(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164381
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】有機ELデバイスの作製方法
(51)【国際特許分類】
H10K 71/16 20230101AFI20231102BHJP
H10K 50/10 20230101ALI20231102BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20231102BHJP
【FI】
H10K71/16
H10K50/10
H10K59/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073291
(22)【出願日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2022075595
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022195407
(32)【優先日】2022-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】新倉 泰裕
(72)【発明者】
【氏名】川上 祥子
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直明
(72)【発明者】
【氏名】吉安 唯
【テーマコード(参考)】
3K107
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC12
3K107CC21
3K107CC35
3K107CC42
3K107CC45
3K107GG02
3K107GG04
3K107GG05
3K107GG11
3K107GG12
3K107GG33
(57)【要約】
【課題】有機化合物層上に酸化アルミニウム膜を接して形成する工程を有する発光デバイスにおいて、高電圧化を抑制する。
【解決手段】第1の電極上に、有機化合物膜を形成し、有機化合物膜上に水、または水を溶媒とする薬液に対する溶解度が低い有機化合物を含む有機マスク膜を形成し、有機マスク膜上に、無機マスク層を形成し、無機マスク層により、有機マスク膜および有機化合物膜の形状を加工することで、有機マスク層および有機化合物層を形成し、水または水を溶媒とした液体を用いて無機マスク層および有機マスク層の少なくとも一部を除去する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極上に、有機化合物膜を形成し、
前記有機化合物膜上に、下記一般式(G1)で表される有機化合物を含む有機マスク膜を形成し、
前記有機マスク膜上に、無機マスク層を形成し、
前記無機マスク層により、前記有機マスク膜および前記有機化合物膜の形状を加工することで、有機マスク層および有機化合物層を形成し、
水または水を溶媒とした液体を用いて前記無機マスク層および前記有機マスク層の少なくとも一部を除去する有機ELデバイスの作製方法。
【化1】
(上記一般式(G1)で表される有機化合物において、Xは下記一般式(X1-1)で表される基、Yは下記一般式(Y1-1)で表される基である。また、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、hは1乃至6の整数を表し、Arは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が6乃至75のアリール基、もしくは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が1乃至75のヘテロアリール基を表す。)
【化2】
(上記一般式(X1-1)および(Y1-1)において、R
3乃至R
6はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、mは0乃至4の整数を表し、nは1乃至5の整数を表す。なお、mまたはnが2以上の場合複数となるR
3乃至R
6はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項2】
第1の電極上に、有機化合物膜を形成し、
前記有機化合物膜上に、下記一般式(G1-1)乃至下記一般式(G1-9)のいずれか一で表される有機化合物を含む有機マスク膜を形成し、
前記有機マスク膜上に、無機マスク層を形成し、
前記無機マスク層により、前記有機マスク膜および前記有機化合物膜の形状を加工することで、有機マスク層および有機化合物層を形成し、
水または水を溶媒とした液体を用いて前記無機マスク層および前記有機マスク層の少なくとも一部を除去する有機ELデバイスの作製方法。
【化3】
(上記一般式(G1-1)乃至一般式(G1-9)で表される有機化合物において、R
11乃至R
120はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、hは1乃至6の整数を表し、Arは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が6乃至75のアリール基、もしくは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が1乃至75のヘテロアリール基を表す。)
【請求項3】
第1の電極上に、有機化合物膜を形成し、
前記有機化合物膜上に、下記一般式(G2)で表される有機化合物を含む有機マスク膜を形成し、
前記有機マスク膜上に、無機マスク層を形成し、
前記無機マスク層により、前記有機マスク膜および前記有機化合物膜の形状を加工することで、有機マスク層および有機化合物層を形成し、
水または水を溶媒とした液体を用いて前記無機マスク層および前記有機マスク層の少なくとも一部を除去する有機ELデバイスの作製方法。
【化4】
(上記一般式(G2)で表される有機化合物において、Arは置換もしくは無置換の環を形成する炭素数6乃至30のアリール基、または、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2乃至30のヘテロアリール基を表し、R
7およびR
8はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数6乃至13のアリール基、または置換若しくは無置換の炭素数2乃至13のヘテロアリール基を表し、nは1乃至6の整数を表し、Lは下記一般式(L1-1)で表される基である。)
【化5】
(上記一般式(L1-1)において、R
9およびR
10はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、または炭素数1乃至6のアルキル基を表し、kは1乃至5の整数を表し、kが2以上の場合、それぞれのR
9およびR
10は同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項4】
第1の電極上に、有機化合物膜を形成し、
前記有機化合物膜上に、下記一般式(G2-1)乃至下記一般式(G2-3)のいずれか一で表される有機化合物を含む有機マスク膜を形成し、
前記有機マスク膜上に、無機マスク層を形成し、
前記無機マスク層により、前記有機マスク膜および前記有機化合物膜の形状を加工することで、有機マスク層および有機化合物層を形成し、
水または水を溶媒とした液体を用いて前記無機マスク層および前記有機マスク層の少なくとも一部を除去する有機ELデバイスの作製方法。
【化6】
(上記一般式(G2-1)乃至一般式(G2-3)で表される有機化合物において、Arは置換もしくは無置換の環を形成する炭素数6乃至30のアリール基、または、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2乃至30のヘテロアリール基を表し、R
71乃至R
94はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、または炭素数1乃至6のアルキル基を表し、nは1乃至6の整数を表す。)
【請求項5】
第1の電極上に、有機化合物膜を形成し、
前記有機化合物膜上に、下記一般式(G1)で表される有機化合物を含む有機マスク膜を形成し、
前記有機マスク膜上に、無機マスク膜を形成し、
前記無機マスク膜上に、ハードマスク膜を形成し、
リソグラフィ法により、前記ハードマスク膜の形状を加工することで、ハードマスク層および無機マスク層を形成し、
前記ハードマスク層および無機マスク層を用いて、前記有機マスク膜および前記有機化合物膜の形状を加工することで、有機化合物層を形成し、
前記無機マスク層の少なくとも一部および前記ハードマスク層を除去し、
水または水を溶媒とした液体を用いて前記有機マスク層および前記無機マスク層の少なくとも一部を除去することで前記有機化合物層を露出し、
前記有機化合物層上に第2の電極を形成する有機ELデバイスの作製方法。
【化7】
(上記一般式(G1)で表される有機化合物において、Xは下記一般式(X1-1)で表される基、Yは下記一般式(Y1-1)で表される基である。また、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、hは1乃至6の整数を表し、Arは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が6乃至75のヘテロアリール、もしくは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が6乃至75のアリールを表す。)
【化8】
(上記一般式(X1-1)および(Y1-1)において、R
3乃至R
6はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、mは0乃至4の整数を表し、nは1乃至5の整数を表す。なお、mまたはnが2以上の場合複数となるR
3乃至R
6はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項6】
第1の電極上に、有機化合物膜を形成し、
前記有機化合物膜上に、下記一般式(G2)で表される有機化合物を含む有機マスク膜を形成し、
前記有機マスク膜上に、無機マスク膜を形成し、
前記無機マスク膜上に、ハードマスク膜を形成し、
リソグラフィ法により、前記ハードマスク膜の形状を加工することで、ハードマスク層および無機マスク層を形成し、
前記ハードマスク層および無機マスク層を用いて、前記有機マスク膜および前記有機化合物膜の形状を加工することで、有機化合物層を形成し、
前記無機マスク層の少なくとも一部および前記ハードマスク層を除去し、
水または水を溶媒とした液体を用いて前記有機マスク層および前記無機マスク層の少なくとも一部を除去することで前記有機化合物層を露出し、
前記有機化合物層上に第2の電極を形成する有機ELデバイスの作製方法。
【化9】
(上記一般式(G2)で表される有機化合物において、Arは置換もしくは無置換の環を形成する炭素数6乃至30のアリール基、または、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2乃至30のヘテロアリール基を表し、R
7およびR
8はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、炭素数1乃至6のアルキル基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数6乃至13のアリール基、または置換若しくは無置換の炭素数2乃至13のヘテロアリール基を表し、nは1乃至6の整数を表し、Lは下記一般式(L1-1)で表される基である。)
【化10】
(上記一般式(L1-1)において、R
9およびR
10はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、または炭素数1乃至6のアルキル基を表し、kは1乃至5の整数を表し、kが2以上の場合、それぞれのR
9およびR
10は同じであっても異なっていてもよい。)
【請求項7】
請求項5または請求項6において、
前記ハードマスク層は、スパッタリング法により成膜される有機ELデバイスの作製方法。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6において、
前記無機マスク層は、ALD法により成膜される有機ELデバイスの作製方法。
【請求項9】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記有機マスク層は、真空蒸着法により成膜する有機ELデバイスの作製方法。
【請求項10】
請求項1乃至請求項6のいずれか一において、
前記有機化合物層は、積層構造を有し、
前記有機化合物層は、前記第1の電極側から順に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層および電子輸送層を有する有機ELデバイスの作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、有機化合物、有機ELデバイス、ディスプレイモジュール、照明モジュール、表示装置、発光装置、電子機器、照明装置および電子デバイスに関する。なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様の技術分野は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。そのため、より具体的に本明細書で開示する本発明の一態様の技術分野としては、半導体装置、表示装置、液晶表示装置、発光装置、照明装置、蓄電装置、記憶装置、撮像装置、それらの駆動方法、または、それらの製造方法、を一例として挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
有機化合物を用いたエレクトロルミネッセンス(EL:Electroluminescence)を利用する有機ELデバイスの実用化が進んでいる。これら有機ELデバイスの基本的な構成は、一対の電極間に発光材料を含む有機化合物層(EL層)を挟んだものである。このデバイスに電圧を印加して、キャリアを注入し、当該キャリアの再結合エネルギーを利用することにより、発光材料からの発光を得ることができる。
【0003】
このような有機ELデバイスは自発光型であるためディスプレイの画素として用いると、液晶に比べ、視認性が高く、バックライトが不要である等の利点があり、フラットパネルディスプレイには特に好適である。また、このような有機ELデバイスを用いたディスプレイは、薄型軽量に作製できることも大きな利点である。さらに非常に応答速度が速いことも特徴の一つである。
【0004】
また、これらの有機ELデバイスは発光層を二次元に連続して形成することが可能であるため、面状に発光を得ることができる。これは、白熱電球およびLEDに代表される点光源、あるいは蛍光灯に代表される線光源では得難い特色であるため、照明等に応用できる面光源としての利用価値も高い。
【0005】
このように有機ELデバイスを用いた発光装置さまざまな電子機器に好適であるが、より良好な特性を有する有機ELデバイスを求めて研究開発が進められている。
【0006】
有機ELデバイスを用いたより高精細な発光装置を得るために、メタルマスクを用いた蒸着法に代わって、フォトレジストなどを用いたフォトリソグラフィ法による有機層のパターニングが研究されている。フォトリソグラフィ法を用いることによって、EL層の間隔が数μmという高精細な発光装置を得ることができる(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
有機化合物膜を所定の形状に作製する方法の一つとして、メタルマスクを用いた真空蒸着法(マスク蒸着)が広く用いられている。しかし、高密度化、高精細化が進む昨今、マスク蒸着は、合わせ精度の問題、基板との配置間隔の問題に代表される種々の理由により、これ以上の高精細化は限界に近付いている。一方、フォトリソグラフィ法を用いて有機化合物膜の形状を加工することで、より緻密なパターンを形成することができる。特に、有機化合物膜を加工する際に、金属や金属化合物などの無機膜からなるハードマスク層を用いることで、より微細な加工が可能となる。さらに、大面積化も容易であることから、フォトリソグラフィ法を用いた有機化合物膜の加工に関する研究も進められている。
【0009】
しかし、フォトリソグラフィ法を用いて有機化合物膜の形状を加工するためには、多くの課題を乗り越える必要がある。具体的には、有機化合物膜の大気暴露の影響、感光性樹脂を露光する際の光照射の影響、露光した感光性樹脂を現像する際に曝される現像液などの薬液の影響がある。さらに、ハードマスク層に無機膜を用いる場合、無機膜の成膜工程による影響、また無機膜を除去する場合に用いる薬液、または洗浄液の影響などがある。
【0010】
つまり、露光、またはハードマスクとなる膜の成膜時の影響、またはレジストマスクやハードマスク層を除去する工程に使用する薬液により、有機化合物が劣化、有機化合物膜自体が消失する、有機化合物膜の表面がダメージを受けてその後作製されるデバイスの特性が大きく悪化する、などの事態が生じる場合がある。特に、ハードマスクとなる膜をスパッタリング法により成膜した場合、下層構造にダメージを与える場合がある。
【0011】
従って、本発明の一態様では、有機化合物膜をフォトリソグラフィ法で加工する工程を有する有機ELデバイスにおいて、高電圧化を抑制することを目的とする。または、本発明の一態様では、有機化合物膜をハードマスク層を用いて加工する工程を有する有機ELデバイスにおいて、特性の良好な有機ELデバイスを提供することを目的とする。
【0012】
本発明の一態様は、利便性、有用性または信頼性に優れた新規な有機化合物を提供することを課題の一とする。本発明の一態様は、設計自由度が高い半導体装置を提供することを課題の一つとする。また、本発明の一態様は、製造プロセスにおける設計自由度が高い有機ELデバイスを提供することを課題の一とする。または、本発明の他の一態様は、信頼性の高い有機ELデバイスを提供することを課題の一とする。
【0013】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明の一態様では、第1の電極上に、有機化合物膜を形成し、有機化合物膜上に、下記一般式(G1)で表される有機化合物を含む有機マスク膜を形成し、有機マスク膜上に、無機マスク層を形成し、無機マスク層により、有機マスク膜および有機化合物膜の形状を加工することで、有機マスク層および有機化合物層を形成し、水または水を溶媒とした液体を用いて無機マスク層および有機マスク層の少なくとも一部を除去する。
【0015】
【化1】
上記一般式(G1)で表される有機化合物において、Xは下記一般式(X1-1)で表される基、Yは下記一般式(Y1-1)で表される基である。また、R
1およびR
2はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、hは1乃至6の整数を表し、Arは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が6乃至75のアリール基、もしくは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が1乃至75のヘテロアリール基を表す。
【0016】
【0017】
上記一般式(X1-1)および(Y1-1)において、R3乃至R6はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、mは0乃至4の整数を表し、nは1乃至5の整数を表す。なお、mまたはnが2以上の場合、複数となるR3乃至R6はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0018】
本発明の一態様では、第1の電極上に、有機化合物膜を形成し、有機化合物膜上に、下記一般式(G1-1)乃至下記一般式(G1-9)のいずれか一で表される有機化合物を含む有機マスク膜を形成し、有機マスク膜上に、無機マスク層を形成し、無機マスク層により、有機マスク膜および有機化合物膜の形状を加工することで、有機マスク層および有機化合物層を形成し、水または水を溶媒とした液体を用いて無機マスク層および有機マスク層の少なくとも一部を除去する。
【0019】
【0020】
上記一般式(G1-1)乃至一般式(G1-9)で表される有機化合物において、R11乃至R120はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、hは1乃至6の整数を表し、Arは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が6乃至75のアリール基、もしくは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が1乃至75のヘテロアリール基を表す。
【0021】
本発明の一態様では、第1の電極上に、有機化合物膜を形成し、有機化合物膜上に、下記一般式(G2)で表される有機化合物を含む有機マスク膜を形成し、有機マスク膜上に、無機マスク層を形成し、無機マスク層により、有機マスク膜および有機化合物膜の形状を加工することで、有機マスク層および有機化合物層を形成し、水または水を溶媒とした液体を用いて無機マスク層および有機マスク層の少なくとも一部を除去する。
【0022】
【0023】
上記一般式(G2)で表される有機化合物において、Arは置換もしくは無置換の環を形成する炭素数6乃至30のアリール基、または、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2乃至30のヘテロアリール基を表し、R7およびR8はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、置換若しくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数6乃至13のアリール基、または置換若しくは無置換の炭素数2乃至13のヘテロアリール基を表し、nは1乃至6の整数を表し、nが2以上の場合、複数となるR7及びR8は同じであっても異なっていてもよく、Lは下記一般式(L1-1)で表される基である。
【0024】
【0025】
上記一般式(L1-1)において、R9およびR10はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、または置換若しくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基を表し、kは1乃至5の整数を表し、kが2以上の場合、複数となるR9およびR10は同じであっても異なっていてもよい。
【0026】
本発明の一態様では、第1の電極上に、有機化合物膜を形成し、有機化合物膜上に、下記一般式(G2-1)乃至下記一般式(G2-3)のいずれか一で表される有機化合物を含む有機マスク膜を形成し、有機マスク膜上に、無機マスク層を形成し、無機マスク層により、有機マスク膜および有機化合物膜の形状を加工することで、有機マスク層および有機化合物層を形成し、水または水を溶媒とした液体を用いて無機マスク層および有機マスク層の少なくとも一部を除去する。
【0027】
【0028】
上記一般式(G2-1)乃至一般式(G2-3)で表される有機化合物において、Arは置換もしくは無置換の環を形成する炭素数6乃至30のアリール基、または、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2乃至30のヘテロアリール基を表し、R71乃至R94はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、または置換若しくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基を表し、nは1乃至6の整数を表し、nが2以上の場合、複数となるR71乃至R94は同じであっても異なっていてもよい。
【0029】
本発明の一態様では、第1の電極上に、有機化合物膜を形成し、有機化合物膜上に、下記一般式(G1)で表される有機化合物を含む有機マスク膜を形成し、有機マスク膜上に、無機マスク膜を形成し、無機マスク膜上に、ハードマスク膜を形成し、リソグラフィ法により、ハードマスク膜の形状を加工することで、ハードマスク層および無機マスク層を形成し、ハードマスク層および無機マスク層を用いて、有機マスク膜および有機化合物膜の形状を加工することで、有機化合物層を形成し、無機マスク層の少なくとも一部およびハードマスク層を除去し、水または水を溶媒とした液体を用いて有機マスク層および無機マスク層の少なくとも一部を除去することで有機化合物層を露出し、有機化合物層上に第2の電極を形成する。
【0030】
【0031】
上記一般式(G1)で表される有機化合物において、Xは下記一般式(X1-1)で表される基、Yは下記一般式(Y1-1)で表される基である。また、R1およびR2はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、hは1乃至6の整数を表し、Arは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が1乃至75のヘテロアリール基、もしくは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が6乃至75のアリール基を表し、hが2以上の場合、複数となるR1およびR2は同じであっても異なっていてもよい。
【0032】
【0033】
上記一般式(X1-1)および(Y1-1)において、R3乃至R6はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、mは0乃至4の整数を表し、nは1乃至5の整数を表す。なお、mまたはnが2以上の場合複数となるR3乃至R6はそれぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0034】
本発明の一態様では、第1の電極上に、有機化合物膜を形成し、有機化合物膜上に、下記一般式(G2)で表される有機化合物を含む有機マスク膜を形成し、有機マスク膜上に、無機マスク膜を形成し、無機マスク膜上に、ハードマスク膜を形成し、リソグラフィ法により、ハードマスク膜の形状を加工することで、ハードマスク層および無機マスク層を形成し、ハードマスク層および無機マスク層を用いて、有機マスク膜および有機化合物膜の形状を加工することで、有機化合物層を形成し、無機マスク層の少なくとも一部およびハードマスク層を除去し、水または水を溶媒とした液体を用いて有機マスク層および無機マスク層の少なくとも一部を除去することで有機化合物層を露出し、有機化合物層上に第2の電極を形成する。
【0035】
【0036】
上記一般式(G2)で表される有機化合物において、Arは置換もしくは無置換の環を形成する炭素数6乃至30のアリール基、または、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2乃至30のヘテロアリール基を表し、R7およびR8はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、置換若しくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数6乃至13のアリール基、または置換若しくは無置換の炭素数2乃至13のヘテロアリール基を表し、nは1乃至6の整数を表し、nが2以上の場合、複数となるR7及びR8は同じであっても異なっていてもよく、Lは下記一般式(L1-1)で表される基である。
【0037】
【0038】
上記一般式(L1-1)において、R9およびR10はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、または置換若しくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基を表し、kは1乃至5の整数を表し、kが2以上の場合、複数となるR9およびR10は同じであっても異なっていてもよい。
【0039】
上記本発明において、ハードマスク層は、スパッタリング法により成膜される。
【0040】
上記本発明において、無機マスク層は、ALD(ALD:Atomic Layer Deposition)法により成膜される。
【0041】
上記本発明において、有機マスク層は、真空蒸着法により成膜する。
【0042】
上記本発明において、有機化合物層は、積層構造を有し、有機化合物層は、第1の電極側から順に、正孔注入層、正孔輸送層、発光層および電子輸送層を有する。
【0043】
