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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164365
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】機械的支持層を有する電力ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 9/02 20060101AFI20231102BHJP
   H01B 7/14 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H01B9/02 Z
H01B9/02 A
H01B7/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023073081
(22)【出願日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】22170841
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519099829
【氏名又は名称】エヌケーティー エイチブイ ケーブルズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ダール ライド, クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】サンデル, ハカン
(72)【発明者】
【氏名】ティルバーグ, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】パーシュバリ, アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ラングストローム, ソニー
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンソン, トミー
(72)【発明者】
【氏名】プーラヒミ, アミール
【テーマコード(参考)】
5G311
【Fターム(参考)】
5G311FA01
5G311FC02
5G311FC03
(57)【要約】      (修正有)
【課題】機械的支持層が、熱処理プロセスの結果として径方向に恒久的に熱膨張し、それによって金属製止水層を機械的に支持する電力ケーブルを提供する。
【解決手段】電力ケーブル(1)であって、導体(5)と、導体(5)の周囲に配置される内部半導電体層(9)、内部半導電体層(9)の周囲に配置される絶縁層(11)、および絶縁層(11)の周囲に配置される外部半導電体層(13)を備える絶縁系(7)と、外部半導電体層(13)の周囲に配置される弾性機械的支持層(15)と、長手方向の溶接継ぎ目を有し、機械的支持層(15)の周囲に配置される金属製止水層(17)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力ケーブル(1)であって、
導体(5)と、
前記導体(5)の周囲に配置される内部半導電体層(9)、前記内部半導電体層(9)の周囲に配置される絶縁層(11)、および前記絶縁層(11)の周囲に配置される外部半導電体層(13)を備える絶縁系(7)と、
前記外部半導電体層(13)の周囲に配置される弾性機械的支持層(15)と、
長手方向の溶接継ぎ目(17a)を有する金属製止水層(17)であって、前記金属製止水層(17)が、前記機械的支持層(15)の周囲に配置される、金属製止水層(17)と
を備え、
前記機械的支持層(15)が、熱処理プロセスの結果として径方向に恒久的に熱膨張し、それによって前記金属製止水層(17)を機械的に支持する、電力ケーブル(1)。
【請求項2】
前記機械的支持層(15)が、少なくとも2倍で径方向に恒久的に熱膨張する、請求項1に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項3】
前記機械的支持層(15)が、ポリマー発泡体を備える、請求項1または2に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項4】
前記ポリマー発泡体が、ポリマーマトリックスに埋め込まれた熱膨張性ミクロスフェア、すなわちTEMを含む、請求項3に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項5】
