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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164406
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】誘電体用途向けポリマー樹脂
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/00 20060101AFI20231102BHJP
   C08F 212/32 20060101ALI20231102BHJP
   C08F 236/00 20060101ALI20231102BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20231102BHJP
   C08G 65/48 20060101ALI20231102BHJP
   C08L 23/24 20060101ALI20231102BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C08L71/00 A
C08F212/32
C08F236/00
C08L101/00
C08G65/48
C08L23/24
C08L9/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023074784
(22)【出願日】2023-04-28
(31)【優先権主張番号】17/731,605
(32)【優先日】2022-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
2.TEFLON
3.MATLAB
(71)【出願人】
【識別番号】591016862
【氏名又は名称】ローム アンド ハース エレクトロニック マテリアルズ エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Rohm and Haas Electronic Materials LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110000589
【氏名又は名称】弁理士法人センダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コリン ヘイズ
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ケイ.ギャラガー
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー プロコポヴィッチ
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
4J100
【Fターム(参考)】
4J002AA021
4J002AC021
4J002AC081
4J002BB191
4J002BC021
4J002BC081
4J002BC091
4J002BJ001
4J002CC092
4J002CH052
4J002GQ00
4J002HA01
4J005AA23
4J005BD03
4J100AB02R
4J100AB03R
4J100AB04R
4J100AB07P
4J100AQ12S
4J100AS01S
4J100AS02S
4J100AS03S
4J100CA06
4J100DA04
4J100JA43
(57)【要約】
【課題】 誘電体用途向けポリマー樹脂を提供する。
【解決手段】 (a)60~90重量%の少なくとも1種の熱硬化性樹脂と、(b)10~40重量%の少なくとも1種のアリールエーテル樹脂とを含む混合物からの樹脂組成物が提供される。樹脂組成物を電子用途に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)60~90重量%の少なくとも1種の熱硬化性樹脂と、
(b)10~40重量%の少なくとも1種のアリールエーテル樹脂とを含む混合物からの樹脂組成物。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂がアリールシクロブテン樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
少なくとも1種のアリールシクロブテン樹脂が、(a)10~50モル%の1種以上の付加重合性アリールシクロブテンモノマーと、
(b)15~60モル%の1種以上のジエノフィルモノマー、
(c)15~50モル%の1種以上のジエンモノマー、及び
(d)0~10モル%の1種以上のヘテロ環含有モノマー、
からなる群から選択される1種以上のモノマーと、を含む混合物からの重合生成物を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記1種以上の付加重合性アリールシクロブテンモノマーが、式(A-1)、式(A-2)、及び式(A-3)
【化1】

(式中、
は、アルキル、アリール、炭素環式アリール、多環式アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、アリールアルキル、カルボニル、エステル、カルボキシル、エーテル、チオエステル、チオエーテル、第三級アミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される二価基であり;
は、単結合又はアルキル、アリール、炭素環式アリール、多環式アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、アリールアルキル、カルボニル、エステル、カルボキシル、及びエーテル、チオエステル、チオエーテル、第三級アミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される二価基であり;
は重合性官能基であり;
は、共有結合又は多価連結基であり;
Mは、置換若しくは無置換の二価芳香族ラジカル基、又は置換若しくは無置換の二価ヘテロ芳香族ラジカル基であり;
~Rは、同じであるか又は異なり、独立に、置換又は無置換アルキル、置換又は無置換アルキルオキシ、置換又は無置換アリール、置換又は無置換アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオール、置換アルキルアミノ、及び置換アリールアミノからなる群から選択され;
~Rは、同じであるか又は異なり、独立に、水素、重水素、シアノ、ハロ、メチル、ビニル、アリル、及び1~100個の炭素原子を有する置換又は無置換のイソプレンからなる群から選択され;
x及びyは、同じものであるか若しくは異なり、1~5の整数であり、ここで、Lが共有結合の場合、y=1である)からなる群から選択される構造を有する、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記1種以上のジエノフィルモノマーが式(II)
【化2】

(式中、
Bは、水素、置換若しくは無置換アルキル、置換若しくは無置換芳香族、置換若しくは無置換ヘテロ芳香族、置換若しくは無置換アルキルオキシ、又はヒドロキシであり;
~R11は、同じであるか又は異なり、水素、ビニル、アリル、1~100個の炭素原子を有する置換若しくは無置換のイソプレン、1~100個の炭素原子を有する置換若しくは無置換のアルキル基、ハロゲン、シアノ、6~100個の炭素原子を有する置換若しくは無置換のアリール基、6~100個の炭素原子を有する置換若しくは無置換のヘテロアリール基、及びそれらの組み合わせからなる群から独立して選択される)によって与えられる構造を有する、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記1種以上のジエンモノマーが式(IV)
【化3】

(式中、
16は、同じものであるか若しくは異なり、水素及びメチルからなる群から独立して選択され;
17は、同じものであるか若しくは異なり、水素、C1~5アルキル、C1~5アルコキシ、C1~5チオアルキル、及びC5~12アルケニルからなる群から独立して選択される)によって与えられる構造を有する、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記1種以上のヘテロ環含有モノマーが、ビニル置換C3~12ヘテロ環及びビニル置換C3~5ヘテロ環からなる群から選択される、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種のアリールエーテル樹脂が、式(VII)
【化4】

(式中、
27は、出現ごとに同じものであるか若しくは異なり、水素及びAr-O-CH-CH=CHからなる群から選択され;
28は、出現ごとに同じものであるか若しくは異なり、水素、-O-CH-CH=CH、及びアルキルからなる群から選択され;
Arは出現ごとに同じか又は異なり、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、及びビスフェノールAからなる群から選択され;及び
n=1~10である)によって与えられる構造を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種のアリールエーテル樹脂が、式(B1)~式(B6)
【化5】