本発明の一態様では、第1の電極と、第2の電極と、第1の有機化合物層と、下記一般式(G1)で表される有機化合物を含む有機マスク層と、を有し、第1の有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、有機マスク層は、第1の有機化合物層と、第2の電極との間に位置し、第1の有機化合物層の側面と、有機マスク層の側面と、が概略同一表面を有する。
【0044】
【0045】
上記一般式(G2)で表される有機化合物において、Arは置換もしくは無置換の環を形成する炭素数6乃至30のアリール基、または、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2乃至30のヘテロアリール基を表し、R7およびR8はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、置換若しくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数6乃至13のアリール基、または置換若しくは無置換の炭素数2乃至13のヘテロアリール基を表し、nは1乃至6の整数を表し、nが2以上の場合、複数となるR7及びR8は同じであっても異なっていてもよく、Lは下記一般式(L1-1)で表される基である。
【0046】
【0047】
上記一般式(L1-1)において、R9およびR10はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、または置換若しくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基を表し、kは1乃至5の整数を表し、kが2以上の場合、それぞれのR9およびR10は同じであっても異なっていてもよい。
【0048】
本発明の一態様では、第1の電極と、第2の電極と、第1の有機化合物層と、下記一般式(G1)で表される有機化合物を含む有機マスク層と、第2の有機化合物層と、を有し、第1の有機化合物層は、第1の電極と、第2の電極との間に位置し、有機マスク層は、第1の有機化合物層と、第2の電極との間に位置し、第2の有機化合物層は、有機マスク層と、第2の電極との間に位置し、第1の有機化合物層の側面と、有機マスク層の側面と、が概略同一表面を有し、第2の有機化合物層の側面は、第1の有機化合物層の側面および有機マスク層の側面とは同一表面を有さない有機ELデバイスである。
【0049】
【化13】
上記一般式(G2)で表される有機化合物において、Arは置換もしくは無置換の環を形成する炭素数6乃至30のアリール基、または、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2乃至30のヘテロアリール基を表し、R
7およびR
8はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、置換若しくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数6乃至13のアリール基、または置換若しくは無置換の炭素数2乃至13のヘテロアリール基を表し、nは1乃至6の整数を表し、nが2以上の場合、複数となるR
7及びR
8は同じであっても異なっていてもよく、Lは下記一般式(L1-1)で表される基である。
【0050】
【0051】
上記一般式(L1-1)において、R9およびR10はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、または置換若しくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基を表し、kは1乃至5の整数を表し、kが2以上の場合、それぞれのR9およびR10は同じであっても異なっていてもよい。
【0052】
上記本発明において、第1の有機化合物層は、発光層を有する。
【0053】
なお、本明細書中における発光装置とは、有機ELデバイスを用いた画像表示デバイスを含む。また、有機ELデバイスにコネクター、例えば異方導電性フィルム又はTCP(Tape Carrier Package)が取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられたモジュール、又は有機ELデバイスにCOG(Chip On Glass)方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジュールも発光装置に含む場合がある。さらに、照明器具等は、発光装置を有する場合がある。
【発明の効果】
【0054】
本発明の一態様では、有機化合物膜を露光工程、および大気暴露から保護することができる。または、本発明の一態様では、有機化合物膜をフォトリソグラフィ法で加工する工程を有する有機ELデバイスにおいて、高電圧化を抑制することができる。または、本発明の一態様では、有機化合物膜をハードマスク層により用いて加工する工程を有する有機ELデバイスにおいて、特性の良好な有機ELデバイス提供することができる。
【0055】
本発明の一態様は、利便性、有用性または信頼性に優れた新規な有機化合物を提供することができる。本発明の一態様は、設計自由度が高い半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様は、製造プロセスにおける設計自由度が高い有機ELデバイスを提供することができる。または、本発明の他の一態様は、信頼性の高い有機ELデバイスを提供することができる。
【0056】
なお、この効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【
図1】
図1(A)乃至
図1(C)は本発明の一態様を表す図である。
【
図2】
図2(A)乃至
図2(C)は従来の構成を表す図である。
【
図3】
図3(A)乃至
図3(E)は、膜の加工方法を表す図である。
【
図4】
図4(A)乃至
図4(E)は、膜の加工方法を表す図である。
【
図5】
図5(A)乃至
図5(C)は、有機TFT、有機ELデバイス、または光電変換デバイスについて表す図である。
【
図6】
図6(A)乃至
図6(D)は、発光装置について表す図である。
【
図8】
図8(A)乃至
図8(F)は、有機ELデバイスおよび発光装置の作製方法について表す図である。
【
図9】
図9(A)乃至
図9(F)は、有機ELデバイスおよび発光装置の作製方法について表す図である。
【
図12】
図12はアクティブマトリクス型発光装置を表す図である。
【
図21】
図21は実施例にかかるデバイスの断面図を説明する図である。
【
図22】
図22は実施例にかかるデバイスの電流密度-電圧特性を説明する図である。
【
図23】
図23は実施例にかかるデバイスの輝度-電圧特性を説明する図である。
【
図24】
図24は実施例にかかるデバイスの外部量子効率-輝度特性を説明する図である。
【
図25】
図25は実施例にかかるデバイスの発光スペクトルを説明する図である。
【
図27】
図27は実施例にかかるデバイスの輝度の時間変化を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明の実施の態様について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0059】
なお、本明細書等において、メタルマスク、またはFMM(ファインメタルマスク、高精細なメタルマスク)を用いて作製されるデバイスをMM(メタルマスク)構造のデバイスと呼称する場合がある。また、本明細書等において、メタルマスク、またはFMMを用いることなく作製されるデバイスをMML(メタルマスクレス)構造のデバイスと呼称する場合がある。
【0060】
また、本明細書等において、成膜後形状加工を行っていないものに関しては「膜」、形状加工を行ったものに関しては「層」と主に述べている。しかし、これらは工程の進行に対するわかりやすさを主眼として使い分けているだけであり、大きな差異はないことから、「膜」を「層」、「層」を「膜」と読み替えることができる。特に、加工の工程を経ない記載に関してはどちらも同義であるものとする。
【0061】
(実施の形態1)
有機化合物膜を露光工程、および大気暴露から保護する一つの手段として、
図2(A)のように無機マスク膜153を保護膜として有機化合物膜151上に接して設けるとよい。例えば、無機マスク膜は、緻密に成膜することが可能であり、液体および気体を遮断する能力が高いことから、上述の工程による悪影響を抑制することが可能となる。
【0062】
無機マスク膜153として、酸化アルミニウム膜を用いることができる。酸化アルミニウム膜は、ALD(ALD:Atomic Layer Deposition)法などの緻密な膜質、かつ下層へのダメージが少ない方法により成膜が可能であるため、有機化合物膜151の保護膜として非常に好適である。
【0063】
一方、無機マスク膜は、除去する工程が必要となる。有機化合物膜の表面が無機マスク膜を除去する工程に用いられる薬液、または洗浄液などに過度に曝されると、
図2(B)のように有機化合物膜151の表面151sがダメージを受け、有機化合物の特性の悪化を招いてしまう場合がある。
【0064】
また、
図2(C)のように、無機マスク膜が完全に除去されず、一部でも残留した場合、デバイスとした場合に、駆動電圧が上昇などの不具合の原因になる蓋然性が高い。
【0065】
そこで、本発明の一態様では、
図1(A)のように、有機化合物膜151と無機マスク膜153との間に、特定の構造を有する有機化合物を含む有機マスク膜152を用いるものとする。
【0066】
なお、有機マスク膜(以下、マスク膜ともいう)としては、耐熱性または安定性を有する材料を用いることができる。つまり、有機マスク膜152を有することで、ハードマスクとなる膜および無機マスク膜153の成膜時に有機化合物膜151に影響を生じさせることを抑制することができる。従って、ハードマスクまたは無機マスク膜153の材料または成膜方法を制限することなく、有機ELデバイスとしての設計自由度を向上させることができる。
【0067】
また、有機マスク膜152は、無機マスク膜153よりも除去が容易であり、剥離層として機能する場合がある。従って、有機化合物膜151に影響を与えることなく、有機マスク膜152、および無機マスク膜153を除去することができる。
【0068】
また、有機マスク膜152は、デバイス特性を大きく阻害(例えば、高電圧化等)しない材料を用いることが好ましい。特に、有機マスク膜152は、電子注入層、または電子輸送層として機能するものを用いてもよい。デバイス特性を大きく阻害しない材料、または電子注入層もしくは電子輸送層として機能するものである場合、
図1(C)に示すように、有機マスク膜152は完全に除去する必要はなく、一部、または全面に残留していてもよい。
【0069】
上記有機マスク層として、下記一般式(G1)で表される有機化合物を用いることができる。
【0070】
【0071】
上記一般式(G1)で表される有機化合物において、Xは下記一般式(X1-1)で表される基、Yは下記一般式(Y1-1)で表される基である。また、R1およびR2はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、hは1乃至6の整数を表し、hが2以上の場合、複数となるR1及びR2は同じであっても異なっていてもよく、Arは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が6乃至75のアリール基、もしくは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が1乃至75のヘテロアリール基を表す。
【0072】
また、Arで表されるアリール基としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、フルオレニル基、フェナントレニル基、またはアントリル基などを用いることができる。
【0073】
また、Arで表されるヘテロアリール基としては、ピリジン環、ピリミジン環、トリアジン環、フェナントロリン環、カルバゾール環、ピロール環、チオフェン環、フラン環、イミダゾール環、ビピリジン環、ビピリミジン環、ピラジン環、ビピラジン環、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾキノリン環、キノキサリン環、ベンゾキノキサリン環、ジベンゾキノキサリン環、アゾフルオレン環、ジアゾフルオレン環、ベンゾカルバゾール環、ジベンゾカルバゾール環、ジベンゾフラン環、ベンゾナフトフラン環、ジナフトフラン環、ジベンゾチオフェン環、ベンゾナフトチオフェン環、ジナフトチオフェン環、ベンゾフロピリジン環、ベンゾフロピリミジン環、ベンゾチオピリジン環、ベンゾチオピリミジン環、ナフトフロピリジン環、ナフトフロピリミジン環、ナフトチオピリジン環、ナフトチオピリミジン環、ジベンゾキノキサリン環、アクリジン環、キサンテン環、フェノチアジン環、フェノキサジン環、フェナジン環、トリアゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、ベンゾイミダゾール環、またはピラゾール環、などを用いることができる。
【0074】
【0075】
上記一般式(X1-1)および(Y1-1)において、R3乃至R6はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、mは0乃至4の整数を表し、nは1乃至5の整数を表す。なお、mまたはnが2以上の場合に複数となるR3乃至R6は、それぞれ同じであっても異なっていてもよい。
【0076】
また、例えば、上記一般式(G1)で表される有機化合物は、下記一般式(G1-1)乃至一般式(G1-9)であることが好ましい。
【0077】
【0078】
上記一般式(G1-1)乃至一般式(G1-9)で表される有機化合物において、R11乃至R120はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)を表し、hは1乃至6の整数を表し、hが2以上の場合、複数となるR11乃至R120は同じであっても異なっていてもよく、Arは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が6乃至75のアリール基、もしくは置換若しくは無置換の環を構成する炭素数が1乃至75のヘテロアリール基を表す。
【0079】
なお、上記一般式(G1-1)乃至一般式(G1-9)において、Arに用いることができる置換基としては、上述した一般式(G1)の同記号の置換基の記載を参照することができる。
【0080】
また、上記有機マスク層として、下記一般式(G2)で表される有機化合物を用いることができる。
【0081】
【0082】
上記一般式(G2)で表される有機化合物において、Arは置換もしくは無置換の環を形成する炭素数6乃至30のアリール基、または、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2乃至30のヘテロアリール基を表し、R7およびR8はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、置換若しくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基、置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の炭素数6乃至13のアリール基、または置換若しくは無置換の炭素数2乃至13のヘテロアリール基を表し、nは1乃至6の整数を表し、nが2以上の場合、複数となるR7及びR8は同じであっても異なっていてもよく、Lは下記一般式(L1-1)で表される基である。
【0083】
【0084】
上記一般式(L1-1)において、R9およびR10はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、または置換若しくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基を表し、kは1乃至5の整数を表し、kが2以上の場合、それぞれのR9およびR10は同じであっても異なっていてもよい。
【0085】
また、例えば、上記一般式(G2)で表される有機化合物は、下記一般式(G2-1)乃至一般式(G2-3)であることが好ましい。
【0086】
【0087】
上記一般式(G2-1)乃至一般式(G2-3)で表される有機化合物においてArは置換もしくは無置換の環を形成する炭素数6乃至30のアリール基、または、置換もしくは無置換の環を形成する炭素数2乃至30のヘテロアリール基を表し、R71乃至R94はそれぞれ独立に水素(重水素を含む)、または置換もしくは無置換の炭素数1乃至6のアルキル基を表し、nは1乃至6の整数を表し、nが2以上の場合、複数となるR71乃至R94は同じであっても異なっていてもよい。
【0088】
なお、上記一般式(G2)、および(G2-1)乃至一般式(G2-3)において、Arに用いることができる置換基としては、上述した一般式(G1)の同記号の置換基の記載を参照することができる。
【0089】
上記一般式(G1)で表される有機化合物としては、具体的には、下記構造式(100)乃至(118)で表される有機化合物を例として挙げることができる。
【0090】
【0091】
上述した本発明の一態様の有機化合物を含む有機マスク膜152を有機化合物膜151と無機マスク膜153の間に形成することによって、有機化合物膜151へのダメージを抑制しつつ、高電圧化を防ぎながら、無機マスク膜153の除去を容易に行うことができるようになる。また、結果として、フォトリソグラフィ法による加工を経た、超高精細且つ特性の良好なデバイスを実現することが可能となる。
【0092】
本実施の形態の構成は、他の構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0093】
(実施の形態2)
本実施の形態では、本発明の一態様の有機化合物膜の加工方法を、
図3および
図4を用いて説明する。
【0094】
まず、下地膜150上に有機化合物膜151を形成する(
図3(A))。下地膜は、この後作製するデバイスによって、絶縁膜であっても、導電膜であっても構わない。有機化合物膜151は蒸着法などの乾式法で形成しても、スピンコート法等の湿式法で形成してもよい。
【0095】
次に、有機化合物膜151上に、実施の形態1で説明した上記一般式(G1)または上記一般式(G2)で表される有機化合物を含む有機マスク膜152を成膜する(
図3(A))。有機マスク膜152は、真空蒸着法により形成されることが好ましい。
【0096】
続いて、有機マスク膜152上に無機マスク膜153を形成する(
図3(A))。無機マスク膜153は、有機化合物膜151と接する膜へのダメージが小さい方法により成膜することが好ましい。
【0097】
無機マスク膜153上には、金属膜または金属化合物膜からなるハードマスクとなる膜154を形成することが好ましい(
図3(B))。ハードマスクとなる膜154の成膜は、無機マスク膜153が存在することで有機化合物膜151へのダメージを抑制することが可能であることから、スパッタリング法など成膜される面へのダメージが比較的大きい成膜法を選択することができる。
【0098】
なお、当該ハードマスクとなる膜154を構成する材料としては、例えばシリコン、窒化シリコン、酸化シリコン、タングステン、チタン、モリブデン、タンタル、窒化タンタル、モリブデンとニオブを含む合金、モリブデンとタングステンを含む合金金属酸化物、またはインジウムガリウム亜鉛酸化物(In-Ga-Zn酸化物、IGZOとも表記する)などの金属酸化物を用いることができる。さらに、酸化インジウム、インジウム亜鉛酸化物(In-Zn酸化物)、インジウムスズ酸化物(In-Sn酸化物)、インジウムチタン酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムスズ亜鉛酸化物(In-Sn-Zn酸化物)、インジウムチタン亜鉛酸化物(In-Ti-Zn酸化物)、インジウムガリウムスズ亜鉛酸化物(In-Ga-Sn-Zn酸化物)などを用いることができる。またはシリコンを含むインジウムスズ酸化物などを用いることもできる。
【0099】
その後、ハードマスクとなる膜154上に感光性の樹脂を塗布し、樹脂膜155を成膜する(
図3(C))。当該感光性の樹脂は、ポジ型のレジストでもネガ型のレジストでも構わない。
【0100】
続いて、樹脂の感光性に合わせて露光を行い、現像することで、フォトマスク層155aを形成し(
図3(D))、当該フォトマスク層155aを用いてハードマスクとなる膜154をエッチングして、ハードマスク層154aを形成する(
図3(E))。
【0101】
ハードマスクとなる膜154のエッチングは、ウェットエッチングで行っても良いし、ドライエッチングで行っても構わない。また、当該エッチングはハードマスクとなる膜154と無機マスク膜153において、ハードマスクとなる膜154の方の選択比が高い条件を選択して用いることが好ましい。
【0102】
ハードマスク層154aを形成した後、フォトマスク層155aを除去する(
図4(A))。ハードマスクとなる膜154および無機マスク膜153の存在によってフォトマスク層155aを形成および除去する際の処理で有機化合物膜151が消失する、ダメージを受けるなどの悪影響を受けず済むため、特性の良好な有機ELデバイスを作製することができる。
【0103】
この後、ハードマスク層154aをマスクとし、エッチングを行うことで、有機化合物層151a、有機マスク層152aおよび無機マスク層153aを形成する(
図4(B))。これらのエッチングは、ウェットエッチングで行っても良いし、ドライエッチングで行っても構わないが、ドライエッチングで行うことが好ましい。
【0104】
有機化合物層151aの加工が終了したら、ハードマスク層154aを除去する(
図4(C))。ハードマスク層154aの除去はエッチングによって行えばよく、ウェットエッチングで行っても良いし、ドライエッチングで行っても構わないが、ドライエッチングで行うことが好ましい。当該エッチングはハードマスク層154aと無機マスク層153aにおいて、ハードマスク層154aの方の選択比が高い条件を選択して用いることが好ましい。
【0105】
最後に、無機マスク層153aと有機マスク層152aとを、水または水を溶媒とした液体で処理することによって同時に除去する(
図4(E))。
【0106】
除去する方法としては、水または水を溶媒とした液体に一定時間浸漬した後、純水のシャワーで洗い流せばよい。これだけの工程でハードマスク層154aと有機マスク層152aとを除去することができる。除去に用いる液体は、水である方が有機化合物層151aへのダメージがより少ないために好ましい構成である。
【0107】
なお、ハードマスク層154aを除去した後、有機マスク層152aを水または水を溶媒とした液体で処理する前に、無機マスク層153aをある程度除去しておいてもよい(
図4(D))。無機マスク層153aの除去はエッチングによって行えばよく、ウェットエッチングで行っても良いし、ドライエッチングで行っても構わないが、アルカリ溶液または酸性溶液を用いたウェットエッチングで行うことが好ましく、アルカリ溶液を用いたウェットエッチングがさらに好ましい。有機マスク層152aがあることによって、有機化合物層151aの表面がアルカリ溶液または酸性溶液に曝されることがないため、特性の劣化を防ぐことができる。また、この際、無機マスク残渣153rが多少有機マスク層152aに残る程度に処理を行うことで、その後の有機マスク層152aを除去する工程をよりスムーズに行うことが可能となる。
【0108】
また、有機マスク層152aに、デバイス特性を大きく阻害(例えば、高電圧化等)しない材料、または、電子注入層として機能するものを用いた場合、有機マスク膜152は完全に除去する必要はなく、一部、または全面に残留していてもよい。
【0109】
このような工程で加工された有機化合物層151aは、加工によるダメージが小さいことから、特性の良好な有機ELデバイスとすることができる。また、有機化合物層151aの表面に無機マスク残渣153rが残ることを抑制することができるので、この後に作製する有機ELデバイスの高電圧化を防ぐことができる。
【0110】
なお、当該有機化合物層151aは、
図5(A)のように絶縁層160上に設けられた有機化合物層151a、ゲート絶縁層161、ゲート電極162、ソース電極163、ドレイン電極164を有する有機TFT、
図5(B)のように、絶縁層160上に設けられた第1の電極165および第2の電極166、光電変換層167を有する、太陽電池、フォトセンサなどの光電変換デバイス、
図5(C)のように、絶縁層160上に設けられた第1の電極165、第2の電極166および発光層168を有する有機ELデバイスに用いることができる。
【0111】
本実施の形態の構成は、他の構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0112】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様の有機ELデバイスの一例として、発光デバイスの作製方法について、図面を参照して説明する。ここでは、一例として、
図6に示すような発光装置450を例に挙げて説明する。発光装置450は、実施の形態1または実施の形態2における有機化合物層がEL層である有機ELデバイスを有する発光装置である。すなわち、以下においてEL層と表記されたものが上述の有機化合物層に相当する。なお、EL層に変えて光電変換層を含む有機化合物層を用いることで、フォトセンサとして用いることもできる。フォトセンサと有機ELデバイスを発光装置内に同時に有していても良い。
【0113】
[発光装置450]
図6(A)に、発光装置450の上面概略図を示す。発光装置450は、青色を呈する有機ELデバイス110B、緑色を呈する有機ELデバイス110G、及び赤色を呈する有機ELデバイス110Rをそれぞれ複数有する。
図6(A)では、各有機ELデバイスの区別を簡単にするため、各有機ELデバイスの発光領域内にR、G、Bの符号を付している。
【0114】
有機ELデバイス110B、有機ELデバイス110G、及び有機ELデバイス110Rは、それぞれマトリクス状に配列している。
図6(A)は、一方向に同一の色の有機ELデバイスが配列する、いわゆるストライプ配列を示している。なお、有機ELデバイスの配列方法はこれに限られず、デルタ配列、ジグザグ配列などの配列方法を適用してもよいし、ペンタイル配列を用いることもできる。
【0115】
有機ELデバイス110B、有機ELデバイス110G、及び有機ELデバイス110Rは、X方向に配列している。また、X方向と交差するY方向には、同じ色の有機ELデバイスが配列している。
【0116】
有機ELデバイス110B、有機ELデバイス110G、及び有機ELデバイス110Rは上記構成を有する有機ELデバイスである。
【0117】
図6(B)は、
図6(A)中の一点鎖線A1-A2に対応する断面概略図であり、
図6(C)は、一点鎖線B1-B2に対応する断面概略図である。
【0118】
図6(B)には、有機ELデバイス110B、有機ELデバイス110G、及び有機ELデバイス110Rの断面を示している。有機ELデバイス110Bは、第1の電極(画素電極)101B、第1のEL層120B、第2のEL層121、及び第2の電極102を有する。有機ELデバイス110Gは、第1の電極(画素電極)101G、第1のEL層120G、第2のEL層(電子注入層)121、及び第2の電極102を有する。有機ELデバイス110Rは、第1の電極(画素電極)101R、第1のEL層120R、第2のEL層121、及び第2の電極(共通電極)102を有する。第2のEL層121と第2の電極102は、有機ELデバイス110B、有機ELデバイス110G、及び有機ELデバイス110Rに共通に設けられる。第2のEL層121は、共通層ともいうことができる。なお、本実施の形態においては、第1の電極101は陽極、第2の電極102は陰極である場合を例に説明する。
【0119】
有機ELデバイス110Bが有する第1のEL層120Bは、少なくとも青色の波長域に強度を有する光を発する発光性の有機化合物を有する。有機ELデバイス110Gが有する第1のEL層120Gは、少なくとも緑色の波長域に強度を有する光を発する発光性の有機化合物を有する。有機ELデバイス110Rが有する第1のEL層120Rは、少なくとも赤色の波長域に強度を有する光を発する発光性の有機化合物を有する。
【0120】
