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特開2023-164463ポリイミド、積層体およびそれらを含む電子デバイス
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  • 特開-ポリイミド、積層体およびそれらを含む電子デバイス 図1
  • 特開-ポリイミド、積層体およびそれらを含む電子デバイス 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164463
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ポリイミド、積層体およびそれらを含む電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20231102BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20231102BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G73/10
H05K1/03 610P
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023135681
(22)【出願日】2023-08-23
(62)【分割の表示】P 2020514464の分割
【原出願日】2019-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2018081765
(32)【優先日】2018-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106297
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 克博
(72)【発明者】
【氏名】三浦 則男
(72)【発明者】
【氏名】成田 一貴
(57)【要約】
【課題】優れたC-V特性を示すポリイミドフィルムを含むフレキシブル電子デバイスを提供する。
【解決手段】抵抗値が4Ωcmのシリコンウェハ上に、ポリイミドフィルムを0.75μmの膜厚で形成した積層体の容量-電圧測定を行ったとき、0.005/V以上の最大勾配を示すポリイミドで形成されたフィルムである(但し、前記最大勾配は、前記シリコンウェハに対して前記ポリイミドフィルムに印加する直流電圧を最低電圧V1と最高電圧V2の間で、正方向走査と負方向走査を行いながら容量測定を行い、第3回目の正方向走査時の規格化容量-電圧曲線における勾配の絶対値の最大値を意味し、前記規格化容量-電圧曲線は、最低電圧V1における容量を1として規格化されている。)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗値が4Ωcmのシリコンウェハ上に、ポリイミドフィルムを0.75μmの膜厚で形成した積層体の容量-電圧測定を行ったとき、0.005/V以上の最大勾配を示すポリイミドで形成されたフレキシブル電子デバイス用ポリイミドフィルム。(但し、前記最大勾配は、前記シリコンウェハに対して前記ポリイミドフィルムに印加する直流電圧を最低電圧V1と最高電圧V2の間で、最低電圧V1から最高電圧V2までの正方向走査と、最高電圧V2から最低電圧V1までの負方向走査を行いながら容量測定を行い、第3回目の正方向走査時の規格化容量-電圧曲線における勾配の絶対値の最大値を意味し、ここで前記最低電圧V1は、前記ポリイミドフィルムのみの容量が観察される電圧であり、前記規格化容量-電圧曲線は、最低電圧V1における容量を1として規格化されている。)。
【請求項2】
ポリイミドの繰り返し単位におけるイミド基(-CONCO-)の重量分率が38.3wt%未満であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル電子デバイス用ポリイミドフィルム。
【請求項3】
仕込み比から計算されるポリイミド全体におけるアミン末端基濃度が29μmol/g以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブル電子デバイス用ポリイミドフィルム。
【請求項4】
少なくとも3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有するテトラカルボン酸成分(A)と、
(B-1)1,4―ジアミノベンゼン、[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-4,4”-ジアミン、および1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼンから選ばれる少なくとも一つのジアミン、および
(B-2)9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-(((9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス([1,1’-ビフェニル]-5,2-ジイル))ビス(オキシ))ジアミン、および4,4’-([1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジイルビス(オキシ))ジアミンから選ばれる少なくとも一つのジアミン
を含有するジアミン成分(B)と
を反応して得られる繰り返し単位を含むポリイミド前駆体(但し、ジアミン成分(B)が1,4―ジアミノベンゼンおよび9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン)を含有するとき、(B-1)のジアミンおよび(B-2)のジアミン以外のジアミン化合物の量は20モル%以下である。)。
【請求項5】
前記ジアミン成分(B)が、前記(B-1)のジアミンおよび(B-2)のジアミンを合わせて、40モル%以上の割合で含む請求項4に記載のポリイミド前駆体。
【請求項6】
3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と前記(B-1)のジアミンに由来する繰り返し単位、および3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と前記(B-2)のジアミンに由来する繰り返し単位の割合の合計が、40モル%以上であることを特徴とする請求項4に記載のポリイミド前駆体。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミド。
【請求項8】
請求項7に記載のポリイミドのフィルム形態であるポリイミドフィルム。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項記載のポリイミドフィルムを含むフレキシブル電子デバイス。
【請求項10】
前記ポリイミドフィルムが請求項8に記載のポリイミドフィルムである請求項9に記載のフレキシブル電子デバイス。
【請求項11】
請求項9または10に記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法であって、
キャリア基板上にポリイミド前駆体溶液またはポリイミド前駆体溶液組成物を塗布し、イミド化して前記キャリア基板とポリイミドフィルムとを有する積層体を形成する工程を有すること
を特徴とする製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばフレキシブルデバイスの基板等の電子デバイス用途に好適に使用されるポリイミドに関し、さらにはポリイミドフィルム、ポリイミドフィルムを含む積層体および前記ポリイミドまたは積層体を含む電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのディスプレイ用基板として、従来からガラスが用いられてきたが、ガラスは軽量化のために薄膜化すると強度が不足して壊れやすいという問題がある。そこで、ガラス基板の代替として、軽量でフレキシブル性に優れたプラスチック基板が提案されてきた。液晶ディスプレイや有機ELディスプレイなどのディスプレイでは、各ピクセルを駆動するために、基板上にTFT等の半導体素子を形成する。このため、基板には耐熱性や寸法安定性が要求される。ポリイミドフィルムは、耐熱性、耐薬品性、機械的強度、電気特性、寸法安定性などに優れていることから、ディスプレイ用の基板として期待される。
【0003】
ポリイミド基板上に形成したTFT素子について、非特許文献1および2は、ポリイミド基板界面に存在する負電荷により正のキャリアが誘起されて、これがTFT特性に影響を及ぼすことを報告している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Junehwan Kimら、“High Performance Reliebility LTPS Technology for Advanced Flexible Mobile Applications”, IDW/AD’16, pp. 1356-1359 (2016)
【非特許文献2】Yi-Da Hoら、“Abnormal Vth Degradation Behavior of the Polycrystalline Silicon Thin-Film Transistors on the Polyimide Substrate”, IDW’17, pp. 1508-1511 (2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のとおり、非特許文献1および2では、TFT特性に対するポリイミド界面の影響を報告しているが、具体的に負電荷が存在し得る界面準位密度の評価は実施されていない。またポリイミドの詳細についての記載は無く、加えてポリイミド基板を変更してTFT特性を評価したデータもないため、基板として適したポリイミドの情報も不明である。
【0006】
ポリイミドのような絶縁膜の表面の準位密度を評価する手法として、容量-電圧特性(以下、C-V特性と記載する)を測定する方法が挙げられる。一般に、半導体-絶縁膜―金属(電極)キャパシタの容量の電圧依存性を評価して得られるC-Vカーブは、半導体-絶縁膜界面に存在する準位密度の存在により形状が変化する事が知られている。従ってTFT特性等のデバイス特性に影響を与えるC-V特性を評価し、ディスプレイを含む半導体デバイスおよび電子デバイス用基板として最適なポリイミドフィルムを開発する上で、またポリイミドのさらなる用途拡大を図る上で、優れたC-V特性を有するポリイミドを提供することが必要である。
【0007】
本発明は優れたC-V特性を示すポリイミド、特にフィルム形態のポリイミド、そのポリイミドを用いた積層基板、およびそれらを含むフレキシブルディスプレイ等の電子デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の事項に関する。
【0009】
1. 抵抗値が4Ωcmのシリコンウェハ上に、ポリイミドフィルムを0.75μmの膜厚で形成した積層体の容量-電圧測定を行ったとき、0.005/V以上の最大勾配を示すポリイミドで形成されたフレキシブル電子デバイス用ポリイミドフィルム。(但し、前記最大勾配は、前記シリコンウェハに対して前記ポリイミドフィルムに印加する直流電圧を最低電圧V1と最高電圧V2の間で、最低電圧V1から最高電圧V2までの正方向走査と、最高電圧V2から最低電圧V1までの負方向走査を行いながら容量測定を行い、第3回目の正方向走査時の規格化容量-電圧曲線における勾配の絶対値の最大値を意味し、ここで前記最低電圧V1は、前記ポリイミドフィルムのみの容量が観察される電圧であり、前記規格化容量-電圧曲線は、最低電圧V1における容量を1として規格化されている。)。
【0010】
2. ポリイミドの繰り返し単位におけるイミド基(-CONCO-)の重量分率が38.3wt%未満であることを特徴とする上記項1に記載のフレキシブル電子デバイス用ポリイミドフィルム。
【0011】
3. 仕込み比から計算されるポリイミド全体におけるアミン末端基濃度が29μmol/g以下であることを特徴とする上記項1または2に記載のフレキシブル電子デバイス用ポリイミドフィルム。
【0012】
4. 少なくとも3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有するテトラカルボン酸成分(A)と、
(B-1)1,4―ジアミノベンゼン、[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-4,4”-ジアミン、および1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼンから選ばれる少なくとも一つのジアミン、および
(B-2)9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-(((9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス([1,1’-ビフェニル]-5,2-ジイル))ビス(オキシ))ジアミン、および4,4’-([1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジイルビス(オキシ))ジアミンから選ばれる少なくとも一つのジアミン
を含有するジアミン成分(B)と
を反応して得られる繰り返し単位を含むポリイミド前駆体(但し、ジアミン成分(B)が1,4―ジアミノベンゼンおよび9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン)を含有するとき、(B-1)のジアミンおよび(B-2)のジアミン以外のジアミン化合物の量は20モル%以下である。)。
【0013】
