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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164483
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 29/786 20060101AFI20231102BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20231102BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20231102BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20231102BHJP
   H10B 12/00 20230101ALI20231102BHJP
   H10K 59/124 20230101ALI20231102BHJP
【FI】
H01L29/78 613Z
H01L27/06 102A
H01L27/088 E
H01L27/088 331E
H01L27/04 C
H10B12/00 801
H10K59/124
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138972
(22)【出願日】2023-08-29
(62)【分割の表示】P 2022034424の分割
【原出願日】2014-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2013272190
(32)【優先日】2013-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】宮入 秀和
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(57)【要約】
【課題】微細化に適した半導体装置を提供する。または、信頼性の高い半導体装置を提供
する。
【解決手段】のトランジスタと、容量素子と、を有し、トランジスタは、半導体層を有し
、半導体層は容量素子の上方に位置し、容量素子はトランジスタと電気的に接続する第1
の電極を有する半導体装置である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のトランジスタと、
第2のトランジスタと、
容量素子と、
第1の導電層と、
第2の導電層と、を有し、
前記第1の導電層は、前記第1のトランジスタのゲート電極上に位置し、
前記容量素子の第1の端子は、前記第1のトランジスタのゲート電極上に位置し、
前記容量素子の第2の端子は、前記第2のトランジスタのチャネル形成領域下に位置し、
前記第2の導電層は、前記第2のトランジスタが形成された半導体を貫通し、前記第1の導電層と常に導通している、半導体装置。
【請求項2】
第1のトランジスタと、
第2のトランジスタと、
容量素子と、
第1の導電層と、
第2の導電層と、
配線と、を有し、
前記第1の導電層は、前記第1のトランジスタのゲート電極上に位置し、
前記容量素子の第1の端子は、前記第1のトランジスタのゲート電極上に位置し、
前記容量素子の第2の端子は、前記第2のトランジスタのチャネル形成領域下に位置し、
前記配線は、前記第2のトランジスタのチャネル形成領域上に位置し、
前記第2の導電層は、前記第2のトランジスタが形成された半導体を貫通し、前記第1の導電層と常に導通し、
前記配線は、前記第2の導電層と常に導通している、半導体装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、
前記第1のトランジスタのチャネル形成領域は、単結晶シリコンを有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物、方法、または、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシ
ン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。特
に、本発明の一態様は、半導体装置、表示装置、発光装置、蓄電装置、記憶装置、それら
の駆動方法、または、それらの製造方法に関する。
【0002】
なお、本明細書等において、半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる
装置全般を指す。トランジスタ、半導体回路は、半導体装置の一態様である。また、演算
装置、記憶装置、撮像装置、電気光学装置、発電装置(薄膜太陽電池、有機薄膜太陽電池
等を含む)、及び電子機器は半導体装置を有している場合がある。
【背景技術】
【0003】
半導体材料を用いてトランジスタを構成する技術が注目されている。該トランジスタは
集積回路(IC)や画像表示装置(単に表示装置とも表記する)のような電子デバイスに
広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導体材料としてシリコン系半導体材料
が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。
【0004】
例えば、酸化物半導体として酸化亜鉛、またはIn-Ga-Zn系酸化物半導体を用い
てトランジスタを作製する技術が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0005】
また、近年では電子機器の高性能化、小型化、または軽量化に伴い、微細化されたトラ
ンジスタなどの半導体素子を高密度に集積した集積回路の要求が高まっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-123861号公報
【特許文献2】特開2007-96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一態様は、微細化に適した半導体装置を提供することを課題の一とする。また
は、回路面積を縮小した半導体装置を提供することを課題の一とする。
【0008】
または、信頼性の高い半導体装置を提供することを課題の一とする。または、半導体装
置に良好な電気特性を付与することを課題の一とする。または、保持特性の良好な記憶素
子を有する半導体装置を提供することを課題の一とする。または、新規な構成の半導体装
置を提供することを課題の一とする。
【0009】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課
題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、
図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様は、容量素子と、第1のトランジスタと、を有し、第1のトランジスタ
は第1の半導体層を有し、第1の半導体層は容量素子の上方に位置し、容量素子は第1の
トランジスタと電気的に接続する第1の電極を有する、半導体装置である。また上記構成
において、容量素子は、m層(mは3以上の自然数)の導電層およびn層(nは自然数)
の絶縁膜を有し、第1の絶縁膜は第1の導電層と第2の導電層に挟まれ、第2の絶縁膜は
第2の導電層と第3の導電層に挟まれ、第1の導電層と第3の導電層は電気的に接続する
ことが好ましい。
【0011】
または、本発明の一態様は、容量素子と、第1のトランジスタと、第2のトランジスタ
と、を有し、第1のトランジスタは第1の半導体層を有し、容量素子はn層(nは自然数
)の絶縁膜と、k層(kは2以上の自然数)の導電層と、を有し、n層の絶縁膜のそれぞ
れは、少なくとも2層の導電層により挟まれ、第1のトランジスタは、第2のトランジス
タの上方に位置し、第1の半導体層は容量素子の上方に位置し、容量素子が有するn層(
nは自然数)の絶縁膜は、第1のトランジスタと、第2のトランジスタとの間に位置し、
容量素子は第1のトランジスタのソースまたはドレインのいずれかと接続する第1の電極
を有する半導体装置である。
【0012】
また上記構成において、n層の絶縁膜は、水素、水、および酸素の少なくともいずれか
をブロックする機能を有することが好ましい。また上記構成において、n層の絶縁膜は、
窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリ
ウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、
酸化窒化ハフニウムのうち、少なくとも一を含むことが好ましい。
【0013】
また上記構成において、容量素子と、第1のトランジスタが重なることが好ましい。
【0014】
また上記構成において、第1のトランジスタは、第1の半導体層に第1の開口部が設け
られ、第1の電極は、第1の開口部に接することが好ましい。
【0015】
また上記構成において、第1のトランジスタは第1の導電層および第2の導電層を有し
、第1の導電層および第2の導電層は、第1の半導体層に接し、第1のトランジスタが有
する第1の半導体層および第1の導電層には開口部が設けられ、第1の電極は、第1の半
導体層および第1の導電層に設けられた開口部と接することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様により、微細化に適した半導体装置を提供することができる。また、回
路面積を縮小した半導体装置を提供することができる。
【0017】
また、信頼性の高い半導体装置を提供することができる。また、半導体装置に良好な電
気特性を付与することができる。また、保持特性の良好な記憶素子を有する半導体装置を
提供することができる。また、新規な構成の半導体装置を提供することができる。
【0018】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の
一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果
は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図
面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す図。
図2】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す図。
図3】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す図。
図4】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す図。
図5】本発明の一態様に係る回路図およびトランジスタの上面図。
図6】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す図。
図7】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す図。
図8】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す図。
図9】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す図。
図10】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す図。
図11】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す図。
図12】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す図。
図13】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す図。
図14】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す図。
図15】本発明の一態様に係る半導体装置の作製方法を示す図。
図16】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す図。
図17】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す図。
図18】本発明の一態様に係るトランジスタの一部のバンド構造を示す図および導通時の電流の経路を説明する図。
図19】酸化物半導体の断面TEM像および局所的なフーリエ変換像。
図20】酸化物半導体膜のナノビーム電子回折パターンを示す図、および透過電子回折測定装置の一例を示す図。
図21】透過電子回折測定による構造解析の一例を示す図、および平面TEM像。
図22】実施の形態に係る、回路図。
図23】実施の形態に係る、RFタグの構成例。
図24】実施の形態に係る、CPUの構成例。
図25】実施の形態に係る、記憶素子の回路図。
図26】実施の形態に係る、表示装置の上面図及び回路図。
図27】実施の形態に係る、電子機器。
図28】実施の形態に係る、RFタグの使用例。
図29】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す回路図。
図30】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す図。
図31】半導体装置を示す図。
図32】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す上面図。
図33】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す図。
図34】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す図。
図35】本発明の一態様に係る半導体装置の一例を示す図。
図36】CAAC-OSの断面におけるCs補正高分解能TEM像、およびCAAC-OSの断面模式図。
図37】CAAC-OSの平面におけるCs補正高分解能TEM像。
図38】CAAC-OSおよび単結晶酸化物半導体のXRDによる構造解析を説明する図。
図39】CAAC-OSの電子回折パターンを示す図。
図40】In-Ga-Zn酸化物の電子照射による結晶部の変化を示す図。
図41】CAAC-OSおよびnc-OSの成膜モデルを説明する模式図。
図42】InGaZnOの結晶、およびペレットを説明する図。
図43】CAAC-OSの成膜モデルを説明する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以下の説明に限定
されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更
し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態
の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0021】
なお、以下に説明する発明の構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には
同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様
の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0022】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、層の厚さ、または領域は、
明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されな
い。
【0023】
なお、本明細書等における「第1」、「第2」等の序数詞は、構成要素の混同を避ける
ために付すものであり、数的に限定するものではない。
【0024】
なお、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分低い場合は「絶縁体」と
しての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「絶縁体」は境界が曖昧であり、厳
密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「絶縁体」
と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「絶縁体」は、「半導
体」と言い換えることができる場合がある。
【0025】
また、「半導体」と表記した場合でも、例えば、導電性が十分高い場合は「導電体」と
しての特性を有する場合がある。また、「半導体」と「導電体」は境界が曖昧であり、厳
密に区別できない場合がある。したがって、本明細書に記載の「半導体」は、「導電体」
と言い換えることができる場合がある。同様に、本明細書に記載の「導電体」は、「半導
体」と言い換えることができる場合がある。
【0026】
トランジスタは半導体素子の一種であり、電流や電圧の増幅や、導通または非導通を制
御するスイッチング動作などを実現することができる。本明細書におけるトランジスタは
、IGFET(Insulated Gate Field Effect Trans
istor)や薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor
)を含む。
【0027】
本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置
されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「概
略平行」とは、二つの直線が-30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう
。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状
態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「概略垂直」と
は、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0028】
また、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表
す。
【0029】
(実施の形態1)
[積層構造の構成例]
以下では、本発明の一態様の半導体装置に適用することのできる積層構造の一例を図1
を用いて説明する。
【0030】
図1(A)に示す積層構造は、トランジスタ100および容量素子150を有する。ト
ランジスタ100は容量素子150の上方に位置する。また、容量素子150は、トラン
ジスタ100と電気的に接続している。
【0031】
また、トランジスタ100の半導体層101は、低抵抗領域171aおよび低抵抗領域
171bを有してもよい。低抵抗領域171aおよび低抵抗領域171bはソース領域ま
たはドレイン領域として機能することが好ましい。また、低抵抗領域171aおよび低抵
抗領域171bは不純物が添加されていてもよい。不純物を添加することにより半導体層
101の抵抗を下げることができる。添加する不純物としては、例えばアルゴン、ホウ素
、炭素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、カルシウム、スカンジウム、チ
タン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲルマニウ
ム、ヒ素、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、スズ、ラン
タン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステンから選択された一種以
上を添加することが好ましい。低抵抗領域171aおよび低抵抗領域171bは例えば、
半導体層101中に、上述の不純物元素を5×1019atoms/cm以上、好まし
くは1×1020atoms/cm以上、さらに好ましくは2×1020atoms/
cm以上、より好ましくは5×1020atoms/cm以上含む領域である。
【0032】
また、図1(A)に示す積層構造は、トランジスタ130を有してもよい。また、トラ
ンジスタ100とトランジスタ130の間に、バリア膜111を有することが好ましい。
容量素子150は導電層151と導電層152を有し、バリア膜111が導電層151と
導電層152に挟まれた構造を有する。
【0033】
ここで、図1(B)は、図1(A)に示す一点鎖線A-Bにおける断面を示す。ここで
一点鎖線A-Bにおける断面とは例えば、一点鎖線A-Bを通り、図1(A)に示す断面
におおよそ垂直な断面である。なお、図1(B)において符号が省略されている箇所があ
るが、図1(A)と同じハッチ等を用いて示す箇所は、例えば図1(A)を参照すればよ
い。
【0034】
トランジスタ130は、第1の半導体材料を含んで構成される。また、トランジスタ1
00は第2の半導体材料を含んで構成される。第1の半導体材料と第2の半導体材料は、
同一の材料であってもよいが、異なる半導体材料とすることが好ましい。
【0035】
第1の半導体材料、または第2の半導体材料として用いることのできる半導体としては
、例えばシリコンやゲルマニウムやガリウムやヒ素などの半導体材料、シリコンやゲルマ
ニウムやガリウムやヒ素やアルミニウムなどを有する化合物半導体材料、有機半導体材料
、または酸化物半導体材料などが挙げられる。
【0036】
ここでは、第1の半導体材料として単結晶シリコンを、第2の半導体材料として酸化物
半導体を用いた場合について説明する。
【0037】
トランジスタ100は第2の半導体材料で形成された半導体層101、ゲート絶縁膜1
02、ゲート電極103、プラグ121およびプラグ122を有する。また、絶縁膜11
2および絶縁膜113は、トランジスタ100を覆うように形成されている。プラグ12
1は、絶縁膜113、絶縁膜112および半導体層101に設けられた開口部に接し、容
量素子150と接続している。すなわち、プラグ121は、絶縁膜113、絶縁膜112
および半導体層101を貫通するように形成される。
【0038】
バリア膜111は、これよりも下層から水及び水素が上層に拡散することを抑制する機
能を有する層である。また、バリア膜111は酸素透過性が低いことが好ましい。また、
バリア膜111はこの上方に設けられる電極または配線と、下方に設けられる電極または
配線とを電気的に接続するための開口やプラグを有していてもよい。例えば、図1に示す
ようにプラグ121と、導電層151とを電気的に接続するプラグを有する。ここで、水
および水素の拡散を抑制する、とは、例えば一般的に絶縁膜として用いられる酸化シリコ
ン等と比較して、水および水素を拡散しにくい又は透過性が低いことを示す。また、酸素
透過性が低いとは、一般的に絶縁膜として用いられる酸化シリコン等と比較して、酸素の
透過性が低いことを示す。
【0039】
絶縁膜112はバリア膜111と同様、水や水素が拡散しにくい材料を用いることが好
ましい。また、特に、絶縁膜112として酸素を透過しにくい材料を用いることが好まし
い。なお、絶縁膜112を2層以上の積層構造としてもよい。その場合には、例えば絶縁
膜112を2層の積層構造とし、下層に例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸
化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミ
ニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。また上層にはバリア膜111と同様に水
や水素が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。また下層に設ける絶縁膜は、絶縁膜
114と同様の、加熱により酸素が脱離する絶縁膜としてゲート絶縁膜102を介して半
導体層101の上側からも酸素を供給する構成としてもよい。
【0040】
酸素を透過しにくい材料を含む絶縁膜112で半導体層101を覆うことで、半導体層
101から絶縁膜112よりも上方に酸素が放出されることを抑制することができる。さ
らに、絶縁膜114から脱離した酸素を絶縁膜112よりも下側に閉じ込めることができ
るため、半導体層101に供給しうる酸素の量を増大させることができる。
【0041】
また、水や水素を透過しにくい絶縁膜112により、外部から酸化物半導体にとっての
不純物である水や水素が混入することを抑制でき、トランジスタ100の電気特性の変動
が抑制され、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0042】
なお、絶縁膜112よりも下側に、絶縁膜114と同様の、加熱により酸素が脱離する
絶縁膜を設け、ゲート絶縁膜102を介して半導体層101の上側からも酸素を供給する
構成としてもよい。
【0043】
また、容量素子150は、トランジスタ100と重なるように形成されることが好まし
い。容量素子150とトランジスタ100の重なる領域を大きくすることにより、半導体
装置の面積を縮小することができる。
【0044】
図1に示す半導体装置は、トランジスタ100と容量素子150の間に絶縁膜114を
有する。絶縁膜114は、酸化物を含むことが好ましい。特に加熱により一部の酸素が脱
離する酸化物材料を含むことが好ましい。好適には、化学量論的組成を満たす酸素よりも
多くの酸素を含む酸化物を用いることが好ましい。第2の半導体材料として酸化物半導体
を用いた場合、絶縁膜114から脱離した酸素が酸化物半導体に供給され、酸化物半導体
中の酸素欠損を低減することが可能となる。その結果、第2のトランジスタの電気特性の
変動を抑制し、信頼性を高めることができる。
【0045】
ここで、バリア膜111よりも下層では、水素や水などを出来る限り低減させておくこ
とが好ましい。あるいは、脱離ガスを抑制することが好ましい。水素や水は酸化物半導体
にとって電気特性の変動を引き起こす要因となりうる。またバリア膜111を介して下層
から上層へ拡散する水素や水は、バリア膜111により抑制することができるが、バリア
膜111に設けられる開口やプラグ等を介して水素や水が上層に拡散してしまう場合があ
る。
【0046】
バリア膜111よりも下層に位置する各層に含まれる水素や水を低減させるため、ある
いは脱離ガスを抑制するため、バリア膜111を形成する前、またはバリア膜111に導
電層等を形成するための開口を形成した直後に、バリア膜111よりも下層に含まれる水
素や水を除去するため、あるいは脱離ガスを抑制するための加熱処理を施すことが好まし
い。半導体装置を構成する導電膜などの耐熱性や、トランジスタの電気特性が劣化しない
程度であれば、加熱処理の温度は高いほど好ましい。具体的には、例えば450℃以上、
好ましくは490℃以上、より好ましくは530℃以上の温度とすればよいが、650℃
以上で行ってもよい。不活性ガス雰囲気下または減圧雰囲気下で1時間以上、好ましくは
5時間以上、より好ましくは10時間以上の加熱処理を行うことが好ましい。バリア膜1
11よりも下層に位置する配線または電極の材料の耐熱性を考慮して決定すればよいが、
例えば当該材料の耐熱性が低い場合には、550℃以下、または600℃以下、または6
50℃以下、または800℃以下の温度で行えばよい。またこのような加熱処理は、少な
くとも1回以上行えばよいが、複数回行うとより好ましい。
【0047】
バリア膜111より下層に設けられる絶縁膜は、昇温脱離ガス分光法分析(TDS分析
ともよぶ)によって測定される、基板表面温度が400℃での水素分子の脱離量が、30
0℃で水素分子の脱離量の130%以下、好ましくは110%以下であることが好ましい
。または、TDS分析によって基板表面温度が450℃での水素分子の脱離量が、350
℃での脱離量の130%以下、好ましくは110%以下であることが好ましい。
【0048】
また、バリア膜111自体に含まれる水や水素も低減されていることが好ましい。ある
いは脱離ガスを抑制されていることが好ましい。例えばバリア膜111として、TDS分
析によって基板表面温度が20℃から600℃の範囲における水素分子(M/z=2)の
脱離量が、2×1015個/cm未満、好ましくは1×1015個/cm未満、より
好ましくは5×1014個/cm未満である材料をバリア膜111に用いることが好ま
しい。または、TDS分析によって基板表面温度が20℃から600℃の範囲における水
分子(M/z=18)の脱離量が、1×1016個/cm未満、好ましくは5×10
個/cm未満、より好ましくは2×1012個/cm未満である材料をバリア膜1
11に用いることが好ましい。
【0049】
また、トランジスタ130の半導体層に単結晶シリコンを用いた場合では、当該加熱処
理は、シリコンの不対結合手(ダングリングボンドともいう)を水素によって終端化する
処理(水素化処理とも呼ぶ)を兼ねることができる。水素化処理によりトランジスタ13
0のゲート絶縁膜や、バリア膜111より下層に形成されるその他の絶縁膜に含まれる水
素の一部が脱離して第1のトランジスタの半導体層に拡散し、シリコン中のダングリング
ボンドを終端させることで、第1のトランジスタの信頼性を向上させることができる。
【0050】
バリア膜111に用いることのできる材料としては、酸化アルミニウム、酸化ハフニウ
ム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸スト
ロンチウム(SrTiO)または(Ba,Sr)TiO(BST)などのいわゆるh
igh-k材料を含む絶縁膜を単層または積層で用いることができる。またはこれらの絶
縁膜に例えば酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シ
リコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ガ
リウウムを添加してもよい。またはこれらの絶縁膜を窒化処理して酸化窒化膜としてもよ
い。上記の絶縁膜に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用い
てもよい。特に、酸化アルミニウムは水や水素に対するバリア性に優れているため好まし
い。
【0051】
バリア膜111は水や水素を透過しにくい材料の層のほかに、他の絶縁材料を含む層を
積層させて用いてもよい。例えば、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを含む層、金属
酸化物を含む層などを積層させて用いてもよい。
【0052】
また、バリア膜111は、酸素を透過しにくい材料を用いることが好ましい。上述した
材料は、水素、水に加え酸素に対してもバリア性に優れた材料である。このような材料を
用いることで、絶縁膜114を加熱した時に放出される酸素がバリア膜111よりも下層
に拡散することを抑制することができる。その結果、絶縁膜114から放出され、トラン
ジスタ100の半導体層に供給されうる酸素の量を増大させることができる。
【0053】
このように、バリア膜111よりも下層に位置する各層に含まれる水素や水の濃度を減
少する、または水素や水を除去し、または脱離ガスを抑制し、さらにバリア膜111によ
り水素や水がトランジスタ100へ拡散することを抑制する。そのため、絶縁膜114や
、トランジスタ100を構成する各層における水素及び水の含有量を、極めて低いものと
することができる。例えば、絶縁膜114、トランジスタ100の半導体層101、また
はゲート絶縁膜102に含まれる水素濃度を5×1018cm-3未満、好ましくは1×
1018cm-3未満、さらに好ましくは3×1017cm-3未満にまで低減すること
ができる。
【0054】
以上の構成により、第1のトランジスタと第2のトランジスタのいずれにおいても高い
信頼性を両立することが可能となり、極めて信頼性の高い半導体装置を実現できる。
【0055】
なお、導電層152は、トランジスタ100のチャネル領域と重なるように配置しても
よい。その場合の例を、図34(A)および図34(B)に示す。図34(B)は、図3
