(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016440
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】省エネルギー効果表示装置、省エネルギー効果表示方法、及び省エネルギー効果表示プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20230126BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20230126BHJP
【FI】
G05B23/02 301Z
G06Q50/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120751
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100170818
【弁理士】
【氏名又は名称】小松 秀輝
(72)【発明者】
【氏名】小熊 祐司
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼口 謙一
(72)【発明者】
【氏名】稲村 彰信
(72)【発明者】
【氏名】梶倉 翔
【テーマコード(参考)】
3C223
5L049
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA02
3C223AA11
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223EB03
3C223EB07
3C223FF01
3C223FF02
3C223FF05
3C223FF12
3C223FF13
3C223FF22
3C223FF35
3C223FF42
3C223FF52
3C223FF53
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH08
3C223HH29
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】省エネルギー施策の効果を正確に評価する。
【解決手段】省エネルギー効果表示装置は、対象施設の過去の運転状況に関する実績データに基づいて、省エネルギー施策の実施時の対象施設でのエネルギー使用状況に関する第1の実施時指標データ及び第2の実施時指標データと、省エネルギー施策の非実施時の対象施設でのエネルギー使用状況に関する第1の非実施時指標データ及び第2の非実施時指標データと、を求める計算部と、第1の実施時指標データ及び第1の非実施時指標データに基づいて得られる、省エネルギー施策の実施による改善効果を示す第1の改善効果データと、第2の実施時指標データ及び第2の非実施時指標データに基づいて得られる、省エネルギー施策の実施による改善効果を示す第2の改善効果データと、の関係を示す改善効果情報を表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象施設の過去の運転状況に関する実績データに基づいて、省エネルギー施策の実施時の前記対象施設でのエネルギー使用状況に関する情報を含み且つ互いに異なる種類である第1の実施時指標データ及び第2の実施時指標データと、前記省エネルギー施策の非実施時の前記対象施設でのエネルギー使用状況に関する情報を含み且つ前記第1の実施時指標データ及び前記第2の実施時指標データにそれぞれ対応する第1の非実施時指標データ及び第2の非実施時指標データと、を求める計算部と、
前記第1の実施時指標データ及び前記第1の非実施時指標データに基づいて得られる、前記省エネルギー施策の実施による改善効果を示す第1の改善効果データと、前記第2の実施時指標データ及び前記第2の非実施時指標データに基づいて得られる、前記省エネルギー施策の実施による改善効果を示す第2の改善効果データと、の関係を示す改善効果情報を表示部に表示させる表示制御部と、
を備える、省エネルギー効果表示装置。
【請求項2】
前記第1の改善効果データは、前記第1の非実施時指標データと前記第1の実施時指標データとの差分を示すデータであり、
前記第2の改善効果データは、前記第2の非実施時指標データと前記第2の実施時指標データとの差分を示すデータである、請求項1に記載の省エネルギー効果表示装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記第1の改善効果データと前記第2の改善効果データとの関係を近似する近似式を、前記改善効果情報と併せて前記表示部に表示させる、請求項1又は2に記載の省エネルギー効果表示装置。
【請求項4】
対象施設の過去の運転状況に関する実績データに基づいて、省エネルギー施策の実施時の前記対象施設でのエネルギー使用状況に関する情報を含み、互いに異なる種類である第1の実施時指標データ及び第2の実施時指標データと、前記省エネルギー施策の非実施時の前記対象施設でのエネルギー使用状況に関する情報を含み、前記第1の実施時指標データ及び前記第2の実施時指標データにそれぞれ対応する第1の非実施時指標データ及び第2の非実施時指標データと、を求めることと、
前記第1の実施時指標データ及び前記第1の非実施時指標データに基づいて得られる、前記省エネルギー施策の実施による改善効果を示す第1の改善効果データと、前記第2の実施時指標データ及び前記第2の非実施時指標データに基づいて得られる、前記省エネルギー施策の実施による改善効果を示す第2の改善効果データと、の関係を示す改善効果情報を表示部に表示させることと、
を含む、省エネルギー効果表示方法。
【請求項5】
対象施設の過去の運転状況に関する実績データに基づいて、省エネルギー施策の実施時の前記対象施設でのエネルギー使用状況に関する情報を含み、互いに異なる種類である第1の実施時指標データ及び第2の実施時指標データと、前記省エネルギー施策の非実施時の前記対象施設でのエネルギー使用状況に関する情報を含み、前記第1の実施時指標データ及び前記第2の実施時指標データにそれぞれ対応する第1の非実施時指標データ及び第2の非実施時指標データと、を求めることと、
