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特開2023-164382スープ用茹湯調製用組成物、ガラ煮味インスタントスープ麺食品及びガラ煮味インスタントスープ麺の調理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164382
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】スープ用茹湯調製用組成物、ガラ煮味インスタントスープ麺食品及びガラ煮味インスタントスープ麺の調理方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 23/00 20160101AFI20231102BHJP
   A23L 7/113 20160101ALI20231102BHJP
   A23L 27/00 20160101ALI20231102BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A23L23/00
A23L7/113
A23L27/00 D
A23D9/00 514
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023073302
(22)【出願日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2022075202
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】595123760
【氏名又は名称】一番食品株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】有吉 崇
【テーマコード(参考)】
4B026
4B036
4B046
4B047
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DG04
4B026DG05
4B026DG12
4B026DG13
4B026DK01
4B026DK03
4B026DK05
4B026DL01
4B026DL03
4B026DL04
4B026DL05
4B026DL06
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP06
4B026DX01
4B036LC01
4B036LE02
4B036LF01
4B036LF07
4B036LG06
4B036LH04
4B036LH08
4B036LH10
4B036LH11
4B036LH13
4B036LH15
4B036LH18
4B036LH26
4B036LH27
4B036LH29
4B036LH32
4B036LH33
4B036LH44
4B036LK02
4B036LK03
4B036LP01
4B046LA05
4B046LB03
4B046LB06
4B046LC17
4B046LE15
4B046LG02
4B046LG10
4B046LG11
4B046LG13
4B046LG14
4B046LG15
4B046LG18
4B046LG20
4B046LG23
4B046LG33
4B046LG35
4B046LG36
4B046LG37
4B046LG51
4B046LP42
4B047LB09
4B047LE05
4B047LF02
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4B047LG03
4B047LG10
4B047LG19
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4B047LG40
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4B047LG45
4B047LG46
4B047LG56
4B047LG60
4B047LP02
4B047LP05
4B047LP14
(57)【要約】
【課題】ガラ煮味のインスタントスープ麺食品の調理方法であって、煮込み法で得られたガラ煮スープで調製したスープ麺に近い食味を実現できる調理方法に使用するスープ用茹湯調製用組成物を提供する。
【解決手段】麺を茹でる茹湯でありつつ麺を茹でた後に調味料を添加してガラ煮味インスタントスープ麺のスープとなるスープ用茹湯を調製するための組成物であって、調製された前記スープ用茹湯中に、0.390~5.000w/w%の油と、0.001~0.400w/w%の乳化剤と、0.001~0.800w/w%の増粘多糖類と、が前記スープ用茹湯調製用組成物に由来して含まれる量の前記油と乳化剤と増粘多糖類とを含有することとした。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
