(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164421
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】補助剤含有組成物
(51)【国際特許分類】
A01K 1/00 20060101AFI20231102BHJP
A01N 25/10 20060101ALI20231102BHJP
A01P 7/04 20060101ALI20231102BHJP
A01M 1/20 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
A01K1/00 C
A01N25/10
A01P7/04
A01M1/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023102552
(22)【出願日】2023-06-22
(62)【分割の表示】P 2022075439の分割
【原出願日】2022-04-28
(71)【出願人】
【識別番号】591023642
【氏名又は名称】中越パルプ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095740
【弁理士】
【氏名又は名称】開口 宗昭
(74)【代理人】
【識別番号】100225141
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 安司
(72)【発明者】
【氏名】伊東 慶郎
(72)【発明者】
【氏名】萩原 総平
【テーマコード(参考)】
2B101
2B121
4H011
【Fターム(参考)】
2B101AA01
2B101BB10
2B121AA11
2B121CB02
2B121CC02
2B121CC03
2B121CC04
2B121CC31
2B121EA13
2B121FA15
4H011AC01
4H011BC19
4H011DH10
(57)【要約】
【課題】本発明は、畜産農業分野において用いる既知の環境改善資材や既知の防疫用殺虫剤と併用することで、さらに環境改善資材や有効成分の効果を高めることができ、また、既知の環境改善資材や既知の防疫用殺虫剤の使用量を抑えることのできる補助剤を含む補助剤含有組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明の補助剤含有組成物は、既知の環境改善資材の補助剤として、1~100μmの繊維幅を有するマイクロ繊維と3~1000nmの繊維幅を有するナノ繊維とからなる微細状繊維を用いた、既知の環境改善資材、既存の農薬又は既存の環境改善資材と補助剤とを含有する補助剤含有組成物であり、補助剤含有組成物を常温乾燥させた状態のとき、前記微細状繊維からなる網目領域が形成される補助剤含有組成物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜産農業分野において用いる環境改善資材の補助剤として、1~100μmの繊維幅を有するマイクロ繊維と3~1000nmの繊維幅を有するナノ繊維とからなる微細状繊維を用いた、畜産農業分野において用いる環境改善資材と補助剤とを含有する補助剤含有組成物であって、
補助剤含有組成物を常温乾燥させた状態のとき、前記微細状繊維からなる網目領域が形成される、補助剤含有組成物。
【請求項2】
畜産農業分野において用いる農薬の補助剤として、1~100μmの繊維幅を有するマイクロ繊維と3~1000nmの繊維幅を有するナノ繊維とからなる微細状繊維を用いた、畜産農業分野において用いる農薬と補助剤とを含有する補助剤含有組成物であって、
補助剤含有組成物を常温乾燥させた状態のとき、前記微細状繊維からなる網目領域が形成される、補助剤含有組成物。
【請求項3】
防疫用殺虫剤の補助剤として、1~100μmの繊維幅を有するマイクロ繊維と3~1000nmの繊維幅を有するナノ繊維とからなる微細状繊維を用いた、防疫用殺虫剤と補助剤とを含有する補助剤含有組成物であって、