第1のEL層120B、第1のEL層120G、及び第1のEL層120Rは、それぞれ発光層を少なくとも有し、そのほかに、正孔ブロック層、電子注入層、電子輸送層、正孔輸送層、正孔注入層、電子ブロック層、励起子ブロック層などのうち、一以上を有していてもよい。第2のEL層121は、発光層を有さない構成とする。第2のEL層121は電子注入層であることが好ましい。なお、第1のEL層120B、第1のEL層120G、及び第1のEL層120R第2の電極側の表面が電子注入層の役割も担う場合、第2のEL層121は設けられていなくともよい。
【0121】
第1の電極(陽極)101B、第1の電極(陽極)101G、及び第1の電極(陽極)101Rは、それぞれ有機ELデバイス毎に設けられている。また、第2の電極102及び第2のEL層121は、各有機ELデバイスに共通な一続きの層として設けられていることが好ましい。
【0122】
第1の電極101と第2の電極102のいずれか一方に可視光に対して透光性を有する導電膜を用い、他方に反射性を有する導電膜を用いる。第1の電極101を透光性、第2の電極102を反射性とすることで、下面射出型(ボトムエミッション型)の表示装置とすることができ、反対に各第1の電極を反射性、第2の電極102を透光性とすることで、上面射出型(トップエミッション型)の表示装置とすることができる。なお、各第1の電極101と第2の電極102の双方を透光性とすることで、両面射出型(デュアルエミッション型)の表示装置とすることもできる。本実施の形態における有機ELデバイスは、トップエミッション型の有機ELデバイスに好適である。
【0123】
第1の電極101B、第1の電極101G、及び第1の電極101Rの端部を覆って、第1のEL層120B、第1のEL層120G、及び第1のEL層120Rがそれぞれ設けられている。また、第1のEL層120B、第1のEL層120G、及び第1のEL層120Rの端部を覆って絶縁層125が設けられている。言い換えると、絶縁層125は、第1の電極101B、第1の電極101G、及び第1の電極101Rおよび第1のEL層120B、第1のEL層120G、及びE第1のL層120Rと重なる開口部を有している。絶縁層125の開口部における端部は、テーパ形状であることが好ましい。なお、第1の電極101B、第1の電極101G、及び第1の電極101Rの端部は、第1のEL層120B、第1のEL層120G、及び第1のEL層120Rにそれぞれ覆われていなくてもよい。
【0124】
第1のEL層120B、第1のEL層120G、及び第1のEL層120Rは、それぞれ第1の電極101B、第1の電極101G、及び第1の電極101R上面に接する領域を有する。また、第1のEL層120B、第1のEL層120G、及び第1のEL層120Rの端部は、絶縁層125の下に位置する。第1のEL層120B、第1のEL層120G、及び第1のEL層120Rの上面は絶縁層125に接する領域と、第2のEL層121(第2のEL層を設けない構成の場合は第2の電極102)に接する領域とを有する。
【0125】
図7は、
図6(B)の変形例である。
図7において、第1の電極101B、第1の電極101G、及び第1の電極101Rの端部は、基板側に向かって広くなるテーパ形状を有しており、上部に形成される膜の被覆性が向上している。また、第1の電極101B、第1の電極101G、及び第1の電極101Rの端部は、第1のEL層120B、第1のEL層120G、及び第1のEL層120Rにそれぞれ覆われている。EL層を覆ってマスク層107が形成されている。これは、フォトリソグラフィ法によってエッチングをする際に、EL層がダメージを受けることを抑制する働きがある。有機ELデバイス110B、有機ELデバイス110G、及び有機ELデバイス110Rの間には絶縁層108が設けられている。絶縁層108の端部はなだらかなテーパ形状を有しており、その後に形成される第2のEL層121および第2の電極102の段切れを抑制することができる。
【0126】
図6(B)、
図7に示すように、異なる色の有機ELデバイス間において、2つのEL層の間に隙間が設けられている。このように、第1のEL層120B、第1のEL層120G、及び第1のEL層120Rが、互いに接しないように設けられていることが好ましい。これにより、隣接する2つのEL層を介して電流が流れ、意図しない発光が生じることを有効に防ぐことができる。そのため、コントラストを高めることができ、表示品位の高い表示装置を実現できる。また、隣り合う有機ELデバイス(例えば有機ELデバイス110Bと有機ELデバイス110G)における向かい合うEL層の端部同士の間隔は、フォトリソグラフィ法を用いて作製することにより、2μm以上5μm以下とすることが可能である。なお、これは、EL層に含まれる発光層同士の間隔と言い換えることもできる。メタルマスクを用いた形成方法では10μm未満にすることは困難である。
【0127】
このように、フォトリソグラフィ法を用いて発光装置を作製することにより、2つの有機ELデバイス間に存在しうる非発光領域の面積を大幅に縮小することができ、開口率を大きく拡大することができるようになる。例えば、本発明の一態様の表示装置においては、開口率を、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、さらには90%以上であって、100%未満を実現することもできる。
【0128】
なお、表示装置の開口率を高くすることで、表示装置の信頼性を向上させることができる。より具体的には、有機ELデバイスを用い、開口率が10%の表示装置の寿命を基準にした場合、開口率が20%(すなわち、基準に対して開口率が2倍)の表示装置の寿命は約3.25倍となり、開口率が40%(すなわち、基準に対して開口率が4倍)の表示装置の寿命は約10.6倍となる。このように、開口率の向上に伴い、有機ELデバイスに流れる電流密度を低くすることができるため、表示装置の寿命を向上させることが可能となる。本実施の形態で説明する表示装置においては、開口率を向上させることが可能であるため表示装置の表示品位を向上させることが可能となる。さらに、表示装置の開口率の向上に伴い、表示装置の信頼性(特に寿命)を格段に向上させるといった、優れた効果を奏する。
【0129】
図6(C)では、Y方向において、第1のEL層120Rが有機ELデバイス毎に分離するように形成されている例を示した。なお、
図6(C)では一例として有機ELデバイス110Rの断面を示しているが、有機ELデバイス110G及び有機ELデバイス110Bについても同様の形状とすることができる。なお、EL層はY方向において一続きであり、第1のEL層120Rが帯状に形成されていてもよい。第1のEL層120Rなどを帯状に形成することで、これらを分断するためのスペースが不要となり、有機ELデバイス間の非発光領域の面積を縮小できるため、開口率を高めることができる。
【0130】
第2の電極102上には、有機ELデバイス110B、有機ELデバイス110G、及び有機ELデバイス110Rを覆って、バリア層131が設けられている。バリア層131は、上方から各有機ELデバイスに悪影響を及ぼす不純物が拡散することを防ぐ機能を有する。
【0131】
バリア層131としては、例えば、少なくとも無機絶縁膜を含む単層構造または積層構造とすることができる。無機絶縁膜としては、例えば、酸化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化アルミニウム膜、酸化窒化アルミニウム膜、酸化ハフニウム膜などの酸化物膜または窒化物膜が挙げられる。または、バリア層131としてインジウムガリウム酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物などの半導体材料を用いてもよい。
【0132】
また、バリア層131として、無機絶縁膜と、有機絶縁膜の積層膜を用いることもできる。例えば、一対の無機絶縁膜の間に、有機絶縁膜を挟んだ構成とすることが好ましい。さらに有機絶縁膜が平坦化膜として機能することが好ましい。これにより、有機絶縁膜の上面を平坦なものとすることができるため、その上の無機絶縁膜の被覆性が向上し、バリア性を高めることができる。また、バリア層131の上面が平坦となるため、バリア層131の上方に構造物(例えばカラーフィルタ、タッチセンサの電極、またはレンズアレイなど)を設ける場合に、下方の構造に起因する凹凸形状の影響を軽減できるため好ましい。
【0133】
また、
図6(A)には、第2の電極102と電気的に接続する接続電極101Cを示している。接続電極101Cは、第2の電極102に供給するための電位(例えばアノード電位、またはカソード電位)が与えられる。接続電極101Cは、有機ELデバイス110Bなどが配列する表示領域の外に設けられる。また
図6(A)には、第2の電極102を破線で示している。
【0134】
接続電極101Cは、表示領域の外周に沿って設けることができる。例えば、表示領域の外周の一辺に沿って設けられていてもよいし、表示領域の外周の2辺以上にわたって設けられていてもよい。すなわち、表示領域の上面形状が長方形である場合には、接続電極101Cの上面形状は、帯状、L字状、コの字状(角括弧状)、または四角形などとすることができる。
【0135】
図6(D)は、
図6(A)中の一点鎖線C1-C2に対応する断面概略図である。
図6(D)には、接続電極101Cと第2の電極102とが電気的に接続する接続部130を示している。接続部130では、接続電極101C上に第2の電極102が接して設けられ、第2の電極102を覆ってバリア層131が設けられている。また、接続電極101Cの端部を覆って絶縁層125が設けられている。
【0136】
[作製方法例]
図8(A)乃至
図9(F)は、以上で説明した発光装置450の作製方法の、各工程における断面概略図である。またこれらには、右側に接続部130及びその近傍における断面概略図を合わせて示している。
【0137】
なお、表示装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)は、スパッタリング法、化学気相堆積(CVD:Chemical Vapor Deposition)法、真空蒸着法、パルスレーザー堆積(PLD:Pulsed Laser Deposition)法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法等を用いて形成することができる。CVD法としては、プラズマ化学気相堆積(PECVD:Plasma Enhanced CVD)法、または熱CVD法などがある。また、熱CVD法のひとつに、有機金属化学気相堆積(MOCVD:Metal Organic CVD)法がある。
【0138】
また、表示装置を構成する薄膜(絶縁膜、半導体膜、導電膜等)は、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、インクジェット、ディスペンス、スクリーン印刷、オフセット印刷、ドクターナイフ法、スリットコート、ロールコート、カーテンコート、ナイフコート等の方法により形成することができる。
【0139】
また、表示装置を構成する薄膜を加工する際には、フォトリソグラフィ法等を用いることができる。
【0140】
フォトリソグラフィ法としては、代表的には以下の2つの方法がある。一つは、加工したい薄膜上にレジストマスクを形成して、エッチング等により当該薄膜を加工し、レジストマスクを除去する方法である。もう一つは、感光性を有する薄膜を成膜した後に、露光、現像を行って、当該薄膜を所望の形状に加工する方法である。
【0141】
フォトリソグラフィ法において、露光に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長436nm)、h線(波長405nm)、またはこれらを混合させた光を用いることができる。そのほか、紫外線、KrFレーザ光、またはArFレーザ光等を用いることもできる。また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外(EUV:Extreme Ultra-violet)光、X線などを用いてもよい。また、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。極端紫外光、X線または電子ビームを用いると、極めて微細な加工が可能となるため好ましい。なお、電子ビームなどのビームを走査することにより露光を行う場合には、フォトマスクは不要である。
【0142】
薄膜のエッチングには、ドライエッチング法、ウェットエッチング法、サンドブラスト法などを用いることができる。
【0143】
なお、本明細書等において、メタルマスク、またはFMM(ファインメタルマスク、高精細なメタルマスク)を用いて作製されるデバイスをMM(メタルマスク)構造のデバイスと呼称する場合がある。また、本明細書等において、メタルマスク、またはFMMを用いることなく作製されるデバイスをMML(メタルマスクレス)構造のデバイスと呼称する場合がある。
【0144】
〔基板100の準備〕
基板100としては、少なくとも後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有する基板を用いることができる。基板100として、絶縁性基板を用いる場合には、ガラス基板、石英基板、サファイア基板、セラミック基板、有機樹脂基板などを用いることができる。また、シリコン、炭化シリコンなどを材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基板などの半導体基板を用いることができる。
【0145】
特に、基板100として、上記半導体基板または絶縁性基板上に、トランジスタなどの半導体素子を含む半導体回路が形成された基板を用いることが好ましい。当該半導体回路は、例えば画素回路、ゲート線駆動回路(ゲートドライバ)、ソース線駆動回路(ソースドライバ)などを構成していることが好ましい。また、上記に加えて演算回路、記憶回路などが構成されていてもよい。
【0146】
〔第1の電極101B、101G、101R、接続電極101Cの形成〕
続いて、基板100上に第1の電極101B、第1の電極101G、第1の電極101R、及び接続電極101Cを形成する(
図8(A))。まず画素電極(第1の電極)となる導電膜を成膜し、フォトリソグラフィ法によりレジストマスクを形成し、導電膜の不要な部分をエッチングにより除去する。その後、レジストマスクを除去することで、第1の電極101B、第1の電極101G、第1の電極101R、及び第1の電極101Cを形成することができる。
【0147】
各画素電極として可視光に対して反射性を有する導電膜を用いる場合、可視光の波長域全域での反射率ができるだけ高い材料(例えば銀またはアルミニウムなど)を適用することが好ましい。これにより、有機ELデバイスの光取り出し効率を高められるだけでなく、色再現性を高めることができる。各画素電極として可視光に対して反射性を有する導電膜を用いた場合、基板と反対方向に発光を取りだすいわゆるトップエミッションの発光装置とすることができる。各画素電極として透光性を有する導電膜を用いる場合、基板方向に発光を取り出すいわゆるボトムエミッションの発光装置とすることができる。
【0148】
〔EL膜120Bbの形成〕
続いて、第1の電極101B、第1の電極101G、および第1の電極101R上に、後に第1のEL層120BとなるEL膜120Bbを成膜する(
図8(B))。
【0149】
EL膜120Bbは、少なくとも発光材料を含む発光層を有する。このほかに、電子注入層、電子輸送層、電荷発生層、正孔輸送層または正孔注入層として機能する膜のうち、一以上が積層された構成としてもよい。EL膜120Bbは、例えば蒸着法、スパッタリング法、またはインクジェット法等により形成することができる。なおこれに限られず、公知の成膜方法を適宜用いることができる。
【0150】
一例としては、EL膜120Bbとして、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層が、この順で積層された積層膜とすることが好ましい。このとき、後に形成する第2のEL層121としては、電子注入層を有する膜を用いることができる。
【0151】
EL膜120Bbは、接続電極101C上に設けないように形成することが好ましい。例えば、EL膜120Bbを蒸着法(またはスパッタリング法)により形成する場合、接続電極101CにEL膜120Bbが成膜されないように、遮蔽マスクを用いて形成する、または後のエッチング工程で除去することが好ましい。
【0152】
〔有機マスク膜148aの形成〕
次に、EL膜120Bbを覆って有機マスク膜148aを形成する(
図8(C))。有機マスク膜148aは接続電極101C上に成膜されないように、遮蔽マスクを用いて形成する、または後のエッチング工程で除去することが好ましい。
【0153】
有機マスク膜148aは、実施の形態1で説明した一般式(G1)または一般式(G2)で表される有機化合物を用いて形成する。本発明の一態様である有機化合物を有機マスク膜148aに用いることで、EL膜120Bbを保護し、後に形成する無機マスク層145(無機マスク層145a、無機マスク層145b、無機マスク層145c)の除去が容易となる。当該有機化合物を有機マスク膜148aの材料として用いることによって、この後に形成される無機マスク層145またはその残渣(エッチング残り)を水または水を溶媒とする液体により容易に除去することができ、有機ELデバイスの高電圧化を防ぐことができる。また、有機ELデバイスの特性悪化を抑制することが可能となる。
【0154】
〔無機マスク膜144aの形成〕
続いて、EL膜120Bbを覆って無機マスク膜144aを形成する(
図8(B))。無機マスク膜144aは、接続電極101C上に成膜されないように、遮蔽マスクを用いて形成する、または後のエッチング工程で除去することが好ましい。
【0155】
無機マスク膜144aは、EL膜120Bbなどの各EL膜のエッチング処理に対する耐性の高い膜、すなわちエッチングの選択比の大きい膜を用いることができる。また、無機マスク膜144aは、後述するハードマスクとなる膜146aなどの保護膜とのエッチングの選択比の大きい膜を用いることができる。さらに、無機マスク膜144aは、各EL膜へのダメージの少ないウェットエッチング法により除去可能な膜を用いることができる。
【0156】
無機マスク膜144aは、スパッタリング法、蒸着法、CVD法、ALD法などの各種成膜方法により形成することができるが、ALD法を用いることが緻密で酸素または水などの大気成分および水などの液体に対するバリア性の高い膜を得ることができることから好ましい。
【0157】
〔ハードマスクとなる膜146aの形成〕
続いて、無機マスク膜144a上に、ハードマスクとなる膜146aを形成する(
図8(B))。
【0158】
ハードマスクとなる膜146aは、後に無機マスク膜144aをエッチングする際のハードマスクとして用いる膜である。また、後のハードマスクとなる膜146aの加工時には、無機マスク膜144aが露出する。したがって、無機マスク膜144aとハードマスクとなる膜146aとは、互いにエッチングの選択比の大きい膜の組み合わせを選択する。そのため、無機マスク膜144aのエッチング条件、及びハードマスクとなる膜146aのエッチング条件に応じて、ハードマスクとなる膜146aに用いることのできる膜を選択することができる。
【0159】
例えば、ハードマスクとなる膜146aのエッチングに、フッ素を含むガス(フッ素系ガスともいう)を用いたドライエッチングを用いる場合には、シリコン、窒化シリコン、酸化シリコン、タングステン、チタン、モリブデン、タンタル、窒化タンタル、モリブデンとニオブを含む合金、またはモリブデンとタングステンを含む合金などを、ハードマスクとなる膜146aに用いることができる。ここで、上記フッ素系ガスを用いたドライエッチングに対して、エッチングの選択比を大きくとれる(すなわち、エッチング速度を遅くできる)膜としては金属酸化物膜が挙げられる。
【0160】
金属酸化物としては、インジウムガリウム亜鉛酸化物(In-Ga-Zn酸化物、IGZOとも表記する)などの金属酸化物を用いることができる。さらに、酸化インジウム、インジウム亜鉛酸化物(In-Zn酸化物)、インジウムスズ酸化物(In-Sn酸化物)、インジウムチタン酸化物(In-Ti酸化物)、インジウムスズ亜鉛酸化物(In-Sn-Zn酸化物)、インジウムチタン亜鉛酸化物(In-Ti-Zn酸化物)、インジウムガリウムスズ亜鉛酸化物(In-Ga-Sn-Zn酸化物)などを用いることができる。またはシリコンを含むインジウムスズ酸化物などを用いることもできる。
【0161】
なお、上記ガリウムに代えて元素M(Mは、アルミニウム、シリコン、ホウ素、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムから選ばれた一種または複数種)を用いた場合にも適用できる。特に、Mは、ガリウム、アルミニウム、またはイットリウムから選ばれた一種または複数種とすることが好ましい。
【0162】
なお、これに限られず、ハードマスクとなる膜146aは、様々な材料の中から、無機マスク膜144aのエッチング条件、及びハードマスクとなる膜146aのエッチング条件に応じて、選択することができる。例えば、上記無機マスク膜144aに用いることのできる膜の中から選択することもできる。
【0163】
また、ハードマスクとなる膜146aとしては、例えば窒化物膜を用いることができる。具体的には、窒化シリコン、窒化アルミニウム、窒化ハフニウム、窒化チタン、窒化タンタル、窒化タングステン、窒化ガリウム、窒化ゲルマニウムなどの窒化物を用いることもできる。
【0164】
または、ハードマスクとなる膜146aとして、酸化物膜を用いることができる。代表的には、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化窒化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウムなどの酸化物膜または酸窒化物膜を用いることもできる。
【0165】
また、ハードマスクとなる膜146aとして、EL膜120Bbなどに用いることのできる有機膜を用いてもよい。例えば、EL膜120Bb、EL膜120Gb、またはEL膜120Rbに用いる有機膜と同じ膜を、ハードマスクとなる膜146aに用いることができる。このような有機膜を用いることで、EL膜120Bbなどと成膜装置を共通に用いることができるため、好ましい。
【0166】
〔レジストマスク143aの形成〕
続いて、ハードマスクとなる膜146a上であって、第1の電極101Bと重なる位置、及び接続電極101Cと重なる位置に、それぞれレジストマスク143aを形成する(
図8(C))。
【0167】
レジストマスク143aは、ポジ型のレジスト材料、またはネガ型のレジスト材料など、感光性の樹脂を含むレジスト材料を用いることができる。
【0168】
ここで、ハードマスクとなる膜146aを有さずに、無機マスク膜144a上にレジストマスク143aを形成する場合、無機マスク膜144aにピンホールなどの欠陥が存在すると、レジスト材料の溶媒によって、EL膜120Bbが溶解してしまう恐れがある。ハードマスクとなる膜146aを用いることで、このような不具合が生じることを防ぐことができる。
【0169】
なお、無機マスク膜144aにピンホールなどの欠陥が生じにくい膜を用いる場合には、ハードマスクとなる膜146aを用いずに、無機マスク膜144a上に直接、レジストマスク143aを形成してもよい。
【0170】
〔ハードマスクとなる膜146aのエッチング〕
続いて、ハードマスクとなる膜146aの、レジストマスク143aに覆われない一部をエッチングにより除去し、帯状または島状のハードマスク層147aを形成する。このとき同時に、接続電極101C上にもハードマスク層147aが形成される。
【0171】
ハードマスクとなる膜146aのエッチングの際、無機マスク膜144aが当該エッチングにより除去されないように、選択比の高いエッチング条件を用いることが好ましい。ハードマスクとなる膜146aのエッチングは、ウェットエッチングまたはドライエッチングにより行うことができるが、ドライエッチングを用いることで、ハードマスクとなる膜146aのパターンが縮小することを抑制できる。
【0172】
〔レジストマスク143aの除去〕
続いて、レジストマスク143aを除去する(
図8(D))。
【0173】
レジストマスク143aの除去は、ウェットエッチングまたはドライエッチングにより行うことができる。特に、酸素ガスをエッチングガスに用いたドライエッチング(プラズマアッシングともいう)により、レジストマスク143aを除去することが好ましい。
【0174】
このとき、レジストマスク143aの除去は、EL膜120Bbが無機マスク膜144aに覆われた状態で行われるため、EL膜120Bbへの影響が抑制されている。特に、EL膜120Bbが酸素に触れると、電気特性に悪影響を及ぼす場合があるため、プラズマアッシングなどの、酸素ガスを用いたエッチングを行う場合には好適である。
【0175】
〔無機マスク膜144aのエッチング〕
続いて、ハードマスク層147aをマスクとして用いて、無機マスク膜144aのハードマスク層147aに覆われない一部をエッチングにより除去し、帯状の無機マスク層145aを形成する(
図8(E))。このとき同時に、接続電極101C上にも無機マスク層145aが形成される。
【0176】
無機マスク膜144aのエッチングは、ウェットエッチングまたはドライエッチングにより行うことができるが、ドライエッチング法を用いると、パターンの縮小を抑制できるため好ましい。
【0177】
〔EL膜120Bb、有機マスク膜148a、およびハードマスク層147aのエッチング〕
続いて、ハードマスク層147aをエッチングすると同時に、無機マスク層145aに覆われない、有機マスク膜148aおよびEL膜120Bbの一部をエッチングにより除去し、有機マスク層149aおよび帯状のEL層120Bを形成する(
図8(F))。このとき同時に、接続電極101C上のハードマスク層147aも除去される。
【0178】
有機マスク膜148aおよびEL膜120Bbと、ハードマスク層147aとを同一処理によりエッチングすることで、工程を簡略化することができ、表示装置の作製コストを削減することができるため好ましい。
【0179】
特にEL膜120Bbのエッチングには、酸素を主成分に含まないエッチングガスを用いたドライエッチングを用いることが好ましい。これにより、EL膜120Bbの変質を抑制し、信頼性の高い表示装置を実現できる。酸素を主成分に含まないエッチングガスとしては、例えばCF4、C4F8、SF6、CHF3、Cl2、H2O、BCl3、H2またはHeなどの貴ガスが挙げられる。また、上記ガスと、酸素を含まない希釈ガスとの混合ガスをエッチングガスに用いることができる。
【0180】
なお、有機マスク膜148aおよびEL膜120Bbのエッチングと、ハードマスク層147aのエッチングを、別々に行ってもよい。このとき、有機マスク膜148a、およびEL膜120Bbを先にエッチングしてもよいし、ハードマスク層147aを先にエッチングしてもよい。
【0181】
この時点において、有機マスク層149aおよび第1のEL層120Bと、接続電極101Cが、無機マスク層145aに覆われた状態となる。
【0182】
〔第1のEL層120G、第1のEL層120Rの形成〕
同様の工程を繰り返すことによって島状の有機マスク層149b、149c、島状の第1のEL層120G、第1のEL層120Rと、島状の無機マスク層145b、145cとを形成することができる(
図9(A))。
【0183】
〔絶縁層126bの形成〕
無機マスク層145a、無機マスク層145b、及び無機マスク層145c上に、絶縁層126bを形成する(
図9(B))。絶縁層126bは無機マスク層145a、無機マスク層145b、及び無機マスク層145cと同様に作製することができる。
【0184】
その後、絶縁層126bを覆って、絶縁層125bを形成する(
図9(C))。絶縁層125bは感光性を有する有機樹脂を用いて形成すればよい。当該有機材料としては例えば、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、イミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミドアミド樹脂、シリコーン樹脂、シロキサン樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、フェノール樹脂、及びこれら樹脂の前駆体等を適用することができる。また、絶縁層125bとして、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルブチラル、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ポリグリセリン、プルラン、水溶性のセルロース、またはアルコール可溶性のポリアミド樹脂等の有機材料を適用することができる場合がある。また、感光性の樹脂としてはフォトレジストを用いることができる場合がある。感光性の樹脂は、ポジ型の材料、またはネガ型の材料を用いることができる場合がある。