5. 前記ジアミン成分(B)が、前記(B-1)のジアミンおよび(B-2)のジアミンを合わせて、40モル%以上の割合で含む上記項4に記載のポリイミド前駆体。
【0014】
6. 3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と前記(B-1)のジアミンに由来する繰り返し単位、および3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と前記(B-2)のジアミンに由来する繰り返し単位の割合の合計が、40モル%以上であることを特徴とする上記項4に記載のポリイミド前駆体。
【0015】
7. 上記項4~6のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミド。
【0016】
8. 上記項7に記載のポリイミドのフィルム形態であるポリイミドフィルム。
【0017】
9. 上記項1~3のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムを含むフレキシブル電子デバイス。
10. 前記ポリイミドフィルムが上記項8に記載のポリイミドフィルムである上記項9に記載のフレキシブル電子デバイス。
【0018】
11. 上記項9または10に記載のフレキシブル電子デバイスの製造方法であって、
キャリア基板上にポリイミド前駆体溶液またはポリイミド前駆体溶液組成物を塗布し、イミド化して前記キャリア基板とポリイミドフィルムとを有する積層体を形成する工程を有すること
を特徴とする製造方法。
【0019】
上記の事項に加えて、本出願は少なくとも次の事項も開示している。
【0020】
1. 抵抗値が4Ωcmのシリコンウェハ上に、ポリイミドフィルムを0.75μmの膜厚で形成した積層体の容量-電圧測定を行ったとき、0.005/V以上の最大勾配を示すことを特徴とするポリイミド(但し、前記最大勾配は、前記シリコンウェハに対して前記ポリイミドフィルムに印加する直流電圧を最低電圧V1と最高電圧V2の間で、最低電圧V1から最高電圧V2までの正方向走査と、最高電圧V2から最低電圧V1までの負方向走査を行いながら、容量測定を行い、第3回目の正方向走査時の規格化容量-電圧曲線における勾配の絶対値の最大値を意味し、ここで前記最低電圧V1は、前記ポリイミドフィルムのみの容量が観察される電圧であり、前記規格化容量-電圧曲線は、最低電圧V1における容量を1として規格化されている。)。
【0021】
2. ポリイミドの繰り返し単位におけるイミド基(-CONCO-)の重量分率が38.3wt%未満であることを特徴とする上記項1に記載のポリイミド。
【0022】
3. 仕込み比から計算されるポリイミド全体におけるアミン末端基濃度が29μmol/g以下であることを特徴とする上記項1または2に記載のポリイミド。
【0023】
4. 少なくとも3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有するテトラカルボン酸成分(A)と、
(B-1)1,4―ジアミノベンゼン、[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-4,4”-ジアミン、および1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼンから選ばれる少なくとも一つのジアミン、および
(B-2)9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-(((9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス([1,1’-ビフェニル]-5,2-ジイル))ビス(オキシ))ジアミン、および4,4’-([1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジイルビス(オキシ))ジアミンから選ばれる少なくとも一つのジアミン
を含有するジアミン成分(B)と
を反応して得られる繰り返し単位を含むポリイミド前駆体。
【0024】
5. 前記ジアミン成分(B)が、前記(B-1)のジアミンおよび(B-2)のジアミンを合わせて、40モル%以上の割合で含む上記項4に記載のポリイミド前駆体。
【0025】
6. 3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と前記(B-1)のジアミンに由来する繰り返し単位、および3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物と前記(B-2)のジアミンに由来する繰り返し単位の割合の合計が、40モル%以上であることを特徴とする上記項4に記載のポリイミド前駆体。
【0026】
7. 上記項4~6のいずれか1項に記載のポリイミド前駆体をイミド化して得られるポリイミド。
【0027】
8. 上記項1~3のいずれか1項に記載のポリイミドを与えるポリイミド前駆体溶液。
【0028】
9. 上記項1~3のいずれか1項に記載のポリイミドを与えるポリイミド溶液。
【0029】
10. 上記項8に記載のポリイミド前駆体溶液をイミド化することを特徴とするポリイミド溶液の製造方法。
【0030】
11. 上記項1~3および7のいずれか1項に記載のポリイミドのフィルム形態であるポリイミドフィルム。
【0031】
12. 基板と、上記項11のポリイミドフィルムとを有する積層体。
【0032】
13. 電子デバイス用途に使用される、上記項11のポリイミドフィルムを含む基板。
【0033】
14. 上記項11のポリイミドフィルム、上記項12の積層体または上記項13の基板を含む電子デバイス。
【0034】
15. 上記項11のポリイミドフィルム、上記項12の積層体または上記項13の基板の上に形成された半導体層を含む電子デバイス。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、優れたC-V特性を示すポリイミド、特にフィルム形態のポリイミド、そのポリイミドを用いた積層基板、およびそれらを含むフレキシブルディスプレイ等の電子デバイス、特にフレキシブル電子デバイスを提供することができる。
【0036】
本発明のポリイミドフィルムは優れたC-V特性を有するため、例えばTFT等の半導体素子の基板として使用しても、半導体素子の性能に対して影響を与える懸念が少なく、また特に長期間の使用によるスイッチング特性のシフトなどの素子特性の変化や劣化の心配が小さい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】ポリイミドのC-V特性を測定するためのシステムの模式図である。
図2】C-V特性から最大勾配を求める方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
<<C-V特性>>
まず、ポリイミドに関わるC-V特性の測定方法と定義を説明する。図1にC-V測定システムの模式図を示す。シリコンウェハ1の表面にポリイミドフィルム2を形成し測定サンプルとする。ポリイミドフィルム2の表面の所定面積に水銀を接触させて水銀電極3を形成する。シリコンウェハ1(接地電位)と水銀電極3の間に、直流電源4により直流電圧を印加し、その直流電圧における容量(キャパシタンス)を交流電源5により所定の周波数および振幅の交流電圧を印加して測定する。本願では、直流電圧を最低電圧V1から最高電圧V2の間で、正方向走査(直流電圧を上昇させる)と負方向走査(直流電圧を下降させる)を行い、その間に容量を測定し、第3回目の正方向走査時のC-V測定のデータに基づいて後述する「最大勾配」を求める。
【0039】
直流電圧範囲の最低電圧V1として、シリコンウェハがp型の場合、ポリイミドフィルムのみの容量が発現するように十分な負のバイアス電圧を加えるようにする。本発明の実施例では-40Vとしたが、ポリイミドフィルムの性質によっては、さらに低い電圧(負の絶対値が大きい電圧)を必要とする場合もある。直流電圧範囲の最高電圧V2は、後述する最大勾配が観察される電圧より十分高く、また負方向の走査においても、最大勾配が観察される程度に十分に高い電圧である。また、最低電圧V1の絶対値および最高電圧V2は共に、ポリイミドフィルムの絶縁破壊電圧以下で且つ装置の能力が許す範囲で広く設定される。本発明の実施例では-40V~40Vの走査範囲とした。
【0040】
直流電圧の走査速度は、例えば、10mV/sec~100V/secの範囲であり、この範囲より測定の目的を考慮して選択することができる。実用的には、0.05V/sec~2V/secの範囲、例えば0.1V/sec~0.5V/secの範囲から走査速度を採用すると再現性がよい。本発明の実施例では、0.25V/secおよび0.18V/secを採用した。後述するように、この2つの走査速度の違いによる差がないことが確認されている。
【0041】
容量(キャパシタンス)測定のための交流電圧(正弦波)は、ポリイミドフィルムの用途により(即ち興味周波数領域に合わせて)変更することができるが、ディスプレイ用途では例えば100Hz~1MHz、特に500Hz~10kHzの範囲の周波数で測定すればよい。本発明の実施例では2.5kHzを使用した。また、振幅は直流電圧よりも十分に小さな電圧であればよく、適宜選ぶことができるが、本発明の実施例では0.1Vとした。
【0042】
本発明において、C-V測定結果を評価するにあたり、最低電圧V1における容量値を1として、測定C-V曲線を規格化した規格化容量-電圧曲線(規格化C-V曲線)により、ポリイミドの性質を評価する。これは、ポリイミドフィルムの膜厚の誤差や誘電率等の違いによる容量値の違いを除き、界面準位などの半導体に影響を与える因子を評価するためである。測定されるポリイミドフィルムの膜厚については、評価の誤差をなるべく小さくするために、本願の評価においては0.65μm~0.85μm厚、特に0.75μm厚を目標とするのが好ましい。
【0043】
このような測定システムおいて、直流電圧を最低電圧V1から最高電圧V2まで正方向走査すると(但し、第3回目の正方向走査である)、図2に示すように、典型的には、最初の平坦領域を過ぎると、比較的大きく容量が減少する第1減少領域が現れ、次いで比較的平坦な領域が観察される。次に、最高電圧V2から最低電圧V1まで負方向に電圧を走査すると、典型的には、前記領域が正方向の走査のときと逆の順番で観察される。但し、正方向走査の曲線とは一致せず、ヒステリシスが観察される場合が多い。
【0044】
上述の「第1減少領域」は、シリコンウェハ中の界面近傍が、多数キャリアの蓄積層から空乏層へ変化して空乏層が拡大していく過程と理解される。本発明において、第1減少領域における最大勾配(負で絶対値が最大)を、「最大勾配」と定義する。従って、「最大勾配」は、規格化C-V曲線の微分曲線において現れる負のピークの頂点の絶対値として得ることができる。
【0045】
本発明のポリイミドは、抵抗率が4Ωcmのシリコンウェハ上に形成した0.75μmの膜厚のフィルムついて、上述のC-V測定により得られた「最大勾配」が、0.005/V以上であり、好ましくは0.007/V超である。最大勾配は、界面準位密度が小さい程、大きい(絶対値が大きい)値を示す。界面準位密度には、ポリイミドの表面状態(例えば組成、官能基(特に表面官能基)、不純物または添加物の存在等)が影響すると考えられるが、本発明では半導体との界面においてポリイミドの表面状態が極めて好ましい状態にあるため、大きな「最大勾配」を有するものと推定できる。このような大きな「最大勾配」を有することによって、本発明のポリイミドをディスプレイ等の電子デバイスにおいて使用しても、電子デバイスの動作や耐久性に与える悪影響が小さい。
【0046】
このようなC-V特性に着目したポリイミドの開発は報告されておらず、実際に行われてもいない。当然ながら、既存のポリイミドは上述のC-V特性を満足するものではない。また、C-V特性はポリイミドの表面状態に影響すると考えられることから、C-V特性を満足すれば、そのポリイミドの化学構造は何でもよいということになる。
【0047】
<<ポリイミド、ポリイミド前駆体>>
本発明のポリイミドもしくはその前駆体(ポリイミド前駆体)は、C-V特性を満足すれば、その化学構造は特に制限されず、付与したい機能に応じて適宜化学構造を選択すればよい。ポリイミド前駆体は、下記一般式I:
【0048】
【化1】
(一般式I中、Xは4価の脂肪族基または芳香族基であり、Yは2価の脂肪族基または芳香族基であり、RおよびRは互いに独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数3~9のアルキルシリル基である。)
で表される繰り返し単位を有する。特に好ましくは、RおよびRが水素原子であるポリアミック酸である。また、部分的にイミド化が進行したもの、即ち式I中の2つのアミド構造の少なくとも1つがイミド化した繰り返し単位を含有するポリマーも、「ポリイミド前駆体」および、「ポリアミック酸」(残存するRおよびRが水素原子の場合)に包含される。
【0049】
また、ポリイミドは下記一般式II:
【0050】
【化2】
(式中、Xは4価の脂肪族基または芳香族基であり、Yは2価の脂肪族基または芳香族基である。)
で表される繰り返し単位を有する。
【0051】
以下に、このようなポリイミドの化学構造を、上記繰り返し単位(一般式(II))中のXおよびYの構造および製造に使用されるモノマー(テトラカルボン酸成分、ジアミン成分、その他成分)により説明し、続いて製造方法を説明する。
【0052】
本明細書において、テトラカルボン酸成分は、ポリイミドを製造する原料として使用されるテトラカルボン酸、テトラカルボン酸二無水物、その他テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライド等のテトラカルボン酸誘導体を含む。特に限定されるわけではないが、製造上、テトラカルボン酸二無水物を使用することが簡便であり、以下の説明ではテトラカルボン酸成分としてテトラカルボン酸二無水物を用いた例を説明する。また、ジアミン成分は、ポリイミドを製造する原料として使用される、アミノ基(-NH)を2個有するジアミン化合物である。