【化6】

からなる群から選択される、請求項8に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1に記載の樹脂組成物と1種以上の溶媒とを含む液体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリマー樹脂組成物、そのような樹脂の調製方法及び電子デバイスの製造でのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリマー樹脂は、スピン-オン誘電体パッケージング、回路基板、ラミネート、及び他の電子用途に使用されている。これらの樹脂は、良好な機械的特性及び良好な接着特性、並びに低い誘電特性を有する膜/コーティングを提供する必要がある。特に、高い引張強度、高い引張伸び、銅への良好な接着性、並びに高周波数での低い比誘電率(Dk)及び損失正接(Df)を有することが望ましい。加えて、過度の硬化時間なしにより低い温度で樹脂を硬化できることが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,198,878号明細書
【特許文献2】米国特許第8,143,360号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第20190169327A1号明細書
【特許文献4】米国特許第10,030,165B2号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
改善された特性を有する誘電性樹脂組成物が継続して必要とされている。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本明細書の全体に渡って用いられる場合、以下の略語は、文脈が特に明確に示さない限り、以下の意味を有するものとする:℃=摂氏度;g=グラム;nm=ナノメートル、μm=ミクロン=マイクロメートル;mm=ミリメートル;sec.=秒;及びmin.=分。特に明記しない限り、全ての量は、重量パーセント(「重量%」)であり、全ての比は、モル比である。全ての数値範囲は、そのような数値範囲が合計100%になるように制約されることが明らかである場合を除いて、包含的であり、且つ任意の順で組み合わせ可能である。特に明記しない限り、全てのポリマー及びオリゴマーの分子量は、g/モル又はダルトンの単位の重量平均分子量(「Mw」)であり、ポリスチレン標準と比較してゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される。
【0006】
冠詞「a」、「an」及び「the」は、そうではないと文脈が明確に示していない限り、単数形及び複数形を指す。本明細書で用いるところでは、用語「及び/又は」は、関連項目の1つ以上のいずれかの及び全ての組み合わせを包含する。
【0007】
本明細書で用いるところでは、R、R、R、R’、R’’及び任意の他の変量は、総称であり、式中で定義される変量と同じものであるか、又は異なり得る。
【0008】
本明細書で用いるところでは、用語「付加重合性」は、それがモノマーに適用されるとき、他の生成物の同時生成なしに基の簡単な連結によって重合できる不飽和モノマーを意味することを意図する。
【0009】
用語「隣接した」は、置換基に言及するとき、単結合又は多重結合によって連結している炭素に結合している置換基を意味することを意図する。例示的な隣接したR基は、以下に示される:
【化1】
【0010】
用語「アルコキシ」は、基RO-(ここで、Rはアルキル基である)を意味することを意図する。
【0011】
用語「アルキル」は、脂肪族炭化水素に由来する基を意味することを意図し、直鎖、分岐状、又は環状基を包含する。化合物「に由来する」基は、1個以上の水素又は重水素の除去によって形成されるラジカルを示す。いくつかの実施形態において、アルキルは、1~20個の炭素原子を有する。
【0012】
用語「芳香族化合物」は、4n+2の非局在化π電子を有する少なくとも1つの不飽和環状基を含む有機化合物を意味することを意図する。
【0013】
用語「アリール」は、1つ以上の結合点を有する芳香族化合物に由来する基を意味することを意図する。この用語は、単環を有する基及び単結合によって連結できる又は一緒に縮合できる複数の環を有する基を包含する。炭素環式アリール基は、環構造中に炭素のみを有する。ヘテロアリール基は、環構造中に少なくとも1つのヘテロ原子を有する。
【0014】
用語「アルキルアリール」は、1つ以上のアルキル置換基を有するアリール基を意味することを意図する。
【0015】
用語「アリールオキシ」は、基RO-(ここで、Rはアリール基である)を意味することを意図する。
【0016】
組成物に適用される用語「硬化性」は、放射及び/若しくは熱に暴露された場合に、又は使用の条件下でより硬くなり、且つ、溶媒に溶けにくくなる材料を意味することを意図する。
【0017】
用語「液体組成物」は、材料がそれに溶解して溶液を形成する液体媒体、材料がそれに分散して分散系を形成する液体媒体、又は材料がそれに懸濁して懸濁液若しくは乳化液を形成する液体媒体を意味することを意図する。
【0018】
用語「(メタ)アクリレート」は、アクリレートか又はメタクリレートかのどちらかである基を意味することを意図する。
【0019】
用語「溶媒」は、使用する室温で液体である有機化合物を意味することを意図する。この用語は、単一の有機化合物又は2種以上の有機化合物の混合物を包含することを意図する。
【0020】
用語「膜」及び「層」は、本明細書の全体に渡って同じ意味で用いられる。
【0021】
全ての範囲は、包括的であり、且つ、組み合わせ可能である。例えば、用語「50~3000cPsの範囲、又は100cPs以上」には、50~100cPs、50~3000cPs及び100~3000cPsのそれぞれが含まれるであろう。
【0022】
本明細書において、特に明示的に述べない限り、又は使用に関連して反対を示さない限り、本明細書の主題の実施形態が、特定の特徴又は要素を含む、包含する、含有する、有する、それらからなる又はそれらによって若しくはそれらから構成されると述べられるか又は記載される場合、明示的に述べられた又は記載されたものに加えて1つ以上の特徴又は要素が、実施形態で存在し得る。本明細書の開示された主題の代替実施形態は、特定の特徴又は要素から本質的になると記載されるが、その実施形態では、操作の原理又は実施形態の際立った特性を実質的に変更する特徴又は要素は、その中に存在しない。本明細書の記載された主題の更なる代替実施形態は、特定の特徴又は要素からなると記載されるが、その実施形態又はその実態のない変形形態では、具体的に述べられた又は記載された特徴又は要素のみが存在する。
【0023】
特に定義しない限り、本明細書に用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様の又は均等な方法及び材料を本開示の実施形態の実施又は試験に使用することができるが、好適な方法及び材料が以下に記載される。更に、材料、方法及び実施例は、例示的であるに過ぎず、限定的であることを意図しない。
【0024】
本明細書に記載されていない範囲まで、特定の材料、処理行為、及び回路に関する多くの詳細は、従来のものであり、フォトレジスト、誘電材料、及び半導体部材技術内のテキスト及び他の情報源で見出され得る。
【0025】
(a)60~90重量%の少なくとも1種の熱硬化性樹脂と、(b)10~40重量%の少なくとも1種のアリールエーテル樹脂とを含む混合物から樹脂組成物が提供される。
【0026】
熱硬化性樹脂は、特に限定されず、アリールシクロブテン、ビニルラジカル硬化ポリマー、ビスマレイミド熱硬化性樹脂、エポキシ熱硬化性樹脂、及びマイケル付加によって硬化された熱硬化性樹脂からなる群から選択される。
【0027】
アリールシクロブテン樹脂は、(a)10~50モル%の1種以上の付加重合性アリールシクロブテンモノマーと;(b)15~60モル%の1種以上のジエノフィルモノマー、(c)15~50モル%の1種以上のジエンモノマー、及び(d)0~10モル%の1種以上のヘテロ環含有モノマーからなる群から選択される1種以上のモノマーと;を含有する混合物からの重合生成物を含む。
【0028】
アリールシクロブテン樹脂は、少なくとも1つの付加重合性置換基を有するアリールシクロブテンである付加重合性アリールシクロブテンモノマーから調製される。置換基は、ビニル基、アリル基、又は(メタ)アクリレート基であることができる。モノマーは、共重合に存在する全モノマーを基準として10~50モル%、又はいくつかの実施形態では20~40モル%の量で存在することができる。
【0029】
いくつかの実施形態において、アリールシクロブテンモノマーは、以下に示される式A-1、式A-2、又は式A-3を有する:
【化2】
【0030】
式A-1において、Kは、アルキル、アリール、炭素環式アリール、多環式アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、アリールアルキル、カルボニル、エステル、カルボキシル、エーテル、チオエステル、チオエーテル、第三級アミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される二価基であることができる。いくつかの非限定的な実施形態では、Kは、ヘテロ原子を持たない無置換C6~36炭素環式アリール基、若しくはヘテロ原子を持たない無置換C6~18炭素環式アリール基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~36炭素環式アリール基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~18炭素環式アリール基;又は無置換C3~36ヘテロアリール基、若しくは無置換C3~18ヘテロアリール基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~36ヘテロアリール基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~18ヘテロアリール基;又は環ヘテロ原子を持たない無置換C6~36アリールオキシ基、若しくは環ヘテロ原子を持たない無置換C6~18アリールオキシ基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~36ヘテロアリールオキシ基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~18ヘテロアリールオキシ基;又はヘテロ原子を持たない無置換C6~36アリールアルキル基、若しくはヘテロ原子を持たない無置換C6~18アリールアルキル基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~36ヘテロアリールアルキル基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~18ヘテロアリールアルキル基であってよい。
【0031】
式A-1において、Lは、共有結合又は多価連結基である。いくつかの非限定的な実施形態では、Lは、環ヘテロ原子を有さないC6~12炭素環式アリール基であるか、又はフェニル、ビフェニル、及びナフチルからなる群から選択される。
【0032】
式A-1において、Mは、置換若しくは無置換の二価芳香族若しくは多環芳香族ラジカル基、又は置換若しくは無置換の二価ヘテロ芳香族若しくは多環ヘテロ芳香族ラジカル基である。式A-1のいくつかの非限定的な実施形態では、Mは、ヘテロ原子持たない無置換C6~36炭素環式アリール基、若しくはヘテロ原子持たない無置換C6~18炭素環式アリール基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~36炭素環式アリール基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~18炭素環式アリール基;又は無置換C3~36ヘテロアリール基、若しくは無置換C3~18ヘテロアリール基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~36ヘテロアリール基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~18ヘテロアリール基である。
【0033】
式A-1において、Rは、水素、置換若しくは無置換アルキル、置換若しくは無置換アルキルオキシ、置換若しくは無置換アリール、置換若しくは無置換アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオール、置換アルキルアミノ、及び置換アリールアミノからなる群から選択される。式A-1のいくつかの非限定的な実施形態では、Rは、水素;又はC1~6アルキル、若しくはC1~3アルキル;又はC1~6アルコキシ、若しくはC1~3アルコキシである。
【0034】
式A-1において、RとRは同じであるか又は異なり、水素、重水素、シアノ、ハロ、メチル、ビニル、アリル、及び1~100個の炭素原子を有する置換若しくは無置換イソプレンからなる群から独立して選択される。
【0035】
式A-1のいくつかの非限定的な実施形態では、R=R=R=水素である。
【0036】
式A-1のいくつかの非限定的な実施形態では、x及びyは同じであるか又は異なり、1~5の整数であり、Lが共有結合である場合にはy=1である。
【0037】
式A-2において、Kは、単結合であるか、又はアルキル、アリール、炭素環式アリール、多環式アリール、ヘテロアリール、アリールオキシ、アリールアルキル、カルボニル、エステル、カルボキシル、及びエーテル、チオエステル、チオエーテル、第三級アミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される二価基であることができる。いくつかの非限定的な実施形態では、Kは、共有結合;又はヘテロ原子を持たない無置換C6~36炭素環式アリール基、若しくはヘテロ原子を持たない無置換C6~18炭素環式アリール基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~36炭素環式アリール基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~18炭素環式アリール基;又は無置換C3~36ヘテロアリール基、若しくは無置換C3~18ヘテロアリール;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~36ヘテロアリール基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C6~18ヘテロアリール基;又は環ヘテロ原子を持たない無置換C6~36アリールオキシ基、若しくは環ヘテロ原子を持たない無置換C6~18アリールオキシ基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~36ヘテロアリールオキシ基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~18ヘテロアリールオキシ基;又はヘテロ原子を持たない無置換C6~36アリールアルキル基、若しくはヘテロ原子を持たない無置換C6~18アリールアルキル基;又はアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~36ヘテロアリールアルキル基、若しくはアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換C3~18ヘテロアリールアルキル基であってよい。
【0038】
式A-1におけるL、M、x、及びyは、式A-2におけるL、M、x、及びyに等しく当てはまる。式A-1におけるRについての上記の実施形態の全てが、式A-2におけるR~Rに等しく当てはまる。
【0039】
式A-3において、Kは、ビニル、スチリル、マレイミド、アクリル、メタクリル、アリル、アルキニル、又は官能基的に同等であるものからなる群から選択される重合性官能基である。
【0040】
式A-1及びA-2におけるL、M、x、及びyは、式A-3におけるL、M、x、及びyに等しく当てはまる。式A-1及びA-2におけるR~Rについての上記の実施形態の全てが、式A-3におけるR~Rに等しく当てはまる。
【0041】
非限定的な一実施形態において、アリールシクロブテンモノマーは、式A-1-aを有する:
【化3】

(式中、
Arは、置換若しくは無置換の炭素環式アリール又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり;Qは、共有結合、O、S、又はNRであり、Rは、水素、重水素、置換若しくは無置換の炭素環式アリール、及び置換若しくは無置換のヘテロアリールからなる群から選択され、R~Rは同じであるか又は異なり、水素、重水素、アルキル、アルコキシ、置換若しくは無置換の炭素環式アリール基、及び置換若しくは無置換のヘテロアリール基からなる群から独立して選択され、Rは、アルキル、アルコキシ、置換若しくは無置換の炭素環式アリール基、及び置換若しくは無置換のヘテロアリール基からなる群から選択され;aは0~4の整数である)。
【0042】
式A-1-aにおいて、Arは、6~36個の環炭素を有する無置換の炭素環式アリール基、若しくは6~12個の環炭素を有する無置換の炭素環式アリール基;又は6~36個の環炭素を有しアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換炭素環式アリール基、若しくは6~12個の環炭素を有しアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換炭素環式アリール基;又は3~36個の環炭素を有するヘテロアリール基、若しくは3~12個の環炭素を有するヘテロアリール基;又は6~36個の環炭素を有しアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換ヘテロアリール基、若しくは3~12個の環炭素を有しアルキル及びアルコキシからなる群から選択される少なくとも1つの置換基を有する置換ヘテロアリール基であるか;或いはフェニル、ビフェニル、及びナフチルからなる群から選択される。
【0043】
式A-1-aのいくつかの非限定的な実施形態では、Qは、共有結合、又はO、又はS、又はNH、又はNCHである。
【0044】
式A-1-aのいくつかの非限定的な実施形態では、aは、0;又は1;又は2;又は>0;又は>0であり、少なくとも1つのRは、C1~6アルキル、若しくはC1~3アルキル;若しくは>0であり;少なくとも1つのRは、C1~6アルコキシ、若しくはC1~3アルコキシである。
【0045】
別の非限定的な実施形態において、アリールシクロブテンモノマーは、式A-2-aを有する:
【化4】

