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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164484
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20231102BHJP
   H01L 29/786 20060101ALI20231102BHJP
   H10B 12/00 20230101ALI20231102BHJP
   H10B 41/70 20230101ALI20231102BHJP
   H05B 33/14 20060101ALI20231102BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20231102BHJP
   H10K 59/88 20230101ALI20231102BHJP
【FI】
H01L29/78 612Z
H01L29/78 618B
H10B12/00 801
H10B41/70
H10B12/00 671Z
H10B12/00 671C
H10B12/00 621Z
H05B33/14 Z
H10K59/10
H10K59/88
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023138975
(22)【出願日】2023-08-29
(62)【分割の表示】P 2020515313の分割
【原出願日】2019-04-17
(31)【優先権主張番号】P 2018087261
(32)【優先日】2018-04-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】山崎 舜平
(72)【発明者】
【氏名】笹川 慎也
(72)【発明者】
【氏名】高橋 絵里香
(72)【発明者】
【氏名】栃林 克明
(72)【発明者】
【氏名】荒澤 亮
(57)【要約】
【課題】特性の変動、素子の劣化、形状異常を抑制する半導体装置を提供する。
【解決手段】複数の素子を有する第1の領域と、複数のダミー素子を有する第2の領域と、を有し、第2の領域は、第1の領域の外縁部に設けられ、素子、およびダミー素子は酸化物半導体を有する。また、素子と、ダミー素子は、同じ構造であり、素子が有する構造体は、ダミー素子が有する構造体と、同材料からなり、かつ同層に配置される。また、酸化物半導体は、Inと、元素M(MはAl、Ga、Y、またはSn)と、Znと、を有する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の素子を有する第1の領域と、
複数のダミー素子を有する第2の領域と、を有し、
前記第2の領域は、前記第1の領域の外縁部に設けられ、
前記素子、および前記ダミー素子は酸化物半導体を有する、半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一態様は、半導体材料、ならびに半導体装置に関する。
【0002】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能し得る装置全般を指す。トランジスタなどの半導体素子をはじめ、半導体回路、演算装置、記憶装置は、半導体装置の一態様である。表示装置(液晶表示装置、発光表示装置など)、投影装置、照明装置、電気光学装置、蓄電装置、記憶装置、半導体回路、撮像装置、および電子機器などは、半導体装置を有すると言える場合がある。
【0003】
なお、本発明の一態様は、上記の技術分野に限定されない。本明細書等で開示する発明の一態様は、物、方法、または、製造方法に関するものである。または、本発明の一態様は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、または、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関するものである。
【背景技術】
【0004】
トランジスタに適用可能な半導体薄膜として、シリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半導体が注目されている。酸化物半導体としては、例えば、酸化インジウム、酸化亜鉛などの一元系金属の酸化物のみでなく、多元系金属の酸化物も知られている。多元系金属の酸化物の中でも、特に、In-Ga-Zn酸化物(以下、IGZOとも呼ぶ)に関する研究が盛んに行われている。
【0005】
IGZOに関する研究により、酸化物半導体において、単結晶でも非晶質でもない、CAAC(c-axis aligned crystalline)構造およびnc(nanocrystalline)構造が見出された(非特許文献1乃至非特許文献3参照)。非特許文献1および非特許文献2では、CAAC構造を有する酸化物半導体を用いてトランジスタを作製する技術も開示されている。さらに、CAAC構造およびnc構造よりも結晶性の低い酸化物半導体でさえも、微小な結晶を有することが、非特許文献4および非特許文献5に示されている。
【0006】
さらに、IGZOを活性層として用いたトランジスタは極めて低いオフ電流を持ち(非特許文献6参照)、その特性を利用したLSIおよびディスプレイが報告されている(非特許文献7および非特許文献8参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】S. Yamazaki et al., “SID Symposium Digest of Technical Papers”, 2012, volume 43, issue 1, p.183-186
【非特許文献2】S. Yamazaki et al., “Japanese Journal of Applied Physics”, 2014, volume 53, Number 4S, p.04ED18-1-04ED18-10
【非特許文献3】S. Ito et al., “The Proceedings of AM-FPD’13 Digest of Technical Papers”, 2013, p.151-154
【非特許文献4】S. Yamazaki et al., “ECS Journal of Solid State Science and Technology”, 2014, volume 3, issue 9, p.Q3012-Q3022
【非特許文献5】S. Yamazaki, “ECS Transactions”,2014, volume 64, issue 10, p.155-164
【非特許文献6】K. Kato et al., “Japanese Journal of Applied Physics”, 2012, volume 51, p.021201-1-021201-7
【非特許文献7】S. Matsuda et al., “2015 Symposium on VLSI Technology Digest of Technical Papers”, 2015, p.T216-T217
【非特許文献8】S. Amano et al., “SID Symposium Digest of Technical Papers”, 2010, volume 41, issue 1, p.626-629
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の一態様は、半導体装置が有する複数の素子において、電気特性や、形状のバラつきを抑制することを課題の一つとする。または、本発明の一態様は、半導体装置において、特性の変動、素子の劣化抑制することを課題の一つとする。
【0009】
本発明の一態様は、長期間においてデータの保持が可能な半導体装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、酸化物半導体を用いたトランジスタを有する半導体装置において、トランジスタの電気特性、および信頼性が、安定した半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【0010】
本発明の一態様は、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、生産性の高い半導体装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、設計自由度が高い半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【0011】
本発明の一態様は、消費電力を抑えることができる半導体装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、情報の書き込み速度が速い半導体装置を提供することを課題の一つとする。本発明の一態様は、新規な半導体装置を提供することを課題の一つとする。
【0012】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、これら以外の課題は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、複数の素子を有する第1の領域と、複数のダミー素子を有する第2の領域と、を有し、第2の領域は、第1の領域の外縁部に設けられ、素子、およびダミー素子は酸化物半導体を有する半導体装置である。
【0014】
本発明の一態様は、複数の素子を有する第1の領域と、複数のダミー素子を有する第2の領域と、複数の素子、およびダミー素子を有する第3の領域と、を有し、第2の領域は、第1の領域の外縁部、および第3の領域の外縁部と、に設けられ、素子、およびダミー素子は酸化物半導体を有する半導体装置である。
【0015】
上記において、素子と、ダミー素子は、同じ構造であり、素子が有する構造体は、ダミー素子が有する構造体と、同材料からなり、かつ同層に配置される。
【0016】
上記半導体装置は、第2の領域が端部に配置されたチップである。
【0017】
本発明の一態様は、複数の第1の素子を有する第1の領域と、複数の第2の素子を有する第2の領域と、第1の領域と第2の領域との間に、複数のダミー素子を有する第3の領域と、を有し、第1の素子、第2の素子、およびダミー素子は、酸化物半導体を有し、第1の素子、第2の素子、およびダミー素子を、同一工程で設けた後、第3の領域に沿って、基板を切断することにより、第1の領域を有する第1のチップと、第2の領域を有する第2のチップを形成する。
【0018】
上記において、酸化物半導体は、Inと、元素M(MはAl、Ga、Y、またはSn)と、Znと、を有する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一態様により、半導体装置が有する複数の素子において、電気特性や、形状のバラつきが抑制された半導体装置を提供することができる。
【0020】
また、本発明の一態様により、酸化物半導体を用いたトランジスタを有する半導体装置において、トランジスタの電気特性、および信頼性が、安定した半導体装置を提供することができる。また、本発明の一態様により、長期間においてデータの保持が可能な半導体装置を提供することができる。
【0021】
発明の一態様により、良好な電気特性を有する半導体装置を提供することができる。本発明の一態様により、微細化または高集積化が可能な半導体装置を提供することができる。本発明の一態様により、生産性の高い半導体装置を提供することができる。本発明の一態様により、設計自由度が高い半導体装置を提供することができる。
【0022】
本発明の一態様により、情報の書き込み速度が速い半導体装置を提供することができる。本発明の一態様により、消費電力を抑えることができる半導体装置を提供することができる。本発明の一態様により、新規な半導体装置を提供することができる。
【0023】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、請求項などの記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一態様に係る半導体装置の上面図、および断面図。
図2】本発明の一態様に係る半導体装置の上面図、および断面図。
図3】本発明の一態様に係る半導体装置の断面図。
図4】本発明の一態様に係る半導体装置の上面図、および断面図。
図5】本発明の一態様に係る半導体装置の上面図。
図6】本発明の一態様に係るトランジスタの構成例を説明する図。
図7】本発明の一態様に係るトランジスタの構成例を説明する図。
図8】本発明の一態様に係るトランジスタの構成例を説明する図。
図9】本発明の一態様に係るトランジスタの構成例を説明する図。
図10】本発明の一態様に係るトランジスタの構成例を説明する図。
図11】本発明の一態様に係る記憶装置の構成例を示すブロック図。
図12】本発明の一態様に係る記憶装置の構成例を示す回路図。
図13】本発明の一態様に係る半導体装置の模式図。
図14】本発明の一態様に係る記憶装置の模式図。
図15】表示装置の一例および画素の回路構成例を説明する図。
図16】画素の回路構成例を説明する図。
図17】駆動回路の構成例を説明する図。
図18】表示装置の一例を説明する図。
図19】表示装置の一例を説明する図。
図20】表示モジュールの一例を説明する図。
図21】本発明の一態様に係る電子機器を示す図。
図22】本発明の一態様に係る半導体装置の上面図、および断面図。
図23】実施例に係る半導体装置の断面を説明する図。
図24】実施例に係る半導体装置のチャネル部におけるザグリ量を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。但し、実施の形態は多くの異なる態様で実施することが可能であり、趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は、以下の実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0026】
また、図面において、大きさ、層の厚さ、又は領域は、明瞭化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。なお図面は、理想的な例を模式的に示したものであり、図面に示す形状又は値などに限定されない。また、図面において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様の機能を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場合がある。
【0027】
また、本明細書において、「上に」、「下に」などの配置を示す語句は、構成同士の位置関係を、図面を参照して説明するために、便宜上用いている。また、構成同士の位置関係は、各構成を描写する方向に応じて適宜変化するものである。従って、明細書で説明した語句に限定されず、状況に応じて適切に言い換えることができる。
【0028】
また、本明細書等において、トランジスタとは、ゲートと、ドレインと、ソースとを含む少なくとも三つの端子を有する素子である。そして、ドレイン(ドレイン端子、ドレイン領域またはドレイン電極)とソース(ソース端子、ソース領域またはソース電極)の間にチャネルが形成される領域を有しており、ドレインとチチャネルが形成される領域とソースとを介して電流を流すことができるものである。なお、本明細書等において、チャネルが形成される領域とは、電流が主として流れる領域をいう。
【0029】
また、ソースやドレインの機能は、異なる極性のトランジスタを採用する場合や、回路動作において電流の方向が変化する場合などには入れ替わることがある。このため、本明細書等においては、ソースやドレインの用語は、入れ替えて用いることができるものとする。
【0030】
また、本明細書等において、「電気的に接続」には、「何らかの電気的作用を有するもの」を介して接続されている場合が含まれる。ここで、「何らかの電気的作用を有するもの」は、接続対象間での電気信号の授受を可能とするものであれば、特に制限を受けない。例えば、「何らかの電気的作用を有するもの」には、電極や配線をはじめ、トランジスタなどのスイッチング素子、抵抗素子、インダクタ、キャパシタ、その他の各種機能を有する素子などが含まれる。
【0031】
なお、本明細書等において、窒化酸化物とは、酸素よりも窒素の含有量が多い化合物をいう。また、酸化窒化物とは、窒素よりも酸素の含有量が多い化合物をいう。なお、各元素の含有量は、例えば、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Bakscattering Spectrometry)等を用いて測定することができる。
【0032】
また、本明細書等において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「略平行」とは、二つの直線が-30°以上30°以下の角度で配置されている状態をいう。また、「垂直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。したがって、85°以上95°以下の場合も含まれる。また、「略垂直」とは、二つの直線が60°以上120°以下の角度で配置されている状態をいう。
【0033】
なお、本明細書において、バリア膜とは、水素などの不純物、または酸素の透過を抑制する機能を有する膜のことであり、該バリア膜に導電性を有する場合は、導電性バリア膜と呼ぶことがある。
【0034】
また、本明細書等において、トランジスタのノーマリーオンの特性とは、電源による電位の印加がない(0V)ときにオン状態であることをいう。例えば、トランジスタのノーマリーオンの特性とは、トランジスタのゲートに与える電圧(Vg)が0Vの際に、ドレインとソースとの間に電流(Id)が流れる電気特性をさす場合がある。
【0035】
本明細書等において、酸化物半導体は、金属酸化物(metal oxide)の一種である。金属酸化物とは、金属元素を有する酸化物をいう。金属酸化物は、組成や形成方法によって絶縁性、半導体性、導電性を示す場合がある。半導体性を示す金属酸化物を、金属酸化物半導体または酸化物半導体(Oxide Semiconductorまたは単にOSともいう)と呼ぶ。また、絶縁性を示す金属酸化物を、金属酸化物絶縁体または酸化物絶縁体と呼ぶ。また、導電性を示す金属酸化物を、金属酸化物導電体または酸化物導電体と呼ぶ。即ち、トランジスタのチャネル形成領域などに用いる金属酸化物を、酸化物半導体と呼びかえることができる。
【0036】
(実施の形態1)
本実施の形態では、図1乃至図5を用いて、本発明の一態様である酸化物半導体を用いた素子を有する半導体装置について説明する。
【0037】
上記酸化物半導体を用いた素子として、スイッチング素子(トランジスタなど)、容量素子、インダクタンス素子、記憶素子、表示素子(発光素子など)などがある。
【0038】
また、酸化物半導体は、インジウムを含む金属酸化物を用いるとよい。例えば、In-M-Zn酸化物(元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、銅、バナジウム、ベリリウム、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、ハフニウム、タンタル、タングステン、またはマグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種)等の金属酸化物を用いることができる。また、酸化物半導体として、In-Ga酸化物、In-Zn酸化物を用いてもよい。
【0039】
例えば、チャネルが形成される領域に酸化物半導体を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さいため、低消費電力の半導体装置を提供できる。
【0040】
また、酸化物半導体を用いることで、様々な素子を積層して立体的に集積化することができる。つまり、酸化物半導体は、スパッタリング法などを用いて成膜できるため、基板の平面に回路を展開するだけでなく、垂直方向にも回路を展開した立体集積回路(3次元集積回路)とすることができる。
【0041】
一方、半導体装置の高集積化に伴い、マスクの開口部面積(被エッチング面積)の全体に対する割合、マスク開口部の部分的なパターン密度などに依存し、エッチング速度、およびエッチング形状が変化するローディング効果が生じる場合がある。
【0042】
なお、本明細書において、パターン密度とは、任意の領域において形成された構造体の面積率とする。例えば、任意の領域に導電膜を全面に成膜した場合、パターン密度は100パーセントとなる。一方、当該導電膜の一部を除去し、複数の導電体を形成した場合、当該導電体のパターン密度は、残存した導電体の面積を任意の領域の面積で割ることで求められる。
【0043】
具体的に、図2、および図3を用いて説明する。図2(A)は、半導体装置の上面図である。また、図2(B)は、図2(A)に一点鎖線A1-A2で示す部位の断面図である。なお、図2、および図3は、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0044】
図2に示すように、基板10上には、層間膜として機能する構造体28および複数の素子22を有するパターン密度が高い領域12と、層間膜として機能する構造体28のみで素子が形成されていないパターン密度が低い領域13を有する。
【0045】
なお、図中の素子22は、酸化物半導体を有する素子を簡略化したものである。また、複数の素子22の近傍には、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物を含む構造体28を配置している。
【0046】
図3(A)、図3(B)、および図3(C)は、基板10上に、素子22を構成する構造体、または層間膜となる膜23、および膜27を成膜し、マスク29を用いて、膜27を、ドライエッチング法により加工し、膜23を露出する工程を模式的に示している。図3(D)は、素子22を構成する構造体となる膜26Aを成膜する工程を模式的に示している。また、図3(E)は、膜26Aを加工し、膜27、および膜23が有する開口部に、構造体26を形成した状態を模式的に示している。
【0047】
エッチング直前は、基板10の上方には、一様に、エッチングに寄与するラジカル(図中では白点で示す)が拡散している。ここで、エッチング処理が始まると、図3(A)に示すように、被エッチング面積が大きい領域12では、ラジカルの消費量が多く、被エッチング面積が小さい領域13ではラジカルの消費量が少ない。つまり、領域12の上方は、領域13の上方よりも、ラジカルの量が少なくなるため、領域12の中央付近における領域のエッチング速度は遅くなる。一方、領域12の領域13と近接する領域では、領域13の上方からのラジカルが消費されるため、エッチング速度が速くなる。
【0048】
さらに、図3(B)に示すように、エッチング処理が進むに従い、膜27からの生成物(図中では黒点で示す)が放出されるため、領域12の上方のラジカルの量はさらに小さくなる。一方、領域13の上方には、膜27からの生成物が生じないため、ラジカルの量の変動は少ない。従って、領域12の中央付近における領域のエッチング速度は、さらに遅くなる蓋然性が高い。一方、領域12の領域13と近接する領域では、領域13の上方のラジカルが消費されるため、エッチング速度はさらに速くなる。
【0049】
従って、図3(C)に示すように、領域12の中央付近にける領域において、膜27を加工し、膜23が露出した時には、領域12の領域13と近接する領域では、膜27の下方に位置する膜23の一部が、意図しない範囲まで除去されてしまう(以下、ザグリ量、または膜減り量ともいう)場合がある。
【0050】
また、図3(D)に示すように、素子22を構成する構造体となる膜26Aを成膜する。その後、図3(E)に示すように、構造体26を形成した時、領域12の領域13と近接する領域に、過剰なザグリが発生していた場合には、構造体26の形状異常が生じる。つまり、構造体26の形状異常に起因し、複数の素子22において、特性にばらつきが生じる蓋然性が高くなる。
【0051】