4(A)に示す一点鎖線A-Bにおける断面である。なお、導電層152は、トランジス
タ100のゲート電極としての機能を有することもできる。例えば、このゲート電極に、
一定の電位を供給することにより、トランジスタ100のしきい値電圧を制御することが
出来る。
【0056】
また、本発明の一態様の半導体装置に適用することのできる積層構造の一例を図2、図
3、図4(A)及び(B)に示す。図2に示すように、容量素子150は3以上の導電層
を積層して形成してもよい。導電層151、導電層153aおよび導電層153bはプラ
グ121、プラグ126およびプラグ127を介して電気的に接続し、容量素子150の
一方の電極を形成している。また、図示しないが導電層152、導電層154aおよび導
電層154cは電気的に接続し、容量素子150の他方の電極を形成している。
【0057】
また、図3に示すように、プラグ126やプラグ127の両側に導電層を形成してもよ
い。導電層151、導電層153aおよび導電層153bはプラグ121、プラグ126
およびプラグ127を介して電気的に接続し、容量素子150の一方の電極を形成してい
る。また、図示しないが導電層152、導電層152b、導電層154a、導電層154
b、導電層154cおよび導電層154dは電気的に接続し、容量素子150の他方の電
極を形成している。
【0058】
また、図4(A)に示すように、トランジスタ100は半導体層101に接する導電層
104aおよび導電層104bを有してもよい。なお図4(B)は、図4(A)に示す一
点鎖線A-Bにおける断面である。導電層104aおよび導電層104bはソース電極ま
たはドレイン電極としての機能を有する。また、トランジスタ100は導電層105を有
してもよい。導電層105は、トランジスタ100の第2のゲートとして機能してもよい
。導電層105に、ソース電極よりも低い電圧または高い電圧を印加し、トランジスタの
しきい値電圧をプラス方向またはマイナス方向へ変動させてもよい。例えば、トランジス
タのしきい値電圧をプラス方向に変動させることで、ゲート電圧が0Vであってもトラン
ジスタが非導通状態(オフ状態)となる、ノーマリーオフが実現できる場合がある。なお
、導電層105に印加する電圧は、可変であってもよいし、固定であってもよい。導電層
105に印加する電圧を可変にする場合、電圧を制御する回路を導電層105に接続して
もよい。
【0059】
また、導電層105は、ゲート電極103と接続してもよい。
【0060】
[構成例]
図5(A)は、本発明の一態様の半導体装置の回路図の一例である。図5(A)に示す
半導体装置は、トランジスタ100と、トランジスタ130と、容量素子150と、配線
BLと、配線WLと、配線CLとを有する。
【0061】
トランジスタ130は、ソースまたはドレインの一方が配線BLと電気的に接続し、他
方が配線SLと電気的に接続し、ゲートがトランジスタ100のソースまたはドレインの
一方及び容量素子150の一方の電極と電気的に接続する。トランジスタ100は、ソー
スまたはドレインの他方が配線BLと電気的に接続し、ゲートが配線WLと電気的に接続
する。容量素子150は、他方の電極が配線CLと電気的に接続する。また配線BGはト
ランジスタ100の第2のゲートと電気的に接続する。なお、トランジスタ130のゲー
トと、トランジスタ100のソースまたはドレインの一方と、容量素子150の一方の電
極の間のノードをノードFNと呼ぶ。
【0062】
図5(A)に示す半導体装置は、トランジスタ100が導通状態(オン状態)の時に配
線BLの電位に応じた電位を、ノードFNに与える。また、トランジスタ100が非導通
状態(オフ状態)のときに、ノードFNの電位を保持する機能を有する。すなわち、図5
(A)に示す半導体装置は、記憶装置のメモリセルとしての機能を有する。なお、ノード
FNと電気的に接続する液晶素子や有機EL(Electroluminescence
)素子などの表示素子を有する場合、図5(A)の半導体装置は表示装置の画素として機
能させることもできる。
【0063】
トランジスタ100の導通状態、非導通状態の選択は、配線WLまたは配線BGに与え
る電位によって制御することができる。また配線WLまたは配線BGに与える電位によっ
てトランジスタ100のしきい値電圧を制御することができる。トランジスタ100とし
て、オフ電流の小さいトランジスタを用いることによって、非導通状態におけるノードF
Nの電位を長期間に渡って保持することができる。したがって、半導体装置のリフレッシ
ュ頻度を低減することができるため、消費電力の小さい半導体装置を実現することができ
る。なお、オフ電流の小さいトランジスタの一例として、酸化物半導体を用いたトランジ
スタが挙げられる。
【0064】
なお、配線CLには基準電位や接地電位、または任意の固定電位などの定電位が与えら
れる。このとき、ノードFNの電位によって、トランジスタ100の見かけ上のしきい値
電圧が変動する。見かけ上のしきい値電圧の変動により、トランジスタ130の導通状態
、非導通状態が変化することを利用し、ノードFNに保持された電位の情報をデータとし
て読み出すことができる。
【0065】
なお、ノードFNに保持された電位を85℃において10年間(3.15×10秒)
保持するためには、容量1fFあたり、トランジスタのチャネル幅1μmあたりのオフ電
流の値が4.3yA(ヨクトアンペア:1yAは10-24A)未満であることが好まし
い。このとき、許容されるノードFNの電位の変動が0.5V以内であることが好ましい
。または、95℃において、上記オフ電流が1.5yA未満であることが好ましい。本発
明の一態様の半導体装置は、バリア膜よりも下層の水素濃度が十分に低減されているため
、その結果、その上層の酸化物半導体を用いたトランジスタは、このように極めて低いオ
フ電流を実現することができる。
【0066】
また、容量を多くすることにより、より長く、ノードFNに電位を保持することができ
る。つまり、保持時間を長くすることができる。
【0067】
図5(A)に示す半導体装置をマトリクス状に配置することで、記憶装置(メモリセル
アレイ)を構成することができる。
【0068】
図6(A)及び(B)に、図5(A)で示した回路を実現可能な半導体装置の断面構成
の一例を示す。図6(B)は、図6(A)に示す一点鎖線A-Bにおける断面である。
【0069】
図6(A)及び(B)に示す半導体装置は、トランジスタ130、トランジスタ100
、及び容量素子150を有する。トランジスタ100はトランジスタ130の上方に設け
られ、トランジスタ130とトランジスタ100の間には少なくとも1層以上のバリア膜
が設けられている。また、半導体装置は、複数のバリア膜を形成してもよい。図6(A)
及び(B)では、半導体装置がバリア膜111a乃至111eを有する例を示す。また、
トランジスタ100の上面図を図5(B)に示す。図5(B)に示す破線X-X’の断面
を、図6(A)のトランジスタ100として示す。また、図5(B)に示す破線Y-Y’
の断面を、図6(B)のトランジスタ100として示す。
【0070】
〔第1のトランジスタ〕
トランジスタ130は、半導体基板131に設けられ、半導体基板131の一部からな
る半導体層132、ゲート絶縁膜134、ゲート電極135、及びソース領域またはドレ
イン領域として機能する低抵抗層133a及び低抵抗層133bを有する。また、図6
示す半導体装置はトランジスタ160を有してもよい。トランジスタ160はトランジス
タ130とともに半導体基板131に設けられている。
【0071】
トランジスタ130は、pチャネル型、nチャネル型のいずれでもよいが、回路構成や
駆動方法に応じて適切なトランジスタを用いればよい。
【0072】
半導体層132のチャネルが形成される領域やその近傍の領域や、ソース領域またはド
レイン領域となる低抵抗層133a及び低抵抗層133b等において、シリコン系半導体
などの半導体を含むことが好ましく、単結晶シリコンを含むことが好ましい。または、G
e(ゲルマニウム)、SiGe(シリコンゲルマニウム)、GaAs(ガリウムヒ素)、
GaAlAs(ガリウムアルミニウムヒ素)などを有する材料で形成してもよい。結晶格
子に歪みを有するシリコンを用いた構成としてもよい。またはGaAsとAlGaAs等
を用いることで、トランジスタ130をHEMT(High Electron Mob
ility Transistor)としてもよい。
【0073】
また、トランジスタ130は、LDD(ライトドープドレイン)領域である領域176
aと領域176bを有してもよい。
【0074】
低抵抗層133a及び低抵抗層133bは、半導体層132に適用される半導体材料に
加え、リンなどのn型の導電性を付与する元素、またはホウ素などのp型の導電性を付与
する元素を含む。
【0075】
ゲート電極135は、リンなどのn型の導電性を付与する元素、またはホウ素などのp
型の導電性を付与する元素を含むシリコンなどの半導体材料、金属材料、合金材料、また
は金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。特に、耐熱性と導電性を両立
するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタングス
テンを用いることが好ましい。
【0076】
ここで、トランジスタ130およびトランジスタ160に換えて図16に示すようなト
ランジスタ190およびトランジスタ191を用いてもよい。図16(A)の一点鎖線A
-Bに示す断面を図16(B)に示す。トランジスタ190およびトランジスタ191は
チャネルが形成される半導体層132(半導体基板の一部)が凸形状を有し、その側面及
び上面に沿ってゲート絶縁膜134及びゲート電極135が設けられている。このような
トランジスタ190およびトランジスタ191は半導体基板の凸部を利用していることか
らFIN型トランジスタとも呼ばれる。なお、凸部の上部に接して、凸部を形成するため
のマスクとして機能する絶縁膜を有していてもよい。また、ここでは半導体基板の一部を
加工して凸部を形成する場合を示したが、SOI基板を加工して凸形状を有する半導体層
を形成してもよい。
【0077】
トランジスタ130を覆って、絶縁膜136、絶縁膜137、及び絶縁膜138が順に
積層して設けられている。
【0078】
絶縁膜136は半導体装置の作製工程において、低抵抗層133a及び低抵抗層133
bに添加された導電性を付与する元素の活性化の際の保護膜として機能する。絶縁膜13
6は不要であれば設けなくてもよい。
【0079】
半導体層132にシリコン系半導体材料を用いた場合、絶縁膜137は水素を含む絶縁
材料を含むことが好ましい。水素を含む絶縁膜137をトランジスタ130上に設け、加
熱処理を行うことで絶縁膜137中の水素により半導体層132中のダングリングボンド
が終端され、トランジスタ130の信頼性を向上させることができる。
【0080】
絶縁膜138はその下層に設けられるトランジスタ130などによって生じる段差を平
坦化する平坦化層として機能する。絶縁膜138の上面は、その上面の平坦性を高めるた
めにCMP(Chemical Mechanical Polishing)法等を用
いた平坦化処理により平坦化されていてもよい。
【0081】
また、絶縁膜136、絶縁膜137、絶縁膜138には低抵抗層133aや低抵抗層1
33b等と電気的に接続するプラグ140、トランジスタ130のゲート電極135と電
気的に接続するプラグ139等が埋め込まれていてもよい。
【0082】
〔容量素子〕
トランジスタ130と、トランジスタ100の間には、バリア膜111が設けられてい
る。バリア膜は単層でもよく、図6に示すように複数層でもよい。ここで、図6(A)に
示す半導体装置の例では、バリア膜111a乃至バリア膜111eの5層のバリア膜を有
する。バリア膜を容量素子の絶縁膜に用いる場合には、膜厚を薄くすることにより容量を
高めることができる。一方、薄くすることによりバリア性が低下してしまう恐れがある。
よって、薄いバリア膜を複数積層することにより、容量をより高め、かつバリア性を向上
させることができ、トランジスタ100およびトランジスタ130の特性を高めることが
できる。
【0083】
バリア膜を挟むように、導電層151、導電層152、導電層153a、導電層153
bおよび導電層154a乃至導電層154eが設けられ、容量素子150を形成している
。プラグ121、プラグ126およびプラグ127は電気的に接続されている。プラグ1
26はバリア膜111b、絶縁膜115bおよびバリア膜111cに設けられた開口部に
形成される。導電層151、導電層153aおよび導電層153bはプラグ127とプラ
グ126、プラグ121を介してトランジスタ100の導電層104aと電気的に接続す
る。導電層151は絶縁膜115aに設けられた開口部に埋め込まれるように形成される
。同様に、導電層154aおよび導電層154bは絶縁膜115bに、導電層153aは
絶縁膜115cに、導電層154cおよび導電層154dは絶縁膜115dに、導電層1
53bは絶縁膜115eに、それぞれ設けられた開口部に埋め込まれるように形成される
【0084】
また、図7は、図6(A)の一点鎖線C-Dにおける断面を示す。導電層154eはプ
ラグ128と電気的に接続している。また、導電層154bおよび導電層154dはプラ
グ129a乃至プラグ129dを介してプラグ128と電気的に接続している。プラグ1
28は、プラグ141を介して配線142に接続している。
【0085】
バリア膜111、導電層152、導電層154e等を覆って、絶縁膜114が設けられ
ている。
【0086】
絶縁膜114の上面は上述した平坦化処理によって平坦化されていることが好ましい。
【0087】
絶縁膜114は、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい
【0088】
加熱により酸素を脱離する酸化物材料として、化学量論的組成を満たす酸素よりも多く
の酸素を含む酸化物を用いることが好ましい。化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの
酸素を含む酸化物膜は、加熱により一部の酸素が脱離する。化学量論的組成を満たす酸素
よりも多くの酸素を含む酸化物膜は、昇温脱離ガス分光法(TDS:Thermal D
esorption Spectroscopy)分析にて、酸素原子に換算しての酸素
の脱離量が1.0×1018atoms/cm以上、好ましくは3.0×1020at
oms/cm以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温
度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上500℃以下の範囲が好まし
い。
【0089】
例えばこのような材料として、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンを含む材料を用い
ることが好ましい。または、金属酸化物を用いることもできる。金属酸化物として、酸化
アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化ガリウム、酸化窒化ガリウム、酸化イットリ
ウム、酸化窒化イットリウム、酸化ハフニウム、酸化窒化ハフニウム等を用いる事ができ
る。なお、本明細書中において、酸化窒化シリコンとは、その組成として窒素よりも酸素
の含有量が多い材料を指し、窒化酸化シリコンとは、その組成として、酸素よりも窒素の
含有量が多い材料を示す。
【0090】
〔第2のトランジスタ〕
絶縁膜114の上部には、トランジスタ100の半導体層101が設けられている。
【0091】
トランジスタ100は、絶縁膜114の上面に接する半導体層101と、導電層104
a及び導電層104bと、半導体層101上にゲート絶縁膜102と、ゲート絶縁膜10
2を介して半導体層101と重なるゲート電極103と、を有する。またトランジスタ1
00を覆って、絶縁膜112、絶縁膜113、及び絶縁膜116が設けられている。また
、トランジスタ100は、第2のゲート電極として機能する導電層105を有してもよい
【0092】
なお、半導体層101は、単層で形成してもよく、また図6に例示するトランジスタ1
00のように、半導体層101a、半導体層101bおよび半導体層101cの積層構造
で形成されることがより好ましい。図6に示すトランジスタ100は、半導体層101a
と、半導体層101aの上面に接する半導体層101bと、半導体層101bの上面と接
し、半導体層101bと重なる領域で離間する導電層104a及び導電層104bと、半
導体層101bの上面に接する半導体層101cと、半導体層101c上にゲート絶縁膜
102と、ゲート絶縁膜102及び半導体層101cを介して半導体層101bと重なる
ゲート電極103と、を有する。また、図6に示すトランジスタ100は、第2のゲート
電極として機能する導電層105を有する。導電層105は、容量素子150の一部を形
成する導電層152と同時に形成してもよい。半導体層101aは、絶縁膜114と半導
体層101bの間に設けられている。また、半導体層101cは、半導体層101bとゲ
ート絶縁膜102の間に設けられている。また、導電層104aおよび導電層104bは
、半導体層101bの上面に接し、半導体層101cの下面と接する。
【0093】
またトランジスタ100を覆って、絶縁膜112、絶縁膜113、及び絶縁膜116が
設けられている。
【0094】
図6(A)に示すように、半導体層101bの側面は、導電層104aおよび導電層1
04bと接する。また、ゲート電極103の電界によって、半導体層101bを電気的に
取り囲むことができる(導電体の電界によって、半導体を電気的に取り囲むトランジスタ
の構造を、surrounded channel(s-channel)構造とよぶ。
)。そのため、半導体層101bの全体(バルク)にチャネルが形成される場合がある。
s-channel構造では、トランジスタのソース-ドレイン間に大電流を流すことが
でき、導通時の電流(オン電流)を高くすることができる。
【0095】
高いオン電流が得られるため、s-channel構造は、微細化されたトランジスタ
に適した構造といえる。トランジスタを微細化できるため、該トランジスタを有する半導
体装置は、集積度の高い、高密度化された半導体装置とすることが可能となる。例えば、
トランジスタは、チャネル長が好ましくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下
、より好ましくは20nm以下の領域を有し、かつ、トランジスタは、チャネル幅が好ま
しくは40nm以下、さらに好ましくは30nm以下、より好ましくは20nm以下の領
域を有する。
【0096】
なお、チャネル長とは、例えば、トランジスタの上面図において、半導体(またはトラ
ンジスタがオン状態のときに半導体の中で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領
域、またはチャネルが形成される領域における、ソース(ソース領域またはソース電極)
とドレイン(ドレイン領域またはドレイン電極)との間の距離をいう。なお、一つのトラ
ンジスタにおいて、チャネル長が全ての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つの
トランジスタのチャネル長は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書で
は、チャネル長は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小
値または平均値とする。
【0097】
チャネル幅とは、例えば、半導体(またはトランジスタがオン状態のときに半導体の中
で電流の流れる部分)とゲート電極とが重なる領域、またはチャネルが形成される領域に
おける、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さをいう。なお、一つのトラン
ジスタにおいて、チャネル幅がすべての領域で同じ値をとるとは限らない。即ち、一つの
トランジスタのチャネル幅は、一つの値に定まらない場合がある。そのため、本明細書で
は、チャネル幅は、チャネルの形成される領域における、いずれか一の値、最大値、最小
値または平均値とする。
【0098】
なお、トランジスタの構造によっては、実際にチャネルの形成される領域におけるチャ
ネル幅(以下、実効的なチャネル幅と呼ぶ。)と、トランジスタの上面図において示され
るチャネル幅(以下、見かけ上のチャネル幅と呼ぶ。)と、が異なる場合がある。例えば
、立体的な構造を有するトランジスタでは、実効的なチャネル幅が、トランジスタの上面
図において示される見かけ上のチャネル幅よりも大きくなり、その影響が無視できなくな
る場合がある。例えば、微細かつ立体的な構造を有するトランジスタでは、半導体の上面
に形成されるチャネル領域の割合に対して、半導体の側面に形成されるチャネル領域の割
合が大きくなる場合がある。その場合は、上面図において示される見かけ上のチャネル幅
よりも、実際にチャネルの形成される実効的なチャネル幅の方が大きくなる。
【0099】
ところで、立体的な構造を有するトランジスタにおいては、実効的なチャネル幅の、実
測による見積もりが困難となる場合がある。例えば、設計値から実効的なチャネル幅を見
積もるためには、半導体の形状が既知という仮定が必要である。したがって、半導体の形
状が正確にわからない場合には、実効的なチャネル幅を正確に測定することは困難である
【0100】
そこで、本明細書では、トランジスタの上面図において、半導体とゲート電極とが重な
る領域における、ソースとドレインとが向かい合っている部分の長さである見かけ上のチ
ャネル幅を、「囲い込みチャネル幅(SCW:Surrounded Channel
Width)」と呼ぶ場合がある。また、本明細書では、単にチャネル幅と記載した場合
には、囲い込みチャネル幅または見かけ上のチャネル幅を指す場合がある。または、本明
細書では、単にチャネル幅と記載した場合には、実効的なチャネル幅を指す場合がある。
なお、チャネル長、チャネル幅、実効的なチャネル幅、見かけ上のチャネル幅、囲い込み
チャネル幅などは、断面TEM像などを取得して、その画像を解析することなどによって
、値を決定することができる。
【0101】
なお、トランジスタの電界効果移動度や、チャネル幅当たりの電流値などを計算して求
める場合、囲い込みチャネル幅を用いて計算する場合がある。その場合には、実効的なチ
ャネル幅を用いて計算する場合とは異なる値をとる場合がある。
【0102】
なお、導電層104a(及び/又は、導電層104b)の、少なくとも一部(又は全部
)は、半導体層101b(及び/又は、半導体層101a)などの半導体層の、表面、側
面、上面、及び/又は、下面の少なくとも一部(又は全部)に設けられている。
【0103】
または、導電層104a(及び/又は、導電層104b)の、少なくとも一部(又は全
部)は、半導体層101b(及び/又は、半導体層101a)などの半導体層の、表面、
側面、上面、及び/又は、下面の少なくとも一部(又は全部)と、接触している。または
、導電層104a(及び/又は、導電層104b)の、少なくとも一部(又は全部)は、
半導体層101b(及び/又は、半導体層101a)などの半導体層の少なくとも一部(
又は全部)と、接触している。
【0104】
または、導電層104a(及び/又は、導電層104b)の、少なくとも一部(又は全
部)は、半導体層101b(及び/又は、半導体層101a)などの半導体層の、表面、
側面、上面、及び/又は、下面の少なくとも一部(又は全部)と、電気的に接続されてい
る。または、導電層104a(及び/又は、導電層104b)の、少なくとも一部(又は
全部)は、半導体層101b(及び/又は、半導体層101a)などの半導体層の少なく
とも一部(又は全部)と、電気的に接続されている。
【0105】
または、導電層104a(及び/又は、導電層104b)の、少なくとも一部(又は全
部)は、半導体層101b(及び/又は、半導体層101a)などの半導体層の、表面、
側面、上面、及び/又は、下面の少なくとも一部(又は全部)に、近接して配置されてい
る。または、導電層104a(及び/又は、導電層104b)の、少なくとも一部(又は
全部)は、半導体層101b(及び/又は、半導体層101a)などの半導体層の少なく
とも一部(又は全部)に、近接して配置されている。
【0106】
または、導電層104a(及び/又は、導電層104b)の、少なくとも一部(又は全
部)は、半導体層101b(及び/又は、半導体層101a)などの半導体層の、表面、
側面、上面、及び/又は、下面の少なくとも一部(又は全部)の横側に配置されている。
または、導電層104a(及び/又は、導電層104b)の、少なくとも一部(又は全部
)は、半導体層101b(及び/又は、半導体層101a)などの半導体層の少なくとも
一部(又は全部)の横側に配置されている。
【0107】
または、導電層104a(及び/又は、導電層104b)の、少なくとも一部(又は全
部)は、半導体層101b(及び/又は、半導体層101a)などの半導体層の、表面、
側面、上面、及び/又は、下面の少なくとも一部(又は全部)の斜め上側に配置されてい
る。または、導電層104a(及び/又は、導電層104b)の、少なくとも一部(又は
全部)は、半導体層101b(及び/又は、半導体層101a)などの半導体層の少なく
とも一部(又は全部)の斜め上側に配置されている。
【0108】
または、導電層104a(及び/又は、導電層104b)の、少なくとも一部(又は全
部)は、半導体層101b(及び/又は、半導体層101a)などの半導体層の、表面、
側面、上面、及び/又は、下面の少なくとも一部(又は全部)の上側に配置されている。
または、導電層104a(及び/又は、導電層104b)の、少なくとも一部(又は全部
)は、半導体層101b(及び/又は、半導体層101a)などの半導体層の少なくとも
一部(又は全部)の上側に配置されている。
【0109】
半導体層101は、チャネルが形成される領域において、シリコン系半導体などの半導
体を含んでいてもよい。特に、半導体層101は、シリコンよりもバンドギャップの大き
な半導体を含むことが好ましい。好適には、半導体層101は酸化物半導体を含んで構成
される。シリコンよりもバンドギャップが広く、且つキャリア密度の小さい半導体材料を
用いると、トランジスタのオフ状態における電流を低減できるため好ましい。
【0110】
半導体層としてこのような材料を用いることで、電気特性の変動が抑制され、信頼性の
高いトランジスタを実現できる。
【0111】
なお、半導体層に適用可能な酸化物半導体の好ましい形態とその形成方法については、
後の実施の形態で詳細に説明する。
【0112】
なお、本明細書等において実質的に真性という場合、酸化物半導体層のキャリア密度は
、1×1017/cm未満、1×1015/cm未満、または1×1013/cm
未満、特に好ましくは8×1011/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm
未満、さらに好ましくは1×1010/cm未満であり、1×10-9/cm以上
であることを指す。酸化物半導体層を高純度真性化することで、トランジスタに安定した
電気特性を付与することができる。
【0113】
半導体層101bとして、例えばIn:Ga:Zn=1:1:1または3:1:2の原
子数比のIn-Ga-Zn系酸化物を用いた場合、半導体層101aまたは半導体層10
1cとして、例えばIn:Ga:Zn=1:3:2、1:3:4、1:3:6、1:6:
4、1:6:8、1:6:10、または1:9:6などの原子数比のIn-Ga-Zn系
酸化物を用いることができる。なお、半導体層101b、半導体層101aおよび半導体
層101cの原子数比はそれぞれ、誤差として上記の原子数比のプラスマイナス20%の
変動を含む。また、半導体層101aと半導体層101cは、組成の同じ材料を用いても
よいし、異なる組成の材料を用いてもよい。
【0114】
また、半導体層101bとしてIn-M-Zn系酸化物を用いた場合、半導体層101
bとなる半導体膜を成膜するために用いるターゲットは、該ターゲットが含有する金属元
素の原子数比をIn:M:Zn=x:y:zとしたときに、x/yの値が1/
3以上6以下、好ましくは1以上6以下であり、z/yが1/3以上6以下、好まし
くは1以上6以下の原子数比の酸化物を用いることが好ましい。なお、z/yを6以
下とすることで、後述するCAAC-OS膜が形成されやすくなる。ターゲットの金属元
素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:1:1、3:1:2などがある。
【0115】
また、半導体層101a、半導体層101cとしてIn-M-Zn系酸化物を用いた場
合、半導体層101a、半導体層101cとなる半導体膜を成膜するために用いるターゲ
ットは、該ターゲットが含有する金属元素の原子数比をIn:M:Zn=x:y:z
としたときに、x/y<x/yであり、z/yの値が1/3以上6以下、
好ましくは1以上6以下の原子数比の酸化物を用いることが好ましい。なお、z/y
を6以下とすることで、後述するCAAC-OS膜が形成されやすくなる。ターゲットの
金属元素の原子数比の代表例としては、In:M:Zn=1:3:4、1:3:6、1:
3:8などがある。
【0116】
酸化物半導体をスパッタリング法で成膜する場合、ターゲットの原子数比からずれた原
子数比の膜が形成される場合がある。特に、亜鉛は、ターゲットの原子数比よりも膜の原
子数比が小さくなる場合がある。具体的には、ターゲットに含まれる亜鉛の原子数比の4
0atomic%以上90atomic%程度以下となる場合がある。
【0117】
導電層104a及び導電層104bは、一方がソース電極として機能し、他方がドレイ
ン電極として機能する。
【0118】
プラグ121は、導電層104a、半導体層101a、半導体層101b、半導体層1
01c、絶縁膜114およびバリア膜111に設けられた開口を介して導電層151と電
気的に接続する。また、導電層104aは、プラグ121を介して導電層151と電気的
に接続する。
【0119】
導電層104a及び導電層104bは、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅
、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、またはタングステンなどの
金属、またはこれを主成分とする合金を単層構造または積層構造として用いる。例えば、
シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、チタン膜上にアルミニウム膜を積層する二層
構造、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アル
ミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タ
ングステン膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン
膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチ
タン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と
、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層
し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。
なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0120】
ゲート絶縁膜102は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、
酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムまたはGa-Zn系金属酸化物、窒化