補助剤含有組成物を常温乾燥させた状態のとき、前記微細状繊維からなる網目領域が形成される、補助剤含有組成物。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一に記載の補助剤含有組成物であって、
前記マイクロ繊維と前記ナノ繊維に、畜産農業分野において用いる環境改善資材、畜産農業分野において用いる農薬、又は防疫用殺虫剤中の有効成分が固着された補助剤含有組成物。
【請求項5】
請求項1~請求項3のいずれか一に記載の補助剤含有組成物であって、
前記マイクロ繊維と前記ナノ繊維に、畜産農業分野において用いる環境改善資材、畜産農業分野において用いる農薬、又は防疫用殺虫剤中の有効成分が固着され、
前記補助剤含有組成物中の、微細状繊維の含有率が1.0μg/ml以下である、補助剤含有組成物。
【請求項6】
前記畜産農業分野において用いる環境改善資材は、チャイナブルーを含有する畜産農業分野において用いる環境改善資材であり、
当該畜産農業分野において用いる環境改善資材のLab表色系における各値が、下記範囲である請求項4に記載の補助剤含有組成物。
L値:62.8~75.8
a値:-19.8~-17.6
b値:-15.7~-10.9
【請求項7】
前記畜産農業分野において用いる環境改善資材は、チャイナブルーを含有する畜産農業分野において用いる環境改善資材であり、
当該畜産農業分野において用いる環境改善資材のLab表色系における各値が、下記範囲であり、
L値:62.8~75.8
a値:-19.8~-17.6
b値:-15.7~-10.9
当該畜産農業分野において用いる環境改善資材と、
補助剤含有組成物中の微細状繊維の濃度が0.5μg/mLであるときの補助剤含有組成物のLab表色系における各値が、下記範囲である請求項4に記載の補助剤含有組成物。
L値:46.4~57.2
a値:-22.6-24.9
b値:-17.3~-18.4
【請求項8】
前記畜産農業分野において用いる環境改善資材は、ゲンチアナバイオレッド及びメチレンブルーを含有する畜産農業分野において用いる環境改善資材であり、
当該畜産農業分野において用いる環境改善資材の濾液の400nmにおける透過率が、60.1%以上である請求項4に記載の補助剤含有組成物。
【請求項9】
前記畜産農業分野において用いる環境改善資材は、ゲンチアナバイオレッド及びメチレンブルーを含有する畜産農業分野において用いる環境改善資材であり、
当該畜産農業分野において用いる環境改善資材の濾液の400nmにおける透過率が、60.1%以上であり、
当該畜産農業分野において用いる環境改善資材と、
補助剤含有組成物中の微細状繊維の濃度が0.5μg/mLであるときの補助剤含有組成物の濾液の400nmにおける透過率が、67.3~97.5%の範囲である請求項4に記載の補助剤含有組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助剤含有組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
畜産農業分野において、家畜動物の成育環境を整えることは、収益性の観点から重要な課題である。また、微生物による家畜動物の汚染もまた、収益性を左右する原因となっている。そこで、成育環境を整えるために環境改善資材等や、動物における微生物感染又は微生物感染に関連する障害の治療又は予防に使用するために消毒薬や防疫用殺虫剤が使用されている。
【0003】
特許文献1には、微粉炭燃焼灰と、水溶性高分子と、高炉スラグ微粉と、石膏を混合し、断面形状を5~20mmの円形、長さを10~50mmに造粒した環境改善材が水分、油分の吸着剤、畜舎、動物園における動物の糞尿の消臭のための敷料、堆肥製造のための発酵促進剤、土壌pH調整剤、肥料、食肉処理場における内臓、血液、汚物等の吸着剤等、多くの用途に利用することができる事が記載されている。
【0004】
特許文献2には、ギ酸又はその薬学的に許容される塩と、グリセロールと1種以上の酪酸グリセリド及び任意選択で酪酸とを特定の割合において含む組成物が、家畜動物における感染症に対する予防及び治療のために有効であることが開示されている。
