(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164343
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ナトリウムイオン電池用亜鉛含有正極材料及びその製造方法並びに用途
(51)【国際特許分類】
H01M 4/505 20100101AFI20231102BHJP
H01M 4/525 20100101ALI20231102BHJP
H01M 10/054 20100101ALI20231102BHJP
H01M 10/0568 20100101ALI20231102BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H01M4/505
H01M4/525
H01M10/054
H01M10/0568
C01G53/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023070547
(22)【出願日】2023-04-24
(31)【優先権主張番号】202210474624.1
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】518246268
【氏名又は名称】貴州振華新材料股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】周 朝毅
(72)【発明者】
【氏名】向 黔新
(72)【発明者】
【氏名】李 金凱
(72)【発明者】
【氏名】李 路
【テーマコード(参考)】
4G048
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AA05
4G048AB01
4G048AC06
4G048AD03
4G048AE05
4G048AE08
5H029AJ02
5H029AJ03
5H029AK03
5H029AL13
5H029AM07
5H029HJ00
5H029HJ01
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5H029HJ05
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5H029HJ13
5H029HJ14
5H050AA02
5H050AA08
5H050BA15
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB12
5H050GA02
5H050GA05
5H050HA00
5H050HA02
5H050HA03
5H050HA13
5H050HA14
(57)【要約】 (修正有)
【課題】残留アルカリの含有量が低く、電池スラリーの作製プロセスではゲル化の現象が起こることが避けられ、且つそれを用いて製造されるナトリウムイオン電池の容量及びレートは比較的高い、ナトリウムイオン電池用亜鉛含有正極材料及びその製造方法を提供する。
【解決手段】正極材料の一般式は、Na
1+aM
yZn
xO
2+cであり、式中、-0.40≦a≦0.25、0.1<x≦0.22、0.78<y≦0.93、-0.3<c<0.3であり、Mは、Mn、Fe、Ni、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素から1種又は2種以上が選ばれる。その粉末X線回折パターンにおいて、2θ値の30~40°では少なくとも5つの回折ピークが存在し、2θの16°付近では2番目に強いピークが存在し、41°付近では1番目に強いピークが存在する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナトリウムイオン電池用正極材料であって、
前記正極材料の一般式は、Na1+aMdZnxO2+cであり、式中、-0.40≦a≦0.25、0.78<d≦0.93、0.1<x≦0.22、-0.3<c<0.3であり、Mは、Mn、Fe、Ni、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素から1種又は2種以上選ばれ、ただし、回折角度2θ値の16°付近では1つの回折ピークがあり、回折角度2θ値の30~40°では少なくとも5つの回折ピークが存在し、回折角度2θ値の41°付近では1つの回折ピークがある、
ことを特徴とするナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項2】
前記ナトリウムイオン電池用正極材料Na1+aMyZnxO2+cにおいて、Mは、元素A及び元素Bを含有し、前記A元素の含有量をbで表すと、前記正極材料の一般式は、Na1+aB1-b-xZnxAbO2+cであり、式中、0.1<x≦0.22、0.0<b≦0.06、-0.40≦a≦0.25、-0.3<c<0.3、y=1-xであり、前記A及びBは、いずれもMn、Fe、Ni、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素から1種又は2種以上選ばれ、AとBは、同じでもよいし異なってもよく、
好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料におけるB元素は、Mn、Fe、Ni及びCoから1種又は2種以上選ばれ、
より好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の一般式は、Na1+aNiyMnzFe1-x-y-z-bZnxAbO2+cであり、式中、0.15≦y≦0.35、0.20≦z≦0.38、-0.40≦a≦0.25、0.0<b≦0.06、-0.3<c<0.3、0.1<x≦0.22である、
ことを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項3】
前記ナトリウムイオン電池用正極材料における亜鉛元素の質量パーセント含有量は、5.0~20.0%であり、
好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料における亜鉛元素の質量パーセント含有量は、5.0~15.0%であり;
さらに好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X線回折パターンは、α-NaFeO4型層状構造であることを示す、
ことを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項4】
前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X線回折パターンにおいて、2θ値が30~40°である回折ピークの半値幅は、0.04~0.4°であり、好ましくは、0.04~0.30°であり、より好ましくは、0.04~0.25°であり、
且つ/又は、2θの16°付近では2番目に強いピークが存在し、41°付近では1番目に強いピークが存在し、好ましくは、2θの16.5°付近では2番目に強いピークが存在し、41.6°付近では1番目に強いピークが存在し、且つ/又は、2θが16°付近及び41°付近である回折ピークの半値幅は0.05~0.35°であり、好ましくは、0.05~0.30°であり、より好ましくは、0.05~0.25°である、
ことを特徴とする請求項1に記載のナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項5】
前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X線回折パターンにおいて、2θ値の30~40°では6つの回折ピークが存在し、その2θ値は、それぞれ、32°付近、33°付近、34°付近、35°付近、36°付近であり、
好ましくは、6つの回折ピークの2θ値は、それぞれ、31.8°付近、33.4°付近、34.4°付近、35.2°付近、36.3°付近、36.6°付近である、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項6】
前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X線回折パターン(XRD)において、回折角度2θが31.8°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.06~0.25°であり、回折角度2θが34.4°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.07~0.25°であり、回折角度2θが36.3°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.06~0.25°であり、
好ましくは、回折角度2θが31.8°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は、(1~2):1であり、好ましくは、比の値は(1.2~1.8):1であり、より好ましくは、比の値は(1.3~1.7):1であり、且つ/又は、
回折角度2θが36.3°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は、(2~3):1であり、好ましくは、比の値は(2.2~2.8):1であり、より好ましくは、比の値は(2.2~2.7):1である、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項7】
前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X線回折パターン(XRD)において、
回折ピークの半値幅FWHMは、次の特徴を1つまたは1つ以上持っており、
(1)回折角度2θが16.5°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.08~0.25°であり、
(2)回折角度2θが33.4°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.08~0.23°であり、
(3)回折角度2θが35.2°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.07~0.22°であり、
(4)回折角度2θが36.6°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.08~0.20°であり、および
(5)回折角度2θが41.6°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.06~0.20°である、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のナトリウムイオン正極材料。
【請求項8】
