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特開2023-164527遠心圧縮機のインペラ及び遠心圧縮機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164527
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】遠心圧縮機のインペラ及び遠心圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/30 20060101AFI20231102BHJP
【FI】
F04D29/30 F
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023145385
(22)【出願日】2023-09-07
(62)【分割の表示】P 2022524765の分割
【原出願日】2020-05-20
(71)【出願人】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岩切 健一郎
(57)【要約】
【課題】二次流れの発生を抑制でき、従来と比較し、より効率的且つ効果的に、流量配分の均一化、高圧力比、高効率化を図り、さらなるインペラ効率の向上を可能にする遠心圧縮機のインペラ及び遠心圧縮機を提供する。
【解決手段】本開示の遠心圧縮機のインペラの一態様は、ハブと、ハブの周面上において周方向に間隔を空けて設けられた複数のフルブレードと、ハブの周面上において複数のフルブレードのうちの隣接するフルブレード間にそれぞれ設けられた複数のスプリッタブレードと、を備える。また、インペラの子午面上におけるフルブレードのコード方向に沿ったコード位置において、フルブレードの前縁におけるコード位置を0%、フルブレードの後縁におけるコード位置を100%、スプリッタブレードの前縁の基端におけるコード位置をCh、スプリッタブレードの前縁の先端におけるコード位置をCt、と定義した場合に、Ch≦30%、且つ、Ct≧50%の関係を満たす。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハブと、
前記ハブの周面上において周方向に間隔を空けて設けられた複数のフルブレードと、
前記ハブの周面上において前記複数のフルブレードのうちの隣接するフルブレード間にそれぞれ設けられた複数のスプリッタブレードと、を備える遠心圧縮機のインペラであって、
前記インペラの子午面上における前記フルブレードのコード方向に沿ったコード位置において、
前記フルブレードの前縁における前記コード位置を0%、
前記フルブレードの後縁における前記コード位置を100%、
前記スプリッタブレードの前縁の基端における前記コード位置をCh、
前記スプリッタブレードの前縁の先端における前記コード位置をCt、と定義した場合に、
Ch≦30%、且つ、Ct≧50%の関係を満たす、
遠心圧縮機のインペラ。
【請求項2】
前記スプリッタブレードの前記基端におけるコード長をLh、
前記スプリッタブレードの前記先端におけるコード長をLt、と定義した場合に、
2×Lt≦Lhの関係を満たす、
請求項1に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項3】
前記スプリッタブレードの前記前縁は、前記子午面上において、前記前縁の基端と先端とを結んだ直線に対して凹となる曲面状を有する、
請求項1又は2に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項4】
Ch=0%の関係を満たす、
請求項1乃至3の何れか1項に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項5】
前記インペラの子午面上における前記スプリッタブレードの翼高さ(Hs)に対する前記フルブレードの翼高さ(Hf)の比である翼高さ比をHs/Hfと定義した場合に、
前記翼高さ(Hs)及び前記翼高さ(Hf)は、前記スプリッタブレード又は前記フルブレードの基端と先端との間の中心線に直交する方向の前記基端から前記先端までの長さ寸法であって、前記翼高さ比(Hs/Hf)は、前記インペラの子午面上における前記フルブレードのコード方向に沿ったコード位置において同一のコード位置における翼高さ比(Hs/Hf)であり、
前記スプリッタブレードの少なくとも前縁において、前記翼高さ比は、Hs/Hf<1の関係を満たす、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項6】
前記スプリッタブレードの前記前縁から後縁に至るまでの全ての区間において、前記翼高さ比は、Hs/Hf<1の関係を満たす、
請求項5に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項7】
前記スプリッタブレードの前記前縁から前記後縁に至るまでの全ての区間において、前記翼高さ比は、Hs/Hf≦0.7の関係を満たす、
請求項6に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項8】
前記スプリッタブレードの少なくとも前記前縁において、前記翼高さ比は、Hs/Hf≦0.7の関係を満たす、
請求項5に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項9】
前記翼高さ比は、前記スプリッタブレードの前記前縁から後縁に至るまで徐々に大きくなるように構成される、
請求項8に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項10】
前記隣接するフルブレード間にそれぞれ少なくとも1つが設けられた複数の凸部であって、前記ハブの前記周面上から突設するように構成された複数の凸部をさらに備え、
前記インペラの子午面上における前記フルブレードのコード方向に沿ったコード位置において、
前記フルブレードの前縁における前記コード位置を0%、
前記フルブレードの後縁における前記コード位置を100%、
前記凸部の上流縁における前記コード位置をCvl、と定義した場合に、
Cvl≦50%の関係を満たし、
前記フルブレードの翼高さをHf、前記子午面上における前記凸部の高さをHvと定義した場合に、
Hv≦0.3×Hfの関係を満たす、
請求項1乃至9の何れか1項に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項11】
前記凸部の前記上流縁は、前記スプリッタブレードの前記前縁よりも上流側に位置する、
請求項10に記載の遠心圧縮機のインペラ。
