(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164523
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
H01L 27/146 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
H01L27/146 D
H01L27/146 E
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144900
(22)【出願日】2023-09-07
(62)【分割の表示】P 2021513529の分割
【原出願日】2020-03-13
(31)【優先権主張番号】P 2019075159
(32)【優先日】2019-04-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020006104
(32)【優先日】2020-01-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【弁理士】
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【弁理士】
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】能澤 克弥
(72)【発明者】
【氏名】徳原 健富
(72)【発明者】
【氏名】松川 望
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 三四郎
(57)【要約】
【課題】ノイズの低減された撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、半導体基板20と、半導体基板20の光入射側に位置する画素電極11および対向電極12と、画素電極11と対向電極12との間に位置する半導体型カーボンナノチューブと、半導体型カーボンナノチューブを少なくとも部分的に覆い、第1の波長範囲の光を吸収して第2の波長範囲の蛍光を発する特性を有する有機分子と、半導体型カーボンナノチューブの光入射側に位置し、第1の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収または反射する遮光体と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板の光入射側に位置する第1電極および第2電極と、
前記第1電極と前記第2電極との間に位置する半導体型カーボンナノチューブと、
前記半導体型カーボンナノチューブを少なくとも部分的に覆い、第1の波長範囲の光を吸収して第2の波長範囲の蛍光を発する特性を有する有機分子と、
前記半導体型カーボンナノチューブの光入射側に位置し、前記第1の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収または反射する遮光体と、
を備える、
撮像装置。
【請求項2】
前記半導体型カーボンナノチューブは、第3の波長範囲の光を吸収する特性を有する、
請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記遮光体は、前記第1の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収または反射する光学フィルタを含む、
請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記遮光体は、前記第3の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を透過する、
請求項2に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記有機分子は、半導体性ポリマーおよび低分子有機分子からなる群から選択される少なくとも1つを含む、
請求項1から4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記半導体性ポリマーは、フルオレン骨格を有する重合体またはチオフェン骨格を有する重合体である、
請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記有機分子は、分子内に六員環構造を有する、
請求項5または6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記有機分子は、分子内に、炭素数が4以上のアルキル鎖および炭素数が4以上のアルキレン鎖からなる群から選択される少なくとも1つを有する、
請求項5から7のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記半導体基板は、前記第1電極に電気的に接続される検出回路を含む、
請求項1から8のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記半導体基板は、シリコンを含む、
請求項1から9のいずれか1項に記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換材料は、光電変換材料に吸収された光を電荷に変換し、変換された電荷は、電圧が印加された電極などにより、信号電荷として外部に取り出すことができる。光電変換材料としてカーボンナノチューブを用いた光電変換層が知られており、例えば、特許文献1には、電子アクセプタ型の有機半導体と、光活性ポリマーで被覆されたカーボンナノチューブとを含む光起電デバイスが開示されている。光活性ポリマー被覆カーボンナノチューブは、およそ400nmから1500nmの波長範囲の光に対して励起子を生成する。
【0003】
なお、カーボンナノチューブには、単一のグラフェンシートである単層カーボンナノチューブと、複数のグラフェンシートである多層カーボンナノチューブと、がある。多層カーボンナノチューブよりも単層カーボンナノチューブのほうが光電変換材料に適している。本明細書においては断りない限り、カーボンナノチューブは単層カーボンナノチューブを指すものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Sang-Yong Ju et al., “Brightly Fluorescent Single-Walled Carbon Nanotubes via an Oxygen-Excluding Surfactant Organization”, Science, American Association for the Advancement of Science, 2009年, Vol.323, pp.1319-1323
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ノイズの低減された撮像装置が望まれている。
【0007】
そこで、本開示では、ノイズの低減された撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る撮像装置は、半導体基板と、前記半導体基板の光入射側に位置する第1電極および第2電極と、前記第1電極と前記第2電極との間に位置する半導体型カーボンナノチューブと、前記半導体型カーボンナノチューブを少なくとも部分的に覆い、第1の波長範囲の光を吸収して第2の波長範囲の蛍光を発する特性を有する有機分子と、前記半導体型カーボンナノチューブの光入射側に位置し、前記第1の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収または反射する遮光体と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
ノイズの低減された撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】
図1Aは、半導体性ポリマーの吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルの一例を示す図である。
【
図1B】
図1Bは、半導体性ポリマーの吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルの別の例を示す図である。
【
図1C】
図1Cは、低分子有機分子の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルの例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る撮像装置の回路構成を示す回路図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る撮像装置の複数の画素の断面構造を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、半導体型カーボンナノチューブの吸収スペクトルの例を示す模式図である。
【
図5】
図5は、実施の形態2に係る撮像装置の複数の画素の断面構造を示す概略断面図である。
【
図6】
図6は、C60の吸収スペクトル示す図である。
【
図7】
図7は、厚みの異なるC60層の透過率のシミュレーション結果を示す図である。
【
図8】
図8は、実施の形態3に係る撮像装置の複数の画素の断面構造を示す概略断面図である。
【
図9】
図9は、実施の形態4に係る撮像装置の複数の画素の断面構造を示す概略断面図である。
【
図10】
図10は、実施の形態5に係る撮像装置の複数の画素の断面構造を示す概略断面図である。
【
図11】
図11は、実施の形態6に係る撮像装置の複数の画素の断面構造を示す概略断面図である。
【
図12】
図12は、実施の形態7に係る撮像装置の複数の画素の断面構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(本開示の一態様を得るに至った知見)
半導体型カーボンナノチューブは、そのままでも光電変換材料のドナー材料として利用できる。例えば、半導体型カーボンナノチューブを光電変換層に用いる場合には、半導体型カーボンナノチューブを分散させた分散液が電極等に塗布される。しかし、半導体型カーボンナノチューブのみを分散させた分散液を電極等に塗布する場合、半導体型カーボンナノチューブは凝集しやすく塗布が困難である。半導体性ポリマーを半導体型カーボンナノチューブに混合することにより、分散液中でのカーボンナノチューブの凝集が抑えられ、塗布が容易になる。また、半導体性ポリマーを半導体型カーボンナノチューブに混合することにより、半導体型カーボンナノチューブ間の接触が抑制され光電変換効率が向上する。
【0012】
さらに、ある種の半導体性ポリマーは、金属型カーボンナノチューブと半導体型カーボンナノチューブとの混合物から半導体型カーボンナノチューブを選択的に取りだすことが可能である。
【0013】
カーボンナノチューブの一般的の製造方法によれば、半導体型カーボンナノチューブと金属型カーボンナノチューブとは、約2対1の割合で生成される。しかし、金属型カーボンナノチューブは、光電変換材料のドナー材料として機能しない。また、金属型カーボンナノチューブは、半導体型カーボンナノチューブが光を吸収して生成した電荷を消失させるという望ましくない効果も有する。そのため、光電変換層のドナー材料として半導体型カーボンナノチューブを使用する場合には、金属型カーボンナノチューブの比率をできるだけ低減することにより電荷の消失が抑制される。この観点からも、半導体型カーボンナノチューブを選択的に取り出す機能を有する半導体性ポリマーを用いることは有効である。
【0014】
このように、半導体型カーボンナノチューブは、半導体性ポリマーと混合して用いることで、複数のメリットが得られる。
【0015】
上記メリットは、主として半導体性ポリマーが半導体型カーボンナノチューブを被覆することにより生じる。ただし、半導体型カーボンナノチューブと半導体性ポリマーとの混合体から、半導体型カーボンナノチューブを被覆していない半導体性ポリマーだけを完全に取り除くことは難しい。よって、半導体型カーボンナノチューブと半導体性ポリマーとの混合体には、通常、半導体型カーボンナノチューブを被覆していない半導体性ポリマーも含まれる。
