(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164504
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
B60R 11/02 20060101AFI20231102BHJP
H04M 1/11 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
B60R11/02 W
H04M1/11 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143688
(22)【出願日】2023-09-05
(62)【分割の表示】P 2022019470の分割
【原出願日】2018-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2017122916
(32)【優先日】2017-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】渡部 崇史
(72)【発明者】
【氏名】重田 浩典
(72)【発明者】
【氏名】松村 博史
(57)【要約】
【課題】設置場所における占有スペースを抑えるべく小型化することができる、被保持物の保持装置を提供する。
【解決手段】被保持物の保持機構10が、装置本体20に突没スライド自在に支持された保持装置であって、保持機構10に搭載され、任意の突出位置にて当該保持機構10をロックするロック部13を備え、ロック部13が、保持機構10に軸支され所定操作を受けて回動する第1回動体132と、第1回動体132の回動に伴って、当該第1回動体132から直接的に力を受けて回動する第2回動体133と、第2回動体133の回動に伴って装置本体20に係止する係止位置と非係止位置との間を移動する係止部131と、を備えることを特徴としている。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被保持物の保持機構が、装置本体に突没スライド自在に支持された保持装置であって、
前記保持機構に搭載され、任意の突出位置にて当該保持機構をロックするロック部を備え、
前記ロック部が、
前記保持機構に軸支され所定操作を受けて回動する第1回動体と、
前記第1回動体の回動に伴って、当該第1回動体から直接的に又は間接的に力を受けて回動する第2回動体と、
前記第2回動体の回動に伴って前記装置本体に係止する係止位置と非係止位置との間を移動する係止部と、を備えることを特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被保持物の保持機構を備えた保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スマートフォンやタブレット端末等といった被保持物の保持機構を備えた保持装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この特許文献1に記載の保持装置は、取付ベースに回動自在に支持されたアーム部の先端部に、被保持物の保持機構が回動自在に支持された構成を有している。この保持装置は、例えば車両の運転席等に取付ベースが設置されて使用される。そして、その使用時には、アーム部や、その先端部の保持機構の向きが、使用者の所望の向きに適宜に調節されることとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1に記載の保持装置は、上述したように、取付ベース、アーム部、及び保持機構を備えた大掛かりな構成であり、例えば車両の運転席等の設置場所においてかなりのスペースを占有することとなっている。
【0005】
したがって、本発明の課題は、設置場所における占有スペースを抑えるべく小型化することができる、被保持物の保持装置を提供すること等が一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の保持装置は、被保持物を保持する保持部を備える保持機構が、装置本体に突没スライド自在に支持された保持装置であって、前記保持機構に搭載され、任意の突出位置にて当該保持機構をロックするロック部を備え、前記装置本体には、前記保持機構の突没方向に複数の被係止部が配列された被係止体が設けられ、前記ロック部が、前記保持機構に軸支され、前記保持部を起立する起立操作を受けて回動する第1回動体と、前記第1回動体の回動に伴って、当該第1回動体から直接的に又は間接的に力を受けて回動する第2回動体と、前記第2回動体の回動に伴って、前記装置本体の前記被係止体における前記複数の被係止部のうちの何れかに当接するように前記被係止体に係止する係止位置と、前記被係止体から離れて係止が解除される非係止位置との間を移動する係止部と、を備え、前記ロック部は、前記係止部が前記係止位置に移動することで前記保持機構をロックし、前記係止部が前記非係止位置に移動することで前記保持機構のロックを解除するものであり、前記係止部は、前記起立操作によって前記係止位置に移動することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の実施例に係る保持装置を示す正面図である。
【
図2】
図1に示されている保持装置にスマートフォンを保持させた状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1に示されている保持装置の分解斜視図である。
【
図4】
図1~
図3に示されている保持装置にスマートフォンを保持させるための一例の手順を示す模式図である。
【
図5】保持機構を装置本体に突没スライド自在に支持する構造を示す斜視図である。
【
図6】
図5に示されている構造から、上シャーシを除いた斜視図である。
【
図7】
図5に示されている突出ロック部及び収納ロック部を、
図5中の矢印V11方向に見上げて示した斜視図である。
【
図8】
図7に示されている収納ロック部が、上シャーシに設けられた係止突起に係止する様子を示す模式図である。
【
図9】保持機構における基部と保持部との結合構造を示す図である。
【
図10】収納位置にある保持機構を、ラックと突出ロック部とが見える方向から示す図である。
【
図11】
図10に示されている保持機構が、一枚板形状のまま装置本体から任意の突出位置まで引き出された様子を示す図である。
【
図12】
図11に示されている任意の突出位置の保持機構において保持部が立てられた様子を示す図である。
【
図13】
図12に示されている保持機構から、基部の底面側を構成する基部側板金フレームを除いて、係止部を回動させるための構造を含む全体が見えるように突出ロック部を示した図である。
【
図14】
図13に示されている突出ロック部を拡大するとともに、ラックに対して係止部が非係止位置にある状態と、係止位置にある状態と、を並べて示した図である。
【