前記ポリマーマトリックスが、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル、ポリジメチルシロキサン、またはエポキシを含む、請求項4に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項6】
前記機械的支持層(15)が、膨張性材料を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項7】
前記膨張性材料が、酸源、炭化剤、および発泡剤を含む、請求項6に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項8】
前記機械的支持層(15)が、押出層であるか、前記絶縁系(7)の周囲に巻き付けられたテープの形態であるか、または前記金属製止水層(17)の内表面上のコーティングである、請求項1から7のいずれか一項に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項9】
前記金属製止水層(17)が、銅、アルミニウム、またはステンレス鋼を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項10】
前記機械的支持層(15)が、半導電体であり、前記機械的支持層(15)が、前記金属製止水層(17)を前記外部半導電体層(13)に、電気的に接続する、請求項1から9のいずれか一項に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項11】
前記電力ケーブル(1)が、海底電力ケーブルである、請求項1から10のいずれか一項に記載の電力ケーブル(1)。
【請求項12】
電力ケーブル(1)を製造する方法であって、
a)導体(5)を設けることと、
b)前記導体(5)の周囲に配置される内部半導電体層(9)と、前記内部半導電体層(9)の周囲に配置される絶縁層(11)と、前記絶縁層(11)の周囲に配置される外部半導電体層(13)とを備える絶縁系(7)を設けることと、
c)前記外部半導電体層(13)の周囲に弾性半導電性機械的支持層(15)を設けることと、
d)金属製止水層(17)を形成するために、前記機械的支持層の径方向外側で長手方向に配置される金属シートの対向する両縁部を溶接することと、
e)前記機械的支持層(15)を恒久的に熱膨張させるために、前記機械的支持層(15)を加熱することであって、それによって前記金属製止水層(17)を機械的に支持する、前記機械的支持層(15)を加熱することと
を含む、方法。
【請求項13】
ステップc)が、未膨張ポリマー材料を使用して前記外部半導電体層の径方向外側に前記機械的支持層(15)を押し出すことを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ステップd)の前に、前記機械的支持層(15)の外面に沿って軸方向に溶接温度で熱的に安定な保護テープを設けることであって、前記保護テープが、ステップd)の前に前記金属シートの前記対向する両縁部と径方向に位置合わせされる、保護テープを設けることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ステップc)で、前記機械的支持層(15)が、前記金属シート上に、未膨張ポリマー材料を含むテープとして、または未膨張ポリマー材料を含むコーティングとして、前記外部半導電体層(13)の周囲に加えられ、ステップe)が、ステップd)の後に実施される、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、電力ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
電力ケーブルは、導体を電気的に絶縁するための電気絶縁を備える。金属の径方向の水バリアが、水分の絶縁材への侵入を防止するために、一般的に必要である。
【0003】
従来、使用されるその金属は、鉛であり、これは、柔らかく、加工可能で、押出可能な金属である。鉛防湿シールドは、水の浸透に対する安全な障壁であるが、いくつかの欠点を伴う。例えば、高電圧ケーブルと共に使用するための鉛防湿シールドは、かなりの被覆厚さを必要とする。これにより、極めて重いケーブルになる。更に、鉛は、人間にとっても、環境にとっても危険な有毒物質である。
【0004】