【0016】
上記メリットがあるため、半導体型カーボンナノチューブを光電変換層に用いる場合には、半導体型カーボンナノチューブと半導体性ポリマーとの混合体を用いてもよい。半導体型カーボンナノチューブを被覆するのに適した半導体性ポリマーとしては、例えば、下記構造式(1)で示される化合物であるPFO(ポリフルオレン)、および、下記構造式(2)で示される化合物であるPFO-BT(ポリ(フルオレン-ベンゾチアジアゾール))が挙げられる。
【0017】
【0018】
【0019】
また、ある種の低分子有機分子も半導体性ポリマーと同様に、半導体型カーボンナノチューブを被覆し、半導体型カーボンナノチューブの凝集を抑制し、分散性を向上させる機能を有する。半導体型カーボンナノチューブの分散性を向上させる低分子有機分子としては、例えば、下記構造式(3)で示される化合物であるFC12、および、下記構造式(4)で示される化合物であるFC60等のフラビン誘導体ならびにピレン誘導体が挙げられる。
【0020】
【0021】
【0022】
これらの半導体性ポリマーおよび低分子有機分子は共通して、半導体型カーボンナノチューブへの吸着性を有するπ電子的性質を持つ部位と、溶媒への溶解性を高める部位との両方を有する。このような半導体性ポリマーおよび低分子有機分子等の有機分子は、光電変換層中で半導体型カーボンナノチューブの分散性を向上させる機能を有する。例えばPFOは、フルオレン骨格における六員環がπ電子的性質を持ち、半導体型カーボンナノチューブへの吸着性が高い。また、例えば、FC12およびFC60は、フラビン骨格の六員環がπ電子的性質を持ち、半導体型カーボンナノチューブへの吸着性が高い。同様に、下記構造式(5)で示されるピレン骨格も半導体型カーボンナノチューブへの吸着性が高いことが知られている。
【0023】
【0024】
一方、例えば、これらの半導体性ポリマーおよび低分子有機分子に含まれるアルキル鎖は、溶媒への親和性が高く、半導体性ポリマーおよび低分子有機分子の溶媒への溶解性および親和性を高める。
【0025】
このように、上述のような半導体性ポリマーおよび低分子有機分子は、半導体型カーボンナノチューブを分散させるために有用である。つまり、上述のような半導体性ポリマーおよび低分子有機分子等の有機分子は、半導体型カーボンナノチューブの分散剤として用いることができる。しかしながら、最終製品として光センサに当該光電変換層を用いる場合には、半導体性ポリマーおよび低分子有機分子は、半導体型カーボンナノチューブ同士の接触を制限するなどの機能を有するだけで、光電変換には重要な機能を有さない場合が多い。
【0026】
本発明者らは、半導体性ポリマーと混合した半導体型カーボンナノチューブを光電変換材料のドナー材料として用いた光電変換層を備える撮像装置の研究を進める過程において、以下の課題を発見した。
【0027】
半導体型カーボンナノチューブとの混合に適した半導体性ポリマーの多くは、光を吸収し蛍光を発する。特に、フルオレンおよびその類似構造をポリマー骨格として持つ半導体性ポリマーは、多くの場合、蛍光を強く発する。半導体性ポリマーが吸収する光の波長は、半導体性ポリマーの種類により異なるが、紫外光から青色光にかけての短い波長である。また、半導体性ポリマーが発する蛍光の波長は、半導体性ポリマーの種類により異なるが、吸収する光の波長よりも数十nmから100nm程度長い波長であり、可視光の波長域となることが多い。
【0028】
図1Aは、半導体性ポリマーの一例として、PFO薄膜の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを示す図である。具体的に、
図1Aは、励起波長を350nmから450nmまで5nm間隔で変えながら、蛍光波長を390nmから510nmの範囲で測定したスペクトルである。
図1Aに示されるスペクトルは、縦軸が励起波長、横軸が蛍光波長であり、等高線は蛍光強度が等しくなる励起波長と蛍光波長との組をつないだものである。なお、蛍光波長と励起波長とが同じ波長である、点線で囲まれた領域Aは、励起波長が蛍光波長計測用の測定器に混入したものであり、PFO薄膜が発する蛍光を示すスペクトルではない。
【0029】
図1Aに示されるように、PFO薄膜は約390nmから約420nmの波長範囲の光によって励起され、約400nmから約500nmの波長範囲の蛍光を発する。つまり、PFO薄膜は約390nmから約420nmの波長範囲の光を吸収し、約400nmから約500nmの波長範囲の蛍光を発する。
【0030】
図1Bは、半導体性ポリマーの別の例として、PFO-BT薄膜の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを示す図である。
図1Bに示されるスペクトルは、
図1Aと同様の測定を別の半導体性ポリマーであるPFO-BT薄膜について測定した際に得られるスペクトルである。なお、
図1Aと同様に
図1Bにおいても、点線で囲まれる領域Bは、励起波長が蛍光波長計測用の測定器に混入したものであり、PFO-BT薄膜が発する蛍光を示すスペクトルではない。
【0031】
図1Bに示されるように、PFO-BT薄膜は約390nmから約550nmの波長範囲の光によって励起され、約500nmから約660nmの波長範囲の蛍光を発する。つまり、PFO-BT薄膜は、約390nmから約550nmの波長範囲の光を吸収し、約500nmから約660nmの波長範囲の蛍光を発する。
【0032】
撮像装置において、光電変換層に光が照射されることで、ドナー材料が光子を吸収して電荷に変換され、信号電荷として外部に取り出される。光電変換層に半導体性ポリマーが含まれる場合、光電変換層内の半導体性ポリマーも光子を吸収し、蛍光を等方的に放射する。これにより、光電変換層内の半導体性ポリマーが発する蛍光は、撮像装置に照射された光の向きとは異なる方向にも放射される。この半導体性ポリマーから放射された蛍光は、光電変換層内から等方的に放射されるため、半導体基板上方に光電変換層が備えられる撮像装置の場合、撮像装置の電荷蓄積領域および制御回路等を構成する半導体層に照射されうる。例えば、電荷蓄積領域および制御回路等の材料として最もよく用いられている単結晶シリコンの場合、約200nmから約1100nmの波長範囲の光を吸収する。そのため、シリコンを含む半導体基板を用いた場合には、この波長範囲の蛍光が照射されると、照射された蛍光は、半導体基板の電荷蓄積領域および制御回路において吸収される可能性がある。
図1Aおよび
図1Bに示されるように、典型的な半導体性ポリマーが放射する蛍光の波長は、ほぼこの半導体層が吸収する波長範囲に含まれる。また、例えば、電荷蓄積領域および制御回路等の材料としてよく用いられる単結晶ガリウム砒素の場合、約200nmから約800nmの波長範囲の光を吸収する。そのため、ガリウム砒素を含む半導体基板を用いた場合にも、この波長範囲の蛍光が照射されると、照射された蛍光は、半導体基板の電荷蓄積領域および制御回路において吸収される可能性がある。
【0033】
電荷蓄積領域で蛍光の光子が吸収されると電荷が電荷蓄積領域に発生する。このような蛍光が吸収されることにより発生する電荷は、光電変換層内のドナー材料が外部から入射した光子を吸収することにより発生した電荷と区別がつかない。特に問題となるのは、ある画素の光電変換層の半導体性ポリマーから発生した蛍光の光子が、別の画素の電荷蓄積領域で吸収される場合である。この場合は、本来光が照射された位置とは別の位置に信号電荷が発生することになり、像の滲み、混色およびノイズなどの原因となる。この問題は、光電変換層の半導体性ポリマーから、撮像装置に照射された光の向きとは異なる方向にも蛍光が放射されることにより生じる。また、光電変換層内の半導体性ポリマーが発する蛍光が、制御回路で吸収された場合にも、回路の誤動作およびノイズ増加の原因となる。
【0034】
さらに、本発明者らは、上記課題が、半導体性ポリマーと同様の目的、すなわち半導体型カーボンナノチューブの分散剤として用いられる低分子有機分子においても存在することを発見した。例えば、低分子有機分子のFC12では、PFO等の半導体性ポリマーと同じように、凝集を抑制する効果、および、半導体型カーボンナノチューブ同士の接触を抑制して光電変換効率を向上する効果が得られる。FC12の構造については、非特許文献1に詳細な記載がある。
【0035】
図1Cは、低分子有機分子の一例として、FC12薄膜の吸収スペクトルおよび蛍光スペクトルを示す図である。
図1Cに示されるスペクトルは、
図1Aと同様の測定をFC12薄膜について測定した際に得られるスペクトルである。なお、
図1Aと同様に
図1Cにおいても、点線で囲まれる領域Cは、励起波長が蛍光波長計測用の測定器に混入したものであり、FC12薄膜が発する蛍光を示すスペクトルではない。
【0036】
図1Cに示されるように、FC12薄膜は約350nmから約530nmの波長範囲の光によって励起され、約490nmから約680nmの波長範囲の蛍光を発する。つまり、FC12薄膜は、約350nmから約530nmの波長範囲の光を吸収し、約490nmから約680nmの波長範囲の蛍光を発する。
図1Cに示されるように、低分子有機分子の分散剤が放射する蛍光の波長も、半導体基板が吸収する波長範囲に含まれる。
【0037】
以上のように、本発明者らは、半導体基板上方に、半導体性ポリマーまたは低分子有機分子等の有機分子と混合した半導体型カーボンナノチューブを光電変換材料のドナー材料として用いた光電変換層を備える撮像装置の場合、有機分子が発する蛍光が、撮像装置のノイズの増加の原因となることを見出した。そこで、本開示では、半導体基板上方に、有機分子と混合した半導体型カーボンナノチューブを光電変換材料のドナー材料として用いた光電変換層を備える撮像装置であっても、ノイズの低減された撮像装置を提供する。
【0038】
本開示の一態様の概要は以下の通りである。
【0039】
本開示の一態様に係る撮像装置は、半導体基板と、前記半導体基板の上方に位置し、それぞれが前記半導体基板に電気的に接続される複数の画素電極と、前記複数の画素電極の上方に位置する対向電極と、前記複数の画素電極と前記対向電極との間に位置する第1光電変換層と、前記第1光電変換層内または前記第1光電変換層の上方に位置する少なくとも1つの第1遮光体と、を備える。前記第1光電変換層は、第1の波長範囲の光を吸収する特性を有する半導体型カーボンナノチューブと、前記半導体型カーボンナノチューブを覆い、第2の波長範囲の光を吸収して第3の波長範囲の蛍光を発する特性を有する有機分子と、を含む。前記少なくとも1つの第1遮光体は、前記第2の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収または反射する。
【0040】
これにより、第1遮光体が、第1光電変換層内または第1光電変換層の上方に位置する。ここで、第1光電変換層の上方に位置するとは、第1光電変換層の光入射側に位置するとも言える。そのため、有機分子に第2の波長範囲の光が到達する前に、第1遮光体が第2の波長範囲の光を吸収または反射する。よって、有機分子が吸収する第2の波長範囲の光を減らすことができ、その結果、有機分子が発する蛍光も減らすことができる。したがって、半導体基板の不純物領域などからなる電荷蓄積領域または制御回路が、有機分子が発する蛍光を吸収して、ノイズを発生させることが抑制される。つまり、第1遮光体が、撮像装置のノイズの原因となる、有機分子に到達する第2の波長範囲の光を減少させる。よって、ノイズの低減された撮像装置が実現される。
【0041】
また、例えば、前記少なくとも1つの第1遮光体は、前記対向電極の上方に位置し、前記第2の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収または反射する光学フィルタを含んでもよい。
【0042】