図15】保持部に対する回動操作に伴って第1回動体及び第2回動体が回動することで係止部を移動させる様子を示す模式図である。
【
図16】保持部の回動操作に伴って第1回動体を回動させるための構造を示す、保持機構の断面図である。
【
図17】
図16に示されているロック解除状態の保持部と突出ロック部との境界部を、
図16中の矢印V12方向に見た斜視図である。
【
図18】
図16に示されているロック状態の保持部と突出ロック部との境界部を、
図16中の矢印V13方向に見た斜視図である。
【
図19】
図14~
図18を参照して説明したロック状態とロック解除状態との切換え動作を、模式図を用いて簡略化して示す図である。
【
図20】ロック状態における係止部とラックとの干渉により保持機構が抵抗力を受けつつ移動する様子を示す模式図である。
【
図21】
図1~
図20に示されている保持装置と比較するための比較例を示す図である。
【
図22】基部の厚みを抑えることで得られる保持装置の外観上の効果について説明するために示す保持機構の側面図である。
【
図23】基部の厚みを抑えることで得られる保持装置の外観上の効果について説明するために示す、保持装置を正面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係る保持装置は、被保持物を保持する保持部を備える保持機構が、装置本体に突没スライド自在に支持された保持装置である。この保持装置が、保持機構に搭載され、任意の突出位置にて保持機構をロックするロック部を備える。そして、このロック部が、次のような第1回動体と、第2回動体と、係止部と、を備える。第1回動体は、保持機構に軸支され、保持部を起立する起立操作を受けて回動する。第2回動体は、第1回動体の回動に伴って、第1回動体から直接的に又は間接的に力を受けて回動する。また、係止部は、第2回動体の回動に伴って装置本体に係止する係止位置と非係止位置との間を移動する。また、ロック部は、係止部が係止位置に移動することで保持機構をロックし、係止部が非係止位置に移動することで保持機構のロックを解除するものとなっている。そして、係止部は、起立操作によって係止位置に移動する。
【0009】
本実施形態に係る保持装置によれば、ロック部において所定操作を係止部に伝える機構が、第1回動体や第2回動体といった複数の回動要素で構成されているので、各回動要素については、その長さを抑えて回動端の移動距離を抑えることができる。被保持物の保持機構は、回動要素の回動方向を保持機構の厚み方向と一致するようにロック部が搭載されるときに最も厚くなる。本実施形態に係る保持装置によれば、上記のように回動要素の回動端の移動距離が抑えられるので、保持機構の厚みも抑えることができ、その結果、設置場所における占有スペースを抑えるべく保持装置を小型化することができる。
【0010】
ここで、本実施形態の保持装置では、上記のロック部が、係止部を係止位置に向かって付勢する付勢部材を、さらに備えている。これにより、被保持物を保持機構に保持させて使用する使用時等では、係止部が常時付勢されて装置本体に係止するので、安定した状態で使用することができる。
【0011】
また、本実施形態の保持装置では、第1回動体は、付勢部材の付勢力に抗して係止部を非係止位置に移動させる際には、第1回動体の回動により第2回動体に力を及ぼして回動させるものである。他方、第1回動体は、付勢力により係止部が係止位置に移動する際には、係止部を介して受けた付勢力による第2回動体の回動を妨げないように回動することとなっている。これにより、係止部の係止位置への移動については付勢部材による付勢力が利用されるので、第1回動体や第2回動体による係止部への力の伝達は、係止部を非係止位置へと移動させることのみを考慮すればよい。これにより、力の伝達に関する機構構成について簡単化を図ることができるので、保持装置の製造や組立てのコストや手間を軽減することができる。
【0012】
また、本実施形態の保持装置では、装置本体には、保持機構の突没方向に複数の被係止部が配列された被係止体が設けられ、係止部が、被係止体に係止することとなっている。複数の被係止部が突没方向に沿って直線状に並んだ被係止体を用いることで、保持装置における係止部の係止機構についても収納スペースを抑えることができる。これにより、本実施形態の保持装置によれば、保持装置を一層小型化することができる。
【0013】
また、本実施形態の保持装置では、装置本体に設けられて、装置本体に収納位置まで没した保持機構をロックする第2ロック部を、さらに備えることとなっている。これにより、収納位置に保持機構を安定的に収納することができる。
【0014】
また、本実施形態の保持装置では、保持機構が、装置本体に突没スライド自在に支持される基部を備えている。そして、保持部は、基部に軸支されて被保持物を保持し、保持部を寝かせる寝かせ操作と起立操作によって、基部に対して回動する。また、係止部は、起立操作によって係止位置に移動し、寝かせ操作によって非係止位置に移動する。これにより、保持部の回動という、使用者が被保持物を保持させるための操作が、係止部の移動によるロック及びロック解除のための操作として利用されている。このため、ロック及びロック解除のために、例えば操作ボタン等を別に設ける場合等と比較して部品点数の抑制等による製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
また、本実施形態の保持装置は、装置本体が、車両に搭載されるものであってもよく、被保持物が、携帯機器であってもよい。尚、ここにいう携帯機器とは、使用者によって携帯される電子機器であって、スマートフォンやタブレット端末やゲーム機器等が一例として挙げられる。
【実施例0016】
以下、本発明の実施例について図を参照して具体的に説明する。本実施例の保持装置は、車載機器であって、車両の運転席におけるインストルメントパネルに搭載されて使用される。また、本実施例の保持装置は、被保持物として、携帯機器の一例であるスマートフォンを保持する。
【0017】
図1は、本発明の実施例に係る保持装置を示す正面図であり、
図2は、
図1に示されている保持装置にスマートフォンを保持させた状態を示す斜視図であり、
図3は、
図1に示されている保持装置の分解斜視図である。
【0018】
本実施例の保持装置1は、スマートフォン5の保持機構10と、インストルメントパネルに搭載される矩形箱状の装置本体20と、を備えている。
【0019】
保持機構10は、装置本体20に突没自在に保持される。また、保持機構10は、装置本体20に、突没スライド自在に支持される基部11と、この基部11に軸支されてスマートフォン5を保持する保持部12と、を備えている。保持機構10は、スマートフォン5を保持させる際には、装置本体20から
図3に示されている突没方向D11における突出方向D111に基部11が引き出され、保持部12が
図2に示されている回動方向D12における起立方向D121に立てられる。そして、この立てられた保持部12にスマートフォン5を保持させるように構成されている。