前記ナトリウムイオン電池用正極材料の比表面積は、0.25~1.5m2/gであり、好ましくは、0.69~1.5m2/gであり、且つ/又は、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粒径D50は、2~15μmであり、好ましくは、5.3~15μmである、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項9】
前記ナトリウムイオン電池用正極材料の残留アルカリの質量パーセント含有量は、3.15%以内であり、好ましくは、0.7~3.15%である、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のナトリウムイオン電池用正極材料。
【請求項10】
M源及びZn源を一定の比率で混合して前駆体を得て、次にNa源と均一に混合した後、または、M源、Zn源及びNa源を均一に混合した後、
750~980℃の温度で焼成し、且つ/又は、焼成時間は8~40時間であり、冷却し、粉砕して、ナトリウムイオン電池用正極材料を得るステップを含む、
ことを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項11】
前記焼成の温度は、880~960℃であり、且つ/又は、焼成の時間は、15~25時間であり、好ましくは、3~10℃/分の昇温速度で前記焼成の温度に昇温して定温焼成処理を行う、
ことを特徴とする請求項10に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項12】
前記粉砕では、ディスクグラインダーを用いて粉砕し、好ましくは、ディスク間の距離は、0~2mmであり、且つ/又は、回転速度は、500~3000回転/分である、
ことを特徴とする請求項10に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項13】
前記ナトリウム源は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム及び酢酸ナトリウムから1種又は2種以上選ばれる、
ことを特徴とする請求項10に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項14】
前記M源は、Mn、Fe、Ni、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素のうちの1種又は2種以上の元素の酸化物又はそれらの塩又はそれらの有機化合物から選ばれ、
好ましくは、前記M源は、Mn、Fe、Ni、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素のうちの1種又は2種以上の元素の炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩又は酸化物から選ばれ、
より好ましくは、前記M源は、二酸化マンガン、炭酸マンガン、酸化ニッケル、炭酸ニッケル、酸化第二鉄、シュウ酸第一鉄、リン酸第一鉄、硫酸銅から1種又は2種以上選ばれる、
ことを特徴とする請求項10に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項15】
前記A源は、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素のうちの1種又は2種以上の元素の酸化物又はそれらの塩又はそれらの有機化合物から選ばれ、
好ましくは、前記A源は、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、Ba、Ti、Mg、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素のうちの1種又は2種以上の元素の炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩又は酸化物から選ばれ、
より好ましくは、前記A源は、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム又は硫酸銅から1種又は2種以上選ばれる、
ことを特徴とする請求項10に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【請求項16】
請求項10に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法によって製造されるナトリウムイオン正極材料。
【請求項17】
請求項1~4のいずれか1項に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の少なくとも1種を正極活物質として含む、
ことを特徴とするナトリウムイオン電池の正極。
【請求項18】
請求項17に記載のナトリウムイオン電池の正極と、負極と、ナトリウム塩含有電解質とを含む、
ことを特徴とするナトリウムイオン電池。
【請求項19】
請求項18に記載のナトリウムイオン電池を用いて製造される、
ことを特徴とする電力システム、エネルギー貯蔵システム又はモバイルストレージデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウムイオン電池の技術分野に関し、具体的には、ナトリウムイオン電池用正極材料及び製造方法並びに用途に関する。
【背景技術】
【0002】
世界のリチウム資源に対する懸念と新たな規模的エネルギー貯蔵の使用の必要性は、新しい電池分野の絶えざる開拓を促している。リチウムイオン電池に関する豊かな経験のおかげで、ナトリウムイオン電池は急速な発展を遂げている。中でもナトリウムイオン電池用正極材料として、主に層状及びトンネル型遷移金属酸化物、ポリアニオン化合物、プルシアンブルー類似体、有機材料などがあり、これらのシステムに対する研究とともに、ナトリウムイオン電池の研究開発は低コストと実用化に向けて取り組みがなされている。2011年、日本の駒場氏らは最初にハードカーボン||NaNi0.5Mn0.5O2完全電池の特性を報告した。またこの年、世界初のナトリウムイオン電池会社として英国のFARADION社が成立した。2013年、アメリカのGoodenough氏らは高い電圧と優れたレート特性を有するプルシアンホワイト正極材料を提案し、2014年、中国の胡勇勝氏らは最初に層状酸化物においてCu3+/Cu2+酸化還元対の電気化学的活性を発見し、一連の低コストのCu系正極材料を設計及び製造した。
【0003】
ナトリウムイオン電池用正極酸化物は、主に層状構造酸化物及びトンネル構造酸化物を含み、そのうち、トンネル構造酸化物の結晶構造には独特な「S」状のチャンネルがあり、良好なレート特性を有し、且つ空気及び水に対する安定性が高いが、その最初の充放電比容量が低いため、実際に利用可能な比容量は小さい。層状構造酸化物は周期的な層状構造を有し、製造方法が簡単であり、比容量と電圧が高いため、ナトリウムイオン電池の主な正極材料であるが、層状酸化物の製造プロセスでは、ナトリウム元素の損失を考慮すると、ナトリウム塩を過剰に加えるのが一般的であるため、材料の焼成後にナトリウム塩が残留し、主に炭酸ナトリウム及び水酸化ナトリウムの形態として存在し、これを残留アルカリと略称し、これにより正極材料の表面の殆どが水分を吸収し又は空気と反応して劣化しやすく、接着剤に対する適合性が悪くなり、スラリーの分散性と安定性が低下すると、後のコーティングプロセスには不利である。また、表面の塩基性化合物は不可逆的な容量損失を増やし、サイクル特性を悪化させる。なお、従来技術においては、層状酸化物は主にコバルト系、マンガン系、ニッケル・鉄・マンガン系又はニッケル・鉄・銅・マンガン系などであり、この基体において改質して得る層状酸化物正極材料である。そのうち、コバルト系正極材料には、主に希少なコバルト金属が用いられ、資源が限られているだけでなく、コストが非常に高い。ニッケル・鉄・マンガン系又はニッケル・鉄・銅・マンガン系正極材料では、ニッケルが貴金属元素であるため、コストが高いだけでなく、ニッケル元素の含有量が特定の比率を超えると、酸素条件下で生産する必要がある。これらの希少な貴金属元素の使用はコスト要件の厳しいエネルギー貯蔵分野又はローエンド市場分野における普及には不利であるため、新たな低コストのナトリウムイオン電池用正極材料を開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記技術的課題により、本発明の目的は、ナトリウムイオン電池用亜鉛含有正極材料及びその製造方法を提供することである。本発明者らは、大量の試験研究を経て次のことを発見した。亜鉛元素で一部の希少な貴金属を置き換えることで、材料の結晶構造を安定化することができ、特にナトリウムイオン電池の充放電プロセスでは、ナトリウムイオンが頻繁に放出されるが、酸化亜鉛の存在が支持効果を果たし、材料構造の崩壊を効果的に軽減し、ナトリウムイオンの吸蔵に空孔を提供して、材料のレート特性を保証することができる。また、当該製造方法によって得られるナトリウムイオン正極材料の表面の残留アルカリの含有量が低減されるため、電池スラリーの作製プロセスではゲル化の現象が起こって、ナトリウムイオン電池の容量及びレートは比較的高いレベルにあることが避けられる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
具体的に言えば、本発明は、次の技術的解決手段を提供する。
第1態様において、本発明は、ナトリウムイオン電池用正極材料を提供し、当該正極材料の一般式は、Na1+aMdZnxO2+cであり、式中、-0.40≦a≦0.25、0.78<d≦0.93、0.1<x≦0.22、-0.3<c<0.3であり、Mは、Mn、Fe、Ni、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素から1種又は2種以上選ばれ、ただし、回折角度2θ値の16°付近では1つの回折ピークがあり、回折角度2θ値の30~40°では少なくとも5つの回折ピークが存在し、好ましくは、6つの回折ピークが存在し、回折角度2θ値の41°付近では1つの回折ピークがある。
【0006】
好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料Na1+aMyZnxO2+cにおいて、Mは、元素A及び元素Bを含有し、前記正極材料の一般式は、Na1+aB1-b-xZnxAbO2+cであり、式中、0.1<x≦0.22、0.0<b≦0.06、-0.40≦a≦0.25、-0.3<c<0.3、y=1-xであり、前記A及びBは、いずれもMn、Fe、Ni、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素から1種又は2種以上選ばれ、AとBは、同じでもよいし異なってもよい。
【0007】
より好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料におけるB元素は、Mn、Fe、Ni及びCoから1種又は2種以上選ばれる。