【0185】
絶縁層125bは塗布後に加熱処理を行うことが好ましい。当該加熱処理は、EL層の耐熱温度よりも低い温度で行う。加熱処理の際の基板温度としては、50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上120℃以下とすればよい。これにより、絶縁層125b中に含まれる溶媒を除去することができる。
【0186】
次に、露光、現像を行って、絶縁層125bの第1の電極および第1のEL層と重なる領域に開口部を形成し、絶縁層125を形成する(
図9(D))。絶縁層125bに、ポジ型のアクリル樹脂を用いる場合、絶縁層125bを除去する領域に、マスクを用いて可視光線または紫外線を照射すればよい。
【0187】
また、露光に可視光線を用いる場合、当該可視光線は、i線(波長365nm)を含むことが好ましい。さらに、g線(波長436nm)、またはh線(波長405nm)などを含む可視光線を用いてもよい。
【0188】
現像は、絶縁層125bにアクリル樹脂を用いる場合、現像液として、アルカリ性の溶液を用いることが好ましく、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)を用いればよい。
【0189】
なお、この後、基板全体に露光を行い、可視光線または紫外光線を絶縁層125に照射することが好ましい。当該露光のエネルギー密度は、0mJ/cm2より大きく、800mJ/cm2以下とすればよく、0mJ/cm2より大きく、500mJ/cm2以下とすることが好ましい。現像後にこのような露光を行うことで、絶縁層125の透明度を向上させることができる場合がある。また、後の工程における、絶縁層125の端部をテーパ形状に変形させる加熱処理に必要とされる基板温度を低下させることができる場合がある。
【0190】
次に、加熱処理を行うことで、絶縁層125bを、側面にテーパ形状を有する絶縁層125に変形させることができる。当該加熱処理は、EL層の耐熱温度よりも低い温度で行う。加熱処理の際の基板温度としては、50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上130℃以下とすればよい。本工程の加熱処理は、絶縁層125の塗布後の加熱処理よりも、基板温度を高くすることが好ましい。これにより、絶縁層125の耐食性も向上させることができる。
【0191】
〔マスク層の除去〕
露出した無機マスク層145a、無機マスク層145b、及び無機マスク層145cを水または水を溶媒とする液体により有機マスク層149a、有機マスク層149bおよび有機マスク層149cと共に除去する(
図9(E))。
【0192】
水または水を溶媒とする液体による除去は、水または水を溶媒とする液体へ浸漬することで行う。この後、純水を用いたシャワーによる洗浄を行ってもよい。この処理により有機マスク層と共に無機マスク層を除去することができる。
【0193】
なお、有機マスク層149a、有機マスク層149bおよび有機マスク層149cに、デバイス特性を大きく阻害(例えば、高電圧化等)しない材料、または、電子注入層として機能するものを用いた場合、有機マスク層149a、有機マスク層149bおよび有機マスク層149cは完全に除去する必要はなく、一部、または全面に残留していてもよい。
【0194】
なお、水または水を溶媒とする液体による処理の前に、あらかじめ、無機マスク層145a、無機マスク層145b、及び無機マスク層145cをは、ウェットエッチングまたはドライエッチングによりある程度除去しておくことが好ましい。この際、無機マスク層145a、無機マスク層145b、及び無機マスク層145cは取りきる必要がない上、EL層上には有機マスク層が存在するため、無機マスク層145a、無機マスク層145b、及び無機マスク層145cの除去によりEL層はほとんどダメージを受けることがない。
【0195】
なおこのとき、特にウェットエッチング法を用いることが好ましい。例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液(TMAH)、希フッ酸、シュウ酸、リン酸、酢酸、硝酸、またはこれらの混合液体を用いたウェットエッチングを用いることが好ましい。
【0196】
または、無機マスク層145a、無機マスク層145b、及び無機マスク層145cを、水またはアルコールなどの溶媒に溶解させることで除去することが好ましい。ここで、無機マスク層145a、無機マスク層145b、及び無機マスク層145cを溶解しうるアルコールとしては、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコール(IPA)、またはグリセリンなど、様々なアルコールを用いることができる。
【0197】
無機マスク層145a、無機マスク層145b、無機マスク層145c、有機マスク層149a、有機マスク層149bおよび有機マスク層149cを除去した後に、第1のEL層120B、第1のEL層120G、及び第1のEL層120Rの内部に含まれる水、及び表面に吸着する水を除去するため、乾燥処理を行うことが好ましい。例えば、不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気下における加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は、基板温度として50℃以上200℃以下、好ましくは60℃以上150℃以下、より好ましくは70℃以上120℃以下の温度で行うことができる。減圧雰囲気とすることで、より低温で乾燥が可能であるため好ましい。
【0198】
このようにして、第1のEL層120B、第1のEL層120G、及び第1のEL層120Rを作り分けることができる。
【0199】
〔第2のEL層121の形成〕
続いて、第1のEL層120B、第1のEL層120G、及び第1のEL層120R、絶縁層125を覆って第2のEL層121を成膜する(
図9(F))。
【0200】
第2のEL層121は、EL膜120Bbなどと同様の方法で成膜することができる。蒸着法により第2のEL層121を成膜する場合には、第2のEL層121が接続電極101C上に成膜されないように、遮蔽マスクを用いて成膜することが好ましい。
【0201】
〔第2の電極102の形成〕
続いて、第2のEL層121及び接続電極101Cを覆って第2の電極102を形成する(
図9(F))。
【0202】
第2の電極102は、蒸着法またはスパッタリング法などの成膜方法により形成することができる。または、蒸着法で形成した膜と、スパッタリング法で形成した膜を積層させてもよい。このとき、電子注入層115が成膜される領域を包含するように、第2の電極102を形成することが好ましい。すなわち、電子注入層115の端部が、第2の電極102と重畳する構成とすることができる。第2の電極102は、遮蔽マスクを用いて形成することが好ましい。
【0203】
第2の電極102は、表示領域外において、接続電極101Cと電気的に接続される。
【0204】
〔バリア層の形成〕
続いて、第2の電極102上に、バリア層を形成する。バリア層に用いる無機絶縁膜の成膜には、スパッタリング法、PECVD法、またはALD法を用いることが好ましい。特にALD法は、段差被覆性に優れ、ピンホールなどの欠陥が生じにくいため、好ましい。また、有機絶縁膜の成膜には、インクジェット法を用いると、所望のエリアに均一な膜を形成できるため好ましい。
【0205】
以上により、発光装置を作製することができる。
【0206】
なお、上記では、第2の電極102と第2のEL層121とを、同様の上面形状となるように形成した場合について示したが、これらを異なる上面形状となるように形成してもよい。
【0207】
本実施の形態の構成は、他の構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0208】
(実施の形態4)
本実施の形態では、有機化合物層としてEL層を有する発光デバイスである、有機ELデバイスの構成について
図10を参照しながら説明する。有機ELデバイスは、第1の電極101と、第2の電極102との間に発光層を有するEL層を備えた構成を含む発光デバイスである。
【0209】
第1の電極101および第2の電極102は一方が陽極として機能し、他方が陰極として機能する。
図10は第1の電極101が陽極である場合を例に説明する。
【0210】
陽極は、仕事関数の大きい(具体的には4.0eV以上)金属、合金、導電性化合物、およびこれらの混合物などを用いて形成することが好ましい。具体的には、例えば、酸化インジウム-酸化スズ(ITO:Indium Tin Oxide)、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ、酸化インジウム-酸化亜鉛、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)等が挙げられる。これらの導電性金属酸化物膜は、通常スパッタリング法により成膜されるが、ゾル-ゲル法などを応用して作製しても構わない。作製方法の例としては、酸化インジウム-酸化亜鉛は、酸化インジウムに対し1~20wt%の酸化亜鉛を加えたターゲットを用いてスパッタリング法により形成する方法などがある。また、酸化タングステン及び酸化亜鉛を含有した酸化インジウム(IWZO)は、酸化インジウムに対し酸化タングステンを0.5~5wt%、酸化亜鉛を0.1~1wt%含有したターゲットを用いてスパッタリング法により形成することもできる。この他に、陽極に用いられる材料は、例えば、金(Au)、白金(Pt)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、または金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)等が挙げられる。又は、陽極に用いられる材料として、グラフェンも用いることができる。なお、後述する複合材料をEL層103における陽極と接する層に用いることで、仕事関数に関わらず、電極材料を選択することができるようになる。
【0211】
EL層103は積層構造を有していることが好ましいが、当該積層構造については特に限定はなく、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層、キャリアブロック層(正孔ブロック層、電子ブロック層)、励起子ブロック層、電荷発生層など、様々な層構造を適用することができる。なお、いずれかの層が設けられていなくてもよい。本実施の形態では、
図10に示すように、正孔注入層111、正孔輸送層112、発光層113、電子輸送層114、及び電子注入層115を有する構成について以下に具体的に示す。
【0212】
正孔注入層111は、アクセプタ性を有する物質を含む層である。アクセプタ性を有する物質としては、有機化合物と無機化合物のいずれも用いることが可能である。
【0213】
アクセプタ性を有する物質としては、電子吸引基(ハロゲン基またはシアノ基)を有する化合物を用いることができ、7,7,8,8-テトラシアノ-2,3,5,6-テトラフルオロキノジメタン(略称:F4-TCNQ)、クロラニル、2,3,6,7,10,11-ヘキサシアノ-1,4,5,8,9,12-ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT-CN)、1,3,4,5,7,8-ヘキサフルオロテトラシアノ-ナフトキノジメタン(略称:F6-TCNNQ)、2-(7-ジシアノメチレン-1,3,4,5,6,8,9,10-オクタフルオロ-7H-ピレン-2-イリデン)マロノニトリル等を挙げることができる。特に、HAT-CNのように複素原子を複数有する縮合芳香環に電子吸引基が結合している化合物が、熱的に安定であり好ましい。また、電子吸引基(特にフルオロ基のようなハロゲン基またはシアノ基)を有する[3]ラジアレン誘導体は、電子受容性が非常に高いため好ましく、具体的にはα,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[4-シアノ-2,3,5,6-テトラフルオロベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,6-ジクロロ-3,5-ジフルオロ-4-(トリフルオロメチル)ベンゼンアセトニトリル]、α,α’,α’’-1,2,3-シクロプロパントリイリデントリス[2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼンアセトニトリル]などが挙げられる。アクセプタ性を有する物質としては以上で述べた有機化合物以外にも、モリブデン酸化物、バナジウム酸化物、ルテニウム酸化物、タングステン酸化物、マンガン酸化物等を用いることができる。この他、フタロシアニン(略称:H2Pc)等のフタロシアニン系の化合物、銅フタロシアニン(略称:CuPc)等のフタロシアニン系の錯体化合物、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス[4-ビス(3-メチルフェニル)アミノフェニル]-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:DNTPD)等の芳香族アミン化合物、或いはポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(略称:PEDOT/PSS)等の高分子等によっても正孔注入層111を形成することができる。アクセプタ性を有する物質は、隣接する正孔輸送層(あるいは正孔輸送材料)から、電界の印加により電子を引き抜くことができる。
【0214】
なお、アクセプタ性を有する物質の中でもアクセプタ性を有する有機化合物は蒸着が容易で成膜がしやすいため、用いやすい材料である。
【0215】
また、正孔注入層111として、正孔輸送性を有する材料に上記アクセプタ性物質を含有させた複合材料を用いることもできる。なお、正孔輸送性を有する材料にアクセプタ性物質を含有させた複合材料を用いることにより、仕事関数に依らず電極を形成する材料を選ぶことができる。つまり、陽極として仕事関数の大きい材料だけでなく、仕事関数の小さい材料も用いることができるようになる。
【0216】
複合材料に用いる正孔輸送性を有する材料としては、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマー等)など、種々の有機化合物を用いることができる。なお、複合材料に用いる正孔輸送性を有する材料としては、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有する物質であることが好ましい。以下では、複合材料における正孔輸送性を有する材料として用いることのできる有機化合物を具体的に列挙する。
【0217】
複合材料に用いることのできる芳香族アミン化合物としては、N,N’-ジ(p-トリル)-N,N’-ジフェニル-p-フェニレンジアミン(略称:DTDPPA)、4,4’-ビス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、N,N’-ビス[4-ビス(3-メチルフェニル)アミノフェニル]-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5-トリス[N-(4-ジフェニルアミノフェニル)-N-フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)等を挙げることができる。カルバゾール誘導体としては、具体的には、3-[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6-ビス[N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)-N-フェニルアミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、3-[N-(1-ナフチル)-N-(9-フェニルカルバゾール-3-イル)アミノ]-9-フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5-トリス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、1,4-ビス[4-(N-カルバゾリル)フェニル]-2,3,5,6-テトラフェニルベンゼン等を用いることができる。芳香族炭化水素としては、例えば、2-tert-ブチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:t-BuDNA)、2-tert-ブチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、9,10-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス(4-フェニルフェニル)アントラセン(略称:t-BuDBA)、9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10-ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2-tert-ブチルアントラセン(略称:t-BuAnth)、9,10-ビス(4-メチル-1-ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、2-tert-ブチル-9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、9,10-ビス[2-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(1-ナフチル)アントラセン、2,3,6,7-テトラメチル-9,10-ジ(2-ナフチル)アントラセン、9,9’-ビアントリル、10,10’-ジフェニル-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス(2-フェニルフェニル)-9,9’-ビアントリル、10,10’-ビス[(2,3,4,5,6-ペンタフェニル)フェニル]-9,9’-ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11-テトラ(tert-ブチル)ペリレン等が挙げられる。また、この他、ペンタセン、コロネン等も用いることができる。また、ビニル骨格を有していてもよい。ビニル基を有している芳香族炭化水素としては、例えば、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、9,10-ビス[4-(2,2-ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)等が挙げられる。なお、本発明の一態様の有機化合物も用いることができる。
【0218】
また、ポリ(N-ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4-ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N-(4-{N’-[4-(4-ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル-N’-フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’-ビス(4-ブチルフェニル)-N,N’-ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly-TPD)等の高分子化合物を用いることもできる。
【0219】
複合材料に用いられる正孔輸送性を有する材料としては、カルバゾール骨格、ジベンゾフラン骨格、ジベンゾチオフェン骨格およびアントラセン骨格のいずれかを有していることがより好ましい。特に、ジベンゾフラン環またはジベンゾチオフェン環を含む置換基を有する芳香族アミン、ナフタレン環を有する芳香族モノアミン、または9-フルオレニル基がアリーレン基を介してアミンの窒素に結合する芳香族モノアミンであっても良い。なお、これら有機化合物が、N,N-ビス(4-ビフェニル)アミノ基を有する物質であると、寿命の良好な有機ELデバイスを作製することができるため好ましい。以上のような有機化合物としては、具体的には、N-(4-ビフェニル)-6,N-ジフェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BnfABP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)-6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf)、4,4’-ビス(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:BnfBB1BP)、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-アミン(略称:BBABnf(6))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-アミン(略称:BBABnf(8))、N,N-ビス(4-ビフェニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン-4-アミン(略称:BBABnf(II)(4))、N,N-ビス[4-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-4-アミノ-p-ターフェニル(略称:DBfBB1TP)、N-[4-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-N-フェニル-4-ビフェニルアミン(略称:ThBA1BP)、4-(2-ナフチル)-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNB)、4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’,4’’-ジフェニルトリフェニルアミン(略称:BBAβNBi)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;1’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAαNβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7-フェニル)ナフチル-2-イルトリフェニルアミン(略称:BBAPβNB-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(6;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B)、4,4’-ジフェニル-4’’-(7;2’-ビナフチル-2-イル)トリフェニルアミン(略称:BBA(βN2)B-03)、4,4’-ジフェニル-4’’-(4;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB)、4,4’-ジフェニル-4’’-(5;2’-ビナフチル-1-イル)トリフェニルアミン(略称:BBAβNαNB-02)、4-(4-ビフェニリル)-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNB)、4-(3-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:mTPBiAβNBi)、4-(4-ビフェニリル)-4’-[4-(2-ナフチル)フェニル]-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:TPBiAβNBi)、4-フェニル-4’-(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBA1BP)、4,4’-ビス(1-ナフチル)トリフェニルアミン(略称:αNBB1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]トリフェニルアミン(略称:YGTBi1BP)、4’-[4-(3-フェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]トリス(ビフェニル-4-イル)アミン(略称:YGTBi1BP-02)、4-[4’-(カルバゾール-9-イル)ビフェニル-4-イル]-4’-(2-ナフチル)-4’’-フェニルトリフェニルアミン(略称:YGTBiβNB)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBNBSF)、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:BBASF)、N,N-ビス(ビフェニル-4-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:BBASF(4))、N-(ビフェニル-2-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:oFBiSF)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ジベンゾフラン-4-アミン(略称:FrBiF)、N-[4-(1-ナフチル)フェニル]-N-[3-(6-フェニルジベンゾフラン-4-イル)フェニル]-1-ナフチルアミン(略称:mPDBfBNBN)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-[4-(9-フェニルフルオレン-9-イル)フェニル]トリフェニルアミン(略称:BPAFLBi)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)、N-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン(略称:PCBBiF)、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-4-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-3-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-2-アミン、N,N-ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9’-スピロビ-9H-フルオレン-1-アミン等を挙げることができる。
【0220】
なお、複合材料に用いられる正孔輸送性を有する材料は-5.7eV以上-5.4eV以下の比較的深いHOMO(最高被占軌道:Highest occupied molecular orbital)準位を有する物質であることがさらに好ましい。複合材料に用いられる正孔輸送性を有する材料が比較的深いHOMO準位を有することによって、正孔輸送層112への正孔の注入が容易となり、また、寿命の良好な有機ELデバイスを得ることが容易となる。また、複合材料に用いられる正孔輸送性を有する材料が比較的深いHOMO準位を有する物質であることによって、正孔の誘起が適度に抑制されさらに寿命の良好な有機ELデバイスとすることができる。
【0221】
なお、上記複合材料にさらにアルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物を混合(好ましくは当該層中のフッ素原子の原子比率が20%以上)することによって、当該層の屈折率を低下させることができる。これによっても、EL層103内部に屈折率の低い層を形成することができ、有機ELデバイスの外部量子効率を向上させることができる。
【0222】
正孔注入層111を形成することによって、正孔の注入性が良好となり、駆動電圧の小さい有機ELデバイスを得ることができる。
【0223】
正孔輸送層112は、正孔輸送性を有する材料を含んで形成される。正孔輸送性を有する材料としては、1×10-6cm2/Vs以上の正孔移動度を有していることが好ましい。
【0224】
