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特開2023-164507電子ミラーの映像合成装置及び映像合成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164507
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】電子ミラーの映像合成装置及び映像合成方法
(51)【国際特許分類】
   H04N 7/18 20060101AFI20231102BHJP
   H04N 5/77 20060101ALI20231102BHJP
   H04N 5/92 20060101ALI20231102BHJP
   G06T 3/00 20060101ALI20231102BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H04N7/18 J
H04N7/18 V
H04N5/77
H04N5/92
G06T3/00 780
G06T1/00 330Z
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023143801
(22)【出願日】2023-09-05
(62)【分割の表示】P 2022014222の分割
【原出願日】2017-01-20
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堤竹 秀行
(57)【要約】
【課題】本実施形態は、視野の一部を遮断する遮断物が存在したとしても、遮断物の映像を半透明化して、有効映像(補足映像)に置き換える処理を行う電子ミラーを提供する。
【解決手段】一実施形態は、車両のサイドカメラの死角となる部分の映像を半透明化し、この半透明化部分に、リアカメラの映像の上部領域と下部領域を互いに異なる仮想平面の映像にそれぞれ射影変換して合成する映像合成装置である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されて車両の後方の映像を表示する電子ミラーの映像合成装置において、
第1位置から、第1視野により前記車両の後方となる第1風景の第1映像を取得するリアカメラと、
前記第1位置よりも前記車両の前方となる第2位置から、前記第1風景の方向に向かって自車の側部である風景遮断物を一部に配置させた第2視野により、第2映像を取得するサイドカメラと、
前記第2映像に含まれる前記風景遮断物の映像を半透明化映像にする半透明化処理部と、
前記第2映像において前記半透明化映像の輪郭にラインを付加することができるエッジ処理部と、
前記第1映像の一部であって、前記サイドカメラの視点位置に射影変換されかつ前記第2映像の前記半透明化映像の部分に対応した射影変換映像を得る射影変換部と、
前記射影変換映像を前記第2映像の前記半透明化映像の部分に合成する合成部と、を備え、
前記射影変換映像は、
第1の前記射影変換部により、前記リアカメラの視点の映像が、前記車両の後方の遠方平面位置に基づいて前記サイドカメラの視点の映像に射影変換された第1射影変換映像の一部と、
第2の前記射影変換部により、前記リアカメラの視点の映像が、前記遠方平面位置よりも前記サイドカメラの撮影位置に近づいた地面位置に基づいて前記サイドカメラの視点の映像に射影変換された第2射影変換映像の一部を含み、
前記リアカメラ及び前記サイドカメラの水平ライン方向が左右方向であり、垂直ライン方向が上下方向とする場合、
前記半透明化映像の部分に対応した前記射影変換映像の上側領域が前記第1射影変換映像の前記一部であり、
前記半透明化映像の部分に対応した前記射影変換映像の下側領域が前記第2射影変換映像の前記一部であり、
さらに前記第1射影変換又は前記第2射影変換では、前記遠方平面位置及び前記地面位置が、前記車両の走行速度に応じた設定に応じて調整され、
前記合成部を含む映像処理装置には、記録再生装置が接続されており、前記車両の特別に設定された走行スピード、振動、音などに応答して前記合成部における映像信号が当該記録再生装置に記録される、
電子ミラーの映像合成装置。
【請求項2】
さらに前記リアカメラ及び前記サイドカメラの各レンズ前にヒータをさらに設けており、また前記ラインの太さ、色、濃度の何れかを変更する手段を備える、請求項1記載の電子ミラーの映像合成装置。
【請求項3】