【0008】
さらに好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の一般式は、Na1+aNiyMnzFe1-x-y-z-bZnxAbO2+cであり、式中、0.15≦y≦0.35、0.20≦z≦0.38、-0.40≦a≦0.25、0.0<b≦0.06、-0.3<c<0.3、0.1<x≦0.22である。
【0009】
さらに好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の一般式は、Na1+aNiyMnzFe1-x-y-z-bZnxAbO2+cであり、式中、0.20≦y≦0.32、0.27≦z≦0.34、-0.40≦a≦0.25、0.0<b≦0.06、-0.3<c<0.3、0.1<x≦0.22である。
【0010】
好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料における亜鉛元素の質量パーセント含有量は、5.0~20.0%である。
【0011】
より好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料におけるZn元素の質量パーセント含有量は、5.0~15.0%である。
【0012】
さらに好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料におけるZn元素の質量パーセント含有量は、4.0~14.0%である。
【0013】
且つ/又は、前記ナトリウムイオン電池用正極材料におけるM元素の質量パーセント含有量は、30~50%であり、好ましくは、34~45%であり、より好ましくは、40~45%である。
【0014】
且つ/又は、前記ナトリウムイオン電池用正極材料におけるNi元素の質量パーセント含有量は、8~20%であり、好ましくは、11~16%である。
【0015】
且つ/又は、前記ナトリウムイオン電池用正極材料におけるMn元素の質量パーセント含有量は、10~20%であり、好ましくは、13~17%である。
【0016】
且つ/又は、前記ナトリウムイオン電池用正極材料におけるFe元素の質量パーセント含有量は、10~20%であり、好ましくは、13~20%であり、より好ましくは、13~16%である。
【0017】
好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X線回折パターンは、α-NaFeO4型層状構造であることを示す。
【0018】
好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X線回折パターンにおいて、2θ値が30~40°である回折ピークの半値幅は0.04~0.4°であり、好ましくは、0.04~0.3°であり、より好ましくは、0.04~0.2°である。
【0019】
且つ/又は、2θの16°付近では2番目に強いピークが存在し、41°付近では1番目に強いピークが存在し、好ましくは、2θの16.5°付近では2番目に強いピークが存在し、41.6°付近では1番目に強いピークが存在し、且つ/又は、2θが16°付近及び41°付近である回折ピークの半値幅は0.05~0.35°であり、好ましくは、0.05~0.3°であり、より好ましくは、0.05~0.2°である。
【0020】
好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X線回折パターンにおいて、2θ値の30~40°では6つの回折ピークが存在し、その2θ値は、それぞれ、32°付近、33°付近、34°付近、35°付近、36°付近である。
【0021】
好ましくは、6つの回折ピークの2θ値は、それぞれ、31.8°付近、33.4°付近、34.4°付近、35.2°付近、36.3°付近、36.6°付近である。
【0022】
且つ/又は、回折角度2θが31.8°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.06~0.25°であり、好ましくは、0.06~0.14°であり、より好ましくは、0.07~0.14°である。
【0023】
且つ/又は、回折角度2θが34.4°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.07~0.25°であり、好ましくは、0.06~0.13°である。
【0024】
且つ/又は、回折角度2θが36.3°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.06~0.25°であり、好ましくは、0.06~0.15°であり、より好ましくは、0.07~0.14°である。
【0025】
且つ/又は、回折角度2θが31.8°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は、(1~2):1であり、好ましくは、比の値は(1.2~1.8):1であり、より好ましくは、比の値は(1.3~1.7):1である。
【0026】
且つ/又は、回折角度2θが36.3°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は、(2~3):1であり、好ましくは、比の値は(2.2~2.8):1であり、より好ましくは、比の値は(2.2~2.7):1である。
【0027】
且つ/又は、回折角度2θが16.5°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.08~0.25°であり、好ましくは、0.11~0.14°である。
【0028】
且つ/又は、回折角度2θが33.4°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.08~0.23°であり、好ましくは、0.12~0.18°であり、より好ましくは、0.148~0.18°である。
【0029】
且つ/又は、回折角度2θが35.2°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.07~0.22°であり、好ましくは、0.13~0.18°である。
【0030】
且つ/又は、回折角度2θが36.6°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.08~0.20°であり、好ましくは、0.12~0.16°であり、より好ましくは、0.135~0.16°である。
【0031】
且つ/又は、回折角度2θが41.6°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.06~0.20°であり、好ましくは、0.09~0.14°である。
【0032】
好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の比表面積は、0.25~1.5m2/gであり、且つ/又は、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粒径D50は、2~15μmである。
【0033】
より好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の比表面積は、0.69~1.5m2/gであり、且つ/又は、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粒径D50は、5.3~15μmである。
【0034】
さらに好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の比表面積は、0.69~1.2m2/gであり、且つ/又は、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粒径D50は、5.3~12μmである。
【0035】
好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の残留アルカリの質量パーセント含有量は、3.15%以内であり、好ましくは、0.7~3.15%であり、より好ましくは、1.25~3.15%である。
【0036】
第2態様において、本発明は、ナトリウムイオン電池用正極材料の2つの製造方法を提供する。
第1の製造方法は、M源、Zn源及びNa源を均一に混合した後、750~980℃の温度で焼成し、且つ/又は、焼成時間は8~40時間であり、冷却し、粉砕して、ナトリウムイオン電池用正極材料を得るステップを含む。
【0037】
第2の製造方法は、M源及びZnを一定の比率で混合して前駆体を得て、次にNa源と均一に混合した後、750~980℃の温度で焼成し、且つ/又は、焼成時間は8~40時間であり、冷却し、粉砕して、ナトリウムイオン電池用正極材料を得るステップを含む。
【0038】
好ましくは、第1の製造方法において、前記均一な混合では、ボールミリング法を採用し、より好ましくは、ボールミリングの周波数は、20~50Hzであり、好ましくは、25~40Hzであり、且つ/又は、ボールミリング時間は、10~60分であり、好ましくは、10~45分である。
【0039】
好ましくは、前記焼成の温度は、880~960℃であり、且つ/又は、焼成の時間は、15~25時間であり、且つ/又は、昇温速度は、3~10℃/分である。
【0040】
好ましくは、前記粉砕では、ディスクグラインダーを用いて粉砕し、より好ましくは、ディスク間の距離は、0~2mmであり、且つ/又は、回転速度は、500~3000回転/分である。
【0041】
好ましくは、焼成ガスは、空気、酸素又はその混合ガスから選ばれる。
【0042】
好ましくは、前記ナトリウム源は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム及び酢酸ナトリウムから1種又は2種以上選ばれる。
【0043】
且つ/又は、前記M源は、Mn、Fe、Ni、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素のうちの1種又は2種以上の元素の酸化物又はそれらの塩又はそれらの有機化合物から選ばれ、
好ましくは、前記M源は、Mn、Fe、Ni、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素のうちの1種又は2種以上の元素の炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩又は酸化物から選ばれ、
より好ましくは、前記M源は、二酸化マンガン、炭酸マンガン、酸化ニッケル、炭酸ニッケル、酸化第二鉄、シュウ酸第一鉄、リン酸第一鉄、硫酸銅から1種又は2種以上選ばれる。
【0044】
且つ/又は、前記A源は、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素のうちの1種又は2種以上の元素の酸化物又はそれらの塩又はそれらの有機化合物から選ばれ、
