(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164518
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】ヒートシール可能なポリエステルフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20231102BHJP
C08G 63/181 20060101ALI20231102BHJP
C08G 63/78 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
B32B27/36
C08G63/181
C08G63/78
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144429
(22)【出願日】2023-09-06
(62)【分割の表示】P 2021038252の分割
【原出願日】2021-03-10
(31)【優先権主張番号】109123834
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】楊 文政
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】蕭 嘉▲彦▼
(72)【発明者】
【氏名】袁 ▲敬▼堯
(57)【要約】
【課題】従来技術の不足に対し、ヒートシール可能なポリエステルフィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明はヒートシール可能なポリエステルフィルム及びその製造方法を開示する。ヒートシール可能なポリエステルフィルムは回收ポリエステル材料で作製される。ヒートシール可能なポリエステルフィルムは、基材層、及びヒートシール層を備える。ヒートシール層は基材層の少なくとも一面に形成され、ヒートシール層は第1のポリエステル組成物で形成され、第1のポリエステル組成物の主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、第1のポリエステル組成物は、再生ポリエチレンテレフタレートの他に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、及びポリブチレンテレフタレートの中から選ばれる少なくとも一種をさらに含む。ヒートシール可能なポリエステルフィルムのヒートシール可能温度は120℃~230℃である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、及びヒートシール層を備え、回收ポリエステル材料で作製されるヒートシール可能なポリエステルフィルムであって、
前記ヒートシール層は、前記基材層の少なくとも一面に形成され、前記ヒートシール層は、第1のポリエステル組成物で形成され、
前記第1のポリエステル組成物は、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を含み、前記物理的再生ポリエステル樹脂の主成分及び前記化学的再生ポリエステル樹脂の主成分は、それぞれ、再生ポリエチレンテレフタレートであり、前記第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、前記物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は50~95重量%であり、前記化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は1~40重量%であり、前記物理的再生ポリエステル樹脂及び前記化学的再生ポリエステル樹脂の総含有量は51~100重量%であり、
前記化学的再生ポリエステル樹脂は、化学的再生ポリエステルマスターバッチで形成され、前記化学的再生ポリエステルマスターバッチは、化学的再生通常ポリエステルマスターバッチ、化学的再生静電気密着ポリエステルマスターバッチ、及び化学的再生変性ポリエステルマスターバッチを含み、前記化学的再生変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、前記化学的再生変性ポリエステルマスターバッチは、前記再生ポリエチレンテレフタレートの他に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、及びネオペンチルグリコールの中から選ばれる少なくとも一種の残基を含み、前記化学的再生変性ポリエステルマスターバッチの総重量を100重量%としたときに、前記化学的再生変性ポリエステルマスターバッチは、0~30重量%の1,4-ブタンジオール残基、0~30重量%のイソフタル酸残基、及び0~30重量%のネオペンチルグリコール残基を含む、ことを特徴とするヒートシール可能なポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記物理的再生ポリエステル樹脂は、物理的再生ポリエステルマスターバッチで形成され、前記物理的再生ポリエステルマスターバッチは、物理的再生通常ポリエステルマスターバッチ、及び物理的再生変性ポリエステルマスターバッチを含み、前記物理的再生変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、前記物理的再生変性ポリエステルマスターバッチは、前記再生ポリエチレンテレフタレートの他に、ポリブチレンテレフタレートをさらに含み、前記物理的再生ポリエステルマスターバッチの総重量を100重量%としたときに、前記物理的再生変性ポリエステルマスターバッチは、0~30重量%のポリブチレンテレフタレートを含む、請求項1に記載のヒートシール可能なポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記物理的再生ポリエステル樹脂における環状オリゴマーの濃度は、前記化学的再生ポリエステル樹脂における環状オリゴマーの濃度よりも低い、請求項1に記載のヒートシール可能なポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記ヒートシール層の厚さは、前記ヒートシール可能なポリエステルフィルムの厚さの3%~30%であり、前記ヒートシール可能なポリエステルフィルムの厚さは4μm~100μmであり、前記ヒートシール層の厚さは0.5μm~10μmである、請求項1に記載のヒートシール可能なポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、前記第1のポリエステル組成物は0.5~5重量%のイソフタル酸残基を