【請求項12】
請求項1乃至11の何れか1項に記載の遠心圧縮機のインペラを備える、
遠心圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、遠心圧縮機のインペラ及び遠心圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車用エンジンや舶用エンジンなどのエンジンの出力を向上させる技術として、エンジンが吸い込む吸気を圧縮し、密度を高くして酸素を多く含んだ吸気をエンジンに供給するターボチャージャ(過給機)が多用されている。
【0003】
ターボチャージャは、例えば、回転軸と、回転軸の一端側に設けられる遠心圧縮機(コンプレッサ)と、回転軸の他端側に設けられるタービンと、を備え、エンジンから送られた排ガスのエネルギーでタービンのインペラ(タービンホイール)を回転させ、これとともに回転軸、ひいては遠心圧縮機のインペラ(コンプレッサホイール)を軸線周りに回転させて吸気を圧縮し、エンジンに供給するように構成されている。
【0004】
また、遠心圧縮機のインペラは、回転軸に同軸で連結して設けられる略円錐台状のハブ(コンプレッサハブ)と、軸線中心の周方向に所定の間隔をあけ、ハブの外周面から軸線中心の略径方向外側に延在する複数の動翼(コンプレッサ動翼)と、を備えて構成されている。
【0005】
ここで、同形同大の動翼を複数備えた場合には、各動翼の圧力面側と負圧面側の流体(圧縮空気など)の流速差が非常に大きくなり、インペラ効率が悪くなるケースがある。
【0006】
このため、従来、この種のインペラには、動翼として、周方向に所定の間隔をあけて配設される複数のフルブレード(長翼)だけでなく、周方向に隣り合うフルブレードの間に配設されるスプリッタブレード(短翼、中間翼)を備えることで、インペラ効率を向上させるように構成したものが多用されている。
【0007】
しかしながら、隣り合うフルブレードの間に入ってきた流れに、例えば、スプリッタブレードを間に両側、すなわち、フルブレードの圧力面側と負圧面側とで、負圧面側の流れが速くなる流速差が生じる。これにより、スプリッタブレードを備え、スプリッタブレードを間にした両側の流路(通路)の流路断面積を幾何学的に等しくしても、負圧面側が圧力面側に比べて流速が速いことで流量が増え、各流路の流量に不均一が生じ、流体を均等分配することができないケースがある。このように流路の流量に不均一が生じ、流体を均等分配することができないことで、翼負荷が不均等になり、流路を流れる圧縮空気のエネルギー損失が増え、所望のインペラ効率の向上効果を得ることができないケースがある。
【0008】
このため、従来、インペラ効率の向上を図るために、フルブレード、スプリッタブレードの形状、数、配置に関する多くの研究が行われている。
【0009】
例えば、特許文献1には、スプリッタブレードの入口端部における前縁翼角θを、ハブ面からの高さ方向で変え、且つ先端部分をその他部分より大きい傾斜角度をもつようにフルブレードの負圧面側に傾斜させ、さらに、ハブ面側部分をその他部分より大きい傾斜角度をもってフルブレードの圧力面側に傾斜させた遠心圧縮機のインペラが開示されている。
【0010】
この遠心圧縮機のインペラでは、上記のようにスプリッタブレードを構成することによって、スプリッタブレードを遠心圧縮機の複雑な内部流動に適合させ、すなわち、スプリッタブレードの前縁と、フルブレードの先端を超えて(先端隙間を通って)流れる漏れ流れとの干渉を抑制し、流量配分の均一化、高圧力比、高効率化(さらなるインペラ効率の向上)を実現している。
【0011】
特許文献2には、隣り合うフルブレード(全翼)とスプリッタブレード(半翼、第1のスプリッタブレード)の間にハブの外周面から突出し、隣り合うフルブレードとスプリッタブレードの間を径方向外側に向けて流れる流体の流れ方向に沿って延びる突起部を備えたインペラが開示されている。
【0012】
このインペラでは、突起部が第2のスプリッタブレードとしての機能を発揮し、突起部を間にフルブレードとの間、スプリッタブレードとの間をそれぞれ流れる流体が横すべりすることを防止する機能を発揮する。これにより、流体に対してインペラの径方向外側に向かう力をより強く作用させることができ、流量配分の均一化、高圧力比、高効率化を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2011-80411号公報
【特許文献2】特開2017-44190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
一方、本願の発明者は、鋭意研究を重ね、図8に示すように、インペラ6の軸側(内側、ハブ18側)に入ってきた流れA2が遠心力で段々と外側に飛ばされて軸O1方向に対して少しずつ傾くとともに、ハブ18の周面18aを伝って動翼21の基端側から動翼21の壁面(翼面)を駆け上がるように流れ、この動翼21の壁面を駆け上がる流れA2と、主流のインペラ6の入口側から軸O1方向に入ってきた流れA1とがぶつかって、動翼21の壁面から剥離する二次流れA3が生じ、インペラ6の出口側に流れることを見い出した。
【0015】
さらに、本願の発明者は、剥離が起こって二次流れA3が発生する位置(剥離線S)が、動翼21の正圧面側ではサージ(小流量)側からチョーク(最大流量)側までほとんど変わらないこと、圧力比が高いサージ側ほどその傾向がやや顕著になること、動翼21の負圧面側でも概ね同じ傾向が生じることなどの新たな知見を見い出し、これらの剥離に起因した二次流れA3がインペラ効率の低下に大きく影響することを発見した。
【0016】
したがって、このような研究成果に基づき、二次流れの発生を抑制する手法の開発が強く望まれていた。
【0017】
本開示は、上記事情に鑑み、二次流れの発生を抑制でき、従来と比較し、より効率的且つ効果的に、流量配分の均一化、高圧力比、高効率化を図り、さらなるインペラ効率の向上を可能にする遠心圧縮機のインペラ及び遠心圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示の一態様の遠心圧縮機のインペラは、ハブと、前記ハブの周面上において周方向に間隔を空けて設けられた複数のフルブレードと、前記ハブの周面上において前記複数のフルブレードのうちの隣接するフルブレード間にそれぞれ設けられた複数のスプリッタブレードと、を備える遠心圧縮機のインペラであって、前記インペラの子午面上における前記スプリッタブレードの翼高さ(Hs)に対する前記フルブレードの翼高さ(Hf)の比である翼高さ比をHs/Hfと定義した場合に、前記スプリッタブレードの少なくとも前縁において、前記翼高さ比は、Hs/Hf<1の関係を満たす。