前記第1の実施時指標データ及び前記第1の非実施時指標データに基づいて得られる、前記省エネルギー施策の実施による改善効果を示す第1の改善効果データと、前記第2の実施時指標データ及び前記第2の非実施時指標データに基づいて得られる、前記省エネルギー施策の実施による改善効果を示す第2の改善効果データと、の関係を示す改善効果情報を表示部に表示させることと、
をコンピュータに実行させる、省エネルギー効果表示プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、省エネルギー効果表示装置、省エネルギー効果表示方法、及び省エネルギー効果表示プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工場などの施設においては、省エネルギー化の検討が行われている。省エネルギー化に関する技術について、例えば特許文献1~4に記載された技術が知られている。例えば、特許文献3は、対象施設の過去の実績データに基づいて、省エネルギー施策適用前後のエネルギーコストを算出し、省エネルギー施策適用前のエネルギーコストと省エネルギー施策適用後のエネルギーコストとを比較する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-106514号公報
【特許文献2】特開2006-304595号公報
【特許文献3】特開2005-141403号公報
【特許文献4】特開2019-193571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した技術では、エネルギーコストのみが省エネルギー施策の効果の評価対象とされているが、エネルギーコスト以外の指標(例えば、エネルギー使用量、排出CO2量など)についても、省エネルギー施策の効果を評価する上で重要な関心事である。従って、省エネルギー施策の効果を評価する際には、単一の指標に限らず、複数種類の指標に対して省エネルギー施策の効果の有効性を検討することが望ましい。しかしながら、このような指標は、省エネルギー施策以外にも様々な要因によって変化し、更に、指標の種類によって指標の変化の仕方も異なることがある。従って、このような指標に対する省エネルギー施策の効果を正確に評価することは難しい。
【0005】
本開示は、省エネルギー施策の効果を正確に評価することが可能な省エネルギー効果表示装置、省エネルギー効果表示方法、及び省エネルギー効果表示プログラムを説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一形態に係る省エネルギー効果表示装置は、対象施設の過去の運転状況に関する実績データに基づいて、省エネルギー施策の実施時の対象施設でのエネルギー使用状況に関する情報を含み且つ互いに異なる種類である第1の実施時指標データ及び第2の実施時指標データと、省エネルギー施策の非実施時の対象施設でのエネルギー使用状況に関する情報を含み且つ第1の実施時指標データ及び第2の実施時指標データにそれぞれ対応する第1の非実施時指標データ及び第2の非実施時指標データと、を求める計算部と、第1の実施時指標データ及び第1の非実施時指標データに基づいて得られる、省エネルギー施策の実施による改善効果を示す第1の改善効果データと、第2の実施時指標データ及び第2の非実施時指標データに基づいて得られる、省エネルギー施策の実施による改善効果を示す第2の改善効果データと、の関係を示す改善効果情報を表示部に表示させる表示制御部と、を備える。
【0007】
本開示の一形態に係る省エネルギー効果表示方法は、対象施設の過去の運転状況に関する実績データに基づいて、省エネルギー施策の実施時の対象施設でのエネルギー使用状況に関する情報を含み、互いに異なる種類である第1の実施時指標データ及び第2の実施時指標データと、省エネルギー施策の非実施時の対象施設でのエネルギー使用状況に関する情報を含み、第1の実施時指標データ及び第2の実施時指標データにそれぞれ対応する第1の非実施時指標データ及び第2の非実施時指標データと、を求めることと、第1の実施時指標データ及び第1の非実施時指標データに基づいて得られる、省エネルギー施策の実施による改善効果を示す第1の改善効果データと、第2の実施時指標データ及び第2の非実施時指標データに基づいて得られる、省エネルギー施策の実施による改善効果を示す第2の改善効果データと、の関係を示す改善効果情報を表示部に表示させることと、を含む。
【0008】
本開示の一形態に係る省エネルギー効果表示方プログラムは、対象施設の過去の運転状況に関する実績データに基づいて、省エネルギー施策の実施時の対象施設でのエネルギー使用状況に関する情報を含み、互いに異なる種類である第1の実施時指標データ及び第2の実施時指標データと、省エネルギー施策の非実施時の対象施設でのエネルギー使用状況に関する情報を含み、第1の実施時指標データ及び第2の実施時指標データにそれぞれ対応する第1の非実施時指標データ及び第2の非実施時指標データと、を求めることと、第1の実施時指標データ及び第1の非実施時指標データに基づいて得られる、省エネルギー施策の実施による改善効果を示す第1の改善効果データと、第2の実施時指標データ及び第2の非実施時指標データに基づいて得られる、省エネルギー施策の実施による改善効果を示す第2の改善効果データと、の関係を示す改善効果情報を表示部に表示させることと、をコンピュータに実行させる。
【0009】
上述した省エネルギー効果表示装置、省エネルギー効果表示方法、及び省エネルギー効果表示プログラムでは、対象施設の過去の運転状況に関する実績データに基づいて、省エネルギー施策の実施時の対象施設でのエネルギー使用状況に関する第1の実施時指標データ及び第2の実施時指標データと、省エネルギー施策の非実施時の対象施設でのエネルギー使用状況に関する第1の非実施時指標データ及び第2の非実施時指標データと、が求められる。そして、第1の実施時指標データ及び第1の非実施時指標データに基づいて得られる第1の改善効果データと、第2の実施時指標データ及び第2の非実施時指標データに基づいて得られる第2の改善効果データと、の関係を示す改善効果情報が表示部に表示される。ユーザは、改善効果情報を参照することにより、第1の改善効果データと第2の改善効果データとの間の相関関係の有無を把握できる。例えば、第1の改善効果データが大きくなるほど第2の改善効果データが小さくなる場合には、ユーザは、第1の改善効果データと第2の改善効果データとの間にトレードオフの関係があることを把握できる。このように、ユーザは、互いに異なる種類の指標データの変化がどのように影響を及ぼし合うのかを把握できるため、第1の改善効果データの変化の要因、及び第2の改善効果の変化の要因を詳細に分析できる。その結果、ユーザは、省エネルギー施策の効果を正確に評価することが可能となる。