(式中、
Arは、置換若しくは無置換の炭素環式アリール又は置換若しくは無置換のヘテロアリール基であり;Qは、共有結合、O、S、又はNRであり;Rは、水素、重水素、置換若しくは無置換の炭素環式アリール、及び置換若しくは無置換のヘテロアリールからなる群から選択され、R~Rは同じであるか又は異なり、水素、重水素、アルキル、アルコキシ、アリールオキシ、置換若しくは無置換の炭素環式アリール基、及び置換若しくは無置換のヘテロアリール基からなる群から独立して選択され;Rは、アルキル、アルコキシ、置換若しくは無置換の炭素環式アリール基、及び置換若しくは無置換のヘテロアリール基からなる群から選択され;bは0~3の整数である)。
【0046】
式A-2-aにおいて、bは、0;又は1;又は2;又は>0;又は>0であることができ、少なくとも1つのRは、C1~6アルキル、又はC1~3アルキル;又は>0であり;少なくとも1つのRは、C1~6アルコキシ、又はC1~3アルコキシである。
【0047】
式A-1-aにおけるAr及びQについての上記の実施形態の全てが、式A-2-aにおけるAr及びQに等しく当てはまる。式A-1におけるRについての上記の実施形態の全てが、式A-2-aにおけるR~Rに等しく当てはまる。
【0048】
アリールシクロブテンモノマーの例としては、1-(4-ビニルフェノキシ)-ベンゾシクロブテン、1-(4-ビニルメトキシ)-ベンゾシクロブテン、1-(4-ビニルフェニル)-ベンゾシクロブテン、1-(4-ビニルヒドロキシナフチル)-ベンゾシクロブテン、4-ビニル-1-メチル-ベンゾシクロブテン、4-ビニル-1-メトキシ-ベンゾシクロブテン、及び4-ビニル-1-フェノキシ-ベンゾシクロブテンを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0049】
アリールシクロブテン樹脂は、式(II)によって与えられる構造を有する共重合に存在する全モノマーを基準として5~70モル%、又はいくつかの実施形態では15~60モル%の量で存在する1種以上のジエノフィルモノマーから調製される:
【化5】
【0050】
式(II)において、Bは、水素、置換若しくは無置換アルキル、置換若しくは無置換芳香族、置換若しくは無置換ヘテロ芳香族、置換若しくは無置換アルキルオキシ、又はヒドロキシであり得る。R~R11は、同じであるか又は異なり、水素、重水素、メチル、ビニル、アリル、1~100個の炭素原子を有する置換若しくは無置換のイソプレン、1~100個の炭素原子を有する置換若しくは無置換のアルキル基、ハロゲン、シアノ、6~100個の炭素原子を有する置換若しくは無置換のアリール基、6~100個の炭素原子を有する置換若しくは無置換のヘテロアリール基、及びそれらの組み合わせからなる群から独立して選択される。
【0051】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のジエノフィルモノマーは、式(III)によって与えられる構造を有する
【化6】

(式中、R12~R14は、同じであるか又は異なり、水素及びC1~5アルキルからなる群から独立して選択され;R15は、各存在において同じであるか又は異なり、水素及びC1~5アルキルからなる群から選択され、隣接するR15基は結合して縮合6員芳香環を形成することができる)。
【0052】
いくつかの非限定的な実施形態では、1種以上のジエノフィルモノマーは、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、1-ビニルナフタレン、及び2-ビニルナフタレンからなる群から選択される。
【0053】
ジエンモノマーは、共重合に存在する全モノマーを基準として15~50モル%、15~30モル%、又は20~25モル%の量で存在することができる。一実施形態では、ジエンモノマーは、下に示される式(IV)を有する:
【化7】

(式中、R16は、各存在において同じであるか又は異なり、水素及びメチルからなる群から選択され;R17は、各存在において同じであるか又は異なり、水素、C1~5アルキル、C1~5アルコキシ、C1~5チオアルキル、及びC5~12アルケニルからなる群から選択される)。
【0054】
式IVにおいて、R16は全て水素であることができ、或いは3つのR16が水素であり、1つのR16がメチルである。2つのR17は、同じものである;又は異なる;又は少なくとも1つのR17は水素である;又は少なくとも1つのR17は、C1~3アルキル、若しくはメチルである;又は少なくとも1つのR17は、C1~3アルコキシ、若しくはメトキシである;又は少なくとも1つのR17は、式-(CH-CH=C(R18、(式中、cは、1~5の整数であり、R18は、水素又はメチルである)を有するアルケニルである。
【0055】
ジエンモノマーの例としては、ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,4-ヘキサジエン、シクロペンタジエン、β-ミルセン、オシメン、シクロオクタジエン、ファルネセン、及び重合性テルペンを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0056】
混合物は、1~20モル%、又は3~10モル%、又は4~7モル%の付加重合性ビニル置換C3~12ヘテロ環又はビニル置換C3~5ヘテロ環モノマーを更に含むことができる。いくつかの実施形態において、ヘテロ環モノマーは、1つ以上のC1~6アルキル、C6~12炭素環式アリール、又はC3~12ヘテロアリールで更に置換されていることができる。ヘテロ環モノマーは、N-ヘテロ環、S-ヘテロ環、N,S-ヘテロ環、及びそれらの置換誘導体からなる群から選択される。
【0057】
N-ヘテロ環は、少なくとも1個の環窒素を有することができる。N-ヘテロ環の例としては、ピロール、ピリジン、ジアジン、トリアジン、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、及びキノロンを挙げることができるが、それらに限定されない。S-ヘテロ環は、少なくとも1個の環硫黄を有することができる。S-ヘテロ環の例としては、チオフェン、ベンゾチオフェン、及びジベンゾチオフェンを挙げることができるが、それらに限定されない。N,S-ヘテロ環は、少なくとも1個の環窒素及び1個の環硫黄を有することができる。N,S-ヘテロ環の例としては、チアゾール、チアジアゾール、及びチアジアジンを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0058】
非限定的な一実施形態では、ヘテロ環モノマーは以下に示す式Vを有する:
【化8】

(式中、Z及びZは、同じであるか又は異なり、N又はCR22aであり;R19~R21及びR22aは、各存在において同じであるか又は異なり、水素及びC1~5アルキルからなる群から選択される)。
【0059】
式Vにおいて、Z=Zであり;又はZ≠Zであり;又はZは、CH、若しくはCR22a、若しくはN、若しくはCHであり;又はZは、CR22a、若しくはNである。R19は、水素、又はC1~3アルキル、又はメチルである。式VにおけるR19についての上記の実施形態の全ては、式VにおけるR20、R21、及びR22aに等しく当てはまり、或いはR19=R20=R21=水素である。
【0060】
ヘテロ環モノマーの例としては、4-ビニルピリジン、4-ビニル-1,3-ジアジン、2-ビニル-1,3,5-トリアジン、及び4-メチル-5-ビニル-1,3-チアゾールを挙げることができるが、それらに限定されない。更に、1種以上の追加の付加重合性モノマーが重合に存在することができる。
【0061】
いくつかの非限定的な実施形態では、少なくとも1種のアリールシクロブテン樹脂は、式(VI)によって与えられる構造を有する
【化9】

(式中、Arは、N、S、O、又はP原子を含有するヘテロ環であり;R23は、H、CH、エチル、又はt-ブチルであり;R24は、H、CH、C~C12アルキル、又はC~C12アルキレンであり;R25は、シクロブテン、1-オキシ-シクロブテン、又はα-メチルシクロブテンであり;lは0~10の整数であり;R26は1~12個の炭素原子のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基であり;nは5~70の整数であり;mは5~50の整数であり;oは5~50の整数であり;pは5~50の整数であり;その結果l+n+m+o+p=100である)。
【0062】
いくつかの非限定的な実施形態では、少なくとも1種のアリールエーテル樹脂は、式(VII)によって与えられる構造を有する
【化10】

(式中、R27は、出現ごとに同じであるか又は異なり、水素、メチル、アルキル、アリール、及びAr-O-CH-CH=CHからなる群から選択され;R28は、出現ごとに同じであるか又は異なり、水素、アミノ、ヒドロキシル、アリル、-O-CH-CH=CH、及びアルキルからなる群から選択され;Arは、出現ごとに同じであるか又は異なり、ベンジル、ナフチル、ビフェニル、及びビスフェノールAからなる群から選択され;及びn=1-10である)。
【0063】
いくつかの非限定的な実施形態では、少なくとも1種のアリールエーテル樹脂は、樹脂組成物の5~50重量%、いくつかの非限定的な実施形態では10~40重量%、及びいくつかの非限定的な実施形態では15~25重量%で存在する。
【0064】
いくつかの非限定的な実施形態では、少なくとも1種のアリールエーテル樹脂は、5,000Da未満、いくつかの非限定的な実施形態において4,000Da未満、いくつかの非限定的な実施形態において3,000Da未満、いくつかの非限定的な実施形態において2,000Da未満、及びいくつかの非限定的な実施形態において1,000Da未満の分子量を有する。
【0065】
いくつかの非限定的な実施形態では、式(VII)によって与えられる構造を有するアリルエーテル樹脂は、フェノールベンズアルデヒドコポリマー、フェノールホルムアルデヒドコポリマー、ビフェニル/フェノールホルムアルデヒドコポリマー、ビスフェノール-Aホルムアルデヒドコポリマー、クレゾールホルムアルデヒドコポリマー、ナフタレン/フェノールホルムアルデヒドコポリマー等及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のコポリマーをベースとした前駆体から調製される。
【0066】
いくつかの非限定的な実施形態では、使用される前駆体は、ノボラック構造を有するフェノール系硬化剤及びノボラック構造を有するナフトール系硬化剤からなる群から選択される1つ以上であり得る。いくつかの非限定的な実施形態では、フェノールノボラック樹脂、トリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル型樹脂、トリアジン骨格含有ナフトール樹脂、及びビフェニルアラルキル型フェノール樹脂を用いてもよい。市販のビフェニルアラルキル型フェノール樹脂としては、「MEH-7700」、「MEH-7810」、「MEH-7851」、及び「MEH7851-4H」(明和化成株式会社から入手可能)及び「GPH」(日本化薬株式会社から入手可能)が挙げられる。市販のナフトールノボラック樹脂としては、「NHN」及び「CBN」(日本化薬株式会社から入手可能)が挙げられる。市販のナフトールアラルキル型樹脂としては、「SN170」、「SN180」、「SN190」、「SN475」、「SN485」、「SN495」、「SN395」、及び「SN375」(東都化成株式会社から入手可能)が挙げられる。市販のフェノールノボラック樹脂としては、「TD2090」(DIC Corporationから入手可能)が含まれ、市販のトリアジン骨格含有フェノールノボラック樹脂には、「LA3018」、「LA7052」、「LA7054」、及び「LAI356」(DIC Corporationから入手可能)が挙げられる。これらの樹脂は、単独で又は2つ、3つ以上の組み合わせで使用され得る。
【0067】
いくつかの非限定的な実施例では、少なくとも1種のアリールエーテル樹脂は、式(B1)~式(B6)からなる群から選択される
【化11】

