と反対方向でロックされる第2のフリーホイールホイールセット(915)とを備える、回転補償機構を備え、前記第1の中間車(916)及び前記第2の中間車(917)は、前記制御レバー(922)が前記第1の中間車(916)及び前記第2の中間車(917)の回転をそれぞれ阻止又は許可するために備える別個の平滑な又は歯付きのトラックと協働するように配設されることを特徴とする、請求項10に記載の時計機構(1000)。
【請求項15】
前記機構(1000)は:第3のフリーホイールホイールセット(918)を備える時表示用回転分離機構であって、前記第3のフリーホイールホイールセット(918)は、通常運転時に切り替え運動を分離し、また前記連結後に残りの回転運動を補償するように配設された第3の時表示用摩擦ホイールセット(919)と噛合する、時表示用回転分離機構を備え;また、第4のフリーホイールホイールセット(920)を備える分表示用回転分離機構であって、前記第4のフリーホイールホイールセット(920)は、通常運転時に切り替え運動を分離し、また前記連結後に残りの回転運動を補償するように配設された第4の分表示用摩擦ホイールセット(921)と噛合する、分表示用回転分離機構を備えることを特徴とする、請求項10に記載の時計機構(1000)。
【請求項16】
前記機構(1000)は時表示の伝達歯車列を備え、前記伝達歯車列は、前記時表示用回転分離機構の下流の、前記時表示用スライド式ホイールセット(936)を支承する時表示用シャフト(938)と共に1つのものとして回転するように前記時表示用シャフト(938)と一体となっている第1の時表示用伝達ホイール(911)を備え、前記第1の時表示用伝達ホイール(911)は、歯部の遊びを補償するための一体型ばねを備える時表示用伝達用中間車(912)と噛合して、前記分表示用連結シャフト(937)上の筒かな(939)と同軸に設置された筒車(913)を駆動することを特徴とする、請求項10に記載の時計機構(1000)。
【請求項17】
前記第1の出力ホイールセット(101)及び前記第2の出力ホイールセット(102)は、定常的に回転することを特徴とする、請求項1に記載の時計機構(1000)。
【請求項18】
前記第1の出力ホイールセット(101)及び前記第2の出力ホイールセット(102)は、少なくとも1つの前記表示手段(800、8、28)上での、時間的示度である少なくとも1つの前記第1の示度及び前記第2の示度の各表示を制御するために配設されることを特徴とする、請求項1に記載の時計機構(1000)。
【請求項19】
前記第1の機構、特に第1の歯車列(100)は、第1の調速部材(1100)によって駆動されること;
前記第2の機構、特に第2の歯車列(200)は、第2の調速部材(1200)によって駆動されること;並びに
前記第1の調速部材(1100)及び前記第2の調速部材(1200)は、それぞれ少なくとも1つの前記第1の時間的示度及び前記第2の時間的示度の表示のために、互いに独立して、ユーザの介入なしに、連続的に動作するように配設され、またそれぞれ、定常的に回転する前記第1の入力ホイールセット(1)及び前記第2の入力ホイールセット(2)を備えること
を特徴とする、請求項1に記載の時計機構(1000)。
【請求項20】
前記第1の調速部材(1100)及び前記第2の調速部材(1200)は異なる方法で調速されることを特徴とする、請求項19に記載の時計機構(1000)。
【請求項21】
前記時計機構(1000)は、前記第1の調速部材(1100)及び前記第2の調速部材(1200)にエネルギを供給するように配設された、エネルギ貯蔵手段(3000)を備えることを特徴とする、請求項19に記載の時計機構(1000)。
【請求項22】
前記エネルギ貯蔵手段(3000)は、前記第1の調速部材(1100)及び前記第2の調速部材(1200)に同時にエネルギを供給するように配設された、共通のエネルギ貯蔵手段を備えることを特徴とする、請求項21に記載の時計機構(1000)。
【請求項23】
前記第1の調速部材(1100)及び前記第2の調速部材(1200)のうちの一方は、最大周波数で発振するよう配設された発振子を備え、他方は、最小周波数で発振するよう配設された発振子を備え、前記最大周波数は前記最小周波数の10倍以下であることを特徴とする、請求項19に記載の時計機構(1000)。
【請求項24】
請求項1に記載の少なくとも1つの時計機構(1000)を備える、時計(2000)。
【請求項25】
時計機構が備える2つの連続して動作する入力機構(100;200)を切り替えることによって、同じ前記時計機構が備える1つの出力機構を制御するための方法であって:
2つの入力を構成する前記第1の機構(100)又は前記第2の機構(200)と、出力を構成する第3の機構との間の、交互の排他的な連結のために配設される、切り替え・連結機構を、前記2つの入力機構(100;200)と前記出力機構との間に挿入すること;
前記時計機構は制御手段を備え、ユーザは前記制御手段を操作することによって、前記第1の機構(100)及び前記第2の機構(200)のうち、前記第3の機構と係合している機構を連結解除して、前記第1の機構(100)及び前記第2の機構(200)のうちの他方を前記第3の機構と係合させることができること;並びに
前記切り替え・連結機構は、機械的連結手段を備え、前記機械的連結手段は、1回転につき1つの角度位置において、一方では前記第1の機構(100)又は前記第2の機構(200)との、他方では前記第3の機構との連結を可能とするように配設され、前記機械的連結手段は、前記1つの角度位置のみにおいて連結を可能とすること:並びに
ユーザが前記制御手段を作動させて、前記第3の機構と係合していた前記第1の機構(100)又は前記第2の機構(200)を連結解除すると、スライド式ホイールセットは、前記第1の機構(100)及び前記第2の機構(200)それぞれに接続された、それぞれ正面凹凸部を備える2つの入力ホイールセットの間で、レバー及び/又は制御ばねによって移動され、これにより前記スライド式ホイールセットは、前記第1の機構(100)及び前記第2の機構(200)のうちコマンドの瞬間に係合していなかった機構に対応する入力ホイールセットに向かって押され、前記機構と前記入力ホイールセットとが互いに接触するとすぐに、前記入力ホイールセットの回転は、前記入力ホイールセットの正面凹凸部が、前記スライド式ホイールセットが備える相補的な正面凹凸部と協働するまで継続され、前記正面凹凸部及び前記相補的な正面凹凸部は、前記入力ホイールセットと前記スライド式ホイールセットとの間の相対的な回転1回の間に1つの角度位置において前記正面凹凸部と前記相補的な正面凹凸部との間の協働を達成でき、またその後、軸方向に押されることによって前記入力ホイールセットと前記スライド式ホイールセットとの連結が完了するようなものであること
を特徴とする、方法。
【請求項26】
前記時計機構は請求項1に記載の時計機構(1000)であること;
前記切り替え・連結機構は前記切り替え・連結機構(500)であること;及び
前記制御手段は前記制御手段(300)であること
を特徴とする、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、枢動によって移動できる第1の出力ホイールセットを備える第1の機構、特に第1の歯車列と、枢動によって移動できる第2の出力ホイールセットを備える第2の機構、特に第2の歯車列とを備え、上記第1の機構及び上記第2の機構は、第3の機構の運動を制御するよう、配設される、時計機構に関する。
【0002】
より詳細には、この第3の機構は上記第1の機構及び上記第2の機構それぞれに固有の第1の示度又は第2の示度を少なくとも1つの表示手段上でそれぞれ必要に応じて表示するための表示機構である。
【0003】
本発明は更に、少なくとも1つの上述の時計機構を備える時計に関する。
【0004】
本発明は更に、2つの入力機構を切り替えることによって出力機構を制御するための方法に関する。
【0005】
本発明は時計のコンプリケーションの分野に関し、より詳細には時計のディスプレイの分野に関する。
【背景技術】
【0006】
異なる複数の表示間の切り替えは、時計愛好家にとって一般的なコンプリケーションであり、これは、基本のディスプレイの機構及び歯車列に追加される更なる機構及び歯車列を原因として、機械式時計の内部に大きな空間を必要とする。最もよく知られた用途としては、時間表示とクロノグラフのカウントダウン表示との間の切り替え、又はタイムゾーンの変更が挙げられる。
【0007】
これらの機構の複雑さは、このような切り替え機構が典型的には単一の用途専用のものとなるような複雑さであり、他の表示変更を設計するためにこれらを修正するのは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、可能な限り普遍的であり幅広い用途に使用可能な切り替え機構、特に表示切り替え機構を開発することである。この切り替え機構は、簡潔な方法で設計されているため、切り替え機構に使用されることが多い高価で壊れやすい差動要素を使用する必要が回避される。ハートカム等の相対位置決め要素の使用の必要も回避される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本発明は、請求項1に記載の時計機構に関する。