含む、請求項1に記載のヒートシール可能なポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、前記第1のポリエステル組成物は1~25重量%のバイオマス誘導材料を含み、前記第1のポリエステル組成物中の全炭素原子に対して、前記第1のポリエステル組成物中のC14の割合は0.2~5重量%である、請求項1に記載のヒートシール可能なポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、前記第1のポリエステル組成物は0.0003~0.04重量%の金属触媒を含み、前記金属触媒は、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、又はそれらを組み合わせてなる物からなる群から選ばれる、請求項1に記載のヒートシール可能なポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記基材層は、第2のポリエステル組成物で形成され、前記第2のポリエステル組成物の主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、前記第2のポリエステル組成物は、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を含み、前記物理的再生ポリエステル樹脂の主成分及び前記化学的再生ポリエステル樹脂の主成分は、それぞれ、再生ポリエチレンテレフタレートであり、前記第2のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、前記物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は50~95重量%であり、前記化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は1~40重量%であり、前記物理的再生ポリエステル樹脂及び前記化学的再生ポリエステル樹脂の総含有量は51~100重量%である、請求項1に記載のヒートシール可能なポリエステルフィルム。
【請求項9】
一部分の回收ポリエステル材料を物理的再生し、物理的再生通常ポリエステルマスターバッチを含む物理的再生ポリエステルマスターバッチを得るステップと、
他部分の前記回收ポリエステル材料を化学的再生し、化学的再生通常ポリエステルマスターバッチ及び化学的再生静電気密着ポリエステルマスターバッチを含む化学的再生ポリエステルマスターバッチを得るステップと、
前記回收ポリエステル材料を再生することによって得た変性ポリエステルマスターバッチ、前記物理的再生ポリエステルマスターバッチ、及び前記化学的再生ポリエステルマスターバッチを混合し、原料混合物を形成するステップと、
前記原料混合物でヒートシール層を形成するステップと、
前記ヒートシール層に基材層を形成し、ヒートシール可能なポリエステルフィルムを得るステップと、を含むヒートシール可能なポリエステルフィルムの製造方法であって
前記変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、前記変性ポリエステルマスターバッチは、前記再生ポリエチレンテレフタレートの他に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、及びネオペンチルグリコールの中から選ばれる少なくとも一種の残基をさらに含み、ポリブチレンテレフタレートをさらに含むか又は含まない、ことを特徴とするヒートシール可能なポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記変性ポリエステルマスターバッチは、化学的再生変性ポリエステルマスターバッチ、物理的再生変性ポリエステルマスターバッチ、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項9に記載のヒートシール可能なポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項11】
前記化学的再生変性ポリエステルマスターバッチを作製するステップは、
前記回收ポリエステル材料を解重合し、第1のオリゴマー混合物を得るステップと、
前記第1のオリゴマー混合物に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、及びネオペンチルグリコールの中から選ばれる少なくとも一種を添加し、第2のオリゴマー混合物を形成するステップと、
前記第2のオリゴマー混合物を再重合し、前記化学的再生変性ポリエステルマスターバッチを得るステップと、を含み、
前記化学的再生変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、前記化学的再生変性ポリエステルマスターバッチは、前記再生ポリエチレンテレフタレートの他に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、及びネオペンチルグリコールの中から選ばれる少なくとも一種の残基を含む、請求項10に記載のヒートシール可能なポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項12】
前記物理的再生変性ポリエステルマスターバッチを作製するステップは、
前記回收ポリエステル材料を溶融させ、第1の溶融混合物を得るステップと、
前記第1の溶融混合物にポリブチレンテレフタレートを添加し、第2の溶融混合物を形成するステップと、
前記第2の溶融混合物を再成形し、前記物理的再生変性ポリエステルマスターバッチを得るステップと、を含み、
前記物理的再生変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、前記物理的再生変性ポリエステルマスターバッチは、前記再生ポリエチレンテレフタレートの他に、ポリブチレンテレフタレートをさらに含む、請求項10に記載のヒートシール可能なポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項13】
一部分の回收ポリエステル材料を物理的再生し、物理的再生通常ポリエステルマスターバッチを含む物理的再生ポリエステルマスターバッチを得るステップと、
他部分の前記回收ポリエステル材料を化学的再生し、化学的再生通常ポリエステルマスターバッチ及び化学的再生静電気密着ポリエステルマスターバッチを含む化学的再生ポリエステルマスターバッチを得るステップと、