【化12】

(式中、n=1~10である)。
【0068】
本明細書に開示されるアリールシクロブテン樹脂は、熱開始剤、光開始剤又は他の光活性化合物の作用により上記の付加重合性モノマーを共重合させることによって形成することができる。
【0069】
一実施形態において、共重合プロセスは、極性溶媒中の上に記載された付加重合性モノマーの混合物及びラジカル開始剤を提供する工程と、混合物を5~50時間の期間に渡って50~150℃の温度に加熱する工程とを含む。別の実施形態において、共重合プロセスは、極性溶媒中の上に記載された付加重合性モノマーの混合物を提供する工程と、混合物を50~150℃の温度に加熱して加熱された混合物を形成する工程と、ラジカル開始剤を5~50時間の期間に渡って加熱された混合物へ連続的に供給する工程とを含む。
【0070】
極性溶媒は、単一の有機化合物又は化合物の混合物であることができる。極性溶媒は、モノマーがその中に混和性である又は分散性であるものである。極性溶媒は、反応混合物の総重量を基準として10~70重量%、又は20~50重量%の量で存在することができる。一実施形態において、極性溶媒は、(シクロ)アルカノン若しくは環状エステル、又は線状若しくは分岐状ケトン及びC1~8エステルなどの、極性有機溶媒であることができる。
【0071】
ラジカル開始剤は、一般にアゾ化合物又は有機過酸化物である。一実施形態において、ラジカル開始剤は、油溶性アゾ化合物である。そのような開始剤としては、例えば、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)を挙げることができる。添加される合計開始剤は、出発反応混合物の重量を基準として、1~5重量%の範囲にあることができる。
【0072】
所望の反応時間後に、結果として生じた最終反応混合物が得られ、室温(20~25℃)に冷却され、必要に応じて処理される。本開示のポリマーは、そのまま使用され得るか、又は水若しくはメタノールなどの、非溶媒を添加してポリマーを溶液から沈澱させ、その後有機溶媒を除去することによって単離され得る。
【0073】
本明細書に開示されるアリールエーテル樹脂は、フェノール-アルデヒド型コポリマーとアリルハライドとの反応によって形成され得る。フェノール-アルデヒド樹脂は適した塩基で脱プロトン化され得、置換が生じてアリルエーテル生成物を製造することができる。
【0074】
本開示は、更に、1種以上の有機溶媒に溶解した又は分散した上記樹脂を含む液体組成物に関する。液体組成物は、任意の公知の技術を用いて基板上へ堆積させて膜を形成し、その後、加熱して溶媒を除去することができる。これに、膜を更に硬化させるための追加の加熱工程が続くことができる。いくつかの非限定的な実施形態において、本開示の液体組成物は、フォトリソグラフィー、パッケージング、接着剤、シーリング及びスピンオンコーティング又は緩衝層でなどの、バルク誘電性用途のための誘電体膜を形成するために使用することができる。基板上に形成された誘電体膜は、直接使用することができ、或いは剥離してから電子デバイスにおける様々な基板上で使用することができる。
【0075】
当技術分野において公知の任意の基板を本開示に使用することができる。基板の例としては、シリコン、銅、銀、インジウムスズ酸化物、二酸化ケイ素、ガラス、窒化ケイ素、アルミニウム、金、ポリイミド及びエポキシモールドコンパウンドを挙げることができるが、それらに限定されない。
【0076】
好適な有機溶媒は、樹脂がそれに溶けるものである。特に有用な有機溶媒は、アリールシクロブテンポリマーの製造又は調合に有用な任意の溶媒である。例示的な有機溶媒としては、限定なしに、極性のプロトン性溶媒及び極性の非プロトン性溶媒、例えば、2-メチル-1-ブタノール、4-メチル-2-ペンタンオール、及びメチルイソブチルカルビノールなどのアルコール;乳酸エチル、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、2-ヒドロキシイソ酪酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、酢酸n-ブチル及び3-メトキシ-1-ブチルアセテートなどのエステル;ガンマ-ブチロラクトンなどのラクトン;N-メチルピロリジノンなどのラクタム;プロピレングリコールメチルエーテル及びジプロピレングリコールジメチルエーテル異性体などのエーテル、例えばPROGLYDE(商標)DMM(TheDowChemicalCompany,Midland,MI);2-ブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノンなどのケトン;並びにそれらの混合物が挙げられる。
【0077】
好適な添加剤を本開示の液体組成物へ添加することができる。添加剤の例としては、限定なしに、硬化剤、ポリマーとは別個の架橋性モノマーなどの、架橋剤、界面活性剤、無機フィラー、有機フィラー、可塑剤、接着促進剤、金属不動態化材、及び前述のいずれか組み合わせのそれぞれの1つ以上を挙げることができる。好適な界面活性剤は、当業者に周知であり、非イオン界面活性剤が好ましい。そのような界面活性剤は、0~10g/L、又は0~5g/Lの量で存在し得る。
【0078】
任意の好適な無機フィラーを本組成物で任意選択的に使用することができ、それらは当業者に周知である。例示的な無機フィラーとしては、限定するものではないが、シリカ、アルミナ、硫酸バリウム、タルク、粘土、マイカ粉末、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、ホウ酸アルミニウム、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸マグネシウム、チタン酸ビスマス、酸化チタン、ジルコン酸バリウム、及びジルコン酸カルシウムを挙げることができる。いくつかの非限定的な実施形態では、シリカは、アモルファスシリカ、粉砕シリカ、ヒュームドシリカ、結晶シリカ、合成シリカ、又は中空シリカであってよい。いくつかの非限定的な実施形態では、球状シリカが使用される。無機フィラーは、単独で使用することができ、或いは2種以上を組み合わせて使用することができる。いくつかの非限定的な実施形態では、無機フィラーは使用されない。
【0079】
無機フィラーの平均粒子径は特に限定されない。絶縁層上に微細な配線を形成する観点から、無機フィラーの平均粒子径の上限は5μm以下であり、いくつかの非限定的な実施形態では3μm以下であり、いくつかの非限定的な実施形態では1μm以下であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.7μm以下であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.5μm以下であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.4μm以下であり、いくつかの非限定的な実施形態では0.3μm以下である。他方で、無機フィラーの平均粒径の下限は、0.01μm以上、いくつかの非限定的な実施形態では0.03μm以上、いくつかの非限定的な実施形態では0.05μm以上、いくつかの限定的な実施形態では0.07μm以上、いくつかの非限定的な実施形態では0.1μm以上とすることができる。
【0080】
無機フィラーの平均粒子径は、ミー散乱理論に基づくレーザー回折及び散乱法によって測定することができる。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置を使用して無機フィラーの粒度分布を体積基準で求め、そのメジアン径を平均粒子径として測定することができる。測定は、超音波によって、無機フィラーが水中に分散されている分散液に対して行うことができる。測定は、株式会社堀場製作所製のLA-500、750、及び950などの市販の装置で行うことができる。
【0081】
無機フィラーは典型的に、組成物の不揮発性総重量を基準として35重量%~80重量%の量で使用される。
【0082】
無機フィラーは、フィラーを熱硬化性樹脂と相溶化させるためのカップリング剤による表面処理が行われていてもいなくてもよい。当業者は、適切な熱硬化性樹脂の化学的性質に合わせるためにどのように表面処理を選択すべきかを理解することができる。表面処理剤の非限定的な例としては、フェニルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、及びジイソプロポキシチタンビス(トリエタノールアミネ-ト)が挙げられる。
【0083】
金属不動態化材は、銅不動態化剤であることができる。好適な銅不動態化剤は、当技術分野において周知であり、イミダゾール、ベンゾトリアゾール、エチレンジアミン又はその塩若しくは酸エステル、及びイミノ二酢酸又はそれらの塩が挙げられる。そのような架橋剤は、典型的には、組成物中の重合性モノマーの総重量を基準として、0~5重量%、又は0.2~1重量%の量で使用される。
【0084】
任意の好適な架橋剤が本液体組成物に任意選択的に使用され得る。好適な架橋剤は、当業者によって選択されるようなアルケン及びディールスアルダージエンなどの、樹脂組成物中の官能基と反応し得る。そのような好適な架橋剤としては、多官能性チオール、多官能性アジド、多官能性アジリン、及びビス-アリールシクロブテンモノマー、並びに(メタ)アクリレート、マレイミド、アリル化合物、ビニルシラン化合物などの多官能性ジエノフィル、又は組成物を硬化されるために用いられる条件下でそれらが本開示のポリマーを架橋するという条件で、他の好適なジエノフィルが挙げられ得る。そのような架橋剤の選択は、当業者の能力内である。そのような架橋剤は、典型的には、組成物中の重合性モノマーの総重量を基準として、0~30重量%、又は0~15重量%の量で使用される。
【0085】
様々な硬化剤が、フォトリソグラフィーに有用である本開示の液体組成物に使用され得る。好適な硬化剤は、ビス-ベンゾシクロブテン含有材料の硬化に役立ち得るし、熱又は光によって活性化され得る。例示的な硬化剤としては、熱生成開始剤及び光活性化合物(光生成開始剤)を挙げることができるが、それらに限定されない。そのような硬化剤の選択は、当業者の能力内にある。好ましい熱生成開始剤は、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンゾイルペルオキシド、及びジクミルペルオキシドなどの、しかしそれらに限定されない、フリーラジカル開始剤である。好ましい光活性硬化剤は、IrgacureブランドでBASFから入手可能なフリーラジカル光開始剤、及びDNQ化合物のスルホネートエステルを含むジアゾナフトキノン(DNQ)化合物である。好適なDNQ化合物は、DNQスルホネートエステル部分などの、DNQ部分を有する、及び本組成物において光活性化合物として機能する任意の化合物である、すなわち、それらは、適切な放射線への露光時に溶解開始剤として機能する。好適なDNQ化合物は、(特許文献1)及び(特許文献2)に記開示されており、これらの内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