好ましくは、前記A源は、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、Ba、Ti、Mg、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素のうちの1種又は2種以上の元素の炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩又は酸化物から選ばれ、
より好ましくは、前記A源は、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム又は硫酸銅から1種又は2種以上選ばれる。
【0045】
好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法によって製造されるナトリウムイオン正極材料である。
【0046】
第3態様において、本発明は、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の少なくとも1種を正極活物質として含むナトリウムイオン電池の正極を提供する。
【0047】
第4態様において、本発明は、ナトリウムイオン電池を提供し、前記ナトリウムイオン電池は、前記ナトリウムイオン電池の正極と、負極と、ナトリウム塩含有電解質とを含む。
【0048】
好ましくは、電力、エネルギー貯蔵システム又はモバイルストレージデバイス又は電気自動車における電源としての前記ナトリウムイオン電池の用途である。
【0049】
好ましくは、電気自動車(xEV)、電動自転車、電動二輪車、A00クラスの電気自動車などにおける前記ナトリウムイオン電池の用途である。
【0050】
第5態様において、本発明は、前記ナトリウムイオン電池を用いて製造される電力、エネルギー貯蔵システム又はモバイルストレージデバイスを提供する。
【発明の効果】
【0051】
本発明において得られる有益な効果は、次のとおりである。
本発明によって提供されるナトリウムイオン電池用正極材料は、表面の残留アルカリ濃度が低く、優れた空気安定性及びレート特性を有し、また、亜鉛元素で一部の希少な貴金属ニッケルを置き換えることで、材料の結晶構造を安定化することができ、特にナトリウムイオン電池の充放電プロセスでは、ナトリウムイオンが頻繁に放出されるが、酸化亜鉛の存在が支持効果を果たし、材料構造の崩壊を効果的に軽減し、ナトリウムイオンの吸蔵に空孔を提供して、材料のレート特性を保証することができ、4~2Vの条件下における0.1Cの放電容量は124.7Ah/g以上に達している。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】実施例1のナトリウムイオン正極材料のXRDパターンである。
【
図2】実施例1のナトリウムイオン正極材料の充放電曲線図である。
【
図3】実施例2のナトリウムイオン正極材料のXRDパターンである。
【
図4】実施例2のナトリウムイオン正極材料の充放電曲線図である。
【
図5】実施例3のナトリウムイオン正極材料のXRDパターンである。
【
図6】実施例3のナトリウムイオン正極材料の充放電曲線図である。
【
図7】実施例4のナトリウムイオン正極材料のXRDパターンである。
【
図8】実施例4のナトリウムイオン正極材料の充放電曲線図である。
【
図9】実施例5のナトリウムイオン正極材料のXRDパターンである。
【
図10】実施例5のナトリウムイオン正極材料の充放電曲線図である。
【
図11】実施例6のナトリウムイオン正極材料のXRDパターンである。
【
図12】実施例6のナトリウムイオン正極材料の充放電曲線図である。
【
図13】比較例1のナトリウムイオン正極材料のXRDパターンである。
【
図14】比較例1のナトリウムイオン正極材料の充放電曲線図である。
【
図15】比較例2のナトリウムイオン正極材料のXRDパターンである。
【
図16】比較例2のナトリウムイオン正極材料の充放電曲線図である。
【
図17】比較例3のナトリウムイオン正極材料のXRDパターンである。
【
図18】比較例3のナトリウムイオン正極材料の充放電曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
上述したように、本発明の目的は、ナトリウムイオン電池用亜鉛含有正極材料及びその製造方法並びに用途を提供することにある。
【0054】
本発明者らは、大量の試験研究を経て次のことを発見した。亜鉛元素で一部の希少な貴金属コバルト、ニッケル又は銅を置き換えることで、材料の結晶構造を安定化することができ、特にナトリウムイオン電池の充放電プロセスでは、ナトリウムイオンが頻繁に放出されるが、酸化亜鉛の存在が支持効果を果たし、材料構造の崩壊を効果的に軽減し、ナトリウムイオンの吸蔵に空孔を提供して、材料のレート特性を保証することができる。且つ亜鉛、酸素は殆どイオン結合によって結合されており、亜鉛イオンの存在により、より多くの酸素イオンを捕捉して、より多くの酸化還元対を提供しやすくなり、材料の容量特性を効果的に保証する。
【0055】
また、本発明において、ナトリウムイオン電池用正極材料の構造を制御することによりナトリウムイオン電池用正極材料の残留アルカリ(遊離ナトリウム)は低いレベルにある。本発明のナトリウムイオン電池用正極材料は、特殊な層状構造を有し、そのX線回折パターンにおいて、回折角度2θの30~40°では6つの回折ピークが存在し、これらの回折ピークの半値幅は0.04~0.4°であり、且つ当該材料の回折角度2θの16°付近(本発明において出現している回折角度X°付近は、回折角度がX°±1°であることを表し、例えば、16°付近は16°±1°を表し、即ち、15~17°である)、41°付近に存在する回折ピークの半値幅は0.05~0.35°である。一方では、これらの特殊な回折ピーク及び半値幅により当該材料の構造はより安定的になり、ナトリウムイオンが材料の内部に充分に位置を占めることを保証し、材料の表面に遊離するナトリウムイオンを低減しており、材料の残留アルカリの含有量は比較的低いレベルにあり、材料から電池スラリーを作製する時は湿度40%未満の条件下で生産することができ、スラリーがゲル化する現象は起こらず、他方では、これらの特殊な回折ピーク及び半値幅により当該材料は特殊な格子面間隔及び輸送チャンネルを有し、材料の内部へのナトリウムイオンの輸送及び拡散のために十分なチャンネルを提供しており、電池の充放電プロセスにおいてナトリウムイオンはスムーズに放出されるようになり、ナトリウムイオン電池は優れた容量及びレート特性を有する。
【0056】
本発明を実施するための一形態において、ナトリウムイオン電池用正極材料を提供し、当該正極材料の一般式は、Na1+aMdZnxO2+cであり、式中、-0.40≦a≦0.25、0.78<d≦0.93、0.1<x≦0.22、-0.3<c<0.3であり、Mは、Mn、Fe、Ni、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素から1種又は2種以上選ばれ、ただし、回折角度2θ値の16°付近では1つの回折ピークがあり、回折角度2θ値の30~40°では6つの回折ピークが存在し、回折角度2θ値の41°付近では1つの回折ピークがある。
【0057】
本発明を実施するための別の形態において、次のステップを含むナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法を提供する(本発明の製造方法は2つあり、いずれの製造方法でもナトリウムイオン電池用正極材料を製造できる)。
方法1:
(1)M源、Zn源及びNa源をモル比M:Zn:Na=(0.78~0.93):(0.1~0.22):(0.6~1.25)で均一に混合する。
【0058】
(2)次に、3~10℃/分の昇温速度で750~980℃に昇温して焼成し、焼成時間は8~40時間であり、冷却し、粉砕して、ナトリウムイオン電池用正極材料を得る。
【0059】
方法2:
(1)M源及びZn源を一定のモル比で均一に混合して前駆体を得る。
【0060】
(2)次に、それとNa源(M源、Zn源及びNa源のモル比はM:Zn:Na=(0.78~0.93):(0.1~0.22):(0.6~1.25))を均一に混合した後、3~10℃/分の昇温速度で750~980℃に昇温して焼成し、焼成時間は8~40時間であり、冷却し、粉砕して、ナトリウムイオン電池用正極材料を得る。
【0061】
特に説明がない限り、本願の実施例において使用する原料(ナトリウム源、M源及びZn源)はいずれも購入する市販品であり、市販される通常の原料である。本発明の実施例において使用する装置のまとめは次のとおりである。1)レーザー式粒度分布測定装置、MSU2000型、マルバーン・パナリティカル(英国)、2)自動比表面積・細孔分布測定装置、TriStarII3020、マイクロメリティックス(米国)、3)粉末X線回折装置、X’Pert PRO MPD、パナリティカル(オランダ);4)ICP-OES iCAP 6300誘導結合プラズマ発光分析装置、5)バッテリテストシステム、CT-4008-5V50mA-164、新威新能源技術有限公司、6)高速真空乾燥オーブン、KP-BAK-03E-02、東莞市科瑞機電設備有限公司、7)マイクロ・ディスクグラインダー、蘇州兮然工業設備有限公司、8)ローラーハースキルン、36メートル、華友新能源窯炉設備公司。
【0062】
なお、本発明の実施例のナトリウムイオン正極材料のXRDの測定方法は次のとおりである。測定条件:Cu管球であり、波長は1.54060Åであり、Beウィンドウである。入射光路において、ソーラースリットは0.04radであり、発散スリットは1/2°であり、遮光板は10mmであり、散乱防止スリットは1°である。回折光路において、散乱防止スリットは8.0mmであり、ソーラースリットは0.04radであり、大型Niフィルターである。走査範囲は10~90°であり、走査ステップ幅は0.013°であり、1ステップあたりの測定時間は30.6秒であり、電圧は40kVであり、電流は40mAである。粉末サンプルの作製:清潔なサンプリングスプーンを用いて粉末をスライドガラスの凹溝に入れ(大粒子サンプルの場合は50μm未満の粉末に研磨する必要がある)、スクレーパーの片側(20mmを超える)をスライドガラスの表面に接触させ、他側をわずかに持ち上げて(夾角10°未満)、スクレーパーの縁部で粉末サンプルの表面をこすって平坦にし、スライドガラスを90°回転させて、再びこすって平坦にし、2つの方向において、サンプルの表面に模様がないよう複数回こすればよく、スライドガラスの周りの余分な粉末を除去し、粉末X線回折分析装置に入れる。サンプル分析:High-Score Plusソフトウェアを用いてXRDパターンを修正し、最初にバックグラウンドを決定し、ピーク検索を選択してピークを確認し、当てはめを繰り返し、Williamson-Hall plotを記録して結晶粒サイズを計算し、対応する相を選択して相をマッチングし単位胞を修正し、単位胞パラメータを記録する。
【0063】