これにより、光学フィルタが、第1光電変換層の対向電極側である第1光電変換層よりも撮像装置に光が入射する側に位置する。そのため、第1光電変換層に到達する前に、光学フィルタが第2の波長範囲の光の少なくとも一部を吸収または反射する。よって、有機分子に到達する第2の波長範囲の光を、効率的に減らすことができ、撮像装置のノイズが低減される。
【0043】
また、例えば、前記少なくとも1つの第1遮光体は、前記第1光電変換層と前記対向電極との間に位置し、前記第2の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収する第1電荷輸送層を含んでもよい。
【0044】
これにより、第1電荷輸送層が、第1光電変換層の対向電極側である第1光電変換層よりも撮像装置に光が入射する側に位置する。そのため、第1光電変換層に到達する前に第1電荷輸送層が第2の波長範囲の光の少なくとも一部を吸収する。よって、有機分子に到達する第2の波長範囲の光を、効率的に減らすことができ、撮像装置のノイズが低減される。
【0045】
また、例えば、前記少なくとも1つの第1遮光体は、前記第1光電変換層と前記対向電極との間に位置し、前記第2の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収する第2光電変換層を含んでもよい。
【0046】
これにより、第2光電変換層が、第1光電変換層の対向電極側である第1光電変換層よりも撮像装置に光が入射する側に位置する。そのため、第1光電変換層に到達する前に、第2光電変換層が第2の波長範囲の光の少なくとも一部を吸収する。よって、有機分子に到達する第2の波長範囲の光を、効率的に減らすことができ、撮像装置のノイズが低減される。
【0047】
また、例えば、前記少なくとも1つの第1遮光体は、前記第2の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収する、前記半導体型カーボンナノチューブとは異なる第1材料を含み、前記第1材料は、前記第1光電変換層内に位置してもよい。
【0048】
これにより、第1光電変換層内に第1材料が位置することにより、第1材料が第1光電変換層に入射した第2の波長範囲の光の少なくとも一部を吸収する。よって、有機分子に到達する第2の波長範囲の光を減らすことができ、撮像装置のノイズが低減される。
【0049】
また、例えば、前記少なくとも1つの第1遮光体は、前記第1の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を透過してもよい。
【0050】
これにより、半導体型カーボンナノチューブに、第1の波長範囲の光が到達しやすくなるため、第1光電変換層における光電変換機能の低下を抑制できる。
【0051】
また、例えば、前記第1光電変換層内、または、前記第1光電変換層と前記複数の画素電極との間に位置し、前記第3の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収または反射する少なくとも1つの第2遮光体をさらに備えてもよい。
【0052】
これにより、第2遮光体が、第1光電変換層内、または、第1光電変換層と複数の画素電極との間に位置する。そのため、有機分子が第3の波長範囲の蛍光を発した場合でも、第2遮光体が第3の波長範囲の光を吸収または反射する。よって、半導体基板の不純物領域などからなる電荷蓄積領域または制御回路に到達する第3の波長範囲の光を減らすことができる。つまり、第1遮光体が、有機分子に到達する第2の波長範囲の光を減少させると共に、第2遮光体が、撮像装置のノイズの原因となる、半導体基板の不純物領域などからなる電荷蓄積領域または制御回路に到達する第3の波長範囲の光を減少させる。よって、よりノイズの低減された撮像装置が実現される。
【0053】
また、本開示の一態様に係る撮像装置は、半導体基板と、前記半導体基板の上方に位置し、それぞれが前記半導体基板に電気的に接続される複数の画素電極と、前記複数の画素電極の上方に位置する対向電極と、前記複数の画素電極と前記対向電極との間に位置する第1光電変換層と、前記第1光電変換層内、または、前記第1光電変換層と前記複数の画素電極との間に位置する少なくとも1つの第2遮光体と、を備える。前記第1光電変換層は、第1の波長範囲の光を吸収する特性を有する半導体型カーボンナノチューブと、前記半導体型カーボンナノチューブを覆い、第2の波長範囲の光を吸収して第3の波長範囲の蛍光を発する特性を有する有機分子と、を含む。前記少なくとも1つの第2遮光体は、前記第3の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収または反射する。
【0054】
これにより、第2遮光体が、第1光電変換層内、または、第1光電変換層と複数の画素電極との間に位置する。そのため、有機分子が第3の波長範囲の蛍光を発した場合でも、第2遮光体が第3の波長範囲の光を吸収または反射する。よって、半導体基板の不純物領域などからなる電荷蓄積領域または制御回路に到達する第3の波長範囲の光を減らすことができる。つまり、第2遮光体が、撮像装置のノイズの原因となる、半導体基板の不純物領域などからなる電荷蓄積領域または制御回路に到達する第3の波長範囲の光を減少させる。よって、ノイズの低減された撮像装置が実現される。
【0055】
また、例えば、前記少なくとも1つの第2遮光体は、前記第3の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収する、前記半導体型カーボンナノチューブとは異なる第2材料を含み、前記第2材料は、前記第1光電変換層内に位置してもよい。
【0056】
これにより、第1光電変換層内に第2材料が位置することにより、第2材料が、有機分子が発する第3の波長範囲の蛍光の少なくとも一部を吸収する。よって、半導体基板の不純物領域などからなる電荷蓄積領域または制御回路に到達する第3の波長範囲の光を減らすことができ、撮像装置のノイズが低減される。
【0057】
また、例えば、前記少なくとも1つの第2遮光体は、前記第1光電変換層と前記複数の画素電極との間に位置し、前記第3の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収する第2電荷輸送層を含んでもよい。
【0058】
これにより、第2電荷輸送層が、第1光電変換層の複数の画素電極側である第1光電変換層よりも半導体基板側に位置する。そのため、半導体基板に到達する前に、第2電荷輸送層が第3の波長範囲の光の少なくとも一部を吸収する。よって、半導体基板の不純物領域などからなる電荷蓄積領域または制御回路に到達する第3の波長範囲の光を減らすことができ、撮像装置のノイズが低減される。
【0059】
また、例えば、前記有機分子は、半導体性ポリマーおよび低分子有機分子からなる群から選択される少なくとも1つを含んでもよい。
【0060】
これにより、半導体性ポリマーおよび低分子有機分子からなる群から選択される少なくとも1つを含む有機分子によって、半導体型カーボンナノチューブの分散性を向上させることができる。
【0061】
また、例えば、前記半導体性ポリマーは、フルオレン骨格を有する重合体、またはフルオレン骨格を有する重合体であってもよい。
【0062】
これにより、半導体型カーボンナノチューブが効率良く半導体性ポリマーに被覆され、半導体型カーボンナノチューブの第1光電変換層内での分散性が良くなり、光電変換効率が向上する。よって、シグナル信号が大きくなるため、相対的にノイズの低減された撮像装置が実現される。
【0063】
また、例えば、前記有機分子は、分子内に六員環構造を有してもよい。
【0064】
これにより、半導体型カーボンナノチューブに有機分子が吸着しやすくなるπ電子的性質を、有機分子に容易に付与できる。
【0065】
また、例えば、前記有機分子は、分子内に、炭素数が4以上のアルキル鎖および炭素数が4以上のアルキレン鎖からなる群から選択される少なくとも1つを有していてもよい。
【0066】
これにより、有機分子の溶媒への溶解性が向上するため、有機分子によって半導体型カーボンナノチューブが分散されやすくなる。
【0067】
また、例えば、前記第1光電変換層は、前記半導体型カーボンナノチューブに対してアクセプタとして機能する第3材料を含んでもよい。
【0068】
これにより、半導体型カーボンナノチューブで発生した正孔-電子対から、電子がアクセプタ材料に移動するため、正孔-電子対の再結合が抑制され、第1光電変換層の光電変換効率が向上する。
【0069】
また、例えば、前記第1光電変換層は、前記半導体型カーボンナノチューブおよび前記第1材料に対してアクセプタとして機能する第3材料を含んでいてもよい。
【0070】
これにより、半導体型カーボンナノチューブで発生した正孔-電子対から、電子がアクセプタ材料に移動するため、正孔-電子対の再結合が抑制され、第1光電変換層の光電変換効率が向上する。また、第1材料が光を吸収することで発生した正孔-電子対から、電子がアクセプタ材料に移動するため、正孔-電子対の再結合によるエネルギーの発生が抑制される。
【0071】
また、例えば、前記第1光電変換層は、前記半導体型カーボンナノチューブおよび前記第2材料に対してアクセプタとして機能する第3材料を含んでいてもよい。
【0072】
これにより、半導体型カーボンナノチューブで発生した正孔-電子対から、電子がアクセプタ材料に移動するため、正孔-電子対の再結合が抑制され、第1光電変換層の光電変換効率が向上する。また、第2材料が光を吸収することで発生した正孔-電子対から、電子がアクセプタ材料に移動するため、正孔-電子対の再結合によるエネルギーの発生が抑制される。
【0073】
また、例えば、前記半導体基板は、シリコンを含んでもよい。
【0074】
このような、有機分子が発する蛍光を吸収しやすいシリコンを含む半導体基板を用いた撮像装置であっても、撮像装置のノイズが低減される。
【0075】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0076】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも包括的または具体的な例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0077】
また、本明細書において、撮像装置としての動作に必須あるいは特性の改善に有効であるが、本開示の説明に不要な要素については省略している。また、各図面はあくまで概念を示す図であり、縮尺、形状等は一切考慮に入れていない。したがって、例えば、各図において縮尺などは必ずしも一致しない。また、各図において、実質的に同一の構成については同一の符号を付しており、重複する説明は省略または簡略化する。
【0078】
また、本明細書において、等しいなどの要素間の関係性を示す用語、および、正方形または円形などの要素の形状を示す用語、ならびに、数値範囲は、厳格な意味のみを表す表現ではなく、実質的に同等な範囲、例えば数%程度の差異をも含むことを意味する表現である。
【0079】
また、本明細書において、「上方」および「下方」という用語は、絶対的な空間認識における上方向(鉛直上方)および下方向(鉛直下方)を指すものではなく、積層構成における積層順を基に相対的な位置関係により規定される用語として用いる。また、「上方」および「下方」という用語は、2つの構成要素が互いに間隔を空けて配置されて2つの構成要素の間に別の構成要素が存在する場合のみならず、2つの構成要素が互いに密着して配置されて2つの構成要素が接する場合にも適用される。
【0080】
(実施の形態1)
[撮像装置の回路構成]
まず、本実施の形態に係る撮像装置の回路構成について、
図2を用いて説明する。
【0081】
図2は、本実施の形態に係る撮像装置の例示的な回路構成を示す回路図である。
図2に示される撮像装置100は、2次元に配列された複数の画素10を含む画素アレイPAを有する。
図2は、画素10が2行2列のマトリクス状に配置された例を模式的に示している。撮像装置100における画素10の数および配置は、
