(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164377
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】in-situで生成されたRCA産物のex-situシークエンシング
(51)【国際特許分類】
C12N 15/09 20060101AFI20231102BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20231102BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20231102BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20231102BHJP
C12Q 1/6876 20180101ALI20231102BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20231102BHJP
【FI】
C12N15/09 Z
C12Q1/6869 Z ZNA
C12Q1/6844 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6876 Z
C12Q1/6851 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023073273
(22)【出願日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】22170442
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520094891
【氏名又は名称】ミルテニー バイオテック ベー.フェー. ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Miltenyi Biotec B.V. & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Ebert-Strasse 68, 51429 Bergisch Gladbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】細野 正裕
(72)【発明者】
【氏名】ジミー アデディラン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ピナード
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QQ42
4B063QQ43
4B063QQ53
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QS24
4B063QS25
4B063QS32
4B063QX02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高い分解能で組織サンプルから標的配列の配列情報を取得する方法を提供する。
【解決手段】本発明は、少なくとも1つのRNAまたはc-DNA鎖を含む組織から標的配列の配列情報を取得する方法であって、a.5’および3’末端を有する50~1000個の核酸を含む少なくとも1つの第1のオリゴヌクレオチドを提供するステップと、b.第1のオリゴヌクレオチドの5’および3’末端を、少なくとも1つのRNAまたはc-DNA鎖の相補的部分にハイブリダイズさせるステップと、c.ハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドの3’および5’末端を互いに結合することにより、第1の一本鎖環状鋳型を得るステップと、d.第1の一本鎖環状鋳型を、ローリングサークル増幅が可能なポリメラーゼにより複数のコンカテマーへと増加させることにより、一次ロロニーを得るステップと、e.一次ロロニーをサンプルから取り出すステップと、を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのRNAまたはc-DNA鎖を含む組織から標的配列の配列情報を取得する方法であって、
a. 5’および3’末端を有する50~1000個の核酸を含む少なくとも1つの第1のオリゴヌクレオチドを提供するステップと、
b. 前記第1のオリゴヌクレオチドの5’および3’末端を、少なくとも1つのRNAまたはc-DNA鎖の相補的部分にハイブリダイズさせるステップと、
c. 前記ハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドの3’および5’末端を互いに結合することにより、第1の一本鎖環状鋳型を得るステップと、
d. 前記第1の一本鎖環状鋳型を、ローリングサークル増幅が可能なポリメラーゼにより複数のコンカテマーへと増加させることにより、一次ロロニーを得るステップと、
e. 前記一次ロロニーをサンプルから取り出すステップと、
f. 前記一次ロロニーを複数の第2のオリゴヌクレオチドに断片化し、前記第2のオリゴヌクレオチドの3および5’末端で第1のPCRプライマーおよび第2のPCRプライマーをハイブリダイズさせることにより、第3のオリゴヌクレオチドを得るステップと、
g. 前記第3のオリゴヌクレオチドを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が可能なポリメラーゼにより増加させるステップと、
