(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164448
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ポンプ用状態監視装置およびこれを備えるポンプ
(51)【国際特許分類】
F04B 51/00 20060101AFI20231102BHJP
F04D 7/04 20060101ALI20231102BHJP
F04D 7/06 20060101ALI20231102BHJP
F04D 29/42 20060101ALI20231102BHJP
F04D 29/00 20060101ALI20231102BHJP
G01L 5/00 20060101ALI20231102BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20231102BHJP
【FI】
F04B51/00
F04D7/04 H
F04D7/06 E
F04D29/42 F
F04D29/00 B
G01L5/00 101Z
G01M99/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135303
(22)【出願日】2023-08-23
(62)【分割の表示】P 2019158160の分割
【原出願日】2019-08-30
(71)【出願人】
【識別番号】505328085
【氏名又は名称】古河産機システムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】葛山 達夫
(57)【要約】
【課題】ポンプの状態監視、遠隔監視、情報発信装置に適用できる、ポンプの状態監視技術を提供する。
【解決手段】このポンプ用状態監視装置10は、ケーシング5の接液部内面が軟質ゴムでライニングされている若しくはケーシング5の内側に軟質ゴム製のライナ3が内包されているポンプ1に用いられ、ポンプ1の状態を監視する装置であって、ライニング若しくはライナ3の接液部内面から離隔してライニング若しくはライナ3を構成する軟質ゴム中の複数箇所に埋め込まれた圧力センサ20A,20B,20C,20Dと、複数箇所の圧力センサ20A,20B,20C,20Dで取得された圧力情報に基づいて、ポンプ1の状態に係る情報を検知するコントローラ30と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングの接液部内面が軟質ゴムでライニングされている若しくはケーシングの内側に軟質ゴム製のライナが内包されているポンプに用いられ、該ポンプの状態を監視する状態監視装置であって、
前記ライニング若しくは前記ライナの接液部内面から離隔して前記ライニング若しくは前記ライナを構成する前記軟質ゴム中に埋め込まれた圧力センサと、
該圧力センサで取得された圧力情報に基づいて、前記ポンプの状態に係る情報を検知する状態情報検知部と、
を有することを特徴とすることを特徴とするポンプ用状態監視装置。
【請求項2】
前記圧力センサは、前記ライニング若しくは前記ライナを構成する前記軟質ゴム中の複数の箇所に埋め込まれている請求項1に記載のポンプ用状態監視装置。
【請求項3】
前記ポンプは、前記ケーシングの内部に複数の羽根を有するインペラが収納されたものであり、
前記複数の圧力センサのうち、
第一の圧力センサは、前記インペラの羽根前端と対向する位置に埋入され、
第二の圧力センサは、前記ケーシングの吸込口ないしその近傍の位置に埋入され、
第三の圧力センサは、前記ケーシングの最も低い位置ないしその近傍の位置に埋入され、
第四の圧力センサは、前記ケーシングの吐出口ないしその近傍の位置に埋入されている請求項2に記載のポンプ用状態監視装置。
【請求項4】
ケーシングの接液部内面が軟質ゴムでライニングされている若しくはケーシングの内側に軟質ゴム製のライナが内包されているポンプであって、
請求項1から3のいずれか一項に記載のポンプ用状態監視装置が装備されていることを特徴とするポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプの状態を監視する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、高濃度スラリや腐食性スラリを圧送するスラリポンプは、接液部品の早期摩耗、異物の噛み込みや詰まり、著しい性能低下に見舞われることがある。そのため、突発的なメンテナンスに日頃から備えておく必要がある。