また、膜23を素子22の構造体として用いる場合、領域12の領域13と近接する領域の過剰な膜減りにより、素子22の特性不良が生じる場合がある。つまり、領域12の領域13と近接する領域は、領域12の中央付近における領域よりも、早く膜23が露出する。従って、領域12の領域13と近接する領域では、領域12の中央付近における領域よりも、膜23がプラズマに曝される時間が長くなり、膜23へダメージが蓄積される。つまり、領域12の領域13と近接する領域に形成される素子22は、領域12の中央付近における領域に形成される素子22よりも、特性が悪くなる蓋然性が高い。
【0052】
また、酸化物半導体を用いたトランジスタは、酸化物半導体中の不純物(代表的には、水素、水など)及び酸素欠損によって、その電気特性が変動し、ノーマリーオン特性(ゲート電極に電圧を印加しなくてもチャネルが存在し、トランジスタに電流が流れる特性)となりやすい。また、酸化物半導体中に、適量値を超えた過剰な酸素を有した状態で、該トランジスタを駆動した場合、過剰な酸素原子の価数が変化し、該トランジスタの電気特性が変動することで、信頼性が悪くなる場合がある。
【0053】
従って、トランジスタに用いる酸化物半導体は、不純物、酸素欠損、および、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素(以下、過剰酸素ともいう)がない、高純度真性な酸化物半導体を用いることが好ましい。
【0054】
しかしながら、酸化物半導体を用いたトランジスタにおいて、トランジスタを構成する導電体、またはトランジスタと接続するプラグや配線に用いられる導電体に、酸化物半導体中の酸素が吸収され、酸化物半導体中に、酸素欠損を生じる場合がある。例えば、トランジスタを作成する際に、加熱処理を行う場合、当該加熱処理により、酸化物半導体中の酸素が、トランジスタを構成する導電体に吸収される場合がある。
【0055】
また、トランジスタを作成する際のプロセスダメージにより、酸化物半導体中に酸素欠損が生じる場合がある。さらに、トランジスタを作製する際の加熱工程などにより、トランジスタを構成する導電体、またはトランジスタと接続するプラグや配線に用いられる導電体に、酸化物半導体中の酸素が吸収され、酸化物半導体中に酸素欠損を生じる場合がある。
【0056】
従って、該トランジスタの酸化物半導体の近傍に、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物を含む構造体を設けることが好ましい。例えば、当該酸化物は、化学量論的組成よりも酸素が過剰に存在する領域(以下、過剰酸素領域ともいう)が形成されていることが好ましい。具体的には、該トランジスタの周囲に位置する層間膜等に過剰酸素領域を設けるとよい。
【0057】
上記構成により、酸化物半導体に生じた酸素欠損に、該過剰酸素領域を有する構造体の過剰酸素が拡散することで、該酸素欠損を補償することができる。一方で、上記過剰酸素領域を有する構造体の過剰酸素が、適量値を超えて拡散した場合、過剰に供給された酸素は、酸化物半導体の構造を変化させる場合がある。
【0058】
そこで、本発明の一態様では、疎となる回路領域と、密となる回路領域との間に、ダミー素子(以下、犠牲素子ともいう)を設けることで、密となる回路領域に形成される複数の素子間における特性のバラつきを抑制する。
【0059】
上記ダミー素子は、回路機能を有する素子と、同じ工程で作製する。従って、ダミー素子は、回路機能を有する素子と、同層に設けられる。ダミー素子を構成する構造体のうち少なくとも一つは、回路機能を有する素子を構成する構造体と、同じ材質の構造体である。なお、ダミー素子は、回路機能を有する素子と、同じ構造を有することが好ましい。
【0060】
具体的に、図1を用いて説明する。図1(A)は、半導体装置の上面図である。また、図1(B)は、図1(A)に一点鎖線A1-A2で示す部位の断面図である。なお、図1は、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0061】
図1に示すように、基板10上には、層間膜として機能する構造体28および複数の素子22を有するパターン密度が高い領域12と、層間膜として機能する構造体28のみで素子が形成されていない領域13と、当該領域と領域12との間に、層間膜として機能する構造体28および複数のダミー素子21を有する領域11を有する。
【0062】
なお、見やすさのため、ダミー素子21を示す複数の構造体に、ハッチングしたが、ダミー素子21は、素子22と同等の構造を有することが好ましい。また、複数の素子22、およびダミー素子21の近傍には、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物を含む構造体28を配置している。
【0063】
領域12の外縁に、ダミー素子21を有する領域11を設けることにより、領域12に形成される複数の素子22の形状不良、および特性のばらつきを低減することができる。
【0064】
つまり、加工速度が速い領域11に配置した素子をダミー素子21とし、領域12に配置した素子22を基準にプロセスを設計することで、半導体装置として駆動する素子22の形状及び特性のばらつきを抑制することができる。
【0065】
また、例えば、領域11を有さない図2に示す構造体28が、一様に過剰酸素領域を有する場合、領域12の中央付近における領域に配置された素子22と、領域12の領域13と近接する領域に配置された素子22とでは、拡散する酸素量が異なる蓋然性が高い。
【0066】
例えば、領域12の中央付近における領域に配置された素子22の特性を基準に設計した場合、領域13が有する過剰酸素が、過剰酸素の拡散を促す加熱処理を伴う工程において、領域12の領域13と近接する領域に拡散するため、領域12の領域13と近接する領域に配置された素子22では、補償する酸素が過剰となる可能性がある。
【0067】
つまり、領域12の領域13と近接する領域に配置された素子22に対し、過剰酸素が適量値を超えて拡散する蓋然性が高くなる。
【0068】
ここで、図1に示すように、複数の素子22を有するパターン密度が高い領域12の外縁部に複数のダミー素子21を有する領域11を有することで、領域12に配置された複数の素子22の特性のばらつきを抑制することができる。
【0069】
つまり、領域12、領域11、および素子密度が小さい領域にわたって、化学量論的組成を満たす酸素よりも多くの酸素を含む酸化物を含む構造体28を配置した場合、領域12と、素子密度が小さい領域との間に領域11を配置することで、素子密度が小さい領域に配置された構造体28から拡散する過剰酸素は、ダミー素子21に吸収されるため、領域12への拡散を抑制することができる。
【0070】
また、ダミー素子21を有する領域11を、領域12の外縁に配置することで、半導体装置を作製した後も、半導体装置の外部から拡散する不純物(代表的には、水素、水など)が、ダミー素子21が有する構造体に吸収される場合がある。つまり、ダミー素子21が、不純物を捕獲することにより、素子22に不純物が拡散することを抑制できる。従って、素子22の信頼性を向上させることができる。
【0071】
以上より、トランジスタの電気特性のバラつきを抑制することができる。また信頼性の高いトランジスタを提供することができる。また、トランジスタの形状異常、および静電破壊を抑制することができる。従って、歩留まりが向上するため、半導体装置の生産性を高めることができる。
【0072】
<半導体装置の構成例2>
以下では、図4を用いて、本発明の一態様に係る本発明の一態様である酸化物半導体を用いた素子を有する半導体装置の他の一例について説明する。
【0073】
なお、図4に示す半導体装置において、先の構成例に示した半導体装置を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。
【0074】
具体的には、図4(A)は、ダイシング処理が行なわれる前の基板15上に形成された半導体装置の上面図を示している。図4(B)は、図4(A)に一点鎖線A1-A2で示す部位の断面図である。
【0075】
基板15としては、例えば、半導体基板(「半導体ウエハ」ともいう。)を用いることができる。基板15上には、回路領域16が複数設けられている。また、基板15上には、2点鎖線で示す分離領域18が複数設けられている。回路領域16は、素子22のパターン密度が高密度である領域12と、ダミー素子21が形成された領域11を含む。
【0076】
回路領域16の領域12は、他の回路領域16の領域12と、分離領域18を介して配置される。また、分離領域18と重なる位置は、分離線(ダイシングラインともいう)が設定される。分離線に沿って基板15を切断することで、領域12を含むチップを基板15から切り出すことができる。
【0077】
ここで、分離領域18は、ダミー素子21を有する領域11を含むことが好ましい。領域11が、分離領域を兼ねることで、領域12を広く設計することができるため、高集積化が可能となる。
【0078】
また、分離領域18に領域11を含むことで、ダミー素子21が有する導電層、半導体層が、ダイシング工程時に生じうるESDを緩和し、ダイシング工程に起因する歩留まりの低下を防ぐことができる。
【0079】
また、一般にダイシング工程は、基板の冷却、削りくずの除去、帯電防止などを目的として、純水よりも比抵抗が低い炭酸水を切削部に供給しながら行なう。分離領域18に導電層、半導体層などを設けることで、当該純水の使用量を削減することができる。従って、半導体装置の生産コストを低減することができる。また、半導体装置の生産性を高めることができる。
【0080】
また、分離領域18から混入した水などの不純物は、ダミー素子21よって、捕獲されるため、信頼性の低下を抑制することができる。
【0081】
<半導体装置の構成例3>
以下では、図5を用いて、本発明の一態様に係る本発明の一態様である酸化物半導体を用いた素子を有する半導体装置の他の一例について説明する。なお、図5(A)および図5(B)は、基板10上に形成された半導体装置の上面図を示している。
【0082】
なお、図5に示す半導体装置において、先の構成例に示した半導体装置を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。
【0083】
半導体装置において、異なる機能を有する複数の回路を、同一基板上に配置する場合がある。ここで、回路を構成する必要な素子または配線の密度は、求める回路構成により異なる。具体的には、図5(B)に示すように、メモリセルや画素領域などに代表される規則正しく配列し高集積化した回路領域(図中の領域12に相当する)と、駆動回路や補正回路などの必要に応じてレイアウトが決定する回路領域(図中の領域14に相当する)とでは、素子および配線の配置(以下、回路領域におけるレイアウトともいう)に粗密が生じる。また、回路領域の外縁となる領域13には、素子が形成されていないため、領域12とのパターン密度の差が大きい。
【0084】
そこで、図5(A)に示すように、疎となる領域14にも、素子の密度が、領域12と等しくなるように、ダミー素子21を設けることで、回路領域におけるレイアウトのパターン密度の差を小さくする。なお、本明細書において、ある値と他の値とが等しいと記載する場合、厳密に一致するとは限らない。技術的常識の範囲内で同程度、同等、または近似した値とする。
【0085】
つまり、回路領域におけるレイアウトのパターン密度の差を、加工異常や静電破壊が生じにくい程度に、小さくする、または回路領域におけるパターン密度を等しくすることで、素子間の特性のバラつき、および形状異常を抑制することができる。
【0086】
または、回路領域におけるレイアウトのパターン密度の差を、各領域に配置された素子1個当たりに対する過剰酸素の拡散量の差が生じにくい程度に、小さくする、または回路領域におけるパターン密度を等しくする。当該構成により、複数の領域が、それぞれ有する素子へ拡散する過剰酸素の量を制御することができる。
【0087】
例えば、ある構造体について、基板全体の平均のパターン密度が40パーセントである場合でも、基板のある領域ではパターン密度が70パーセントであり、他の領域ではパターン密度が10パーセントである場合がある。従って、パターン密度が10パーセントの領域は疎の領域であるため、パターン密度がおおよそ70パーセントとなるように、ダミー素子21を形成するとよい。つまり、ダミー素子21を配置しない場合において、基板全体の平均パターン密度をdaveパーセント、daveパーセントよりも密な領域のパターン密度をdhighパーセント、daveパーセントよりも疎な領域のパターン密度をdlowパーセント、とする。パターン密度がdlowパーセントの領域に、ダミー素子21を設けることで、daveパーセント以上、好ましくはdhighパーセントとするとよい。
【0088】
また、本構造により、構造体28が、一様に過剰酸素領域を有する場合、領域12に配置される素子22と、領域14に配置される複数の素子22とでは、一つの素子22に拡散する酸素量が、同等となる。従って、領域12、および領域14において、素子特性のばらつきが抑制され、信頼性が良好な素子22を設けることができる。
【0089】
また、ダミー素子21を配置することで、トランジスタを作成する工程において熱が加わる処理群の各熱条件(なお、当該処理群による熱条件の履歴を熱履歴ともいう)により、酸化物半導体中の不純物(代表的には、水素、水など)が、ダミー素子21が有する導電体に吸収される場合がある。つまり、ダミー素子21が、不純物を捕獲することにより、素子22に不純物が拡散することを抑制できる。従って、素子22の信頼性を向上させることができる。
【0090】
以上より、トランジスタの電気特性のバラつきを抑制することができる。また信頼性の高いトランジスタを提供することができる。また、トランジスタの形状異常、および静電破壊を抑制することができる。従って、歩留まりが向上するため、半導体装置の生産性を高めることができる。
【0091】
また、高集積型の半導体装置を容易に用いることができる。また、オン電流が大きいトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。または、オフ電流が小さいトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。または、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有すると共に、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。
【0092】
以上、本実施の形態に示す構成、構造、方法などは、他の実施の形態、実施例などに示す構成、構造、方法などと適宜組み合わせて用いることができる。
【0093】
(実施の形態2)
本実施の形態では、上記実施の形態に示すトランジスタの構造例について説明する。
【0094】
<トランジスタの構造例1>
図6(A)乃至(C)を用いてトランジスタ200Aの構造例を説明する。図6(A)はトランジスタ200Aの上面図である。図6(B)は、図6(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図6(C)は、図6(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図6(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0095】
図6(A)乃至(C)では、トランジスタ200Aと、層間膜として機能する絶縁体210、絶縁体212、絶縁体214、絶縁体216、絶縁体280、絶縁体282、および絶縁体284と、を示している。また、トランジスタ200Aと電気的に接続し、コンタクトプラグとして機能するプラグ246(プラグ246s、およびプラグ246d)と、配線として機能する導電体203と、を示している。
【0096】
トランジスタ200Aは、第1のゲート(トップゲートともいう。)電極として機能する導電体260(導電体260a、および導電体260b)と、第2のゲート(ボトムゲートともいう。)電極として機能する導電体205(導電体205a、および導電体205b)と、第1のゲート絶縁体として機能する絶縁体250と、第2のゲート絶縁体として機能する絶縁体220、絶縁体222、および絶縁体224と、チャネルが形成される領域を有する酸化物230(酸化物230a、酸化物230b、および酸化物230c)と、ソースまたはドレインの一方として機能する導電体240sと、ソースまたはドレインの他方として機能する導電体240dと、絶縁体274と、を有する。
【0097】
絶縁体210および絶縁体212は、層間膜として機能する。
【0098】
層間膜としては、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、(Ba,Sr)TiO(BST)などの絶縁体を単層または積層で用いることができる。または、これらの絶縁体に、例えば、酸化アルミニウム、酸化ビスマス、酸化ゲルマニウム、酸化ニオブ、酸化シリコン、酸化チタン、酸化タングステン、酸化イットリウム、酸化ジルコニウムを添加してもよい。または、これらの絶縁体を窒化処理してもよい。上記の絶縁体に酸化シリコン、酸化窒化シリコンまたは窒化シリコンを積層して用いてもよい。
【0099】
例えば、絶縁体210は、水、水素などの不純物が、基板側からトランジスタ200Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。したがって、絶縁体210は、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)絶縁性材料を用いることが好ましい。また、例えば、絶縁体210として、酸化アルミニウム、窒化シリコンなどを用いてもよい。当該構成により、水、水素などの不純物が絶縁体210よりも基板側からトランジスタ200A側に拡散するのを抑制することができる。
【0100】
例えば、絶縁体212は、絶縁体210よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0101】
導電体203は、絶縁体212に埋め込まれるように形成される。ここで、導電体203の上面の高さと、絶縁体212の上面の高さは同程度にできる。なお、導電体203は、単層とする構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体203を2層以上の多層膜構造としてもよい。なお、導電体203は、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。
【0102】
トランジスタ200Aにおいて、導電体260は、第1のゲート電極として機能する場合がある。また、導電体205は、第2のゲート電極として機能する場合がある。その場合、導電体205に印加する電位を、導電体260に印加する電位と連動させず、独立して変化させることで、トランジスタ200Aのしきい値電圧を制御することができる。特に、導電体205に負の電位を印加することにより、トランジスタ200Aのしきい値電圧を0Vより大きくし、オフ電流を低減することが可能となる。したがって、導電体205に負の電位を印加したほうが、印加しない場合よりも、導電体260に印加する電位が0Vのときのドレイン電流を小さくすることができる。
【0103】
また、例えば、導電体205と、導電体260とを重畳して設けることで、導電体260および導電体205に電位を印加した場合、導電体260から生じる電界と、導電体205から生じる電界と、がつながり、酸化物230に形成されるチャネル形成領域を覆うことができる。
【0104】
つまり、第1のゲート電極として機能する導電体260の電界と、第2のゲート電極として機能する導電体205の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むことができる。本明細書において、第1のゲート電極、および第2のゲート電極の電界によって、チャネル形成領域を電気的に取り囲むトランジスタの構造を、surrounded channel(S-channel)構造とよぶ。
【0105】
絶縁体214および絶縁体216は、絶縁体210または絶縁体212と同様に、層間膜として機能する。例えば、絶縁体214は、水、水素などの不純物が、基板側からトランジスタ200Aに混入するのを抑制するバリア膜として機能することが好ましい。当該構成により、水、水素などの不純物が絶縁体214よりも基板側からトランジスタ200A側に拡散するのを抑制することができる。また、例えば、絶縁体216は、絶縁体214よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0106】
第2のゲート電極として機能する導電体205は、絶縁体214および絶縁体216の開口の内壁に接して導電体205aが形成され、さらに内側に導電体205bが形成されている。ここで、導電体205aおよび導電体205bの上面の高さと、絶縁体216の上面の高さは同程度にできる。なお、トランジスタ200Aでは、導電体205aおよび導電体205bを積層する構成について示しているが、本発明はこれに限られるものではない。例えば、導電体205は、単層、または3層以上の積層構造として設ける構成にしてもよい。
【0107】
ここで、導電体205aは、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する(上記不純物が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する(上記酸素が透過しにくい。)導電性材料を用いることが好ましい。なお、本明細書において、不純物、または酸素の拡散を抑制する機能とは、当該不純物、または当該酸素のいずれか一または、すべての拡散を抑制する機能とする。
【0108】
例えば、導電体205aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体205bが酸化して導電率が低下することを抑制することができる。
【0109】
また、導電体205が配線の機能を兼ねる場合、導電体205bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする、導電性が高い導電性材料を用いることが好ましい。その場合、導電体203は、必ずしも設けなくともよい。なお、導電体205bを単層で図示したが、積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0110】
絶縁体220、絶縁体222、および絶縁体224は、第2のゲート絶縁体として機能する。
【0111】
ここで、酸化物230と接する絶縁体224は、加熱により酸素を脱離することが好ましい。本明細書では、加熱により離脱する酸素を過剰酸素と呼ぶことがある。例えば、絶縁体224は、酸化シリコンまたは酸化窒化シリコンなどを適宜用いればよい。酸素を含む絶縁体を酸化物230に接して設けることにより、酸化物230中の酸素欠損を低減し、トランジスタ200Aの信頼性を向上させることができる。
【0112】
絶縁体224として、具体的には、加熱により一部の酸素が脱離する酸化物材料を用いることが好ましい。加熱により酸素を脱離する酸化物とは、TDS(Thermal Desorption Spectroscopy)分析にて、酸素分子に換算しての酸素の脱離量が1.0×1018molecules/cm以上、好ましくは1.0×1019molecules/cm以上、さらに好ましくは2.0×1019molecules/cm以上、または3.0×1020molecules/cm以上である酸化物膜である。なお、上記TDS分析時における膜の表面温度としては100℃以上700℃以下、または100℃以上400℃以下の範囲が好ましい。
【0113】
また、絶縁体222は、バリア性を有することが好ましい。絶縁体222がバリア性を有することで、トランジスタ200Aの周辺部からトランジスタ200Aへの水素等の不純物の混入を抑制する層として機能する。
【0114】
絶縁体222は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、(Ba,Sr)TiO(BST)などのいわゆるhigh-k材料を含む絶縁体を単層または積層で用いることが好ましい。トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。ゲート絶縁体として機能する絶縁体にhigh-k材料を用いることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。
