(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164513
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20231102BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20231102BHJP
H01L 29/786 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
H01L29/78 617S
H01L27/146 C
H01L29/78 617T
H01L29/78 617U
H01L29/78 618B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144164
(22)【出願日】2023-09-06
(62)【分割の表示】P 2021195308の分割
【原出願日】2013-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2012108929
(32)【優先日】2012-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2012125174
(32)【優先日】2012-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】宮本 敏行
(72)【発明者】
【氏名】野村 昌史
(72)【発明者】
【氏名】羽持 貴士
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 健一
(57)【要約】
【課題】静電破壊による歩留まりの低下を防ぎ、信頼性の高い半導体装置を提供する。
【解決手段】ゲート電極層と、ゲート電極層上の第1のゲート絶縁層と、第1のゲート絶
縁層上に設けられ、第1のゲート絶縁層よりも膜厚の小さい第2のゲート絶縁層と、第2
のゲート絶縁層上の酸化物半導体層と、酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極層
及びドレイン電極層と、を有し、第1のゲート絶縁層は、電子スピン共鳴法において、g
値が2.003に現れる信号に対応するスピン密度が1×10
17spins/cm
3以
下である窒素を含むシリコン膜であり、第2のゲート絶縁層は、第1のゲート絶縁層より
も含有水素濃度の低い窒素を含むシリコン膜である半導体装置を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲート電極層と、
前記ゲート電極層上の第1のゲート絶縁層と、
前記第1のゲート絶縁層上に設けられ、前記第1のゲート絶縁層よりも膜厚の小さい第2のゲート絶縁層と、
前記第2のゲート絶縁層上の酸化物半導体層と、
前記酸化物半導体層と電気的に接続するソース電極層及びドレイン電極層と、を有し、
前記第1のゲート絶縁層は、電子スピン共鳴法において、g値が2.003に現れる信号に対応するスピン密度が1×1017spins/cm3以下である窒素を含むシリコン膜であり、
前記第2のゲート絶縁層は、前記第1のゲート絶縁層よりも含有水素濃度の低い窒素を含むシリコン膜である半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書等で開示する発明は、半導体装置及び半導体装置の作製方法に関する。
【0002】
なお、本明細書等において半導体装置とは、半導体特性を利用することで機能しうる装置
全般を指し、電気光学装置、発光表示装置、半導体回路及び電子機器は全て半導体装置で
ある。
【背景技術】
【0003】
絶縁表面を有する基板上に形成された半導体薄膜を用いてトランジスタを構成する技術が
注目されている。該トランジスタは集積回路(IC)や画像表示装置(単に表示装置とも
表記する)のような電子デバイスに広く応用されている。トランジスタに適用可能な半導
体薄膜としてシリコン系半導体材料が広く知られているが、その他の材料として酸化物半
導体が注目されている。
【0004】
例えば、酸化物半導体として、酸化亜鉛又はIn-Ga-Zn系酸化物半導体を用いてト
ランジスタを作製する技術が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007-123861号公報
【特許文献2】特開2007-96055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
酸化物半導体を用いた半導体装置を大量生産(以下、量産と略記する)する場合において
、開発コスト、及び開発スピードを考慮すると、実用化されている量産技術である非晶質
シリコンや多結晶シリコンといったシリコン系半導体材料を用いたトランジスタ構成、プ
ロセス条件、又は生産装置等の利用が望まれる。
【0007】
しかしながら、酸化物半導体のキャリア生成メカニズムは、シリコン系半導体材料と大き
く異なり、酸化物半導体の物性は、トランジスタの特性、又はトランジスタの信頼性に大
きく影響する。
【0008】
特に、シリコン系半導体材料に対して用いていたゲート絶縁層は、酸化物半導体に適用す
るには当該酸化物半導体との界面特性を十分に満たす構成ではない。そのため、酸化物半
導体を用いた半導体装置に適したゲート絶縁層の開発が望まれている。
【0009】
また、非晶質シリコンや多結晶シリコンといったシリコン系半導体材料を用いたトランジ
スタで構成された半導体装置は、第8世代(横2160mm×縦2460mm)以上のガ
ラス基板に対応できるため、生産性が高く、コストが低いという利点を有する。一方で、
ガラス基板を用いる場合、その絶縁性が高く、またその面積が大きいことから、静電気に
よる破壊(ESD:Electro-Static Discharge)の問題が特に
顕在化する。これは、酸化物半導体材料を用いる場合にも当然に考慮すべき問題である。
【0010】
上述したような技術的背景のもと、本発明の一態様は、実用化されている量産技術からの
トランジスタ構成、プロセス条件、又は生産装置等の変更が少なく、半導体装置に安定し
た電気特性を付与し、信頼性の高い半導体装置を提供することを課題の一とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、静電破壊による歩留まりの低下を防ぐことができる半導体装置
を提供することを課題の一とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
開示する発明の一態様は、ゲート電極層と酸化物半導体層との間に、ゲート電極層側から
、膜中欠陥の低減された窒素を含むシリコン膜と、水素濃度の低減された窒素を含むシリ
コン膜との積層構造をゲート絶縁層として含む半導体装置である。より具体的には、例え
ば以下の構成とすることができる。
【0013】
本発明の一態様は、ゲート電極層と、ゲート電極層上の第1のゲート絶縁層と、第1のゲ
ート絶縁層上に設けられ、第1のゲート絶縁層よりも膜厚の小さい第2のゲート絶縁層と
、第2のゲート絶縁層上の酸化物半導体層と、酸化物半導体層と電気的に接続するソース
電極層及びドレイン電極層と、を有し、第1のゲート絶縁層は、電子スピン共鳴法におい
て、g値が2.003に現れる信号に対応するスピン密度が1×1017spins/c
m3以下である窒素を含むシリコン膜であり、第2のゲート絶縁層は、第1のゲート絶縁
層よりも含有水素濃度の低い窒素を含むシリコン膜である半導体装置である。
【0014】
また、本発明の他の一態様は、ゲート電極層と、ゲート電極層上の第1のゲート絶縁層と
、第1のゲート絶縁層に設けられ、第1のゲート絶縁層よりも膜厚の大きい第2のゲート
絶縁層と、第2のゲート絶縁層上に設けられ、第2のゲート絶縁層よりも膜厚の小さい第
3のゲート絶縁層と、第3のゲート絶縁層上の酸化物半導体層と、酸化物半導体層と電気
的に接続するソース電極層及びドレイン電極層と、を有し、第2のゲート絶縁層は、電子
スピン共鳴法において、g値が2.003に現れる信号に対応するスピン密度が1×10
17spins/cm3以下である窒素を含むシリコン膜であり、第1のゲート絶縁層及
び第3のゲート絶縁層は、第2のゲート絶縁層よりも含有水素濃度の低い窒素を含むシリ
コン膜である半導体装置である。なお、ゲート電極層は、銅を含むことが好ましい。
【0015】
上記の半導体装置において、酸化物半導体層は、構成元素が同一で互いに組成の異なる第
1の酸化物半導体層と第2の酸化物半導体層との積層構造を含んでいてもよい。
【0016】
また、上記の半導体装置において、ソース電極層及びドレイン電極層を覆い、酸化物半導
体層の一部と接する第1の絶縁層と、第1の絶縁層上の第2の絶縁層を有し、第1の絶縁
層は、第2の絶縁層よりも含有水素濃度の低い窒素を含むシリコン膜であり、第2の絶縁
層は、電子スピン共鳴法において、g値が2.003に現れる信号に対応するスピン密度
が1×1017spins/cm3以下である窒素を含むシリコン膜であることが好まし
い。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様によって提供される半導体装置は、実用化されている量産技術からの変更
が少ない製造方法によって製造された、安定した電気特性を有し、信頼性の高い半導体装
置である。
【0018】
また、本発明の一態様によって、静電破壊による歩留まりの低下を防ぐことが可能な半導
体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】半導体装置の一態様を示す平面図及び断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。但し、本発明は以
下の説明に限定されず、その形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容
易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈され
るものではない。
【0021】
なお、以下に説明する本発明の構成において、同一部分又は同様の機能を有する部分には
同一の符号を異なる図面間で共通して用い、その繰り返しの説明は省略する。また、同様
の機能を有する部分を指す場合には、ハッチパターンを同じくし、特に符号を付さない場
合がある。
【0022】
なお、本明細書で説明する各図において、各構成の大きさ、膜の厚さ、又は領域は、明瞭
化のために誇張されている場合がある。よって、必ずしもそのスケールに限定されない。
【0023】
なお、本明細書等において、第1、第2等として付される序数詞は便宜上用いるものであ
り、工程順又は積層順を示すものではない。また、本明細書等において発明を特定するた
めの事項として固有の名称を示すものではない。
【0024】
(実施の形態1)
本実施の形態では、半導体装置及び半導体装置の作製方法の一形態を、
図1乃至
図3を用
いて説明する。本実施の形態では、半導体装置の一例として、酸化物半導体層を有するボ
トムゲート型のトランジスタを示す。
【0025】
図1(A)乃至
図1(C)にトランジスタ300の構成例を示す。
図1(A)は、トラン
ジスタ300の平面図であり、
図1(B)は、
図1(A)中の鎖線X1-Y1における断
面図であり、
図1(C)は、
図1(A)中の鎖線V1-W1における断面図である。
【0026】
トランジスタ300は、絶縁表面を有する基板400上に設けられたゲート電極層402
と、ゲート電極層402上のゲート絶縁層404と、ゲート絶縁層404上に接し、ゲー
ト電極層402と重畳する酸化物半導体層408と、酸化物半導体層408と電気的に接
続するソース電極層410a及びドレイン電極層410bと、を含む。
【0027】
トランジスタ300において、ゲート絶縁層404は、ゲート電極層402と接するゲー
ト絶縁層404aと、ゲート絶縁層404a上のゲート絶縁層404bと、を含んで構成
される。
【0028】
ゲート絶縁層404a及びゲート絶縁層404bとして窒素を含むシリコン膜を適用する
。窒素を含むシリコン膜は、酸化シリコン膜と比較して比誘電率が高く、同等の静電容量
を得るのに必要な膜厚が大きいため、ゲート絶縁層を物理的に厚膜化することができる。
よって、トランジスタ300の絶縁耐圧の低下を抑制、さらには絶縁耐圧を向上させて、
半導体装置の静電破壊を抑制することができる。
【0029】
窒素を含むシリコン膜としては、例えば、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、酸化窒
化シリコン膜が挙げられるが、窒素の含有量が多い程高い比誘電率を有するため、窒化シ
リコン膜を適用することが好ましい。また、酸化シリコンのエネルギーギャップが8eV
であるのに対して窒化シリコンのエネルギーギャップは5.5eVと小さく、それに応じ
て固有抵抗も小さいため、窒化シリコン膜を用いることでより高いESD耐性を付与する
ことが可能となる。さらに、窒化シリコン膜をCVD法で成膜する場合、窒化酸化シリコ
ン膜等の酸素と窒素を含むシリコン膜をCVD法で成膜する場合に適用される温室効果ガ
スであるN2Oガスを用いる必要がない。なお、本明細書中において、酸化窒化シリコン
膜とは、その組成として、窒素よりも酸素の含有量が多い膜を指し、窒化酸化シリコン膜
とは、その組成として、酸素よりも窒素の含有量が多い膜を指す。
【0030】
本実施の形態において、ゲート絶縁層404a及びゲート絶縁層404bとしては、窒化
シリコン膜を適用する。
【0031】
ゲート絶縁層404aは、ゲート絶縁層404bよりも厚い膜厚を有し、膜中欠陥が低減
