(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164384
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】射出成形金型のセーフティ装置
(51)【国際特許分類】
B29C 45/84 20060101AFI20231102BHJP
B29C 45/17 20060101ALI20231102BHJP
B29C 33/30 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B29C45/84
B29C45/17
B29C33/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023073587
(22)【出願日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】P202230391
(32)【優先日】2022-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(71)【出願人】
【識別番号】505387130
【氏名又は名称】コメルシアル・デ・ウティレス・イ・モルデス・ソシエダッド・アノニマ
【氏名又は名称原語表記】COMERCIAL DE UTILES Y MOLDES, S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【弁理士】
【氏名又は名称】笹沼 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100187469
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 由子
(74)【代理人】
【識別番号】100225026
【弁理士】
【氏名又は名称】古後 亜紀
(72)【発明者】
【氏名】ナヴァラ・プルナ・アルベルト
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AM04
4F202CA11
4F202CB01
4F202CL42
4F202CL50
4F202CR03
4F202CR10
4F202CS07
4F206AM04
4F206JA07
4F206JL02
4F206JL03
4F206JP15
4F206JP30
4F206JQ81
4F206JQ82
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】射出成形機に取り付けられていないときに2つの金型部同士が確実に連結されているようにする、射出成形金型のセーフティ装置を提供する。
【解決手段】射出成形金型のセーフティ装置は、金型の固定型部に取付け可能なプレート部(1)と、金型の可動型部に取付け可能なベース部(4)と、を備える。ベース部(4)は、取外し位置と取付け位置との間で可動なセーフティシャフト(10)を含む。取外し位置では、セーフティシャフト(10)がプレート部(1)の孔部(13)に収容されてプレート部(1)-ベース部(4)間の変位を阻止し、取付け位置では、作動部(7)による駆動でセーフティシャフト(10)が変位してプレート部(1)の孔部(13)外に配され、プレート部(1)-ベース部(4)間の変位が可能となる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形金型のセーフティ装置は、
-金型の固定型部に取り付けられることが可能なプレート部(1)と、
-金型の可動型部に取り付けられることが可能なベース部(4)と、
を備え、前記ベース部(4)は、取外し位置と取付け位置との間で可動なセーフティシャフト(10)を含み、前記取外し位置では、前記セーフティシャフト(10)が前記プレート部(1)の孔部(13)に収容されて前記プレート部(1)-前記ベース部(4)間の変位を阻止し、前記取付け位置では、作動部(7)による駆動で前記セーフティシャフト(10)が変位して前記プレート部(1)の前記孔部(13)外に配され、前記プレート部(1)-前記ベース部(4)間の変位が可能となることを特徴とする射出成形金型のセーフティ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の射出成形金型のセーフティ装置において、前記作動部(7)は、駆動軸(9)のうちの、当該駆動軸(9)を押圧して前記セーフティシャフト(10)を前記取外し位置へと動かすばね(6)が設けられた一端に配置されている、射出成形金型のセーフティ装置。
【請求項3】
