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特開2023-164475生体試料評価処理のためのアプリケーション開発環境
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164475
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】生体試料評価処理のためのアプリケーション開発環境
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20231102BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALI20231102BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20231102BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20231102BHJP
   G01N 33/483 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12M1/34 D
C12Q1/06
G06T7/00 630
G01N33/48 M
G01N33/48 Z
G01N33/483 C
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023136923
(22)【出願日】2023-08-25
(62)【分割の表示】P 2020519433の分割
【原出願日】2018-10-04
(31)【優先権主張番号】62/568,579
(32)【優先日】2017-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(72)【発明者】
【氏名】ブラッシュ,マイケル,エー.
(72)【発明者】
【氏名】ゴズネル,カーチス,エム.
(72)【発明者】
【氏名】ワイルズ,ティモシー,エム.
(72)【発明者】
【氏名】マルセルポイル,ラファエル,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ニーウェンハイス,バス
(72)【発明者】
【氏名】フォン デアー カープ,トリエンコ,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ボイス,マイケル
(57)【要約】
【課題】本システムの目的は、解析の速度、解析の精度、及びプロセスの自動化である。
【解決手段】処理された生体試料の自動化評価及び解析のためのアプリケーション(App)を開発するシステム及び方法。かかる試料を得て、栄養培地と組み合わせて、インキュベートする。インキュベートされた試料を撮像し、画像情報を所定の基準に従って分類する。次いで、分類された画像情報を、データベースにおいて分類された履歴画像情報から導かれるAppに従って評価する。分類された履歴画像情報を分類された画像情報と比較して、生体試料の更なる処理に対する指針を与えるが、プロセスに合わせて調整されたAppは、画像情報に割り当てられた分類に合わせて調整された試料プロセス指針を与える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物増殖の検出、コロニーの計数及び/又は同定のためのシステムであって、
(a)微生物検体のデジタル画像と、
(b)前記デジタル画像の微生物検体についての所定の定量値と、
(c)前記デジタル画像の微生物検体について重要であると判断された生物の同定と、
を含むデータベースシステムと、
プロセッサ制御命令を有する1つ以上のプロセッサ可読媒体であって、前記プロセッサ制御命令はアプリケーションモジュールの離散集合を規定し、前記アプリケーションモジュールの離散集合は、
増殖培地のデジタル画像を前記デジタル画像における撮像点の集合から処理して、前記増殖培地中で起こる微生物増殖の確率を表す確率値を含む増殖インジケーターを生成するように構成された増殖検出子と、
前記増殖検出子から前記増殖培地のデジタル画像を処理するように構成された増殖定量子であって、前記デジタル画像から増殖レベルの定量を生成するように構成されている、増殖定量子と、
前記増殖定量子から前記デジタル画像を処理するように構成された仮同定子であって、前記データベースシステムのデジタル画像によるトレーニングに基づく前記デジタル画像の微生物検体の集合の名称インジケーターを生成するように構成されている、仮同定子と、
を含む、プロセッサ可読媒体と、
を含む、システム。
【請求項2】
前記増殖定量子は、軽度の増殖の確率、中程度の増殖の確率、及び重度の増殖の確率の1つ以上として前記増殖レベルの定量を生成するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記増殖レベルの定量は、0~1の範囲の確率の集合を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記確率の集合の合計は1である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記仮同定子は、前記名称インジケーターのそれぞれについて確率を生成することにより前記名称インジケーターを生成するように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
前記仮同定子は、前記生成された確率により前記名称インジケーターをランク付けするリストとして前記名称インジケーターを生成するように構成されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記仮同定子は、前記デジタル画像の増殖培地における複数の検出コロニー位置のそれぞれにリストを提供するように構成されている、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記アプリケーションモジュールの離散集合は純度検出子を更に含み、前記純度検出子は、少なくとも1つの所定の純度レベルに従って増殖培地の前記デジタル画像のカテゴリー分けを生成するように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記純度レベルの離散集合は、純粋レベル、優勢レベル、及び混合細菌叢レベルを含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記純度レベルの離散集合は、それぞれのレベルについての確率を含む、請求項8又は9に記載のシステム。
【請求項11】
前記純度レベル確率の離散集合のそれぞれの確率は、0~1の範囲である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記純度レベルの集合についての確率の合計は1に等しい、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記純度検出子は、単一の生物が検出可能な増殖に関わっている場合、純粋レベルの特性評価を生成する、請求項8~12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記純度検出子は、単一の生物が所定の割合範囲で検出可能な増殖に関わっている場合、優勢レベルの特性評価を生成する、請求項8~13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
前記所定の割合範囲は、検出増殖の90パーセント~99パーセントである、請求項14に記載のシステム。
【請求項16】
前記純度検出子は、単一の生物が前記所定の割合範囲未満で検出可能な増殖に関わっている場合、混合細菌叢レベルの特性評価を生成する、請求項8~15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記アプリケーションモジュールの離散集合は、キー生物同定子を更に含み、前記キー生物同定子は、前記データベースシステムのデジタル画像によるトレーニングに基づき、増殖培地の前記デジタル画像がインプット種要求のコロニーを含有する見込みを示す確率を生成するように構成されている、請求項1~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項18】
前記キー生物同定子は、前記データベースシステムのデジタル画像によりトレーニングされたルール集合にアクセスするように構成されており、前記ルール集合は、前記インプット種要求に関して検体を接種した増殖培地の前記デジタル画像を分類するように構成されている、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記アプリケーションモジュールの離散集合は、キー生物同定子を更に含み、前記キー生物同定子は、前記データベースシステムのデジタル画像によるトレーニングに基づき、増殖培地の前記デジタル画像がインプット種要求の集合のコロニーを含有する見込みを示す確率の集合を生成するように構成されている、請求項1~16のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項20】
前記キー生物同定子は、前記データベースシステムのデジタル画像によりトレーニングされた複数のルール集合にアクセスするように構成されており、前記複数のルール集合のそれぞれのルール集合は、前記インプット種要求の集合の1つの種に関して、増殖培地の前記デジタル画像を分類するように構成されている、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記アプリケーションモジュールの離散集合は、容量定量子を更に含み、前記容量定量子は、増殖培地の前記デジタル画像が容量範囲の集合についての増殖容量定量を含有する見込みを示す確率を生成するように構成されている、請求項1~20のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項22】
前記容量定量子は、前記容量範囲の集合のそれぞれの範囲についての確率を生成する、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記容量定量子は、前記容量範囲の集合のそれぞれの範囲についての確率を0~1の確率値として生成する、請求項22に記載のシステム。
【請求項24】
前記確率値の合計は1である、請求項23に記載のシステム。
【請求項25】
前記データベースシステムは、増殖培地上での微生物検体のデジタル画像を生成する撮像システムを含む、1つ以上の臨床研究所からデータを受け取るネットワークに接続されている、請求項1~24のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項26】
前記データベースシステムは、匿名化された患者人口統計データを更に含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項27】
前記データベースシステムは、微生物検体の前記デジタル画像に関する、画像取込み時間のデータ及び画像取込み条件のデータを更に含む、請求項1~26のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項28】
前記データベースシステムは、培地のタイプのデータを更に含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項29】
前記アプリケーションモジュールの離散集合は、増殖帯測定子を更に含み、前記増殖帯測定子は、増殖帯の1つ以上の測定値を生成するように構成されている、請求項1~28のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項30】
微生物増殖の検出、コロニーの計数及び/又は同定のためのシステムであって、
(a)微生物検体のデジタル画像と、(b)前記デジタル画像の微生物検体についての所定の定量値と、(c)前記デジタル画像の微生物検体について重要であると判断された生物の同定とを含むデータベースシステムと、
プロセッサ制御命令を有する1つ以上のプロセッサ可読媒体であって、前記プロセッサ制御命令はアプリケーションモジュールの離散集合を画定し、前記アプリケーションモジュールの離散集合は、
前記デジタル画像における撮像点の集合から増殖培地のデジタル画像を処理して、前記増殖培地中で起こる微生物増殖の確率を表す確率値を含む増殖インジケーターを生成するように構成された増殖検出子、