【0010】
本発明は更に、少なくとも1つの上述の時計機構を備えた時計に関する。
【0011】
本発明は更に、2つの入力機構を切り替えることによって出力機構を制御するための方法に関する。
【0012】
本発明の目的、利点、及び特徴は、添付の図面を参照して以下の「発明を実施するための形態」を読むことにより、更に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の範囲内では特に2つの歯車列である2つの機構のうちの一方と協働するように配設された1組の針等の、従来の表示機構の概略平面図を示す。この図は、これらの歯車列がそれぞれ発振子の出力であり、2つの発振子が全く異なる特徴を有することができる、ある具体的なケースを示している。
【
図2】
図2は、切り替え・連結機構の一部の概略斜視図を示し、この部分は、連結シャフト(図示せず)上で同軸である2つの入力ホイールセットを備える切り替えユニットを構成しており、上記2つの入力ホイールセットはそれぞれ、カップリング用凹凸部を備える連結用ホイールを摩擦によって駆動し、上記連結用ホイールは、各面に相補的カップリング用凹凸部を備えたスライド式ホイールセットを両側から挟み、上記相補的カップリング用凹凸部は、ある単一の角度位置において上記連結用ホイールの上記連結用凹凸部と協働し、所与の瞬間において上記カップリング用凹凸部にこのスライド式ホイールセットが係合される。このスライド式ホイールセットはメス型正方形を備え、これによりスライド式ホイールセットは、スライド式ホイールセットが一体として共に回転するシャフト上で、軸方向にスライドできる。スライド式ホイールセットは、板ばね又は制御レバー等の外部要素が、図の上側連結用ホイール又は下側連結用ホイールによる所望の切り替えに応じて軸方向下向き又は上向きの力を印加することを可能にする、外側溝を備える。
【
図3】
図3~51は、本発明の具体的かつ非限定的な実施例を詳細に示す。多くの図がペアとしてグループ化されており、ペアはそれぞれ、限定するものではないが特に針であるディスプレイを支承する構成部品を備える、機構の文字盤側と呼ばれる第1の側面と、反対側の、受け側と呼ばれる第2の側面とを示す。単なる慣例により、より詳細には時計ムーブメントである、切り替え式の2つの時計機構は、「上側(upper)」及び「下側(lower)」と呼ばれる。各図における構成部品のグループ化は、ある具体的な機能に対応する。
図3は、文字盤側からの機構全体の概略斜視図を示す。
【
図4】
図4は、同じ機構を受け側から同様の様式で示す。
【
図5】
図5は、文字盤側からの制御機構の概略斜視図を示し、上記制御機構は、歯付きセクタを有する、ユーザによって操作される制御レバーと、スライド式ホイールセットとの接続のためのフォークを備えた板ばねを支承するよう設計された枢動フラップとの間に、互いに関節接続された一連のレバーを備え、上記一連のレバーのうち最後の、その平面内においてレバーばねの圧力を受けるレバーは、かなを支承し、上記かなは、固定されたプレートが備える単一の歯と協働するか又は協働せず、また枢動フラップの、それ自体の軸に対して垂直な平面内の軸の周りでの回転を引き起こすために配設されており、この枢動フラップは、切り替え制御用板ばねの位置を制御する。
【
図6】
図6は、同じ制御機構を受け側から同様の様式で示す。
【
図7】
図7は、制御機構及び複数のレバーの積層体、並びに組み立て中に有利に調整できるレバーばねの、
図5の矢印Gに従った概略側面図を示す。
【
図8】
図8は、文字盤側における、休止位置へ戻るための戻り機構の概略斜視図を示し、これは制御レバーに関節接続された戻りレバーと、
図4でも確認できる、上記戻りレバーを支承する大型の戻りばねとを備える。
【
図9】
図9は、同じ戻り機構を受け側から同様の様式で示す。
【
図11】
図11は、文字盤側から見た垂直連結機構の概略斜視図であり、上記垂直連結機構はY字型の板ばねを備え、上記板ばねは、分表示用連結(minute coupling)シャフト及び時表示用連結(hour coupling)シャフトそれぞれの上で第1のスライド及び第2のスライドを動かすためのフォークを備える。図の下部の第1の分表示用連結シャフト上の筒かなは、分ディスプレイを受承するように設計され、図の上部の、第2の時表示用連結シャフトである他方のシャフトは、時を表示するための筒車を備える。
【
図12】
図12は、同じ垂直連結機構を受け側から同様の様式で示す。
【
図14】
図14は、以下で説明されるサブアセンブリに属する様々なホイールセットによって完成された、同じ垂直連結機構の概略側面図を示し、上記様々なホイールセットは、図の下から上に向かって:下側ムーブメントの伝達歯車列、上側ムーブメントの伝達歯車列、及び時表示の伝達歯車列であり、最後のものは、
図11の筒かなと同軸に設置された筒車で終端する。
【
図15】
図15は、
図14で確認できる様々なホイールセットの、第1の分表示用連結シャフト及び第2の時表示用連結シャフトを通る概略断面図を示し、これらのシャフトは断面図で示されていない。
【
図16】
図16は、下側ムーブメントの伝達歯車列の、文字盤側からの概略斜視図を示し、これは特に下側二番車及び下側筒車を備え、上記下側二番車及び上記下側筒車はそれぞれ、
図14、15の下部で確認できる分表示用連結ディスク及び時表示用連結ディスクのスロットと協働するように配設された突出部を備える。
【
図17】
図17は、下側ムーブメントの同じ伝達歯車列を受け側から同様の様式で示す。
【
図18】
図18は、下側ムーブメントの同じ伝達歯車列の、
図16の矢印Aに従った概略側面図を示す。
【
図19】
図19は、上側ムーブメントの伝達歯車列の、文字盤側からの概略斜視図を示し、これは特に上側二番車及び上側筒車を備え、上記上側二番車及び上記上側筒車はそれぞれ、
図14、15の中央部で確認できるような分表示用連結ディスク及び時表示用連結ディスクのスロットと協働するように配設された突出部を備える。
【
図20】
図20は、上側ムーブメントの同じ伝達歯車列を受け側から同様の様式で示す。
【
図21】
図21は、上側ムーブメントの同じ伝達歯車列の、
図19の矢印Bに従った概略側面図を示す。
【
図22】
図22は、回転補償機構の、文字盤側からの概略斜視図を示し、上記回転補償機構は、第1の玉軸受付きフリーホイールホイールセットと、対向して固定される第2の玉軸受付きフリーホイールホイールセットとを備える。この機構内の上述の様々なフリーホイールホイールセットは全て段差が付けられており、歯車列と噛合する上側ホイールと、玉軸受付きフリーホイールを備えるホイールとを備える。
【
図23】
図23は、同じ回転補償機構を受け側から同様の様式で示す。
【
図24】
図24は、同じ回転補償機構の2つのフリーホイールの概略上面図を示す。
【
図26】
図26は、時表示用摩擦ホイールセットと噛合する第3の玉軸受付きフリーホイールホイールセットを備える、時表示用回転分離機構の、文字盤側からの概略斜視図を示す。
【
図27】
図27は、同じ時表示用回転分離機構を受け側から同様の様式で示す。
【
図29】
図29は、分表示用摩擦ホイールセットと噛合する第4の玉軸受付きフリーホイールホイールセットを備える、分表示用回転分離機構の、文字盤側からの概略斜視図を示す。
【
図30】
図30は、同じ分表示用回転分離機構を受け側から同様の様式で示す。
【
図32】
図32は、
図14、15の上部に確認できる時表示の伝達歯車列の、文字盤側からの概略斜視図を示す。
【
図33】
図33は、時表示の同じ伝達歯車列を受け側から同様の様式で示す。
【
図35】
図35は、スライド式ホイールセット及びそのシャフトと、下側の第2の連結用ホイールと、下側の第2の入力ホイールセットとに限定された、同じ切り替えユニットの下部の部分概略上面図を示す。協働する相補的凹凸部を確認できる。第2の連結用ホイールはそれぞれ第2の連結要素を備え、これらは連結位置において、スライド式ホイールセットが備える第2の相補的連結要素と連結される。この非限定的な実施形態では、スライド式ホイールセットは、3つの凹部で形成された第2の相補的連結要素を備え、上記凹部は、互いから等しい角度位置にない、スライド軸に対して異なる半径に配置された、楕円形である。第2の連結用ホイールは、噛合を容易にするための傾斜又は放射状表面を有するポストの形態の3つの凸部で形成された第2の相補的連結要素を備え、これらのポストは、スライド式ホイールセットの上記3つの凹部と幾何学的に同一の様式で配置される。この配置により、1回転につき1つの協働位置と、正確な割り出しとが保証される。スライド式ホイールセットの表面と、これらに対向する第1の連結用ホイール及び第2の連結用ホイールの表面との間の、凸部及び凹部の他の構成を、本発明の範囲から逸脱することなく選択することもできる。この図は、この具体例における、日の裏車及び筒車の突出部と、分表示用スライド式ホイールセット及び時表示用スライド式ホイールセットの連結ディスクのスロットとの間の協働に関する、1回転につき1つの位置を示している。
【
図36】
