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  • 特開-一時的偏光パッチ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164535
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】一時的偏光パッチ
(51)【国際特許分類】
   G02C 7/12 20060101AFI20231102BHJP
   G02C 7/10 20060101ALI20231102BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20231102BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20231102BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20231102BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20231102BHJP
【FI】
G02C7/12
G02C7/10
G02B1/04
G02B5/30
B32B7/023
C09J7/30
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023146177
(22)【出願日】2023-09-08
(62)【分割の表示】P 2021143132の分割
【原出願日】2016-10-19
(71)【出願人】
【識別番号】518007555
【氏名又は名称】エシロール・アンテルナシオナル
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハオ-ウェン・チュウ
(72)【発明者】
【氏名】ハイフェン・シャン
(72)【発明者】
【氏名】エリオット・フレンチ
(57)【要約】
【課題】眼鏡を偏光サングラスに容易に変換するための安価だが魅力的なアプローチを提供する。
【解決手段】光遅延、弾性率、及びショアA硬度が特定の範囲にある光高分子シートを用いて可撓性偏光パッチを作成した。偏光パッチは、様々な度数の非偏光レンズの形状に沿い、通常の偏光レンズに相当する偏光効率を提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非偏光光学部品への光の透過率を下げるパッチであって、
少なくとも1つの偏光膜を含む平坦な可撓性積層体を含み、
前記非偏光光学部品に剥離可能に固定可能であるパッチ。
【請求項2】
前記偏光膜が、透明な第1の表側高分子シートと透明な第2の裏側レンズ接触高分子シートとの間に積層された偏光膜シートを含んでいる、請求項1に記載のパッチ。
【請求項3】
前記偏光膜シートがPVAを主成分とするシートである、請求項1に記載のパッチ。
【請求項4】
前記第1及び第2の透明高分子シートが個々に、PVC、TPU、又はPDMS(ポリジメチルシロキサン)から選択されている、請求項2に記載のパッチ。
【請求項5】
透明な前記表側高分子シートの光遅延がπ/5ラジアン以下、好適にはπ/10ラジアン以下である、請求項4に記載のパッチ。
【請求項6】
前記パッチの弾性率が700Mpa以下である、請求項1に記載のパッチ。
【請求項7】
前記パッチの厚さが200μm以下である、請求項1に記載のパッチ。
【請求項8】
前記パッチのショアA硬度が好適には80以下である、請求項1に記載のパッチ。
【請求項9】
前記パッチが、静電気付着により、非偏光光学部品に剥離可能に固定可能である、請求項1に記載のパッチ。
【請求項10】
前記パッチが、感圧接着剤を用いて非偏光光学部品に剥離可能に固定可能である、請求項1に記載のパッチ。
【請求項11】
前記感圧接着剤がレンズ接触側に位置する、請求項10に記載のパッチ。
【請求項12】
前記パッチが、非垂直方向に偏光された光の光透過率を低下させる、請求項1に記載のパッチ。
【請求項13】
前記パッチは、前記パッチが剥離可能に固定可能である前記非偏光光学部品と同一寸法及び形状である、請求項1に記載のパッチ。
【請求項14】
前記パッチは、前記パッチが剥離可能に固定可能である前記非偏光光学部品と同一寸法及び形状ではない、請求項1に記載のパッチ。
【請求項15】