光活性化合物の量は、ポリマー固形分の総重量を基準として、0~30重量%変わる。存在する場合、光活性化合物は、典型的には、ポリマー固形分の総重量を基準として、5~30重量%、又は5~25重量%、又は10~25重量%の量で使用される。
【0087】
任意の好適な接着促進剤が、本開示の液体組成物に使用され得、そのような接着促進剤の選択は、十分に当業者の能力内にある。いくつかの非限定的な例において接着促進剤は、シラン含有材料若しくはテトラアルキルチタネート、又はトリアルコキシシラン含有材料である。例示的な接着促進剤としては、限定するものではないが、ビス(トリメトキシシリルエチル)ベンゼンなどのビス(トリアルコキシシリルアルキル)ベンゼン;アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、及びフェニルアミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノアルキルトリアルコキシシラン;及び他のシランカップリング剤、並びに前述の混合物が挙げられる。接着促進剤は、先ずプライマー層として又は組成物への添加物として塗布され得る。特に適した接着促進剤としては、AP3000、AP8000、及びAP9000C(DuPont de Nemours,Wilmington,DE)が挙げられる。本開示の液体組成物は、組成物の総重量を基準として0~15重量%、又は0.5~10重量%、又は1~10重量%、又は2~10重量%の接着促進剤を含有し得る。
【0088】
任意の好適な柔軟化剤及び可塑剤を本開示の液体組成物中で使用することができ、その選択は、十分に当業者の能力内にある。柔軟化剤の例としては、限定するものではないが、BMI689(Designer Molecules)、ジアリルフタレート及び異性体、ヘキサンジオールジアクリレート、並びに25℃の温度で液体である他の適切な材料が挙げられる。柔軟化剤は、組成物の不揮発性分の総重量の0~20重量%、又は2~10重量%、又は3~5%で使用される。
【0089】
任意の好適な難燃剤を本開示の液体組成物中で使用することができ、その選択は、十分に当業者の能力内にある。難燃剤の例としては、有機リン系難燃剤、有機含窒素リン化合物、窒素化合物、シリコーン系難燃剤、及び金属水酸化物を挙げることができる。有機リン系難燃剤は、HCA、HCA-HQ、及びHCA-NQ(三光株式会社)などのフェナントレン型のリン化合物;HFB-2006M(昭和高分子株式会社)などのリン含有ベンゾオキサジン化合物;REOFOS30、50、65、90、110、TPP、RPD、BAPP、CPD、TCP、TXP、TBP、TOP、KP140、及びTIBP(味の素ファインテクノ株式会社)、TPPO及びPPQ(北興化学工業株式会社)、OP930(Clariant Ltd.)、及びPX200(大八化学工業株式会社)などのリン酸エステル化合物;FX289、FX305、及びTX0712(東都化成株式会社)などのリン含有エポキシ樹脂;ERF001(東都化成株式会社)などのリン含有フェノキシ樹脂;並びにYL7613(日本エポキシ樹脂製造株式会社)などのリン含有エポキシ樹脂であってよい。
【0090】
有機含窒素リン化合物は、SP670及びSP703(四国化成工業株式会社)などのリン酸エステルアミド化合物;SPB-100、SPV-100、及びSPE-100(大塚化学株式会社)などのホスファゼン化合物;並びにFPシリーズ(株式会社伏見製薬所)であってよい。金属水酸化物は、UD65、UD650、及びUD653(宇部マテリアルズ株式会社)などの水酸化マグネシウム;並びにB-30、B-325、B-315、B-308、B-303、及びUFH-20(巴工業株式会社)などの水酸化アルミニウムであってよい。
【0091】
いくつかの非限定的な実施形態では、難燃剤の含有量は、樹脂組成物中の不揮発性成分100重量%に対して0.5~10重量%であり、いくつかの非限定的な実施形態では1~5重量%である。
【0092】
任意の適切な表面レベリング剤又は「レベリング剤」を本開示の液体組成物中で使用することができ、その選択は十分に当業者の能力内にある。レベリング剤は、次のモノマーSi(R)(R)(OR(式中、R、R又はRは、C~C20アルキル若しくはC~C20脂肪族基又はC~C20アリール基からそれぞれ独立して選択される)の重合に由来する多くのシリコーン単位を含有し得る。1つの非限定的な実施形態において、レベリング剤は、非イオン性であり、カチオン性光硬化プロセス又は熱硬化条件下でケイ素及び非ケイ素樹脂中に含有される官能基と化学反応することができる少なくとも2つの官能基を含有し得る。非反応基を含有するレベリング剤が、いくつかの非限定的な実施形態において存在する。ケイ素由来単位に加えて、レベリング剤は、オキシラン環を含むC~C20脂肪族分子の重合に由来する単位を含み得る。加えて、レベリング剤は、ヒドロキシル基を含むC~C50脂肪族分子に由来する単位を含み得る。いくつかの非限定的な実施形態において、レベリング剤は、ハロゲン置換基を含まない。いくつかの非限定的な実施形態において、レベリング剤の分子構造は、主に直鎖、分岐状、若しくは超分岐状であるか、又はそれはグラフト構造であり得る。
【0093】
いくつかの非限定的な実施形態において;レベリング剤は、AD1700、MD700;Megaface F-114、F-251、F-253、F-281、F-410、F-430、F-477、F-510、F-551、F-552、F-553、F-554、F-555、F-556、F-557、F-558、F-559、F-560、F-561、F-562、F-563、F-565、F-568、F-569、F-570、F-574、F-575、F-576、R-40、R-40-LM、R-41、R-94、RS-56、RS-72-K、RS-75、RS-76-E、RS-76-NS、RS-78、RS-90、DS-21(DIC Sun Chemical);KY-164、KY-108、KY-1200、KY-1203(信越化学株式会社);Dowsil 14、Dowsil 11、Dowsil 54、Dowsil 57、Dowsil FZ2110、FZ-2123;Xiameter OFX-0077;ECOSURF EH-3、EH-6、EH-9、EH-14、SA-4、SA-7、SA-9、SA-15;Tergitol 15-S-3、15-S-5、15-S-7、15-S-9、15-S-12、15-S-15、15-S-20、15-S-30、15-S-40、L61、L-62、L-64、L-81、L-101、XD、XDLW、XH、XJ、TMN-3、TMN-6、TMN-10、TMN-100X、NP-4、NP-6、NP-7、NP-8、NP-9、NP-9.5、NP-10、NP-11、NP-12、NP-13、NP-15、NP-30、NP-40、NP-50、NP-70;Triton CF-10、CF-21、CF-32、CF76、CF87、DF-12、DF-16、DF-20、GR-7M、BG-10、CG-50、CG-110、CG-425、CG-600、CG-650、CA、N-57、X-207、HW 1000、RW-20、RW-50、RW-150、X-15、X-35、X-45、X-114、X-100、X-102、X-165、X-305、X-405、X-705;PT250、PT700、PT3000、P425、P1000TB、P1200、P2000、P4000、15-200(Dow Chemical);DC ADDITIVE 3、7、11、14、28、29、54、56、57、62、65、67、71、74、76、163(Dow Silicones); TEGO Flow 425、Flow 370、Glide 100、Glide 410、Glide 415、Glide 435、Glide 432、Glide 440、Glide 450、Flow 425、Wet 270、Wet 500、Rad 2010、Rad 2200 N、Rad 2011、Rad 2250、Rad 2500、Rad 2700、Dispers 670、Dispers 653、Dispers 656、Airex 962、Airex 990、Airex 936、Airex 910(Evonik);BYK-300、BYK-301/302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-315、BYK-313、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-337、BYK-341、BYK-342、BYK-344、BYK-345/346、BYK-347、BYK-348、BYK-349、BYK-370、BYK-375、BYK-377、BYK-378、BYK-UV3500、BYK-UV3510、BYK-UV3570、BYK-3550、BYK-SILCLEAN 3700、Modaflow(登録商標)9200、Modaflow(登録商標)2100、Modaflow(登録商標)Lambda、Modaflow(登録商標)Epsilon、Modaflow(登録商標)Resin、Efka FL、Additiol XL 480、Additol XW 6580、及びBYK-SILCLEAN 3720からなる群から選択される。
【0094】
いくつかの非限定的な実施形態では、レベリング剤は、0~1重量%、又は0.001~0.9重量%、又は0.05~0.5重量%、又は0.05~0.25重量%、又は0.05~0.2重量%、又は0.1~0.15重量%の量で存在することができる。
【0095】
本開示のフォトリソグラフィック液体組成物は、本開示の1種以上のポリマーと、任意の有機溶媒と、水又は追加の成分と、硬化剤としての光活性化合物とを任意の順に組み合わせることによって調製され得る。有機溶媒は、上に記載されたものと同じものである。本組成物が、ジアゾナフトキノン、オニウム塩、又は光開始剤などの光活性化合物を含有する場合、硬化剤が先ず好適な有機溶媒又はアルカリ水溶液に溶解させられ、次いで1種以上の本ポリマー及び任意の任意選択的な界面活性剤と混ぜ合わせられ、次いで任意の任意選択的な接着促進剤と混ぜ合わせられることが好ましい。好適な光活性化合物の選択は、当業者の通常のレベル内にある。