例えば、欧州特許第2312591号明細書、欧州特許第3438993号明細書、および欧州特許第3786982号明細書に開示されているように、長手方向継ぎ目を溶接することによって接合される銅金属被覆の形態の水バリアを有する電力ケーブルの提供が知られている。
【発明の概要】
【0005】
溶接の前に、金属シートが、電気絶縁材の周囲に巻き付けられ得る。金属シートの対向する両縁部が、直接下にある層を損傷しないように、その層から約1~7mmの径方向距離で長手方向に溶接され、したがって金属被覆を形成する。
【0006】
溶接が実施された後で、金属被覆は、直接下にある層と金属被覆との間の距離を短くするために、ローラを使用して縮径プロセスに供されてもよい。しかしながら、銅などの特定の用途に使用可能なほとんどの金属は、鉛よりも硬く、それらの加工性は低い。金属の種類および金属材料の厚さに応じて、ローラによって加えられることが必要とされる力に起因して縮径を実施することは、極めて困難または不可能でさえあり得る。更に、特に金属材料が薄い場合、縮径を実施することによって、金属材料の座屈に、かなりのリスクがある。
【0007】
本開示の一般的な目的は、先行技術の問題を解決または少なくとも緩和する電力ケーブルを提供することである。
【0008】
したがって、本開示の第1の態様によれば、導体と、導体の周囲に配置される内部半導電体層、内部半導電体層の周囲に配置される絶縁層、および絶縁層の周囲に配置される外部半導電体層を備える絶縁系と、外部半導電体層の周囲に配置される弾性機械的支持層と、長手方向の溶接継ぎ目を有する金属製止水層であって、金属製止水層が、機械的支持層の周囲に配置される、金属製止水層と、を備え、機械的支持層が、熱処理プロセスの結果として径方向に恒久的に熱膨張し、それによって金属製止水層を機械的に支持する、電力ケーブルが提供される。
【0009】
機械的支持層の熱膨張は、例えば、熱膨張を引き起こす温度および時間で熱処理に供されることなく、機械的支持層が作られた材料の基準試料の体積を測定することによって、熱膨張が生じた後の機械的支持層の試料の体積を測定することによって、更に2つの体積または径方向の厚さを比較することによって、決定されてもよい。
【0010】
熱処理に使用される温度は、機械的支持層に使用される材料の種類に依存するが、例えば、80~190℃の範囲、または100~260℃の範囲、例えば150~260℃の範囲、または150~400℃の範囲など、70℃超であってもよい。
【0011】
金属製止水層の機械的支持層によってもたらされる支持は、直接的であっても、間接的であってもよい。
【0012】
機械的支持層は、金属製止水層の全内周の周囲に、金属製止水層の支持を実現する。
【0013】
機械的支持層は、熱膨張に起因して、金属製止水層と外部半導電体層との間の径方向空間の大部分または全部を満たし得る。これにより、金属製止水被覆の直径を小さくする必要性が排除され、または必要な縮径の量を少なくとも低減し得る。しかしながら、一例によれば、機械的支持層の径方向内側、機械的支持層と外部半導電体層との間、および/または機械的支持層の径方向外側、機械的支持層と金属製止水層との間に、スウェリングテープ(swelling tape)の層を設けてもよい。
【0014】
機械的支持層の弾性により、機械的支持層は、電力ケーブル動作中に導体を通って流れる電流の大きさの変化に応答して、絶縁系が熱的に膨張し、収縮するときに、外部半導電体層と金属製止水層との間の径方向の間隙/空間を満たすように動的に膨張し、収縮し得る。したがって、導体および絶縁系のセンタリングを含む電力ケーブルの機械的特性は、電力ケーブル動作中に維持され得る。
【0015】
機械的支持層は更に、長手方向の水の侵入に対する保護をもたらす。
【0016】
機械的支持層は、電力ケーブルの製造中に熱的に径方向に膨張する。したがって、熱処理プロセスは、電力ケーブルの製造中に実施される。
【0017】
一実施形態により、機械的支持層は、少なくとも2倍で径方向に恒久的に熱膨張する。したがって、機械的支持層の厚さは、熱処理プロセスによって少なくとも2倍増加する。
【0018】
機械的支持層は、電力ケーブルの製造中に、少なくとも4倍、または少なくとも5倍など、少なくとも3倍、熱膨張されてもよい。
【0019】
機械的支持層は、例えば、熱膨張前に、2~4mmなど、1~5mmの範囲の径方向厚さを有してもよい。機械的支持層は、熱膨張後に、2~10mmの径方向厚さを有してもよい。