前記増殖検出子から前記増殖培地のデジタル画像を処理するように構成された増殖定量子であって、前記デジタル画像から増殖レベルの定量を生成するように構成されている、増殖定量子、
純度レベルの集合に従って増殖培地の前記デジタル画像のカテゴリー分けを生成するように構成された純度検出子、
前記データベースシステムのデジタル画像によるトレーニングに基づき、増殖培地の前記デジタル画像が、インプット種要求の集合のコロニーを含有する見込みを示す確率の集合を生成するように構成されたキー生物同定子、
増殖培地の前記デジタル画像が容量範囲の集合についての増殖容量定量を含有する見込みを示す確率を生成するように構成された容量定量子、及び、
前記増殖定量子から前記デジタル画像を処理するように構成された仮同定子であって、前記データベースシステムのデジタル画像によるトレーニングに基づく前記デジタル画像の微生物検体の集団の名称インジケーターを生成するように構成されている、仮同定子、
の内のいずれか3つ以上を含む、プロセッサ可読媒体と、
を含む、システム。
【請求項31】
生体試料を処理する方法であって、
生体試料を得ることと、
前記生体試料を栄養培地と組み合わせることと、
前記生体試料をインキュベートすることと、
前記インキュベートされた生体試料のデジタル画像を得ることと、
検体起源の情報、臨床試料基準、プロセス材料及びプロセス条件からなる群から選択される解析基準に従って前記デジタル画像を分類することと、
前記デジタル画像に割り当てられた前記解析基準の少なくとも1つを共有する、栄養培地上でインキュベートされた生体試料の履歴デジタル画像からデータを得ることと、
前記履歴デジタル画像データを用いて、ユーザーに前記生体試料を更に処理する命令を出力することと、
を含む、方法。
【請求項32】
前記検体起源の情報は、前記生体試料源についての地理的情報及び生体試料のタイプを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記プロセス材料は、栄養培地のタイプを含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
前記履歴デジタル画像データは、検体のタイプ、生物分類群、又は培養培地のタイプの少なくとも1つにより分類される、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記デジタル画像データを解析することと、前記解析データから前記デジタル画像が微生物増殖を反映しているかを判断することとを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記デジタル画像が微生物増殖を示さないという判断に応じて、微生物無増殖という指標を出力する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
微生物増殖の指標があるという判断に応じて、前記検体が無菌検体であるかを判断し、前記微生物増殖の指標に基づいた前記画像における微生物のコロニーの1つ以上の座標を同定する、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記検体が無菌であるという判断に応じて、前記検体が高値陽性であることを示し、前記検体を更に処理する命令を送る、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記更なる処理は、同定試験、抗生物質感受性試験、又はその両方からなる群から選択される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
コロニーの前記座標を、前記生体試料から前記コロニーをピッキングするピッキング機器に前記座標を伝達するモジュールに伝達することを更に含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記生体試料を前記ピッキング機器に移動させることと、前記生体試料から前記コロニーをピッキングすることとを更に含み、移動工程及びピッキング工程は前記モジュールにより制御される、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記検体が無菌ではないという判断に応じて、前記履歴画像データと前記画像データとを比較して、前記インキュベートされた生体試料の前記デジタル画像における微生物の特定の所定の種を同定する、請求項37に記載の方法。
【請求項43】
前記比較は、前記モジュールにより行われ、前記モジュールにより、前記微生物の特定の所定の種が前記画像データに存在すると判断される場合、前記モジュールが前記特定の所定の種の同定を報告する、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
更なるレビューのために前記検体にフラグを付けることを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記履歴画像データと、前記インキュベートされた生体試料のデジタル画像とを比較することと、微生物増殖の量を決定することとを更に含み、比較工程及び決定工程は、前記インキュベートされた生体試料のデジタル画像を得た撮像機器と通信するモジュールにおいて行われる、請求項37に記載の方法。
【請求項46】
前記インキュベートされた生体試料のデジタル画像を、3つの確率のベクトルとして増殖レベルを決定するモジュールに伝達することにより、前記微生物増殖が純粋なコロニー、優勢なコロニー、又は複雑なコロニーの1つであると判断することを更に含む、請求項37に記載の方法。
【請求項47】
前記コロニーが純粋であるという判断に応じて、
前記モジュールから、前記プレートが純粋であることを報告することと、
前記モジュールにより、前記増殖が所定の閾値の増殖を上回るかを判断することと、
を更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記モジュールにより、前記増殖が所定の閾値の増殖を上回ると判断される場合、
前記試料を高値陽性として同定することと、
ユーザーに前記高値陽性を警告することと、
前記高値陽性の座標を同定することと、
コロニーの前記座標を、前記生体試料から前記コロニーをピッキングするピッキング機器に前記座標を伝達するモジュールに伝達することと、
前記生体試料を前記ピッキング機器に移動させ、前記生体試料から前記コロニーをピッキングすることと、
なお、移動工程及びピッキング工程は前記モジュールにより制御される;
を更に含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記モジュールにより、前記増殖が前記所定の閾値を上回らないと判断される場合、前記モジュールは、前記モジュールに与えられる前記コロニーの画像と、前記モジュールによりアクセスされた前記履歴画像データとの比較に基づき、前記コロニーの仮同定をもたらし、前記モジュールは前記仮IDをユーザーに報告する更なる工程を行う、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記コロニーが優勢であるという判断に応じて、前記モジュールは、前記モジュールに与えられる前記コロニーの画像と、前記モジュールによりアクセスされた前記履歴画像データとの比較に基づき、前記コロニーの仮同定をもたらし、前記モジュールは前記仮IDをユーザーに報告する更なる工程を行う、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記モジュールにより、前記増殖が所定の閾値の増殖を上回るかを判断することを更に含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記モジュールにより、前記増殖が前記所定の閾値の増殖を上回ると判断される場合、 前記試料を高値陽性として同定することと、
ユーザーに前記高値陽性を警告することと、
前記高値陽性の座標を同定することと、
コロニーの前記座標を、前記生体試料から前記コロニーをピッキングするピッキング機器に前記座標を伝達するモジュールに伝達することと、
前記生体試料を前記ピッキング機器に移動させ、前記生体試料から前記コロニーをピッキングすることと、
なお、移動工程及びピッキング工程は前記モジュールにより制御される;
ユーザーに更なるレビューが必要であることを警告することと、
を更に含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記モジュールにより、前記増殖が前記所定の閾値を上回らないと判断される場合、前記モジュールは前記仮IDをユーザーに報告する更なる工程を行う、請求項51に記載の方法。
【請求項54】
前記コロニーが複雑であるという判断に応じて、
前記モジュールから、前記プレートが複雑であることを報告することと、
前記モジュールにより、前記増殖が所定の閾値の増殖を上回るかを判断することと、
を更に含む、請求項46に記載の方法。
【請求項55】
前記モジュールにより、前記増殖が前記所定の閾値の増殖を上回ると判断される場合、ユーザーに更なるレビューが必要であることを警告することを更に含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記モジュールにより、前記増殖が前記所定の閾値を上回らないと判断される場合、前記モジュールは、ユーザーに、前記複雑な試料が陽性増殖閾値を満たさない又は超えないことを報告する更なる工程を行う、請求項48に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2017年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/568,579号の出願日の利益を主張し、その開示内容は、引用することにより本明細書の一部をなす。
【背景技術】
【0002】
微生物増殖の検出、コロニーの計数及び/又は同定等のための培養プレートのデジタル撮像(digital imagery)への注目が増している。微生物の検出のためにプレートを撮像するシステム及び技法は、PCT公報である国際公開第2015/114121号、国際公開第2016/172527号、及び国際公開第2016/172532号に記載されている。これらは全体が引用することにより本明細書の一部をなす。かかる技法(本明細書では、Kiestraシステムとも呼ばれる)を用いることで、研究所の職員は、直接的な目視検査によりプレートを読み取る必要がなくなる。また、研究所のワークフロー及び意思決定の培養プレートのデジタル画像解析への移行は効率を良くすることもできる。
【0003】
撮像技術について大きな進展が見られるが、自動ワークフロー及び/又は自動診断プロセスをサポートするためにかかる撮像技術を拡大適用することが依然として求められている。これに関して、培養プレート画像の解釈(例えば、増殖の同定、種の同定、感受性試験、抗生物質感度解析等)を自動化し、自動解釈に基づき実施する次の工程を決定することができる技法を開発することが望まれている。しかしながら、検体のタイプ及び生物分類群が多岐にわたることを考慮すると、診断上の指標のための自動画像処理論理回路(例えば、ソフトウェア)の開発には、多くの時間がかかる場合がある。
【発明の概要】
【0004】
病原体の存在、それらの病原体の同定、並びに他の関連の解析及び評価について生体検体を評価するシステムが本明細書で開示される。本システムの目的は、解析の速度、解析の精度、及びプロセスの自動化である。かかるシステムは、通例、栄養培地上に配され、インキュベートされた検体のデジタル画像を取得し、微生物増殖の痕跡を確かめるものであり、かかる増殖が生体検体における病原体の存在の指標を与える。かかるシステムは、本明細書ではKiestraシステムと記載されており、インキュベートされた検体の1つ以上の画像を取得するためのカメラ及び照明等の機器、検体容器(例えば、接種されたプレート培地を含有するペトリ皿)のためのバーコードリーダー等を備える。
【0005】
