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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164424
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】加工布の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D06J 1/12 20060101AFI20231102BHJP
   D06B 11/00 20060101ALI20231102BHJP
   D06C 15/10 20060101ALI20231102BHJP
   D06C 7/00 20060101ALI20231102BHJP
   D06P 5/20 20060101ALI20231102BHJP
   D06P 5/28 20060101ALI20231102BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20231102BHJP
   D06Q 1/10 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
D06J1/12
D06B11/00 E
D06C15/10
D06C7/00
D06P5/20 C
D06P5/28
B32B5/24 101
D06Q1/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023125472
(22)【出願日】2023-08-01
(62)【分割の表示】P 2020009071の分割
【原出願日】2019-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】390033891
【氏名又は名称】株式会社三宅デザイン事務所
(74)【代理人】
【識別番号】110001885
【氏名又は名称】弁理士法人IPRコンサルタント
(72)【発明者】
【氏名】宮前 義之
(72)【発明者】
【氏名】中谷 学
(72)【発明者】
【氏名】寺 奈々恵
(72)【発明者】
【氏名】鎌倉 美佳
(57)【要約】
【課題】簡便な方法で生地に多様な凹凸模様を形成することができる加工布の製造方法の提供。
【解決手段】生地を準備し、前記生地のうち少なくとも一部分に、発泡剤を含む第1糊剤を印捺し、印捺済みの生地を加熱した金属板でプレスして、前記発泡剤を発泡させる工程を含むことを特徴とする加工布の製造方法。加工布の製造方法は、前記生地に、着色剤を含む第2糊剤を印捺する工程、を更に含んでもよい。また、加工布の製造方法は、前記生地に昇華転写を行う工程を更に含んでもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地を準備する準備工程と、
前記生地のうち少なくとも一部分に、発泡剤を含む第1糊剤を印捺して、前記第1糊剤が印捺される領域と、前記第1糊剤が印捺される領域以外の領域と、を形成する印捺工程と、
前記印捺工程後の前記生地の湿り気が5~15質量%となるように乾燥する乾燥工程と、
加熱した金属板を用い、加圧力:1~10kg/10cm、加圧時間:10~120秒、温度:190~220℃の条件で、前記乾燥工程後の前記生地をプレスして、前記発泡剤を発泡させることにより、前記第1糊剤が印捺される領域を発泡させる発泡工程と、
を含むことを特徴とする加工布の製造方法。
【請求項2】
前記生地に、着色剤を含む第2糊剤を印捺する工程
を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の加工布の製造方法。
【請求項3】
第1糊剤が印捺される領域以外の領域に、前記第2糊剤を印捺すること、
を特徴とする請求項2に記載の加工布の製造方法。
【請求項4】
前記第1糊剤の印捺に先立ち、前記第1糊剤が印捺される領域に、前記第2糊剤を印捺すること、
を特徴とする請求項2又は3に記載の加工布の製造方法。
【請求項5】
前記生地に昇華転写を行う工程
を更に含むことを特徴とする請求項1~4のいずれかに記載の加工布の製造方法。
【請求項6】
プレス済みの生地を洗浄する工程を更に含み、
洗浄済みの生地を、昇華性インクがプリントされた転写紙とともに、前記金属板で再度プレスすること、
を特徴とする請求項5に記載の加工布の製造方法。
【請求項7】
前記印捺済みの生地を、昇華性インクが印刷された転写紙とともに、前記金属板でプレスすること、