【0053】
また、本明細書において、ポリイミドフィルムは、基板上に形成されて積層状態にあるもの、およびフィルムを支持する基板を有さないもの(自立フィルムを含む)の両方を意味する。本発明のポリイミドは、基板として使用される場合は、フィルムの形態であることが好ましい。また、本発明のポリイミドは、支持基板や異なる材料で形成された層の上に離散的に存在する層の形態であってもよい。
【0054】
<<繰り返し単位中の構造およびモノマー>>
<Xおよびテトラカルボン酸成分>
【0055】
の芳香族環を有する4価の基としては、炭素数が6~40の芳香族環を有する4価の基が好ましい。
【0056】
芳香族環を有する4価の基としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0057】
【化3】
(式中、Zは直接結合、または、下記の2価の基:
【0058】
【化4】
のいずれかである。ただし、式中のZ2は、2価の有機基、Z3、Z4はでそれぞれ独立にアミド結合、エステル結合、カルボニル結合であり、Z5は芳香環を含む有機基である。)
【0059】
としては、具体的には、炭素数2~24の脂肪族炭化水素基、炭素数6~24の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0060】
としては、具体的には、炭素数6~24の芳香族炭化水素基が挙げられる。
【0061】
芳香族環を有する4価の基としては、得られるポリイミド材料の高耐熱性と高透明性を両立できるので、下記のものが特に好ましい。
【0062】
【化5】
(式中、Zは直接結合、または、へキサフルオロイソプロピリデン結合である。)
【0063】
ここで、得られるポリイミド材料の高耐熱性、高透明性、低線熱膨張係数を両立できるので、Zは直接結合であることがより好ましい。
【0064】
加えて好ましい基として、上記式(9)において、Zが下式(3A):
【0065】
【化6】
で表されるフルオレニル含有基である化合物が挙げられる。Z11およびZ12はそれぞれ独立に、好ましくは同一で、単結合または2価の有機基である。Z11およびZ12としては、芳香環を含む有機基が好ましく、例えば式(3A1):
【0066】
【化7】
(Z13およびZ14は、互いに独立に単結合、-COO-、-OCO-または-O-であり、ここでZ14がフルオレニル基に結合した場合、Z13が-COO-、-OCO-または-O-でZ14が単結合の構造が好ましく;R91は炭素数1~4のアルキル基またはフェニル基であり、好ましくはメチルであり、nは0~4の整数であり、好ましくは1である。)
で表される構造が好ましい。
【0067】
が芳香族環を有する4価の基である一般式(II)の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、例えば、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸、ピロメリット酸、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、2,3,3’,4’-ビフェニルテトラカルボン酸、4,4’-オキシジフタル酸、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)スルホン、m-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸、p-ターフェニル-3,4,3’,4’-テトラカルボン酸、ビスカルボキシフェニルジメチルシラン、ビスジカルボキシフェノキシジフェニルスルフィド、およびスルホニルジフタル酸が挙げられ、モノマーとしてこれらの二無水物が好ましく使用される。Xがフッ素原子を含有する芳香族環を有する4価の基である一般式(II)の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、例えば、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン二無水物が挙げられる。さらに、好ましい化合物として、(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス(2-メチル-4,1-フェニレン)ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキシレート)が挙げられる。テトラカルボン酸成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0068】
の脂環構造を有する4価の基としては、炭素数が4~40の脂環構造を有する4価の基が好ましく、少なくとも一つの脂肪族4~12員環、より好ましくは脂肪族4員環または脂肪族6員環を有することがより好ましい。好ましい脂肪族4員環または脂肪族6員環を有する4価の基としては、下記のものが挙げられる。
【0069】
【化8】
(式中、R31~R38は、それぞれ独立に直接結合、または、2価の有機基である。R41~R47は、それぞれ独立に 式:-CH-、-CH=CH-、-CHCH-、-O-、-S-で表される基よりなる群から選択される1種を示す。R48は芳香環もしくは脂環構造を含む有機基である。)
【0070】
31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38としては、具体的には、直接結合、または、炭素数1~6の脂肪族炭化水素基、または、酸素原子(-O-)、硫黄原子(-S-)、カルボニル結合、エステル結合、アミド結合が挙げられる。
【0071】
48として芳香環を含む有機基としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0072】
【化9】
(式中、Wは直接結合、または、2価の有機基であり、n11~n13は、それぞれ独立に0~4の整数を表し、R51、R52、R53は、それぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、またはトリフルオロメチル基である。)
【0073】
としては、具体的には、直接結合、下記の式(5)で表される2価の基、下記の式(6)で表される2価の基が挙げられる。
【0074】
【化10】
(式(6)中のR61~R68は、それぞれ独立に直接結合または前記式(5)で表される2価の基のいずれかを表す。)
【0075】
脂環構造を有する4価の基としては、得られるポリイミドの高耐熱性、高透明性、低線熱膨張係数を両立できるので、下記のものが特に好ましい。
【0076】
【化11】
【0077】
が脂環構造を有する4価の基である式(II)の繰り返し単位を与えるテトラカルボン酸成分としては、例えば、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸、イソプロピリデンジフェノキシビスフタル酸、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-3,3’,4,4’-テトラカルボン酸、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-2,3,3’,4’-テトラカルボン酸、[1,1’-ビ(シクロヘキサン)]-2,2’,3,3’-テトラカルボン酸、4,4’-メチレンビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-(プロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-オキシビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-チオビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-スルホニルビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-(ジメチルシランジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、4,4’-(テトラフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)、オクタヒドロペンタレン-1,3,4,6-テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、6-(カルボキシメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2,3,5-トリカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタン-2,3,5,6-テトラカルボン酸、ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エン-2,3,7,8-テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカン-3,4,7,8-テトラカルボン酸、トリシクロ[4.2.2.02,5]デカ-7-エン-3,4,9,10-テトラカルボン酸、9-オキサトリシクロ[4.2.1.02,5]ノナン-3,4,7,8-テトラカルボン酸、ノルボルナン-2-スピロ-α-シクロペンタノン-α’-スピロ-2’’-ノルボルナン5,5’’,6,6’’-テトラカルボン酸、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2c,3c,6c,7c-テトラカルボン酸、(4arH,8acH)-デカヒドロ-1t,4t:5c,8c-ジメタノナフタレン-2t,3t,6c,7c-テトラカルボン酸や、これらのテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸シリルエステル、テトラカルボン酸エステル、テトラカルボン酸クロライド等の誘導体が挙げられる。テトラカルボン酸成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0078】
<Yおよびジアミン成分>
の芳香族環を有する2価の基としては、炭素数が6~40、更に好ましくは炭素数が6~20の芳香族環を有する2価の基が好ましい。
【0079】
芳香族環を有する2価の基としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0080】
【化12】
(式中、Wは直接結合、または、2価の有機基であり、n11~n13は、それぞれ独立に0~4の整数を表し、R51、R52、R53は、それぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、またはトリフルオロメチル基である。)
【0081】
としては、具体的には、直接結合、下記の式(5)で表される2価の基、下記の式(6)で表される2価の基が挙げられる。
【0082】
【化13】
【0083】
【化14】
(式(6)中のR61~R68は、それぞれ独立に直接結合または前記式(5)で表される2価の基のいずれかを表す。)
【0084】
ここで、得られるポリイミドの高耐熱性、高透明性、低線熱膨張係数を両立できるので、Wは、直接結合、または式:-NHCO-、-CONH-、-COO-、-OCO-で表される基よりなる群から選択される1種であることが特に好ましい。また、Wが、R61~R68が直接結合、または式:-NHCO-、-CONH-、-COO-、-OCO-で表される基よりなる群から選択される1種である前記式(6)で表される2価の基のいずれかであることも特に好ましい。
【0085】
加えて好ましい基として、上記式(4)において、Wが下式(3B):
【0086】
【化15】
で表されるフルオレニル含有基である化合物が挙げられる。Z11およびZ12はそれぞれ独立に、好ましくは同一で、単結合または2価の有機基である。Z11およびZ12としては、芳香環を含む有機基が好ましく、例えば式(3B1):
【0087】
【化16】
(Z13およびZ14は、互いに独立に単結合、-COO-、-OCO-または-O-であり、ここでZ14がフルオレニル基に結合した場合、Z13が-COO-、-OCO-または-O-でZ14が単結合の構造が好ましく;R91は炭素数1~4のアルキル基またはフェニル基であり、好ましくはフェニルであり、nは0~4の整数であり、好ましくは1である。)
で表される構造が好ましい。
【0088】
別の好ましい基として、上記式(4)において、Wがフェニレン基である化合物、即ちターフェニルジアミン化合物が挙げられ、特にすべてパラ結合である化合物が好ましい。
【0089】
別の好ましい基として、上記式(4)において、Wが式(6)の最初のフェニル環1個の構造において、R61およびR62が2,2-プロピリデン基である化合物が挙げられる。
【0090】
さらに別の好ましい基として、上記式(4)において、Wが次の式(3B2):
【0091】
【化17】
で表される化合物が挙げられる。
【0092】