上記正孔輸送性を有する材料としては、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:TPD)、N,N’-ビス(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、9,9’-ビス(ビフェニル-4-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:BisBPCz)、9,9’-ビス(1,1’-ビフェニル-3-イル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:BismBPCz)、9-(ビフェニル-3-イル)-9’-(ビフェニル-4-イル)-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:mBPCCBP)、9-(2-ナフチル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:βNCCP)、9-(3-ビフェニル)-9’-(2-ナフチル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:βNCCmBP)、9-(4-ビフェニル)-9’-(2-ナフチル)-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:βNCCBP)、9,9’-ジ-2-ナフチル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール(略称:BisβNCz)、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-3-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-3-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-5’-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(2-ナフチル)-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-フェニル-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール(略称:PCCzTp)、9,9’-ビス(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(4-ビフェニル)-9’-(トリフェニレン-2-イル)-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、9-(トリフェニレン-2-イル)-9’-[1,1’:3’,1”-ターフェニル]-4-イル-3,3’-9H,9’H-ビカルバゾール、などのカルバゾール骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。なお、正孔注入層111の複合材料に用いられる正孔輸送性を有する材料として挙げた物質も正孔輸送層112を構成する材料として好適に用いることができる。
【0225】
発光層113は発光物質と第1の有機化合物を有していることが好ましい。また、さらに第2の有機化合物を含んでいてもよい。なお、発光層113は、その他の材料を同時に含んでいても構わない。また、組成の異なる2層の積層であってもよい。第1の有機化合物は電子輸送性を有する有機化合物であり、第2の有機化合物は正孔輸送性を有する有機化合物であることが好ましい。
【0226】
また、発光物質は、蛍光物質であってもりん光物質であっても熱活性化遅延蛍光(TADF)を呈する物質であっても構わない。
【0227】
発光層113において、蛍光発光物質として用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。また、これ以外の蛍光発光物質も用いることができる。
【0228】
5,6-ビス[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAP2BPy)、5,6-ビス[4’-(10-フェニル-9-アントリル)ビフェニル-4-イル]-2,2’-ビピリジン(略称:PAPP2BPy)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6FLPAPrn)、N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ビス[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ピレン-1,6-ジアミン(略称:1,6mMemFLPAPrn)、N,N’-ビス[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N,N’-ジフェニルスチルベン-4,4’-ジアミン(略称:YGA2S)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(10-フェニル-9-アントリル)トリフェニルアミン(略称:YGAPA)、4-(9H-カルバゾール-9-イル)-4’-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)トリフェニルアミン(略称:2YGAPPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:PCAPA)、ペリレン、2,5,8,11-テトラ-tert-ブチルペリレン(略称:TBP)、4-(10-フェニル-9-アントリル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBAPA)、N,N’’-(2-tert-ブチルアントラセン-9,10-ジイルジ-4,1-フェニレン)ビス(N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン)(略称:DPABPA)、N,9-ジフェニル-N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPPA)、N-[4-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPPA)、N,N,N’,N’,N’’,N’’,N’’’,N’’’-オクタフェニルジベンゾ[g,p]クリセン-2,7,10,15-テトラアミン(略称:DBC1)、クマリン30、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCAPA)、N-[9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,9-ジフェニル-9H-カルバゾール-3-アミン(略称:2PCABPhA)、N-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N-[9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-2-アントリル]-N,N’,N’-トリフェニル-1,4-フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、9,10-ビス(ビフェニル-2-イル)-N-[4-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-N-フェニルアントラセン-2-アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9-トリフェニルアントラセン-9-アミン(略称:DPhAPhA)、クマリン545T、N,N’-ジフェニルキナクリドン(略称:DPQd)、ルブレン、5,12-ビス(ビフェニル-4-イル)-6,11-ジフェニルテトラセン(略称:BPT)、2-(2-{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-6-メチル-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:DCM1)、2-{2-メチル-6-[2-(2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCM2)、N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)テトラセン-5,11-ジアミン(略称:p-mPhTD)、7,14-ジフェニル-N,N,N’,N’-テトラキス(4-メチルフェニル)アセナフト[1,2-a]フルオランテン-3,10-ジアミン(略称:p-mPhAFD)、2-{2-イソプロピル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTI)、2-{2-tert-ブチル-6-[2-(1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:DCJTB)、2-(2,6-ビス{2-[4-(ジメチルアミノ)フェニル]エテニル}-4H-ピラン-4-イリデン)プロパンジニトリル(略称:BisDCM)、2-{2,6-ビス[2-(8-メトキシ-1,1,7,7-テトラメチル-2,3,6,7-テトラヒドロ-1H,5H-ベンゾ[ij]キノリジン-9-イル)エテニル]-4H-ピラン-4-イリデン}プロパンジニトリル(略称:BisDCJTM)、N,N’-ジフェニル-N,N’-(1,6-ピレン-ジイル)ビス[(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン)-8-アミン](略称:1,6BnfAPrn-03)、3,10-ビス[N-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10PCA2Nbf(IV)-02)、3,10-ビス[N-(ジベンゾフラン-3-イル)-N-フェニルアミノ]ナフト[2,3-b;6,7-b’]ビスベンゾフラン(略称:3,10FrA2Nbf(IV)-02)などが挙げられる。特に、1,6FLPAPrn、1,6mMemFLPAPrn、1,6BnfAPrn-03のようなピレンジアミン化合物に代表される縮合芳香族ジアミン化合物は、ホールトラップ性が高く、発光効率、信頼性に優れているため好ましい。
【0229】
発光層113において、発光物質としてりん光発光物質を用いる場合、用いることが可能な材料としては、例えば以下のようなものが挙げられる。
【0230】
(ジイソブチリルメタナト)ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dibm)])、ビス[4,6-ビス(3-メチルフェニル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(5mdppm)2(dpm)])、ビス[4,6-ジ(ナフタレン-1-イル)ピリミジナト](ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(d1npm)2(dpm)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(acac)])、ビス(2,3,5-トリフェニルピラジナト)(ジピバロイルメタナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tppr)2(dpm)])、(アセチルアセトナト)ビス[2,3-ビス(4-フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Fdpq)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(piq)3])、ビス(1-フェニルイソキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(piq)2(acac)])、(3,7-ジエチル-4,6-ノナンジオナト-κO4,κO6)ビス[2,4-ジメチル-6-[7-(1-メチルエチル)-1-イソキノリニル-κN]フェニル-κC]イリジウム(III)、(3,7-ジエチル-4,6-ノナンジオナト-κO4,κO6)ビス[2,4-ジメチル-6-[5-(1-メチルエチル)-2-キノリニル-κN]フェニル-κC]イリジウム(III)のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、2,3,7,8,12,13,17,18-オクタエチル-21H,23H-ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)のような白金錯体、トリス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(DBM)3(Phen)])、トリス[1-(2-テノイル)-3,3,3-トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:[Eu(TTA)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは、600nmから700nmまでの波長域において発光のピークを有する。また、ピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、色度の良い赤色発光が得られる。なおその他公知の赤色りん光発光を呈する物質を用いることもできる。
【0231】
トリス{2-[5-(2-メチルフェニル)-4-(2,6-ジメチルフェニル)-4H-1,2,4-トリアゾール-3-イル-κN2]フェニル-κC}イリジウム(III)(略称:[Ir(mpptz-dmp)3])、トリス(5-メチル-3,4-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz)3])のような4H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス[3-メチル-1-(2-メチルフェニル)-5-フェニル-1H-1,2,4-トリアゾラト]イリジウム(III)(略称:[Ir(Mptz1-mp)3])、トリス(1-メチル-5-フェニル-3-プロピル-1H-1,2,4-トリアゾラト)イリジウム(III)(略称:[Ir(Prptz1-Me)3])のような1H-トリアゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、fac-トリス[1-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-フェニル-1H-イミダゾール]イリジウム(III)(略称:[Ir(iPrpim)3])、トリス[3-(2,6-ジメチルフェニル)-7-メチルイミダゾ[1,2-f]フェナントリジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(dmpimpt-Me)3])、トリス(2-[1-{2,6-ビス(1-メチルエチル)フェニル}-1H-イミダゾール-2-イル-κN3]-4-シアノフェニル-κC)イリジウム(III)(略称:CNImIr)のようなイミダゾール骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス[(6-tert-ブチル-3-フェニル-2H-イミダゾ[4,5-b]ピラジン-1-イル-κC2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(cb)3])のようなベンゾイミダゾリデン骨格を有する有機金属錯体、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)テトラキス(1-ピラゾリル)ボラート(略称:FIr6)、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)ピコリナート(略称:FIrpic)、ビス{2-[3’,5’-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ピリジナト-N,C2’}イリジウム(III)ピコリナート(略称:[Ir(CF3ppy)2(pic)])、ビス[2-(4’,6’-ジフルオロフェニル)ピリジナト-N,C2’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:FIracac)のような電子吸引基を有するフェニルピリジン誘導体を配位子とする有機金属イリジウム錯体が挙げられる。これらは青色のりん光発光を示す化合物であり、440nmから520nmまでの波長域において発光のピークを有する化合物である。
【0232】
また、トリス(4-メチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)3])、トリス(4-t-ブチル-6-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)3])、(アセチルアセトナト)ビス(6-メチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(6-tert-ブチル-4-フェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(tBuppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[6-(2-ノルボルニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(nbppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス[5-メチル-6-(2-メチルフェニル)-4-フェニルピリミジナト]イリジウム(III)(略称:[Ir(mpmppm)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(4,6-ジフェニルピリミジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(dppm)2(acac)])のようなピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、(アセチルアセトナト)ビス(3,5-ジメチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-Me)2(acac)])、(アセチルアセトナト)ビス(5-イソプロピル-3-メチル-2-フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(mppr-iPr)2(acac)])のようなピラジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体、トリス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)3])、ビス(2-フェニルピリジナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(ppy)2(acac)])、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(bzq)2(acac)])、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:[Ir(bzq)3])、トリス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)(略称:[Ir(pq)3])、ビス(2-フェニルキノリナト-N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:[Ir(pq)2(acac)])、[2-d3-メチル-8-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(5-d3-メチル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mppy-d3)2(mbfpypy-d3)])、[2-(メチル-d3)-8-[4-(1-メチルエチル-1-d)-2-ピリジニル-κN]ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-7-イル-κC]ビス[5-(メチル-d3)-2-[5-(メチル-d3)-2-ピリジニル-κN]フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(5mtpy-d6)2(mbfpypy-iPr-d4))、[2-d3-メチル-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)2(mbfpypy-d3))、[2-(4-d3-メチル-5-フェニル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]ビス[2-(5-d3-メチル-2-ピリジニル-κN2)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(5mppy-d3)2(mdppy-d3)])、[2-メチル-(2-ピリジニル-κN)ベンゾフロ[2,3-b]ピリジン-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:[Ir(ppy)2(mbfpypy)])、[2-(4-メチル-5-フェニル-2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]ビス[2-(2-ピリジニル-κN)フェニル-κC]イリジウム(III)(略称:Ir(ppy)2(mdppy))のようなピリジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体の他、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:[Tb(acac)3(Phen)])のような希土類金属錯体が挙げられる。これらは主に緑色のりん光発光を示す化合物であり、500nmから600nmまでの波長域において発光のピークを有する。なお、ピリミジン骨格を有する有機金属イリジウム錯体は、信頼性および発光効率にも際だって優れるため、特に好ましい。
【0233】
TADF材料としてはフラーレン及びその誘導体、アクリジン及びその誘導体、エオシン誘導体等を用いることができる。またマグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)、スズ(Sn)、白金(Pt)、インジウム(In)、もしくはパラジウム(Pd)等を含む金属含有ポルフィリンが挙げられる。該金属含有ポルフィリンとしては、例えば、以下の構造式に示されるプロトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Proto IX))、メソポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Meso IX))、ヘマトポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Hemato IX))、コプロポルフィリンテトラメチルエステル-フッ化スズ錯体(SnF2(Copro III-4Me))、オクタエチルポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(OEP))、エチオポルフィリン-フッ化スズ錯体(SnF2(Etio I))、オクタエチルポルフィリン-塩化白金錯体(PtCl2OEP)等も挙げられる。
【0234】
【0235】
また、以下の構造式に示される2-(ビフェニル-4-イル)-4,6-ビス(12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール-11-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:PIC-TRZ)、9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9’-フェニル-9H,9’H-3,3’-ビカルバゾール(略称:PCCzTzn)、9-[4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:PCCzPTzn)、2-[4-(10H-フェノキサジン-10-イル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:PXZ-TRZ)、3-[4-(5-フェニル-5,10-ジヒドロフェナジン-10-イル)フェニル]-4,5-ジフェニル-1,2,4-トリアゾール(略称:PPZ-3TPT)、3-(9,9-ジメチル-9H-アクリジン-10-イル)-9H-キサンテン-9-オン(略称:ACRXTN)、ビス[4-(9,9-ジメチル-9,10-ジヒドロアクリジン)フェニル]スルホン(略称:DMAC-DPS)、10-フェニル-10H,10’H-スピロ[アクリジン-9,9’-アントラセン]-10’-オン(略称:ACRSA)、等のπ電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環の一方または両方を有する複素環化合物も用いることができる。該複素環化合物は、π電子過剰型複素芳香環及びπ電子不足型複素芳香環を有するため、電子輸送性及び正孔輸送性が共に高く、好ましい。中でも、π電子不足型複素芳香環を有する骨格のうち、ピリジン骨格、ジアジン骨格(ピリミジン骨格、ピラジン骨格、ピリダジン骨格)、およびトリアジン骨格は、安定で信頼性が良好なため好ましい。特に、ベンゾフロピリミジン骨格、ベンゾチエノピリミジン骨格、ベンゾフロピラジン骨格、ベンゾチエノピラジン骨格はアクセプタ性が高く、信頼性が良好なため好ましい。また、π電子過剰型複素芳香環を有する骨格の中でも、アクリジン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格、フラン骨格、チオフェン骨格、及びピロール骨格は、安定で信頼性が良好なため、当該骨格の少なくとも一を有することが好ましい。なお、フラン骨格としてはジベンゾフラン骨格が、チオフェン骨格としてはジベンゾチオフェン骨格が、それぞれ好ましい。また、ピロール骨格としては、インドール骨格、カルバゾール骨格、インドロカルバゾール骨格、ビカルバゾール骨格、3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール骨格が特に好ましい。なお、π電子過剰型複素芳香環とπ電子不足型複素芳香環とが直接結合した物質は、π電子過剰型複素芳香環の電子供与性とπ電子不足型複素芳香環の電子受容性が共に強くなり、S1準位とT1準位のエネルギー差が小さくなるため、熱活性化遅延蛍光を効率よく得られることから特に好ましい。なお、π電子不足型複素芳香環の代わりに、シアノ基のような電子吸引基が結合した芳香環を用いても良い。また、π電子過剰型骨格として、芳香族アミン骨格、フェナジン骨格等を用いることができる。また、π電子不足型骨格として、キサンテン骨格、チオキサンテンジオキサイド骨格、オキサジアゾール骨格、トリアゾール骨格、イミダゾール骨格、アントラキノン骨格、フェニルボラン、ボラントレン等の含ホウ素骨格、ベンゾニトリルまたはシアノベンゼン等のニトリル基またはシアノ基を有する芳香環、複素芳香環、ベンゾフェノン等のカルボニル骨格、ホスフィンオキシド骨格、スルホン骨格等を用いることができる。このように、π電子不足型複素芳香環およびπ電子過剰型複素芳香環の少なくとも一方の代わりにπ電子不足型骨格およびπ電子過剰型骨格を用いることができる。
【0236】
【0237】
また、非常に高速且つ可逆的な項間交差が可能であり、一重項励起状態と三重項励起状態間が熱平衡モデルに従って発光するTADF材料を用いてもよい。このようなTADF材料は、TADF材料として極めて短い発光寿命(励起寿命)を有し、発光デバイスにおける高輝度領域での効率低下を抑制することができる。具体的には、下記に示す分子構造のような材料が挙げられる。
【0238】
【0239】
なお、TADF材料とは、S1準位とT1準位との差が小さく、逆項間交差によって三重項励起エネルギーから一重項励起エネルギーへエネルギーを変換することができる機能を有する材料である。そのため、三重項励起エネルギーをわずかな熱エネルギーによって一重項励起エネルギーにアップコンバート(逆項間交差)が可能で、一重項励起状態を効率よく生成することができる。また、三重項励起エネルギーを発光に変換することができる。
【0240】