これらの環境改善材及び組成物は、畜舎等における必要な場所に、これらを散布することによって用いるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-007610号公報
【特許文献2】特表2021-528078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、 特許文献1~2に記載の環境改善材や組成物の有効成分や他の成分は、様々な原因により散布箇所に止まらせることができずに流失してしまう。そのため、環境改善材や組成物中に含まれる各成分は、畜舎周辺や下水等に流れ込み、環境を汚染するおそれがある。また、環境改善材や組成物が流失してしまうことから、環境改善資材等の効果が持続せず、環境改善資材等の効果が十分に得ることができない。
【0007】
そこで、本発明は、畜産農業分野において用いる既知の環境改善資材や既知の防疫用殺虫剤等と併用することで、さらに環境改善資材や有効成分の効果を高めることができ、また、既知の環境改善資材や既知の防疫用殺虫剤等の使用量を抑えることのできる補助剤を含む補助剤含有組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、特定の繊維幅と繊維長のマイクロ繊維とナノ繊維とからなる微細状繊維と水とを含む分散液を、既知の環境改善資材や既存の防疫用殺虫剤等と併用することにより、前記環境改善資材や前記防疫用殺虫剤等の有効成分等を微細状繊維に吸着させ、畜舎内の散布箇所に微細状繊維を付着させることにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、畜産農業分野において用いる既知の環境改善資材や既知の防疫用殺虫剤等と併用することで、さらに環境改善資材や薬剤の効果を高めることができる補助剤及び補助剤含有組成物が提供される。また、環境改善資材や薬剤の使用量を抑えることのできる補助剤及び補助剤含有組成物が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本願発明に係る補助剤含有組成物を常温乾燥させた状態を示したものである。
【
図2】
図2は、本願発明に係る補助剤含有組成物を常温乾燥させた状態において、有効成分が微細状繊維状に固着された状態を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明に係る補助剤及び補助剤含有組成物について、それぞれ詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、発明の理解を助けるためのものであり、本発明を限定するものではない。
なお、以下の実施形態の説明に用いられる図面において、同一の参照符号は、同一部分又は相当部分を表わす。本明細書において「A~B」という形式の表記は、範囲の上限下限(すなわちA以上B以下)を意味し、Aにおいて単位の記載がなく、Bにおいてのみ単位が記載されている場合、Aの単位とBの単位とは同じである。
【0012】
(用語の定義)
本明細書における「補助剤」との用語は、既知の環境改善資材等と併用して用いる微細状繊維を含有する分散液のことをいう。
本明細書における「補助剤含有組成物」との用語は、既知の環境改善資材、既知の農薬又は既知の防疫用殺虫剤と補助剤とを含有した組成物のことをいう。ここで、補助剤含有組成物の形態は、既存の環境改善資材、既知の農薬又は既知の防疫用殺虫剤の形態にもよるが、原則として、液体状の形態である。また、補助剤含有組成物は、既存の環境改善資材を一種又は二種以上混合したものを用いてもよい。
本明細書における「既存の環境改善資材」との用語は、畜産農業分野において、従業員、畜産環境及び器具等に対して、消毒、消臭、洗浄、感染予防、防かび、防藻、土壌改良、浄化等を目的として既に用いられている資材や薬剤のことをいう。
【0013】
(補助剤含有組成物)