【0096】
いくつかの実施形態において、本開示の液体組成物は、任意の好適な方法によって基板上にコートされ得る又は堆積され得る。基板は、上に記載されたものと同じものであり得る。本組成物をコートするための好適な方法としては、方法の中でも、スピンコーティング、カーテンコーティング、スプレーコーティング、ローラーコーティング、ディップコーティング、蒸着、及び真空ラミネーション並びにホットロールラミネーションなどのラミネーションを挙げることができるが、それらに限定されない。半導体製造業界において、スピンコーティングは、既存の設備及びプロセスを活用するための好ましい方法である。スピンコーティングでは、塗布される表面上で組成物の所望の厚さを達成するために、組成物の固形分は、スピン速度と共に調整することができる。
【0097】
本開示の液体組成物が接着促進剤を含有しない場合、本組成物でコートされる基板の表面は、任意選択的に先ず、好適な接着促進剤と接触させられ得るか又は蒸気処理され得る。プラズマ処理などの、当技術分野において公知の様々な蒸気処理が、基板表面への本開示のポリマーの接着性を高め得る。特定の用途において、本組成物で表面をコーティングする前に、接着促進剤を使用して基板表面を処理することが好ましい場合がある。接着促進剤は、上に記載されたものとの同じものである。
【0098】
典型的には、本開示の液体組成物は、400~4000rpmのスピン速度でスピンコートされる。ウエハー又は基板上に分配される本組成物の量は、組成物中の合計固形分、結果として生じる層の所望の厚さ、及び当業者に周知のその他の因子に依存する。本組成物の膜又は層がスピンコーティングによってキャストされる場合、溶媒の多く(又は全て)は、膜の堆積中に蒸発する。好ましくは、表面上に堆積された後に、組成物は、いかなる残留溶媒をも除去するために加熱される(ソフトベークされる)。典型的なベーキング温度は、90~120℃であるが、他の温度が好適に用いられ得る。残留溶媒を除去するためのそのようなベーキングは、典型的には、およそ1又は2分間行われるが、より長い時間又はより短い時間が好適に用いられ得る。
【0099】
本開示の樹脂組成物は、典型的には、ある時間加熱することによって硬化する。好適な硬化温度は、140~300℃;又は170~250℃の範囲である。典型的には硬化時間は、1~600分、又は30~240分、又は30~120分の範囲である。
【0100】
一般的に、形成された樹脂組成物層の厚さは、導電層の厚さ以上である。回路基板の導電層の厚さは一般的に5~70μmの範囲内であるので、樹脂組成物層は一般的に、10~100μmの厚さを有する。
【0101】
一実施形態において、本明細書に記載されるポリマーを含む液体組成物は、銅上へスピンキャストすることができる。組成物は、マイクロ電子用途向けに望ましい乾燥膜を形成するために、スロットダイコーター又は他の好適な装置によってキャストすることができる。キャスト膜は、70~150℃の、又は90~120℃の温度で30秒~10分間残留溶媒を除去するためにソフトベークすることができる。ソフトベークされた膜は、次いで30分~4時間150~250℃の硬化条件にさらすことができる。
【0102】
いくつかの実施形態において、本開示の液体組成物の層は、乾燥膜として形成されラミネーションによって基板の表面上に配置されてもよい。接着膜が厚さ1~40μmの保護膜を有する場合のラミネーションに基づくプロセスでは、最初に保護膜を剥がした後、必要に応じて接着膜と回路基板が予熱され、接着膜はプレス及び加熱されながら回路基板に圧着される。いくつかの非限定的な実施形態では、接着膜を真空ラミネーション法により減圧下で回路基板にラミネーションする方法が好適に採用される。非限定的なラミネーション条件には、70~140℃の圧着温度(ラミネーション温度)、1~11kgf/cm(9.8×10~107.9×10N/m)の圧着圧力、及び空気圧に関して20mHg(26.7hPa)以下の減圧が含まれ得る。ラミネーション方法は、バッチ式であってもロールを使用する連続式であってもよい。真空ラミネーションは、市販の真空ラミネーターを使用して行うことができる。市販の真空ラミネーターの例としては、Nichigo-Morton Co.,Ltd.製の真空アプリケーター、Meiki Co.,Ltd.製の真空圧力ラミネーター、Hitachi Industries Co.,Ltd.製のロール式ドライコーター、及びHitachi AIC Inc.製の真空ラミネーターが挙げられる。
【0103】
減圧下で加熱及びプレスを行うラミネーション工程は、一般的な真空ホットプレス機を使用して行うことができる。例えば、ラミネーション工程は、加熱されたSUS板などの金属板を支持層側からプレスすることによって行うことができる。ラミネーションは、通常1×10-2MPa以下の減圧で行われ、いくつかの非限定的な実施形態では、1×10-3MPa以下で行われる。加熱及びプレスは1段階で行うことができるものの、通常は樹脂のブリードを抑えるために2段階以上に分けて加熱とプレスを行うことが有利である。例えば、1段階目のプレスは、1~15kgf/cmの圧力で70~150℃の温度で行うことができ、2段階目のプレスは、1~40kgf/cmの圧力で150~200℃の温度で行うことができる。いくつかの非限定的な実施形態では、プレスは各段階で30~120分間行われる。市販の真空ホットプレス機の例としては、MNPC-V-750-5-200(Meiki Co.,Ltd.)及びVH1-1603(北川精機株式会社)が挙げられる。
【0104】
絶縁層は、回路基板上に接着膜をラミネーションし、ラミネートを室温程度まで冷却し、支持体を剥離する場合は支持体を剥離し、その後樹脂組成物層を熱硬化させることによって回路基板上に形成することができる。熱硬化の適切な条件は、本明細書に開示の樹脂組成物中の各樹脂成分の種類及び含有量に応じて選択することができる。いくつかの非限定的な実施形態では、熱硬化のための温度及び時間は、150~220℃で20~180分間の範囲から選択され、いくつかの非限定的な実施形態では、160~210℃で30~120分間の範囲から選択される。
【0105】
絶縁層が形成された後、硬化前に支持体が剥離されなかった場合には支持体が剥離される。その後、必要に応じて回路基板上に形成された絶縁層に穴が開けられ、ビアホール又はスルーホールが形成される。穴開けは、例えば、ドリル、レーザー、プラズマなどを含む当業者に公知の1つ以上の方法によって行うことができる。いくつかの非限定的な実施形態では、穴開けは、炭酸ガスレーザー及びYAGレーザーなどのレーザーを使用して達成される。
【0106】
続いて、乾式めっき又は湿式めっきにより、絶縁層上に導電層が形成される。乾式めっき法の非限定的な例としては、蒸着、スパッタリング、及びイオンプレーティングが挙げられる。湿式めっきでは、絶縁層の表面に対して膨潤液による膨潤処理、酸化剤による粗面化処理、中和液による中和処理を逐次的を行うことで、凹凸のアンカーが形成される。膨潤液による膨潤処理は、絶縁層を50~80℃の膨潤液に5~20分間浸漬することによって行うことができる。膨潤液の非限定的な例としては、アルカリ溶液及び界面活性剤溶液が挙げられる。アルカリ溶液の例としては、水酸化ナトリウム溶液及び水酸化カリウム溶液が挙げられる。市販の膨潤液としては、Swelling Dip Securiganth P及びSwelling Dip Securiganth SBU(Atotech Japan K.K.)が挙げられる。酸化剤による粗面化処理は、絶縁層を60~80℃の酸化剤溶液に10~30分間浸漬することによって行うことができる。酸化剤の非限定的な例としては、過マンガン酸カリウム又は過マンガン酸ナトリウムを水酸化ナトリウム、重クロム酸、オゾン、過酸化水素/硫酸、及び硝酸の水溶液に溶解させたアルカリ性過マンガン酸塩溶液が挙げられる。アルカリ性過マンガン酸塩溶液中の過マンガン酸塩の濃度は、約5~10重量%であってよい。市販の酸化剤の例としては、Concentrate Compact CP及びDosing Solution Securiganth P(Atotech Japan K.K.)などのアルカリ性過マンガン酸塩溶液が挙げられる。中和液による中和処理は、絶縁層を30~50℃の中和液に3~10分間浸漬することにより行うことができる。いくつかの非限定的な例では、中和液は酸性水溶液であってよい。市販の中和液の例としては、Reduction Solution Securiganth P(Atotech Japan K.K.)が挙げられる。
【0107】
導電層は、代わりに、導電層の反転パターンを有するめっきレジストを形成し、無電解めっきのみを行うことによって形成されてもよい。その後のパターニング方法として、当業者に公知のサブトラクティブ法又はセミアディティブ法を使用することができる。
【0108】
本開示は、電子デバイス基板上に本出願の誘電体膜の少なくとも1つの層を含む多種多様な電子デバイスにも関する。電子デバイス基板は、任意の電子デバイスの製造において使用するための任意の基板であることができる。例示的な電子デバイス基板としては、限定なしに、半導体ウエハー、ガラス、サファイア、シリケート材料、窒化ケイ素材料、炭化ケイ素材料、ディスプレイデバイス基板、エポキシモールドコンパウンドウエハー、回路基板基材、及び熱的に安定なポリマーが挙げられる。
【0109】
本明細書で用いるところでは、用語「半導体ウエハー」は、シングルチップウエハー、マルチプルチップウエハー、様々なレベルのためのパッケージ、発光ダイオード(LED)用の基板、又ははんだ接続を必要とする他の組立体などの、半導体基板、半導体デバイス、及び様々なレベルの相互接続のための様々なパッケージを包含することを意図する。シリコンウエハー、ガリウムヒ素ウエハー、及びシリコンゲルマニウムウエハーなどの、半導体ウエハーは、パターン化されていても、パターン化されていなくてもよい。本明細書で用いるところでは、用語「半導体基板」には、半導体デバイスの有効部分又は動作可能部分を含む1つ以上の半導体層又は構造を有する任意の基板が含まれる。用語「半導体基板」は、半導体デバイスなどの、半導体材料を含む任意の構造を意味すると定義される。半導体デバイスは、少なくとも1つのマイクロ電子デバイスがその上に製造されているか又は製造されることになる半導体基板を意味する。熱的に安定なポリマーとしては、限定なしに、ポリイミド、例えば、KAPTON(商標)ポリイミド(DuPont,Wilmington,DE)、液晶ポリマー、例えばVECSTAR(商標)LCP膜(株式会社クラレ、東京、日本)及びビスマレイミド-トリアジン(BT)樹脂(MGC、東京、日本)などの、アリールシクロブテン材料を硬化させるために用いられる温度に安定な任意のポリマーが挙げられる。追加のポリマー基板としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリ塩化ビニルなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」と略記することがある)及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステル膜;又はポリカーボネート膜を挙げることができる。更に、剥離紙及び金属箔、例えば銅箔及びアルミニウム箔などを使用することができる。支持体及び後述する保護膜は、マット処理及びコロナ処理などの表面処理を受けていてもよい。或いは、支持体及び保護膜は、シリコーン樹脂系剥離剤、アルキド樹脂系剥離剤、又はフッ素樹脂系剥離剤などの剥離剤で剥離処理されていてもよい。いくつかの非限定的な実施形態では、支持体は10~150μmの厚さを有し、いくつかの非限定的な実施形態では25~50μmである。