麺を茹でる茹湯でありつつ麺を茹でた後に調味料を添加してガラ煮味インスタントスープ麺のスープとなるスープ用茹湯を調製するための組成物であって、
調製された前記スープ用茹湯中に、
0.390~5.000w/w%の油と、
0.001~0.400w/w%の乳化剤と、
0.001~0.800w/w%の増粘多糖類と、
が前記スープ用茹湯調製用組成物に由来して含まれる量の前記油と乳化剤と増粘多糖類とを含有することを特徴とするスープ用茹湯調製用組成物。
【請求項2】
前記油の0.05~10w/w%に相当する前記乳化剤が配合されていることを特徴とする請求項1に記載のスープ用茹湯調製用組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスープ用茹湯調製用組成物と、
麺と、
同麺を茹でた後のスープ用茹湯に添加してガラ煮味スープを調製するための調味剤と、を備えたガラ煮味インスタントスープ麺食品。
【請求項4】
水または湯中に請求項1又は請求項2に記載のスープ用茹湯調製用組成物を添加してスープ用茹湯を調製し、これに麺を投入して沸騰を伴う状態で麺茹でを行い、スープ用茹湯にガラ煮味スープを調製するための調味剤を添加してガラ煮味インスタントスープ麺とするガラ煮味インスタントスープ麺食品の調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スープ用茹湯調製用組成物、ガラ煮味インスタントスープ麺食品及びガラ煮味インスタントスープ麺の調理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばラーメンの如くスープの中に麺が投入された麺料理(以下、スープ麺ともいう。)は、老若男女問わず広く喫食されている。
【0003】
中でも、豚骨ラーメンは根強い人気を誇るラーメンの一つであり、その味わいはコク深い豚骨スープにより特徴付けられる。
【0004】
豚骨ラーメンに用いられる豚骨スープは、例えば一般的な街中のラーメン店であれば、店舗の厨房にて寸胴鍋に豚骨やその他の具材を入れ、強火で長時間煮込みつつ白濁した抽出液を得ることにより調製される(例えば、特許文献1参照。)。なお、豚骨をはじめ、その他牛骨や鶏ガラなどの「ガラ」から上述の如くスープを得る方法を煮込み法ともいう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9-248161号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、みやげ物屋などの小売店では、インスタント食品としても豚骨ラーメンが広く販売されている。インスタント食品としては、例えば、いわゆるカップ麺や袋麺など様々な形態にて色々な味のものが提供されている。
【0007】
しかしながら、インスタント食品として提供される豚骨ラーメンは、街中の店舗にて提供される豚骨ラーメンの味には今ひとつ及ばないのが実情である。
【0008】
この点、本発明者らが鋭意研究を行ったところ、両者の食味の違いは喫食時のスープの状態が大きく影響しているものと考えられた。
【0009】
本発明は係る事情に鑑みて成されたものであって、豚骨スープや鶏ガラスープ、牛骨スープなど、ガラ等を煮込んで得るスープ(ガラ煮スープ)や、これに近い味わいを表現したスープなど、ガラ煮味のインスタントスープ麺食品の調理方法であって、煮込み法で得られたガラ煮スープで調製したスープ麺に近い食味を実現できる調理方法に使用するスープ用茹湯調製用組成物を提供する。
【0010】
また本願では、同スープ用茹湯調製用組成物を備えたガラ煮味インスタントスープ麺食品や、ガラ煮味インスタントスープ麺食品の調理方法についても提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、本発明に係るスープ用茹湯調製用組成物では、(1)麺を茹でる茹湯でありつつ麺を茹でた後に調味料を添加してガラ煮味インスタントスープ麺のスープとなるスープ用茹湯を調製するための組成物であって、調製された前記スープ用茹湯中に、0.390~5.000w/w%の油と、0.001~0.400w/w%の乳化剤と、0.001~0.800w/w%の増粘多糖類と、が前記スープ用茹湯調製用組成物に由来して含まれる量の前記油と乳化剤と増粘多糖類とを含有することとした。