なお、本発明の実施例のナトリウムイオン正極材料の粒径の測定は、中国国家標准GB/T19077-2016粒度分布・レーザー回折法を参照する。測定装置:Malvern、Master Size 2000レーザー式粒度分布測定装置。測定ステップ:1gの粉末を秤量して、60mLの純水に加え、5分間超音波処理し、サンプルをサンプルインジェクターに注入して測定し、測定データを記録した。測定条件:測定原理はミー(光散乱)理論(Mie theory)であり、検出角度は0~135°であり、超音波強度は40kHz 180Wであり、粒子屈折率は1.692であり、粒子吸收率は1であり、サンプル測定時間は6秒であり、バックグラウンド測定のスナップ数は6000回であり、遮光度は8~12%である。
【0064】
なお、本発明の実施例のナトリウムイオン正極材料における残留アルカリの測定方法は次のとおりである。30g±0.01gのサンプルを正確に秤量し、サンプルを250mLの三角フラスコに加え、撹拌子を入れて、100mLの脱イオン水を加える。マグネチックスターラーに置いて、装置を起動して30分間撹拌する。定性濾紙、漏斗で混合溶液を濾過する。1mLの濾液を取り出して100mLのビーカーに加え、撹拌子を入れる。ビーカーをマグネチックスターラーに置いて、2滴のフェノールフタレイン指示薬を加える。0.05mol/Lの塩酸標準液で、溶液の色が赤色から無色に変わるまで滴定し(V初=0)、0.05mol/Lの塩酸標準液の体積V1(終点1、V1=V終1-V初)を記録する。2滴のメチルレッド指示薬を加えて、溶液の色は無色から黄色に変わる。0.05mol/Lの塩酸標準液で、溶液の色が黄色からオレンジ色に変わるまで滴定する。ビーカーを加熱炉に置いて、溶液が沸騰する(溶液の色はオレンジ色から黄色に変わる)まで加熱する。ビーカーを撤去して、室温に冷却する。再びビーカーをマグネチックスターラーに置いて、0.05mol/Lの塩酸標準液で、溶液の色が黄色から淡赤色に変わるまで滴定し、0.05mol/Lの塩酸標準液の体積V2(終点2、V2=V終2-V終1)を記録する。
【0065】
遊離ナトリウムの含有量の計算式は次のとおりである。
Na+(wt%)=(c(V1+V2)×10-3×M×100)/m×100%
Na2CO3(wt%)=(c×V2×10-3×M1×100)/m×100%
NaOH(wt%)=(c×(V1-V2)×10-3×M2×100)/m×100%
Mは、ナトリウムの相対原子質量であり、M1は、炭酸ナトリウムの相対分子質量であり、M2は、水酸化ナトリウムの相対分子質量であり、mは、サンプルの質量で、単位はgであり、V1は、1つ目の滴定終点で、単位はmLであり、V2は、2つ目の滴定終点で、単位はmLであり、cは、塩酸標準液の濃度であり、単位はmol/Lであり、分子中の100は希釈倍率を表す。
【0066】
なお、本発明の実施例のナトリウムイオン正極材料における元素の質量パーセント含有量の測定方法は次のとおりである。ICP-OES iCAP 6300誘導結合プラズマ発光分析装置を使用し、検出器の検出ユニットは29万個を超えており、検出器冷却システムのカメラ(Camera)温度は-35℃未満であり、光学系の光学室温度は38±0.1℃であり、光学系の波長範囲は166~847nmであり、プラズマ観察モードは縦観察であり、プラズマ観察の高さは14mmであり、RFパワーは1150Wであり、周波数は27.12MHzであり、サンプリングシステムの補助ガス流量は0.5L/分であり、サンプリングシステムの霧化ガス流量は0.6L/分であり、ポンプ速度は50rpmである。微量の測定:0.2000~0.2100gのサンプルを正確に秤量して50mLの石英ビーカーに入れ、10mLの1:1王水を加えて時計皿をかけて加熱炉において完全に溶解し、50mLのメスフラスコに移して定容し均等に振り混ぜ、ローディングして測定し、データを記録する。主量の測定:前記均等に振り混ぜた溶液を1mL取り出して100mLのメスフラスコに入れ、100mLに定容して、均等に振り混ぜる。ローディングして測定し、データを記録する。
【0067】
本発明のナトリウムイオン電池は、電極と、電解質と、セパレータと、アルミラミネートフィルムとによって構成される。具体的に言えば、その電極は正極及び負極を含み、正極は、正極集電体、正極集電体にコーティングされる正極活物質、接着剤、導電助剤などの材料から製造され、正極活物質は、本発明の正極材料である。負極は、集電体、集電体にコーティングされる負極活物質、接着剤、導電助剤などの材料から製造される。セパレータは、当分野で正極と負極を互いに隔離させるために一般に使用されるPP/PEフィルムである。アルミラミネートフィルムは、正極、負極、セパレータ及び電解質の被覆材である。
【0068】
本発明の接着剤は、主に正極活物質粒子同士間及び正極活物質粒子と集電体の接着性を改善させるために用いられる。本発明の接着剤は、当分野で使用される通常の接着剤の市販品を用いてもよい。具体的に言えば、接着剤は、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシ化ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニル、エチレンオキシド含有ポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジェンゴム、アクリル酸(エステル)化スチレンブタジェンゴム、エポキシ樹脂、ナイロン又はその組み合わせから選ばれてもよい。
【0069】
本発明の導電助剤は、当分野で使用される通常の導電助剤の市販品を用いてもよい。具体的に言えば、導電助剤は、炭素系材料(例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック又は炭素繊維)、金属系材料(例えば、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末又は金属繊維を含む)、導電性ポリマー(例えば、ポリフェニレン誘導体)又はその組み合わせから選ばれてもよい。
【0070】
下記の実施例では、本発明において製造される正極材料を用いてナトリウムイオンボタン電池を作製するための具体的な操作方法は次のとおりである。
正極の製造:本発明において製造される正極材料と、接着剤ポリフッ化ビニリデン(PVDF)と、導電性カーボンブラック(S.P)を重量比7:2:1の比率で充分に混合し、撹拌して均一なスラリーを形成させ、アルミ箔集電体にコーティングして、乾燥し、押圧して極板を得る。押圧後の正極板に対してプレス加工し、秤量して、ベーキングし、次に、真空グローブボックス内において電池を組み立て、まずボタン電池のベースを置き、ベースの上にニッケルフォーム(2.5mm)、負極の金属ナトリウムシート(メーカー:深セン友研科技有限公司)を置き、相対湿度1.5%未満の環境で0.5gの電解液を注入し、電解液は、炭酸エチレン(EC)と炭酸ジエチル(DEC)と炭酸ジメチル(DMC)の質量比が1:1:1である混合溶媒を用い、電解質は、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム溶液であり、セパレータ、正極板を置き、次に、ボタン電池のカバーをかけて、封止し、ボタン電池の型番はCR2430である。
【0071】
本発明において回折ピークの半値幅の単位は回折角度2θの単位と同じである。以下、特定の実施例を用いて、図面を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【0072】
(実施例1)
炭酸ナトリウム、炭酸マンガン、炭酸ニッケル、酸化第二鉄、酸化亜鉛を化学量論的モル比のNa:Mn:Ni:Fe:Zn=0.87:0.33:0.23:0.29:0.15で対応する量を秤量し、次に、40Hzでボールミリングし、10分間均一に混合する。均一に混合した原料を空気雰囲気下において、5℃/分の昇温速度で960℃に昇温して12時間定温し、次に、自然に冷却し、粉砕し、篩分けして、分子式がNa0.87Ni0.23Mn0.33Zn0.15Fe0.29O2である正極材料を得る。
【0073】
図1は、本実施例の正極材料のXRDパターンであり、図から分かるように、回折角度2θが16.5257°である回折ピークの半値幅FWHMは0.128°であり、当該回折ピークは2番目に強いピークであり、回折角度2θが31.774°である回折ピークの半値幅FWHMは0.076°であり、回折角度2θが33.439°である回折ピークの半値幅FWHMは0.148°であり、回折角度2θが34.453°である回折ピークの半値幅FWHMは0.083°であり、回折角度2θが35.208°である回折ピークの半値幅FWHMは0.154°であり、回折角度2θが36.263°である回折ピークの半値幅FWHMは0.074°であり、回折角度2θが36.5543°である回折ピークの半値幅FWHMは0.135°であり、回折角度2θが41.573°である回折ピークの半値幅FWHMは0.1121°であり、当該回折ピークは1番目に強いピークである。回折角度2θが31.8°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は1.6:1であり、回折角度2θが36.3°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は2.7:1である。
【0074】
当該正極材料に対して粒径及び比表面積を測定し、粒径D50は4.9μmであり、BETは1.2m
2/gである。その表面の残留アルカリの含有量は1.25%である。正極材料のXRDパターンにおける回折ピークと半値幅、粒径D50、比表面積及び表面の残留アルカリ量を表1にまとめる。当該正極材料を用いてボタン電池を製造し、容量及びレートを測定し、測定データの詳細は表1を参照し、4.0~2.0Vの条件下における0.1C/0.1Cの充放電曲線図は、
図2に示すとおりである。
【0075】
(実施例2)
炭酸ナトリウム、二酸化マンガン、酸化ニッケル、酸化第二鉄、酸化亜鉛を化学量論的モル比のNa:Mn:Ni:Fe:Zn=0.80:0.30:0.22:0.27:0.21で対応する量を秤量し、次に、35Hzでボールミリングし、20分間均一に混合する。均一に混合した原料を空気雰囲気下において、3℃/分の昇温速度で900℃に昇温して16時間定温し、次に、自然に冷却し、粉砕し、篩分けして、分子式がNa0.8Ni0.22Mn0.3Zn0.21Fe0.27O2である正極材料を得る。
【0076】