された窒化シリコン膜を用いるものとする。例えば、ゲート絶縁層404aの膜厚を30
0nm以上400nm以下とする。また、電子スピン共鳴法(ESR:Electron
Spin Resonance)においてNcセンター(g値が2.003)に現れる
信号に対応するスピン密度が、好ましくは1×1017spins/cm3以下、より好
ましくは5×1016spins/cm3以下である窒化シリコン膜を適用する。このよ
うに、膜中欠陥が低減された窒化シリコン膜を厚い膜厚(例えば、300nm以上)で設
けることにより、ゲート絶縁層404aの絶縁耐圧を、例えば300V以上とすることが
可能である。
【0032】
また、ゲート絶縁層404bは、酸化物半導体層408と接するため、含有水素濃度の低
減された窒化シリコン膜とする。ゲート絶縁層404bの水素濃度は、少なくともゲート
絶縁層404aよりも低い濃度とする。例えば、プラズマCVD法により、ゲート絶縁層
404a及びゲート絶縁層404bを成膜する場合に、供給ガス中に含まれる水素濃度を
低下させることで、ゲート絶縁層404bの水素濃度をゲート絶縁層404aよりも低減
することができる。具体的には、ゲート絶縁層404a及びゲート絶縁層404bとして
窒化シリコン膜を形成する場合には、ゲート絶縁層404a成膜のための供給ガスよりも
アンモニア流量を低減、またはアンモニアを用いずにゲート絶縁層404bを成膜すれば
よい。
【0033】
また、ゲート絶縁層404bの膜厚は25nm以上150nm以下とする。ゲート絶縁層
404bとして含有水素濃度が低減された窒化シリコン膜を設けることで、酸化物半導体
層408への水素、又は水素化合物(例えば、水)の混入を低減することができる。水素
は酸化物半導体中でキャリアの生成要因となり、トランジスタのしきい値電圧をマイナス
方向に変動(シフト)させる要因となるため、水素濃度の低減された窒化シリコン膜をゲ
ート絶縁層404bとして設けることで、トランジスタの電気特性を安定化させることが
できる。また、水素濃度の低減された窒化シリコン膜をゲート絶縁層404bとして設け
ることで、ゲート絶縁層404aに含有される水素又は水素化合物等の不純物の酸化物半
導体層408への拡散を防止するバリア膜としての効果も奏する。
【0034】
なお、本実施の形態において、ゲート絶縁層404aとゲート絶縁層404bはともに窒
化シリコン膜であり、材料や成膜条件によっては、各ゲート絶縁層同士の界面が不明確に
なる場合もある。よって、
図1においては、ゲート絶縁層404aとゲート絶縁層404
bの界面を模式的に点線で図示している。これは以降の各図面においても同様である。
【0035】
以下では、酸化物半導体層の構造について説明する。
【0036】
酸化物半導体層は、単結晶酸化物半導体層と非単結晶酸化物半導体層とに大別される。非
単結晶酸化物半導体層とは、非晶質酸化物半導体層、微結晶酸化物半導体層、多結晶酸化
物半導体層、CAAC-OS(C Axis Aligned Crystalline
Oxide Semiconductor)膜などをいう。
【0037】
非晶質酸化物半導体層は、膜中における原子配列が不規則であり、結晶成分を有さない酸
化物半導体層である。微小領域においても結晶部を有さず、膜全体が完全な非晶質構造の
酸化物半導体層が典型である。
【0038】
微結晶酸化物半導体層は、例えば、1nm以上10nm未満の大きさの微結晶(ナノ結晶
ともいう。)を含む。従って、微結晶酸化物半導体層は、非晶質酸化物半導体層よりも原
子配列の規則性が高い。そのため、微結晶酸化物半導体層は、非晶質酸化物半導体層より
も欠陥準位密度が低いという特徴がある。
【0039】
CAAC-OS膜は、複数の結晶部を有する酸化物半導体層の一つであり、ほとんどの結
晶部は、一辺が100nm未満の立方体内に収まる大きさである。従って、CAAC-O
S膜に含まれる結晶部は、一辺が10nm未満、5nm未満または3nm未満の立方体内
に収まる大きさの場合も含まれる。CAAC-OS膜は、微結晶酸化物半導体層よりも欠
陥準位密度が低いという特徴がある。以下、CAAC-OS膜について詳細な説明を行う
。
【0040】
CAAC-OS膜を透過型電子顕微鏡(TEM:Transmission Elect
ron Microscope)によって観察すると、結晶部同士の明確な境界、即ち結
晶粒界(グレインバウンダリーともいう。)を確認することができない。そのため、CA
AC-OS膜は、結晶粒界に起因する電子移動度の低下が起こりにくいといえる。
【0041】
CAAC-OS膜を、試料面と概略平行な方向からTEMによって観察(断面TEM観察
)すると、結晶部において、金属原子が層状に配列していることを確認できる。金属原子
の各層は、CAAC-OS膜の膜を形成する面(被形成面ともいう。)または上面の凹凸
を反映した形状であり、CAAC-OS膜の被形成面または上面と平行に配列する。
【0042】
なお、本明細書において、「平行」とは、二つの直線が-10°以上10°以下の角度で
配置されている状態をいう。従って、-5°以上5°以下の場合も含まれる。また、「垂
直」とは、二つの直線が80°以上100°以下の角度で配置されている状態をいう。従
って、85°以上95°以下の場合も含まれる。
【0043】
一方、CAAC-OS膜を、試料面と概略垂直な方向からTEMによって観察(平面TE
M観察)すると、結晶部において、金属原子が三角形状または六角形状に配列しているこ
とを確認できる。しかしながら、異なる結晶部間で、金属原子の配列に規則性は見られな
い。
【0044】
断面TEM観察および平面TEM観察より、CAAC-OS膜の結晶部は配向性を有して
いることがわかる。
【0045】
CAAC-OS膜に対し、X線回折(XRD:X-Ray Diffraction)装
置を用いて構造解析を行うと、例えばInGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS膜
のout-of-plane法による解析では、回折角(2θ)が31°近傍にピークが
現れる場合がある。このピークは、InGaZnO4の結晶の(009)面に帰属される
ことから、CAAC-OS膜の結晶がc軸配向性を有し、c軸が被形成面または上面に概
略垂直な方向を向いていることが確認できる。
【0046】
一方、CAAC-OS膜に対し、c軸に概略垂直な方向からX線を入射させるin-pl
ane法による解析では、2θが56°近傍にピークが現れる場合がある。このピークは
、InGaZnO4の結晶の(110)面に帰属される。InGaZnO4の単結晶酸化
物半導体層であれば、2θを56°近傍に固定し、試料面の法線ベクトルを軸(φ軸)と
して試料を回転させながら分析(φスキャン)を行うと、(110)面と等価な結晶面に
帰属されるピークが6本観察される。これに対し、CAAC-OS膜の場合は、2θを5
6°近傍に固定してφスキャンした場合でも、明瞭なピークが現れない。
【0047】
以上のことから、CAAC-OS膜では、異なる結晶部間ではa軸およびb軸の配向は不
規則であるが、c軸配向性を有し、かつc軸が被形成面または上面の法線ベクトルに平行
な方向を向いていることがわかる。従って、前述の断面TEM観察で確認された層状に配
列した金属原子の各層は、結晶のab面に平行な面である。
【0048】
なお、結晶部は、CAAC-OS膜を成膜した際、または加熱処理などの結晶化処理を行
った際に形成される。上述したように、結晶のc軸は、CAAC-OS膜の被形成面また
は上面の法線ベクトルに平行な方向に配向する。従って、例えば、CAAC-OS膜の形
状をエッチングなどによって変化させた場合、結晶のc軸がCAAC-OS膜の被形成面
または上面の法線ベクトルと平行にならないこともある。
【0049】
また、CAAC-OS膜中の結晶化度が均一でなくてもよい。例えば、CAAC-OS膜
の結晶部が、CAAC-OS膜の上面近傍からの結晶成長によって形成される場合、上面
近傍の領域は、被形成面近傍の領域よりも結晶化度が高くなることがある。また、CAA
C-OS膜に不純物を添加する場合、不純物が添加された領域の結晶化度が変化し、部分
的に結晶化度の異なる領域が形成されることもある。
【0050】
なお、InGaZnO4の結晶を有するCAAC-OS膜のout-of-plane法
による解析では、2θが31°近傍のピークの他に、2θが36°近傍にもピークが現れ
る場合がある。2θが36°近傍のピークは、CAAC-OS膜中の一部に、c軸配向性
を有さない結晶が含まれることを示している。CAAC-OS膜は、2θが31°近傍に
ピークを示し、2θが36°近傍にピークを示さないことが好ましい。
【0051】
なお、本明細書において、結晶が三方晶または菱面体晶である場合、六方晶系として表す
。
【0052】
CAAC-OS膜を用いたトランジスタは、可視光や紫外光の照射による電気特性の変動
が小さい。よって、当該トランジスタは、信頼性が高い。
【0053】
なお、酸化物半導体層408は、例えば、非晶質酸化物半導体層、微結晶酸化物半導体層
、CAAC-OS膜のいずれの構造であってもよいし、これらの構造のうち二種以上を含
んでいてもよい。またこれらの構造のうち、二種以上を有する積層膜であってもよい。
【0054】
CAAC-OS膜は、例えば、多結晶である酸化物半導体スパッタリング用ターゲットを
用い、スパッタリング法によって成膜する。当該スパッタリング用ターゲットにイオンが
衝突すると、スパッタリング用ターゲットに含まれる結晶領域がa-b面から劈開し、a
-b面に平行な面を有する平板状またはペレット状のスパッタリング粒子として剥離する
ことがある。この場合、当該平板状のスパッタリング粒子が、結晶状態を維持したまま基
板に到達することで、CAAC-OS膜を成膜することができる。
【0055】
また、CAAC-OS膜を成膜するために、以下の条件を適用することが好ましい。
【0056】
成膜時の不純物混入を低減することで、不純物によって結晶状態が崩れることを抑制でき
る。例えば、成膜室内に存在する不純物濃度(水素、水、二酸化炭素および窒素など)を
低減すればよい。また、成膜ガス中の不純物濃度を低減すればよい。具体的には、露点が
-80℃以下、好ましくは-100℃以下である成膜ガスを用いる。
【0057】
また、成膜時の基板加熱温度を高めることで、基板付着後にスパッタリング粒子のマイグ
レーションが起こる。具体的には、基板加熱温度を100℃以上740℃以下、好ましく
は200℃以上500℃以下として成膜する。成膜時の基板加熱温度を高めることで、平
板状のスパッタリング粒子が基板に到達した場合、基板上でマイグレーションが起こり、
スパッタリング粒子の平らな面が基板に付着する。
【0058】
また、成膜ガス中の酸素割合を高め、電力を最適化することで成膜時のプラズマダメージ
を軽減すると好ましい。成膜ガス中の酸素割合は、30体積%以上、好ましくは100体
積%とする。
【0059】
スパッタリング用ターゲットの一例として、In-Ga-Zn-O化合物ターゲットにつ
いて以下に示す。
【0060】
InOX粉末、GaOY粉末およびZnOZ粉末を所定の比率で混合し、加圧処理後、1
000℃以上1500℃以下の温度で加熱処理をすることで多結晶であるIn-Ga-Z
n-O化合物ターゲットとする。なお、X、YおよびZは任意の正数である。ここで、所
定のmol数比は、例えば、InOX粉末、GaOY粉末およびZnOZ粉末が、2:2
:1、8:4:3、3:1:1、1:1:1、4:2:3または3:1:2である。なお
、粉末の種類、およびその混合するmol数比は、作製するスパッタリング用ターゲット
によって適宜変更すればよい。
【0061】
トランジスタ300の構成要素として、ソース電極層410a及びドレイン電極層410
bを覆い、酸化物半導体層408と接する絶縁層414を含めてもよい。
【0062】
絶縁層414としては、酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シ
リコン膜、酸化窒化シリコン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜等
を用いることができる。但し、絶縁層414を、窒素を含むシリコン膜、より好ましくは
窒化シリコン膜とすることで、半導体装置の作製工程中、又は、形成後の半導体装置に対
する静電破壊をより低減することが可能となるため、好ましい。
【0063】
以下に、
図2を用いてトランジスタ300の作製方法の一例を示す。
【0064】
まず、絶縁表面を有する基板400上に、ゲート電極層402を形成する。
【0065】
絶縁表面を有する基板400に使用することができる基板に大きな制約はないが、少なく
とも後の熱処理に耐えうる程度の耐熱性を有することが必要となる。例えば、バリウムホ
ウケイ酸ガラスやアルミノホウケイ酸ガラス等のガラス基板、セラミック基板、石英基板
、サファイヤ基板などを用いることができる。また、シリコンや炭化シリコン等の単結晶
半導体基板、多結晶半導体基板、シリコンゲルマニウム等の化合物半導体基板、SOI基
板等を適用することができ、これらの基板に半導体素子が設けられたものを基板400と
して用いてもよい。
【0066】
ゲート電極層402は、モリブデン、チタン、タンタル、タングステン、アルミニウム、
銅、クロム、ネオジム、スカンジウム等の金属材料又はこれらを主成分とする合金材料を
用いて形成することができる。また、ゲート電極層402としてリン等の不純物元素をド
ーピングした多結晶シリコン膜に代表される半導体膜、ニッケルシリサイド等のシリサイ
ド膜を用いてもよい。ゲート電極層402は単層構造としてもよいし、積層構造としても
よい。ゲート電極層402はテーパ形状としてもよく、例えばテーパ角を30°以上70