を特徴とする請求項5に記載の加工布の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣類などの加工布の製造方法に関し、特にひだ部あるいはプリーツを含む加工布の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、(1)シュリンクフィルムに発泡材インクと固定インクとを印刷する工程;(2)原料布の裏側に、発泡材インクが接触するようにしながら、原料布とシュリンクフィルムとを合わせて、これら両原料布及びシュリンクフィルムを加熱する工程;(3)熱プレス板の圧力を調整しながら、シュリンクフィルムの収縮と、発泡材インクの発泡とを行い、原料布にシボプリーツ部と細プリーツ部とをプリーツ加工してプリーツ加工布とする工程;(4)プリーツ加工布から、シュリンクフィルム及び発泡した発泡材インクを除去する工程を含むプリーツ加工布の製造方法が知られている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-70365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したプリーツ加工布の製造方法では、シュリンクフィルムを使用しているためプリーツの表現に制限があり、また布からシュリンクフィルムを確実に除去することは手間である。このように従来のプリーツ加工布の製造方法には未だ課題がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、簡便な方法で生地に多様な凹凸模様を形成することができる加工布の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決すべく、本発明は、生地を準備し、前記生地のうち少なくとも一部分に、発泡剤を含む第1糊剤を印捺し、印捺済みの生地を加熱した金属板でプレスして、前記発泡剤を発泡させる工程を含むことを特徴とする加工布の製造方法を提供する。ここで、加工布は衣類を含むものとし、また、準備される生地は、先染めされていても、されていなくてもよい。
【0007】
上記の構成を有する本発明の加工布の製造方法は、前記生地に、着色剤を含む第2糊剤を印捺する工程、を更に含むことが好ましい。この場合、第1糊剤が印捺される領域以外の領域に、前記第2糊剤を印捺してもよいし、あるいは、前記第1糊剤の印捺に先立ち、前記第1糊剤が印捺される領域に、前記第2糊剤を印捺してもよい。
【0008】
また、上記の構成を有する本発明の加工布の製造方法は、前記生地に昇華転写を行う工程を更に含むことが好ましい。この場合、プレス済みの生地を洗浄する工程を更に含み、洗浄済みの生地を、昇華性インクが印刷された転写紙とともに、前記金属板で再度プレスしてもよい。あるいは、前記印捺済みの生地を、昇華性インクが印刷された転写紙とともに、前記金属板でプレスしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、簡便な方法で生地の特定の部位を確実にかつ十分に発泡させることができる。したがって、加工布に多様な凹凸模様を形成すること、つまり多様な表現のプリーツ加工が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る加工布の製造工程を示すフローチャートである。
図2】捺染済みの生地の一例を示す概略図である。
図3】裁断済みの生地の一例を示す概略図である。
図4】プレス済みの生地の一例を示す概略図である。
図5】洗浄済みの生地の一例を示す概略図である。
図6】糊剤の印捺の様子を例示的に示す概略図である。
図7】プレスの様子を例示的に示す概略図である。
図8】本実施形態の変形例1に係る加工布の製造工程の概略図である。
図9】本実施形態の変形例2に係る加工布の製造工程の概略図である。
図10】本実施形態の変形例3に係る加工布の製造工程の概略図である。
図11】本実施形態の変形例4に係る加工布の製造工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の代表的な実施形態に係る加工布の製造工程について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図面は、本発明を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために、必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表している場合もあり、本発明はこれに限定されるものではない。
【0012】
1.代表的な実施形態
本実施形態に係る加工布の製造方法は、次の工程を含む。
(1)生地を準備する工程
(2)生地に、発泡剤を含む糊剤を印捺する工程
(3)印捺済みの生地を加熱した金属板でプレスして、発泡剤を発泡させる工程
(4)生地を洗浄する工程
以下、図1図7を参照して、上記の各工程を説明することとする。ここでは加工布の一例としてシャツを挙げて上記各工程を説明するが、ここで述べる製造方法により例えばズボンのような他種類の加工布を製造することも可能である。