請求項2に記載の射出成形金型のセーフティ装置において、前記駆動軸(9)が、棒状体(8)を有する、射出成形金型のセーフティ装置。
【請求項4】
請求項2に記載の射出成形金型のセーフティ装置において、前記駆動軸(9)が、前記セーフティシャフト(10)における相補的な歯部と噛み合う歯部を有する、射出成形金型のセーフティ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の射出成形金型のセーフティ装置において、前記プレート部(1)が、心合わせスリーブ(3)を含む、射出成形金型のセーフティ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に取り付けられていないときに金型の可動型部が固定型部から確実に引き離されることがないようにする、射出成形金型のセーフティ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
産業全般において、様々な部品の製造に射出成形系統を用いることは、数多くの物品の大量生産にとって最も経済的な系統であることが分かっているため、極めて一般的である。
【0003】
産業全般で最も多い用途は熱可塑性物質の射出であると思われるが、アルミニウム、熱硬化性物質などの非鉄材の射出も無視すべきでなく、どの場合においても金型の使用は欠かせない。
【0004】
通常、金型は鋼製であって、最低限でも2つの板金部からなるが、これらの板金部は、突き合わされた際に、任意の種類の溶融物質が充填されることのできるキャビティ(空洞部)を形成するように機械加工が施されている。該溶融物質が凝固すると、施された機械加工を忠実に表した物品となる。どの場合の製品も、それ自体で空洞部の反転を忠実に反映したものとなる。
【0005】
このように説明を簡単にしたが、これは、どの金型も最低限2つの半型部から構成されている点が分かるようにするためである。当然ながら、工業用金型は、工業的な加工を行うことができるようにするとともに対象製品の大量生産を実現するための一連の構成要素を組み込んだものであることから、遥かに複雑になっている。
【0006】
連続生産では、製造に必要な全ての動作を実行する適切な機械に金型が取り付けられる。連続生産のこのようなシステムを実現するには、射出材料の供給部を備えた機械であって、該機械への金型の導入を可能にする可動の機械的な構成要素も具備しながら、多種多様な金型のサイズに適合する、極めて広範かつ複雑な機械が求められる。
【0007】
金型の重量は10kgから25トン超にも及び得て、工場敷地内、倉庫、射出成形プラント、工場外の搬送や、該金型の製造産業から射出成形会社への発送のどれであるかにかかわらず、通常の取扱いにあたって何か特殊なものやクレーンを使って搬送される必要がある。このように、通常の取扱いには複雑な手段が要求される。
【0008】
金型の移動時には、該金型の2つの半型部が常に一体となり、誤って引き離されるようなことが確実にないようにすることが不可欠となる。このため、高重量であるほど不測の事故の可能性も深刻になり得ることから、通常、2つの半型部同士を強固に突き合わせるようにして少なくとも1つのセーフティフランジのねじ締結によって連結し、予想外の引離れを防ぐようにしている。
【0009】
金型を機械に設置する際にも、このような引離れのリスクは存在する。機械はある程度の高さを有し、通常、該機械の上に金型が取り付けられる。そのため、高重量部同士が3メートルを超える高さにて変位する場合も珍しくなく、リスクはより強まる。このような理由から、セーフティフランジは、取扱い上の安全確保という重要な使命を果たしている。
【0010】
さらに、射出成形機への金型の取付け作業においても、事故の高いリスクが存在する。機械への金型の取付けが完了するまでは、同作業中に該金型が開いてしまうと作業者の負傷や機械の損傷に繋がる可能性があることから、該金型が固定される2つの対象部品間にて該金型は閉じた状態のまま確実に維持されなければならない。
【0011】
機械の適切な箇所への心合わせが済んだ(centered)金型を該機械に対して型締めする作業も、特に注意を要する作業である。というのも、機械での型締めが適切に行われない金型は、大きな損傷や負傷に繋がりかねないからである。もっとも、セーフティフランジを完全に取り外すという作業を忘れずに行うことも極めて重要になる。なぜなら、機械を作動させる際に、フランジが適切に取り外されていないと、金型の型開きで加わる油圧力によって大きな損傷が発生し、場合によっては締結ねじが破損して金型の一部が落下することで、被害を及ぼす可能性もあるからである。
【0012】