シリコンなどを用いればよく、積層または単層で設ける。
【0121】
また、ゲート絶縁膜102として、ハフニウムシリケート(HfSiO)、窒素が添
加されたハフニウムシリケート(HfSi)、窒素が添加されたハフニウムア
ルミネート(HfAl)、酸化イットリウムなどのhigh-k材料を用いて
もよい。
【0122】
また、ゲート絶縁膜102として、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化シリコ
ン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジル
コニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウムおよび酸化タンタルなどの酸化
物絶縁膜、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム
などの窒化物絶縁膜、または上記材料を混合した膜を用いて形成することができる。
【0123】
また、ゲート絶縁膜102として、絶縁膜114と同様に、化学量論的組成を満たす酸
素よりも多くの酸素を含む酸化物絶縁膜を用いることが好ましい。
【0124】
なお、特定の材料をゲート絶縁膜に用いると、特定の条件でゲート絶縁膜に電子を捕獲
せしめて、しきい値電圧を増大させることもできる。例えば、酸化シリコンと酸化ハフニ
ウムの積層膜のように、ゲート絶縁膜の一部に酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化
タンタルのような電子捕獲準位の多い材料を用い、より高い温度(半導体装置の使用温度
あるいは保管温度よりも高い温度、あるいは、125℃以上450℃以下、代表的には1
50℃以上300℃以下)の下で、ゲート電極の電位をソース電極やドレイン電極の電位
より高い状態を、1秒以上、代表的には1分以上維持することで、半導体層からゲート電
極に向かって、電子が移動し、そのうちのいくらかは電子捕獲準位に捕獲される。
【0125】
このように電子捕獲準位に必要な量の電子を捕獲させたトランジスタは、しきい値電圧
がプラス側にシフトする。ゲート電極の電圧の制御によって電子の捕獲する量を制御する
ことができ、それに伴ってしきい値電圧を制御することができる。また、電子を捕獲せし
める処理は、トランジスタの作製過程におこなえばよい。
【0126】
例えば、トランジスタのソース電極あるいはドレイン電極に接続する配線メタルの形成
後、あるいは、前工程(ウェハー処理)の終了後、あるいは、ウェハーダイシング工程後
、パッケージ後等、工場出荷前のいずれかの段階で行うとよい。いずれの場合にも、その
後に125℃以上の温度に1時間以上さらされないことが好ましい。
【0127】
ゲート電極103は、例えばアルミニウム、クロム、銅、タンタル、チタン、モリブデ
ン、タングステンから選ばれた金属、または上述した金属を成分とする合金か、上述した
金属を組み合わせた合金等を用いて形成することができる。また、マンガン、ジルコニウ
ムのいずれか一または複数から選択された金属を用いてもよい。また、リン等の不純物元
素をドーピングした多結晶シリコンに代表される半導体、ニッケルシリサイド等のシリサ
イドを用いてもよい。また、ゲート電極103は、単層構造でも、二層以上の積層構造と
してもよい。例えば、シリコンを含むアルミニウム膜の単層構造、アルミニウム膜上にチ
タン膜を積層する二層構造、窒化チタン膜上にチタン膜を積層する二層構造、窒化チタン
膜上にタングステン膜を積層する二層構造、窒化タンタル膜または窒化タングステン膜上
にタングステン膜を積層する二層構造、チタン膜と、そのチタン膜上にアルミニウム膜を
積層し、さらにその上にチタン膜を形成する三層構造等がある。また、アルミニウムに、
チタン、タンタル、タングステン、モリブデン、クロム、ネオジム、スカンジウムから選
ばれた一または複数の金属を組み合わせた合金膜、もしくは窒化膜を用いてもよい。
【0128】
また、ゲート電極103は、インジウム錫酸化物、酸化タングステンを含むインジウム
酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸
化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化シリコンを添
加したインジウム錫酸化物等の透光性を有する導電性材料を適用することもできる。また
、上記透光性を有する導電性材料と、上記金属の積層構造とすることもできる。
【0129】
また、ゲート電極103とゲート絶縁膜102の間に、In-Ga-Zn系酸窒化物半
導体膜、In-Sn系酸窒化物半導体膜、In-Ga系酸窒化物半導体膜、In-Zn系
酸窒化物半導体膜、Sn系酸窒化物半導体膜、In系酸窒化物半導体膜、金属窒化膜(I
nN、ZnN等)等を設けてもよい。これらの膜は5eV以上、好ましくは5.5eV以
上の仕事関数を有し、酸化物半導体の電子親和力よりも大きい値であるため、酸化物半導
体を用いたトランジスタのしきい値電圧をプラスにシフトすることができ、所謂ノーマリ
ーオフ特性のスイッチング素子を実現できる。例えば、In-Ga-Zn系酸窒化物半導
体膜を用いる場合、少なくとも半導体層101より高い窒素濃度、具体的には7原子%以
上のIn-Ga-Zn系酸窒化物半導体膜を用いる。
【0130】
絶縁膜112は、バリア膜111と同様、水や水素が拡散しにくい材料を用いることが
好ましい。また、特に、絶縁膜112として酸素を透過しにくい材料を用いることが好ま
しい。
【0131】
酸素を透過しにくい材料を含む絶縁膜112で半導体層101を覆うことで、半導体層
101から絶縁膜112よりも上方に酸素が放出されることを抑制することができる。さ
らに、絶縁膜114から脱離した酸素を絶縁膜112よりも下側に閉じ込めることができ
るため、半導体層101に供給しうる酸素の量を増大させることができる。
【0132】
また、水や水素を透過しにくい絶縁膜112により、外部から酸化物半導体にとっての
不純物である水や水素が混入することを抑制でき、トランジスタ100の電気特性の変動
が抑制され、信頼性の高いトランジスタを実現できる。
【0133】
なお、絶縁膜112よりも下側に、絶縁膜114と同様の、加熱により酸素が脱離する
絶縁膜を設け、ゲート絶縁膜102を介して半導体層101の上側からも酸素を供給する
構成としてもよい。
【0134】
また、図6(B)に示すように、トランジスタのチャネル幅方向の断面において、ゲー
ト電極103が半導体層101bの上面及び側面に面して設けられることで、半導体層1
01bの上面近傍だけでなく側面近傍にまでチャネルが形成され、実効的なチャネル幅が
増大し、オン状態における電流(オン電流)を高めることができる。特に、半導体層10
1bの幅が極めて小さい(例えば50nm以下、好ましくは30nm以下、より好ましく
は20nm以下)場合には、半導体層101bの内部にまでチャネルが形成される領域が
広がるため、微細化するほどオン電流に対する寄与が高まる。
【0135】
図17(A)、(B)には、半導体装置が有するトランジスタ100の一例を示す。図
17(A)、(B)に示すトランジスタ100は、図6で例示したトランジスタ100と
比較して、半導体層101cが導電層104a及び導電層104bの下面に接して設けら
れている点で主に相違している。ここで図17(B)は、図17(A)に示す一点鎖線A
-Bにおける断面である。
【0136】
このような構成とすることで、半導体層101a、半導体層101b及び半導体層10
1cを構成するそれぞれの膜の成膜時において、大気に触れさせることなく連続的に成膜
することができるため、各々の界面欠陥を低減することができる。
【0137】
また、トランジスタ100は図35(A)に示す構成としてもよい。図35(A)では
、半導体層101aおよび半導体層101bを形成した後、半導体層101cを形成し、
半導体層101aおよび半導体層101bの側面を半導体層101cが覆っている。また
、トランジスタ100は図35(B)に示す構成としてもよい。図35(B)が図35
A)と異なる点は、図35(A)ではゲート電極103と導電層104a、およびゲート
電極103と導電層104bが、重なる構造なのに対し、図35(B)ではゲート電極1
03と導電層104a、および導電層104bは図35(B)に示す断面においては重な
らない。
【0138】
また、図6(A)、(B)や図17(A)、(B)では、半導体層101bに接して半
導体層101a及び半導体層101cを設ける構成を説明したが、半導体層101aまた
は半導体層101cの一方、またはその両方を設けない構成としてもよい。
【0139】
なお、図6(B)に示す構成は、ゲート絶縁膜102と半導体層101cの端部が概略
一致するように加工され、ゲート電極103はゲート絶縁膜よりも内側に位置するように
加工される例を示すが、図17(C)に示すトランジスタ100の例のように、ゲート絶
縁膜102、半導体層101cおよびゲート電極103の端部が概略一致するように加工
されてもよい。あるいは、図17(D)に示すトランジスタ100の例のように、ゲート
絶縁膜102、半導体層101cおよびゲート電極の端部がそれぞれ一致しないように加
工されてもよい。
【0140】
以上がトランジスタ100についての説明である。
【0141】
トランジスタ100を覆う絶縁膜116は、その下層の凹凸形状を被覆する平坦化層と
して機能する。また絶縁膜113は、絶縁膜116を成膜する際の保護膜としての機能を
有していてもよい。絶縁膜113は不要であれば設けなくてもよい。
【0142】
絶縁膜112、絶縁膜113及び絶縁膜116には、導電層104bと電気的に接続す
るプラグ123、プラグ122等が埋め込まれている。
【0143】
絶縁膜116の上部には、プラグ123と電気的に接続する配線124等が設けられて
いる。
【0144】
ここで、図6(A)に示す配線124が図5に示す配線BLに相当する。同様に、図6
(B)に示す配線166が配線BGに相当し、図7に示す配線142が配線CLに相当す
る。また図示しないが、図6のゲート電極103に接続する配線が配線WLに相当する。
また、トランジスタ130の低抵抗層133bが、配線SLに相当する。またトランジス
タ130のゲート電極135、容量素子150の第1の電極として機能するプラグ121
、及びトランジスタ100の導電層104aを含むノードが、図5(A)に示すノードF
Nに相当する。
【0145】
また図6において、水素を含む絶縁膜136上に設けられる絶縁膜137として、バリ
ア膜111と同様の材料を含む絶縁膜137を設ける構成とすることが好ましい。このよ
うな構成とすることで、水素を含む絶縁膜136中に残存した水や水素が上方に拡散する
ことを効果的に抑制することができる。この場合、絶縁膜137を形成する前と、絶縁膜
137を形成した後であってバリア膜111を形成するよりも前に、水や水素を除去する
ための加熱処理を合計2回以上行ってもよい。
【0146】
配線124、配線142、配線166等の配線は、材料として金属材料、合金材料、ま
たは金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。特に、耐熱性と導電性を両
立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特にタング
ステンを用いることが好ましい。
【0147】
また、導電層125、導電層151、導電層152、導電層153a、導電層153b
、導電層154a乃至導電層154e等の導電層や、プラグ121乃至プラグ123、プ
ラグ126乃至プラグ128、プラグ129a乃至プラグ129d、プラグ139乃至プ
ラグ141、プラグ164、プラグ165等のプラグには、材料として金属材料、合金材
料、または金属酸化物材料などの導電性材料を用いることができる。特に、耐熱性と導電
性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましく、特に
タングステンを用いることが好ましい。また、窒化チタンやチタンなどの材料を、他の材
料と積層して用いてもよい。例えば、窒化チタンやチタンを用いることにより、開口部へ
の密着性を向上させることができる。また導電層125、導電層151、導電層152、
導電層153a、導電層153b、導電層154a乃至導電層154e等の導電層や、プ
ラグ121乃至123、プラグ126乃至プラグ128、プラグ129a乃至プラグ12
9d、プラグ139乃至プラグ141、プラグ164、プラグ165等のプラグ等は、絶
縁膜に埋め込まれるように設けられ、各々の上面は平坦化されていることが好ましい。
【0148】
ここで、プラグ121は、トランジスタ100の半導体層101、導電層104aおよ
び導電層151に接する。まず、トランジスタ100の半導体層101および導電層10
4aと接することにより、トランジスタ100のソース領域またはドレイン領域に繋がる
配線として機能する。また、導電層151と接することにより、容量素子150の一方の
電極と繋がる配線として機能する。プラグ121が、トランジスタ100を貫通し、容量
素子150の一方の電極である導電層151まで到達することにより、一つのプラグで、
容量素子150の電極と、トランジスタ100のソース領域またはドレイン領域と繋がる
配線を兼ねることができる。
【0149】
同様に、プラグ122は、トランジスタ100の半導体層101、導電層104bおよ
び導電層125に接する。まず、トランジスタ100の半導体層101および導電層10
4bと接することにより、トランジスタ100のソース領域またはドレイン領域に繋がる
配線として機能する。また、導電層125と接することにより、トランジスタ130のソ
ース領域またはドレイン領域と接続する配線として機能する。プラグ122が、トランジ
スタ100を貫通し、導電層125まで到達することにより、一つのプラグで、トランジ
スタ130のソース領域またはドレイン領域と繋がる配線と、トランジスタ100のソー
ス電極またはドレイン電極と繋がる配線を兼ねることができる。
【0150】
次に、プラグ121およびプラグ122を用いて回路面積を縮小できる例を、図30
用いて説明する。また、図31に示す構成は、プラグ121およびプラグ122を用いな
い例を示す。バリア膜211aについては、バリア膜111の記載を参照する。また絶縁
膜215aについては、絶縁膜115aの記載を参照する。導電層104aと容量素子1
50とのコンタクト221は、半導体層101bよりも外側に形成されており、素子面積
の増大の要因となる。また、同様に導電層104bと、トランジスタ130のソース領域
またはドレイン領域に接続する導電層とのコンタクト222は、半導体層101bよりも
外側に形成されており、素子面積の増大の要因となる。
【0151】
図30(A)に示す構成例では、トランジスタ100を貫通して容量素子150の一方
の電極に接続するプラグ121と、トランジスタ100を貫通してトランジスタ130の
ソース電極またはドレイン領域に電気的に接続する導電層251aと接続するプラグ12
2を用いる例を示す。バリア膜211a乃至バリア膜211fは、バリア膜111の記載
を参照する。また、絶縁膜215a乃至絶縁膜215fは、絶縁膜115aの記載を参照
する。導電層251は、導電層151の記載を参照する。導電層251aは、導電層12
5の記載を参照する。なお、図30(B)は、図30(A)に示す構成を2つ並べた図で
ある。なお、図30においては導電層104aおよび導電層104bを設けない例を示す
が、設けてもよい。
【0152】
図31においては、導電層104aと容量素子150とのコンタクト221と、プラグ
321と導電層104aのコンタクト223との、2つのコンタクトが設けられているの
に対し、図30では、その2つのコンタクトの役割をプラグ121で担うことができる。
同様に、図31においては、導電層104bと導電層251aとのコンタクト222と、
プラグ322と導電層104bとのコンタクト224との、2つのコンタクトが設けられ
ているのに対し、図30では、その2つのコンタクトの役割をプラグ122で担うことが
できる。このように、プラグ121とプラグ122を用いることにより、図30に示す構
成において容量素子150をトランジスタ100と同程度の幅で作製することができ、素
子の占有面積を縮小することができる。
【0153】
次に、図30に示す断面図において、層281乃至層287の上面図を図32(A)に
示す。また、図31に示す断面図において、層291乃至層295の上面図を図32(B
)に示す。各上面図は、メモリセルの最小構成単位を示すものである。図30の構造を用
いることにより、図31と比較して、約半分の面積まで縮小できることがわかる。
【0154】
また、図33に示す半導体装置の断面のように、平坦化のための絶縁膜261を設けて
からプラグ121およびプラグ122を形成してもよい。
【0155】
本発明の一態様の半導体装置は、トランジスタ130と、第1のトランジスタ130の
上方に位置するトランジスタ100とを有するため、これらを積層して設けることにより
素子の占有面積を縮小することができる。また、プラグ121や、プラグ122を設ける
ことにより素子の占有面積を縮小することができる。よって、回路面積が小さく、かつ、
良好な特性を有する半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様を例えば
メモリ等を有する半導体装置に用いた場合、小さな回路面積でもメモリ容量を高め、かつ
保持特性の良好なメモリを有する半導体装置を提供することができる。さらに、トランジ
スタ130とトランジスタ100との間に設けられたバリア膜111により、これよりも
下層に存在する水や水素等の不純物がトランジスタ100側に拡散することを抑制できる
。さらに、当該バリア膜111を挟んで、一部が第1の電極として機能する配線と、一部
が第2の電極として機能する配線が設けられ、容量素子150を形成するため、容量素子
150を作製するための工程を別途追加することなく容量素子150を容易に作製するこ
とができる。
【0156】
以上が構成例についての説明である。
【0157】
[作製方法例]
以下では、上記構成例で示した半導体装置の作製方法の一例について、図8乃至図12
の断面図を用いて説明する。
【0158】
まず、半導体基板131を準備する。半導体基板131としては、例えば単結晶シリコ
ン基板(p型の半導体基板、またはn型の半導体基板を含む)、炭化シリコンや窒化ガリ
ウムからなる化合物半導体基板などを用いることができる。また、半導体基板131とし
て、SOI基板を用いてもよい。以下では、半導体基板131として単結晶シリコンを用
いた場合について説明する。
【0159】
続いて、半導体基板131に素子分離層(図示せず)を形成する。素子分離層はLOC
OS(Local Oxidation of Silicon)法またはSTI(Sh
allow Trench Isolation)法、メサ分離法等を用いて形成すれば
よい。
【0160】
同一基板上にp型のトランジスタとn型のトランジスタを形成する場合、半導体基板1
31の一部にnウェルまたはpウェルを形成してもよい。例えば、n型の半導体基板13
1にp型の導電性を付与するホウ素などの不純物元素を添加してpウェルを形成し、同一
基板上にn型のトランジスタとp型のトランジスタを形成してもよい。
【0161】
続いて、半導体基板131上にゲート絶縁膜134となる絶縁膜を形成する。例えば、
半導体基板131の表面を酸化し酸化シリコン膜を形成する。または、熱酸化法により酸
化シリコンを形成した後に、窒化処理を行うことによって酸化シリコン膜の表面を窒化す
ることにより、酸化シリコン膜と、酸化窒化シリコン膜の積層構造を形成してもよい。ま
たは、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、高誘電率物質(high-k材料ともいう)で
あるタンタル酸化物、酸化ハフニウム、酸化ハフニウムシリケート、酸化ジルコニウム、
酸化アルミニウム、酸化チタンなどの金属酸化物、または酸化ランタンなどの希土類酸化
物等を用いてもよい。
【0162】
当該絶縁膜は、スパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Depo
sition)法(熱CVD法、MOCVD(Metal Organic CVD)法
、PECVD(Plasma Enhanced CVD)法等を含む)、MBE(Mo
lecular Beam Epitaxy)法、ALD(Atomic Layer
Deposition)法、またはPLD(Pulsed Laser Deposit
ion)法等で成膜することにより形成してもよい。
【0163】
続いて、ゲート電極135となる導電膜を成膜する。導電膜としては、タンタル、タン
グステン、チタン、モリブデン、クロム、ニオブ等から選択された金属、またはこれらの
金属を主成分とする合金材料若しくは化合物材料を用いることが好ましい。また、リン等
の不純物を添加した多結晶シリコンを用いることができる。また、金属窒化物膜と上記の
金属膜の積層構造を用いてもよい。金属窒化物としては、窒化タングステン、窒化モリブ
デン、窒化チタンを用いることができる。金属窒化物膜を設けることにより、金属膜の密
着性を向上させることができ、剥離を防止することができる。
【0164】
導電膜は、スパッタリング法、蒸着法、CVD法(熱CVD法、MOCVD法、PEC
VD法等を含む)などにより成膜することができる。またプラズマによるダメージを減ら
すには、熱CVD法、MOCVD法あるいはALD法が好ましい。
【0165】
続いて、当該導電膜上にリソグラフィ法等を用いてレジストマスクを形成し、当該導電
膜の不要な部分を除去する。その後、レジストマスクを除去することにより、ゲート電極
135を形成することができる。
【0166】
ここで、被加工膜の加工方法について説明する。被加工膜を微細に加工する場合には、
様々な微細加工技術を用いることができる。例えば、フォトリソグラフィ法等で形成した
レジストマスクに対してスリミング処理を施す方法を用いてもよい。また、フォトリソグ
ラフィ法等でダミーパターンを形成し、当該ダミーパターンにサイドウォールを形成した
後にダミーパターンを除去し、残存したサイドウォールをレジストマスクとして用いて、
被加工膜をエッチングしてもよい。また被加工膜のエッチングとして、高いアスペクト比
を実現するために、異方性のドライエッチングを用いることが好ましい。また、無機膜ま
たは金属膜からなるハードマスクを用いてもよい。
【0167】
レジストマスクの形成に用いる光は、例えばi線(波長365nm)、g線(波長43
6nm)、h線(波長405nm)、またはこれらを混合させた光を用いることができる
。そのほか、紫外線やKrFレーザ光、またはArFレーザ光等を用いることもできる。
また、液浸露光技術により露光を行ってもよい。また、露光に用いる光として、極端紫外
光(EUV:Extreme Ultra-violet)やX線を用いてもよい。また
、露光に用いる光に換えて、電子ビームを用いることもできる。極端紫外光、X線または
電子ビームを用いると、極めて微細な加工が可能となるため好ましい。なお、電子ビーム
などのビームを走査することにより露光を行う場合には、フォトマスクは不要である。
【0168】
また、レジストマスクとなるレジスト膜を形成する前に、被加工膜とレジスト膜との密
着性を改善する機能を有する有機樹脂膜を形成してもよい。当該有機樹脂膜は、例えばス
ピンコート法などにより、その下層の段差を被覆して表面を平坦化するように形成するこ
とができ、当該有機樹脂膜の上層に設けられるレジストマスクの厚さのばらつきを低減で
きる。また特に微細な加工を行う場合には、当該有機樹脂膜として、露光に用いる光に対
する反射防止膜として機能する材料を用いることが好ましい。このような機能を有する有
機樹脂膜としては、例えばBARC(Bottom Anti-Reflection
Coating)膜などがある。当該有機樹脂膜は、レジストマスクの除去と同時に除去
するか、レジストマスクを除去した後に除去すればよい。
【0169】
ゲート電極135の形成後、ゲート電極135の側面を覆うサイドウォールを形成して
もよい。サイドウォールは、ゲート電極135の厚さよりも厚い絶縁膜を成膜した後に、
異方性エッチングを施し、ゲート電極135の側面部分のみ当該絶縁膜を残存させること
により形成できる。
【0170】
図8(A)では、サイドウォールの形成時にゲート絶縁膜のエッチングを行わない例を
示すが、サイドウォールの形成時にゲート絶縁膜134となる絶縁膜も同時にエッチング
してもよい。この場合はゲート電極135及びサイドウォールの下部にゲート絶縁膜13
4が形成される。
【0171】
続いて、半導体基板131のゲート電極135(及びサイドウォール)が設けられてい
ない領域にリンなどのn型の導電性を付与する元素、またはホウ素などのp型の導電性を
付与する元素を添加する。この段階における断面概略図が図8(A)に相当する。
【0172】
続いて、絶縁膜136を形成した後、上述した導電性を付与する元素の活性化のための
第1の加熱処理を行う。
【0173】
絶縁膜136は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シ
リコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、窒化アルミ
ニウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける。絶縁膜136はスパッタリング法
、CVD法(熱CVD法、MOCVD法、PECVD法等を含む)、MBE法、ALD法
またはPLD法などを用いて形成することができる。特に、当該絶縁膜をCVD法、好ま
しくはプラズマCVD法によって成膜すると、被覆性を向上させることができるため好ま
しい。またプラズマによるダメージを減らすには、熱CVD法、MOCVD法あるいはA
LD法が好ましい。
【0174】
第1の加熱処理は、希ガスや窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気下、または減圧雰囲気下
にて、例えば400℃以上基板の歪み点未満で行うことができる。
【0175】
この段階でトランジスタ130が形成される。また、トランジスタ130を形成するの
と同様の方法で、トランジスタ160を形成してもよい。
【0176】
続いて、絶縁膜137及び絶縁膜138を形成する。
【0177】
絶縁膜137は、絶縁膜136に用いることのできる材料のほか、酸素と水素を含む窒
化シリコン(SiNOH)を用いると、加熱によって脱離する水素の量を大きくすること
ができるため好ましい。また、絶縁膜138は、絶縁膜136に用いることのできる材料
のほか、TEOS(Tetra-Ethyl-Ortho-Silicate)若しくは
シラン等と、酸素若しくは亜酸化窒素等とを反応させて形成した段差被覆性の良い酸化珪
素を用いることが好ましい。
【0178】
絶縁膜137及び絶縁膜138は、例えばスパッタリング法、CVD法(熱CVD法、
MOCVD法、PECVD法等を含む)、MBE法、ALD法またはPLD法などを用い
て形成することができる。特に、当該絶縁膜をCVD法、好ましくはプラズマCVD法に
よって成膜すると、被覆性を向上させることができるため好ましい。またプラズマによる
ダメージを減らすには、熱CVD法、MOCVD法あるいはALD法が好ましい。
【0179】
続いて絶縁膜138の上面をCMP法等を用いて平坦化する。また、絶縁膜138とし
て平坦化膜を用いてもよい。その場合は、必ずしもCMP法等で平坦化しなくともよい。
平坦化膜の形成には、例えば常圧CVD法や、塗布法などを用いることができる。常圧C
VD法を用いて形成できる膜としては例えば、BPSG(Boron Phosphor
us Silicate Glass)等が挙げられる。また、塗布法を用いて形成でき
る膜としては例えば、HSQ(水素シルセスキオキサン)等が挙げられる。
【0180】
その後、半導体層132中のダングリングボンドを絶縁膜137から脱離する水素によ
って終端するための第2の加熱処理を行う。また、第2の加熱処理によって各々の層に含
まれる水や水素を脱離させることにより、水や水素の含有量を低減することができる。
【0181】
第2の加熱処理は、上記積層構造の説明で例示した条件で行うことができる。例えば第
1の加熱処理で説明した条件などを用いることができる。
【0182】
続いて、絶縁膜136、絶縁膜137、及び絶縁膜138に低抵抗層133a、低抵抗
層133b及びゲート電極135等に達する開口を形成する(図8(B)参照。)。その
後、開口を埋めるようにプラグ139等となる導電膜181を形成する(図8(C)参照
。)。その後、絶縁膜138の上面が露出するように、導電膜181に平坦化処理を施す
ことにより、プラグ139やプラグ140等を形成する(図8(D)参照。)。導電膜1
81の形成は、例えばスパッタリング法、CVD法(熱CVD法、MOCVD法、PEC
VD法等を含む)、MBE法、ALD法またはPLD法などを用いて形成することができ
る。
【0183】
続いて、絶縁膜138上に絶縁膜115eを成膜し、開口部を形成する。その後、開口
を埋めるように導電膜を形成し、絶縁膜115eの上面が露出するように、該導電膜に平
坦化処理を施すことにより、導電層144および導電層153b等を形成する(図8(E
)参照。)。図6に示す例では、導電層153bは、容量素子の電極として機能する。
【0184】
続いて、バリア膜111eを形成し、次いで絶縁膜115dを形成する(図9(A)参
照。)。次いで、絶縁膜115dに開口部を形成する。その後、開口を埋めるように導電
膜を形成し、絶縁膜115eの上面が露出するように、該導電膜に平坦化処理を施すこと
により、導電層154dおよび導電層154e等を形成する(図9(B)参照。)。図6
に示す例では、導電層154dおよび導電層154eは、容量素子の電極として機能する
。その後、バリア膜111dを成膜する(図9(C)参照。)。
【0185】
続いて、バリア膜111d、絶縁膜115dおよびバリア膜111eに開口部を形成す
る。その後、開口を埋めるようにプラグ127等となる導電膜を形成し、バリア膜111
dの上面が露出するように、該導電膜に平坦化処理を施すことにより、プラグ127およ
びプラグ145等を形成する(図9(D)参照。)。
【0186】
続いて、絶縁膜115cを形成する(図10(A)参照。)。次いで、絶縁膜115c
に開口部を形成する。その後、開口を埋めるように導電膜を形成し、絶縁膜115cの上
面が露出するように、該導電膜に平坦化処理を施すことにより、導電層146および導電
層153a等を形成する(図10(B)参照。)。導電層153aは、容量素子の電極と
して機能する。
【0187】
次に、導電層154a、導電層154b、プラグ126およびプラグ147を、図9
示したのと同様な方法を用いて作製した後、バリア膜111aを成膜し、バリア膜111
aの導電層143と接する領域に開口部を設けた後、導電膜を成膜する。その後、レジス
トマスクを形成し、該導電膜の不要な部分をエッチングにより除去する。その後レジスト
マスクを除去することにより、導電層152、導電層154eおよび第2のゲート電極と
して機能する導電層105を形成することができる(図10(C)参照。)。
【0188】
ここで、図9(D)において、バリア膜111dには平坦化処理が施されている。図9
乃至図10に示すように、バリア膜111dをそのまま容量素子の絶縁膜として用いても
よい。あるいは図9(D)乃至図10(C)の工程は、例えば以下に示す図13(A)乃
図14(B)の工程に置き換えてもよい。バリア膜111dを一度除去してから再度、
成膜を行ってもよい。その例を図13乃至図14に示す。例えばCMP法などにより平坦
化処理を行った場合に、膜の表面等に、時としてダメージなどが生じる場合がある。その
場合は、以下に説明するように、ダメージが生じた膜、あるいは膜の表面領域を除去して
から再度、容量素子に用いる絶縁膜を成膜することにより、容量特性をより向上させるこ
とができる。
【0189】