【0020】
装置本体20は、矩形箱状の装置本体20における上壁と一対の側壁とをなす上シャーシ21と、下壁をなす下シャーシ22と、を備えている。上述の保持機構10の基部11は、上シャーシ21の上壁に突没スライド自在に支持されている。下シャーシ22には、矩形箱状の装置本体20における背面側の一端辺に、この装置本体20における背面壁をなす長方形状の背面基板221が立設されている。この背面基板221には、外部機器との各種接続コネクタや、スマートフォン5との間で、例えばブルートゥース(登録商標)規格等に則った短距離通信を行うためのアンテナ等が搭載されている。また、下シャーシ22の内面には、背面基板221と電気的に接続された内面基板222が取り付けられている。
【0021】
また、装置本体20は、装置本体20における正面壁をなしてユーザインタフェースの役割を担う長方形板状の脱着可能なフロントパネル部23と、このフロントパネル部23を着脱自在、かつ、回動自在に保持するパネル部24と、を備えている。パネル部24は、上シャーシ21及び下シャーシ22に固定される。このパネル部24は、上シャーシ21に支持される保持機構10と干渉しないように切欠きが設けられた形状に形成されている。フロントパネル部23の長手方向の両端には、回動軸をなす一対の軸突起231が設けられ、これら一対の軸突起231が、パネル部24における一対の保持アーム241に、着脱自在かつ回動自在に保持される。
【0022】
本実施例の保持装置1では、上シャーシ21に支持される保持機構10と、パネル部24と、のそれぞれが、下シャーシ22の内面基板222に、ケーブル223で電気的に接続されている。本実施例では、
図2に示されているように保持されたスマートフォン5に対するタッチ操作や、フロントパネル部23に対するボタン操作により、例えばスマートフォン5の画面上への地図情報の表示や、車載オーディオ機器からの音楽の再生等を行うことができる。また、保持したスマートフォン5に対する充電を、保持機構10と内面基板222とを繋ぐケーブル223と、スマートフォン5から延伸して保持機構10に接続した充電ケーブルと、を介して行うこともできる。
【0023】
以上に説明した保持装置1には、次のような手順によってスマートフォン5を保持させる。
【0024】
図4は、
図1~
図3に示されている保持装置にスマートフォンを保持させるための一例の手順を示す模式図である。尚、この
図4では、図を見易くするために、装置本体20については、上シャーシ21のみが示されている。以下に説明する手順は、使用者の手作業によって行われる。
【0025】
まず、ステップS11及びステップS12において、装置本体20から突出方向D111に保持機構10が引き出される。このとき、本実施例では、フロントパネル部23は、保持機構10の動きの邪魔とならないように、
図3に示されている軸突起231を回動中心として回動されて前方に倒されるか、パネル部24から取り外される。
【0026】
続くステップS13では、保持機構10において、保持部12が基部11に対して起立方向D121に立てられる。このとき、保持部12は、3本の保持爪122を有するチャッキング部121を備えている。本実施例では、このステップS13で保持部12が立てられた状態において、チャッキング部121は、1本の保持爪122が上部側に位置し、2本の保持爪122が下部側に位置する姿勢となっている。また、チャッキング部121では、上部側となる1本の保持爪122が、下部側となる2本の保持爪122に向かってバネ付勢されている。
【0027】
ステップS14では、このチャッキング部121におけるバネ付勢に抗して上部側の保持爪122が引上げ方向D131に引き上げられる。
【0028】
そして、ステップS15において、上記のように引き上げられた上部側の保持爪122と、下部側の保持爪122と、の間に、スマートフォン5が、その長手方向が水平方向を向く横置き状態で配置される。使用者が上部側の保持爪122を離すと、上記のバネ付勢により上部側の保持爪122が下降方向D132に動く。これにより、上部側の保持爪122と、下部側の保持爪122と、でスマートフォン5が挟持される。
【0029】
ここで、本実施例では、保持部12において、チャッキング部121が回動軸121aを中心とした回動方向D14に回動自在に取り付けられている。上記のようにステップS15の段階では、スマートフォン5は横置き状態で保持されている。使用者が、このスマートフォン5を、その長手方向が鉛直方向を向く縦置き状態にして表示面を見たいと考えた場合、次のステップS16によって、スマートフォン5を縦置き状態とすることができる。即ち、ステップS16では、スマートフォン5ごと、チャッキング部121が、回動軸121aを中心として図中の時計回りの回動方向D141に90°回動される。この回動によりスマートフォン5が縦置き状態となる。また、この後、使用者が、スマートフォン5を横置き状態にして表示面を見たいと考えた場合には、チャッキング部121が図中の反時計回りに90°戻されて、スマートフォン5が横置き状態となる。尚、チャッキング部121の回動方向は、本実施形例とは逆向きに設定してもよい。
【0030】
また、本実施例では、使用者は、保持機構10を引き出した後の任意のタイミングでフロントパネル部23を戻す。その結果、スマートフォン5の保持を行なった後の外観が、例えば
図2に示されているような外観となる。
【0031】
スマートフォン5が外されて保持機構10が装置本体20に収納される際には、
図4に示されている手順とは逆の手順によって、保持機構10の収納が行われる。
【0032】
次に、保持機構10を装置本体20に突没スライド自在に支持する構造について説明する。
【0033】
図5は、保持機構を装置本体に突没スライド自在に支持する構造を示す斜視図である。この
図5には、上記の構造が、保持装置1の背面側から、保持機構10を支持した上シャーシ21を用いて示されている。また、
図6は、
図5に示されている構造から、上シャーシを除いた斜視図である。
【0034】
装置本体20の上シャーシ21は板金加工部品であり、同じく板金加工部品である下シャーシ22(
図3参照)とともに、装置本体20における金属製の筐体20aを構成している。この上シャーシ21における上面部211の内面に、保持機構10を突没スライド自在に支持する一対のスライド支持部212が設けられている。スライド支持部212は樹脂成型部品である。各スライド支持部212には、突没方向D11に延在する支持溝212aが設けられており、保持機構10の基部11において突没方向D11と交差する左右方向D15の両方の端部111それぞれが各支持溝212aに嵌め込まれている。これにより、保持機構10が突没スライド自在に支持されている。
【0035】