車両に搭載されて車両の後方の映像を表示する電子ミラーにおいて、第1位置から、第1視野により前記車両の後方となる第1風景の第1映像を取得するリアカメラと、前記第1位置よりも前記車両の前方となる第2位置から、前記第1風景の方向に向かって自車の側部である風景遮断物を一部に配置させた第2視野により、第2映像を取得するサイドカメラと、前記リアカメラ及び前記サイドカメラからの前記第1映像及び前記第2映像を処理する映像処理装置を用いる電子ミラーの映像合成方法において、
前記第2映像に含まれる前記風景遮断物の映像を半透明化映像にし、
前記第2映像において前記半透明化映像の輪郭にラインを付加し、
前記第1映像の一部を、前記サイドカメラの視点位置に射影変換して、射影変換映像を生成し、この射影変換映像を前記第2映像の前記半透明化映像の部分に合成する方法であり、
前記射影変換映像としては、
第1射影変換部により、前記リアカメラの視点の映像を前記車両の後方の遠方平面位置に基づいて前記サイドカメラの視点の映像に射影変換した第1射影変換映像の一部を有し、
また第2射影変換部により、前記リアカメラの視点の映像を前記遠方平面位置よりも前記サイドカメラの撮影位置に近づいた地面位置に基づいて前記サイドカメラの視点の映像に射影変換した第2射影変換映像の一部を有し、
前記リアカメラ及び前記サイドカメラの水平ライン方向が左右方向であり、垂直ライン方向が上下方向とする場合、
前記半透明化映像の部分に対応した前記射影変換映像の上側領域が前記第1射影変換映像の前記一部であり、
前記半透明化映像の部分に対応した前記射影変換映像の下側領域が前記第2射影変換映像の前記一部であり、
さらに前記第1射影変換又は前記第2射影変換では、前記遠方平面位置及び前記地面位置が、前記車両の走行速度に応じた設定に応じて調整し、
記録再生装置を設け、前記車両の特別に設定された走行スピード、振動、音などに応答して前記合成に係る映像信号が当該記録再生装置に記録されるようにした、
電子ミラーの映像合成方法。
【請求項4】
さらに前記リアカメラ及び前記サイドカメラの各レンズ前をヒータで温めることを可能とし、また前記ラインの太さ、色、濃度の何れかを変更可能としている、請求項3記載の電子ミラーの映像合成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実施形態は、電子ミラーの映像合成装置及び映像合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車に複数のカメラを搭載し、従来のバックミラー、サイドミラーの像の代わりに、前記カメラからの映像を表示器に表示することができる、いわゆる電子ミラーがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4883977号公報
【特許文献2】特許第5500877号公報
【特許文献3】特開2011-213186号公報
【特許文献4】特開2014-197818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電子ミラーシステムにおいては、複数のカメラはそれぞれ1台の車に対する取り付け位置が異なる。そのために、複数のカメラがそれぞれ車の後方の風景を撮影した場合、一方のカメラの視野によれば撮影可能な有効領域であっても、他方のカメラの視野によれば撮影不可能な死角領域(無効領域)がある。
【0005】
上記したように、電子ミラーにおいては、複数のカメラがそれぞれ車の後方の風景を撮影した場合、カメラによって有効領域の映像、無効領域の映像が生じる。
【0006】
そこで、本実施形態では、視野の一部を遮断する遮断物が存在したとしても、遮断物の映像を半透明化して、有効映像(補足映像)に置き換え、自然な合成映像を得ることができる、電子ミラーの映像合成装置及び映像合成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によれば、車両に搭載されて車両の後方の映像を表示する電子ミラーの映像合成装置において、
第1位置から、第1視野により前記車両の後方となる第1風景の第1映像を取得するリアカメラと、
前記第1位置よりも前記車両の前方となる第2位置から、前記第1風景の方向に向かって自車の側部である風景遮断物を一部に配置させた第2視野により、第2映像を取得するサイドカメラと、
前記第2映像に含まれる前記風景遮断物の映像を半透明化映像にする半透明化処理部と、