機械から金型を取り外す際にも、金型の両金型部同士の固定が適切になされていなければならない。というのも、金型が適切に型締めされていないと、取外し時に動いて作業者への事故などといった深刻な被害を招く可能性があるからである。このようなことを起こさないためにも、機械への金型の取付けや機械からの金型の取外しは、該金型の2つの金型部同士が完全に型締めされていることを熟練者が確認したうえで実施するということが極めて重要になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし、作業者が手動で行う作業は、過失が起こりやすいだけでなく、相当の時間や労力を要する。
【0014】
したがって、本発明の目的は、射出成形機に取り付けられていないときには2つの金型部同士が確実に突き合わされているようにし、金型が機械に取り付けられた際には該機械の動作による開放を確実に可能とする一方で、金型が機械から取り外された際には、自動的に2つの金型部同士が確実に突き合わされているようにすることのできる、射出成形金型のセーフティ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明にかかる射出成形金型のセーフティ装置は、請求項1に記載されたものである。同セーフティ装置のその他の構成は、従属請求項に記載されたものである。
【0016】
具体的に述べると、射出成形金型のセーフティ装置は、
-金型の固定型部に取り付けられることが可能なプレート部と、
-金型の可動型部に取り付けられることが可能なベース部と、
を備え、前記ベース部は、取外し位置と取付け位置との間で可動なセーフティシャフトを含み、前記取外し位置では、前記セーフティシャフトが前記プレート部の孔部に収容されて前記プレート部-前記ベース部間の変位を阻止し、前記取付け位置では、作動部による作動で前記セーフティシャフトが動いて前記プレート部の前記孔部外に配され、前記プレート部-前記ベース部間の動きが可能となる。
【0017】
有利には、このような作動部は、駆動軸のうちの、当該駆動軸を押圧して前記セーフティシャフトを前記取外し位置へと動かすばねが取り付けられた一端に配置されている。よって、前記作動部による前記セーフティシャフトの前記取付け位置への移動は、前記ばねの働きに抗して行われることになる。
【0018】
これにより、前記セーフティシャフトが前記取付け位置にあるとき、すなわち、前記金型が射出成形機に取り付けられた際には、前記金型を開閉することが可能となる一方で、前記セーフティシャフトが取外し位置にあるとき、すなわち、前記金型が射出成形機に取り付けられていない際には、前記ベースプレート部と前記ベース部とを離れるように動かすことができないため、前記金型は閉じた状態のままとなる。
【0019】
また、前記駆動軸は、前記金型の寸法に応じて当該駆動軸が必要な長さになるように所望の長さに切断されることが可能な棒状体を有する。
【0020】
好ましい一実施形態において、前記駆動軸は、当該駆動軸の変位によって前記セーフティシャフトの変位が生じるように前記セーフティシャフトにおける相補的な歯部と噛み合う歯部を有する。
【0021】
好ましくは、前記プレート部は、正確な位置合わせを確実に行うために心合わせ(centering )スリーブを含む。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本明細書には、実施の一形態の好適な一例に従って行う説明を補足して本発明の構成のより良い理解を助けるための図面一式を、同明細書の欠かせることのできない一部となるよう添付している。図面には、本発明を限定しない下記の内容が例示されている:
【
図1】本発明にかかる射出成形金型のセーフティ装置の上面斜視図である。
【
図2】本発明にかかる射出成形金型のセーフティ装置の底面斜視図である。
【
図3】本発明にかかるセーフティ装置を組み込んだ射出成形金型であって、射出成形機に取り付けられておらず、セーフティ装置が取外し位置にある射出成形金型を示す断面斜視図である。
【
図4】本発明にかかるセーフティ装置を組み込んだ射出成形金型であって、射出成形機に取り付けられており、セーフティ装置が取付け位置にある射出成形金型を示す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
先述したように、射出成形金型は、射出成形工程で物品を得るために引き離されることが可能な固定型部と可動型部との2つの金型部で構成されている。
【0024】
製造工程時、これら2つの金型部は、射出サイクルごとに金型を開閉させて製造後の物品を得られるようにする射出成型機に連結されている。ただし、金型が射出成形機に取り付けられていないときには、事故のリスクが著しくなり得ることから、2つの金型部が確実に引き離されないようにすることが不可欠である。