が芳香族環を有する2価の基である一般式(II)の繰り返し単位を与えるジアミン成分としては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、ベンジジン、3,3’-ジアミノ-ビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、m-トリジン、4,4’-ジアミノベンズアニリド、3,4’-ジアミノベンズアニリド、N,N’-ビス(4-アミノフェニル)テレフタルアミド、N,N’-p-フェニレンビス(p-アミノベンズアミド)、4-アミノフェノキシ-4-ジアミノベンゾエート、ビス(4-アミノフェニル)テレフタレート、ビフェニル-4,4’-ジカルボン酸ビス(4-アミノフェニル)エステル、p-フェニレンビス(p-アミノベンゾエート)、ビス(4-アミノフェニル)-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジカルボキシレート、[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイルビス(4-アミノベンゾエート)、4,4’-オキシジアニリン、3,4’-オキシジアニリン、3,3’-オキシジアニリン、p-メチレンビス(フェニレンジアミン)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’-ビス(3-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-アミノフェニル)スルホン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス((アミノフェノキシ)フェニル)プロパン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、ビス(4-(3-アミノフェノキシ)ジフェニル)スルホン、オクタフルオロベンジジン、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジフルオロ-4,4’-ジアミノビフェニル、2,4-ビス(4-アミノアニリノ)-6-アミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(4-アミノアニリノ)-6-メチルアミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(4-アミノアニリノ)-6-エチルアミノ-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス(4-アミノアニリノ)-6-アニリノ-1,3,5-トリアジンが挙げられる。Yがフッ素原子を含有する芳香族環を有する2価の基である一般式(II)の繰り返し単位を与えるジアミン成分としては、例えば、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3,3’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンが挙げられる。加えて好ましいジアミン化合物として、4,4’-(((9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス([1,1’-ビフェニル]-5,2-ジイル))ビス(オキシ))ジアミン、[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-4,4”-ジアミン、4,4’-([1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジイルビス(オキシ))ジアミンが挙げられる。ジアミン成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0093】
の脂環構造を有する2価の基としては、炭素数が4~40の脂環構造を有する2価の基が好ましく、少なくとも一つの脂肪族4~12員環、より好ましくは脂肪族6員環を有することが更に好ましい。
【0094】
脂環構造を有する2価の基としては、例えば、下記のものが挙げられる。
【0095】
【化18】
(式中、V、Vは、それぞれ独立に直接結合、または、2価の有機基であり、n21~n26は、それぞれ独立に0~4の整数を表し、R81~R86は、それぞれ独立に炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、またはトリフルオロメチル基であり、R91、R92、R93は、それぞれ独立に 式:-CH-、-CH=CH-、-CHCH-、-O-、-S-で表される基よりなる群から選択される1種である。)
【0096】
、Vとしては、具体的には、直接結合および前記の式(5)で表される2価の基が挙げられる。
【0097】
脂環構造を有する2価の基としては、得られるポリイミドの高耐熱性、低線熱膨張係数を両立できるので、下記のものが特に好ましい。
【0098】
【化19】
脂環構造を有する2価の基としては、中でも、下記のものが好ましい。
【0099】
【化20】
【0100】
が脂環構造を有する2価の基である一般式(II)の繰り返し単位を与えるジアミン成分としては、例えば、1,4-ジアミノシクロへキサン、1,4-ジアミノ-2-メチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-エチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-n-プロピルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-イソプロピルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-n-ブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-イソブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-sec-ブチルシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-2-tert-ブチルシクロヘキサン、1,2-ジアミノシクロへキサン、1,3-ジアミノシクロブタン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ジアミノビシクロヘプタン、ジアミノメチルビシクロヘプタン、ジアミノオキシビシクロヘプタン、ジアミノメチルオキシビシクロヘプタン、イソホロンジアミン、ジアミノトリシクロデカン、ジアミノメチルトリシクロデカン、ビス(アミノシクロへキシル)メタン、ビス(アミノシクロヘキシル)イソプロピリデン、6,6’-ビス(3-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダン、6,6’-ビス(4-アミノフェノキシ)-3,3,3’,3’-テトラメチル-1,1’-スピロビインダンが挙げられる。ジアミン成分は、単独で使用してもよく、また複数種を組み合わせて使用することもできる。
【0101】
上記のテトラカルボン酸成分およびジアミン成分に加えて、カルボン酸モノ無水物を添加して反応させることも好ましい。カルボン酸モノ無水物は、特にジカルボン酸モノ無水物が好ましく、芳香族カルボン酸モノ無水物であっても脂肪族カルボン酸モノ無水物であってもよい。特に芳香族カルボン酸モノ無水物が好ましい。芳香族カルボン酸モノ無水物は、炭素数6~30の芳香環を有するものが好ましく、炭素数6~15の芳香環を有するものがより好ましく、炭素数6~10の芳香環を有するものがさらに好ましい。
【0102】
カルボン酸モノ無水物としては、例えば、無水フタル酸、2,3-ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、3,4-ベンゾフェノンジカルボン酸無水物、1,2-ナフタレンジカルボン酸無水物、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、1,8-ナフタレンジカルボン酸無水物、1,2-アントラセンジカルボン酸無水物、2,3-アントラセンジカルボン酸無水物、1,9-アントラセンジカルボン酸無水物などの芳香族カルボン酸モノ無水物、および無水マレイン酸、無水コハク酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水イタコン酸、無水トリメリット酸などの脂環式カルボン酸モノ無水物が挙げられる。これらの中でも、無水フタル酸が好ましい。
【0103】
カルボン酸モノ無水物を添加する場合、次の式(1)および(2)を満たすことがより好ましい。
【0104】
式(1) 0.97≦X/Y<1.00
式(2) 0.5≦(Z/2)/(Y-X)≦1.05
(式中、Xはテトラカルボン酸成分のモル数、Yはジアミン成分のモル数、Zはカルボン酸モノ無水物のモル数を表す。)
【0105】
X/Yが、0.97以上であることにより、ポリイミド前駆体(特にポリアミック酸)の分子量を増やし、得られるポリイミドフィルムの強度や耐熱性が向上する。X/Yは、好ましくは0.98以上である。X/Yは1.00未満である場合、テトラカルボン酸成分に対してジアミン成分が過剰となる。こうすることにより、カルボン酸モノ無水物で末端封止可能なアミノ基を形成できる。X/Yは、好ましくは0.99以下である。
【0106】
また、(Z/2)/(Y-X)は、カルボン酸モノ無水物と、末端封止可能なアミノ基とのモル比を表す。X/Yが1.00未満であり、(Z/2)/(Y-X)が0.5以上であることにより、ポリイミド前駆体の末端封止率を上げることができ、C-V特性を向上できる。(Z/2)/(Y-X)は、1に近いほど好ましい。(Z/2)/(Y-X)は、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上である。(Z/2)/(Y-X)が1.05以下であることにより、遊離のカルボン酸モノ無水物の量を低減し、得られるポリイミドフィルムの強度およびC-V特性を向上できる。(Z/2)/(Y-X)は、好ましくは1.03以下、より好ましくは1.01以下である。
【0107】
本発明の1態様において、ポリイミド繰り返し単位(即ち前記一般式II)中のイミド基(-C(O)NC(O)-)の重量分率が、38.3重量%未満であることが好ましい。特定の態様においては、30重量%以下であることがより好ましい。
【0108】
ここで、ポリイミドは共重合体であってよく、即ちポリイミドを与えるテトラカルボン酸成分およびジアミン成分のうち少なくとも一方が2種類以上の化合物を含有してもよい。この場合、イミド基の重量分率は、モノマーの仕込み割合に基づいて、加重平均で計算される。イミド基以外の基の重量分率についても同様に計算される。以下の説明で、特定の基の重量分率に言及する場合、ポリイミドは単独重合体である場合と共重合体である場合の両方を含む。
【0109】
本発明の1態様において、ポリイミド繰り返し単位中の官能基の重量分率は小さい方が好ましい。ここで定義される「繰り返し単位中の官能基」は、ポリイミド繰り返し単位中の芳香環および飽和アルキル鎖以外の部分であり、-O-(エーテル結合)、-CO-(カルボニル基)、-COO-(エステル)、-SO-などである。芳香環および飽和アルキル鎖の水素を置換しているFおよびClは、「繰り返し単位中の官能基」に含まれない。
【0110】
イミド基と「繰り返し単位中の官能基」を合わせて、ポリイミド繰り返し単位中の38.3重量%未満であることも好ましく、より好ましくは30重量%以下、さらに好ましくは25重量%以下である。
【0111】
加えて本発明の1態様において、ポリイミド繰り返し単位中に存在するか、末端に存在するか、または別の化合物に拘わらず、上記以外の官能基の含有量が少ないことが好ましく、全く含まないことも極めて好ましい。このような好ましくない官能基としては、Si含有基(シロキサン結合、シリル基等)が挙げられる。
【0112】
本発明の好ましい1形態において、繰り返し単位を形成するテトラカルボン酸成分は、フルオレン構造を分子内に有するテトラカルボン酸二無水物、および2つの酸無水物基以外の官能基(上記「繰り返し単位中の官能基」に対応する基)1個に対してベンゼン環を3個以上有するテトラカルボン酸二無水物から選ばれる化合物を含むことが好ましい。尚、2つの酸無水物基以外に、「繰り返し単位中の官能基」に相当する官能基を有さない化合物も好ましい化合物に含まれ、この場合、ベンゼン環の個数は好ましくは2個以上であり、より好ましくは3個以上である。
【0113】
本発明の好ましい1形態において、繰り返し単位を形成するジアミン成分は、フルオレン構造を分子内に有するジアミン、および2つのアミン基以外の官能基(上記「繰り返し単位中の官能基」に対応する基)1個に対してベンゼン環を3個以上有するジアミンから選ばれる化合物を含むことが好ましい。尚、2つのアミン基以外に、「繰り返し単位中の官能基」に相当する官能基を有さない化合物も好ましい化合物に含まれ、この場合、ベンゼン環の個数は好ましくは2個以上であり、より好ましくは3個以上である。
【0114】
本発明の好ましい1形態において、繰り返し単位を形成するテトラカルボン酸成分およびジアミン成分のそれぞれが、上記の条件、即ちフルオレン構造を分子内に有する化合物、および「繰り返し単位中の官能基」1個に対してベンゼン環を3個以上有する化合物(官能基0個の場合を含む)から選ばれる化合物を含むことが好ましい。
【0115】
本発明の1態様において、「末端官能基量」が小さいことも好ましい。「末端官能基量」は、ポリイミドを製造する際(ポリアミック酸を製造する際)のテトラカルボン酸成分とジアミン成分の仕込み比、各成分の純度、末端封止剤の添加量、反応性添加剤の添加量に基づいて計算される。テトラカルボン酸成分とジアミン成分の仕込み比からの末端官能基量の計算は次のように行う。
【0116】
テトラカルボン酸二無水物/ジアミン比=1で得られるポリイミドの重合度は理論的に∞なので、末端基は1/∞=0とする。テトラカルボン酸二無水物とジアミンの仕込みが等モルでない場合、ジアミンが過剰である場合を例に取ると、理論的に、式(II-B)の構造の重合度nのポリイミドができるものとする。nは、
(式) テトラカルボン酸二無水物/ジアミン比=n/(n+1)