【0010】
いくつかの態様において、第1の改善効果データは、第1の非実施時指標データと第1の実施時指標データとの差分を示すデータであり、第2の改善効果データは、第2の非実施時指標データと第2の実施時指標データとの差分を示すデータであってもよい。この場合、ユーザは、第1の改善効果データと第2の改善効果データとの関係性について定量的に把握できるため、第1の改善効果データの変化の要因、及び第2の改善効果の変化の要因をより詳細に分析できる。その結果、ユーザは、省エネルギー施策の効果をより正確に評価することが可能となる。
【0011】
いくつかの態様において、表示制御部は、第1の改善効果データと第2の改善効果データとの関係を近似する近似式を、改善効果情報と併せて表示部に表示させてもよい。この場合、ユーザは、第1の改善効果データと第2の改善効果データとの関係性を把握しやすくなるため、省エネルギー施策の効果の評価が容易となる。
【発明の効果】
【0012】
本開示のいくつかの態様によれば、省エネルギー施策の効果をより正確に評価することが可能な省エネルギー効果表示装置、省エネルギー効果表示方法、及び省エネルギー効果表示プログラムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る省エネルギー効果表示装置の構成図である。
【
図2】
図2は、抽出条件の設定に係る画面例である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、エネルギー指標推定部の推定処理を説明するための図である。
【
図4】
図4は、「エネルギーコスト削減額」と「CO
2排出削減量」との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、「エネルギーコスト削減率」と「CO
2排出削減率」との関係を示すグラフである。
【
図6】
図6は、省エネルギー効果表示装置を操作する際の手順の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、省エネルギー効果表示装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は適宜省略する。
【0015】
[省エネルギー効果表示装置]
まず、
図1を参照して、一実施形態に係る省エネルギー効果表示装置1の構成について説明する。省エネルギー効果表示装置1は、対象施設に対する省エネルギー施策の有効性を評価するために用いられる。対象施設は、例えば、工場又はプラントなどである。省エネルギー施策は、例えば、エネルギー機器(ガスタービン、ボイラ、及び蓄電池など)の運転計画最適化によって受電電力量又は燃料消費量を削減するといったシステム的な施策のほか、照明及び空調などの小まめな停止を励行するといった人力による施策も含む。
【0016】
図1に示すように、省エネルギー効果表示装置1は、例えば、エネルギーデータ入力部21、エネルギーデータ保存処理部11、エネルギーデータベース12、抽出条件指定部22、エネルギーデータ抽出部13、省エネルギー施策実施時データ抽出部14、エネルギー指標計算部15(計算部)、エネルギー指標推定部16(計算部)、グラフ作成部17(表示制御部)、表示部31、及び表示切替部23(表示制御部)を備える。このうち、エネルギーデータ入力部21、抽出条件指定部22、及び表示切替部23は、ユーザ(使用者)が入力する情報を取得する入力インタフェース20として構成され得る。表示部31は、省エネルギー効果表示装置1で取り扱う情報をユーザに対して出力する出力インタフェース30として構成され得る。
【0017】
エネルギーデータ入力部21には、対象施設の過去の運転状況に関するエネルギーデータD1(実績データ)が入力される。対象施設の運転状況に関する情報は、例えば、消費電力量、消費蒸気量、消費燃料量、電力単価、蒸気単価、及び燃料単価といった、対象施設の運転のために必要なエネルギーの消費状況に関する情報のほか、対象施設の運転により製造された製造物の生産量などの生産状況に関する情報、及び対象施設が運転されたときの気温などの天候状況に関する情報を含む。従って、エネルギーデータD1は、例えば、消費電力量、消費蒸気量、消費燃料量、電力単価、蒸気単価、燃料単価、気温、湿度、及び生産量などの各種データを含む。エネルギーデータD1の各種データは、エネルギー指標D2に影響を与え得る。以下、エネルギーデータD1の各種データのうちのいずれか1つを「第1のエネルギーデータ」(第1の実績データ)と称し、他の1つ、すなわち「第1のエネルギーデータ」とは異なる種類のデータを「第2のエネルギーデータ」(第2の実績データ)と称する場合がある。
【0018】
エネルギーデータ入力部21には、エネルギーデータD1を取得した日時を示す日時情報と、エネルギーデータD1を取得した際の対象施設に対する省エネルギー施策の実施履歴を示す履歴情報とが、エネルギーデータD1と併せて入力される。つまり、エネルギーデータD1は、日時情報及び履歴情報と対応付けられた状態で、エネルギーデータ入力部21に入力される。日時情報は、エネルギーデータD1を取得した日又は時間帯を示す情報である。履歴情報は、エネルギーデータD1を取得した際の対象施設に対して省エネルギー施策が実施されたか否かを示す情報である。エネルギーデータD1は、外部システムからエネルギーデータ入力部21に自動的に入力されてもよいし、人手によりエネルギーデータ入力部21に入力されてもよい。
【0019】
エネルギーデータ保存処理部11は、エネルギーデータ入力部21に入力されたエネルギーデータD1をエネルギーデータベース12に保存(格納)する処理を行う。エネルギーデータベース12は、入力されたエネルギーデータD1を、日時情報及び履歴情報と併せて格納する。従って、エネルギーデータD1は、日時情報及び履歴情報に対応付けられた状態でエネルギーデータベース12に格納される。