図2に示される例に限定されない。例えば、撮像装置100は、複数の画素10が1列に並んだラインセンサであってもよい。
【0082】
各画素10は、光電変換部13および信号検出回路14を有する。光電変換部13は、入射した光を受けて信号を生成する。光電変換部13は、その全体が画素10ごとに独立した素子である必要はなく、光電変換部13の例えば一部分が複数の画素10にまたがっていてもよい。信号検出回路14は、光電変換部13によって生成された信号を検出する回路である。この例では、信号検出回路14は、信号検出トランジスタ24およびアドレストランジスタ26を含んでいる。信号検出トランジスタ24およびアドレストランジスタ26は、典型的には、電界効果トランジスタ(FET)である。ここでは、信号検出トランジスタ24およびアドレストランジスタ26としてNチャネルMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)を例示する。信号検出トランジスタ24およびアドレストランジスタ26、ならびに、後述するリセットトランジスタ28などの各トランジスタは、制御端子、入力端子および出力端子を有する。制御端子は、例えばゲートである。入力端子は、ドレインおよびソースの一方であり、例えばドレインである。出力端子は、ドレインおよびソースの他方であり、例えばソースである。
【0083】
図2において模式的に示されるように、信号検出トランジスタ24の制御端子は、光電変換部13に電気的に接続されている。光電変換部13によって生成される信号電荷は、信号検出トランジスタ24のゲートと光電変換部13との間の電荷蓄積ノード41に蓄積される。ここで、信号電荷は、正孔または電子である。電荷蓄積ノードは、電荷蓄積部の一例であり、「フローティングディフュージョンノード」とも呼ばれる。本明細書では、電荷蓄積ノードを電荷蓄積領域と呼ぶ。光電変換部13の構造の詳細は後述する。
【0084】
各画素10の光電変換部13は、さらに、バイアス制御線42に接続され所定の電圧が印加される。
図2に例示する構成において、バイアス制御線42は、電圧供給回路32に接続されている。
【0085】
各画素10は、電源電圧VDDを供給する電源線40に接続される。
図2に示されるように、電源線40には、信号検出トランジスタ24の入力端子が接続されている。電源線40がソースフォロア電源として機能することにより、信号検出トランジスタ24は、光電変換部13によって生成された信号を増幅して出力する。
【0086】
信号検出トランジスタ24の出力端子には、アドレストランジスタ26の入力端子が接続されている。アドレストランジスタ26の出力端子は、画素アレイPAの列ごとに配置された複数の垂直信号線47のうちの1つに接続されている。アドレストランジスタ26の制御端子は、アドレス制御線46に接続されている。アドレス制御線46の電位を制御することにより、信号検出トランジスタ24の出力を、対応する垂直信号線47に選択的に読み出すことができる。
【0087】
図示する例では、アドレス制御線46は、垂直走査回路36に接続されている。垂直走査回路は、「行走査回路」とも呼ばれる。垂直走査回路36は、アドレス制御線46に所定の電圧を印加することにより、各行に配置された複数の画素10を行単位で選択する。これにより、選択された画素10の信号の読み出しと、電荷蓄積ノード41のリセットとが実行される。
【0088】
垂直信号線47は、画素アレイPAからの画素信号を周辺回路へ伝達する主信号線である。垂直信号線47には、カラム信号処理回路37が接続される。カラム信号処理回路37は、「行信号蓄積回路」とも呼ばれる。カラム信号処理回路37は、相関二重サンプリングに代表される雑音抑制信号処理およびアナログ-デジタル変換などを行う。図示するように、カラム信号処理回路37は、画素アレイPAにおける画素10の各列に対応して設けられる。これらのカラム信号処理回路37には、水平信号読み出し回路38が接続される。水平信号読み出し回路は、「列走査回路」とも呼ばれる。水平信号読み出し回路38は、複数のカラム信号処理回路37から水平共通信号線49に信号を順次読み出す。
【0089】
図2に例示する構成において、画素10は、リセットトランジスタ28を有する。リセットトランジスタ28は、例えば、信号検出トランジスタ24およびアドレストランジスタ26と同様に、電界効果トランジスタである。以下では、特に断りの無い限り、リセットトランジスタ28としてNチャネルMOSFETを適用した例を説明する。図示するように、リセットトランジスタ28は、リセット電圧Vrを供給するリセット電圧線44と、電荷蓄積ノード41との間に接続される。リセットトランジスタ28の制御端子は、リセット制御線48に接続されている。リセット制御線48の電位を制御することによって、電荷蓄積ノード41の電位をリセット電圧Vrにリセットすることができる。この例では、リセット制御線48が、垂直走査回路36に接続されている。したがって、垂直走査回路36がリセット制御線48に所定の電圧を印加することにより、各行に配置された複数の画素10を行単位でリセットすることが可能である。
【0090】
この例では、リセットトランジスタ28にリセット電圧Vrを供給するリセット電圧線44が、リセット電圧源34に接続されている。リセット電圧源は、「リセット電圧供給回路」とも呼ばれる。リセット電圧源34は、撮像装置100の動作時にリセット電圧線44に所定のリセット電圧Vrを供給可能な構成を有していればよく、上述の電圧供給回路32と同様に、特定の電源回路に限定されない。電圧供給回路32およびリセット電圧源34の各々は、単一の電圧供給回路の一部分であってもよいし、独立した別個の電圧供給回路であってもよい。なお、電圧供給回路32およびリセット電圧源34の一方または両方が、垂直走査回路36の一部分であってもよい。あるいは、電圧供給回路32からの制御電圧および/またはリセット電圧源34からのリセット電圧Vrが、垂直走査回路36を介して各画素10に供給されてもよい。
【0091】
リセット電圧Vrとして、信号検出回路14の電源電圧VDDを用いることも可能である。この場合、各画素10に電源電圧を供給する電圧供給回路(
図2において不図示)と、リセット電圧源34とを共通化することができる。また、電源線40と、リセット電圧線44を共通化できるので、画素アレイPAにおける配線を単純化することができる。ただし、リセット電圧Vrを信号検出回路14の電源電圧VDDと異なる電圧とすることにより、撮像装置100のより柔軟な制御を可能にする。
【0092】
[画素のデバイス構造]
次に、本実施の形態に係る撮像装置100の複数の画素10の断面構造について、
図3を用いて説明する。
【0093】
撮像装置100は、第1遮光体を含む。第1遮光体は、第2の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収または反射する。第1遮光体は、第1光電変換層15内または第1光電変換層15の対向電極12側に位置する。第1遮光体の詳細は、各種例を示して後述する。
【0094】
図3は、本実施の形態に係る撮像装置100の複数の画素10の断面構造を示す概略断面図である。
図3に示される複数の画素10は、いずれも同じ構造であるが、複数の画素10は、一部が異なる構造を有していてもよい。以下では複数の画素10のうちの1つの画素10について説明する。撮像装置100の各画素10は、半導体基板20と、半導体基板20の上方に位置し、それぞれが半導体基板20に電気的に接続される複数の画素電極11と、複数の画素電極11の上方に位置する対向電極12と、複数の画素電極11と対向電極12との間に位置する第1光電変換層15と、対向電極12の上方に位置する光学フィルタ16とを備える。本実施の形態に係る第1遮光体は、光学フィルタ16を含む。
【0095】
図3に例示する構成では、上述の信号検出トランジスタ24、アドレストランジスタ26およびリセットトランジスタ28が、半導体基板20に形成されている。半導体基板20は、その全体が半導体である基板に限定されない。半導体基板20は、感光領域が形成される側の表面に半導体層が設けられた絶縁性基板などであってもよい。半導体基板20としては、例えば、シリコンを含む半導体基板が用いられる。ここでは、半導体基板20としてP型シリコン(Si)基板を用いる例を説明する。半導体基板20は、シリコンを含む半導体基板に限られず、例えば、ガリウム砒素を含む半導体基板等の他の半導体基板であってもよい。
【0096】
半導体基板20は、不純物領域26s、24s、24d、28dおよび28sと、各画素10間の電気的な分離のための素子分離領域20tとを有する。ここでは、不純物領域26s、24s、24d、28dおよび28sはN型領域である。また、素子分離領域20tは、不純物領域24dと不純物領域28dとの間にも設けられている。素子分離領域20tは、例えば所定の注入条件のもとでアクセプタのイオン注入を行うことによって形成される。
【0097】
不純物領域26s、24s、24d、28dおよび28sは、例えば、半導体基板20内に形成された、不純物の拡散層である。
図3に模式的に示されるように、信号検出トランジスタ24は、不純物領域24sおよび不純物領域24dと、ゲート電極24gとを含む。ゲート電極24gは、導電性材料を用いて形成される。導電性材料は、例えば、不純物がドープされることにより導電性が付与されたポリシリコンであるが、金属材料でもよい。不純物領域24sは、信号検出トランジスタ24の例えばソース領域として機能する。不純物領域24dは、信号検出トランジスタ24の例えばドレイン領域として機能する。不純物領域24sと不純物領域24dとの間に、信号検出トランジスタ24のチャネル領域が形成される。
【0098】
同様に、アドレストランジスタ26は、不純物領域26sおよび不純物領域24sと、ゲート電極26gとを含む。ゲート電極26gは、導電性材料を用いて形成される。導電性材料は、例えば、不純物がドープされることにより導電性が付与されたポリシリコンであるが、金属材料でもよい。ゲート電極26gは、
図3には図示していないアドレス制御線46に接続される。この例では、信号検出トランジスタ24およびアドレストランジスタ26は、不純物領域24sを共有することによって互いに電気的に接続されている。不純物領域24sは、アドレストランジスタ26の例えばドレイン領域として機能する。不純物領域26sは、アドレストランジスタ26の例えばソース領域として機能する。不純物領域26sは、
図3には図示していない垂直信号線47に接続される。なお、不純物領域24sは、信号検出トランジスタ24およびアドレストランジスタ26によって共有されていなくてもよい。具体的には、信号検出トランジスタ24のソース領域とアドレストランジスタ26のドレイン領域とは、半導体基板20内では分離しており、層間絶縁層50内に設けられた配線層を介して電気的に接続されていてもよい。
【0099】
リセットトランジスタ28は、不純物領域28dおよび28sと、ゲート電極28gとを含む。ゲート電極28gは、例えば、導電性材料を用いて形成される。導電性材料は、例えば、不純物がドープされることにより導電性が付与されたポリシリコンであるが、金属材料でもよい。ゲート電極28gは、
図3には図示していないリセット制御線48に接続されている。不純物領域28sは、リセットトランジスタ28の例えばソース領域として機能する。不純物領域28sは、
図3には図示していないリセット電圧線44に接続されている。不純物領域28dは、リセットトランジスタ28の例えばドレイン領域として機能する。
【0100】
半導体基板20上には、信号検出トランジスタ24、アドレストランジスタ26およびリセットトランジスタ28を覆うように層間絶縁層50が配置されている。層間絶縁層50は、例えば、二酸化シリコンなどの絶縁性材料から形成される。図示するように、層間絶縁層50中には、配線層56が配置されている。配線層56は、典型的には、銅などの金属から形成される。配線層56は、例えば、上述の垂直信号線47などの信号線または電源線をその一部に含んでいてもよい。層間絶縁層50中の絶縁層の層数、および、層間絶縁層50中に配置される配線層56に含まれる層数は、任意に設定可能であり、