図36~50は、本発明のこの実施形態を用いた、上側ムーブメントの時刻情報を下側ムーブメントの時刻情報に切り替える操作の、主要なステップを示す。
図36は、既に
図5~7に示されている制御機構の、切り替え開始位置における文字盤側からの概略平面図を示す。
【
図38】
図38は、同じ機構の、
図36の矢印Aに従った概略側面図を示し、その板ばねは休止位置で屈曲しており、枢動フラップと接触しておらず、スライド式ホイールセットは高い位置にある。
【
図39】
図39は、同じ機構を
図36と同様の様式で示し、分及び時表示用のスライド式ホイールセットは非係合位置にある。
【
図41】
図41は、
図39、40の位置における同じ機構の、
図39の矢印Bに従った概略側面図を示し、その板ばねは枢動フラップによって押されており、スライド式ホイールセットは真ん中の位置にある。
【
図42】
図42は、休止位置へ戻るための機構の細部の、
図9と同様の様式での受け側からの概略平面図を示し、切り替えの前に、戻りばねがこの切り替えに対抗しなくなったとき、死点を通過する。死点の位置は文字「PM」で示されている。
【
図43】
図43は、同じ機構を
図36と同様の様式で示し、分及び時表示用のスライド式ホイールセットは非係合位置にある。
【
図45】
図45は、
図43、44の位置における同じ機構の、
図43の矢印Cに従った概略側面図を示し、その板ばねは枢動フラップによってその最低位置で押されており、スライド式ホイールセットは低い位置にある。
【
図46】
図46~49は、
図22~25で確認できる制御レバーとフリーホイールとの間の協働の概略図を示す。
図46は、時計回り方向に動く第1のフリーホイールホイールセットと、その回転を防止する、制御レバーの第1の下側円筒軸受面との間の協働、及び反時計回り方向に動く第2のフリーホイールホイールセットと、その回転を可能にする制御レバーの第2の上側歯付きセクタとの間の協働を、側面図で示す。
【
図47】
図47は、制御レバーの斜視図を示し、下側部分には、第1のフリーホイールホイールセットと協働するように配設された、第1の歯付きセクタに隣接する第1の円筒軸受面を備え、上側部分には、第2のフリーホイールホイールセットと協働するように配設された、第2の歯付きセクタに隣接する第2の円筒軸受面を備え、これらの歯付きセクタは円筒軸受面の各側に延在する。
【
図48】
図48は、制御レバーが時計回りに回転し始めたときの、
図46に示されている位置におけるレバー及びフリーホイールを、文字盤側から示す。
【
図49】
図49は、制御レバーが時計回りに回転し続けているときのレバー及びフリーホイールを、文字盤側から示し、その間、第1のフリーホイールホイールセットは第1の円筒軸受面を離れて第1の歯付きセクタと噛合し、第2のフリーホイールホイールセットは第2の歯付きセクタを離れて第2の円筒軸受面に支承される。
【
図50】
図50は、制御レバーと: ‐
図46~49の第1のフリーホイールホイールセット及び第2のフリーホイールホイールセットを備える、
図22~25の回転補償機構; ‐摩擦ホイールセットと噛合する第3のフリーホイールホイールセットを備える、
図26~28の時表示用回転分離機構; ‐摩擦ホイールセットと噛合する第4のフリーホイールホイールセットを備える、
図29~31の分表示用回転分離機構; ‐
図32~34の時表示の伝達歯車列に備えられた様々なホイール間の協働とを、文字盤側から示す。
【
図51】
図51は、少なくとも1つの上述のような時計機構を備える本発明による機構を備える、特に腕時計である時計を示すブロック図であり、上記時計機構は、切り替え・連結機構と制御手段とを支承する構造体を備え、上記制御手段は、ユーザが操作できる制御部材を備える。この時計機構は、第1の機構及び/又は第2の機構にエネルギを供給するために配設されるエネルギ貯蔵手段を備える。このケースでは、第3の機構は表示機構である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、時計用切り替え機構、より詳細には、限定するものではないが特に腕時計である時計のための切り替え式ディスプレイの製造に関する。
【0015】
より詳細には、本発明は時計機構1000に関し、これは、枢動可能な第1の出力ホイールセット101を備える、限定するものではないが特に第1の歯車列である第1の機構100と、枢動可能な第2の出力ホイールセット102を備える、限定するものではないが特に第2の歯車列である第2の機構200とを備える。
【0016】
第1の出力ホイールセット101の位置は第1の入力変数に関連付けられ、第2の出力ホイールセット102の位置は第2の入力変数に関連付けられている。
【0017】
上述の第1の機構100及び第2の機構200は、それぞれ順に、第3の機構の運動と、この第3の機構が備える少なくとも1つの第3の出力ホイールセットの駆動とを制御するために配設される。図示されている例では、この第3の機構は、ユーザが行う選択に応じて第1の入力変数又は第2の入力変数の値を表示できる表示機構である。
【0018】
より詳細には、上述の第1の機構100及び第2の機構200は、その動作の点では互いに独立して連続的に動作するが、これらは例えば単一のエネルギ源によって動力供給されていてよい。
【0019】
本発明によると、この時計機構1000は切り替え・連結機構500を備え、これは、2つの入力、より詳細にはそれぞれ連続的に動作する2つの入力を構成する、第1の機構100又は第2の機構200と、出力を構成する第3の機構との間の、交互の排他的な連結のために配設される。
【0020】
この時計機構1000は更に、第1の機構100及び第2の機構200のうちの、第3の機構と係合している機構を連結解除し、また第1の機構100及び第2の機構200のうちの他方をこの第3の機構と係合させるために、ユーザが操作できる、制御手段300を備える。切り替え・連結機構500は、1回転につき1つの角度位置において、第1の機構100又は第2の機構200と上記第3の機構とを連結するための、機械的手段を備え、上記機械的連結手段は、上記1つの角度位置においてのみ連結を可能にする。
【0021】
より詳細には、この切り替え・連結機構500は、それぞれ出力ホイールセット101、102によって構成されるか、又は出力ホイールセット101、102によって直接駆動される、2つの入力ホイールセット1、2を備える。この切り替え・連結機構500はスライド式ホイールセット5、935、936を備え、これは2つの入力ホイールセット1、2の間において定常的な張力下で、特に連結シャフト937、938上で第1の方向D1に軸方向に移動できる。
【0022】
このスライド式ホイールセット5、935、936は、1回転につき1つの角度位置での正面クリックによって、ユーザが制御手段300に与えるコマンドの作用下で選択される2つの入力ホイールセット1、2のうちの一方と交互かつ排他的に協働するように配設され、これにより、所与の瞬間にスライド式ホイールセット5、935、936と係合している入力ホイールセット1、2と、上記少なくとも1つの第3の出力ホイールセットとの間の駆動接続を確立して、場合に応じて第1の入力変数又は第2の入力変数に特徴的なストロークだけ、上記第3の出力ホイールセットを枢動させる。
【0023】
より詳細には、限定するものではないが、この第3の機構は、第1の機構及び第2の機構それぞれに固有の第1又は第2の示度を、それぞれ必要に応じて少なくとも1つの表示手段上に表示するための、表示機構である。従って時計機構1000は、切り替え式ディスプレイを形成するためにこのような切り替え・連結機構500を備え、第3の出力ホイールセットは表示手段800、8、28である。
【0024】
より詳細には、出力ホイールセット101、102は、第1の機構100及び第2の機構200それぞれに固有の第1又は第2の示度の、少なくとも1つの表示手段800、8、28上での必要に応じた表示それぞれを制御するために、配設される。
【0025】
単なる慣例により、第1の機構100は「上側」機構と呼ばれ、第2の機構200、特に2つの時計ムーブメント、又は2つの歯車列、又は切り替えの対象となる他の要素は、「下側」機構と呼ばれる。
【0026】
本発明は、分表示を切り替える具体的かつ非限定的なケース、及び時表示の切り替えに関して説明されており、これらの名称が、多数の部品を区別するために使用される。本発明は当然のことながら、時計に関する他の変数の切り替え、又は力、コマンド等の伝達に関する切り替え機構にも適用可能であり、上記表示は具体的かつ非限定的な例である。
【0027】
より詳細には、第1の機能、例えば分の表示を表示するために、
図2に見られるように、スライド式ホイールセットは第1のスライド式ホイールセット5、935であり、2つの入力ホイールセット1、2は、第1のスライド軸D1を中心として同軸である。第1のスライド式ホイールセット5は、各入力ホイールセット1、2に関して1回転につき1つの相対角度位置で相補的凹凸部が協働することにより、2つの入力ホイールセット1、2のうち一度に一方のみと、直接的又は間接的に軸方向に連結されるように配設される。
【0028】