【0019】
また、本開示の一態様の遠心圧縮機は、上記の遠心圧縮機のインペラを備える。
【発明の効果】
【0020】
本開示の一態様の遠心圧縮機のインペラ及び遠心圧縮機によれば、二次流れの発生を抑制でき、従来と比較し、より効率的且つ効果的に、流量配分の均一化、高圧力比、高効率化を図り、さらなるインペラ効率の向上を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示の第1、第2実施形態に係る遠心圧縮機を備えたターボチャージャの一例を示す図である。
図2】本開示の第1施形態に係る遠心圧縮機及び遠心圧縮機のインペラの一例を示す部分断面図である。
図3】本開示の第1施形態に係る遠心圧縮機及び遠心圧縮機のインペラの変更例を示す部分断面図である。
図4】本開示の第1施形態に係る遠心圧縮機及び遠心圧縮機のインペラの変更例を示す部分断面図である。
図5】本開示の第1施形態に係る遠心圧縮機及び遠心圧縮機のインペラの変更例を示す部分断面図である。
図6】本開示の第2施形態に係る遠心圧縮機及び遠心圧縮機のインペラの一例を示す部分断面図である。
図7】本開示の第2施形態に係る遠心圧縮機及び遠心圧縮機のインペラの動翼及び凸部を示す部分平面図である。
図8】遠心圧縮機のインペラの動翼の間を流れる流体が翼面から剥離する位置(剥離線)を示す図である。
図9】本開示の第1(第2)施形態に係る遠心圧縮機及び遠心圧縮機のインペラの一例を示す部分断面図であり、翼高さ、コート長等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
以下、図1から図5図8図9を参照し、第1実施形態に係る遠心圧縮機のインペラ及び遠心圧縮機について説明する。
【0023】
ここで、本実施形態では、本開示の遠心圧縮機がターボチャージャに具備されているものとして説明を行うが、本開示の遠心圧縮機は、例えば、電動の遠心圧縮機であってもよく、また、圧縮対象の流体を空気に限定する必要はない。すなわち、本開示の遠心圧縮機(及び遠心圧縮機のインペラ)は、流体を圧縮して送ることが可能であればよく、遠心圧縮機単体で構成しても、タービン以外の機構や装置と複合して構成してもよい。また、その用途等を限定する必要もない。
【0024】
(ターボチャージャ)
本実施形態のターボチャージャ1は、例えば、図1に示すように、自動車用エンジン、舶用エンジンなどのエンジンから送られた排ガスGのエネルギーでタービン2のインペラ(タービンホイール)3を軸線(回転軸線)O1周りに回転させ、これとともにインペラ3に同軸で連結した回転軸4、さらに回転軸4に同軸で連結した遠心圧縮機(コンプレッサ)5のインペラ(コンプレッサホイール)6を回転させ、インペラ6で空気(吸気、流体)Aを吸入して圧縮し、圧縮空気A’をエンジンに供給するように構成されている。
【0025】
(タービン)
タービン2は、回転軸4の他端側に同軸で連結して設けられたインペラ3と、インペラ3を収容するタービンカバー(タービンハウジング)7と、を備えて構成されている。
【0026】
インペラ3は、回転軸4に同軸で連結して設けられる略円錐台状のタービンハブ8と、タービンハブ8の外周面から軸線O1中心の径方向外側に延在するタービン動翼9と、を備えている。
【0027】
タービン2のインペラ3の軸線O1中心の径方向外側には、インペラ3の周囲に設けられ、エンジンから排出された排ガスGをインペラ3に給送するためのスクロール流路R3、ノズルベーン10などの排ガス流量調節装置を備えたノズル流路R4からなる排ガス流路R5が設けられている。
【0028】
また、インペラ3の軸線O1方向後方側(排ガスGの排出口11側)には、インペラ3と同軸で、インペラ3のタービン動翼9の出口から出た排ガスGを受け入れて外部に排出するための排出流路R6(排ガス流路R5)が設けられている。この排出流路R6は排気ディフューザ12で構成されている。
【0029】
また、本実施形態のターボチャージャ1では、スクロール流路R3とノズル流路R4と排出流路R6(排気ディフューザ12)とがインペラ3を収容するタービンカバー7によって形成されている。
【0030】
(遠心圧縮機:コンプレッサ)
本実施形態の遠心圧縮機5は、軸受台15、16に回転可能に軸支された回転軸4の一端側に同軸で連結して設けられた遠心圧縮機5のインペラ(コンプレッサホイール)6と、インペラ6を収容するコンプレッサカバー17と、備えて構成されている。
【0031】
遠心圧縮機5のインペラ6は、回転軸4に同軸で連結して設けられる略円錐台状のコンプレッサハブ(ハブ)18と、コンプレッサハブ18の外周面から軸線O1中心の径方向外側に延在するコンプレッサ動翼(インペラ動翼)19と、を備えている。
【0032】
インペラ6の軸線O1方向前方側(空気Aの吸入口20側)には、インペラ6の回転とともに空気Aを吸入してインペラ6に給送するための吸気流路R1が設けられている。
【0033】
また、インペラ6の軸線O1中心の径方向外側には、インペラ6から出た圧縮空気A’を受け入れてエンジンに給送するための渦室r2を有する圧縮空気流路(圧縮気体流路)R2が設けられている。
【0034】
そして、上記のように構成した本実施形態のターボチャージャ1おいては、エンジンから排出された排ガスGがタービン2のスクロール流路R3、ノズル流路R4を通じてタービン2のインペラ3の径方向外側から供給され、この排ガスGのエネルギーによってインペラ3が回転駆動する。このインペラ3の回転によって回転軸4及び遠心圧縮機5のインペラ6が回転駆動する。
【0035】
また、インペラ6の回転によって吸入口20から空気Aが吸入されて吸気流路R1を流れ、インペラ6に供給されるとともに圧縮され、圧縮空気A’が圧縮空気流路R2を通じてエンジンに供給される。タービン2のインペラ3を回転駆動させた後の排ガスGは、排気ディフューザ12の排出流路R6を流通するとともに圧力回復され、外部に排出される。
【0036】
(遠心圧縮機のインペラ)
一方、本実施形態の遠心圧縮機5のインペラ6は、ハブ18と、ハブ18の周面18a上において軸線(軸)O1中心の周方向に間隔を空けて設けられた複数のフルブレード21と、ハブ18の周面18a上において複数のフルブレード21のうちの隣接するフルブレード21間にそれぞれ設けられた複数のスプリッタブレード22と、を備えて構成されている。
【0037】
ここで、前述(図8)の通り、本願の発明者は、鋭意研究を重ね、遠心圧縮機5のインペラ6に軸(O1、回転軸4)側に入ってきた流れA2が遠心力で段々と外径側に飛ばされて軸O1方向に対して少しずつ傾くとともに、ハブ18の周面18aを伝って動翼(21)のハブ側(基端側)から動翼21の翼面(壁面)を駆け上がる流れと、主流のインペラ6の入口側から入ってきた流れA1とがぶつかって、動翼(21)の翼面から剥離し出口側に流れる二次流れA3が生じることを見い出した。
