(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164549
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】シリコン時計製造用構成要素の製造方法
(51)【国際特許分類】
G04B 17/06 20060101AFI20231102BHJP
G04B 15/14 20060101ALI20231102BHJP
G04B 13/02 20060101ALI20231102BHJP
G04B 19/04 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
G04B17/06 Z
G04B15/14 Z
G04B13/02 Z
G04B19/04 B
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023146855
(22)【出願日】2023-09-11
(62)【分割の表示】P 2020550771の分割
【原出願日】2019-03-19
(31)【優先権主張番号】18162729.0
(32)【優先日】2018-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】501099611
【氏名又は名称】パテック フィリップ ソシエテ アノニム ジュネーブ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ジャヌレ シルヴァン
(57)【要約】
【課題】高品質のシリコン計時器構成要素を製造する方法を提案する。
【解決手段】本発明による方法は、a)第1のシリコン層(2)、第2のシリコン層(3)、およびその間に中間酸化シリコン層(4)を備える基板(1)を準備するステップと、b)第1のシリコン層(2)をエッチングして内部に計時器構成要素を形成するステップと、c)エッチングされた第1のシリコン層(2)の少なくとも全てまたは一部によって形成されたウェハー(8)を基板(1)から離して計時器構成要素を構成するステップと、
d)計時器構成要素を熱酸化し、次に脱酸するステップと、e)熱酸化または堆積によって、計時器構成要素上にシリコン酸化膜層(10)を形成するステップと、f)ウェハー(8)から計時器構成要素を切り離すステップと、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計時器構成要素を製造する方法であって、
a)第1のシリコン層(2)、第2のシリコン層(3)、およびその間の中間酸化シリコン層(4)を備える基板(1)を準備するステップと、
b)前記第1のシリコン層(2)をエッチングして、内部に前記計時器構成要素を形成するステップと、
c)エッチングされた前記第1のシリコン層(2)の少なくとも全てまたは一部によって形成されたウェハー(8)を前記基板(1)から離して前記計時器構成要素を構成するステップと、
d)前記計時器構成要素を熱酸化し、次に脱酸するステップと、
e)熱酸化または堆積によって、前記計時器構成要素上に酸化シリコン層(10)を形成するステップと、
f)前記ウェハー(8)から前記計時器構成要素を切り離すステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
計時器構成要素を製造する方法であって、
a)酸化シリコン層と交互になったシリコン層を備える基板(20)を準備するステップと、
b)前記基板の層グループをエッチングして内部に前記計時器構成要素を形成するステップと、
c)前記層グループの少なくとも全部または一部によって形成されたウェハーを前記基板から離して前記計時器構成要素を構成するステップと、
d)前記計時器構成要素を熱酸化し、次に脱酸するステップと、
e)熱酸化または堆積によって、前記計時器構成要素上の酸化シリコン層を形成するステップと、
f)前記ウェハーから前記計時器構成要素を切り離すステップと、
を含む、方法。
【請求項3】
ステップb)の前記エッチングは、深反応性イオンエッチングを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップd)とステップe)との間に、前記計時器構成要素を熱酸化し、次に脱酸することから成る付加的ステップを含む、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ステップd)は、前記計時器構成要素の表面仕上げを改善する機能を果たし、前記付加的ステップは、前記計時器構成要素を構成するひげぜんまいの剛性を調整する機能を果たす、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記付加的ステップの前記熱酸化工程中、前記ウェハー(8)は、ステップd)の前記熱酸化工程に対して逆の位置にある、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