【0020】
機械的支持層は、周方向に沿って、本質的に一定、または一定の厚さを有してもよく、または周方向に沿って変化してもよい。変化する厚さは、電力ケーブルの全周を熱処理に供しないことによって実現されてもよく、または外部半導電体層までの電力ケーブルが完全に円形ではないということであってもよい。
【0021】
電力ケーブルは、中電圧電力ケーブルまたは高電圧電力ケーブルであってもよい。中電圧とは、本明細書では、1kV~72.5kVの範囲の電圧を意味する。高電圧とは、本明細書では、72.5kVを超える電圧を意味する。
【0022】
電力ケーブルは、直流(DC)電力ケーブル、または交流(AC)電力ケーブルであってもよい。AC電力ケーブルは、単相または多相のAC電力ケーブルであってもよい。DC電力ケーブルは、1つ、2つ、または3つ以上のDC電力コアまたは極を備えてもよい。
【0023】
機械的支持層は、抗酸化剤を備えてもよい。これにより、熱酸化劣化を低減または排除し得る。抗酸化剤は、経年変化に対する機械的支持層の安定性を更に高める。
【0024】
一実施形態により、機械的支持層は、ポリマー発泡体を備える。
【0025】
機械的支持層は、熱処理プロセスによってポリマー発泡体になる未膨張ポリマー材料を備え得る。これにより、未膨張ポリマー材料が熱膨張する。
【0026】
一実施形態により、ポリマー発泡体は、ポリマーマトリックスに埋め込まれた熱膨張性ミクロスフェア、すなわちTEMを含む。
【0027】
TEMは、例えば、Nouryon社によるExpancel(商標登録)であってもよい。
【0028】
一実施形態により、ポリマーマトリックスは、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル、ポリジメチルシロキサンまたはエポキシを含む。
【0029】
ポリマーマトリックスとしてポリ塩化ビニル(PVC)またはエチレン-酢酸ビニル(EVA)を使用すると、難燃性が得られる。
【0030】
EVAは、ポリエチレン(PE)と比較して融点が低いため、早期膨張のリスクのない処理が可能である。
【0031】
ポリマーマトリックスを使用することにより、機械的支持層が作られる材料の処理が容易になる。それは、例えば、機械的支持層を押出成形もしくは共押出成形、および/または架橋することを可能にする。
【0032】
一実施形態により、機械的支持層は、膨張性材料を含む。
【0033】
一実施形態により、膨張性材料は、酸源、炭化剤、および発泡剤を含む。
【0034】
一実施形態により、機械的支持層は、押出層であるか、絶縁系の周囲に巻き付けられたテープの形態であるか、または金属製止水層の内表面上のコーティングである。
【0035】
テープは、例えば、1つまたは複数の担体と、担体上または担体間に配置されたポリマー発泡体材料と、を備えてもよい。1つまたは複数の担体は、例えば、織物または不織布を備えてもよい。
【0036】
金属製止水層は、鉛フリーであってもよい。
【0037】
一実施形態により、金属製止水層は、銅、アルミニウム、またはステンレス鋼を含む。
【0038】
一実施形態により、機械的支持層は、半導電体であり、機械的支持層は、金属製止水層を外部半導電体層に、電気的に接続する。
【0039】
これにより、外部半導電体層と金属製止水層との間の潜在的な均等化が得られる。
【0040】
機械的支持層は、カーボンブラックを含んでもよい。この場合、カーボンブラックは、機械的支持層の半導電体特性をもたらす。
【0041】
一実施形態により、電力ケーブルは、海底電力ケーブルである。海底電力ケーブルは、静的または動的海底電力ケーブルであってもよい。
【0042】
あるいは、電力ケーブルは、地下電力ケーブルであってもよい。
【0043】
本開示の第2の態様によれば、電力ケーブルを製造する方法が提供され、方法は、a)導体を設けることと、b)導体の周囲に配置される内部半導電体層と、内部半導電体層の周囲に配置される絶縁層と、絶縁層の周囲に配置される外部半導電体層とを備える絶縁系を設けることと、c)外部半導電体層の周囲に弾性機械的支持層を設けることと、d)金属製止水層を形成するために、機械的支持層の径方向外側で長手方向に配置される金属シートの対向する両縁部を溶接することと、e)機械的支持層を恒久的に熱膨張させるために、機械的支持層を加熱することであって、機械的支持層が、径方向に恒久的に熱膨張し、それによって金属製止水層を機械的に支持する、機械的支持層を加熱することと、を含む。