【0038】
また、本願の発明者は、剥離が起こって二次流れA3が発生する剥離線(境界位置)Sが、動翼(21)の正圧面側ではサージ側からチョーク側までほとんど変わらないこと、圧力比が高いサージ側ほどその傾向がやや顕著になること、動翼(21)の負圧面側でも概ね同じ傾向が生じることなどの新たな知見を見い出し、これらの剥離に起因した二次流れA3がインペラ効率の低下に大きく影響することを発見するに至った。
【0039】
さらに、図8及び図9に示したインペラ6の子午面(子午面断面)視で、フルブレード21のコード長Lの前縁21aにおけるコード位置を0%、フルブレード21の後縁21bにおけるコード位置を100%としたとき、剥離が起こって二次流れA3が発生する剥離線Sは、フルブレード21の前縁21a側(概ね0%~5%程度の位置)の基端21cから後縁21b側に向かうに従い徐々にフルブレード21の先端21d側に延び、概ね70%程度の位置で先端21dに達する凹曲線状(凹円弧状)を呈するように形成されることを発見した。
【0040】
また、二次流れA3は、フルブレード21の先端21d側(チップ側)の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することによって、特に、フルブレード21の前縁21a側の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することによって、さらにインペラ効率が低下することも確認された。
【0041】
上記のような本願の発明者による格別顕著な成果、知見に基づいて、本実施形態の遠心圧縮機5のインペラ6A(6)は、図2図9参照)に示すように、インペラ6の子午面(子午面断面)上におけるスプリッタブレード22Aの翼高さ(Hs)に対するフルブレード21の翼高さ(Hf)の比である翼高さ比をHs/Hfと定義した場合に、スプリッタブレード22Aの少なくとも前縁22aにおいて、翼高さ比がHs/Hf<1の関係を満たすように構成されている。
【0042】
なお、本開示におけるインペラ6の子午面とは、遠心圧縮機5のインペラ6をその中心軸(O1)に沿って切断した断面に、動翼19(フルブレード21、スプリッタブレード22)の部分だけ切断断面そのままではなく、動翼形状を中心軸(O1)に沿って回転投影した形状を重ね合わせた流路形状断面を意味する。
【0043】
また、本開示におけるフルブレード21の翼高さHf、スプリッタブレード22A(22)の翼高さHsはそれぞれ、インペラ6の子午面において、基端21c、22cと先端21d、22dの間の中心線P1、P2に直交する方向の基端21c、22cから先端21d、22dまでの長さ寸法である。
【0044】
さらに、スプリッタブレード22Aの翼高さ(Hs)に対するフルブレード21の翼高さ(Hf)の比である翼高さ比Hs/Hfは、同じコード位置における翼高さの比である。
【0045】
そして、本実施形態の遠心圧縮機5のインペラ6Aにおいては、スプリッタブレード22Aが、その少なくとも前縁22aにおいて、翼高さ比がHs/Hf<1の関係を満たすように構成されていることにより、フルブレード21よりも翼高さが小さいスプリッタブレード22Aによって、ハブ18の周面18aを伝ってフルブレード21の翼面(壁面)に向かう流れA2を遮ることができる。これにより、フルブレード21の翼面を駆け上がる流れA2が発生することを抑え、スプリッタブレード22Aによって二次流れA3の発生を抑制することが可能になる。
【0046】
また、スプリッタブレード22Aの少なくとも前縁22aにおいて、翼高さ比がHs/Hf<1の関係を満たすように構成されていることで、二次流れA3がフルブレード21の先端21d側の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することを効果的に抑制することができる。
【0047】
したがって、本実施形態の遠心圧縮機5のインペラ6A及びこれを備えた遠心圧縮機5によれば、二次流れの発生を抑制できるとともに、二次流れA3が漏れ流れと干渉することを抑制でき、従来と比較し、より効率的且つ効果的に、流量配分の均一化、高圧力比、高効率化を図り、さらなるインペラ効率の向上が可能になる。
【0048】
ここで、本実施形態の遠心圧縮機5のインペラ6A(及びこれを備えた遠心圧縮機5)は、図2に示すように、スプリッタブレード22Aの前縁22aから後縁22bに至るまでの全ての区間、すなわち、スプリッタブレード22Aの前縁22aから後縁22bに至るまでの全てのコード位置において、翼高さ比がHs/Hf<1の関係を満たすように構成されていることが好ましい。
【0049】
このように構成した場合には、フルブレード21よりも翼高さが小さいスプリッタブレード22Aによって、漏れ流れとの干渉を抑制しつつ、フルブレード21の翼面を駆け上がる流れA2の発生を抑制でき、スプリッタブレード22Aによって二次流れA3の発生を抑制することが可能になる。
【0050】
また、本実施形態の遠心圧縮機5のインペラ6Aは、スプリッタブレード22Aの少なくとも前縁22aにおいて、翼高さ比がHs/Hf≦0.7の関係を満たすように構成されていることがより好ましい。
【0051】
このように構成した場合には、二次流れA3の発生を抑制しつつ、より効果的に、フルブレード21Aの先端22d側の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することを抑制することが可能になる。
【0052】
さらに、本実施形態の遠心圧縮機5のインペラ6Aは、スプリッタブレード22Aの前縁22aから後縁22bに至るまでの全ての区間において、翼高さ比がHs/Hf≦0.7の関係を満たすように構成されていることがより好ましい。
【0053】
このように構成した場合には、さらに効果的に、二次流れA3の発生を抑制することができるとともに、フルブレード21の先端21dの隙間から漏れる漏れ流れと干渉することを抑制することが可能になる。
【0054】
また、本実施形態の遠心圧縮機5のインペラ6B(6)は、図3図8図9参照)に示すように、翼高さ比Hs/Hfがスプリッタブレード22B(22C、22D(22))の前縁22aから後縁22bに至るまで徐々に大きくなるように構成されていてもよい。
【0055】
このように構成した場合には、例えば、剥離線Sに合わせた形でスプリッタブレード22B(22)を形成するなどし、さらに効果的で効率的に、二次流れA3の発生を抑制することができ、且つフルブレード21の先端21d側の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することを抑制することが可能になる。