h. 前記増加した第3のオリゴヌクレオチドの前記第2のPCRプライマーに前記第1のPCRプライマーをライゲートすることにより、第2の一本鎖環状鋳型を得るステップと、
i. 前記第2の一本鎖環状鋳型を、ローリングサークル増幅が可能なポリメラーゼにより複数のコンカテマーへと増加させることにより、二次ロロニーを得るステップと、
j. 前記二次ロロニーの配列を決定することにより、前記標的配列の前記配列情報を得るステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1のオリゴヌクレオチドの前記5’および3’末端を、前記少なくとも1つのRNAまたはc-DNA鎖の相補的部分に隣接してハイブリダイズさせ、前記第1のオリゴヌクレオチドの前記5’および3’末端の相互の直接的なライゲーションにより前記第1の一本鎖環状鋳型を得る、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1のオリゴヌクレオチドの前記5’および3’末端を、前記少なくとも1つのRNAまたはc-DNA鎖の相補的部分に、前記第1のオリゴヌクレオチドの前記5’および3’末端の間に2~100ヌクレオチドのギャップを伴ってハイブリダイズさせ、前記ギャップを前記RNAまたはc-DNA鎖に相補的なヌクレオチドで充填することによって、前記第1の一本鎖環状鋳型を得る、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記第1のPCRプライマーを、スプリントDNAの提供によって前記第2のPCRプライマーにライゲートする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記ローリングサークル増幅(RCA)を、光および/または熱により活性化させる、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記第1のオリゴヌクレオチドは、制限酵素によりまたは化学的に前記一次ロロニーを断片化することを可能にする断片化配列を含む、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記第1のロロニーを少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドで装飾する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記第1のロロニーに結合した少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドの発光のイメージングによって、前記組織上の前記第1のロロニーの空間的な位置を決定する、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記第1のオリゴヌクレオチドは、前記少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドが結合するUMI配列およびまたはバーコード配列から構成される識別領域を含む、請求項7または8記載の方法。
【請求項10】
前記標的配列の前記配列情報を用いて遺伝子発現プロファイルを定量化する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
前記標的配列の前記配列情報を用いて、オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションおよび前記標的配列の選択の有効性を確認する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、in-situで発現したmRNAの標的領域にハイブリダイズし、目的のヌクレオチド変化/バリアントまたは任意の他の配列を含み得る目的の逆転写標的領域を伴ってまたは伴わずにライゲートした環状体またはパドロックプローブからの組織切片上で生成されたローリングサークル増幅(RCA)産物の回収、抽出およびシークエンシングに関する。
【0002】
背景
パドロックオリゴヌクレオチドは、それがハイブリダイズした核酸の短い部分の重合に大きな成功を収めることが証明されている。ほとんどのパドロックアプローチは、標的をcDNAに逆転写することから始まる。
【0003】
パドロック法は例えば、“Highly multiplexed subcellular RNA sequencing in situ” by Lee et al., Science. 2014 March 21; 343(6177): 1360-1363. doi:10.1126/science.1250212または“Efficient In Situ Detection of mRNAs using the Chlorella virus DNA ligase for Padlock Probe Ligation” by Nils Schneider and Matthias Meier; February 5, 2020 -Cold Spring Harbor Laboratory Pressに開示されている。
【0004】
ヒトDNA配列のターゲット多重増幅のための包括的アッセイは、Sujatha Krishnakumar et al.; PNAS sent for review February 19, 2008に公開されている。