前記第2映像において前記半透明化映像の輪郭にラインを付加することができるエッジ処理部と、
前記第1映像の一部であって、前記サイドカメラの視点位置に射影変換されかつ前記第2映像の前記半透明化映像の部分に対応した射影変換映像を得る射影変換部と、
前記射影変換映像を前記第2映像の前記半透明化映像の部分に合成する合成部と、を備え、
前記射影変換映像は、
第1の前記射影変換部により、前記リアカメラの視点の映像が、前記車両の後方の遠方平面位置に基づいて前記サイドカメラの視点の映像に射影変換された第1射影変換映像の一部と、
第2の前記射影変換部により、前記リアカメラの視点の映像が、前記遠方平面位置よりも前記サイドカメラの撮影位置に近づいた地面位置に基づいて前記サイドカメラの視点の映像に射影変換された第2射影変換映像の一部を含み、
前記リアカメラ及び前記サイドカメラの水平ライン方向が左右方向であり、垂直ライン方向が上下方向とする場合、
前記半透明化映像の部分に対応した前記射影変換映像の上側領域が前記第1射影変換映像の前記一部であり、
前記半透明化映像の部分に対応した前記射影変換映像の下側領域が前記第2射影変換映像の前記一部であり、
さらに前記第1射影変換又は前記第2射影変換では、前記遠方平面位置及び前記地面位置が、前記車両の走行速度に応じた設定に応じて調整され、
前記合成部を含む映像処理装置には、記録再生装置が接続されており、前記車両の特別に設定された走行スピード、振動、音などに応答して前記合成部における映像信号が当該記録再生装置に記録される、電子ミラーの映像合成装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、車を示す平面図である。
図2図2は、図1の車を示す側面図である。
図3図3は、一実施形態が適用された電子ミラーシステムのブロック構成図である。
図4図4は、図3の電子ミラーシステムの基本的な一動作例を説明するために示したイメージ図である。
図5図5は、図3の電子ミラーシステムの射影変換を伴う一動作例を説明するために示したイメージ図である。
図6図6は、射影変換のための基本的原理を説明するために示した説明図である。
図7図7は、射影変換のための行列式の例を示す説明図である。
図8図8は、車則面の映像の輝度平均化処理を説明するために示した説明図である。
図9図9は、完全死角領域に合成される画像を生成する他の例を示す説明図である。
図10図10は、完全死角領域に疑似画像が合成された例を示す説明図である。
図11図11は、完全死角領域に疑似画像が合成された他の例を示す説明図である。
図12図12は、道路を走行する車が速度に応じて車から基準平面位置(遠方平面位置と、地面位置)までの距離が変化する例を示す説明図である。
図13図13は、車から基準(仮想)平面位置までの距離が延長されて遠方平面位置となった場合の電子ミラーの映像例を示す図である。
図14図14は、車から基準(仮想)平面位置までの距離が短縮されて近距離平面位置となった場合の電子ミラーの映像例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。図1は車100を平面的に示している。図2図1の車を側面から示している。
【0010】
車100は、後方のトランクルームの上、或はナンバープレートの近くに第1カメラ101が配置されて、後方の風景を撮影可能である。また車100は、サイドミラーの場所に、それぞれ第2カメラ102R,第3カメラ102Lが配置されて、これらも後方の風景を撮影可能である。
【0011】
上記したように、複数のカメラ101、102R、102Lはそれぞれ1台の車100に対する取り付け位置が異なる。よって複数のカメラがそれぞれ車の後方の風景を撮影した場合、一方のカメラ101の視野W1によれば撮影可能な有効領域であっても、他方のカメラ102Rや102Lの視野(例えばW2)によれば撮影不可能な死角領域(無効領域=視野W3)がある。
【0012】
つまり、本電子ミラーの映像合成装置の一実施形態によると、第1カメラ101は、第1位置(例えばトランクルーム位置)から、第1視野W1により第1風景の第1映像(リア映像)を取得する。第2カメラ102Rは、前記第1位置(トランクルーム位置)とは異なる第2位置(運転席の横方向のサイド位置、サイドドア位置)から、前記第1風景の方向に風景遮断物(自車側面)を一部に配置させた第2視野W2により、第2映像を取得する。このために第2映像の一部には、自車側面の映像が含まれている。