°以下とすればよい。ここで、テーパ角とは、テーパ形状を有する層の側面と、当該層の
底面との間の角度を指す。
【0067】
また、ゲート電極層402の材料は、酸化インジウム酸化スズ、酸化タングステンを含む
インジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含むイ
ンジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウムスズ酸化物、酸化インジウム酸化亜鉛、酸
化ケイ素を添加したインジウムスズ酸化物等の導電性材料を適用することもできる。
【0068】
または、ゲート電極層402の材料として、窒素を含むIn-Ga-Zn系酸化物、窒素
を含むIn-Sn系酸化物、窒素を含むIn-Ga系酸化物、窒素を含むIn-Zn系酸
化物、窒素を含むSn系酸化物、窒素を含むIn系酸化物、金属窒化物(窒化インジウム
、窒化亜鉛、窒化タンタル、窒化タングステンなど)を用いてもよい。これらの材料は、
5eV以上の仕事関数を有するため、これらの材料を用いてゲート電極層402を形成す
ることでトランジスタのしきい値電圧をプラスにすることができ、ノーマリオフのスイッ
チングトランジスタを実現できる。
【0069】
次いで、ゲート電極層402を覆うように、ゲート絶縁層404a及びゲート絶縁層40
4bを含むゲート絶縁層404を形成する(
図2(A)参照)。ゲート絶縁層404とし
ては、窒素を含むシリコン膜を適用することができる。本実施の形態では、窒化シリコン
膜でなるゲート絶縁層404aと窒化シリコン膜でなるゲート絶縁層404bを積層させ
てゲート絶縁層404とする。ゲート絶縁層404は、面内バラツキ、パーティクル混入
および成膜タクトを低減する観点から、CVD法を用いて成膜を行うことが効果的である
。また、CVD法は、大面積基板に対する成膜についても効果的である。
【0070】
本実施の形態では、プラズマCVD法によってゲート絶縁層404a及びゲート絶縁層4
04bを連続的に形成する。まず、供給ガスをシラン(SiH4)、窒素(N2)及びア
ンモニア(NH3)の混合ガスとして、ゲート絶縁層404aとなる窒化シリコン膜を成
膜し、その後、供給ガスを、シラン(SiH4)と窒素(N2)の混合ガスに切り替えて
、ゲート絶縁層404bとなる窒化シリコン膜を成膜する。
【0071】
プラズマCVD法の供給ガスをシラン(SiH4)、窒素(N2)及びアンモニア(NH
3)の混合ガスとして成膜された窒化シリコン膜は、供給ガスをシラン(SiH4)と窒
素(N2)の混合ガスとして成膜された窒化シリコン膜よりも膜中欠陥を低減することが
できる。よって、ゲート絶縁層404aは、少なくともゲート絶縁層404bよりも膜中
欠陥の低減された膜であり、例えば、電子スピン共鳴法(ESR)においてNcセンター
(g値が2.003)に現れる信号に対応するスピン密度を、好ましくは1×1017s
pins/cm3、より好ましくは5×1016spins/cm3以下とすることがで
きる。また、混合ガスにアンモニアを含んで成膜された窒化シリコン膜は、供給ガスをシ
ランと窒素の混合ガスとした場合よりも被覆性の良好な膜とすることができるため、ゲー
ト電極層402に接するゲート絶縁層として、上述の混合ガスを用いた窒化シリコン膜を
設けることは有効である。また、膜中欠陥の低減されたゲート絶縁層404aを膜厚30
0nm以上400nm以下で設けることで、ゲート絶縁層404の絶縁耐圧を300V以
上とすることができる。
【0072】
一方、材料ガス中にアンモニアを含まずに成膜されたゲート絶縁層404bは、ゲート絶
縁層404aと比較して含有水素濃度が低い膜とすることができる。このような膜を酸化
物半導体層408と接する態様で設けることで、ゲート絶縁層404bから酸化物半導体
層408への水素の混入を低減することができる。また、ゲート絶縁層404bは、ゲー
ト絶縁層404aに含まれる水素又は水素化合物が、酸化物半導体層408への混入する
ことを抑制するバリア膜としても機能する。
【0073】
ゲート絶縁層404として、膜中欠陥の低減された厚膜のゲート絶縁層404aと、水素
濃度の低減されたゲート絶縁層404bとを積層することで、絶縁耐圧を良好としつつ、
酸化物半導体層408への水素等の不純物の拡散を抑制することができる。よって、当該
ゲート絶縁層404を含むトランジスタの静電破壊を抑制し、且つ、電気特性を安定化さ
せることが可能となる。
【0074】
次いで、ゲート絶縁層404b上に酸化物半導体層を形成し、エッチング処理によって島
状に加工して、酸化物半導体層408を形成する(
図2(B)参照)。
【0075】
酸化物半導体層408は、非晶質構造であってもよいし、結晶性であってもよい。成膜後
の酸化物半導体層を非晶質構造とする場合には、後の作製工程において熱処理を加えるこ
とで結晶性の酸化物半導体層408としてもよい。非晶質酸化物半導体層を結晶化させる
熱処理の温度は、250℃以上700℃以下、好ましくは400℃以上、より好ましくは
500℃以上、さらに好ましくは550℃以上とする。なお、当該熱処理は、作製工程に
おける他の熱処理と兼ねることも可能である。
【0076】
酸化物半導体層408の成膜方法は、スパッタリング法、MBE(Molecular
Beam Epitaxy)法、CVD法、パルスレーザ堆積法、ALD(Atomic
Layer Deposition)法等を適宜用いることができる。
【0077】
酸化物半導体層408を成膜する際、できる限り膜中に含まれる水素濃度を低減させるこ
とが好ましい。水素濃度を低減させるには、例えば、スパッタリング法を用いて成膜を行
う場合には、スパッタリング装置の成膜室内に供給する雰囲気ガスとして、水素、水、水
酸基又は水素化物などの不純物が除去された高純度の希ガス(代表的にはアルゴン)、酸
素、及び希ガスと酸素との混合ガスを適宜用いる。
【0078】
また、成膜室内の残留水分を除去しつつ水素及び水分が除去されたスパッタガスを導入し
て成膜を行うことで、成膜された酸化物半導体層の水素濃度を低減させることができる。
成膜室内の残留水分を除去するためには、吸着型の真空ポンプ、例えば、クライオポンプ
、イオンポンプ、チタンサブリメーションポンプを用いることが好ましい。また、ターボ
分子ポンプにコールドトラップを加えたものであってもよい。クライオポンプは、例えば
、水素分子、水(H2O)など水素原子を含む化合物(より好ましくは炭素原子を含む化
合物も)等の排気能力が高いため、クライオポンプを用いて排気した成膜室で成膜した膜
中に含まれる不純物の濃度を低減できる。
【0079】
なお、ゲート絶縁層404及び酸化物半導体層は、大気開放せずに連続的に成膜すること
が好ましい。ゲート絶縁層404及び酸化物半導体層の成膜を大気開放せずに連続的に行
うことで、酸化物半導体層表面への水素又は水素化合物の付着(例えば、吸着水など)を
防止することができるため、不純物の混入を抑制することができる。
【0080】
また、酸化物半導体層をスパッタリング法で成膜する場合、成膜に用いる金属酸化物ター
ゲットの相対密度(充填率)は90%以上100%以下、好ましくは95%以上99.9
%以下とする。相対密度の高い金属酸化物ターゲットを用いることにより、成膜される膜
を緻密な膜とすることができる。
【0081】
なお、基板400を高温に保持した状態で酸化物半導体層を形成することも、酸化物半導
体層中に含まれうる不純物濃度を低減するのに有効である。基板400を加熱する温度と
しては、150℃以上450℃以下とすればよく、好ましくは基板温度を200℃以上3
50℃以下とすればよい。また、成膜時に基板を高温で加熱することで、結晶性酸化物半
導体層を形成することができる。
【0082】
酸化物半導体層408としてCAAC-OS膜を適用する場合、該CAAC-OS膜を得
る方法としては、例えば、成膜温度を200℃以上450℃以下として酸化物半導体層の
成膜を行い、表面に概略垂直にc軸配向させる方法がある。または、酸化物半導体層を薄
い膜厚で成膜した後、200℃以上700℃以下の熱処理を行い、表面に概略垂直にc軸
配向させてもよい。または、一層目として薄い膜厚で成膜した後、200℃以上700℃
以下の熱処理を行い、二層目の成膜を行い、表面に概略垂直にc軸配向させてもよい。
【0083】
酸化物半導体層408に用いる酸化物半導体としては、少なくともインジウム(In)を
含む。特に、インジウムと亜鉛(Zn)を含むことが好ましい。また、該酸化物半導体を
用いたトランジスタの電気特性のばらつきを減らすためのスタビライザーとして、それら
に加えてガリウム(Ga)を有することが好ましい。また、スタビライザーとしてスズ(
Sn)、ハフニウム(Hf)、アルミニウム(Al)、ジルコニウム(Zr)のいずれか
一種または複数種を有することが好ましい。
【0084】
また、他のスタビライザーとして、ランタノイドである、ランタン(La)、セリウム(
Ce)、プラセオジム(Pr)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、ユウロピウム
(Eu)、ガドリニウム(Gd)、テルビウム(Tb)、ジスプロシウム(Dy)、ホル
ミウム(Ho)、エルビウム(Er)、ツリウム(Tm)、イッテルビウム(Yb)、ル
テチウム(Lu)のいずれか一種または複数種を有してもよい。
【0085】
例えば、酸化物半導体として、酸化インジウム、酸化スズ、酸化亜鉛、二元系金属の酸化
物であるIn-Zn系酸化物、In-Mg系酸化物、In-Ga系酸化物、三元系金属の
酸化物であるIn-Ga-Zn系酸化物、In-Al-Zn系酸化物、In-Sn-Zn
系酸化物、In-Hf-Zn系酸化物、In-La-Zn系酸化物、In-Ce-Zn系
酸化物、In-Pr-Zn系酸化物、In-Nd-Zn系酸化物、In-Sm-Zn系酸
化物、In-Eu-Zn系酸化物、In-Gd-Zn系酸化物、In-Tb-Zn系酸化
物、In-Dy-Zn系酸化物、In-Ho-Zn系酸化物、In-Er-Zn系酸化物
、In-Tm-Zn系酸化物、In-Yb-Zn系酸化物、In-Lu-Zn系酸化物、
四元系金属の酸化物であるIn-Sn-Ga-Zn系酸化物、In-Hf-Ga-Zn系
酸化物、In-Al-Ga-Zn系酸化物、In-Sn-Al-Zn系酸化物、In-S
n-Hf-Zn系酸化物、In-Hf-Al-Zn系酸化物を用いることができる。
【0086】
例えば、In-Ga-Zn系酸化物とは、InとGaとZnを主成分として有する酸化物
という意味であり、InとGaとZnの比率は問わない。また、InとGaとZn以外の
金属元素が入っていてもよい。
【0087】
また、酸化物半導体として、InMO3(ZnO)m(m>0、且つ、mは整数でない)
で表記される材料を用いてもよい。なお、Mは、Ga、Fe、MnおよびCoから選ばれ
た一の金属元素または複数の金属元素を示す。また、酸化物半導体として、In2SnO
5(ZnO)n(n>0、且つ、nは整数)で表記される材料を用いてもよい。
【0088】
例えば、In:Ga:Zn=1:1:1(=1/3:1/3:1/3)、In:Ga:Z
n=2:2:1(=2/5:2/5:1/5)、あるいはIn:Ga:Zn=3:1:2
(=1/2:1/6:1/3)の原子数比のIn-Ga-Zn系酸化物やその組成の近傍
の酸化物を用いることができる。あるいは、In:Sn:Zn=1:1:1(=1/3:
1/3:1/3)、In:Sn:Zn=2:1:3(=1/3:1/6:1/2)あるい
はIn:Sn:Zn=2:1:5(=1/4:1/8:5/8)の原子数比のIn-Sn
-Zn系酸化物やその組成の近傍の酸化物を用いるとよい。
【0089】
しかし、インジウムを含む酸化物半導体を用いたトランジスタは、これらに限られず、必
要とする電気的特性(電界効果移動度、しきい値、ばらつき等)に応じて適切な組成のも
のを用いればよい。また、必要とする電気的特性を得るために、キャリア濃度や不純物濃
度、欠陥密度、金属元素と酸素の原子数比、原子間距離、密度等を適切なものとすること
が好ましい。
【0090】
例えば、In-Sn-Zn系酸化物半導体を用いたトランジスタでは比較的容易に高い電
界効果移動度が得られる。しかしながら、In-Ga-Zn系酸化物半導体を用いたトラ
ンジスタでも、バルク内欠陥密度を低くすることにより電界効果移動度を上げることがで
きる。
【0091】
なお、例えば、In、Ga、Znの原子数比がIn:Ga:Zn=a:b:c(a+b+
c=1)である酸化物の組成が、原子数比がIn:Ga:Zn=A:B:C(A+B+C
=1)の酸化物の組成の近傍であるとは、a、b、cが、(a-A)2+(b-B)2+
(c-C)2≦r2を満たすことをいう。rとしては、例えば、0.05とすればよい。
他の酸化物でも同様である。
【0092】
また、酸化物半導体層408に対して、膜中に含まれる過剰な水素(水や水酸基を含む)
を除去(脱水化又は脱水素化)するための熱処理を行うことが好ましい。熱処理の温度は
、300℃以上700℃以下、又は基板の歪み点未満とする。熱処理は減圧下又は窒素雰
囲気下などで行うことができる。この熱処理によって、n型の導電性を付与する不純物で
ある水素を除去することができる。
【0093】
なお、脱水化又は脱水素化のための熱処理は、酸化物半導体層の成膜後であればトランジ
スタの作製工程においてどのタイミングで行ってもよい。また、脱水化又は脱水素化のた
めの熱処理は、複数回行ってもよく、他の熱処理と兼ねてもよい。
【0094】
熱処理においては、窒素、又はヘリウム、ネオン、アルゴン等の希ガスに、水、水素など
が含まれないことが好ましい。又は、熱処理装置に導入する窒素、又はヘリウム、ネオン
、アルゴン等の希ガスの純度を、6N(99.9999%)以上好ましくは7N(99.