また、2種類の物質で励起状態を形成する励起錯体(エキサイプレックス、エキシプレックスまたはExciplexともいう)は、S1準位とT1準位との差が極めて小さく、三重項励起エネルギーを一重項励起エネルギーに変換することが可能なTADF材料としての機能を有する。
【0241】
なお、T1準位の指標としては、低温(例えば77Kから10K)で観測されるりん光スペクトルを用いればよい。TADF材料としては、その蛍光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをS1準位とし、りん光スペクトルの短波長側の裾において接線を引き、その外挿線の波長のエネルギーをT1準位とした際に、そのS1とT1の差が0.3eV以下であることが好ましく、0.2eV以下であることがさらに好ましい。
【0242】
また、TADF材料を発光物質として用いる場合、ホスト材料のS1準位はTADF材料のS1準位より高い方が好ましい。また、ホスト材料のT1準位はTADF材料のT1準位より高いことが好ましい。
【0243】
ホスト材料に用いられる電子輸送材料としては、例えば、ビス(10-ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq2)、ビス(2-メチル-8-キノリノラト)(4-フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8-キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2-(2-ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、ビス[2-(2-ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物を用いることができる。π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物としては、例えば、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)などのポリアゾール骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、2,4-ビス[4-(1-ナフチル)フェニル]-6-[4-(3-ピリジル)フェニル]ピリミジン(略称:2,4NP-6PyPPm)、6-(ビフェニル-3-イル)-4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニルピリミジン(略称:6mBP-4Cz2PPm)、4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニル-6-(ビフェニル-4-イル)ピリミジン(略称:6BP-4Cz2PPm)、7-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)キナゾリン-2-イル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:PC-cgDBCzQz)、11-[(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]フェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:11mDBtBPPnfpr)、11-[(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-4-イル]フェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン、11-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]フェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン、12-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:12PCCzPnfpr)、9-[(3’-9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ビフェニル-4-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9pmPCBPNfpr)、9-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9PCCzNfpr)、10-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:10PCCzNfpr)、9-[3’-(6-フェニルベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mBnfBPNfpr)、9-{3-[6-(9,9-ジメチルフルオレン-2-イル)ジベンゾチオフェン-4-イル]フェニル}ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mFDBtPNfpr)、9-[3’-(6-フェニルジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mDBtBPNfpr-02)、9-[3-(9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mPCCzPNfpr)、9-[3’-(2,8-ジフェニルジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン、11-[3’-(2,8-ジフェニルジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]フェナントロ[9’,10’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジンなどのジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)などのピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、2-[3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mFBPTzn)、2-(ビフェニル-4-イル)-4-フェニル-6-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:BP-SFTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn-02)、5-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-7,7-ジメチル-5H,7H-インデノ[2,1-b]カルバゾール(略称:mINc(II)PTzn)、2-[3’-(トリフェニレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mTpBPTzn)、3-[9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-2-ジベンゾフラニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCDBfTzn)、2-(ビフェニル-3-イル)-4-フェニル-6-{8-[(1,1’:4’,1’’-ターフェニル)-4-イル]-1-ジベンゾフラニル}-1,3,5-トリアジン(略称:mBP-TPDBfTzn)などのトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物が挙げられる。上述した中でも、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジン、ピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0244】
ホスト材料に用いられる正孔輸送材料としては、アミン骨格、π電子過剰型複素芳香環を有する有機化合物を用いることができる。当該アミン骨格、π電子過剰型複素芳香環を有する有機化合物としては、例えば、4,4’-ビス[N-(1-ナフチル)-N-フェニルアミノ]ビフェニル(略称:NPB)、N,N’-ジフェニル-N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:TPD)、N,N’-ビス(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアミノビフェニル(略称:BSPB)、4-フェニル-4’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)、4-フェニル-3’-(9-フェニルフルオレン-9-イル)トリフェニルアミン(略称:mBPAFLP)、4-フェニル-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBA1BP)、4,4’-ジフェニル-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBBi1BP)、4-(1-ナフチル)-4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBANB)、4,4’-ジ(1-ナフチル)-4’’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)トリフェニルアミン(略称:PCBNBB)、9,9-ジメチル-N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]フルオレン-2-アミン(略称:PCBAF)、N-フェニル-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-アミン(略称:PCBASF)などの芳香族アミン骨格を有する化合物、1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン(略称:mCP)、4,4’-ジ(N-カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、3,6-ビス(3,5-ジフェニルフェニル)-9-フェニルカルバゾール(略称:CzTP)、3,3’-ビス(9-フェニル-9H-カルバゾール)(略称:PCCP)、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]ビス(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)アミン(略称:PCBFF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-4-アミン、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-4-アミン、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-2-アミン、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9-ジフェニル-9H-フルオレン-4-アミン、N-(ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-4-アミン(略称:PCBBiSF)、N-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル] -9,9’-スピロビ(9H-フルオレン)-4-アミン、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-(1,1’:3’,1’’-ターフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-(1,1’:4’,1’’-ターフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-アミン、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-(1,1’:3’,1’’-ターフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-4-アミン、N-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-N-(1,1’:4’,1’’-ターフェニル-4-イル)-9,9-ジメチル-9H-フルオレン-4-アミンなどのカルバゾール骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾチオフェン)(略称:DBT3P-II)、2,8-ジフェニル-4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]ジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-III)、4-[4-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]-6-フェニルジベンゾチオフェン(略称:DBTFLP-IV)などのチオフェン骨格を有する化合物、4,4’,4’’-(ベンゼン-1,3,5-トリイル)トリ(ジベンゾフラン)(略称:DBF3P-II)、4-{3-[3-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)フェニル]フェニル}ジベンゾフラン(略称:mmDBFFLBi-II)などのフラン骨格を有する化合物が挙げられる。上述した中でも、芳香族アミン骨格を有する化合物、カルバゾール骨格を有する化合物は、信頼性が良好であり、また、正孔輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与するため好ましい。また、正孔輸送層112における、正孔輸送性を有する材料の例として挙げた有機化合物もホストの正孔輸送材料として用いることができる。
【0245】
なお、電子輸送材料と、正孔輸送材料を混合することによって、発光層113の輸送性を容易に調整することができ、再結合領域の制御を簡便に行うことができる。また、TADF材料についても、電子輸送材料または正孔輸送材料として用いることができる。
【0246】
ホスト材料として用いることが可能なTADF材料としては、先にTADF材料として挙げたものを同様に用いることができる。TADF材料をホスト材料として用いると、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが、逆項間交差によって一重項励起エネルギーに変換され、さらに発光物質へエネルギー移動することで、有機ELデバイスの発光効率を高めることもできる。このとき、TADF材料がエネルギードナーとして機能し、発光物質がエネルギーアクセプターとして機能する。
【0247】
これは、上記発光物質が蛍光発光物質である場合に、非常に有効である。また、このとき、高い発光効率を得るためには、TADF材料のS1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。また、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のS1準位より高いことが好ましい。したがって、TADF材料のT1準位は、蛍光発光物質のT1準位より高いことが好ましい。
【0248】
また、蛍光発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈するTADF材料を用いることが好ましい。そうすることで、TADF材料から蛍光発光物質への励起エネルギーの移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため、好ましい。
【0249】
また、効率良く三重項励起エネルギーから逆項間交差によって一重項励起エネルギーが生成されるためには、TADF材料でキャリア再結合が生じることが好ましい。また、TADF材料で生成した三重項励起エネルギーが蛍光発光物質の三重項励起エネルギーに移動しないことが好ましい。そのためには、蛍光発光物質は、蛍光発光物質が有する発光団(発光の原因となる骨格)の周囲に保護基を有すると好ましい。該保護基としては、π結合を有さない置換基が好ましく、飽和炭化水素が好ましく、具体的には炭素数3以上10以下のアルキル基、置換もしくは無置換の炭素数3以上10以下のシクロアルキル基、炭素数3以上10以下のトリアルキルシリル基が挙げられ、保護基が複数あるとさらに好ましい。π結合を有さない置換基は、キャリアを輸送する機能に乏しいため、キャリア輸送またはキャリア再結合に影響をほとんど与えずに、TADF材料と蛍光発光物質の発光団との距離を遠ざけることができる。ここで、発光団とは、蛍光発光物質において発光の原因となる原子団(骨格)を指す。発光団は、π結合を有する骨格が好ましく、芳香環を含むことが好ましく、縮合芳香環または縮合複素芳香環を有すると好ましい。縮合芳香環または縮合複素芳香環としては、フェナントレン骨格、スチルベン骨格、アクリドン骨格、フェノキサジン骨格、フェノチアジン骨格等が挙げられる。特にナフタレン骨格、アントラセン骨格、フルオレン骨格、クリセン骨格、トリフェニレン骨格、テトラセン骨格、ピレン骨格、ペリレン骨格、クマリン骨格、キナクリドン骨格、ナフトビスベンゾフラン骨格を有する蛍光発光物質は蛍光量子収率が高いため好ましい。
【0250】
蛍光発光物質を発光物質として用いる場合、ホスト材料としては、アントラセン骨格を有する材料が好適である。アントラセン骨格を有する物質を蛍光発光物質のホスト材料として用いると、発光効率、耐久性共に良好な発光層を実現することが可能である。ホスト材料として用いるアントラセン骨格を有する物質としては、ジフェニルアントラセン骨格、特に9,10-ジフェニルアントラセン骨格を有する物質が化学的に安定であるため好ましい。また、ホスト材料がカルバゾール骨格を有する場合、正孔の注入・輸送性が高まるため好ましいが、カルバゾールにベンゼン環がさらに縮合したベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾールよりもHOMOが0.1eV程度浅くなり、正孔が入りやすくなるためより好ましい。特に、ホスト材料がジベンゾカルバゾール骨格を含む場合、カルバゾールよりもHOMOが0.1eV程度浅くなり、正孔が入りやすくなる上に、正孔輸送性にも優れ、耐熱性も高くなるため好適である。したがって、さらにホスト材料として好ましいのは、9,10-ジフェニルアントラセン骨格およびカルバゾール骨格(あるいはベンゾカルバゾール骨格、ジベンゾカルバゾール骨格)を同時に有する物質である。なお、上記の正孔注入・輸送性の観点から、カルバゾール骨格に換えて、ベンゾフルオレン骨格、ジベンゾフルオレン骨格を用いてもよい。このような物質の例としては、9-フェニル-3-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:PCzPA)、3-[4-(1-ナフチル)フェニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCPN)、9-[4-(10-フェニル-9-アントラセニル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CzPA)、7-[4-(10-フェニル-9-アントリル)フェニル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:cgDBCzPA)、6-[3-(9,10-ジフェニル-2-アントリル)フェニル]ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン(略称:2mBnfPPA)、9-フェニル-10-[4’-(9-フェニル-9H-フルオレン-9-イル)ビフェニル-4-イル]アントラセン(略称:FLPPA)、9-(1-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-βNPAnth)、9-(1-ナフチル)-10-(2-ナフチル)アントラセン(略称:α,βADN)、2-(10-フェニルアントラセン-9-イル)ジベンゾフラン、2-(10-フェニル-9-アントラセニル)ベンゾ[b]ナフト[2,3-d]フラン(略称:Bnf(II)PhA)、9-(2-ナフチル)-10-[3-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:βN-mβNPAnth)、1-[4-(10-(ビフェニル-4-イル)-9-アントラセニル)フェニル]-2-エチル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:EtBImPBPhA)、2,9-ジ(1-ナフチル)-10-フェニルアントラセン(略称:2αN-αNPhA)、9-(1-ナフチル)-10-[3-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-mαNPAnth)、9-(2-ナフチル)-10-[3-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:βN-mαNPAnth)、9-(1-ナフチル)-10-[4-(1-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:αN-αNPAnth)、9-(2-ナフチル)-10-[4-(2-ナフチル)フェニル]アントラセン(略称:βN-βNPAnth)、2-(1-ナフチル)-9-(2-ナフチル)-10-フェニルアントラセン(略称:2αN-βNPh)等が挙げられる。特に、CzPA、cgDBCzPA2mBnfPPA、PCzPAは非常に良好な特性を示すため、好ましい選択である。
【0251】
なお、上記混合された材料の一部として、りん光発光物質を用いることができる。りん光発光物質は、発光物質として蛍光発光物質を用いる際に蛍光発光物質へ励起エネルギーを供与するエネルギードナーとして用いることができる。
【0252】
また、上記混合された材料同士で励起錯体を形成しても良い。当該励起錯体は発光物質の最も低エネルギー側の吸収帯の波長と重なるような発光を呈する励起錯体を形成するような組み合わせを選択することで、エネルギー移動がスムーズとなり、効率よく発光が得られるため好ましい。また、当該構成を用いることで駆動電圧も低下するため好ましい。
【0253】
なお、励起錯体を形成する材料の少なくとも一方は、りん光発光物質であってもよい。そうすることで、三重項励起エネルギーを逆項間交差によって効率よく一重項励起エネルギーへ変換することができる。
【0254】
効率よく励起錯体を形成する材料の組み合わせとしては、正孔輸送性を有する材料のHOMO準位が電子輸送性を有する材料のHOMO準位以上であると好ましい。また、正孔輸送性を有する材料のLUMO(最低空軌道:Lowest Unoccupied Molecular Orbital)準位が電子輸送性を有する材料のLUMO準位以上であると好ましい。なお、材料のLUMO準位およびHOMO準位は、サイクリックボルタンメトリ(CV)測定によって測定される材料の電気化学特性(還元電位および酸化電位)から導出することができる。
【0255】
なお、励起錯体の形成は、例えば正孔輸送性を有する材料の発光スペクトル、電子輸送性を有する材料の発光スペクトル、およびこれら材料を混合した混合膜の発光スペクトルを比較し、混合膜の発光スペクトルが、各材料の発光スペクトルよりも長波長シフトする(あるいは長波長側に新たなピークを持つ)現象を観測することにより確認することができる。あるいは、正孔輸送性を有する材料の過渡フォトルミネッセンス(PL)、電子輸送性を有する材料の過渡PL、及びこれら材料を混合した混合膜の過渡PLを比較し、混合膜の過渡PL寿命が、各材料の過渡PL寿命よりも長寿命成分を有する、あるいは遅延成分の割合が大きくなるなどの過渡応答の違いを観測することにより、確認することができる。また、上述の過渡PLは過渡エレクトロルミネッセンス(EL)と読み替えても構わない。すなわち、正孔輸送性を有する材料の過渡EL、電子輸送性を有する材料の過渡EL及びこれらの混合膜の過渡ELを比較し、過渡応答の違いを観測することによっても、励起錯体の形成を確認することができる。
【0256】
正孔ブロック層を設ける場合、正孔ブロック層は、発光層113に接しており、電子輸送性を有し、且つ正孔をブロック可能な有機化合物を含んで形成される。正孔ブロック層を構成する有機化合物としては、電子輸送性に優れ、正孔輸送性が低く、かつHOMO準位の深い材料を用いることが好適である。具体的には、発光層113に含まれる材料のHOMO準位よりも0.5eV以上深いHOMO準位を有し、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。
【0257】
特に、2-{3-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mPCCzPDBq)、2-{3-[2-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mPCCzPDBq-02)、2-{3-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mPCCzPDBq-03)、2-{3-[3-(N-(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ジベンゾ[f,h]キノキサリン、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)、9-[4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:PCCzPTzn)、9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:PCCzTzn(CzT))、9-[3-(4,6-ジフェニル-ピリミジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:2PCCzPPm)、9-(4,6-ジフェニル-ピリミジン-2-イル)-9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:2PCCzPm)、4-[2-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4PCCzBfpm-02)、4-{3-[3-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ベンゾ[h]キナゾリン、9-[3-(2,6-ジフェニル-ピリジン-4-イル)フェニル]-9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾールが耐熱性が良好であり好ましい。
【0258】
正孔ブロック層としてその他の材料を用いる場合は、後述する正孔輸送層に用いることが可能な材料の中から、発光層113に含まれる材料のHOMO準位よりも深いHOMO準位を有する有機化合物を用いればよい。
【0259】
電子輸送層114は、電子輸送性を有する有機化合物であり、電界強度[V/cm]の平方根が600における電子移動度が、1×10-6cm2/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。なお、正孔よりも電子の輸送性の高い物質であれば、これら以外のものを用いることができる。なお、上記有機化合物としてはπ電子不足型複素芳香環を有する有機化合物が好ましい。π電子不足型複素芳香環を有する有機化合物としては、例えばポリアゾール骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物およびトリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物のいずれかまたは複数であることが好ましい。
【0260】