【0013】
ここで後述する映像処理装置200は、第2映像の一部に第1映像の一部を補足映像として接続する。この場合、第2映像に含まれる風景遮断物(自車側部)の映像を半透明化映像に処理し、この半透明化映像に補足映像を重ねて表示する。また、半透明化映像の輪郭(つまり車のサイドの輪郭)の部分で第2映像と補足映像の境界を設けて、補足映像を第2映像に接続して第3映像を得る。
【0014】
上記した半透明化映像の領域に重ね表示される補足映像は、遠方平面位置に基づいて射影変換されたもと、前記遠方平面よりも撮影位置に近づいた地面位置に基づいて射影変換されたものが接続(或いは合成、或は繋ぎ合わせ)された映像である。
【0015】
さらに第1及び第2カメラの水平ライン方向が左右方向であり、垂直ライン方向が上下方向とする場合、補足映像の上側領域が遠方平面位置に基づいて射影変換された映像であり、補足映像の下側領域が前記地面位置に基づいて射影変換された映像である。
【0016】
さらにまた、風景遮断物の映像は、複数フレームの輝度の平均化処理がなされて半透明化される。これにより、車のドア(ミラー効果を有する)に、隣を並走する車や、すれ違う車、ランプの光などが映り、画像化されるのを防止できる。
【0017】
また補足映像の下側領域には、周囲映像の色から近似された色の塗り込み映像が存在する。これにより、車の下側の部分(道路)が推定により表示され、画面全体としての安定感が得られる。
【0018】
図3は、上記した処理を行うための電気的処理ブロックを示している。図3において、101、102R、102Lは、それぞれ第1カメラ(リアカメラと称してもよい)、第2カメラ102R(右サイドカメラと称してもよい)、第3カメラ10L(左サイドカメラと称してもよい)であり、各カメラ101、102R、102Lの撮影信号は、映像処理装置200に入力される。
【0019】
即ち、第1カメラ101の撮影信号は、第1映像処理部221の映像切出し部221aに入力する。第2カメラ102R(右サイドカメラと称してもよい)の撮影信号は、第2映像処理部222の映像切出し部222aに入力し、第3カメラ102L(左サイドカメラと称してもよい)の撮影信号は、第3映像処理部223の映像切出し部223aに入力する。
【0020】
上記の第1カメラ101、第2カメラ102R、第3カメラ102Lは、使用する映像領域よりも広い領域を含む広角領域映像を取得している。それぞれの切出し部221a、222a、222bは、それぞれ広角領域映像から、使用する使用映像領域を切出している。この切出し位置及び切出し領域は、車の速度、車の振動、ハンドル操作方向に応じて可変される場合もある。またユーザ操作により、その切出し位置及び又は切出し領域は、その通常設定位置を可変可能である。これは、映像の監視実験やテストを行う場合にも有効である。
【0021】
第1映像処理部221において、映像切出し部221aが切出した映像信号は、射影変換部221b、221cにおいて、射影変換された後、合成部230に入力される。射影変換部221b、221cは、それぞれ射影のための基準位置が異なるが、第1カメラ101の視点位置を、第2カメラ102の視点位置に変換する。
【0022】
即ち、射影変換部221b、221cは、遠方平面位置に基づいて射影変換された映像と、前記遠方平面よりも撮影位置に近づいた地面位置に基づいて射影変換された映像を得ることができ、この映像を補足映像として合成部230に出力する。
【0023】
一方、第2映像処理部222において、映像切出し部222aが切出した映像信号は、射影変換部222bにおいて射影変換される。なおこの射影変換部222bの処理は、省略されることもある。また第3映像処理部223においても、映像切出し部223aが切出した映像信号は、射影変換部223bにおいて射影変換される。この射影変換部223bの処理も、省略されることもある。射影変換部222b、223bで変換される変換程度は、先の射影変換部221b、221cで変換される変換程度よりも小さいことは明らかである。
【0024】
射影変換は、平面射影変換技術或いはホモグラフィ変換技術とも称され、ある視点(第1視点)から見た仮想平面の平面図形を、別の視点(第2視点)からみた仮想平面の平面図形に変換する技術である。
【0025】