【0056】
また、本願の発明者の鋭意研究の成果として得られた知見に基づき、本実施形態の遠心圧縮機5のインペラ6(6A、6B、6C)は、前述のように、インペラ6の子午面上におけるフルブレード21のコード(コード長L)方向に沿ったコード位置において、フルブレード21の前縁21aにおけるコード位置を0%、フルブレード21の後縁21bにおけるコード位置を100%とし、さらにスプリッタブレード22(22A、22B、22C)の前縁22aの基端22cにおけるコード位置をCh、スプリッタブレード22の前縁22aの先端22dにおけるコード位置をCt、と定義した場合に、図2図3図4図8図9参照)に示すように、Ch≦30%、且つ、Ct≧50%の関係を満たすように構成されていることがより好ましい。
【0057】
このように構成した場合においても、二次流れA3が発生する剥離線Sの位置に応じてスプリッタブレード22を形成することができ、効果的で効率的に、二次流れA3の発生を抑制することができ、且つフルブレード21の先端21d側の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することを抑制することが可能になる。
【0058】
さらに、本実施形態の遠心圧縮機5のインペラ6(6C、6D)は、図4図5図8図9参照)に示すように、スプリッタブレード22(22C、22D)の基端22cにおけるコード長LをLh、スプリッタブレード22の先端22dにおけるコード長LをLt、と定義した場合に、2×Lt≦Lhの関係を満たすように構成してもよい。言い換えれば、チップ側のコード長Ltに対し、ハブ側コード長Lhが2倍以上となるような翼前縁形状を有して構成してもよい。
【0059】
この場合においても、本願の発明者の鋭意研究の成果として得られた知見に基づき、二次流れA3が発生する剥離線Sの位置に応じてスプリッタブレード22を形成することができ、やはり、効果的で効率的に、二次流れA3の発生を抑制することができ、且つフルブレード21の先端21d側の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することを抑制することが可能になる。
【0060】
さらに、図4図5図8図9参照)に示すように、スプリッタブレード22(22C、22D)の前縁22aは、子午面上において、前縁22aの基端22cと先端22dとを結んだ直線に対して凹となる凹曲線部22eを有してもよい。
【0061】
この場合においては、本願の発明者の鋭意研究の成果として得られた知見に基づき、二次流れA3が発生する凹曲線状の剥離線Sに応じてスプリッタブレード22を形成することができ、これにより、さらに効果的で効率的に、二次流れA3の発生を抑制することができ、且つフルブレード21の先端21d側の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することを抑制することが可能になる。
【0062】
また、図5図8図9参照)に示すように、スプリッタブレード22(22D)の前縁22aの基端22cにおけるコード位置ChをCh=0%の関係を満たすように設定してもよい。言い換えれば、スプリッタブレード22のハブ側前縁22aがフルブレード21の前縁21aまで延びて同位置(略同位置を含む)に配されるように構成してもよい。
【0063】
この場合には、より一層効果的に、ハブ18の周面18aを伝ってフルブレード21の翼面に向かう流れを遮ることができ、スプリッタブレード22によって二次流れA3の発生を抑制することが可能になる。
【0064】
(第2実施形態)
次に、図6図7図1から図5図8図9)を参照し、第2実施形態に係る遠心圧縮機のインペラ及び遠心圧縮機について説明する。
【0065】
本実施形態においては、第1実施形態と同様、遠心圧縮機5がターボチャージャ1に具備されているものとして説明を行う。また、本実施形態では、第1実施形態に対して遠心圧縮機5のインペラ6の構成のみが異なる。このため、本実施形態では、第1実施形態と同様の構成などに対し、同一符号を付すなどし、その詳細な説明を省略する。
【0066】
(遠心圧縮機のインペラ)
本実施形態のターボチャージャ1の遠心圧縮機5において、インペラ6(6E)は、図6図1)に示すように、ハブ18と、ハブ18の周面18a上において周方向に間隔を空けて設けられた複数のフルブレード21と、ハブ18の周面18a上において複数のフルブレード21のうちの隣接するフルブレード21の間にそれぞれ設けられた複数のスプリッタブレード22と、を備えて構成されている。
【0067】
ここで、本実施形態の遠心圧縮機5のインペラ6(6E)は、特に限定を必要とするものではないが、スプリッタブレード22として、第1実施形態(第1実施形態の変更例を含む)に記載の何れかのスプリッタブレード22が具備されている。
【0068】
これに加え、本実施形態の遠心圧縮機5のインペラ6(6E)においては、隣り合うフルブレード21(第1フルブレード21A、第2フルブレード21B)間にそれぞれ少なくとも1つが設けられた複数の凸部(例えば、ボルテックスジェネレータ:VGなど)であって、ハブ18の周面18a上から突設するように構成された複数の凸部25をさらに備えている。
【0069】
この凸部25は、図6図7図9参照)に示すように、インペラ6(6E)の子午面上におけるフルブレード21のコード方向に沿ったコード位置において、フルブレード21の前縁21aにおけるコード位置を0%、フルブレード21の後縁21bにおけるコード位置を100%、凸部25の上流縁25aにおけるコード位置をCvl、と定義した場合に、Cvl≦50%の関係を満たし、フルブレード21の翼高さをHf、子午面上における凸部25の高さをHvと定義した場合に、Hv≦0.3×Hfの関係を満たすように設けられている。
【0070】
なお、第1実施形態と同様、本開示におけるフルブレード21の翼高さHf、凸部25の高さHvはそれぞれ、インペラ6の子午面において、基端21c、25cと先端21d、25dの間の中心線P1、P3に直交する方向の基端21c、25cから先端21d、25dまでの長さ寸法である。
【0071】
このように凸部25を備えた場合には、高さが小さい凸部25によって、ハブ18の周面18aを伝ってフルブレード21(やスプリッタブレード22)の翼面に向かう流れを、ハブ18の周面18a上で翼面に沿う方向、すなわち、フルブレード21の後縁21b側に導き、従来の流れよりも滑らかにフルブレード21の後縁21b側に向かう流れを生成することが可能になる。これにより、フルブレード21(やスプリッタブレード22)の翼面を駆け上がる流れが発生しにくくなり、二次流れA3の発生をさらに抑制することが可能になる。