上記電子輸送層に用いることが可能なπ電子不足型複素芳香環を有する有機化合物としては、具体的には、2-(4-ビフェニリル)-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール(略称:PBD)、3-(4-ビフェニリル)-4-フェニル-5-(4-tert-ブチルフェニル)-1,2,4-トリアゾール(略称:TAZ)、1,3-ビス[5-(p-tert-ブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ベンゼン(略称:OXD-7)、9-[4-(5-フェニル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェニル]-9H-カルバゾール(略称:CO11)、2,2’,2’’-(1,3,5-ベンゼントリイル)トリス(1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-1-フェニル-1H-ベンゾイミダゾール(略称:mDBTBIm-II)、4,4’-ビス(5-メチルベンゾオキサゾール-2-イル)スチルベン(略称:BzOs)などのアゾール骨格を有する有機化合物、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、1,3,5-トリ[3-(3-ピリジル)フェニル]ベンゼン(略称:TmPyPB)、3,5-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリジン(略称:35DCzPPy)、バソフェナントロリン(略称:Bphen)、バソキュプロイン(略称:BCP)、2,9-ジ(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBphen)、などのピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、2-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTPDBq-II)、2-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mDBTBPDBq-II)、2-[3’-(9H-カルバゾール-9-イル)ビフェニル-3-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mCzBPDBq)、2-[4’-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-3,1’-ビフェニル-1-イル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2mpPCBPDBq)、2-[4-(3,6-ジフェニル-9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:2CzPDBq-III)、7-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:7mDBTPDBq-II)、及び6-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ジベンゾ[f,h]キノキサリン(略称:6mDBTPDBq-II)、9-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-3-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9mDBtBPNfpr)、9-[(3’-ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-4-イル]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[2,3-b]ピラジン(略称:9pmDBtBPNfpr)、4,6-ビス[3-(フェナントレン-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mPnP2Pm)、4,6-ビス[3-(4-ジベンゾチエニル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mDBTP2Pm-II)、4,6-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ピリミジン(略称:4,6mCzP2Pm)、9,9’-[ピリミジン-4,6-ジイルビス(ビフェニル-3,3’-ジイル)]ビス(9H-カルバゾール)(略称:4,6mCzBP2Pm)、8-(ビフェニル-4-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8BP-4mDBtPBfpm)、3,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]ベンゾフロ[2,3-b]ピラジン(略称:3,8mDBtP2Bfpr)、4,8-ビス[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8mDBtP2Bfpm)、8-[3’-(ジベンゾチオフェン-4-イル)(ビフェニル-3-イル)]ナフト[1’,2’:4,5]フロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8mDBtBPNfpm)、8-[(2,2’-ビナフタレン)-6-イル]-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:8(βN2)-4mDBtPBfpm)、2,2’-(ピリジン-2,6-ジイル)ビス(4-フェニルベンゾ[h]キナゾリン)(略称:2,6(P-Bqn)2Py)、2,2’-(ピリジン-2,6-ジイル)ビス{4-[4-(2-ナフチル)フェニル]-6-フェニルピリミジン}(略称:2,6(NP-PPm)2Py)、6-(ビフェニル-3-イル)-4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニルピリミジン(略称:6mBP-4Cz2PPm)、2,4-ビス[4-(1-ナフチル)フェニル]-6-[4-(3-ピリジル)フェニル]ピリミジン(略称:2,4NP-6PyPPm)、4-[3,5-ビス(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]-2-フェニル-6-(ビフェニル-4-イル)ピリミジン(略称:6BP-4Cz2PPm)、7-[4-(9-フェニル-9H-カルバゾール-2-イル)キナゾリン-2-イル]-7H-ジベンゾ[c,g]カルバゾール(略称:PC-cgDBCzQz)、8-(1,1’:4’,1”-テルフェニル-3-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]-[1]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン( 略称:8mpTP-4mDBtPBfpm )、4,8-ビス[3-(ジベンゾフラン-4-イル)フェニル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン、8-(1,1’:4’,1”-テルフェニル-3-イル)-4-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)ビフェニル-4-イル]-ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン、4,8-ビス[3-(9H-カルバゾール-9-イル)フェニル]ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン(略称:4,8mCzP2Bfpm)、8-(1,1’:4’,1”-テルフェニル-3-イル)-4-[3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)フェニル]-ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン、8-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-4-[3-(9-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)ビフェニル-3-イル]-ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン、8-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-4-{3-[2-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン、8-フェニル-4-{3-[2-(N-フェニル-9H-カルバゾール-3-イル)-9H-カルバゾール-9-イル]フェニル}ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジン、8-(1,1’-ビフェニル-4-イル)-4-(3,5-ジ-9H-カルバゾール-9-イル-フェニル)ベンゾフロ[3,2-d]ピリミジンなどのジアジン骨格を有する有機化合物、2-[3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mFBPTzn)、2-(ビフェニル-4-イル)-4-フェニル-6-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2-イル)-1,3,5-トリアジン(略称:BP-SFTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-8-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn)、2-{3-[3-(ベンゾ[b]ナフト[1,2-d]フラン-6-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mBnfBPTzn-02)、9-[4-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-3,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:PCCzPTzn)、9-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-9’-フェニル-2,3’-ビ-9H-カルバゾール(略称:mPCCzPTzn-02)、2-[3’-(9,9-ジメチル-9H-フルオレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mFBPTzn)、5-[3-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)フェニル]-7,7-ジメチル-5H,7H-インデノ[2,1-b]カルバゾール(略称:mINc(II)PTzn)、2-{3-[3-(ジベンゾチオフェン-4-イル)フェニル]フェニル}-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mDBtBPTzn)、2,4,6-トリス[3’-(ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル]-1,3,5-トリアジン(略称:TmPPPyTz)、2-[3-(2,6-ジメチル-3-ピリジニル)-5-(9-フェナントリル)フェニル]-4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン(略称:mPn-mDMePyPTzn)、11-[4-(ビフェニル-4-イル)-6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル]-11,12-ジヒドロ-12-フェニルインドロ[2,3-a]カルバゾール(略称:BP-Icz(II)Tzn)、2-[3’-(トリフェニレン-2-イル)ビフェニル-3-イル]-4,6-ジフェニル’1,3,5-トリアジン(略称:mTpBPTzn)、3-[9-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-2-ジベンゾフラニル]-9-フェニル-9H-カルバゾール(略称:PCDBfTzn)、2-(ビフェニル-3-イル)-4-フェニル-6-{8-[(1,1’:4’,1’’-ターフェニル)-4-イル]-1-ジベンゾフラニル}-1,3,5-トリアジン(略称:mBP-TPDBfTzn)などのトリアジン骨格を有する有機化合物が挙げられる。上述した中でも、ジアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、ピリジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、信頼性が良好であり好ましい。特に、ジアジン(ピリミジン、ピラジン)骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物、トリアジン骨格を有する複素芳香環を含む有機化合物は、電子輸送性が高く、駆動電圧低減にも寄与する。
【0261】
なお、本構成を有する電子輸送層114は、電子注入層115を兼ねることがある。
【0262】
電子輸送層114と共通電極(陰極)である第2の電極102との間に、電子注入層115として、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)、フッ化カルシウム(CaF2)、8-キノリノラト-リチウム(略称:Liq)のようなアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物もしくは錯体を含む層を設けることが好ましい。またイッテルビウム(Yb)とリチウムの共蒸着膜も好ましい。電子注入層115は、電子輸送性を有する物質からなる層中にアルカリ金属又はアルカリ土類金属又はそれらの化合物を含有させたもの、エレクトライドを用いてもよい。エレクトライドとしては、例えば、カルシウムとアルミニウムの混合酸化物に電子を高濃度添加した物質等が挙げられる。
【0263】
なお、電子注入層115として、電子輸送性を有する物質(好ましくはビピリジン骨格を有する有機化合物)に上記アルカリ金属又はアルカリ土類金属のフッ化物を微結晶状態となる濃度以上(50wt%以上)含ませた層を用いることも可能である。当該層は、屈折率の低い層であることから、より外部量子効率の良好な有機ELデバイスを提供することが可能となる。
【0264】
陰極を形成する物質としては、仕事関数の小さい(具体的には3.8eV以下)金属、合金、電気伝導性化合物、およびこれらの混合物などを用いることができる。このような陰極材料の具体例としては、リチウム(Li)、セシウム(Cs)等のアルカリ金属、およびマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)等の元素周期表の第1族または第2族に属する元素、およびこれらを含む合金(MgAg、AlLi)、ユウロピウム(Eu)、イッテルビウム(Yb)等の希土類金属およびこれらを含む合金等が挙げられる。しかしながら、陰極と電子輸送層との間に、電子注入層を設けることにより、仕事関数の大小に関わらず、Al、Ag、ITO、ケイ素若しくは酸化ケイ素を含有した酸化インジウム-酸化スズ等様々な導電性材料を陰極として用いることができる。
【0265】
これら導電性材料は、真空蒸着法、スパッタリング法などの乾式法、インクジェット法、スピンコート法等を用いて成膜することが可能である。また、ゾル-ゲル法を用いて湿式法で形成しても良いし、金属材料のペーストを用いて湿式法で形成してもよい。
【0266】
また、EL層103の形成方法としては、乾式法、湿式法を問わず、種々の方法を用いることができる。例えば、真空蒸着法、グラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット法またはスピンコート法など用いても構わない。
【0267】
また上述した各電極または各層を異なる成膜方法を用いて形成しても構わない。
【0268】
なお、陽極と陰極との間に設けられる層の構成は、上記のものには限定されない。しかし、発光領域と電極、キャリア注入層に用いられる金属とが近接することによって生じる消光が抑制されるように、陽極および陰極から離れた部位に正孔と電子とが再結合する発光領域を設けた構成が好ましい。
【0269】
また、発光層113に接する正孔輸送層、電子輸送層、特に発光層113における再結合領域に近いキャリア輸送層は、発光層で生成した励起子からのエネルギー移動を抑制するため、そのバンドギャップが発光層を構成する発光材料もしくは、発光層に含まれる発光材料が有するバンドギャップより大きいバンドギャップを有する物質で構成することが好ましい。
【0270】
なお、本実施の形態の構成は、他の実施の形態の構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0271】
(実施の形態5)
本実施の形態では、実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスを用いた発光装置について
図11(A)、及び
図11(B)を用いて説明する。なお、
図11(A)は、発光装置を示す上面図、
図11(B)は
図11(A)に示す一点鎖線A-Bおよび一点鎖線C-Dで切断した断面図である。この発光装置は、有機ELデバイスの発光を制御するものとして、点線で示された駆動回路部(ソース線駆動回路部)601、画素部602、駆動回路部(ゲート線駆動回路)603を含んでいる。また、604は封止基板、605はシール材であり、シール材605で囲まれた内側は、空間607になっている。
【0272】
なお、引き回し配線608はソース線駆動回路部601及びゲート線駆動回路603に入力される信号を伝送するための配線であり、外部入力端子となるFPC(フレキシブルプリントサーキット)609からビデオ信号、クロック信号、スタート信号、リセット信号等を受け取る。なお、ここではFPCしか図示されていないが、このFPCにはプリント配線基板(PWB)が取り付けられていても良い。本明細書における発光装置には、発光装置本体だけでなく、それにFPCもしくはPWBが取り付けられた状態をも含むものとする。
【0273】
次に、断面構造について
図11(B)を用いて説明する。素子基板610上には駆動回路部及び画素部が形成されているが、ここでは、駆動回路部であるソース線駆動回路部601と、画素部602中の一つの画素が示されている。
【0274】
素子基板610はガラス、石英、有機樹脂、金属、合金、半導体などからなる基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いて作製すればよい。
【0275】
画素、駆動回路に用いられるトランジスタの構造は特に限定されない。例えば、逆スタガ型のトランジスタとしてもよいし、スタガ型のトランジスタとしてもよい。また、トップゲート型のトランジスタでもボトムゲート型トランジスタでもよい。トランジスタに用いる半導体材料は特に限定されず、例えば、シリコン、ゲルマニウム、炭化シリコン、窒化ガリウム等を用いることができる。または、In-Ga-Zn系金属酸化物などの、インジウム、ガリウム、亜鉛のうち少なくとも一つを含む酸化物半導体を用いてもよい。
【0276】
トランジスタに用いる半導体材料の結晶性についても特に限定されず、非晶質半導体、結晶性を有する半導体(微結晶半導体、多結晶半導体、単結晶半導体、又は一部に結晶領域を有する半導体)のいずれを用いてもよい。結晶性を有する半導体を用いると、トランジスタ特性の劣化を抑制できるため好ましい。
【0277】
ここで、上記画素、駆動回路に設けられるトランジスタの他、後述するタッチセンサ等に用いられるトランジスタなどの半導体装置には、酸化物半導体を適用することが好ましい。特にシリコンよりもバンドギャップの広い酸化物半導体を適用することが好ましい。シリコンよりもバンドギャップの広い酸化物半導体を用いることで、トランジスタのオフ状態における電流を低減できる。
【0278】
上記酸化物半導体は、少なくともインジウム(In)又は亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。また、In-M-Zn系酸化物(MはAl、Ti、Ga、Ge、Y、Zr、Sn、La、CeまたはHf等の金属)で表記される酸化物を含む酸化物半導体であることがより好ましい。
【0279】
特に、半導体層として、複数の結晶部を有し、当該結晶部はc軸が半導体層の被形成面、または半導体層の上面に対し垂直に配向し、且つ隣接する結晶部間には粒界を有さない酸化物半導体膜を用いることが好ましい。
【0280】
半導体層としてこのような材料を用いることで、電気特性の変動が抑制され、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0281】
また、上述の半導体層を有するトランジスタはその低いオフ電流により、トランジスタを介して容量に蓄積した電荷を長期間に亘って保持することが可能である。このようなトランジスタを画素に適用することで、各表示領域に表示した画像の階調を維持しつつ、駆動回路を停止することも可能となる。その結果、極めて消費電力の低減された電子機器を実現できる。
【0282】
トランジスタの特性安定化等のため、下地膜を設けることが好ましい。下地膜としては、酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜などの無機絶縁膜を用い、単層で又は積層して作製することができる。下地膜はスパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(プラズマCVD法、熱CVD法、MOCVD(Metal Organic CVD)法など)、ALD(Atomic Layer Deposition)法、塗布法、印刷法等を用いて形成できる。なお、下地膜は、必要で無ければ設けなくてもよい。
【0283】
なお、FET623はソース線駆動回路部601に形成されるトランジスタの一つを示すものである。また、駆動回路は、種々のCMOS回路、PMOS回路もしくはNMOS回路で形成すれば良い。また、本実施の形態では、基板上に駆動回路を形成したドライバ一体型を示すが、必ずしもその必要はなく、駆動回路を基板上ではなく外部に形成することもできる。
【0284】
また、画素部602はスイッチング用FET611と、電流制御用FET612とそのドレインに電気的に接続された第1の電極613とを含む複数の画素により形成されているが、これに限定されず、3つ以上のFETと、容量素子とを組み合わせた画素部としてもよい。
【0285】
なお、第1の電極613の端部を覆って絶縁物614が形成されている。ここでは、ポジ型の感光性アクリル樹脂膜を用いることにより形成することができる。
【0286】
また、後に形成するEL層等の被覆性を良好なものとするため、絶縁物614の上端部または下端部に曲率を有する曲面が形成されるようにする。例えば、絶縁物614の材料としてポジ型の感光性アクリル樹脂を用いた場合、絶縁物614の上端部のみに曲率半径(0.2μm~3μm)を有する曲面を持たせることが好ましい。また、絶縁物614として、ネガ型の感光性樹脂、或いはポジ型の感光性樹脂のいずれも使用することができる。
【0287】
第1の電極613上には、EL層616、および第2の電極617がそれぞれ形成されている。ここでは、第1の電極613は陽極として機能する。陽極に用いることが可能な材料としては、仕事関数の大きい材料を用いることが望ましい。例えば、ITO膜、またはケイ素を含有したインジウム錫酸化物膜、2~20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム膜、窒化チタン膜、クロム膜、タングステン膜、Zn膜、Pt膜などの単層膜の他、銀を主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜との積層、窒化チタン膜とアルミニウムを主成分とする膜と窒化チタン膜との3層構造等を用いることができる。なお、積層構造とすると、配線としての抵抗も低く、良好なオーミックコンタクトがとれ、さらに陽極として機能させることができる。
【0288】
また、EL層616は、蒸着マスクを用いた蒸着法、インクジェット法、スピンコート法等の種々の方法によって形成される。EL層616は、実施の形態1および実施の形態3で説明したような構成を含んでいる。
【0289】
さらに、EL層616上に形成され、第2の電極617に用いる材料としては、仕事関数の小さい材料(Al、Mg、Li、Ca、またはこれらの合金、化合物(MgAg、MgIn、AlLi等)等)を用いることが好ましい。なお、EL層616で生じた光が第2の電極617を透過する場合には、第2の電極617として、膜厚を薄くした金属または合金の薄膜と、透明導電膜(ITO、2~20wt%の酸化亜鉛を含む酸化インジウム、ケイ素を含有したインジウム錫酸化物、酸化亜鉛(ZnO)等)との積層を用いるのが好ましい。
【0290】
なお、第1の電極613、EL層616、第2の電極617でもって、有機ELデバイスが形成されている。当該有機ELデバイスは実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスである。なお、画素部は複数の有機ELデバイスが形成されてなっているが、本実施の形態における発光装置では、実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスと、それ以外の構成を有する有機ELデバイスの両方が混在していても良い。この際、本発明の一態様の発光装置では、異なる波長の光を発する有機ELデバイス間で共通の正孔輸送層を用いることができることから、製造工程が簡便でコスト的に有利な発光装置とすることができる。
【0291】
さらにシール材605で封止基板604を素子基板610と貼り合わせることにより、素子基板610、封止基板604、およびシール材605で囲まれた空間607に有機ELデバイス618が備えられた構造になっている。なお、空間607には、充填材が充填されており、不活性気体(窒素、アルゴン等)が充填される場合の他、シール材で充填される場合もある。封止基板には凹部を形成し、そこに乾燥材を設けることで水分の影響による劣化を抑制することができ、好ましい構成である。
【0292】
なお、シール材605にはエポキシ樹脂、ガラスフリットを用いるのが好ましい。また、これらの材料はできるだけ水分、酸素を透過しない材料であることが望ましい。また、封止基板604に用いる材料としてガラス基板、石英基板の他、FRP(Fiber Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリル樹脂等からなるプラスチック基板を用いることができる。
【0293】
図11(A)及び
図11(B)には示されていないが、陰極上に保護膜を設けても良い。保護膜は有機樹脂膜、無機絶縁膜で形成すればよい。また、シール材605の露出した部分を覆うように、保護膜が形成されていても良い。また、保護膜は、一対の基板の表面及び側面、封止層、絶縁層等の露出した側面を覆って設けることができる。
【0294】
保護膜には、水などの不純物を透過しにくい材料を用いることができる。したがって、水などの不純物が外部から内部に拡散することを効果的に抑制することができる。
【0295】
保護膜を構成する材料としては、酸化物、窒化物、フッ化物、硫化物、三元化合物、金属またはポリマー等を用いることができ、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、ハフニウムシリケート、酸化ランタン、酸化珪素、チタン酸ストロンチウム、酸化タンタル、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化スズ、酸化イットリウム、酸化セリウム、酸化スカンジウム、酸化エルビウム、酸化バナジウムまたは酸化インジウム等を含む材料、窒化アルミニウム、窒化ハフニウム、窒化珪素、窒化タンタル、窒化チタン、窒化ニオブ、窒化モリブデン、窒化ジルコニウムまたは窒化ガリウム等を含む材料、チタンおよびアルミニウムを含む窒化物、チタンおよびアルミニウムを含む酸化物、アルミニウムおよび亜鉛を含む酸化物、マンガンおよび亜鉛を含む硫化物、セリウムおよびストロンチウムを含む硫化物、エルビウムおよびアルミニウムを含む酸化物、イットリウムおよびジルコニウムを含む酸化物等を含む材料を用いることができる。
【0296】
保護膜は、段差被覆性(ステップカバレッジ)の良好な成膜方法を用いて形成することが好ましい。このような手法の一つに、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法がある。ALD法を用いて形成することができる材料を、保護膜に用いることが好ましい。ALD法を用いることで緻密な、クラック、ピンホールなどの欠陥が低減された、または均一な厚さを備える保護膜を形成することができる。また、保護膜を形成する際に加工部材に与える損傷を、低減することができる。