また、上シャーシ21の上面部211には、保持機構10の突没方向D11に延在する案内溝211aがスリット状に貫通して設けられている。そして、保持機構10の基部11には、保持機構10から突出して案内溝211aに挿入される、突没方向D11に配列された2つの突起112aを有する突部材112が設けられている。この突部材112は、矩形状の板金112bに、金属製の丸棒状の2つの突起112aが立設されたものとなっている。
【0036】
ここで、本実施例では、一対のスライド支持部212による保持機構10の支持は、左右方向D15についてある程度のガタを許容した支持となっている。そして、案内溝211aと突部材112とによってこの左右方向D15のガタが規制された状態で、保持機構10の突没方向D11に突没スライドされるように構成されている。
【0037】
尚、基部11に設けられる突部材は、本実施例のように2つの突起112aを有する突部材112に限るものではない。
図6には、この本実施例の突部材112に代わる別例の突部材512も示されている。この別例の突部材512は、突没方向D11に長尺に形成されたリブ状で金属製の突起512aが、矩形状の板金512bに立設されたものとなっている。
【0038】
また、本実施例では、上シャーシ21の上面部211における案内溝211aは、左右方向D15の中央領域211bの近傍の位置に設けられている。これは、上面部211における左右方向D15の中央領域211bが、この保持装置1がインストルメントパネルに搭載されるに当たって、インストルメントパネル側の固定構造による保持領域として利用されるためである。案内溝211aは、この保持領域としての中央領域211bを避けつつ、なるべく中央寄りに設けられている。案内溝211aを中央寄りに設けることで、左右方向D15について良好なバランスの下で突部材112、つまりは保持機構10を突没方向D11に案内することができる。
【0039】
上記の突部材の案内溝についても、本実施例のように左右方向D15の中央領域211bの近傍の位置に設けられる案内溝211aに限るものではない。例えばインストルメントパネル側の固定構造等による位置制限を受けないのであれば、左右方向D15の中央領域211bに案内溝211aを設けて、一層良好なバランスの基で案内するように構成してもよい。
【0040】
更に、本実施例では、任意の突出位置にて保持機構10をロックする突出ロック部13(ロック部)と、収納位置にて保持機構10をロックする収納ロック部14(第2ロック部)と、が保持機構10に搭載されている。
【0041】
図7は、
図5に示されている突出ロック部及び収納ロック部を、
図5中の矢印V11方向に見上げて示した斜視図である。
【0042】
突出ロック部13及び収納ロック部14は、保持機構10の基部11において、突没方向D11と交差する左右方向D15の両方の端部111のうちの一方の端部111における背面側に設けられている。また、装置本体20の上シャーシ21には、収納ロック部14が係止する係止突起213が設けられている。更に、一対のスライド支持部212のうち、突出ロック部13に対応する側のスライド支持部212には、突出ロック部13が係止する、突没方向D11に鋸歯212b-1が並んだ樹脂製のラック212bが設けられている。
【0043】
まず、収納ロック部14及び係止突起213について説明する。
【0044】
図8は、
図7に示されている収納ロック部が、上シャーシに設けられた係止突起に係止する様子を示す模式図である。
【0045】
収納ロック部14は、ロックレバー141と、収納ロック用トーションバネ142と、を備えている。ロックレバー141は、保持装置1の背面側の先端に係止フック141aが設けられた折れ棒形状の部材であり、折れ曲がり箇所の近傍で、基部11に設けられた収納ロック用回動軸113に軸支されている。収納ロック用トーションバネ142は、収納ロック用回動軸113の回りに、係止フック141aが上シャーシ21へと向かう収納ロック用付勢方向D161に、ロックレバー141を付勢している。また、係止フック141aは、突没方向D11における没入方向D112の前方側及び後方側のそれぞれに斜面が設けられている。
【0046】
上シャーシ21に設けられた係止突起213は、没入方向D112の前方側及び後方側のそれぞれに、係止フック141aにおける上記の斜面に応じた斜面が設けられている。
【0047】
保持機構10が装置本体20の内部へと没入方向D112に押し込まれると、まず、
図8のステップS21において、係止フック141aの前方側の斜面が、係止突起213の後方側の斜面に当接する。次のステップS22では、保持機構10が没入方向D112に更に押し込まれる。すると、係止フック141aの前方側の斜面が係止突起213の後方側の斜面を擦るようにして押し上げられ、ロックレバー141が収納ロック用トーションバネ142の付勢力に抗して収納ロック用付勢方向D161とは逆向きの乗越え回動方向D162に回動する。その結果、係止フック141aが係止突起213を乗り越える。
【0048】
続くステップS23では、保持機構10が没入方向D112に更に押し込まれ、係止フック141aが係止突起213を乗り越えて、収納ロック用トーションバネ142の付勢力によって収納ロック用付勢方向D161にロックレバー141が回動する。その結果、係止フック141aが係止突起213に係止してロック状態となって収納位置へと至る。
【0049】
保持機構10が装置本体20から突出方向D111に引き出される際には、保持機構10が突出方向D111に進むにつれて係止フック141aが収納ロック用トーションバネ142の付勢力に抗して乗越え回動方向D162に回動する。これにより、係止フック141aが係止突起213を乗り越えてロックが解除される。
【0050】
次に、基部11と保持部12を備える保持機構10の構造について、更に詳細に説明する。
【0051】
図4を参照して説明したように、保持機構10は、基部11の延長上に保持部12が延在して一枚板形状となった状態で装置本体20から引き出される。また、装置本体20への収納時にも、保持機構10はこのような一枚板形状となる。そして、保持機構10は、装置本体20から引き出されたのち、保持部12が起立方向D121に立てられ、その保持部12によってスマートフォン5が保持される。このような動きを可能とすべく、保持部12は基部11の一端にヒンジ結合されている。
【0052】
図9は、保持機構における基部と保持部との結合構造を示す図である。
【0053】
この
図9には、保持装置1における上シャーシ21のみ示された装置本体20から保持機構10が突出方向D111に引き出され、保持部12が立てられた状態が示されている。更に、その状態における基部11と保持部12との結合構造を、基部11の底面側から見た拡大図と、左右一対に設けられた結合構造のうちの一方の拡大図と、が示されている。
【0054】