【0020】
抽出条件指定部22は、エネルギーデータベース12に保存されているエネルギーデータD1の中から、最終的に表示部31に表示するエネルギーデータD1を抽出するための条件(抽出条件)を取得する。抽出条件の指定は、例えば、ユーザによって行われる。抽出条件には、表示部31に表示する期間の指定と、表示部31に表示するエネルギーデータD1の指定と、が含まれ得る。表示対象とする期間は、例えば、時間単位、日単位、週単位、月単位、又は年単位などで指定され、当該期間の始点及び終点の指定によって決定される。「期間」が指定された場合、エネルギーデータD1の電力単価、蒸気単価、燃料単価、及び気温などはそれぞれ、当該期間における平均値として表されてよい。期間が月単位で指定された場合、エネルギーデータD1の消費電力量、消費蒸気量、消費燃料量、及び生産量などはそれぞれ、月あたりの量として表されてよい。
【0021】
図2に示す画面例Xは、抽出条件を指定する画面の一例である。
図2に示すように、画面例Xには、「期間」及び「エネルギーデータ」のそれぞれについて、抽出条件を指定する項目が設けられている。画面例Xの「期間」には、「期間」の始点を指定する項目と、「期間」の終点を指定する項目と、が設けられている。画面例Xでは、「期間」の始点及び終点には、ユーザによって選択される任意の月が入力されている。画面例Xの「エネルギーデータ」には、エネルギーデータの種類ごとに項目が設けられている。
【0022】
画面例Xの「エネルギーデータ」の各項目には、月あたりの消費電力量[kWh/月]、月あたりの生産量[kWh/月]、平均気温[℃]、平均電力単価[円/kWh]、及び平均燃料単価[円/Nm3]がそれぞれ示されている。画面例Xの「エネルギーデータ」の項目には、これらのほか、他の種類のエネルギーデータ(例えば、月あたりの消費蒸気量など)が示されてもよい。画面例Xの「エネルギーデータ」に設けられる項目は、ユーザの入力によって任意に選択されてよい。また、画面例Xには、「期間」の指定、「エネルギーデータ」の指定以外に、「履歴情報」の指定が設けられてもよい。この場合、画面例Xの「履歴情報」の項目において、ユーザがエネルギー施策の実施の有無を選択する態様としてもよい。このような態様では、エネルギーデータベース12に履歴情報が保存されている必要は無い。
【0023】
画面例Xの「エネルギーデータ」の各項目には、入力欄に「指定」などと表記したチェックボックスが設けられている。各項目の指定は、チェックボックスでのチェックの有無によって行われる。或る項目におけるチェックボックスにチェックが入力された場合には、当該項目に係るエネルギーデータD1が抽出対象とされる。一方、或る項目におけるチェックボックスにチェックが入力されない場合には、当該項目に係るエネルギーデータD1が抽出対象とされない。従って、チェックボックスでのチェックの有無によって、抽出対象とするエネルギーデータD1が切り替えられる。これにより、抽出条件の有効・無効を容易に切り替えることが可能となる。
【0024】
図2に示す画面例Xでは、平均燃料単価を示す項目のチェックボックスにチェックが入力されていないため、エネルギーデータD1の平均燃料単価が抽出条件から除外されている。このように、或る項目のチェックボックスのチェックが外された場合(すなわち、或る項目を抽出条件から除外する場合)、当該項目(例えば、「値」欄)の背景色を変更してもよい。これにより、当該項目が抽出条件に使用されないことをユーザが直観的に把握することが可能となる。また、画面例Xに示すように、エネルギーデータD1の各項目において、指定した期間におけるエネルギーデータD1の下限値及び上限値が表示されてもよい。また、画面例Xに示すように、ユーザが指定した抽出条件に合致する月の数(
図2では「該当月数」として示す)が表示されてもよい。ユーザは、これらの情報を頼りとして、抽出条件を調整(例えば、緩和或いは強化)することが可能となる。このように、抽出条件を指定する画面は、ユーザが参考とし得る情報を共に表示することで、ユーザによる抽出条件の指定を補助する機能を有してもよい。
【0025】
再び、
図1を参照する。エネルギーデータ抽出部13は、エネルギーデータベース12に保存されているエネルギーデータD1の中から、抽出条件指定部22が指定した抽出条件に合致するエネルギーデータD1を抽出する。省エネルギー施策実施時データ抽出部14は、エネルギーデータ抽出部13が抽出したエネルギーデータD1の中から、省エネルギー施策の実施時のエネルギーデータ(以下、「実施時エネルギーデータD11」と称する)を更に抽出する。具体的には、省エネルギー施策実施時データ抽出部14は、エネルギーデータD1に対応付けられた履歴情報を参照することにより、エネルギーデータ抽出部13が抽出したエネルギーデータD1の中から実施時エネルギーデータD11を特定する。なお、エネルギーデータD1は、実施時エネルギーデータD11のほか、省エネルギー施策の非実施時のエネルギーデータ(以下、「非実施時エネルギーデータD12」と称する)も含む。
【0026】
エネルギー指標計算部15は、エネルギーデータ抽出部13が抽出した全てのエネルギーデータD1に基づいて、当該エネルギーデータD1に対応する期間のエネルギー指標D2(指標データ)を求める。エネルギー指標D2は、対象施設でのエネルギーの使用状況に関するデータであり、省エネルギー施策の評価の対象とされる。エネルギー指標D2は、例えば、エネルギー使用量、排出CO2量、及びエネルギーコストなどの各種データを含む。例えば、抽出条件指定部22が「期間」を月単位で指定した場合、エネルギー使用量、排出CO2量、及びエネルギーコストはそれぞれ、月あたりの量としてよい。また、エネルギー使用量は、1生産単位に要するエネルギーの使用量(すなわち、1個の製造物の生産に要するエネルギーの使用量)としてもよい。以下、エネルギー指標D2の各種データのうちのいずれか1つを「第1のエネルギー指標」(第1の指標データ)と称し、他の1つ、すなわち「第1のエネルギー指標」とは異なる種類のデータを「第2のエネルギー指標」(第2の指標データ)と称する場合がある。
【0027】