上記した第2映像処理部222が取得した映像信号には、自車側面の映像(右側ドアの側面を後方向に向かって撮影した映像、つまり風景遮断物映像)が含まれる。同様に、第3映像処理部223が取得した映像信号には、自車側面の映像(左側ドアの側面を後方向に向かって撮影した映像、つまり風景遮断物映像)が含まれる。
【0026】
車に対する第2カメラ(サイドカメラ)102Rの取り付け位置は、決まっているので、第2映像内において風景遮断物映像の領域が、画角のどの領域に存在するかは予めわかっている。同様に、車に対する第3カメラ(サイドカメラ)102Lの取り付け位置は、決まっているので、第3映像内において風景遮断物映像の領域が、画角のどの領域に存在するかも予めわかっている。
【0027】
そこで、第2映像の一部に含まれる風景遮断物映像(自車右側面の映像)は、輝度平均化処理部222cにおいて、輝度の平均化処理が行われる。この平均化の理由は、車のドア(ミラー効果を有する)に、隣を並走する車や、すれ違う車、ランプの光などが映り、画像化されるのを防止するためである。同様に、第3映像の一部に含まれる風景遮断物映像(自車左側面の映像)は、輝度平均化処理部223cにおいて、輝度の平均化処理が行われる。
【0028】
次に、輝度平均化された第2映像の一部に含まれる風景遮断物映像(自車右側面の映像)は、半透明化処理部222dにおいて、半透明化処理される。また、輝度平均化された第3映像の一部に含まれる風景遮断物映像(自車左側面の映像)も、半透明化処理部223dにおいて、半透明化処理される。半透明化の程度は、電子コントローラ250からの情報で任意に制御可能であってもよい。
【0029】
さらに、半透明化処理部222dから出力された第2映像は、エッジ処理部222eに入力され、風景遮断物映像のエッジ(輪郭)処理を受けることができる。同様に半透明化処理部223eから出力された第3映像も、エッジ処理部223eに入力され、風景遮断物映像のエッジ(輪郭)処理を受けることができる。エッジ処理は、例えば、輪郭にラインを付ける、或は点線を付ける、などの処理(エッジラインの付加処理)である。
【0030】
なおエッジラインは、車の運転状況及び又は外部環境に応じて、その色、太さ、濃さなどの要素が種々変更される場合があるし、またユーザ操作により、これらの要素が調整される場合がある。
【0031】
例えば、車が後退運転されているときは、エッジをクリアにし、障害物と車側面或いは車進行方向との間隔を分かり易くすることができる。
【0032】
第1映像処理部221において上記処理を受けた第1映像信号と、第2映像処理部222において上記処理を受けた第2映像信号と、第3映像処理部223において上記処理を受けた第3映像信号とは、合成部230において合成される。
【0033】
電子コントローラ250は、車の速度情報J1、各種マニュアル操作情報J2、右折・左折・直進・後退の状態を示す方向情報J3、時間帯情報J4、ライト点灯情報、外気温度情報、室内温度情報、その他を把握している。
【0034】
速度情報J1は、例えば射影変換部221b、221c、222b、223bにおいて、例えば、カメラの視点位置を変更するための基準となる基準平面(基準画像)とカメラとの間隔を自動調整するための調整情報として利用することができる。
【0035】
マニュアル操作情報J2は、例えば、画像の切出しエリアの基準位置を調整するための情報、射影変換を行うための基準平面を初期設定或いは調整するための情報などがある。
【0036】
また、方向情報J3は、例えば、映像の切出しエリアの拡張処理、拡大処理、切出しエリアの位置修正処理、半透明化処理、エッジの太さ、色、及び濃度などの変更処理、などを行うときの制御情報として利用可能である。例えば、車が前進しているときは、半透明化の透明度が高く(薄く)する。また車が左旋回、或は右旋回しているときはエッジが太く濃くなり、車の横に位置する障害物との距離をドライバーが認識しやすくする。
【0037】
また時間帯情報J4は、カメラの感度調整を行う場合に利用可能である。周囲が暗いときはカメラの撮影信号の検出感度を高くし、周囲が明るいときは、該検出感度を抑えるなどすることができる。
【0038】
さらにまたセンサ情報としては、各種の情報がある。外の湿度情報、外気温度情報などもある。これらのセンサ情報を利用することにより、よりカメラから適切な映像を得ることができる。例えば、外が雨であれば、カメラの横に設けた圧縮空気クリーナでレンズ周りの水やほこりを除去してもよい。このために、カメラのレンズ前に圧縮空気を吹き付ける吹出し口があってもよい。さらには、雪などがカメラの前方に付着すると氷結することがあるので、カメラのレンズ前にヒータをさらに設けてもよい。