99999%)以上(即ち不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)と
することが好ましい。
【0095】
また、熱処理で酸化物半導体層408を加熱した後、加熱温度を維持、又はその加熱温度
から徐冷しながら同じ炉に高純度の酸素ガス、高純度の一酸化二窒素ガス、又は超乾燥エ
ア(CRDS(キャビティリングダウンレーザー分光法)方式の露点計を用いて測定した
場合の水分量が20ppm(露点換算で-55℃)以下、好ましくは1ppm以下、より
好ましくは10ppb以下の空気)を導入してもよい。酸素ガス又は一酸化二窒素ガスに
、水、水素などが含まれないことが好ましい。又は、熱処理装置に導入する酸素ガス又は
一酸化二窒素ガスの純度を、6N以上好ましくは7N以上(即ち、酸素ガス又は一酸化二
窒素ガス中の不純物濃度を1ppm以下、好ましくは0.1ppm以下)とすることが好
ましい。酸素ガス又は一酸化二窒素ガスの作用により、脱水化又は脱水素化処理による不
純物の排除工程によって同時に減少してしまった酸化物半導体を構成する主成分材料であ
る酸素を供給することによって、酸化物半導体層を高純度化及びi型(真性)化すること
ができる。
【0096】
また、脱水化又は脱水素化処理によって、酸化物半導体を構成する主成分材料である酸素
が同時に脱離して減少してしまうおそれがあるため、脱水化又は脱水素化処理を行った酸
化物半導体層に、酸素(少なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオン、のいずれか
を含む)を導入して膜中に酸素を供給してもよい。
【0097】
脱水化又は脱水素化処理を行った酸化物半導体層に、酸素を導入して膜中に酸素を供給す
ることによって、酸化物半導体層を高純度化、及びi型(真性)化することができる。高
純度化し、i型(真性)化した酸化物半導体を有するトランジスタは、電気特性変動が抑
制されており、電気的に安定である。
【0098】
酸化物半導体層408に酸素導入する場合、酸化物半導体層408に直接導入してもよい
し、後に形成される絶縁層を通過して酸化物半導体層408へ導入してもよい。酸素(少
なくとも、酸素ラジカル、酸素原子、酸素イオンのいずれかを含む)の導入方法としては
、イオン注入法、イオンドーピング法、プラズマイマージョンイオン注入法、プラズマ処
理等を用いることができる。また、酸素導入処理には、酸素を含むガスを用いることがで
きる。酸素を含むガスとしては、酸素、一酸化二窒素、二酸化窒素、二酸化炭素、一酸化
炭素などを用いることができる。また、酸素導入処理において、酸素を含むガスに希ガス
を含ませてもよい。
【0099】
例えば、イオン注入法で酸化物半導体層408へ酸素イオンの注入を行う場合、ドーズ量
を1×1013ions/cm2以上5×1016ions/cm2以下とすればよい。
【0100】
酸化物半導体層408への酸素の供給は、酸化物半導体層の成膜後であれば、そのタイミ
ングは特に限定されない。また、酸素の導入は複数回行ってもよい。
【0101】
次いで、酸化物半導体層408上に導電膜を形成し、これを加工してソース電極層410
a及びドレイン電極層410bを形成する(
図2(C)参照)。
【0102】
ソース電極層410a及びドレイン電極層410bとしては、例えば、Al、Cr、Cu
、Ta、Ti、Mo、Wから選ばれた元素を含む金属膜、または上述した元素を成分とす
る金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン膜、窒化タングステン膜)等を用いるこ
とができる。また、Al、Cuなどの金属膜の下側又は上側の一方または双方にTi、M
o、Wなどの高融点金属膜またはそれらの金属窒化物膜(窒化チタン膜、窒化モリブデン
膜、窒化タングステン膜)を積層させた構成としてもよい。また、ソース電極層410a
及びドレイン電極層410bを、導電性の金属酸化物で形成してもよい。導電性の金属酸
化物としては酸化インジウム(In2O3)、酸化スズ(SnO2)、酸化亜鉛(ZnO
)、酸化インジウム酸化スズ(In2O3-SnO2)、酸化インジウム酸化亜鉛(In
2O3-ZnO)またはこれらの金属酸化物材料に酸化シリコンを含ませたものを用いる
ことができる。
【0103】
また、ソース電極層410a及びドレイン電極層410bとして窒素を含むIn-Ga-
Zn-O膜、窒素を含むIn-Sn-O膜、窒素を含むIn-Ga-O膜、窒素を含むI
n-Zn-O膜、窒素を含むSn-O膜、窒素を含むIn-O膜等の金属窒化物膜を用い
ることができる。これらの膜は、酸化物半導体層408と同じ構成元素を含むため、酸化
物半導体層408との界面を安定化させることができる。例えば、ソース電極層410a
及びドレイン電極層410bとして、酸化物半導体層408に接する側から窒素を含むI
n-Ga-Zn-O膜とタングステン膜の積層構造を適用することができる。
【0104】
次いで、ソース電極層410a、ドレイン電極層410b及び露出した酸化物半導体層4
08を覆うように、絶縁層414を形成する(
図2(D)参照)。
【0105】
絶縁層414としてはプラズマCVD法、スパッタリング法により形成することができ、
酸化シリコン膜、酸化ガリウム膜、酸化アルミニウム膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリ
コン膜、酸化窒化アルミニウム膜、または窒化酸化シリコン膜等を用いることができる。
但し、絶縁層414を、窒素を含むシリコン膜、より好ましくは窒化シリコン膜を含む層
とすることで、半導体装置の作製工程中、又は、形成後の半導体装置に対する静電破壊を
より低減することが可能となるため、好ましい。
【0106】
絶縁層414を形成後、熱処理を行ってもよい。熱処理の温度は、200℃以上が好まし
く、例えば220℃とすればよい。
【0107】
以上によって、本実施の形態のトランジスタ300を形成することができる。
【0108】
図3(A)にトランジスタ310の構成例を示す。
図3(A)に示すトランジスタ310
は、
図1のトランジスタ300と同様に、絶縁表面を有する基板400上に設けられたゲ
ート電極層402と、ゲート電極層402上のゲート絶縁層404a及びゲート絶縁層4
04bを含むゲート絶縁層404と、ゲート絶縁層404b上に設けられ、ゲート電極層
402と重畳する酸化物半導体層408と、酸化物半導体層408と電気的に接続するソ
ース電極層410a及びドレイン電極層410bと、を含む。また、ソース電極層410
a及びドレイン電極層410bを覆い、酸化物半導体層408と接する絶縁層414をト
ランジスタ310の構成要素としてもよい。
【0109】
トランジスタ310は、酸化物半導体層408が積層構造を有する点において、トランジ
スタ300と相違する。すなわちトランジスタ310において酸化物半導体層408は、
ゲート絶縁層404と接する酸化物半導体層408aと、絶縁層414と接する酸化物半
導体層408bと、を含んで構成される。
【0110】
なお、トランジスタ310において、酸化物半導体層408以外の構成は、トランジスタ
300と同様であり、トランジスタ300についての説明を参酌することができる。
【0111】
酸化物半導体層408に含まれる酸化物半導体層408aと酸化物半導体層408bは、
構成元素を同一とし、両者の組成を異ならせることが好ましい。酸化物半導体層408a
及び酸化物半導体層408bとしてインジウム及びガリウムを含む酸化物半導体層を形成
する場合、ゲート電極層402に近い側(チャネル側)の酸化物半導体層408aのイン
ジウムとガリウムの含有率をIn>Gaとするとよい。またゲート電極層402から遠い
側(バックチャネル側)の酸化物半導体層408bのインジウムとガリウムの含有率をI
n≦Gaとするとよい。
【0112】
酸化物半導体では主として重金属のs軌道がキャリア伝導に寄与しており、インジウムの
含有率を多くすることによりs軌道のオーバーラップが多くなる傾向があるため、In>
Gaの組成となる酸化物はIn≦Gaの組成となる酸化物と比較して高い移動度を備える
。また、GaはInと比較して酸素欠損の形成エネルギーが大きく酸素欠損が生じにくい
ため、In≦Gaの組成となる酸化物はIn>Gaの組成となる酸化物と比較して安定し
た特性を備える。
【0113】
チャネル側にIn>Gaの組成となる酸化物半導体を適用し、バックチャネル側にIn≦
Gaの組成となる酸化物半導体を適用することで、トランジスタの移動度および信頼性を
さらに高めることが可能となる。例えば、酸化物半導体層408aの原子数比をIn:G
a:Zn=3:1:2とし、酸化物半導体層408bの原子数比をIn:Ga:Zn=1
:1:1としてもよい。
【0114】
酸化物半導体層408aと酸化物半導体層408bに、結晶性の異なる酸化物半導体を適
用してもよい。すなわち、単結晶酸化物半導体、多結晶酸化物半導体、ナノ結晶酸化物半
導体、非晶質酸化物半導体、またはCAAC-OSを適宜組み合わせた構成としてもよい
。但し、非晶質酸化物半導体は水素などの不純物を吸収しやすく、また、酸素欠損が生じ
やすいためn型化されやすい。このため、チャネル側の酸化物半導体層408aは、CA
AC-OSなどの結晶性を有する酸化物半導体を適用することが好ましい。
【0115】
また、バックチャネル側の酸化物半導体層408bに非晶質酸化物半導体を用いると、ソ
ース電極層410aおよびドレイン電極層410b形成時のエッチング処理により酸素欠
損が生じ、n型化されやすい。酸化物半導体層408bには結晶性を有する酸化物半導体
を適用することが好ましい。
【0116】
なお、酸化物半導体層408は、スパッタリング法によって形成することができ、スパッ
タリングターゲットにインジウムを含有すると成膜時のパーティクルの発生を低減するこ
とができる。よって、インジウムを含む酸化物半導体層408a及びインジウムを含む酸
化物半導体層408bとすることがより好ましい。
【0117】
なお、酸化物半導体層408bにおいて、絶縁層414と接する領域の膜厚を、ソース電
極層410a及びドレイン電極層410bと接する領域の膜厚よりも小さくしてもよい。
例えば、ソース電極層410a及びドレイン電極層410bとなる導電膜の加工の際に一
部をエッチングすることによって、又はソース電極層410a及びドレイン電極層410
bを形成後に酸化物半導体層408bの露出した領域にエッチング処理を行うことによっ
て膜厚の小さい領域を形成することができる。トランジスタ310のチャネル形成領域と
して機能する領域の膜厚を小さくすることで、ソース電極層410a及びドレイン電極層
410bと接する領域の抵抗をチャネル形成領域と比較して低減することができる。よっ
て、ソース電極層410a及びドレイン電極層410bとのコンタクト抵抗を低減するこ
とが可能となる。
【0118】
図3(B)にトランジスタ320の構成例を示す。
図3(B)に示すトランジスタ320
は、
図1のトランジスタ300と同様に、絶縁表面を有する基板400上に設けられたゲ
ート電極層402と、ゲート電極層402上のゲート絶縁層404a及びゲート絶縁層4
04bを含むゲート絶縁層404と、ゲート絶縁層404b上に設けられ、ゲート電極層
402と重畳する酸化物半導体層408と、酸化物半導体層408と電気的に接続するソ
ース電極層410a及びドレイン電極層410bと、を含み、且つ、ソース電極層410
a及びドレイン電極層410bを覆い、酸化物半導体層408と接する絶縁層414を有
する。
【0119】
トランジスタ320は、絶縁層414が、酸化物半導体層408の一部と接する絶縁層4
14aと、絶縁層414a上に接する絶縁層414bと、を含んで構成される点において
、トランジスタ300と相違する。
【0120】
絶縁層414aとしては、ゲート絶縁層404bと同様の構成とすることができる。絶縁
層414aを設けることで、酸化物半導体層408への水素又は水素化合物の混入を抑制
することができるため、トランジスタの電気特性をより安定化することができる。
【0121】
また、絶縁層414bとしては、ゲート絶縁層404aと同様の構成とすることができる
。絶縁層414bを設けることで、作製工程中、又は、形成後の半導体装置に対する静電
破壊をより低減することが可能となる。
【0122】
なお、トランジスタ320のその他の構成要素は、トランジスタ300と同様の構成とす
ることができ、トランジスタ300についての説明を参酌することができる。
【0123】
図3(C)にトランジスタ330の構成例を示す。
図3(C)に示すトランジスタ330
は、
図1のトランジスタ300と同様に、絶縁表面を有する基板400上に設けられたゲ
ート電極層402と、ゲート電極層402上のゲート絶縁層404と、ゲート絶縁層40
4と接し、ゲート電極層402と重畳する酸化物半導体層408と、酸化物半導体層40
8と電気的に接続するソース電極層410a及びドレイン電極層410bと、を含む。ま
た、ソース電極層410a及びドレイン電極層410bを覆い、酸化物半導体層408と
接する絶縁層414をトランジスタ330の構成要素としてもよい。
【0124】
トランジスタ330は、ゲート絶縁層404が、ゲート電極層402と接するゲート絶縁
層404cと、ゲート絶縁層404c上に接するゲート絶縁層404aと、ゲート絶縁層
404a上のゲート絶縁層404bとを含む点において、トランジスタ300と相違する
。トランジスタ330において、ゲート絶縁層404以外の構成は、トランジスタ300
と同様であり、トランジスタ300についての説明を参酌することができる。
【0125】
本実施の形態では、ゲート絶縁層404c、ゲート絶縁層404a及びゲート絶縁層40
4bとして窒化シリコン膜を用い、各ゲート絶縁層はプラズマCVD法によって連続的に