【0012】
また本発明に係るスープ用茹湯調製用組成物では、(2)前記油の0.05~10w/w%に相当する前記乳化剤が配合されていることにも特徴を有する。
【0013】
また、本発明に係るガラ煮味インスタントスープ麺食品では、(3)上記(1)又は(2)に記載のスープ用茹湯調製用組成物と、麺と、同麺を茹でた後のスープ用茹湯に添加してガラ煮味スープを調製するための調味剤と、を備えることとした。
【0014】
また、本発明に係るガラ煮味インスタントスープ麺食品の調理方法では、(4)水または湯中に上記(1)又は(2)に記載のスープ用茹湯調製用組成物を添加してスープ用茹湯を調製し、これに麺を投入して沸騰を伴う状態で麺茹でを行い、スープ用茹湯にガラ煮味スープを調製するための調味剤を添加してガラ煮味インスタントスープ麺とすることとした。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るスープ用茹湯調製用組成物によれば、麺を茹でる茹湯でありつつ麺を茹でた後に調味料を添加してガラ煮味インスタントスープ麺のスープとなるスープ用茹湯を調製するための組成物であって、調製された前記スープ用茹湯中に、0.390~5.000w/w%の油と、0.001~0.400w/w%の乳化剤と、0.001~0.800w/w%の増粘多糖類と、が前記スープ用茹湯調製用組成物に由来して含まれる量の前記油と乳化剤と増粘多糖類とを含有することとしたため、ガラ煮味のインスタントスープ麺食品の調理に際し、煮込み法で得られたガラ煮スープで調製したスープ麺に近い食味を実現できる調理方法に使用するスープ用茹湯調製用組成物を提供することができる。
【0016】
また、前記油の0.05~10w/w%に相当する前記乳化剤が配合されていることとすれば、煮込み法で得られたガラ煮スープで調製したスープ麺に近い食味をより堅実に実現できる調理方法に使用するスープ用茹湯調製用組成物を提供することができる。
【0017】
また本発明に係るガラ煮味インスタントスープ麺食品によれば、スープ用茹湯調製用組成物と、麺と、同麺を茹でた後のスープ用茹湯に添加してガラ煮味スープを調製するための調味剤と、を備えることとしたため、煮込み法で得られたガラ煮スープで調製したスープ麺に近い食味のガラ煮味インスタントスープ麺食品を提供することができる。
【0018】
また、本発明に係るガラ煮味インスタントスープ麺食品の調理方法によれば、水または湯中にスープ用茹湯調製用組成物を添加してスープ用茹湯を調製し、これに麺を投入して沸騰を伴う状態で麺茹でを行い、スープ用茹湯にガラ煮味スープを調製するための調味剤を添加してガラ煮味インスタントスープ麺とすることとしたため、煮込み法で得られたガラ煮スープで調製したスープ麺に近い食味を実現できるガラ煮味のインスタントスープ麺食品の調理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、スープ用茹湯調製用組成物に関するものであり、具体的には、麺を茹でる茹湯でありつつ麺を茹でた後に調味料を添加してガラ煮味インスタントスープ麺のスープとなるスープ用茹湯を調製するための組成物を提供するものである。
【0020】
ここでガラとは、肉を取った後(多少の肉や筋が残ったものも含む)の動物の骨を意味するものであり、代表的には豚骨や鶏ガラ、牛骨、魚のアラなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0021】
また、ガラ煮スープとは、上述のガラを煮込むことで調製したスープであり、例えば豚骨スープや鶏ガラスープ、牛骨スープ、魚のアラのスープなどを例示することができる。
【0022】
また、ガラ煮味スープとは、ガラ煮スープの他に、ガラを煮込まずに何らかの方法でガラ煮の風味を再現したスープ、例えば豚骨風味のスープや鶏ガラ風スープ、牛骨風スープ、魚のアラ風スープの如きスープも含む概念である。
【0023】
また、インスタントスープ麺とは、熱湯をかけたり鍋で煮たり等することによりインスタントスープ麺食品が喫食可能な状態(料理の状態)となったものである。インスタントスープ麺食品は、インスタントスープ麺の調理前の状態であって、例えば商品パッケージ内に調味剤(スープの素)を同梱するなどして、スープも同時に調理できるものであり、いわゆる即席麺を含む概念である。
【0024】
本実施形態に係るスープ用茹湯調製用組成物は、麺茹でを伴うガラ煮味インスタントスープ麺の調製時に、同スープ麺のガラ煮味スープとして麺茹でに用いた茹湯を利用することを前提とし、予め同組成物が添加された茹湯としておくことで、煮込み法で得られたガラ煮スープで調製されたスープ麺に近い食味を実現するための組成物である。なお、スープ用茹湯とは、スープ麺のガラ煮味スープとして利用される茹湯である。