図13(A)は、図9(D)において説明した通り、バリア膜111d及びプラグ12
7等となる導電膜に平坦化処理を施した状態を示す。その後、図13(B)に示すように
、バリア膜111dをエッチングなどにより除去する。その後、バリア膜111fを形成
する。次に、レジストマスクを形成し、エッチングを行うことによりバリア膜111fの
うち、プラグ127やプラグ145などのプラグ上のバリア膜111fに開口部を設ける
。その後、レジストマスクを除去する(図13(C)参照。)。
【0190】
次に、絶縁膜115cを形成する。その後、レジストマスクを形成し、エッチングを行
うことにより絶縁膜115cに開口部を設ける。次いで、該開口部を埋め込むように導電
層146、導電層153a等を形成する(図14(A)参照。)。
【0191】
次に、バリア膜111cを成膜し、次いで、絶縁膜115bを成膜する。その後、導電
層154c、導電層154d、バリア膜111f、プラグ127およびプラグ145を形
成したのと同様の方法を用いて、導電層154a、導電層154b、バリア膜111g、
プラグ126およびプラグ147を形成する。
【0192】
次に、絶縁膜115aを成膜する。その後、導電層146および導電層153aを形成
したのと同様の方法を用いて、導電層125および導電層151を形成する。その後、バ
リア膜111aを成膜する。その後、バリア膜111aに開口部を設けた後、導電膜を形
成し、レジストマスク等を用いて導電層105、導電層152および導電層154eを形
成する(図14(B)参照。)。以上が、図9(D)乃至図10(C)の工程を図13
A)乃至図14(B)の工程に置き換えた場合の説明である。
【0193】
絶縁膜115a乃至絶縁膜115eは、絶縁膜136等と同様の材料および方法により
形成することができる。
【0194】
バリア膜111a乃至バリア膜111gは、例えばスパッタリング法、CVD法(熱C
VD法、MOCVD法、PECVD法等を含む)、MBE法、ALD法またはPLD法な
どを用いて形成することができる。特に、当該絶縁膜をCVD法、好ましくはプラズマC
VD法によって成膜すると、被覆性を向上させることができるため好ましい。またプラズ
マによるダメージを減らすには、熱CVD法、MOCVD法あるいはALD法が好ましい
。バリア膜111a乃至バリア膜111gに用いることができる材料は、バリア膜111
の記載を参照すればよい。
【0195】
絶縁膜115eを形成した後、第3の加熱処理を行うことが好ましい。第3の加熱処理
により、各層に含まれる水や水素を脱離させることにより、水や水素の含有量を低減する
ことができる。バリア膜111eを形成する直前に第3の加熱処理を施し、バリア膜11
1eよりも下層に含まれる水素や水を徹底的に除去した後に、バリア膜111eを形成す
ることで、後の工程でバリア膜111eよりも下層側に水や水素が再度拡散してしまうこ
とを抑制することができる。
【0196】
第3の加熱処理は、上記積層構造の説明で例示した条件で行うことができる。例えば第
1の加熱処理で説明した条件などを用いることができる。なお、絶縁膜115a乃至絶縁
膜115dを成膜した後にも、それぞれの絶縁膜の成膜後に同様の熱処理を行ってもよい
【0197】
この段階で、容量素子150が形成される。容量素子150は、一部が第1の電極とし
て機能する導電層152および導電層154a乃至導電層154eと、一部が第2の電極
として機能する導電層151、導電層153aおよび導電層153bと、これらに挟持さ
れたバリア膜111a乃至バリア膜111eによって構成されている。
【0198】
次に、絶縁膜114を成膜する。絶縁膜114は、例えばスパッタリング法、CVD法
(熱CVD法、MOCVD法、PECVD法等を含む)、MBE法、ALD法またはPL
D法などを用いて形成することができる。特に、当該絶縁膜をCVD法、好ましくはプラ
ズマCVD法によって成膜すると、被覆性を向上させることができるため好ましい。また
プラズマによるダメージを減らすには、熱CVD法、MOCVD法あるいはALD法が好
ましい。
【0199】
絶縁膜114に酸素を過剰に含有させるためには、例えば酸素雰囲気下にて絶縁膜11
4の成膜を行えばよい。または、成膜後の絶縁膜114に酸素を導入して酸素を過剰に含
有する領域を形成してもよく、双方の手段を組み合わせてもよい。
【0200】
例えば、成膜後の絶縁膜114に酸素(少なくとも酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオ
ンのいずれかを含む)を導入して酸素を過剰に含有する領域を形成する。酸素の導入方法
としては、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プ
ラズマ処理などを用いることができる。
【0201】
酸素導入処理には、酸素を含むガスを用いることができる。酸素を含むガスとしては、
酸素、一酸化二窒素、二酸化窒素、二酸化炭素、一酸化炭素などを用いることができる。
また、酸素導入処理において、酸素を含むガスに希ガスを含ませてもよい。または、水素
等を含ませてもよい。例えば、二酸化炭素、水素およびアルゴンの混合ガスを用いるとよ
い。
【0202】
また、絶縁膜114を成型した後、その上面の平坦性を高めるためにCMP法等を用い
た平坦化処理を行ってもよい。
【0203】
次に、半導体層101aとなる半導体膜と、半導体層101bとなる半導体膜を順に成
膜する。当該半導体膜は、大気に触れさせることなく連続して成膜することが好ましい。
半導体層101aとなる半導体、および半導体層101bとなる半導体は、スパッタリン
グ法、CVD法、MBE法またはPLD法、ALD法などを用いて成膜すればよい。
【0204】
なお、半導体層101aとなる半導体、および半導体層101bとなる半導体として、
In-Ga-Zn酸化物層をMOCVD法によって成膜する場合、原料ガスとしてトリメ
チルインジウム、トリメチルガリウムおよびジメチル亜鉛などを用いればよい。なお、上
記原料ガスの組み合わせに限定されず、トリメチルインジウムに代えてトリエチルインジ
ウムなどを用いてもよい。また、トリメチルガリウムに代えてトリエチルガリウムなどを
用いてもよい。また、ジメチル亜鉛に代えてジエチル亜鉛などを用いてもよい。
【0205】
半導体膜を成膜後、第4の加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理は、250℃以上
650℃以下、好ましくは300℃以上500℃以下の温度で、不活性ガス雰囲気、酸化
性ガスを10ppm以上含む雰囲気、または減圧状態で行えばよい。また、加熱処理の雰
囲気は、不活性ガス雰囲気で加熱処理した後に、脱離した酸素を補うために酸化性ガスを
10ppm以上含む雰囲気で行ってもよい。加熱処理は、半導体膜を成膜した直後に行っ
てもよいし、半導体膜を加工して島状の半導体層101aおよび101bを形成した後に
行ってもよい。加熱処理により、絶縁膜114や酸化物膜から半導体膜に酸素が供給され
、半導体膜中の酸素欠損を低減することができる。
【0206】
その後、レジストマスクを形成し、不要な部分をエッチングにより除去する。その後レ
ジストマスクを除去することにより、島状の半導体層101aと島状の半導体層101b
の積層構造を形成することができる(図11(A)参照。)。なお、半導体膜のエッチン
グの際に、絶縁膜114の一部がエッチングされ、半導体層101a及び半導体層101
bに覆われていない領域における絶縁膜114が薄膜化することがある。したがって、当
該エッチングにより絶縁膜114が消失しないよう、予め厚く形成しておくことが好まし
い。
【0207】
その後、導電膜104を成膜する(図11(B)参照。)。導電膜104の形成は、例
えばスパッタリング法、CVD法(熱CVD法、MOCVD法、PECVD法等を含む)
、MBE法、ALD法またはPLD法などを用いて形成することができる。特に、当該絶
縁膜をCVD法、好ましくはプラズマCVD法によって成膜すると、被覆性を向上させる
ことができるため好ましい。またプラズマによるダメージを減らすには、熱CVD法、M
OCVD法あるいはALD法が好ましい。
【0208】
次に、レジストマスクを形成し、導電膜104の不要な部分をエッチングにより除去す
る。その後レジストマスクを除去し、導電層104aおよび導電層104bを形成する。
ここで、導電膜のエッチングの際に、半導体層101bや絶縁膜114の上部の一部がエ
ッチングされ、導電層104a及び導電層104bと重ならない部分が薄膜化することが
ある。したがって、半導体層101bとなる半導体膜等の厚さを、エッチングされる深さ
を考慮して予め厚く形成しておくことが好ましい。
【0209】
次に、ゲート絶縁膜102、半導体層101cを成膜し、レジストマスクを形成し、エ
ッチングにより加工し、その後レジストマスクを除去する。次にゲート電極103となる
導電膜を成膜する(図12(A)参照。)。その後、レジストマスクを形成し、エッチン
グにより該導電膜を加工し、その後レジストマスクを除去してゲート電極103を形成す
る。半導体層101cとなる半導体は、スパッタリング法、CVD法、MBE法またはP
LD法、ALD法などを用いて成膜すればよい。
【0210】
なお、半導体層101cとなる半導体として、In-Ga-Zn酸化物層をMOCVD
法によって成膜する場合、原料ガスとしてトリメチルインジウム、トリメチルガリウムお
よびジメチル亜鉛などを用いればよい。なお、上記原料ガスの組み合わせに限定されず、
トリメチルインジウムに代えてトリエチルインジウムなどを用いてもよい。また、トリメ
チルガリウムに代えてトリエチルガリウムなどを用いてもよい。また、ジメチル亜鉛に代
えてジエチル亜鉛などを用いてもよい。
【0211】
この段階でトランジスタ100が形成される。
【0212】
次に、絶縁膜112を形成する。絶縁膜112は、例えばスパッタリング法、CVD法
(熱CVD法、MOCVD法、PECVD法等を含む)、MBE法、ALD法またはPL
D法などを用いて形成することができる。特に、当該絶縁膜をCVD法、好ましくはプラ
ズマCVD法によって成膜すると、被覆性を向上させることができるため好ましい。また
プラズマによるダメージを減らすには、熱CVD法、MOCVD法あるいはALD法が好
ましい。
【0213】
絶縁膜112の成膜後、第5の加熱処理を行うことが好ましい。加熱処理により、絶縁
膜114等から半導体層101に対して酸素を供給し、半導体層101中の酸素欠損を低
減することができる。またこのとき、絶縁膜114から脱離した酸素は、バリア膜111
及び絶縁膜112によってブロックされ、バリア膜111よりも下層及び絶縁膜114よ
りも上層には拡散しないため、当該酸素を効果的に閉じ込めることができる。そのため半
導体層101に供給しうる酸素の量を増大させることができ、半導体層101中の酸素欠
損を効果的に低減することができる。
【0214】
また、絶縁膜112を2層以上の積層構造としてもよい。その場合には、例えば絶縁膜
112を2層の積層構造とし、下層に例えば酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化
シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニ
ウム、窒化アルミニウムなどを用いればよい。また上層にはバリア膜111と同様に水や
水素が拡散しにくい材料を用いることが好ましい。また下層に設ける絶縁膜は、絶縁膜1
14と同様の、加熱により酸素が脱離する絶縁膜としてゲート絶縁膜102を介して半導
体層101の上側からも酸素を供給する構成としてもよい。
【0215】
続いて、絶縁膜113を形成する。絶縁膜113は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シ
リコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、
窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける
。絶縁膜113は、例えばスパッタリング法、CVD法(熱CVD法、MOCVD法、P
ECVD法等を含む)、MBE法、ALD法またはPLD法などを用いて形成することが
できる。特に、CVD法、好ましくはプラズマCVD法によって成膜すると、被覆性を良
好なものとすることができるため好ましい。またプラズマによるダメージを減らすには、
熱CVD法、MOCVD法あるいはALD法が好ましい。
【0216】
続いて、図12(B)に示すように、絶縁膜113、絶縁膜112、ゲート絶縁膜10
2、導電層104a、導電層104b、半導体層101b、半導体層101aおよび絶縁
膜114に開口部を設ける。次いで、開口部を埋め込むように導電膜を形成した後、レジ
ストマスクを用いて不要部分を除去し、レジストマスクを除去してプラグ121およびプ
ラグ122を形成する。ここで、プラグ121は絶縁膜113、絶縁膜112、ゲート絶
縁膜102、半導体層101c、導電層104a、半導体層101b、半導体層101a
、絶縁膜114およびバリア膜111aを貫くように形成され、導電層151と接続する
。ここで、プラグ121と導電層104aは、プラグ121の側面で接することにより接
続する。同様に、プラグ122は絶縁膜113、絶縁膜112、ゲート絶縁膜102、半
導体層101c、導電層104b、半導体層101b、半導体層101a、絶縁膜114
およびバリア膜111aを貫くように形成され、導電層125と接続し、導電層104b
はプラグ122の側面と接することにより接続する。
【0217】
続いて、絶縁膜116を形成する。絶縁膜116は、例えば酸化シリコン、酸化窒化シ
リコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、
窒化酸化アルミニウム、窒化アルミニウムなどを用いればよく、積層または単層で設ける
。絶縁膜116は、例えばスパッタリング法、CVD法(熱CVD法、MOCVD法、P
ECVD法等を含む)、MBE法、ALD法またはPLD法などを用いて形成することが
できる。また絶縁膜116として有機樹脂などの有機絶縁材料を用いる場合には、スピン
コート法などの塗布法を用いて形成してもよい。また、絶縁膜116を形成した後にその
上面に対して平坦化処理を行うことが好ましい。また、絶縁膜116として、絶縁膜13
8に示す材料や、形成方法を用いてもよい。
【0218】
続いて、上記と同様の方法により、絶縁膜116に、プラグ122に達するプラグ12
3等を形成する。
【0219】
続いて、絶縁膜116上に導電膜を成膜する。その後上記と同様の方法によりレジスト
マスクを形成し、導電膜の不要な部分をエッチングにより除去する。その後レジストマス
クを除去することにより、配線124等を形成することができる(図12(B)参照。)
【0220】
以上の工程により、本発明の一態様の半導体装置を作製することができる。
【0221】
なお、半導体層101aおよび半導体層101bを形成する際に、導電膜104を形成
してからレジストマスクを形成し、導電膜104をエッチングした後、半導体層101a
となる半導体層および半導体層101bとなる半導体層をエッチングにより形成し、図1
5(A)に示す構造としてもよい。その後、導電膜104を再び加工し導電層104aお
よび導電層104bを形成し、図12乃至図13で示す工程を経て、トランジスタ100
図15(B)に示すような構造とすることができる。
【0222】
また、図15(B)に示すトランジスタ100と異なる構造のトランジスタ100の作
製方法の例として、図1に記載のトランジスタ100について、その作製方法の例を簡単
に説明する。
【0223】
まず絶縁膜114上に半導体層101となる半導体膜を形成した後、レジストマスク等
を形成し、エッチングを行い、半導体層101を形成する。次に、ゲート絶縁膜102と
なる絶縁膜およびゲート電極103となる導電膜を形成し、レジストマスク等を形成し、
エッチングを行い、ゲート電極103およびゲート絶縁膜102を形成する。
【0224】
次に、低抵抗領域171aおよび低抵抗領域171bを形成する。キャリア密度の高い
半導体層は、抵抗が低くなる。キャリア密度を高める方法として、たとえば不純物の添加
や、酸素欠損の形成等が挙げられる。例えばキャリア密度を高める方法として、イオン注
入を用いて元素を添加すればよい。用いることのできる元素としては、例えばアルゴン、
ホウ素、炭素、マグネシウム、アルミニウム、シリコン、リン、カルシウム、スカンジウ
ム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、ガリウム、ゲル
マニウム、ヒ素、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、インジウム、スズ
、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステンから選択された
一種以上を添加することが好ましい。
【0225】
このような抵抗の低い領域では、例えば不要な水素をトラップすることができる可能性
がある。不要な水素を低抵抗層にトラップすることによりチャネル領域の水素濃度を低く
し、良好なトランジスタ特性を得ることができる。
【0226】
次に、絶縁膜112および絶縁膜113を形成する。その後、上記に示した方法でプラ
グ121およびプラグ122を形成する。以上の工程により、図1に示すトランジスタ1
00を作製することができる。
【0227】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1に示すトランジスタ100に好適に用いることのでき
る酸化物半導体について説明する。
【0228】
ここでは、図6に例として示すように、酸化物半導体として半導体層101a、半導体
層101bおよび半導体層101cの3層を積層して用いる例を示すが、トランジスタ1
00に用いることのできる酸化物半導体は、単層でもよい。また、半導体層101a、半
導体層101bおよび半導体層101cのうち、いずれか、または両方を有さない構造と
してもよい。
【0229】
半導体層101bは、例えば、インジウムを含む酸化物半導体である。半導体層101
bは、例えば、インジウムを含むと、キャリア移動度(電子移動度)が高くなる。また、
半導体層101bは、元素Mを含むと好ましい。元素Mは、好ましくは、アルミニウム、
ガリウム、イットリウムまたはスズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素とし
ては、ホウ素、シリコン、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、イットリウム、ジルコ
ニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングス
テンなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合
がある。元素Mは、例えば、酸素との結合エネルギーが高い元素である。例えば、酸素と
の結合エネルギーがインジウムよりも高い元素である。または、元素Mは、例えば、酸化
物半導体のエネルギーギャップを大きくする機能を有する元素である。また、半導体層1
01bは、亜鉛を含むと好ましい。酸化物半導体は、亜鉛を含むと結晶化しやすくなる場
合がある。
【0230】
ただし、半導体層101bは、インジウムを含む酸化物半導体に限定されない。半導体
層101bは、例えば、亜鉛スズ酸化物、ガリウムスズ酸化物などの、インジウムを含ま
ず、亜鉛を含む酸化物半導体、ガリウムを含む酸化物半導体、スズを含む酸化物半導体な
どであっても構わない。
【0231】
半導体層101bは、例えば、エネルギーギャップが大きい酸化物を用いる。半導体層
101bのエネルギーギャップは、例えば、2.5eV以上4.2eV以下、好ましくは
2.8eV以上3.8eV以下、さらに好ましくは3eV以上3.5eV以下とする。
【0232】
例えば、半導体層101aおよび半導体層101cは、半導体層101bを構成する酸
素以外の元素一種以上、または二種以上から構成される酸化物半導体である。半導体層1
01bを構成する酸素以外の元素一種以上、または二種以上から半導体層101aおよび
半導体層101cが構成されるため、半導体層101aと半導体層101bとの界面、お
よび半導体層101bと半導体層101cとの界面において、界面準位が形成されにくい
【0233】
半導体層101a、半導体層101bおよび半導体層101cは、少なくともインジウ
ムを含むと好ましい。なお、半導体層101aがIn-M-Zn酸化物のとき、Inおよ
びMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが50atomic%未満
、Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25atomic%未満、Mが
75atomic%以上とする。また、半導体層101bがIn-M-Zn酸化物のとき
、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが25atom
ic%以上、Mが75atomic%未満、さらに好ましくはInが34atomic%
以上、Mが66atomic%未満とする。また、半導体層101cがIn-M-Zn酸
化物のとき、InおよびMの和を100atomic%としたとき、好ましくはInが5
0atomic%未満、Mが50atomic%以上、さらに好ましくはInが25at
omic%未満、Mが75atomic%以上とする。なお、半導体層101cは、半導
体層101aと同種の酸化物を用いても構わない。
【0234】
半導体層101bは、半導体層101aおよび半導体層101cよりも電子親和力の大
きい酸化物を用いる。例えば、半導体層101bとして、半導体層101aおよび半導体
層101cよりも電子親和力の0.07eV以上1.3eV以下、好ましくは0.1eV
以上0.7eV以下、さらに好ましくは0.15eV以上0.4eV以下大きい酸化物を
用いる。なお、電子親和力は、真空準位と伝導帯下端のエネルギーとの差である。
【0235】
なお、インジウムガリウム酸化物は、小さい電子親和力と、高い酸素ブロック性を有す
る。そのため、半導体層101cがインジウムガリウム酸化物を含むと好ましい。ガリウ
ム原子割合[Ga/(In+Ga)]は、例えば、70%以上、好ましくは80%以上、
さらに好ましくは90%以上とする。
【0236】
このとき、ゲート電極に電界を印加すると、半導体層101a、半導体層101b、半
導体層101cのうち、電子親和力の大きい半導体層101bにチャネルが形成される。
【0237】
ここでバンド構造について図18(A)に示す。図18(A)には、真空準位(vac
uum levelと表記。)、各層の伝導帯下端のエネルギー(Ecと表記。)および
価電子帯上端のエネルギー(Evと表記。)を示す。
【0238】
ここで、半導体層101aと半導体層101bとの間には、半導体層101aと半導体
層101bとの混合領域を有する場合がある。また、半導体層101bと半導体層101
cとの間には、半導体層101bと半導体層101cとの混合領域を有する場合がある。
混合領域は、界面準位密度が低くなる。そのため、半導体層101a、半導体層101b
および半導体層101cの積層体は、それぞれの界面近傍において、エネルギーが連続的
に変化する(連続接合ともいう。)バンド構造となる。
【0239】
なお、図18(A)では、半導体層101aと第2の半導体層101cのEcが同様で
ある場合について示したが、それぞれが異なっていてもよい。例えば、半導体層101a
よりも半導体層101cのEcが高いエネルギーを有してもよい。
【0240】
このとき、電子は、半導体層101a中および半導体層101c中ではなく、半導体層
101b中を主として移動する(図18(B)参照。)。上述したように、半導体層10
1aおよび半導体層101bの界面における界面準位密度、半導体層101bと半導体層
101cとの界面における界面準位密度が低くすることによって、半導体層101b中で
電子の移動が阻害されることが少なく、トランジスタのオン電流を高くすることができる
【0241】
なお、トランジスタがs-channel構造を有する場合、半導体層101bの全体
にチャネルが形成される。したがって、半導体層101bが厚いほどチャネル領域は大き
くなる。即ち、半導体層101bが厚いほど、トランジスタのオン電流を高くすることが
できる。例えば、20nm以上、好ましくは40nm以上、さらに好ましくは60nm以
上、より好ましくは100nm以上の厚さの領域を有する半導体層101bとすればよい
。ただし、半導体装置の生産性が低下する場合があるため、例えば、300nm以下、好
ましくは200nm以下、さらに好ましくは150nm以下の厚さの領域を有する半導体
層101bとすればよい。
【0242】
また、トランジスタのオン電流を高くするためには、半導体層101cの厚さは小さい
ほど好ましい。例えば、10nm未満、好ましくは5nm以下、さらに好ましくは3nm
以下の領域を有する半導体層101cとすればよい。一方、半導体層101cは、チャネ
ルの形成される半導体層101bへ、隣接する絶縁体を構成する酸素以外の元素(水素、
シリコンなど)が入り込まないようブロックする機能を有する。そのため、半導体層10
1cは、ある程度の厚さを有することが好ましい。例えば、0.3nm以上、好ましくは
1nm以上、さらに好ましくは2nm以上の厚さの領域を有する半導体層101cとすれ
ばよい。また、半導体層101cは、絶縁膜102などから放出される酸素の外方拡散を
抑制するために、酸素をブロックする性質を有すると好ましい。
【0243】
また、信頼性を高くするためには、半導体層101aは厚く、半導体層101cは薄い
ことが好ましい。例えば、10nm以上、好ましくは20nm以上、さらに好ましくは4
0nm以上、より好ましくは60nm以上の厚さの領域を有する半導体層101aとすれ
ばよい。半導体層101aの厚さを、厚くすることで、隣接する絶縁体と半導体層101
aとの界面からチャネルの形成される半導体層101bまでの距離を離すことができる。
ただし、半導体装置の生産性が低下する場合があるため、例えば、200nm以下、好ま
しくは120nm以下、さらに好ましくは80nm以下の厚さの領域を有する半導体層1
01aとすればよい。
【0244】
酸化物半導体膜に水素が多量に含まれると、酸化物半導体と結合することによって、水
素の一部がドナーとなり、キャリアである電子を生じてしまう。これにより、トランジス
タのしきい値電圧がマイナス方向にシフトしてしまう。そのため、酸化物半導体膜の形成
後において、脱水化処理(脱水素化処理)を行い酸化物半導体膜から、水素、又は水分を
除去して不純物が極力含まれないように高純度化することが好ましい。
【0245】
なお、酸化物半導体膜への脱水化処理(脱水素化処理)によって、酸化物半導体膜から
酸素も同時に減少してしまうことがある。よって、酸化物半導体膜への脱水化処理(脱水
素化処理)によって増加してしまった酸素欠損を補填するために酸素を酸化物に加える処
理を行うことが好ましい。本明細書等において、酸化物半導体膜に酸素を供給する場合を
、加酸素化処理と記す場合がある、または酸化物半導体膜に含まれる酸素を化学量論比的
組成よりも多くする場合を過酸素化処理と記す場合がある。
【0246】
このように、酸化物半導体膜は、脱水化処理(脱水素化処理)により、水素または水分
が除去され、加酸素化処理により酸素欠損を補填することによって、i型(真性)化また
はi型に限りなく近く実質的にi型(真性)である酸化物半導体膜とすることができる。
なお、実質的に真性とは、酸化物半導体膜中にドナーに由来するキャリアが極めて少なく
(ゼロに近く)、キャリア密度が1×1017/cm以下、1×1016/cm以下
、1×1015/cm以下、1×1014/cm以下、1×1013/cm以下で
、特に好ましくは8×1011/cm未満、さらに好ましくは1×1011/cm
満、さらに好ましくは1×1010/cm未満であり、1×10-9/cm以上であ
ることをいう。
【0247】
またこのように、i型又は実質的にi型である酸化物半導体膜を備えるトランジスタは
、極めて優れたオフ電流特性を実現できる。例えば、酸化物半導体膜を用いたトランジス
タがオフ状態のときのドレイン電流を、室温(25℃程度)にて1×10-18A以下、
好ましくは1×10-21A以下、さらに好ましくは1×10-24A以下、または85
℃にて1×10-15A以下、好ましくは1×10-18A以下、さらに好ましくは1×
10-21A以下とすることができる。なお、トランジスタがオフ状態とは、nチャネル
型のトランジスタの場合、ゲート電圧がしきい値電圧よりも十分小さい状態をいう。具体
的には、ゲート電圧がしきい値電圧よりも1V以上、2V以上または3V以上小さければ
、トランジスタはオフ状態となる。
【0248】
以下では、酸化物半導体膜の構造について説明する。
【0249】
酸化物半導体膜は、非単結晶酸化物半導体膜と単結晶酸化物半導体膜とに分けられる。
または、酸化物半導体は、例えば、結晶性酸化物半導体と非晶質酸化物半導体とに分けら
れる。非単結晶酸化物半導体膜とは、CAAC-OS(C Axis Aligned
Crystalline Oxide Semiconductor)膜、多結晶酸化物
半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、非晶質酸化物半導体膜などがある。また、結晶性酸化
物半導体としては、単結晶酸化物半導体、CAAC-OS、多結晶酸化物半導体、微結晶
酸化物半導体などがある。
【0250】
まずは、CAAC-OS膜について説明する。なお、CAAC-OSを、CANC(C
-Axis Aligned nanocrystals)を有する酸化物半導体と呼ぶ
こともできる。
【0251】
CAAC-OS膜は、c軸配向した複数の結晶部(ペレットともいう。)を有する酸化
物半導体膜の一つである。
【0252】
CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elec
tron Microscope)によってCAAC-OSの明視野像と回折パターンと
の複合解析像(高分解能TEM像ともいう。)を観察すると、複数のペレットを確認する
ことができる。一方、高分解能TEM像ではペレット同士の境界、即ち結晶粒界(グレイ
ンバウンダリーともいう。)を明確に確認することができない。そのため、CAAC-O
S膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0253】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観
察)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原
子の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹
凸を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0254】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面T
EM観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列している
ことを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られ
ない。
【0255】
図19(a)は、CAAC-OS膜の断面TEM像である。また、図19(b)は、図
19(a)をさらに拡大した断面TEM像であり、理解を容易にするために原子配列を強
調表示している。
【0256】
図19(c)は、図19(a)のA-O-A’間において、丸で囲んだ領域(直径約4
nm)の局所的なフーリエ変換像である。図19(c)より、各領域においてc軸配向性
が確認できる。また、A-O間とO-A’間とでは、c軸の向きが異なるため、異なるグ
レインであることが示唆される。また、A-O間では、c軸の角度が14.3°、16.