かかるシステムは、1つ以上の顧客中心の(customer-centric)撮像アプリケーション(撮像関連のApp又はApp)と通信を行い、これにより制御されている。かかる撮像Appは、履歴検体画像のコレクションから導かれるデータを利用して、自動同定及び/又は疾患状態の診断のために新たな検体画像を解析するソフトウェアであり得る。このAppは、迅速な検体特性評価及び結果の報告のための臨床ツールを与えることができる。このAppは、臨床検体(臨床サイトからの)を、検体についての非患者識別事実(例えば、人口統計学的属性のような非患者識別検体起源情報)、プロセス条件(例えば、インキュベーション時間及び温度)、プロセス材料若しくは環境(例えば、栄養培地)、及び/又は検体についての非患者識別試験結果(病原体の無増殖、病原体の増殖又は他の形での陽性同定、同定された病原体の列挙)に結び付ける。この事実及び条件は、本明細書ではまとめて解析情報と称される。かかる解析情報をこのように分類することで、最も関連のある履歴処理情報だけを用いて、appを開発することができるようになる。そのため、開発されたappはそれぞれ、非常に限られた目的のために作成されており、検体分類要素がapp分類要素に対応する場合にのみ展開される。このデータは患者を識別する情報とは結び付いていない場合(すなわち、患者匿名化)に有益である。一実施の形態では、システムが検体情報及び或る特定の条件に応じた情報を自動的に匿名化する。匿名化は、非患者識別分類情報(例えば、検体が得られた地理的領域、検体のタイプ等)に結び付いたメタデータを提供することを含み、実際にこれにより、患者秘密情報を保持することができないシステム及び方法にこのデータを使用することが可能になる。本システムは、画像の時系列処理、分類/トレーニング及び試験診断/評価アルゴリズム、及び/又はエキスパートシステムをもたらすAppを含み得る。Appは、モジュールを含み得る。ここで、モジュールは、例えば画像メタデータ(メタデータは、本明細書に記載の分類としての機能を果たす)及びルールを用いる、特定の目的のための1つ以上のプロセス又はアルゴリズムであると理解され得る。場合によっては、複数のモジュールが1つのパッケージとして実装される場合もある。幾つかの実施の形態では、データをデータベースに保存することができ、このデータベースを用いて、Appの開発、Appのトレーニング、Appの認証、Appの試験等を行うことができる。
【0006】
このシステムは、ベストプラクティスを組み込み得る画像解析プロセスをもたらすことができ、関連の検体のタイプ及び自動ピッキングに対処するものである。
【0007】
価値のある撮像Appを市場に投入するまでの時間を大幅に短縮するために、マルチフォールド又はモジュールシステムを用いることができる。かかるマルチフォールドシステムは、下記のようなモジュールを含み得る:
a)有用性と開発タイムラインとの釣り合いが取れた、標的微生物を培養するのに用いられる特定の培地及び標的微生物の分類群と結び付いたベストプラクティスソリューション(Best-Practice solutions)を規定する。例えば、特定の培地又は分類群と結び付いた試験結果及び画像を組み合わせて使用して、同じ培地及び分類群で分類された新たな検体を評価するアプリケーションを開発する。このAppには、信頼性の高いアプリケーションを開発するのに十分な情報が必要となるが、appの開発が遅れるほどの情報は必要とされない。
b)既存のアルゴリズムを最大限に再使用するアルゴリズム開発ケイデンス(すなわち、ペース又は速度)を調節する。
c)多様な検体のタイプ、生物分類群及びベストプラクティス培地からの画像、及び関連のメタデータを連続生成する臨床コラボレーションサイトを確立する。すなわち、検体情報を入手し、トレーニングするために使用することができる、又は開発されたアプリケーションを更にトレーニングすることができる情報のデータベースを構築する。完全に分類された履歴検体情報のこのデータベースは、本明細書ではデータレイクと呼ばれる。
d)アルゴリズムのトレーニング及びバリデーション/臨床サブミッション(submission)に適用することができる規定の基準を有する画像のデータベースを生成する。データベースは、真理(定量、同定、結果の解釈)の連結マニュアル/標準解析による臨床検体の画像及び分類(患者の人口統計学的属性、撮像時間及び条件、培地のタイプ等の選択)を表す情報/データを含み得る。データベースインフラが、アルゴリズム開発、正式な検証と妥当性確認(V&V)、又は臨床サブミッションに適切なように個々にアクセスすることができる隔離データを提供する。このデータの生成により、特定の検体又は培地のタイプのためのAppのオンデマンドでの優先順位付け及び開発が可能になる。
e)コロニーの複雑度(すなわち、純粋なコロニー、優勢なコロニー、又は複雑なコロニー)を反映する分類をバケットする(buckets)非選択培地のための並びに同定及び姉妹コロニーのための戦略を採る。このデータは、例えば、既定の分類群(又は特定の培地のタイプに対する特定の特性(すなわち、BAPに対する溶血)を有する既定の分類群)に対する培地のタイプ(例えば、クロモジェニック培地(すなわち、CHROMagar))、又は画像及び試験結果を得るのに使用される条件及び試薬についての他の情報により定められる。
f)或る特定のAppを或る特定の撮像システム/機器だけに限定する(例えば、25mpカメラを使用する場合、或る特定のシステム能力がもたらされるが、他の撮像機器は他のシステム能力をもたらす)。また、Appの範囲を或る特定の狭く規定された状況(例えば、試料のタイプ、培地のタイプ、分類群のタイプ、カメラのタイプ)での使用に定めることと、規定された状況に対応するデータを用いるだけでAppを開発することとにより、より有用である可能性が高く、評価にappが用いられる検体にとって正確なAppが提供される。
【0008】
検体、培地及び生物がバリデートされ、規制上の認可を得たら、本明細書に記載されるAppを更に開発し、リファインすることができる。例えば、象限定量Appを、初めに咽頭スワブ及び創傷に対して実装し、より多くの検体が処理されたら、後で肛門周囲又は他の検体のタイプに対して実装することができる。Appのこの継続トレーニング/開発により、有用性が増大した新たな撮像Appのロバストなケイデンスがもたらされる。例えば、より多くの画像が評価されたら、Appは、プレート培養物の画像においてコロニーをバックグラウンドと区別する方法を「学習する」。画像情報を処理して、コロニーの画像に関連するピクセルをバックグラウンドの画像に関連するピクセルと区別することは、本明細書にて先に言及されたKiestraシステムに記載されている。
【0009】
また、市場に投入するまでの時間を減らし、リソースの利用を最大限にしながら、高価値のソフトウェアソリューションをもたらす開発システムが本明細書に記載されている。このシステムの重要なコンポーネントは、開発(アルゴリズムトレーニング)及びバリデーション(サブミッション準備)目的のためにメタデータとの関連により分類される臨床検体撮像情報を集めるために、撮像システム(例えば、Kiestraシステム)を実行する選択した臨床サイトに関与するコラボレーションプログラムを開始することを含み得る。このデータのコレクションは、自動アルゴリズムリファインメント、パフォーマンスの改善、及び開発時間の短縮を与えることができる。バリデーションは、データベースにおける隔離された画像コレクションを使用する。これらのデータは、更なるフィーチャーが実装されることで、再使用することもできる。しかしながら、この情報は、データ分類がApp分類/目的に対応する場合しか展開されない。このアプローチにより、相当な効率、App範囲内での柔軟性(すなわち、バージョニング)、及び高価値のリソースが生じる。
【0010】
非選択培地のために、分類バケットを作成し、それにより全ての培地のタイプでの全ての分類群の全ての姉妹コロニーを同定しようとするのではなく、集団の複雑性を特性評価して、培養物を無増殖、純粋、優勢、又は複雑/混合として同定する。姉妹コロニーの同定は、特に非CHROMagar培地では技術的に非常に難しく、時間がかかる。混合培養物では、通例、解釈するのに専門知識が必要であり、或る水準の自動画像解析を用いたとしても、確認及びリリース(release)にはレビューが必要となる。純粋、優勢、及び複雑/混合のカテゴリーを用いることで、殆どの検体を特性評価することができ、純粋又は優勢なコロニー集団を有する検体を高い信頼度で自動的に精密検査することができる。次いで、これらのコロニーを、ピッキングシステムによる自動ピッキングのためにAppにより選択することができる。このアプローチは主に、特定の病原体による/特定の病原体に対するそれぞれの検体のタイプ(例えば、唾液、創傷、スワブ等)の詳細(specifications)を個々に特性評価して規定する必要性を、撮像アルゴリズムを効率的に利用して、殆どの検体のタイプを特性評価することが可能になるより汎用の分類戦略にする。
【0011】
撮像Appの例を下記にまとめる。かかるアプリケーションは、
MRSAスクリーニング撮像App、
尿2.0撮像App、
迅速検出撮像App、及び、
象限定量撮像App、
を含み得る。
【0012】
例えば、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus))スクリーニング解析に応じて、下記のアクションが含まれ得る:(すなわち、陰性のMRSAスクリーニング結果に対して):i)耐性黄色ブドウ球菌には使用されない或る特定の抗生物質群による経験的処理、ii)患者の隔離又は特別な管理なし、iii)外科手術等の或る特定の続く医療工程を進めること、iv)或る特定の更なる診断試験の指示(ordering)、及びv)抗生物質感受性試験の判断のための有効である可能性がある或る特定の抗生物質群の選択の指導。本明細書に記載の方法に従って開発されたアプリケーションは、Appによって評価される検体と或る特定の所定の基準を共有する以前の検体の履歴解析に基づき、上記のアクションの幾つか又は全てをユーザーに指示することができる。
【0013】
迅速検出撮像Appによるアクションは、i)標準的技法よりも何時間も早く、感染を示す増殖の閾値レベルの検出を治療医に伝達することと、ii)増殖病原体の同定を(例えば、MALDI-tofを介して)迅速に決定する診断を開始することと、iii)標準的技法よりも相当に早く医師に病原体の同定を伝達することと、iv)抗微生物感受性の決定のための診断を開始することとともに、現行の技法よりも相当に早く抗生物質感受性プロファイルを伝達することとを含み得る。これらの目的は、以前の画像及びこの画像の解析結果を用いて、現在の画像の解析を知らせることにより達成される。以前の画像を分類して、現在の画像を評価するために用いるのに十分に洗練され(skilled)、信頼性が高いAppを開発しなければならない。Appによって行われた画像解析が微生物増殖の陽性検出をもたらす場合、一実施の形態では、Appが評価中に検体を受け取る分析器と通信し、更なる解析のためにピッキングされるべき検体上のコロニー(単数又は複数)を同定することができることに留意されたい。Appは、下流のプロセスを指示するか、又は下流の処理を制御することができる。かかる下流の処理は、i)1つ以上のピッキングしたコロニーの懸濁液を所定の緩衝液又は溶液へと調製することと、ii)上記懸濁された細胞懸濁液を所定の細胞濃度に調整することと、iii)上記細胞懸濁液を基板(例えば、MALDIプレート)にスポッティングすることと、iv)例えば、MALDIマトリクス溶液、抽出化学物質を含む1つ以上の試薬により上記スポットを覆うことと、v)様々な濃度の一連の抗生物質に対する感受性プロファイルの決定のために、上記細胞懸濁液の1つ以上のアリコートを抗微生物感受性プレートのウェルに分配させることと、vi)PCR、シークエンシング、又は他の分子診断試験による解析のために懸濁液に分配させることとを含む。代替的な実施の形態では、Appは後続の試料処理/解析を指示するが、制御しない。
【0014】
本明細書に記載の方法に従って開発されたAppを展開して、プロセスを制御し、検体を評価するために、関連のデータ及び解析を用いてAppを開発しなければならない。関連のデータ及び解析を得るために使用することができる方法及び装置は、後の撮像Appのトレーニング及びバリデーションのためにデータセットを構築するのに使用される、画像及び参照データを収集する臨床サイトを含む。図1を参照されたい。これは、通例、コラボレーション及びデータを同定、開始及び管理するリソースを含む。ソフトウェアツールは、臨床サイトからデータ及びメタデータを集める。技術的リソースは、研究所で与えられ、分類を生成し、通例の臨床精密検査では通常入手されないメタデータ、例えば画像処理によるメタデータとして割り当てる必要があり得る。
【0015】