形成するものとする。具体的には、シラン(SiH4)と窒素(N2)の混合ガスを供給
してゲート絶縁層404cとなる窒化シリコン膜を成膜した後、供給ガスをシラン(Si
H4)、窒素(N2)及びアンモニア(NH3)の混合ガスに切り替えて、ゲート絶縁層
404aとなる窒化シリコン膜を成膜し、その後、供給ガスを、シラン(SiH4)と窒
素(N2)の混合ガスに切り替えて、ゲート絶縁層404bとなる窒化シリコン膜を成膜
する。
【0126】
シラン(SiH4)と窒素(N2)の混合ガスを供給して形成されたゲート絶縁層404
cは、少なくともシラン(SiH4)、窒素(N2)及びアンモニア(NH3)の混合ガ
スを供給して形成されたゲート絶縁層404aよりも、成膜雰囲気中及び膜中のアンモニ
アを低減することができる。アンモニアは、窒素原子上の孤立電子対の働きにより、金属
錯体の配位子となる。よって、例えば、ゲート電極層402として銅を用いる場合、アン
モニアの含有量が多いゲート絶縁層を該ゲート電極層と接する態様で設けると以下式(1
)に示す反応によって、銅がゲート絶縁層中に拡散する恐れがある。
【0127】
【0128】
図3(C)に示すトランジスタ330では、少なくともゲート絶縁層404aよりもアン
モニアの含有量が低いゲート絶縁層404cを、ゲート電極層402と接する態様で設け
ることで、ゲート電極層402の材料(例えば、銅)がゲート絶縁層404中へ拡散する
ことを抑制することができる。即ち、ゲート絶縁層404cは、ゲート電極層402を構
成する金属材料に対するバリア膜として機能することができる。ゲート絶縁層404cを
設けることで、トランジスタの信頼性をより向上させることができる。
【0129】
なお、トランジスタ330に含まれるゲート絶縁層404a及びゲート絶縁層404bの
構成は、トランジスタ310と同様とすることができる。上述の構成を有するゲート絶縁
層を含むことで、トランジスタの静電破壊を防止し、且つ、トランジスタに安定した電気
特性を付与することができ、信頼性の高い半導体装置とすることが可能となる。
【0130】
ゲート絶縁層404cの膜厚は、30nm以上100nm以下、好ましくは30nm以上
50nm以下とする。また、上述したようにトランジスタの静電破壊対策として設けるゲ
ート絶縁層404aの膜厚は300nm以上400nm以下とすることが好ましく、酸化
物半導体層408への水素の拡散を防止するバリア膜として機能するゲート絶縁層404
bの膜厚は、25nm以上150nm以下とすることが好ましい。但し、ゲート絶縁層4
04の膜厚(ゲート絶縁層404c、ゲート絶縁層404a及びゲート絶縁層404bの
膜厚の合計)を、355nm以上550nm以下とするように、各ゲート絶縁層の膜厚を
適宜調整することが好ましい。
【0131】
図3(D)にトランジスタ340の構成例を示す。
図3(D)に示すトランジスタ340
は、ゲート絶縁層404(より具体的にはゲート絶縁層404b)と、酸化物半導体層4
08との間に、ゲート絶縁層407を有する点で、
図3(C)のトランジスタ330と相
違する。トランジスタ340において、ゲート絶縁層407以外の構成は、トランジスタ
330と同様であり、トランジスタ330についての説明を参酌することができる。
【0132】
酸化物半導体層408と接するゲート絶縁層407としては、酸化シリコン膜、酸化ガリ
ウム膜、酸化アルミニウム膜等の酸素を含む絶縁層を用いることが好ましい。また、ゲー
ト絶縁層407が化学量論的組成よりも過剰に酸素を含む領域(酸素過剰領域)を含むこ
とがより好ましい。酸化物半導体層408と接する絶縁層が酸素過剰領域を含むことで、
酸化物半導体層408へ酸素を供給することが可能となり、酸化物半導体層408からの
酸素の脱離を防止するとともに酸素欠損を補填することが可能となるためである。ゲート
絶縁層407に酸素過剰領域を設けるには、例えば、酸素雰囲気下にてゲート絶縁層40
7を形成すればよい。又は、成膜後のゲート絶縁層407に酸素を導入して、酸素過剰領
域を形成してもよい。
【0133】
ゲート絶縁層407の膜厚は、25nm以上100nm以下とする。但し、ゲート絶縁層
404の膜厚(ゲート絶縁層404c、ゲート絶縁層404a及びゲート絶縁層404b
の膜厚の合計)と、ゲート絶縁層407の膜厚の合計の膜厚を、355nm以上550n
m以下とするように、各ゲート絶縁層の膜厚を適宜調整することが好ましい。
【0134】
なお、
図1及び
図3に示すトランジスタは、それぞれ一部が異なる構成であるが、本発明
の一態様は特に限定されず、様々な組み合わせが可能である。
【0135】
本実施の形態で示すトランジスタは、ゲート絶縁層として、ゲート電極層側から厚膜(例
えば、膜厚300nm)の膜中欠陥の低減された窒素を含むシリコン膜と、水素濃度の低
減された窒素を含むシリコン膜との積層構造を有するトランジスタである。よって、トラ
ンジスタは、電気特性変動が抑制され、且つ静電破壊が抑制されている。このようなトラ
ンジスタを含むことで、信頼性の高い半導体装置を歩留まりよく提供することができる。
【0136】
以上、本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適
宜組み合わせて用いることができる。
【0137】
(実施の形態2)
実施の形態1に示したトランジスタを用いて表示機能を有する半導体装置(表示装置とも
いう)を作製することができる。また、トランジスタを含む駆動回路の一部又は全体を、
画素部と同じ基板上に一体形成し、システムオンパネルを形成することができる。
【0138】
図4(A)において、基板4001上に設けられた画素部4002を囲むようにして、シ
ール材4005が設けられ、基板4006によって封止されている。
図4(A)において
は、基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、I
Cチップ、又は別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された
走査線駆動回路4004、信号線駆動回路4003が実装されている。また信号線駆動回
路4003と走査線駆動回路4004を通して画素部4002に与えられる各種信号及び
電位は、FPC(Flexible printed circuit)4018a、4
018bから供給されている。
【0139】
図4(B)及び
図4(C)において、基板4001上に設けられた画素部4002と、走
査線駆動回路4004とを囲むようにして、シール材4005が設けられている。また画
素部4002と、走査線駆動回路4004の上に基板4006が設けられている。よって
画素部4002と、走査線駆動回路4004とは、基板4001とシール材4005と基
板4006とによって、表示素子と共に封止されている。
図4(B)及び(C)において
は、基板4001上のシール材4005によって囲まれている領域とは異なる領域に、I
Cチップ、又は別途用意された基板上に単結晶半導体膜又は多結晶半導体膜で形成された
信号線駆動回路4003が実装されている。
図4(B)及び
図4(C)においては、信号
線駆動回路4003と走査線駆動回路4004を通して画素部4002に与えられる各種
信号及び電位は、FPC4018から供給されている。
【0140】
また
図4(B)及び
図4(C)においては、信号線駆動回路4003を別途形成し、基板
4001に実装している例を示しているが、この構成に限定されない。走査線駆動回路を
別途形成して実装してもよいし、信号線駆動回路の一部又は走査線駆動回路の一部のみを
別途形成して実装してもよい。
【0141】
なお、別途形成した駆動回路の接続方法は、特に限定されるものではなく、COG(Ch
ip On Glass)方法、ワイヤボンディング方法、或いはTAB(Tape A
utomated Bonding)方法などを用いることができる。
図4(A)は、C
OG方法により信号線駆動回路4003、走査線駆動回路4004を実装する例であり、
図4(B)は、COG方法により信号線駆動回路4003を実装する例であり、
図4(C
)は、TAB方法により信号線駆動回路4003を実装する例である。
【0142】
なお、表示装置とは、表示素子が封止された状態にあるパネルと、該パネルにコントロー
ラを含むIC等を実装した状態にあるモジュールとを含む。すなわち、本明細書中におけ
る表示装置とは、画像表示デバイス、表示デバイス、もしくは光源(照明装置含む)を指
す。また、表示素子が封止された状態にあるパネルだけでなく、コネクター、例えばFP
CもしくはTCPが取り付けられたモジュール、TCPの先にプリント配線板が設けられ
たモジュール、又は表示素子にCOG方式によりIC(集積回路)が直接実装されたモジ
ュールも全て表示装置に含むものとする。
【0143】
また基板上に設けられた画素部及び走査線駆動回路は、トランジスタを複数有しており、
実施の形態1に示したトランジスタを適用することができる。
【0144】
表示装置に設けられる表示素子としては液晶素子(液晶表示素子ともいう)、発光素子(
発光表示素子ともいう)を用いることができる。発光素子は、電流又は電圧によって輝度
が制御される素子をその範疇に含んでおり、具体的には無機EL(Electro Lu
minescence)、有機EL等が含まれる。また、電子インク表示装置(電子ペー
パー)など、電気的作用によりコントラストが変化する表示媒体も適用することができる
。
【0145】
半導体装置の一形態について、
図4乃至
図6を用いて説明する。
図6は、
図4(B)のM
-Nにおける断面図に相当する。
【0146】
図4及び
図6で示すように、半導体装置は接続端子電極4015及び端子電極4016を
有しており、接続端子電極4015及び端子電極4016はFPC4018、4018b
が有する端子と異方性導電層4019を介して、電気的に接続されている。
【0147】
接続端子電極4015は、第1の電極層4034と同じ導電層から形成され、端子電極4
016は、トランジスタ4010、4011のソース電極層及びドレイン電極層と同じ導
電層で形成されている。
【0148】
また基板4001上に設けられた画素部4002と、走査線駆動回路4004は、トラン
ジスタを複数有しており、
図6では、画素部4002に含まれるトランジスタ4010と
、走査線駆動回路4004に含まれるトランジスタ4011とを例示している。
図6(A
)では、トランジスタ4010、4011上には絶縁層4032が設けられ、
図6(B)
では、さらに、平坦化絶縁層として機能する絶縁層4021が設けられている。
【0149】
トランジスタ4010、4011としては、実施の形態1に示したトランジスタを適用す
ることができる。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ300と同様な
構造を有するトランジスタを適用する例を示す。トランジスタ4010、4011は、ボ
トムゲート構造のトランジスタである。
【0150】
トランジスタ4010、4011は、ゲート絶縁層4020aとして厚膜(例えば、膜厚
300nm)の膜中欠陥の低減された窒素を含むシリコン膜を含み、ゲート絶縁層402
0bとして、水素濃度の低減された窒素を含むシリコン膜を有するトランジスタである。
よって、トランジスタ4010、4011は、電気特性変動が抑制され、且つ静電破壊が
抑制されている。
【0151】
また、駆動回路用のトランジスタ4011の酸化物半導体層のチャネル形成領域と重なる
位置にさらに導電層を設けてもよい。導電層を酸化物半導体層のチャネル形成領域と重な
る位置に設けることによって、トランジスタ4011のしきい値電圧の変化量をさらに低
減することができる。また、導電層は、電位がトランジスタ4011のゲート電極層と同
じでもよいし、異なっていても良く、第2のゲート電極層として機能させることもできる
。また、導電層の電位がフローティング状態であってもよい。
【0152】
また、該導電層は外部の電場を遮蔽する、すなわち外部の電場が内部(トランジスタを含
む回路部)に作用しないようにする機能(特に静電気に対する静電遮蔽機能)も有する。
導電層の遮蔽機能により、静電気などの外部の電場の影響によりトランジスタの電気的な
特性が変動することを防止することができる。
【0153】
画素部4002に設けられたトランジスタ4010は表示素子と電気的に接続し、表示パ
ネルを構成する。表示素子は表示を行うことができれば特に限定されず、様々な表示素子
を用いることができる。
【0154】
図6(A)に表示素子として液晶素子を用いた液晶表示装置の例を示す。
図6(A)にお
いて、液晶素子4013は、第1の電極層4034、第2の電極層4031、及び液晶層
4008を含む。なお、液晶層4008を挟持するように配向膜として機能する絶縁層4
038、4033が設けられている。第2の電極層4031は基板4006側に設けられ
、第1の電極層4034と第2の電極層4031とは液晶層4008を介して積層する構
成となっている。
【0155】
またスペーサ4035は絶縁層を選択的にエッチングすることで得られる柱状のスペーサ
であり、液晶層4008の膜厚(セルギャップ)を制御するために設けられている。なお
球状のスペーサを用いていてもよい。
【0156】
表示素子として、液晶素子を用いる場合、サーモトロピック液晶、強誘電性液晶、反強誘
電性液晶等を用いることができる。これらの液晶材料は、低分子化合物でも高分子化合物
でもよい。これらの液晶材料(液晶組成物)は、条件により、コレステリック相、スメク
チック相、キュービック相、カイラルネマチック相、等方相等を示す。
【0157】
また、液晶層4008に、配向膜を用いないブルー相を発現する液晶組成物を用いてもよ
い。この場合、液晶層4008と、第1の電極層4034及び第2の電極層4031とは