図3は、本実施例の正極材料のXRDパターンを示し、図から分かるように、回折角度2θが16.52°である回折ピークの半値幅FWHMは0.1252°であり、当該回折ピークは2番目に強いピークであり、回折角度2θが31.782°である回折ピークの半値幅FWHMは0.064°であり、回折角度2θが33.423°である回折ピークの半値幅FWHMは0.137°であり、回折角度2θが34.444°である回折ピークの半値幅FWHMは0.08°であり、回折角度2θが35.232°である回折ピークの半値幅FWHMは0.145°であり、回折角度2θが36.274°である回折ピークの半値幅FWHMは0.068°であり、回折角度2θが36.575°である回折ピークの半値幅FWHMは0.135°であり、回折角度2θが41.587°である回折ピークの半値幅FWHMは0.1102°であり、当該回折ピークは1番目に強いピークである。回折角度2θが31.8°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は1.8:1であり、回折角度2θが36.3°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は2.8:1である。
【0077】
当該正極材料に対して粒径及び比表面積を測定し、粒径D50は5.0μmであり、BETは0.97m
2/gである。その表面の残留アルカリの含有量は0.78%である。正極材料のXRDパターンにおける回折ピークと半値幅、粒径D50、比表面積及び表面の残留アルカリ量を表1にまとめる。当該正極材料を用いてボタン電池を製造し、容量及びレートを測定し、測定データの詳細は表1を参照し、4.0~2.0Vの条件下における0.1C/0.1Cの充放電曲線図は、
図4に示すとおりである。
【0078】
(実施例3)
炭酸ナトリウム、三酸化二マンガン、酸化ニッケル、シュウ酸第一鉄、酸化亜鉛、酸化カルシウムを化学量論的モル比のNa:Mn:Ni:Fe:Zn:Ca=0.76:0.29:0.21:0.27:0.21:0.02で対応する量を秤量し、次に、30Hzでボールミリングし、30分間均一に混合する。均一に混合した原料を空気雰囲気下において、7℃/分の昇温速度で860℃に昇温して20時間定温し、次に、自然に冷却し、粉砕し、篩分けして、分子式がNa0.76Ni0.21Mn0.29Zn0.21Fe0.27Ca0.02O2である正極材料を得る。
【0079】
図5は、本実施例の正極材料のXRDパターンを示し、図から分かるように、回折角度2θが16.5456°である回折ピークの半値幅FWHMは0.13°であり、当該回折ピークは2番目に強いピークであり、回折角度2θが31.789°である回折ピークの半値幅FWHMは0.074°であり、回折角度2θが33.445°である回折ピークの半値幅FWHMは0.163°であり、回折角度2θが34.463°である回折ピークの半値幅FWHMは0.077°であり、回折角度2θが35.244°である回折ピークの半値幅FWHMは0.16°であり、回折角度2θが36.2902°である回折ピークの半値幅FWHMは0.073°であり、回折角度2θが36.5856°である回折ピークの半値幅FWHMは0.143°であり、回折角度2θが41.5986°である回折ピークの半値幅FWHMは0.1092°であり、当該回折ピークは1番目に強いピークである。回折角度2θが31.8°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は1.6:1であり、回折角度2θが36.3°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は2.7:1である。
【0080】
当該正極材料に対して粒径及び比表面積を測定し、粒径D50は5.3μmであり、BETは0.94m
2/gであり、その表面の残留アルカリの含有量は2.28%である。正極材料のXRDパターンにおける回折ピークと半値幅、粒径D50、比表面積及び表面の残留アルカリ量を表1にまとめる。当該正極材料を用いてボタン電池を製造し、容量及びレートを測定し、測定データの詳細は表1を参照し、4.0~2.0Vの条件下における0.1C/0.1Cの充放電曲線図は、
図6に示すとおりである。
【0081】
(実施例4)
硝酸ナトリウム、三酸化二マンガン、酸化ニッケル、シュウ酸第一鉄、酸化亜鉛、三酸化二ホウ素を化学量論的モル比のNa:Mn:Ni:Fe:Zn:B=0.8:0.294:0.21:0.28:0.21:0.006で対応する量を秤量し、次に、25Hzでボールミリングし、45分間均一に混合する。均一に混合した原料を空気雰囲気下において、10℃/分の昇温速度で890℃に昇温して24時間定温し、次に、自然に冷却し、粉砕し、篩分けして、分子式がNa0.8Ni0.21Mn0.294Zn0.21Fe0.28B0.006O2である正極材料を得る。
【0082】
図7は、本実施例の正極材料のXRDパターンを示し、図から分かるように、回折角度2θが16.58°である回折ピークの半値幅FWHMは0.1205°であり、当該回折ピークは2番目に強いピークであり、回折角度2θが31.786°である回折ピークの半値幅FWHMは0.106°であり、回折角度2θが33.5115°である回折ピークの半値幅FWHMは0.147°であり、回折角度2θが34.461°である回折ピークの半値幅FWHMは0.078°であり、回折角度2θが35.176°である回折ピークの半値幅FWHMは0.147°であり、回折角度2θが36.2824°である回折ピークの半値幅FWHMは0.082°であり、回折角度2θが36.5282°である回折ピークの半値幅FWHMは0.134°であり、回折角度2θが41.5678°である回折ピークの半値幅FWHMは0.1078°であり、当該回折ピークは1番目に強いピークである。回折角度2θが31.8°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は1.2:1であり、回折角度2θが36.3°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は2.5:1である。
【0083】
当該正極材料に対して粒径及び比表面積を測定し、粒径D50は7.5μmであり、BETは0.43m
2/gであり、その表面の残留アルカリの含有量は2.21%である。正極材料のXRDパターンにおける回折ピークと半値幅、粒径D50、比表面積及び表面の残留アルカリ量を表1にまとめる。当該正極材料を用いてボタン電池を製造し、容量及びレートを測定し、測定データの詳細は表1を参照し、4.0~2.0Vの条件下における0.1C/0.1Cの充放電曲線図は、
図8に示すとおりである。
【0084】
(実施例5)
炭酸マンガン、炭酸ニッケル、シュウ酸第一鉄、酸化亜鉛、酸化カルシウムを化学量論的モル比のMn:Ni:Fe:Zn:Ca=0.28:0.3:0.27:0.13:0.02で対応する量を秤量し、次に、サンダーに加えて60分間研磨して、湿前駆体を得て、湿前駆体を噴霧乾燥して、前駆体を得る。前駆体と塩化ナトリウムを化学量論比(Na:Mn:Ni:Fe:Zn:Ca=1.1:0.28:0.3:0.27:0.13:0.02)で均一に混合し、均一に混合した原料を空気雰囲気下において、6℃/分の昇温速度で900℃に昇温して14時間定温し、次に、自然に冷却し、粉砕し、篩分けして、分子式がNa1.1Ni0.3Mn0.28Zn0.13Fe0.27Ca0.02O2である正極材料を得る。
【0085】
図9は、本実施例の正極材料のXRDパターンを示し、図から分かるように、回折角度2θが16.559°である回折ピークの半値幅FWHMは0.1263°であり、当該回折ピークは2番目に強いピークであり、回折角度2θが31.772°である回折ピークの半値幅FWHMは0.091°であり、回折角度2θが33.49°である回折ピークの半値幅FWHMは0.171°であり、回折角度2θが34.44°である回折ピークの半値幅FWHMは0.083°であり、回折角度2θが35.159°である回折ピークの半値幅FWHMは0.147°であり、回折角度2θが36.264°である回折ピークの半値幅FWHMは0.088°であり、回折角度2θが36.5109°である回折ピークの半値幅FWHMは0.135°であり、回折角度2θが41.5515°である回折ピークの半値幅FWHMは0.1077°であり、当該回折ピークは1番目に強いピークである。回折角度2θが31.8°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は1.4:1であり、回折角度2θが36.3°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は2.6:1である。
【0086】
当該正極材料に対して粒径及び比表面積を測定し、粒径D50は4.9μmであり、BETは0.69m
2/gである。その表面の残留アルカリの含有量は2.95%である。正極材料のXRDパターンにおける回折ピークと半値幅、粒径D50、比表面積及び表面の残留アルカリ量を表2にまとめる。当該正極材料を用いてボタン電池を製造し、容量及びレートを測定し、測定データの詳細は表2を参照し、4.0~2.0Vの条件下における0.1C/0.1Cの充放電曲線図は、
図10に示すとおりである。
【0087】
(実施例6)
炭酸マンガン、炭酸ニッケル、シュウ酸第一鉄、酸化亜鉛、硫酸銅を化学量論的モル比のMn:Ni:Fe:Zn:Cu=0.3:0.31:0.27:0.1:0.02で対応する量を秤量し、次に、サンダーに加えて45分間研磨し、湿前駆体を得て、湿前駆体を噴霧乾燥して、前駆体を得る。前駆体と塩化ナトリウム(Na:Mn:Ni:Fe:Zn:Cu=1.15:0.3:0.31:0.27:0.1:0.04)を化学量論比で均一に混合し、均一に混合した原料を空気雰囲気下において、5℃/分の昇温速度で880℃に昇温して15時間定温し、次に、自然に冷却し、粉砕し、篩分けして、分子式がNa1.15Ni0.31Mn0.3Zn0.1Fe0.27Cu0.02O2である正極材料を得る。
【0088】
図11は、本実施例の正極材料のXRDパターンを示し、図から分かるように、回折角度2θが16.4554°である回折ピークの半値幅FWHMは0.132°であり、当該回折ピークは2番目に強いピークであり、回折角度2θが31.718°である回折ピークの半値幅FWHMは0.133°であり、回折角度2θが33.338°である回折ピークの半値幅FWHMは0.158°であり、回折角度2θが34.411°である回折ピークの半値幅FWHMは0.111°であり、回折角度2θが35.205°である回折ピークの半値幅FWHMは0.169°であり、回折角度2θが36.221°である回折ピークの半値幅FWHMは0.133°であり、回折角度2θが36.5471°である回折ピークの半値幅FWHMは0.15°であり、回折角度2θが41.5489°である回折ピークの半値幅FWHMは0.1221°であり、当該回折ピークは1番目に強いピークである。回折角度2θが31.8°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は1.43:1であり、回折角度2θが36.3°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は2.2:1である。
【0089】
当該正極材料に対して粒径及び比表面積を測定し、粒径D50は11.1μmであり、BETは0.79m