を満たすnを求めることで得られる。繰り返し単位の式量をaとし、末端ジアミン1個分の分子量をaとすると、重合度nのポリイミドの式量は、(a*n+a)となるから、末端アミン量は、
2/(a*n+a) [単位 mol/g]
で求められる。本願の実施例ではμmol/gで表記した。
【0117】
【化21】
【0118】
本発明の1態様において、末端アミン基量が好ましくは30μmol/g以下、より好ましくは20μmol/g以下、さらに好ましくは10.5μmol/g以下である。また、本発明の異なる態様において、末端の全官能基量が好ましくは30μmol/g以下、より好ましくは20μmol/g以下、さらに好ましくは10.5μmol/g以下である。
【0119】
本発明の好ましい1態様においては、イミド基と「繰り返し単位中の官能基」を合わせた重量分率が30重量%以下且つ「末端官能基量」が20μmol/g以下が好ましく、また異なる好ましい1態様においては、イミド基と「繰り返し単位中の官能基」を合わせた重量分率が40重量%以下且つ「末端官能基量」が10.5μmol/g以下が好ましい。またイミド基と「繰り返し単位中の官能基」を合わせた重量分率が30重量%以下且つ「末端官能基量」が10.5μmol/g以下も非常に好ましい。
【0120】
以上のようなポリイミド中の官能基(イミド基、繰り返し単位中の官能基、末端官能基)のコントロールは、本発明のC-V特性を有するポリイミドを得るために考慮すべき要素である。
【0121】
<<新規ポリイミド前駆体およびポリイミド>>
本出願は、新規な構造を含有するポリイミド前駆体およびポリイミドも開示する。新規ポリイミド前駆体およびポリイミドは、
少なくとも3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)を含有するテトラカルボン酸成分(A)と、
(B-1)1,4―ジアミノベンゼン、[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-4,4”-ジアミン、および1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼンから選ばれる少なくとも一つのジアミン、および
(B-2)9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、4,4’-(((9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス([1,1’-ビフェニル]-5,2-ジイル))ビス(オキシ))ジアミン、および4,4’-([1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジイルビス(オキシ))ジアミンから選ばれる少なくとも一つのジアミン
を含有するジアミン成分(B)を反応して得られる繰り返し単位を含む。即ち、前記一般式Iおよび一般式IIにおいて、Xが上記テトラカルボン酸成分(A)に由来し、Yが上記ジアミン成分(B)に由来する繰り返し単位を含む。
【0122】
テトラカルボン酸成分(A)は、好ましくは3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(s-BPDA)を40モル%以上の割合で含む。また、テトラカルボン酸成分(A)として、s-BPDA以外に、(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス(2-メチル-4,1-フェニレン)ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキシレート)を含むことも好ましい。これら以外に、前述の列挙したテトラカルボン酸二無水物を含有することができる。例えば、フルオレン構造を分子内に有するテトラカルボン酸二無水物、および2つの酸無水物基以外の官能基(「繰り返し単位中の官能基」に対応する基)1個に対してベンゼン環を3個以上有するテトラカルボン酸二無水物から選ばれる化合物を含むことができる。s-BPDAおよび(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス(2-メチル-4,1-フェニレン)ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキシレート)以外のテトラカルボン酸二無水物の量は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下であり、0モル%であってもよい。
【0123】
ジアミン成分(B)は、上記(B-1)のジアミンおよび(B-2)のジアミンを合わせて、好ましくは40モル%以上の割合で含む。また、ジアミン成分(B)として(B-1)のジアミンおよび(B-2)のジアミン以外に前述の列挙したジアミン化合物を含有することができる。例えば、フルオレン構造を分子内に有するジアミン、および2つのアミン基以外の官能基(「繰り返し単位中の官能基」に対応する基)1個に対してベンゼン環を3個以上有するジアミンから選ばれる化合物を含むことができ、好ましい化合物としては、1,1’:4’,1”:4”,1”’-クォーターフェニル-4,4”’-ジアミン等を挙げることができる。(B-1)のジアミンおよび(B-2)のジアミン以外のジアミン化合物の量は、好ましくは30モル%以下、より好ましくは20モル%以下であり、0モル%であってもよい。
【0124】
また、ポリイミド前駆体またはポリイミドの繰り返し単位中、s-BPDAと(B-1)のジアミンに由来する繰り返し単位およびs-BPDAと(B-2)のジアミンに由来する繰り返し単位の割合の合計が、40モル%以上であることが好ましい。
【0125】
この新規ポリイミドはC-V特性に優れており、ポリイミド繰り返し単位中のイミド基重量分率、イミド基と「繰り返し単位中の官能基」を合わせた重量分率、および「末端官能基量」の少なくとも1つ、好ましくは2つ、より好ましくは3つが、前述の範囲(特には好ましい範囲)となるように、併用化合物、仕込みテトラカルボン酸二無水物/ジアミン比等を選択することが好ましい。
【0126】
<<ポリイミドフィルムの製造方法>>
ポリイミドの製造、特にキャリア基板上にポリイミドフィルムを形成した積層体を経由するポリイミドフィルムの製造方法を以下に説明する。
【0127】
ポリイミドフィルムの製造方法の例を概略的に示すと、
(1)ポリイミド前駆体(特にポリアミック酸)溶液、またはポリイミド前駆体溶液に必要に応じてイミド化触媒、脱水剤、無機微粒子などを選択して加えたポリイミド前駆体溶液組成物をキャリア基板上にキャストし、加熱により脱水環化、脱溶媒することによりポリイミドフィルムを形成する方法(熱イミド化);
(2)ポリイミド前駆体(特にポリアミック酸)溶液に環化触媒および脱水剤を加え、さらに必要に応じて無機微粒子などを選択して加えたポリイミド前駆体溶液組成物をキャリア基板上にキャストし、化学的に脱水環化させて、これを加熱により脱溶媒、イミド化することによりポリイミドフィルムを形成する方法(化学イミド化);
(3)ポリイミドが有機溶媒に可溶の場合、必要により無機微粒子などの添加剤を選択して加えたポリイミド溶液組成物をキャリア基板上にキャストし、加熱により溶媒を除去しながら、所定温度まで加熱することによりポリイミドフィルムを形成する方法
などが挙げられる。
【0128】
<ポリイミド前駆体溶液、ポリイミド溶液>
まず、ポリイミド前駆体溶液およびポリイミド溶液の製造について説明する。ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液は、略等モルのテトラカルボン酸成分とジアミン成分を、有機溶媒中で重合することにより得られる。また、予めどちらかの成分が過剰である2種類以上のポリイミド前駆体を合成しておき、各ポリイミド前駆体溶液を一緒にした後、反応条件下で混合してもよい。
【0129】
有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N-ビニル-2-ピロリドン等のアミド溶媒、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、δ-バレロラクトン、γ-カプロラクトン、ε-カプロラクトン、α-メチル-γ-ブチロラクトン等の環状エステル溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート溶媒、トリエチレングリコール等のグリコール系溶媒、m-クレゾール、p-クレゾール、3-クロロフェノール、4-クロロフェノール等のフェノール系溶媒、アセトフェノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、スルホラン、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。さらに、その他の一般的な有機溶剤、例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶媒や、フェノール、o-クレゾール、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソブチル、プロピレングリコールメチルアセテート、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、2-メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロへキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、ブタノール、エタノール、キシレン、トルエン、クロルベンゼン、N-メチルカプロラクタム、ヘキサメチルホスホロトリアミド、ビス(2-メトキシエチル)エーテル、1,2-ビス(2-メトキシエトキシ)エタン、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]エーテル、1,4-ジオキサン、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、ジフェニルエーテル、ジフェニルスルホン、テトラメチル尿素、アニソール、ターペン、ミネラルスピリット、石油ナフサ系溶媒、生分解性の乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなども使用できる。使用する有機溶剤は、1種類であっても、2種類以上であってもよい。
【0130】
ポリイミド前駆体溶液およびポリイミド溶液をそれぞれ得るための重合反応を実施するに際して、有機溶媒中の全モノマー(ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液の固形分濃度と実質等しい)の濃度は、使用する目的や製造する目的に応じて適宜選択すればよい。得られるポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液の固形分濃度として、特に限定されるものではないが、ポリイミド前駆体またはポリイミドと溶媒との合計量に対して、好ましくは5質量%~45質量%、より好ましくは7質量%~40質量%、さらに好ましくは9質量%~30質量%である。固形分濃度が5質量%より低いと生産性、及び使用時の取り扱いが悪くなることがあり、45質量%より高いと溶液の流動性がなくなることがある。
【0131】
また、ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液の30℃における溶液粘度は、特に限定されないが、好ましくは1000Pa・s以下、より好ましくは0.1~500Pa・s、さらに好ましくは0.1~300Pa・s、特に好ましくは0.1~200Pa・sであることが取り扱い上好適である。溶液粘度が1000Pa・sを超えると、流動性がなくなり、金属やガラスなどのキャリア基板への均一な塗布が困難となることがあり、また、0.1Pa・sよりも低いと、金属やガラスなどのキャリア基板への塗布時にたれやハジキなどが生じることがあり、また高い特性のポリイミドフィルムを得ることが難しくなることがある。
【0132】
ポリイミド前駆体溶液の製造例の一例として、前記のテトラカルボン酸成分とジアミン成分との重合反応を、例えば、それぞれを実質的に等モル或いはどちらかの成分(酸成分、或いはジアミン成分)を少し過剰にして混合し、反応温度100℃以下、好ましくは80℃以下にて約0.2~60時間反応させることにより実施して、ポリイミド前駆体溶液を得ることができる。
【0133】
ポリイミド溶液の製造例の一例として、前記のテトラカルボン酸成分とジアミン成分との重合反応を、例えば、それぞれを実質的に等モル或いはどちらかの成分(酸成分、或いはジアミン成分)を少し過剰にして混合し、公知の方法でポリイミド溶液を得ることができ、例えば反応温度140℃以上、好ましくは160℃以上(好ましくは250℃以下、さらに230℃以下)にて約1~60時間反応させることにより実施して、ポリイミド溶液を得ることができる。
【0134】
また、前述のようにカルボン酸モノ無水物(特にジカルボン酸モノ無水物)を加える場合、一般的にはテトラカルボン酸成分とジアミン成分とを、好ましくは前述の式(1)を満たすモル比で溶媒中で反応させて、末端にアミノ基を有するポリイミド前駆体(特にポリアミック酸)を得る第1の工程、および、次いでカルボン酸モノ無水物を、好ましくは前述の式(2)を満たすモル比で添加して反応させて、ポリイミド前駆体(特にポリアミック酸)の末端を封止する第2の工程を含む方法が好ましい。
【0135】
第1の工程では、イミド化反応を抑制するために、例えば100℃以下、好ましくは80℃以下の比較的低温で行なわれる。限定するものではないが、通常、反応温度は25℃~100℃、好ましくは40℃~80℃、より好ましくは50℃~80℃であり、反応時間は、通常、0.1~24時間程度、好ましくは2~12時間程度である。反応温度及び反応時間を前記範囲内とすることによって、効率よく高分子量のポリイミド前駆体の溶液組成物を得ることができる。なお、反応は、空気雰囲気下でも行うことができるが、通常は不活性ガス雰囲気下、好ましくは窒素ガス雰囲気下で行われる。