図3に示される例に限定されない。
【0101】
また、層間絶縁層50中には、
図3に示されるように、プラグ52、配線53、コンタクトプラグ54、および、コンタクトプラグ55が設けられている。配線53は、配線層56の一部であってもよい。プラグ52、配線53、コンタクトプラグ54、および、コンタクトプラグ55はそれぞれ、導電性材料を用いて形成されている。例えば、プラグ52および配線53は、銅などの金属から形成されている。コンタクトプラグ54および55は、例えば、不純物がドープされることにより導電性が付与されたポリシリコンから形成されている。なお、プラグ52、配線53、コンタクトプラグ54、および、コンタクトプラグ55は、互いに同じ材料を用いて形成されていてもよく、互いに異なる材料を用いて形成されていてもよい。
【0102】
プラグ52、配線53およびコンタクトプラグ54は、信号検出トランジスタ24と光電変換部13との間の電荷蓄積ノード41の少なくとも一部を構成する。
図3に例示する構成において、信号検出トランジスタ24のゲート電極24g、プラグ52、配線53、コンタクトプラグ54および55、ならびに、リセットトランジスタ28のソース領域およびドレイン領域の一方である不純物領域28dは、光電変換部13の画素電極11によって収集された信号電荷を蓄積する電荷蓄積領域として機能する。
【0103】
具体的には、光電変換部13の画素電極11は、プラグ52、配線53およびコンタクトプラグ54を介して、信号検出トランジスタ24のゲート電極24gに接続されている。言い換えれば、信号検出トランジスタ24のゲートは、画素電極11と電気的に接続されている。また、画素電極11は、プラグ52、配線53およびコンタクトプラグ55を介して、不純物領域28dにも接続されている。
【0104】
画素電極11によって信号電荷が捕集されることにより、電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の量に応じた電圧が、信号検出トランジスタ24のゲートに印加される。信号検出トランジスタ24は、この電圧を増幅する。信号検出トランジスタ24によって増幅された電圧が、信号電圧としてアドレストランジスタ26を介して選択的に読み出される。
【0105】
層間絶縁層50上には、上述の光電変換部13が配置される。半導体基板20を平面視した場合に2次元に配列された複数の画素10は、感光領域を形成する。感光領域は、画素領域とも呼ばれる。隣接する2つの画素10間の距離、すなわち、画素ピッチは、例えば2μm程度であってもよい。
【0106】
[光電変換部の構成]
以下では、光電変換部13の具体的な構成について説明する。
【0107】
図3に示されるように、光電変換部13は、複数の画素電極11と、対向電極12と、複数の画素電極11と対向電極12との間に配置された第1光電変換層15を備える。また、光電変換部13の対向電極12上には、光学フィルタ16が備えられている。本実施の形態では、撮像装置100に対する光の入射側から、光学フィルタ16、対向電極12、第1光電変換層15、複数の画素電極11の順に配置されている。つまり、光学フィルタ16は、第1光電変換層15よりも光の入射側に配置されている。
【0108】
光電変換部13は、さらに、電子ブロック層および正孔ブロック層等の他の要素を含んでいてもよい。
【0109】
図3に示される例では、対向電極12、第1光電変換層15、および、光学フィルタ16は、複数の画素10にまたがって形成されている。画素電極11は、画素10ごとに設けられている。画素電極11は、隣接する他の画素10の画素電極11と空間的に分離されることによって、他の画素10の画素電極11から電気的に分離されている。なお、対向電極12、第1光電変換層15、および光学フィルタ16の少なくとも1つは、画素10ごとに分離して設けられていてもよい。
【0110】
画素電極11は、光電変換部13で生成された信号電荷を読み出すための電極である。画素電極11は、画素10ごとに少なくとも1つ存在する。画素電極11は、信号検出トランジスタ24のゲート電極24gおよび不純物領域28dに電気的に接続されている。
【0111】
画素電極11は、導電性材料を用いて形成されている。導電性材料は、例えば、アルミニウム、銅などの金属、金属窒化物、または、不純物がドープされることにより導電性が付与されたポリシリコンである。
【0112】
対向電極12は、例えば、透明な導電性材料から形成される透明電極である。対向電極12は、第1光電変換層15において光が入射される側に配置される。したがって、第1光電変換層15には、対向電極12を透過した光が入射する。なお、撮像装置100によって検出される光は、可視光の波長範囲内の光に限定されない。例えば、撮像装置100は、赤外線または紫外線を検出してもよい。ここで、可視光の波長範囲とは、例えば、380nm以上780nm以下である。
【0113】
なお、本明細書における「透明」は、検出しようとする波長範囲の光の少なくとも一部を透過することを意味し、可視光の波長範囲全体にわたって光を透過することは必須ではない。本明細書では、赤外線および紫外線を含めた電磁波全般を、便宜上「光」と表現する。
【0114】
対向電極12は、例えば、ITO、IZO、AZO、FTO、SnO
2、TiO
2、ZnO
2などの透明導電性酸化物(TCO:Transparent Conducting Oxide)を用いて形成される。対向電極12には、
図2に示される電圧供給回路32が接続されている。電圧供給回路32が対向電極12に印加する電圧を調整することにより、対向電極12と画素電極11との電位差を所望の電位差に設定および維持することができる。
【0115】
図2を参照して説明したように、対向電極12は、電圧供給回路32に接続されたバイアス制御線42に接続されている。また、ここでは、対向電極12は、複数の画素10にまたがって形成されている。したがって、バイアス制御線42を介して、電圧供給回路32から所望の大きさの制御電圧を複数の画素10の間に一括して印加することが可能である。なお、電圧供給回路32から所望の大きさの制御電圧を印加することができれば、対向電極12は、画素10ごとに分離して設けられていてもよい。
【0116】
電圧供給回路32が画素電極11の電位に対する対向電極12の電位を制御することにより、光電変換によって第1光電変換層15内に生じた正孔-電子対のうち正孔および電子のいずれか一方を、信号電荷として画素電極11によって捕集することができる。例えば信号電荷として正孔を利用する場合、画素電極11よりも対向電極12の電位を高くすることにより、画素電極11によって正孔を選択的に捕集することが可能である。以下では、信号電荷として正孔を利用する場合を例示する。もちろん、信号電荷として電子を利用することも可能であり、この場合、画素電極11よりも対向電極12の電位を低くすればよい。対向電極12に対向する画素電極11は、対向電極12と画素電極11との間に適切なバイアス電圧が与えられることにより、第1光電変換層15において光電変換によって発生した正および負の電荷のうちの一方を捕集する。
【0117】
第1光電変換層15は、光子を吸収し、光電荷を発生させる層である。具体的には、第1光電変換層15は、入射する光を受けて正孔-電子対を発生させる。つまり、信号電荷は、正孔および電子のいずれか一方である。本実施の形態では、信号電荷が正孔である場合を例に説明するが、信号電荷は電子であってもよい。信号電荷である正孔が画素電極11によって捕集される。信号電荷の逆極性の電荷である電子が対向電極12によって捕集される。
【0118】
第1光電変換層15は、半導体型カーボンナノチューブと有機分子とアクセプタ材料とを含む。第1光電変換層15は、例えば、半導体型カーボンナノチューブと、アクセプタ材料と、半導体型カーボンナノチューブを覆う有機分子とを含む。アクセプタ材料は、第3材料の一例である。なお、第1光電変換層15には、アクセプタ料が含まれていなくてもよい。
【0119】
半導体型カーボンナノチューブは、入射する光を受けて正孔-電子対を発生させる。半導体型カーボンナノチューブは、例えば、アクセプタ材料に対してドナーとして機能する。つまり、半導体型カーボンナノチューブは、アクセプタ材料に電子を供与する。半導体型カーボンナノチューブは、画素電極11または対向電極12に直接電子を渡してもよい。
【0120】
半導体型カーボンナノチューブは、第1の波長範囲の光を吸収する特性を有する。
図4は、半導体型カーボンナノチューブの吸収スペクトルの例を示す模式図である。
図4に示されるように、半導体型カーボンナノチューブは、複数の吸光ピークを有する。複数の吸光ピークは、半導体型カーボンナノチューブの共鳴によるものであり、複数の吸光ピークの内、最も波長が長い順番に、第一共鳴、第二共鳴、と称する。
【0121】
半導体型カーボンナノチューブの共鳴の波長は、半導体型カーボンナノチューブの種類により異なる。半導体型カーボンナノチューブの種類は、カイラリティと呼ばれる2つの整数で指定される。
【0122】
例えば、(7,5)型の半導体型カーボンナノチューブの場合、第一共鳴の波長は約1047nmであり、第二共鳴の波長は約620nmである。また、(9,8)型の半導体型カーボンナノチューブの場合、第一共鳴の波長は約1450nm、第二共鳴の波長は約803nmである。なお、この吸光ピークの波長は被覆する有機分子の種類等により数十nm程度変化する可能性がある。
【0123】
第1の波長範囲は、
図4に示される第一共鳴および第二共鳴の波長のように、半導体型カーボンナノチューブが光を吸収し、光電荷を発生させる波長範囲である。つまり、第1の波長範囲は、半導体型カーボンナノチューブが有意な量子効率を示す波長範囲である。例えば、第1の波長範囲は、半導体型カーボンナノチューブの光吸収率が1%以上となる波長範囲である。
【0124】
このように半導体型カーボンナノチューブは、特定の狭い波長範囲で光の吸収を示すため、半導体型カーボンナノチューブを用いた第1光電変換層15により、狭帯域波長撮像が実現可能となる。特に、上述のカイラリティの半導体型カーボンナノチューブのように、半導体型カーボンナノチューブが、赤外線の波長範囲において、狭い波長範囲で光の吸収を示す場合には、赤外線波長などを利用した高感度の撮像が可能となる。
【0125】
なお、第1光電変換層15には、カイラリティの異なる複数種の半導体型カーボンナノチューブが含まれていてもよい。また、第1光電変換層15には、半導体型カーボンナノチューブ以外にも、アクセプタ材料に対してドナーとして機能する材料が含まれていてもよい。
【0126】
アクセプタ材料は、半導体型カーボンナノチューブに対してアクセプタとして機能する。つまり、アクセプタ材料は、半導体型カーボンナノチューブから電子を受容する。これにより、半導体型カーボンナノチューブで発生した正孔-電子対から、電子がアクセプタ材料に移動するため、正孔-電子対の再結合が抑制され、第1光電変換層15の光電変換効率が向上する。
【0127】
アクセプタ材料としては、例えば、C60(フラーレン)およびPCBM(フェニルC61酪酸メチルエステル)ならびにICBA(インデンC60ビス付加体)等のC60誘導体が用いられる。なお、これに限らず、上記したように、半導体型カーボンナノチューブから電子を受容できる材料であればアクセプタ材料として用いてよい。アクセプタ材料には、1つの材料種を用いてもよく、複数の材料種を組み合わせて用いてもよい。
【0128】
有機分子は、半導体型カーボンナノチューブを覆う有機化合物である。有機分子は、半導体型カーボンナノチューブの分散剤として機能する。有機分子は、第2の波長範囲の光を吸収し、第3の波長範囲の蛍光を発する特性を有する。有機分子は、例えば、半導体性ポリマーおよび低分子有機分子のうち少なくとも1つを含む。
【0129】