第1のスライド式ホイールセット5は、板ばね934等の外部要素、又は制御手段300が備える制御レバーが、上側連結用ホイール3又は下側連結用ホイール4による所望の切り替えに応じて軸方向下向き又は上向きの力を印加することを可能にする、外側溝59を備える。第1のスライド式ホイールセット5は、少なくとも1つの上述のような板ばね934、又は1つの上述のようなレバーによって、その連結位置に保持される。より詳細には、板ばね934は、第1のスライド式ホイールセット5、935の軸方向の位置決めを制御した後、軸方向位置を維持するために配設される。この制御手段300は更に、第1のスライド式ホイールセット5、935に回転移動を付与することによって、第1のスライド式ホイールセット5、935と、それが押し付けられるホイールセットとの間の第1の連結位置を見つけ出すように配設される。同様に、同じ板ばね934、又は制御手段300によって同様に制御される別の板ばねが、別のスライド式ホイールセットの軸方向運動を制御できる。
図3~50は、同じ板ばね934が第1のスライド式ホイールセット935及び第2のスライド式ホイールセット936の同時運動を制御する好ましいケースを示している。
【0029】
より詳細には、各スライド式ホイールセット5、935、936は、同軸のスライド式連結スリーブである。
図2は、分表示を管理するための第1のスライド式ホイールセット5を示し、このスライド式ホイールセットは、一方では、第1の入力ホイールセット1によって、特に弾性アーム13によって摩擦駆動される下側分表示用連結用ホイール3と、そして他方では、第2の入力ホイールセット2によって、特に弾性アーム24によって摩擦駆動される上側分表示用連結用ホイール4と、連結するための、同軸スライド式連結スリーブである。更に、第1の入力ホイールセット1又は第2の入力ホイールセット2は、それぞれ下側分表示用連結用ホイール3又は上側分表示用連結用ホイール4を駆動するように配設される。
【0030】
上述の下側分表示用連結用ホイール3及び上側分表示用連結用ホイール4はそれぞれ、
図2には示されていない第1の連結要素、及び第2の連結要素401を備え、これらは、一度に1つずつ、関連するスライド式ホイールセット、この場合は第1のスライド式ホイールセット5が備える、
図2には示されていない第1の相補的連結要素5301又は第2の相補的連結要素と、連結位置で交互に協働するように配設される。
【0031】
更に制御手段300は、この第1のスライド式ホイールセット5に、下側分表示用連結用ホイール3又は上側分表示用連結用ホイール4に当接するまで軸方向移動を与え、また第1のスライド式ホイールセット5に回転移動を与えることにより、第1のスライド式ホイールセット5と、このスライド式ホイールセット5が押し付けられる下側分表示用連結用ホイール3又は上側分表示用連結用ホイール4との間の、第1の連結位置を見つけ出すように、配設される。
図3~50に示されているケースでは、第1のスライド式ホイールセット935及び第2のスライド式ホイールセット936は同一の方法で配設され、それぞれがそれ自体のシャフト937、938上でスライドする。
【0032】
各スライド式ホイールセットの、それ自体のシャフト上での連結位置に向かう軸方向スライド運動は、2段階で発生することが理解される:まず、板ばねがスライド式ホイールセットに力を印加することにより、スライド式ホイールセットが、連結用ホイールのうちの一方の凹凸部に軸方向に支承される位置へと動かされ、次に、このスライド式ホイールセット及びこの連結用ホイールの相対的な回転中に、これら2つのホイールセットは、それぞれの凸部及び凹部が協働する1つの角度の連結位置に到達し、これにより、軸方向移動の終了(これは、関連する連結用ホイールに完全に係合したスライド式ホイールセットの連結に対応する)が認められる。連結解除時には、板ばねによって付与される反対方向の軸方向支承により、スライド式ホイールセットを引き抜いて他方の連結用ホイールに向かって移動させることができ、スライド式ホイールセットは、上側連結用ホイールからの引き抜きの経路と、下側連結用ホイールまでの経路との間、又はその逆を、無負荷で移動する。
【0033】
第1のスライド式ホイールセット5、935の構成に関する様々な代替実施形態が以下で説明され、これらは、第2のスライド式ホイールセット936、又は切り替え・連結機構500が備える可能性がある他のいずれの同様のスライド式ホイールセットにも適用可能である。
【0034】
より詳細には、切り替え・連結機構500は、少なくとも1つの弾性復帰手段を備え、これは、第1のスライド式ホイールセット5、935を軸方向に押して、このスライド式ホイールセット5、935が押し付けられる下側分表示用連結用ホイール3又は上側分表示用連結用ホイール4に当接させるように、配設される。
【0035】
より詳細には、第1の連結要素及び第2の連結要素はそれぞれ第1の爪クラッチ要素及び第2の爪クラッチ要素であり、これらは、一度に1つずつ、それぞれ第1の相補的爪状要素及び第2の相補的爪状要素である第1の相補的連結要素又は第2の相補的連結要素と、爪クラッチ係合位置で交互に協働するように配設される。
【0036】
より詳細には、制御手段300は、第1のスライド式ホイールセット5、935と共に回転するように一体となった中間車に回転移動を与えることにより、第1のスライド式ホイールセット5、935と、このスライド式ホイールセット5が押し付けられる下側分表示用連結用ホイール3又は上側分表示用連結用ホイール4との間の連結位置を見つけ出すために配設される。
【0037】
より詳細には、第1のスライド式ホイールセット5、935は、下側分表示用連結用ホイール3に面する第1の面、及び上側分表示用連結用ホイール4に面する第2の面上に、少なくとも1つのポスト又はスロットを備え、これは、第1のスライド式ホイールセット5、935の回転移動中に、360°以下の相対的回転中のある1つの協働位置において、下側分表示用連結用ホイール3及び上側分表示用連結用ホイール4が備える溝又はポストと相補的に協働するよう配設される。
【0038】
より詳細には、第1のスライド式ホイールセット5、935は、第1の連結シャフト937上でスライドするように設置され、この第1の連結シャフト937によって第1のスライド式ホイールセット5、935の回転が割り出され、この第1の連結シャフト937は、表示手段800、8、28を直接又は間接的に回転させるために配設される。
【0039】
より詳細には、上記第1の連結シャフト937は、中間車が組み込まれた歯車列を介して、又は第1の連結シャフト937によって回転が割り出される中間車を介して、表示手段800、8、28を回転させるように配設される。
【0040】
より詳細には、第1の出力ホイールセット101及び第2の出力ホイールセット102は定常的に回転する。
【0041】
本発明は、あらゆる種類の変数の表示に使用できる。
【0042】
より詳細には、第1の出力ホイールセット101及び第2の出力ホイールセット102は、少なくとも1つの表示手段800、8、28上での、時間的示度である第1の示度及び第2の示度の各表示を制御するために配設される。
【0043】
本発明のある非限定的な例示的応用例を、このケースにおいては時針28及び分針8を備える同一の表示媒体800上での2つの別個の時間的示度の表示に関して、以下で説明する。
【0044】
より詳細には、第1の機構、特に第1の歯車列100は第1の調速部材1100によって駆動され、第2の機構、特に第2の歯車列200は第2の調速部材1200によって駆動され、これらの第1の調速部材1100及び第2の調速部材1200は、それぞれ第1及び第2の時間的示度の表示のために、互いに独立して又は独立せずに、ユーザの介入なしに、連続的に動作するように配設され、またそれぞれ、定常的に回転する第1の入力ホイールセット1及び第2の入力ホイールセット2を備える。
【0045】
より詳細には、上述の第1の調速部材1100及び第2の調速部材1200は異なる方法で調速される。ある具体的なケースにおいては、第1の調速部材1100は第1の時間を表示するように調速され、第2の調速部材1200は第2の時間を表示するように調速される。制御手段300により、ユーザは、第1の時間又は第2の時間に従って自由に時間を表示させることができ、本発明による機構は、これら2つの時間のうち所与の瞬間に表示されていない方のカウントダウンの継続を可能にする。
【0046】
従って
図2は、上述の例に関する切り替え・連結機構500を示す。第1のいわゆる「下側の」時間専用の第1の機構、特に第1の歯車列100は、下側の第1の日の裏車である第1の入力ホイールセット1を駆動し、第2のいわゆる「上側の」時間専用の第2の機構、特に第2の歯車列200は、上側の第2の日の裏車である第2の入力ホイールセット2を駆動する。第1の入力ホイールセット1は下側分表示用連結用ホイール3に摩擦接続され、第2の入力ホイールセット2は上側分表示用連結用ホイール4に摩擦接続される。下側分表示用連結用ホイール3及び上側分表示用連結用ホイール4はそれぞれ第1の連結要素及び第2の連結要素を備え、このケースではこれらは、第1のスライド軸D1に対して平行な方向に延在する突出部によって形成され、また