エネルギー指標計算部15は、実績値である実施時エネルギーデータD11を基に、省エネルギー施策の実施時のエネルギー指標D2(以下、「実施時エネルギー指標の実績値D21」と称する)を求める。また、エネルギー指標計算部15は、実績値である非実施時エネルギーデータを基に、省エネルギー施策の非実施時のエネルギー指標D2(以下、「非実施時エネルギー指標の実績値D22」と称する)を求める。
【0028】
一方、エネルギー指標推定部16は、実施時エネルギーデータD11を基に、仮に省エネルギー施策が非実施であった場合の非実施時エネルギー指標の推定値D23(非実施時指標データ)を求める。その結果、同一の実施時エネルギーデータD11を基に、エネルギー指標計算部15の計算結果である実施時エネルギー指標の実績値D21に加えて、エネルギー指標推定部16の推定結果である非実施時エネルギー指標の推定値D23が得られる。エネルギー指標推定部16は、エネルギー指標計算部15と共に、エネルギーデータD1を基にエネルギー指標D2を計算するための計算部として構成される。
【0029】
通常、エネルギーデータD1は対象施設の運転状況に応じて変動するため、実施時エネルギーデータD11は、非実施時エネルギーデータD12とは一致しない。そのため、1つのエネルギーデータD1に対しては、実施時エネルギー指標の実績値D21及び非実施時エネルギー指標の実績値D22の一方のみが存在する。これに対し、エネルギー指標推定部16は、実施時エネルギー指標の実績値D21の計算の元となる実施時エネルギーデータD11を基に、非実施時エネルギー指標の推定値D23を推定計算する。その結果、1つの実施時エネルギーデータD11に対して、実施時エネルギー指標の実績値D21及び非実施時エネルギー指標の推定値D23の両方が存在することとなる。これにより、共通する実施時エネルギーデータD11について、実施時エネルギー指標の実績値D21と非実施時エネルギー指標の推定値D23とを比較することが可能となる。
【0030】
なお、省エネルギー効果表示装置1は、必ずしもエネルギー指標推定部16を備える必要はない。例えば、対象施設内において、省エネルギー施策を実施する区域と、省エネルギー施策を実施しない区域とを設定することで、共通の運転状況の下で実施時エネルギーデータD11及び非実施時エネルギーデータを同時に取得することができる。この場合、エネルギー指標計算部15が、共通するエネルギーデータD1を基に、実施時エネルギー指標の実績値D21及び非実施時エネルギー指標の実績値D22を求めることができるので、共通するエネルギーデータD1に対して、実施時エネルギー指標の実績値D21及び非実施時エネルギー指標の実績値D22の両方が存在することとなる。この場合、共通する実施時エネルギーデータD11について、実施時エネルギー指標の実績値D21と非実施時エネルギー指標の実績値D22とを比較することが可能となる。
【0031】
ここで、
図3(a)及び
図3(b)を参照して、エネルギー指標推定部16の推定処理を説明する。エネルギー指標推定部16は、非実施時エネルギーデータ及び非実施時エネルギー指標を学習データとして用い、実施時エネルギーデータD11を基に非実施時エネルギー指標の推定値D23を計算するための推定モデルMを、機械学習によって構築する。機械学習としては、例えば、教師あり学習を用いることができる。教師あり学習のアルゴリズムとしては、例えば、深層学習を含むニューラルネットワーク、決定木、及びサポートベクター回帰などが挙げられる。
【0032】
図3(a)は、エネルギー指標推定部16の学習時の処理を概念的に示している。
図3(a)に示すように、エネルギー指標推定部16は、非実施時エネルギーデータ(例えば、消費電力量、消費蒸気量、消費燃料量、電力単価、燃料単価、気温、及び生産量など)を教師データの説明変数とし、非実施時エネルギー指標(例えば、エネルギー使用量、1生産あたりに要するエネルギー使用量、排出CO
2量、及びエネルギーコストなど)を教師データの目的変数とする学習処理を行うことにより、推定モデルMを構築する。
【0033】
図3(b)は、エネルギー指標推定部16の推定時の処理を概念的に示している。
図3(b)に示すように、エネルギー指標推定部16は、構築した推定モデルMを用いて、実施時エネルギーデータD11を基にした説明変数から、非実施時エネルギー指標の推定値D23を目的変数として推定する。このようにして、エネルギー指標推定部16は、既知の実施時エネルギーデータD11を基に、未知の非実施時エネルギー指標の推定値D23を計算する。これにより、共通するエネルギーデータD1に対して、実施時エネルギー指標の実績値D21と非実施時エネルギー指標の推定値D23の両方が得られる。なお、
図3(a)の機械学習のタイミングは、表示部31への結果表示の前(すなわち、後述する
図7のステップS3よりも前)であれば、任意である。例えば、省エネルギー効果表示装置1の設計段階で推定モデルMを組み込んでもよいし、最新のデータを利用しつつ省エネルギー効果表示装置1の実行中に都度学習及び再学習が行われてもよい。
【0034】
図1に示すグラフ作成部17は、エネルギー指標計算部15及びエネルギー指標推定部16が求めたエネルギー指標に基づいて、表示部31に表示されるグラフ(改善効果情報)を1つ以上作成する。以下、非実施時の第1のエネルギー指標を第1の非実施時エネルギー指標(第1の非実施時指標データ)と称し、実施時の第1のエネルギー指標を第1の実施時エネルギー指標(第1の実施時指標データ)と称する。また、非実施時の第2のエネルギー指標を第2の非実施時エネルギー指標(第2の非実施時指標データ)と称し、実施時の第2のエネルギー指標を第2の実施時エネルギー指標(第2の実施時指標データ)と称する。この場合、第1の非実施時エネルギー指標と第2の非実施時エネルギー指標とは、互いに異なる種類であり、第1の実施時エネルギー指標と第2の実施時エネルギー指標とは、第1の非実施時エネルギー指標と第2の非実施時エネルギー指標とにそれぞれ対応する。つまり、第1の実施時エネルギー指標は、第1の非実施時エネルギー指標と同一種類であり、第2の実施時エネルギー指標は、第2の非実施時エネルギー指標と同一種類である。
【0035】