【0013】
(1)生地の準備
まず生地1を準備する(図1のステップS1)。
生地1の材料としては、天然繊維及び人工繊維を使用することができるが、例えばポリエステルからなる生地や、ポリエステルを主材としウール、レーヨンを混紡した生地を好適に使用することができる。また、生地として、例えば織物を好適に使用することができるが、これに限られない。更に、生地として、先染めの生地を用いてもよいし、後染めの生地を用いてもよい。
【0014】
(2)糊剤の印捺
次いで、生地1のうち少なくとも一部分に、発泡剤を含む糊剤(第1糊剤)を印捺する(ステップS2)。
発泡剤は、例えば発泡性のウレタン樹脂を主剤としたものであり、熱すると所定の発泡率で発泡する。糊剤に使用する糊料としては、天然糊料(でんぷん類、ゴム類、海藻類)、合成糊料(ポリビニールアルコール)、エマルジョン糊(O/W型、W/O型)又はこれらのブレンドを適宜使用することができる。なお、糊剤は着色剤を含んでいてもよく、着色剤としては例えば顔料を使用することができる。
【0015】
糊剤の印捺は、例えば図6に示すようなハンドスクリーンプリントにより行うことができる。この場合、作業者は、スキージ(へら)を用いて、生地1上にスクリーン5から糊剤を押し出し、生地1上に糊剤層3を形成する。
【0016】
糊剤層については、例えば図6のように、生地1の一部分の領域に糊剤層3が形成されてもよいし、例えば図2のように、生地1の全面に渡って糊剤層31が形成されてもよい。なお、糊剤の印捺は、手捺染のほか、各種の捺染機で行われてもよい。
【0017】
ここで、糊剤付きの生地1は、発泡に適した湿り気を含むように、適宜乾燥される。つまり、生地1の湿り気が大きいと発泡剤が発泡しすぎるため、例えば電気式水分計の電極プローブを生地1の印捺面(又は反対側の面)に接触させた状態で、計測結果が生地1全体として15質量%以下の湿り気となる程度に生地1が乾燥していることが好ましい。より好ましい発泡性能を得るために、生地1の湿り気は5~15質量%であることが更に好ましい。なお、電気式水分計の一例として株式会社サンコウ電子研究所製の電気式水分計MR-200IIが挙げられる。
【0018】
糊剤の印捺が済むと、例えば図3(a)及び(b)のように、生地1を所定の型にしたがって裁断し(ステップS3)、裁断済みの生地1同士を縫製する(ステップS4)。
【0019】
(3)加熱による発泡
次いで、印捺済みの生地(縫製済みの生地)1を加熱した金属板でプレスし、発泡剤を発泡させる(ステップS5)。例えば、図7(a)のように、プレス機7の金属コテ71と台73の間に生地1をセットし、図7(b)のように、加熱した金属コテ71を台73に押圧する。これにより、糊剤層31に含まれる発泡剤が発泡する。なお、熱による生地1の損傷を防止するべく、生地1と金属コテ71との間に離型紙9を介在させてもよい。
【0020】
加熱による発泡剤の発泡の結果、生地1は、それまでの平坦な形状(例えば図3(a)及び(b)参照)から、ひだ部(プリーツ)33を含む凹凸形状(例えば図4(a)及び(b)参照)に変形する。その結果、生地1は全体として収縮する。
【0021】
ここで、プレスの条件は、確実な発泡及び生地の損傷防止の観点から、次のように設定することが好ましい。
加圧力: 1~ 10kg/10cm
加圧時間: 10~120秒、
金属板の温度:190~220℃
更に言えば、次の設定がより好ましい。
加圧力: 2~ 6kg/10cm
加圧時間: 20~ 40秒
金属板の温度:210~220℃
【0022】
この工程のための加工機材として平型の熱転写機を好適に使用することができ、一例として株式会社ハシマ製の平型昇華転写プレスHSP-2210を挙げることができる。
【0023】
(4)洗浄
次いで、生地1を洗浄し、糊剤を洗い流す(ステップS6)。例えば、生地1を水洗いし、すすぎ、脱水した後、生地の形を整えたうえで乾燥させればよい。これにより、例えば図5(a)及び(b)のように、ひだ部33を保持した生地1(加工布)を得ることができる。なお、加工布が例えば椅子や照明器具のかさのような一定の強度を必要とする構造体を構成する場合、強度確保のため、発泡済みの発泡剤を生地に付着させたままにしてもよく、したがって洗浄工程は省略されてもよい。
【0024】
本実施形態に係る加工布の製造方法によれば、簡便な方法で、生地1の特定の部位を確実にかつ十分に発泡させることができる。したがって、加工布に多様な凹凸模様を形成することが可能となる。
【0025】
2.変形例1
図8を参照して、本実施形態の変形例1に係る加工布の製造方法を説明する。