第2の波長範囲は、有機分子が有意に吸収を示す波長範囲であり、具体的には、有機分子が光を吸収し、像の滲み、混色ノイズ、または誤動作等の撮像装置100の動作に影響を与える程度に蛍光を放射する場合の、有機分子の吸収光の波長範囲である。例えば、有機分子の光吸収率が1%以上となる波長範囲である。また、第3の波長範囲は、有機分子が第2の波長範囲の光を吸収した場合に発する蛍光の波長範囲である。
【0130】
例えば、有機分子が、半導体性ポリマーの一例であるPFOの場合、
図1Aに示されるように、約390nmから約420nmの波長範囲の光を吸収する場合において、蛍光を有意に発する。第2の波長範囲は、有機分子の吸収係数、蛍光放出確率、第1光電変換層15の厚み、イメージセンサの撮像目的、および撮影環境等にも依存するが、例えば、有機分子の光吸収率が1%以上となる波長範囲である。
【0131】
有機分子は、例えば、分子内に六員環構造を有する。これにより、有機分子にπ電子的性質を容易に付与できる。六員環構造を有する有機分子としては、例えば、フルオレン骨格、ベンゾチアゾール骨格、フラビン骨格およびピレン骨格のうち少なくとも1つを有する有機化合物が挙げられる。また、有機分子は、例えば、分子内にアルキル鎖およびアルキレン鎖のうち少なくとも1つを有する。これにより、溶媒への溶解性が向上するため、有機分子によって半導体型カーボンナノチューブが分散されやすくなる。アルキル鎖およびアルキレン鎖の炭素数は、溶媒への溶解性を向上させる観点から、例えば、4以上であってもよく、6以上であってもよい。アルキル鎖およびアルキレン鎖は、直鎖状であってもよく、分岐鎖を有していてもよい。
【0132】
半導体性ポリマーは、半導体型カーボンナノチューブを覆うポリマーである。半導体性ポリマーは、例えば、π電子的性質を持つ部位を含む繰り返し単位を有する。半導体性ポリマーとしては、例えば、フルオレン、フルオレン誘導体、チオフェン、チオフェン誘導体およびフェニレンビニレン誘導体の重合体等の平面状のモノマー骨格を有し、π電子共役型である重合体が用いられる。なお、半導体性ポリマーは、上述のモノマーを50%以上含むコポリマーであってもよい。半導体型カーボンナノチューブを効率よく被覆できる観点から、半導体性ポリマーは、フルオレン骨格を有する重合体、または、チオフェン骨格を有する重合体であってもよい。具体的には、半導体性ポリマーは、フルオレン、フルオレン誘導体、チオフェンおよびチオフェン誘導体の重合体であってもよい。具体的な半導体性ポリマーとしては、例えば、PFO、PFO-BT、PT(ポリチオフェン)およびMDMO-PPV(ポリ[2-メトキシ-5-(3′,7′-ジメチルオクチルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン])等が用いられてもよい。これらの中でも、半導体型カーボンナノチューブの選択の効率性の観点から、半導体性ポリマーとしては、PFOまたはPFO-BTが用いられてもよい。
【0133】
低分子有機分子は、半導体型カーボンナノチューブを覆う低分子化合物である。低分子有機分子は、例えば、π電子的性質を持つ部位を含む低分子化合物で構成され、分子内に当該低分子化合物が繰り返し単位として繰り返されていない構造を有する。低分子有機分子としては、例えば、フルオレン骨格、チオフェン骨格、フラビン骨格およびピレン骨格のうち少なくとも1つを有する低分子化合物である。具体的な低分子化合物としては、例えば、FC12およびFC60等が挙げられる。
【0134】
光学フィルタ16は、有機分子が有意に吸収を示す第2の波長範囲の少なくとも一部の波長において、0でない光反射率もしくは0でない光吸収率を持つ。光学フィルタ16は、第2の波長範囲の中で有機分子が最大の光吸収率を示す波長を含む波長において、0でない光反射率もしくは0でない光吸収率を持っていてもよい。光学フィルタ16は、第2の波長範囲のすべての波長において、0でない光反射率もしくは0でない光吸収率を持っていてもよい。
【0135】
光学フィルタ16は、第2の波長範囲の光を反射もしくは吸収することにより、第2の波長範囲の光の透過率を下げ、有機分子が光を吸収し、蛍光を発する光量を減ずる。
【0136】
光学フィルタ16は、第2の波長範囲の光を実質的に透過させなくてもよい。第2の波長範囲の光を実質的に透過させないとは、光学フィルタ16を透過した光が有機分子に吸収され、有機分子が蛍光を発し、その蛍光が、電荷蓄積領域に吸収され有意に偽信号を発生させない、または、制御回路を有意に誤動作させない、との意味である。
【0137】
光学フィルタ16における第2の波長範囲の光の透過率は、有機分子の吸収係数、蛍光放出確率、第1光電変換層15の厚み、および、撮像装置100の撮像目的ならびに撮影環境、等にも依存するが、例えば、第2の波長範囲の全ての波長において、有機分子の光吸収率が1%以下となる透過率である。具体的には、光学フィルタ16における第2の波長範囲の光の透過率は、5%以下であってもよく、1%以下であってもよい。
【0138】
以上のように、光学フィルタ16は、第1光電変換層15よりも撮像装置に光が入射する側に位置し、第2の波長範囲の光の少なくとも一部を吸収または反射する。これにより、有機分子に到達する第2の波長範囲の光を減らすことができる。よって、有機分子が第2の波長範囲の光によって励起されることにより発せられる蛍光を減らすことができる。つまり、電荷蓄積領域等が有機分子の発する蛍光を吸収することにより発生するノイズ等を低減させることができる。
【0139】
光学フィルタ16は、第1の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を透過する。言い換えると、光学フィルタ16は、第1の波長範囲の光の少なくとも一部の波長に有意な透過性を有する。有意な透過性を有するとは、光学フィルタ16を透過した光が半導体型カーボンナノチューブによって光電変換され、撮像を可能になる程度の透過性を有する、との意味である。光学フィルタ16における第1の波長範囲の光の透過率は、撮影状況および撮影意図などにも依存するが、例えば、50%以上である。
【0140】
なお、
図4に示されるように、半導体型カーボンナノチューブが、複数の共鳴波長を有する場合には、光学フィルタ16は、半導体型カーボンナノチューブのいずれかの共鳴波長において有意な透過性を持ってもよい。また、第1光電変換層15にカイラリティの異なる複数種の半導体型カーボンナノチューブが含まれる場合には、光学フィルタ16は、いずれかのカイラリティの半導体型カーボンナノチューブのいずれかの共鳴の波長範囲において、有意な透過性を持ってもよい。
【0141】
このように、光学フィルタ16が第1の波長範囲の光の少なくとも一部の波長の光を透過させることで、第1光電変換層15における光電変換機能の低下を抑制できる。
【0142】
光学フィルタ16は、色つきガラス等を用いた吸収式のフィルタであってもよく、誘電体多層膜を積層した反射式のフィルタであってもよい。
【0143】
吸収式のフィルタとしては、例えば、ショット社製の色付きガラスRG715が挙げられる。色つきガラスRG715は、700nm以下の波長の光を遮断し、800nm以上の光を透過させる特性を持つ。例えば、色付きガラスRG715が光学フィルタ16に用いられる場合、光学フィルタ16は、(7,5)型の半導体型カーボンナノチューブの第二共鳴の波長の光を遮断し、第一共鳴の波長の光を透過させることが出来る。また、色付きガラスRG715が光学フィルタ16に用いられる場合、光学フィルタ16は、(9,8)型の半導体型カーボンナノチューブの第一共鳴および第二共鳴の光をいずれも透過させることができる。
【0144】
また、色付きガラスRG715が光学フィルタ16に用いられる場合、PFOまたはPFO-BTのように有機分子の第2の波長範囲の上限値が700nm以下であれば、光学フィルタ16は、第2の波長範囲の光を実質的に透過させない。
【0145】
上記はあくまで例示であり、有機分子の吸収スペクトルおよび半導体型カーボンナノチューブの吸収スペクトルから、適切な特性を持つ光学フィルタが選択されればよい。
【0146】
光学フィルタ16は、例えば、ある波長よりも短い波長の光を遮断し、当該波長よりも長い波長の光を透過させるロングパスフィルタであってもよく、特定の波長範囲の光のみを透過させ、当該波長範囲よりも短い波長の光および長い波長の光を遮断するバンドパスフィルタであってもよい。例えば、バンドパスフィルタの透過波長範囲は、ドナー材料として用いられるカイラリティの半導体型カーボンナノチューブのいずれかの共鳴波長と実質的に同一であってもよい。
【0147】
また、光学フィルタ16は、例えば、第2の波長範囲を含む波長範囲を遮断し、当該波長範囲よりも短い波長の光および長い波長の光を透過させるノッチフィルターであってもよい。
【0148】
図3に示されるように、光学フィルタ16は対向電極12のすぐ上に配置されてもよく、対向電極12上に形成された、
図3には図示していない封止膜上に配置されてもよく、撮像装置100の撮像面の保護のためにとりつけられた、
図3には図示していないガラス上に配置されてもよい。
【0149】
また、光学フィルタ16は、光電変換部13の近傍に配置する必要はなく、撮像システムの光路上に配置されてもよい。例えば、光学フィルタ16は、撮像レンズと光電変換部13との間、撮像レンズ内または撮像レンズ前面に配置されてもよい。
【0150】
また、光学フィルタ16は、酸素および水蒸気の透過を抑制する封止膜としての機能を有してもよい。
【0151】
また、光学フィルタ16は、例えば、画素ごとの撮影スペクトルを変えるためのマルチスペクトル撮像用光学フィルタとともに用いられてもよい。あるいは、マルチスペクトル撮像用光学フィルタが、光学フィルタ16の機能を果たしてもよい。
【0152】
また、光学フィルタ16は固定されたものに限らない。例えば、必要に応じて他の光学フィルタと切り替え可能に構成されていてもよい。
【0153】
(実施の形態2)
続いて、実施の形態2について説明する。実施の形態2では、第1遮光体として光学フィルタではなく第1電荷輸送層が用いられる点が、実施の形態1と相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0154】
[光電変換部の構成]
図5は、本実施の形態に係る撮像装置100の複数の画素10aの断面構造を示す概略断面図である。
図5に示されるように、画素10aは、実施の形態1に係る画素10と比較して、光学フィルタ16が備えられておらず、光電変換部13の代わりに光電変換部13aを備える点が相違する。
【0155】
光電変換部13aは、複数の画素電極11と、対向電極12と、複数の画素電極11と対向電極12との間に位置する第1光電変換層15と、対向電極12と第1光電変換層15との間に位置する第1電荷輸送層17とを備える。本実施の形態では、撮像装置100に対する光の入射側から、対向電極12、第1電荷輸送層17、第1光電変換層15、複数の画素電極11の順に配置されている。つまり、第1電荷輸送層17は、第1光電変換層15よりも光の入射側に配置されている。本実施の形態に係る第1遮光体は、第1電荷輸送層17を含む。
【0156】
図5に示されるように、第1電荷輸送層17は、第1光電変換層15と対向電極12との間に接して配置される。第1電荷輸送層17は、第1光電変換層15で発生する正電荷または負電荷の内、対向電極12が捕集する電荷を輸送する機能を持つ。
【0157】
第1電荷輸送層17は、第2の波長範囲の少なくとも一部の波長において、0でない光吸収率を持つ。第1電荷輸送層17は、第2の波長範囲の中で有機分子が最大の光吸収率を示す波長を含む波長において、0でない光吸収率を持っていてもよい。第1電荷輸送層17は、第2の波長範囲のすべての波長において、0でない光吸収率を持っていてもよい。第1電荷輸送層17は、第2の波長範囲の光を実質的に透過させなくてもよい。
【0158】
第1電荷輸送層17は、第1の波長範囲の光の少なくとも一部に有意な透過性を有する。半導体型カーボンナノチューブが、複数の共鳴波長を有する場合には、第1電荷輸送層17は、半導体型カーボンナノチューブのいずれかの共鳴波長において有意な透過性を持ってもよい。
【0159】