【0003】
一方、突発的な対応を嫌って早めに部品交換を行っている場合は、最適なメンテナンス周期を逃していることが多い。そのため、ユーザ・メーカ共に、豊富な部品在庫および保全サポート要員を常に抱えなければならず、メンテナンスコストおよびランニングコストが嵩んでいるという現状がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-261668号公報(段落0011、0016)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これに対し、ポンプの状態を監視すべく、ポンプに接続される吸込配管や吐出配管に圧力計を取り付けることは古くから一般的であるものの(例えば特許文献1参照)、より多くの運転状況の情報を得るには、ポンプの接液部もしくは接液部に極力近い場所に、圧力センサを取り付ける必要がある。
【0006】
しかし、高濃度・腐食性用のスラリポンプにおいては、圧力センサの取付け穴から摩耗が進行するという問題がある。そのため、スラリポンプの接液部自身に圧力センサを取り付けることは実用上、困難である。
【0007】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、高濃度スラリや腐食性スラリを圧送するスラリポンプであっても、ポンプ自体の状態を監視し得る、ポンプ用状態監視装置およびこれを備えるポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るポンプ用状態監視装置は、ケーシングの接液部内面が、軟質ゴムでライニングされているか若しくはケーシング内側に軟質ゴム製のライナが内包されているポンプに用いられ、該ポンプの状態を監視する状態監視装置であって、前記軟質ゴムの接液部内面から離隔して前記軟質ゴム中の複数箇所に埋め込まれた圧力センサと、該複数箇所の圧力センサで取得された圧力情報に基づいて、前記ポンプの状態に係る情報を検知する状態情報検知部と、を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の一態様に係るポンプ用状態監視装置によれば、軟質ゴム製のライニング若しくはライナの接液面から離隔して軟質ゴム中に埋め込まれる圧力センサを接液部内面の複数箇所に配し、状態情報検知部により、その複数箇所の圧力センサで取得された圧力情報に基づき、ポンプの状態に係る情報を検知することができる。
そのため、高濃度スラリや腐食性スラリを圧送するスラリポンプであっても、ケーシングの接液部内面が、軟質ゴムでライニングされているか若しくはケーシング内側に軟質ゴム製のライナが内包されているポンプに本発明の一態様に係るポンプ用状態監視装置を用いれば、そのポンプの内部圧力の異常、ポンプの性能低下、摩耗状況などのポンプ自体の状態を監視できる。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るポンプは、ケーシングの接液部内面が、軟質ゴムでライニングされているか若しくはケーシング内側に軟質ゴム製のライナが内包されているポンプであって、本発明の一態様に係るポンプ用状態監視装置が装備されていることを特徴とする。
本発明の一態様に係るポンプによれば、本発明の一態様に係るポンプ用状態監視装置が装備されているので、ポンプ自体の状態を監視できる。
【発明の効果】
【0011】
上述したように、本発明によれば、ポンプ自体の状態を監視できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一態様に係るポンプ用状態監視装置を備えるポンプの一実施形態を説明する模式的縦断面図である。
【
図2】
図1のポンプ用状態監視装置に用いられている圧力センサの模式図であり、同図(a)はその正面図、(b)は(a)でのZ-Z断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。本実施形態の例は、本発明の一実施形態に係るポンプ用状態監視装置が、高濃度・腐食性用のスラリポンプとして用いられる遠心ポンプに装備されている例である。