【0115】
例えば、絶縁体220は、熱的に安定していることが好ましい。例えば、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定した材料である。従って、絶縁体220に酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンを用い、絶縁体222にhigh-k材料を用いた場合、絶縁体220と絶縁体222とを組み合わせることで、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0116】
なお、図6には、第2のゲート絶縁体として、3層の積層構造を示したが、単層、または2層以上の積層構造としてもよい。その場合、同じ材料からなる積層構造に限定されず、異なる材料からなる積層構造でもよい。
【0117】
チャネル形成領域として機能する領域を有する酸化物230は、酸化物230aと、酸化物230a上の酸化物230bと、酸化物230b上の酸化物230cと、を有する。酸化物230b下に酸化物230aを有することで、酸化物230aよりも下方に形成された構造物から、酸化物230bへの不純物の拡散を抑制することができる。また、酸化物230b上に酸化物230cを有することで、酸化物230cよりも上方に形成された構造物から、酸化物230bへの不純物の拡散を抑制することができる。酸化物230として、以降で示す金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いることができる。
【0118】
また、図6に示すトランジスタ200Aは、導電体240(導電体240s、および導電体240d)と、酸化物230c、絶縁体250、および導電体260と、が重畳する領域を有する。当該構造とすることで、オン電流が高いトランジスタを提供することができる。また、制御性が高いトランジスタを提供することができる。
【0119】
導電体240は、一方がソース電極として機能し、他方がドレイン電極として機能する。
【0120】
導電体240は、アルミニウム、チタン、クロム、ニッケル、銅、イットリウム、ジルコニウム、モリブデン、銀、タンタル、タングステンなどの金属、または当該金属を主成分とする合金を用いることができる。特に、窒化タンタルなどの金属窒化物膜は、水素または酸素に対するバリア性があり、また、耐酸化性が高いため、好ましい。
【0121】
また、図6には、導電体240として、単層構造を示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、窒化タンタル膜とタングステン膜を積層するとよい。また、チタン膜とアルミニウム膜を積層してもよい。また、タングステン膜上にアルミニウム膜を積層する二層構造、銅-マグネシウム-アルミニウム合金膜上に銅膜を積層する二層構造、チタン膜上に銅膜を積層する二層構造、タングステン膜上に銅膜を積層する二層構造としてもよい。
【0122】
また、チタン膜または窒化チタン膜と、そのチタン膜または窒化チタン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にチタン膜または窒化チタン膜を形成する三層構造、モリブデン膜または窒化モリブデン膜と、そのモリブデン膜または窒化モリブデン膜上に重ねてアルミニウム膜または銅膜を積層し、さらにその上にモリブデン膜または窒化モリブデン膜を形成する三層構造等がある。なお、酸化インジウム、酸化錫または酸化亜鉛を含む透明導電材料を用いてもよい。
【0123】
また、導電体240上に、バリア層を設けてもよい。バリア層は、酸素、または水素に対してバリア性を有する物質を用いることが好ましい。当該構成により、絶縁体274を成膜する際に、導電体240が酸化することを抑制することができる。
【0124】
バリア層には、例えば、金属酸化物を用いることができる。特に、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、酸化ガリウムなどの、酸素や水素に対してバリア性のある絶縁膜を用いることが好ましい。また、CVD法で形成した窒化シリコンを用いてもよい。
【0125】
バリア層を有することで、導電体240の材料選択の幅を広げることができる。例えば、導電体240に、タングステン、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0126】
絶縁体250は、第1のゲート絶縁体として機能する。
【0127】
トランジスタの微細化、および高集積化が進むと、ゲート絶縁体の薄膜化により、リーク電流などの問題が生じる場合がある。その場合、絶縁体250は、第2のゲート絶縁体と同様に、積層構造としてもよい。ゲート絶縁体として機能する絶縁体を、high-k材料と、熱的に安定している材料との積層構造とすることで、物理膜厚を保ちながら、トランジスタ動作時のゲート電位の低減が可能となる。また、熱的に安定かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。
【0128】
第1のゲート電極として機能する導電体260は、導電体260a、および導電体260a上の導電体260bを有する。導電体260aは、導電体205aと同様に、水素原子、水素分子、水分子、銅原子などの不純物の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。または、酸素(例えば、酸素原子、酸素分子などの少なくとも一)の拡散を抑制する機能を有する導電性材料を用いることが好ましい。
【0129】
導電体260aが酸素の拡散を抑制する機能を持つことにより、導電体260bの材料選択性を向上することができる。つまり、導電体260aを有することで、導電体260bの酸化が抑制され、導電率が低下することを防止することができる。
【0130】
酸素の拡散を抑制する機能を有する導電性材料としては、例えば、タンタル、窒化タンタル、ルテニウム、酸化ルテニウムなどを用いることが好ましい。また、導電体260aとして、酸化物230として用いることができる酸化物半導体を用いることができる。その場合、導電体260bをスパッタリング法で成膜することで、導電体260aの電気抵抗値を低下させて導電体とすることができる。これをOC(Oxide Conductor)電極と呼ぶことができる。
【0131】
また、導電体260は、配線として機能するため、導電性が高い導電体を用いることが好ましい。例えば、導電体260bは、タングステン、銅、またはアルミニウムを主成分とする導電性材料を用いることができる。また、導電体260bは積層構造としてもよく、例えば、チタン、窒化チタンと上記導電性材料との積層としてもよい。
【0132】
また、導電体260の上面および側面、絶縁体250の側面、および酸化物230cの側面を覆うように、絶縁体274を設けることが好ましい。なお、絶縁体274は、水、水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
【0133】
絶縁体274を設けることで、導電体260の酸化を抑制することができる。また、絶縁体274を有することで、絶縁体280が有する水、水素などの不純物がトランジスタ200Aへ拡散することを抑制することができる。
【0134】
絶縁体280、絶縁体282、および絶縁体284は、層間膜として機能する。
【0135】
絶縁体282は、絶縁体214と同様に、水、水素などの不純物が、外部からトランジスタ200Aに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。
【0136】
また、絶縁体280、および絶縁体284は、絶縁体216と同様に、絶縁体282よりも誘電率が低いことが好ましい。誘電率が低い材料を層間膜とすることで、配線間に生じる寄生容量を低減することができる。
【0137】
また、トランジスタ200Aは、絶縁体280、絶縁体282、および絶縁体284に埋め込まれたプラグ246などのプラグや配線を介して、他の構造と電気的に接続してもよい。
【0138】
また、プラグ246の材料としては、導電体205と同様に、金属材料、合金材料、金属窒化物材料、金属酸化物材料などの導電性材料を、単層または積層して用いることができる。例えば、耐熱性と導電性を両立するタングステンやモリブデンなどの高融点材料を用いることが好ましい。または、アルミニウムや銅などの低抵抗導電性材料で形成することが好ましい。低抵抗導電性材料を用いることで配線抵抗を低くすることができる。
【0139】
例えば、プラグ246としては、例えば、水素、および酸素に対してバリア性を有する導電体である窒化タンタル等と、導電性が高いタングステンとの積層構造を用いることで、配線としての導電性を保持したまま、外部からの不純物の拡散を抑制することができる。
【0140】
また、プラグ246と、絶縁体280との間に、バリア性を有する絶縁体276(絶縁体276a、および絶縁体276b)を配置してもよい。絶縁体276を設けることで、絶縁体280の酸素がプラグ246と反応し、プラグ246が酸化することを抑制することができる。
【0141】
また、バリア性を有する絶縁体276を設けることで、プラグや配線に用いられる導電体の材料選択の幅を広げることができる。例えば、プラグ246に、酸素を吸収する性質を持つ一方で、導電性が高い金属材料を用いることで、低消費電力の半導体装置を提供することができる。具体的には、タングステン、アルミニウムなどの耐酸化性が低い一方で導電性が高い材料を用いることができる。また、例えば、成膜、または加工がしやすい導電体を用いることができる。
【0142】
上記構造を有することで、オン電流が大きいトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。または、オフ電流が小さいトランジスタを有する半導体装置を提供することができる。または、電気特性の変動を抑制し、安定した電気特性を有すると共に、信頼性を向上させた半導体装置を提供することができる。
【0143】
<構成材料について>
〔基板〕
基板として用いる材料に大きな制限はないが、少なくとも後の加熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有していることが必要となる。例えば、基板としてシリコンや炭化シリコンなどを材料とした単結晶半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウムなどを材料とした化合物半導体基板等を用いることができる。また、SOI基板または半導体基板上に歪トランジスタやFIN型トランジスタなどの半導体素子が設けられたものなどを用いることもできる。または、高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)に適用可能なヒ化ガリウム、ヒ化アルミニウムガリウム、ヒ化インジウムガリウム、窒化ガリウム、リン化インジウム、シリコンゲルマニウムなどを用いてもよい。すなわち、基板は、単なる支持基板に限らず、他のトランジスタなどのデバイスが形成された基板であってもよい。
【0144】
また、基板として、バリウムホウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラスなどのガラス基板、セラミック基板、石英基板、サファイア基板などを用いることもできる。なお、基板として、可撓性基板(フレキシブル基板)を用いてもよい。可撓性基板を用いる場合、可撓性基板上に、トランジスタや容量素子などを直接作製してもよいし、他の作製基板上にトランジスタや容量素子などを作製し、その後可撓性基板に剥離、転置してもよい。なお、作製基板から可撓性基板に剥離、転置するために、作製基板とトランジスタや容量素子などとの間に剥離層を設けるとよい。
【0145】
可撓性基板としては、例えば、金属、合金、樹脂もしくはガラス、またはそれらの繊維などを用いることができる。基板に用いる可撓性基板は、線膨張率が低いほど環境による変形が抑制されて好ましい。基板に用いる可撓性基板は、例えば、線膨張率が1×10-3/K以下、5×10-5/K以下、または1×10-5/K以下である材質を用いればよい。樹脂としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド(ナイロン、アラミドなど)、ポリイミド、ポリカーボネート、アクリルなどがある。特に、アラミドは、線膨張率が低いため、可撓性基板として好適である。
【0146】
〔絶縁体〕
絶縁体は、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化シリコン、酸化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化窒化シリコン、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化ハフニウム、酸化タンタル、アルミニウムシリケートなどから選ばれた材料を、単層で、または積層して用いる。また、酸化物材料、窒化物材料、酸化窒化物材料、窒化酸化物材料のうち、複数の材料を混合した材料を用いてもよい。
【0147】
なお、本明細書等において、窒化酸化物とは、酸素よりも窒素の含有量が多い化合物をいう。また、酸化窒化物とは、窒素よりも酸素の含有量が多い化合物をいう。なお、各元素の含有量は、例えば、ラザフォード後方散乱法(RBS:Rutherford Backscattering Spectrometry)等を用いて測定することができる。
【0148】
また、半導体層として金属酸化物の一種である酸化物半導体を用いる場合は、半導体層中の水素濃度の増加を防ぐために、絶縁体中の水素濃度を低減することが好ましい。具体的には、絶縁体中の水素濃度を、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)において2×1020atoms/cm以下、好ましくは5×1019atoms/cm以下、より好ましくは1×1019atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1018atoms/cm以下とする。特に、半導体層と接する絶縁体の水素濃度を低減することが好ましい。
【0149】
また、半導体層中の窒素濃度の増加を防ぐために、絶縁体中の窒素濃度を低減することが好ましい。具体的には、絶縁体中の窒素濃度を、SIMSにおいて5×1019atoms/cm以下、好ましくは5×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。
【0150】
また、絶縁体の少なくとも半導体層と接する領域と、絶縁体の少なくとも半導体層と接する領域は、欠陥が少ないことが好ましく、代表的には、電子スピン共鳴法(ESR:Electron Spin Resonance)で観察されるシグナルが少ない方が好ましい。例えば、上述のシグナルとしては、g値が2.001に観察されるE’センターが挙げられる。なお、E’センターは、シリコンのダングリングボンドに起因する。例えば、絶縁体として、酸化シリコン層または酸化窒化シリコン層を用いる場合、E’センター起因のスピン密度が、3×1017spins/cm以下、好ましくは5×1016spins/cm以下である酸化シリコン層または酸化窒化シリコン層を用いればよい。
【0151】
また、上述のシグナル以外に二酸化窒素(NO)に起因するシグナルが観察される場合がある。当該シグナルは、窒素の核スピンにより3つのシグナルに分裂しており、それぞれのg値が2.037以上2.039以下(第1のシグナルとする)、g値が2.001以上2.003以下(第2のシグナルとする)、およびg値が1.964以上1.966以下(第3のシグナルとする)に観察される。
【0152】
例えば、絶縁体として、二酸化窒素(NO)に起因するシグナルのスピン密度が、1×1017spins/cm以上1×1018spins/cm未満である絶縁体を用いると好適である。
【0153】
なお、二酸化窒素(NO)を含む窒素酸化物(NO)は、絶縁体中に準位を形成する。当該準位は、酸化物半導体層のエネルギーギャップ内に位置する。そのため、窒素酸化物(NO)が、絶縁体と酸化物半導体層との界面に拡散すると、当該準位が絶縁体側において電子をトラップする場合がある。この結果、トラップされた電子が、絶縁体と酸化物半導体層との界面近傍に留まるため、トランジスタのしきい値電圧をプラス方向にシフトさせてしまう。したがって、絶縁体として窒素酸化物の含有量が少ない膜を用いると、トランジスタのしきい値電圧のシフトを低減することができる。
【0154】
窒素酸化物(NO)の放出量が少ない絶縁体としては、例えば、酸化窒化シリコン層を用いることができる。当該酸化窒化シリコン層は、昇温脱離ガス分析法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)において、窒素酸化物(NO)の放出量よりアンモニアの放出量が多い膜であり、代表的にはアンモニアの放出量が1×1018個/cm以上5×1019個/cm以下である。なお、上記のアンモニアの放出量は、TDSにおける加熱処理の温度が50℃以上650℃以下、または50℃以上550℃以下の範囲での総量である。
【0155】
窒素酸化物(NO)は、加熱処理においてアンモニアおよび酸素と反応するため、アンモニアの放出量が多い絶縁体を用いることで窒素酸化物(NO)が低減される。
【0156】
また、酸化物半導体層に接する絶縁体のうち少なくとも1つは、加熱により酸素が放出される絶縁体を用いて形成することが好ましい。具体的には、絶縁体の表面温度が100℃以上700℃以下、好ましくは100℃以上500℃以下の加熱処理で行われるTDSにて、酸素原子に換算した酸素の脱離量が1.0×1018atoms/cm以上、1.0×1019atoms/cm以上、または1.0×1020atoms/cm以上である絶縁体を用いることが好ましい。なお、本明細書などにおいて、加熱により放出される酸素を「過剰酸素」ともいう。
【0157】
また、過剰酸素を含む絶縁体は、絶縁体に酸素を添加する処理を行なって形成することもできる。酸素を添加する処理は、酸化性雰囲気下における熱処理やプラズマ処理などで行なうことができる。または、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法などを用いて酸素を添加してもよい。酸素を添加する処理に用いるガスとしては、16もしくは18などの酸素ガス、亜酸化窒素ガス、オゾンガスなどの、酸素を含むガスが挙げられる。なお、本明細書では酸素を添加する処理を「酸素ドープ処理」ともいう。酸素ドープ処理は、基板を加熱して行なってもよい。
【0158】
また、絶縁体として、ポリイミド、アクリル系樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ系樹脂等の、耐熱性を有する有機材料を用いることができる。また上記有機材料の他に、低誘電率材料(low-k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等を用いることができる。なお、これらの材料で形成される絶縁体を複数積層させることで、絶縁体を形成してもよい。
【0159】
なお、シロキサン系樹脂とは、シロキサン系材料を出発材料として形成されたSi-O-Si結合を含む樹脂に相当する。シロキサン系樹脂は置換基としては有機基(例えばアルキル基やアリール基)やフルオロ基を用いてもよい。また、有機基はフルオロ基を有していてもよい。
【0160】
絶縁体の形成方法は、特に限定されない。なお、絶縁体に用いる材料によっては焼成工程が必要な場合がある。この場合、絶縁体の焼成工程と他の熱処理工程を兼ねることで、効率よくトランジスタを作製することが可能となる。
【0161】
〔電極〕
電極を形成するための導電性材料としては、アルミニウム、クロム、銅、銀、金、白金、タンタル、ニッケル、チタン、モリブデン、タングステン、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、マンガン、マグネシウム、ジルコニウム、ベリリウム、インジウムなどから選ばれた金属元素を1種以上含む材料を用いることができる。また、リン等の不純物元素を含有させた多結晶シリコンに代表される、電気伝導度が高い半導体、ニッケルシリサイドなどのシリサイドを用いてもよい。
【0162】
また、上記の金属元素および酸素を含む導電性材料を用いてもよい。また、上記の金属元素および窒素を含む導電性材料を用いてもよい。例えば、窒化チタン、窒化タンタルなどの窒素を含む導電性材料を用いてもよい。また、インジウム錫酸化物(ITO:Indium Tin Oxide)、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、インジウムガリウム亜鉛酸化物、シリコンを添加したインジウム錫酸化物を用いてもよい。また、窒素を含むインジウムガリウム亜鉛酸化物を用いてもよい。
【0163】
また、上記の材料で形成される導電体を複数積層して用いてもよい。例えば、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、窒素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。また、窒素を含む導電性材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造としてもよい。
【0164】
なお、半導体層に酸化物半導体を用いて、ゲート電極として前述した金属元素を含む材料と、酸素を含む導電性材料と、を組み合わせた積層構造を用いる場合は、酸素を含む導電性材料を半導体層側に設けるとよい。酸素を含む導電性材料を半導体層側に設けることで、当該導電性材料から離脱した酸素が半導体層に供給されやすくなる。
【0165】
なお、電極としては、例えば、タングステン、ポリシリコン等の埋め込み性の高い導電性材料を用いればよい。また、埋め込み性の高い導電性材料と、チタン層、窒化チタン層、窒化タンタル層などのバリア層(拡散防止層)を組み合わせて用いてもよい。なお、電極を「コンタクトプラグ」という場合がある。
【0166】
特に、ゲート絶縁体と接する電極に不純物が透過しにくい導電性材料を用いることが好ましい。不純物が透過しにくい導電性材料として、例えば窒化タンタルが挙げられる。
【0167】
絶縁体に不純物が透過しにくい絶縁性材料を用い、電極に不純物が透過しにくい導電性材料を用いることで、トランジスタへの不純物の拡散をさらに抑制することができる。よって、トランジスタの信頼性をさらに高めることができる。すなわち、半導体装置の信頼性をさらに高めることができる。
【0168】
〔半導体層〕
半導体層として、単結晶半導体、多結晶半導体、微結晶半導体、非晶質半導体などを、単体で、または組み合わせて用いることができる。半導体材料としては、例えば、シリコン、ゲルマニウムなどを用いることができる。また、シリコンゲルマニウム、炭化シリコン、ガリウムヒ素、酸化物半導体、窒化物半導体などの化合物半導体や、有機半導体などを用いることができる。
【0169】
また、半導体層として有機物半導体を用いる場合は、芳香環をもつ低分子有機材料やπ電子共役系導電性高分子などを用いることができる。例えば、ルブレン、テトラセン、ペンタセン、ペリレンジイミド、テトラシアノキノジメタン、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリパラフェニレンビニレンなどを用いることができる。
【0170】
なお、半導体層を積層してもよい。半導体層を積層する場合は、それぞれ異なる結晶状態を有する半導体を用いてもよいし、それぞれ異なる半導体材料を用いてもよい。
【0171】