【0025】
スープ用茹湯調製用組成物には、油と乳化剤と増粘多糖類とが含まれている。スープ用茹湯調製用組成物中における油の構成割合を1とした場合、乳化剤は0.0002~1.1程度が好ましく、油の0.05~10w/w%に相当する量とするのが更に好ましい。また、スープ用茹湯調製用組成物中における油の構成割合を1とした場合、増粘多糖類は0.0002~2.1程度が好ましい。
【0026】
また、スープ用茹湯調製用組成物を構成する油や乳化剤、増粘多糖類の量は、スープ用茹湯の調製量や目標とする食味に応じた量とすることができる。例えば、ガラ煮味インスタントスープ麺食品を構成する1人前あたりの麺の量が多ければ、茹湯の量を多くするのが一般的であり、これに応じてスープ用茹湯調製用組成物の量も多くなる。また例えば、煮込み法で得られたガラ煮スープと比較して、それほどまでに再現性が求められない場合には、他の素材に由来する食味バランスを考慮してスープ用茹湯調製用組成物のスープ用茹湯中への添加割合を減らすよう設計することも可能である。
【0027】
敢えてスープ用茹湯調製用組成物を構成する油や乳化剤、増粘多糖類の量を規定するならば、例えば、調製された麺茹でに供する前のスープ用茹湯中に、0.390~5.000w/w%の油と、0.001~0.400w/w%の乳化剤と、0.001~0.800w/w%の増粘多糖類と、がスープ用茹湯調製用組成物に由来して含まれる量の油と乳化剤と増粘多糖類とを含有するよう構成することができる。
【0028】
スープ用茹湯調製用組成物を構成する油は、麺茹で時や喫食時においておよそ液状を呈する食用の油脂であれば特に限定されるものではなく、例えば豚脂、牛脂、鶏脂などの動物性油脂や菜種油や大豆油などの植物性油脂を好適に用いることができ、更にはこれら複数種を混合して用いることも可能である。
【0029】
また乳化剤は、食品に使用可能であることを前提とし、HLBが3~16程度のもの、好ましくは3~13程度、更に好ましくは7~9程度のものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グリセリン脂肪酸エステルやショ糖脂肪酸エステル、レシチンなどを使用することができ、更にはこれら複数種を混合した混合乳化剤を用いることも可能である。なお、乳化剤として混合乳化剤を用いる場合は、その混合乳化剤を構成する各乳化剤(構成乳化剤ともいう。)毎のHLB値とその配合重量割合(%)の積の総和、すなわち、混合乳化剤としてのHLB値が7~9程度となるのが望ましい。構成乳化剤は、HLBが3~16程度であればよく、それ自体が混合乳化剤であっても良い。
【0030】
また、増粘多糖類は食品に使用可能であれば特に限定されるものではなく、例えばペクチンや、キサンタンガム、グァーガムなどを使用することができ、更にはこれら複数種を混合して用いることも可能である。これら増粘多糖類の使用割合は特に限定されるものではないが、店舗にて提供されるラーメンの如き煮込み法で得られたガラ煮スープで調製したスープ麺を可及的忠実に再現するには、キサンタンガム:グァーガム=1:1~3の割合にて、前述の茹で湯中での終濃度で使用するのも一案である。
【0031】
本実施形態に係るスープ用茹湯調製用組成物によれば、このような構成を備えることにより、ガラ煮味のインスタントスープ麺食品の調理に際し、煮込み法で得られたガラ煮スープで調製したスープ麺に近い食味を実現できる調理方法に使用するスープ用茹湯調製用組成物を提供することができる。
【0032】
また、本願は本実施形態に係るスープ用茹湯調製用組成物を備えたガラ煮味インスタントスープ麺食品についても提供する。すなわち、本実施形態に係るガラ煮味インスタントスープ麺食品は、上述のスープ用茹湯調製用組成物と、麺と、同麺を茹でた後のスープ用茹湯に添加してガラ煮味スープを調製するための調味剤と、を備える。
【0033】
また、本実施形態に係るガラ煮味インスタントスープ麺食品は、調理時に沸騰を伴った麺茹でを行うものである。昨今のスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどで提供されているインスタントスープ麺食品に照らせば、鍋で麺茹でを行う、いわゆる袋麺タイプや棒状ラーメンタイプのインスタントスープ麺食品に近いイメージであるが、カップ麺タイプのインスタントスープ麺食品に関しても鍋で麺茹でして調理することは不可能ではないため、除外されない。
【0034】