【0136】
第2の工程では、反応温度を適宜設定してよいが、ポリイミド前駆体の末端を確実に封止する観点から、好ましくは25℃~70℃、より好ましくは25℃~60℃、さらに好ましくは25℃~50℃である。反応時間は、通常、0.1~24時間程度である。
【0137】
このようにして得られたポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液はそのまま、あるいは必要であれば有機溶媒を除去し、または、新たに有機溶媒を加えて、ポリイミドフィルムの製造に使用することができる。
【0138】
ポリイミド前駆体溶液には、熱イミド化であれば必要に応じて、イミド化触媒、有機リン含有化合物、無機微粒子などを加えてもよい。ポリイミド前駆体溶液には、化学イミド化であれば必要に応じて、環化触媒および脱水剤、無機微粒子などを加えてもよい。ポリイミド溶液には、必要に応じて、無機微粒子などを加えてもよい。
【0139】
イミド化触媒としては、置換もしくは非置換の含窒素複素環化合物、該含窒素複素環化合物のN-オキシド化合物、置換もしくは非置換のアミノ酸化合物、ヒドロキシル基を有する芳香族炭化水素化合物または芳香族複素環状化合物が挙げられ、特に1,2-ジメチルイミダゾール、N-メチルイミダゾール、N-ベンジル-2-メチルイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、5-メチルベンズイミダゾールなどの低級アルキルイミダゾール、N-ベンジル-2-メチルイミダゾールなどのベンズイミダゾール、2-フェニルイミダゾール等のフェニルイミダゾール、イソキノリン、3,5-ジメチルピリジン、3,4-ジメチルピリジン、2,5-ジメチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、4-n-プロピルピリジンなどの置換ピリジンなどを好適に使用することができる。イミド化触媒の使用量は、ポリアミド酸のアミド酸単位に対して0.01~2倍当量、特に0.02~1倍当量程度であることが好ましい。イミド化触媒を使用することによって、得られるポリイミドフィルムの物性、特に伸びや端裂抵抗が向上することがある。
【0140】
有機リン含有化合物としては、例えば、モノカプロイルリン酸エステル、モノオクチルリン酸エステル、モノラウリルリン酸エステル、モノミリスチルリン酸エステル、モノセチルリン酸エステル、モノステアリルリン酸エステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのリン酸モノエステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのリン酸モノエステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのリン酸モノエステル、ジカプロイルリン酸エステル、ジオクチルリン酸エステル、ジカプリルリン酸エステル、ジラウリルリン酸エステル、ジミリスチルリン酸エステル、ジセチルリン酸エステル、ジステアリルリン酸エステル、テトラエチレングリコールモノネオペンチルエーテルのリン酸ジエステル、トリエチレングリコールモノトリデシルエーテルのリン酸ジエステル、テトラエチレングリコールモノラウリルエーテルのリン酸ジエステル、ジエチレングリコールモノステアリルエーテルのリン酸ジエステル、トリメチルリン酸エステル、トリフェニルリン酸エステルのリン酸トリエステル等のリン酸エステルや、これらリン酸エステルのアミン塩が挙げられる。アミンとしてはアンモニア、モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノプロピルアミン、モノブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0141】
環化触媒としては、トリメチルアミン、トリエチレンジアミンなどの脂肪族第3級アミン、ジメチルアニリンなどの芳香族第3級アミン、およびイソキノリン、ピリジン、α-ピコリン、β-ピコリンなどの複素環第3級アミンなどが挙げられる。
【0142】
脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸などの脂肪族カルボン酸無水物、および無水安息香酸などの芳香族カルボン酸無水物などが挙げられる。
【0143】
無機微粒子としては、微粒子状の二酸化チタン粉末、二酸化ケイ素(シリカ)粉末、酸化マグネシウム粉末、酸化アルミニウム(アルミナ)粉末、酸化亜鉛粉末などの無機酸化物粉末、微粒子状の窒化ケイ素粉末、窒化チタン粉末などの無機窒化物粉末、炭化ケイ素粉末などの無機炭化物粉末、および微粒子状の炭酸カルシウム粉末、硫酸カルシウム粉末、硫酸バリウム粉末などの無機塩粉末を挙げることができる。これらの無機微粒子は二種以上を組合せて使用してもよい。これらの無機微粒子を均一に分散させるために、それ自体公知の手段を適用することができる。
【0144】
一実施形態において、ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液は、アルコキシシランなどのシランカップリング剤を含まないことが好ましい。シランカップリング剤を使用したポリイミドフィルムでは、シランカップリング剤がブリードアウトする場合がある。これにより、ポリイミドフィルムのC-V特性の低下、さらには接着力低下、積層体の膨れなどの問題が生じる。更には、ポリイミド前駆体溶液にシランカップリング剤を添加または反応させると、ポリイミド前駆体溶液の粘度安定性が低下するという問題もある。このような問題を避けるためには、シランカップリング剤を使用しないことが好ましい。
【0145】
<積層体および電子デバイスの製造>
電子デバイスの製造では、まず、ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液(これらに、必要により添加剤を含有する組成物溶液も含む)をキャリア基板上に流延し、加熱処理によりイミド化および脱溶媒(ポリイミド溶液のときは主として脱溶媒)することによってポリイミドフィルムを形成し、キャリア基板とポリイミドフィルムとの積層体を得る。キャリア基板に制限はないが、一般に、ソーダライムガラス、ホウ珪酸ガラス、無アルカリガラス等のガラス基板や鉄、ステンレス、銅等の金属基板が使用される。ポリイミド前駆体溶液およびポリイミド溶液のキャリア基板上への流延方法は特に限定されないが、例えばスピンコート法、スクリーン印刷法、バーコーター法、電着法などの従来公知の方法が挙げられる。ポリイミド前駆体溶液を用いた場合の加熱処理条件は、特に限定されないが、例えば50℃~150℃の温度範囲で乾燥した後、最高加熱温度として例えば150℃~600℃であり、好ましくは200℃~550℃、より好ましくは250℃~500℃で処理することが好ましい。ポリイミド溶液を用いた場合の加熱処理条件は、特に限定されないが、最高加熱温度として例えば100℃~600℃であり、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上であり、また好ましくは500℃以下、より好ましくは450℃以下である。
【0146】
ポリイミドフィルムの厚さは、1μm以上であることが好ましい。厚さが1μm未満である場合、ポリイミドフィルムが十分な機械的強度を保持できず、例えばフレキシブルデバイス基板として使用するとき、応力に耐えきれず破壊されることがある。また、ポリイミドフィルムの厚さは、20μm以下であることが好ましい。ポリイミドフィルムの厚さが20μmを超えて厚くなると、フレキシブルデバイスの薄型化が困難となってしまうことがある。フレキシブルデバイスとして十分な耐性を保持しながら、より薄膜化するには、ポリイミドフィルムの厚さは、2~10μmであることがより望ましい。
【0147】
得られるポリイミドフィルムは、ガラス基板等のキャリア基板に強固に積層される。ガラス基板等のキャリア基板とポリイミドフィルムとの剥離強度は、JIS K6854-1に準拠して測定した場合、一般的には50mN/mm以上、好ましくは100mN/mm以上、より好ましくは200mN/mm以上、さらに好ましくは300mN/mm以上である。
【0148】
また、得られるポリイミドフィルムの上に樹脂膜や無機膜などの第2の層を積層して、フレキシブルデバイス基板を形成してもよい。特に無機膜は、水蒸気バリア層として用いることができ、好適である。水蒸気バリア層としては、例えば、窒化ケイ素(SiN)、酸化ケイ素(SiO)、酸窒化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)等の金属酸化物、金属窒化物および金属酸窒化物からなる群より選択される無機物を含む無機膜が挙げられる。一般に、これらの薄膜の成膜方法としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティングなどの物理的蒸着法と、プラズマCVD法、触媒化学気相成長法(Cat-CVD法)などの化学蒸着法(化学気相成長法)などが知られている。この第2の層は、複数層とすることもできる。ポリイミドフィルム上に第2の層を有するデバイスの場合であっても、第2の層を介してポリイミドフィルムの影響が半導体層に及ぶ場合があるので、デバイス特性や耐久性を向上させるために、本発明の良好なC-V特性を有するポリイミドが好適に使用される。
【0149】
樹脂膜や無機膜の上に、ポリイミドフィルムを積層して、フレキシブルデバイス基板を形成してもよい。キャリア基板の場合と同様の方法で、ポリイミド前駆体溶液またはポリイミド溶液を用いて、樹脂膜や無機膜の上にポリイミドフィルムを積層できる。
【0150】
本発明で得られるポリイミドフィルムは、無機膜が基板となる場合であっても、強固に積層される。ポリイミドフィルムと無機膜(例えば、酸化ケイ素膜)との剥離強度は、JIS K6854-1に準拠して測定した場合、一般的には20mN/mm以上、好ましくは30mN/mm以上、より好ましくは40mN/mm以上、さらに好ましくは50mN/mm以上である。
【0151】
電子デバイスの製造では、形成した積層体(特にはポリイミドフィルム)の上に、デバイスに必要な素子および回路等を形成する。形成する素子および回路、ならびにその製造工程はデバイスの種類により異なる。TFT液晶ディスプレイデバイスを製造する場合には、ポリイミドフィルムの上に、例えばアモルファスシリコンのTFTを形成する。TFTは、例えば、ゲート金属層、アモルファスシリコン膜などの半導体層、窒化ケイ素ゲート誘電体層、ITO画素電極を含む。この上に、さらに液晶ディスプレイに必要な構造を、公知の方法によって形成することも出来る。本発明において得られるポリイミドフィルムは耐熱性、靱性等各種特性に優れるので、回路等を形成する手法は特に制限されない。
【0152】
電子デバイスとして、フレキシブルデバイスを目的とする場合、回路等を表面に形成したデバイス基板(特にはポリイミドフィルム)をキャリア基板から剥離する。剥離方法に特に制限はなく、例えばキャリア基板側からレーザー等を照射して剥離するレーザー剥離、および機械的に引き剥がすメカニカル剥離等で実施することができる。
【0153】
本発明のポリイミドおよびポリイミドフィルム(その上に樹脂膜や無機膜などの第2の層を積層したものを含む)は、特に、薄型化かつフレキシブル性を付与したい電子デバイスの基板として好適である。ここで言う「フレキシブル(電子)デバイス」とは、デバイス自身がフレキシブルであることを意味し、通常、基板上で半導体層(素子としてトランジスタ、ダイオード等)が形成されてデバイスが完成する。従来のFPC(フレキシブルプリント配線板)上にICチップ等の「硬い」半導体素子が搭載された例えばCOF(Chip On Film)等を意味するものではない。上述および後述の本発明のポリイミドおよびポリイミドフィルムが好適に使用されるフレキシブル(電子)デバイスとしては、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、電子ペーパーといった表示デバイス、太陽電池、CMOSなどの受光デバイスを挙げることが出来る。
【0154】
本発明のポリイミドは、種々の用途に使用可能であるが、優れたC-V特性の効果を奏するために、ポリイミドと半導体が直接接しているデバイスか、または薄膜(例えば200nm以下、好ましくは100nm以下の薄膜、例えば前述の第2の層)を介して積層されているデバイスにおいて使用されることが好ましい。
【0155】
また、上記説明では、ポリイミドフィルム-キャリア基板の積層体を用いて、その上に素子や回路を形成する方法を説明したが、素子や回路を形成に支障がなければ、単膜のポリイミドフィルム上に素子や回路を形成してもよい。
【0156】
尚、半導体としては、単結晶シリコン、アモルファスシリコンおよびポリシリコン等のシリコン(これらはp型またはn型に不純物ドープされていてよい)、ならびに窒化ガリウム系やその他の化合物半導体が挙げられる。
【実施例0157】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0158】
以下の例で用いた特性の測定方法を次に示す。
【0159】
<C-V特性の測定方法>
C-V特性は、図1の模式図に示すシステムにより、以下の条件で実施した。
測定装置:堀場ジョバンイボン社製水銀プローブ式CV測定装置(水銀プローブModel 802-150(Materials Development Corporation)
水銀電極面積:0.00475 cm