この結合構造では、基部11における底面側を構成する基部側板金フレーム114と、保持部12における、スマートフォン5が保持される側とは反対側となる裏面側を構成する保持側板金フレーム123と、がヒンジ結合されている。左右の各結合構造では、基部側板金フレーム114の一部と、保持側板金フレーム123の一部と、を挟み付けるようにしてトルクヒンジ15が設けられている。このトルクヒンジ15により、上記のように立てられたときの保持部12の起立状態が、スマートフォン5を保持してもその重みに耐えて維持される。
【0055】
次に、
図7に示されている突出ロック部13及びラック212bについて説明する。
【0056】
本実施例では、保持機構10において基部11と保持部12とが一枚板形状となっているときには、ラック212bに対して突出ロック部13がロック解除状態にあって、保持機構10が突没方向D11に突没スライド自在となっている。そして、任意の突出位置にて保持部12が立てられるとラック212bに対して突出ロック部13がロック状態となる。
【0057】
図10は、収納位置にある保持機構を、ラックと突出ロック部とが見える方向から示す図である。この
図10では、装置本体20の上シャーシ21と保持機構10が、
図7とは上下裏返しに図示されている。また、
図11は、
図10に示されている保持機構が、一枚板形状のまま装置本体から任意の突出位置まで引き出された様子を示す図である。更に、
図12は、
図11に示されている任意の突出位置の保持機構において保持部が立てられた様子を示す図である。
【0058】
図10及び
図11の状態では、一枚板形状の保持機構10において、突出ロック部13が備える係止部131が、詳細については後述するように、上シャーシ21から離れる非係止方向D17に回動して持ち上がった状態となっている。このため、保持機構10は、スライド支持部212に設けられたラック212bと係止部131とが干渉することなく突没方向D11に突没スライド自在となっている。
【0059】
これに対し、
図12の状態では、任意の突出位置の保持機構10において基部11に対して保持部12が立てられ、係止部131が、上シャーシ21へと近づく係止方向D18に回動して下がった状態となっている。これにより、係止部131がラック212bに係止して、保持機構10が、その突出位置にてロックされる。係止部131は、ラック212bにおいて一列に配列された鋸歯212b-1のうち任意の位置の鋸歯212b-1に係止する。このように、ラック212bは、被係止部としての鋸歯212b-1が突没方向D11に複数配列された被係止体の役割を担っている。
【0060】
本実施例では、突出ロック部13によるロックのための係止部131の回動が、使用者が、保持部12を基部11に対して立てるように回動させる回動操作を受けて行われる。
【0061】
図13は、
図12に示されている保持機構から、基部の底面側を構成する基部側板金フレームを除いて、係止部を回動させるための構造を含む全体が見えるように突出ロック部を示した図である。また、
図14は、
図13に示されている突出ロック部を拡大するとともに、ラックに対して係止部が非係止位置にある状態と、係止位置にある状態と、を並べて示した図である。
図14では、図中上側に、係止部が非係止位置にある状態が示され、図中下側に、係止部が係止位置にある状態が示されている。
【0062】
本実施例では、突出ロック部13は、係止部131と、第1回動体132と、第2回動体133と、ガタ抑制用トーションバネ134と、突出ロック用トーションバネ135と、を備えている。
【0063】
第1回動体132は、保持機構10の基部11に設けられた突出ロック用第1回動軸115に軸支されている。ガタ抑制用トーションバネ134は、突出ロック用第1回動軸115の回りに、第2回動体133の側の端部を、この第2回動体133へと押し付ける方向であるガタ抑制用付勢方向D19に第1回動体132を付勢して第1回動体132のガタを抑制している。第2回動体133は、保持機構10の基部11に設けられた突出ロック用第2回動軸116に軸支されている。突出ロック用トーションバネ135は、突出ロック用第2回動軸116の回りに、係止部131が係止位置へと向かう突出ロック用付勢方向D20に、この係止部131と一緒に第2回動体133を付勢している。突出ロック用付勢方向D20は、
図12に示されている係止方向D18と同じ方向である。第1回動体132と第2回動体133は、端部どうしが接して配置されている。
【0064】
係止部131は、樹脂製の矩形板であって、突出ロック用付勢方向D20の端縁に突起131aが設けられている。このような係止部131が、第2回動体133における第1回動体132の側とは反対側の端部に固定されている。この係止部131は、ラック212bへの係止の際には、突出ロック用トーションバネ135の付勢力を受けた第2回動体133の回動により、
図14の下側に示されている係止位置へと移動する。そして、この係止位置において、係止部131の突起131aがラック212bの鋸歯212b-1に係止する。反対に、ラック212bへの係止が解除される際には、突出ロック用トーションバネ135の付勢力に抗した第2回動体133の逆向きの回動により、
図14の上側に示されている非係止位置へと移動する。非係止位置では、係止部131の突起131aがラック212bの鋸歯212b-1から離れる。
【0065】
そして、本実施例では、保持機構10において、使用者が、保持部12を基部11に対して回動させる回動操作に伴って第1回動体132及び第2回動体133が回動することで係止部131を移動させるように構成されている。
【0066】
図15は、保持部に対する回動操作に伴って第1回動体及び第2回動体が回動することで係止部を移動させる様子を示す模式図である。この
図15では、図を見易くするために、保持部12と、突出ロック部13と、ラック212bと、のみが示されている。この
図15における図中上側に、係止部131が非係止位置にある状態が示され、図中下側に、係止部131が係止位置にある状態が示されている。
【0067】
保持部12が、
図2にも示されている起立方向D121に回動されると、この回動操作に伴って、第1回動体132が矢印D23方向に回動する。この第1回動体132の回動は、係止部131を介して受けた突出ロック用トーションバネ135による突出ロック用付勢方向D20の付勢力による第2回動体133の回動によって端部が矢印D23方向に押圧される動きとなっている。第2回動体133は、この付勢力によって係止方向D18にラック212bに対する係止位置まで回動する。この係止位置において、上述したように係止部131の突起131aがラック212bの鋸歯212b-1に係止する。これにより保持機構10がロックされる。本実施例では、突出ロック用トーションバネ135が、ロックのために係止部131を付勢する付勢手段となっている。このような動きの間、第1回動体132は、ガタ抑制用トーションバネ134によるガタ抑制用付勢方向D19の付勢力によって、その端部が第2回動体133に押し付けられ続けてガタが抑制される。
【0068】