ガラ煮味インスタントスープ麺食品を構成する麺は、沸騰を伴って麺茹でを行うことにより喫食可能となる麺であれば良く、例えば熱湯で喫食可能としたり、沸騰させずに火にかけて喫食可能となるなど、沸騰を伴わない調理によっても喫食可能な状態にできるものであっても良い。麺は、沸騰を伴う所定時間の麺茹でによっては伸びてしまわないような麺であるのが望ましい。
【0035】
調味剤は、スープ用茹湯調製用組成物が添加され麺茹でに使用された後のスープ用茹湯に添加してガラ煮味スープを調製するための剤である。調味剤は粉状であっても良いし、液状やペースト状であっても良い。また調味剤が呈する味は、前述の如く豚骨スープ味や鶏ガラスープ味、牛骨スープ味の他、豚骨スープの味が種々の調味料等によって再現された豚骨スープ風味などであってもよい。
【0036】
特に、宗教上の関係で畜肉等を口にすることができない場合でも、本実施形態に係るスープ用茹湯調製用組成物は、煮込み法で得たガラ煮スープと同様の口当たりを再現することができ、所望する風味の調味剤を採用することで、本格的なガラ煮スープ麺に近いガラ煮味インスタントスープ麺を実現することができる。
【0037】
また、本願は本実施形態に係るガラ煮味インスタントスープ麺食品の調理方法についても提供する。すなわち、本実施形態に係る調理方法は、水または湯中にスープ用茹湯調製用組成物を添加してスープ用茹湯を調製し、これに麺を投入して沸騰を伴う状態で麺茹でを行い、スープ用茹湯にガラ煮味スープを調製するための調味剤を添加してガラ煮味インスタントスープ麺とするものである。
【0038】
茹で時間は、スープ用茹湯調製用組成物由来の成分が沸騰水中にて分散しつつガラ煮スープに似た舌触りやコク感を生起するために必要な時間であり、少なくとも30秒以上、好ましくは1分以上であるのが好ましい。一方、煮込み法にてスープを得る場合と同様に茹で時間の上限は特に限定されるものではないが、麺の適切なゆで加減(のび加減)に応じて調節する必要があり、また、手早く喫食される即席麺の性質上、例えば1~10分、より好ましくは2~5分程度が妥当である。なお、本明細書に沸騰は必ずしも100℃程度を維持している必要はなく、また、吹きこぼれの観点からも家庭や店舗等においてこのような調理は困難なのが一般的である。本明細書における沸騰は、茹湯全体が沸騰している場合を含むのは勿論のこと、茹湯全体が麺茹でに適した熱湯状態であって、茹湯の一部、例えば直火と接する鍋底の一部から気泡が上っており茹湯が上下循環している状態、茹湯が概ね95℃以上程度の状態も含んでいると解すべきである。麺茹で中は必要に応じて差し水が成されても良いが、温度低下やスープ濃度の関係上、火加減で調節するのが好ましい。
【0039】
このような方法にて調理を行うことにより、煮込み法で得られたガラ煮スープで調製したスープ麺に近い食味を実現できるガラ煮味のインスタントスープ麺食品の調理方法を提供することができる。
【0040】
以下、本実施形態に係るスープ用茹湯調製用組成物やガラ煮味インスタントスープ麺食品、ガラ煮味インスタントスープ麺の調理方法について更に詳説する。
【0041】
〔1.スープ用茹湯調製用組成物の製造〕
まず、本実施形態に係るスープ用茹湯調製用組成物の製造を行った。ここでは、ガラ煮味インスタントスープ麺食品である豚骨風味の即席棒状ラーメンに同封されるスープ用茹湯調製用組成物を製造した。なお、豚骨風味の即席棒状ラーメンは、標準調理工程として以下のステップを経るものである。
(1)1人前あたり400ml(400g)の水を鍋に入れる。
(2)鍋を火にかけお湯が沸騰したら、人数分のスープ用茹湯調製用組成物を添加してスープ用茹湯を調製する。
(3)スープ用茹湯に人数分の麺を投入し、2分30秒茹でる。
(4)スープ用茹湯に人数分の調味剤を添加してガラ煮味スープを調製する。
【0042】
ここでは、400mlの茹湯に対し8gのスープ用茹湯調製用組成物を添加して、麺茹で前のスープ用茹湯中にてスープ用茹湯調製用組成物濃度を約1.96w/w%とするためのスープ用茹湯調製用組成物を、油や乳化剤(本実施形態ではHLBが3~16、好ましくは3~13程度、更に好ましくは7~9程度の乳化剤)、増粘多糖類(本実施形態ではキサンタンガム:グァーガム=1:1~3)の量を違えて2種類製造した。
【0043】
まず1種類目は、油として5.968重量部の食用菜種油及び1.600重量部の香味油(ニンニク等の香味素材で香り付けされた菜種油)と、0.384重量部の乳化剤と、0.048重量部の増粘多糖類とを計量した。
【0044】
次に、食用菜種油を68~75℃に加熱し、乳化剤及び増粘多糖類を添加して満遍なく分散させ、更に香味油を添加して撹拌しながら30~40℃まで冷却した。