デジタルカメラ(良好なメガピクセル解像度を有する従来のカメラ、例えば、5MP、25MP等である)を、初期増殖/無増殖に適したパフォーマンス及び仮同定(ID)のために実装することができる。例えば、接種プレートのデジタル画像を取り込む撮像モジュール又は機器により検出された直径5mm以上のコロニーについて、このデータを増殖/無増殖検出と組み合わせて、更なる処理に十分なコロニーサイズで増殖が起こるときを示すことができる。撮像機器自体が、本明細書の他の箇所で言及されたKiestraシステムに記載されるようなデジタル画像の解析を行うAppであってもよい。これらのシステム及び方法に従って、コロニーをバックグラウンドから区別して、この画像解析から、接種プレート上のコロニーの密度を決定し、これをAppに伝達して、Appが画像解析に応じた更なるアクションを決定する。次いで、この情報はAppにより使用され、画像からどのコロニーをピッキングするかを自動的に(オペレーターがプレートを読み取ることなく又はピッキングするコロニーを同定することなく)判断することができる。Appは特定のプレート環境に対して開発及び展開される。例えば、純粋なプレート(1つのコロニータイプ)及び優勢プレート(2つ以上のコロニータイプであるが、大部分は1つのコロニータイプ)は、更なる精密検査を決定する関連のルールを用いて純度プレートモジュールにより示される各コロニーのタイプを表すものであり得る。複雑であると判断されるプレートは、異なるApp(又は異なるルールを発動する(fires)App)により処理される。所定の数のコロニータイプをそれぞれ、自動ピッキングシステム/ロボットを伴い得るID/ASTモジュールでの自動同定(ID)及び抗生物質感受性試験(AST)精密検査のために指定することができる。
【0016】
製品開発コストを削減し、市場に投入するまでの時間を減らすために、ベストプラクティスサポートを採用することができる。特定の培地(下記)を用いて、プラットフォーム(例えば、BD Kiestraシステム)に対する最適なリカバリー及びパフォーマンスを得ることができる。
【0017】
このシステムは、研究所で行われるプレート培地の読取りの処理を伴い得る。プレート培地は、本明細書の他の箇所で記載されるように調製される。培地のタイプ及び試料の分類群は、検体情報と結び付いたメタデータを知らせる検体分類要素の例である。選択されたAppは、仮IDにプレート上での純粋又は優勢なコロニータイプのみのピッキング推奨を与えることができる。複数の臨床的に重要な分離株を有する検体はめったになく、複雑であることが多い。複雑であるとして同定された検体を、マニュアルレビュー及びアクショニングのために混合カテゴリーに分類することができる。
【0018】
特定のタイプの検体又はこの検体に含まれることが疑われる標的種に使用するように構成されたAppに固有のものではなく、より汎用のアルゴリズムの集合を設計することができる。これらのアルゴリズムツールは、本明細書では詳細に記載されていないが、当業者によって開発及び展開することができる。このアルゴリズムは、或る範囲の検体タイプを評価及び処理するように設計されたAppにおいて展開するためのプロセスとしてバリデートされる。かかるツールが特定の検体タイプに限定されない場合には、より多くのプレートをレビューするのに又は他のAppの構成要素として、このツールを用いることができる。
【0019】
このシステムは、より多くの検体処理データ(例えば、撮像データ)を得て、関連の分類を有するデータベースに加えることで、後に補うことができる能力全体を与えるツール集合を開発する。これらのツールは、プレートを評価し、検体のタイプとは独立した特定の結果をもたらす。検体及び患者の人口統計学的属性によるこれらの結果の編集物(compilation)をAppにより処理して、検体量の指標をもたらす。これにより実行が単純化され、ユーザーに或る水準の柔軟性を与えつつも、市場に投入するまでの時間が早くなる。Appを有効にする画像解析アルゴリズムのより汎用のツールボックス(分類メタデータ及びモジュールと呼ばれるルールとともに)の開発は、データベースにおいて分類された検体データを用いて、対象の検体についての決定を行う、人工知能アルゴリズム、例えばニューラルネットワーク、人工ニューラルネットワーク、又はディープラーニングアルゴリズムを展開することにより、急速に成熟又は最適化(例えば、特定の検体に対して)することができる。指数関数的戦略の一環として、画像の属性が何であるか、何のアルゴリズムを用いるかを「自動で」決定し、所望のモジュール能力を最良な形で与える人工知能を採用することができる。個々のモジュールがAppとして立ち上げるのに十分な価値を有していてもよく、又は複数のモジュールがAppにパッケージングされていてもよい。幾つかのバージョンでは、モジュールの集合を区別し、得られる検体情報及びその分類に基づき下記の検体解析を行うことができる:(a)増殖/無増殖、(b)半定量、(c)仮ID、(d)純粋、優勢、複雑、(e)抗生物質感度(Kirby-Bauer試験)、(f)姉妹コロニー位置決め。
【0020】
アプリケーション(App)の例としては、キーID、迅速検出、CHROMagar ID 2.0、象限定量、及び仮IDが挙げられ得る。これらは、下記のようにまとめることができる。
【0021】
キーIDは、任意の数のコロニーが存在する特定のプレート上での特定の種を同定するツールである。キーID appに特有の任意の数のコロニーは、純粋又は混合培養物にて指定される。例は、
1.MRSA II上でのMRSAスクリーニング、
2.BAP(血液寒天プレート)上でのA群β連鎖球菌、及び、
3.BAP上での肺炎連鎖球菌、
である。
【0022】
迅速検出Appは迅速な検出処理をもたらす。任意の読み取り点での増殖を、任意のプレート上での可能な限り早く検出される増殖のフラグとして使用することができる。ユーザーは、フラグの機能を果たす読み取り点を選択するが、より早い読み取り点は、信頼性が低くなり得るが、より迅速に結果が生じ、一方でより遅い読み取り点は、信頼性が高くなり得るが、検出により多くの時間がかかるという相反関係を認識している。行うアクションは、選択された読み取り点及び呼び出すルールによって決まる。早期検出は、4時間と早い段階で起こり得るが、6時間、8時間、又はそれより長いインキュベーション期間が企図される。特定の検体についてのインキュベーション時間は当業者によって容易に確かめられる。本明細書に記載のシステム及び方法は、任意の特定のインキュベーション時間に限定されない。迅速検出Appは、重要な検体の迅速陽性にとって有益である。
【0023】
例えば、BAPプレート上での増殖は8時間で検出される。ルールはこれらの結果を受け、検体のタイプがCSF(脳脊髄液)である場合には、CSFが通例無菌であることから、検体においてプレート上で増殖が見られたとAppが判断したら直ぐに研究所に警告する。この判断には、CSF検体が病原体に対して陽性であるという判断に応じて、Appが或る種の警告を発することが必要である。他の検体のタイプ、すなわち唾液については、ほぼ全ての培養物が正常細菌叢を有していることから、早期検出は殆ど役に立たない。これらの場合、このように分類された検体に対してルールは書き出されず、迅速検出に基づくAppによるアクションは起こらない。このため、プレートのタイプ及び検出のタイプによって、異なる自動プロセスが誘発され得る。
【0024】
別の実施の形態は、尿又は他の検体タイプを定量するCHROMagar ID Appである。このAppは分類された画像情報を得て、それによりAppがCHROMagarオリエンテーション上で純粋又は優勢なコロニーのタイプを仮同定することが可能になる。混合プレートも同定されるが、このAppは、複雑なプレートであるという判断に応じて異なるルールを発動し得る。ルールエンジンを用いて、検体の処理画像を幾つかのカテゴリーに分けることができる。或る特定のカテゴリーでは、結果の自動報告が可能である。これらのカテゴリーは本明細書の他の箇所で詳しく記載されている。
【0025】
象限定量及び仮ID appは、全ての陽性を評価して、それぞれを(1)無増殖、(2)純粋、(3)優勢、又は(4)複雑の1つとして分類するとともに、プレート上での全体量を評価するツールである。純粋又は優勢な分離株は、仮同定され、コロニーがピッキングのために同定される。この場合、全ての培養物を解析し、幾つかのカテゴリーに入れて、自動報告したり、レビューに送ったりする。相当の病原体を有するプレートは、顧客/臨床医の介入のないピッキングのために他のシステム(例えば、ピッキング又は試験)に送ることができる。図3の表は、言及されたプレート上で仮同定される標的生物のリストである。図4の表は、特定の検体のために共通して接種されたプレートのリストである(ベストプラクティス)。
【0026】
環境(例えば、図1)は、ソフトウェア開発ワークフローを提示し得る。この開発努力は、ワークフローを完了させ、図4の標的培地上での図3の生物群の検出を実装することに集中している。図2のフローチャートは、デジタル画像評価の解析ワークフローをサポートする1つ以上のAppのためのアルゴリズム及びソフトウェア開発の一般戦略を概説している。接種及びインキュベートされた培養プレートの画像は全て、図2に概説され、下記に記載されるモジュールにより評価する。各モジュールは特定の結果又は離散群の結果を評価し、主に検体のタイプとは独立している。しかしながら、検体と関連する(検体を分類するのに用いられる)メタデータは、更なる処理を指示することもできる(例えば、インキュベーション命令、撮像命令等)。かかるメタデータは、検体容器(すなわち、プレート又はペトリ皿)上のバーコードから読み取ることができる。結果が入手可能であれば、エキスパートシステムによる処理がこれらの結果を評価し、適切なアクションを推奨するか又は行う。例えば、Appにより、検体がASTによって評価されるべきであることが示されると、エキスパートシステムは、ASTパネルにガイダンスルールを与える。このガイダンスは、通例、規制又はガイダンス位置(すなわち、FDA又はCLSIによる)、及びAST試験プラットフォームの証明済みの能力に対する制限(すなわち、制限)を考慮に入れる。エキスパートシステムには、基本ルール集合が与えられる。たとえApp自体がエキスパートシステムでなくとも、Appが対象の検体の対象の画像について学習する情報に基づき、App自体がルールを発動することもできる。これらのルールは、それらの機関に特有のユーザーにより開発された編集済みの又は更なるルールであり得る。
【0027】
プレートが評価され、複数の結果が検体レベルで組み合わされると、別のルール集合は、自動報告、ユーザー、研究所情報システム(LIS)又は研究所情報管理システム(LIMS)の警告を誘導し、重要な分離株をワークリスト又はID/AST試験等のためのピッキングシステムに送る。
【0028】
検体のタイプとは独立して、培地上の生物を標的とすることにより、完全なシステムをより効率的かつ迅速に開発することができる。例えば、大腸菌は、大腸菌の検体源に関係なく、同じ属及び種であると考えることができる。幾つかの検体(すなわち、CSF及び他の無菌部位)に対する陽性が珍しく、そのため、臨床的に信頼性が高いAppを開発するのに十分な履歴試料処理/画像データがないことから、検体のタイプによっては幾つかのAppの規制上の承認が難しい場合がある。しかしながら、或る期間に亘って、多様なソース(すなわち、臨床試験、承認申請)から得られた画像及びこれらの画像による試験結果の恩恵を受けて、珍しい検体であってもAppを開発することができる。
【0029】
一実施の形態は、生体試料を処理する方法であって、生体試料を得る工程と、生体試料を栄養培地と組み合わせる工程と、生体試料をインキュベートする工程と、インキュベートされた生体試料のデジタル画像を得る工程と、検体起源の情報、臨床試料基準、プロセス材料及びプロセス条件を含む群から選択される解析基準に従ってデジタル画像を分類する工程と、デジタル画像に割り当てられた解析基準の少なくとも1つを共有する、栄養培地上でインキュベートされた生体試料の履歴デジタル画像からデータを得る工程と、履歴デジタル画像データを用いて、ユーザーに生体試料を更に処理する命令を出力する工程と、を含む、方法である。
【0030】