直流電圧走査条件:+40Vで30s間保持した後、+40Vから-40Vまで負方向走査を行い、-40Vで30s間保持し、その後、+40Vまで正方向走査を行う。これを3サイクル繰り返した。直流電圧の走査速度は、実施例1~7および比較例1~3では0.25V/secとし、実施例8~16、比較例4~10では0.18V/secとした。尚、後半の実施例・比較例で0.18V/secとしたのは測定ノイズ低減のためであるが、0.25V/secによる測定データと、最大勾配の値に差異はない(実施例16、比較例10参照)。
交流電圧条件:周波数約2.5kHz、振幅0.1Vの交流正弦波
測定温度:室温
【0160】
<勾配の求め方>
規格化C-V曲線の微分関数の近似値として、ある電圧Vn1の時の規格化容量Cn1と、Vn1+1.5[V]であるVn2の時の規格化容量Cn2から、絶対値「|(Cn2-Cn1)/(Vn2-Vn1)|」を、規格化C-V曲線全体についてこの値を計算し、|(Cn2-Cn1)/(Vn2-Vn1)|の最大値をその組成の勾配として採用した。
【0161】
実施例、比較例に使用したモノマーおよび添加剤を示す。
【0162】
モノマーA:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(式量294.22)、純度(%)99.9
モノマーA2:3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(式量294.22)、純度(%)99.0(低純度)
モノマーB:(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス(2-メチル-4,1-フェニレン)ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキシレート)(式量726.66)、純度(%)98.2
モノマーC:1,4-ジアミノベンゼン(式量108.14)、純度(%)100.0
モノマーD:4,4’-(((9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス([1,1’-ビフェニル]-5,2-ジイル))ビス(オキシ))ジアミン(式量684.78)、純度(%)99.0
モノマーE:[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-4,4”-ジアミン(式量260.31)、純度(%)99.1
モノマーF:4,4’-([1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジイルビス(オキシ))ジアミン(式量468.51)、純度(%)99.1
モノマーG:1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(式量344.48)、純度(%)99.7
モノマーH:9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(式量348.43)、純度(%)99.2
モノマーI:フタル酸無水物(式量148.11)、純度(%)100.0
添加剤:3-アミノプロピルトリエトキシシラン(式量218.32)、純度(%)99.7
モノマーJ:5-(フェニルエチニル)イソベンゾフラン-1,3-ジオン(式量248.22)、純度:98.4%
モノマーK:5-(3-オキソ-3-フェニルプロプ-1-イン-1-イル)イソベンゾフラン-1,3-ジオン(式量276.23)、純度:99.8%
モノマーL:5,5’-(エチン-1,2-ジイル)ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)(式量318.23)、純度:99.0%
モノマーM:5,5’-(パーフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)(式量444.24)、純度:99.1%
モノマーN:5,5’-オキシビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)(式量310.21)、純度:99.73%
モノマーO:オクタハイドロ-3H,3”H-ジスピロ[[4,7]メタノイソベンゾフラン]-1,1”,3,3”,4’(4H,4”H)-ペンタオン(CpODA)(式量384.37)、純度:99.3%
モノマーP:シクロヘキサン-1,4-ジアミン(式量114.19)、純度:99.98 %
モノマーQ:4,4’-オキシジアニリン(式量200.24)、純度:99.98 %
モノマーR:1H,3H-ベンゾ[1,2-c:4,5-c:4,5c’]ジフラン-1,3,5,7-テトラオン(式量218.12)、純度:99.73%
【0163】
モノマーの化学構造を以下に示す。
【0164】
【化22】
【0165】
【化23】
【0166】
【化24】
【0167】
【化25】
【0168】
【化26】
【0169】
【化27】
【0170】
[参考例1](実施例1の組成)
(モノマーA 50/モノマーB 50//モノマーC 50/モノマーD 50)
窒素ガスで置換した反応容器中に、1,4-ジアミノベンゼン(50モル%)および4,4’-(((9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス([1,1’-ビフェニル]-5,2-ジイル))ビス(オキシ))ジアミン(50モル%)、NMPを仕込み、15分間40℃で加熱撹拌し、モノマーを溶解させた。その後、3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(50モル%)および(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス(2-メチル-4,1-フェニレン)ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキシレート)(50モル%)を加え、さらに30分間撹拌し、粘度1.82Pa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)を得た。
【0171】
[参考例2](実施例2の組成)
(モノマーA 50/モノマーB 50//モノマーD 50/モノマーE 50)
窒素ガスで置換した反応容器中に、[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-4,4”-ジアミン(50モル%)(50モル%)および4,4’-(((9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス([1,1’-ビフェニル]-5,2-ジイル))ビス(オキシ))ジアミン(50モル%)、NMPを仕込み、15分間40℃で加熱撹拌し、モノマーを溶解させた。その後、3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(50モル%)および(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス(2-メチル-4,1-フェニレン)ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキシレート)(50モル%)を加え、さらに30分間撹拌し、粘度0.742Pa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)を得た。
【0172】
[参考例3](実施例3の組成)
(モノマーA 50/モノマーB 50//モノマーE 50/モノマーF 50)
窒素ガスで置換した反応容器中に、[1,1’:4’,1”-ターフェニル]-4,4”-ジアミン(50モル%)および4,4’-([1,1’-ビナフタレン]-2,2’-ジイルビス(オキシ))ジアミン(50モル%)、NMPを仕込み、15分間40℃で加熱撹拌し、モノマーを溶解させた。その後、3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(50モル%)および(9H-フルオレン-9,9-ジイル)ビス(2-メチル-4,1-フェニレン)ビス(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソベンゾフラン-5-カルボキシレート)(50モル%)を加え、さらに30分間撹拌し、粘度0.886Pa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)を得た。
【0173】
[参考例4](実施例4の組成)
(モノマーA 100//モノマーG 50/モノマーH 50)
窒素ガスで置換した反応容器中に、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(50モル%)および9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(50モル%)、NMPを仕込み、15分間40℃で加熱撹拌し、モノマーを溶解させた。その後、3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(100モル%)を加え、さらに30分間撹拌し、粘度3.249Pa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)を得た。
【0174】
[参考例5](実施例5の組成)
(モノマーA 100//モノマーG 50/モノマーH 50)
窒素ガスで置換した反応容器中に、1,4-ビス[2-(4-アミノフェニル)-2-プロピル]ベンゼン(50モル%)および9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(50モル%)、NMPを仕込み、15分間40℃で加熱撹拌し、モノマーを溶解させた。その後、3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(100モル%)を加え、さらに30分間撹拌し、ポリアミック酸溶液を得た。その後190℃まで昇温した後、3時間保持してイミド化を行い、粘度4.03Pa・s(25℃)の液状ポリイミド樹脂組成物(ポリイミド溶液)を得た。
【0175】
[参考例6](実施例6の組成)
(モノマーA 100//モノマーC 100)
窒素ガスで置換した反応容器中に、1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)、NMPを仕込み、15分間40℃で加熱撹拌し、モノマーを溶解させた。その後、3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(100モル%)を加え、さらに30分間撹拌し、粘度6.6Pa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)を得た。
【0176】
[参考例7](実施例7の組成)
(モノマーA 98//モノマーC 100//モノマーI 4)
窒素ガスで置換した反応容器中に、1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)、NMPを仕込み、15分間40℃で加熱撹拌し、モノマーを溶解させた。その後、3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(98モル%)およびを加え、さらに30分間撹拌した。その後フタル酸無水物(4モル%)を加え、更に30分間攪拌し、粘度3.11Pa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)を得た。
【0177】
[参考例8](比較例1の組成)
(モノマーA 99.5//モノマーC 100//添加剤)
窒素ガスで置換した反応容器中に、1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)、NMPを仕込み、15分間40℃で加熱撹拌し、モノマーを溶解させた。その後、3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(99.5モル%)および3-アミノプロピルトリエトキシシラン(モノマー総量に対して0.05部)を加え、さらに30分間撹拌し、粘度28.75Pa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)を得た。
【0178】
[参考例9](比較例2の組成)
(モノマーA 98//モノマーC 100)
窒素ガスで置換した反応容器中に、1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)、NMPを仕込み、15分間40℃で加熱撹拌し、モノマーを溶解させた。その後、3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(98モル%)を加え、さらに30分間撹拌し、粘度3.11Pa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)を得た。
【0179】
[参考例10](比較例3の組成)
(モノマーA2 100//モノマーC 100)
窒素ガスで置換した反応容器中に、1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)、NMPを仕込み、15分間40℃で加熱撹拌し、モノマーを溶解させた。その後、3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA2;低純度)(100モル%)を加え、さらに30分間撹拌し、粘度480Pa・s(25℃)の液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)を得た。
【0180】
<実施例1~3>