図35に示されているように異なる直径にわたって分布する。これらの突出部の遠位部分は傾斜しているか又は放射状になっており、これにより、第1のスライド式ホイールセット5、935のスロットとの協働が容易になる。軸D1に対して垂直な平面に突出し、かつ上記突出部に対して相補的であるこれらのスロットは、第1の相補的連結要素及び第2の相補的連結要素を構成する。当然のことながら、製造プロセスを簡略化するために、これらのスロットは第1のスライド式ホイールセット5、935の2つの面において一致していてよい。下側分表示用連結用ホイール3又は上側分表示用連結用ホイール4と第1のスライド式ホイールセット5、935との間の連動的な協働は、
図35に示されているように、スライド式ホイールセットが関連する連結用ホイールと当接するように配置された後、360°の回転につき1つの位置のみで可能である。
【0047】
第1のスライド軸D1の方向における軸方向支持は、容易に形成できる。第1のスライド式ホイールセット5、935は、第1の正方形プロファイルに従って、第1の連結シャフト937上で移動できる。ある代替実施形態では、第1の連結シャフト937は中間車を支承し、従ってこの中間車は第1のスライド式ホイールセット5、935と共に回転するように一体となっている。この中間車は、分表示用軸の周りで枢動する筒かな8と噛合する。従って第1のスライド式ホイールセット5、935は、表示したい時間情報に応じて、この筒かな8と、日の裏車1又は2に対応する下側分表示用連結用ホイール3又は上側分表示用連結用ホイール4との間の連結を保証する。
【0048】
しかしながら、第1のスライド式ホイールセット5、935と、生成される表示に対応する下側分表示用連結用ホイール3又は上側分表示用連結用ホイール4との間の整列の角度位置を見つけ出す必要があるため、上述の軸方向連結だけでは不十分である。この場合、関連する機構の間のみで連結を実施できる。
【0049】
この目的のために、制御手段300は、第1のスライド式ホイールセット5、935を回転するように駆動するための手段を備え、上記手段は、360°以下の回転で1つの整列位置を見つけ出すために、第1のスライド式ホイールセット5、935が軸方向に押し付けられる下側分表示用連結用ホイール3又は上側分表示用連結用ホイール4に対する回転を、第1のスライド式ホイールセット5、935に与えるように配設される。図面は、厚みが小さいことを特徴とする非限定的な例示的実施形態を示し、これは特に腕時計である時計2000に他のコンプリケーションを組み込むために有利である。
【0050】
図面は、分表示切り替えユニットによる分表示、及び時表示用切り替えユニットによる時表示をベースにして、複数の時間的変数の表示を可能にするための、上述の原理の拡張を示す。ある具体的実施形態では、切り替え・連結機構500は、時表示を切り替えることができるように配設され、2つの2次入力ホイールセットを備える。2次スライド式ホイールセット936は、2次入力ホイールセットの間において定常的な張力下で第2の連結シャフト938上を軸方向に移動できる。
【0051】
より詳細には、第2のスライド式ホイールセットは溝を更に備え、2つの2次入力ホイールセットは、第2のスライド軸を中心として同軸である。より詳細には、第2のスライド式ホイールセットは、第1の2次入力ホイールセットによって摩擦駆動される下側時表示用連結用ホイール、及び第2の2次入力ホイールセットによって摩擦駆動される上側時表示用連結用ホイールと連結するための、同軸のスライド式連結スリーブであり、第1の2次入力ホイールセット又は第2の2次入力ホイールセットは、それぞれ下側時表示用連結用ホイール又は上側時表示用連結用ホイールを駆動するように配設される。時表示の切り替え専用のこの組立体の全ての部品は、分表示のものと同様である。
【0052】
分表示切り替えユニットと時表示切り替えユニットとの接続は、分表示切り替えユニットに、それぞれ下側時表示用連結用ホイール3及び上側時表示用連結用ホイール4と一体の中間伝達ホイール、並びにそれぞれ下側時表示用連結用ホイール及び上側時表示用連結用ホイールに係合する移行部ホイールを追加することによって達成される。時表示用連結シャフトである第2の連結シャフトは、2次ねじによって保持された、特に筒かなと同軸である筒車と係合する、2次中間車を支承する。非限定的な実施形態では、板ばね934はY字型フォークであり、その各脚は、対応する第1のスライド式ホイールセット5、935、又は対応する第2のスライド式ホイールセット936に対して作用する。
【0053】
上述の下側分表示用連結用ホイール3及び上側分表示用連結用ホイール4はそれぞれ第1の連結要素及び第2の連結要素を備え、これらは、一度に1つずつ、スライド式ホイールセットが備える第1の相補的連結要素又は第2の相補的連結要素と連結位置で交互に協働するように配設される。
【0054】
更に制御手段300は、第1のスライド式ホイールセット5、935に、下側分表示用連結用ホイール3又は上側分表示用連結用ホイール4に当接するまで軸方向移動を与え、また第1のスライド式ホイールセット5、935に回転移動を与えることにより、第1のスライド式ホイールセット5、935と、この第1のスライド式ホイールセット5、935が押し付けられる下側分表示用連結用ホイール3又は上側分表示用連結用ホイール4との間の、第1の連結位置を見つけ出すように、配設される。
【0055】
より詳細には、切り替え・連結機構500は、少なくとも1つの弾性復帰手段を備え、これは、第1のスライド式ホイールセット5、935を軸方向に押して、この第1のスライド式ホイールセット5、935が押し付けられる下側分表示用連結用ホイール3又は上側分表示用連結用ホイール4に当接させるように、配設される。
【0056】
図3~50は、本発明の具体的かつ非限定的な実施例を詳細に示す。
【0057】
切り替え式表示機構1000は、2つの別個の歯車列、限定するものではないが特に2つの別個の時計ムーブメントの、時間的示度の表示に関する。これら2つの別個の歯車列は常時動作する。ある具体的な代替実施形態では、これらの歯車列は互いに独立して動作し、別個の調速部材を備える。別の代替実施形態では、第2の機構、特に第2の歯車列は、第1の機構、特に第1の歯車列の特定のホイールセットの運動の減速から生じる。切り替え機構の使用により、いつでも必要に応じていずれかの時間的示度を表示できる。
【0058】
上記機構は基本的に以下の機能ユニットからなる:
‐(図示されている具体的かつ非限定的な実施形態では、一方は分を表示するため、他方は時を表示するための)2つの切り替え式垂直連結;
‐垂直カップリングの2つのシャフトを回転させることができる歯車列;
‐係合解除/連結、及び回転運動の伝達を制御する機構。
【0059】
図3、4は、機構全体をそれぞれ文字盤側及び受け側から示す。
【0060】
図5は、文字盤側から見た制御機構300を示し、これは、歯付きセクタを有し、回転運動及び連結を制御する、ユーザによって操作される制御レバー922と、溝又は同様の要素において少なくとも1つのスライド式ホイールセット、限定するものではないが特に第1のスライド式ホイールセット935及び第2のスライド式ホイールセット936と協働するように配設された少なくとも1つの接続フォーク9345、9346を備える板ばね934を支承するよう設計された、枢動フラップ930との間に、互いに関節接続された一連のレバー:第1のレバー923、第2のレバー924、第3のレバー925、及び第4のレバー928を備える。
【0061】
第3のレバー925は、回転運動を、第4のレバー928が支承するかな926に伝達する。
【0062】
第4のレバー928はピン9280を備え、これは第3のレバー925のスロット9250内でスライドし、その平面内においてレバーばね929の圧力を受ける。かな926は、第4のレバー928を回転させるために、第3のレバー925の歯付きセクタ9259及び/又はレバーばね929の圧力下で調整可能な固定されたプレート927が備える単一の歯9270と協働するか、あるいは協働しない。レバーばね929は、組み立て中に調整可能な軸受支持体931に支承された状態で協働する。この第4のレバー928は、上述の全てのレバーと平行な平面に対して平行な軸の周りで枢動フラップ930を枢動させることによって、板ばね934の変形及び/又は運動を制御するために、枢動フラップ930のフィンガ9300又は溝と協働する溝又はフィンガを備える。
【0063】
制御レバー922は、その中央面の両側に2つの歯付きセクタ9224、9221を備え、これらはそれぞれ円筒軸受面9223、9222によって延長され、上記2つの円筒軸受面は、
図46、47に示されているように、この中央面上に投影した場合に上記2つの歯付きセクタの間に位置する。
【0064】
受け側からの
図6は、第4のレバー928と枢動フラップ930との間の協働を示す。
図7は、一連のレバー、及びレバーばね929を示す。
【0065】
図8~10は、休止位置へ戻るための機構を示し、これは、戻りレバー932であって、この戻りレバー932をガイドする制御レバー922に関節接続された、戻りレバー932と、この戻りレバー932のピンに支承された戻りばね933とを備え、戻りばね933は非常に大型で、この機構の最大のレバーの寸法と同等の寸法を有し、また