6°、26.4°のように少しずつ連続的に変化していることがわかる。同様に、O-A
’間では、c軸の角度が-18.3°、-17.6°、-15.9°と少しずつ連続的に
変化していることがわかる。
【0257】
なお、CAAC-OS膜に対し、電子回折を行うと、配向性を示すスポット(輝点)が
観測される。例えば、CAAC-OS膜の上面に対し、例えば1nm以上30nm以下の
電子線を用いる電子回折(ナノビーム電子回折ともいう。)を行うと、スポットが観測さ
れる(図20(A)参照。)。
【0258】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有し
ていることがわかる。
【0259】
なお、CAAC-OS膜に含まれるほとんどの結晶部は、一辺が100nm未満の立方
体内に収まる大きさである。従って、CAAC-OS膜に含まれる結晶部は、一辺が10
nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体内に収まる大きさの場合も含まれる。た
だし、CAAC-OS膜に含まれる複数の結晶部が連結することで、一つの大きな結晶領
域を形成する場合がある。例えば、平面TEM像において、2500nm以上、5μm
以上または1000μm以上となる結晶領域が観察される場合がある。
【0260】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)
装置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnOの結晶を有するCAAC-OS
膜のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピーク
が現れる場合がある。このピークは、InGaZnOの結晶の(009)面に帰属され
ることから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に
概略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0261】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-p
lane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピーク
は、InGaZnOの結晶の(110)面に帰属される。InGaZnOの単結晶酸
化物半導体膜であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)
として試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面
に帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2θを
56°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0262】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は
不規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平
行な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に
配列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0263】
なお、結晶部は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を
行った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面ま
たは上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OS膜の
形状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成
面または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0264】
また、CAAC-OS膜中において、c軸配向した結晶部の分布が均一でなくてもよい
。例えば、CAAC-OS膜の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長に
よって形成される場合、上面近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりもc軸配向した結晶
部の割合が高くなることがある。また、不純物の添加されたCAAC-OS膜は、不純物
が添加された領域が変質し、部分的にc軸配向した結晶部の割合の異なる領域が形成され
ることもある。
【0265】
なお、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane
法による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現
れる場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向
性を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍
にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0266】
CAAC-OS膜は、不純物濃度の低い酸化物半導体膜である。不純物は、水素、炭素
、シリコン、遷移金属元素などの酸化物半導体膜の主成分以外の元素である。特に、シリ
コンなどの、酸化物半導体膜を構成する金属元素よりも酸素との結合力の強い元素は、酸
化物半導体膜から酸素を奪うことで酸化物半導体膜の原子配列を乱し、結晶性を低下させ
る要因となる。また、鉄やニッケルなどの重金属、アルゴン、二酸化炭素などは、原子半
径(または分子半径)が大きいため、酸化物半導体膜内部に含まれると、酸化物半導体膜
の原子配列を乱し、結晶性を低下させる要因となる。なお、酸化物半導体膜に含まれる不
純物は、キャリアトラップやキャリア発生源となる場合がある。
【0267】
また、CAAC-OS膜は、欠陥準位密度の低い酸化物半導体膜である。例えば、酸化
物半導体膜中の酸素欠損は、キャリアトラップとなることや、水素を捕獲することによっ
てキャリア発生源となることがある。
【0268】
不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損の少ない)ことを、高純度真性また
は実質的に高純度真性と呼ぶ。高純度真性または実質的に高純度真性である酸化物半導体
膜は、キャリア発生源が少ないため、キャリア密度を低くすることができる。従って、当
該酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、しきい値電圧がマイナスとなる電気特性(ノ
ーマリーオンともいう。)になることが少ない。また、高純度真性または実質的に高純度
真性である酸化物半導体膜は、キャリアトラップが少ない。そのため、当該酸化物半導体
膜を用いたトランジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる
。なお、酸化物半導体膜のキャリアトラップに捕獲された電荷は、放出するまでに要する
時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、不純物濃度が高
く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、電気特性が不安定とな
る場合がある。
【0269】
また、CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特
性の変動が小さい。
【0270】
図36(A)に、試料面と略平行な方向から観察したCAAC-OSの断面の高分解能T
EM像を示す。高分解能TEM像の観察には、球面収差補正(Spherical Ab
erration Corrector)機能を用いた。球面収差補正機能を用いた高分
解能TEM像を、特にCs補正高分解能TEM像と呼ぶ。Cs補正高分解能TEM像の取
得は、例えば、日本電子株式会社製原子分解能分析電子顕微鏡JEM-ARM200Fな
どによって行うことができる。
【0271】
図36(A)の領域(1)を拡大したCs補正高分解能TEM像を図36(B)に示す。
図36(B)より、ペレットにおいて、金属原子が層状に配列していることを確認できる
。金属原子の各層の配列は、CAAC-OSの膜を形成する面(被形成面ともいう。)ま
たは上面の凹凸を反映しており、CAAC-OSの被形成面または上面と平行となる。
【0272】
図36(B)に示すように、CAAC-OSは特徴的な原子配列を有する。図36(C)
は、特徴的な原子配列を、補助線で示したものである。図36(B)および図36(C)
より、ペレット一つの大きさは1nm以上3nm以下程度であり、ペレットとペレットと
の傾きにより生じる隙間の大きさは0.8nm程度であることがわかる。したがって、ペ
レットを、ナノ結晶(nc:nanocrystal)と呼ぶこともできる。
【0273】
ここで、Cs補正高分解能TEM像をもとに、基板5120上のCAAC-OSのペレッ
ト5100の配置を模式的に示すと、レンガまたはブロックが積み重なったような構造と
なる(図36(D)参照。)。図36(C)で観察されたペレットとペレットとの間で傾
きが生じている箇所は、図36(D)に示す領域5161に相当する。
【0274】
また、図37(A)に、試料面と略垂直な方向から観察したCAAC-OSの平面のCs
補正高分解能TEM像を示す。図37(A)の領域(1)、領域(2)および領域(3)
を拡大したCs補正高分解能TEM像を、それぞれ図37(B)、図37(C)および図
37(D)に示す。図37(B)、図37(C)および図37(D)より、ペレットは、
金属原子が三角形状、四角形状または六角形状に配列していることを確認できる。しかし
ながら、異なるペレット間で、金属原子の配列に規則性は見られない。
【0275】
次に、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)によって解析したCA
AC-OSについて説明する。例えば、InGaZnOの結晶を有するCAAC-OS
に対し、out-of-plane法による構造解析を行うと、図38(A)に示すよう
に回折角(2θ)が31°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは、InGaZ
nOの結晶の(009)面に帰属されることから、CAAC-OSの結晶がc軸配向性
を有し、c軸が被形成面または上面に略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0276】
なお、CAAC-OSのout-of-plane法による構造解析では、2θが31°
近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れる場合がある。2θが36°近
傍のピークは、CAAC-OS中の一部に、c軸配向性を有さない結晶が含まれることを
示している。より好ましいCAAC-OSは、out-of-plane法による構造解
析では、2θが31°近傍にピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さない。
【0277】
一方、CAAC-OSに対し、c軸に略垂直な方向からX線を入射させるin-plan
e法による構造解析を行うと、2θが56°近傍にピークが現れる。このピークは、In
GaZnOの結晶の(110)面に帰属される。CAAC-OSの場合は、2θを56
°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)として試料を回転させながら分析(
φスキャン)を行っても、図38(B)に示すように明瞭なピークは現れない。これに対
し、InGaZnOの単結晶酸化物半導体であれば、2θを56°近傍に固定してφス
キャンした場合、図38(C)に示すように(110)面と等価な結晶面に帰属されるピ
ークが6本観察される。したがって、XRDを用いた構造解析から、CAAC-OSは、
a軸およびb軸の配向が不規則であることが確認できる。
【0278】
次に、電子回折によって解析したCAAC-OSについて説明する。例えば、InGaZ
nOの結晶を有するCAAC-OSに対し、試料面に平行にプローブ径が300nmの
電子線を入射させると、図39(A)に示すような回折パターン(制限視野透過電子回折
パターンともいう。)が現れる場合がある。この回折パターンには、InGaZnO
結晶の(009)面に起因するスポットが含まれる。したがって、電子回折によっても、
CAAC-OSに含まれるペレットがc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に略
垂直な方向を向いていることがわかる。一方、同じ試料に対し、試料面に垂直にプローブ
径が300nmの電子線を入射させたときの回折パターンを図39(B)に示す。図39
(B)より、リング状の回折パターンが確認される。したがって、電子回折によっても、
CAAC-OSに含まれるペレットのa軸およびb軸は配向性を有さないことがわかる。
なお、図39(B)における第1リングは、InGaZnOの結晶の(010)面およ
び(100)面などに起因すると考えられる。また、図39(B)における第2リングは
(110)面などに起因すると考えられる。
【0279】
次に、多結晶酸化物半導体膜について説明する。
【0280】
多結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像で、結晶粒を確認することができる。多
結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶粒は、例えば、TEMによる観察像で、2nm以上3
00nm以下、3nm以上100nm以下または5nm以上50nm以下の粒径であるこ
とが多い。また、多結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像で、結晶粒界を確認でき
る場合がある。
【0281】
多結晶酸化物半導体膜は、複数の結晶粒を有し、当該複数の結晶粒間において結晶の方
位が異なっている場合がある。また、多結晶酸化物半導体膜に対し、XRD装置を用いて
構造解析を行うと、例えばInGaZnOの結晶を有する多結晶酸化物半導体膜のou
t-of-plane法による解析では、2θが31°近傍のピーク、2θが36°近傍
のピーク、またはそのほかのピークが現れる場合がある。
【0282】
多結晶酸化物半導体膜は、高い結晶性を有するため、高い電子移動度を有する場合があ
る。従って、多結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、高い電界効果移動度を有す
る。ただし、多結晶酸化物半導体膜は、結晶粒界に不純物が偏析する場合がある。また、
多結晶酸化物半導体膜の結晶粒界は欠陥準位となる。多結晶酸化物半導体膜は、結晶粒界
がキャリアトラップやキャリア発生源となる場合があるため、多結晶酸化物半導体膜を用
いたトランジスタは、CAAC-OS膜を用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動
が大きく、信頼性の低いトランジスタとなる場合がある。
【0283】
次に、微結晶酸化物半導体膜について説明する。
【0284】
微結晶酸化物半導体膜は、TEMによる観察像では、明確に結晶部を確認することがで
きない場合がある。微結晶酸化物半導体膜に含まれる結晶部は、1nm以上100nm以
下、または1nm以上10nm以下の大きさであることが多い。特に、1nm以上10n
m以下、または1nm以上3nm以下の微結晶であるナノ結晶(nc:nanocrys
tal)を有する酸化物半導体膜を、nc-OS(nanocrystalline O
xide Semiconductor)膜と呼ぶ。また、nc-OS膜は、例えば、T
EMによる観察像では、結晶粒界を明確に確認できない場合がある。なお、ナノ結晶は、
CAAC-OSにおけるペレットと起源を同じくする可能性がある。そのため、以下では
nc-OSの結晶部をペレットと呼ぶ場合がある。
【0285】
nc-OS膜は、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以
上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OS膜は、異な
る結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。
従って、nc-OS膜は、分析方法によっては、非晶質酸化物半導体膜と区別が付かない
場合がある。例えば、nc-OS膜に対し、結晶部(ペレット)よりも大きい径のX線を
用いるXRD装置を用いて構造解析を行うと、out-of-plane法による解析で
は、結晶面を示すピークが検出されない。また、nc-OS膜に対し、ペレットよりも大
きいプローブ径(例えば50nm以上)の電子線を用いる電子回折(制限視野電子回折と
もいう。)を行うと、ハローパターンのような回折パターンが観測される。一方、nc-
OS膜に対し、ペレットの大きさと近いかペレットより小さいプローブ径の電子線を用い
るナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測される。また、nc-OS膜に対しナノ
ビーム電子回折を行うと、円を描くように(リング状に)輝度の高い領域が観測される場
合がある。さらに、リング状の領域内に複数のスポットが観測される場合がある(図20
(B)参照。)。
【0286】
このように、ペレット(ナノ結晶)間では結晶方位が規則性を有さないことから、nc-
OSを、RANC(Random Aligned nanocrystals)を有す
る酸化物半導体、またはNANC(Non-Aligned nanocrystals
)を有する酸化物半導体と呼ぶこともできる。
【0287】
nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも規則性の高い酸化物半導体膜である。そ
のため、nc-OS膜は、非晶質酸化物半導体膜よりも欠陥準位密度が低くなる。ただし
、nc-OS膜は、異なる結晶部間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、nc-
OS膜は、CAAC-OS膜と比べて欠陥準位密度が高くなる。
【0288】
従って、nc-OS膜は、CAAC-OS膜と比べて、キャリア密度が高くなる場合が
ある。キャリア密度が高い酸化物半導体膜は、電子移動度が高くなる場合がある。従って
、nc-OS膜を用いたトランジスタは、高い電界効果移動度を有する場合がある。また
、nc-OS膜は、CAAC-OS膜と比べて、欠陥準位密度が高いため、キャリアトラ
ップが多くなる場合がある。従って、nc-OS膜を用いたトランジスタは、CAAC-
OS膜を用いたトランジスタと比べて、電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジ
スタとなる。ただし、nc-OS膜は、比較的不純物が多く含まれていても形成すること
ができるため、CAAC-OS膜よりも形成が容易となり、用途によっては好適に用いる
ことができる場合がある。そのため、nc-OS膜を用いたトランジスタを有する半導体
装置は、生産性高く作製することができる場合がある。
【0289】
次に、非晶質酸化物半導体膜について説明する。
【0290】
非晶質酸化物半導体膜は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶部を有さない酸
化物半導体膜である。石英のような無定形状態を有する酸化物半導体膜が一例である。
【0291】
非晶質酸化物半導体膜は、TEMによる観察像で、結晶部を確認することができない。
【0292】
非晶質酸化物半導体膜に対し、XRD装置を用いた構造解析を行うと、out-of-
plane法による解析では、結晶面を示すピークが検出されない。また、非晶質酸化物
半導体膜に対し、電子回折を行うと、ハローパターンが観測される。また、非晶質酸化物
半導体膜に対し、ナノビーム電子回折を行うと、スポットが観測されず、ハローパターン
が観測される。
【0293】
非晶質酸化物半導体膜は、水素などの不純物を高い濃度で含む酸化物半導体膜である。
また、非晶質酸化物半導体膜は、欠陥準位密度の高い酸化物半導体膜である。
【0294】
不純物濃度が高く、欠陥準位密度が高い酸化物半導体膜は、キャリアトラップやキャリ
ア発生源が多い酸化物半導体膜である。
【0295】
従って、非晶質酸化物半導体膜は、nc-OS膜と比べて、さらにキャリア密度が高く
なる場合がある。そのため、非晶質酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、ノーマリー
オンの電気特性になりやすい。従って、ノーマリーオンの電気特性が求められるトランジ
スタに好適に用いることができる場合がある。非晶質酸化物半導体膜は、欠陥準位密度が
高いため、キャリアトラップが多くなる場合がある。従って、非晶質酸化物半導体膜を用
いたトランジスタは、CAAC-OS膜やnc-OS膜を用いたトランジスタと比べて、
電気特性の変動が大きく、信頼性の低いトランジスタとなる。
【0296】
なお、酸化物半導体膜は、nc-OS膜と非晶質酸化物半導体膜との間の物性を示す構
造を有する場合がある。そのような構造を有する酸化物半導体膜を、特に非晶質ライク酸
化物半導体(a-like OS:amorphous-like Oxide Sem
iconductor)膜と呼ぶ。
【0297】
a-like OS膜は、高分解能TEM像において鬆(ボイドともいう。)が観察さ
れる場合がある。また、高分解能TEM像において、明確に結晶部を確認することのでき
る領域と、結晶部を確認することのできない領域と、を有する。a-like OS膜は
、TEMによる観察程度の微量な電子照射によって、結晶化が起こり、結晶部の成長が見
られる場合がある。一方、良質なnc-OS膜であれば、TEMによる観察程度の微量な
電子照射による結晶化はほとんど見られない。
【0298】
なお、a-like OS膜およびnc-OS膜の結晶部の大きさの計測は、高分解能
TEM像を用いて行うことができる。例えば、InGaZnOの結晶は層状構造を有し
、In-O層の間に、Ga-Zn-O層を2層有する。InGaZnOの結晶の単位格
子は、In-O層を3層有し、またGa-Zn-O層を6層有する、計9層がc軸方向に
層状に重なった構造を有する。よって、これらの近接する層同士の間隔は、(009)面
の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度であり、結晶構造解析からその値は0.29n
mと求められている。そのため、高分解能TEM像における格子縞に着目し、格子縞の間
隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所においては、それぞれの格子縞がIn
GaZnOの結晶のa-b面に対応する。
【0299】
鬆を有するため、a-like OSは、不安定な構造である。以下では、a-like
OSが、CAAC-OSおよびnc-OSと比べて不安定な構造であることを示すため
、電子照射による構造の変化を示す。
【0300】
電子照射を行う試料として、a-like OS(試料Aと表記する。)、nc-OS(
試料Bと表記する。)およびCAAC-OS(試料Cと表記する。)を準備する。いずれ
の試料もIn-Ga-Zn酸化物である。
【0301】
まず、各試料の高分解能断面TEM像を取得する。高分解能断面TEM像により、各試料
は、いずれも結晶部を有することがわかる。
【0302】
なお、どの部分を一つの結晶部と見なすかの判定は、以下のように行えばよい。例えば、
InGaZnOの結晶の単位格子は、In-O層を3層有し、またGa-Zn-O層を
6層有する、計9層がc軸方向に層状に重なった構造を有することが知られている。これ
らの近接する層同士の間隔は、(009)面の格子面間隔(d値ともいう。)と同程度で
あり、結晶構造解析からその値は0.29nmと求められている。したがって、格子縞の
間隔が0.28nm以上0.30nm以下である箇所を、InGaZnOの結晶部と見
なすことができる。なお、格子縞は、InGaZnOの結晶のa-b面に対応する。
【0303】
図40は、各試料の結晶部(22箇所から45箇所)の平均の大きさを調査した例である
。ただし、上述した格子縞の長さを結晶部の大きさとしている。図40より、a-lik
e OSは、電子の累積照射量に応じて結晶部が大きくなっていくことがわかる。具体的
には、図40中に(1)で示すように、TEMによる観察初期においては1.2nm程度
の大きさだった結晶部(初期核ともいう。)が、累積照射量が4.2×10/nm
においては2.6nm程度の大きさまで成長していることがわかる。一方、nc-OS
およびCAAC-OSは、電子照射開始時から電子の累積照射量が4.2×10
nmまでの範囲で、結晶部の大きさに変化が見られないことがわかる。具体的には、図
40中の(2)および(3)で示すように、電子の累積照射量によらず、nc-OSおよ
びCAAC-OSの結晶部の大きさは、それぞれ1.4nm程度および2.1nm程度で
あることがわかる。
【0304】
このように、a-like OSは、電子照射によって結晶部の成長が見られる場合があ
る。一方、nc-OSおよびCAAC-OSは、電子照射による結晶部の成長がほとんど
見られないことがわかる。即ち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-O
Sと比べて、不安定な構造であることがわかる。
【0305】
また、鬆を有するため、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べ
て密度の低い構造である。具体的には、a-like OSの密度は、同じ組成の単結晶
の密度の78.6%以上92.3%未満となる。また、nc-OSの密度およびCAAC
-OSの密度は、同じ組成の単結晶の密度の92.3%以上100%未満となる。単結晶
の密度の78%未満となる酸化物半導体は、成膜すること自体が困難である。
【0306】
また、酸化物半導体膜は、構造ごとに密度が異なる場合がある。例えば、ある酸化物半
導体膜の組成がわかれば、該組成と同じ組成における単結晶の密度と比較することにより
、その酸化物半導体膜の構造を推定することができる。例えば、単結晶の密度に対し、a
-like OS膜の密度は78.6%以上92.3%未満となる。また、例えば、単結
晶の密度に対し、nc-OS膜の密度およびCAAC-OS膜の密度は92.3%以上1
00%未満となる。なお、単結晶の密度に対し密度が78%未満となる酸化物半導体膜は
、成膜すること自体が困難である。
【0307】
上記について、具体例を用いて説明する。例えば、In:Ga:Zn=1:1:1[原
子数比]を満たす酸化物半導体膜において、菱面体晶構造を有する単結晶InGaZnO
の密度は6.357g/cmとなる。よって、例えば、In:Ga:Zn=1:1:
1[原子数比]を満たす酸化物半導体膜において、a-like OS膜の密度は5.0
g/cm以上5.9g/cm未満となる。また、例えば、In:Ga:Zn=1:1
:1[原子数比]を満たす酸化物半導体膜において、nc-OS膜の密度およびCAAC
-OS膜の密度は5.9g/cm以上6.3g/cm未満となる。
【0308】
なお、同じ組成の単結晶が存在しない場合がある。その場合、任意の割合で組成の異な
る単結晶を組み合わせることにより、所望の組成の単結晶に相当する密度を算出すること
ができる。所望の組成の単結晶の密度は、組成の異なる単結晶を組み合わせる割合に対し
て、加重平均を用いて算出すればよい。ただし、密度は、可能な限り少ない種類の単結晶
を組み合わせて算出することが好ましい。
【0309】
次に、単結晶酸化物半導体膜について説明する。
【0310】
単結晶酸化物半導体膜は、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低い(酸素欠損が少ない
)酸化物半導体膜である。そのため、キャリア密度を低くすることができる。従って、単