弾性率、厚さ、及びショアA硬度が、様々な非偏光光学部品の形状に剥離可能に取り付けられるように前記パッチに可撓性を与えるべく選択されている、請求項14に記載のパッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼鏡レンズ及び眼鏡レンズ用の偏光積層体の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
度入り眼鏡を着用する人物にとって日光及びグレア(眩しい光)を防ぐ選択肢は限られる。度入りサングラスは典型的に度入り眼鏡より高価であり、眼鏡の着用者はもう1つの眼鏡を持ち歩く必要がある。光発色性レンズは日光の下で暗くなるが、これらのレンズは偏光レンズの防眩機能を提供しない。クリップオンサングラスは眼鏡用の取り外し可能な日除けカバーとなるが、この選択肢は多くの消費者にとって魅力的でないと思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
レンズ及びサングラスのメーカーは、眼鏡レンズの表面に取り付けるフレーム無し日除け膜を製造してきた。米国特許出願公開第2014/0232978号明細書は、光学レンズに反転可能に接着された光学素子を開示している。これらの素子は光学レンズに素子を接着させる感圧接着剤を必要とする。接着剤は、除去された後も、塵及びその他の微粒子を引きつける残滓をレンズに残す恐れがある。更に、素子の接着力は、接着と除去を繰り返す度に次第に弱まる。米国特許出願公開第2014/0118681号明細書は、眼鏡レンズ用の一時的光発色性パッチを作成する処理を開示している。パッチは、接着剤を必要とせずに眼鏡レンズに合わせて一時的に貼付することができる。しかし、ポリジメチルシロキサンと光発色性染料を混合する処理は偏光パッチの製造には使えない。米国特許第5,764,333号明細書は、サングラス用の日除けを作成する方法を開示している。方法は、単層プラスチック膜を眼鏡レンズの形状に切断するステップを含んでいる。単層プラスチック膜の製造に使用可能な材料は限られており、プラスチック膜光遅延は開示されていない。
【0004】
眼鏡を偏光サングラスに変換する分野の発展にもかかわらず、現在利用できる選択肢には多くの短所がある。眼鏡を偏光サングラスに容易に変換するための安価だが魅力的なアプローチが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示するのは、特定の範囲の光遅延、弾性率、及びショアA硬度を有する光高分子シートである。光高分子シートは偏光成分を含み、偏光機能を与えるべく非偏光レンズに取り外し可能に取り付けることができる。偏光パッチは可撓性であって様々な度数の眼鏡レンズの形状に沿うことができ、従来の偏光レンズに相当する偏光性能を提供する。可撓性偏光パッチは、予めレンズの形状に切断されていても、又は消費者が切断してもよく、非偏光眼鏡に貼付して一時的に偏光アイウェアに変換することができる。
【0006】
本明細書に開示する偏光パッチは、度入り眼鏡を偏光眼鏡に変換して、通常の偏光サングラスと同等の偏光機能を提供する。偏光パッチは、通常のサングラスと同等の偏光効率、及びほぼ同程度の防眩効果を有している。いくつかの実施形態において、偏光パッチは、2枚の透明な高分子シートの間にポリビニルアルコール(PVA)偏光膜を挟むことにより形成される。いくつかの態様において、偏光膜は偏光軸と垂直方向に、吸収軸と水平方向に整列している。PVA偏光膜は防眩機能を果たす。グレアは典型的には水平に偏光している、すなわち膜の偏光軸に垂直であるため、偏光軸に平行に偏光した光は透過されるのに対し、グレアの大部分は吸収される。
【0007】
本開示の目的は、非偏光光学部品への光の透過率を下げる取り外し可能な偏光積層体を提供することである。偏光積層体は、光発色性レンズでは見られない偏光及び防眩機能を着用者に提供する。偏光積層体は、眼鏡レンズへの取り付けに接着剤を必要としない。積層材料、特に表側は、入射グレアの偏光状態を変える光遅延を回避すべく選択されている。いくつかの態様において、偏光パッチ積層体の表側層は、光遅延を最小化又は回避すべく選択されている。いくつかの実施形態において、パッチは、2枚の可撓性高分子シート間に接着された偏光膜からなる偏光積層体の使用を含んでいる。積層体は、眼鏡レンズの形状に切断されて眼鏡に貼付されることにより偏光機能を提供する。積層体は、様々な度数のレンズの形状に沿うことができる偏光パッチを形成すべく、最小光遅延、特定の範囲内の弾性率、及び特定の値を下回るショアA硬度を有する高分子材で作られていてよい。