また、金属酸化物の一種である酸化物半導体のバンドギャップは2eV以上あるため、半導体層に酸化物半導体を用いると、オフ電流が極めて少ないトランジスタを実現することができる。具体的には、ソースとドレイン間の電圧が3.5V、室温(代表的には25℃)下において、チャネル幅1μm当たりのオフ電流を1×10-20A未満、1×10-22A未満、または1×10-24A未満とすることができる。すなわち、オンオフ比を20桁以上とすることもできる。また、半導体層に酸化物半導体を用いたトランジスタ(OSトランジスタ)は、ソースとドレイン間の絶縁耐圧が高い。よって、信頼性の良好なトランジスタを提供できる。また、出力電圧が大きく高耐圧なトランジスタを提供できる。また、信頼性の良好な半導体装置などを提供できる。また、出力電圧が大きく高耐圧な半導体装置を提供することができる。
【0172】
また、本明細書等において、チャネルが形成される半導体層に結晶性を有するシリコンを用いたトランジスタを「結晶性Siトランジスタ」ともいう。
【0173】
結晶性Siトランジスタは、OSトランジスタよりも比較的高い移動度を得やすい。一方で、結晶性Siトランジスタは、OSトランジスタのように極めて少ないオフ電流の実現が困難である。よって、半導体層に用いる半導体材料は、目的や用途に応じて適宜使い分けることが肝要である。例えば、目的や用途に応じて、OSトランジスタと結晶性Siトランジスタなどを組み合わせて用いてもよい。
【0174】
半導体層として酸化物半導体層を用いる場合は、酸化物半導体層をスパッタリング法で形成することが好ましい。酸化物半導体層は、スパッタリング法で形成すると酸化物半導体層の密度を高められるため、好適である。スパッタリング法で酸化物半導体層を形成する場合、スパッタリングガスには、希ガス(代表的にはアルゴン)、酸素、または、希ガスおよび酸素の混合ガスを用いればよい。また、スパッタリングガスの高純度化も必要である。例えば、スパッタリングガスとして用いる酸素ガスや希ガスは、露点が-60℃以下、好ましくは-100℃以下にまで高純度化したガスを用いる。高純度化されたスパッタリングガスを用いて成膜することで、酸化物半導体層に水分等が取り込まれることを可能な限り防ぐことができる。
【0175】
また、スパッタリング法で酸化物半導体層を形成する場合、スパッタリング装置が有する成膜室内の水分を可能な限り除去することが好ましい。例えば、クライオポンプのような吸着式の真空排気ポンプを用いて、成膜室内を高真空(5×10-7Paから1×10-4Pa程度まで)に排気することが好ましい。特に、スパッタリング装置の待機時における、成膜室内のHOに相当するガス分子(m/z=18に相当するガス分子)の分圧を1×10-4Pa以下とすることが好ましく、5×10-5Pa以下とすることがより好ましい。
【0176】
〔金属酸化物〕
金属酸化物の一種である酸化物半導体は、少なくともインジウムまたは亜鉛を含むことが好ましい。特にインジウムおよび亜鉛を含むことが好ましい。また、それらに加えて、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、スズなどが含まれていることが好ましい。また、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどから選ばれた一種、または複数種が含まれていてもよい。
【0177】
ここで、酸化物半導体が、インジウム、元素Mおよび亜鉛を有する場合を考える。なお、元素Mは、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、スズなどとする。そのほかの元素Mに適用可能な元素として、ホウ素、チタン、鉄、ニッケル、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ランタン、セリウム、ネオジム、ハフニウム、タンタル、タングステン、マグネシウムなどがある。ただし、元素Mとして、前述の元素を複数組み合わせても構わない場合がある。
【0178】
なお、本明細書等において、窒素を有する金属酸化物も金属酸化物(metal oxide)と総称する場合がある。また、窒素を有する金属酸化物を、金属酸窒化物(metal oxynitride)と呼称してもよい。
【0179】
[金属酸化物の構造]
金属酸化物の一種である酸化物半導体は、単結晶酸化物半導体と、それ以外の非単結晶酸化物半導体と、に分けられる。非単結晶酸化物半導体としては、例えば、CAAC-OS(c-axis aligned crystalline oxide semiconductor)、多結晶酸化物半導体、nc-OS(nanocrystalline oxide semiconductor)、擬似非晶質酸化物半導体(a-like OS:amorphous-like oxide semiconductor)、非晶質酸化物半導体などがある。
【0180】
CAAC-OSは、c軸配向性を有し、かつa-b面方向において複数のナノ結晶が連結し、歪みを有した結晶構造となっている。なお、歪みとは、複数のナノ結晶が連結する領域において、格子配列の揃った領域と、別の格子配列の揃った領域と、の間で格子配列の向きが変化している箇所を指す。
【0181】
ナノ結晶は、六角形を基本とするが、正六角形状とは限らず、非正六角形状である場合がある。また、歪みにおいて、五角形、および七角形などの格子配列を有する場合がある。なお、CAAC-OSにおいて、歪み近傍においても、明確な結晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することは難しい。すなわち、格子配列の歪みによって、結晶粒界の形成が抑制されていることがわかる。これは、CAAC-OSが、a-b面方向において酸素原子の配列が稠密でないことや、金属元素が置換することで原子間の結合距離が変化することなどによって、歪みを許容することができるためである。
【0182】
また、CAAC-OSは、インジウム、および酸素を有する層(以下、In層)と、元素M、亜鉛、および酸素を有する層(以下、(M、Zn)層)とが積層した、層状の結晶構造(層状構造ともいう)を有する傾向がある。なお、インジウムと元素Mは、互いに置換可能であり、(M、Zn)層の元素Mがインジウムと置換した場合、(In、M、Zn)層と表すこともできる。また、In層のインジウムが元素Mと置換した場合、(In、M)層と表すこともできる。
【0183】
CAAC-OSは結晶性の高い金属酸化物である。一方、CAAC-OSは、明確な結晶粒界を確認することが難しいため、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。また、金属酸化物の結晶性は不純物の混入や欠陥の生成などによって低下する場合があるため、CAAC-OSは不純物や欠陥(酸素欠損など)の少ない金属酸化物ともいえる。したがって、CAAC-OSを有する金属酸化物は、物理的性質が安定する。そのため、CAAC-OSを有する金属酸化物は熱に強く、信頼性が高い。
【0184】
nc-OSは、微小な領域(例えば、1nm以上10nm以下の領域、特に1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有する。また、nc-OSは、異なるナノ結晶間で結晶方位に規則性が見られない。そのため、膜全体で配向性が見られない。したがって、nc-OSは、分析方法によっては、a-like OSや非晶質酸化物半導体と区別が付かない場合がある。
【0185】
a-like OSは、nc-OSと非晶質酸化物半導体との間の構造を有する金属酸化物である。a-like OSは、鬆または低密度領域を有する。すなわち、a-like OSは、nc-OSおよびCAAC-OSと比べて、結晶性が低い。
【0186】
酸化物半導体(金属酸化物)は、多様な構造をとり、それぞれが異なる特性を有する。酸化物半導体は、非晶質酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、a-like OS、nc-OS、CAAC-OSのうち、二種以上を有していてもよい。
【0187】
[金属酸化物を有するトランジスタ]
続いて、上記金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いる場合について説明する。
【0188】
なお、上記金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、高い電界効果移動度のトランジスタを実現することができる。また、信頼性の高いトランジスタを実現することができる。
【0189】
また、トランジスタには、キャリア密度の低い金属酸化物を用いることが好ましい。金属酸化物膜のキャリア密度を低くする場合においては、金属酸化物膜中の不純物濃度を低くし、欠陥準位密度を低くすればよい。本明細書等において、不純物濃度が低く、欠陥準位密度の低いことを高純度真性または実質的に高純度真性という。例えば、金属酸化物は、キャリア密度が8×1011/cm未満、好ましくは1×1011/cm未満、さらに好ましくは1×1010/cm未満であり、1×10-9/cm以上とすればよい。
【0190】
また、高純度真性または実質的に高純度真性である金属酸化物膜は、欠陥準位密度が低いため、トラップ準位密度も低くなる場合がある。
【0191】
また、金属酸化物のトラップ準位に捕獲された電荷は、消失するまでに要する時間が長く、あたかも固定電荷のように振る舞うことがある。そのため、トラップ準位密度の高い金属酸化物をチャネル形成領域に有するトランジスタは、電気特性が不安定となる場合がある。
【0192】
したがって、トランジスタの電気特性を安定にするためには、金属酸化物中の不純物濃度を低減することが有効である。また、金属酸化物中の不純物濃度を低減するためには、近接する膜中の不純物濃度も低減することが好ましい。不純物としては、水素、窒素、アルカリ金属、アルカリ土類金属、鉄、ニッケル、シリコン等がある。
【0193】
[不純物]
ここで、金属酸化物中における各不純物の影響について説明する。
【0194】
金属酸化物において、第14族元素の一つであるシリコンや炭素が含まれると、金属酸化物において欠陥準位が形成される。このため、金属酸化物におけるシリコンや炭素の濃度と、金属酸化物との界面近傍のシリコンや炭素の濃度(二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)により得られる濃度)を、2×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1017atoms/cm以下とする。
【0195】
また、金属酸化物にアルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれると、欠陥準位を形成し、キャリアを生成する場合がある。したがって、アルカリ金属またはアルカリ土類金属が含まれている金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、金属酸化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を低減することが好ましい。具体的には、SIMSにより得られる金属酸化物中のアルカリ金属またはアルカリ土類金属の濃度を、1×1018atoms/cm以下、好ましくは2×1016atoms/cm以下にする。
【0196】
また、金属酸化物において、窒素が含まれると、キャリアである電子が生じ、キャリア密度が増加し、n型化しやすい。この結果、窒素が含まれている金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。したがって、当該金属酸化物において、チャネル形成領域の窒素はできる限り低減されていることが好ましい。例えば、金属酸化物中の窒素濃度は、SIMSにおいて、5×1019atoms/cm未満、好ましくは5×1018atoms/cm以下、より好ましくは1×1018atoms/cm以下、さらに好ましくは5×1017atoms/cm以下とする。
【0197】
また、金属酸化物に含まれる水素は、金属原子と結合する酸素と反応して水になるため、酸素欠損を形成する場合がある。当該酸素欠損に水素が入ることで、キャリアである電子が生成される場合がある。また、水素の一部が金属原子と結合する酸素と結合して、キャリアである電子を生成することがある。したがって、水素が含まれている金属酸化物をチャネル形成領域に用いたトランジスタはノーマリーオン特性となりやすい。このため、金属酸化物中の水素はできる限り低減されていることが好ましい。具体的には、金属酸化物において、SIMSにより得られる水素濃度を、1×1020atoms/cm未満、好ましくは1×1019atoms/cm未満、より好ましくは5×1018atoms/cm未満、さらに好ましくは1×1018atoms/cm未満とする。
【0198】
不純物が十分に低減された金属酸化物をトランジスタのチャネル形成領域に用いることで、安定した電気特性を付与することができる。
【0199】
トランジスタの半導体に用いる金属酸化物として、結晶性の高い薄膜を用いることが好ましい。該薄膜を用いることで、トランジスタの安定性または信頼性を向上させることができる。該薄膜として、例えば、単結晶金属酸化物の薄膜または多結晶金属酸化物の薄膜が挙げられる。しかしながら、単結晶金属酸化物の薄膜または多結晶金属酸化物の薄膜を基板上に形成するには、高温またはレーザー加熱の工程が必要とされる。よって、製造工程のコストが増加し、さらに、スループットも低下してしまう。
【0200】
2009年に、CAAC構造を有するIn-Ga-Zn酸化物(CAAC-IGZOと呼ぶ。)が発見されたことが、非特許文献1および非特許文献2で報告されている。ここでは、CAAC-IGZOは、c軸配向性を有する、結晶粒界が明確に確認されない、低温で基板上に形成可能である、ことが報告されている。さらに、CAAC-IGZOを用いたトランジスタは、優れた電気特性および信頼性を有することが報告されている。
【0201】
また、2013年には、nc構造を有するIn-Ga-Zn酸化物(nc-IGZOと呼ぶ。)が発見された(非特許文献3参照。)。ここでは、nc-IGZOは、微小な領域(例えば、1nm以上3nm以下の領域)において原子配列に周期性を有し、異なる該領域間で結晶方位に規則性が見られないことが報告されている。
【0202】
非特許文献4および非特許文献5では、上記のCAAC-IGZO、nc-IGZO、および結晶性の低いIGZOのそれぞれの薄膜に対する電子線の照射による平均結晶サイズの推移が示されている。結晶性の低いIGZOの薄膜において、電子線が照射される前でさえ、1nm程度の結晶性IGZOが観察されている。よって、ここでは、IGZOにおいて、完全な非晶質構造(completely amorphous structure)の存在を確認できなかった、と報告されている。さらに、結晶性の低いIGZOの薄膜と比べて、CAAC-IGZOの薄膜およびnc-IGZOの薄膜は電子線照射に対する安定性が高いことが示されている。よって、トランジスタの半導体として、CAAC-IGZOの薄膜またはnc-IGZOの薄膜を用いることが好ましい。
【0203】
金属酸化物を用いたトランジスタは、非導通状態において極めてリーク電流が小さい、具体的には、トランジスタのチャネル幅1μmあたりのオフ電流がyA/μm(10-24A/μm)オーダである、ことが非特許文献6に示されている。例えば、金属酸化物を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を応用した低消費電力のCPUなどが開示されている(非特許文献7参照。)。
【0204】
また、金属酸化物を用いたトランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置への応用が報告されている(非特許文献8参照。)。表示装置では、表示される画像が1秒間に数十回切り換っている。1秒間あたりの画像の切り換え回数はリフレッシュレートと呼ばれている。また、リフレッシュレートを駆動周波数と呼ぶこともある。このような人の目で知覚が困難である高速の画面の切り換えが、目の疲労の原因として考えられている。そこで、表示装置のリフレッシュレートを低下させて、画像の書き換え回数を減らすことが提案されている。また、リフレッシュレートを低下させた駆動により、表示装置の消費電力を低減することが可能である。このような駆動方法を、アイドリング・ストップ(IDS)駆動と呼ぶ。
【0205】
CAAC構造およびnc構造の発見は、CAAC構造またはnc構造を有する金属酸化物を用いたトランジスタの電気特性および信頼性の向上、ならびに、製造工程のコスト低下およびスループットの向上に貢献している。また、該トランジスタのリーク電流が低いという特性を利用した、該トランジスタの表示装置およびLSIへの応用研究が進められている。
【0206】
<成膜方法について>
絶縁体を形成するための絶縁性材料、電極を形成するための導電性材料、または半導体層を形成するための半導体材料は、スパッタリング法、スピンコート法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法(熱CVD法、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法、PECVD(Plasma Enhanced CVD)法、高密度プラズマCVD(High density plasma CVD)法、LPCVD(low pressure CVD)法、APCVD(atmospheric pressure CVD)法等を含む)、ALD(Atomic Layer Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法、PLD(Pulsed Laser Deposition)法、ディップ法、スプレー塗布法、液滴吐出法(インクジェット法など)、印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷など)などを用いて形成することができる。
【0207】
プラズマCVD法は、比較的低温で高品質の膜が得られる。MOCVD法、ALD法、熱CVD法などの、成膜時にプラズマを用いない成膜方法を用いると、被形成面にダメージが生じにくい。例えば、半導体装置に含まれる配線、電極、素子(トランジスタ、容量素子など)などは、プラズマから電荷を受け取ることでチャージアップする場合がある。このとき、蓄積した電荷によって、半導体装置に含まれる配線、電極、素子などが破壊される場合がある。一方、プラズマを用いない成膜方法の場合、こういったプラズマダメージが生じないため、半導体装置の歩留まりを高くすることができる。また、成膜中のプラズマダメージが生じないため、欠陥の少ない膜が得られる。
【0208】
CVD法およびALD法は、ターゲットなどから放出される粒子が堆積する成膜方法とは異なり、被処理物の表面における反応により膜が形成される成膜方法である。したがって、被処理物の形状の影響を受けにくく、良好な段差被覆性を有する成膜方法である。特に、ALD法は、優れた段差被覆性と、優れた厚さの均一性を有するため、アスペクト比の高い開口部の表面を被覆する場合などに好適である。ただし、ALD法は、比較的成膜速度が遅いため、成膜速度の速いCVD法などの他の成膜方法と組み合わせて用いることが好ましい場合もある。
【0209】
CVD法およびALD法は、原料ガスの流量比によって、得られる膜の組成を制御することができる。例えば、CVD法およびALD法では、原料ガスの流量比によって、任意の組成の膜を成膜することができる。また、例えば、CVD法およびALD法では、成膜しながら原料ガスの流量比を変化させることによって、組成が連続的に変化した膜を成膜することができる。原料ガスの流量比を変化させながら成膜する場合、複数の成膜室を用いて成膜する場合と比べて、搬送や圧力調整に掛かる時間の分、成膜に掛かる時間を短くすることができる。したがって、半導体装置の生産性を高めることができる場合がある。
【0210】
なお、ALD法により成膜する場合は、材料ガスとして塩素を含まないガスを用いることが好ましい。
【0211】
<トランジスタの構造例2>
図7(A)乃至(C)を用いてトランジスタ200Bの構造例を説明する。図7(A)はトランジスタ200Bの上面図である。図7(B)は、図7(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図7(C)は、図7(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図7(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0212】
トランジスタ200Bはトランジスタ200Aの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ200Aと異なる点について説明する。
【0213】
また、図7に示すトランジスタ200Bでは、酸化物230c、絶縁体250、および導電体260が、絶縁体280に設けられた開口部内に、絶縁体274を介して配置される。また、酸化物230c、絶縁体250、および導電体260は、導電体240sと導電体240dとの間に配置される。
【0214】
なお、酸化物230cは、絶縁体280に設けられた開口部内に、絶縁体274を介して設けられることが好ましい。絶縁体274がバリア性を有する場合、絶縁体280からの不純物が酸化物230へと拡散することを抑制することができる。
【0215】
絶縁体250は、第1のゲート絶縁体として機能する。絶縁体250は、絶縁体280に設けられた開口部内に、酸化物230c、および絶縁体274を介して設けられることが好ましい。
【0216】
絶縁体280と、トランジスタ200Bとの間に絶縁体274を配置する。絶縁体274は、水、水素などの不純物、および酸素の拡散を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。また、他にも、例えば、酸化マグネシウム、酸化ガリウム、酸化ゲルマニウム、酸化イットリウム、酸化ジルコニウム、酸化ランタン、酸化ネオジム、酸化タンタルなどの金属酸化物、窒化酸化シリコン、窒化シリコンなどを用いることができる。
【0217】
絶縁体274を有することで、絶縁体280が有する水、水素などの不純物が酸化物230c、および絶縁体250を介して、酸化物230bに拡散することを抑制することができる。また、絶縁体280が有する過剰酸素により、導電体260が酸化するのを抑制することができる。
【0218】
<トランジスタの構造例3>
図8には、トランジスタ200Cを有する半導体装置の一例を示す。図8(A)は半導体装置の上面を示す。なお、図の明瞭化のため、図8(A)において一部の膜は省略されている。また、図8(B)は、図8(A)に示す一点鎖線L1-L2に対応する断面図であり、図8(C)はW1-W2に対応する断面図である。
【0219】
なお、図8に示す半導体装置において、図2図3、および図4に示した半導体装置を構成する構造と同機能を有する構造には、同符号を付記する。
【0220】
図8(A)乃至(C)では、導電体240を設けずに、露出した酸化物230b表面の一部に領域231sおよび領域231dを有する。領域231sまたは領域231dの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。また、酸化物230bと、絶縁体274の間に、絶縁体273を有する。
【0221】
図8に示す、領域231(領域231s、および領域231d)は、酸化物230bに後述する元素が添加された領域である。領域231は、例えば、ダミーゲートを用いることで形成することができる。
【0222】
具体的には、酸化物230b上にダミーゲートを設け、当該ダミーゲートをマスクとして用い、上記酸化物230bを低抵抗化する元素を添加するとよい。つまり、酸化物230が、ダミーゲートと重畳していない領域に、当該元素が添加され、領域231が形成される。なお、当該元素の添加方法としては、イオン化された原料ガスを質量分離して添加するイオン注入法、イオン化された原料ガスを質量分離せずに添加するイオンドーピング法、プラズマイマージョンイオンインプランテーション法などを用いることができる。
【0223】