図27の右側において極めて容易に確認できる。この戻りばね933は、最終位置において制御レバー922を戻りレバー932に押し付け、以下で説明されるように中立ばねを構成する。
【0066】
図11~13は垂直連結機構を示し、これはY字型の板ばね934を備え、この板ばね934は、第1のスライド式ホイールセット935及び第2のスライド式ホイールセット936をそれぞれの分表示用連結シャフト937及び時表示用連結シャフト938上で動かすためのフォーク9345、9346を備える。分表示用連結シャフト937上の筒かな939は、分表示用ディスプレイを受承するように設計され、その一方で時表示用連結シャフト938は、時を表示するための筒車940を備える。各スライド式ホイールセット935、936は、入力連結用ホイール93、98、95、910が備える突出部930、980、950、9100と連結するために設計されたスロット9350、9360を備える。
【0067】
図14は、様々なサブアセンブリに属する様々なホイールセットによって完成された、同じ垂直連結機構を示し、上記様々なホイールセットは、図の下から上に向かって:下側ムーブメントの伝達歯車列、上側ムーブメントの伝達歯車列、及び時表示の伝達歯車列であり、最後のものは、限定するものではないがこの場合は筒かな939と同軸に設置された、筒車913で終端する。
図15は、同じ機構を、分表示用連結シャフト937及び時表示用連結シャフト938を通る断面図で示す。
【0068】
図16~18は下側ムーブメントの伝達歯車列を示し、これは、表示を調整するための摩擦部品を備える下側分表示用入力ホイール91、下側反転中間車92、下側分表示用連結用ホイール93、下側反転ホイール94、及び下側時表示用連結用ホイール95を連続的に備える。下側分表示用連結用ホイール93及び下側時表示用連結用ホイール95はそれぞれ突出部930、950を備え、これらは連結位置において、スライド式ホイールセット935、936によって構成される分表示用連結ディスク及び時表示用連結ディスクの上述のスロット9350、9360と協働するように配設される。
【0069】
図19~21は上側ムーブメントの伝達歯車列を示し、これは、表示を調整するための摩擦部品を備える上側分表示用入力ホイール96、上側反転中間車97、上側分表示用連結用ホイール98、上側反転ホイール99、及び上側時表示用連結用ホイール910を連続的に備える。上側分表示用連結用ホイール98及び上側時表示用連結用ホイール910はそれぞれ突出部980、9100を備え、これらは、分表示用連結ディスク及び時表示用連結ディスクのスロット9350、9360と協働するように配設される。
【0070】
図22~25は回転補償機構を示し、これは、第1の中間車916及び第2の中間車917によって互いに接続された、時計回り方向に自由である第1のフリーホイールホイールセット914と、第1のものに対向して固定される第2のフリーホイールホイールセット915とを備える。
【0071】
図26~28は時表示用回転分離機構を示し、これは、通常運転時に切り替え運動を分離する第3のフリーホイールホイールセット918を備え、これは、連結後に残りの回転運動を補償する第3の時表示用摩擦ホイールセット919と噛合する。
【0072】
図29~31は分表示用回転分離機構を示し、これは、通常運転時に切り替え運動を分離する第4のフリーホイールホイールセット920を備え、これは、連結後に残りの回転運動を補償する第4の分表示用摩擦ホイールセット921と噛合する。
【0073】
図32~34は
図14、15の上部に確認できる時表示の伝達歯車列を示し、これは時表示用回転分離機構の下流の、時表示用シャフト938と共に回転するように時表示用シャフト938と一体となっている第1の時表示用伝達ホイール911を備え、これは、歯部の遊びを補償するための一体型ばねを備える時表示用伝達用中間車912と噛合して、分表示用シャフト上の筒かな939と同軸に設置された筒車913を駆動する。
【0074】
図35は、二番車及び筒車の突出部930、950、980、9100と、分表示用連結ディスク935及び時表示用連結ディスク936のスロット9350、9360との間の、1回転につき1つの協働位置の構成を、重ね合わせて示したものである。このケースでは、突出部及びスロットは、異なる値である3つの半径R1、R2、R3上に分散されている。有利には、これらの角度位置は互いから等距離ではなく、角度α12、α13、α23は互いに異なる。
【0075】
図36~50は、本発明の第2の実施形態を用いた、上側ムーブメントの時刻情報から下側ムーブメントの時刻情報への切り替え動作の主要なステップを示す。
【0076】
図36~38は、切り替え開始位置にある
図5~7の制御機構を示し、板ばね934はその休止位置で屈曲しており、枢動フラップ930に接触しておらず、スライド式ホイールセット935、936は高い位置にある。
【0077】
図39~41は、分及び時の非連結位置における、同じ機構を示す。板ばね934は枢動フラップ930によって押され、スライド式ホイールセット935、936は真ん中の位置にある。
図39では、矢印は第3のレバー925の運動を示し、
図3、36ではスロット9250内での移動の終点にあったピン9280は、ここではこのスロットの略中央にある。
【0078】
図42は、休止位置へ戻るための機構の細部を
図9と同様の様式で示し、切り替えの前に、戻りばね933がこの切り替えに対抗しなくなったとき、死点PMを通過する。
【0079】
図43~45は、分及び時の非連結位置における、同じ制御機構を示す。板ばね934はその最低位置において枢動フラップ930によって押され、スライド式ホイールセット935、936は低い位置にある。
図43は、ピン9280がここでは、
図3、36に示されているものとは反対側の、スロット9250内での移動の終点にあることを示している。
【0080】
図46~49は、
図22~25で確認できる制御レバー922と第1のフリーホイールホイールセット914及び第2のフリーホイールホイールセット915との間の協働の概略図を示す。
【0081】
図46は、時計回り方向に動く第1のフリーホイールホイールセット914と、その回転を防止する、制御レバー922の第1の下側円筒軸受面9222との間の協働、及び反時計回り方向に動く第2のフリーホイールホイールセット915と、その回転を可能にする制御レバー922の第2の上側歯付きセクタ9224との間の協働を示す。
【0082】
図47は制御レバー922を示し、その下側部分には、第1のフリーホイールホイールセット914と協働するように配設された、第1の歯付きセクタ9221に隣接する第1の円筒軸受面9222を備え、またその上側部分には、第2のフリーホイールホイールセット915と協働するように配設された、第2の歯付きセクタ9224に隣接する第2の円筒軸受面9223を備え、これらの歯付きセクタ9221、9224は円筒軸受面9222、9223の各側に延在する。
【0083】
図48は、制御レバー922が時計回りに回転し始めたときの、
図46に示されている位置におけるレバー及びフリーホイールを示す。
図49は、制御レバー922が時計回りに回転し続けているときのレバー及びフリーホイールを示し、その間、第1のフリーホイールホイールセット914は第1の円筒軸受面9222を離れて第1の歯付きセクタ9221と噛合し、第2のフリーホイールホイールセット915は第2の歯付きセクタ9224を離れて第2の円筒軸受面9223に支承される。
【0084】
図50は、制御レバー922と:
‐
図46~49の第1のフリーホイールホイールセット914及び第2のフリーホイールホイールセット915を備える、
図22~25の回転補償機構;
‐時表示用摩擦ホイールセット919と噛合する第3のフリーホイールホイールセット918を備える、
図26~28の時表示用回転分離機構:
‐分表示用摩擦ホイールセット921と噛合する第4のフリーホイールホイールセット920を備える、
図29~31の分表示用回転分離機構;
‐
図32~34の時表示の伝達歯車列
に備えられた様々なホイール間の協働とを、まとめたものである。
【0085】
2つのムーブメントそれぞれに対応する時刻情報は、下側二番車93若しくは上側二番車98の、又は下側筒車95若しくは上側筒車910の、連結ディスクに保存される。連結ディスクを含む上記1つ以上の二番車/筒車は、駆動運動によって常に回転する。切り替えの目的は、ある時点において2つのムーブメントのうちの一方のみから保存された時刻情報にアクセスすることである。
【0086】
まず、上側ムーブメントの時刻情報から下側ムーブメントの時刻情報への切り替えを説明する。
【0087】
開始点:(現時点では上側ムーブメントからの)対応する時刻を、歯車列の分表示用シャフトを介して、第1の摩擦部品(この摩擦部品は、表示される時刻を補正するために必要である)によって、第1の上側分表示用入力ホイール96に入力する;
‐回転運動を、上側分表示用入力設定ホイール97を介して上側分表示用連結用ホイール98に伝達する;
‐この上側分表示用連結用ホイール98は突出部980を備え、これは、360°の回転につき1つの位置において、分表示用連結ディスク935の対応するスロット9350に挿入されることにより、上側分表示用連結用ホイール98と分表示用連結ディスク935との間のカップリングを確立できる;