検体起源の情報は、生体試料源についての地理的情報及び生体試料のタイプを含む。プロセス材料は、栄養培地のタイプを含む。履歴デジタル画像データは、検体のタイプ、生物分類群、又は培養培地のタイプの少なくとも1つにより分類される。この方法は、デジタル画像データを解析することと、解析データからデジタル画像が微生物増殖を反映しているかを判断することとを更に含む。デジタル画像が微生物増殖を示さないという判断に応じて、この方法は、微生物無増殖という指標を出力する。微生物増殖の指標があるという判断に応じて、この方法は、検体が無菌検体であるかを判断し、微生物増殖の指標に基づく画像における微生物のコロニーの1つ以上の座標を同定する工程を行う。検体が無菌であるという判断に応じて、この方法は、検体が高値陽性であることを示し、検体を更に処理する命令を送る更なる工程を含む。更なる処理の例は、同定(ID)試験、抗生物質感受性試験、又はその両方を含む。コロニーと分類された画像における対象物の座標をモジュールに伝達し、このモジュールは、生体試料からコロニーをピッキングするピッキング機器にこれらの座標を転送する。モジュールは、本明細書に記載のApp又はAppの組合せであり得る。生体試料をピッキング機器に移動させ、生体試料からコロニーをピッキングする。ここで、移動工程及びピッキング工程がモジュールにより制御されるか、又はモジュールはかかる工程を行う命令を出す。検体が無菌ではないという判断に応じて、履歴画像データをこの画像データと比較して、インキュベートされた生体試料のデジタル画像における微生物の特定の所定の種を同定する。比較工程は、モジュールによって行われ、モジュールにより、微生物の特定の所定の種が画像データに存在すると判断されたら、モジュールは特定の所定の種の同定を報告する。かかる判断が為されたら、モジュールは更なるレビューのために検体をフラグ付けする。
【0031】
モジュールは、履歴画像データをインキュベートされた生体試料のデジタル画像と比較し、微生物増殖の量を決定する。ここで、比較工程及び決定工程は、インキュベートされた生体試料のデジタル画像を得た撮像機器と通信するモジュールにおいて行われる。この方法によれば、モジュール又はAppは、インキュベートされた生体試料のデジタル画像を、3つの確率のベクトルとして増殖レベルを決定するモジュールに伝達することにより、微生物増殖が純粋なコロニー、優勢なコロニー、又は複雑なコロニーの1つであるかを判断する。コロニーが純粋であるという判断に応じて、モジュールはプレートが純粋であることを報告する。純粋プレート上での増殖が所定の閾値の増殖を上回る場合、生体試料は高値陽性と同定され、モジュールは、この情報をシステムのユーザーに伝達する。撮像機器からコロニーの座標を受け取ったモジュールは、生体試料からコロニーをピッキングするピッキング機器に座標を伝達する。この方法はまた、生体試料をピッキング機器に移動させることと、生体試料からコロニーをピッキングすることとを含み得る。ここでは、移動工程及びピッキング工程は、モジュールによって制御されるか、又はモジュールによってリクエストされる若しくは要求される。モジュールにより増殖が所定の閾値を上回らないと判断されると、モジュールは、モジュールに与えられたコロニーの画像と、モジュールによりアクセスされた履歴画像データとの比較に基づき、コロニーの仮同定を与える。この判断に応じて、モジュールは、仮IDをユーザーに報告する更なる工程を行う。
【0032】
モジュールにより、増殖が所定の閾値を上回らないと判断されると、モジュールは、複雑な試料が陽性増殖閾値を満たさない又は上回らないことをユーザーに報告する更なる工程を行う。コロニーが優勢であるという判断に応じて、モジュールは、モジュールに与えられるコロニーの画像と、モジュールによりアクセスされた履歴画像データとの比較に基づき、コロニーの仮同定を与える。モジュールは、仮IDをユーザーに報告する更なる工程を行う。
【0033】
モジュールにより、増殖が所定の閾値増殖を上回ると判断されると、モジュールは、試料を高値陽性と同定する。この方法は、ユーザーに高値陽性を警告することも含む。この方法は、高値陽性の座標を同定することも含み得る。この方法は、生体試料からコロニーをピッキングするピッキング機器に座標を伝達するモジュールにコロニーの座標を伝達することも含み得る。この方法はまた、モジュールの制御、又は生体試料をピッキング機器に移動させる命令を出すことと、生体試料からコロニーをピッキングすることとを含み得る。ここで、移動工程及びピッキング工程は、モジュールにより制御される。この方法は、ユーザーに更なるレビューが必要であることを警告することも含み得る。モジュールにより、増殖が所定の閾値を上回らないと判断されると、モジュールは、仮IDをユーザーに報告する更なる工程を行う。コロニーが複雑であるという判断に応じて、この方法は、モジュールからプレートが複雑であることを報告することを更に含む。この方法は、モジュールにより、増殖が所定の閾値増殖を上回るかを判断することも含み得る。モジュールにより、増殖が所定の閾値増殖を上回ると判断されると、この方法は、ユーザーに更なるレビューが必要であることを警告することを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】生体画像処理アプリケーション開発のためのシステム環境例を示すブロック図である。
図2】本開示の態様による開発環境における例となるApp及びそれらのプロセスによる実装のフロー図の例である。
図3】仮同定を有する標的生物の例及び関連の培地を示す表である。
図4】関連の検体タイプとともに標的培地の例を示す表である。
図5図1の処理システム101等における本技術の幾つかのバージョンで実装され得るプロセスの概略図である。ここで、処理システムは、本明細書で述べられるデータレイクのデータ及び/又はアルゴリズムにアクセスして、トレーニングプロセス、バリデーションプロセス及び/又は臨床サブミッションプロセスを用いてAppを開発することができる。これらのプロセスは、データレイクから導かれた情報(例えば、更新データ及びアルゴリズム)も利用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本開示は、微生物増殖等の生体検体を同定及び解析するための撮像アプリケーションを開発する環境の機器及び方法を提供する。本明細書に記載の方法の多くは、完全に又は部分的に自動化された研究所ワークフローの一部として統合されているように、完全に又は部分的に自動化することができる。
【0036】
本件では、BD Kiestra(商標)システム等の生体撮像システムへの自動撮像能力の送達を促すシステムの設計及び実装の説明が与えられている。かかるシステムの撮像能力は、ハードウェア、ソフトウェア、解析アルゴリズム、及び臨床ルールの一式により可能となる。1つのかかる市販システムの例としては、適切なプラットフォームに基づき最適化及び標準化された画像を生成する、複数の照明配置を有する1つ以上のデジタルカメラ(例えば、4MP)が挙げられる。本明細書に記載のシステムは、微生物学的試料の撮像のために他の光学システムで実装することが可能である。このような商業的に入手可能なシステムは多く存在するが、本明細書では詳しく説明しない。一例は、BD Kiestra(商標)ReadAコンパクトインテリジェントインキュベーション及び撮像システムであり得る。Kiestra(商標)ReadAコンパクトは、プレートの自動撮像を可能にする内蔵カメラ及びプレート移動システムを備える自動インキュベーターである。ReadAコンパクトは、商業的に入手可能である。ReadAコンパクトは、インキュベーターと他の操作器具とを繋ぐ一体化したプレートインポートデバイス及びプレートエクスポートデバイスも備える。そのため、幾つかの実施形態では、1つ以上のAppによるデジタル画像の解析に応じて、Appは、命令を出し、Appによる評価中に関連の検体のインキュベーションを制御することができる。他のシステム例としては、PCT公報である国際公開第2015/114121号及び米国特許出願公開第2015/0299639号に記載されるものが挙げられ、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなす。かかる光学撮像プラットフォームは、当業者によく知られており、本明細書では詳しく説明しない。
【0037】
システムのための一連のAppは、ReadAコンパクト等において様々な所定の時間で生成された、殆どの検体からの画像の解析をもたらすことができる。このシステムは、無増殖及び/又は陰性プレートの自動リリースを含むこれらのプレートの下流のアクション、並びに限定的なID及びAST解析のためのコロニーの自動特性評価を可能にし得る。
【0038】
高レベルで、撮像解析ツール(撮像App)を展開して、研究所に相当の価値を与える様々な結果及び/又は使用可能な(actionable)臨床結果のコレクションを可能にし得る。これらのAppは、1つ以上の画像解析アルゴリズム(モジュール)、並びに特定の培地のタイプ及び/又は特定の検体に対してモジュールを適用する方法についての情報を与えるルール集合を利用する。或る特定のAppは、関連のエキスパートシステムも有し、このエキスパートシステムは、アクショニング及び結果の解釈のための推奨を知らせる、より基本的なAppの判断に対する更なるルール集合、通例規制/臨床ガイダンスを重ねる(overlay)。
【0039】
撮像Appの開発では、反復アプローチを利用することができる。データレイクは、検体情報取得、若しくは臨床研究所における通常の業務として処理された臨床検体の画像のいずれか、又はその両方を用いて開発される。アルゴリズムは、図2に示されるように、結論/命令/出力をモデリングするように開発され、これは、真理、及びAppにより評価される検体画像に関連する分類情報から得ることができる。Appの検証と妥当性確認(V&V)は、既定の画像のコレクションを、V&V解析のためにマークされた、データレイクからの或る特定のメタデータ要件とともに用いることにより行われる。次いで、Appに臨床研究(検体を処理してこれらの試料の画像を得ることと、Appを使用して検体の画像を評価することとを含む)を行うことで、Appが検証されるとともに、Appがトレーニングされる。臨床研究に特定の臨床サイトが使用されることは、臨床研究には必要とされない。
【0040】
しかしながら、図1に示されるような生体画像処理アプリケーション開発システム100を実装することで、幾つかのコンポーネントとともに指数関数的戦略を利用することができる。システム100は、下記の1つ以上を含む:
a)Appを可能にし、ニューラルネットワーク、人工ニューラルネットワーク、及び他のディープラーニングアルゴリズム等の人工知能アルゴリズムを適用することにより、迅速に成熟させるか、又は(例えば、検体のタイプに対して)最適化することができる汎用アルゴリズム及びモジュールを有する、1つ以上のプロセッサを備える処理システム101等のためのツールボックスアプリケーション集合。人工知能を実装することで、画像の属性が何であるか、何のアルゴリズムを用いるかを「自動で」決定し、所望のモジュール能力を最良な形で与えることができる。
b)本明細書に記載のAppの開発及び展開に重要なものは、「真理」(すなわち、コロニー定量、ID、結果解釈等の画像についての事実)の関連するマニュアル/標準解析による臨床検体の画像及び画像条件、並びに場合によっては患者人口統計データ(適切に匿名化した)を含む、開発されたデータベース102(本明細書ではデータレイクと表示される)である。これらの画像には、メタデータの形で分類情報が保持されていることから、関連の画像データのみが用いられて、特定のAppが開発される。データレイクは、任意にネットワークを介してデータをデータベースに供給することができる撮像システム104等を用いて、臨床研究所の協力により追加することができる。
【0041】
データレイクが保存される場所は、主に設計変更事項である。データレイクは、ローカルに又はクラウドに保存することができる。データレイク中のデータは、分割することができる。例えば、データレイク中のデータをデータのアクセス及び/又は使用方法に応じてセグメント化することができる。一実施形態では、データレイク中のデータの或るセグメントをアルゴリズムトレーニングのためのものとすることができ、別のセグメントをデータの検証又は妥当性確認に使用することができ、更に別のセグメントを臨床サブミッションに使用することができる。
【0042】
システムのデータベースは、これらの臨床画像の分類データ及び更にはリンクデータを保存及び提供することができ、これらのデータを、アルゴリズム開発、正式な検証と妥当性確認、又は臨床サブミッションのためにオンデマンドで必要に応じて個々に引き出すことができる。Appは、研究所プロトコル、培地のタイプ、撮像時間、定量スコア等を含む国際標準化のレベルで確立することができる。リソースが、臨床状況ではめったに見られない検体/生物/条件のために画像及び参照データ(検体及び/又はスパイク/人為的(contrived)試料)の生成を補足することができる。データ生成のためのこの先行型戦略により、特定の検体又は培地のタイプに対する特定のAppのほぼオンデマンドな優先順位付け及び開発が可能になる。このシステムアーキテクチャにより、新たなモジュールを既存の研究所サイトのソフトウェアに統合して、新たな撮像診断機能(App/モジュール/パッケージ)のリリースを容易にすることが可能になる。これは、既存の/これまでの撮像ソフトウェアシステムと新たなApp/モジュール/パッケージとの間のインターフェースを標準化することにより達成することができる。これに関して、App/モジュール/パッケージは、システムソフトウェア、例えば自動撮像システムのための(例えば、かかる試料/プレートをかかる自動研究所セル/機器等内で移動させるためのプレート/試料コンベヤー、インキュベーター、カメラ、ピッキング機及び/又は関連のロボティクスのいずれか1つ以上を制御する処理システムにおける)システムソフトウェアへのアドオンであり得る。病原体について陰性であると判断された或る特定の検体に既知の病原体を添加して、続いてインキュベートされた病原体添加検体の画像を本明細書に記載のように特性評価することができる。次いで、病原体添加検体の画像をAppのためのトレーニング集合として使用することができ、このAppを用いて、出現頻度の低い病原体を評価及び処理することができる。