結晶酸化物半導体膜を用いたトランジスタは、ノーマリーオンの電気特性になることが少
ない。また、単結晶酸化物半導体膜は、不純物濃度が低く、欠陥準位密度が低いため、キ
ャリアトラップが少なくなる場合がある。従って、単結晶酸化物半導体膜を用いたトラン
ジスタは、電気特性の変動が小さく、信頼性の高いトランジスタとなる。
【0311】
なお、酸化物半導体膜は、欠陥が少ないと密度が高くなる。また、酸化物半導体膜は、
結晶性が高いと密度が高くなる。また、酸化物半導体膜は、水素などの不純物濃度が低い
と密度が高くなる。単結晶酸化物半導体膜は、CAAC-OS膜よりも密度が高い。また
、CAAC-OS膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも密度が高い。また、多結晶酸化物半
導体膜は、微結晶酸化物半導体膜よりも密度が高い。また、微結晶酸化物半導体膜は、非
晶質酸化物半導体膜よりも密度が高い。
【0312】
なお、酸化物半導体膜は、例えば、非晶質酸化物半導体膜、微結晶酸化物半導体膜、C
AAC-OS膜のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0313】
<成膜モデル>
以下では、CAAC-OSおよびnc-OSの成膜モデルの一例について説明する。
【0314】
図41(A)は、スパッタリング法によりCAAC-OSが成膜される様子を示した成膜
室内の模式図である。
【0315】
ターゲット5130は、バッキングプレートに接着されている。バッキングプレートを介
してターゲット5130と向かい合う位置には、複数のマグネットが配置される。該複数
のマグネットによって磁場が生じている。マグネットの磁場を利用して成膜速度を高める
スパッタリング法は、マグネトロンスパッタリング法と呼ばれる。
【0316】
基板5120は、ターゲット5130と向かい合うように配置しており、その距離d(タ
ーゲット-基板間距離(T-S間距離)ともいう。)は0.01m以上1m以下、好まし
くは0.02m以上0.5m以下とする。成膜室内は、ほとんどが成膜ガス(例えば、酸
素、アルゴン、または酸素を5体積%以上の割合で含む混合ガス)で満たされ、0.01
Pa以上100Pa以下、好ましくは0.1Pa以上10Pa以下に制御される。ここで
、ターゲット5130に一定以上の電圧を印加することで、放電が始まり、プラズマが確
認される。なお、ターゲット5130の近傍には磁場によって、高密度プラズマ領域が形
成される。高密度プラズマ領域では、成膜ガスがイオン化することで、イオン5101が
生じる。イオン5101は、例えば、酸素の陽イオン(O)やアルゴンの陽イオン(A
)などである。
【0317】
ここで、ターゲット5130は、複数の結晶粒を有する多結晶構造を有し、いずれかの結
晶粒には劈開面が含まれる。図42(A)に、一例として、ターゲット5130に含まれ
るInGaZnOの結晶の構造を示す。なお、図42(A)は、b軸に平行な方向から
InGaZnOの結晶を観察した場合の構造である。図42(A)より、近接する二つ
のGa-Zn-O層において、それぞれの層における酸素原子同士が近距離に配置されて
いることがわかる。そして、酸素原子が負の電荷を有することにより、近接する二つのG
a-Zn-O層の間には斥力が生じる。その結果、InGaZnOの結晶は、近接する
二つのGa-Zn-O層の間に劈開面を有する。
【0318】
高密度プラズマ領域で生じたイオン5101は、電界によってターゲット5130側に加
速され、やがてターゲット5130と衝突する。このとき、劈開面から平板状またはペレ
ット状のスパッタ粒子であるペレット5100aおよびペレット5100bが剥離し、叩
き出される。なお、ペレット5100aおよびペレット5100bは、イオン5101の
衝突の衝撃によって、構造に歪みが生じる場合がある。
【0319】
ペレット5100aは、三角形、例えば正三角形の平面を有する平板状またはペレット状
のスパッタ粒子である。また、ペレット5100bは、六角形、例えば正六角形の平面を
有する平板状またはペレット状のスパッタ粒子である。なお、ペレット5100aおよび
ペレット5100bなどの平板状またはペレット状のスパッタ粒子を総称してペレット5
100と呼ぶ。ペレット5100の平面の形状は、三角形、六角形に限定されない、例え
ば、三角形が複数個合わさった形状となる場合がある。例えば、三角形(例えば、正三角
形)が2個合わさった四角形(例えば、ひし形)となる場合もある。
【0320】
ペレット5100は、成膜ガスの種類などに応じて厚さが決定する。理由は後述するが、
ペレット5100の厚さは、均一にすることが好ましい。また、スパッタ粒子は厚みのな
いペレット状である方が、厚みのあるサイコロ状であるよりも好ましい。例えば、ペレッ
ト5100は、厚さを0.4nm以上1nm以下、好ましくは0.6nm以上0.8nm
以下とする。また、例えば、ペレット5100は、幅を1nm以上3nm以下、好ましく
は1.2nm以上2.5nm以下とする。ペレット5100は、上述の図40中の(1)
で説明した初期核に相当する。例えば、In-Ga-Zn酸化物を有するターゲット51
30にイオン5101を衝突させると、図42(B)に示すように、Ga-Zn-O層、
In-O層およびGa-Zn-O層の3層を有するペレット5100が剥離する。図42
(C)に、剥離したペレット5100をc軸に平行な方向から観察した構造を示す。ペレ
ット5100は、二つのGa-Zn-O層(パン)と、In-O層(具)と、を有するナ
ノサイズのサンドイッチ構造と呼ぶこともできる。
【0321】
ペレット5100は、プラズマを通過する際に、側面が負または正に帯電する場合がある
。ペレット5100は、例えば、側面に位置する酸素原子が負に帯電する可能性がある。
側面が同じ極性の電荷を有することにより、電荷同士の反発が起こり、平板状またはペレ
ット状の形状を維持することが可能となる。なお、CAAC-OSが、In-Ga-Zn
酸化物である場合、インジウム原子と結合した酸素原子が負に帯電する可能性がある。ま
たは、インジウム原子、ガリウム原子または亜鉛原子と結合した酸素原子が負に帯電する
可能性がある。また、ペレット5100は、プラズマを通過する際に、プラズマ中のイン
ジウム原子、ガリウム原子、亜鉛原子および酸素原子などと結合することで成長する場合
がある。上述の図40中の(2)と(1)の大きさの違いが、プラズマ中での成長分に相
当する。ここで、基板5120が室温程度である場合、基板5120上におけるペレット
5100の成長が起こりにくいためnc-OSとなる(図41(B)参照。)。室温程度
で成膜できることから、基板5120が大面積である場合でもnc-OSの成膜が可能で
ある。なお、ペレット5100をプラズマ中で成長させるためには、スパッタリング法に
おける成膜電力を高くすることが有効である。成膜電力を高くすることで、ペレット51
00の構造を安定にすることができる。
【0322】
図41(A)および図41(B)に示すように、例えば、ペレット5100は、プラズマ
中を凧のように飛翔し、ひらひらと基板5120上まで舞い上がっていく。ペレット51
00は電荷を帯びているため、ほかのペレット5100が既に堆積している領域が近づく
と、斥力が生じる。ここで、基板5120の上面では、基板5120の上面に平行な向き
の磁場(水平磁場ともいう。)が生じている。また、基板5120およびターゲット51
30間には、電位差が与えられるため、基板5120からターゲット5130に向かう方
向に電流が流れる。したがって、ペレット5100は、基板5120の上面において、磁
場および電流の作用によって、力(ローレンツ力)を受ける。このことは、フレミングの
左手の法則によって理解できる。
【0323】
ペレット5100は、原子一つと比べると質量が大きい。そのため、基板5120の上面
を移動するためには何らかの力を外部から印加することが重要となる。その力の一つが磁
場および電流の作用で生じる力である可能性がある。なお、ペレット5100に、基板5
120の上面を移動するために十分な力を与えるには、基板5120の上面において、基
板5120の上面に平行な向きの磁場が10G以上、好ましくは20G以上、さらに好ま
しくは30G以上、より好ましくは50G以上となる領域を設けるとよい。または、基板
5120の上面において、基板5120の上面に平行な向きの磁場が、基板5120の上
面に垂直な向きの磁場の1.5倍以上、好ましくは2倍以上、さらに好ましくは3倍以上
、より好ましくは5倍以上となる領域を設けるとよい。
【0324】
このとき、マグネットと基板5120とが相対的に移動すること、または回転することに
よって、基板5120の上面における水平磁場の向きは変化し続ける。したがって、基板
5120の上面において、ペレット5100は、様々な方向から力を受け、様々な方向へ
移動することができる。
【0325】
また、図41(A)に示すように基板5120が加熱されている場合、ペレット5100
と基板5120との間で摩擦などによる抵抗が小さい状態となっている。その結果、ペレ
ット5100は、基板5120の上面を滑空するように移動する。ペレット5100の移
動は、平板面を基板5120に向けた状態で起こる。その後、既に堆積しているほかのペ
レット5100の側面まで到達すると、側面同士が結合する。このとき、ペレット510
0の側面にある酸素原子が脱離する。脱離した酸素原子によって、CAAC-OS中の酸
素欠損が埋まる場合があるため、欠陥準位密度の低いCAAC-OSとなる。なお、基板
5120の上面の温度は、例えば、100℃以上500℃未満、150℃以上450℃未
満、または170℃以上400℃未満とすればよい。したがって、基板5120が大面積
である場合でもCAAC-OSの成膜は可能である。
【0326】
また、ペレット5100は、基板5120上で加熱されることにより、原子が再配列し、
イオン5101の衝突で生じた構造の歪みが緩和される。歪みの緩和されたペレット51
00は、ほとんど単結晶となる。ペレット5100がほとんど単結晶となることにより、
ペレット5100同士が結合した後に加熱されたとしても、ペレット5100自体の伸縮
はほとんど起こり得ない。したがって、ペレット5100間の隙間が広がることで結晶粒
界などの欠陥を形成し、クレバス化することがない。
【0327】
また、CAAC-OSは、単結晶酸化物半導体が一枚板のようになっているのではなく、
ペレット5100(ナノ結晶)の集合体がレンガまたはブロックが積み重なったような配
列をしている。また、ペレット5100同士の間には結晶粒界を有さない。そのため、成
膜時の加熱、成膜後の加熱または曲げなどで、CAAC-OSに縮みなどの変形が生じた
場合でも、局部応力を緩和する、または歪みを逃がすことが可能である。したがって、可
とう性を有する半導体装置に用いることに適した構造である。なお、nc-OSは、ペレ
ット5100(ナノ結晶)が無秩序に積み重なったような配列となる。
【0328】
ターゲット5130をイオン5101でスパッタした際に、ペレット5100だけでなく
、酸化亜鉛などが剥離する場合がある。酸化亜鉛はペレット5100よりも軽量であるた
め、先に基板5120の上面に到達する。そして、0.1nm以上10nm以下、0.2
nm以上5nm以下、または0.5nm以上2nm以下の酸化亜鉛層5102を形成する
図43に断面模式図を示す。
【0329】
図43(A)に示すように、酸化亜鉛層5102上にはペレット5105aと、ペレット
5105bと、が堆積する。ここで、ペレット5105aとペレット5105bとは、互
いに側面が接するように配置している。また、ペレット5105cは、ペレット5105
b上に堆積した後、ペレット5105b上を滑るように移動する。また、ペレット510
5aの別の側面において、酸化亜鉛とともにターゲットから剥離した複数の粒子5103
が、基板5120からの加熱により結晶化し、領域5105a1を形成する。なお、複数
の粒子5103は、酸素、亜鉛、インジウムおよびガリウムなどを含む可能性がある。
【0330】
そして、図43(B)に示すように、領域5105a1は、ペレット5105aと一体化
し、ペレット5105a2となる。また、ペレット5105cは、その側面がペレット5
105bの別の側面と接するように配置する。
【0331】
次に、図43(C)に示すように、さらにペレット5105dがペレット5105a2上
およびペレット5105b上に堆積した後、ペレット5105a2上およびペレット51
05b上を滑るように移動する。また、ペレット5105cの別の側面に向けて、さらに
ペレット5105eが酸化亜鉛層5102上を滑るように移動する。
【0332】
そして、図43(D)に示すように、ペレット5105dは、その側面がペレット510
5a2の側面と接するように配置する。また、ペレット5105eは、その側面がペレッ
ト5105cの別の側面と接するように配置する。また、ペレット5105dの別の側面
において、酸化亜鉛とともにターゲット5130から剥離した複数の粒子5103が基板
5120からの加熱により結晶化し、領域5105d1を形成する。
【0333】
以上のように、堆積したペレット同士が接するように配置し、ペレットの側面において成
長が起こることで、基板5120上にCAAC-OSが形成される。したがって、CAA
C-OSは、nc-OSよりも一つ一つのペレットが大きくなる。上述の図40中の(3
)と(2)の大きさの違いが、堆積後の成長分に相当する。
【0334】
また、ペレット同士の隙間が極めて小さくなることで、一つの大きなペレットが形成され
る場合がある。一つの大きなペレットは、単結晶構造を有する。例えば、ペレットの大き
さが、上面から見て10nm以上200nm以下、15nm以上100nm以下、または
20nm以上50nm以下となる場合がある。このとき、微細なトランジスタに用いる酸
化物半導体において、チャネル形成領域が一つの大きなペレットに収まる場合がある。即
ち、単結晶構造を有する領域をチャネル形成領域として用いることができる。また、ペレ
ットが大きくなることで、単結晶構造を有する領域をトランジスタのチャネル形成領域、
ソース領域およびドレイン領域として用いることができる場合がある。
【0335】
このように、トランジスタのチャネル形成領域などが、単結晶構造を有する領域に形成さ
れることによって、トランジスタの周波数特性を高くすることができる場合がある。
【0336】
以上のようなモデルにより、ペレット5100が基板5120上に堆積していくと考えら
れる。被形成面が結晶構造を有さない場合においても、CAAC-OSの成膜が可能であ
ることから、エピタキシャル成長とは異なる成長機構であることがわかる。また、CAA
C-OSは、レーザ結晶化が不要であり、大面積のガラス基板などであっても均一な成膜
が可能である。例えば、基板5120の上面(被形成面)の構造が非晶質構造(例えば非
晶質酸化シリコン)であっても、CAAC-OSを成膜することは可能である。
【0337】
また、CAAC-OSは、被形成面である基板5120の上面に凹凸がある場合でも、そ
の形状に沿ってペレット5100が配列することがわかる。例えば、基板5120の上面
が原子レベルで平坦な場合、ペレット5100はa-b面と平行な平面である平板面を下
に向けて並置する。ペレット5100の厚さが均一である場合、厚さが均一で平坦、かつ
高い結晶性を有する層が形成される。そして、当該層がn段(nは自然数。)積み重なる
ことで、CAAC-OSを得ることができる。
【0338】
一方、基板5120の上面が凹凸を有する場合でも、CAAC-OSは、ペレット510
0が凹凸に沿って並置した層がn段(nは自然数。)積み重なった構造となる。基板51
20が凹凸を有するため、CAAC-OSは、ペレット5100間に隙間が生じやすい場
合がある。ただし、この場合でも、ペレット5100間で分子間力が働き、凹凸があって
もペレット間の隙間はなるべく小さくなるように配列する。したがって、凹凸があっても
高い結晶性を有するCAAC-OSとすることができる。
【0339】
このようなモデルによってCAAC-OSが成膜されるため、スパッタ粒子が厚みのない
ペレット状である方が好ましい。なお、スパッタ粒子が厚みのあるサイコロ状である場合
、基板5120上に向ける面が一定とならず、厚さや結晶の配向を均一にできない場合が
ある。
【0340】
以上に示した成膜モデルにより、非晶質構造を有する被形成面上であっても、高い結晶性
を有するCAAC-OSを得ることができる。
【0341】
酸化物半導体膜が複数の構造を有する場合、ナノビーム電子回折を用いることで構造解
析が可能となる場合がある。
【0342】
図20(C)に、電子銃室610と、電子銃室610の下の光学系612と、光学系6
12の下の試料室614と、試料室614の下の光学系616と、光学系616の下の観
察室620と、観察室620に設置されたカメラ618と、観察室620の下のフィルム
室622と、を有する透過電子回折測定装置を示す。カメラ618は、観察室620内部
に向けて設置される。なお、フィルム室622を有さなくても構わない。
【0343】
また、図20(D)に、図20(C)で示した透過電子回折測定装置内部の構造を示す
。透過電子回折測定装置内部では、電子銃室610に設置された電子銃から放出された電
子が、光学系612を介して試料室614に配置された物質628に照射される。物質6
28を通過した電子は、光学系616を介して観察室620内部に設置された蛍光板63
2に入射する。蛍光板632では、入射した電子の強度に応じたパターンが現れることで
透過電子回折パターンを測定することができる。
【0344】
カメラ618は、蛍光板632を向いて設置されており、蛍光板632に現れたパター
ンを撮影することが可能である。カメラ618のレンズの中央、および蛍光板632の中
央を通る直線と、蛍光板632の上面と、の為す角度は、例えば、15°以上80°以下
、30°以上75°以下、または45°以上70°以下とする。該角度が小さいほど、カ
メラ618で撮影される透過電子回折パターンは歪みが大きくなる。ただし、あらかじめ
該角度がわかっていれば、得られた透過電子回折パターンの歪みを補正することも可能で
ある。なお、カメラ618をフィルム室622に設置しても構わない場合がある。例えば
、カメラ618をフィルム室622に、電子624の入射方向と対向するように設置して
もよい。この場合、蛍光板632の裏面から歪みの少ない透過電子回折パターンを撮影す
ることができる。
【0345】
試料室614には、試料である物質628を固定するためのホルダが設置されている。
ホルダは、物質628を通過する電子を透過するような構造をしている。ホルダは、例え
ば、物質628をX軸、Y軸、Z軸などに移動させる機能を有していてもよい。ホルダの
移動機能は、例えば、1nm以上10nm以下、5nm以上50nm以下、10nm以上
100nm以下、50nm以上500nm以下、100nm以上1μm以下などの範囲で
移動させる精度を有すればよい。これらの範囲は、物質628の構造によって最適な範囲
を設定すればよい。
【0346】
次に、上述した透過電子回折測定装置を用いて、物質の透過電子回折パターンを測定す
る方法について説明する。
【0347】
例えば、図20(D)に示すように物質におけるナノビームである電子624の照射位
置を変化させる(スキャンする)ことで、物質の構造が変化していく様子を確認すること
ができる。このとき、物質628がCAAC-OS膜であれば、図20(A)に示したよ
うな回折パターンが観測される。または、物質628がnc-OS膜であれば、図20
B)に示したような回折パターンが観測される。
【0348】
ところで、物質628がCAAC-OS膜であったとしても、部分的にnc-OS膜な
どと同様の回折パターンが観測される場合がある。したがって、CAAC-OS膜の良否
は、一定の範囲におけるCAAC-OS膜の回折パターンが観測される領域の割合(CA
AC化率ともいう。)で表すことができる場合がある。例えば、良質なCAAC-OS膜
であれば、CAAC化率は、50%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90
%以上、より好ましくは95%以上となる。なお、CAAC-OS膜と異なる回折パター
ンが観測される領域の割合を非CAAC化率と表記する。
【0349】
一例として、成膜直後(as-sputteredと表記。)、または酸素を含む雰囲
気における450℃加熱処理後のCAAC-OS膜を有する各試料の上面に対し、スキャ
ンしながら透過電子回折パターンを取得した。ここでは、5nm/秒の速度で60秒間ス
キャンしながら回折パターンを観測し、観測された回折パターンを0.5秒ごとに静止画
に変換することで、CAAC化率を導出した。なお、電子線としては、プローブ径が1n
mのナノビーム電子線を用いた。なお、同様の測定は6試料に対して行った。そしてCA
AC化率の算出には、6試料における平均値を用いた。
【0350】
各試料におけるCAAC化率を図21(A)に示す。成膜直後のCAAC-OS膜のC
AAC化率は75.7%(非CAAC化率は24.3%)であった。また、450℃加熱
処理後のCAAC-OS膜のCAAC化率は85.3%(非CAAC化率は14.7%)
であった。成膜直後と比べて、450℃加熱処理後のCAAC化率が高いことがわかる。
即ち、高い温度(例えば400℃以上)における加熱処理によって、非CAAC化率が低
くなる(CAAC化率が高くなる)ことがわかる。また、500℃未満の加熱処理におい
ても高いCAAC化率を有するCAAC-OS膜が得られることがわかる。
【0351】
ここで、CAAC-OS膜と異なる回折パターンのほとんどはnc-OS膜と同様の回
折パターンであった。また、測定領域において非晶質酸化物半導体膜は、確認することが
できなかった。したがって、加熱処理によって、nc-OS膜と同様の構造を有する領域
が、隣接する領域の構造の影響を受けて再配列し、CAAC化していることが示唆される
【0352】
図21(B)および図21(C)は、成膜直後および450℃加熱処理後のCAAC-
OS膜の平面TEM像である。図21(B)と図21(C)とを比較することにより、4
50℃加熱処理後のCAAC-OS膜は、膜質がより均質であることがわかる。即ち、高
い温度における加熱処理によって、CAAC-OS膜の膜質が向上することがわかる。
【0353】
このような測定方法を用いれば、複数の構造を有する酸化物半導体膜の構造解析が可能
となる場合がある。
【0354】
CAAC-OS膜は、例えば以下の方法により形成することができる。
【0355】
CAAC-OS膜は、例えば、多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲット
を用い、スパッタリング法によって成膜する。スパッタ法としては、RFスパッタ法、D
Cスパッタ法、ACスパッタ法等を用いることができる。また、酸化物半導体膜の膜厚の
分布、膜組成の分布、又は結晶性の分布の均一性を向上させるには、RFスパッタ法より
もDCスパッタ法またはACスパッタ法を用いた方が好ましい。
【0356】
成膜時の基板温度を高めることで、基板到達後にスパッタリング粒子のマイグレーショ
ンが起こる。具体的には、基板温度を100℃以上740℃以下、好ましくは200℃以
上500℃以下として成膜する。成膜時の基板温度を高めることで、スパッタリング粒子
が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、スパッタリング粒子の平ら
な面が基板に付着する。このとき、スパッタリング粒子が正に帯電することで、スパッタ
リング粒子同士が反発しながら基板に付着するため、スパッタリング粒子が偏って不均一
に重なることがなく、厚さの均一なCAAC-OS膜を成膜することができる。
【0357】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制で
きる。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素及び窒素など)を
低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が
-80℃以下、好ましくは-100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0358】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメー
ジを軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100
体積%とする。
【0359】
または、CAAC-OS膜は、以下の方法により形成する。
【0360】
まず、第1の酸化物半導体膜を1nm以上10nm未満の厚さで成膜する。第1の酸化
物半導体膜はスパッタリング法を用いて成膜する。具体的には、基板温度を100℃以上
500℃以下、好ましくは150℃以上450℃以下とし、成膜ガス中の酸素割合を30
体積%以上、好ましくは100体積%として成膜する。
【0361】
次に、加熱処理を行い、第1の酸化物半導体膜を結晶性の高い第1のCAAC-OS膜
とする。加熱処理の温度は、350℃以上740℃以下、好ましくは450℃以上650
℃以下とする。また、加熱処理の時間は1分以上24時間以下、好ましくは6分以上4時
間以下とする。また、加熱処理は、不活性雰囲気または酸化性雰囲気で行えばよい。好ま
しくは、不活性雰囲気で加熱処理を行った後、酸化性雰囲気で加熱処理を行う。不活性雰
囲気での加熱処理により、第1の酸化物半導体膜の不純物濃度を短時間で低減することが
できる。一方、不活性雰囲気での加熱処理により第1の酸化物半導体膜に酸素欠損が生成
されることがある。その場合、酸化性雰囲気での加熱処理によって該酸素欠損を低減する
ことができる。なお、加熱処理は1000Pa以下、100Pa以下、10Pa以下また
は1Pa以下の減圧下で行ってもよい。減圧下では、第1の酸化物半導体膜の不純物濃度
をさらに短時間で低減することができる。
【0362】
第1の酸化物半導体膜は、厚さが1nm以上10nm未満であることにより、厚さが1
0nm以上である場合と比べ、加熱処理によって容易に結晶化させることができる。
【0363】
次に、第1の酸化物半導体膜と同じ組成である第2の酸化物半導体膜を10nm以上5
0nm以下の厚さで成膜する。第2の酸化物半導体膜はスパッタリング法を用いて成膜す
る。具体的には、基板温度を100℃以上500℃以下、好ましくは150℃以上450
℃以下とし、成膜ガス中の酸素割合を30体積%以上、好ましくは100体積%として成
膜する。
【0364】
次に、加熱処理を行い、第2の酸化物半導体膜を第1のCAAC-OS膜から固相成長
させることで、結晶性の高い第2のCAAC-OS膜とする。加熱処理の温度は、350
℃以上740℃以下、好ましくは450℃以上650℃以下とする。また、加熱処理の時
間は1分以上24時間以下、好ましくは6分以上4時間以下とする。また、加熱処理は、
不活性雰囲気または酸化性雰囲気で行えばよい。好ましくは、不活性雰囲気で加熱処理を
行った後、酸化性雰囲気で加熱処理を行う。不活性雰囲気での加熱処理により、第2の酸
化物半導体膜の不純物濃度を短時間で低減することができる。一方、不活性雰囲気での加
熱処理により第2の酸化物半導体膜に酸素欠損が生成されることがある。その場合、酸化
性雰囲気での加熱処理によって該酸素欠損を低減することができる。なお、加熱処理は1
000Pa以下、100Pa以下、10Pa以下または1Pa以下の減圧下で行ってもよ
い。減圧下では、第2の酸化物半導体膜の不純物濃度をさらに短時間で低減することがで
きる。
【0365】
以上のようにして、合計の厚さが10nm以上であるCAAC-OS膜を形成すること
ができる。
【0366】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0367】
(実施の形態3)
本実施の形態では、本発明の一態様のトランジスタを利用した回路の一例について図面
を参照して説明する。
【0368】
[回路構成例]
実施の形態1に示した構成において、トランジスタや配線、電極の接続構成を異ならせ
ることにより、様々な回路を構成することができる。以下では、本発明の一態様の半導体
装置を用いることにより実現できる回路構成の例を説明する。
【0369】
〔CMOS回路〕
図22(A)に示す回路図は、pチャネル型のトランジスタ2200とnチャネル型の
トランジスタ2100を直列に接続し、且つそれぞれのゲートを接続した、いわゆるCM