【0072】
したがって、本実施形態の遠心圧縮機5のインペラ6及びこれを備えた遠心圧縮機5によれば、第1実施形態よりも、二次流れA3の発生をさらに抑制できるとともに、漏れ流れと干渉することを抑制でき、従来と比較し、より一層、効率的且つ効果的に、流量配分の均一化、高圧力比、高効率化を図り、さらなるインペラ効率の向上が可能になる。
【0073】
ここで、本実施形態の遠心圧縮機5のインペラ6において、凸部25の上流縁25aは、スプリッタブレード22の前縁22aよりも上流側に位置することが好ましい。
【0074】
このように構成することによって、高さが小さい凸部25で、ハブ18の周面18aを伝ってフルブレード21(やスプリッタブレード22)の翼面に向かう流れを、より効果的に、翼面に沿う方向側に導き、従来の流れよりも滑らかで整った流れを生成することが可能になる。よって、二次流れA3の発生をさらに抑制することができる。
【0075】
以上、本開示の遠心圧縮機のインペラ及びこれを備えた遠心圧縮機の第1実施形態、第2実施形態について説明したが、本開示の遠心圧縮機のインペラ及び遠心圧縮機は、上記の第1実施形態、第2実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0076】
例えば、第2実施形態では、第1実施形態のスプリッタブレード22とともに凸部25を備えて遠心圧縮機5のインペラ6が構成されているものとしたが、スプリッタブレード22を備えず、隣接するフルブレード21の間にそれぞれ少なくとも1つが設けられた複数の凸部25であって、ハブ18の周面18a上から突設するように構成された複数の凸部25を備えて、遠心圧縮機5のインペラ6が構成されてもよい。
【0077】
このように構成した場合には、インペラ6の子午面上におけるフルブレード21のコード方向に沿ったコード位置において、フルブレード21の前縁21aにおけるコード位置を0%、フルブレード21の後縁21bにおけるコード位置を100%、凸部25の上流縁25aにおけるコード位置をCvl、と定義した場合に、Cvl≦50%の関係を満たし、フルブレード21の翼高さをHf、子午面上における凸部25の高さをHvと定義した場合に、Hv≦0.3×Hfの関係を満たすように構成することが好ましい。
【0078】
これにより、凸部25によって、ハブ18の周面18aを伝ってフルブレード21の翼面に向かう流れを、効果的に翼面に沿う方向側に導き、従来の流れよりも滑らかな流れを生成することが可能になる。よって、フルブレード21の翼面を駆け上がる流れが発生しにくくなり、二次流れA3の発生をさらに抑制することが可能になる。また、漏れ流れと干渉することを抑制でき、従来と比較し、効率的且つ効果的に、流量配分の均一化、高圧力比、高効率化を図り、さらなるインペラ効率の向上が可能になる。
【0079】
また、図7に示すように、凸部25の上流縁25aと、隣接するフルブレード21のうちの一方側の第1フルブレード21Aにおける負圧面との周方向に沿ったピッチ距離をPl、凸部25の上流縁25aと、隣接するフルブレード21のうちの他方側の第2フルブレード21Bにおける圧力面との周方向に沿ったピッチ距離をPl、と定義した場合に、Pl<Plの関係を満たすように構成してもよい。
【0080】
この場合においては、第1フルブレード21Aにおける負圧面に向かって流れてくる流れA2を凸部25によって、より効率的且つ効果的に、翼面に沿う方向側(第1フルブレード21Aの後縁21b側)に導き、従来の流れよりも滑らかで整った流れを好適に生成することが可能になる。
【0081】
さらに、隣接するフルブレード21間に設けられた少なくとも1つの凸部25は、第1凸部25Aと、第1凸部25Aとは異なる第2凸部25Bと、を含んでもよい。言い換えれば、翼ピッチ間に2枚以上の凸部25を設けるようにしてもよい。
【0082】
この場合においては、各凸部25によって、ハブ18の周面18aを伝ってフルブレード21(やスプリッタブレード22)の翼面に向かう流れA2を、第1凸部25Aと第2凸部25Bとによってそれぞれ翼面に沿う方向側に導き、より効果的に、従来の流れよりも整った流れを生成することが可能になる。これにより、さらにフルブレード21(やスプリッタブレード22)の翼面を駆け上がる流れが発生しにくくなり、二次流れA3の発生を一層、抑制することが可能になる。
【0083】
また、このとき、第1凸部25Aの上流縁25aは、第2凸部25Bの上流縁25aよりも上流側に位置することが好ましい。言い換えれば、2枚以上が配置された凸部25(25A、25B)であって、凸部25(25A、25B)はそれぞれ流れ方向位置が異なるように配置されていることが好ましい。
【0084】
この場合においては、各凸部25(25A、25B)によって、翼面に向かう流れA2を、さらに効果的に、翼面に沿う方向側に導き、従来の流れよりも整った流れを生成することが可能になる。
【0085】
さらに、第1凸部25Aの上流縁25aは、第2凸部25Bの上流縁25aよりも第1フルブレード21Aの負圧面側に配置されていることがより好ましい。言い換えれば、翼ピッチ間に配置された複数の凸部25(25A、25B)であって、流れ方向に複数列配置されていることが好ましい。
【0086】
この場合においては、各凸部25(25A、25B)によって、ハブ18の周面18aを伝ってフルブレード21(やスプリッタブレード22)の翼面に向かう流れA2を、より一層効果的に、翼面に沿う方向側に導き、従来の流れよりも整った流れを生成することが可能になる。
【0087】
最後に、上記の各実施形態(変更例を含む)に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0088】
(1)一の態様に係る遠心圧縮機(遠心圧縮機5)のインペラ(インペラ6、6A~6D)は、ハブ(ハブ18)と、ハブの周面(周面18a)において周方向に間隔を空けて設けられた複数のフルブレード(フルブレード21)と、ハブの周面上において複数のフルブレードのうちの隣接するフルブレード間にそれぞれ設けられた複数のスプリッタブレード(スプリッタブレード22、22A~22D)と、を備える遠心圧縮機のインペラであって、インペラの子午面上におけるスプリッタブレードの翼高さ(Hs)に対するフルブレードの翼高さ(Hf)の比である翼高さ比をHs/Hfと定義した場合に、スプリッタブレードの少なくとも前縁において、翼高さ比は、Hs/Hf<1の関係を満たす。
【0089】