【0005】
さらに、国際公開第2017143155号には、プール核酸ライブラリーを用いた細胞の多重変化およびその解析が開示されており、国際公開第2018045181号には、蛍光in situシークエンシングによる検出のための核酸配列のライブラリーを生成する方法が開示されている。
【0006】
公開されているパドロック法では、DNAまたはRNAのシークエンシングを可能とするが、in situのみであり、標的領域全体のシークエンシングは不可能である。近年、in situゲノムシークエンシング(IGS)は、サンプル内のゲノムのシークエンシングとイメージングを同時に行う方法として説明されている。この方法では、ショートリードin situシークエンシングによって固有の分子識別子(UMI)を局在化させ、その後、アンプリコン解離、PCR、およびペアエンドシークエンシングによってUMIを有するゲノム配列に関連付けられるアンプリコンのex situシークエンシングというワークフローが記載されており、これはA. C. Payne et al., Science 10.1126/science.aay3446 (2020)が発表している。
【0007】
多数のmRNAを単一細胞レベルで分析することを可能にする顕微鏡イメージングは、組織不均質の理解、分子開発および疾患の治療にとって極めて重要な要素である、転写量および局在性に関する有益な情報を与える。さらに、空間情報が既知であるmRNAから潜在的な突然変異を同定できることも、非常に価値がある。
【0008】
RNAまたはc-DNAの空間情報およびシークエンシングを得る方法は、欧州特許出願公開第3936623号明細書に開示されている。この方法では、オリゴヌクレオチドがRNAまたはc-DNAにハイブリダイズして環状鋳型を形成し、ここで、オリゴヌクレオチド(および後に環状鋳型)は、適切な相補配列を有する検出プローブによって認識される既知の配列を有する少なくとも1つの領域を含む。検出プローブの検出により、組織上のRNAまたはc-DNAの特定の情報を得ることができる。この方法の一変形例では、環状鋳型を断片化して再環状化して、さらなる増幅のための第2の環状鋳型を得ることができる。しかし、この方法は空間情報を得ることを目的としているため、第1および第2の環状化/増幅ステップは組織上で行われる。
【0009】
発明の主題
本発明は、所望の標的ヌクレオチド(ゲノムDNAまたはmRNA)と、任意に空間識別子として機能し得るバーコードまたは固有の分子識別子とを有する組織上で生成されたローリングサークル増幅(RCA)産物を回収する方法に関する。
【0010】
これは、目的の所望の標的ヌクレオチド(ゲノムDNAまたはmRNA)を検出し、それにハイブリダイズさせるために使用される環状体またはパドロック分子を使用することにより達成される。組織上の目的の所望の標的ヌクレオチド(ゲノムDNAまたはmRNA)を検出し、それにハイブリダイズさせるために使用される環状体またはパドロック分子によって、所望の配列情報が捕捉される。これらの環状体またはパドロック分子は、所望の標的ヌクレオチド(ゲノムDNAまたはmRNA)、または空間識別子として機能するバーコードもしくは固有の分子識別子を有する。これらの環状体またはパドロックは、組織上で直接RCA増幅される。その後、RCA産物が組織から物理的に回収および抽出され、断片化され、目的の領域がPCRで増幅され、次いで2回目の環状化およびRCA増幅が行われる。その後、NGSシークエンシングプラットフォームを用いて、RCA産物のシークエンシングが行われる。
【0011】
ゲノムDNAまたはmRNAの目的の標的領域のNGSシークエンシングにより、突然変異またはヌクレオチドのバリアントを解析することができる。また、組織上の目的の配列の位置には、空間識別子が付与される。
【0012】
概要
したがって、本発明の目的は、公知技術よりも高い分解能で組織サンプルから標的配列の配列情報を取得する方法を提供することであった。
【0013】
本発明の主題は、少なくとも1つのRNAまたはc-DNA鎖を含む組織から標的配列の配列情報を取得する方法であって、
a. 5’および3’末端を有する50~1000個の核酸を含む少なくとも1つの第1のオリゴヌクレオチドを提供するステップと、
b. 第1のオリゴヌクレオチドの5’および3’末端を、少なくとも1つのRNAまたはc-DNA鎖の相補的部分にハイブリダイズさせるステップと、
c. ハイブリダイズした第1のオリゴヌクレオチドの3’および5’末端を互いに結合することにより、第1の一本鎖環状鋳型を得るステップと、
d. 第1の一本鎖環状鋳型を、ローリングサークル増幅が可能なポリメラーゼにより複数のコンカテマーへと増加させることにより、一次ロロニーを得るステップと、
e. 一次ロロニーをサンプルから取り出すステップと、
f. 一次ロロニーを複数の第2のオリゴヌクレオチドに断片化し、第2のオリゴヌクレオチドの3および5’末端で第1のPCRプライマーおよび第2のPCRプライマーをハイブリダイズさせることにより、第3のオリゴヌクレオチドを得るステップと、
g. 第3のオリゴヌクレオチドを、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が可能なポリメラーゼにより増加させるステップと、
h. 増加した第3のオリゴヌクレオチドの第2のPCRプライマーに第1のPCRプライマーをライゲートすることにより、第2の一本鎖環状鋳型を得るステップと、