【実施例0110】
原材料:
モノマー及び他の成分は、以下の通りに入手/調製した:β-ミルセン(Vigon)、スチレン(Sigma Aldrich)、ビニルトルエン異性体混合物(Deltech Corporation)、Vazo65開始剤(Wako Chemical)、4-ビニルピリジン(Vertellus、入手したままの状態で使用)、ビスマレイミドBMI-689(Designer Molecules)、SPV-100(大塚化学株式会社、入手したままの状態で使用)、平均粒径0.5μmの球状シリカ(Admatechs Company Limitedの「SC2050-MTM」、入手したままの状態で使用)。ビニルフェノキシBCB[1-(4-ビニルフェノキシ)ベンゾシクロブテン)]は、(特許文献3)(その全内容は、参照により本明細書に援用される)に従って調製した。フェノール樹脂は、必要に応じて明和化成株式会社、DIC Corporation、又は日本化薬株式会社から得られ、受け取ったままの状態で使用した。全ての他の溶媒及び化学物質は、Fisher Scientificから受け取り、更なる精製なしに受け取ったままの状態で使用した。
【0111】
分子量測定:
ポリマーサンプルを、テトラヒドロフラン中の0.5重量%溶液として調製し、0.2ミクロンのTeflonフィルターを通して濾過した。移動相は、0.5%のトリエチルアミン、5%のメタノール、及び94.5%のテトラヒドロフランであった。使用したカラムは、Waters Styragel HR5E7.8×300mmカラム ロット番号0051370931であった。注入量は、100マイクロリットルであり、ラン時間は、27分であった。分子量データは、ポリスチレン標準と比較して報告する。
【0112】
膜サンプルの作製及び処理:
配合物溶液を、6ミルのギャップを有するスチールバーによってPET基板(NANYA NV38G、厚さ38μm)上にドローダウンコーティングした。膜を115℃で3分間ソフトベークした。膜を、0.95MPaの圧力で約2hPaで30秒間、90℃の温度のラバーコンタクトを使用する1段階目の真空と、1.5MPaの圧力、90℃の温度で1分間を使用して鋼板を用いる2段階目の真空とを用いて、Meiki(MVLP500/600)ラミネーターにより、適切な基板上にラミネーションした。自立膜サンプルについては、サンプルは、その後銅基板上で100ppm未満の酸素の窒素中で180℃のBlueMオーブンで1時間硬化した。得られた基板を適切なサイズに切断し、膜を水又は水浴中の5%硫酸アンモニウムの中で持ち上げ、すすぎ洗いし、乾燥することで、分析用の自立膜を得た。
【0113】
試験方法
(1)誘電特性:
それぞれ10GHzの空洞周波数を有するように機械加工された銅スプリット円筒共振器とKeysight N5224A PNAネットワークアナライザーとを使用し、IPC試験方法TM-650 2.5.5.13(rev.01/07)を使用して、自立膜の誘電特性を決定した。膜形状は、基板が2つの円筒空洞部の直径を超えて延びるようなものであった。誘電体基板の厚さは0.01mm~5.0mmまで変化し得るが、これらの検討では0.03mmの基板厚さを使用した。自立膜をスプリット円筒共振器の空洞に配置し、TE011共振モードの共振周波数及び品質係数を、ネットワークアナライザーを使用して測定した。膜の比誘電率(Dk)及び損失正接(Df)を、MATLABで作成されたカスタムソフトウェアを使用してTE011共振モードから計算した。
【0114】
(2)熱力学的及び重量分析:
自立膜を10mm×25mmの形状に切断し、0.06%のひずみ速度、1ニュートンの予圧荷重、及び1ヘルツの周波数でTA Instruments動的機械分析計Q800装置に取り付けた。温度を50℃で平衡化し、その後毎分5℃の速度で200℃まで上昇させた。tanδの曲線の最大値をガラス転移温度値とした。吸水率は、60℃で相対湿度60%の質量増加の条件を使用して、熱重量分析TA Instruments Q5000SAから得た。熱機械分析は、TA Instruments Thermomechanical Analyzer Q400で引張モードで行った。サンプルを5℃から280℃まで一定の速度で加熱し、次いで-50℃まで下げ、その後同じ速度で250℃まで戻した。熱膨張係数は、最後のサイクルにおける-25℃~50℃の寸法の線形変化であるとして決定した。
【0115】
剥離試験
(1)粗面化処理
基板表面の粗面化は、3段階のデスミア手順によって行った。サンプルを、最初にDuPont de Nemoursから入手可能なCIRCUPOSIT(商標)Sweller7810に70℃で20分間浸漬した。次に強い水流で2分間すすぎ洗いし、過剰の膨潤剤溶液を除去した。続いて、これをDu Pont de Nemoursから入手可能なCIRCUPOSIT(商標)MLB Promoter3308過マンガン酸塩水溶液に、80℃で可変時間浸漬した。水で2分間すすぎ洗いした後、DuPont de Nemoursから入手可能なCIRCUPOSIT(商標)Neutralizer216中にサンプルを40℃で5分間浸漬することにより、残留促進剤析出物を除去した。強い水流で2分間最後にすすぎ洗いした後、サンプルを空気流中で乾燥した。テクスチャ化の程度は、サンプルの表面積によって正規化されたデスミア前後の基板の質量差を測定することによって決定した。
【0116】
(2)無電解めっき
最初に基板をDuPont de Nemoursから入手可能なCIRCUPOSIT(商標)Conditioner8512に40℃で5分間浸漬し、続いて強い水流下で2分間すすぎ洗いすることによって、デスミア処理されたサンプルを無電解堆積用に準備した。次いで、サンプルを室温で30秒間、3%硝酸水溶液に浸漬した。その直後に、サンプルを、イオン性水性アルカリパラジウム触媒であるDuPont de Nemoursから入手可能なCIRCUPOSIT(商標)6530Catalystに40℃で5分間浸漬した。触媒は、9~9.5の触媒pHを達成するのに十分な量の炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、又は硝酸で緩衝される。次いで、サンプルを室温で2分間強い水流ですすぎ洗いした。その後、パネルを0.6g/Lのジメチルアミンボランと5g/Lホウ酸溶液に30℃で2分間浸漬してパラジウムイオンをパラジウム金属に還元し、続いて強い水流で2分間すすぎ洗いした。その後、活性化されたサンプルを、DuPont de Nemoursから入手可能な無電解銅めっき浴CIRCUPOSIT(商標)6550に35℃で5分間浸漬した。その結果、銅は0.4μmの目標銅厚さまでサンプル全体に渡ってコンフォーマルに堆積された。その後、メタライズされたサンプルを強い水流ですすぎ洗いし、すぐに空気の蒸気で乾燥した。無電解銅堆積物をアニール処理し、堆積物から残留水を除去するために、サンプルをN雰囲気で120℃で30分間最終的にソフトベークした。
【0117】
(3)電解めっき
35℃で1.5分間、DuPont de Nemoursから入手可能なRONACLEAN(商標)LP-200に浸漬することによって、メタライズされたサンプルを電解めっき用に準備した。次いで、サンプルを水流で2分間すすぎ洗いし、室温で30秒間10%硫酸水溶液に浸漬することによって残留表面酸化物を除去した。その後、電解質としてのDuPont de Nemoursから入手可能な銅電気めっき浴MICROVIA(商標)EVF-IIと2つの不溶性アノードとが入っているHaringセルにサンプルを入れた。溶液の撹拌は、サンプルの両側にあるバブリング出口から行った。電界めっきは、20ASFで50分間行い、目標とする18μmめっき厚に到達させた。この電解めっき構成における消費速度の事前分析に基づいて、初期濃度を維持するために、めっき中に光沢剤であるめっき添加剤を定期的に補充した。電解めっきが完了した後、サンプルをHaringセルから取り出し、強い水流ですすぎ洗いした。その後、表面を酸化から保護するために、ベンゾトリアゾールを含む塩基性変色防止液にサンプルを浸漬した。サンプルを、最後にN雰囲気で180℃で1時間ベークすることで、銅堆積物をアニール処理し、下にある層の誘電体膜の硬化を完了させた。
【0118】
(4)めっき剥離試験
めっきした銅サンプルをアニール処理した後、適切なブレードを用いて試験片上で1センチメートル幅の剥離ストリップに切り込みを入れ、その後Intron引張試験機で50mm/分の速度で90度の角度で銅ストリップを剥がした。剥離力の値(キログラム力/センチメートル)を計算した。高加速応力試験(HAST)を受けるサンプルについて、切り込みを入れた試験片を130℃、相対湿度85%の雰囲気に50時間さらし、その時点で同じ剥離試験を行って値を記録した。0.15kgf/cm未満の値は良くないとみなされ、0.15kgf/cmを超える値は良いとみなされた。
【0119】
実施例A1(アリールシクロブテン樹脂の合成)
以下のモノマー及び溶媒を、オーバーヘッド撹拌しながら100Lのジャケット付き反応器に入れ、窒素ブランケット下で79℃まで加熱した:19695.8gの1-(4-ビニルフェノキシ)ベンゾシクロブテン、15090.5gのビニルトルエン、1517.7gのビニルピリジン、8445.6gのβ-ミルセン、及び19178.4gのシクロペンタノン。1401.1gのV65及び17131.5gのシクロペンタノンの開始剤フィードを一定速度で反応器に20時間供給し、温度を更に3時間保持した後、40℃に戻した。この溶液を配合物実施例で直接使用した。GPC Mn7.4k、Mw33.5k