【0044】
ステップe)は、機械的支持層を恒久的に少なくとも2倍に熱膨張させるために、機械的支持層を加熱することを含んでもよい。
【0045】
ステップe)は、ステップc)と同時に、またはステップd)と同時に、またはステップd)の後に、実施されてもよい。
【0046】
加熱は、ステップd)の前に、その最中に、またはその後に、実施されてもよいが、好ましくは、機械的支持層は、ステップd)の後に、径方向に恒久的に熱膨張される。
【0047】
熱膨張は、1つの変形例によれば、溶接前の加熱によって引き起こされ得るが、この場合、熱膨張は、ステップd)の後に熱膨張が起こるように引き起こされたことに応答して、遅くなるか、または遅延する。
【0048】
一例により、機械的支持層は、半導電体であり、機械的支持層は、金属製止水層を外部半導電体層に、電気的に接続する。
【0049】
一実施形態により、ステップc)は、未膨張ポリマー材料を使用して外部半導電体層の径方向外側に機械的支持層を押し出すことを含む。
【0050】
一実施形態は、ステップd)の前に、機械的支持層の外面に沿って軸方向に溶接温度で熱的に安定な保護テープを設けることであって、保護テープが、ステップd)の前に金属シートの対向する両縁部と径方向に位置合わせされる、保護テープを設けることを含む。
【0051】
保護テープは、長手方向に延在し、金属シートの対向する両縁部を溶接するときに形成される溶接継ぎ目と径方向に整列して、配置される。
【0052】
これにより、溶接中の充填材料の劣化のリスクを低減し得る。
【0053】
保護テープは、例えば、炭素繊維テープ、または炭素繊維強化ポリマーテープであってもよい。
【0054】
一実施形態により、ステップc)で、機械的支持層は、金属シート上に、未膨張ポリマー材料を含むテープとして、または未膨張ポリマー材料を含むコーティングとして、外部半導電体層の周囲に加えられ、ステップe)は、ステップd)の後に実施される。
【0055】
ステップe)は、例えば、機械的支持層がテープまたはコーティングで形成されている場合、金属製止水層の周囲に配置される1つまたは複数の誘導加熱器によって機械的支持層を加熱することを含んでもよい。
【0056】
誘導加熱は、生産ラインにおいて電力ケーブルが軸方向に移動する際に実施されてもよい。
【0057】
未膨張ポリマー材料は、発泡剤および/またはTEMを含んでもよい。
【0058】
一実施形態は、ステップd)の後に、金属製止水層の縮径を実施することを含む。
【0059】
一般に、特許請求の範囲で使用されるすべての用語は、本明細書で特に明示的に定義されない限り、技術分野におけるそれらの通常の意味に従って解釈されるべきである。「1つ(a/an)の要素(element)、装置(apparatus)、構成要素(component)、手段(means)」などへのすべての言及は、特に明記しない限り、要素、装置、構成要素、手段などの少なくとも1つの例を指すものとして非限定的に解釈されるべきである。
【0060】
次に、添付の図面を参照して、例として、本発明の概念の具体的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】電力ケーブルの一例の断面を概略的に示す図である。
図2a】電力ケーブルを製造する様々なステップの断面を概略的に示す図である。
図2b】電力ケーブルを製造する様々なステップの断面を概略的に示す図である。
図2c】電力ケーブルを製造する様々なステップの断面を概略的に示す図である。
図2d】電力ケーブルを製造する様々なステップの断面を概略的に示す図である。
図3図1の電力ケーブルなどの電力ケーブルの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0062】
ここで、例示的な実施形態を示している添付の図面を参照して、本発明の概念を以下に更に完全に説明する。しかしながら、本発明の概念は、多くの様々な形態で具体化されてもよく、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈されるべきではなく、むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的で、完全であり、本発明の概念の範囲を当業者に完全に伝えるように、例として提供される。同様の番号は、説明全体を通して、同様の要素を指す。
【0063】