表示部31に表示されるグラフは、第1の非実施時エネルギー指標及び第1の実施時エネルギー指標に基づいて得られる第1の改善効果データと、第2の非実施時エネルギー指標及び第2の実施時エネルギー指標に基づいて得られる第2の改善効果データと、の関係を示す。第1の改善効果データ及び第2の改善効果データは、省エネルギー施策の実施によるエネルギー使用状況の改善効果を示すデータである。例えば、第1の改善効果データは、第1の非実施時エネルギー指標と第1の実施時エネルギー指標との差分を示すデータであり、第2の改善効果データは、第2の非実施時エネルギー指標と第2の実施時エネルギー指標との差分を示すデータである。第1の改善効果データは、第1の非実施時エネルギー指標と第1の実施時エネルギー指標との比率を示すデータであってもよく、第2の改善効果データは、第2の非実施時エネルギー指標と第2の実施時エネルギー指標との比率を示すデータであってもよい。
【0036】
グラフ作成部17は、作成した1つ以上のグラフを表示部31に出力し、出力したグラフを表示部31に表示させる。グラフ作成部17は、表示切替部23と共に、表示部31に表示される内容を制御するための表示制御部として構成される。グラフ作成部17は、第1の改善効果データと第2の改善効果データとの関係を近似する近似式を作成してもよい。近似式の作成方法として、例えば、累乗近似、多項式近似、指数近似、線形近似、対数近似、及び移動平均など、あらゆる方法を採用してよい。また、多項式近似を採用した場合の次数も特に限定されない。グラフ作成部17は、作成したグラフと共に、近似式及び近似式で示される近似線を表示部31に表示させてもよい。
【0037】
表示部31は、グラフ作成部17が作成した1つ以上のグラフを画面上に表示する。表示切替部23は、表示部31に表示されている内容及び体裁の切替及び変更の指示を取得する。表示内容の切替えに関する指示は、例えば、ユーザによって行われる。表示切替部23は、ユーザによって指示された内容に基づいて、表示部31による表示内容の変更を指示する。表示切替部23は、グラフの視認性をあげるための種々の機能、例えば、グラフの拡大、縮小、及びスケール変更が可能な機能、或いは、グラフの表示・非表示の切り替えが可能な機能を有してもよい。なお、省エネルギー効果表示装置1は、表示部31を備えなくてもよい。この場合、グラフ作成部17は、外付けのディスプレイ等の表示部にグラフを表示させてもよい。
【0038】
次に、
図4及び
図5を参照して、表示部31が表示するグラフの例について詳細に説明する。表示部31は、例えば、
図4に示すグラフG1と、
図5に示すグラフG2と、を表示する。
【0039】
図4のグラフG1において、プロットP1は、第1の改善効果データの一例である「エネルギーコスト削減額」と、第2の改善効果データの一例である「排出CO
2削減量」と、の関係を示す。グラフG1は、「月あたりのエネルギーコスト削減額[円]」を列方向(横軸)とし、「月あたりの排出CO
2削減量「t」」を縦方向(縦軸)とするマトリクス配置によって表されている。「エネルギーコスト削減額」は、第1の非実施時エネルギー指標の一例である「エネルギーコスト」の推定値D23と、第1の実施時エネルギー指標の一例である「エネルギーコスト」の実績値D21との差分を示す。「排出CO
2削減量」は、第2の非実施時エネルギー指標の一例である「排出CO
2量」の推定値D23と、第2の実施時エネルギー指標の一例である「排出CO
2量」の実績値D21との差分を示す。
【0040】
グラフG1に示すように、「エネルギーコスト削減額」と「排出CO2削減量」との間には、負の相関関係があることが分かる。具体的には、「エネルギーコスト削減額」が大きくなるほど、「排出CO2削減量」が小さくなっている。言い換えると、「エネルギーコスト」に対する省エネルギー施策の効果が大きくなるほど、「排出CO2量」に対する省エネルギー施策の効果が小さくなっている。従って、「エネルギーコスト」に対する省エネルギー施策の効果を大きくすると、「排出CO2量」に対する省エネルギー施策の効果は逆に小さくなる。また、「排出CO2量」に対する省エネルギー施策の効果を大きくすると、「エネルギーコスト」に対する省エネルギー施策の効果は逆に小さくなる。このように、「エネルギーコスト削減額」と「排出CO2削減量」とは、トレードオフの関係にあることが分かる。
【0041】
グラフG1には、「エネルギーコスト削減額」と「排出CO2削減量」との関係を多項式で近似した近似式、及びその近似式によって示される近似線L1が併せて示されている。近似線L1は、「エネルギーコスト削減額」と「排出CO2削減量」との関係を一次式で近似した場合の直線である。このように、近似線L1が一次式で近似される場合、近似線L1の傾きによって、「エネルギーコスト削減額」と「排出CO2削減量」との関係が定量的に示される。グラフG1に示す例では、近似線L1の傾きの絶対値は、0.00089であるため、「排出CO2量」1t当たりの「エネルギーコスト」を約1124円(≒1.0÷0.00089)と換算できる。この値は、排出CO2量削減に関する投資判断に活用できる。例えば、排出CO2量の少ないエネルギー機器を導入する際、その費用対効果(すなわち、投資コスト÷想定排出CO2量)が1124円以下である場合は、そのエネルギー機器への投資は排出CO2量削減の観点から妥当であると言える。一方、費用対効果が1124円を超える場合は、そのエネルギー機器への投資を行うよりも、排出CO2量の削減を重視しながら現状のエネルギー施策を変更する方が妥当であると言える。
【0042】
グラフG1には、取引市場のCO2価格の逆数[t/円]に相当する直線L2が、近似線L1と併せて示されている。直線L2は、CO2価格の逆数を示しているため、直線L2の傾きが大きいほどCO2価格が安い。直線L2の傾きと近似線L1の傾きとを比較すると、直線L2の傾きよりも、近似線L1の傾きの方が大きいことから、省エネルギー施策の実施によって、市場のCO2価格よりも安く排出CO2量の削減をすることができていることが分かる。この結果から、排出CO2量削減の観点で、実施した省エネルギー施策が有効であることが分かる。このように、省エネルギー施策の効果を評価する上で有効な情報(例えば、近似線L1及び直線L2など)があれば、グラフG1にその情報を併記してもよい。
【0043】
一方、
図5のグラフG2において、プロットP2は、第1の改善効果データの他の例である「エネルギーコスト削減率」と、第2の改善効果データの他の例である「排出CO