【0039】
本システムでは、表示器226は、車の室内であって、ドライバーが見やすい位置に配置される。なお後部座席の前や助手席の前にドライバー以外の人が見れるように表示器が増設されていてもよい。
【0040】
また図3の映像処理装置200の内部或いはその一部は、ソフトウエアにより実現されることが可能である。また前記内部或いはその一部は、記憶媒体に記録されたソフトウエアにより動作する処理装置であってもよい。さらには、当該ソフトウエアは、外部から通信手段により伝送されるものであり、前記内部或いはその一部は、該ソフトウエアを受信して実行する装置であってもよい。また上記映像処理装置200には、記録再生装置が接続されていてもよく、例えば特別に設定された走行スピード、振動、音などに応答して映像信号が記録再生装置に記録されてもよい。
【0041】
図4は、映像合成の基本的処理を説明するための説明図である。リア映像410は、リアカメラ101が撮像した映像から切出されたリア映像である。サイド映像420は、右サイドカメラ102Rが撮像した映像から切り出されたサイド映像である。
【0042】
図4は、リア映像410と右サイドカメラ102Rからのサイド映像420を示しているが、実際の装置は、左側の左サイドカメラ102Lからのサイド映像も使用される。ここでは、説明を簡単化するために、リア映像410とサイド映像420との関係で、実施形態を説明する。
【0043】
上記のサイド映像420の一部(左側)には、車の側面の映像A0(自車側面映像或いは風景遮断物の映像と称してもよい)が映り込んでいる。この移り込み領域(映像A0の領域)は、右サイドカメラ102Rにとっては、車の後方風景に対する死角領域である。
【0044】
そこで、この映像A0の領域を透かし処理(半透明化処理部222dによる半透明化処理)して、リア映像410の一部の映像(映像A0に対応する領域の映像)を重ね、合成部230にて合成する。
【0045】
すると合成映像430に示すように、半透明化された風景遮断物映像に対して、リア映像の一部が重ねて表示される。合成映像430において、エッジライン435は、半透明化された映像A0と、右サイドカメラ102Rが撮影した映像との境界(繋ぎ位置、接続位置、輪郭などと称してもよい)を表している。このエッジライン435は、エッジ処理部222eにおいて、付加される。
【0046】
このエッジライン435は、前進運転或いは後退運転するときに、自車の車幅をドライバーが認識するときに有用である。このエッジライン435は、例えば屋外が暗いとき、明るいときなど周囲状況に応じて、そのライン幅、ライン色、輝度(濃さ)などが可変されてもよい。これにより、ドライバーの注意を促すことも可能となる。
【0047】
さらに合成映像430において、半透明化された映像A0の上部領域A1と下部領域A2との間に非表示ライン432が示されている。このライン432は、映像として表示されるものではなく、説明の都合で示している。
【0048】
尚、図4或いは後で説明する図面においてもそうであるが、多数のひし形の図形が示されているが、この図形は実際の映像には表示されない。このひし形の図形は、視点変換が行われた結果、四角形が、ひし形に変形したことを理解させるために示したものである。実際の映像には、この多数のひし形は、表示されない。
【0049】
先の上部領域A1と下部領域A2の各映像は、リアカメラ101の視点によるリア映像410が、右サイドカメラ102Rの視点の映像に視点変換された映像である。この場合、上部領域A1の変換基準位置は、遠方平面位置412であり、下部領域A2の変換基準位置は、遠方平面位置412よりも、カメラ位置に近づいた地面位置413である。この遠方平面位置412と地面位置413は、右サイドカメラ102Rのサイド映像420では、図示の422、423に対応する。
【0050】
図5は、リアカメラ101の視点によるリア映像410が、先の遠方平面位置に基づいて右サイドカメラ102Rの視点の映像に射影変換された第1射影変換映像410Hを示している(図4の射影変換部221bにおいて変換処理される)。またリアカメラ101の視点によるリア映像410が、先の遠方平面位置に基づいて右サイドカメラ102Rの視点の映像に射影変換された第2射影変換映像420Hを示している(図3の射影変換部221cにおいて変換処理される)。