i. 第2の一本鎖環状鋳型を、ローリングサークル増幅が可能なポリメラーゼにより複数のコンカテマーへと増加させることにより、二次ロロニーを得るステップと、
j. 二次ロロニーの配列を決定することにより、標的配列の配列情報を得るステップと
を含む、方法である。
【0014】
本発明の方法は、シークエンシング法の品質管理に特に有用である。したがって、本発明のさらなる主題は、得られた標的配列の配列情報を用いて遺伝子発現プロファイルを定量化する方法、または得られた標的配列の配列情報を用いてオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションおよび標的配列の選択の有効性を確認する方法である。
【0015】
ここで、本発明者らは、(1)組織切片からRCA産物を回収し、(2)ヌクレオチド変化/バリアントおよび/またはバーコード/固有の分子識別子を有する目的の領域を含むRCA産物のターゲットPCR増幅を行う方法を記載する。
【0016】
本発明の方法は、一部は組織上で直接行われ、一部は組織から標的配列を含む分子を除去した後に行われる。「組織上」のステップは、
1. 組織切片からのRCA産物のDNAの回収および抽出
2. RCA産物のターゲットPCR増幅
3. PCR産物の環状化およびRCA増幅
4. NGSシークエンシング
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本方法で使用される環状体またはパドロックプローブの設計を示す図である。環状体/パドロックは、バーコードまたはUMI識別子を含むことができる。環状体/パドロックを、目的のmRNAまたはゲノムDNAを発現した組織切片にハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーション後、パドロックをSplintRリガーゼによりライゲートし、環状体が生成される。次に、この環状体を用いてローリングサークル増幅(RCA)を行い、組織上に検出可能なRCA産物を生成することができる。
【
図2】環状体/パドロックから生成されたRCAの目的の領域をPCR増幅する戦略を示す図である。P1、P2受容体を有するPCRプライマーが、目的の領域のフランキング領域にハイブリダイズすることで、これを増幅し、シークエンシングすることができる。
【
図3a】組織から抽出されたパドロックからの4つの遺伝子転写物の成功裏に行われるex-situシークエンシングを示す図である。目的の転写物が検出されるように設計された各パドロックが、目的の標的領域のシークエンシングにより明確に識別された。
【
図3b】組織から抽出されたパドロックからの4つの遺伝子転写物の成功裏に行われるex-situシークエンシングを示す図である。目的の転写物が検出されるように設計された各パドロックが、目的の標的領域のシークエンシングにより明確に識別された。
【0018】
詳細な説明
組織上で直接行われるRCAのex-situシークエンシングは、6段階のプロセスで構成される。(1)組織上でのRCAの生成。(2)RCAロロニーの回収および組織切片で得られたロロニーからのDNAの抽出。(3)目的の領域のターゲットPCR増幅。目的の領域は、バーコード/UMI、または標的配列のヌクレオチド変化/バリアントのいずれかであってよい。(4)PCR産物の環状化。(5)RCAまたは環状体。(6)NGSシークエンシング。
【0019】
図1に、mRNA(点線)にハイブリダイズする2種類のパドロックが、使用可能な目的の特定の領域と一緒に図示されている。目的の領域は、塩基突然変異もしくはバリアントを有するmRNAとハイブリダイズする領域のヌクレオチド位置、またはパドロックバックボーン領域のUMIのバーコードのいずれかを含むことができる。ライゲーションに続いて生成された環状体は、組織上で直接RCAロロニーを生成するための基質として機能することができる(
図1のステップ1)。
【0020】
第1の実施形態において、第1のオリゴヌクレオチドの5’および3’末端を、少なくとも1つのRNAまたはc-DNA鎖の相補的部分に隣接してハイブリダイズさせ、第1のオリゴヌクレオチドの5’および3’末端の相互の直接的なライゲーションにより第1の一本鎖環状鋳型を得る。
【0021】
第2の実施形態において、第1のオリゴヌクレオチドの5’および3’末端を、少なくとも1つのRNAまたはc-DNA鎖の相補的部分に、第1のオリゴヌクレオチドの5’および3’末端の間に2~100ヌクレオチドのギャップを伴ってハイブリダイズさせ、このギャップをRNAまたはc-DNA鎖に相補的なヌクレオチドで充填することによって、第1の一本鎖環状鋳型を得る。
【0022】
好ましくは、第1のオリゴヌクレオチドは、制限酵素によりまたは化学的に一次ロロニーを断片化することを可能にする断片化配列を含む。
【0023】
RCAからのDNAの抽出 組織切片からRCA産物を回収するために実施される方法が示されている(
図2のステップ1および2)。まず、RCA産物を含む組織切片上で、溶解バッファーおよびプロテイナーゼKの存在下でサンプルを加熱することにより組織消化を行う。
【0024】
サンプルを熱源から取り出して固相可逆固定化(SPRI)ビーズを用いてインキュベートすることができ、磁性体を使用することで、核酸を含むビーズを容易に洗浄することができる。
【0025】