前記回收ポリエステル材料を再生することによって得た変性ポリエステルマスターバッチ、前記物理的再生ポリエステルマスターバッチ、及び前記化学的再生ポリエステルマスターバッチを混合し、原料混合物を形成するステップと、
前記物理的再生ポリエステルマスターバッチ及び前記化学的再生ポリエステルマスターバッチを混合し、基材を形成するステップと、
前記原料混合物及び前記基材を共押出し、前記原料混合物で形成されるヒートシール層、及び前記基材で形成される基材層を含むヒートシール可能なポリエステルフィルムを得るステップと、を含むヒートシール可能なポリエステルフィルムの製造方法であって、
前記変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、前記変性ポリエステルマスターバッチは、前記再生ポリエチレンテレフタレートの他に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、及びネオペンチルグリコールの中から選ばれる少なくとも一種の残基をさらに含み、ポリブチレンテレフタレートをさらに含むか又は含まない、ことを特徴とするヒートシール可能なポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートシール可能なポリエステルフィルム及びその製造方法に関し、特に、回收ポリエステルを用いて作製されるヒートシール可能なポリエステルフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックの使用量が大幅に増加したため、大量のプラスチックごみが発生している。プラスチックは分解が難しいため、回収及び回収後の処理が格別に重要である。
【0003】
回収プラスチックにおいては、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)が多くを占め、PET回収プラスチックの含有量は全回収プラスチックの約52.4%を占める。このような大量のPET回収プラスチックに対し、当業者はPET回収プラスチックの処理方法の開発に注力しなければならない。
【0004】
従来技術において、PET回収方法としては、PETを物理(機械)的に再生する方法が最もよく見られる。まず、洗浄されたPET回収プラスチックをフレークに裁断して高温で溶かし、次いで押出機によって押し出し、PET回収ペレット(又はr-PETと称される)を得る。
【0005】
環境を配慮しながら、PET製品における回収PETペレットの含有率を多くするためには、品質の高い回収PETペレットを大量に使用する必要がある。業界では、今は、物理的にPETを回収することが多いが、作製される回収ペレットには、製造過程において、滑剤、静電気密着剤などの機能性成分を添加することができない。そのため、他にPETバージンペレット(virgin PET resin)を使用することによって、前記機能性成分を添加しなければならない。
【0006】
しかし、PETバージンペレットを添加すると、PET製品におけるPET回収ペレットの使用率は低下する。すなわち、従来技術ではPET回収ペレットのみで新しいPET製品を製造することができない。PET回収ペレットの使用率が低下すると、環境ラベルの使用基準に合わず、環境ラベルを使用できない恐れがある。また、PET製品の製造過程において使用されるPETバージンペレットは、使用後は処理する必要があるため、回収再利用の問題が再度発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的問題は、従来技術の不足に対し、ヒートシール可能なポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した技術的問題を解決するために、本発明が採用する技術的手段は、ヒートシール可能なポリエステルフィルムを提供することである。前記ヒートシール可能なポリエステルフィルムは、回收ポリエステル材料で作製される。ヒートシール可能なポリエステルフィルムは、基材層、及びヒートシール層を備える。ヒートシール層は、基材層の少なくとも一面に形成され、ヒートシール層は、第1のポリエステル組成物で形成され、第1のポリエステル組成物の主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、第1のポリエステル組成物は、再生ポリエチレンテレフタレートの他に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、及びポリブチレンテレフタレートの中から選ばれる少なくとも一種をさらに含む。ヒートシール可能なポリエステルフィルムのヒートシール可能温度は120℃~230℃である。
【0009】
一部の実施形態において、第1のポリエステル組成物は、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を含み、物理的再生ポリエステル樹脂の主成分及び化学的再生ポリエステル樹脂の主成分は、それぞれ、再生ポリエチレンテレフタレートであり、第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は50~95重量%であり、化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は1~40重量%であり、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂の総含有量は50~100重量%である。
【0010】
一部の実施形態において、化学的再生ポリエステル樹脂は、化学的再生ポリエステルマスターバッチで形成され、化学的再生ポリエステルマスターバッチは、化学的再生通常ポリエステルマスターバッチ、化学的再生静電気密着ポリエステルマスターバッチ、及び化学的再生変性ポリエステルマスターバッチを含む。化学的再生変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、化学的再生変性ポリエステルマスターバッチは、再生ポリエチレンテレフタレートの他に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、及びネオペンチルグリコールの中から選ばれる少なくとも一種の残基を含む。化学的再生変性ポリエステルマスターバッチの総重量を100重量%としたときに、化学的再生変性ポリエステルマスターバッチは、0~30重量%の1,4-ブタンジオール残基、0~30重量%のイソフタル酸残基、及び0~30重量%のネオペンチルグリコール残基を含む。
【0011】