【0043】
このアプローチは、優先順位付け及びApp開発のケイデンスに最大の柔軟性を与えることができる。また、Appパフォーマンス測定基準を早期に提供することで、Appの付加価値、ソリューションレベルでの相乗効果のより良好な理解を助け、より早く認識できるようになる。データレイクは、CCD(Corporate Clinical Development)基準のリスト(すなわち、技術及び医療情報)を満たす1つ以上の病院システム等を用いて生成することができる。実装は、データ、クエリを保存及び分類し、データベースを監査する能力;プログラム及びプロセスを規定する研究所プロトコル;臨床試験に常であり、通例の製品開発プロセスの終了時ではなく、データレイクの開発の一環として行われ得る、トレーニング、モニタリング、コンプライアンス、品質測定基準等をもたらす。このアプローチは、専用の臨床研究所リソースを実装して、或る特定のプレート結果を標準プロトコル外で判断し、画像をデータレイクに対する解析結果と結び付けることができる。或る特定の検体、プレートのタイプ、又は画像取得時間点を特別に用いて(run)、通常の/通例の研究所業務とは独立し得る特別なプロセスにおいてデータレイクを開発する必要がある。そのため、幾つかのバージョンでは、データレイクデータベースは、真理(例えば、定量、ID、結果の解釈)の連結マニュアル/標準解析による臨床検体の画像、及びその画像についての分類に関連するメタデータ(例えば、患者の人口統計学的属性、撮像の時間及び条件、培地のタイプ等の選択)を含み得る。
【0044】
アルゴリズム及びデータレイクの両方の確立は、或る特定の水準の標準化を含み得る。これはまた、任意の所与のAppがバリデートするもの、及び最終的に得ることができる解析/命令/出力を規定する。世界中の研究所で用いられる培地のタイプ、培地の供給元、及びインキュベーション時間が多様であることを考慮すると、この試みを開始するのに「ベストプラクティス」アプローチを使用することができる。適切なデータをデータレイクにストックすることにより追加の条件を後に加えることができる。培地×検体行列の例を図3にまとめる。図3の表は、12の培地タイプを含む。血液寒天、トリプチケースソイブロス(TSA)及びコロンビアは、1つの培地タイプとして一緒にグループ分けされることに留意されたい。XLDは、キシロースリジンデオキシコール酸寒天であり、SS寒天は、サルモネラ・シゲラ寒天であり、CNAは、コロンビアナリジクス酸寒天(CNA)であり、CLEDは、シスチン-ラクトース-電解質欠乏寒天である。挙げられた培地は、挙げられた培地上で同定可能であることが知られている微生物と同様に当業者に既知である。そのため、標準化は、データベース/データレイク/履歴画像情報を参照してデータベース開発及び画像解析のためにデータに適用される分類である、研究所プロトコル、培地のタイプ、撮像時間、ストリークパターン、定量スコア等を含み得る。これは、バリデーションの取り組みに焦点を当て、開発時間を最小限に抑え、研究所間の測定基準、データ共有等を可能にする。Appを開発するためのトレーニングデータ、バリデーションデータ、臨床サブミッションデータ等としてのデータレイクの使用は図5に示している。
【0045】
データベースの正確さを保証するために、データベースへのデータの追加は、数人で行われる画像の独立した人による画像解析、又は技術者によりマニュアルで行われるプレート解析を伴い得る。人による読取りを臨床研究所報告と比較することができる。場合によって、読取りが矛盾する際には、更なる画像レビューを伴っていてもよい。データベース入力は、画像関連データからの患者情報の匿名化を伴い得る。データエントリーのための画像のレビューは、純粋、優勢、複雑、及び無増殖に対するプレート上での増殖の人によるスコア付け、すなわち象限定量を伴い得る。
【0046】
ツールボックスのためのソフトウェアモジュール例
典型例では、データレイクは、研究所で判断される定量(例えば、無増殖、+、++、+++)に結び付いた培地プレート画像を含有し得る。データレイクは、検体の種類又はタイプにとって重要であると判断される生物の同定(ID)(例えば、訓練を受けた臨床微生物学者によって重要であると考えられるもの)も含有し得る。データレイクは、画像ベースのメタデータ、及び場合によっては患者人口統計情報も含有し得る。アルゴリズム開発を促すために、病原体として通常同定されない生物(すなわち、正常な細菌叢)の同定を要求することもできる。追加されたら、一部の画像を利用して、App開発に向けて適切なアルゴリズムをトレーニング及び試験する。
【0047】
高レベルでは、撮像解析ツールを展開することで、研究所に相当な価値を与える種々の結果及び/又は有用な臨床結果のコレクションを可能にする。これらのモジュール(Mod)は、1つ以上の画像解析アルゴリズムと、特定の培地タイプ及び特定の検体でモジュールを適用する方法についての情報を与えるルール集合とで構成される。スクリーニング-MRSAのように、Appとして実装することができるモジュールもあれば、多くの場合で他のモジュールとパッケージ化され、相乗能力をもたらすことができるモジュールもある(例えば、象限定量及び純度は、Appとしてパッケージ化されることが多い)。幾つかのAppは、アクショニング及び結果(例えば、本明細書に記載のKB阻止帯)の解釈のための推奨を知らせる、更なるルール集合、通例規制/臨床ガイダンスを重ねる関連のエキスパートシステムも有し得る。技術的及び臨床的検討事項に基づき、1つ以上のAppを、種々の臨床研究所の必要性に応じて、ローンチパッケージのコンポーネントとしてまとめることもできる。幾つかのAppはバージョンを有することも予測される(例えば、FDAの認可を得たUCA V1.8はUCA 2.0となる)。
【0048】
アルゴリズム及びモジュール(相乗アルゴリズムのコレクション)の幾つかの例は、汎用であり(概して、検体、病原体、培地に亘って働く)、下記でまとめられ、図2に示されるプロセスに関連して考慮することができる。先に述べられたように、様々なアプリケーションの機能の分類は、様々な種及び培地のための検出アプリケーションの開発をもたらすのを助ける。
【0049】
1.増殖App/モジュール1010A
増殖App1010(図2を参照されたい)は、このプレート上でこの特定のインキュベート時間にて検出することができる何らかの増殖はあるか?という単純な質問に対する回答に関するものであり得る。この質問に対する回答は、0~1の範囲の増殖確率である。増殖Appは、ディスペンス量又はストリーキングパターンとは独立して、任意の培地を標的とするモジュールであり得る。増殖を予め定められた撮像点からできる限り早く検出することができる。ルールは、検体タイプ及び/又は培地に基づき警告を出すかを規定する。幾つかのバージョンでは、必要に応じて、グラム染色結果をApp/モジュールに統合することもできる。場合によっては、これは早期検出又は早期増殖App/モジュールとして実装していてもよい。増殖を予め定められた撮像点からできる限り早く(例えば、4時間~14時間又はそれ以上の検出ウィンドウ)検出することができる。ルールは、検体タイプ及び/又は培地に基づき警告を出すかを規定する。幾つかのバージョンでは、必要に応じて、グラム染色結果をこれに統合することもできる。
【0050】
2.キーID App/モジュール1020
キーIdモジュール1020(図2を参照されたい)は、所与の培地上で増殖する可能性のある種を同定することを目的とし得る。あらゆる要求されたキーID生物について、このモジュールは、確率が低減する順でキーID当たりのコロニー位置のリスト(確率を含む)を提供することができる。次いで、これらのコロニーをマニュアルで、又は自動ピッキングシステムによりピッキングすることができる。
【0051】
幾つかのバージョンでは、システムは、病原体に基づき開発されたスクリーニング及び重要な病原体モジュール(複数の場合もある)を含み得る。これらのモジュールは、特定の病原体、病原体群、又は特定の性質を有する病原体の検出をもたらすことができる。スクリーニングAppを実装して、CHROMagar上での特定の病原体の同定を可能にし、患者の管理及び病原体の特性評価、例えば、MRSA、ESBL、CPE、VRE等に使用することができる。CHROMagarでは、病原体のコレクションを仮同定、すなわちグラム陰性細菌(GN)及びグラム陽性細菌(GP)についてはCHROMagarオリエンテーションすることが可能である。検体に対して病原体特異的な培地を使用することができる。例えば糞便ではサルモネラ・シゲラのためのSS培地を使用することができる。或る特定の生物を仮同定するか、又は例えば、血液寒天上の溶血特性、又は特定培地上の固有の形態特性に基づきより汎用な培地上でフラグ付けすることができる。病原体×培地能力とともにモジュールの考えられるコレクションを図4の表にまとめる。
【0052】
3.象限定量App/モジュール1030
ストリーキングパターン、例えば、BD Kiestra(商標) InoqulA(商標)象限ストリーキングパターンに基づき、増殖が検出された場合、この象限定量モジュール1030(図2を参照されたい)は、軽度、中程度、又は重度の増殖レベルをもたらす。BD Kiestra(商標) InoqulA(商標)は、液体及び非液体の細菌学検体の両方の処理を自動化することで、流線型ワークフローを助け、標準化プロセスを可能にし、固体増殖培地の接種のために一貫して高品質のストリーキングを保証することができる。増殖レベルは、[0,1]の範囲であり、合計で1である3つの確率(軽度、中程度、又は重度)のベクトルとして返される。例えば、このモジュールは、全てのプレートを評価して、無増殖又は種々の量の増殖(例えば、+、++、+++)が存在するか、また任意の増殖が純粋、優勢、又は複雑であるかを評価することができる。無増殖との判断により、任意で自動リリース又はバッチリリースを起こすことができる。場合によっては、増殖定量(例えば、+、++、+++)は、任意の特定の象限における3つ以上のコロニーにより判断することができる。
【0053】
増殖タイプに関して、画像/プレートを、純粋、優勢、及び複雑と特性評価することができる。これは、各タイプの単離コロニーの最小数に基づくものであり得る。例えば、優勢増殖は、3種以上の(又はちょうど2種の)コロニータイプが存在し得て、1つのタイプが他のタイプ(複数の場合もある)よりも多い(例えば、10倍)。複雑は、3種以上のコロニータイプが存在し得て、優勢分離株がないか、又は分離株が図3の例のような仮ID表内で同定不可能である。複雑なプレートは、自動でフラグ付けされ/マニュアル解釈に通すことができる。純粋及び優勢なプレートタイプは、更なる精密検査(例えば、ピッキング、ID、及び/又はAST)を導くルールを用いて、示される各コロニータイプを表すため等に更なる自動処理に自動的に通すことができる。
【0054】
例えば、コロニー形成単位(CFU)/mLの定量App/モジュール1040(図2を参照されたい)を実装することができる。InoqulA(商標)ストリーキングパターン#4(モノプレート)又は#6(バイプレート)に基づき、このモジュールは、プレート上で1未満、1~9、10~99、100~999、1000以上のCFU/培地の増殖レベルを与えることができる。増殖レベルは、[0,1]の範囲であり、合計で1である5つの確率のベクトルとして返され得る。同等のCFU/ml(バケット)の単位を得るためには、ディスペンス量を考慮する必要があり得る。
【0055】
概して、定量モジュールは、幾つかのバージョンでは、増殖が単一の増殖生物、優勢な生物、又は(複数の)生物の混合物によるものであるかを判断することができる。純粋な生物は、観察可能/撮像可能な増殖の99%以上を占める生物であるとみなすことができる。優勢な生物は、観察可能/撮像可能な増殖の(90%,99%)を占める生物であり得る。純度レベルは、[0,1]の範囲であり、合計で1である確率(例えば、純粋、優勢、複雑という3つの確率)のベクトルとして返され得る。純粋又は優勢な増殖の場合、主な生物について最大5つのコロニー位置が確率の減少に際して与えられる。