‐(文字盤側に向かって)事前に応力を掛けられた板ばね934は、分表示用連結ディスク935を上側分表示用連結用ホイール98に向かって押すことにより、回転運動の伝達を保証する;
‐分表示用連結ディスク935は分表示用連結シャフト937と一体化され、従って分表示用連結ディスク935は、例えば正方形の手段等によって、分表示用連結シャフト937と共に回転することにより、回転運動を、打ち込み等によって分表示用連結シャフト937と一体となった筒かな939に伝達し;分表示用針はこの筒かな939に固定される;
‐時刻表示のために、上側分表示用連結用ホイール98と上側筒車910との間の対応する減速を、上側段付きホイール99によって得る;
‐上側筒車910もまた突出部9100を備え、これは上記と同様に、時表示用連結ディスク936の対応するスロット9360に挿入されることにより、上側筒車910と時表示用連結ディスク936との間のカップリングを確立できる;
‐第2の連結ディスク936は、例えば正方形の手段等によって時表示用連結シャフト938と共に回転するように、時表示用連結シャフト938と一体化され;第1の時表示用伝達ホイール911は、正方形の手段等によって第2のシャフト938と共に回転するように、第2のシャフト938と一体化される;
‐第一の時表示用伝達ホイールの回転運動は、時表示用伝達用中間車912を介して、時針が設置された筒車913に伝達される。
【0088】
切り替えはケース上の切り替え要素によって実行され、ユーザは2つの時刻情報の値を切り替えることができる。上記切り替え要素は、このケースでは制御レバー922によって形成される、又はこのケースではこの制御レバー922の付属物によって形成される、第1のラックレバーを駆動して、これを
図39、40の軸D22の周りで枢動させる。
【0089】
制御レバー922のストローク全体は、2つのストローク部分に分割され、(連結解除のための)板ばね934の制御と、位置の選択及び分表示用連結ディスク935と時表示用連結ディスク936との再連結のための回転運動の伝達とを含む。
【0090】
第1のストローク部分では、分表示用連結ディスク935及び時表示用連結ディスク936はそれぞれ、上側分表示用連結用ホイール98及び上側筒車910から係合解除される。
【0091】
第2のストローク部分は、回転運動を分表示用連結シャフト937及び時表示用連結シャフト938に伝達でき、これによって分表示用連結ディスク935及び時表示用連結ディスク936を、感触を目的として下側分表示用連結用ホイール93及び下側時表示用連結用ホイール95の突出部に支承させて、上記突出部に係合させることができる。
【0092】
第1のストローク部分について詳述する。
【0093】
連結:この場合、制御レバー922は、第1のレバー923及びこの第1のレバー923に関節接続された第2のレバー924を介して(上面図で)上向きに傾斜し、第2のレバー924に関節接続された第3のレバー925は反時計回り方向に引っ張られる;
‐ラックが設けられた第3のレバー925は、第4のレバー928のピンによってガイドされ、そのラックは、第4のレバー928上で枢動する、転動するかな926と噛合する;
‐かな926は、プレート927が備える単一の歯9270によって保持され、この第4のレバー928は、レバーばね929によって、反時計回り方向に、プレート927に対して押し付けられた状態で保持される;
‐ここで、第3のレバー925がかな926によって反時計回り方向に引っ張られた場合、かな926はプレート927の単一の歯に引っかかり、第4のレバー928の反時計回りの回転運動を引き起こす;
‐第4のレバー928は更なるピンを備え、これは枢動フラップ930と協働してこれを下向きにたわませることにより、板ばね934を押す;従って、板ばね934の位置を決定して切り替えを制御するのは、この枢動フラップ930である;
‐これによって板ばね934は枢動フラップ930によって下向きにたわみ、これにより、分表示用連結ディスク935及び時表示用連結ディスク936をそれぞれ上側分表示用連結用ホイール98及び上側筒車910に対して上向きに押し付ける圧力が、分表示用連結ディスク935及び時表示用連結ディスク936が連結解除されるまで低減される;
‐この時点から、分表示用連結シャフト937及び時表示用連結シャフト938は自由に回転し、関連付けられた分表示用連結ディスク935及び時表示用連結ディスク936、並びに表示針も同様である。
【0094】
回転運動:制御レバー922に付与される回転運動は、第1の玉軸受付きフリーホイールホイールセット914及び第2の玉軸受付きフリーホイールホイールセット915にまだ伝達されておらず、これらはそれぞれ時計回り及び反時計回りの回転が可能であり、対向して固定されており、また、制御レバー922が備える2つの歯付きセクタ9221、9224のうちの一方と噛合するよう設計され、各上記歯付きセクタは、ホイールが噛合できずスライドすることしかできない円筒軸受面9222又は9223に隣接する。
‐時計回り方向の第1の玉軸受付きフリーホイールホイールセット914は、制御レバー922の円筒軸受面9222の表面を介して、角度位置に保持される;
‐反時計回り方向の第2の玉軸受付きフリーホイールホイールセット915は、下側歯部により、制御レバー922の歯付きセクタ9224によって駆動され、また、フリーホイール方向の回転運動が存在するため、この運動は上側歯部に伝達されない。
【0095】
第1のストローク部分の完了時の機構全体の状態が、分表示/時表示の連結解除に関して、
図39~42に示されている。第1のストローク部分の終点には、制御レバー922の歯付きセクタが第1の玉軸受付きフリーホイールホイールセット914と噛合し始めることによって回転運動の伝達が開始されるとすぐに到達する。
【0096】
第2のストローク部分について詳述する。
【0097】
連結:第3のレバー925は、反時計回りに更に引っ張られることにより、かな926の更なる転動、及びこれに伴う第4のレバー928の更なる枢動を引き起こし、これは枢動フラップ930を更に枢動させて、板ばね934により多くの圧力を印加する;
‐これにより、分表示用連結ディスク935及び時表示用連結ディスク936の支承圧力が上昇する;
‐単一の歯を備えるプレート927は調整可能であり、これにより、分表示用連結ディスク935及び時表示用連結ディスク936がそれぞれ下側二番車93及び下側筒車95に押し付けられる最大圧力を任意に調整できる(上記圧力が低すぎると、連結ディスクは突出部に押し付けられず;上記圧力が高すぎると、これは運動を遅くする高価があり、従って振幅に悪影響を与える);
‐従ってある特定の点から、かな926は完全に単一の歯9270より上にあり、第3のレバー925を更に引っ張る間に転動及びスライドする。
【0098】
回転運動:第1の玉軸受付きフリーホイールホイールセット914はここで(即ち第2のストローク部分の開始時点から)、制御レバー922の歯付きセクタ9221によって駆動される;
‐回転運動は、第1の中間車916及び第2の中間車917を介して伝達される;
‐第2の玉軸受付きフリーホイールホイールセット915は依然としてフリーホイール方向に部分的に駆動され、移動が更に進むと、制御レバー922の円筒軸受面9223によって所定の位置に保持される;
‐第2の玉軸受付きフリーホイールホイールセット915の上側ホイールは、第2の中間車917によって駆動される;しかしながら、第2の玉軸受付きフリーホイールホイールセット915の上側ホイールはフリーホイール方向に駆動されるため、いかなる固定にもつながらない;
‐第2の中間車917の後、回転運動は、一方では分表示のための歯車列、及び他方では時表示のための歯車列において変換される;
‐この分割が必要なのは、分表示及び時表示それぞれのための連結を、分表示用連結ディスク935及び時表示用連結ディスク936の瞬間的な角度位置に対する(二番車又は筒車上の)突出部の相対位置に応じて、異なる瞬間に連結できるためである;
‐2つのムーブメントの表示の切り替えが必要ない場合に、通常動作中に回転運動に関して歯車列とムーブメントを分離するために、上記2つの歯車列はそれぞれ第3の玉軸受付きフリーホイールホイールセット918及び第4の玉軸受付きフリーホイールホイールセット920を必要とする;
‐更に、上記2つの歯車列はそれぞれ、第3の分表示用摩擦ホイール921及び第4の時表示用摩擦ホイール919である摩擦部品を備え、これらはそれぞれ、各連結ディスクと、分表示のための突出部を備える第2の上側二番車98、又は時表示のための突出部を備える上側筒車910との間のカップリングが形成されるとすぐにスライドするように配設されるが、制御レバー922の完全な移動はまだ完了していない;
‐第3の分表示用摩擦ホイール921及び第4の時表示用摩擦ホイール919は、それぞれ、筒かな939、又は時表示用連結シャフト938と一体化されて共に回転するように設置された筒車940と噛合することにより、トルクの伝達を可能にする形状嵌合接続を介して回転運動をそれぞれ分表示用連結シャフト937又は時表示用連結シャフト938に、従って分表示用連結ディスク935及び時表示用連結ディスク936に、伝達できる;