本発明における補助剤含有組成物は、既知の環境改善資材、既知の農薬又は既知の防疫用殺虫剤と、補助剤とを含有するものであって、補助剤として、マイクロオーダーの繊維幅を有するマイクロ繊維とナノオーダーの繊維幅を有するナノ繊維とを含む微細状繊維を用いるものである。
また、畜舎等における必要な場所に補助剤含有組成物を散布し、常温で乾燥させたときに、その場所にマイクロ繊維とナノ繊維とからなる網目領域が形成されるものである。
以下、詳細に説明する。
【0014】
(マイクロオーダーの繊維幅を有するマイクロ繊維)
マイクロ繊維の繊維幅は、通常1~100μmであり、好ましくは、1~50μmである。
また、マイクロ繊維の繊維長は、通常500μm~10mmであり、好ましくは、500μm~5mmであり、さらに好ましくは1mm以下である。
【0015】
本明細書に記載のマイクロ繊維の繊維幅及び繊維長は、顕微鏡を用いて任意の10本を選択し、それらの測定値を平均して得られた値を用いている。なお、マイクロ繊維の繊維幅及び繊維長は繊維の幹部分を測定しているが、マイクロ繊維が繊維の幹部分として単独で存在している場合と、マイクロ繊維が繊維の幹部分とその繊維の幹部分より枝分かれした極細な分岐した繊維で存在している場合であっても、さらに極細な多数の分岐した繊維とから構成されて存在している場合であっても、繊維の幹部分の繊維幅及び繊維長の測定値として用いている。
すなわち、本発明におけるマイクロ繊維は、繊維の幹部分からの枝分かれ構造の有無に関わらず、繊維の幹部分の繊維幅及び繊維長を測定する。また、前記繊維幅及び繊維長の範囲にあるマイクロ繊維は、繊維の幹部分からの枝分かれ構造の有無に関わらず、マイクロ繊維として利用することができる。
【0016】
マイクロ繊維は、その由来成分として、セルロース(微生物生産物を含む)、キチン、キトサン等の多糖類、コラーゲン、ゼラチン等のタンパク質、ポリ乳酸、ポリカプロラクタム等が挙げられる。
【0017】
(ナノオーダーの繊維幅を有するナノ繊維)
ナノ繊維の繊維幅は、通常3~1000nmであり、好ましくは、3~500nmであり、より好ましくは、3~200nmである。
また、ナノ繊維の繊維長は、通常200nm~2000μmであり、好ましくは、1~1000μmであり、より好ましくは、5~500μmである。
【0018】
本明細書に記載のナノ繊維の繊維幅及び繊維長は、顕微鏡を用いて任意の10本を選択し、それらの測定値を平均して得られた値を用いている。なお、ナノ繊維の繊維幅及び繊維長は繊維の幹部分を測定しているが、ナノ繊維が繊維の幹部分として単独で存在している場合と、ナノ繊維が繊維の幹部分とその繊維の幹部分より枝分かれした極細な分岐した繊維で存在している場合であっても、さらに極細な多数の分岐した繊維とから構成されて存在している場合であっても、繊維の幹部分の繊維幅及び繊維長の測定値として用いている。
すなわち、本発明におけるナノ繊維は、繊維の幹部分からの枝分かれ構造の有無に関わらず、繊維の幹部分の繊維幅及び繊維長を測定する。また、前記繊維幅及び繊維長の範囲にあるナノ繊維は、繊維の幹部分からの枝分かれ構造の有無に関わらず、ナノ繊維として利用することができる。
【0019】
ナノ繊維は、マイクロ繊維と同様に、その由来成分として、セルロース(微生物生産物を含む)、キチン、キトサン等の多糖類、コラーゲン、ゼラチン等のタンパク質、ポリ乳酸、ポリカプロラクタム等が挙げられる。
【0020】
(微細状繊維)
多糖類の微細状繊維の製造方法は、特許第6867613号公報に記載の微細状繊維の製造方法や特許第6704551号公報に記載の天然高分子としてセルロースを用いたセルロースナノファイバー及びセルロースナノクリスタル水溶液の調製方法や両公報に記載の他の原料等を由来成分とする微細状繊維の製造方法を参照することができる。
また、本願発明に用いることのできる多糖類の微細状繊維として、特許第6245779号公報に記載の誘導体化CNFの製造方法によって、得られる誘導体化CNFを用いることもできる。
【0021】