6インチシリコンウェハ(625μm厚、抵抗率4Ωcm、p型(不純物ボロン))上に、参考例1~3で製造したポリアミック酸溶液をさらに希釈した溶液をスピンコートし、120℃、150℃、200℃、250℃にて各10分、330℃にて5分間加熱処理し、厚さ0.75μmのポリイミドフィルムを形成した。得られたポリイミドフィルムを用いて、C-V測定を行った結果および使用した参考例の組成を表1に示す。
【0181】
<実施例4>
実施例1と同様に、6インチシリコンウェハ上に参考例4で製造したポリアミック酸溶液をさらに希釈した溶液をスピンコートし、120℃、150℃、200℃、250℃にて各10分、360℃にて5分間加熱処理し、厚さ0.75μmのポリイミドフィルムを形成した。結果を表1に示す。
【0182】
<実施例5>
実施例1と同様に、6インチシリコンウェハ上に、参考例5で製造したポリイミド溶液をさらに希釈した溶液をスピンコートし、120℃、150℃、200℃、250℃にて各10分、300℃にて5分間加熱処理し、厚さ0.75μmのポリイミドフィルムを形成した。結果を表1に示す。
【0183】
<実施例6、7、比較例1、2、3>
実施例1と同様に、6インチシリコンウェハ上に、参考例6、7、8、9、10で製造したポリアミック酸溶液をさらに希釈した溶液をスピンコートし、120℃、150℃、200℃、250℃にて各10分、450℃にて5分間加熱処理し、厚さ0.75μmのポリイミドフィルムを形成した。結果を表1に示す。
【0184】
【表1】
【0185】
以下の参考例11~26においては、上記参考例1等と同様に、窒素ガスで置換した反応容器中に、ジアミン化合物とNMPを仕込み、15分間40℃で加熱撹拌し、モノマーを溶解させた。その後、テトラカルボン酸二無水物を加えて30分間撹拌して液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)を得た。但し、末端封止剤を添加する例(参考例16~18)については、参考例7と同様に、その後に末端封止剤を加えて更に30分間撹拌して液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)を得た。
【0186】
[参考例11](実施例8の組成)
(モノマーA 70/モノマーM 30 // モノマーC 100)
テトラカルボン酸二無水物:3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA)(70モル%)+5,5’-(パーフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)(モノマーM)(30モル%)
ジアミン成分:1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)の粘度:1.160Pa・s(25℃)
【0187】
[参考例12](実施例9の組成)
(モノマーA 70/モノマーN 30 // モノマーC 100)
テトラカルボン酸二無水物:3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA)(70モル%)+5,5’-オキシビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)(モノマーN)(30モル%)
ジアミン成分:1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)の粘度:1.250Pa・s(25℃)
【0188】
[参考例13](実施例10の組成)
(モノマーA 70/モノマーO 30 // モノマーC 100)
テトラカルボン酸二無水物:3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA)(70モル%)+CpODA(モノマーO)(30モル%)
ジアミン成分:1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)の粘度:1.303Pa・s(25℃)
【0189】
[参考例14](実施例11の組成)
(モノマーA 100// モノマーC 70/モノマーP 30)
テトラカルボン酸二無水物:3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA)(100モル%)
ジアミン成分:1,4-ジアミノベンゼン(70モル%)+シクロヘキサン-1,4-ジアミン(モノマーP)(30モル%)
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)の粘度:1.811Pa・s(25℃)
【0190】
[参考例15](実施例12の組成)
(モノマーA 100// モノマーC 70/モノマーQ 30)
テトラカルボン酸二無水物:3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA)(100モル%)
ジアミン成分:1,4-ジアミノベンゼン(70モル%)+4,4’-オキシジアニリン(モノマーQ)(30モル%)
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)の粘度:1.562Pa・s(25℃)
【0191】
[参考例16](実施例13の組成)
(モノマーA 98 // モノマーC 100 // モノマーJ 4)
テトラカルボン酸二無水物:3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA)(98モル%)
ジアミン成分:1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)
末端封止剤:5-(フェニルエチニル)イソベンゾフラン-1,3-ジオン(モノマーJ)(4モル%)
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)の粘度:3.11Pa・s(25℃)
【0192】
[参考例17](実施例14の組成)
(モノマーA 98 // モノマーC 100 // モノマーK 4)
テトラカルボン酸二無水物:3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA)(98モル%)
ジアミン成分:1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)
末端封止剤:5-(3-オキソ-3-フェニルプロプ-1-イン-1-イル)イソベンゾフラン-1,3-ジオン(モノマーK)(4モル%)
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)の粘度:3.11Pa・s(25℃)
【0193】
[参考例18](実施例15の組成)
(モノマーA 98 // モノマーC 100 // モノマーL 2)
テトラカルボン酸二無水物:3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA)(98モル%)
ジアミン成分:1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)
末端封止剤:5,5’-(エチン-1,2-ジイル)ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)(モノマーL)(2モル%)(注:モノマーLはテトラカルボン酸二無水物であるが、末端封止剤と同様に一番最後に添加した。)
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)の粘度:3.11Pa・s(25℃)
【0194】
[参考例19](比較例4の組成)
(モノマーA 30/モノマーR 70 // モノマーC 100)
テトラカルボン酸二無水物:3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA)(30モル%)+1H,3H-ベンゾ[1,2-c:4,5-c:4,5c’]ジフラン-1,3,5,7-テトラオン(モノマーR)(70モル%)
ジアミン成分:1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)の粘度:1.23Pa・s(25℃)
【0195】
[参考例20](比較例5の組成)
(モノマーA 68.6/モノマーM 29.4 // モノマーC 100)
テトラカルボン酸二無水物:3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA)(68.6モル%)+5,5’-(パーフルオロプロパン-2,2-ジイル)ビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)(モノマーM)(29.4モル%)
ジアミン成分:1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)の粘度:0.130Pa・s(25℃)
【0196】
[参考例21](比較例6の組成)
(モノマーA 68.6/モノマーN 29.4 // モノマーC 100)
テトラカルボン酸二無水物:3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA)(68.6モル%)+5,5’-オキシビス(イソベンゾフラン-1,3-ジオン)(モノマーN)(29.4モル%)
ジアミン成分:1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)の粘度:0.144Pa・s(25℃)
【0197】
[参考例22](比較例7の組成)
(モノマーA 68.6/モノマーO 29.4 // モノマーC 100)
テトラカルボン酸二無水物:3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA)(68.6モル%)+CpODA(モノマーO)(29.4モル%)
ジアミン成分:1,4-ジアミノベンゼン(100モル%)
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)の粘度:0.102Pa・s(25℃)
【0198】
[参考例23](比較例8の組成)
(モノマーA 98// モノマーC 70/モノマーP 30)
テトラカルボン酸二無水物:3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA)(98モル%)
ジアミン成分:1,4-ジアミノベンゼン(70モル%)+シクロヘキサン-1,4-ジアミン(モノマーP)(30モル%)
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)の粘度:0.281Pa・s(25℃)
【0199】
[参考例24](比較例9の組成)
(モノマーA 98// モノマーC 70/モノマーQ 30)
テトラカルボン酸二無水物:3,3’,4,4’-テトラカルボン酸ビフェニル二無水物(モノマーA)(98モル%)
ジアミン成分:1,4-ジアミノベンゼン(70モル%)+4,4’-オキシジアニリン(モノマーQ)(30モル%)
得られた液状ポリイミド前駆体樹脂組成物(ポリアミック酸溶液)の粘度:0.062Pa・s(25℃)
【0200】
<実施例8~15、比較例5~9>
参考例11~18、参考例20~24で製造したポリアミック酸溶液を用いて、実施例4と同じ条件、即ち、6インチシリコンウェハ上にポリアミック酸溶液をさらに希釈した溶液をスピンコートし、120℃、150℃、200℃、250℃にて各10分、360℃にて5分間加熱処理し、厚さ0.75μmのポリイミドフィルムを形成した。結果を表2に示す。
【0201】
<比較例4>
参考例19で製造したポリアミック酸溶液を用いて、実施例6と同じ条件、即ち、6インチシリコンウェハ上にポリアミック酸溶液をさらに希釈した溶液をスピンコートし、120℃、150℃、200℃、250℃にて各10分、450℃にて5分間加熱処理し、厚さ0.75μmのポリイミドフィルムを形成した。結果を表2に示す。
【0202】
<実施例16、比較例10>
実施例16および比較例10では、それぞれ実施例6および比較例1と全く同一のサンプルを作製し、C-V特性の測定の際の直流電圧の走査速度の影響を確認した。C-V特性の測定の際の直流電圧の走査速度が0.18V/secと変更した実施例16および比較例10の最大勾配は、それぞれ0.007/V、0.004/Vであり、走査速度を0.25V/secとして測定した実施例6および比較例1の結果と一致した。
【0203】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0204】
本発明のポリイミドは、例えばフレキシブルデバイスの基板等の電子デバイス用途に好適に使用される。
【符号の説明】
【0205】
1 シリコンウェハ
2 ポリイミドフィルム
3 水銀電極
4 直流電源
5 交流電源
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗値が4Ωcmのシリコンウェハ上に、ポリイミドフィルムを0.75μmの膜厚で形成した積層体の容量-電圧測定を行ったとき、0.005/V以上の最大勾配を示すポリイミドで形成されたフレキシブル電子デバイス用ポリイミドフィルム。(但し、前記最大勾配は、前記シリコンウェハに対して前記ポリイミドフィルムに印加する直流電圧を最低電圧V1と最高電圧V2の間で、最低電圧V1から最高電圧V2までの正方向走査と、最高電圧V2から最低電圧V1までの負方向走査を行いながら容量測定を行い、第3回目の正方向走査時の規格化容量-電圧曲線における勾配の絶対値の最大値を意味し、ここで前記最低電圧V1は、前記ポリイミドフィルムのみの容量が観察される電圧であり、前記規格化容量-電圧曲線は、最低電圧V1における容量を1として規格化されている。)。