【0008】
いくつかの態様において、非偏光光学部品への光の透過率を低下させるパッチは、少なくとも1つの偏光膜を含む平坦な可撓性積層体で作られている。パッチは、非偏光光学部品に剥離可能に固定可能であり、感圧接着剤(PSA)又は静電気付着を利用して光学部品に固定することができる。感圧接着剤を用いる実施形態において、感圧接着剤はパッチのレンズに接触する側に置かれる。いくつかの実施形態において、パッチは、水又は石鹸水を用いてレンズに貼付される。
【0009】
いくつかの態様において、偏光膜は、第1の透明な表側の高分子シートと第2の透明なレンズに接触する裏側の高分子シートとの間に積層された偏光膜シートを含んでいる。偏光膜シートは、ポリビニルアルコール(PVA)シート、PVAを主成分とするシート、ポリエステル(PET)、PVA-PVE(ポリビニレン)、導線格子、多層反射偏光シート(例えば、3M Vikuiti(商標)DBEF(二重輝度向上膜))、又は業界で公知の他の偏光膜シートであってよい。積層体は、複数の層を互いに接着させるべく、複数の層間に少なくとも1つの接着剤及び/又は少なくとも1つのプライマを含んでいてよい。接着剤及び/又はプライマは、積層体の分野で用いられる接着剤及びプライマから選択されてよい。第1及び第2の透明高分子シートは個々に、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエステル、又は熱可塑性エラストマ(TPE)から選択されてよい。いくつかの実施形態において、透明な表側高分子シートの光遅延はπ/5ラジアン以下、好適にはπ/10ラジアン以下である。いくつかの実施形態において、パッチの弾性率は700Mpa以下である。いくつかの態様において、パッチの厚さは200μm以下である。追加的な実施形態において、パッチのショアA硬度は80以下である。いくつかの態様において、弾性率、厚さ、及びショアA硬度は、様々な非偏光光学部品の形状に剥離可能に取り付け可能にすべくパッチに可撓性を与えるべく選択されている。
【0010】
いくつかの態様において、パッチは、非垂直方向に偏光された光の透過率を低下させる。いくつかの実施形態において、パッチは、パッチが剥離可能に固定可能である非偏光光学部品と同一の寸法及び形状である。いくつかの実施形態において、パッチは製造業者により、光学部品と同一寸法及び形状に製造又は切断することができる。他の実施形態においてユーザーにより、パッチは、光学部品と同一寸法及び形状に切断することができる。いくつかの実施形態において、パッチは、パッチが剥離可能に固定可能である非偏光光学部品と同一の寸法及び形状ではない。いくつかの実施形態において、パッチは名目倍率を有している。
【0011】
ショアA硬度は、デュロメータとして知られる装置で測定され、従って「デュロメータ硬度」としても知られている。硬度値はデュロメータの圧子足部のサンプルへの進入度合いで測定される。ゴム及びプラスチックの反発力により、刻みの読み取り値は時間経過に伴い変化し得るため、刻み時間は時折硬度番号と合わせて報告される。ASTM試験方法規格はASTM D2240 00であり、関連方法としてISO 7619及びISO 868;DIN 53505;及びJIS K 6301が含まれ、JIS K 6301は廃止されてJIS K 6253に置き換えられている。
【0012】
開示する構成物及び/又は方法の任意の実施形態はいずれも、記述する要素及び/又は特徴及び/又はステップのいずれかを含む/内包する/含有する/有するのではなく、これらから成る、又は本質的に成るものであってよい。従って、いずれの請求項においても、所与の請求項の範囲を、非限定的連結動詞を用いた場合の範囲から変更するために、用語「から成る」又は「から本質的に成る」で上述の非限定的連結動詞のいずれも代替可能である。
【0013】
用語「実質的に」及びその変形は、当業者により概ね理解される、但し完全に理解されるとは限らないものとして定義され、非限定的な一実施形態において「実質的に」は10%以内、5%以内、1%以内又は0.5%以内の範囲を指す。
【0014】
用語「約」又は「ほぼ」或いは「実質的に不変の」は、当業者により理解される程度に近いものとして定義され、非限定的な一実施形態において、これらの用語は、10%以内、好適には5%以内、より好適には1%以内、最も好適には0.5%以内として定義される。