第1電荷輸送層17の光の透過率は、第1電荷輸送層17を構成する材料の光の吸収係数および第1電荷輸送層17の厚みに依存する。
【0160】
第1電荷輸送層17における第2の波長範囲の光の透過率は、5%以下であってもよく、1%以下であってもよい。
【0161】
第1電荷輸送層17の透過率について、負電荷輸送性を示すC60を例に説明する。
図6は、C60の吸収スペクトル示す図である。
図6に示されるように、C60は、335nmに吸収の極大波長を有する。
【0162】
また、
図7は、厚みの異なるC60層の透過率のシミュレーション結果を示す図である。
図7に示される透過率のシミュレーション結果は、縦軸が透過率、横軸が波長で示されている。
図7において、透過率は、横軸の波長の光が全て透過した場合を1として示されている。例えば、透過率を百分率に変換した場合には、1が100%であり、0.01が1%である。
【0163】
図示されていないが、厚み1000nm以下のC60層の、600nm以上の波長の光の透過率は、50%以上である。一方、
図7に示されるように、厚み500nm以上のC60層の、440nm以下の波長の光の透過率は、5%以下であり、厚み1000nm以上のC60層の、440nm以下の波長の光の透過率は、1%以下である。また、C60は負電荷を輸送する機能を持つ。そのため、対向電極12が負電荷を捕集する撮像装置100において、C60層は電荷輸送層として機能するととともに、第1光電変換層15に440nm以下の波長の光が到達する割合を減ずる機能を果たす。
【0164】
このように、第2の波長範囲の光の透過率を低くする観点からは、第1電荷輸送層17の厚みは、500nm以上であってもよく、1000nm以上であってもよい。
【0165】
第1電荷輸送層17の電荷輸送性材料は、上述の光透過性を有する材料であれば特に制限は無いが、電荷輸送性材料には、例えば、フラーレンおよびPCBMなどのフラーレン誘導体などが挙げられる。第1電荷輸送層17は、単一の種類の材料から構成されてもよく、複数の種類の材料から構成されてもよい。例えば、吸収スペクトルの異なる複数の材料を混合することで、より広い波長範囲において光の透過率を低減することができる。また、第1電荷輸送層17は、電荷輸送性材料と非電荷輸送性材料との混合体から構成されてもよい。例えば、電荷輸送性材料として、電荷を輸送する機能を果たす材料が選択され、非電荷輸送性材料として、第2の波長範囲の光を吸収する等の所望の吸収スペクトルを持つ材料が選択されてもよい。
【0166】
(実施の形態3)
続いて、実施の形態3について説明する。実施の形態3では、第1遮光体として光学フィルタではなく第2光電変換層が用いられる点が、実施の形態1と相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0167】
[光電変換部の構成]
図8は、本実施の形態に係る撮像装置100の複数の画素10bの断面構造を示す概略断面図である。
図8に示されるように、画素10bは、実施の形態1に係る画素10と比較して、光学フィルタ16が備えられておらず、光電変換部13の代わりに光電変換部13bを備える点が相違する。
【0168】
光電変換部13bは、複数の画素電極11と、対向電極12と、複数の画素電極11と対向電極12との間に位置する第1光電変換層15と、対向電極12と第1光電変換層15との間に位置する第2光電変換層18とを備える。本実施の形態では、撮像装置100に対する光の入射側から、対向電極12、第2光電変換層18、第1光電変換層15、複数の画素電極11の順に配置されている。つまり、第2光電変換層18は、第1光電変換層15よりも光の入射側に配置されている。本実施の形態に係る第1遮光体は、第2光電変換層18を含む。
【0169】
第2光電変換層18は、ドナー材料とアクセプタ材料とを含む。第2光電変換層18に含まれるドナー材料は、半導体型カーボンナノチューブとは異なる材料であり、第2光電変換層18に含まれるアクセプタ材料に対してドナーとして機能する。第2光電変換層18に含まれるアクセプタ材料は、第2光電変換層18に含まれるドナー材料に対してアクセプタとして機能する。
【0170】
第1光電変換層15に含まれるアクセプタ材料と第2光電変換層18に含まれるアクセプタ材料とは同一の物質であってもよいし、別の物質であってもよい。例えば、第1光電変換層15に含まれるアクセプタ材料および第2光電変換層18に含まれるアクセプタ材料は、いずれもC60であってもよいし、第1光電変換層15に含まれるアクセプタ材料がC60であり、第2光電変換層18に含まれるアクセプタ材料がPCBMであってもよい。
【0171】
第2光電変換層18は、第2の波長範囲の少なくとも一部の波長において、0でない光吸収率を持つ。第2光電変換層18は、第2の波長範囲の中で有機分子が最大の光吸収率を示す波長を含む波長において、0でない光吸収率を持っていてもよい。第2光電変換層18は、第2の波長範囲のすべての波長において、0でない光吸収率を持っていてもよい。第2光電変換層18は、第2の波長範囲の光を実質的に透過させなくてもよい。
【0172】
第2光電変換層18は、第1の波長範囲の光の少なくとも一部に有意な透過性を有する。半導体型カーボンナノチューブが、複数の共鳴波長を有する場合には、第2光電変換層18は、半導体型カーボンナノチューブのいずれかの共鳴波長において有意な透過性を持ってもよい。
【0173】
例えば、半導体型カーボンナノチューブの第二共鳴波長よりも、第2光電変換層18が光を実質的に透過させない波長が短いとよい。
【0174】
第2光電変換層の光の透過率は、第2光電変換層18を構成する各材料の光の吸収係数と、第2光電変換層18の厚みに依存する。
【0175】
例えば、第2光電変換層18において、ドナー材料がP3HT(ポリ-3-ヘキシルチオフェン)であり、アクセプタ材料がPCBMである場合、ドナー材料とアクセプタ材料との混合膜からなる第2光電変換層18は、約700nm以上の波長に対して有意な吸収を示さない。つまり、当該混合膜は、約700nm以上の波長の光は透過させる。一方、当該混合膜は、約700nm以下の波長の光には吸収を示す。例えば、390nm以上550nm以下の範囲において、当該混合膜の光の吸収係数は、5×104cm-1以上の値である。そこで、当該混合膜が10nm以上の厚みであれば、当該混合膜は390nm以上550nm以下の範囲の光の透過率が1%以下である。よって、第1光電変換層15に、例えば、半導体性ポリマーとしてPFO-BTが含まれていても、第2光電変換層18においてPFO-BTの第2の波長範囲の光の透過率が1%以下であるため、PFO-BTによる蛍光の発生が抑制される。
【0176】
なお、この計算に用いた光の吸収係数は、C. Stelling, C. R. Singh, M. Karg, T. A. F. Konig, M. Thelakkat, M. Retsch. Plasmonic nanomeshes: their ambivalent role as transparent electrodes in organic solar cells, Sci. Rep. 7, 42530 (2017) - see Supplementary information (Numerical data kindly provided by Tobias Konig)の値を用いた。混合比率及び膜質などにより、光の吸収係数の値は若干変化する可能性がある。
【0177】
第2光電変換層18に含まれるドナー材料は、第2の波長範囲の光に量子効率を持ってもよい。これにより、第2光電変換層18に含まれるドナー材料により吸収された第2の波長範囲の光は、正孔-電子対を発生させるエネルギーとなり、第1光電変換層15に含まれる有機分子に到達しなくなる。
【0178】
第2光電変換層18に含まれるドナー材料およびアクセプタ材料は、上述の透過性を有する混合膜を構成できる材料であれば特に制限は無いが、ドナー材料には、紫外光から近赤外光の波長領域にかけて高い吸収係数を示し、ドナーとしてよく機能する観点からは、例えば、フタロシアニン、ナフタロシアニン、フタロシアニン誘導体およびナフタロシアニン誘導体等が挙げられる。また、ドナー材料は、300nmから500nmの範囲において高い光の吸収係数を示すドナー材料であるAlq3(トリス(8-キノリノラト)アルミニウム)であってもよい。第2光電変換層18に含まれるドナー材料は単一であってもよく、複数種のドナー材料が第2光電変換層18に含まれてもよい。例えば、吸収スペクトルの異なる複数種のドナー材料を用いることにより、より幅広い波長範囲の光透過率を低減することができる。
【0179】
(実施の形態4)
続いて、実施の形態4について説明する。実施の形態4では、第1遮光体として光学フィルタではなく第1遮光ドナー材料が用いられる点が、実施の形態1と相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0180】
[光電変換部の構成]
図9は、本実施の形態に係る撮像装置100の複数の画素10cの断面構造を示す概略断面図である。
図9に示されるように、画素10cは、実施の形態1に係る画素10と比較して、光学フィルタ16が備えられておらず、光電変換部13の代わりに光電変換部13cを備える点が相違する。
【0181】
光電変換部13cは、複数の画素電極11と、対向電極12と、複数の画素電極11と対向電極12との間に位置する第1光電変換層15aとを備える。本実施の形態では、撮像装置100に対する光の入射側から、対向電極12、第1光電変換層15a、複数の画素電極11の順に配置されている。第1光電変換層15aは、半導体型カーボンナノチューブと、アクセプタ材料と、有機分子と、第1遮光ドナー材料を含む。つまり、第1遮光ドナー材料は第1光電変換層15a内に位置する。第1遮光ドナー材料は第1材料の一例である。本実施の形態に係る第1遮光体は、第1遮光ドナー材料を含む。
【0182】
第1遮光ドナー材料は、入射する光を受けて正孔-電子対を発生させる。第1遮光ドナー材料は、例えば、アクセプタ材料に対してドナーとして機能し、半導体型カーボンナノチューブとは異なる材料である。
【0183】
第1遮光ドナー材料は、第2の波長範囲の少なくとも一部の波長において、0でない光吸収率を持つ。第1遮光ドナー材料は、第2の波長範囲の中で有機分子が最大の光吸収率を示す波長を含む波長において、0でない光吸収率を持っていてもよい。第1遮光ドナー材料は、第2の波長範囲のすべての波長において、0でない光吸収率を持っていてもよい。第1遮光ドナー材料の光の吸収係数は、第2の波長範囲において、有機分子の光の吸収係数と同等以上であってもよい。
【0184】
本実施の形態において、第2の波長範囲の光は、第1光電変換層15aに入射し、有機分子に吸収される可能性がある。しかし、第2の波長範囲の光は、第1遮光ドナー材料にも吸収される可能性があり、第1遮光ドナー材料に吸収された光は、正孔-電子対を発生させるエネルギーとなり、有機分子に吸収されない。そのため、第1遮光ドナー材料が第1光電変換層15aに含まれることにより、有機分子が光を吸収し、蛍光を発生させる確率が減少する。
【0185】
第1光電変換層15aに含まれる中で、有機分子に対する第1遮光ドナー材料の量が多いほど、有機分子が光を吸収し、蛍光を発する確率を下げることができる。例えば、第1光電変換層15aに有機分子と第1遮光ドナー材料とが等量含まれ、かつ、有機分子および第1遮光ドナー材料の、第2の波長範囲における光の吸収係数が同一であれば、第2の波長範囲の光が有機分子に吸収される確率は、第1遮光ドナー材料が存在しない場合の1/2となる。
【0186】
第1遮光ドナー材料は、上述の吸光特性を有し、例えば、アクセプタ材料に対してドナーとして機能する材料である。第1遮光ドナー材料には、例えば、フタロシアニン、ナフタロシアニン、フタロシアニン誘導体およびナフタロシアニン誘導体等が挙げられる。
【0187】
(実施の形態5)