なお、酸化物230を低抵抗化する元素としては、代表的には、ホウ素、またはリンが挙げられる。また、水素、炭素、窒素、フッ素、硫黄、塩素、チタン、希ガス等を用いてもよい。希ガスの代表例としては、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、及びキセノン等がある。当該元素の濃度は、二次イオン質量分析法(SIMS:Secondary Ion Mass Spectrometry)などを用いて測定すればよい。
【0224】
特に、ホウ素、及びリンは、アモルファスシリコン、または低温ポリシリコンの製造ラインの装置を使用することができるため、好ましい。既存の設備を転用することができ、設備投資を抑制することができる。
【0225】
続いて、酸化物230b、およびダミーゲート上に、絶縁体273となる絶縁膜、および絶縁体274となる絶縁膜を成膜してもよい。絶縁体273となる絶縁膜、および絶縁体274を積層して設けることで、領域231と、酸化物230cおよび絶縁体250とが重畳する領域を設けることができる。
【0226】
具体的には、絶縁体274となる絶縁膜上に絶縁体280となる絶縁膜を設けた後、絶縁体280となる絶縁膜にCMP(Chemical Mechanical Polishing)処理を行うことで、絶縁体280となる絶縁膜の一部を除去し、ダミーゲートを露出する。続いて、ダミーゲートを除去する際に、ダミーゲートと接する絶縁体273の一部も除去するとよい。従って、絶縁体280に設けられた開口部の側面には、絶縁体274、および絶縁体273が露出し、当該開口部の底面には、酸化物230bに設けられた領域231の一部が露出する。次に、当該開口部に酸化物230cとなる酸化膜、絶縁体220となる絶縁膜、および導電体260となる導電膜を順に成膜した後、絶縁体280が露出するまでCMP処理などにより、酸化物230cとなる酸化膜、絶縁体220となる絶縁膜、および導電体260となる導電膜の一部を除去することで、図8に示すトランジスタを形成することができる。
【0227】
なお、絶縁体273、および絶縁体274は必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0228】
図8に示すトランジスタは、既存の装置を転用することができ、さらに、導電体240を設けないため、コストの低減を図ることができる。
【0229】
<トランジスタの構造例4>
図9(A)乃至(C)を用いてトランジスタ200Dの構造例を説明する。図9(A)はトランジスタ200Dの上面図である。図9(B)は、図9(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図9(C)は、図9(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図9(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0230】
トランジスタ200Dはトランジスタ200Bの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主にトランジスタ200Bと異なる点について説明する。
【0231】
図9に示すトランジスタ200Dは、導電体240sと酸化物230bとの間に導電体242sが配置され、導電体240dと酸化物230bとの間に導電体242dが配置されている。ここで、導電体240s(導電体240d)は、導電体242s(導電体242d)の上面および導電体260側の側面を越えて延在し、酸化物230bの上面に接する領域を有する。ここで、導電体242は、導電体240に用いることができる導電体を用いればよい。さらに、導電体242の膜厚は、少なくとも導電体240より厚いことが好ましい。また、図9に示すトランジスタ200Dでは、導電体203を設けずに、第2のゲートとして機能する導電体205を配線としても機能させている。
【0232】
図9に示すトランジスタ200Dは、上記のような構成を有することにより、トランジスタ200Bよりも、導電体240を導電体260に近づけることができる。または、導電体240sの端部および導電体240dの端部と、導電体260を重ねることができる。これにより、トランジスタ200Dの実質的なチャネル長を短くし、オン電流および動作周波数の向上を図ることができる。
【0233】
また、導電体242s(導電体242d)は、導電体240s(導電体240d)と重畳して設けられることが好ましい。このような構成にすることで、プラグ246s(プラグ246d)を埋め込む開口を形成するエッチングにおいて、導電体242s(導電体242d)がストッパとして機能し、酸化物230bがオーバーエッチングされるのを防ぐことができる。
【0234】
また、図9に示すトランジスタ200Dは、絶縁体244の上に接して絶縁体245を配置する構成にしてもよい。絶縁体244としては、水、水素などの不純物や、過剰な酸素が、絶縁体280側からトランジスタ200Dに混入するのを抑制するバリア絶縁膜として機能することが好ましい。絶縁体245としては、絶縁体244に用いることができる絶縁体を用いることができる。または、絶縁体245としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化チタン、窒化シリコン、窒化酸化シリコンなどの、窒化物絶縁体を用いてもよい。
【0235】
また、図9に示すトランジスタ200Dは、図7に示すトランジスタ200Bと異なり、導電体205を単層構造で設けてもよい。この場合、パターン形成された導電体205の上に絶縁体216となる絶縁膜を成膜し、当該絶縁膜の上部を、導電体205の上面が露出するまで化学機械研磨(CMP)法などを用いて除去すればよい。ここで、導電体205の上面の平坦性を良好にすることが好ましい。例えば、導電体205上面の平均面粗さ(Ra)を1nm以下、好ましくは0.5nm以下、より好ましくは0.3nm以下にすればよい。これにより、導電体205の上に形成される絶縁体の平坦性を良好にし、酸化物230bおよび酸化物230cの結晶性の向上を図ることができる。
【0236】
<トランジスタの構造例5>
図10(A)乃至(C)を用いてトランジスタ200Eの構造例を説明する。図10(A)はトランジスタ200Eの上面図である。図10(B)は、図10(A)に一点鎖線L1-L2で示す部位の断面図である。図10(C)は、図10(A)に一点鎖線W1-W2で示す部位の断面図である。なお、図10(A)の上面図では、図の明瞭化のために一部の要素を省いて図示している。
【0237】
トランジスタ200Eは上記トランジスタの変形例である。よって、説明の繰り返しを防ぐため、主に上記トランジスタと異なる点について説明する。
【0238】
図10(A)乃至(C)では、導電体203を設けずに、第2のゲートとして機能する導電体205を配線としても機能させている。また、酸化物230c上に絶縁体250を有し、絶縁体250上に金属酸化物252を有する。また、金属酸化物252上に導電体260を有し、導電体260上に絶縁体270を有する。また、絶縁体270上に絶縁体271を有する。
【0239】
金属酸化物252は、酸素拡散を抑制する機能を有することが好ましい。絶縁体250と、導電体260との間に、酸素の拡散を抑制する金属酸化物252を設けることで、導電体260への酸素の拡散が抑制される。つまり、酸化物230へ供給する酸素量の減少を抑制することができる。また、酸素による導電体260の酸化を抑制することができる。
【0240】
なお、金属酸化物252は、第1のゲート電極の一部として機能してもよい。例えば、酸化物230として用いることができる酸化物半導体を、金属酸化物252として用いることができる。その場合、導電体260をスパッタリング法で成膜することで、金属酸化物252の電気抵抗値を低下させて導電体とすることができる。
【0241】
また、金属酸化物252は、第1のゲート絶縁体の一部として機能する場合がある。したがって、絶縁体250に酸化シリコンや酸化窒化シリコンなどを用いる場合、金属酸化物252は、比誘電率が高いhigh-k材料である金属酸化物を用いることが好ましい。当該積層構造とすることで、熱に対して安定、かつ比誘電率の高い積層構造とすることができる。したがって、物理膜厚を保持したまま、トランジスタ動作時に印加するゲート電位の低減化が可能となる。また、ゲート絶縁体として機能する絶縁体の等価酸化膜厚(EOT)の薄膜化が可能となる。
【0242】
トランジスタ200Eにおいて、金属酸化物252を単層で示したが、2層以上の積層構造としてもよい。例えば、第1のゲート電極の一部として機能する金属酸化物と、第1のゲート絶縁体の一部として機能する金属酸化物とを積層して設けてもよい。
【0243】
金属酸化物252を有することで、第1のゲート電極として機能する場合は、導電体260からの電界の影響を弱めることなく、トランジスタ200Eのオン電流の向上を図ることができる。または、第1のゲート絶縁体として機能する場合は、絶縁体250と、金属酸化物252との物理的な厚みにより、導電体260と、酸化物230との間の距離を保つことで、導電体260と酸化物230との間のリーク電流を抑制することができる。従って、絶縁体250と金属酸化物252との積層構造を設けることで、導電体260と酸化物230との間の物理的な距離、および導電体260から酸化物230へかかる電界強度を、容易に適宜調整することができる。
【0244】
具体的には、酸化物230に用いることができる酸化物半導体を低抵抗化することで、金属酸化物252として用いることができる。または、ハフニウム、アルミニウム、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、タングステン、チタン、タンタル、ニッケル、ゲルマニウム、マグネシウムなどから選ばれた一種、または二種以上が含まれた金属酸化物を用いることができる。
【0245】
特に、アルミニウム、またはハフニウムの一方または双方の酸化物を含む絶縁体である、酸化アルミニウム、酸化ハフニウム、アルミニウムおよびハフニウムを含む酸化物(ハフニウムアルミネート)などを用いることが好ましい。特に、ハフニウムアルミネートは、酸化ハフニウムよりも、耐熱性が高い。そのため、後の工程での熱履歴において、結晶化しにくいため好ましい。なお、金属酸化物252は、必須の構成ではない。求めるトランジスタ特性により、適宜設計すればよい。
【0246】
絶縁体270は、水、水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いるとよい。例えば、酸化アルミニウム、酸化ハフニウムなどを用いることが好ましい。これにより、絶縁体270よりも上方からの酸素で導電体260が酸化するのを抑制することができる。また、絶縁体270よりも上方からの水、水素などの不純物が、導電体260および絶縁体250を介して、酸化物230に混入することを抑制することができる。
【0247】
絶縁体271はハードマスクとして機能する。絶縁体271を設けることで、導電体260の加工の際、導電体260の側面が概略垂直、具体的には、導電体260の側面と基板表面のなす角を、75度以上100度以下、好ましくは80度以上95度以下とすることができる。
【0248】
なお、絶縁体271に、水、水素などの不純物、および酸素の透過を抑制する機能を有する絶縁性材料を用いることで、バリア層としての機能を兼ねさせてもよい。その場合、絶縁体270は設けなくともよい。
【0249】
絶縁体271をハードマスクとして用いて、絶縁体270、導電体260、金属酸化物252、絶縁体250、および酸化物230cの一部を選択的に除去することで、これらの側面を略一致させて、かつ、酸化物230b表面の一部を露出させることができる。
【0250】
また、トランジスタ200Eは、露出した酸化物230b表面の一部に領域231sおよび領域231dを有する。領域231sまたは領域231dの一方はソース領域として機能し、他方はドレイン領域として機能する。
【0251】
領域231sおよび領域231dの形成は、例えば、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処理などを用いて、露出した酸化物230b表面にリン、ボロンなどの不純物元素を導入することで実現できる。なお、本実施の形態などにおいて「不純物元素」とは、主成分元素以外の元素のことをいう。
【0252】
また、酸化物230b表面の一部を露出させた後に金属膜を成膜し、その後加熱処理することにより、該金属膜に含まれる元素を酸化物230bに拡散させて領域231sおよび領域231dを形成することもできる。
【0253】
酸化物230bの不純物元素が導入された領域は、電気抵抗率が低下する。このため、領域231sおよび領域231dを「不純物領域」または「低抵抗領域」という場合がある。
【0254】
絶縁体271または導電体260をマスクとして用いることで、領域231sおよび領域231dを自己整合(セルフアライメント)的に形成することができる。よって、領域231sまたは領域231dと、導電体260とが重ならず、寄生容量を低減することができる。また、チャネル形成領域と、ソース領域またはドレイン領域(領域231sまたは領域231d)との間にオフセット領域が形成されない。領域231sおよび領域231dを自己整合(セルフアライメント)的に形成することにより、オン電流の増加、しきい値電圧の低減、動作周波数の向上などを実現できる。
【0255】
なお、オフ電流を更に低減するため、チャネル形成領域と、ソース領域またはドレイン領域との間にオフセット領域を設けてもよい。オフセット領域とは、電気抵抗率が高い領域であり、前述した不純物元素の導入が行なわれない領域である。オフセット領域の形成は、絶縁体275の形成後に前述した不純物元素の導入を行なうことで実現できる。この場合、絶縁体275も絶縁体271などと同様にマスクとして機能する。よって、酸化物230bの絶縁体275と重なる領域に不純物元素が導入されず、該領域の電気抵抗率を高いままとすることができる。
【0256】
また、トランジスタ200Eは、絶縁体270、導電体260、金属酸化物252、絶縁体250、および酸化物230cの側面に絶縁体275を有する。絶縁体275は、比誘電率の低い絶縁体であることが好ましい。例えば、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、窒化シリコン、フッ素を添加した酸化シリコン、炭素を添加した酸化シリコン、炭素および窒素を添加した酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコン、樹脂などであることが好ましい。特に、酸化シリコン、酸化窒化シリコン、窒化酸化シリコン、空孔を有する酸化シリコンを絶縁体275に用いると、後の工程で絶縁体275中に過剰酸素領域を容易に形成できるため好ましい。また、酸化シリコンおよび酸化窒化シリコンは、熱的に安定であるため好ましい。また、絶縁体275は、酸素を拡散する機能を有することが好ましい。
【0257】
また、トランジスタ200Eは、絶縁体275、および酸化物230上に絶縁体274を有する。絶縁体274は、スパッタリング法を用いて成膜することが好ましい。スパッタリング法を用いることにより、水、水素などの不純物の少ない絶縁体を成膜することができる。例えば、絶縁体274として、酸化アルミニウムを用いるとよい。
【0258】
なお、スパッタリング法を用いた酸化膜は、被成膜構造体から水素を引き抜く場合がある。従って、絶縁体274が酸化物230および絶縁体275から水素および水を吸収することで、酸化物230および絶縁体275の水素濃度を低減することができる。
【0259】
本実施の形態は、他の実施の形態、実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0260】
(実施の形態3)
本実施の形態では、図11および図12を用いて、本発明の一態様に係る、酸化物を半導体に用いたトランジスタ(以下、OSトランジスタと呼ぶ場合がある。)、および容量素子が適用されている記憶装置(以下、OSメモリ装置と呼ぶ場合がある。)について説明する。OSメモリ装置は、少なくとも容量素子と、容量素子の充放電を制御するOSトランジスタを有する記憶装置である。OSトランジスタのオフ電流は極めて小さいので、OSメモリ装置は優れた保持特性をもち、不揮発性メモリとして機能させることができる。
【0261】
<記憶装置の構成例>
図11(A)にOSメモリ装置の構成の一例を示す。記憶装置1400は、周辺回路1411、およびメモリセルアレイ1470を有する。周辺回路1411は、行回路1420、列回路1430、出力回路1440、およびコントロールロジック回路1460を有する。
【0262】
列回路1430は、例えば、列デコーダ、プリチャージ回路、センスアンプ、書き込み回路等を有する。プリチャージ回路は、配線をプリチャージする機能を有する。センスアンプは、メモリセルから読み出されたデータ信号を増幅する機能を有する。なお、上記配線は、メモリセルアレイ1470が有するメモリセルに接続されている配線であり、詳しくは後述する。増幅されたデータ信号は、出力回路1440を介して、データ信号RDATAとして記憶装置1400の外部に出力される。また、行回路1420は、例えば、行デコーダ、ワード線ドライバ回路等を有し、アクセスする行を選択することができる。
【0263】
記憶装置1400には、外部から電源電圧として低電源電圧(VSS)、周辺回路1411用の高電源電圧(VDD)、メモリセルアレイ1470用の高電源電圧(VIL)が供給される。また、記憶装置1400には、制御信号(CE、WE、RE)、アドレス信号ADDR、データ信号WDATAが外部から入力される。アドレス信号ADDRは、行デコーダおよび列デコーダに入力され、WDATAは書き込み回路に入力される。
【0264】
コントロールロジック回路1460は、外部からの入力信号(CE、WE、RE)を処理して、行デコーダ、列デコーダの制御信号を生成する。CEは、チップイネーブル信号であり、WEは、書き込みイネーブル信号であり、REは、読み出しイネーブル信号である。コントロールロジック回路1460が処理する信号は、これに限定されるものではなく、必要に応じて、他の制御信号を入力すればよい。
【0265】
メモリセルアレイ1470は、行列状に配置された、複数個のメモリセルMCと、複数の配線を有する。なお、メモリセルアレイ1470と行回路1420とを接続している配線の数は、メモリセルMCの構成、一列に有するメモリセルMCの数などによって決まる。また、メモリセルアレイ1470と列回路1430とを接続している配線の数は、メモリセルMCの構成、一行に有するメモリセルMCの数などによって決まる。
【0266】
なお、図11(A)において、周辺回路1411とメモリセルアレイ1470を同一平面上に形成する例について示したが、本実施の形態はこれに限られるものではない。例えば、図11(B)に示すように、周辺回路1411の一部の上に、メモリセルアレイ1470が重なるように設けられてもよい。例えば、メモリセルアレイ1470の下に重なるように、センスアンプを設ける構成にしてもよい。
【0267】
図12に上述のメモリセルMCに適用できるメモリセルの構成例について説明する。
【0268】
[DOSRAM]
図12(A)乃至(C)に、DRAMのメモリセルの回路構成例を示す。本明細書等において、1OSトランジスタ1容量素子型のメモリセルを用いたDRAMを、DOSRAMと呼ぶ場合がある。図12(A)に示す、メモリセル1471は、トランジスタM1と、容量素子CAと、を有する。なお、トランジスタM1は、ゲート(トップゲートと呼ぶ場合がある。)、及びバックゲートを有する。
【0269】
トランジスタM1の第1端子は、容量素子CAの第1端子と接続され、トランジスタM1の第2端子は、配線BILと接続され、トランジスタM1のゲートは、配線WOLと接続され、トランジスタM1のバックゲートは、配線BGLと接続されている。容量素子CAの第2端子は、配線CALと接続されている。
【0270】
配線BILは、ビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CAの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、および読み出し時において、配線CALには、低レベル電位を印加するのが好ましい。配線BGLは、トランジスタM1のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。配線BGLに任意の電位を印加することによって、トランジスタM1のしきい値電圧を増減することができる。
【0271】
また、メモリセルMCは、メモリセル1471に限定されず、回路構成の変更を行うことができる。例えば、メモリセルMCは、図12(B)に示すメモリセル1472のように、トランジスタM1のバックゲートが、配線BGLでなく、配線WOLと接続される構成にしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図12(C)に示すメモリセル1473ように、シングルゲート構造のトランジスタ、つまりバックゲートを有さないトランジスタM1で構成されたメモリセルとしてもよい。
【0272】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1471等に用いる場合、トランジスタM1として、先の実施の形態に示すトランジスタを用いることができる。トランジスタM1としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM1のリーク電流を非常に低くすることができる。つまり、書き込んだデータをトランジスタM1によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。また、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、メモリセル1471、メモリセル1472、メモリセル1473に対して多値データ、またはアナログデータを保持することができる。
【0273】
また、DOSRAMにおいて、上記のように、メモリセルアレイ1470の下に重なるように、センスアンプを設ける構成にすると、ビット線を短くすることができる。これにより、ビット線容量が小さくなり、メモリセルの保持容量を低減することができる。
【0274】
[NOSRAM]
図12(D)乃至(H)に、2トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセルの回路構成例を示す。図12(D)に示す、メモリセル1474は、トランジスタM2と、トランジスタM3と、容量素子CBと、を有する。なお、トランジスタM2は、トップゲート(単にゲートと呼ぶ場合がある。)、およびバックゲートを有する。本明細書等において、トランジスタM2にOSトランジスタを用いたゲインセル型のメモリセルを有する記憶装置を、NOSRAM(Nonvolatile Oxide Semiconductor RAM)と呼ぶ場合がある。
【0275】
トランジスタM2の第1端子は、容量素子CBの第1端子と接続され、トランジスタM2の第2端子は、配線WBLと接続され、トランジスタM2のゲートは、配線WOLと接続され、トランジスタM2のバックゲートは、配線BGLと接続されている。容量素子CBの第2端子は、配線CALと接続されている。トランジスタM3の第1端子は、配線RBLと接続され、トランジスタM3の第2端子は、配線SLと接続され、トランジスタM3のゲートは、容量素子CBの第1端子と接続されている。
【0276】
配線WBLは、書き込みビット線として機能し、配線RBLは、読み出しビット線として機能し、配線WOLは、ワード線として機能する。配線CALは、容量素子CBの第2端子に所定の電位を印加するための配線として機能する。データの書き込み時、データ保持の最中、データの読み出し時において、配線CALには、低レベル電位を印加するのが好ましい。配線BGLは、トランジスタM2のバックゲートに電位を印加するための配線として機能する。配線BGLに任意の電位を印加することによって、トランジスタM2のしきい値電圧を増減することができる。
【0277】