【0015】
請求項及び/又は本明細書において冠詞「a」又は「an」が用語「含む」と合わせて用いられた場合は「1つ」を意味し得るが、「1つ以上」、「少なくとも1つ」及び「1つ又は2つ以上」の意味とも整合する。
【0016】
本明細書及び請求項で用いる用語「含んでいる」(及び「含む」「包含する」等、含んでいることの任意の形式)、「有している」(及び「有する」「備える」等、有していることの任意の形式)、「内包している」(及び「内包する」「包容する」等、含んでいることの任意の形式)、又は「含有している」(「含有する」「内蔵する」等、含有していることの任意の形式)は非限定的であり、追加的な、未言及の要素又は方法ステップを除外するものではない。
【0017】
構成物及びその使用方法は、本明細書を通じて開示する任意の要素又はステップ「を含む」、「から本質的に成る」、又は「から成る」ことができる。一非限定的な態様において、移行句「から本質に成る」に関して、本明細書に開示する構成物及び方法の基本的且つ新規な特徴は、度入りレンズに偏光機能を与えるパッチの能力を含んでいる。
【0018】
本発明の他の目的、特徴及び利点は以下の詳細な記述から明らかになろう。しかし、以下の詳細な記述及び例は、本発明の特定の実施形態を示しているが、説明目的でのみ与えられているものと理解されたい。また、本発明の主旨及び範囲内での変更及び変形も以下の詳細な記述から当業者に明らかになるものと考える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】偏光パッチ積層体の一実施形態を示す。積層体は、両側のPVC層により覆われた偏光PVA層を含む。接着剤を用いて積層体の層を互いに接着している。
図2】TPU/PVA/TPU偏光パッチ実施形態の水平方向断面図を示す。パッチ積層体層は、上から下へ順に、TPU層、感圧接着剤の層、偏光PVA層、感圧接着剤の層、及びTPU層を含んでいる。
図3A】接着試験用に準備されたパッチサンプルを示す。一方の側に低タック接着剤、他方の側に高タック接着剤を有するPET膜を示す図である。
図3B】接着試験用に準備されたパッチサンプルを示す。偏光積層体の膜から切断された楕円形のパッチを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
各種の特徴及び有利な詳細事項について、添付の図面に示すと共に以下に詳述する非限定的な実施形態に関してより包括的に説明する。しかし、詳細な記述及び具体例は実施形態を示しているが、説明目的に過ぎず、本発明を限定するものではない点を理解されたい。当業者には本開示から各種の代替、変更、追加及び/又は再配置が明らかになろう。
【0021】
以下の記述において、多くの具体的な詳細事項は、開示する実施形態が徹底的に理解されるよう提供するものである。しかし、当業者には、1つ以上の具体的な詳細事項、又は他の方法、要素、材料等が無くても本発明を実施できる点が認識されよう。他の例において、本発明の態様を煩雑にしないよう、公知の構造、材料、又は動作について詳細には図示又は記述していない。
【0022】
現在開示する偏光パッチは、接着剤を使用して、又は使用せずに光学レンズに貼付して従来のサングラスに相当する偏光性能を提供することができる。偏光パッチが通常の偏光サングラスに相当する偏光効率を提供するために、高分子シートの特に表側は、入射グレアの偏光状態を変える光遅延を回避すべく選択されている。光遅延が表側高分子シートに存在する場合、通常の偏光サングラスにより典型的に遮断される水平方向グレアを偏光パッチにより効果的に遮断することができなくなる。
【0023】
本明細書に開示する偏光パッチは、典型的にはほぼ0度~8度、又はより強い度数の様々な度数のレンズの形状に沿うのに充分に可撓性である。再び、適切な可撓性を有する偏光パッチを作成するためには適正な弾性率を有する外側高分子シートの選択が重要である。
【0024】
必須ではないが、偏光パッチが接着剤を使用せずに既存の眼鏡レンズに接着可能であることが好適である。静電気付着の影響を受けながらレンズの表面形状に沿うことができる偏光パッチが求められている。従って、適切な硬度を有する裏側高分子シートを選択することが極めて有利である。他の実施形態において、接着剤を使用して偏光パッチをレンズに接着してもよい。
【0025】