2削減率」と、の関係を示す。グラフG2は、「月あたりのエネルギーコスト削減率[%]」を列方向(横軸)とし、「月あたりの排出CO
2削減率「%」」を縦方向(縦軸)とするマトリクス配置によって表されている。「エネルギーコスト削減率」は、「エネルギーコスト」の推定値D23と「エネルギーコスト」の実績値D21との比率を示す。「排出CO
2削減率」は、「排出CO
2量」の推定値D23と「排出CO
2量」の実績値D21との比率を示す。グラフG2からは、「エネルギーコスト削減率」と「排出CO
2削減率」との間に、相関関係が見て取れない。なお、グラフG2においても、グラフG1と同様に、近似線L1及び直線L2に対応する情報が併記されてもよい。
【0044】
表示部31は、グラフG1,G2を1つの画面に並べて同時に表示してもよいし、グラフG1,G2を別の画面に分けて表示してもよい。表示部31がグラフG1,G2を別の画面に分けて表示する場合、表示部31はボタン等により各画面を切り替えられるように構成されてもよい。表示部31は、グラフG1,G2以外のグラフを表示してもよい。例えば、表示部31は、エネルギー指標D2の他の例である「エネルギー使用量の削減量」と「エネルギーコスト削減量」との関係を示すグラフを表示してもよいし、「エネルギー使用量の削減量」と「排出CO2削減量」との関係を示すグラフを表示してもよい。このように、グラフに示されるエネルギー指標D2の種類は特に限定されない。
【0045】
[省エネルギー効果表示方法]
続いて、
図6を参照しながら、省エネルギー効果表示装置1による省エネルギー効果表示方法について説明する。
図6は、省エネルギー効果表示装置1を使用する際の手順の一例を示す。
【0046】
まず、ユーザは、省エネルギー効果表示装置1を起動させる(ステップS1)。次に、ユーザは、抽出条件指定部22によって、エネルギーデータD1の抽出条件を設定する(ステップS2)。その後、設定された抽出条件に基づいてエネルギーデータD1が抽出され、抽出されたエネルギーデータD1を基に、エネルギー指標D2が求められる。次に、エネルギーデータD1及びエネルギー指標D2を基に、グラフ作成部17によってグラフG1,G2が作成され、作成されたグラフG1,G2が表示部31に表示される(ステップS3)。その後、ユーザは、省エネルギー効果表示装置1を停止させる(ステップS4)。
【0047】
図6に示す例では、グラフG1,G2を表示部31に表示するたびに、省エネルギー効果表示装置1の起動及び停止が行われているが、一度省エネルギー効果表示装置1を起動した後は、特に必要のない限り、省エネルギー効果表示装置1を停止しなくてもよい。この場合、省エネルギー効果表示装置1にエネルギーデータD1が逐次入力されてもよく、エネルギーデータD1を基に作成されるグラフG1,G2が表示部31に一定間隔(例えば、1時間ごと、又は1日ごとなど)で再描画されてもよい。このような形態は、省エネルギー施策の効果をサイネージ又は大型ディスプレイに表示する場合に特に有効である。
【0048】
[ハードウェア構成]
続いて、
図7を参照して、省エネルギー効果表示装置1のハードウェア構成について説明する。
図7は、省エネルギー効果表示装置1のハードウェア構成の一例を示す図である。省エネルギー効果表示装置1は、1つ又は複数のコンピュータ100を含む。コンピュータ100は、CPU(Central Processing Unit)101と、主記憶部102と、補助記憶部103と、通信制御部104と、入力装置105と、出力装置106とを有する。省エネルギー効果表示装置1は、これらのハードウェアと、プログラム等のソフトウェアとにより構成された1または複数のコンピュータ100によって構成される。省エネルギー効果表示装置1が複数のコンピュータ100によって構成される場合には、これらのコンピュータ100はローカルで接続されてもよいし、インターネット又はイントラネットなどの通信ネットワークを介して接続されてもよい。この接続によって、論理的に1つの省エネルギー効果表示装置1が構築される。
【0049】
CPU101は、オペレーティングシステム、及びアプリケーション・プログラムなどを実行する。主記憶部102は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)により構成される。補助記憶部103は、ハードディスク及びフラッシュメモリなどにより構成される記憶媒体である。補助記憶部103は、一般的に主記憶部102よりも大量のデータを記憶する。省エネルギー効果表示装置1を構成する各部の少なくとも一部は、補助記憶部103によって実現される。通信制御部104は、ネットワークカード又は無線通信モジュールにより構成される。省エネルギー効果表示装置1を構成する各部の少なくとも一部は、通信制御部104によって実現されてもよい。入力装置105は、キーボード、マウス、タッチパネル、及び、音声入力用マイクなどにより構成される。例えば、入力インタフェース20の少なくとも一部は、入力装置105によって実現される。出力装置106は、ディスプレイ及びプリンタなどを含んで構成される。出力インタフェース30の少なくとも一部は、出力装置106によって実現される。例えば、出力装置106は、出力インタフェース30によって出力されるデータをディスプレイ等に表示してもよい。
【0050】
補助記憶部103は、予め、プログラム110及び処理に必要なデータを格納している。プログラム110は、省エネルギー効果表示装置1の各機能要素をコンピュータ100に実行させる。プログラム110によって、例えば、上述したステップS1からステップS4に係る処理がコンピュータ100において実行される。例えば、プログラム110は、CPU101又は主記憶部102によって読み込まれ、CPU101、主記憶部102、補助記憶部103、通信制御部104、入力装置105、及び出力装置106の少なくとも1つを動作させる。例えば、プログラム110は、主記憶部102及び補助記憶部103におけるデータの読み出し及び書き込みを行う。プログラム110は、例えば、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリなどの有形の記録媒体に記録された上で提供されてもよい。プログラム110は、データ信号について通信ネットワークを介して提供されてもよい。