他方、保持部12が、起立方向D121とは反対向きの寝かせ方向D122に回動されると、この回動操作に伴って、第1回動体132が、突出ロック用トーションバネ135の付勢力を受けた第2回動体133の押圧に抗して、矢印D21方向に回動する。この第1回動体132の回動は、突出ロック用付勢方向D20の付勢力に抗して、第2回動体133における第1回動体132の側の端部を押し下げる動きとなっている。その結果、第2回動体133は、突出ロック用付勢方向D20の付勢力に抗して、非係止方向D22にラック212bに対する非係止位置まで回動する。この非係止位置において、上述したように係止部131の突起131aがラック212bの鋸歯212b-1から離れる。これにより保持機構10のロックが解除される。本実施例では、第1回動体132及び第2回動体133が、ロックを解除するための解除手段となっている。この間にも、第1回動体132は、ガタ抑制用付勢方向D19の付勢力によって、その端部が第2回動体133に押し付けられ続けてガタが抑制される。
【0069】
ここで、本実施例では、保持部12の回動操作に伴って第1回動体132を回動させるために、次のような構造が採用されている。
【0070】
図16は、保持部の回動操作に伴って第1回動体を回動させるための構造を示す、保持機構の断面図である。この
図16には、
図15に示されている寝かせ方向D122に保持部12が回動されてロックが解除された状態が、図中の最上段に示され、起立方向D121に保持部12が回動されてロックされた状態が、図中の最下段に示されている。そして、図中の中段には、保持部12が回動途中で、ロック状態とロック解除状態との移行途中にある状態が示されている。
【0071】
また、
図17は、
図16に示されているロック解除状態の保持部と突出ロック部との境界部を、
図16中の矢印V12方向に見た斜視図である。また、
図18は、
図16に示されているロック状態の保持部と突出ロック部との境界部を、
図16中の矢印V13方向に見た斜視図である。
【0072】
本実施例では、突出ロック部13における第1回動体132が、基部11に設けられて、基部のロック状態とロック解除状態との切換えを行う作動アームの役割を担っている。そして、保持部12には、保持部12の回動に伴って作動アームとしての第1回動体132を動かすことにより第1回動体132に上記の切換えを行わせる切換え部123aが設けられている。この切換え部123aは、保持部12を構成するシャーシである、
図9にも示されている保持側板金フレーム123の一部が延出して構成されたものである。切換え部123aは、この保持側板金フレーム123の一部が、保持部12の内部に向かって突出するように折り曲げられて形成されている。そして、その折り曲げ形状の先端で第1回動体132を動かす。
【0073】
保持部12は、その一端部12aが、基部11に、トルクヒンジ15の中心を通る回動軸151を介して軸支されている。そして、第1回動体132は、この回動軸151を超えて先端部132aが保持部12の側へと延出している。切換え部123aは、保持部12における上記の回動軸151よりも、上記の一端部12aとは反対側の他端部12b(
図9参照)の側に設けられている。この切換え部123aが、保持部12の回動に伴って第1回動体132の先端部132aを動かす。
【0074】
また、第1回動体132の先端部132aには、第1回動体132の延出方向D24と交差するとともに、基部11の突没方向D11における没入側を向いた傾斜面132bが設けられている。第1回動体132における傾斜面132bよりも更に没入側には凹部132cが設けられている。また、第1回動体132の先端部132aには、上記の傾斜面132bから突没方向D11における突出側へと傾斜面132bと交差するように延在する交差面132dが設けられている。
【0075】
図16の上段及び
図17に示されているように、保持部12が、基部11と一枚板形状となるように寝かされた状態では、切換え部123aが、その折り曲げ形状の先端で交差面132dを押圧している。この状態では、第1回動体132が、切換え部123aの押圧によって矢印D21方向に回動し、第2回動体133とともに係止部131が突出ロック用トーションバネ135の付勢力に抗して非係止方向D22にラック212bに対する非係止位置まで回動している。即ち、この状態では、基部11はロック解除状態に設定されている。
【0076】
保持部12が、回動軸151を中心に起立方向D121に回動されると、
図16の中段に示されているように、切換え部123aによる押圧位置が交差面132dから傾斜面132bへと移動する。そして、保持部12が更に起立方向D121に回動されると、
図16の最下段や
図18に示されているように、傾斜面132bから突没方向D11の没入側に切換え部123aが離隔して傾斜面132bに対する押圧を解除し、その先端は凹部132cに収まる。また、このときには、切換え部123aにおける折り曲げ形状の先端は突没方向D11の突出側を向いた状態となる。押圧が解除されたことで、第1回動体132は、突出ロック用トーションバネ135の付勢力で第2回動体133によって端部が押圧されて矢印D23方向に回動する。
図15を参照して説明したように、第1回動体132の矢印D23方向に回動により、第2回動体133とともに係止部131が係止方向D18にラック212bに対する係止位置まで回動する。即ち、この状態では、基部11はロック状態に設定されている。
【0077】
保持部12が、起立状態から逆向きに回動されると、
図16の中段に示されているように、切換え部123aの先端が凹部132cから出て傾斜面132bを押圧する。また、保持部12の回動につれて切換え部123aによる押圧位置は傾斜面132bから交差面132dへと移動する。切換え部123aによるこの押圧により第1回動体132が矢印D21方向に回動し、基部11がロック解除状態へと移行する。
【0078】
以上に説明した構造により、保持部12の回動操作に伴って第1回動体132が回動し、この回動に伴って第2回動体133と一緒に係止部131が回動して、ロック解除状態からロック状態への切替えや、ロック状態からロック解除状態への切替えが行われる。
【0079】
図19は、
図14~
図18を参照して説明したロック状態とロック解除状態との切換え動作を、模式図を用いて簡略化して示す図である。
図19の上側にはロック解除状態が示され、下側にはロック状態が示されている。
【0080】
まず、突出ロック部13におけるロック解除状態では、寝かせ方向D122(
図15参照)に寝かされた保持部12における切換え部123a(
図16、
図17、及び
図18参照)によって第1回動体132の先端部132aが押圧される。この押圧により、第1回動体132は、突出ロック用トーションバネ135の付勢力を受けた第2回動体133の押圧に抗して矢印D21方向に回動している。その結果、第2回動体133と一緒に係止部131が、突出ロック用トーションバネ135の付勢力に抗して非係止方向D22に、ラック212bから離れた非係止位置まで回動した状態となる。この間、ガタ抑制用トーションバネ134の付勢力によって、第1回動体132の端部が第2回動体133に押し付けられ続けてガタが抑制される。