本明細書に開示する偏光パッチは、いくつかの実施形態において、2枚の高分子シートの間で接着されたPVA偏光膜を含んでいる。適切な偏光パッチを作成すべく、従来の偏光サングラスに相当する偏光機能をパッチのユーザーに提供するように高分子シートの光遅延、弾性率、及び硬度が選択されている。
【0026】
偏光パッチが通常の偏光サングラスに相当する防眩効果を実現するために、表側高分子シートの光遅延、すなわちレンズへの貼付時に空気に露出する側はπ/5ラジアン以下、好適にはπ/10ラジアン以下である。高分子シートの遅滞は次式で定義される。
【数1】
【0027】
上式においてΔn及びLは各々、高分子シートの複屈折率及び厚さである。λは入射光の真空波長である。遅滞を最小化する一つの方法は、複屈折率が低い高分子シートを選択することである。典型的には、高分子シートの複屈折は、処理による配向効果に起因する。溶液流延膜は一般に、押出成型されたものよりもはるかに低い方位複屈折率を有している。好適な実施形態において、偏光パッチは、流延ポリ塩化ビニル(PVC)膜等の溶液流延膜、又は脂肪族熱可塑性ポリウレタン(TPU)等の固有複屈折率が低い材料の押出加工膜を用いて作成される。
【0028】
更に、偏光パッチが様々な度数のレンズの形状に沿うのに充分な可撓性を有するには、構成要素の高分子シートの弾性率をある閾値未満に維持しなければならない。いくつかの実施形態において、構成要素の高分子シートの弾性率は700MPa以下である。また、高分子シートの厚さは自身の可撓性を向上すべく選択される。いくつかの実施形態において、高分子シートの厚さは200μm以下、好適には100μm以下である。高分子シート材料のショアA硬度は、接着剤を必要とせずに偏光パッチを既存の眼鏡のレンズに貼付できるように選択される。いくつかの実施形態において、高分子シート材料のショアA硬度は、好適には60以下である。
【0029】
[実施例]
積層体のサンプルが、圧力及び間隙制御を行うニップロール積層器を用いて作成された。
【0030】
実施例1:PVC/PVA/PVC偏光パッチ
図1の例示的な実施形態に示すようなPVC/PVA/PVC偏光パッチが、厚さ53μmのPVC層、厚さ25μmの永久アクリル接着剤層、偏光層として厚さ32μmのPVA膜、及び2枚の外側保護層(図示せず)として厚さ38μmの透明なポリエステルライナーを用いて作成された。
【0031】
実施例2:TPU/PVA/TPU偏光パッチ
図2の例示的な実施形態に示すようなTPU/PVA/TPU偏光パッチが、厚さ150μm又は50μmのTPU膜、厚さ40μmのPSA層、及び厚さ32μmの偏光PVA層を用いて作成された。
【0032】
実施例3:PET/PVA/PET偏光パッチ
PET/PVA/PET偏光パッチが、厚さ25μm又は127μmのPET膜、厚さ30~40μmのPSA層、及び厚さ32μmのPVA膜を用いて作成された。
【0033】
パッチ特徴化
複屈折試験
積層体を通して液晶画面を様々な角度で見て、多色複屈折パターンの存在を観察することにより、複屈折が試験された。次いで楕円部をプラノ眼鏡に貼付することにより複屈折が試験された。眼鏡は、観察者により晴れた屋外環境で着用された。グレアを見ながら(例えば、車のフロントガラス)、多色複屈折パターンの存在が様々な頭部傾斜角度で観察された。
【0034】
接着試験
perm/peel(永久接着/剥離可能)両面転写接着剤のA4サンプルを薄細片に切断した。保護用剥離ライナが、転写接着剤の高い方のタック側から取り除かれた。次いで接着細片が手作業で固定色合い偏光積層体膜サンプルに貼付された。次いで楕円部が、手操作で裁断プレスを用いて膜から切断された。接着細片は、楕円部の周縁の最大の被覆が楕円部の端から3mmであると測定される構成において使用された。
【0035】
楕円部の接着は、楕円部を凸サンプルレンズに貼付して剥離時間を測定することによりモニタリングされた。
【0036】
PVC/PVA/PVC偏光パッチ結果
PVC膜は非複屈折(従って光遅延が一切生じない)であって光学的に透明であるため、結果的に得られたPVC/PVA/PVC偏光パッチは、PVA偏光膜単独と同じ偏光効率を維持している。PVC膜は、弾性率が約500MPaであり、従って可撓性で柔らかい。パッチは、度の弱いレンズの表側に石鹸水と共に貼付された。表面曲率がより大きく、より強い度のレンズではPSAを用いる必要があろう。
【0037】