変形例1と後述する変形例2とでは、発泡剤を含む糊剤(第1糊剤)の印捺の際に、着色剤を含む糊剤(第2糊剤)をも生地に印捺することとする。変形例1では、発泡剤を含む糊剤の印捺後に、着色剤を含む糊剤を生地に印捺することとしている。もっとも、これら糊剤の印捺領域同士が重なり合わない限り、印捺の順序は問わない。
【0026】
具体的に説明すると、生地1を準備した後、図8(a)に示すように、発泡剤を含む糊剤を生地1に印捺して、生地1上に糊剤層31を形成する。
【0027】
次いで、図8(b)に示すように、着色剤を含む糊剤を、糊剤層31の形成領域以外の領域35A(図8(a)参照)に印捺して、生地1上に糊剤層35を形成する。糊剤層35は糊剤層31上に重なってもよいが、糊剤層35と糊剤層31とが重なる領域では十分な発色性が確保できず、また、染色ムラや汚れの原因になる可能性があることに留意すべきである。また、発泡剤を含む糊剤及び着色剤を含む糊剤の両方を印捺済みの生地1は、上述した測定方法の下で、生地1全体として15質量%以下の湿り気となるように、適宜乾燥される。
【0028】
ここで、着色剤としては顔料及び染料のいずれでもよいが、ここでは顔料を用いることとする。顔料の一例を挙げると、例えば酸化チタン(白)、カーボンブラック(黒)、他の色では有機系顔料(例えばアゾ顔料)があり、加工布のデザインに応じて複数種類の顔料が使用されてもよい。
【0029】
糊剤には、着色剤としての顔料を生地1に固着させるためのバインダーが含まれており、例えば自己架橋型アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ラテックス系樹脂が挙げられる。
【0030】
糊剤は更に糊料を含んでいる。糊料としては、上述したように、天然糊料(でんぷん類、ゴム類、海藻類)、合成糊料(ポリビニールアルコールなど)、エマルジョン糊(O/W型、W/O型)又はこれらのブレンドが適宜用いられる。
【0031】
そして、印捺済みの生地1を縫製し、縫製された生地1を加熱した金属板でプレスすると、発泡剤が発泡するとともに着色剤が生地1へ固着する。その結果、図8(c)に示すように、生地1にひだ部33及び模様37が、互いに重なり合わない位置に形成される。なお、プレスの条件は、本実施形態において述べた条件を適用可能である。
【0032】
次いで、生地1を洗浄すると、図8(d)に示すように、生地1から糊剤が除去され、ひだ部33及び模様37が残る。
【0033】
変形例1では、発泡剤を含む糊剤が印捺される領域31以外の領域35Aに、つまり発泡剤を含む糊剤の印捺領域31に重ならないように、着色剤を含む糊剤を印捺する。これにより、十分な発泡性能及び発色性能を確保しながら、発泡によるひだ部33の形成と模様37の形成とを同時に行うことができる。
【0034】
3.変形例2
図9を参照して、本実施形態の変形例2に係る加工布の製造方法を説明する。
変形例2では、着色剤を含む糊剤の印捺を、発泡剤を含む糊剤の印捺に先立って行うこととし、発泡剤を含む糊剤が印捺される領域に全部又は一部分が重なるように、着色剤を含む糊剤を印捺する。
【0035】
具体的には、生地1を準備した後、図9(a)に示すように、着色剤を含む糊剤を生地1に印捺して、生地1上に糊剤層35を形成する。このとき、糊剤層35の全部又は一部分が、発泡剤を含む糊剤の印捺予定領域31Aと重なるように、着色剤を含む糊剤を印捺する。ここで着色剤としては変形例1と同じものを使用することができる。
【0036】
次いで、図9(b)に示すように、発泡剤を含む糊剤を生地1に印捺し、糊剤層31を形成する。ここでも、過剰な発泡を抑制するため、全ての糊剤の印捺後における生地1の湿り気が生地1全体で15質量%以下になるように、生地1が乾燥される。生地1の湿り気の計測手法は、本実施形態及び変形例1において述べたとおりである。
【0037】
そして、印捺済みの生地1を加熱した金属板でプレスすると、発泡剤が発泡するとともに着色剤が生地1へ固着する。このとき、糊剤層31,35の重なりを考慮すると、着色及び発泡を確実に行うために、プレス機7の加圧力を、本実施形態における加圧力の範囲でも高め(例えば5~6kg/10cm)に設定することが好ましい。
【0038】
プレスの結果、図9(c)に示すように、生地1にひだ部33が形成されるとともに、ひだ部33の全部又は一部に模様37が形成される。そして、生地1を洗浄すると、図9(d)に示すように、生地1から糊剤が除去されて、模様37が露出する。
【0039】
変形例2に係る加工布の製造方法によれば、ひだ部33にも、鮮やかな模様を確実に形成することができる。この点、変形例2により得られる生地では、発泡剤及び着色剤の両方を含む糊剤を生地に印捺する場合に比べて、発色性が格段に優れている。
【0040】
4.変形例3
図10を参照して、本実施形態の変形例3に係る加工布の製造方法を説明する。