【0056】
所定の定量に対する応答の例は下記のとおりである:
1)プレート培地上の検体の画像が、所定の閾値(100000CFU/mL)を超える混合細菌叢を有すると判断される。この判断に対するAppの応答は、プレートが閾値量を超える混合細菌叢を有することから、このプレートを複雑なプレートとしてフラグ付けし、プレートのマニュアルレビューを推奨することである。かかる判断は、培地又は分類群に関しては行われないため、これは適用性の広いAppであり、プレート上の特定の培地又は分類群に対する展開に限定されない。
2)画像が評価され、24時間では増殖を示さないと判断される。検体が重要な検体に分類されたら、Appは、無増殖の予備報告を出し、更に24時間のプレートの再インキュベートの推奨又は制御のいずれかを行う。続く画像が48時間で増殖を検出しなければ、Appは、ユーザーに48時間後に無増殖という最終報告を送る。Appは、プレート廃棄の推奨又は制御のいずれかを行う。
3)プレート培地上での検体の画像が、所定の閾値(100000CFU/mL)を超える純粋増殖、及び0.5mmを上回るコロニーサイズを有すると判断される。Appの応答は、ID及びAST試験のためのコロニーのピッキングの命令を出すか、又はピッキングを制御することである。Appは、技術者によるレビューのために検体をフラグ付けし、検体に関連する医師に100000CFU/mLを超えているという報告を送る。
4)検体の画像が、AppによりMRSAの存在を示すと判断される。Appは、MRSAが検出されたという報告を送り、検体を陽性MRSAワークリストに加える。Appにより、MRSAコロニーのサイズが閾値を上回る(例えば、0.5mmより大きい)と判断されたら、Appは、ID及びAST試験のために試料を送る命令を出すか、又は送るのを制御する。本明細書の他の箇所で述べられるように、ID及びASTは、それぞれ検体の精密検査及び評価を有する。そのため、ID及びASTシステム及び機器は、通例、インキュベーション/撮像機器(例えば、Kiestra(商標) ReadAコンパクト)の下流にある。
5)ESBLに分類される検体の画像が、無増殖を示すと判断される。Appは、ESBL分離株が検出されなかったという最終報告を出し、プレートの廃棄の命令を出すか、又はプレートの廃棄を制御する。
6)唾液に分類された検体の画像が閾値量を上回る混合細菌叢(ひいては、複雑なプレート)を有すると同定される。Appによりプレートが複雑であると判断されたら、Appは技術者にプレートをレビューする命令を出す。マニュアルレビューへの要求を誘導する、混合細菌叢に対する種々の閾値は、検体分類に応じて展開され得ることに留意されたい。
7)血液寒天上で重要であると分類された検体の画像が、増殖を示すと判断される。このような場合、重要な検体Appが発動し、検体に関連する医師に警告を送り、検体が重要な試料ワークリストに加えられる。Appにより、コロニーが閾値サイズより大きい(すなわち、0.5mmより大きい)と判断され、検体がMacConkey寒天上に配されていると分類されたら、Appにより、検体がMALDI及びグラム陰性ASTのために自動ピッキングに送られる。Appはまた、グラム陰性検体が単離されていることを示す報告を送る。
8)検体の画像が、100000CFU/mLを超えるコロニー数を示し、画像を、純粋であるととともに、所定の閾値を超える(例えば、0.5mmより大きい)コロニーサイズを有すると分類する。これに応じて、Appにより、ASTのために検体が自動ピッキングされ、検体が技術者による陽性レビューリストに加えられ、試料から100000CFU/mLを超えるコロニーが検出されたことを示す報告が試料に関連する医師に送られる。さらに、AST結果により、ピッキングされたコロニーがカルバペネム耐性であることが示されたら、Appにより、分子検証試験が行われる。
9)検体の画像が重度の優勢増殖を有すると判断される。これに応じて、Appにより、増殖が自動ピッキングされ、ピッキングされた試料にてMALDIを行うために懸濁液が調製される。MALDIにより、コロニーが大腸菌と同定されたら、Appにより、試料がグラム陰性AST(MALDI懸濁液又はコロニーの新たなピッキングのいずれかを用いる)のために更に評価される。
【0057】
幾つかのバージョンでは、増殖検出を2つのモジュールとして実装することができ、ここで、1つのモジュールは、プレートを評価し、増殖/無増殖を判断するものであり、もう1つのモジュールは、任意の特定の象限において3つ以上のコロニーで増殖量(+、++、+++)を評価するものである。例えば、第1のモジュールは、重要な、通常無菌の検体の画像を評価する。この評価により、所定の時間点で増殖が示され、コロニーサイズが所定の閾値サイズよりも大きいと判断されると、Appは、代表的なコロニーの座標を同定し、同定されたコロニーを自動ピッキングする機器にプレートを移動させる命令を撮像機器(例えば、ReadA)に出す。ピッキングされたコロニーは溶液中に再懸濁し、例えば、分子診断機器又は試験(例えば、PCR、シークエンシング)における更なる試験のために所定の密度にする。
【0058】
4.仮ID App/モジュール1050
純粋又は優勢な増殖の場合、仮IDモジュール1050(図2を参照されたい)は、データレイクによるトレーニングに基づき、同定アルゴリズム集合を用いて所与の培地上で増殖する可能性がある主な生物を同定することができる。このモジュールは、最高ランク(例えば、確率)の生物(又は生物群)の名称及びこの同定についての最高から最低までの確率でランク付けされた最大5つのコロニー位置を提供/出力し得る。これらのアルゴリズムにより、特定の培地タイプ上での特定の種の同定が可能となり、ここでは、任意の数のコロニーが存在し、臨床的に重要であるとみなされる。
【0059】
例えば、培地及びコロニー特性(identities)は、図3の表に示されるものであり得る。これらのコロニーの精密検査を行うルールがモジュールに含まれ得る。ID Appの具体例である尿培養物App(UCA)及びChrom ID Appにより、培地が要求するこれらの生物についての尿からのオリエンテーションCHROMagar上での仮IDが可能となり得る。ルールにより、自動報告/自動リリース(又はバッチ)を行う能力、及び下流の精密検査(例えば、自動ピッキング、試験等)が適用される。場合によっては、ルールにより、高値陽性が判断され、迅速にレビューし、ワークリストによる更なるプロセス又は自動ピッキング等に向かわせるべきプレートがフラグ付けされ得る。
【0060】
4.1 純度プレートApp/モジュール
幾つかのバージョンでは、システムは、純度プレートモジュールを実装することができる。純粋、優勢及び複雑なプレートには、それぞれ最低限の数の単離コロニーが必要とされ得る。優勢増殖は、通例、3種以上のコロニータイプを有し、1つのコロニータイプが、他のコロニータイプの10倍より多い。複雑タイプは、通例、3種以上のコロニータイプを有し、優勢分離株がないか、又は分離株が同定不可能である(下記の仮ID表)。複雑プレートは通例、マニュアル解釈される。そのため、モジュールは、プレートが純粋、優勢(僅かに混合していてもよい)及び/又は複雑であるかに従って、プレート画像を分類することができる。
【0061】
4.2 自動選択ID/ASTモジュール
純粋及び優勢プレートは、上記の例で示されるように更なる精密検査を導く関連のルールを用いて、純度プレートModにより示される各コロニータイプを表すことができる。所定数の各コロニータイプを自動ピッキングシステム/ロボットを備え得るID/ASTモジュールでの自動同定(ID)及びAST精密検査に指定することができる。
【0062】
5.Kirby-Bauer(KB)阻止帯直径測定Appモジュール
幾つかの実施形態は、任意の測定Appを用いることができる。かかるAppは、既存の撮像能力及びASTエキスパートシステムを利用することで、阻止帯測定をもたらすことができる。任意に、これらの測定は、エキスパートシステムと結び付いて、解釈をもたらすことができる。このAppのバージョンでは、特定の薬物/生物の組合せ及び陽性血液培養物から直接プレーティングされた培地上での阻止帯について早期阻止帯測定の機会もある。かかるアルゴリズムは、メタデータ及び/又はデータレイクの画像に基づき得る。
【0063】
幾つかのバージョンでは、このAppは、既存の撮像能力及びASTエキスパートシステムを利用して、阻止帯の測定及びAbxディスク同定をもたらす。任意に、これらの測定は、エキスパートシステムと結び付いて、患者から単離された病原体についての抗生物質感受性プロファイルに対するガイダンス及び処理/応答に対するガイダンスを与えることができる。幾つかのバージョンでは、このAppの実装は、特定の薬物/生物の組合せ及び陽性血液培養物から直接プレーティングされた培地上での阻止帯についての早期阻止帯測定をもたらし得る。幾つかのAppは、エキスパートシステム(解釈)を含み得て、適切にストック、モニタリング、監査されるデータレイクとともに、必要とされるメタデータ及び画像を用いて、大幅に促進することができる。
【0064】
システム100は、上記の撮像関連のモジュール/Appの任意の1つ以上を含み得るが、幾つかのバージョンでは、モジュールの機能の特定のセグメント化が、下記のモジュール/Appの離散集合によって実装され得る:(a)象限定量、(b)無増殖の検出、(c)純度プレート:#コロニータイプ(例えば、純粋、優勢、複雑)、(d)スクリーニング(例えば、CHROMagar、すなわちMRSA)、(e)重要な病原体、(f)初期増殖検出、(g)自動選択ID/AST、及び(h)阻止帯測定Kirby-Bauer。
【0065】
撮像App及びローンチパッケージ
システム100は、アルゴリズム/モジュール/ルールの組合せ、データレイク、及びデータの所定のサブセットを抽出する能力をもたらすことで、アルゴリズムを迅速に成熟させ、Appを開発するオンデマンド能力を可能にし得る。例としては、Appは、検体のタイプに基づき開発することができ、Appのコレクションによって実装することができる。Appのコレクションを実装する戦略は、多くの因子:ソフトウェアローンチケイデンスのサポート;個々のApp対一体化Appの価値;データレイクにおける或る特定のアルゴリズム又は検体/プレート/生物のタイプの利用可能性等により影響を受ける。
【0066】
下記の表に関連して例を考慮することができる:
【0067】
【表1】
【0068】
この検体に基づく例では、一連の5つの異なるモジュールは、1つの検体のタイプに関する。特定の検体タイプに対してバリデートされたAppは、機能をパッケージする方法の1つであるが、指数関数的アプローチにより、他の選択肢も可能になる。例えば、サーベイランスAppにより、特定の標的生物(MRSA、連鎖球菌、シゲラ)によるローンチが可能になり、定量Appは、培地タイプ(検体と独立した血液寒天上での試料の量)等によりパッケージングされ得る。しかしながら、この意味では、或る特定のAppは、或る特定の検体に対して最小限の価値(すなわち、高い正常細菌叢レベルを考慮して、唾液を含む非選択培地上での試料の量)を有するであろう。Appは、評価中の検体が得られた地理的領域に限定される特定のルール及び特定の機能を有する領域により定められ得ることに留意されたい。表1に、特に米国(US)及び欧州(EU)に対する臨床要件に特有の機能を同定する。
【0069】
そのため、考えられるAppは、2つの高レベルバケットにセグメント化され得る。第1のバケットコレクションは、スクリーニング及びキー同定Appであると考えることができる。かかるAppは通例、CHOMagar上での特定の生物、又は例えば血液寒天上での高値病原体を標的とする。これらはそれぞれ、離散しており、他のApp又は検体タイプへの影響を最小限にしながら開発のために優先順位を付け、所望に応じて個々に起動することができる。同様に、Kirby-Bauer阻止帯Appは、一般的に次世代App(「Next Gen App」)とは独立しており、次世代Appは、独立して優先順位を付け得る関連アルゴリズムを有する。さらに、新たなCHROMagar(すなわち、バンコマイシン耐性エンテロコッカス(VRE))が利用可能になれば、適切な検体を用いて、データレイクに追加して、このリストに加えることができる。標的分離株が比較的低頻度であれば、データレイクに、人為的(スパイク検体)試料が補足され得る。スクリーニング及びキーID Appの更なる例は、下記の表に示す。