一部の実施形態において、物理的再生ポリエステル樹脂は、物理的再生ポリエステルマスターバッチで形成され、物理的再生ポリエステルマスターバッチは、物理的再生通常ポリエステルマスターバッチ、及び物理的再生変性ポリエステルマスターバッチを含む。物理的再生変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、物理的再生変性ポリエステルマスターバッチは、再生ポリエチレンテレフタレートの他に、ポリブチレンテレフタレートをさらに含む。物理的再生ポリエステルマスターバッチの総重量を100重量%としたときに、物理的再生変性ポリエステルマスターバッチは、0~30重量%のポリブチレンテレフタレートを含む。
【0012】
一部の実施形態において、物理的再生ポリエステル樹脂における環状オリゴマーの濃度は、化学的再生ポリエステル樹脂における環状オリゴマーの濃度よりも低い。
【0013】
一部の実施形態において、ヒートシール層の厚さは、ヒートシール可能なポリエステルフィルムの厚さの3%~30%であり、ヒートシール可能なポリエステルフィルムの厚さは4μmμm~100μmであり、ヒートシール層の厚さは0.5μm~10μmである。
【0014】
一部の実施形態において、第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、第1のポリエステル組成物は0.5~5重量%のイソフタル酸を含む。
【0015】
一部の実施形態において、第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、第1のポリエステル組成物は1~25重量%のバイオマス誘導材料を含み、第1のポリエステル組成物中の全炭素原子に対して、第1のポリエステル組成物中のC14の割合は0.2~5重量%である。
【0016】
一部の実施形態において、第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、第1のポリエステル組成物は0.0003~0.04重量%の金属触媒を含み、金属触媒は、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、又はそれらを組み合わせてなる物からなる群から選ばれる。
【0017】
一部の実施形態において、基材層は、第2のポリエステル組成物で形成され、第2のポリエステル組成物の主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、第2のポリエステル組成物は、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を含み、物理的再生ポリエステル樹脂の主成分及び化学的再生ポリエステル樹脂の主成分は、それぞれ、再生ポリエチレンテレフタレートである。第2のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は50~95重量%であり、化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は1~40重量%であり、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂の総含有量は50~100重量%である。
【0018】
上述した技術的問題を解決するために、本発明が採用する別の技術的手段は、ヒートシール可能なポリエステルフィルムの製造方法を提供することである。前記ヒートシール可能なポリエステルフィルムの製造方法は、一部分の回收ポリエステル材料を物理的再生し、物理的再生通常ポリエステルマスターバッチを含む物理的再生ポリエステルマスターバッチを得るステップと、他部分の回收ポリエステル材料を化学的再生し、化学的再生通常ポリエステルマスターバッチ及び静電気密着ポリエステルマスターバッチを含む化学的再生ポリエステルマスターバッチを得るステップと、回收ポリエステル材料を再生することによって得た変性ポリエステルマスターバッチ、物理的再生ポリエステルマスターバッチ、及び化学的再生ポリエステルマスターバッチを混合し、原料混合物を形成するステップと、原料混合物でヒートシール層を形成するステップと、ヒートシール層に基材層を形成し、ヒートシール可能なポリエステルフィルムを得るステップと、を含む。変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、変性ポリエステルマスターバッチは、再生ポリエチレンテレフタレートの他に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、及びポリブチレンテレフタレートの中から選ばれる少なくとも一種をさらに含む。なかでも、ヒートシール可能なポリエステルフィルムのヒートシール可能温度は120℃~230℃である。
【0019】
一部の実施形態において、変性ポリエステルマスターバッチは、化学的再生変性ポリエステルマスターバッチ、物理的再生変性ポリエステルマスターバッチ、及びそれらの混合物からなる群から選ばれる。
【0020】
一部の実施形態において、化学的再生変性ポリエステルマスターバッチを作製するステップは、回收ポリエステル材料を解重合し、第1のオリゴマー混合物を得るステップと、第1のオリゴマー混合物に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、及びネオペンチルグリコールの中から選ばれる少なくとも一種を添加し、第2のオリゴマー混合物を形成するステップと、第2のオリゴマー混合物を再重合し、化学的再生変性ポリエステルマスターバッチを得るステップと、を含む。化学的再生変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、化学的再生変性ポリエステルマスターバッチは、再生ポリエチレンテレフタレートの他に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、及びネオペンチルグリコールの中から選ばれる少なくとも一種の残基を含む。
【0021】
一部の実施形態において、物理的再生変性ポリエステルマスターバッチを作製するステップは、回收ポリエステル材料を溶融させ、第1の溶融混合物を得るステップと、第1の溶融混合物にポリブチレンテレフタレートを添加し、第2の溶融混合物を形成するステップと、第2の溶融混合物を再成形し、物理的再生変性ポリエステルマスターバッチを得るステップと、を含む。物理的再生変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、物理的再生変性ポリエステルマスターバッチは、再生ポリエチレンテレフタレートの他に、ポリブチレンテレフタレートをさらに含む。
【0022】