なお、図面は模式的なものである。そのため、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なることに留意すべきであり、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記の実施形態に特定するものではない。
【0014】
図1に示すように、この遠心ポンプ1は、フレーム(不図示)の前方に設けられるケーシング5を備える。フレームには、軸方向の前後に離隔した軸受を介して駆動軸4を回転自在に支持する軸受部が設けられる。
【0015】
駆動軸4の先端には、ケーシング5の内部に収納されたセミオープン型のインペラ2が固定されている。インペラ2は、略円板状のベース部2bを有し、ベース部2bには、軸方向前方に張り出す複数の羽根2cが一体形成されている。
【0016】
ケーシング5は、後方の本体部5bと前方の吸込部5aとを備える。吸込部5aと本体部5bとはボルト・ナット(不図示)で相互に固定され、内部にインペラ2の収容空間が画成される。
【0017】
ケーシング5の本体部5bには、上部に吐出口5tが形成され、吐出口5tには、吐出配管8が接続されている。また、ケーシング5の吸込部5aには、前方にフロントカバー6が装着され、フロントカバー6には、前方に軸方向に沿って張り出す吸込口6nが形成され、吸込口6nには、吸込配管7が接続されている。
【0018】
ケーシング5の内部には、接液部内面全体を覆うライナ3が装着されている。なお、ライナ3に替えて、ケーシング5の接液部内面を、軟質ゴムでライニングした構成としてもよい。つまり、本発明は、ケーシングの接液部内面は、軟質ゴムでライニングされているか若しくはケーシング内側に軟質ゴム製のライナを内包しているポンプに適用できる。
【0019】
ここで、ライニング若しくはライナを構成する軟質ゴムは、その材料として、天然ゴムや各種の合成ゴム(例えばアクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(イソブチエン・イソプレンゴム(IIR))など)を送液の性状(例えばスラリの腐食性等)に応じて適宜選択する。
【0020】
また、ライニング若しくはライナを構成する構成する軟質ゴムの硬度としては、デュロメータ硬さ試験機による測定値が、タイプA デュロメータ硬さ70°以下(JIS K6253)のものが好ましく、軟質ゴムの性状としては、圧縮永久ひずみが小さいゴムが好適であり、スポンジ状のゴムなど気泡を内在するものは適さない。
【0021】
本実施形態では、ライナ3を構成する軟質ゴムは、平均粒径が約1mm以下の微粒子スラリに対してはメタル材よりも優れた耐摩耗性を有している。また、ライナ3を構成する軟質ゴムは、耐食性・耐薬性に対しては、適切な軟質ゴム材料を選択することによって高濃度・腐食性のスラリにも対応できる。このため、高濃度・腐食性のスラリに対しては、接液部内面に、ゴムライニングもしくはケーシング内側に軟質ゴム製のライナを内包しているスラリポンプが好適である。
【0022】
ここで、本実施形態の状態監視装置10は、配管部用の圧力センサ9A、9Bと、複数の薄型の圧力センサ20A,20B,20C,20Dと、稼動状態情報検知部を構成するコントローラ30と、を有する。コントローラ30は、コンピュータを含んで構成された情報処理装置であり、所定のポンプ稼動状態情報検知処理を実行して、そのポンプの内部圧力の異常、ポンプの性能低下、摩耗状況などのポンプの稼動状態を監視可能に構成されている。
【0023】
詳しくは、本実施形態では、吸込配管7には、配管部用の圧力センサ9Aが取付けられ、また、吐出配管8には、配管部用の圧力センサ9Bが取付けられている。さらに、ケーシング5の接液部内面には、軟質ゴム製のライナ3の接液面から任意の距離を隔てて薄型の圧力センサ20A,20B,20C,20Dが複数の箇所(この例では四か所)に埋め込まれている。
【0024】
本実施形態では、接液部内面の任意の複数箇所に、圧力センサ20A,20B,20C,20Dを配することにより、複数箇所の圧力センサ20A,20B,20C,20Dで取得された圧力情報に基づいて、遠心ポンプ1の稼動状態に係る情報を詳しく検知可能に構成されている。
【0025】
これにより、コントローラ30は、ポンプ稼動状態情報検知処理の実行により、ポンプの内部圧力の異常、ポンプの性能低下、ポンプの摩耗などを検知するとともに、その検知した情報をモニタ等の表示装置に出力可能になっている。
【0026】