【0045】
そして、調合した油剤を8g(1人前)ずつプラスチックフィルム製の小袋に充填することで、豚骨風味の即席ラーメンに同封されるスープ用茹湯調製用組成物を製造した。この1種類目のスープ用茹湯調製用組成物は、以下においてスープ用茹湯調製用組成物F1という。
【0046】
2種類目は、スープ用茹湯調製用組成物F1と同様の製造過程によるものであるが、油として6.288重量部の食用菜種油及び1.600重量部の香味油(ニンニク等の香味素材で香り付けされた菜種油)と、0.04重量部の乳化剤と、0.072重量部の増粘多糖類とを使用し、豚骨風味の即席ラーメンに同封されるスープ用茹湯調製用組成物F2を製造した。
【0047】
〔2.ガラ煮味インスタントスープ麺食品の製造〕
次に、ガラ煮味インスタントスープ麺食品として、豚骨風味の即席棒状ラーメンの製造を行った。上述の〔1.スープ用茹湯調製用組成物の製造〕にて製造した二人前分のスープ用茹湯調製用組成物(スープ用茹湯調製用組成物F1又はスープ用茹湯調製用組成物F2)と、一人前を一把にまとめた二人前分の棒状の麺と、豚骨など豚に由来する原料を用いることなく豚骨風味を再現した二人前分の調味剤(一人前ずつ小袋充填されたもの)とを箱状のパッケージ内に収容することで、二人前の豚骨風味ラーメンを調理可能な豚骨風味の即席棒状ラーメンを製造した。
【0048】
なお、街中のラーメン店で提供される豚骨ラーメンも各店舗それぞれ味が異なるように、上述した調味剤もまた、豚骨など豚に由来する原料を用いることなく豚骨風味が再現されるような調味剤であれば、その味は限定されるものではない。
【0049】
ただ敢えて参考までに示すならば、本項にて製造した調味剤は動物性原料を使用しない(不使用の)調味剤であって、6.72~4.48重量部の植物性油と、4.32~2.88重量部のたん白加水分解物と、4.08~2.72重量部の砂糖と、3.696~2.464重量部の豆乳と、3.648~2.432重量部の食塩と、2.736~1.824重量部のしょうゆと、2.544~1.696重量部のごまと、2.16~1.44重量部の酵母エキスと、1.68~1.12重量部の香味食用油と、にんにく、大豆、たまねぎ、昆布、野菜、しいたけ、こしょう、生姜を少なくとも含む2.6016~1.7344重量部の調味材料と、を含む調味剤とすることができる。このような調味剤は、250~350重量部の麺茹で後の茹湯に添加することで、豚骨など豚に由来する原料を用いることなく豚骨風味を再現できる。
【0050】
これらの混合物は茶褐色の液体であり、一人前あたり40gを一包のアルミパウチに充填して調味剤とした。この調味剤は、麺茹で後の一人前の茹湯(約250~350g)に対して一人前(一包、40g)が使用される。
【0051】
〔3.ガラ煮味インスタントスープ麺食品の調理〕
次に、〔2.ガラ煮味インスタントスープ麺食品の製造〕にて製造した豚骨風味の即席棒状ラーメンを調理して二人前の豚骨風味ラーメンを調製した。
【0052】
まず、鍋に800ml(800g)の水を入れた状態で火にかけて沸騰させ、沸騰水中に2袋(16g)のスープ用茹湯調製用組成物を添加してスープ用茹湯を調製した。
【0053】
次に、スープ用茹湯中に2把の棒状ラーメンを投入し、引き続き沸騰を伴った状態で麺茹でを2分30秒に亘り行った。なお、麺茹で前の一人前の棒状ラーメンの重量は75gであるのに対し、別途麺茹で後湯切りした状態で計量した茹麺の重さは210gであり、一人前の棒状ラーメン当たりの麺茹でに伴う吸水量は135gであった。
【0054】
次に、鍋の火を止め、茹麺が浮遊するスープ用茹湯に二人前分の調味剤を添加して十分に溶解させることで豚骨風味スープを調製し、二人前の豚骨風味ラーメンを調製した。調製した豚骨風味ラーメンは、それぞれ器に盛り付けを行い、適宜トッピングを行って喫食に供した。
【0055】
〔4.比較試験1〕
次に、本実施形態に係るスープ用茹湯調製用組成物の有無によるガラ煮味インスタントスープ麺の官能的な違いについて比較を行った。
【0056】
具体的には、上述の〔3.ガラ煮味インスタントスープ麺食品の調理〕の調理法(以下、標準調理法ともいう。)を踏襲し、本実施形態に係るスープ用茹湯調製用組成物F1を使用した豚骨風味ラーメンA1と、本実施形態に係るスープ用茹湯調製用組成物F2を使用した豚骨風味ラーメンA2と、スープ用茹湯調製用組成物の代わりに8g/一人前の湯を余分に添加した豚骨風味ラーメンX1、スープ用茹湯調製用組成物の代わりに5.968g/一人前の食用菜種油及び1.600g/一人前の香味油を加えた豚骨風味ラーメンX2を調製し、煮込み法で得られた豚骨スープで調製した豚骨ラーメンYと比較した。