ステップe)中、前記ウェハー(8)は、前記付加的ステップの前記熱酸化工程に対して逆の位置にある、請求項4から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記熱酸化工程中、前記ウェハー(8)は、支持プレート(11)、スペーサー(12)、および前記支持プレート(11)によって運ばれる保持要素(13)を含む支持部材(11、12、13)によって支持され、前記スペーサー(12)は、前記ウェハー(8)と前記支持プレート(11)との間の間隙を維持し、前記保持要素(13)は、前記ウェハー(8)が水平方向に移動するの阻止する、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記スペーサー(12)は、何らかの計時器構成要素を含まない前記ウェハー(8)の領域で前記ウェハー(8)を支持する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記支持プレート(11)は、シリコン、石英、または炭化ケイ素で作られている、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記スペーサー(12)および前記保持要素(13)が、石英または炭化ケイ素で作られている、請求項8から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記スペーサー(12)および前記保持要素(13)は、バヨネット式接続によって前記支持プレート(11)に固定される、請求項8から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
ステップc)は、前記中間酸化シリコン層(4)を気相エッチングする工程を含む、請求項1および3から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
ステップc)で離された前記ウェハー(8)は、前記エッチングされた第1のシリコン層(2)の一部によって形成される、請求項1および3から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
ステップb)において、ステップc)で離される前記ウェハー(8)の周辺端部を画定するために、前記第1のシリコン層(2)に溝がエッチングされる、請求項1および3から14のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
ステップb)において、開口部(16)が、前記計時器構成要素(18)がエッチングされる中央領域(17)の周りで前記第1のシリコン層(2)内にエッチングされ、前記開口部(16)は、ステップc)中、前記中間酸化シリコン層(4)のエッチングを行うエッチング剤の通過を可能にする、請求項1および3から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記計時器構成要素は、ひげぜんまい(18)、アンクル、歯車、針、ロッカー、レバー、ばね、テンプ、及び前記構成要素のうちの一部の、少なくとも1つを含む、請求項1~16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
ウェハー(8)の熱処理中に前記ウェハー(8)を支持するための支持部材(11,12、13)であって、前記支持部材は、支持プレート(11)、スペーサー(12)、および前記支持プレート(11)によって運ばれる保持要素(13)を含み、前記スペーサー(12)は、前記支持プレート(11)と前記ウェハー(8)との間の間隙を維持する機能を果たし、前記保持要素(13)は、前記ウェハー(8)が水平方向に移動するのを阻止する機能を果たす、支持部材。
【請求項19】
前記支持プレート(11)は、シリコン、石英、または炭化ケイ素で作られている、請求項18に記載の支持部材(11)。
【請求項20】
前記スペーサー(12)および前記保持要素(13)は、石英または炭化ケイ素で作られている、請求項18または19に記載の支持部材(11)。
【請求項21】
前記スペーサー(12)および前記保持要素(13)は、差し込み型接続によって前記支持プレート(11)に固定されている、請求項18から20のいずれかに記載の支持部材(11)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンで作られた、ひげぜんまい、アンクル、歯車、針、ロッカー、レバー、ばね、またはテンプなどの計時器構成要素を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン計時器構成要素を製造する方法は、特に、欧州特許第0732635号、欧州特許第1422436号、欧州特許第2215531号、および欧州特許第3181938号に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】欧州特許第0732635号
【特許文献2】欧州特許第1422436号
【特許文献3】欧州特許第2215531号
【特許文献4】欧州特許第3181938号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、高品質のシリコン計時器構成要素を製造する方法を提案することを目的としている。
【0005】
このために、請求項1または請求項2、およびこれらに従属する請求項に記載の方法が示される。
【0006】
本発明はさらに、この方法の実施、およびより一般的にはウェハーの熱処理の実施を容易にする支持部材を提案する。この支持部材は、請求項18およびこれに従属する請求項で定義されている。
【0007】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して以下の詳細な説明を読むことで明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の特定の実施形態による方法のステップを概略的に示す。
【
図2】本発明の特定の実施形態による方法のステップを概略的に示す。
【
図3】本発明の特定の実施形態による方法のステップを概略的に示す。
【
図4】本発明の特定の実施形態による方法のステップを概略的に示す。
【
図5】本発明の特定の実施形態による方法のステップを概略的に示す。
【
図6】本発明の特定の実施形態による方法のステップを概略的に示す。
【
図7】本発明の特定の実施形態による方法のステップを概略的に示す。
【
図8】本発明の特定の実施形態による方法のステップを概略的に示す。
【