【0297】
例えばALD法を用いて保護膜を形成することで、複雑な凹凸形状を有する表面、タッチパネルの上面、側面及び裏面にまで均一で欠陥の少ない保護膜を形成することができる。
【0298】
以上のようにして、実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスを用いて作製された発光装置を得ることができる。
【0299】
本実施の形態における発光装置は、実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスを用いているため、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。
【0300】
図13(A)、及び
図13(B)には着色層(カラーフィルタ)等を設けることによって色純度を向上させた発光装置の例を示す。
図13(A)には基板1001、下地絶縁膜1002、ゲート絶縁膜1003、ゲート電極1006、ゲート電極1007、ゲート電極1008、第1の層間絶縁膜1020、第2の層間絶縁膜1021、周辺部1042、画素部1040、駆動回路部1041、有機ELデバイスの第1の電極1024R、第1の電極1024G、第1の電極1024B、隔壁1025、EL層1028、有機ELデバイスの共通電極(陰極)1029、封止基板1031、シール材1032などが図示されている。
【0301】
また、
図13(A)では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)は透明な基材1033に設けている。また、ブラックマトリクス1035をさらに設けても良い。着色層及びブラックマトリクスが設けられた透明な基材1033は、位置合わせし、基板1001に固定する。なお、着色層、及びブラックマトリクス1035は、オーバーコート層1036で覆われている。
【0302】
図13(B)では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)をゲート絶縁膜1003と第1の層間絶縁膜1020との間に形成する例を示した。このように、着色層は基板1001と封止基板1031の間に設けられていても良い。
【0303】
また、以上に説明した発光装置では、FETが形成されている基板1001側に光を取り出す構造(ボトムエミッション型)の発光装置としたが、封止基板1031側に発光を取り出す構造(トップエミッション型)の発光装置としても良い。トップエミッション型の発光装置の断面図を
図12に示す。この場合、基板1001は光を通さない基板を用いることができる。FETと有機ELデバイスの陽極とを接続する接続電極を作製するまでは、ボトムエミッション型の発光装置と同様に形成する。その後、第3の層間絶縁膜1037を電極1022を覆って形成する。この絶縁膜は平坦化の役割を担っていても良い。第3の層間絶縁膜1037は第2の層間絶縁膜と同様の材料の他、他の公知の材料を用いて形成することができる。
【0304】
有機ELデバイスの第1の電極1024R、1024G、1024Bはここでは陽極とするが、陰極であっても構わない。また、
図12のようなトップエミッション型の発光装置である場合、陽極を反射電極とすることが好ましい。EL層1028の構成は、実施の形態4においてEL層103として説明したような構成とする。
【0305】
図12のようなトップエミッションの構造では着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)を設けた封止基板1031で封止を行うことができる。封止基板1031には画素と画素との間に位置するようにブラックマトリクス1035を設けても良い。着色層(赤色の着色層1034R、緑色の着色層1034G、青色の着色層1034B)、ブラックマトリクス1035はオーバーコート層(図示せず)によって覆われていても良い。なお封止基板1031は透光性を有する基板を用いることとする。
【0306】
トップエミッション型の発光装置では、マイクロキャビティ構造の適用が好適に行える。マイクロキャビティ構造を有する有機ELデバイスは、一方の電極を反射電極を含む電極、他方の電極を半透過・半反射電極とすることにより得られる。反射電極と半透過・半反射電極との間には少なくともEL層が存在し、少なくとも発光領域となる発光層が存在している。
【0307】
なお、反射電極は、可視光の反射率が40%乃至100%、好ましくは70%乃至100%であり、かつその抵抗率が1×10-2Ωcm以下の膜であるとする。また、半透過・半反射電極は、可視光の反射率が20%乃至80%、好ましくは40%乃至70%であり、かつその抵抗率が1×10-2Ωcm以下の膜であるとする。
【0308】
EL層に含まれる発光層から射出される発光は、反射電極と半透過・半反射電極とによって反射され、共振する。
【0309】
当該有機ELデバイスは、透明導電膜、上述の複合材料、キャリア輸送材料などの厚みを変えることで反射電極と半透過・半反射電極の間の光学的距離を変えることができる。これにより、反射電極と半透過・半反射電極との間において、共振する波長の光を強め、共振しない波長の光を減衰させることができる。
【0310】
なお、反射電極によって反射されて戻ってきた光(第1の反射光)は、発光層から半透過・半反射電極に直接入射する光(第1の入射光)と大きな干渉を起こすため、反射電極と発光層の光学的距離を(2n-1)λ/4(ただし、nは1以上の自然数、λは増幅したい発光の波長)に調節することが好ましい。当該光学的距離を調節することにより、第1の反射光と第1の入射光との位相を合わせ発光層からの発光をより増幅させることができる。
【0311】
なお、上記構成においてEL層は、複数の発光層を有する構造であっても、単一の発光層を有する構造であっても良く、例えば、上述のタンデム型有機ELデバイスの構成と組み合わせて、一つの有機ELデバイスに電荷発生層を挟んで複数のEL層を設け、それぞれのEL層に単数もしくは複数の発光層を形成する構成に適用してもよい。
【0312】
マイクロキャビティ構造を有することで、特定波長の正面方向の発光強度を強めることが可能となるため、低消費電力化を図ることができる。なお、赤、黄、緑、青の4色の副画素で映像を表示する発光装置の場合、黄色発光による輝度向上効果のうえ、全副画素において各色の波長に合わせたマイクロキャビティ構造を適用できるため良好な特性の発光装置とすることができる。
【0313】
本実施の形態における発光装置は、実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスを用いているため、良好な特性を備えた発光装置を得ることができる。以上、説明した発光装置は、マトリクス状に配置された多数の微小な有機ELデバイスをそれぞれ制御することが可能であるため、画像の表現を行う表示装置として好適に利用できる発光装置である。
【0314】
また、本実施の形態は他の実施の形態と自由に組み合わせることができる。
【0315】
(実施の形態6)
本実施の形態では、実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスをその一部に含む電子機器の例について説明する。
【0316】
上記有機ELデバイスを適用した電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、またはテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。これらの電子機器の具体例を以下に示す。
【0317】
図14(A)は、テレビジョン装置の一例を示している。テレビジョン装置は、筐体7101に表示部7103が組み込まれている。また、ここでは、スタンド7105により筐体7101を支持した構成を示している。表示部7103により、映像を表示することが可能であり、表示部7103は、実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスをマトリクス状に配列して構成されている。
【0318】
テレビジョン装置の操作は、筐体7101が備える操作スイッチ、別体のリモコン操作機7110により行うことができる。リモコン操作機7110が備える操作キー7109により、チャンネル、音量の操作を行うことができ、表示部7103に表示される映像を操作することができる。また、リモコン操作機7110に、当該リモコン操作機7110から出力する情報を表示する表示部7107を設ける構成としてもよい。なお、表示部7107にも、マトリクス状に配列した、実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスを適用することができる。
【0319】
なお、テレビジョン装置は、受信機、モデムなどを備えた構成とする。受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さらにモデムを介して有線または無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(送信者から受信者)または双方向(送信者と受信者の間、あるいは受信者間など)の情報通信を行うことも可能である。
【0320】
図14(B1)はコンピュータであり、本体7201、筐体7202、表示部7203、キーボード7204、外部接続ポート7205、ポインティングデバイス7206等を含む。なお、このコンピュータは、実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスをマトリクス状に配列して表示部7203に用いることにより作製される。
図14(B1)のコンピュータは、
図14(B2)のような形態であってもよい。
図14(B2)のコンピュータは、キーボード7204、ポインティングデバイス7206の代わりに表示部7210が設けられている。表示部7210はタッチパネル式となっており、表示部7210に表示された入力用の表示を指、専用のペンで操作することによって入力を行うことができる。また、表示部7210は入力用表示だけでなく、その他の画像を表示することも可能である。また表示部7203もタッチパネルであっても良い。二つの画面がヒンジで接続されていることによって、収納、運搬をする際に画面を傷つける、破損するなどのトラブルの発生も防止することができる。
【0321】
図14(C)は、携帯端末の一例を示している。携帯電話機は、筐体7401に組み込まれた表示部7402の他、操作ボタン7403、外部接続ポート7404、スピーカ7405、マイク7406などを備えている。なお、携帯電話機は、実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスをマトリクス状に配列して作製された表示部7402を有している。
【0322】
図14(C)に示す携帯端末は、表示部7402を指などで触れることで、情報を入力することができる構成とすることもできる。この場合、電話を掛ける、或いはメールを作成するなどの操作は、表示部7402を指などで触れることにより行うことができる。
【0323】
表示部7402の画面は主として3つのモードがある。第1は、画像の表示を主とする表示モードであり、第2は、文字等の情報の入力を主とする入力モードである。第3は表示モードと入力モードの2つのモードが混合した表示+入力モードである。
【0324】
例えば、電話を掛ける、或いはメールを作成する場合は、表示部7402を文字の入力を主とする文字入力モードとし、画面に表示させた文字の入力操作を行えばよい。この場合、表示部7402の画面のほとんどにキーボードまたは番号ボタンを表示させることが好ましい。
【0325】
また、携帯端末内部に、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサを有する検出装置を設けることで、携帯端末の向き(縦か横か)を判断して、表示部7402の画面表示を自動的に切り替えるようにすることができる。
【0326】
また、画面モードの切り替えは、表示部7402を触れること、又は筐体7401の操作ボタン7403の操作により行われる。また、表示部7402に表示される画像の種類によって切り替えるようにすることもできる。例えば、表示部に表示する画像信号が動画のデータであれば表示モード、テキストデータであれば入力モードに切り替える。
【0327】
また、入力モードにおいて、表示部7402の光センサで検出される信号を検知し、表示部7402のタッチ操作による入力が一定期間ない場合には、画面のモードを入力モードから表示モードに切り替えるように制御してもよい。
【0328】
表示部7402は、イメージセンサとして機能させることもできる。例えば、表示部7402に掌、指で触れ、掌紋、指紋等を撮像することで、本人認証を行うことができる。また、表示部に近赤外光を発光するバックライトまたは近赤外光を発光するセンシング用光源を用いれば、指静脈、掌静脈などを撮像することもできる。
【0329】
以上の様に実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスを備えた発光装置の適用範囲は極めて広く、この発光装置をあらゆる分野の電子機器に適用することが可能である。
【0330】
図15(A)は、掃除ロボットの一例を示す模式図である。
【0331】
掃除ロボット5100は、上面に配置されたディスプレイ5101、側面に配置された複数のカメラ5102、ブラシ5103、操作ボタン5104を有する。また図示されていないが、掃除ロボット5100の下面には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット5100は、その他に赤外線センサ、超音波センサ、加速度センサ、ピエゾセンサ、光センサ、ジャイロセンサなどの各種センサを備えている。また、掃除ロボット5100は、無線による通信手段を備えている。
【0332】
掃除ロボット5100は自走し、ゴミ5120を検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
【0333】
また、掃除ロボット5100はカメラ5102が撮影した画像を解析し、壁、家具または段差などの障害物の有無を判断することができる。また、画像解析により、配線などブラシ5103に絡まりそうな物体を検知した場合は、ブラシ5103の回転を止めることができる。
【0334】
ディスプレイ5101には、バッテリーの残量、吸引したゴミの量などを表示することができる。掃除ロボット5100が走行した経路をディスプレイ5101に表示させてもよい。また、ディスプレイ5101をタッチパネルとし、操作ボタン5104をディスプレイ5101に設けてもよい。
【0335】
掃除ロボット5100は、スマートフォンなどの携帯電子機器5140と通信することができる。カメラ5102が撮影した画像は、携帯電子機器5140に表示させることができる。そのため、掃除ロボット5100の持ち主は、外出先からでも、部屋の様子を知ることができる。また、ディスプレイ5101の表示をスマートフォンなどの携帯電子機器で確認することもできる。
【0336】
本発明の一態様の発光装置はディスプレイ5101に用いることができる。
【0337】
図15(B)に示すロボット2100は、演算装置2110、照度センサ2101、マイクロフォン2102、上部カメラ2103、スピーカ2104、ディスプレイ2105、下部カメラ2106および障害物センサ2107、移動機構2108を備える。
【0338】
マイクロフォン2102は、使用者の話し声及び環境音等を検知する機能を有する。また、スピーカ2104は、音声を発する機能を有する。ロボット2100は、マイクロフォン2102およびスピーカ2104を用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
【0339】
ディスプレイ2105は、種々の情報の表示を行う機能を有する。ロボット2100は、使用者の望みの情報をディスプレイ2105に表示することが可能である。ディスプレイ2105は、タッチパネルを搭載していてもよい。また、ディスプレイ2105は取り外しのできる情報端末であっても良く、ロボット2100の定位置に設置することで、充電およびデータの受け渡しを可能とする。
【0340】
上部カメラ2103および下部カメラ2106は、ロボット2100の周囲を撮像する機能を有する。また、障害物センサ2107は、移動機構2108を用いてロボット2100が前進する際の進行方向における障害物の有無を察知することができる。ロボット2100は、上部カメラ2103、下部カメラ2106および障害物センサ2107を用いて、周囲の環境を認識し、安全に移動することが可能である。本発明の一態様の発光装置はディスプレイ2105に用いることができる。
【0341】
図15(C)はゴーグル型ディスプレイの一例を表す図である。ゴーグル型ディスプレイは、例えば、筐体5000、表示部5001、スピーカ5003、LEDランプ5004、操作キー(電源スイッチ、又は操作スイッチを含む)、接続端子5006、センサ5007(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、におい、又は赤外線を測定する機能を含むもの)、マイクロフォン5008、第2の表示部5002、支持部5012、イヤホン5013等を有する。
【0342】
本発明の一態様の発光装置は表示部5001および第2の表示部5002に用いることができる。
【0343】
実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスは、自動車のフロントガラス、ダッシュボードにも搭載することができる。
図16に実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスを自動車のフロントガラス、ダッシュボードに用いる一態様を示す。表示領域5200乃至表示領域5203は実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスを用いて設けられた表示領域である。
【0344】
表示領域5200と表示領域5201は自動車のフロントガラスに設けられた実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスを搭載した表示装置である。実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスは、陽極と陰極の両方を、透光性を有する電極で作製することによって、反対側が透けて見える、いわゆるシースルー状態の表示装置とすることができる。シースルー状態の表示であれば、自動車のフロントガラスに設置したとしても、視界の妨げになることなく設置することができる。なお、駆動のためのトランジスタなどを設ける場合には、有機化合物材料による有機トランジスタ、酸化物半導体を用いたトランジスタなど、透光性を有するトランジスタを用いると良い。
【0345】
表示領域5202はピラー部分に設けられた実施の形態2および実施の形態3に記載の有機ELデバイスの作製方法を用いて作製した有機ELデバイスを搭載した表示装置である。表示領域5202には、車体に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界を補完することができる。また、同様に、ダッシュボード部分に設けられた表示領域5203は車体によって遮られた視界を、自動車の外側に設けられた撮像手段からの映像を映し出すことによって、死角を補い、安全性を高めることができる。見えない部分を補完するように映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。
【0346】
表示領域5203はまたナビゲーション情報、速度、回転数、エアコンの設定など、その他様々な情報を提供することができる。表示は使用者の好みに合わせて適宜その表示項目、レイアウトを変更することができる。なお、これら情報は表示領域5200乃至表示領域5202にも設けることができる。また、表示領域5200乃至表示領域5203は照明装置として用いることも可能である。
【0347】
また、
図17(A)、及び
図17(B)に、折りたたみ可能な携帯情報端末5150を示す。折りたたみ可能な携帯情報端末5150は筐体5151、表示領域5152および屈曲部5153を有している。
図17(A)に展開した状態の携帯情報端末5150を示す。
図17(B)に折りたたんだ状態の携帯情報端末を示す。携帯情報端末5150は、大きな表示領域5152を有するにも関わらず、折りたためばコンパクトで可搬性に優れる。
【0348】
表示領域5152は屈曲部5153により半分に折りたたむことができる。屈曲部5153は伸縮可能な部材と複数の支持部材とで構成されており、折りたたむ場合は、伸縮可能な部材が伸び、屈曲部5153は2mm以上、好ましくは3mm以上の曲率半径を有して折りたたまれる。
【0349】
なお、表示領域5152は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。本発明の一態様の発光装置を表示領域5152に用いることができる。
【0350】
また、
図18(A)乃至
図18(C)に、折りたたみ可能な携帯情報端末9310を示す。
図18(A)に展開した状態の携帯情報端末9310を示す。
図18(B)に展開した状態又は折りたたんだ状態の一方から他方に変化する途中の状態の携帯情報端末9310を示す。
図18(C)に折りたたんだ状態の携帯情報端末9310を示す。携帯情報端末9310は、折りたたんだ状態では可搬性に優れ、展開した状態では、継ぎ目のない広い表示領域により表示の一覧性に優れる。
【0351】
表示パネル9311はヒンジ9313によって連結された3つの筐体9315に支持されている。なお、表示パネル9311は、タッチセンサ(入力装置)を搭載したタッチパネル(入出力装置)であってもよい。また、表示パネル9311は、ヒンジ9313を介して2つの筐体9315間を屈曲させることにより、携帯情報端末9310を展開した状態から折りたたんだ状態に可逆的に変形させることができる。本発明の一態様の発光装置を表示パネル9311に用いることができる。
【0352】
本実施の形態で例示した構成例、及びそれらに対応する図面等は、少なくともその一部を他の構成例、または図面等と適宜組み合わせることができる。
【0353】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【実施例0354】
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイスに用いることができる有機化合物を含む積層構造を形成し、その積層構造を観察した。また、当該有機化合物を含む積層構造のサンプルとして、サンプル1A乃至サンプル1Dを作製した。
【0355】
サンプル1A乃至サンプル1Dに用いた有機化合物の構造式を以下に示す。
【0356】
【0357】
<各サンプルの作成方法>
サンプル1A、およびサンプル1Cは、シリコン基板上に、面積が9cm2(3cm×3cm)である膜状の酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)、第1の有機化合物層、を順に形成した積層構造である。また、サンプル1B、およびサンプル1Dは、サンプル1A、またはサンプル1Cの第1の有機化合物層上に第2の有機化合物層を設けた積層構造を有する。
【0358】
<サンプル1A>
まず、シリコン基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により、10nmの膜厚で成膜した。次に、第1の有機化合物層として、2,9-ジ(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBPhen)を膜厚20nmとなるように蒸着した後、窒素雰囲気に置換した後、真空下にて、基板温度80℃で1時間の加熱処理を行った。
【0359】
<サンプル1B>
まず、シリコン基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により、10nmの膜厚で成膜した。次に、第1の有機化合物層として、2,9-ジ(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBPhen)を膜厚20nmとなるように蒸着した。
【0360】
続いて、第2の有機化合物層として、1,1’-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2,7-ジイル)ビス(1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン)(略称:2,7hpp2SF)を膜厚20nmとなるように蒸着した後、窒素雰囲気に置換した後、真空下にて、基板温度80℃で1時間の加熱処理を行った。
【0361】
<サンプル1C>
まず、シリコン基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により、10nmの膜厚で成膜した。次に、第1の有機化合物層として、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)を膜厚20nmとなるように蒸着した後、ALD法により、基板温度を80℃となるように設定し、酸化アルミニウム(AlOx)を30nm成膜した。
【0362】
<サンプル1D>
まず、シリコン基板上に、酸化珪素を含むインジウム錫酸化物(ITSO)をスパッタリング法により、10nmの膜厚で成膜した。次に、第1の有機化合物層として、2,2’-(1,3-フェニレン)ビス(9-フェニル-1,10-フェナントロリン)(略称:mPPhen2P)を膜厚20nmとなるように蒸着した。
【0363】
続いて、第2の有機化合物層として、1,1’-(9,9’-スピロビ[9H-フルオレン]-2,7-ジイル)ビス(1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロ-2H-ピリミド[1,2-a]ピリミジン)(略称:2,7hpp2SF)を膜厚20nmとなるように蒸着した後、ALD法により、基板温度を80℃となるように設定し、酸化アルミニウム(AlOx)を30nm成膜した。
【0364】
下表に各サンプルにおける有機化合物層の積層構造に用いた材料を示した。
【0365】
【0366】
以上により、サンプル1A乃至サンプル1Dを作製した。
【0367】
<サンプルの光顕観察>
上記サンプル1A乃至サンプル1Dを、光学顕微鏡により観察した。それぞれの結果を
図19に示す。
【0368】
図19(A)に示すように、サンプル1Aでは、2,9-ジ(ナフタレン-2-イル)-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン(略称:NBPhen)が由来であるひも状の不良が生じていた。一方、
図19(B)に示すように、サンプル1Bでは、不良は見られなかった。
【0369】
これは、NBPhenの耐熱性が低いため、加熱処理により、サンプル1Aに不良が生じたと考えられる。一方、サンプル1Bでは、NBPhen上に形成した2,7hpp2SFが保護膜として機能したため、加熱による不良が生じなかったと考えられる。
【0370】
また、
図19(C)および
図19(D)に示すように、サンプル1C、およびサンプル1Dでも不良は観察されなかった。これは、mPPhen2Pは、耐熱性があるため、加熱処理およびALD法での酸化アルミニウムの成膜による不良を生じなかった。また、サンプル1Dより、2,7hpp2SFを上層に形成したとしても、ALD法を用いた酸化アルミニウムの成膜によって下の構造体に影響を及ぼさないことが分かった。
【0371】
以上のことから、本発明の一態様を用いることで、下層構造の耐熱性を向上させることが分かった。また、従来と同じ工程を使用することが可能であるとわかった。
本実施例では、本発明の一態様の発光デバイスに用いることができる有機化合物を含む積層構造を形成し、その積層構造を観察した。また、当該有機化合物を含む積層構造のサンプルとして、サンプル2A及びサンプル2Bを作製した。
このように本発明の有機化合物は、水または水を溶媒とする液体によって容易に除去することが可能である。従って、本発明の一態様を用いることで、加熱工程での下層構造へのダメージを抑制することができ、加熱工程が終了後に速やかに除去することが可能である。また、除去の際に下層へのダメージが少なくすることができる。これにより、作製するデバイスの構成を変えることなく、工程中の耐熱温度を上昇させることが可能となるため、本発明の一態様は、応用範囲が広く、有用な発明であることがわかった。