この場合には、フルブレードよりも翼高さが小さいスプリッタブレードによって、ハブの周面を伝ってフルブレードの翼面に向かう流れを遮ることができる。これにより、スプリッタブレードによって二次流れの発生を抑制することが可能になる。
【0090】
また、スプリッタブレードの少なくとも前縁において、翼高さ比がHs/Hf<1の関係を満たすように構成されていることで、二次流れがフルブレードの先端側の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することを効果的に抑制することができる。
【0091】
したがって、二次流れの発生を抑制できるとともに、二次流れが漏れ流れと干渉することを抑制でき、従来と比較し、より効率的且つ効果的に、流量配分の均一化、高圧力比、高効率化を図り、さらなるインペラ効率の向上が可能になる。
【0092】
(2)別の態様に係る遠心圧縮機のインペラは、上記(1)の遠心圧縮機のインペラであって、スプリッタブレードの前縁(前縁22a)から後縁(後縁22b)に至るまでの全ての区間において、翼高さ比は、Hs/Hf<1の関係を満たす。
【0093】
この場合には、フルブレードよりも翼高さが小さいスプリッタブレードが広範に設けられていることで、遠心圧縮機の圧力比と流量の関係で示される作動範囲全体(広範)で、効果的に漏れ流れとの干渉を抑制しつつ、フルブレードの翼面を駆け上がる流れの発生を抑制でき、スプリッタブレードによって二次流れの発生を抑制することが可能になる。
【0094】
(3)別の態様に係る遠心圧縮機のインペラは、上記(2)の遠心圧縮機のインペラであって、スプリッタブレードの前縁から後縁に至るまでの全ての区間において、翼高さ比は、Hs/Hf≦0.7の関係を満たす。
【0095】
この場合には、本願の発明者の鋭意研究の成果(剥離線の位置の知見)に基づいて、Hs/Hf≦0.7の関係を満たすように構成されているため、より効果的に、二次流れの発生を抑制しつつ、フルブレードの先端の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することを抑制することが可能になる。
【0096】
(4)別の態様に係る遠心圧縮機のインペラは、上記(1)の遠心圧縮機のインペラであって、スプリッタブレードの少なくとも前縁において、翼高さ比は、Hs/Hf≦0.7の関係を満たす。
【0097】
この場合には、本願の発明者の鋭意研究の成果(剥離線の位置の知見)に基づいて、スプリッタブレードの少なくとも前縁において、Hs/Hf≦0.7の関係を満たすように構成されているため、さらに効果的に、二次流れの発生を抑制しつつ、フルブレードの先端の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することを抑制することが可能になる。
【0098】
(5)別の態様に係る遠心圧縮機のインペラは、上記(4)の遠心圧縮機のインペラであって、翼高さ比は、スプリッタブレードの前縁から後縁に至るまで徐々に大きくなるように構成される。
【0099】
この場合には、例えば、剥離線に合わせた形でスプリッタブレードを形成するなどし、さらに効果的で効率的に、二次流れの発生を抑制することができ、且つフルブレードの先端側の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することを抑制することが可能になる。
【0100】
(6)一の態様に係る遠心圧縮機のインペラは、ハブと、ハブの周面上において周方向に間隔を空けて設けられた複数のフルブレードと、ハブの周面上において複数のフルブレードのうちの隣接するフルブレード間にそれぞれ設けられた複数のスプリッタブレードと、を備える遠心圧縮機のインペラであって、インペラの子午面上におけるフルブレードのコード方向に沿ったコード位置において、フルブレードの前縁におけるコード位置を0%、フルブレードの後縁におけるコード位置を100%、スプリッタブレードの前縁の基端における前記コード位置をCh、スプリッタブレードの前縁の先端におけるコード位置をCt、と定義した場合に、Ch≦30%、且つ、Ct≧50%の関係を満たす。
【0101】
このように構成した場合においても、二次流れが発生する剥離線の位置に応じてスプリッタブレードを形成することができ、効果的で効率的に、二次流れの発生を抑制することができ、且つ二次流れがフルブレードの先端側の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することを抑制することが可能になる。
【0102】
(7)別の態様に係る遠心圧縮機のインペラは、上記(6)の遠心圧縮機のインペラであって、スプリッタブレードの基端におけるコード長をLh、スプリッタブレードの先端におけるコード長をLt、と定義した場合に、2×Lt≦Lhの関係を満たす。
【0103】
この場合においても、本願の発明者の鋭意研究の成果として得られた知見に基づき、二次流れが発生する剥離線の位置に応じてスプリッタブレードを形成することができ、やはり、効果的で効率的に、二次流れの発生を抑制することができ、且つフルブレードの先端側の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することを抑制することが可能になる。
【0104】
(8)別の態様に係る遠心圧縮機のインペラは、上記(6)又は(7)の遠心圧縮機のインペラであって、スプリッタブレードの前縁は、子午面上において、前縁の基端(基端22c)と先端(先端22d)とを結んだ直線に対して凹となる曲面状を有する。
【0105】
この場合においては、本願の発明者の鋭意研究の成果として得られた知見に基づき、二次流れが発生する凹曲線状(凹曲面状)の剥離線に応じてスプリッタブレードを形成することができ、これにより、さらに効果的で効率的に、二次流れの発生を抑制することができ、且つフルブレードの先端側の隙間から漏れる漏れ流れと干渉することを抑制することが可能になる。
【0106】
(9)別の態様に係る遠心圧縮機のインペラは、上記(6)乃至(8)の圧縮機のインペラであって、Ch=0%の関係を満たす。
【0107】
この場合には、ハブの周面を伝ってフルブレードの翼面に向かう流れをフルブレードの前縁側から遮ることができ、より一層効果的に、スプリッタブレードによって二次流れの発生を抑制することが可能になる。
【0108】