多糖類の微細状繊維の原料は1種を単独で又は2種以上を混合して用いてもよい。また原料の多糖としてはα-セルロース含有率60%~99質量%のパルプを用いるのが好ましい。α-セルロース含有率60質量%以上の純度であれば繊維径及び繊維長さが調整しやすく、α-セルロース含有率60質量%未満のものを用いた場合に比べ、熱安定性が高く、着色抑制効果が良好で腐敗も生じ難い。一方、99質量%以上のものを用いた場合、繊維をナノレベルに解繊することが困難になる。
【0022】
また、本発明においては、植物残渣等を多糖類の微細状繊維の原料として使用することができる。植物残渣の例としては、竹の皮、ぶどう・りんご・みかん、さつまいも等の皮、茶かす、コーヒかす、稲わら・麦わら・もみ殻、パンダ等の動物の糞などが挙げられる。例えば竹の皮を用いた場合は鳥インフルエンザに対する不活化なども期待されるなど、対象の農業基材に対して追加的な効果を付与することも可能となる。
【0023】
特許第6704551号の0018段落に記載のACC法(水中対向衝突法)により、平均繊維幅3~200nmであり、平均繊維長0.1μm以上であるCNFが得られる。前記平均繊維幅と前記平均繊維長の測定は、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)等の顕微鏡を適宜選択し、CNFを観察・測定し、得られた写真から任意の10本を選択し、これをそれぞれ平均化することにより求める。なお、蛍光増幅を利用する蛍光顕微鏡観察する方法を採用してもよい。
【0024】
本発明においては、他の原料等を由来成分ともする微細状繊維の製造方法として公知であるTEMPO酸化触媒、リン酸エステル化処理、オゾン処理、酵素処理、マレイン酸処理、無水アルケニルコハク酸による疎水変性、アルキルケテンダイマーによる疎水変性、アセチル化等による疎水変性などの化学的処理をする方法によって得られるセルロースナノファイバー又はグラインダー(石臼型粉砕機)、ディスク型リファイナー、コニカルリファイナー、高圧ホモジナイザー、ビーズミル、湿式爆砕法、超音波解繊法、混練法、凍結粉砕法等の機械的作用を利用する湿式粉砕でセルロース系繊維を細くする物理的方法によって得られる微細状繊維であっても、本発明において補助剤として使用することができる。また、化学的処理及び物理的処理を併用する方法によって得られた微細状繊維をも補助剤として利用することができる。
【0025】
(既知の環境改善資材)
既知の消毒、消臭、洗浄、防かび、防藻、土壌改良、浄化等を目的として使用されている環境改善資材を例示する。既知の環境改善資材の使用目的は、ウィルス、真菌、細菌等の発生を抑えることを目的とするものである。
消毒薬としては例えば、塩酸アルキルポリアミノエチルグリシン、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、モノ-ビス(塩化トリメチルアンモニウムメチレン-アルキル(C9,15)-トルエン水溶液)等を成分とする逆性石鹸;ポリアルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩を成分とする両イオン系界面活性剤等のイオン系表面活性物質等がある。具体的な商品名として、キーエリアA(サンケミファ株式会社)、アストップ200、アストップ、ロンテクト(以上、株式会社科学飼料研究所)、クリアキール50、カチオデットDDC-AP(以上、田村製薬株式会社)、マイター、マイターグリーン(株式会社養日化学研究所)等が例示される。
また、塩素系、ペルオキソ一硫酸水素カリウム、ジクロルイソシアヌル酸ナトリウム等のヨウ素等を成分とするハロゲン塩製剤がある。具体的な商品名としては、アンテックビルコンS(バイエル薬品株式会社)、ジャムクリア(共立製薬株式会社)等が例示される。また、ポピヨンヨード、ノノキシノールヨード等のヨウ素化合物製剤がある。具体的な商品名としては、動物用ネオヨジン液(共立製薬株式会社)、アイオディップ(日本全薬工業株式会社)等が例示される。また、アルデヒド基(-CHO)をもつ化合物、エタノールやイソプロパノール等の成分とするアルコール及びアルデヒド製剤などがある。具体的な商品名としては、エクスカット 25%・SFL(株式会社科学飼料研究所)、グルタプラス(住化エンバイロメンタルサイエンス株式会社)等が例示される。ポリアップ16(あるかアニマルヘルス株式会社)、バイオシッド30(ゾエティス・ジャパン株式会社)等が例示される。