また、メモリセルMCは、メモリセル1474に限定されず、回路の構成を適宜変更することができる。例えば、メモリセルMCは、図12(E)に示すメモリセル1475のように、トランジスタM2のバックゲートが、配線BGLでなく、配線WOLと接続される構成にしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図12(F)に示すメモリセル1476のように、シングルゲート構造のトランジスタ、つまりバックゲートを有さないトランジスタM2で構成されたメモリセルとしてもよい。また、例えば、メモリセルMCは、図12(G)に示すメモリセル1477のように、配線WBLと配線RBLを一本の配線BILとしてまとめた構成であってもよい。
【0278】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1474等に用いる場合、トランジスタM2として先の実施の形態に示すトランジスタを用いることができる。トランジスタM2としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM2のリーク電流を非常に低くすることができる。これにより、書き込んだデータをトランジスタM2によって長時間保持することができるため、メモリセルのリフレッシュの頻度を少なくすることができる。また、メモリセルのリフレッシュ動作を不要にすることができる。また、リーク電流が非常に低いため、メモリセル1474に多値データ、またはアナログデータを保持することができる。メモリセル1475乃至1477も同様である。
【0279】
なお、トランジスタM3は、チャネル形成領域にシリコンを有するトランジスタ(以下、Siトランジスタと呼ぶ場合がある)であってもよい。Siトランジスタの導電型は、nチャネル型としてもよいし、pチャネル型としてもよい。Siトランジスタは、OSトランジスタよりも電界効果移動度が高くなる場合がある。よって、読み出しトランジスタとして機能するトランジスタM3として、Siトランジスタを用いてもよい。また、トランジスタM3にSiトランジスタを用いることで、トランジスタM3の上に積層してトランジスタM2を設けることができるので、メモリセルの占有面積を低減し、記憶装置の高集積化を図ることができる。
【0280】
また、トランジスタM3はOSトランジスタであってもよい。トランジスタM2およびトランジスタM3にOSトランジスタを用いた場合、メモリセルアレイ1470をn型トランジスタのみを用いて回路を構成することができる。
【0281】
また、図12(H)に3トランジスタ1容量素子のゲインセル型のメモリセルの一例を示す。図12(H)に示すメモリセル1478は、トランジスタM4乃至トランジスタM6、および容量素子CCを有する。容量素子CCは適宜設けられる。メモリセル1478は、配線BIL、配線RWL、配線WWL、配線BGL、および配線GNDLに電気的に接続されている。配線GNDLは低レベル電位を与える配線である。なお、メモリセル1478を、配線BILに代えて、配線RBL、配線WBLに電気的に接続してもよい。
【0282】
トランジスタM4は、バックゲートを有するOSトランジスタであり、バックゲートは配線BGLに電気的に接続されている。なお、トランジスタM4のバックゲートとゲートとを互いに電気的に接続してもよい。あるいは、トランジスタM4はバックゲートを有さなくてもよい。
【0283】
なお、トランジスタM5、トランジスタM6はそれぞれ、nチャネル型Siトランジスタまたはpチャネル型Siトランジスタでもよい。或いは、トランジスタM4乃至トランジスタM6がOSトランジスタでもよい、この場合、メモリセルアレイ1470をn型トランジスタのみを用いて回路を構成することができる。
【0284】
上記実施の形態に示す半導体装置をメモリセル1478に用いる場合、トランジスタM4として先の実施の形態に示すトランジスタを用いることができる。トランジスタM4としてOSトランジスタを用いることによって、トランジスタM4のリーク電流を非常に低くすることができる。
【0285】
なお、本実施の形態に示す、周辺回路1411、メモリセルアレイ1470等の構成は、上記に限定されるものではない。これらの回路、および当該回路に接続される配線、回路素子等の、配置または機能は、必要に応じて、変更、削除、または追加してもよい。
【0286】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態、実施例などに示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0287】
(実施の形態4)
本実施の形態では、図13を用いて、本発明の半導体装置が実装されたチップ1200の一例を示す。チップ1200には、複数の回路(システム)が実装されている。このように、複数の回路(システム)を一つのチップに集積する技術を、システムオンチップ(System on Chip:SoC)と呼ぶ場合がある。
【0288】
図13(A)に示すように、チップ1200は、CPU(Central Processing Unit)1211、GPU(Graphics Processing Unit)1212、一または複数のアナログ演算部1213、一または複数のメモリコントローラ1214、一または複数のインターフェース1215、一または複数のネットワーク回路1216等を有する。
【0289】
チップ1200には、バンプ(図示しない)が設けられ、図13(B)に示すように、プリント基板(Printed Circuit Board:PCB)1201の第1の面と接続する。また、PCB1201の第1の面の裏面には、複数のバンプ1202が設けられており、マザーボード1203と接続する。
【0290】
マザーボード1203には、DRAM1221、フラッシュメモリ1222等の記憶装置が設けられていてもよい。例えば、DRAM1221に先の実施の形態に示すDOSRAMを用いることができる。また、例えば、フラッシュメモリ1222に先の実施の形態に示すNOSRAMを用いることができる。
【0291】
CPU1211は、複数のCPUコアを有することが好ましい。また、GPU1212は、複数のGPUコアを有することが好ましい。また、CPU1211、およびGPU1212は、それぞれ一時的にデータを格納するメモリを有していてもよい。または、CPU1211、およびGPU1212に共通のメモリが、チップ1200に設けられていてもよい。該メモリには、前述したNOSRAMや、DOSRAMを用いることができる。また、GPU1212は、多数のデータの並列計算に適しており、画像処理や積和演算に用いることができる。GPU1212に、本発明の酸化物半導体を用いた画像処理回路や、積和演算回路を設けることで、画像処理、および積和演算を低消費電力で実行することが可能になる。
【0292】
また、CPU1211、およびGPU1212が同一チップに設けられていることで、CPU1211およびGPU1212間の配線を短くすることができ、CPU1211からGPU1212へのデータ転送、CPU1211、およびGPU1212が有するメモリ間のデータ転送、およびGPU1212での演算後に、GPU1212からCPU1211への演算結果の転送を高速に行うことができる。
【0293】
アナログ演算部1213はA/D(アナログ/デジタル)変換回路、およびD/A(デジタル/アナログ)変換回路の一、または両方を有する。また、アナログ演算部1213に上記積和演算回路を設けてもよい。
【0294】
メモリコントローラ1214は、DRAM1221のコントローラとして機能する回路、およびフラッシュメモリ1222のインターフェースとして機能する回路を有する。
【0295】
インターフェース1215は、表示装置、スピーカー、マイクロフォン、カメラ、コントローラなどの外部接続機器とのインターフェース回路を有する。コントローラとは、マウス、キーボード、ゲーム用コントローラなどを含む。このようなインターフェースとして、USB(Universal Serial Bus)、HDMI(登録商標)(High-Definition Multimedia Interface)などを用いることができる。
【0296】
ネットワーク回路1216は、LAN(Local Area Network)などのネットワーク回路を有する。また、ネットワークセキュリティー用の回路を有してもよい。
【0297】
チップ1200には、上記回路(システム)を同一の製造プロセスで形成することが可能である。そのため、チップ1200に必要な回路の数が増えても、製造プロセスを増やす必要が無く、チップ1200を低コストで作製することができる。
【0298】
GPU1212を有するチップ1200が設けられたPCB1201、DRAM1221、およびフラッシュメモリ1222が設けられたマザーボード1203は、GPUモジュール1204と呼ぶことができる。
【0299】
GPUモジュール1204は、SoC技術を用いたチップ1200を有しているため、そのサイズを小さくすることができる。また、画像処理に優れていることから、スマートフォン、タブレット端末、ラップトップPC、携帯型(持ち出し可能な)ゲーム機などの携帯型電子機器に用いることが好適である。また、GPU1212を用いた積和演算回路により、ディープニューラルネットワーク(DNN)、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)、再帰型ニューラルネットワーク(RNN)、自己符号化器、深層ボルツマンマシン(DBM)、深層信念ネットワーク(DBN)などの手法を実行することができるため、チップ1200をAIチップ、またはGPUモジュール1204をAIシステムモジュールとして用いることができる。
【0300】
本実施の形態に示す構成は、他の実施の形態、実施例などに示す構成と適宜組み合わせて用いることができる。
【0301】
(実施の形態5)
本実施の形態では、先の実施の形態に示す半導体装置を用いた記憶装置の応用例について説明する。先の実施の形態に示す半導体装置は、例えば、各種電子機器(例えば、情報端末、コンピュータ、スマートフォン、電子書籍端末、デジタルカメラ(ビデオカメラも含む)、録画再生装置、ナビゲーションシステムなど)の記憶装置に適用できる。なお、ここで、コンピュータとは、タブレット型のコンピュータ、ノート型のコンピュータ、デスクトップ型のコンピュータの他、サーバシステムのような大型のコンピュータを含むものである。または、先の実施の形態に示す半導体装置は、メモリカード(例えば、SDカード)、USBメモリ、SSD(ソリッド・ステート・ドライブ)等の各種のリムーバブル記憶装置に適用される。図14にリムーバブル記憶装置の幾つかの構成例を模式的に示す。例えば、先の実施の形態に示す半導体装置は、パッケージングされたメモリチップに加工され、様々なストレージ装置、リムーバブルメモリに用いられる。
【0302】
図14(A)はUSBメモリの模式図である。USBメモリ1100は、筐体1101、キャップ1102、USBコネクタ1103および基板1104を有する。基板1104は、筐体1101に収納されている。例えば、基板1104には、メモリチップ1105、コントローラチップ1106が取り付けられている。基板1104のメモリチップ1105などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0303】
図14(B)はSDカードの外観の模式図であり、図14(C)は、SDカードの内部構造の模式図である。SDカード1110は、筐体1111、コネクタ1112および基板1113を有する。基板1113は筐体1111に収納されている。例えば、基板1113には、メモリチップ1114、コントローラチップ1115が取り付けられている。基板1113の裏面側にもメモリチップ1114を設けることで、SDカード1110の容量を増やすことができる。また、無線通信機能を備えた無線チップを基板1113に設けてもよい。これによって、ホスト装置とSDカード1110間の無線通信によって、メモリチップ1114のデータの読み出し、書き込みが可能となる。基板1113のメモリチップ1114などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0304】
図14(D)はSSDの外観の模式図であり、図14(E)は、SSDの内部構造の模式図である。SSD1150は、筐体1151、コネクタ1152および基板1153を有する。基板1153は筐体1151に収納されている。例えば、基板1153には、メモリチップ1154、メモリチップ1155、コントローラチップ1156が取り付けられている。メモリチップ1155はコントローラチップ1156のワークメモリであり、例えばDOSRAMチップを用いればよい。基板1153の裏面側にもメモリチップ1154を設けることで、SSD1150の容量を増やすことができる。基板1153のメモリチップ1154などに先の実施の形態に示す半導体装置を組み込むことができる。
【0305】
本実施の形態は、他の実施の形態、実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0306】
(実施の形態6)
本実施の形態では、本明細書等に開示したトランジスタを用いた半導体装置の一例として、表示装置および表示モジュールについて説明する。
【0307】
また、トランジスタ200などを用いて説明した酸物半導体を用いたトランジスタを、以下ではOSトランジスタともいう場合がある。
【0308】
<表示装置>
上述したトランジスタを用いることができる表示装置の一例を説明する。図15(A)は、表示装置500の構成例を説明するブロック図である。
【0309】
図15(A)に示す表示装置500は、駆動回路511、駆動回路521a、駆動回路521b、および表示領域531を有している。なお、駆動回路511、駆動回路521a、および駆動回路521bをまとめて「駆動回路」または「周辺駆動回路」という場合がある。
【0310】
駆動回路521a、駆動回路521bは、例えば走査線駆動回路として機能できる。また、駆動回路511は、例えば信号線駆動回路として機能できる。なお、駆動回路521a、および駆動回路521bは、どちらか一方のみとしてもよい。また、表示領域531を挟んで駆動回路511と向き合う位置に、何らかの回路を設けてもよい。
【0311】
また、図15(A)に例示する表示装置500は、各々が略平行に配設され、且つ、駆動回路521a、および/または駆動回路521bによって電位が制御されるp本の配線535と、各々が略平行に配設され、且つ、駆動回路511によって電位が制御されるq本の配線536と、を有する(p、qは、ともに1以上の自然数。)。さらに、表示領域531はマトリクス状に配設された複数の画素532を有する。画素532は、画素回路534および表示素子を有する。
【0312】
また、3つの画素532を1つの画素として機能させることで、フルカラー表示を実現することができる。3つの画素532は、それぞれが赤色光、緑色光、または青色光の、透過率、反射率、または発光光量などを制御する。なお、3つの画素532で制御する光の色は赤、緑、青の組み合わせに限らず、黄、シアン、マゼンタであってもよい。
【0313】
また、赤色光、緑色光、青色光を制御する画素に、白色光を制御する画素532を加えて、4つの画素532をまとめて1つの画素として機能させてもよい。白色光を制御する画素532を加えることで、表示領域の輝度を高めることができる。また、1つの画素として機能させる画素532を増やし、赤、緑、青、黄、シアン、およびマゼンタを適宜組み合わせて用いることにより、再現可能な色域を広げることができる。
【0314】
画素を1920×1080のマトリクス状に配置すると、いわゆるフルハイビジョン(「2K解像度」、「2K1K」、「2K」などとも言われる。)の解像度で表示可能な表示装置500を実現することができる。また、例えば、画素を3840×2160のマトリクス状に配置すると、いわゆるウルトラハイビジョン(「4K解像度」、「4K2K」、「4K」などとも言われる。)の解像度で表示可能な表示装置500を実現することができる。また、例えば、画素を7680×4320のマトリクス状に配置すると、いわゆるスーパーハイビジョン(「8K解像度」、「8K4K」、「8K」などとも言われる。)の解像度で表示可能な表示装置500を実現することができる。画素を増やすことで、16Kや32Kの解像度で表示可能な表示装置500を実現することも可能である。
【0315】
g行目の配線535_g(gは1以上p以下の自然数。)は、表示領域531においてp行q列に配設された複数の画素532のうち、g行に配設されたq個の画素532と電気的に接続される。また、h列目の配線536_h(hは1以上q以下の自然数。)は、p行q列に配設された画素532のうち、h列に配設されたp個の画素532に電気的に接続される。
【0316】
〔表示素子〕
表示装置500は、様々な形態を用いること、または様々な表示素子を有することが出来る。表示素子の一例としては、EL(エレクトロルミネッセンス)素子(有機EL素子、無機EL素子、または、有機物および無機物を含むEL素子)、LED(白色LED、赤色LED、緑色LED、青色LEDなど)、トランジスタ(電流に応じて発光するトランジスタ)、電子放出素子、液晶素子、電子インク、電気泳動素子、グレーティングライトバルブ(GLV)、MEMS(マイクロ・エレクトロ・メカニカル・システム)を用いた表示素子、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)、DMS(デジタル・マイクロ・シャッター)、MIRASOL(登録商標)、IMOD(インターフェロメトリック・モジュレーション)素子、シャッター方式のMEMS表示素子、光干渉方式のMEMS表示素子、エレクトロウェッティング素子、圧電セラミックディスプレイ、カーボンナノチューブを用いた表示素子、など、電気的または磁気的作用により、コントラスト、輝度、反射率、透過率などが変化する表示媒体を有するものがある。また、表示素子として量子ドットを用いてもよい。
【0317】
EL素子を用いた表示装置の一例としては、ELディスプレイなどがある。電子放出素子を用いた表示装置の一例としては、フィールドエミッションディスプレイ(FED)又はSED方式平面型ディスプレイ(SED:Surface-conduction Electron-emitter Display)などがある。量子ドットを用いた表示装置の一例としては、量子ドットディスプレイなどがある。液晶素子を用いた表示装置の一例としては、液晶ディスプレイ(透過型液晶ディスプレイ、半透過型液晶ディスプレイ、反射型液晶ディスプレイ、直視型液晶ディスプレイ、投射型液晶ディスプレイ)などがある。電子インク、電子粉流体(登録商標)、又は電気泳動素子を用いた表示装置の一例としては、電子ペーパーなどがある。また、表示装置はプラズマディスプレイパネル(PDP)であってもよい。また、表示装置は網膜走査型の投影装置であってもよい。
【0318】
なお、半透過型液晶ディスプレイや反射型液晶ディスプレイを実現する場合には、画素電極の一部、または、全部が、反射電極としての機能を有するようにすればよい。例えば、画素電極の一部、または、全部が、アルミニウム、銀、などを有するようにすればよい。さらに、その場合、反射電極の下に、SRAMなどの記憶回路を設けることも可能である。これにより、さらに、消費電力を低減することができる。
【0319】
なお、LEDを用いる場合、LEDの電極や窒化物半導体の下に、グラフェンやグラファイトを配置してもよい。グラフェンやグラファイトは、複数の層を重ねて、多層膜としてもよい。このように、グラフェンやグラファイトを設けることにより、その上に、窒化物半導体、例えば、結晶を有するn型GaN半導体層などを容易に成膜することができる。さらに、その上に、結晶を有するp型GaN半導体層などを設けて、LEDを構成することができる。なお、グラフェンやグラファイトと、結晶を有するn型GaN半導体層との間に、AlN層を設けてもよい。なお、LEDが有するGaN半導体層は、MOCVDで成膜してもよい。ただし、グラフェンを設けることにより、LEDが有するGaN半導体層は、スパッタ法で成膜することも可能である。
【0320】
図15(B)、図15(C)、図16(A)、および図16(B)は、画素532に用いることができる回路構成例を示している。
【0321】
〔発光表示装置用画素回路の一例〕
図15(B)に示す画素回路534は、トランジスタ461と、容量素子463と、トランジスタ468と、トランジスタ464と、を有する。また、図15(B)に示す画素回路534は、表示素子として機能できる発光素子469と電気的に接続されている。
【0322】
トランジスタ461、トランジスタ468、およびトランジスタ464にOSトランジスタを用いることができる。特に、トランジスタ461にOSトランジスタを用いることが好ましい。
【0323】
トランジスタ461のソースおよびドレインの一方は、配線536_hに電気的に接続される。さらに、トランジスタ461のゲートは、配線535_gに電気的に接続される。配線536_hからはビデオ信号が供給される。
【0324】
トランジスタ461は、ビデオ信号のノード465への書き込みを制御する機能を有する。
【0325】
容量素子463の一対の電極の一方は、ノード465に電気的に接続され、他方は、ノード467に電気的に接続される。また、トランジスタ461のソースおよびドレインの他方は、ノード465に電気的に接続される。
【0326】
容量素子463は、ノード465に書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0327】
トランジスタ468のソースおよびドレインの一方は、電位供給線VL_aに電気的に接続され、他方はノード467に電気的に接続される。さらに、トランジスタ468のゲートは、ノード465に電気的に接続される。
【0328】
トランジスタ464のソースおよびドレインの一方は、電位供給線V0に電気的に接続され、他方はノード467に電気的に接続される。さらに、トランジスタ464のゲートは、配線535_gに電気的に接続される。
【0329】
発光素子469のアノードまたはカソードの一方は、電位供給線VL_bに電気的に接続され、他方は、ノード467に電気的に接続される。
【0330】
発光素子469としては、例えば有機エレクトロルミネセンス素子(有機EL素子ともいう)などを用いることができる。ただし、発光素子469としては、これに限定されず、例えば無機材料からなる無機EL素子を用いても良い。
【0331】
例えば、電位供給線VL_aまたは電位供給線VL_bの一方には、高電源電位VDDが与えられ、他方には、低電源電位VSSが与えられる。
【0332】
図15(B)の画素回路534を有する表示装置500では、駆動回路521a、および/または駆動回路521bにより各行の画素532を順次選択し、トランジスタ461、およびトランジスタ464をオン状態にしてビデオ信号をノード465に書き込む。
【0333】
ノード465にデータが書き込まれた画素532は、トランジスタ461、およびトランジスタ464がオフ状態になることで保持状態になる。さらに、ノード465に書き込まれたデータの電位に応じてトランジスタ468のソース電極とドレイン電極の間に流れる電流量が制御され、発光素子469は、流れる電流量に応じた輝度で発光する。これを行毎に順次行うことにより、画像を表示できる。
【0334】
また、図16(A)に示すように、トランジスタ461、トランジスタ464、およびトランジスタ468として、バックゲートを有するトランジスタを用いてもよい。図16(A)に示すトランジスタ461、およびトランジスタ464は、ゲートがバックゲートと電気的に接続されている。よって、ゲートとバックゲートが常に同じ電位となる。また、トランジスタ468はバックゲートがノード467と電気的に接続されている。よって、バックゲートがノード467と常に同じ電位となる。
【0335】
トランジスタ461、トランジスタ468、およびトランジスタ464の少なくとも一つに、上述したOSトランジスタを用いることができる。
【0336】
〔液晶表示装置用画素回路の一例〕
図15(C)に示す画素回路534は、トランジスタ461と、容量素子463と、を有する。また、図15(C)に示す画素回路534は、表示素子として機能できる液晶素子462と電気的に接続されている。トランジスタ461にOSトランジスタを用いることが好ましい。