【0057】
また比較は、食品の出汁やつゆの開発に長年携わる5名のパネリストにより、豚骨ラーメンYと最も近い食味のラーメンを豚骨風味ラーメンA1、A2、X1、X2の中から1つ選択することにより行った。なお、比較に際しては、豚骨ラーメンの香りや味そのものよりも、スープの食感や舌触り、ボディ感、コク深さの点を重視した。なお、5名の各パネリストは、官能試験に先立って行われた予備官能試験にて、評価の度合いがおおよそ揃うように訓練が行われている。
【0058】
その結果、パネリストは、全員が本実施形態に係るスープ用茹湯調製用組成物を使用した豚骨風味ラーメンA1又はA2を選択し、豚骨風味ラーメンA1を選択したパネリストは2名、豚骨風味ラーメンA2を選択したパネリストは3名であり、パネリストからは豚骨風味ラーメンA1又はA2のいずれを第1位に選ぶか僅差とのことであった。このことから、本実施形態に係るスープ用茹湯調製用組成物を使用した豚骨風味ラーメンA1やA2は、使用しない豚骨風味ラーメンX1,X2と比較して、煮込み法で得られたガラ煮スープで調製した豚骨ラーメンYに近い食味であることが確認された。
【0059】
〔5.比較試験2〕
次に、スープ用茹湯調製用組成物を構成する油、乳化剤、増粘多糖類の構成割合を変化させた場合における食味の変化について検討を行った。
【0060】
具体的には、下記6つのスープ用茹湯調製用組成物Po1,Po2,Pe1,Pe2,Pt1,Pt2を調製した。
(スープ用茹湯調製用組成物Po1)
スープ用茹湯中における油の濃度が低い例として、油:乳化剤:増粘剤=1.560:1.600:3.200とし、一人前のお湯400mlに対し6.360g(濃度1.565w/w%)で使用することでスープ用茹湯中における油の濃度が0.390w/w%となるスープ用茹湯調製用組成物Po1
(スープ用茹湯調製用組成物Po2)
スープ用茹湯中における油の濃度が高い例として、油:乳化剤:増粘剤=20.000:0.004:0.004とし、一人前のお湯400mlに対し20.008g(濃度4.764w/w%)で使用することでスープ用茹湯中における油の濃度が5.000w/w%となるスープ用茹湯調製用組成物Po2
(スープ用茹湯調製用組成物Pe1)
スープ用茹湯中における乳化剤の濃度が低い例として、油:乳化剤:増粘剤=20.000:0.004:3.200とし、一人前のお湯400mlに対し23.204g(濃度5.483w/w%)で使用することでスープ用茹湯中における乳化剤の濃度が0.001w/w%となるスープ用茹湯調製用組成物Pe1
(スープ用茹湯調製用組成物Pe2)
スープ用茹湯中における乳化剤の濃度が高い例として、油:乳化剤:増粘剤=1.560:1.600:0.004とし、一人前のお湯400mlに対し3.164g(濃度0.785w/w%)で使用することでスープ用茹湯中における乳化剤の濃度が0.400w/w%となるスープ用茹湯調製用組成物Pe2
(スープ用茹湯調製用組成物Pt1)
スープ用茹湯中における増粘剤の濃度が低い例として、油:乳化剤:増粘剤=20.000:1.600:0.004とし、一人前のお湯400mlに対し21.604g(濃度5.124w/w%)で使用することでスープ用茹湯中における増粘剤の濃度が0.001w/w%となるスープ用茹湯調製用組成物Pt1
(スープ用茹湯調製用組成物Pt2)
スープ用茹湯中における増粘剤の濃度が高い例として、油:乳化剤:増粘剤=1.560:0.004:3.200とし、一人前のお湯400mlに対し4.764g(濃度1.177w/w%)で使用することでスープ用茹湯中における増粘剤の濃度が0.800w/w%となるスープ用茹湯調製用組成物Pt2
【0061】
また、上記6つのスープ用茹湯調製用組成物Po1,Po2,Pe1,Pe2,Pt1,Pt2との比較を行うために、油、乳化剤、増粘多糖類の構成割合を更に大きく変化させた6つの比較用組成物Po3,Po4,Pe3,Pe4,Pt3,Pt4を調製した。
(比較用組成物Po3)
スープ用茹湯中における油の濃度が更に低い例として、油:乳化剤:増粘剤=1.560:1.600:3.200とし、一人前のお湯400mlに対し4.000g(濃度0.990w/w%)で使用することでスープ用茹湯中における油の濃度が0.243w/w%となる比較用組成物Po3
(比較用組成物Po4)
スープ用茹湯中における油の濃度が更に高い例として、油:乳化剤:増粘剤=20.000:0.004:0.004とし、一人前のお湯400mlに対し26.000g(濃度6.103w/w%)で使用することでスープ用茹湯中における油の濃度が6.101w/w%となる比較用組成物Po4