【0051】
なお上記の遠方平面位置、地面平面位置は、運転者が、運転する前にマニュアルにより、位置調整してもよい。また後述するように、予め設定された位置に車の速度に応じて自動的に変化する方式が採用されてもよい。
【0052】
上記第1射影変換映像410Hの一部(P1を含む周辺)及び第2射影変換映像420Hの一部(P2を含む周辺)が切り取られて、それぞれ半透明化された映像A0の上部領域A1と下部領域A2とに合成される。この場合、射影変換映像410Hと射影変換映像420Hから上部領域A1と下部領域A2が切り取られる場合、各領域の映像及び、これらの映像と第2カメラのサイド映像に映像が自然に繋がるように上部領域A1と下部領域A2が切り取られる。
【0053】
さらに右サイドカメラ102Rのサイド映像420において風景遮断物の映像の領域には、リアカメラ101の死角領域も存在する。つまり両カメラの死角領域が存在する。
【0054】
この死角領域は、完全死角領域433である。この領域は、車の後部の下の領域(通常は道路面)に相当する。図5では、合成映像420の左下に示されている。この完全死角領域433は、映像が無いために、何らかの処理を行わない場合、真っ暗、或は真っ白の映像となる可能性がある。
【0055】
そこで、本システムでは、この領域に対しては、例えば、完全死角領域433の周囲の映像の色或いは類似する色の映像データを充填して補間している。
【0056】
つまり本システムは、リアカメラ101、右サイドカメラ102R、左サイドカメラ102Lが撮像した映像をできるだけ有効に活用している。
【0057】
図6は、視点を変換するときの考え方を示している。例えば、視点C1が第1カメラの視点であり、視点C2が第2カメラの視点であるとする。まず、視点C1の基準平面P1の画素A1―D1を、仮想平面Pの画素A-Dに一旦置き換える。次に、仮想平面Pの画素A-Dを、視点C2の第2カメラの仮想平面P2の画素A2-D2に変換する。
【0058】
ここで、仮想平面P1,P2が同じ位置(先の地面位置)であれば、第1カメラで撮影した地面の映像を、第2カメラで撮像した映像の如く変換することができる。
【0059】
例えば、平面P上に、ある4つの点A-Dがあるとき、これらの各点は、視点C1から撮影した映像では仮想平面P1上のA1-D1に、視点C2から撮影した映像では仮想平面C2上のA2ーD2にそれぞれ対応する。
【0060】
ここで、A1-D1とA2-D2の対応関係が決定されれば、第1カメラで撮影した映像を第2カメラで撮影した映像の如く変換することができる。この対応関係は射影変換(またはホモグラフィ変換)と呼ばれ、行列で表現することができる。
【0061】
図7はその変換行列Hを示したものである。いま、仮想平面P1上でのA1-D1の座標を(xi, yi, 1)としたとき、この変換行列Hにより仮想平面P2での座標(ui, vi, 1)に変換されることを示している。ここで、iは0, 1, 2, 3を意味し、座標は2次元平面に1成分を加えた3次元の同次座標系で表現している。
【0062】
すなわち、A1-D1とA2-D2の各座標はそれぞれ以下のように対応する。
【0063】
A1: (x0, y0, 1)、B1: (x1, y1, 1)、C1: (x2, y2, 1)、D1: (x3, y3, 1)A2: (u0, v0, 1)、B2: (u1, v1, 1)、C2: (u2, v2, 1)D2: (u3, v3, 1),
図7において、(xi, yi, 1)と(ui, vi, 1)が既知であれば、行列成分h0-h7を求めることができる。
【0064】
変換行列Hの成分は8であるので、4つの点の対応関係がわかればh0-h7が求まることになる。i=0,1,2,3に対して式を展開し、h0-h7を括りだしたものを図7(図7の下の方の行列式)に示す。この式によりh0-h7を求めることができる。
【0065】
この変換行列Hにより、視点c1からみた仮想平面P1の任意の点を視点c2から見た仮想平面P2上の点に変換することが可能となる。
【0066】
図8は、図3で示した輝度平均化部222c、223cによりの輝度平均化された映像の例を示している。例えば映像510に示すように、車の右側をバスが通過するものとする。この場合、自車側面がミラーのように機能しバスが映る。この状態が、そのまま右サイドカメラ102Rにより、撮像されると、右サイドカメラ102Rが撮影した映像にもバスの映像B1が存在する(映像510、511参照)。