PVC/PVA/PVC偏光パッチの作成に用いた厚さ53μmのPVCは硬く、これらのパッチは度が強いレンズの形状に沿わなかった。より薄いPVC膜、例えば厚さ33μmのPVC膜がこの問題を軽減した。偏光パッチは、高い偏光効率を発揮して、交差偏光位置での光をほぼ完全に遮断した。
【0038】
TPU/PVA/TPU偏光パッチ結果
PVC膜と同様に、TPU膜は複屈折も高い透明度も有していない。結果的に得られた偏光パッチは可視複屈折を一切示さず、試験された全ての種類のレンズについて良好な接着性及び高い偏光効率が観察された。パッチは、接着剤無しに度が低いレンズの表側に貼付することができる。PSAを用いて、パッチは問題無く7及び8度のレンズに接着してレンズの形状に沿うことができる。TPU偏光パッチは、高い偏光効率を示し、且つ交差偏光位置で光をほぼ完全に遮断した。
【0039】
PET/PVA/PET偏光パッチ結果
表側PET層の(入射光に向かう)主軸がPVAの偏光軸に整列している場合に良好な偏光効率が観察された。PETの複屈折主軸が揃っていなければ偏光効率が低下する。PET膜は硬く、結果的に得られた偏光パッチは、接着剤を用いないいくつかの低い度数のレンズの形状に沿わなかった。
【0040】
上の結果に基づいて、TPU及び透明PVC膜が偏光パッチの貼付に最も適した外側層の材料であると決定された。
【0041】
請求項は、所与の請求項において語句「~する手段」又は「~するステップ」の各々を用いて明示的に言及しない限り、手段又はステップに機能を加えた限定を含むと解釈してはならない。
図1
図2
図3A
図3B
【手続補正書】
【提出日】2023-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非偏光光学部品への光の透過率を下げるパッチであって、
少なくとも1つの偏光膜を含む平坦な可撓性積層体を含み、
前記パッチが前記非偏光光学部品に剥離可能に固定可能であり、
前記偏光膜が、前記偏光膜が、表側の第1の透明な高分子シートと、裏側のレンズ接触した第2の透明な高分子シートと、の間に積層された偏光膜シートを含んでおり、
前記第1及び第2の透明な高分子シートが700Mpa以下の弾性率、200μm以下の厚み、及び、60以下のショアA硬度を有する、パッチ。
【請求項2】
前記偏光膜シートがPVAを主成分とするシートである、請求項1に記載のパッチ。
【請求項3】
前記第1及び第2の透明高分子シートが個々に、PVC、TPU、又はPDMS(ポリジメチルシロキサン)から選択されている、請求項に記載のパッチ。
【請求項4】
第1の透明な高分子シートの光遅延がπ/5ラジアン以下、好適にはπ/10ラジアン以下である、請求項に記載のパッチ。
【請求項5】
前記パッチの弾性率が700Mpa以下である、請求項1に記載のパッチ。
【請求項6】
前記パッチの厚さが200μm以下である、請求項1に記載のパッチ。
【請求項7】
前記パッチのショアA硬度が好適には80以下である、請求項1に記載のパッチ。
【請求項8】
前記パッチが、静電気付着により、非偏光光学部品に剥離可能に固定可能である、請求項1に記載のパッチ。
【請求項9】
前記パッチが、感圧接着剤を用いて非偏光光学部品に剥離可能に固定可能である、請求項1に記載のパッチ。
【請求項10】
前記感圧接着剤がレンズ接触側に位置する、請求項に記載のパッチ。
【請求項11】
前記パッチが、非垂直方向に偏光された光の光透過率を低下させる、請求項1に記載のパッチ。
【請求項12】
前記パッチは、前記パッチが剥離可能に固定可能である前記非偏光光学部品と同一寸法及び形状である、請求項1に記載のパッチ。
【請求項13】
前記パッチは、前記パッチが剥離可能に固定可能である前記非偏光光学部品と同一寸法及び形状ではない、請求項1に記載のパッチ。
【請求項14】
弾性率、厚さ、及びショアA硬度が、様々な非偏光光学部品の形状に剥離可能に取り付けられるように前記パッチに可撓性を与えるべく選択されている、請求項13に記載のパッチ。
【請求項15】
前記第1及び第2の透明な高分子シートが100μm以下の厚みを有する、請求項1に記載のパッチ。
【請求項16】
前記パッチが7~8度のレンズに適合するように配置されている、請求項1に記載のパッチ。
【請求項17】
前記偏光膜が垂直方向に偏光軸を有する、請求項1に記載のパッチ。
【請求項18】
前記パッチが水又は石鹸水を用いてレンズに貼付される、請求項1に記載のパッチ。
【外国語明細書】