好ましくは、溶出液をSPRIビーズに加え、3回洗浄した後、磁性体を使用してSPRIビーズを取り除き、上清をチューブに移し替える。このチューブには、抽出されたRCA DNA溶出液が入っている。
【0026】
抽出された核酸を、NanodropまたはQubitを用いて定量化することができる。
【0027】
上記のヌクレオチドの変化/バリアントを有する目的のパドロック接合領域を含む回収されたRCA産物に対して、ターゲットPCR増幅を行う。RCA DNAを抽出し、定量化した後、RCA DNAを鋳型として使用し、目的の領域に隣接する領域に特異的なプライマーセット(第1のPCRプライマーおよび第2のPCRプライマー)を用いてPCR反応を行う(
図2のステップ3)。
【0028】
例えば、第1のPCRプライマーの配列は、
【化1】
であってよく、第2のPCRプライマーの配列は、
【化2】
であってよい。太字体のタイプの配列が、
図2のステップ3で示した目的の領域に隣接する領域にハイブリダイズする。P1およびP2受容体部分は、後のステップでの環状化に使用可能な固有の配列である。
【0029】
PCRを25サイクル行う。
【0030】
PCR産物をQiaQuick PCR産物精製カラムを用いて精製し、Qubitアッセイを用いてDNAを定量化した。
【0031】
得られたP1およびP2受容体を有するPCR産物を、両端を一緒にするスプリントオリゴヌクレオチドを用いて環状化させる(
図2のステップ4)。好ましくは、第1のPCRプライマーを、スプリントDNAの提供によって第2のPCRプライマーにライゲートする。
【0032】
環状体をRCA増幅させ(
図2のステップ5)、ロロニーが形成される。
【0033】
NGSシークエンシングを、P1またはP2受容体領域と結合するシークエンシングプライマーを用いて行うことができる(
図2のステップ5)。
【0034】
NGSシークエンシングにより、目的の標的領域に突然変異/ヌクレオチドバリアントが存在するか否かを判定し、パドロックID領域のシークエンシングによって、後に基質上のロロニーの位置と組織の元の位置とを相関させることができる。すなわち、シークエンシングにより、組織上の遺伝子の位置や突然変異の有無を調べることができる。さらに、得られたシークエンシングリード数を定量化することにより、遺伝子発現プロファイルを示すこともできる。
【0035】
さらに、第1のロロニーに結合した少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドの発光のイメージングによって、組織上の第1のロロニーの空間的な位置を決定する。
【0036】
このために、第1のロロニーを少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドで装飾(結合)することによって、第1のロロニーを得ることができる。
【0037】
さらに、第1のオリゴヌクレオチドは、少なくとも1つの蛍光標識オリゴヌクレオチドが結合するUMI配列およびまたはバーコード配列から構成される識別領域を含む。
【0038】
実施例
4つのマウス遺伝子を試験し、これらの遺伝子について、対応するmRNA転写物の一部に相補的となるように5つの異なるパドロックオリゴヌクレオチドプローブを設計した。合計20個のプローブ(4つの遺伝子に各5個のプローブ)を、マウス組織切片のそれぞれの標的に対してハイブリダイズさせた。プローブを過剰に提供した。その後、パドロックプローブを酵素的にライゲートし、RCAを組織上で直接(in situ)実施した。UMIおよびまたはバーコード配列を含むパドロック識別領域に蛍光標識オリゴヌクレオチドをハイブリダイズさせることにより、遺伝子特異的に生成されたロロニーを検出した。上記のステップ1に記載のとおり、次いで、RCAロロニーを組織から抽出し、ランダムに断片化させた。ステップ2に記載のとおり、PCR反応を、一方の部分が目的の領域に隣接する領域に相補的であり、他方の部分が汎用的な配列を含むプライマーを用いて行った(P1およびP2)。P1およびP2受容体を有する得られた直鎖状産物を、両端を一緒にするスプリントオリゴヌクレオチドを使用して環状化させる。この環状体をRCA増幅させ、二次ロロニーを形成する。
【0039】
RCA産物の目的の領域を、最終的にロロニーに対応したNGSシークエンサーを使用してシークエンシングした。生成された各配列は、対象となる4つの遺伝子転写物にアライメントし、マッピングすることができる。
【0040】
以下の
図3に示すとおり、4つすべての遺伝子のシークエンシングリードは、異なるリード数で一義的に検出された。これらの結果は、本方法が、抽出した組織から特定のRCA産物(ロロニー)の数を定量化するツールとして使用できることを示している。さらに、他の方法とは異なり、同じ転写物を標的とする様々なパドロックプローブのハイブリダイゼーションの有効性を、個々の各プローブの個々のシークエンシングリード数の定量化により評価することができる。例えば、遺伝子1について、プローブの中には、より効率的にハイブリダイゼーションしているものがあるため、シークエンシングリード数を見ることで、プローブの設計を改善することができる。これは、
図3のグラフに示されているとおり遺伝子発現プロファイルを定量化し、かつ蛍光標識オリゴヌクレオチドを用いたハイブリダイゼーションアプローチを、組織上で生成された一次ロロニーについて確認するために使用することもできる。
【外国語明細書】