接する構造となる。ブルー相は液晶相の一つであり、コレステリック液晶を昇温していく
と、コレステリック相から等方相へ転移する直前に発現する相である。ブルー相は、液晶
及びカイラル剤を混合させた液晶組成物を用いて発現させることができる。また、ブルー
相が発現する温度範囲を広げるために、ブルー相を発現する液晶組成物に重合性モノマー
及び重合開始剤などを添加し、高分子安定化させる処理を行って液晶層を形成することも
できる。ブルー相を発現する液晶組成物は、応答速度が短く、光学的等方性であるため配
向処理が不要であり、視野角依存性が小さい。また配向膜を設けなくてもよいのでラビン
グ処理も不要となるため、ラビング処理によって引き起こされる静電破壊を防止すること
ができ、作製工程中の液晶表示装置の不良や破損を軽減することができる。よって液晶表
示装置の生産性を向上させることが可能となる。
【0158】
また、液晶材料の固有抵抗は、1×109Ω・cm以上であり、好ましくは1×1011
Ω・cm以上であり、さらに好ましくは1×1012Ω・cm以上である。なお、本明細
書における固有抵抗の値は、20℃で測定した値とする。
【0159】
液晶表示装置に設けられる保持容量の大きさは、画素部に配置されるトランジスタのリー
ク電流等を考慮して、所定の期間の間電荷を保持できるように設定される。保持容量の大
きさは、トランジスタのオフ電流等を考慮して設定すればよい。本明細書に開示する酸化
物半導体層を有するトランジスタを用いることにより、各画素における液晶容量に対して
1/3以下、好ましくは1/5以下の容量の大きさを有する保持容量を設ければ充分であ
る。
【0160】
本明細書に開示する酸化物半導体層を用いたトランジスタは、オフ状態における電流値(
オフ電流値)を低く制御することができる。よって、画像信号等の電気信号の保持時間を
長くすることができ、書き込み間隔も長く設定できる。よって、リフレッシュ動作の頻度
を少なくすることができるため、消費電力を抑制する効果を奏する。
【0161】
また、本明細書に開示する酸化物半導体層を用いたトランジスタは、比較的高い電界効果
移動度が得られるため、高速駆動が可能である。例えば、このようなトランジスタを液晶
表示装置に用いることで、画素部のスイッチングトランジスタと、駆動回路部に使用する
ドライバートランジスタを同一基板上に形成することができる。また、画素部においても
、このようなトランジスタを用いることで、高画質な画像を提供することができる。
【0162】
液晶表示装置には、TN(Twisted Nematic)モード、IPS(In-P
lane-Switching)モード、FFS(Fringe Field Swit
ching)モード、ASM(Axially Symmetric aligned
Micro-cell)モード、OCB(Optical Compensated B
irefringence)モード、FLC(Ferroelectric Liqui
d Crystal)モード、AFLC(AntiFerroelectric Liq
uid Crystal)モードなどを用いることができる。
【0163】
また、ノーマリーブラック型の液晶表示装置、例えば垂直配向(VA)モードを採用した
透過型の液晶表示装置としてもよい。垂直配向モードとしては、いくつか挙げられるが、
例えば、MVA(Multi-Domain Vertical Alignment)
モード、PVA(Patterned Vertical Alignment)モード
、ASV(Advanced Super View)モードなどを用いることができる
。また、VA型の液晶表示装置にも適用することができる。VA型の液晶表示装置とは、
液晶表示パネルの液晶分子の配列を制御する方式の一種である。VA型の液晶表示装置は
、電圧が印加されていないときにパネル面に対して液晶分子が垂直方向を向く方式である
。また、画素(ピクセル)をいくつかの領域(サブピクセル)に分け、それぞれ別の方向
に分子を倒すよう工夫されているマルチドメイン化あるいはマルチドメイン設計といわれ
る方法を用いることができる。
【0164】
また、表示装置において、ブラックマトリクス(遮光層)、偏光部材、位相差部材、反射
防止部材などの光学部材(光学基板)などは適宜設ける。例えば、偏光基板及び位相差基
板による円偏光を用いてもよい。また、光源としてバックライト、サイドライトなどを用
いてもよい。
【0165】
また、画素部における表示方式は、プログレッシブ方式やインターレース方式等を用いる
ことができる。また、カラー表示する際に画素で制御する色要素としては、RGB(Rは
赤、Gは緑、Bは青を表す)の三色に限定されない。例えば、RGBW(Wは白を表す)
、又はRGBに、イエロー、シアン、マゼンタ等を一色以上追加したものがある。なお、
色要素のドット毎にその表示領域の大きさが異なっていてもよい。ただし、開示する発明
はカラー表示の表示装置に限定されるものではなく、モノクロ表示の表示装置に適用する
こともできる。
【0166】
また、表示装置に含まれる表示素子として、エレクトロルミネッセンスを利用する発光素
子を適用することができる。エレクトロルミネッセンスを利用する発光素子は、発光材料
が有機化合物であるか、無機化合物であるかによって区別され、一般的に、前者は有機E
L素子、後者は無機EL素子と呼ばれている。
【0167】
有機EL素子は、発光素子に電圧を印加することにより、一対の電極から電子および正孔
がそれぞれ発光性の有機化合物を含む層に注入され、電流が流れる。そして、それらキャ
リア(電子および正孔)が再結合することにより、発光性の有機化合物が励起状態を形成
し、その励起状態が基底状態に戻る際に発光する。このようなメカニズムから、このよう
な発光素子は、電流励起型の発光素子と呼ばれる。本実施の形態では、発光素子として有
機EL素子を用いる例を示す。
【0168】
無機EL素子は、その素子構成により、分散型無機EL素子と薄膜型無機EL素子とに分
類される。分散型無機EL素子は、発光材料の粒子をバインダ中に分散させた発光層を有
するものであり、発光メカニズムはドナー準位とアクセプター準位を利用するドナー-ア
クセプター再結合型発光である。薄膜型無機EL素子は、発光層を誘電体層で挟み込み、
さらにそれを電極で挟んだ構造であり、発光メカニズムは金属イオンの内殻電子遷移を利
用する局在型発光である。なお、ここでは、発光素子として有機EL素子を用いて説明す
る。
【0169】
発光素子は発光を取り出すために少なくとも一対の電極の一方が透光性であればよい。そ
して、基板上にトランジスタ及び発光素子を形成し、基板とは逆側の面から発光を取り出
す上面射出や、基板側の面から発光を取り出す下面射出や、基板側及び基板とは反対側の
面から発光を取り出す両面射出構造の発光素子があり、どの射出構造の発光素子も適用す
ることができる。
【0170】
図5(A)(B)及び
図6(B)に表示素子として発光素子を用いた発光装置の例を示す
。
【0171】
図5(A)は発光装置の平面図であり、
図5(A)中の一点鎖線S1-T1、S2-T2
、及びS3-T3で切断した断面が
図5(B)に相当する。なお、
図5(A)の平面図に
おいては、電界発光層542及び第2の電極層543は省略してあり図示していない。
【0172】
図5に示す発光装置は、基板500上に、トランジスタ510、容量素子520、配線層
交差部530を有しており、トランジスタ510は発光素子540と電気的に接続してい
る。なお、
図5は基板500を通過して発光素子540からの光を取り出す、下面射出型
構造の発光装置である。
【0173】
トランジスタ510としては、実施の形態1に示したトランジスタを適用することができ
る。本実施の形態では、実施の形態1で示したトランジスタ300と同様な構造を有する
トランジスタを適用する例を示す。トランジスタ510は、ボトムゲート構造のトランジ
スタである。
【0174】
トランジスタ510はゲート電極層511a、511b、ゲート絶縁層502a、502
b、502cを含むゲート絶縁層502、酸化物半導体層512、ソース電極層又はドレ
イン電極層として機能する導電層513a、513bを含む。また、トランジスタ510
上には絶縁層525が形成されている。
【0175】
容量素子520は、導電層521a、521b、ゲート絶縁層502、酸化物半導体層5
22、導電層523を含み、導電層521a、521bと導電層523とで、ゲート絶縁
層502及び酸化物半導体層522を挟む構成とすることで容量を形成する。
【0176】
配線層交差部530は、ゲート電極層511a、511bと、導電層533との交差部で
あり、ゲート電極層511a、511bと、導電層533とは、間にゲート絶縁層502
を介して交差する。
【0177】
本実施の形態においては、ゲート電極層511a及び導電層521aとして膜厚30nm
のチタン膜を用い、ゲート電極層511b及び導電層521bとして膜厚200nmの銅
薄膜を用いる。よって、ゲート電極層はチタン膜と銅薄膜との積層構造となる。
【0178】
トランジスタ510は、ゲート絶縁層502cとしてアンモニアの含有量の低減された銅
のバリア膜として機能する窒素を含むシリコン膜を含み、ゲート絶縁層502aとして厚
膜(例えば、膜厚300nm)の膜中欠陥の低減された窒素を含むシリコン膜を含み、ゲ
ート絶縁層502bとして、水素濃度の低減された窒素を含むシリコン膜を有するトラン
ジスタである。このような構成とすることで、トランジスタ510の電気特性を良好とす
ることができ、またトランジスタ510の静電破壊を防止することができる。よって、信
頼性の高い半導体装置を歩留まりよく提供することが可能となる。
【0179】
酸化物半導体層512、522としては膜厚25nmのIn-Ga-Zn-O膜を用いる
。
【0180】
トランジスタ510、容量素子520、及び配線層交差部530上には層間絶縁層504
が形成され、層間絶縁層504上において発光素子540と重畳する領域にカラーフィル
タ層505が設けられている。層間絶縁層504及びカラーフィルタ層505上には平坦
化絶縁層として機能する絶縁層506が設けられている。
【0181】
絶縁層506上に第1の電極層541、電界発光層542、第2の電極層543の順に積
層した積層構造を含む発光素子540が設けられている。発光素子540とトランジスタ
510とは、導電層513aに達する絶縁層506及び層間絶縁層504に形成された開
口において、第1の電極層541及び導電層513aが接することによって電気的に接続
されている。なお、第1の電極層541の一部及び該開口を覆うように隔壁507が設け
られている。
【0182】
絶縁層506には膜厚1500nmの感光性のアクリル膜、隔壁507には膜厚1500
nmの感光性のポリイミド膜を用いることができる。
【0183】
カラーフィルタ層505としては、例えば有彩色の透光性樹脂を用いることができる。有
彩色の透光性樹脂としては、感光性、非感光性の有機樹脂を用いることができるが、感光
性の有機樹脂層を用いるとレジストマスク数を削減することができるため、工程が簡略化
し好ましい。
【0184】
有彩色は、黒、灰、白などの無彩色を除く色であり、カラーフィルタ層は、着色された有
彩色の光のみを透過する材料で形成される。有彩色としては、赤色、緑色、青色などを用
いることができる。また、シアン、マゼンダ、イエロー(黄)などを用いてもよい。着色
された有彩色の光のみを透過するとは、カラーフィルタ層における透過光は、その有彩色
の光の波長にピークを有するということである。カラーフィルタ層は、含ませる着色材料
の濃度と光の透過率の関係に考慮して、最適な膜厚を適宜制御するとよい。例えば、カラ
ーフィルタ層505の膜厚は1500nm以上2000nm以下とすればよい。
【0185】
図6(B)に示す発光装置においては、発光素子4513は、画素部4002に設けられ
たトランジスタ4010と電気的に接続している。なお発光素子4513の構成は、第1
の電極層4034、電界発光層4511、第2の電極層4031の積層構造であるが、示
した構成に限定されない。発光素子4513から取り出す光の方向などに合わせて、発光
素子4513の構成は適宜変えることができる。
【0186】
隔壁4510、507は、有機絶縁材料、又は無機絶縁材料を用いて形成する。特に感光
性の樹脂材料を用い、第1の電極層4034、541上に開口部を形成し、その開口部の
側壁が連続した曲率を持って形成される傾斜面となるように形成することが好ましい。
【0187】
電界発光層4511、542は、単数の層で構成されていても、複数の層が積層されるよ
うに構成されていてもどちらでもよい。
【0188】
発光素子4513、540に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように、第2
の電極層4031、543及び隔壁4510、507上に保護膜を形成してもよい。保護
膜としては、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜、DLC膜等を形成することができる
。
【0189】
また、発光素子4513、540に酸素、水素、水分、二酸化炭素等が侵入しないように
、発光素子4513、540を覆う有機化合物を含む層を蒸着法により形成してもよい。
【0190】
また、基板4001、基板4006、及びシール材4005によって封止された空間には
充填材4514が設けられ密封されている。このように外気に曝されないように気密性が
高く、脱ガスの少ない保護フィルム(貼り合わせフィルム、紫外線硬化樹脂フィルム等)
やカバー材でパッケージング(封入)することが好ましい。
【0191】
充填材4514としては窒素やアルゴンなどの不活性な気体の他に、紫外線硬化樹脂又は