【0025】
この状態を確保するため、本発明では、金型が射出成形機に取り付けられていないときに該金型の2つの金型部同士の突き合わせを確保できるようにする、セーフティ装置が構成されている。
【0026】
このセーフティ装置により、金型が機械に取り付けられているときには該機械の動作による金型の開放が確実に可能となる一方で、金型が機械に取り付けられていないときには、自動的に金型の2つの金型部同士が確実に突き合わされているようになる。
【0027】
具体的に述べると、本発明にかかるセーフティ装置は、金型の固定型部(11)に例えばねじ(2)で取り付けられるプレート部(1)を備える。このプレート部(1)は、セーフティシャフト(10)のための孔部(13)を有する。
【0028】
プレート部(1)には、固定型部(11)に対して当該プレート部(1)を完璧に位置合わせするための心合わせスリーブ(3)が埋設されている。
【0029】
本発明にかかるセーフティ装置は、さらに、可動型部(12)に例えばねじ(5)で取り付けられるベース部(4)を備える。ベース部(4)は、上記のセーフティシャフト(10)を収容する孔部、および駆動軸(9)を収容する孔部を有する。
【0030】
セーフティシャフト(10)は、当該セーフティシャフト(10)がプレート部(1)の前記孔部に収容されることになる取付け位置と、当該セーフティシャフト(10)がプレート部(1)の前記孔部外となる取外し位置との、2種類の位置に配されることが可能である。
【0031】
取付け位置では、金型が射出成形機に取り付けられていて該金型を開閉させること、すなわち、金型の可動型部(12)を固定型部(11)に対して動かすことが可能であり、取外し位置では、金型が射出成形機に取り付けられておらず、該金型が閉じていて、可動型部(12)が固定型部(11)に対して動かないようになっている。
【0032】
駆動軸(9)には、棒状体(8)が取り付けられている。棒状体(8)の長さは、当該棒状体(8)を必要な長さに切断することで様々な金型幅に合うように調整を行うことが可能となっている。棒状体(8)のうち、ベース部(4)から最も遠い端部には、ばね(6)および作動部(7)が存在している。
【0033】
本発明にかかるセーフティ装置は、以下のようにして金型に装着される。金型は、引き離される固定型部(11)と可動型部(12)の2つの金型部を具備している。
【0034】
金型の固定型部(11)にはプレート部(1)が固定されるのに対し、金型の可動型部(12)には本発明にかかる装置の残りの構成要素、すなわち、ベース部(4)、駆動軸(9)、棒状体(8)、セーフティシャフト(10)、ばね(6)および作動部(7)が設置される。
【0035】
金型が射出成形機外にあるとき、前記装置は閉じたままである。これは、ばね(6)が駆動軸(9)および棒状体(8)を金型外へと押し出してセーフティシャフト(10)を取外し位置とし、当該セーフティシャフト(10)がプレート部(1)の孔部(13)に挿入されることにより、金型の2つの金型部(11,12)同士の引離れが不可能となるため達成される。
【0036】
駆動軸(9)とセーフティシャフト(10)との間の動きは、例えば、駆動軸(9)が作動部(7)およびばね(6)によって動かされた際にセーフティシャフト(10)が該駆動軸(9)に対して直角に動くことができるようにする斜歯を具備した歯車系統によって実現される。
【0037】
金型が射出成形機に取り付けられる際には、まず、金型の固定型部(11)が機械に固定されるが、金型の可動型部(12)が固定されるまでは、本発明にかかるセーフティ装置によってセーフティシャフト(10)がプレート部(1)の孔部(13)内に留まることから、金型は確実に閉じた状態のままとなる。
【0038】
金型の可動型部(12)が射出成形機に固定されると、作動部(7)で棒状体(8)および駆動軸(9)を動かし、セーフティシャフト(10)をプレート部(1)の孔部(13)外へと移動させる。これにより、射出成形機の動作を駆動して金型を開かせたい場合に、金型は難なく開くことになる。
【0039】
図3及び
図4では、駆動軸(9)およびセーフティシャフト(10)の動きを理解し易くするため、対応する矢印でそれらを指し示している。
【0040】
本発明の特定の一実施形態を参考にしたが、当業者であれば、添付の特許請求の範囲によって定まる保護範囲を逸脱しない範疇で、説明した保安装置に無数の変形や変更を施すことが可能であるとともに、前述したあらゆる細部を技術的に等価な構成に置き換えることも可能であるという点が明らかであろう。
【外国語明細書】