消臭剤としては、例えば、複数の乳酸菌を用いたもの、植物の酵素を用いたもの、フミン酸やミネラル成分を用いたもの等がある。
【0026】
(既知の農薬)
本発明における既知の農薬とは、農薬取締法2条1項により規定されている農薬のことである。農作物を害する菌、線虫、だに、昆虫、ねずみその他の動植物又はウィルスの防除に用いられる殺菌剤、殺虫剤その他の薬剤及び農作物等の生理機能の増進又は抑制に用いられる植物成長調整剤、発芽抑制剤その他の薬剤のことである。
農薬としては、殺虫剤、殺菌剤、殺虫殺菌剤、除草剤、殺そ剤、誘引剤、展着剤、微生物剤等を例示することができる。
【0027】
(既知の防疫用殺虫剤)
既知の防疫用殺虫剤としては、「防疫用殺虫剤市場流通一覧表」(日本防疫殺虫剤協会、2020年8月12日改訂)に記載のダイアジノン、トルクロルホン、ジクロルボス、フェニトロチオン、フタルスリン、d-d-Tシフェノトリン、フェンチオン、プロペタンホス等の有機リン系殺虫剤、オルトジクロロベンゼン、クレゾール、プロポクスル等の塩素系殺虫剤、イミプロトリン、シフェノトリン、フェノトリン、ジョキュウギクエキス、ピレトリン、d-d-T-シフェノトリン、天然ピレトリン、ペルメトリン、シペルメトリン、トラロメトリン、レスメトリン、アレスリン、フラメトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、エトフェンプロックス等のピレスロイド系化合物、ピリプロキシフェン、メトプレン等の昆虫成長制御剤、インドキサカルブ、ヒドラメチルノン、ジノテフラン等のその他の殺虫剤が例示される。
【0028】
前記防疫用殺虫剤の剤型としては、乳剤、粉剤、低臭性乳剤、水和剤、水溶剤、フロアブル、MC剤、油剤、水性乳剤等が例示される。
【0029】
(マイクロ繊維とナノ繊維とからなる網目領域)
図1を用いて、畜舎等における必要な場所に本願発明に係る補助剤含有組成物を散布し、常温で乾燥させたときに、その場所にマイクロ繊維とナノ繊維とからなる網目領域が形成されるということが意味するところについて説明する。
図1は、マイクロ繊維とナノ繊維の通常の繊維長の下限値の繊維長500μmのマイクロ繊維と繊維長200nmのナノ繊維とからなる微細状繊維がそれぞれ複数本含まれると仮定した補助剤を畜舎等における必要な場所に散布した後に、常温乾燥させた状態を示したものである。なお、繊維幅については、理解しやすくするために、同一のサイズのものと仮定する。補助剤は、乾燥する過程において、マイクロ繊維とマイクロ繊維とが、或いは、マイクロ繊維とナノ繊維とが、或いはナノ繊維とナノ繊維とが、絡み合いながらその場に固定される(
図1における1、2、3である)。その結果、複数のマイクロ繊維に囲まれた領域が複数形成される。ここで、マイクロ繊維はナノ繊維と比べて、十分に長いものであるから、この領域内にナノ繊維が単体で或いは複数のナノ繊維が絡み合った状態で存在する(
図1における4,5である)。
以上より、本発明におけるマイクロ繊維とナノ繊維とからなる網目領域とは、補助剤含有組成物を乾燥させた状態のときに、繊維幅3~1000nm、繊維長200nm~2000μmのナノ繊維が繊維幅1~100μm、繊維長500μm~10mmのマイクロ繊維により囲まれた領域(以下、領域ということもある。)が存在する状態のことであると解釈される。
【0030】
図2を用いて、マイクロ繊維とナノ繊維とからなる網目領域が、補助剤含有組成物を乾燥させたときに形成されることによって、既存の環境改善資材、既存の農薬及び既存の防疫用殺虫剤の効果を高めることができることについて説明する。
図2は、
図1のマイクロ繊維とナノ繊維に、既存の環境改善資材、既存の農薬又は既存の防疫用殺虫剤等の有効成分6が固着されたことを示す図である。