上述した技術的問題を解決するために、本発明が採用する他の技術的手段は、ヒートシール可能なポリエステルフィルムの製造方法を提供することである。前記ヒートシール可能なポリエステルフィルムの製造方法は、一部分の回收ポリエステル材料を物理的再生し、物理的再生通常ポリエステルマスターバッチを含む物理的再生ポリエステルマスターバッチを得るステップと、他部分の回收ポリエステル材料を化学的再生し、化学的再生通常ポリエステルマスターバッチ及び静電気密着ポリエステルマスターバッチを含む化学的再生ポリエステルマスターバッチを得るステップと、回收ポリエステル材料を再生することによって得た変性ポリエステルマスターバッチ、物理的再生ポリエステルマスターバッチ、及び化学的再生ポリエステルマスターバッチを混合し、原料混合物を形成するステップと、物理的再生ポリエステルマスターバッチ及び化学的再生ポリエステルマスターバッチを混合し、基材を形成するステップと、原料混合物及び基材を共押出し、原料混合物で形成されるヒートシール層、及び基材で形成される基材層を含むヒートシール可能なポリエステルフィルムを得るステップと、を含む。変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、変性ポリエステルマスターバッチは、再生ポリエチレンテレフタレートの他に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、及びポリブチレンテレフタレートの中から選ばれる少なくとも一種をさらに含む。なかでも、ヒートシール可能なポリエステルフィルムのヒートシール可能温度は120℃~230℃である。
【発明の効果】
【0023】
本発明の一つの有利な効果としては、本発明が提供するヒートシール可能なポリエステルフィルム及びその製造方法は、「第1のポリエステル組成物の主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートである」、及び「第1のポリエステル組成物は、再生ポリエチレンテレフタレートの他に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、及びポリブチレンテレフタレートの中から選ばれる少なくとも一種をさらに含む」といった技術的手段によって、ヒートシール可能なポリエステルフィルムにおける回收ポリエステル材料の含有量を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るヒートシール可能なポリエステルフィルムを示す側面模式図である。
【
図2】本発明の第2の実施形態に係るヒートシール可能なポリエステルフィルムを示す側面模式図である。
【
図3】本発明の第3の実施形態に係るヒートシール可能なポリエステルフィルムを示す側面模式図である。
【
図4】本発明のヒートシール可能なポリエステルフィルムの製造方法を示すステップ流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の特徴及び技術内容をより良く理解するために、本発明に係る詳細な説明と図面を参照するが、提供される図面は、参照と説明のためのものに過ぎず、本発明を制限するためのものではない。
【0026】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明が開示する「ヒートシール可能なポリエステルフィルム及びその製造方法」に係る実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行又は適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際の寸法に基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容は本発明の保護範囲を制限するためのものではない。また、本願で使用される用語「又は」は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含む可能性がある。
[第1の実施形態]
【0027】
図1を参照されたい。図面に示すように、本発明のヒートシール可能なポリエステルフィルムZは、基材層1及びヒートシール層2を備える。ヒートシール層2は、基材層1の少なくとも一面に形成される。一般的に言えば、ヒートシール層2の融点は基材層1の融点よりも低く、それによって、2つのヒートシール可能なポリエステルフィルムZを積み重ね、ホットプレスを行うと、融点が比較的に低いヒートシール層2は溶融し、ヒートシール可能なポリエステルフィルムZは互いに接合される。
【0028】
本実施形態において、ヒートシール可能なポリエステルフィルムZの厚さは4μm~100μmである。ヒートシール層2の厚さは、0.5μm~10μmである。ヒートシール層2の厚さは、ヒートシール可能なポリエステルフィルムZの厚さの3%~30%である。
【0029】
基材層1は、ポリエステル組成物で形成され、ポリエステル組成物の主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、ポリエステル組成物は、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を含み、物理的再生ポリエステル樹脂の主成分及び化学的再生ポリエステル樹脂の主成分は、それぞれ、再生ポリエチレンテレフタレートである。
【0030】
基材層1を形成するポリエステル組成物において、ポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は50~95重量%であり、化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は1~40重量%であり、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂の総含有量は50~100重量%である。
【0031】
ヒートシール層2は、ポリエステル組成物で形成され、ポリエステル組成物の主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、ポリエステル組成物は、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を含み、物理的再生ポリエステル樹脂の主成分及び化学的再生ポリエステル樹脂の主成分は、それぞれ、再生ポリエチレンテレフタレートである。
【0032】