(10)別の態様に係る遠心圧縮機のインペラ(インペラ6、6E)は、上記(1)乃至(9)の遠心圧縮機のインペラであって、隣接するフルブレード間にそれぞれ少なくとも1つが設けられた複数の凸部(凸部25)であって、ハブの周面上から突設するように構成された複数の凸部をさらに備え、インペラの子午面上におけるフルブレードのコード方向に沿ったコード位置において、フルブレードの前縁におけるコード位置を0%、フルブレードの後縁におけるコード位置を100%、凸部の上流縁(上流縁25a)におけるコード位置をCvl、と定義した場合に、Cvl≦50%の関係を満たし、フルブレードの翼高さをHf、子午面上における凸部の高さをHvと定義した場合に、Hv≦0.3×Hfの関係を満たす。
【0109】
この場合には、高さが小さい凸部によって、ハブの周面を伝ってフルブレード(やスプリッタブレード)の翼面に向かう流れを、ハブの周面上で翼面に沿う方向、すなわち、フルブレードの後端側に導き、従来の流れよりも滑らかにフルブレードの後端側に向かう流れを生成することが可能になる。これにより、フルブレード(やスプリッタブレード)の翼面を駆け上がる流れが発生しにくくなり、二次流れの発生をさらに抑制することが可能になる。
【0110】
したがって、二次流れの発生をさらに抑制できるとともに、漏れ流れと干渉することを抑制でき、従来と比較し、より一層、効率的且つ効果的に、流量配分の均一化、高圧力比、高効率化を図り、さらなるインペラ効率の向上が可能になる。
【0111】
(11)別の態様に係る遠心圧縮機のインペラは、上記(10)の遠心圧縮機のインペラであって、凸部の上流縁は、スプリッタブレードの前縁よりも上流側に位置する。
【0112】
このように構成することによって、高さが小さい凸部で、ハブの周面を伝ってフルブレード(やスプリッタブレード)の翼面に向かう流れを、より効果的に、翼面に沿う方向側に導き、従来の流れよりも滑らかで整った流れを生成することが可能になる。よって、二次流れの発生をさらに抑制することができる。
【0113】
(12)一の態様に係る遠心圧縮機のインペラは、ハブと、ハブの周面上において周方向に間隔を空けて設けられた複数のフルブレードと、隣接するフルブレード間にそれぞれ少なくとも1つが設けられた複数の凸部であって、ハブの周面上から突設するように構成された複数の凸部と、を備える遠心圧縮機のインペラであって、インペラの子午面上におけるフルブレードのコード方向に沿ったコード位置において、フルブレードの前縁におけるコード位置を0%、フルブレードの後縁におけるコード位置を100%、凸部の上流縁におけるコード位置をCvl、と定義した場合に、Cvl≦50%の関係を満たし、フルブレードの翼高さをHf、子午面上における凸部の高さをHvと定義した場合に、Hv≦0.3×Hfの関係を満たす。
【0114】
この場合には、凸部によって、ハブの周面を伝ってフルブレードの翼面に向かう流れを、効果的に翼面に沿う方向側に導き、従来の流れよりも滑らかな流れを生成することが可能になる。よって、フルブレードの翼面を駆け上がる流れが発生しにくくなり、二次流れの発生をさらに抑制することが可能になる。また、漏れ流れと干渉することを抑制でき、従来と比較し、効率的且つ効果的に、流量配分の均一化、高圧力比、高効率化を図り、さらなるインペラ効率の向上が可能になる。
【0115】
したがって、二次流れの発生をさらに抑制できるとともに、漏れ流れと干渉することを抑制でき、従来と比較し、効率的且つ効果的に、流量配分の均一化、高圧力比、高効率化を図り、さらなるインペラ効率の向上が可能になる。
【0116】
(13)別の態様に係る遠心圧縮機のインペラは、上記(12)の遠心圧縮機のインペラであって、凸部の上流縁と、隣接するフルブレードのうちの一方側の第1フルブレード(第1フルブレード21A)における負圧面との前記周方向に沿ったピッチ距離をPl、凸部の上流縁と、隣接するフルブレードのうちの他方側の第2フルブレード(第2フルブレード21B)における圧力面との周方向に沿ったピッチ距離をPl、と定義した場合に、Pl<Plの関係を満たす。
【0117】
この場合には、第1フルブレードにおける負圧面に向かって流れてくる流れを凸部によって、より効率的且つ効果的に、翼面に沿う方向側(第1フルブレードの後端側)に導き、従来の流れよりも滑らかで整った流れを好適に生成することが可能になる。
【0118】
(14)別の態様に係る遠心圧縮機のインペラは、上記(13)の遠心圧縮機のインペラであって、隣接するフルブレード間に設けられた少なくとも1つの凸部は、第1凸部(第1凸部25A)と、第1凸部とは異なる第2凸部(第2凸部25B)と、を含む。
【0119】
この場合には、各凸部によって、ハブの周面を伝ってフルブレード(やスプリッタブレード)の翼面に向かう流れを、第1凸部と第2凸部とによってそれぞれ翼面に沿う方向側に導き、より効果的に、従来の流れよりも整った流れを生成することが可能になる。これにより、さらにフルブレード(やスプリッタブレード)の翼面を駆け上がる流れが発生しにくくなり、二次流れの発生を一層、抑制することが可能になる。
【0120】
(15)別の態様に係る遠心圧縮機のインペラは、上記(14)の遠心圧縮機のインペラであって、第1凸部の上流縁は、第2凸部の上流縁よりも上流側に位置する。
【0121】
この場合においては、各凸部によって、翼面に向かう流れを、さらに効果的に、翼面に沿う方向側に導き、従来の流れよりも整った流れを生成することが可能になる。
【0122】
(16)別の態様に係る遠心圧縮機のインペラは、上記(14)又は(15)の遠心圧縮機のインペラであって、第1凸部の上流縁は、第2凸部の上流縁よりも第1フルブレードの負圧面側に配置された。
【0123】
この場合においては、各凸部によって、ハブの周面を伝ってフルブレードの翼面に向かう流れを、より一層効果的に、翼面に沿う方向側に導き、従来の流れよりも整った流れを生成することが可能になる。
【0124】
(17)一の態様に係る遠心圧縮機は、上記(1)乃至(16)の遠心圧縮機のインペラを備える。
【0125】
上記(17)の遠心圧縮機によれば、上記の(1)乃至(16)に記載の遠心圧縮機のインペラの作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0126】
1 ターボチャージャ
2 タービン
4 回転軸
5 遠心圧縮機(コンプレッサ)
6 インペラ
6A~6E インペラ
18 ハブ
18a 周面
21 フルブレード(動翼)
21A 第1フルブレード
21B 第2フルブレード
21a 前縁
21b 後縁
21c 基端
21d 先端
22 スプリッタブレード(動翼)
22A~22D スプリッタブレード
22a 前縁
22b 後縁
22c 基端
22d 先端
25 凸部
25A 第1凸部
25B 第2凸部
25a 上流縁
A 空気(流体)
A’ 圧縮空気(圧縮流体、流体)
A3 二次流れ
O1 軸線(軸方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9