【0081】
他方、突出ロック部13におけるロック状態では、起立方向D121(
図15参照)に立てられた保持部12における切換え部123aが第1回動体132の先端部132aから離隔する。この離隔により、第2回動体133と一緒に係止部131が、突出ロック用トーションバネ135の付勢力により係止方向D18に、ラック212bに係止する係止位置まで回動した状態となる。この間も、ガタ抑制用トーションバネ134の付勢力によって、第1回動体132の端部が第2回動体133に押し付けられ続けてガタが抑制される。
【0082】
ここで、本実施例では、係止部131がラック212bに係止したロック状態(係止状態)において、保持機構10が突出ロック部13ごと突没方向D11に移動可能となっている。このとき、保持機構10は、係止部131とラック212bとの干渉により抵抗力を受けつつ移動する。
【0083】
図20は、ロック状態における係止部とラックとの干渉により保持機構が抵抗力を受けつつ移動する様子を示す模式図である。
【0084】
まず、突没方向D11の突出方向D111には、保持機構10は、突出方向D111とは逆向きの第1抵抗力F11を受けつつ移動する。また、没入方向D112には、保持機構10は、没入方向D112とは逆向きの第2抵抗力F12を受けつつ移動する。何れの方向の移動においても、係止部131は、突起131aがラック212bの鋸歯212b-1を摺擦しながら突出ロック用トーションバネ135の付勢力に抗して回動しつつ鋸歯212b-1を乗り越える。保持機構10が受ける第1抵抗力F11及び第2抵抗力F12は、係止部131におけるこのような乗越えに伴うものである。
【0085】
このような構成により、保持機構10が突出位置まで引き出されてロック状態となった後、使用者の手がぶつかった場合等のように意図せずに衝撃が保持機構10に加わったときでも、保持機構10の移動によってその衝撃を吸収して低減させることができる。
【0086】
このとき、本実施例では、第1抵抗力F11及び第2抵抗力F12が、互いに略同一に設定されている。突没方向D11について互いに逆向きとなる第1抵抗力F11と第2抵抗力F12とが略同一に設定されているので、何れの向きに衝撃が加わったとしても同じように衝撃を吸収して低減させることができる。
【0087】
尚、第1抵抗力と第2抵抗力との大小関係については、本実施例のように略同一に限定されるものではなく、互いに異ならせてもよい。
図20には、第1抵抗力と第2抵抗力とが互いに異なる大きさに設定された別例も図示されている。この別例では、第2抵抗力F52の方が第1抵抗力F51よりも大きく設定されている。これにより、例えば使用者がスマートフォン5の表示画面に触れて操作する際の力等ではロック状態の位置からなるべく没入することがないように構成する等といった、スマートフォン5の操作性を意識した構成とすることができる。上記の構成とすることでさらには、保持部12を立ち上げた後であっても、突出方向にはロック位置の微調整が可能となり、ユーザの利便性を向上できる。
【0088】
ここで、本実施例では、第1抵抗力F11及び第2抵抗力F12が、まず、ラック212bの鋸歯212b-1における、突没方向D11の突出側の傾斜角度θ11と、没入側の傾斜角度θ12と、を含む設定条件に基づいて設定されている。また、係止部131の突起131aの先端には、突没方向D11の没入側に傾斜面131a-1が形成されている。この傾斜面131a-1の傾斜角度θ13は、第2抵抗力F12の設定条件に利用される。
【0089】
また、係止部131は、ラック212bに対して突出ロック用第2回動軸116を中心とした回動ルート131bに沿って移動する。そして、ラック212bには、所定の進入角度θ14で移動して係止する。本実施例では、第1抵抗力F11及び第2抵抗力F12の設定には、係止部131のラック212bに対する進入角度θ14も設定条件に利用されている。この他にも、突出ロック用トーションバネ135の付勢力等も、第1抵抗力F11及び第2抵抗力F12の設定条件に利用されている。
【0090】
以上に説明した本実施例の保持装置1によれば、突出ロック部13において、保持部12対する回動操作を係止部131に伝える機構が、第1回動体132や第2回動体133といった複数の回動要素で構成されている。このため、各回動要素については、その長さを抑えて回動端の移動距離を抑えることができる。
【0091】
ここで、本実施例では、第1回動体132や第2回動体133の回動方向を保持機構10の厚み方向と一致するように突出ロック部13が保持機構10に搭載されている。このため、保持機構10は、この回動端の移動距離を収めるのに十分な厚みに形成されている。
【0092】
図21は、
図1~
図20に示されている保持装置と比較するための比較例を示す図である。この
図21には、図中上側に、比較例の保持装置6の保持機構60におけるロック解除状態の突出ロック部63が示され、図中下側にロック状態の突出ロック部63が示されている。この比較例の突出ロック部63は、1本の回動体631が、基部61に設けられた突出ロック用回動軸616に軸支されている。このため、突出ロック用回動軸616から長く延びた回動体631の回動端の移動距離A61が大きくなり、基部61(即ち、保持機構60)は、この大きな回動端の移動距離A61を収めるのに十分な厚みが必要となる。
【0093】
この比較例に対し、本実施例に係る保持装置1によれば、上記のように回動要素としての第1回動体132や第2回動体133の回動端の移動距離が抑えられる。これにより、保持機構10における特に基部11の厚みも抑えることができ、その結果、設置場所における占有スペースを抑えるべく保持装置1を小型化することができる。
【0094】
また、本実施例では、基部11の厚みを抑えることで、以下に説明するように、保持装置1の外観上の効果を得ることもできる。
【0095】
図22は、基部の厚みを抑えることで得られる保持装置の外観上の効果について説明するために示す保持機構の側面図である。この
図22には、保持部12が寝かされて基部11とともに一枚板形状となった保持機構10が、装置本体20から、突出方向D111に引き出された状態が示されている。
【0096】
この
図22に示されているように、本実施例では、基部11の厚みを抑えることで、その厚みt11が、保持部12におけるチャッキング部121以外の本体板部124の厚みt12と略同厚に設定されている。
【0097】
図23は、基部の厚みを抑えることで得られる保持装置の外観上の効果について説明するために示す、保持装置を正面側から見た斜視図である。この
図23では、図中上側に、保持機構10が装置本体20に収納された状態が示され、図中下側に、保持機構10が装置本体20から引き出され保持部12が立てられた状態が示されている。尚、この