ヒートシール層2を形成するポリエステル組成物において、ポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は50~95重量%であり、化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は1~40重量%であり、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂の総含有量は50~100重量%である。
【0033】
また、ヒートシール層2を形成するポリエステル組成物は、変性剤を含み、変性剤は1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、及びポリブチレンテレフタレートの中から選ばれる少なくとも一種を含む。変性剤を添加することで、ヒートシール層2の融点を下げることができ、それによって、ヒートシール可能なポリエステルフィルムZは、120℃~230℃の温度範囲でヒートシールを行うことができる。
【0034】
上記に続いて、基材層1及びヒートシール層2は、それぞれ、ポリエステル組成物で形成され、上記ポリエステル組成物のそれぞれは、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を含む。注意すべきことは、基材層1を形成するポリエステル組成物と、ヒートシール層2を形成するポリエステル組成物とは、互いに同様であってもよく、異なっていてもよいことにある。
【0035】
本発明は、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を混用することにより、基材層1及びヒートシール層2における回收ポリエステル材料の使用率を大幅に上げられ、他にバージンポルエステルマスターバッチ(チップ)を添加する従来の技術と比較して、環境保護の効果をより達成でき、物理的再生ポリエステル樹脂のみを使用する際に発生する、不純物が多いという従来の問題も起こらない。
【0036】
更に言えば、上述した物理的再生ポリエステル樹脂は、一種、又は多種の物理的再生ポリエステルマスターバッチで形成され、物理的再生ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートである。上述した化学的再生ポリエステル樹脂は、一種又は多種の化学的再生ポリエステルマスターバッチ(チップ)で形成され、化学的再生ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートである。物理的再生ポリエステルマスターバッチ及び化学的再生ポリエステルマスターバッチの製造方法は後述する。
【0037】
図4を参照されたい。本発明において、ヒートシール可能なポリエステルフィルムの製造方法は以下のステップを含む:一部分の回收ポリエステル材料を物理的再生し、再生ポリエチレンテレフタレートが主成分の物理的再生ポリエステルマスターバッチを得る(S1)、他部分の回收ポリエステル材料を化学的再生し、再生ポリエチレンテレフタレートが主成分の化学的再生ポリエステルマスターバッチを得る(S2)、物理的再生ポリエステルマスターバッチ、化学的再生ポリエステルマスターバッチ、及び回收ポリエステル材料を再生することによって得た、再生ポリエチレンテレフタレートが主成分の変性ポリエステルマスターバッチを混合し、原料混合物を形成する(S3)、物理的再生ポリエステルマスターバッチ及び化学的再生ポリエステルマスターバッチを混合し、基材を形成する(S4)、原料混合物及び基材を共押出し、ヒートシール可能なポリエステルフィルムを得る(S5)。
【0038】
ステップS1において、物理的再生は以下のステップを含む:回收ポリエステル材料(例えば、ペットボトルチップ)を裁断し、裁断後のボトルチップを溶融させて溶融混合物を形成し、次いで、単軸又は二軸押出機によって溶融混合物を造粒することにより、物理的再生ポリエステルマスターバッチを得ることができる。
【0039】
本実施形態において、物理的再生ポリエステルマスターバッチ(physically recycled polyester masterbatches)は、物理的再生通常ポリエステルマスターバッチを含んでもよい。「物理的再生通常ポリエステルマスターバッチ」とは、物理的再生によって作製されるポリエステルマスターバッチのことを指し、上記物理的再生通常ポリエステルマスターバッチには機能性添加剤が一切添加されていない。本実施形態において、物理的再生通常ポリエステルマスターバッチの成分は、再生ポリエチレンテレフタレートを含む。
【0040】
また、物理的再生の過程において、溶融混合物に、機能性添加剤、例えば、滑剤、色料、又は艶消し剤を添加してもよい。それによって、異なる機能を有する物理的再生ポリエステルマスターバッチを作製する。
【0041】
例えて言えば、滑剤は、二酸化ケイ素、ポリスチレン(PS)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、シリコーン、アクリル、又はそれらを組み合わせてなる物であってもよいが、これに制限されず、滑剤の粒子寸法は2μm未満である。本実施形態において、滑剤は球状を呈し、それによって、良好な透光性を有する。溶融混合物に滑剤を添加することで、物理的再生滑剤ポリエステルマスターバッチを作製することができる。本実施形態において、物理的再生滑剤ポリエステルマスターバッチの成分は、再生ポリエチレンテレフタレート、及び滑剤を含む。
【0042】
例えて言えば、色料は、着色剤、又は有色添加物であってもよいが、これに制限されない。例えば、有色添加物は、カーボンブラック、二酸化チタン、硫酸バリウム、又は炭酸カルシウムであってもよい。溶融混合物に色料を添加することで、物理的再生色料ポリエステルマスターバッチを作製することができる。本実施形態において、物理的再生色料ポリエステルマスターバッチの成分は、再生ポリエチレンテレフタレート、及び色料を含む。
【0043】
例えて言えば、艶消し剤は、二酸化ケイ素、有機物、シリコーン、アクリル、又はそれらを組み合わせてなる物であってもよいが、これに制限されない。好ましい一実施形態において、艶消し剤は、球状を呈し、それによって、光の散乱を増大させることができる。溶融混合物に艶消し剤を添加することで、物理的再生艶消し剤ポリエステルマスターバッチを作製することができる。本実施形態において、物理的再生艶消し剤ポリエステルマスターバッチの成分は、再生ポリエチレンテレフタレート、及び艶消し剤を含む。
【0044】