変形例3と後述する変形例4とは、昇華転写による染色工程を含むものである。特に変形例3では、発泡によるひだ部の形成と同時に、ひだ部以外の領域を昇華転写により染色することとする。
【0041】
具体的には、生地1を準備した後、図10(a)に示すように、発泡剤を含む糊剤を生地1に印捺して、生地1上に糊剤層31を形成する。ここで、糊剤層31に含まれる水分の割合については、本実施形態において述べた水分量の範囲における少なめ(例えば5~8%)であることが好ましい。これは、加熱による昇華性インクの蒸発に伴って発泡剤に過剰な水分が供給されて過剰な発泡を誘発することを抑制するためである。
【0042】
併せて、転写紙41を準備し、この転写紙41に昇華性インクをプリントしてインク層43を形成する。ここでは、図10(b)のように、インク層43が生地1の全面をほぼ覆うようにプリントされているが、インク層43は、生地1上の糊剤層31と重ならないように配置されてもよい。
【0043】
そして、生地1を転写紙41とともに熱転写機7(金属コテ71と台73)でプレスする。すると、図10(c)のように、発泡剤の発泡によりひだ部33が形成されるとともに、生地1上のひだ部33以外の領域には、昇華性インクの蒸発により生地1が染色されて模様45が形成される。このとき、発泡及び染色を確実に行うべく、熱転写機の加圧力を、本実施形態における加圧力の範囲でも高め(例えば5~6kg/10cm)に、加圧時間を長め(例えば30~40秒)に設定することが好ましい。
【0044】
次いで、生地1を洗浄すると、図10(d)に示すように、生地1から糊剤層31が除去され、生地1にひだ部33及び模様45が残る。
【0045】
変形例3では、発泡剤入り糊剤を印捺した生地1を、昇華性インクをプリントした転写紙41とともにプレスすることとしている。これにより、発泡によるひだ部33の形成と、ひだ部33以外の領域における染色による模様45の形成とを同時に行うことができる。また、十分な発泡性能及び発色性能を確保することができる。
【0046】
5.変形例4
図11を参照して、本実施形態の変形例4に係る加工布の製造方法を説明する。
変形例4では、本実施形態で述べた各工程に加え、更に昇華転写による染色工程を含むこととする。
【0047】
具体的には、生地1を準備した後、図11(a)に示すように、発泡剤を含む糊剤を生地1に印捺して、生地1上に糊剤層31を形成する。そして、生地1を加熱した金属板でプレスすると、発泡剤が発泡し、図11(b)に示すように、生地1にひだ部33が形成される。次いで、生地1を洗浄すると、図11(c)に示すように、生地1から糊剤が除去され、ひだ部33が残る。
【0048】
併せて、転写紙41を準備し、この転写紙41に昇華性インクをプリントして転写紙41上にインク層43を形成しておく。インク層43は生地1の全面をほぼ覆うように形成してよい。
【0049】
そして、図11(d)に示すように、生地1を転写紙41とともに熱転写機7(金属コテ71と台73)でプレスする。すると、例えば図11(e)のように、ひだ部33は、金属コテ71の押圧により平らに変形するとともに、ひだ部33には、昇華性インクの蒸発により模様45が転写される。このとき、昇華転写の確実性の観点から、熱転写機の加圧力を1~10kg/10cmに、加圧時間を30~120秒に、金属板の加熱温度を190~220℃に、設定することが好ましい。更には、十分な転写性能の観点から、加圧力を5~6kg/10cmに、加圧時間を50~70秒に、金属板の加熱温度を210~220℃に、設定することが好ましい。
【0050】
変形例4に係る加工布の製造方法によれば、ひだ部33に特徴的な平らな形状を付与することができるとともに、ひだ部33を含む生地1に鮮やかな模様45を付与することができる。これにより、生地に多様な凹凸模様を形成すること、つまり多様な表現のプリーツ加工が可能となる。
【0051】
上述した変形例1~4に係る加工布の製造方法は、適宜組み合わせることができる。例えば、変形例1,2の組合せ、変形例2,3の組合せ、変形例3,4の組合せ、変形例1,4の組合せが可能である。
【0052】
以上、本発明の代表的な実施形態について説明したが、本発明はこれらのみに限定されるものではなく、種々の設計変更が可能であり、かかる設計変更した態様も全て本発明の技術的範囲に含まれる。
【0053】
例えば、加工布として、ネクタイなどの他の衣類、バッグ、カーテン、椅子、照明器具のかさなどを製作することができる。
【符号の説明】
【0054】
1・・・生地、
3・・・糊剤層、
5・・・スクリーン、
7・・・プレス機(熱転写機)、
31・・・発泡剤を含む糊剤層、
33・・・ひだ部、
35・・・着色剤を含む糊剤層、
37・・・模様、
41・・・転写紙、
43・・・インク層。
45・・・模様。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11