図23では、
図1や
図2では示されている、装置本体20の正面側にフロントパネル部23を囲むように設けられたフランジが除かれている。
【0098】
この
図23に示されているように、フロントパネル部23には、収納された状態の保持機構10、及び、引き出された状態の保持機構10、の双方と干渉しないように、切欠き231が設けられている。収納された状態では、保持部12における本体板部124の先端部が切欠き231に収まり、引き出された状態では、基部11が切欠き231を通る。
【0099】
このとき、
図21に示す比較例では、回動体631の回動端の移動距離A61を収めるべく基部61を厚くする必要がある。その結果、フロントパネル部23に、厚くした基部61と干渉しないように深い切欠きを設ける必用が生じる。他方で、不図示の保持部については、本実施例と同等な形状であるとすると、収納時に、基部61よりも薄い保持部の本体板部と、切欠きの内縁との間に隙間が開いてしまう。このような隙間は外観上好ましいものではない。
【0100】
一方で、本実施例では、上述したように、基部11の厚みt11が、保持部12の本体板部124の厚みt12と略同厚に設定されているので、上記の比較例において生じるような隙間が抑えられ、良好な外観を得ることができる。
【0101】
ここで、本実施例の保持装置1では、上記の突出ロック部13が、係止部131を係止位置に向かって付勢する突出ロック用トーションバネ135を、備えている。これにより、スマートフォン5を保持させて使用する使用時等では、係止部131が常時付勢されて装置本体20に係止するので、安定した状態で使用することができる。
【0102】
また、本実施例では、第1回動体132は、上記の付勢力に抗して係止部131を非係止位置に移動させる際には、第2回動体133に力を及ぼして回動させるものである。他方、係止部131が係止位置に移動する際には、第2回動体133の回動を妨げないように回動することとなっている。これにより、係止部131の係止位置への移動については付勢力が利用されるので、第1回動体132や第2回動体133による係止部131への力の伝達は、係止部131を非係止位置へと移動させることのみが考慮されたものとなっている。これにより、力の伝達に関する機構構成について簡単化を図ることができるので、保持装置1の製造や組立てのコストや手間を軽減することができる。
【0103】
また、本実施例では、装置本体20には、保持機構10の突没方向D11に延在するラック212bが設けられ、係止部131が、鋸歯212b-1が直線状に並んだラック212bに係止することとなっている。本実施例では、このラック212bの長さ方向が保持機構10の突没方向D11と一致するように構成されて、保持装置1における係止部131の係止機構についても収納スペースが抑えられている。これにより、保持装置1の一層小型化が図られている。
【0104】
また、本実施形例では、装置本体20に収納位置まで没した保持機構10をロックする収納ロック部14を、さらに備えている。これにより、収納位置に保持機構10を安定的に収納することができる。
【0105】
また、本実施例では、保持機構10が、基部11と、基部11に軸支された保持部12と、を備えている。そして、保持部12を基部11に対して回動させる回動操作に伴って第1回動体132及び第2回動体133が回動することで係止部131を移動させることとなっている。これにより、保持部12の回動という、使用者がスマートフォン5を保持させるための操作が、係止部131の移動によるロック及びロック解除のための操作として利用されている。このため、ロック及びロック解除のために、例えば操作ボタン等を別に設ける場合等と比較して部品点数の抑制等による製造コストの低減を図ることができる。
【0106】
尚、本発明は、以上に説明した実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0107】
例えば、上述した実施例では、本発明にいう保持装置の一例として、インストルメントパネルに搭載されて使用される車載機器としての保持装置1が例示されている。しかしながら、本発明にいう保持装置は、車載機器に限るものではなく、卓上に置かれて使用される装置等であってもよい。また、車載機器であっても、インストルメントパネルに搭載されて使用されるものに限るものではなく、搭乗者が操作可能な箇所に置かれて使用されるもの等であってもよい。
【0108】
また、上述した実施例では、本発明にいう保持装置の一例として、保持対象を携帯機器の一例であるスマートフォンとした保持装置1が例示されている。しかしながら、本発明にいう保持装置はこれに限るものではなく、被保持物を保持するものであれば、携帯機器以外の例えば紙の地図や冊子等を保持対象とした装置であってもよい。また、携帯機器についても、本実施例のようにスマートフォンに限るものでもなく、例えばタブレット端末やゲーム機器等であってもよい。
【0109】
また、上述した実施例では、本発明にいうロック部の一例として、第1回動体132と、この第1回動体132から直接的に力を受ける第2回動体133と、の2つの回動体を備えた突出ロック部13が例示されている。しかしながら、本発明にいうロック部は、これに限るものではなく、第1回動体と第2回動体との間に、他の回動体や、回動体以外の機構部材を介在させたものであってもよい。この場合には、第2回動体は、第1回動体との間の介在物を介して間接的に力を受けることとなる。
【0110】
また、上述した実施例では、本発明にいうロック部の一例として、係止部131を係止位置に向かって付勢する突出ロック用トーションバネ135を備えた突出ロック部13が例示されている。しかしながら、本発明にいうロック部はこれに限るものではなく、例えば係止部を、係止位置から離す方向に付勢する付勢部材を備えたものであってもよい。
【0111】
また、上述した実施例では、本発明にいう所定操作の一例として、保持機構10における保持部12を基部11に対して回動させる回動操作が例示されている。しかしながら、本発明にいう所定操作はこれに限るものではなく、例えばボタン操作やレバー操作等といった、保持部の回動操作とは別の操作であってもよい。
【0112】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法等は、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。即ち、本発明は、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。上記に開示した形状、材質等を限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものである。従って、これらの記載は本発明を限定したものではないから、それらの形状、材質等の限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。