環境改善資材や農薬等が対象とする真菌や細菌の大きさは、真菌が3~40μm、細菌が0.5~10μm程度である。そうすると、繊維幅3~1000nm、繊維長200nm~2000μmのナノ繊維が繊維幅1~100μm、繊維長500μm~10mmのマイクロ繊維により囲まれた領域に、真菌や細菌が存在し得ることとなる。
したがって、前記領域に真菌や細菌が存在した場合には、この領域内においていずれ死滅する。マイクロ繊維上には、有効成分が存在するため、これを越えて、細胞分裂することができないからである。また、この領域内には、ナノ繊維に固着した有効成分が存在するため、直接的に真菌や細菌を殺菌することとなる。
さらに、領域全体に均一に有効成分が存在するのに比べて、繊維上に選択的に固着されていることにより、繊維上は局所的に濃度の高い部分となることにより、特に微生物への効果を高められる。
【0031】
農薬である殺虫剤又は防疫用殺虫剤等が対象とする殆どの害虫の大きさは、約1mm以上の程度である。このような害虫に対して補助剤含有組成物を噴霧した場合には、有効成分が固着している微細状繊維を害虫の体に付着・固着させることができる。これにより、殺虫剤を害虫に単に噴霧することと比較して、より効果的に害虫を駆除することができる。単に殺虫剤を噴霧した場合と補助剤含有組成物として噴霧した場合とでは、有効成分が害虫の体表に止まる時間に顕著な差があると考えられるからである。
【0032】
(補助剤含有組成物の調製)
補助剤含有組成物を調製する方法は特に限定されないが、補助剤としての、多糖類の微細状繊維を含む分散液と既知の環境改善資材、既知の農薬又は防疫用殺虫剤と混合することが好ましい。なお、多糖類の微細状繊維を含む分散液をその使用の際に溶媒(通常水)で所定濃度に希釈して用いてもよい。
また、既知の環境改善資材の希釈液の量については、使用する各種環境改善資材の取扱説明書等の記載に従って適宜設定すればよい。
また、既知の農薬の希釈液の量については、使用する各種環境改善資材の取扱説明書等の記載に従って適宜設定すればよい。
また、既知の防疫用殺虫剤の希釈液の量については、使用する各種防疫用殺虫剤の取扱説明書等の記載に従って適宜設定すればよい。
また、補助剤含有組成物中の多糖類の微細状繊維の含有率は、特に制限されることなく使用することができるが、0.001質量%以上10質量%以下が好ましい。多糖類の微細状繊維の含有率があまりにも少ない場合には、環境改善資材や防疫用殺虫剤による効果を向上させることができないからである。一方、10質量%以上であると、補助剤含有組成物が高粘度となり、噴霧性が低下し、均質な散布が困難となるからである。
【0033】
(補助剤含有組成物の使用方法)
本発明の補助剤含有組成物の使用方法は、噴霧器等を用いて畜舎等において、噴霧・散布する。また、本発明の補助剤含有組成物の使用方法は、予め補助剤と既知の環境改善資材、既知の農薬又は既知の防疫用殺虫剤を混合した混合液を噴霧しても良いし、補助剤含有組成物を対象となる場所に散布した後に、重ねて既知の環境改善資材又は既知の防疫用殺虫剤を散布しても良い。このとき、地上での散布以外に、有人の航空機、ヘリコプターや無人ラジコンヘリコプターを使用しての空中から散布してもよい。
【0034】
本発明における環境改善資材の補助剤として微細状繊維を用いた補助剤含有組成物は、既存の環境改善資材等の各種有効成分による持続性等の効果を向上させる物質として多糖類の微細状繊維を用いたものである。すなわち、前記有効成分を微細状繊維に固着させ、或いは、散布した場所に微細状繊維を固着させて、環境改善資材自体の流出を防ぐものである。
【実施例0035】
以下、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0036】
(実施例1~6)
セルロース由来成分として竹パルプを用い、ACC法(水中対向衝突法)を使用して、解繊処理を行い、マイクロ繊維とナノ繊維ナノオーダーの繊維幅を有する微細状繊維を含む補助剤(微細状繊維含量2%)を得た。