【0067】
車は、走行しているので映り込む映像は種々(バス、風景、家屋等)である。そこで、本システムでは、車の側面の映像B1の輝度を平均化した映像B12とする(映像512を参照)。輝度を平均化した映像B12を半透明化処理した場合は、映像513に示すように、映り込んだ映像は、半透明化映像に対して大きな影響がなくなる。映像511の場合は、輝度平均化処理を行わない場合の映像であり、半透明化映像の部分に邪魔となる映像が映り込む。しかし本システムによると、半透明化部分の映像を見やすくすることができる。
【0068】
図9は、完全死角領域433を埋める(或いは塗りつぶす)場合の、他の実施形態を示す説明図である。車に前方を撮影する第4カメラが存在した場合、その撮影した映像の一部映像466を合成映像430の一部に埋め込むことができる。この場合、前方カメラが撮影した映像を切出す切出し部と、切出した映像の前後方向を変換する変換部と、時間調整部とが用いられる。そして時間調整された一部映像466が疑似映像として、合成部230に送られ、完全死角領域433の映像として用いられる。
【0069】
図10は、標準のカメラを用いた電子ミラーにおいて、合成映像430が表示部226に表示された例である。図10では、右半分側の映像を示しているが、表示部226には、左半分側の映像も表示される。左半分側の映像においても半透明化映像に補足映像が重ねて表示され、半透明化映像の輪郭の部分でリアカメラからの映像と補足映像との境界を示すラインが表示される。
【0070】
図11は、視野角が標準よりも広いパノラマ撮影が可能な第1、第2、第3カメラを用いた場合に得られる合成映像430Aの例を示している。この合成映像430Aにおいても完全死角領域431Aが生じるので、この部分が周囲の色或いは模様と同様な色、或いは模様により埋められる。
【0071】
図12は、道路を走行する車502、502を平面的に示している。車502は、速度に応じて、車から基準平面位置(例えば、図4で示した遠方平面位置と、地面位置)までの距離が自動調整される場合がある。速度が遅いときは(例えば0Km/H-35Km/H)、比較的近い後続車(例えば車503)に注意し、速度が中速のときは(例えば35Km/H―65Km/H上)のときはさらに遠い後続車に注意し、それ以上の高速のときは(例えば65Km/H以上)のときはさらに遠い後続車に注意したい場合がある。
【0072】
このような場合、ユーザの設定により、車から基準平面位置(例えば、図4で示した遠方平面位置と、地面位置)までの距離が自動調整されてもよい。
【0073】
図13は、基準平面位置(仮想平面位置)が遠い場合の合成映像430の一例であり、図14は、基準平面位置が近い場合の合成映像430の一例である。図13の例では、基準平面位置が遠い場合、遠方後方のビルディングの縦方向のラインは、第1映像と第2映像とで一致している。しかし、近くの車の映像に関しては、第1映像と第2映像との接続部で、段差が生じる。
【0074】
これに対して、図14に示すように、基準平面位置(仮想平面位置)が近い場合、遠方後方のビルディングの縦方向のラインは、第1映像と第2映像とでずれ(段差)が生じる。しかし、近くの車の映像に関しては、第1映像と第2映像との接続部ではスムーズな接続となる。
【0075】
したがって、車の速度に応じて、仮想平面位置を調整することにより、運転者が注目したい距離の後方物体を明確にすることができる。
【0076】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また特許請求の範囲に記載された各要素を分離、或は結合することも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
100・・・車、101・・・第1カメラ、102・・・第2カメラ・・・102R、第3カメラ・・・102L、200・・・映像処理装置、221a,222a,223a・・・映像切出し部、221b、221c,222b,223b・・・射影変換部、222c,223c・・・輝度平均化部、222d,223d・・・半透明化処理部、222e,223e・・・エッジ処理部、230・・・合成部、226・・・表示部、250・・・電子コントローラ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14