OS回路の構成を示している。なお図中、第2の半導体材料が適用されたトランジスタに
は「OS」の記号を付して示している。
【0370】
〔アナログスイッチ〕
また図22(B)に示す回路図は、トランジスタ2100とトランジスタ2200のそ
れぞれのソースとドレインを接続した構成を示している。このような構成とすることで、
いわゆるアナログスイッチとして機能させることができる。
【0371】
〔記憶装置の例〕
本発明の一態様であるトランジスタを使用し、電力が供給されない状況でも記憶内容の
保持が可能で、且つ、書き込み回数にも制限が無い半導体装置(記憶装置)の一例を図2
2に示す。
【0372】
図22(C)に示す半導体装置は、第1の半導体材料を用いたトランジスタ3200と
第2の半導体材料を用いたトランジスタ3300、及び容量素子3400を有している。
なお、トランジスタ3300としては、上記実施の形態で例示したトランジスタを用いる
ことができる。
【0373】
本実施の形態では、トランジスタ3300として、酸化物半導体を有する半導体層にチ
ャネルが形成されるトランジスタを用いる例を示す。トランジスタ3300は、オフ電流
が小さいため、これを用いることにより長期にわたり記憶内容を保持することが可能であ
る。つまり、リフレッシュ動作を必要としない、或いは、リフレッシュ動作の頻度が極め
て少ない半導体記憶装置とすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することが
できる。
【0374】
図22(C)において、第1の配線3001はトランジスタ3200のソース電極と電
気的に接続され、第2の配線3002はトランジスタ3200のドレイン電極と電気的に
接続されている。また、第3の配線3003はトランジスタ3300のソース電極または
ドレイン電極の一方と電気的に接続され、第4の配線3004はトランジスタ3300の
ゲート電極と電気的に接続されている。そして、トランジスタ3200のゲート電極、お
よびトランジスタ3300のソース電極またはドレイン電極の他方は、容量素子3400
の電極の一方と電気的に接続され、第5の配線3005は容量素子3400の電極の他方
と電気的に接続されている。
【0375】
図22(C)に示す半導体装置では、トランジスタ3200のゲート電極の電位が保持
可能という特徴を活かすことで、次のように、情報の書き込み、保持、読み出しが可能で
ある。
【0376】
情報の書き込みおよび保持について説明する。まず、第4の配線3004の電位を、ト
ランジスタ3300がオン状態となる電位にして、トランジスタ3300をオン状態とす
る。これにより、第3の配線3003の電位が、トランジスタ3200のゲート電極、お
よび容量素子3400に与えられる。すなわち、トランジスタ3200のゲート電極には
、所定の電荷が与えられる(書き込み)。ここでは、異なる二つの電位レベルを与える電
荷(以下Lowレベル電荷、Highレベル電荷という)のいずれかが与えられるものと
する。その後、第4の配線3004の電位を、トランジスタ3300がオフ状態となる電
位にして、トランジスタ3300をオフ状態とすることにより、トランジスタ3200の
ゲート電極に与えられた電荷が保持される(保持)。
【0377】
トランジスタ3300のオフ電流は極めて小さいため、トランジスタ3200のゲート
電極の電荷は長時間にわたって保持される。
【0378】
次に情報の読み出しについて説明する。第1の配線3001に所定の電位(定電位)を
与えた状態で、第5の配線3005に適切な電位(読み出し電位)を与えると、トランジ
スタ3200のゲート電極に保持された電荷量に応じて、第2の配線3002は異なる電
位をとる。一般に、トランジスタ3200をnチャネル型とすると、トランジスタ320
0のゲート電極にHighレベル電荷が与えられている場合の見かけのしきい値Vth_
は、トランジスタ3200のゲート電極にLowレベル電荷が与えられている場合の見
かけのしきい値Vth_Lより低くなるためである。ここで、見かけのしきい値電圧とは
、トランジスタ3200を「オン状態」とするために必要な第5の配線3005の電位を
いうものとする。したがって、第5の配線3005の電位をVth_HとVth_Lの間
の電位Vとすることにより、トランジスタ3200のゲート電極に与えられた電荷を判
別できる。例えば、書き込みにおいて、Highレベル電荷が与えられていた場合には、
第5の配線3005の電位がV(>Vth_H)となれば、トランジスタ3200は「
オン状態」となる。Lowレベル電荷が与えられていた場合には、第5の配線3005の
電位がV(<Vth_L)となっても、トランジスタ3200は「オフ状態」のままで
ある。このため、第2の配線3002の電位を判別することで、保持されている情報を読
み出すことができる。
【0379】
なお、メモリセルをアレイ状に配置して用いる場合、所望のメモリセルの情報のみを読
み出せることが必要になる。このように情報を読み出さない場合には、ゲート電極の状態
にかかわらずトランジスタ3200が「オフ状態」となるような電位、つまり、Vth_
より小さい電位を第5の配線3005に与えればよい。または、ゲート電極の状態にか
かわらずトランジスタ3200が「オン状態」となるような電位、つまり、Vth_L
り大きい電位を第5の配線3005に与えればよい。
【0380】
図22(D)に示す半導体装置は、トランジスタ3200を設けていない点で主に図2
2(C)と相違している。この場合も上記と同様の動作により情報の書き込み及び保持動
作が可能である。
【0381】
次に、情報の読み出しについて説明する。トランジスタ3300がオン状態となると、
浮遊状態である第3の配線3003と容量素子3400とが導通し、第3の配線3003
と容量素子3400の間で電荷が再分配される。その結果、第3の配線3003の電位が
変化する。第3の配線3003の電位の変化量は、容量素子3400の電極の一方の電位
(あるいは容量素子3400に蓄積された電荷)によって、異なる値をとる。
【0382】
例えば、容量素子3400の電極の一方の電位をV、容量素子3400の容量をC、第
3の配線3003が有する容量成分をCB、電荷が再分配される前の第3の配線3003
の電位をVB0とすると、電荷が再分配された後の第3の配線3003の電位は、(CB
×VB0+C×V)/(CB+C)となる。したがって、メモリセルの状態として、容量
素子3400の電極の一方の電位がV1とV0(V1>V0)の2状態をとるとすると、
電位V1を保持している場合の第3の配線3003の電位(=(CB×VB0+C×V1
)/(CB+C))は、電位V0を保持している場合の第3の配線3003の電位(=(
CB×VB0+C×V0)/(CB+C))よりも高くなることがわかる。
【0383】
そして、第3の配線3003の電位を所定の電位と比較することで、情報を読み出すこ
とができる。
【0384】
この場合、メモリセルを駆動させるための駆動回路に上記第1の半導体材料が適用され
たトランジスタを用い、トランジスタ3300として第2の半導体材料が適用されたトラ
ンジスタを駆動回路上に積層して設ける構成とすればよい。
【0385】
本実施の形態に示す半導体装置では、チャネル形成領域に酸化物半導体を用いたオフ電
流の極めて小さいトランジスタを適用することで、極めて長期にわたり記憶内容を保持す
ることが可能である。つまり、リフレッシュ動作が不要となるか、または、リフレッシュ
動作の頻度を極めて低くすることが可能となるため、消費電力を十分に低減することがで
きる。また、電力の供給がない場合(ただし、電位は固定されていることが望ましい)で
あっても、長期にわたって記憶内容を保持することが可能である。
【0386】
また、本実施の形態に示す半導体装置では、情報の書き込みに高い電圧を必要とせず、
素子の劣化の問題もない。例えば、従来の不揮発性メモリのように、フローティングゲー
トへの電子の注入や、フローティングゲートからの電子の引き抜きを行う必要がないため
、ゲート絶縁膜の劣化といった問題が全く生じない。すなわち、開示する発明に係る半導
体装置では、従来の不揮発性メモリで問題となっている書き換え可能回数に制限はなく、
信頼性が飛躍的に向上する。さらに、トランジスタのオン状態、オフ状態によって、情報
の書き込みが行われるため、高速な動作も容易に実現しうる。
【0387】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0388】
(実施の形態4)
本実施の形態では、本発明の一態様であるトランジスタを使用した半導体装置の一例に
ついて、図面を用いて説明する。図29は、本発明の一態様に係る半導体装置の回路図の
一例である。
【0389】
図29に示す半導体装置は、容量素子660aと、容量素子660bと、トランジスタ
661aと、トランジスタ661bと、トランジスタ662aと、トランジスタ662b
と、インバータ663aと、インバータ663bと、配線BLと、配線BLBと、配線W
Lと、配線CLと、配線GLと、を有する。
【0390】
図29に示す半導体装置は、インバータ663aおよびインバータ663bがリング接
続することでフリップフロップが構成されるメモリセルである。インバータ663bの出
力信号が出力されるノードをノードVN1とし、インバータ663aの出力信号が出力さ
れるノードをノードVN2とする。なお、該メモリセルをマトリクス状に配置することで
、記憶装置(メモリセルアレイ)を構成することができる。
【0391】
トランジスタ662aのソース、ドレインの一方は配線BLと電気的に接続し、ソース
、ドレインの他方はノードVN1と電気的に接続し、ゲートは配線WLと電気的に接続す
る。トランジスタ662bのソース、ドレインの一方はノードVN2と電気的に接続し、
ソース、ドレインの他方は配線BLBと電気的に接続し、ゲートは配線WLと電気的に接
続する。
【0392】
トランジスタ661aのソース、ドレインの一方はノードVN1と電気的に接続し、ソ
ース、ドレインの他方は容量素子660aの一方の電極と電気的に接続し、ゲートは配線
GLと電気的に接続する。ここで、トランジスタ661aのソース、ドレインの他方と、
容量素子660aの一方の電極と、の間のノードをノードNVN1とする。トランジスタ
661bのソース、ドレインの一方はノードVN2と電気的に接続し、ソース、ドレイン
の他方は容量素子660bの一方の電極と電気的に接続し、ゲートは配線GLと電気的に
接続する。ここで、トランジスタ661bのソース、ドレインの他方と、容量素子660
bの一方の電極と、の間のノードをノードNVN2とする。
【0393】
容量素子660aの他方の電極は配線CLと電気的に接続する。容量素子660bの他
方の電極は配線CLと電気的に接続する。
【0394】
トランジスタ662aおよびトランジスタ662bの導通状態、非導通状態の選択は、
配線WLに与える電位によって制御することができる。トランジスタ661aおよびトラ
ンジスタ661bの導通状態、非導通状態の選択は、配線GLに与える電位によって制御
することができる。
【0395】
図29に示したメモリセルの書き込み、保持および読み出しについて以下に説明する。
【0396】
書き込み時は、まず配線BLおよび配線BLBにデータ0またはデータ1に対応する電
位を印加する。
【0397】
例えば、データ1を書き込みたい場合、配線BLをハイレベルの電源電位(VDD)、
配線BLBを接地電位とする。次に、配線WLにトランジスタ662a、トランジスタ6
62bのしきい値電圧にVDDを加えた電位以上の電位(VH)を印加する。
【0398】
次に、配線WLの電位をトランジスタ662a、トランジスタ662bのしきい値電圧
未満とすることで、フリップフロップに書き込んだデータ1が保持される。
【0399】
読み出し時は、あらかじめ配線BLおよび配線BLBをVDDとする。次に、配線WL
にVHを印加することで、配線BLはVDDのまま変化しないが、配線BLBはトランジ
スタ662aおよびインバータ663aを介して放電し、接地電位となる。この配線BL
と配線BLBとの電位差をセンスアンプ(図示せず)にて増幅することにより保持された
データ1を読み出すことができる。
【0400】
なお、データ0を書き込みたい場合は、配線BLを接地電位、配線BLBをVDDとし
、その後配線WLにVHを印加すればよい。次に、配線WLの電位をトランジスタ662
a、トランジスタ662bのしきい値電圧未満とすることで、フリップフロップに書き込
んだデータ0が保持される。読み出し時は、あらかじめ配線BLおよび配線BLBをVD
Dとし、配線WLにVHを印加することで、配線BLBはVDDのまま変化しないが、配
線BLはトランジスタ662bおよびインバータ663bを介して放電し、接地電位とな
る。この配線BLと配線BLBとの電位差をセンスアンプにて増幅することにより保持さ
れたデータ0を読み出すことができる。
【0401】
したがって、図29に示す半導体装置はいわゆるSRAM(Static Rando
m Access Memory)として機能する。SRAMはフリップフロップを用い
てデータを保持するため、リフレッシュ動作が不要である。そのため、データの保持時の
消費電力を抑えることができる。また、フリップフロップにおいて容量素子を用いないた
め、高速動作の求められる用途に好適である。
【0402】
また、図29に示す半導体装置は、トランジスタ661aを介して、ノードVN1から
ノードNVN1にデータを書き込むことが可能である。同様に、トランジスタ661bを
介して、ノードVN2からノードNVN2にデータを書き込むことが可能である。書き込
まれたデータは、トランジスタ661aまたはトランジスタ661bを非導通状態とする
ことによって保持される。例えば、電源電位の供給を止めた場合でも、ノードVN1およ
びノードVN2のデータを保持できる場合がある。
【0403】
電源電位の供給を止めると、直ちにデータが消失する従来のSRAMと異なり、図29
に示す半導体装置は、電源電位の供給を止めた後でもデータを保持できる。そのため、適
宜電源電位をオンまたはオフすることによって、消費電力の小さい半導体装置を実現する
ことができる。例えば、CPUの記憶領域に図29に示す半導体装置を用いることで、C
PUの消費電力を小さくすることもできる。
【0404】
なお、ノードNVN1およびノードNVN2にデータを保持する期間は、トランジスタ
661aおよびトランジスタ661bのオフ電流によって変化することがわかる。したが
って、データの保持期間を長くするためには、トランジスタ661aおよびトランジスタ
661bには、オフ電流の低いトランジスタを用いればよいことになる。または、容量素
子660aおよび容量素子660bの容量を大きくすればよいことになる。
【0405】
例えば、実施の形態1に示したトランジスタ100および容量素子150を、トランジ
スタ661aおよび容量素子660aとして用いれば、ノードNVN1に長期間に渡って
データを保持することが可能となる。同様に、トランジスタ100および容量素子150
を、トランジスタ661bおよび容量素子660bとして用いれば、ノードNVN2に長
期間に渡ってデータを保持することが可能となる。したがって、トランジスタ661aお
よびトランジスタ661bについては、トランジスタ100についての記載を参照すれば
よい。また、容量素子660aおよび容量素子660bについては、容量素子150につ
いての記載を参照すればよい。
【0406】
また、上記実施の形態で説明したように、トランジスタ100にプラグ121およびプ
ラグ122を用いることで、トランジスタ100や容量素子150を含めた素子の、占有
面積を縮小することができる。図29に示すトランジスタ661a、トランジスタ661
b、容量素子660aおよび容量素子660bに、上記実施の形態で説明したトランジス
タ100や容量素子150を用いることができる。したがって、図29に示す半導体装置
は、従来のSRAMと比べて占有面積を大きく増大させることなく、作製することができ
る場合がある。トランジスタ662a、トランジスタ662b、インバータ663aに含
まれるトランジスタおよびインバータ663bに含まれるトランジスタについては、トラ
ンジスタ130についての記載を参照すればよい。
【0407】
以上に示したように、本発明の一態様に係る半導体装置は、占有面積に対して高い性能
を有することがわかる。また、生産性の高い半導体装置であることがわかる。
【0408】
本実施の形態は、本明細書で示す他の実施の形態と適宜組み合わせることができる。
【0409】
(実施の形態5)
本実施の形態では、上記実施の形態で例示したトランジスタ、または記憶装置を含むR
Fタグについて、図23を用いて説明する。
【0410】
本実施の形態におけるRFタグは、内部に記憶回路を有し、記憶回路に必要な情報を記
憶し、非接触手段、例えば無線通信を用いて外部と情報の授受を行うものである。このよ
うな特徴から、RFタグは、物品などの個体情報を読み取ることにより物品の識別を行う
個体認証システムなどに用いることが可能である。なお、これらの用途に用いるためには
極めて高い信頼性が要求される。ここでRFタグは、例えば、物品に付与されたIDと呼
ばれる識別情報を認識するRFIDタグであってもよい。
【0411】
RFタグの構成について図23を用いて説明する。図23は、RFタグの構成例を示す
ブロック図である。
【0412】
図23に示すようにRFタグ800は、通信器801(質問器、リーダ/ライタなどと
もいう)に接続されたアンテナ802から送信される無線信号803を受信するアンテナ
804を有する。またRFタグ800は、整流回路805、定電圧回路806、復調回路
807、変調回路808、論理回路809、記憶回路810、ROM811を有している
。なお、復調回路807に含まれる整流作用を示すトランジスタに逆方向電流を十分に抑
制することが可能な材料、例えば、酸化物半導体、が用いられた構成としてもよい。これ
により、逆方向電流に起因する整流作用の低下を抑制し、復調回路の出力が飽和すること
を防止できる。つまり、復調回路の入力に対する復調回路の出力を線形に近づけることが
できる。なお、データの伝送形式は、一対のコイルを対向配置して相互誘導によって交信
を行う電磁結合方式、誘導電磁界によって交信する電磁誘導方式、電波を利用して交信す
る電波方式の3つに大別される。本実施の形態に示すRFタグ800は、そのいずれの方
式に用いることも可能である。
【0413】
次に各回路の構成について説明する。アンテナ804は、通信器801に接続されたア
ンテナ802との間で無線信号803の送受信を行うためのものである。また、整流回路
805は、アンテナ804で無線信号を受信することにより生成される入力交流信号を整
流、例えば、半波2倍圧整流し、後段に設けられた容量素子により、整流された信号を平
滑化することで入力電位を生成するための回路である。なお、整流回路805の入力側ま
たは出力側には、リミッタ回路を設けてもよい。リミッタ回路とは、入力交流信号の振幅
が大きく、内部生成電圧が大きい場合に、ある電力以上の電力を後段の回路に入力しない
ように制御するための回路である。
【0414】
定電圧回路806は、入力電位から安定した電源電圧を生成し、各回路に供給するため
の回路である。なお、定電圧回路806は、内部にリセット信号生成回路を有していても
よい。リセット信号生成回路は、安定した電源電圧の立ち上がりを利用して、論理回路8
09のリセット信号を生成するための回路である。
【0415】
復調回路807は、入力交流信号を包絡線検出することにより復調し、復調信号を生成
するための回路である。また、変調回路808は、アンテナ804より出力するデータに
応じて変調をおこなうための回路である。
【0416】
論理回路809は復調信号を解析し、処理を行うための回路である。記憶回路810は
、入力された情報を保持する回路であり、ロウデコーダ、カラムデコーダ、記憶領域など
を有する。また、ROM811は、固有番号(ID)などを格納し、処理に応じて出力を
行うための回路である。
【0417】
なお、上述の各回路は、必要に応じて、適宜、取捨することができる。
【0418】
ここで、先の実施の形態で説明した記憶回路を、記憶回路810に用いることができる
。本発明の一態様の記憶回路は、電源が遮断された状態であっても情報を保持できるため
、RFタグに好適に用いることができる。さらに本発明の一態様の記憶回路は、データの
書き込みに必要な電力(電圧)が従来の不揮発性メモリに比べて著しく小さいため、デー
タの読み出し時と書込み時の最大通信距離の差を生じさせないことも可能である。さらに
、データの書き込み時に電力が不足し、誤動作または誤書込みが生じることを抑制するこ
とができる。
【0419】
また、本発明の一態様の記憶回路は、不揮発性のメモリとして用いることが可能である
ため、ROM811に適用することもできる。その場合には、生産者がROM811にデ
ータを書き込むためのコマンドを別途用意し、ユーザが自由に書き換えできないようにし
ておくことが好ましい。生産者が出荷前に固有番号を書込んだのちに製品を出荷すること
で、作製したRFタグすべてについて固有番号を付与するのではなく、出荷する良品にの
み固有番号を割り当てることが可能となり、出荷後の製品の固有番号が不連続になること
がなく出荷後の製品に対応した顧客管理が容易となる。
【0420】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0421】
(実施の形態6)
本実施の形態では、少なくとも実施の形態で説明したトランジスタを用いることができ
、先の実施の形態で説明した記憶装置を含むCPUについて説明する。
【0422】
図24は、先の実施の形態で説明したトランジスタを少なくとも一部に用いたCPUの
一例の構成を示すブロック図である。
【0423】
図24に示すCPUは、基板1190上に、ALU1191(ALU:Arithme
tic logic unit、演算回路)、ALUコントローラ1192、インストラ
クションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、タイミングコントロー
ラ1195、レジスタ1196、レジスタコントローラ1197、バスインターフェース
1198(Bus I/F)、書き換え可能なROM1199、およびROMインターフ
ェース1189(ROM I/F)を有している。基板1190は、半導体基板、SOI
基板、ガラス基板などを用いる。ROM1199およびROMインターフェース1189
は、別チップに設けてもよい。もちろん、図24に示すCPUは、その構成を簡略化して
示した一例にすぎず、実際のCPUはその用途によって多種多様な構成を有している。例
えば、図24に示すCPUまたは演算回路を含む構成を一つのコアとし、当該コアを複数
含み、それぞれのコアが並列で動作するような構成としてもよい。また、CPUが内部演
算回路やデータバスで扱えるビット数は、例えば8ビット、16ビット、32ビット、6
4ビットなどとすることができる。
【0424】
バスインターフェース1198を介してCPUに入力された命令は、インストラクショ
ンデコーダ1193に入力され、デコードされた後、ALUコントローラ1192、イン
タラプトコントローラ1194、レジスタコントローラ1197、タイミングコントロー
ラ1195に入力される。
【0425】
ALUコントローラ1192、インタラプトコントローラ1194、レジスタコントロ
ーラ1197、タイミングコントローラ1195は、デコードされた命令に基づき、各種
制御を行なう。具体的にALUコントローラ1192は、ALU1191の動作を制御す
るための信号を生成する。また、インタラプトコントローラ1194は、CPUのプログ
ラム実行中に、外部の入出力装置や、周辺回路からの割り込み要求を、その優先度やマス
ク状態から判断し、処理する。レジスタコントローラ1197は、レジスタ1196のア
ドレスを生成し、CPUの状態に応じてレジスタ1196の読み出しや書き込みを行なう
【0426】
また、タイミングコントローラ1195は、ALU1191、ALUコントローラ11
92、インストラクションデコーダ1193、インタラプトコントローラ1194、およ
びレジスタコントローラ1197の動作のタイミングを制御する信号を生成する。例えば
タイミングコントローラ1195は、基準クロック信号CLK1を元に、内部クロック信
号CLK2を生成する内部クロック生成部を備えており、内部クロック信号CLK2を上
記各種回路に供給する。
【0427】
図24に示すCPUでは、レジスタ1196に、メモリセルが設けられている。レジス
タ1196のメモリセルとして、先の実施の形態に示したトランジスタを用いることがで
きる。
【0428】
図24に示すCPUにおいて、レジスタコントローラ1197は、ALU1191から
の指示に従い、レジスタ1196における保持動作の選択を行う。すなわち、レジスタ1
196が有するメモリセルにおいて、フリップフロップによるデータの保持を行うか、容
量素子によるデータの保持を行うかを、選択する。フリップフロップによるデータの保持
が選択されている場合、レジスタ1196内のメモリセルへの、電源電圧の供給が行われ
る。容量素子におけるデータの保持が選択されている場合、容量素子へのデータの書き換
えが行われ、レジスタ1196内のメモリセルへの電源電圧の供給を停止することができ
る。
【0429】
図25は、レジスタ1196として用いることのできる記憶素子の回路図の一例である
。記憶素子1200は、電源遮断で記憶データが揮発する回路1201と、電源遮断で記
憶データが揮発しない回路1202と、スイッチ1203と、スイッチ1204と、論理
素子1206と、容量素子1207と、選択機能を有する回路1220と、を有する。回
路1202は、容量素子1208と、トランジスタ1209と、トランジスタ1210と
、を有する。なお、記憶素子1200は、必要に応じて、ダイオード、抵抗素子、インダ
クタなどのその他の素子をさらに有していても良い。トランジスタ1209は酸化物半導
体層ににチャネルが形成されるトランジスタであることが好ましい。
【0430】
ここで、回路1202には、先の実施の形態で説明した記憶装置を用いることができる
。記憶素子1200への電源電圧の供給が停止した際、回路1202のトランジスタ12
09のゲートには接地電位(0V)、またはトランジスタ1209がオフする電位が入力
され続ける構成とする。例えば、トランジスタ1209のゲートが抵抗等の負荷を介して
接地される構成とする。
【0431】
スイッチ1203は、一導電型(例えば、nチャネル型)のトランジスタ1213を用
いて構成され、スイッチ1204は、一導電型とは逆の導電型(例えば、pチャネル型)
のトランジスタ1214を用いて構成した例を示す。ここで、スイッチ1203の第1の
端子はトランジスタ1213のソースとドレインの一方に対応し、スイッチ1203の第
2の端子はトランジスタ1213のソースとドレインの他方に対応し、スイッチ1203
はトランジスタ1213のゲートに入力される制御信号RDによって、第1の端子と第2
の端子の間の導通または非導通(つまり、トランジスタ1213のオン状態またはオフ状
態)が選択される。スイッチ1204の第1の端子はトランジスタ1214のソースとド
レインの一方に対応し、スイッチ1204の第2の端子はトランジスタ1214のソース
とドレインの他方に対応し、スイッチ1204はトランジスタ1214のゲートに入力さ
れる制御信号RDによって、第1の端子と第2の端子の間の導通または非導通(つまり、
トランジスタ1214のオン状態またはオフ状態)が選択される。
【0432】
トランジスタ1209のソースとドレインの一方は、容量素子1208の一対の電極の
うちの一方、およびトランジスタ1210のゲートと電気的に接続される。ここで、接続
部分をノードM2とする。トランジスタ1210のソースとドレインの一方は、低電源電
位を供給することのできる配線(例えばGND線)に電気的に接続され、他方は、スイッ
チ1203の第1の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの一方)と電気的に
接続される。スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレイン
の他方)はスイッチ1204の第1の端子(トランジスタ1214のソースとドレインの
一方)と電気的に接続される。スイッチ1204の第2の端子(トランジスタ1214の
ソースとドレインの他方)は電源電位VDDを供給することのできる配線と電気的に接続