ステップS2において、化学的再生は以下のステップを含む:回收ポリエステル材料(例えば、ペットボトルチップ)を裁断し、裁断後のボトルチップを化学解重合液に入れ、ポリエステルの分子鎖を切断することで、回收ポリエステル材料を解重合し、分子鎖がより短いポリエステル組成、及び一つのジオールユニットと2つの二塩基酸ユニットとからなるエステル系モノマー(例えば、ビス-(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート(BHET)))を得る。次いで、分離精製でオリゴマー混合物を単離し、その後、オリゴマー混合物を再重合することにより、化学的再生ポリエステルマスターバッチを得る。本実施形態において、化学的再生通常ポリエステルマスターバッチの成分は、再生ポリエチレンテレフタレートを含む。
【0045】
本実施形態において、化学解重合液は、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、又はそれらを組み合わせてなる物の溶液であってもよいが、これに制限されない。例えば、水は加水分解に使用され、メタノール、エタノール、エチレングリコール、及びジエチレングリコールは加アルコール分解に使用される。好ましい一実施形態において、化学解重合液はエチレングリコールを含む。
【0046】
本実施形態において、化学的再生ポリエステルマスターバッチは、化学的再生通常ポリエステルマスターバッチと、化学的再生静電気密着マスターバッチとに分けることができる。「化学的再生通常ポリエステルマスターバッチ」とは、化学的再生によって作製されるポリエステルマスターバッチのことを指し、上記化学的再生通常ポリエステルマスターバッチには機能性添加剤が一切添加されていない。本実施形態において、化学的再生通常ポリエステルマスターバッチの成分は再生ポリエチレンテレフタレートを含む。「化学的再生静電気密着マスターバッチ」とは、オリゴマー混合物に静電気密着添加剤(pinning additive)を添加してから、再重合を行うことによって得る物のことを指す。本実施形態において、化学的再生静電気密着マスターバッチの成分は、再生ポリエチレンテレフタレート、及び静電気密着添加剤を含む。
【0047】
説明しておきたいことは、本願で使用される用語「静電気密着」とは、導電率を増加させる又は抵抗を減少させる物質の用途のことを指すことである。本願で使用される用語「静電気密着添加剤」とは、導電率を増加させる又は抵抗を減少させる物質のことを指す。
【0048】
静電気密着添加剤は金属塩であり、金属塩は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、又は脂肪族カルボン酸を含む金属塩であってもよい。脂肪族カルボン酸を含む金属塩において、脂肪族カルボン酸は分子構造に2~30個の炭素原子を含む。例えば、前記脂肪族カルボン酸(金属塩の形態において)はモノカルボン酸及びジカルボン酸を含み、例えば、酢酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はセバシン酸であってもよい。本実施形態において、前記脂肪族カルボン酸は酢酸であることが好ましい。更に言えば、金属塩の金属成分は、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であってもよい。また、前記金属塩は、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マンガン塩、亜鉛塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又はアルミニウム塩であってもよい。本実施形態において、金属塩は、マグネシウム塩、又はリチウム塩であることが好ましい。なかでも、マグネシウム塩は、例えば、酢酸マグネシウム(Mg(CH3COOH)2)であってもよく、リチウム塩は、例えば、酢酸リチウム(CH3COOLi)であってもよいが、本発明はこれに制限されない。
【0049】
また、化学的再生の過程において、オリゴマー混合物に、上述した機能性添加剤、例えば、滑剤、色料、又は艶消し剤を添加してもよく、再重合すると、異なる機能を有する化学的再生ポリエステルマスターバッチを得ることができる。
【0050】
ステップS3において、原料混合物はヒートシール層2を形成することができる。変性ポリエステルマスターバッチは、物理的再生、又は化学的再生によって、回収ポリエステル材料で作製することができる。変性ポリエステルマスターバッチは、化学的再生変性ポリエステルマスターバッチ、物理的再生変性ポリエステルマスターバッチ、又はそれらの混合物を含む。変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、変性ポリエステルマスターバッチは、再生ポリエチレンテレフタレートの他に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、及びポリブチレンテレフタレートの中から選ばれる少なくとも一種をさらに含み、そのため、変性ポリエステルマスターバッチを添加することにより、ヒートシール層2を形成するポリエステル組成物は、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、及びポリブチレンテレフタレートの中から選ばれる少なくとも一種を含む。
【0051】
具体的に言えば、物理的再生変性ポリエステルマスターバッチを作製するステップは、回收ポリエステル材料を溶融させ、第1の溶融混合物を得るステップと、第1の溶融混合物にポリブチレンテレフタレートを添加し、第2の溶融混合物を形成するステップと、第2の溶融混合物を再成形し、物理的再生変性ポリエステルマスターバッチを得るステップと、を含む。物理的再生変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、物理的再生変性ポリエステルマスターバッチは、再生ポリエチレンテレフタレートの他に、ポリブチレンテレフタレートをさらに含む。前記物理的再生ポリエステルマスターバッチの総重量を100重量%としたときに、前記物理的再生変性ポリエステルマスターバッチは、0~30重量%のポリブチレンテレフタレートを含む。
【0052】
具体的に言えば、化学的再生変性ポリエステルマスターバッチを作製するステップは、回收ポリエステル材料を解重合し、第1のオリゴマー混合物を得るステップと、第1のオリゴマー混合物に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、及びネオペンチルグリコールの中から選ばれる少なくとも一種を添加し、第2のオリゴマー混合物を形成するステップと、第2のオリゴマー混合物を再重合し、前記化学的再生変性ポリエステルマスターバッチを得るステップと、を含む。化学的再生変性ポリエステルマスターバッチの主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートであり、化学的再生変性ポリエステルマスターバッチは、再生ポリエチレンテレフタレートの他に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、及びネオペンチルグリコールの中から選ばれる少なくとも一種の残基をさらに含む。前記化学的再生変性ポリエステルマスターバッチの総重量を100重量%としたときに、前記化学的再生変性ポリエステルマスターバッチは、0~30重量%の1,4-ブタンジオール残基、0~30重量%のイソフタル酸残基、及び0~30重量%のネオペンチルグリコール残基を含む。