【0120】
実施例B1(アリールエーテル樹脂B1の合成)
アリル樹脂の合成のためには、以下の一般化された手順を使用した:窒素ブランケット下のスターバー及び還流冷却器を備えた250ml丸底フラスコに、10gの明和化成株式会社からのMEH-7500(フェノールベンズアルデヒドコポリマー、110のOH当量)を添加し、アセトニトリル(40g、フェノール樹脂の質量の4倍)中に溶解した。溶解が終了したとき、炭酸カリウム(18.85g、OH当量に対して1.5当量)を添加し、得られたスラリーを1時間80℃に加熱した。その後、臭化アリル(8.64ml、OH当量に対して1.1当量)をシリンジによって15分に渡って添加した。混合物を80℃で16時間撹拌した。その後、溶液を室温に冷却し、ジクロロメタン(80グラム、フェノール樹脂の質量の8倍)及び水(80グラム、フェノール樹脂の質量の8倍)を添加し、混合物を1時間撹拌した。混合物を分液漏斗に移し、そこで有機層を集めて、硫酸マグネシウム(40グラム、フェノール樹脂の質量の4倍)で乾燥させ、濾過した。溶媒を減圧除去した。
【0121】
B1生成物は、予想された生成物の87%の収率で暗赤色の粘性油として受け取った。構造は、500MHzの電場において溶媒として重水素化ジメチルスルホキシドを使用してプロトンNMRによって確認された。出発原料と比較して、9.0~10.0ppmのフェノール-OH共鳴はもう検出することができず、他方、5.9~6.3ppm(1H)、5.1~5.4ppm(2H)及び4.3~4.5ppm(2H)の共鳴が観察され、フェノラートエーテル構造と一致していた。
【化13】
【0122】
実施例B2(アリールエーテル樹脂B2の合成)
105のフェノール当量を有するDIC CorporationからのTD-2090を用いた(フェノールホルムアルデヒドコポリマー)ことを除いて、合成実施例B1と同じ手順を用いた。NMR検出は実施例B1の場合と同じ方法で行われ、フェノラートエーテル構造と一致する結果をもたらした。材料は赤色の粘性油として単離され、86%の収率であった。
【化14】
【0123】
実施例B3(アリールエーテル樹脂B3の合成)
232のフェノール当量を有する日本化薬株式会社からのGPH-103(ビフェニル/フェノールホルムアルデヒドコポリマー)を用いたことを除いて、合成実施例B1と同じ手順を用いた。NMR検出は実施例B1の場合と同じ方法で行われ、フェノラートエーテル構造と一致する結果をもたらした。材料は淡紅色の粘性油として単離され、89%の収率であった。
【化15】
【0124】
実施例B4(アリールエーテル樹脂B4の合成)
232のフェノール当量を有するDIC CorporationからのVH-4170(ビスフェノール-Aホルムアルデヒドコポリマー)を用いたことを除いて、合成実施例B1と同じ手順を用いた。NMR検出は実施例B1の場合と同じ方法で行われ、フェノラートエーテル構造と一致する結果をもたらした。材料は無色の粘性油として単離され、95%の収率であった。
【化16】
【0125】
実施例B5(アリールエーテル樹脂B5の合成)
118のフェノール当量を有するDIC CorporationからのKA-1163(クレゾールホルムアルデヒドコポリマー)を用いたことを除いて、合成実施例B1と同じ手順を用いた。NMR検出は実施例B1の場合と同じ方法で行われ、フェノラートエーテル構造と一致する結果をもたらした。材料は淡紅色の粘性油として単離され、91%の収率であった。
【化17】
【0126】
実施例B6(アリールエーテル樹脂B6の合成)
145のフェノール当量を有する明和化成株式会社からのMEH-7000(ナフタレン/フェノールホルムアルデヒドコポリマー)を用いたことを除いて、合成実施例B1と同じ手順を用いた。NMR検出は実施例B1の場合と同じ方法で行われ、フェノラートエーテル構造と一致する結果をもたらした。材料は暗赤色の粘性油として単離され、81%の収率であった。
【化18】
【0127】
実施例B7(比較用フェノラートメタクリル酸エステル樹脂B7の合成)
窒素ブランケット下のスターバー及び還流冷却器を備えた250ml丸底フラスコに、10gの明和化成株式会社からのDL-92(フェノールホルムアルデヒドコポリマー、109OH当量)及び0.56gのジメチルアミノピリジン(OH当量に対して0.05当量)を添加し、ジクロロメタン(20g、フェノール樹脂の質量の2倍)中に溶解した。溶解が終了したとき、メタクリル酸無水物(19.54ml、OH当量に対して1.15当量)をシリンジによって添加し、得られた混合物を室温で16時間撹拌した。その後、ジクロロメタン(80グラム、フェノール樹脂の質量の8倍)及び飽和重炭酸ナトリウム水溶液(200グラム、フェノール樹脂の質量の20倍)を反応混合物と共に分液漏斗に添加した。漏斗を振り、次いで層を分離させた。有機層を集めて、硫酸マグネシウム(40グラム、フェノール樹脂の質量の4倍)で乾燥させ、濾過した。残留溶媒を減圧除去した。生成物は赤色の粘性油として、予想された生成物の95%の収率で受け取った。
【0128】
構造は、500MHzの電界において溶媒として重水素化ジメチルスルホキシドを使用してプロトンNMRによって確認された。出発原料と比較して、9.0~10.0ppmのフェノール-OH共鳴はもう検出することができず、他方、約6.3ppm(1H)、約6.0ppm(1H)及び約2.0ppm(3H)の共鳴が観察され、フェノラートメタクリル酸エステル構造と一致していた。材料は無色の粘性油として単離され、95%の収率であった。
【化19】
【0129】
実施例B8(比較用フェノラートビニルベンジル樹脂B8の合成)
109のフェノール当量を有する明和化成株式会社からのDL92(フェノールホルムアルデヒドコポリマー)を用い、臭化アリルの代わりに塩化ビニルベンジルを用いたことを除いて、合成実施例B1と同じ手順を用いた。構造のNMR検出は、フェノールOHピークの消失並びに約6.7ppm(1H)、約5.8ppm(1H)、約5.3ppm(1H)及び約5.0ppm(2H)の広い共鳴の出現を裏づけ、フェノラートビニルベンジル構造と一致していた。材料は暗赤色の粘性油として単離され、91%の収率であった。
【化20】
【0130】
実施例B9(比較用メタクリル酸エステル樹脂B9の合成)
110のフェノール当量を有する明和化成株式会社からのMEH-7500(フェノールベンズアルデヒドコポリマー)を用いたことを除いて、合成実施例B7と同じ手順を用いた。NMR検出は実施例B7の場合と同じ手順で行われ、結果はメタクリル酸エステル構造と一致していた。材料は赤色の粘性油として単離され、95%の収率であった。
【化21】
【0131】
実施例B10(比較用樹脂B10の合成)
ベンゾシクロブテンカルボン酸塩化物及びNeaollyl P30の付加物の合成は、(特許文献4)に従って行われた。
【化22】
【0132】
配合物及び膜の作製
(1)配合物及び膜実施例1
20mlのガラス製バイアル容器に、72部のベンゾシクロブテン樹脂A1、18部のアリル樹脂B1、7部の大塚化学株式会社からの難燃剤C1 SPV-100、2部のDesigner Molecules Inc.からの柔軟化剤D1 BMI-689、0.35部のAllnexからの界面活性剤E1 Modaflow(登録商標)樹脂、224部のAdmatechs Company Limitedからのメタクリル酸官能基含有球状シリカSC2050-MTM、及び揮発成分である96部の2-ブタノンG1と83部のシクロペンタノンG2を入れた。混合物を一晩揺らして混ぜ合わせ、その後得られた溶液を使用して、評価のために本明細書に記載した通りに膜を製造した。
【0133】
(2)配合物並びに膜実施例2~9及び比較例1~4
配合物並びに膜実施例2~9及び比較例1~4は、表1に記載の組成を用いて、実施例1について記載したものと同様の手順を使用して調製した。対応する膜試験データは表2に示されている。
【0134】
【表1】
【0135】
【表2】
【0136】
全ての樹脂配合物は本明細書に開示されるエレクトロニクス用途に一般的に適している誘電率(D)及び誘電損失(D)を有する膜を製造するが、アリル基を有する第2の樹脂を含有するそれらの配合物だけが、それらを実際に有用にする十分な大きさのめっき剥離強度を有する膜をもたらす。更に、アリル系の第2のモノマーの適切な選択は、Dの低下をもたらし得る。
【0137】
概要又は実施例において上に記載された行為の全てが必要であるわけではないこと、特定の行為の一部が必要とされない場合があること及び1つ以上の更なる行為が、記載されているものに加えて行われ得ることに留意されたい。更にまた、行為が列挙される順番は、必ずしも行為が行われる順番ではない。
【0138】
上述の本明細書では、概念を特定の実施形態に関連して記載してきた。しかしながら、当業者は、以下の特許請求の範囲において明記されるような本開示の範囲から逸脱することなく、様々な修正及び変更を行うことができることを認識する。従って、本明細書及び図面は、限定的な意味よりもむしろ例示的な意味で考えられるべきであり、全てのそのような修正は本開示の範囲内に包含されることを意図する。
【0139】
利益、他の利点、及び問題の解決策が、特定の実施形態に関して上で記載されてきた。しかしながら、利益、利点、問題の解決策及び任意の利益、利点又は解決策を生じさせ得るか又はより顕著にし得る任意の特徴は、任意の又は全ての請求項の、決定的に重要であるか、必要とされるか又は不可欠な特徴であると解釈するべきではない。
【0140】
明確にするために、特定の特徴は、別個の実施形態との関連で本明細書に記載され、単一の実施形態で組み合わせて提供され得ることも十分に理解されるべきである。反対に、簡潔にするために、単一の実施形態との関連で記載した様々な特徴は、個別に又は任意の部分的な組み合わせでも提供され得る。本明細書で明記した様々な範囲の数値の使用は、記述される範囲内の最小値及び最大値が両方とも「約」という言葉によって先行されるかのように近似値として記述されている。この形式では、記述範囲の上下のわずかな変動は、範囲内の値と実質的に同じ結果を実質的に達成するために用いることができる。また、これらの範囲の開示は、1つの値の構成要素のいくつかが、異なる値の構成要素と混合されるときに生じ得る小数値を含む、最小平均値と最大平均値との間のあらゆる値を含む連続した範囲であることが意図されている。更に、より広い及びより狭い範囲が開示されるとき、1つの範囲からの最小値を別の範囲からの最大値と一致させることは、本開示の予想の範囲内にあり、その逆も同様である。
【外国語明細書】