される。スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他
方)と、スイッチ1204の第1の端子(トランジスタ1214のソースとドレインの一
方)と、論理素子1206の入力端子と、容量素子1207の一対の電極のうちの一方と
、は電気的に接続される。ここで、接続部分をノードM1とする。容量素子1207の一
対の電極のうちの他方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低
電源電位(GND等)または高電源電位(VDD等)が入力される構成とすることができ
る。容量素子1207の一対の電極のうちの他方は、低電源電位を供給することのできる
配線(例えばGND線)と電気的に接続される。容量素子1208の一対の電極のうちの
他方は、一定の電位が入力される構成とすることができる。例えば、低電源電位(GND
等)または高電源電位(VDD等)が入力される構成とすることができる。容量素子12
08の一対の電極のうちの他方は、低電源電位を供給することのできる配線(例えばGN
D線)と電気的に接続される。
【0433】
なお、容量素子1207および容量素子1208は、トランジスタや配線の寄生容量等
を積極的に利用することによって省略することも可能である。
【0434】
トランジスタ1209の第1ゲート(第1のゲート電極)には、制御信号WEが入力さ
れる。スイッチ1203およびスイッチ1204は、制御信号WEとは異なる制御信号R
Dによって第1の端子と第2の端子の間の導通状態または非導通状態を選択され、一方の
スイッチの第1の端子と第2の端子の間が導通状態のとき他方のスイッチの第1の端子と
第2の端子の間は非導通状態となる。
【0435】
トランジスタ1209のソースとドレインの他方には、回路1201に保持されたデー
タに対応する信号が入力される。図25では、回路1201から出力された信号が、トラ
ンジスタ1209のソースとドレインの他方に入力される例を示した。スイッチ1203
の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)から出力される信号は
、論理素子1206によってその論理値が反転された反転信号となり、回路1220を介
して回路1201に入力される。
【0436】
なお、図25では、スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースと
ドレインの他方)から出力される信号は、論理素子1206および回路1220を介して
回路1201に入力する例を示したがこれに限定されない。スイッチ1203の第2の端
子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方)から出力される信号が、論理値を
反転させられることなく、回路1201に入力されてもよい。例えば、回路1201内に
、入力端子から入力された信号の論理値が反転した信号が保持されるノードが存在する場
合に、スイッチ1203の第2の端子(トランジスタ1213のソースとドレインの他方
)から出力される信号を当該ノードに入力することができる。
【0437】
また、図25において、記憶素子1200に用いられるトランジスタのうち、トランジ
スタ1209以外のトランジスタは、酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板11
90にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。例えば、シリコン層また
はシリコン基板にチャネルが形成されるトランジスタとすることができる。また、記憶素
子1200に用いられるトランジスタ全てを、チャネルが酸化物半導体層で形成されるト
ランジスタとすることもできる。または、記憶素子1200は、トランジスタ1209以
外にも、チャネルが酸化物半導体層で形成されるトランジスタを含んでいてもよく、残り
のトランジスタは酸化物半導体以外の半導体でなる層または基板1190にチャネルが形
成されるトランジスタとすることもできる。
【0438】
図25における回路1201には、例えばフリップフロップ回路を用いることができる
。また、論理素子1206としては、例えばインバータやクロックドインバータ等を用い
ることができる。
【0439】
本発明の一態様のける半導体装置では、記憶素子1200に電源電圧が供給されない間
は、回路1201に記憶されていたデータを、回路1202に設けられた容量素子120
8によって保持することができる。
【0440】
また、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタはオフ電流が極めて小さい
。例えば、酸化物半導体層にチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流は、結晶性を
有するシリコンにチャネルが形成されるトランジスタのオフ電流に比べて著しく低い。そ
のため、当該トランジスタをトランジスタ1209として用いることによって、記憶素子
1200に電源電圧が供給されない間も容量素子1208に保持された信号は長期間にわ
たり保たれる。こうして、記憶素子1200は電源電圧の供給が停止した間も記憶内容(
データ)を保持することが可能である。
【0441】
また、スイッチ1203およびスイッチ1204を設けることによって、プリチャージ
動作を行うことを特徴とする記憶素子であるため、電源電圧供給再開後に、回路1201
が元のデータを保持しなおすまでの時間を短くすることができる。
【0442】
また、回路1202において、容量素子1208によって保持された信号はトランジス
タ1210のゲートに入力される。そのため、記憶素子1200への電源電圧の供給が再
開された後、容量素子1208によって保持された信号を、トランジスタ1210の状態
(オン状態、またはオフ状態)に変換して、回路1202から読み出すことができる。そ
れ故、容量素子1208に保持された信号に対応する電位が多少変動していても、元の信
号を正確に読み出すことが可能である。
【0443】
このような記憶素子1200を、プロセッサが有するレジスタやキャッシュメモリなど
の記憶装置に用いることで、電源電圧の供給停止による記憶装置内のデータの消失を防ぐ
ことができる。また、電源電圧の供給を再開した後、短時間で電源供給停止前の状態に復
帰することができる。よって、プロセッサ全体、もしくはプロセッサを構成する一つ、ま
たは複数の論理回路において、短い時間でも電源停止を行うことができるため、消費電力
を抑えることができる。
【0444】
本実施の形態では、記憶素子1200をCPUに用いる例として説明したが、記憶素子
1200は、DSP(Digital Signal Processor)、カスタム
LSI、PLD(Programmable Logic Device)等のLSI、
RF(Radio Frequency)タグにも応用可能である。
【0445】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0446】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様の表示パネルの構成例について説明する。
【0447】
[構成例]
図26(A)は、本発明の一態様の表示パネルの上面図であり、図26(B)は、本発
明の一態様の表示パネルの画素に液晶素子を適用する場合に用いることができる画素回路
を説明するための回路図である。また、図26(C)は、本発明の一態様の表示パネルの
画素に有機EL素子を適用する場合に用いることができる画素回路を説明するための回路
図である。
【0448】
画素部に配置するトランジスタは、上記実施の形態に従って形成することができる。ま
た、当該トランジスタはnチャネル型とすることが容易なので、駆動回路のうち、nチャ
ネル型トランジスタで構成することができる駆動回路の一部を画素部のトランジスタと同
一基板上に形成する。このように、画素部や駆動回路に上記実施の形態に示すトランジス
タを用いることにより、信頼性の高い表示装置を提供することができる。
【0449】
アクティブマトリクス型表示装置のブロック図の一例を図26(A)に示す。表示装置
の基板700上には、画素部701、第1の走査線駆動回路702、第2の走査線駆動回
路703、信号線駆動回路704を有する。画素部701には、複数の信号線が信号線駆
動回路704から延伸して配置され、複数の走査線が第1の走査線駆動回路702、及び
第2の走査線駆動回路703から延伸して配置されている。なお走査線と信号線との交差
領域には、各々、表示素子を有する画素がマトリクス状に設けられている。また、表示装
置の基板700はFPC(Flexible Printed Circuit)等の接
続部を介して、タイミング制御回路(コントローラ、制御ICともいう)に接続されてい
る。
【0450】
図26(A)では、第1の走査線駆動回路702、第2の走査線駆動回路703、信号
線駆動回路704は、画素部701と同じ基板700上に形成される。そのため、外部に
設ける駆動回路等の部品の数が減るので、コストの低減を図ることができる。また、基板
700外部に駆動回路を設けた場合、配線を延伸させる必要が生じ、配線間の接続数が増
える。同じ基板700上に駆動回路を設けた場合、その配線間の接続数を減らすことがで
き、信頼性の向上、又は歩留まりの向上を図ることができる。
【0451】
〔液晶パネル〕
また、画素の回路構成の一例を図26(B)に示す。ここでは、VA型液晶表示パネル
の画素に適用することができる画素回路を示す。
【0452】
この画素回路は、一つの画素に複数の画素電極層を有する構成に適用できる。それぞれ
の画素電極層は異なるトランジスタに接続され、各トランジスタは異なるゲート信号で駆
動できるように構成されている。これにより、マルチドメイン設計された画素の個々の画
素電極層に印加する信号を、独立して制御できる。
【0453】
トランジスタ716のゲート配線712と、トランジスタ717のゲート配線713に
は、異なるゲート信号を与えることができるように分離されている。一方、データ線とし
て機能するソース電極層又はドレイン電極層714は、トランジスタ716とトランジス
タ717で共通に用いられている。トランジスタ716とトランジスタ717は上記実施
の形態で説明するトランジスタ100を適宜用いることができる。これにより、信頼性の
高い液晶表示パネルを提供することができる。
【0454】
トランジスタ716と電気的に接続する第1の画素電極層と、トランジスタ717と電
気的に接続する第2の画素電極層の形状について説明する。第1の画素電極層と第2の画
素電極層の形状は、スリットによって分離されている。第1の画素電極層はV字型に広が
る形状を有し、第2の画素電極層は第1の画素電極層の外側を囲むように形成される。
【0455】
トランジスタ716のゲート電極はゲート配線712と接続され、トランジスタ717
のゲート電極はゲート配線713と接続されている。ゲート配線712とゲート配線71
3に異なるゲート信号を与えてトランジスタ716とトランジスタ717の動作タイミン
グを異ならせ、液晶の配向を制御できる。
【0456】
また、容量配線710と、誘電体として機能するゲート絶縁膜と、第1の画素電極層ま
たは第2の画素電極層と電気的に接続する容量電極とで保持容量を形成してもよい。
【0457】
マルチドメイン構造は、一画素に第1の液晶素子718と第2の液晶素子719を備え
る。第1の液晶素子718は第1の画素電極層と対向電極層とその間の液晶層とで構成さ
れ、第2の液晶素子719は第2の画素電極層と対向電極層とその間の液晶層とで構成さ
れる。
【0458】
なお、図26(B)に示す画素回路は、これに限定されない。例えば、図26(B)に
示す画素に新たにスイッチ、抵抗素子、容量素子、トランジスタ、センサ、又は論理回路
などを追加してもよい。
【0459】
〔有機ELパネル〕
画素の回路構成の他の一例を図26(C)に示す。ここでは、有機EL素子を用いた表
示パネルの画素構造を示す。
【0460】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極の一方から電子が
、他方から正孔がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そし
て、電子および正孔が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、
その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発
光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0461】
図26(C)は、適用可能な画素回路の一例を示す図である。ここではnチャネル型の
トランジスタを1つの画素に2つ用いる例を示す。なお、本発明の一態様の金属酸化物膜
は、nチャネル型のトランジスタのチャネル形成領域に用いることができる。また、当該
画素回路は、デジタル時間階調駆動を適用することができる。
【0462】
適用可能な画素回路の構成及びデジタル時間階調駆動を適用した場合の画素の動作につ
いて説明する。
【0463】
画素720は、スイッチング用トランジスタ721、駆動用トランジスタ722、発光
素子724及び容量素子723を有している。スイッチング用トランジスタ721は、ゲ
ート電極層が走査線726に接続され、第1電極(ソース電極層及びドレイン電極層の一
方)が信号線725に接続され、第2電極(ソース電極層及びドレイン電極層の他方)が
駆動用トランジスタ722のゲート電極層に接続されている。駆動用トランジスタ722
は、ゲート電極層が容量素子723を介して電源線727に接続され、第1電極が電源線
727に接続され、第2電極が発光素子724の第1電極(画素電極)に接続されている
。発光素子724の第2電極は共通電極728に相当する。共通電極728は、同一基板
上に形成される共通電位線と電気的に接続される。
【0464】
スイッチング用トランジスタ721および駆動用トランジスタ722は上記実施の形態
で説明するトランジスタ100を適宜用いることができる。これにより、信頼性の高い有
機EL表示パネルを提供することができる。
【0465】
発光素子724の第2電極(共通電極728)の電位は低電源電位に設定する。なお、
低電源電位とは、電源線727に供給される高電源電位より低い電位であり、例えばGN
D、0Vなどを低電源電位として設定することができる。発光素子724の順方向のしき
い値電圧以上となるように高電源電位と低電源電位を設定し、その電位差を発光素子72
4に印加することにより、発光素子724に電流を流して発光させる。なお、発光素子7
24の順方向電圧とは、所望の輝度とする場合の電圧を指しており、少なくとも順方向し
きい値電圧を含む。
【0466】
なお、容量素子723は駆動用トランジスタ722のゲート容量を代用することにより
省略できる。駆動用トランジスタ722のゲート容量については、チャネル形成領域とゲ
ート電極層との間で容量が形成されていてもよい。
【0467】
次に、駆動用トランジスタ722に入力する信号について説明する。電圧入力電圧駆動
方式の場合、駆動用トランジスタ722が十分にオンするか、オフするかの二つの状態と
なるようなビデオ信号を、駆動用トランジスタ722に入力する。なお、駆動用トランジ
スタ722を線形領域で動作させるために、電源線727の電圧よりも高い電圧を駆動用
トランジスタ722のゲート電極層にかける。また、信号線725には、電源線電圧に駆
動用トランジスタ722の閾値電圧Vthを加えた値以上の電圧をかける。
【0468】
アナログ階調駆動を行う場合、駆動用トランジスタ722のゲート電極層に発光素子7
24の順方向電圧に駆動用トランジスタ722の閾値電圧Vthを加えた値以上の電圧を
かける。なお、駆動用トランジスタ722が飽和領域で動作するようにビデオ信号を入力
し、発光素子724に電流を流す。また、駆動用トランジスタ722を飽和領域で動作さ
せるために、電源線727の電位を、駆動用トランジスタ722のゲート電位より高くす
る。ビデオ信号をアナログとすることで、発光素子724にビデオ信号に応じた電流を流
し、アナログ階調駆動を行うことができる。
【0469】
なお、画素回路の構成は、図26(C)に示す画素構成に限定されない。例えば、図2
6(C)に示す画素回路にスイッチ、抵抗素子、容量素子、センサ、トランジスタ又は論
理回路などを追加してもよい。
【0470】
図26で例示した回路に上記実施の形態で例示したトランジスタを適用する場合、低電
位側にソース電極(第1の電極)、高電位側にドレイン電極(第2の電極)がそれぞれ電
気的に接続される構成とする。さらに、制御回路等により第1のゲート電極の電位を制御
し、第2のゲート電極には図示しない配線によりソース電極に与える電位よりも低い電位
など、上記で例示した電位を入力可能な構成とすればよい。
【0471】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0472】
(実施の形態8)
本発明の一態様に係る半導体装置は、表示機器、パーソナルコンピュータ、記録媒体を
備えた画像再生装置(代表的にはDVD:Digital Versatile Dis
c等の記録媒体を再生し、その画像を表示しうるディスプレイを有する装置)に用いるこ
とができる。その他に、本発明の一態様に係る半導体装置を用いることができる電子機器
として、携帯電話、携帯型を含むゲーム機、携帯データ端末、電子書籍端末、ビデオカメ
ラ、デジタルスチルカメラ等のカメラ、ゴーグル型ディスプレイ(ヘッドマウントディス
プレイ)、ナビゲーションシステム、音響再生装置(カーオーディオ、デジタルオーディ
オプレイヤー等)、複写機、ファクシミリ、プリンタ、プリンタ複合機、現金自動預け入
れ払い機(ATM)、自動販売機などが挙げられる。これら電子機器の具体例を図27
示す。
【0473】
図27(A)は携帯型ゲーム機であり、筐体901、筐体902、表示部903、表示
部904、マイクロフォン905、スピーカー906、操作キー907、スタイラス90
8等を有する。なお、図27(A)に示した携帯型ゲーム機は、2つの表示部903と表
示部904とを有しているが、携帯型ゲーム機が有する表示部の数は、これに限定されな
い。
【0474】
図27(B)は携帯データ端末であり、第1筐体911、第2筐体912、第1表示部
913、第2表示部914、接続部915、操作キー916等を有する。第1表示部91
3は第1筐体911に設けられており、第2表示部914は第2筐体912に設けられて
いる。そして、第1筐体911と第2筐体912とは、接続部915により接続されてお
り、第1筐体911と第2筐体912の間の角度は、接続部915により変更が可能であ
る。第1表示部913における映像を、接続部915における第1筐体911と第2筐体
912との間の角度に従って、切り替える構成としても良い。また、第1表示部913お
よび第2表示部914の少なくとも一方に、位置入力装置としての機能が付加された表示
装置を用いるようにしても良い。なお、位置入力装置としての機能は、表示装置にタッチ
パネルを設けることで付加することができる。或いは、位置入力装置としての機能は、フ
ォトセンサとも呼ばれる光電変換素子を表示装置の画素部に設けることでも、付加するこ
とができる。
【0475】
図27(C)はノート型パーソナルコンピュータであり、筐体921、表示部922、
キーボード923、ポインティングデバイス924等を有する。
【0476】
図27(D)は電気冷凍冷蔵庫であり、筐体931、冷蔵室用扉932、冷凍室用扉9
33等を有する。
【0477】
図27(E)はビデオカメラであり、第1筐体941、第2筐体942、表示部943
、操作キー944、レンズ945、接続部946等を有する。操作キー944およびレン
ズ945は第1筐体941に設けられており、表示部943は第2筐体942に設けられ
ている。そして、第1筐体941と第2筐体942とは、接続部946により接続されて
おり、第1筐体941と第2筐体942の間の角度は、接続部946により変更が可能で
ある。表示部943における映像を、接続部946における第1筐体941と第2筐体9
42との間の角度に従って切り替える構成としても良い。
【0478】
図27(F)は普通自動車であり、車体951、車輪952、ダッシュボード953、
ライト954等を有する。
【0479】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【0480】
(実施の形態9)
本実施の形態では、本発明の一態様に係るRFタグの使用例について図28を用いなが
ら説明する。RFタグの用途は広範にわたるが、例えば、紙幣、硬貨、有価証券類、無記
名債券類、証書類(運転免許証や住民票等、図28(A)参照)、包装用容器類(包装紙
やボトル等、図28(C)参照)、記録媒体(DVDやビデオテープ等、図28(B)参
照)、乗り物類(自転車等、図28(D)参照)、身の回り品(鞄や眼鏡等)、食品類、
植物類、動物類、人体、衣類、生活用品類、薬品や薬剤を含む医療品、または電子機器(
液晶表示装置、EL表示装置、テレビジョン装置、または携帯電話)等の物品、若しくは
各物品に取り付ける荷札(図28(E)、図28(F)参照)等に設けて使用することが
できる。
【0481】
本発明の一態様に係るRFタグ4000は、表面に貼る、または埋め込むことにより、
物品に固定される。例えば、本であれば紙に埋め込み、有機樹脂からなるパッケージであ
れば当該有機樹脂の内部に埋め込み、各物品に固定される。本発明の一態様に係るRFタ
グ4000は、小型、薄型、軽量を実現するため、物品に固定した後もその物品自体のデ
ザイン性を損なうことがない。また、紙幣、硬貨、有価証券類、無記名債券類、または証
書類等に本発明の一態様に係るRFタグ4000を設けることにより、認証機能を設ける
ことができ、この認証機能を活用すれば、偽造を防止することができる。また、包装用容
器類、記録媒体、身の回り品、食品類、衣類、生活用品類、または電子機器等に本発明の
一態様に係るRFタグを取り付けることにより、検品システム等のシステムの効率化を図
ることができる。また、乗り物類であっても、本発明の一態様に係るRFタグを取り付け
ることにより、盗難などに対するセキュリティ性を高めることができる。
【0482】
以上のように、本発明の一態様に係わるRFタグを本実施の形態に挙げた各用途に用い
ることにより、情報の書込みや読み出しを含む動作電力を低減できるため、最大通信距離
を長くとることが可能となる。また、電力が遮断された状態であっても情報を極めて長い
期間保持可能であるため、書き込みや読み出しの頻度が低い用途にも好適に用いることが
できる。
【0483】
本実施の形態は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組
み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0484】
624 電子
628 物質
100 トランジスタ
101 半導体層
101a 半導体層
101b 半導体層
101c 半導体層
102 ゲート絶縁膜
103 ゲート電極
104a 導電層
104b 導電層
105 導電層
111 バリア膜
111a バリア膜
111b バリア膜
111c バリア膜
111d バリア膜
111e バリア膜
111f バリア膜
111g バリア膜
112 絶縁膜
113 絶縁膜
114 絶縁膜
115a 絶縁膜
115b 絶縁膜
115c 絶縁膜
115d 絶縁膜
115e 絶縁膜
116 絶縁膜
121 プラグ
122 プラグ
123 プラグ
124 配線
125 導電層
126 プラグ
127 プラグ
128 プラグ
129a プラグ
129b プラグ
129c プラグ
129d プラグ
130 トランジスタ
131 半導体基板
132 半導体層
133a 低抵抗層
133b 低抵抗層
134 ゲート絶縁膜
135 ゲート電極
136 絶縁膜
137 絶縁膜
138 絶縁膜
139 プラグ
140 プラグ
141 プラグ
142 配線
143 導電層
144 導電層
145 プラグ
146 導電層
147 プラグ
150 容量素子
151 導電層
152 導電層
152b 導電層
153a 導電層
153b 導電層
154a 導電層
154b 導電層
154c 導電層
154d 導電層
154e 導電層
160 トランジスタ
164 プラグ
165 プラグ
166 配線
176a 領域
176b 領域
171a 低抵抗領域
171b 低抵抗領域
181 導電膜
190 トランジスタ
191 トランジスタ
211a バリア膜
211b バリア膜
211c バリア膜
211d バリア膜
211e バリア膜
211f バリア膜
215a 絶縁膜
215b 絶縁膜
215c 絶縁膜
215d 絶縁膜
215e 絶縁膜
215f 絶縁膜
251 導電層
251a 導電層
251b 導電層
251c 導電層
251d 導電層
251e 導電層
261 絶縁膜
281 層
282 層
283 層
284 層
285 層
286 層
287 層
288 層
289 層
290 層
291 層
292 層
293 層
294 層
295 層
321 プラグ
322 プラグ
610 電子銃室
612 光学系
614 試料室
616 光学系
618 カメラ
620 観察室
622 フィルム室
632 蛍光板
660a 容量素子
660b 容量素子
661a トランジスタ
661b トランジスタ
662a トランジスタ
662b トランジスタ
663a インバータ
663b インバータ
700 基板
701 画素部
702 走査線駆動回路
703 走査線駆動回路
704 信号線駆動回路
710 容量配線
712 ゲート配線
713 ゲート配線
714 ドレイン電極層
716 トランジスタ
717 トランジスタ
718 液晶素子
719 液晶素子
720 画素
721 スイッチング用トランジスタ
722 駆動用トランジスタ
723 容量素子
724 発光素子
725 信号線
726 走査線
727 電源線
728 共通電極
800 RFタグ
801 通信器
802 アンテナ
803 無線信号
804 アンテナ
805 整流回路
806 定電圧回路
807 復調回路
808 変調回路
809 論理回路
810 記憶回路
811 ROM
901 筐体
902 筐体
903 表示部
904 表示部
905 マイクロフォン
906 スピーカー
907 操作キー
908 スタイラス
911 筐体
912 筐体
913 表示部
914 表示部
915 接続部
916 操作キー
921 筐体
922 表示部
923 キーボード
924 ポインティングデバイス
931 筐体
932 冷蔵室用扉
933 冷凍室用扉
941 筐体
942 筐体
943 表示部
944 操作キー
945 レンズ
946 接続部
951 車体
952 車輪
953 ダッシュボード
954 ライト
1189 ROMインターフェース
1190 基板
1191 ALU
1192 ALUコントローラ
1193 インストラクションデコーダ
1194 インタラプトコントローラ
1195 タイミングコントローラ
1196 レジスタ
1197 レジスタコントローラ
1198 バスインターフェース
1199 ROM
1200 記憶素子
1201 回路
1202 回路
1203 スイッチ
1204 スイッチ
1206 論理素子
1207 容量素子
1208 容量素子
1209 トランジスタ
1210 トランジスタ
1213 トランジスタ
1214 トランジスタ
1220 回路
2100 トランジスタ
2200 トランジスタ
3001 配線
3002 配線
3003 配線
3004 配線
3005 配線
3200 トランジスタ
3300 トランジスタ
3400 容量素子
4000 RFタグ
5100 ペレット
5100a ペレット
5100b ペレット
5101 イオン
5102 酸化亜鉛層
5103 粒子
5105a ペレット
5105a1 領域
5105a2 ペレット
5105b ペレット
5105c ペレット
5105d ペレット
5105d1 領域
5105e ペレット
5120 基板
5130 ターゲット
5161 領域
図1
図2
図3
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図5
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