2/gである。その表面の残留アルカリの含有量は3.15%である。正極材料のXRDパターンにおける回折ピークと半値幅、粒径D50、比表面積及び表面の残留アルカリ量を表2にまとめる。当該正極材料を用いてボタン電池を製造し、容量及びレートを測定し、測定データの詳細は表2を参照し、4.0~2.0Vの条件下における0.1C/0.1Cの充放電曲線図は、
図12に示すとおりである。
【0090】
(比較例1)
実施例1と比較すると、酸化亜鉛を酸化銅と変え、製造方法の残りは実施例1と同じであり、分子式がNa0.87Ni0.23Mn0.33Cu0.15Fe0.29O2である正極材料を製造する。
【0091】
図13は、本実施例の正極材料のXRDパターンを示し、図から分かるように、回折角度2θが16.5°である回折ピークの半値幅FWHMは0.121°であり、当該回折ピークは2番目に強いピークであり、回折角度2θが33.4°である回折ピークの半値幅FWHMは0.149°であり、回折角度2θが35.2°である回折ピークの半値幅FWHMは0.124°であり、回折角度2θが36.6°である回折ピークの半値幅FWHMは0.115°であり、回折角度2θが38.7°である回折ピークの半値幅FWHMは0.18°であり、回折角度2θが41.6°である回折ピークの半値幅FWHMは0.089°であり、当該回折ピークは1番目に強いピークである。
【0092】
当該正極材料に対して粒径及び比表面積を測定し、粒径D50は7.1μmであり、BETは0.6m
2/gであり、その表面の残留アルカリの含有量は3.8%である。正極材料のXRDパターンにおける回折ピークと半値幅、粒径D50、比表面積及び表面の残留アルカリ量を表2にまとめる。当該正極材料を用いてボタン電池を製造し、容量及びレートを測定し、測定データの詳細は表2を参照し、4.0~2.0Vの条件下における0.1C/0.1Cの充放電曲線図は、
図14に示すとおりである。
【0093】
(比較例2)
炭酸ナトリウム、三酸化二マンガン、酸化ニッケル、シュウ酸第一鉄、酸化カルシウムを化学量論的モル比のNa:Mn:Ni:Fe:Ca=0.79:0.37:0.28:0.33:0.02で対応する量を秤量し、次に、30Hzでボールミリングし、30分間均一に混合する。均一に混合した原料を空気雰囲気下において、7℃/分の昇温速度で860℃に昇温して20時間定温し、次に、自然に冷却し、粉砕し、篩分けして、分子式がNa0.79Ni0.28Mn0.37Fe0.33Ca0.02O2である正極材料を得る。
【0094】
図15は、本実施例の正極材料のXRDパターンを示し、図から分かるように、回折角度2θが16.5°である回折ピークの半値幅FWHMは0.212°であり、当該回折ピークは2番目に強いピークであり、回折角度2θが33.5°である回折ピークの半値幅FWHMは0.2°であり、回折角度2θが34.2°である回折ピークの半値幅FWHMは0.31°であり、回折角度2θが35.2°である回折ピークの半値幅FWHMは0.203°であり、回折角度2θが41.5°である回折ピークの半値幅FWHMは0.183°であり、当該回折ピークは1番目に強いピークである。
【0095】
当該正極材料に対して粒径及び比表面積を測定し、粒径D50は9.5μmであり、BETは0.4m
2/gであり、その表面の残留アルカリの含有量は4.68%である。正極材料のXRDパターンにおける回折ピークと半値幅、粒径D50、比表面積及び表面の残留アルカリ量を表2にまとめる。当該正極材料を用いてボタン電池を製造し、容量及びレートを測定し、測定データの詳細は表2を参照し、4.0~2.0Vの条件下における0.1C/0.1Cの充放電曲線図は、
図16に示すとおりである。
【0096】
(比較例3)
炭酸マンガン、炭酸ニッケル、シュウ酸第一鉄、酸化亜鉛、硫酸銅を化学量論的モル比のMn:Ni:Fe:Zn:Cu=0.26:0.21:0.24:0.25:0.04で対応する量を秤量し、次に、サンダーに加えて45分間研磨し、湿前駆体を得て、湿前駆体を噴霧乾燥して、前駆体を得る。前駆体と塩化ナトリウム(Na:Mn:Ni:Fe:Zn:Cu=0.79:0.26:0.21:0.24:0.25:0.04)を化学量論比で均一に混合し、均一に混合した原料を空気雰囲気下において、5℃/分の昇温速度で880℃に昇温して15時間定温し、次に、自然に冷却し、粉砕し、篩分けして、分子式がNa0.79Ni0.21Mn0.26Zn0.25Fe0.24Cu0.04O2である正極材料を製造する。
【0097】
図17は、本実施例の正極材料のXRDパターンを示し、図から分かるように、回折角度2θが16.432°である回折ピークの半値幅FWHMは0.143°であり、当該回折ピークは2番目に強いピークであり、回折角度2θが31.695°である回折ピークの半値幅FWHMは0.098°であり、回折角度2θが32.26°である回折ピークの半値幅FWHMは0.19°であり、回折角度2θが33.333°である回折ピークの半値幅FWHMは0.169°であり、回折角度2θが34.362°である回折ピークの半値幅FWHMは0.089°であり、回折角度2θが35.145°である回折ピークの半値幅FWHMは0.143°であり、回折角度2θが36.187°である回折ピークの半値幅FWHMは0.089°であり、回折角度2θが36.4908°である回折ピークの半値幅FWHMは0.148°であり、回折角度2θが37.833°である回折ピークの半値幅FWHMは0.06°であり、回折角度2θが41.4908°である回折ピークの半値幅FWHMは0.1213°であり、当該回折ピークは1番目に強いピークである。回折角度2θが31.8°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は1.3:1であり、回折角度2θが36.3°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は3.88:1である。
【0098】
当該正極材料に対して粒径及び比表面積を測定し、粒径D50は6.9μmであり、BETは0.67m
2/gである。その表面の残留アルカリの含有量は4.13%である。正極材料のXRDパターンにおける回折ピークと半値幅、粒径D50、比表面積及び表面の残留アルカリ量を表3にまとめる。当該正極材料を用いてボタン電池を製造し、容量及びレートを測定し、測定データの詳細は表3を参照し、4.0~2.0Vの条件下における0.1C/0.1Cの充放電曲線図は、
図18に示すとおりである。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
上表から分かるように、実施例1~6において製造される正極材料の亜鉛元素の含有量は本発明の請求範囲内にあり、前記正極材料のXRDパターンにおいて、回折角度2θ値の30~40°では6つの回折ピークが存在し、回折ピークの半値幅は0.04~0.18°であり、当該正極材料の構造は安定的であり、0.1Cの放電容量は比較的高く、且つレート特性に優れる。また、実施例1~6において製造される正極材料の残留アルカリの含有量は比較的低く、3.5%以内に抑えることができ、特に実施例1~4では残留アルカリの含有量が2.3%以内に抑えられている。
【0104】
比較例1は実施例1と同じ製造方法を採用し、違いは亜鉛元素を銅元素と変えることであり、そのXRDパターンにおいて、回折角度2θ値の30~40°では4つの回折ピークが存在し、且つ比較例1において製造される正極材料の残留アルカリの含有量は実施例1の残留アルカリの含有量よりはるかに高く、当該材料の容量も実施例1の含有量よりはるかに低く、材料のレート特性は実施例1を下回っている。
【0105】
比較例2は実施例3と同じ製造方法を採用し、違いは新しい元素を添加しないことであり、そのXRDパターンにおいて、回折角度2θ値の30~40°では3つの回折ピークが存在し、比較例2において製造される正極材料の残留アルカリの含有量は実施例3の残留アルカリの含有量よりはるかに高く、材料のNi元素の含有量は相対的に高く、理論上の容量も高いはずであるが、実際の容量は実施例3よりはるかに低く、且つ当該材料のレート特性は実施例3を下回っている。
【0106】
比較例3は実施例6と同じ製造方法を採用し、違いは亜鉛元素の添加量が本発明の請求範囲を超えていることであり、正極材料のXRDパターンにおいて、回折角度2θ値の30~40°では8つの回折ピークが存在し、実施例6と比べて2つの不要ピークが増えており、これについて、亜鉛元素の含有量が多すぎるため、一部の亜鉛元素は他の元素と新しい固溶体を形成して、材料の残留アルカリの含有量は高く、容量は低く、レート特性が悪いと推測される。
【0107】
前記データから分かるように、亜鉛元素で一部の希少な貴金属(例えば、ニッケル元素)を置き換えると、材料の特性に影響を与えないことを前提として、亜鉛元素を加えて材料の構造安定性を改善する場合、一方では、亜鉛、酸素は殆どイオン結合によって結合されており、亜鉛イオンの存在により、より多くの酸素イオンを捕捉して、より多くの酸化還元対を提供しやすくなり、材料の容量特性を効果的に保証する。他方では、酸化亜鉛の存在は材料の結晶構造を安定化することができ、特にナトリウムイオン電池の充放電プロセスでは、ナトリウムイオンが頻繁に放出されるが、酸化亜鉛の存在が支持効果を果たし、材料構造の崩壊を効果的に軽減し、ナトリウムイオンの吸蔵に空孔を提供して、材料のレート特性を保証することができる。
【0108】
出願人は、上述したのは本発明を実施するための形態に過ぎず、本発明の請求範囲はこれに限定されないと主張し、当業者には、本発明において開示される技術範囲内で当業者が想到しやすい変更又は置換が、いずれも本発明の請求範囲及び開示範囲に入ることが自明なはずである。
【0109】
(付記)
(付記1)
ナトリウムイオン電池用正極材料であって、
前記正極材料の一般式は、Na1+aMdZnxO2+cであり、式中、-0.40≦a≦0.25、0.78<d≦0.93、0.1<x≦0.22、-0.3<c<0.3であり、Mは、Mn、Fe、Ni、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素から1種又は2種以上選ばれ、ただし、回折角度2θ値の16°付近では1つの回折ピークがあり、回折角度2θ値の30~40°では少なくとも5つの回折ピークが存在し、回折角度2θ値の41°付近では1つの回折ピークがある、
ことを特徴とするナトリウムイオン電池用正極材料。
【0110】
(付記2)
前記ナトリウムイオン電池用正極材料Na1+aMyZnxO2+cにおいて、Mは、元素A及び元素Bを含有し、前記A元素の含有量をbで表すと、前記正極材料の一般式は、Na1+aB1-b-xZnxAbO2+cであり、式中、0.1<x≦0.22、0.0<b≦0.06、-0.40≦a≦0.25、-0.3<c<0.3、y=1-xであり、前記A及びBは、いずれもMn、Fe、Ni、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素から1種又は2種以上選ばれ、AとBは、同じでもよいし異なってもよく、