図1は、電力ケーブル1の一例の断面を概略的に示している。
【0064】
電力ケーブル1は、電力コア3aを備える。
【0065】
電力コア3aは導体5を備える。導体5は、例えば、固体、撚り合わせ、またはミリケン型であってもよい。導体5は、金属で作られる。導体5は、例えば、銅またはアルミニウムを含んでもよい。
【0066】
電力コア3aは、絶縁系7を備える。
【0067】
絶縁系7は、導体5の周囲に配置される内部半導電体層9を備える。内部半導電体層9は、例えば、半導電体ポリマー、すなわち半導電体ペーパを形成するためにカーボンブラックなどの半導電体成分と混合された、架橋ポリエチレン(XLPE)、ポリプロピレン(PP)、PPランダム共重合体をベースとする熱可塑性エラストマー(TPE)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)ゴム、またはエチレンプロピレンゴム(EPR)を含んでもよい。半導電体ポリマーは、押出成形されてもよい。
【0068】
絶縁系7は、絶縁層11を備える。絶縁層11は、内部半導電体層9の周囲に配置される。絶縁層11は、内部半導電体層9と直接接触してもよい。絶縁層11は、例えば、XLPE、PP、PPランダム共重合体をベースとする熱可塑性エラストマー(TPE)、EPDMゴム、またはEPR、すなわちEPDMペーパを含んでもよい。絶縁層11は、押出成形されていてもよい。
【0069】
絶縁系7は、絶縁層11の周囲に配置される外部半導電体層13を備える。外部半導電体層13は、絶縁層11と直接接触してもよい。外部半導電体層13は、例えば、半導電体ポリマー、すなわち半導電体ペーパを形成するためにカーボンブラックなどの半導電体成分と混合された、XLPE、PP、PPランダム共重合体をベースとする熱可塑性エラストマー(TPE)、EPDMゴム、またはEPRを含んでもよい。半導電体ポリマーは、押出成形されてもよい。
【0070】
絶縁系7は、三重押出絶縁系であってもよい。
【0071】
電力コア3は、外部半導電体層13の径方向外側に配置される弾性機械的支持層15を備える。
【0072】
一例によれば、機械的支持層15は半導電体であってもよい。
【0073】
電力コア3aは、金属製止水層17を備える。金属製止水層17は、機械的支持層17と同心円状で、更にその周囲に配置される。
【0074】
機械的支持層17は、外部半導電体層13と金属製止水層17との間に配置される。
【0075】
機械的支持層17は、電力ケーブル1の製造中の熱処理プロセスに起因して、少なくとも2倍に熱的に膨張してもよい。
【0076】
機械的支持層17は、金属製止水層17を機械的に支持する。
【0077】
機械的支持層17は、ポリマー発泡体を備え得る。
【0078】
ポリマー発泡体は、例えば、ポリマーマトリックスに埋め込まれたTEMを含んでもよい。
【0079】
ポリマーマトリックスは、例えば、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル、ポリジメチルシロキサン、またはエポキシを含んでもよい。
【0080】
一例によれば、機械的支持層15は、膨張性材料を備える。膨張性材料は、酸源、炭化剤、および発泡剤を含み得る。
【0081】
機械的支持層15は、例えば押出層であってもよく、または絶縁系7の周囲に巻き付けられたテープの形態であってもよく、または金属製止水層17の内表面上のコーティングの形態であってもよい。
【0082】
金属製止水層17は、金属被覆を備え得る。金属は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、またはステンレス鋼であってもよい。
【0083】
電力コア3aは、金属製止水層17と同心円状で、更にその周囲に配置されるポリマー層19を含む。ポリマー層19は、例えば、XLPE、PP、EPDMまたはEPRを含んでもよい。
【0084】
ポリマー層19は、半導電体であってもよい。
【0085】
一例によれば、ポリマー層19は、接着剤によって金属製止水層17に結合されてもよい。ポリマー層19が半導電体である場合、接着剤は半導電体である。
【0086】
ポリマー層19は、ポリマージャケットであってもよい。
【0087】
ポリマー層19は、金属製止水層17の外面と直接接触してもよい。
【0088】
ポリマー層19は、金属製止水層17上に押し出されてもよい。
【0089】
電力ケーブル1は、ポリマー層19の径方向外側に配置される外装層21を備え得る。