【0070】
【表2】


【0071】
表2から、Appは極めて特異的であり、出力が検体分類(すなわち、検体のタイプ、米国領域又は欧州領域等)に依存し得ることを観察することができる。表2は、高いレベルで、Appのトレーニングに使用されるデータのタイプも示している。
【0072】
Appの第2のバケットコレクションは、より汎用のアルゴリズムを使用し、幾つかの基準により、ローンチのために優先順位を付け、グループ分けすることができる。これらのAppの例の概要を下記の表3に与える。基本的に、表3の各セルはAppを表す。同じ数値を共有する下記の表のセル同士は、その検体のタイプに適切な能力であり、共有したセルの数値は、共通のモジュールにおいて共に合理的にパッケージングされる。このモデルでは、8個の追加のローンチパッケージ/モジュールが存在する。
【0073】
【表3】
【0074】
下記の表を参照して、撮像モジュール例を検討することができる。
【0075】
【表4】
【0076】
EUCASTは、抗微生物感受性試験に対する欧州委員会(European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing)である。検体の評価及びプロセス制御のための1つ以上のAppに統合されたプロセスの一例では、BD Kiestra(商標) InoqulAを用いて、検体をプレート培地上に接種する。バーコードを介してメタデータの一部としてトラッキングされる所定のパターンを用いて、検体を培地上にストリークする。ストリークされた試料をBD Kiestra(商標) ReadAコンパクトへと運び、そこで試料をインキュベートし、Appにより定められた時点で撮像する。指定の時間にてReadAにより得られた画像をAppにより解析し、プレート上の検体が純粋であるかを判断する。判断結果に基づき、検体の更なる精密検査を行う。画像を評価して、選択されたコロニーの座標を同定する。Appは、これらの座標を機器(又は技術者)に送ることができる。Appは、コロニーをピッキングする機器へと検体を送る命令を出すことができる。Appは、コロニーのピッキング、及び病原体のIDを行う別のプラットフォームへのピッキングされたコロニーの運搬を更に調整又は制御することができる。一例では、IDはMALDIにより行われる。本明細書の他の箇所に記載されるように、試料は、ピッキングされた試料を懸濁液に入れ、MALDIプレートに懸濁液を接種することにより、MALDIにより評価される。Appは、コロニー懸濁液のBD Kiestra(商標) InoqulAへの移動も調整又は制御することができる。ここで、「散布パターン」を用いて、懸濁液を別のタイプの培養培地(例えば、Mueller Hinton)上に接種した後、AST試験機器に移すことができ、そこで、所定の抗生物質ディスク(例えば、BD BBL(商標) Sensi-Discs(商標))を培養物上に置く。次いで、接種検体と抗生物質ディスクとを有するプレートをAppの調整及び制御下でReadAコンパクトに送る。ReadAは、画像を得て、それらの画像をAppに提供し、得られた抗生物質ディスク阻止帯の解析及び結果の解釈のために、Appからエキスパートシステムへとその結果を送る。次いで、エキスパートシステムは解析の結果を臨床研究所のスタッフに送る。
【0077】
本明細書において本発明は特定の実施形態を参照しながら説明されてきたが、これらの実施形態は本発明の原理及び適用例の例示にすぎないことは理解されたい。それゆえ、添付の特許請求の範囲によって規定されるような本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態に数多くの変更を加えることができること、及び他の構成を考案することができることは理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-09-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体試料を処理する方法であって、
生体試料を得ることと、
前記生体試料を栄養培地と組み合わせることと、
前記生体試料をインキュベートすることと、
前記インキュベートされた生体試料のデジタル画像を得ることと、
検体起源の情報、臨床試料基準、プロセス材料及びプロセス条件からなる群から選択される解析基準に従って前記デジタル画像を分類することと、
前記デジタル画像に割り当てられた前記解析基準の少なくとも1つを共有する、栄養培地上でインキュベートされた生体試料の履歴デジタル画像からデータを得ることと、
前記履歴デジタル画像データを用いて、ユーザーに前記生体試料を更に処理する命令を出力することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記検体起源の情報は、前記生体試料源についての地理的情報及び生体試料のタイプを含む、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記プロセス材料は、栄養培地のタイプを含む、請求項に記載の方法。
【請求項4】
前記履歴デジタル画像データは、検体のタイプ、生物分類群、又は培養培地のタイプの少なくとも1つにより分類される、請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記デジタル画像データを解析することと、前記解析データから前記デジタル画像が微生物増殖を反映しているかを判断することとを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記デジタル画像が微生物増殖を示さないという判断に応じて、微生物無増殖という指標を出力する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
微生物増殖の指標があるという判断に応じて、前記検体が無菌検体であるかを判断し、前記微生物増殖の指標に基づいた前記画像における微生物のコロニーの1つ以上の座標を同定する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記検体が無菌であるという判断に応じて、前記検体が高値陽性であることを示し、前記検体を更に処理する命令を送る、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記更なる処理は、同定試験、抗生物質感受性試験、又はその両方からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
コロニーの前記座標を、前記生体試料から前記コロニーをピッキングするピッキング機器に前記座標を伝達するモジュールに伝達することを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項11】
前記生体試料を前記ピッキング機器に移動させることと、前記生体試料から前記コロニーをピッキングすることとを更に含み、移動工程及びピッキング工程は前記モジュールにより制御される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記検体が無菌ではないという判断に応じて、前記履歴画像データと前記画像データとを比較して、前記インキュベートされた生体試料の前記デジタル画像における微生物の特定の所定の種を同定する、請求項に記載の方法。
【請求項13】
前記比較は、前記モジュールにより行われ、前記モジュールにより、前記微生物の特定の所定の種が前記画像データに存在すると判断される場合、前記モジュールが前記特定の所定の種の同定を報告する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
更なるレビューのために前記検体にフラグを付けることを更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記履歴画像データと、前記インキュベートされた生体試料のデジタル画像とを比較することと、微生物増殖の量を決定することとを更に含み、比較工程及び決定工程は、前記インキュベートされた生体試料のデジタル画像を得た撮像機器と通信するモジュールにおいて行われる、請求項に記載の方法。
【請求項16】
前記インキュベートされた生体試料のデジタル画像を、3つの確率のベクトルとして増殖レベルを決定するモジュールに伝達することにより、前記微生物増殖が純粋なコロニー、優勢なコロニー、又は複雑なコロニーの1つであると判断することを更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項17】
前記コロニーが純粋であるという判断に応じて、
前記モジュールから、前記プレートが純粋であることを報告することと、
前記モジュールにより、前記増殖が所定の閾値の増殖を上回るかを判断することと、
を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記モジュールにより、前記増殖が所定の閾値の増殖を上回ると判断される場合、
前記試料を高値陽性として同定することと、
ユーザーに前記高値陽性を警告することと、
前記高値陽性の座標を同定することと、
コロニーの前記座標を、前記生体試料から前記コロニーをピッキングするピッキング機器に前記座標を伝達するモジュールに伝達することと、
前記生体試料を前記ピッキング機器に移動させ、前記生体試料から前記コロニーをピッキングすることと、
なお、移動工程及びピッキング工程は前記モジュールにより制御される;
を更に含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記モジュールにより、前記増殖が前記所定の閾値を上回らないと判断される場合、前記モジュールは、前記モジュールに与えられる前記コロニーの画像と、前記モジュールによりアクセスされた前記履歴画像データとの比較に基づき、前記コロニーの仮同定をもたらし、前記モジュールは前記仮IDをユーザーに報告する更なる工程を行う、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記コロニーが優勢であるという判断に応じて、前記モジュールは、前記モジュールに与えられる前記コロニーの画像と、前記モジュールによりアクセスされた前記履歴画像データとの比較に基づき、前記コロニーの仮同定をもたらし、前記モジュールは前記仮IDをユーザーに報告する更なる工程を行う、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記モジュールにより、前記増殖が所定の閾値の増殖を上回るかを判断することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記モジュールにより、前記増殖が前記所定の閾値の増殖を上回ると判断される場合、 前記試料を高値陽性として同定することと、
ユーザーに前記高値陽性を警告することと、
前記高値陽性の座標を同定することと、
コロニーの前記座標を、前記生体試料から前記コロニーをピッキングするピッキング機器に前記座標を伝達するモジュールに伝達することと、
前記生体試料を前記ピッキング機器に移動させ、前記生体試料から前記コロニーをピッキングすることと、
なお、移動工程及びピッキング工程は前記モジュールにより制御される;
ユーザーに更なるレビューが必要であることを警告することと、
を更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記モジュールにより、前記増殖が前記所定の閾値を上回らないと判断される場合、前記モジュールは前記仮IDをユーザーに報告する更なる工程を行う、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記コロニーが複雑であるという判断に応じて、
前記モジュールから、前記プレートが複雑であることを報告することと、
前記モジュールにより、前記増殖が所定の閾値の増殖を上回るかを判断することと、
を更に含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
前記モジュールにより、前記増殖が前記所定の閾値の増殖を上回ると判断される場合、ユーザーに更なるレビューが必要であることを警告することを更に含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記モジュールにより、前記増殖が前記所定の閾値を上回らないと判断される場合、前記モジュールは、ユーザーに、前記複雑な試料が陽性増殖閾値を満たさない又は超えないことを報告する更なる工程を行う、請求項18に記載の方法。