続いて、実施の形態5について説明する。実施の形態5では、第1遮光体の代わりに第2遮光体が用いられる点が、実施の形態1と相違する。第2遮光体は、第3の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収または反射する。第2遮光体は、第1光電変換層内、または、第1光電変換層と複数の画素電極との間に位置する。第2遮光体の詳細は、各種例を示して後述する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0188】
[光電変換部の構成]
図10は、本実施の形態に係る撮像装置100の複数の画素10dの断面構造を示す概略断面図である。
図10に示されるように、画素10dは、実施の形態1に係る画素10と比較して、光学フィルタ16が備えられておらず、光電変換部13の代わりに光電変換部13dを備える点が相違する。
【0189】
光電変換部13dは、複数の画素電極11と、対向電極12と、複数の画素電極11と対向電極12との間に位置する第1光電変換層15bとを備える。本実施の形態では、撮像装置100に対する光の入射側から、対向電極12、第1光電変換層15b、複数の画素電極11の順に配置されている。第1光電変換層15bは、半導体型カーボンナノチューブと、アクセプタ材料と、有機分子と、第2遮光ドナー材料を含む。つまり、第2遮光ドナー材料は、第1光電変換層15b内に位置する。第2遮光ドナー材料は、第2材料の一例である。本実施の形態に係る第2遮光体は、第2遮光ドナー材料を含む。なお、第1光電変換層15bには、アクセプタ材料が含まれていなくてもよい。
【0190】
第2遮光ドナー材料は、入射する光を受けて正孔-電子対を発生させる。第2遮光ドナー材料は、例えば、アクセプタ材料に対してドナーとして機能し、半導体型カーボンナノチューブとは異なる材料である。
【0191】
第2遮光ドナー材料は、有機分子が発する蛍光の波長範囲である第3の波長範囲の少なくとも一部の波長において、0でない光吸収率を持つ。第2ドナー遮光材料は、第3の波長範囲の中で有機分子が最大の蛍光強度を示す波長を含む波長において、0でない光吸収率を持っていてもよい。第2ドナー遮光材料は、第3の波長範囲のすべての波長において、0でない光吸収率を持っていてもよい。
【0192】
本実施の形態において、第2の波長範囲の光は、第1光電変換層15bに入射し、有機分子に吸収される可能性がある。有機分子が第2の波長範囲の光を吸収した場合には、有機分子が蛍光を発する。しかし、第2遮光ドナー材料が第3の波長範囲において0でない光吸収率を持つため、有機分子が発する蛍光の一部分またはすべてを吸収する。
【0193】
第2遮光ドナー材料に吸収された有機分子が発した蛍光は、正孔-電子対を発生させるエネルギーとなり、さらに発生した電子が、例えば、アクセプタ材料により第2遮光ドナー材料から分離され、蛍光が消滅する。そのため、半導体基板20に到達可能な蛍光の量は、第2遮光ドナー材料が存在しない場合に比べ減少する。第1光電変換層15bに含まれる、有機分子に対する第2遮光ドナー材料の量が多いほど、有機分子が発した蛍光が半導体基板20に到達する確率を下げることができる。
【0194】
第2遮光ドナー材料は、上述の吸光特性を有し、例えば、アクセプタ材料に対してドナーとして機能する材料である。第2遮光ドナー材料には、例えば、フタロシアニン、ナフタロシアニン、フタロシアニン誘導体およびナフタロシアニン誘導体等が挙げられる。
【0195】
(実施の形態6)
続いて、実施の形態6について説明する。実施の形態6では、第1遮光体の代わりに第2遮光体が用いられる点が、実施の形態1と相違する。また、実施の形態6では、同様に第2遮光体が用いられる実施の形態5とは、第2遮光体として第2遮光ドナー材料の代わりに第2電荷輸送層が用いられている点が相違する。以下では、実施の形態1および実施の形態5との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0196】
[光電変換部の構成]
図11は、本実施の形態に係る撮像装置100の複数の画素10eの断面構造を示す概略断面図である。
図11に示されるように、画素10eは、実施の形態1に係る画素10と比較して、光学フィルタ16が備えられておらず、光電変換部13の代わりに光電変換部13eを備える点が相違する。
【0197】
光電変換部13eは、複数の画素電極11と、対向電極12と、複数の画素電極11と対向電極12との間に位置する第1光電変換層15と、第1光電変換層15と複数の画素電極11との間に位置する第2電荷輸送層19とを備える。本実施の形態では、撮像装置100に対する光の入射側から、対向電極12、第1光電変換層15、第2電荷輸送層19、複数の画素電極11の順に配置されている。つまり、第2電荷輸送層19は、第1光電変換層15の半導体基板20側に配置されている。本実施の形態に係る第2遮光体は、第2電荷輸送層19を含む。
【0198】
図11に示されるように、第2電荷輸送層19は、第1光電変換層15と複数の画素電極11との間に接して配置される。第2電荷輸送層19は、第1光電変換層15で発生する正電荷または負電荷の内、画素電極11が捕集する電荷を輸送する機能を持つ。
【0199】
第2電荷輸送層19は、第3の波長範囲の少なくとも一部の波長において、0でない光吸収率を持つ。第2電荷輸送層19は、第3の波長範囲の中で有機分子が最大の蛍光強度を示す波長を含む波長において、0でない光吸収率を持っていてもよい。第2電荷輸送層19は、第3の波長範囲のすべての波長において、0でない光吸収率を持っていてもよい。第2電荷輸送層19は、第3の波長範囲の光を実質的に透過させなくてもよい。
【0200】
第2電荷輸送層19の透過率は、第2電荷輸送層19を構成する材料の光の吸収係数および第2電荷輸送層19の厚みに依存する。
【0201】
例えば、第2電荷輸送層19として、負電荷輸送性を示すC60を用いた場合の吸収スペクトルおよび透過率については、実施の形態2において、
図6および
図7を用いて説明したとおりである。
図7に示されるように、厚み500nm以上のC60層の、440nm以下の波長の光の透過率は、5%以下であり、厚み1000nm以上のC60層の、440nm以下の波長の光の透過率は、1%以下である。また、C60は負電荷を輸送する機能を持つ。そのため、画素電極が負電荷を捕集する撮像装置において、C60層は電荷輸送層として機能するととともに、半導体基板20に440nm以下の波長の光が到達する割合を減ずる機能を果たす。
【0202】
第2電荷輸送層19の電荷輸送性材料は、上述の光透過性を有する材料であれば特に制限は無いが、電荷輸送性材料には、例えば、フラーレンおよびPCBMなどのフラーレン誘導体などが挙げられる。第2電荷輸送層19は、単一の種類の材料から構成されてもよく、複数の種類の材料から構成されてもよい。例えば、吸収スペクトルの異なる複数の材料を混合することで、より広い波長範囲において光の透過率を低減することができる。また、第2電荷輸送層19は、電荷輸送性材料と非電荷輸送性材料との混合体から構成されてもよい。例えば、電荷輸送性材料として電荷を輸送する機能を果たす材料が選択され、非電荷輸送性材料として、第3の波長範囲の光を吸収する等の所望の吸収スペクトルを持つ材料が選択されてもよい。
【0203】
以上のように、第2電荷輸送層19は、第1光電変換層15よりも半導体基板20側に位置し、第3の波長範囲の光の少なくとも一部を吸収または反射する。これにより、シリコンを含む半導体基板の不純物領域などからなる電荷蓄積領域または制御回路に到達する第3の波長範囲の光を減らすことができる。よって、電荷蓄積領域等が有機分子の発する蛍光を吸収することにより発生するノイズ等を低減させることができる。
【0204】
(実施の形態7)
続いて、実施の形態7について説明する。実施の形態7では、第1遮光体に加えて第2遮光体が用いられる点が、実施の形態1と相違する。以下では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、共通点の説明を省略または簡略化する。
【0205】
[光電変換部の構成]
図12は、本実施の形態に係る撮像装置100の複数の画素10fの断面構造を示す概略断面図である。
図11に示されるように、画素10fは、実施の形態1に係る画素10と比較して、光電変換部13の代わりに光電変換部13fを備える点が相違する。
【0206】
光電変換部13fは、複数の画素電極11と、対向電極12と、複数の画素電極11と対向電極12との間に位置する第1光電変換層15bとを備える。また、光電変換部13fの対向電極12上には、光学フィルタ16が備えられている。本実施の形態では、撮像装置100に対する光の入射側から、光学フィルタ16、対向電極12、第1光電変換層15b、複数の画素電極11の順に配置されている。つまり、光学フィルタ16は、第1光電変換層15bよりも光の入射側に配置されている。第1光電変換層15bは、実施の形態5と同様に、半導体型カーボンナノチューブと、アクセプタ材料と、有機分子と、第2遮光ドナー材料を含む。
【0207】
本実施の形態に係る撮像装置100は、第1遮光体および第2遮光体を含む。また、本実施の形態に係る第1遮光体は、光学フィルタ16を含み、本実施の形態に係る第2遮光体は、第2遮光ドナー材料を含む。そのため、光学フィルタ16が第2の波長範囲の光を吸収または反射し、有機分子が蛍光を発することを抑制できるとともに、有機分子が蛍光を発した場合でも、第2遮光ドナー材料が蛍光を吸収し、半導体基板20へ蛍光が到達することを抑制できる。
【0208】
(他の実施の形態)
以上、1つまたは複数の態様に係る撮像装置について、実施の形態に基づいて説明したが、本開示は、これらの実施の形態に限定されるものではない。本開示の主旨を逸脱しない限り、当業者が思いつく各種変形を本実施の形態に施したもの、および、異なる実施の形態における構成要素を組み合わせて構築される形態も、本開示の範囲内に含まれる。
【0209】
例えば、上記実施の形態では、第1光電変換層は、半導体型カーボンナノチューブと、半導体型カーボンナノチューブに対してアクセプタとして機能するアクセプタ材料とをいずれも含む、いわゆる、ヘテロバルク層型の光電変換層であったが、これに限らない。第1光電変換層は、半導体型カーボンナノチューブを含む層とアクセプタ材料を含む層とを接合した2層構造の光電変換層であってもよい。
【0210】
また、例えば、上記実施の形態6において、第2遮光体として第2電荷輸送層が配置されたが、これに限らない。第2遮光体として第2電荷輸送層の代わりに、第3の波長範囲の少なくとも一部の波長の光を吸収する第3光電変換層が配置されてもよい。
【0211】
また、例えば、各実施の形態に用いられた第1遮光体および第2遮光体を複数組み合わせた撮像装置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0212】
本開示に係る撮像装置は、医療用カメラ、監視用カメラ、車載用カメラ、測距カメラ、顕微鏡カメラ、ドローン用カメラ、ロボット用カメラなど、様々なカメラシステムおよびセンサシステムにおいて赤外線波長などを利用した高感度撮像に適用できる。
【符号の説明】
【0213】
10、10a、10b、10c、10d、10e、10f 画素
11 画素電極
12 対向電極
13、13a、13b、13c、13d、13e、13f 光電変換部
14 信号検出回路
15、15a、15b 第1光電変換層
16 光学フィルタ
17 第1電荷輸送層
18 第2光電変換層
19 第2電荷輸送層
20 半導体基板
20t 素子分離領域
24 信号検出トランジスタ
24d、24s、26s、28d、28s 不純物領域
24g、26g、28g ゲート電極
26 アドレストランジスタ
28 リセットトランジスタ
32 電圧供給回路
34 リセット電圧源
36 垂直走査回路
37 カラム信号処理回路
38 水平信号読み出し回路
40 電源線
41 電荷蓄積ノード
42 バイアス制御線
44 リセット電圧線
46 アドレス制御線
47 垂直信号線
48 リセット制御線
49 水平共通信号線
50 層間絶縁層
52 プラグ
53 配線
54、55 コンタクトプラグ
56 配線層
100 撮像装置