ここで、コントローラ30が実行するポンプ稼動状態情報検知処理における、ポンプ稼動状態の監視・診断にあたっては、必ずしも圧力値などの絶対値で評価する必要はなく、新品時からの摩耗や腐食による変動を、新品時の圧力の初期値に対して相対的に評価することによって監視・診断が可能である。
また、圧力センサ20A,20B,20C,20Dは、特に限定されないが、厚さ0.2mm程度のフィルム状薄膜感圧センサ(例えばインターリンクエレクトロニクス社製)を用いることが好ましい。
【0027】
この種の感圧センサは、
図2に示す感圧センサ20のように、例えば直径φ5mm程度で可動部がない2線式の感圧部20aと、ガセット部20fと、を備える。感圧部20aは、同図(b)に示すように、上部接着部20bと、上部基板20cと、内部接着部20dと、下部基板20eとを上面側からこの順に積層した構造を有する。内部接着部20dと下部基板20eとにより構成される部分が、感圧部20aから導出された配線を含むガセット部20fとされている。
【0028】
図2に示す感圧センサ20は、感圧部20aに加わる圧力が増加すると電気抵抗がリニアに減少する特性を有する。そのため、作動圧が低く感度範囲も広い、薄く、水分、汚れ等にも強い耐久性のある圧力センサとして採用できる。
【0029】
本実施形態では、
図2に示す圧力センサ20を、軟質ゴム内表面から任意の距離を隔てて、例えば
図1のような複数(この例では四か所)の位置に、圧力センサ20と同じ構成を有する、圧力センサ20A,20B,20C,20Dを埋め込んでいる。つまり、第一の圧力センサ20Aは、インペラ2の羽根2cの前端と対向する位置に埋入されている。これにより、クリアランスの変動状態を検知できる。
【0030】
また、第二の圧力センサ20Bは、フロントカバー6の吸込口6nないしその近傍の位置(本実施形態の例では吸込口6nの隅部分)に埋入されている。また、第三の圧力センサ20Cは、ケーシング5の最も低い位置ないしその近傍の位置(本実施形態の例では最も低い位置)に埋入されている。また、第四の圧力センサ20Dは、ケーシング5の吐出口5tないしその近傍の位置(本実施形態の例では吐出口5tの近傍の位置)に埋入されている。
【0031】
インペラ2が摩耗して遠心ポンプ1のポンプ性能が低下すると、主に吐出口5t付近の圧力センサ20Dにおいて圧力が大きく低下する。また、ライナ3の摩耗が進行すると、圧力センサ20A,20B,20C,20Dのうち、その摩耗が進行した部分の圧力センサが剥き出しになって通電不良を起こすため、その時点で摩耗量が圧力センサの埋入位置まで到達したことを検知できる。
【0032】
さらに、圧力センサ20A,20B,20C,20Dが埋め込まれた位置と通電不良が起こるまでの経過時間から、最終的に穴がライナ3を貫通するまでの残り時間を予測できる。そのため、本実施形態の状態監視装置10によれば、遠心ポンプ1の部品交換サイクルの最適化が図れる。
また、これらの圧力センサ20A,20B,20C,20Dから取得された圧力情報のほか、配管部用の圧力センサ9A、9Bから取得された圧力情報や、温度センサ等の他のセンサから取得されたデータも加えることで更に詳細な遠心ポンプ1の運転状況が得られる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態のポンプ用状態監視装置10は、ポンプの状態監視全般に適用できる技術であるが、本実施形態のように、高濃度・腐食性用のスラリポンプ等の遠心ポンプ1において、そのポンプの内部圧力の異常、ポンプの性能低下、摩耗状況などのポンプの稼動状態を監視するのに好適である。特に過酷な液質にさらされるスラリポンプのメンテナンスに有効である。
【0034】
さらに、本実施形態のポンプ用状態監視装置10を用いて、遠心ポンプ1の遠隔監視が可能であり、他の機器との連携によりスラリポンプ等の遠心ポンプ1のメンテナンス情報等の情報発信装置に適用できる。なお、本発明に係るポンプ用状態監視装置およびこれを備えるポンプは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0035】
1 遠心ポンプ
2 インペラ
3 ライナ
4 駆動軸
5 ケーシング
6 フロントカバー
7 吸込配管
8 吐出配管
9A、9B (配管部用の)圧力センサ
10 状態監視装置
20、20A,20B,20C,20D 圧力センサ
30 コントローラ(状態情報検知部)