【0337】
液晶素子462の一対の電極の一方の電位は、画素回路534の仕様に応じて適宜設定される。例えば、液晶素子462の一対の電極の一方に、共通の電位(コモン電位)を与えてもよいし、後述する容量線CLと同電位としてもよい。また、液晶素子462の一対の電極の一方に、画素532毎に異なる電位を与えてもよい。液晶素子462の一対の電極の他方はノード466に電気的に接続されている。液晶素子462は、ノード466に書き込まれるデータにより配向状態が設定される。
【0338】
液晶素子462を備える表示装置の駆動方法としては、例えば、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、VAモード、ASM(Axially Symmetric Aligned Micro-cell)モード、OCB(Optically Compensated Birefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liquid Crystal)モード、MVAモード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード、IPSモード、FFSモード、またはTBA(Transverse Bend Alignment)モードなどを用いてもよい。また、表示装置の駆動方法としては、上述した駆動方法の他、ECB(Electrically Controlled Birefringence)モード、PDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)モード、PNLC(Polymer Network Liquid Crystal)モード、ゲストホストモードなどがある。ただし、これに限定されず、液晶素子およびその駆動方式として様々なものを用いることができる。
【0339】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、低分子液晶、高分子液晶、高分子分散型液晶、強誘電性液晶、反強誘電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、条件により、コレステリック相、スメクチック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0340】
また、配向膜を用いないブルー相(Blue Phase)を示す液晶を用いてもよい。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していくと、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は狭い温度範囲でしか発現しないため、温度範囲を改善するために5重量%以上のカイラル剤を混合させた液晶組成物を液晶層に用いる。ブルー相を示す液晶とカイラル剤とを含む液晶組成物は、応答速度が1msec以下と短く、光学的等方性であるため配向処理が不要であり、かつ、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビング処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止することができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表示装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0341】
また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれる方法を用いることができる。
【0342】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×10Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0343】
g行h列目の画素回路534において、トランジスタ461のソースおよびドレインの一方は、配線536_hに電気的に接続され、他方はノード466に電気的に接続される。トランジスタ461のゲートは、配線535_gに電気的に接続される。配線536_hからはビデオ信号が供給される。トランジスタ461は、ノード466へのビデオ信号の書き込みを制御する機能を有する。
【0344】
容量素子463の一対の電極の一方は、特定の電位が供給される配線(以下、容量線CL)に電気的に接続され、他方は、ノード466に電気的に接続される。なお、容量線CLの電位の値は、画素回路534の仕様に応じて適宜設定される。容量素子463は、ノード466に書き込まれたデータを保持する保持容量としての機能を有する。
【0345】
例えば、図15(C)の画素回路534を有する表示装置500では、駆動回路521a、および/または駆動回路521bにより各行の画素回路534を順次選択し、トランジスタ461をオン状態にしてノード466にビデオ信号を書き込む。
【0346】
ノード466にビデオ信号が書き込まれた画素回路534は、トランジスタ461がオフ状態になることで保持状態になる。これを行毎に順次行うことにより、表示領域531に画像を表示できる。
【0347】
また、図16(B)に示すように、トランジスタ461にバックゲートを有するトランジスタを用いてもよい。図16(B)に示すトランジスタ461は、ゲートがバックゲートと電気的に接続されている。よって、ゲートとバックゲートが常に同じ電位となる。
【0348】
〔周辺回路の構成例〕
図17(A)に駆動回路511の構成例を示す。駆動回路511は、シフトレジスタ512、ラッチ回路513、およびバッファ514を有する。また、図17(B)に駆動回路521aの構成例を示す。駆動回路521aは、シフトレジスタ522、およびバッファ523を有する。駆動回路521bも駆動回路521aと同様の構成とすることができる。
【0349】
シフトレジスタ512およびシフトレジスタ522にはスタートパルスSP、クロック信号CLKなどが入力される。
【0350】
〔表示装置の構成例〕
上記実施の形態に示したOSトランジスタを用いて、シフトレジスタを含む駆動回路の一部または全体を画素部と同じ基板上に一体形成して、システムオンパネルを形成することができる。
【0351】
本実施の形態では、液晶素子を用いた表示装置の構成例と、EL素子を用いた表示装置の構成例について説明する。図18(A)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シール材4005が設けられ、画素部4002がシール材4005および第2の基板4006によって封止されている。図18(A)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体または多結晶半導体で形成された信号線駆動回路4003、および走査線駆動回路4004が実装されている。また、信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004、または画素部4002に与えられる各種信号および電位は、FPC4018a(FPC:Flexible printed circuit)、FPC4018bから供給されている。
【0352】
図18(B)および図18(C)において、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画素部4002と、走査線駆動回路4004の上に第2の基板4006が設けられている。よって画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、第1の基板4001とシール材4005と第2の基板4006とによって、表示素子と共に封止されている。図18(B)および図18(C)においては、第1の基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、別途用意された基板上に単結晶半導体または多結晶半導体で形成された信号線駆動回路4003が実装されている。図18(B)および図18(C)においては、信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004、または画素部4002に与えられる各種信号および電位は、FPC4018から供給されている。
【0353】
また図18(B)および図18(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、第1の基板4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を別途形成して実装しても良いし、信号線駆動回路の一部または走査線駆動回路の一部のみを別途形成して実装しても良い。
【0354】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、ワイヤボンディング、COG(Chip On Glass)、TCP(Tape Carrier Package)、COF(Chip On Film)などを用いることができる。図18(A)は、COGにより信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、図18(B)は、COGにより信号線駆動回路4003を実装する例であり、図18(C)は、TCPにより信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0355】
また、表示装置は、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントローラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む場合がある。
【0356】
また第1の基板上に設けられた画素部および走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、上記実施の形態で示したOSトランジスタを適用することができる。
【0357】
図19(A)および図19(B)は、図18(B)中でN1-N2の鎖線で示した部位の断面構成を示す断面図である。図19(A)は、表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の一例である。また、図19(B)は、表示素子として発光素子を用いた発光表示装置(「EL表示装置」ともいう。)の一例である。
【0358】
図19(A)および図19(B)に示す表示装置は電極4015を有しており、電極4015はFPC4018が有する端子と異方性導電体4019を介して、電気的に接続されている。また、電極4015は、絶縁体4112、絶縁体4111、および絶縁体4110に形成された開口において配線4014と電気的に接続されている。
【0359】
電極4015は、第1の電極層4030と同じ導電体から形成され、配線4014は、トランジスタ4010、およびトランジスタ4011のソース電極およびドレイン電極と同じ導電体で形成されている。
【0360】
また、第1の基板4001上に設けられた画素部4002と走査線駆動回路4004は、トランジスタを複数有しており、図19(A)および図19(B)では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010、および走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011を例示している。図19(A)では、トランジスタ4010およびトランジスタ4011上に、絶縁体4112が設けられ、図19(B)では、絶縁体4112の上に隔壁4510が形成されている。
【0361】
また、トランジスタ4010およびトランジスタ4011は、絶縁体4102上に設けられている。また、トランジスタ4010およびトランジスタ4011は、絶縁体4103上に形成された電極4017を有し、電極4017上に絶縁体4112が形成されている。なお、電極4017はバックゲート電極として機能することができる。
【0362】
トランジスタ4010およびトランジスタ4011は、上記実施の形態で示したトランジスタを用いることができる。トランジスタ4010およびトランジスタ4011としてOSトランジスタを用いることが好ましい。OSトランジスタは、電気特性変動が抑制されており、電気的に安定である。よって、図19(A)および図19(B)で示す本実施の形態の表示装置を信頼性の高い表示装置とすることができる。
【0363】
また、OSトランジスタは、オフ状態における電流値(オフ電流値)を低くすることができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を長くすることができ、電源オン状態では書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0364】
また、OSトランジスタは、比較的高い電界効果移動度を得ることも可能であるため、高速駆動が可能である。よって、表示装置の駆動回路部や画素部に上記OSトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。また、同一基板上に駆動回路部または画素部を作り分けて作製することが可能であるため、表示装置の部品点数を削減することができる。
【0365】
また、図19(A)および図19(B)に示す表示装置は、容量素子4020を有する。容量素子4020は、トランジスタ4010のゲート電極と同じ工程で形成された電極4021と、ソース電極およびドレイン電極と同じ工程で形成された電極と、を有する。それぞれの電極は、絶縁体4103を介して重なっている。
【0366】
一般に、表示装置の画素部に設けられる容量素子の容量は、画素部に配置されるトランジスタのリーク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。容量素子の容量は、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。
【0367】
例えば、液晶表示装置の画素部にOSトランジスタを用いることにより、容量素子の容量を、液晶容量に対して1/3以下、さらには1/5以下とすることができる。OSトランジスタを用いることにより、容量素子の形成を省略することもできる。
【0368】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続する。図19(A)において、表示素子である液晶素子4013は、第1の電極層4030、第2の電極層4031、および液晶層4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁体4032、絶縁体4033が設けられている。第2の電極層4031は第2の基板4006側に設けられ、第1の電極層4030と第2の電極層4031は液晶層4008を介して重畳する。
【0369】
またスペーサ4035は絶縁体を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサであり、第1の電極層4030と第2の電極層4031との間隔(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお球状のスペーサを用いていても良い。
【0370】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射防止部材などの光学部材(光学基板)などを適宜設けてもよい。例えば、偏光基板および位相差基板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用いてもよい。
【0371】
また、図19(A)および図19(B)に示す表示装置は、絶縁体4111と絶縁体4104を有する。絶縁体4111と絶縁体4104として、不純物元素を透過しにくい絶縁体を用いる。絶縁体4111と絶縁体4104でトランジスタの半導体層を挟むことで、外部からの不純物の浸入を防ぐことができる。また、画素部4002の外側で絶縁体4111と絶縁体4104が接することで、外部からの不純物の浸入を防ぐ効果を高めることができる。
【0372】
絶縁体4104は、例えば、絶縁体222と同様の材料および方法で形成すればよい。絶縁体4111は、例えば、絶縁体274と同様の材料および方法で形成すればよい。
【0373】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子(「EL素子」ともいう。)を適用することができる。EL素子は、一対の電極の間に発光性の化合物を含む層(「EL層」ともいう。)を有する。一対の電極間に、EL素子の閾値電圧よりも大きい電位差を生じさせると、EL層に陽極側から正孔が注入され、陰極側から電子が注入される。注入された電子と正孔はEL層において再結合し、EL層に含まれる発光物質が発光する。
【0374】
また、EL素子は、発光材料が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機EL素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0375】
有機EL素子は、電圧を印加することにより、一方の電極から電子、他方の電極から正孔がそれぞれEL層に注入される。そして、それらキャリア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このような発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。
【0376】
なお、EL層は、発光性の化合物以外に、正孔注入性の高い物質、正孔輸送性の高い物質、正孔ブロック材料、電子輸送性の高い物質、電子注入性の高い物質、またはバイポーラ性の物質(電子輸送性および正孔輸送性が高い物質)などを有していてもよい。
【0377】
EL層は、蒸着法(真空蒸着法を含む)、転写法、印刷法、インクジェット法、塗布法などの方法で形成することができる。
【0378】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー-アクセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明する。
【0379】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透明であればよい。そして、基板上にトランジスタおよび発光素子を形成し、当該基板とは逆側の面から発光を取り出す上面射出(トップエミッション)構造や、基板側の面から発光を取り出す下面射出(ボトムエミッション)構造や、両面から発光を取り出す両面射出(デュアルエミッション)構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用することができる。
【0380】
表示素子である発光素子4513は、画素部4002に設けられたトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1の電極層4030、発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、この構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0381】
隔壁4510は、有機絶縁材料、または無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光性の樹脂材料を用い、第1の電極層4030上に開口部を形成し、その開口部の側面が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0382】
発光層4511は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるように構成されていてもどちらでも良い。
【0383】
発光素子4513に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2の電極層4031および隔壁4510上に保護層を形成してもよい。保護層としては、窒化シリコン、窒化酸化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化窒化アルミニウム、窒化酸化アルミニウム、DLC(Diamond Like Carbon)などを形成することができる。また、第1の基板4001、第2の基板4006、およびシール材4005によって封止された空間には充填材4514が設けられ密封されている。このように、外気に曝されないように気密性が高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0384】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂または熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル系樹脂、ポリイミド、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)またはEVA(エチレンビニルアセテート)などを用いることができる。また、充填材4514に乾燥剤が含まれていてもよい。
【0385】
シール材4005には、ガラスフリットなどのガラス材料や、二液混合型の樹脂などの常温で硬化する硬化樹脂、光硬化性の樹脂、熱硬化性の樹脂などの樹脂材料を用いることができる。また、シール材4005に乾燥剤が含まれていてもよい。
【0386】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、または円偏光板(楕円偏光板を含む)、位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよい。また、偏光板または円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0387】
また、発光素子をマイクロキャビティ構造とすることで、色純度の高い光を取り出すことができる。また、マイクロキャビティ構造とカラーフィルタを組み合わせることで、映り込みが低減し、表示画像の視認性を高めることができる。
【0388】
表示素子に電圧を印加する第1の電極層および第2の電極層(画素電極層、共通電極層、対向電極層などともいう)においては、取り出す光の方向、電極層が設けられる場所、および電極層のパターン構造によって透光性、反射性を選択すればよい。
【0389】
第1の電極層4030、第2の電極層4031は、酸化タングステンを含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むインジウム酸化物、インジウム錫酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物などの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0390】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031はタングステン(W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(Ag)などの金属、またはその合金、もしくはその金属窒化物から一種以上を用いて形成することができる。
【0391】
また、第1の電極層4030、第2の電極層4031として、導電性高分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子を用いることができる。例えば、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリピロール若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、または、アニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若しくはその誘導体などがあげられる。
【0392】