【0053】
本願で使用される用語「残基(residue)」とは、化学反応の結果において、特定の化合物から誘導される基又はユニットのことを指す。すなわち、「二塩基酸成分の残基」とは、エステル化(esterification)反応、又は重縮合(polycondensation)反応によって合成されたポリエステル、又は共重合ポリエステルにおける、二塩基酸成分から誘導される基のことを指し、「ジオール成分の残基」とは、エステル化(esterification)反応、又は重縮合(polycondensation)反応によって合成されたポリエステル、又は共重合ポリエステルにおける、ジオール成分から誘導される基のことを指す。
【0054】
ステップS4において、ステップS1で作製される物理的再生ポリエステルマスターバッチ、及びステップS2で作製される化学的再生ポリエステルマスターバッチを混合して基材を形成し、基材は基材層1を形成することができる。それによって、本発明のヒートシール可能なポリエステルフィルムZは、高使用率の回收ポリエステルを有する。他の実施形態において、基材層1は、他の市販のポリエステル材料であってもよい。
【0055】
ステップS5において、ステップS3における原料混合物、及びステップS4における基材を共押出することによって、ヒートシール可能なポリエステルフィルムZを形成し、ヒートシール可能なポリエステルフィルムZは、原料混合物で形成されるヒートシール層2、及び基材で形成される基材層1を含む。他の実施形態において、ヒートシール可能なポリエステルフィルムZを作製する方法は、共押出に限らず、基材層1及びヒートシール層2をそれぞれ形成してから、ヒートシール層2を基材層1に設置してもよい。
【0056】
本実施形態において、回收ポリエステル材料は回收されたペットボトルチップに由来する。ペットボトルチップの主な材料はポリエステルであり、一般的に言えば、ポリエステルはジオールユニット及び二塩基酸ユニットが重縮合することによって形成される。回收されたペットボトルチップにおいて、ジオールユニットは、石化由来のエチレングリコール、又はバイオマス由来のエチレングリコールを含む可能性がある。そのため、基材層1、及びヒートシール層2を形成する第1のポリエステル組成物において、ポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、ポリエステル組成物は1~25重量%のバイオマス誘導材料を含み、すなわち、ポリエステル組成物中の全炭素原子に対して、ポリエステル組成物中のC14の割合は0.2~5重量%である。
【0057】
回收ポリエステル材料はイソフタル酸成分を含む可能性があるため、基材層1、及びヒートシール層2を形成するポリエステル組成物もイソフタル酸を含む可能性がある。ポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、ポリエステル組成物は0.5~5重量%のイソフタル酸を含む。
【0058】
回收ポリエステル材料は金属触媒成分を含むため、基材層1、及びヒートシール層2を形成するポリエステル組成物も金属触媒を含む可能性がある。第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、第1のポリエステル組成物は0.0003~0.04重量%の金属触媒を含み、金属触媒はアンチモン、ゲルマニウム、チタン、及びそれらを組み合わせてなる物からなる群から選ばれる。
[第2の実施形態]
【0059】
図2を参照されたい。図面に示すように、本発明のヒートシール可能なポリエステルフィルムZは基材層1、ヒートシール層2、及びヒートシール層3を含む。ヒートシール層2、及びヒートシール層3は、それぞれ、基材層1における相対する2つの表面に形成される。第2の実施形態において、基材層1、ヒートシール層2、及びヒートシール層3を形成する材料と、第1の実施形態において、基材層1、及びヒートシール層2を形成する材料とは、同様であってもよいため、ここで説明を省略する。
[第3の実施形態]
【0060】
図3を参照されたい。図面に示すように、本発明のヒートシール可能なポリエステルフィルムZは、基材層1、ヒートシール層2、ヒートシール層3、及び印刷層4を含む。ヒートシール層2、及びヒートシール層3は、それぞれ、基材層1における相対する2つの表面に形成され、印刷層4はヒートシール層2に形成される。第3の実施形態において、基材層1、ヒートシール層2、及びヒートシール層3を形成する材料と、第1の実施形態において、基材層1、及びヒートシール層2を形成する材料とは、同様であってもよいため、ここで説明を省略する。
【0061】
印刷層4は、水性ポリエステル樹脂、水性ポリウレタン樹脂、及び水性アクリル樹脂の中から選ばれる少なくとも一種、及び硬化剤で形成される。更に言えば、印刷層4の表面に対してコロナ処理を施してもよく、それによって、インキが接着しやすい効果、及び良好な印刷品質を達成する。
[実施形態による有利な效果]
【0062】
本発明の一つの有利な効果としては、本発明が提供するヒートシール可能なポリエステルフィルム及びその製造方法は、「第1のポリエステル組成物の主成分は、再生ポリエチレンテレフタレートである」、及び「第1のポリエステル組成物は、再生ポリエチレンテレフタレートの他に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、及びポリブチレンテレフタレートの中から選ばれる少なくとも一種をさらに含む」といった技術的手段によって、ヒートシール可能なポリエステルフィルムにおける回收ポリエステル材料の含有量を高められることである。
【0063】
以上に開示される内容は、好ましい本発明の実施形態に過ぎず、発明の範囲を限定することを意図していない。そのため、本発明の明細書及び図面でなされた均等的な技術的変形は、全て本発明の請求の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
Z:ヒートシール可能なポリエステルフィルム
1:基材層
2:ヒートシール層
3:ヒートシール層
4:印刷層