(比較用組成物Pe3)
スープ用茹湯中における乳化剤の濃度が更に低い例として、油:乳化剤:増粘剤=20.000:0.004:3.200とし、一人前のお湯400mlに対し10.000g(濃度2.439w/w%)で使用することでスープ用茹湯中における乳化剤の濃度が0.0004w/w%となる比較用組成物Pe3
(比較用組成物Pe4)
スープ用茹湯中における乳化剤の濃度が更に高い例として、油:乳化剤:増粘剤=1.560:1.600:0.004とし、一人前のお湯400mlに対し5.000g(濃度1.235w/w%)で使用することでスープ用茹湯中における乳化剤の濃度が0.624w/w%となる比較用組成物Pe4
(比較用組成物Pt3)
スープ用茹湯中における増粘剤の濃度が更に低い例として、油:乳化剤:増粘剤=20.000:1.600:0.004とし、一人前のお湯400mlに対し10.000g(濃度2.439w/w%)で使用することでスープ用茹湯中における増粘剤の濃度が0.0005w/w%となる比較用組成物Pt3
(比較用組成物Pt4)
スープ用茹湯中における増粘剤の濃度が更に高い例として、油:乳化剤:増粘剤=1.560:0.004:3.200とし、一人前のお湯400mlに対し10.000g(濃度2.439w/w%)で使用することでスープ用茹湯中における増粘剤の濃度が1.638w/w%となる比較用組成物Pt4
【0062】
本比較試験2では、上記6つのスープ用茹湯調製用組成物Po1,Po2,Pe1,Pe2,Pt1,Pt2、及び、6つの比較用組成物Po3,Po4,Pe3,Pe4,Pt3,Pt4を用い、上述の〔3.ガラ煮味インスタントスープ麺食品の調理〕の調理法(標準調理法)を踏襲しつつ、下記の6種の豚骨風味ラーメンA1~A6と、6種の比較用豚骨風味ラーメンZ1~Z6を調製し、煮込み法で得られた豚骨スープで調製した豚骨ラーメンYと比較した。
【表1】
【0063】
また比較は、〔4.比較試験1〕と同様に、食品の出汁やつゆの開発に長年携わる5名のパネリストにより、豚骨ラーメンYを基準とし、豚骨ラーメンYの如く煮込み法により調製されたラーメンと遜色のない範囲であるか否かについて判断を行った。なお、比較に際しては、豚骨ラーメンの香りや味そのものよりも、スープの食感や舌触り、ボディ感、コク深さの点を重視した。なお、5名の各パネリストは、官能試験に先立って行われた予備官能試験にて、評価の度合いがおおよそ揃うように訓練が行われている。
【0064】
その結果、豚骨風味ラーメンA1~A6はいずれも、煮込み法により調製されたラーメンと遜色のない範囲であると判断された。
【0065】
その一方、比較用豚骨風味ラーメンZ1~Z6はいずれも、煮込み法により調製されたラーメンと遜色のない範囲からは逸脱するものと判断された。
【0066】
これらのことから、本実施形態に係るスープ用茹湯調製用組成物は、調製された麺茹でに供する前のスープ用茹湯中に、0.390~5.000w/w%の油と、0.001~0.400w/w%の乳化剤と、0.001~0.800w/w%の増粘多糖類と、がスープ用茹湯調製用組成物に由来して含まれる量の油と乳化剤と増粘多糖類とを含有するよう構成するのが好ましいことが示された。
【0067】
また、油と乳化剤と増粘多糖類は、油の構成割合を1とした場合、乳化剤は0.0002~1.1程度、増粘多糖類は0.0002~2.1程度の重量比で配合することで、より簡便に好適なスープ用茹湯を調製できることが示された。
【0068】
上述してきたように、本実施形態に係るスープ用茹湯調製用組成物によれば、麺を茹でる茹湯でありつつ麺を茹でた後に調味料を添加してガラ煮味インスタントスープ麺のスープとなるスープ用茹湯を調製するための組成物であって、調製された前記スープ用茹湯中に、0.390~5.000w/w%の油と、0.001~0.400w/w%の乳化剤と、0.001~0.800w/w%の増粘多糖類と、が前記スープ用茹湯調製用組成物に由来して含まれる量の前記油と乳化剤と増粘多糖類とを含有することとしたため、ガラ煮味のインスタントスープ麺食品の調理に際し、煮込み法で得られたガラ煮スープで調製したスープ麺に近い食味を実現できる調理方法に使用するスープ用茹湯調製用組成物を提供することができる。
【0069】
最後に、上述した各実施の形態の説明は本発明の一例であり、本発明は上述の実施の形態に限定されることはない。このため、上述した各実施の形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。