‐分表示用連結ディスク935及び時表示用連結ディスク936は、これらが含むスロットがそれぞれ下側二番車93又は下側筒車95の突出部と整列するまで、最大で360°だけ回転させられる;
‐限定するものではないが特に針である表示も、最大で360°だけ回転する(時計回り)。
【0099】
休止位置:機構のロック、従ってユーザによる各切り替えの開始時又は終了時の位置決めは、戻りばね933によって実行され、この戻りばね933は、移動の終了位置において、中立板ばねのように、制御レバー922を戻り制御レバー932に押し付ける;
‐制御レバー922の回転角度の前半では、戻りばね933は回転運動に対向してこれに反作用し;上記回転運動の後半では、戻りばね933は回転運動に追従して、制御レバー922をその最終位置へと可能な限り押し込む。
【0100】
反対の動作に関して、下側ムーブメントの時刻情報を上側ムーブメントの時刻情報に切り替えるためのプロセスは、上側ムーブメントから下側ムーブメントへの上述の切り替えに関するプロセスと同様である。
【0101】
制御レバー922の回転の方向、及びこれに関連する板ばね934に対する制御の運動だけが逆になる。制御レバー922の経路はここでも2つのストローク部分に分割される。
【0102】
第1のストローク部分:
【0103】
連結:板ばね934の圧力下で、第4のレバー928はかな926に対して時計回りに、プレート927の単一の歯に到達するまで押し付けられる;
‐制御レバー922の運動が続くと、第3のレバー925は時計回りに枢動する;
‐ここでかな926はプレート927の単一の歯の上で転動できるため、第4のレバー928上で時計回り方向に転動でき、これにより板ばね934が緩められ、分表示用連結ディスク935及び時表示用連結ディスク936が、それぞれ上側二番車93又は上側筒車95から連結解除されるまで、上向きに押される。
【0104】
回転運動:第2の玉軸受付きフリーホイールホイールセット915は、制御レバー922の円筒軸受面9223によって所定の位置に保持される;
‐第1の玉軸受付きフリーホイールホイールセット914はフリーホイール方向に回転するため、いずれの回転運動もまだ伝達していない。
【0105】
第2のストローク部分:
【0106】
連結:板ばね934は更に緩められる;
‐枢動フラップ930はもはや板ばね934と接触しない;
‐分表示用連結ディスク935及び時表示用連結ディスク936はそれぞれ、上側分表示用連結用ホイール98又は上側筒車910に適用され、これらに押し付けられる。
【0107】
回転運動:制御レバー922の回転運動はその歯部によって、第2の玉軸受付きフリーホイールホイールセット915を介して、歯車列916-917-918-919、又は916-917-920-921へ、そして分表示用連結シャフト937及び時表示用連結シャフト938へ、更に分表示用連結ディスク935及び時表示用連結ディスク936まで伝達され、これにより、これらを上側分表示用連結用ホイール98又は上側筒車910の突出部と係合させる。
【0108】
本発明は更に、少なくとも1つの上述の時計機構1000を備える、特に腕時計である時計2000に関する。
【0109】
有利には、構造体600は、切り替え・連結機構500と、ユーザによって操作される制御部材、特にステム、プッシュピース等といった時計の外部の部品を含む制御手段300とを支承する。
【0110】
より詳細には、
図51に示されているように、時計機構1000は、第1の機構100及び/又は第2の機構200、特に第1の調速部材1100及び/又は第2の調速部材1200にエネルギを供給するように配設された、エネルギ貯蔵手段3000を備える。
【0111】
このケースでは、第3の機構は表示機構800である。
【0112】
より詳細には、エネルギ貯蔵手段3000は、第1の調速部材1100及び第2の調速部材1200に同時にエネルギを供給するよう配設された、共通のエネルギ源を備える。
【0113】
より詳細には、第1の調速部材1100及び第2の調速部材1200のうちの一方は、最大周波数で発振するよう配設された発振子を備え、他方は、最小周波数で発振するよう配設された発振子を備える。より詳細には、上記最大周波数は上記最小周波数の10倍以下である。
【0114】
図1に示されている従来の針式ディスプレイのような1つの表示媒体上での、第1の表示示度と第2の表示示度との間の切り替えには、以下の3つの段階:第1の表示示度に対応する第1の機構、特に第1の歯車列の連結解除、第2の表示示度に対応する第2の機構、特に第2の歯車列との同期の発見、それに続く第2の機構、特に第2の歯車列の連結が必要である。これら3つの段階は、2つの機能的機構:
‐スライド式ホイールセットに対する各歯車列の連結及び連結解除を可能にする、軸方向連結;
‐表示したい新たな情報の入力を可能にする、回転駆動機構
によって実施される。
【0115】
本発明は更に、時計機構が備える2つの連続して動作する入力機構100、200を切り替えることによって、同じ時計機構が備える1つの出力機構を制御するための方法に関する。
【0116】
この方法によると、2つの入力を構成する第1の機構100又は第2の機構200と、出力を構成する上記第3の機構との間の、交互の排他的な連結のために配設される、切り替え・連結機構を、これら2つの入力機構100、200と上記出力機構との間に挿入する。
【0117】
この時計機構は制御手段を備え、ユーザは上記制御手段を操作することによって、第1の機構100及び第2の機構200のうち、この瞬間に第3の機構と係合している機構を連結解除して、第1の機構100及び第2の機構200のうちの他方を第3の機構と係合させることができる。
【0118】
更に上記切り替え・連結機構は、機械的連結手段を備え、上記機械的連結手段は、1回転につき1つの角度位置において、一方では第1の機構100又は第2の機構200との、他方では上記第3の機構との連結を可能とするように配設され、これらの機械的連結手段は、この1つの角度位置のみにおいて連結を可能とする。
【0119】
更に、ユーザが制御手段を作動させて、上述のように第3の機構と係合していた上記第1の機構100又は上記第2の機構200を連結解除すると、スライド式ホイールセットは、第1の機構100及び第2の機構200それぞれに接続された、それぞれ正面凹凸部を備える2つの入力ホイールセットの間で、レバー及び/又は制御ばねによって移動され、これにより上記スライド式ホイールセットは、第1の機構100及び第2の機構200のうちコマンドの瞬間に係合していなかった機構に対応する入力ホイールセットに向かって押され、これらが互いに接触するとすぐに、この入力ホイールセットの回転は、その正面凹凸部が、上記スライド式ホイールセットが備える相補的な正面凹凸部と協働するまで継続され、上記正面凹凸部及び上記相補的な正面凹凸部は、これらの間の相対的な回転1回の間に1つの角度位置においてこれらの間の協働を達成でき、またその後、軸方向に押されることによってこれらの連結が完了するようなものである。
【0120】
より詳細には、この時計機構は上述のような時計機構1000であり、切り替え・連結機構は上述のような切り替え・連結機構500であり、制御手段は上述のような制御手段300である。
【符号の説明】
【0121】
1 第1の入力ホイールセット
2 第2の入力ホイールセット
3、93 下側分表示用連結用ホイール
4、98 上側分表示用連結用ホイール
5、935 第1のスライド式ホイールセット
8、28、800 表示手段
91 下側分表示用入力ホイール
92 下側反転中間車
94 下側反転ホイール
95 下側時表示用連結用ホイール
96 上側分表示用入力ホイール
97 上側反転中間車
99 上側反転ホイール、中間車
100 第1の機構、第1の歯車列
101 第1の出力ホイールセット
102 第2の出力ホイールセット
200 第2の機構、第2の歯車列
300 制御手段
500 切り替え・連結機構
910 上側時表示用連結用ホイール
911 第1の時表示用伝達ホイール
912 時表示用伝達用中間車
913 筒車
914 第1のフリーホイールホイールセット
915 第2のフリーホイールホイールセット
916 第1の中間車
917 第2の中間車
918 第3のフリーホイールホイールセット
919 第3の時表示用摩擦ホイールセット
920 第4のフリーホイールホイールセット
921 第4の分表示用摩擦ホイールセット
922 制御レバー
923、924、925、928 レバー
930 枢動フラップ、第1の連結要素
932 戻りレバー
933 戻りばね
934 板ばね
936 第2のスライド式ホイールセット、時表示用スライド式ホイールセット
937 第1の連結シャフト、分表示用連結シャフト
938 第2の連結シャフト、時表示用シャフト
939 筒かな
980 第2の連結要素
1000 時計機構
1100 第1の調速部材
1200 第2の調速部材
2000 時計
3000 エネルギ貯蔵手段
9345、9346 フォーク
9350 第1の相補的連結要素
9360 第2の相補的連結要素
D1 第1のスライド軸
【外国語明細書】