熱硬化樹脂を用いることができ、PVC(ポリビニルクロライド)、アクリル樹脂、ポリ
イミド、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、PVB(ポリビニルブチラル)又はEVA(エ
チレンビニルアセテート共重合体)を用いることができる。例えば充填材として窒素を用
いればよい。
【0192】
また、必要であれば、発光素子の射出面に偏光板、又は円偏光板(楕円偏光板を含む)、
位相差板(λ/4板、λ/2板)、カラーフィルタなどの光学フィルムを適宜設けてもよ
い。また、偏光板又は円偏光板に反射防止膜を設けてもよい。例えば、表面の凹凸により
反射光を拡散し、映り込みを低減できるアンチグレア処理を施すことができる。
【0193】
また、表示装置として、電子インクを駆動させる電子ペーパーを提供することも可能であ
る。電子ペーパーは、電気泳動表示装置(電気泳動ディスプレイ)とも呼ばれており、紙
と同じ読みやすさ、他の表示装置に比べ低消費電力、薄くて軽い形状とすることが可能と
いう利点を有している。
【0194】
電気泳動表示装置は、様々な形態が考えられ得るが、プラスの電荷を有する第1の粒子と
、マイナスの電荷を有する第2の粒子とを含むマイクロカプセルが溶媒に複数分散された
ものであり、マイクロカプセルに電界を印加することによって、マイクロカプセル中の粒
子を互いに反対方向に移動させて一方側に集合した粒子の色のみを表示するものである。
なお、第1の粒子又は第2の粒子は染料を含み、電界がない場合において移動しないもの
である。また、第1の粒子の色と第2の粒子の色は異なるもの(無色を含む)とする。
【0195】
上記マイクロカプセルを溶媒中に分散させたものが電子インクと呼ばれるものである。カ
ラーフィルタや色素を有する粒子を用いることによってカラー表示も可能である。
【0196】
なお、
図4乃至
図6において、基板4001、500、基板4006としては、ガラス基
板の他、可撓性を有する基板も用いることができ、例えば透光性を有するプラスチック基
板などを用いることができる。プラスチックとしては、FRP(Fiberglass-
Reinforced Plastics)板、PVF(ポリビニルフルオライド)フィ
ルム、ポリエステルフィルム又はアクリル樹脂フィルムを用いることができる。また、透
光性が必要でなければ、アルミニウムやステンレスなどの金属基板(金属フィルム)を用
いてもよい。例えば、アルミニウムホイルをPVFフィルムやポリエステルフィルムで挟
んだ構造のシートを用いることもできる。
【0197】
また、平坦化絶縁層として機能する絶縁層4021、506は、アクリル樹脂、ポリイミ
ド、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機材
料を用いることができる。また上記有機材料の他に、シロキサン系樹脂、PSG(リンガ
ラス)、BPSG(リンボロンガラス)等の低誘電率材料(low-k材料)を用いるこ
とができる。なお、これらの材料で形成される絶縁層を複数積層させることで、絶縁層4
021、506を形成してもよい。
【0198】
絶縁層4021、506の形成法は、特に限定されず、その材料に応じて、スパッタリン
グ法、スピンコート、ディップ、スプレー塗布、液滴吐出法(インクジェット法)、スク
リーン印刷、オフセット印刷等を用いることができる。
【0199】
第1の電極層4034、541、第2の電極層4031、543は、酸化タングステンを
含むインジウム酸化物、酸化タングステンを含むインジウム亜鉛酸化物、酸化チタンを含
むインジウム酸化物、酸化チタンを含むインジウム錫酸化物、インジウム錫酸化物(以下
、ITOと示す。)、インジウム亜鉛酸化物、酸化ケイ素を添加したインジウム錫酸化物
、グラフェンなどの透光性を有する導電性材料を用いることができる。
【0200】
また、第1の電極層4034、541、第2の電極層4031、543はタングステン(
W)、モリブデン(Mo)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、バナジウム(
V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、ニッケ
ル(Ni)、チタン(Ti)、白金(Pt)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、銀(
Ag)等の金属、又はその合金、若しくはその金属窒化物から一つ、又は複数種を用いて
形成することができる。
【0201】
本実施の形態においては、
図5に示す発光装置は下面射出型なので、第1の電極層541
は透光性、第2の電極層543は反射性を有する。よって、第1の電極層541に金属膜
を用いる場合は透光性を保てる程度膜厚を薄く、第2の電極層543に透光性を有する導
電層を用いる場合は、反射性を有する導電層を積層するとよい。
【0202】
また、第1の電極層4034、541、第2の電極層4031、543として、導電性高
分子(導電性ポリマーともいう)を含む導電性組成物を用いて形成することができる。導
電性高分子としては、いわゆるπ電子共役系導電性高分子が用いることができる。例えば
、ポリアニリン又はその誘導体、ポリピロール又はその誘導体、ポリチオフェン又はその
誘導体、若しくはアニリン、ピロールおよびチオフェンの2種以上からなる共重合体若し
くはその誘導体などがあげられる。
【0203】
また、駆動回路保護用の保護回路を設けてもよい。保護回路は、非線形素子を用いて構成
することが好ましい。
【0204】
以上のように実施の形態1で示したトランジスタを適用することで、様々な機能を有する
半導体装置を提供することができる。
【0205】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【0206】
(実施の形態3)
実施の形態1に示したトランジスタを用いて、対象物の情報を読み取るイメージセンサ機
能を有する半導体装置を作製することができる。
【0207】
図7(A)に、イメージセンサ機能を有する半導体装置の一例を示す。
図7(A)はフォ
トセンサの等価回路であり、
図7(B)はフォトセンサの一部を示す断面図である。
【0208】
フォトダイオード602は、一方の電極がフォトダイオードリセット信号線658に、他
方の電極がトランジスタ640のゲートに電気的に接続されている。トランジスタ640
は、ソース又はドレインの一方がフォトセンサ基準信号線672に、ソース又はドレイン
の他方がトランジスタ656のソース又はドレインの一方に電気的に接続されている。ト
ランジスタ656は、ゲートがゲート信号線659に、ソース又はドレインの他方がフォ
トセンサ出力信号線671に電気的に接続されている。
【0209】
なお、本明細書における回路図において、酸化物半導体層を用いるトランジスタと明確に
判明できるように、酸化物半導体層を用いるトランジスタの記号には「OS」と記載して
いる。
図7(A)において、トランジスタ640、トランジスタ656は実施の形態1に
示したトランジスタが適用でき、酸化物半導体層を用いるトランジスタである。本実施の
形態では、実施の形態1で示したトランジスタ300と同様な構造を有するトランジスタ
を適用する例を示す。トランジスタ640は、ボトムゲート構造のトランジスタである。
【0210】
図7(B)は、フォトセンサにおけるフォトダイオード602及びトランジスタ640に
示す断面図であり、絶縁表面を有する基板601(素子基板)上に、センサとして機能す
るフォトダイオード602及びトランジスタ640が設けられている。フォトダイオード
602、トランジスタ640の上には接着層608を用いて基板613が設けられている
。
【0211】
トランジスタ640上には絶縁層632、層間絶縁層633、層間絶縁層634が設けら
れている。フォトダイオード602は、層間絶縁層633上に形成された電極層641b
と、電極層641b上に順に積層された第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、
及び第3半導体膜606cと、層間絶縁層634上に設けられ、第1乃至第3の半導体膜
を介して電極層641bと電気的に接続する電極層642と、電極層641bと同じ層に
設けられ、電極層642と電気的に接続する電極層641aと、を有している。
【0212】
電極層641bは、層間絶縁層634に形成された導電層643と電気的に接続し、電極
層642は電極層641aを介して導電層645と電気的に接続している。導電層645
は、トランジスタ640のゲート電極層と電気的に接続しており、フォトダイオード60
2はトランジスタ640と電気的に接続している。
【0213】
ここでは、第1半導体膜606aとしてp型の導電型を有する半導体膜と、第2半導体膜
606bとして高抵抗な半導体膜(i型半導体膜)、第3半導体膜606cとしてn型の
導電型を有する半導体膜を積層するpin型のフォトダイオードを例示している。
【0214】
第1半導体膜606aはp型半導体膜であり、p型を付与する不純物元素を含むアモルフ
ァスシリコン膜により形成することができる。第1半導体膜606aの形成には13族の
不純物元素(例えばボロン(B))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法に
より形成する。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH4)を用いればよい。または、S
i2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。ま
た、不純物元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入
法を用いて該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等に
より不純物元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。こ
の場合にアモルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、
又はスパッタリング法等を用いればよい。第1半導体膜606aの膜厚は10nm以上5
0nm以下となるよう形成することが好ましい。
【0215】
第2半導体膜606bは、i型半導体膜(真性半導体膜)であり、アモルファスシリコン
膜により形成する。第2半導体膜606bの形成には、半導体材料ガスを用いて、アモル
ファスシリコン膜をプラズマCVD法により形成する。半導体材料ガスとしては、シラン
(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、SiH2Cl2、SiHCl3、S
iCl4、SiF4等を用いてもよい。第2半導体膜606bの形成は、LPCVD法、
気相成長法、スパッタリング法等により行ってもよい。第2半導体膜606bの膜厚は2
00nm以上1000nm以下となるように形成することが好ましい。
【0216】
第3半導体膜606cは、n型半導体膜であり、n型を付与する不純物元素を含むアモル
ファスシリコン膜により形成する。第3半導体膜606cの形成には、15族の不純物元
素(例えばリン(P))を含む半導体材料ガスを用いて、プラズマCVD法により形成す
る。半導体材料ガスとしてはシラン(SiH4)を用いればよい。または、Si2H6、
SiH2Cl2、SiHCl3、SiCl4、SiF4等を用いてもよい。また、不純物
元素を含まないアモルファスシリコン膜を形成した後に、拡散法やイオン注入法を用いて
該アモルファスシリコン膜に不純物元素を導入してもよい。イオン注入法等により不純物
元素を導入した後に加熱等を行うことで、不純物元素を拡散させるとよい。この場合にア
モルファスシリコン膜を形成する方法としては、LPCVD法、気相成長法、又はスパッ
タリング法等を用いればよい。第3半導体膜606cの膜厚は20nm以上200nm以
下となるよう形成することが好ましい。
【0217】
また、第1半導体膜606a、第2半導体膜606b、及び第3半導体膜606cは、ア
モルファス半導体ではなく、多結晶半導体を用いて形成してもよいし、微結晶(セミアモ
ルファス(Semi Amorphous Semiconductor:SAS))半
導体を用いて形成してもよい。
【0218】
また、光電効果で発生した正孔の移動度は電子の移動度に比べて小さいため、pin型の
フォトダイオードはp型の半導体膜側を受光面とする方がよい特性を示す。ここでは、p
in型のフォトダイオードが形成されている基板601の面からフォトダイオード602
が受ける光を電気信号に変換する例を示す。また、受光面とした半導体膜側とは逆の導電
型を有する半導体膜側からの光は外乱光となるため、電極層は遮光性を有する導電層を用
いるとよい。また、n型の半導体膜側を受光面として用いることもできる。
【0219】
トランジスタ640は、ゲート絶縁層631aとして厚膜(例えば、膜厚300nm)の
膜中欠陥の低減された窒素を含むシリコン膜を含み、ゲート絶縁層631bとして、水素
濃度の低減された窒素を含むシリコン膜を有するトランジスタである。よって、トランジ
スタ640は、電気特性変動が抑制され、且つ静電破壊が抑制されている。このようなト
ランジスタ640を含むことで、信頼性の高い半導体装置を歩留まりよく提供することが
できる。
【0220】
絶縁層632、層間絶縁層633、層間絶縁層634としては、絶縁性材料を用いて、そ
の材料に応じて、スパッタリング法、プラズマCVD法、スピンコート、ディップ、スプ
レー塗布、液滴吐出法(インクジェット法)、スクリーン印刷、オフセット印刷等を用い
て形成することができる。
【0221】