次いで、得られた補助剤と、環境改善資材として用いたマイターグリーン(有効成分:チャイナブルー;株式会社用養日化学研究所)とを以下の表1に記載の濃度となるように調製して、補助剤含有組成物とした。例えば、2%濃度の微細繊維含有物を40倍相当に希釈する場合は、2%=20g/1,000ml(=20μg/1ml)を40倍で希釈するため、(20÷40)μg/ml=0.5μg/mlとなる。
次いで、得られた補助剤含有組成物を、濾紙(アドバンテック株式会社;No.1;直径90mm)を用いて濾過した。
次いで、濾過後の濾紙を、測色色差計ZE6000(日本電色工業株式会社製)を使用してLab表色系におけるL値、a値、b値の各値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0037】
(参考例1~4)
マイターグリーン(有効成分:チャイナブルー;株式会社養日化学研究所)と、を以下の表1に記載の濃度となるように調製した。
次いで、これを、濾紙(アドバンテック株式会社;No.1;直径90mm)を用いて濾過した。
次いで、濾過後の濾紙を、測色色差計ZE6000(日本電色工業株式会社製)を使用してLab表色系におけるL値、a値、b値の各値を測定した。測定結果を表1に示す。
【0038】
【0039】
表1から、環境改善資材の濃度が同一であり、微細状繊維の濃度が異なる組み合わせ(実施例1と参考例1、実施例2と参考例2、実施例3と参考例3及び実施例4と参考例4)の結果から、Lab表色系におけるL値、a値及びb値が全てマイナス方向にシフトしており、色が濃くなっていると解釈されることから、微細状繊維に、チャイナブルーが固着されていることが明らかとなった。
一方、環境改善資材の濃度が同一であり、微細状繊維の量が異なる組み合わせ(実施例3、実施例5,実施例6及び参考例3)の結果から、Lab表色系におけるa値とb値を加えた値は微細状繊維の量を1.0μg/mlより増やしても、増加しない傾向にあるから、補助剤含有組成物組成物中の微細状繊維の濃度を1.0μg/mlとしていれば、本発明に係る補助剤含有組成物の効果が得られることが明らかとなった。
【0040】
(実施例7~12)
実施例1~6において用いた補助剤と、環境改善資材として用いたマイター(有効成分:ゲンチアナバイオレット及びメチレンブルー;株式会社養日化学研究所)と、を以下の表2に記載の濃度となるように水で調製して、補助剤含有組成物とした。
次いで、得られた補助剤含有組成物を、濾紙(アドバンテック株式会社;No.1;直径90mm)を用いて濾過した。
次いで、分光光度計U-3900(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を使用して、前記濾液の400nmにおける透過率を測定した。測定結果を表2に示す。
【0041】
(参考例5~8)
マイター(有効成分:ゲンチアナバイオレット及びメチレンブルー;株式会社養日化学研究所)と、を以下の表2に記載の濃度となるように水で調製した。
次いで、これを、濾紙(アドバンテック株式会社;No.1;直径90mm)を用いて濾過した。
次いで、分光光度計U-3900(株式会社日立ハイテクノロジーズ社製)を使用して、濾液の400nmにおける透過率を測定した。測定結果を表2に示す。
【0042】
【0043】
表2から、環境改善資材の濃度が同一であり、微細状繊維の濃度が異なる組み合わせ(実施例7と参考例5、実施例8と参考例6、実施例9と参考例7及び実施例10と参考例8)の結果から、400nmにおける透過率の値は全て増加していることから、微細状繊維に、ゲンチアナバイオレット及びメチレンブルーが固着されていることが明らかとなった。
一方、環境改善資材の濃度が同一であり、微細状繊維の濃度が異なる組み合わせ(実施例9、実施例11、実施例12及び参考例7)の結果から、微細状繊維に固着した前記有効成分の量を透過率の差として、算出したところ(例えば、82.3(実施例9)-78.9(参考例7))により算出する)、微細状繊維の量を1.0μg/mlより増やしても、増加しない傾向にあるから、補助剤含有組成物中の微細状繊維の濃度を1.0μg/mlとしていれば、本発明に係る補助剤含有組成物の効果が得られることが明らかとなった。