【0051】
[作用効果]
以上に説明した省エネルギー効果表示装置1、省エネルギー効果表示方法、及び省エネルギー効果表示プログラムが奏する作用効果について説明する。本実施形態では、グラフG1,G2が表示部31に表示される。ユーザは、表示されたグラフG1,G2を参照することにより、省エネルギー施策の効果を評価することができる。上述したように、
図4のグラフG1を参照すると、「エネルギーコスト削減額」と「排出CO
2削減量」とは、トレードオフの関係にあることが分かる。この結果から、ユーザは、互いに異なる種類のエネルギー指標D2の変化がどのように影響を及ぼし合うのかを把握できる。具体的には、ユーザは、「エネルギーコスト」の変化が「排出CO
2」の変化に影響を及ぼすこと、具体的には、「エネルギーコスト」に対する省エネルギー施策の効果が大きくなるほど「排出CO
2量」に対する省エネルギー施策の効果が小さくなること、を把握できる。このように、ユーザは、グラフG1の結果から、「エネルギーコスト」の変化の要因、及び「エネルギーコスト」の変化の要因を詳細に分析できる。その結果、ユーザは、省エネルギー施策の効果を正確に評価することが可能となる。これにより、ユーザは、省エネルギー施策の評価結果に基づいて、省エネルギー施策の継続実施の検討、及び省エネルギー施策への投資効果の検討などを十分に行うことが可能となる。
【0052】
本実施形態において、グラフG1は、「エネルギーコスト」の推定値D23と「エネルギーコスト」の実績値D21との差分である「エネルギーコスト削減額」と、「排出CO2量」の推定値D23と「排出CO2量」の実績値D21との差分である「排出CO2量」と、の関係を示している。この場合、ユーザは、「エネルギーコスト削減額」と「排出CO2削減量」との関係性について定量的に把握できるため、「エネルギーコスト削減額」の変化の要因、及び「排出CO2削減量」の変化の要因をより詳細に分析できる。その結果、ユーザは、省エネルギー施策の効果をより正確に評価することが可能となる。
【0053】
本実施形態において、グラフ作成部17は、近似線L1をグラフG1と併せて表示部31に表示させている。この場合、ユーザは、「エネルギーコスト削減額」と「排出CO2削減量」との関係性を把握しやすくなるため、省エネルギー施策の効果の評価が容易となる。
【0054】
[変形例]
以上、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0055】
例えば、上述した実施形態では、表示部にグラフG1,G2が表示される場合について説明したが、表示部に表示される改善効果情報は、グラフ形式に限られない。例えば、改善効果情報は、表形式などの他のデータ形式で示されてもよいし、改善効果に関する数値の記載を含む文章として示されてもよい。また、グラフG1,G2以外の他のグラフが表示部に表示されてもよい。また、エネルギーデータの種類は、上述した例に限られない。例えば、水道をエネルギーとみなし、「水道料金」及び「水道使用量」がエネルギーデータに含まれてもよい。
【0056】
上述した実施形態において、表示部は、各グラフG1,G2において、現在の月(実施例によっては、日、週、時間、又は年など)に対応するプロットのみを着色などによって強調して表示してもよい。これにより、至近の操業における省エネルギーの効果をより分かりやすくすることができる。また、表示部は、各グラフG1,G2において、非実施時エネルギー指標の推定値の不確実さに対する情報(例えば、±3σ(標準偏差)の幅)を併せて表示してもよい。
【0057】
上述した実施形態では、対象施設として主に工場を想定して説明したが、対象施設は、一般の商業施設であってもよいし、病院施設又は宿泊施設であってもよいし、輸送施設であってもよい。対象施設が商業施設である場合、エネルギーデータは、床面積×営業時間、及び従業審の延べ労働時間などを含んでもよい。対象施設が病院施設又は宿泊施設である場合、エネルギーデータは、入院患者数及び宿泊者数などを含んでもよい。対象施設が輸送施設である場合、エネルギーデータは、燃料消費量、輸送量(例えば、品物の重量)、輸送距離、及び輸送時間などを含んでもよい。
【0058】
上述した実施形態において、省エネルギー施策は、必ずしも組織的な運用ルールに限定されない。例えば、省エネルギー施策は、特定のエネルギー機器の導入であってもよいし、制御プログラムの改造であってもよい。例えば、蓄電池の充放電プログラムを改造した場合、操業コストなどの工場全体のエネルギー指標に対する改造効果の評価に、本開示に係る省エネルギー効果表示装置、省エネルギー効果表示方法、及び省エネルギー効果表示プログラムを用いることができる。
【0059】
省エネルギー施策の多くは、コストの削減を企図したものが中心であり、例えば、特許文献3においても、コストのみを評価対象としている。しかしながら、近年では、地球温暖化防止の観点から、企業には、排出CO2量の削減に関してより一層の努力が求められている。これに対し、本実施形態によれば、コストに限らず、排出CO2量などについて省エネルギー施策の改善効果を多角的に評価可能であるため、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標13「気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる」に貢献するものである。従って、本実施形態に係る省エネルギー効果表示装置1、省エネルギー効果表示方法、及び省エネルギー効果表示プログラムは、このような観点からも、特許文献3などと比べて優れている。
【符号の説明】
【0060】
1 省エネルギー効果表示装置
15 エネルギー指標計算部(計算部)
16 エネルギー指標推定部(計算部)
17 グラフ作成部(表示制御部)
23 表示切替部(表示制御部)
31 表示部
100 コンピュータ
D1 エネルギーデータ(実績データ)
D2 エネルギー指標(指標データ)
D21 実施時エネルギー指標の実績値(実施時指標データ)
D22 非実施時エネルギー指標の実績値(非実施時指標データ)
D23 非実施時エネルギー指標の推定値(非実施時指標データ)
G1,G2 グラフ(改善効果情報)
L1 近似線