層間絶縁層633、634としては、表面凹凸を低減するため平坦化絶縁層として機能す
る絶縁層が好ましい。層間絶縁層633、634としては、例えばポリイミド、アクリル
樹脂、ベンゾシクロブテン系樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂等の、耐熱性を有する有機
絶縁材料を用いることができる。また上記有機絶縁材料の他に、低誘電率材料(low-
k材料)、シロキサン系樹脂、PSG(リンガラス)、BPSG(リンボロンガラス)等
の単層、又は積層を用いることができる。
【0222】
フォトダイオード602に入射する光を検出することによって、被検出物の情報を読み取
ることができる。なお、被検出物の情報を読み取る際にバックライトなどの光源を用いる
ことができる。
【0223】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【0224】
(実施の形態4)
本明細書に開示する半導体装置は、さまざまな電子機器(遊技機も含む)に適用すること
ができる。電子機器としては、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機とも
いう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタ
ルフォトフレーム、携帯電話機、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、遊技機
(パチンコ機、スロットマシン等)、ゲーム筐体が挙げられる。これらの電子機器の具体
例を
図8に示す。
【0225】
図8(A)は、表示部を有するテーブル9000を示している。テーブル9000は、筐
体9001に表示部9003が組み込まれており、表示部9003により映像を表示する
ことが可能である。なお、4本の脚部9002により筐体9001を支持した構成を示し
ている。また、電力供給のための電源コード9005を筐体9001に有している。
【0226】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9003に用いることが可能であ
り、電子機器に高い信頼性を付与することができる。
【0227】
表示部9003は、タッチ入力機能を有しており、テーブル9000の表示部9003に
表示された表示ボタン9004を指などで触れることで、画面操作や、情報を入力するこ
とができ、また他の家電製品との通信を可能とする、又は制御を可能とすることで、画面
操作により他の家電製品をコントロールする制御装置としてもよい。例えば、実施の形態
3に示したイメージセンサ機能を有する半導体装置を用いれば、表示部9003にタッチ
入力機能を持たせることができる。
【0228】
また、筐体9001に設けられたヒンジによって、表示部9003の画面を床に対して垂
直に立てることもでき、テレビジョン装置としても利用できる。狭い部屋においては、大
きな画面のテレビジョン装置は設置すると自由な空間が狭くなってしまうが、テーブルに
表示部が内蔵されていれば、部屋の空間を有効に利用することができる。
【0229】
図8(B)は、テレビジョン装置9100を示している。テレビジョン装置9100は、
筐体9101に表示部9103が組み込まれており、表示部9103により映像を表示す
ることが可能である。なお、ここではスタンド9105により筐体9101を支持した構
成を示している。
【0230】
テレビジョン装置9100の操作は、筐体9101が備える操作スイッチや、別体のリモ
コン操作機9110により行うことができる。リモコン操作機9110が備える操作キー
9109により、チャンネルや音量の操作を行うことができ、表示部9103に表示され
る映像を操作することができる。また、リモコン操作機9110に、当該リモコン操作機
9110から出力する情報を表示する表示部9107を設ける構成としてもよい。
【0231】
図8(B)に示すテレビジョン装置9100は、受信機やモデムなどを備えている。テレ
ビジョン装置9100は、受信機により一般のテレビ放送の受信を行うことができ、さら
にモデムを介して有線又は無線による通信ネットワークに接続することにより、一方向(
送信者から受信者)又は双方向(送信者と受信者間、あるいは受信者間同士など)の情報
通信を行うことも可能である。
【0232】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9103、9107に用いること
が可能であり、テレビジョン装置、及びリモコン操作機に高い信頼性を付与することがで
きる。
【0233】
図8(C)はコンピュータであり、本体9201、筐体9202、表示部9203、キー
ボード9204、外部接続ポート9205、ポインティングデバイス9206等を含む。
【0234】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9203に用いることが可能であ
り、コンピュータに高い信頼性を付与することができる。
【0235】
図9(A)及び
図9(B)は2つ折り可能なタブレット型端末である。
図9(A)は、開
いた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、表示部9631a、表示部963
1b、表示モード切り替えスイッチ9034、電源スイッチ9035、省電力モード切り
替えスイッチ9036、留め具9033、操作スイッチ9038、を有する。
【0236】
上記実施の形態のいずれかに示す半導体装置は、表示部9631a、表示部9631bに
用いることが可能であり、信頼性の高いタブレット型端末とすることが可能となる。
【0237】
表示部9631aは、一部をタッチパネルの領域9632aとすることができ、表示され
た操作キー9638にふれることでデータ入力をすることができる。なお、表示部963
1aにおいては、一例として半分の領域が表示のみの機能を有する構成、もう半分の領域
がタッチパネルの機能を有する構成を示しているが該構成に限定されない。表示部963
1aの全ての領域がタッチパネルの機能を有する構成としても良い。例えば、表示部96
31aの全面をキーボードボタン表示させてタッチパネルとし、表示部9631bを表示
画面として用いることができる。
【0238】
また、表示部9631bにおいても表示部9631aと同様に、表示部9631bの一部
をタッチパネルの領域9632bとすることができる。また、タッチパネルのキーボード
表示切り替えボタン9639が表示されている位置に指やスタイラスなどでふれることで
表示部9631bにキーボードボタン表示することができる。
【0239】
また、タッチパネルの領域9632aとタッチパネルの領域9632bに対して同時にタ
ッチ入力することもできる。
【0240】
また、表示モード切り替えスイッチ9034は、縦表示又は横表示などの表示の向きを切
り替え、白黒表示やカラー表示の切り替えなどを選択できる。省電力モード切り替えスイ
ッチ9036は、タブレット型端末に内蔵している光センサで検出される使用時の外光の
光量に応じて表示の輝度を最適なものとすることができる。タブレット型端末は光センサ
だけでなく、ジャイロ、加速度センサ等の傾きを検出するセンサなどの他の検出装置を内
蔵させてもよい。
【0241】
また、
図9(A)では表示部9631bと表示部9631aの表示面積が同じ例を示して
いるが特に限定されず、一方のサイズともう一方のサイズが異なっていてもよく、表示の
品質も異なっていてもよい。例えば一方が他方よりも高精細な表示を行える表示パネルと
してもよい。
【0242】
図9(B)は、閉じた状態であり、タブレット型端末は、筐体9630、太陽電池963
3、充放電制御回路9634を有する。なお、
図9(B)では充放電制御回路9634の
一例としてバッテリー9635、DCDCコンバータ9636を有する構成について示し
ている。
【0243】
なお、タブレット型端末は2つ折り可能なため、未使用時に筐体9630を閉じた状態に
することができる。従って、表示部9631a、表示部9631bを保護できるため、耐
久性に優れ、長期使用の観点からも信頼性の優れたタブレット型端末を提供できる。
【0244】
また、この他にも
図9(A)及び
図9(B)に示したタブレット型端末は、様々な情報(
静止画、動画、テキスト画像など)を表示する機能、カレンダー、日付又は時刻などを表
示部に表示する機能、表示部に表示した情報をタッチ入力操作又は編集するタッチ入力機
能、様々なソフトウェア(プログラム)によって処理を制御する機能、等を有することが
できる。
【0245】
タブレット型端末の表面に装着された太陽電池9633によって、電力をタッチパネル、
表示部、又は映像信号処理部等に供給することができる。なお、太陽電池9633は、筐
体9630の片面又は両面に設けることができ、バッテリー9635の充電を効率的に行
うことができる。なおバッテリー9635としては、リチウムイオン電池を用いると、小
型化を図れる等の利点がある。
【0246】
また、
図9(B)に示す充放電制御回路9634の構成、及び動作について
図9(C)に
ブロック図を示し説明する。
図9(C)には、太陽電池9633、バッテリー9635、
DCDCコンバータ9636、コンバータ9637、スイッチSW1乃至SW3、表示部
9631について示しており、バッテリー9635、DCDCコンバータ9636、コン
バータ9637、スイッチSW1乃至SW3が、
図9(B)に示す充放電制御回路963
4に対応する箇所となる。
【0247】
まず外光により太陽電池9633により発電がされる場合の動作の例について説明する。
太陽電池で発電した電力は、バッテリー9635を充電するための電圧となるようDCD
Cコンバータ9636で昇圧又は降圧がなされる。そして、表示部9631の動作に太陽
電池9633からの電力が用いられる際にはスイッチSW1をオンにし、コンバータ96
37で表示部9631に必要な電圧に昇圧又は降圧をすることとなる。また、表示部96
31での表示を行わない際には、SW1をオフにし、SW2をオンにしてバッテリー96
35の充電を行う構成とすればよい。
【0248】
なお太陽電池9633については、発電手段の一例として示したが、特に限定されず、圧
電素子(ピエゾ素子)や熱電変換素子(ペルティエ素子)などの他の発電手段によるバッ
テリー9635の充電を行う構成であってもよい。例えば、無線(非接触)で電力を送受
信して充電する無接点電力伝送モジュールや、また他の充電手段を組み合わせて行う構成
としてもよい。
【0249】
本実施の形態に示す構成、方法などは、他の実施の形態に示す構成、方法などと適宜組み
合わせて用いることができる。
【実施例0250】
本実施例では、プラズマCVD法により成膜した窒化シリコン膜の膜質の評価結果ついて
説明する。具体的には、供給ガスをシランと窒素の混合ガスとして成膜した窒化シリコン
膜と、供給ガスをシランと窒素とアンモニアの混合ガスとして成膜した窒化シリコン膜の
、ESR測定の結果を示す。
【0251】
本実施例において、ESR測定に用いた試料の作製方法を以下に説明する。
【0252】
ESR測定には、石英基板上に厚さ300nmの窒化シリコン膜を成膜した試料1乃至試
料5を用いた。窒化シリコン膜の成膜は、石英基板をプラズマCVD装置の成膜室内に設
置し、成膜室内の圧力を100Paに制御し、27.12MHzの高周波電源で2000
Wの電力を供給した。また、基板温度は350℃とした。なお、該プラズマCVD装置は
電極面積が6000cm2である平行平板型のプラズマCVD装置である。試料1は、供
給ガスをシランと窒素の混合ガスとした。また、試料2乃至試料5は、供給ガスをシラン
と窒素とアンモニアの混合ガスとした。各試料における成膜条件を、以下の表1に示す。
【0253】
【0254】
作製した試料1乃至試料5について、ESR測定を行った。ESR測定は以下の条件で行
った。測定温度は、-170℃とし、9.2GHzの高周波電力(マイクロ波パワー)は
1mWとし、磁場の向きは作製した試料1乃至試料5の窒化シリコン膜の表面と平行とし
、窒化シリコン膜に含まれるNcセンターに由来するg=2.003に現れる信号に対応
するスピン密度の検出下限は、8.1×1015spins/cm3である。
【0255】
ESR測定の結果を
図10(A)に示す。
図10(A)から、供給ガスにアンモニアを含
まない試料1のNcセンターに由来するスピン密度は2.7×10
17spins/cm
3であり、膜中欠陥の多い窒化シリコン膜であることが確認された。一方、供給ガスにア
ンモニアを含有する試料2乃至試料5では、Ncセンターに由来するスピン密度が5.1
×10
16spins/cm
3(試料2)、5.2×10
16spins/cm
3(試料
3)、6.0×10
16spins/cm
3(試料4)、5.5×10
16spins/
cm
3(試料5)と、アンモニアの流量に依存せずに一様に低い値を示し、膜中欠陥の低
減された窒化シリコン膜であることが確認された。
【0256】
また、ESR測定によって得られた1次微分曲線を
図10(B)に示す。
図10(B)よ
り、g値が2.003において、試料1では膜中欠陥(Ncセンター)に由来する信号が
強い強度で検出された。一方、試料2乃至試料5においては、g値が2.003における
信号強度は小さいことが確認された。
【0257】
以上より、プラズマCVD法により窒化シリコン膜を成膜する際の供給ガスをシランと窒
素とアンモニアの混合ガスとすることで、膜中欠陥の低減された窒化シリコン膜を成膜可
能であることが示された。当該窒化シリコン膜をゲート絶縁層として用いることで、絶縁
耐圧の良好なゲート絶縁層を実現可能であり、該ゲート絶縁層を含むトランジスタをES
D耐性の良好なトランジスタとすることが可能であることが示唆される。