好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料におけるB元素は、Mn、Fe、Ni及びCoから1種又は2種以上選ばれ、
より好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の一般式は、Na1+aNiyMnzFe1-x-y-z-bZnxAbO2+cであり、式中、0.15≦y≦0.35、0.20≦z≦0.38、-0.40≦a≦0.25、0.0<b≦0.06、-0.3<c<0.3、0.1<x≦0.22である、
ことを特徴とする付記1に記載のナトリウムイオン電池用正極材料。
【0111】
(付記3)
前記ナトリウムイオン電池用正極材料における亜鉛元素の質量パーセント含有量は、5.0~20.0%であり、
好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料における亜鉛元素の質量パーセント含有量は、5.0~15.0%であり;
さらに好ましくは、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X線回折パターンは、α-NaFeO4型層状構造であることを示す、
ことを特徴とする付記1に記載のナトリウムイオン電池用正極材料。
【0112】
(付記4)
前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X線回折パターンにおいて、2θ値が30~40°である回折ピークの半値幅は、0.04~0.4°であり、好ましくは、0.04~0.30°であり、より好ましくは、0.04~0.25°であり、
且つ/又は、2θの16°付近では2番目に強いピークが存在し、41°付近では1番目に強いピークが存在し、好ましくは、2θの16.5°付近では2番目に強いピークが存在し、41.6°付近では1番目に強いピークが存在し、且つ/又は、2θが16°付近及び41°付近である回折ピークの半値幅は0.05~0.35°であり、好ましくは、0.05~0.30°であり、より好ましくは、0.05~0.25°である、
ことを特徴とする付記1に記載のナトリウムイオン電池用正極材料。
【0113】
(付記5)
前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X線回折パターンにおいて、2θ値の30~40°では6つの回折ピークが存在し、その2θ値は、それぞれ、32°付近、33°付近、34°付近、35°付近、36°付近であり、
好ましくは、6つの回折ピークの2θ値は、それぞれ、31.8°付近、33.4°付近、34.4°付近、35.2°付近、36.3°付近、36.6°付近である、
ことを特徴とする付記1~4のいずれか1つに記載のナトリウムイオン電池用正極材料。
【0114】
(付記6)
前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X線回折パターン(XRD)において、回折角度2θが31.8°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.06~0.25°であり、回折角度2θが34.4°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.07~0.25°であり、回折角度2θが36.3°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.06~0.25°であり、
好ましくは、回折角度2θが31.8°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は、(1~2):1であり、好ましくは、比の値は(1.2~1.8):1であり、より好ましくは、比の値は(1.3~1.7):1であり、且つ/又は、
回折角度2θが36.3°付近である回折ピークと回折角度2θが34.4°付近である回折ピークのピーク強度の比の値は、(2~3):1であり、好ましくは、比の値は(2.2~2.8):1であり、より好ましくは、比の値は(2.2~2.7):1である、
ことを特徴とする付記1~4のいずれか1つに記載のナトリウムイオン電池用正極材料。
【0115】
(付記7)
前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粉末X線回折パターン(XRD)において、
回折ピークの半値幅FWHMは、次の特徴を1 つまたは1 つ以上持っており、
(1)回折角度2θが16.5°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.08~0.25°であり、
(2)回折角度2θが33.4°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.08~0.23°であり、
(3)回折角度2θが35.2°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.07~0.22°であり、
(4)回折角度2θが36.6°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.08~0.20°であり、および
(5)回折角度2θが41.6°付近である回折ピークの半値幅FWHMは、0.06~0.20°である、
ことを特徴とする付記1~4のいずれか1つに記載のナトリウムイオン正極材料。
【0116】
(付記8)
前記ナトリウムイオン電池用正極材料の比表面積は、0.25~1.5m2/gであり、好ましくは、0.69~1.5m2/gであり、且つ/又は、前記ナトリウムイオン電池用正極材料の粒径D50は、2~15μmであり、好ましくは、5.3~15μmである、
ことを特徴とする付記1~4のいずれか1つに記載のナトリウムイオン電池用正極材料。
【0117】
(付記9)
前記ナトリウムイオン電池用正極材料の残留アルカリの質量パーセント含有量は、3.15%以内であり、好ましくは、0.7~3.15%である、
ことを特徴とする付記1~4のいずれか1つに記載のナトリウムイオン電池用正極材料。
【0118】
(付記10)
M源及びZn源を一定の比率で混合して前駆体を得て、次にNa源と均一に混合した後、または、M源、Zn源及びNa源を均一に混合した後、
750~980℃の温度で焼成し、且つ/又は、焼成時間は8~40時間であり、冷却し、粉砕して、ナトリウムイオン電池用正極材料を得るステップを含む、
ことを特徴とする付記1~4のいずれか1つに記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【0119】
(付記11)
前記焼成の温度は、880~960℃であり、且つ/又は、焼成の時間は、15~25時間であり、好ましくは、3~10℃/分の昇温速度で前記焼成の温度に昇温して定温焼成処理を行う、
ことを特徴とする付記10に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【0120】
(付記12)
前記粉砕では、ディスクグラインダーを用いて粉砕し、好ましくは、ディスク間の距離は、0~2mmであり、且つ/又は、回転速度は、500~3000回転/分である、
ことを特徴とする付記10に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【0121】
(付記13)
前記ナトリウム源は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化ナトリウム及び酢酸ナトリウムから1種又は2種以上選ばれる、
ことを特徴とする付記10に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【0122】
(付記14)
前記M源は、Mn、Fe、Ni、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素のうちの1種又は2種以上の元素の酸化物又はそれらの塩又はそれらの有機化合物から選ばれ、
好ましくは、前記M源は、Mn、Fe、Ni、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素のうちの1種又は2種以上の元素の炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩又は酸化物から選ばれ、
より好ましくは、前記M源は、二酸化マンガン、炭酸マンガン、酸化ニッケル、炭酸ニッケル、酸化第二鉄、シュウ酸第一鉄、リン酸第一鉄、硫酸銅から1種又は2種以上選ばれる、
ことを特徴とする付記10に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【0123】
(付記15)
前記A源は、Co、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、W、Ce、Mo、Ba、Ti、Mg、Ta、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素のうちの1種又は2種以上の元素の酸化物又はそれらの塩又はそれらの有機化合物から選ばれ、
好ましくは、前記A源は、Al、Zr、Y、Ca、Li、Rb、Cs、Ba、Ti、Mg、Nb、V、Sc、Sr、B及びCu元素のうちの1種又は2種以上の元素の炭酸塩、リン酸塩、硝酸塩又は酸化物から選ばれ、
より好ましくは、前記A源は、酸化カルシウム、酸化ホウ素、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化銅、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム又は硫酸銅から1種又は2種以上選ばれる、
ことを特徴とする付記10に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法。
【0124】
(付記16)
付記10に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の製造方法によって製造されるナトリウムイオン正極材料。
【0125】
(付記17)
付記1~4のいずれか1つに記載の、又は付記16に記載のナトリウムイオン電池用正極材料の少なくとも1種を正極活物質として含む、
ことを特徴とするナトリウムイオン電池の正極。
【0126】
(付記18)
付記17に記載のナトリウムイオン電池の正極と、負極と、ナトリウム塩含有電解質とを含む、
ことを特徴とするナトリウムイオン電池。
【0127】
(付記19)
付記18に記載のナトリウムイオン電池を用いて製造される、
ことを特徴とする電力システム、エネルギー貯蔵システム又はモバイルストレージデバイス。
【外国語明細書】