【0090】
外装層21は、ポリマー層19の周囲に螺旋状に配置される複数の外装ワイヤ23を備える。外装層21は、亜鉛めっき炭素鋼、オーステナイト系ステンレス鋼、銅、もしくはアルミニウムなどの金属で作られた外装ワイヤ23を、および/またはジャケット内のアラミド繊維などの合成材料で作られた外装ワイヤ23を備えてもよい。
【0091】
外装ワイヤ23の少なくとも一部が金属で作られた場合、外装層21は、ビチューメンで覆われていてもよい。
【0092】
図2a~図2dは、電力ケーブル1を製造するための例示的な製造ステップを示している。
【0093】
図2aの例では、機械的支持層15は、外部半導電体層13の周囲に設けられる。
【0094】
機械的支持層15は、この例では、この段階で熱的に膨張していない。機械的支持層15は、未膨張ポリマー材料16を備え得る。
【0095】
機械的支持層15は、例えば、絶縁系7の周囲に巻き付けられたテープの形態であってもよい。
【0096】
テープの重なり合う縁部は、例えば、接着剤によって互いに結合されてもよい。
【0097】
図2bは、まだ膨張していない機械的支持層15の周囲に金属製止水層17が形成された場合を示している。
【0098】
金属製止水層17は、未膨張ポリマー材料16から径方向に距離を置いて、未膨張ポリマー材料16の周囲に金属シートを巻き付けることによって作られる。金属製止水層17の対向する両縁部は、長手方向に溶接されて、溶接継ぎ目17aを形成する。
【0099】
図2cは、図2bで得られた構造を熱処理に供した場合を示している。これにより、未膨張ポリマー材料16は恒久的に熱膨張する。
【0100】
図2dは、熱処理が完了した場合を示している。機械的支持層15は、この例では、金属製止水層17の内表面と直接接触している。
【0101】
変形例により、機械的支持層15が金属製止水層17の内表面と直接接触することを確実にするために、熱処理の前または後に、金属製止水層17は、縮径に供されてもよい。
【0102】
図3は、電力ケーブル1の製造方法のフローチャートである。
【0103】
ステップa)において、導体5が提供される。
【0104】
ステップb)において、絶縁系7が導体5の周囲に設けられる。絶縁系7は、例えば、三重押出プロセスにおいて、またはテープ巻取りプロセスにおいて、導体5の周囲に設けられてもよい。
【0105】
ステップc)において、機械的支持層15は、絶縁系7の外部半導電体層13の周囲に設けられる。
【0106】
機械的支持層15は、ステップc)において絶縁系7上に押し出され得る。この場合、機械的支持層15は、押出プロセスの後で、好ましくは、後述する溶接のステップd)の後で、熱膨張に供される。機械的支持層15は、押出機に供給される未膨張ポリマー材料を使用して押し出されてもよく、これは、溶接のステップd)の後で熱膨張される。
【0107】
溶接温度で熱的に安定な保護テープは、機械的支持層15が押し出された場合に、金属シートの対向する両縁部が長手方向に溶接される前に、機械的支持層15の外面に沿って軸方向に設けられてもよい。保護テープは、金属シートの対向する両縁部と径方向に位置合わせされる。
【0108】
ステップd)において、金属シートの対向する両縁部は、長手方向に溶接され、金属製止水層17を形成する。
【0109】
熱膨張され、押し出された機械的支持層15の場合、金属シートは、ステップd)の間に、機械的支持層15と物理的に接触してもよく、または本質的に物理的に接触してもよい。
【0110】
ステップe)において、機械的支持層15は、加熱され、機械的支持層15を恒久的に熱膨張させ得る。
【0111】
熱膨張は、例えば、少なくとも2倍であってもよい。
【0112】
機械的支持層15がテープから形成される場合、ステップc)は、テープを絶縁系7の周囲に長手方向に巻き付けることを含んでもよい。
【0113】
機械的支持層15が、未膨張ポリマー材料を含む金属シート上のコーティングとして形成される場合、ステップc)は、コーティングが絶縁系7に面した状態で、金属シートを絶縁系7の周囲に長手方向に巻き付けることを含んでもよい。
【0114】
本発明の概念は、主にいくつかの例を参照して上述した。しかしながら、当業者によって容易に理解されるように、添付の特許請求の範囲によって規定されるように、上記で開示された実施形態以外の他の実施形態も、本発明の概念の範囲内で等しく可能である。
図1
図2a-d】
図3
【外国語明細書】