また、トランジスタは静電気などにより破壊されやすいため、駆動回路保護用の保護回路を設けることが好ましい。保護回路は、非線形素子を用いて構成することが好ましい。
【0393】
上記実施の形態で示したシフトレジスタを用いることで、信頼性のよい表示装置を提供することができる。また、上記実施の形態で示したトランジスタを用いることで、表示装置の信頼性をさらに高めることができる。また、上記実施の形態で示したトランジスタを用いることで、高精細化や、大面積化が可能で、表示品質の良い表示装置を提供することができる。また、消費電力が低減された表示装置を提供することができる。
【0394】
<表示モジュール>
上述したトOSランジスタを使用した半導体装置の一例として、表示モジュールについて説明する。図20に示す表示モジュール6000は、上部カバー6001と下部カバー6002との間に、FPC6003に接続されたタッチセンサ6004、FPC6005に接続された表示パネル6006、バックライトユニット6007、フレーム6009、プリント基板6010、バッテリ6011を有する。なお、バックライトユニット6007、バッテリ6011、タッチセンサ6004などは、設けられない場合もある。
【0395】
本発明の一態様の半導体装置は、例えば、タッチセンサ6004、表示パネル6006、プリント基板6010に実装された集積回路などに用いることができる。例えば、表示パネル6006に前述した表示装置を用いることができる。
【0396】
上部カバー6001および下部カバー6002は、タッチセンサ6004や表示パネル6006などのサイズに合わせて、形状や寸法を適宜変更することができる。
【0397】
タッチセンサ6004は、抵抗膜方式または静電容量方式のタッチセンサを表示パネル6006に重畳して用いることができる。表示パネル6006にタッチセンサの機能を付加することも可能である。例えば、表示パネル6006の各画素内にタッチセンサ用電極を設け、静電容量方式のタッチパネル機能を付加することなども可能である。または、表示パネル6006の各画素内に光センサを設け、光学式のタッチセンサの機能を付加することなども可能である。また、タッチセンサ6004を設ける必要が無い場合は、タッチセンサ6004を省略することができる。
【0398】
バックライトユニット6007は、光源6008を有する。光源6008をバックライトユニット6007の端部に設け、光拡散板を用いる構成としてもよい。また、表示パネル6006に発光表示装置などを用いる場合は、バックライトユニット6007を省略することができる。
【0399】
フレーム6009は、表示パネル6006の保護機能の他、プリント基板6010側から発生する電磁波を遮断するための電磁シールドとしての機能を有する。また、フレーム6009は、放熱板としての機能を有していてもよい。
【0400】
プリント基板6010は、電源回路、ビデオ信号およびクロック信号を出力するための信号処理回路などを有する。電源回路に電力を供給する電源としては、バッテリ6011であってもよいし、商用電源であってもよい。なお、電源として商用電源を用いる場合には、バッテリ6011を省略することができる。
【0401】
また、表示モジュール6000に、偏光板、位相差板、プリズムシートなどの部材を追加して設けてもよい。
【0402】
本実施の形態は、他の実施の形態、実施例などなどに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0403】
(実施の形態7)
本発明の一態様に係る半導体装置は、CPUやGPUなどのプロセッサ、またはチップに用いることができる。図21に、本発明の一態様に係るCPUやGPUなどのプロセッサ、またはチップを備えた電子機器の具体例を示す。
【0404】
<電子機器・システム>
本発明の一態様に係るGPU又はチップは、様々な電子機器に搭載することができる。電子機器の例としては、例えば、テレビジョン装置、デスクトップ型もしくはノート型のパーソナルコンピュータ、コンピュータ用などのモニタ、デジタルサイネージ(Digital Signage:電子看板)、パチンコ機などの大型ゲーム機などの比較的大きな画面を備える電子機器の他、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、などが挙げられる。また、本発明の一態様に係る集積回路又はチップを電子機器に設けることにより、電子機器に人工知能を搭載することができる。
【0405】
本発明の一態様の電子機器は、アンテナを有していてもよい。アンテナで信号を受信することで、表示部で映像や情報等の表示を行うことができる。また、電子機器がアンテナ及び二次電池を有する場合、アンテナを、非接触電力伝送に用いてもよい。
【0406】
本発明の一態様の電子機器は、センサ(力、変位、位置、速度、加速度、角速度、回転数、距離、光、液、磁気、温度、化学物質、音声、時間、硬度、電場、電流、電圧、電力、放射線、流量、湿度、傾度、振動、においまたは赤外線を測定する機能を含むもの)を有していてもよい。
【0407】
本発明の一態様の電子機器は、様々な機能を有することができる。例えば、様々な情報(静止画、動画、テキスト画像など)を表示部に表示する機能、タッチパネル機能、カレンダー、日付または時刻などを表示する機能、様々なソフトウェア(プログラム)を実行する機能、無線通信機能、記録媒体に記録されているプログラムまたはデータを読み出す機能等を有することができる。図21に、電子機器の例を示す。
【0408】
[携帯電話]
図21(A)には、情報端末の一種である携帯電話(スマートフォン)が図示されている。情報端末5500は、筐体5510と、表示部5511と、を有しており、入力用インターフェースとして、タッチパネルが表示部5511に備えられ、ボタンが筐体5510に備えられている。
【0409】
情報端末5500は、本発明の一態様のチップを適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、会話を認識してその会話内容を表示部5511に表示するアプリケーション、表示部5511に備えるタッチパネルに対してユーザが入力した文字、図形などを認識して、表示部5511に表示するアプリケーション、指紋や声紋などの生体認証を行うアプリケーションなどが挙げられる。
【0410】
[情報端末]
図21(B)には、デスクトップ型情報端末5300が図示されている。デスクトップ型情報端末5300は、情報端末の本体5301と、ディスプレイ5302と、キーボード5303と、を有する。
【0411】
デスクトップ型情報端末5300は、先述した情報端末5500と同様に、本発明の一態様のチップを適用することで、人工知能を利用したアプリケーションを実行することができる。人工知能を利用したアプリケーションとしては、例えば、設計支援ソフトウェア、文章添削ソフトウェア、献立自動生成ソフトウェアなどが挙げられる。また、デスクトップ型情報端末5300を用いることで、新規の人工知能の開発を行うことができる。
【0412】
なお、上述では、電子機器としてスマートフォン、及びデスクトップ用情報端末を例として、それぞれ図21(A)、(B)に図示したが、スマートフォン、及びデスクトップ用情報端末以外の情報端末を適用することができる。スマートフォン、及びデスクトップ用情報端末以外の情報端末としては、例えば、PDA(Personal Digital Assistant)、ノート型情報端末、ワークステーションなどが挙げられる。
【0413】
[電化製品]
図21(C)は、電化製品の一例である電気冷凍冷蔵庫5800を示している。電気冷凍冷蔵庫5800は、筐体5801、冷蔵室用扉5802、冷凍室用扉5803等を有する。
【0414】
電気冷凍冷蔵庫5800に本発明の一態様のチップを適用することによって、人工知能を有する電気冷凍冷蔵庫5800を実現することができる。人工知能を利用することによって電気冷凍冷蔵庫5800は、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材、その食材の消費期限などを基に献立を自動生成する機能や、電気冷凍冷蔵庫5800に保存されている食材に合わせた温度に自動的に調節する機能などを有することができる。
【0415】
本一例では、電化製品として電気冷凍冷蔵庫について説明したが、その他の電化製品としては、例えば、掃除機、電子レンジ、電子オーブン、炊飯器、湯沸かし器、IH調理器、ウォーターサーバ、エアーコンディショナーを含む冷暖房器具、洗濯機、乾燥機、オーディオビジュアル機器などが挙げられる。
【0416】
[ゲーム機]
【0417】
図21(D)は、ゲーム機の一例である携帯ゲーム機5200を示している。携帯ゲーム機は、筐体5201、表示部5202、ボタン5203等を有する。
【0418】
携帯ゲーム機5200に本発明の一態様のGPU又はチップを適用することによって、低消費電力の携帯ゲーム機5200を実現することができる。また、低消費電力により、回路からの発熱を低減することができるため、発熱によるその回路自体、周辺回路、及びモジュールへの影響を少なくすることができる。
【0419】
更に、携帯ゲーム機5200に本発明の一態様のGPU又はチップを適用することによって、人工知能を有する携帯ゲーム機5200を実現することができる。
【0420】
本来、ゲームの進行、ゲーム上に登場する生物の言動、ゲーム上で発生する現象などの表現は、そのゲームが有するプログラムによって定められているが、携帯ゲーム機5200に人工知能を適用することにより、ゲームのプログラムに限定されない表現が可能になる。例えば、プレイヤーが問いかける内容、ゲームの進行状況、時刻、ゲーム上に登場する人物の言動が変化するといった表現が可能となる。
【0421】
また、携帯ゲーム機5200で複数のプレイヤーが必要なゲームを行う場合、人工知能によって擬人的にゲームプレイヤーを構成することができるため、対戦相手を人工知能によるゲームプレイヤーとすることによって、1人でもゲームを行うことができる。
【0422】
図21(D)では、ゲーム機の一例として携帯ゲーム機を図示しているが、本発明の一態様のGPU又はチップを適用するゲーム機はこれに限定されない。本発明の一態様のGPU又はチップを適用するゲーム機としては、例えば、家庭用の据え置き型ゲーム機、娯楽施設(ゲームセンター、遊園地など)に設置されるアーケードゲーム機、スポーツ施設に設置されるバッティング練習用の投球マシンなどが挙げられる。
【0423】
[移動体]
本発明の一態様のGPU又はチップは、移動体である自動車、及び自動車の運転席周辺に適用することができる。
【0424】
図21(E1)は移動体の一例である自動車5700を示し、図21(E2)は、自動車の室内におけるフロントガラス周辺を示す図である。図21(E2)では、ダッシュボードに取り付けられた表示パネル5701、表示パネル5702、表示パネル5703の他、ピラーに取り付けられた表示パネル5704を図示している。
【0425】
表示パネル5701乃至表示パネル5703は、スピードメーターやタコメーター、走行距離、燃料計、ギア状態、エアコンの設定などを表示することで、様々な情報を提供することができる。また、表示パネルに表示される表示項目やレイアウトなどは、ユーザの好みに合わせて適宜変更することができ、デザイン性を高めることが可能である。表示パネル5701乃至表示パネル5703は、照明装置として用いることも可能である。
【0426】
表示パネル5704には、自動車5700に設けられた撮像装置(図示しない。)からの映像を映し出すことによって、ピラーで遮られた視界(死角)を補完することができる。すなわち、自動車5700の外側に設けられた撮像装置からの画像を表示することによって、死角を補い、安全性を高めることができる。また、見えない部分を補完する映像を映すことによって、より自然に違和感なく安全確認を行うことができる。表示パネル5704は、照明装置として用いることもできる。
【0427】
本発明の一態様のGPU又はチップは人工知能の構成要素として適用できるため、例えば、当該チップを自動車5700の自動運転システムに用いることができる。また、当該チップを道路案内、危険予測などを行うシステムに用いることができる。表示パネル5701乃至表示パネル5704には、道路案内、危険予測などの情報を表示する構成としてもよい。
【0428】
なお、上述では、移動体の一例として自動車について説明しているが、移動体は自動車に限定されない。例えば、移動体としては、電車、モノレール、船、飛行体(ヘリコプター、無人航空機(ドローン)、飛行機、ロケット)なども挙げることができ、これらの移動体に本発明の一態様のチップを適用して、人工知能を利用したシステムを付与することができる。
【0429】
[放送システム]
本発明の一態様のGPU又はチップは、放送システムに適用することができる。
【0430】
図21(F)は、放送システムにおけるデータ伝送を模式的に示している。具体的には、図21(F)は、放送局5680から送信された電波(放送信号)が、各家庭のテレビジョン受信装置(TV)5600に届くまでの経路を示している。TV5600は、受信装置を備え(図示しない。)、アンテナ5650で受信された放送信号は、当該受信装置を介して、TV5600に送信される。
【0431】
図21(F)では、アンテナ5650は、UHF(Ultra High Frequency)アンテナを図示しているが、アンテナ5650としては、BS・110°CSアンテナ、CSアンテナなども適用できる。
【0432】
電波5675A、電波5675Bは地上波放送用の放送信号であり、電波塔5670は受信した電波5675Aを増幅して、電波5675Bの送信を行う。各家庭では、アンテナ5650で電波5675Bを受信することで、TV5600で地上波TV放送を視聴することができる。なお、放送システムは、図21(F)に示す地上波放送に限定せず、人工衛星を用いた衛星放送、光回線によるデータ放送などとしてもよい。
【0433】
上述した放送システムは、本発明の一態様のチップを適用して、人工知能を利用した放送システムとしてもよい。放送局5680から各家庭のTV5600に放送データを送信するとき、エンコーダによって放送データの圧縮が行われ、アンテナ5650が当該放送データを受信したとき、TV5600に含まれる受信装置のデコーダによって当該放送データの復元が行われる。人工知能を利用することによって、例えば、エンコーダの圧縮方法の一である動き補償予測において、表示画像に含まれる表示パターンの認識を行うことができる。また、人工知能を利用したフレーム内予測などを行うこともできる。また、例えば、解像度の低い放送データを受信して、解像度の高いTV5600で当該放送データの表示を行うとき、デコーダによる放送データの復元において、アップコンバートなどの画像の補間処理を行うことができる。
【0434】
上述した人工知能を利用した放送システムは、放送データの量が増大する超高精細度テレビジョン(UHDTV:4K、8K)放送に対して好適である。
【0435】
また、TV5600側における人工知能の応用として、例えば、TV5600に人工知能を有する録画装置を設けてもよい。このような構成にすることによって、当該録画装置にユーザの好みを人工知能に学習させることで、ユーザの好みにあった番組を自動的に録画することができる。
【0436】
本実施の形態で説明した電子機器、その電子機器の機能、人工知能の応用例、その効果などは、他の電子機器の記載と適宜組み合わせることができる。
【0437】
本実施の形態は、他の実施の形態、実施例などに記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【実施例0438】
本実施例では、複数のトランジスタ200を有する半導体装置990を作製し、任意の領域に位置するトランジスタ200の断面観察を行った。
【0439】
図22(A)に示すように、半導体装置990は、同一の工程で作製した132行×132列に整列するトランジスタ200を有する。また、半導体装置990において、トランジスタ200の密度は、0.88個/μmとした。
【0440】
ここで、トランジスタ200として作製したトランジスタ200ExのL長方向の断面図を、図22(B)に示す。なお、トランジスタ200Exのチャネル長は60nm、チャネル幅は60nmとして設計した。
【0441】
下表には、トランジスタ200Exの構造体に用いた材料を示す。なお、トランジスタ200Exにおいて、先の実施の形態に示したトランジスタ200の構造と同機能を有する構造には、同符号を付記した。従って、下表にない構造は、先の実施の形態を参照する。
【0442】
【表1】
【0443】
<試料の作製方法>
以下に、トランジスタ200を有する半導体装置990の作製方法を説明する。
【0444】
絶縁体224として、CVD法により、酸化シリコンを成膜した。
【0445】
次に、絶縁体224上に、酸化物230aとなる膜として、In-Ga-Zn酸化物をスパッタリング法により、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]のターゲットを用いて成膜した。続いて、酸化物230aとなる膜上に、酸化物230bとなる膜として、In-Ga-Zn酸化物をスパッタリング法により、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]のターゲットを用いて成膜した。なお、酸化物230aとなる膜と、酸化物230bとなる膜とは、連続成膜した。
【0446】
次に、酸化物230となる膜上に、導電体240となる膜として、スパッタリング法により、窒化タンタル膜を成膜した。
【0447】
続いて、酸化物230aとなる膜、酸化物230bとなる膜、および導電体240となる膜を加工し、酸化物230a、酸化物230b、および導電体240を形成した。
【0448】
次に、酸化物230a、酸化物230b、および導電体240上に、絶縁体273を成膜した。なお、絶縁体273は、スパッタリング法により成膜した酸化アルミニウム膜と、ALD法により成膜した酸化アルミニウム膜との積層構造とした。
【0449】
次に、絶縁体273上に、絶縁体280となる膜として、CVD法により、酸化シリコン膜を成膜した。その後、CMP法により、絶縁体280となる膜を平坦化し、絶縁体280を形成した。
【0450】
続いて、絶縁体280、絶縁体273、および導電体240の一部を除去し、酸化物230a、および酸化物230bを露出する開口部を形成した。
【0451】
ここで、絶縁体280は、炭素、水素、およびフッ素を含むガスを用いたドライエッチング法により、加工した。絶縁体273は、TMAH(Tetra Methyl Ammonium Hydroxide)を用いたウエットエッチング法により加工した。また、導電体240は、フッ素と塩素を含むガスを用いたドライエッチング法により加工した。
【0452】
次に、露出した絶縁体224、露出した酸化物230a、および露出した酸化物230b上に、酸化物230cとなる膜を形成した。なお、酸化物230cは積層構造とした。酸化物230cの第1の酸化物として、In-Ga-Zn酸化物をスパッタリング法により、In:Ga:Zn=4:2:4.1[原子数比]のターゲットを用いて成膜した。続いて、酸化物230cの第1の酸化物上に、酸化物230cの第2の酸化物として、In-Ga-Zn酸化物をスパッタリング法により、In:Ga:Zn=1:3:4[原子数比]のターゲットを用いて成膜した。なお、第1の酸化物と第2の酸化物とは、連続成膜した。
【0453】
次に、絶縁体250となる膜として、CVD法により、酸化シリコンを成膜した。次に、導電体260となる膜として、CVD法により、窒化チタン膜、およびタングステン膜を連続成膜した。
【0454】
続いて、導電体260となる膜、絶縁体250となる膜、酸化物230cとなる膜の一部を、CMP法を用いて除去し、導電体260、絶縁体250、および酸化物230cを形成した。
【0455】
以上の工程より、複数のトランジスタ200を有する半導体装置990を作製した。
【0456】
<トランジスタ200の断面観察>
次に、半導体装置990が有する132行×132列に整列するトランジスタ200のうち、1行×1列目のトランジスタ200(1,1)、3行×3列目のトランジスタ200(3,3)、6行×6列目のトランジスタ200(6,6)、45行×35列目のトランジスタ200(45,35)、および65行×65列目のトランジスタ200(65,65)の断面観察を行った。
【0457】
また、比較例として、半導体装置990と同面積の領域において、当該領域の中央部に1個のトランジスタ200Exを形成した半導体装置の断面観察を行った。
【0458】
なお、断面観察は、走査型透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)により行った。観察用の装置は日立ハイテクノロジーズ社製HD-2700を用いた。図23に半導体装置990、および比較例の断面STEM観察結果を示した。
【0459】
図23下段には、半導体装置990の各トランジスタの取得した断面図において、上段左に示す断面図の一点鎖線で示す領域991に相当する領域を示した。また、上段右端には、比較例のトランジスタの取得した断面図において、領域991に相当する領域を示した。
【0460】
ここで、各トランジスタの領域991において、導電体240と酸化物230bとの界面、およびその延長面を破線で示した。また、酸化物230cと酸化物230bとの界面も破線で示した。比較例、および半導体装置990ともに、導電体240と酸化物230bとの界面の延長面よりも、酸化物230cと酸化物230bとの界面が、下方に位置することがわかった。つまり、導電体240の一部を除去する工程において、酸化物230の一部が除去されたことがわかった。
【0461】
従って、上方の破線と下方の破線の間である矢印で示す距離は、導電体240の一部を除去する工程において、酸化物230の一部が除去された量(以下、ザグリ量ともいう)である。そこで、図24に、各トランジスタ200のチャネル部におけるザグリ量(Etching amount of channel part)を示す。
【0462】
図24に示す結果より、比較例のトランジスタ、およびトランジスタ200(1,1)のザグリ量は3.0nm以上であった。一方、トランジスタ200(3,3)のザグリ量は、約2.0nm、また、トランジスタ200(6,6)、トランジスタ200(45,35)、およびトランジスタ200(65,65)は2nmよりも小さかった。
【0463】
従って、導電体240の一部を除去する工程において、配置するレイアウトに依存する加工のバラつきが生じることが確認できた。特に、回路領域の最端部に配置するトランジスタ200(1,1)は、最もエッチング量が多くなることが確認できた。一方、最端部よりも中央側に配置するトランジスタ200(3,3)列目よりも、さらに中央側から中央部であるトランジスタ200(65,65)までは、ザグリ量がほぼ均一となることがわかった。
【0464】
また、周囲に他のトランジスタがない比較例においても、トランジスタ200(1,1)と同等のザグリ量であることが確認できた。当該結果より、半導体装置990において、導電体240を除去する工程において、ローディング効果が生じていると推測できる。
【0465】
ここで、加工バラつきが大きい領域には、犠牲素子を配置することで、トランジスタのばらつきを抑制することができると考えられる。具体的には、パターン密度が低い領域とパターン密度が高い領域とが隣接した場合、高い領域の周縁領域では、レイアウトに依存する加工バラつきが生じることがわかった。つまり、パターン密度が異なる領域の間には、犠牲素子を配置することで、パターン密度が高い領域が有するトランジスタのばらつきを抑制することができる。
【0466】
本実施例は、少なくともその一部を本明細書中に記載する他の実施の形態と適宜組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0467】
10:基板、11:領域、12:領域、13:領域、14:領域、15:基板、16:回路領域、18:分離領域、21:ダミー素子、22:素子、23:膜、26:構造体、26A:膜、27:膜、28:構造体、29:マスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24