図9】本発明の特定の実施形態による方法のステップを概略的に示す。
【
図10】本発明の特定の実施形態による方法のステップを概略的に示す。
【
図11】本発明の特定の実施形態による方法のステップを概略的に示す。
【
図12】後続の熱酸化処理中にシリコンウェハーを支持するために本発明の特定の実施形態による方法で使用される支持部材の斜視図である。
【
図13】後続の熱酸化処理中にシリコンウェハーを支持するために本発明の特定の実施形態による方法で使用される支持部材の側面図である。
【
図14】エッチングされたシリコンウェハーが複合基板から切り離される、本発明の特定の実施形態による方法のステップを概略的に示す。
【
図15】エッチングされたシリコンウェハーが複合基板から切り離される、本発明の特定の実施形態による方法のステップを概略的に示す。
【
図16】本発明の別の実施形態による方法を実施することができる複合基板を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の特定の実施形態による、特に腕時計用のシリコン計時器構成要素を製造するための方法は、
図1~
図11に示された一連のステップを含む。
【0010】
第1のステップ(
図1)において、シリコン・オン・インシュレーター(SOI)タイプの基板1が示される。基板1は、上部シリコン層2、下部シリコン層3、およびその間の中間酸化シリコン層4を含む。シリコンは、単結晶、多結晶、または非結晶質である。これはドープすることができ、またはドープしなくてもよい。上部シリコン層2の厚さは、製造される部品の厚さに応じて選択される。下部シリコン層3は、基板1に、その取り扱いおよび以下に説明する工程の実施を容易にするのに十分な剛性を与える機能を果たす。
【0011】
第2のステップ(
図2)において、フォトリソグラフィーによって構造化されるフォトレジスト層5を上部シリコン層2上に堆積する。正確には、フォトレジスト層5を、転写される典型的にはクロムで作られている構造体7を支持する、典型的にはガラスまたは石英で作られているマスク6を通して紫外線に露光させる。次に、フォトレジスト層5を成長させて硬化させる(
図3)。これらの工程の終了時、フォトレジスト層5は、構造体7と同じ形状を有し、結果としてマスクを構成し、この形状は、製造される計時器構成要素群の形状に対応する。
【0012】
次のステップ(
図4)において、上部シリコン層2は、この層2内に計時器構成要素を形成するために、深反応性イオンエッチング(DRIE)によってフォトレジストマスク5を通してエッチングされる。エッチングは、中間の酸化シリコン層4によって停止するので、計時器構成要素の正確な厚さを定めることができる。エッチングパラメータは、例えば、粗さまたはフランク角に関して特定の特性を得るために、構成要素に照らして調整をすることができる。上部シリコン層2内に形成された計時器構成要素は好ましくは同一であるが、代替的に、各々が構成要素の1つに対応する複数のグループに分けることができる。例えば、計時器構成要素は、以下のタイプの構成要素、すなわち、ひげぜんまい、アンクル、歯車、詳細にはガンギ車、針、ロッカー、レバー、ばね、テンプ、またはそのような構成要素の一部のうちの少なくとも1つを含む。本発明による方法は、特に有機的構成要素を調整するのに適しており、より一般的には、低質量および/または低慣性を必要とする計時器動作構成要素に適している。
【0013】
次に、フォトレジストマスク5を化学エッチングまたはプラズマエッチングで除去する(
図5)。
【0014】
次のステップ(
図6)において、エッチングされた上部シリコン層2の少なくとも全て又は一部によって形成されたウェハー8を、後述する方法で基板1から離す。このウェハー8は、基本的構造体と、該基本的構造体にエッチング中に残されたが材料ブリッジによって取り付けられた計時器構成要素とを含む。
【0015】
次に、ウェハー8を、酸化炉に入れて、通常600℃から1300℃で熱処理して計時器構成要素の外面全体を酸化させる(
図7)。次に、ウェハー8、詳細には計時器構成要素を覆うシリコン酸化膜(SiO2)層9を、ウェハー8からシリコンを消費することで形成し、これはシリコンとシリコン酸化膜との間の境界面がシリコンの表面欠陥を弱めて軽減するようにさせる。続いて、シリコン酸化膜を除去して(
図8)、ウェットエッチング、蒸気エッチング、またはドライエッチングすることで、良好な表面仕上げを有する計時器構成要素を得る。特に、DRIEエッチングによる側面粗さおよび表面結晶欠陥が大幅に減少する。
【0016】
本方法のこの段階では、計時器構成要素またはそれらの一部の物理的特性、特にそれらの寸法を測定することが可能である。前の酸化-脱酸ステップのおかげで、これらの物理的特性は、明確に定義され、従って、表面欠陥によって妨げられないので正確に測定することができる。所定のひげぜんまいに関して、それらの剛性を決定することができる。所与のひげぜんまいに関して、剛性は、ひげぜんまいをウェハー8に取り付いた状態でまたはウェハー8から切り離した状態で所定の慣性のテンプに結合して、テンプ-ひげぜんまい組立体の周波数を測定してこの測定値から推定し、ひげぜんまいの剛性を計算することで決定することができる。より詳細には、欧州特許第3181938号に記載されている方法、すなわち、ひげぜんまいの剛性を決定し、所望の剛性を得るためにひげぜんまいから除去される材料厚さを計算し、次に所望の剛性のひげぜんまいを得るためにこの材料の厚さを除去する方法を実施することができる。この材料厚さを除去するために、
図7および8を参照して上述したのと同じ方法で、ウェハー8およびその計時器構成要素を、熱酸化し(
図9)、次に脱酸する(
図10)ことができる。剛性を決定し、除去する厚さを計算し、酸化-脱酸によってこの厚さを除去する工程は、必要であれば、ひげぜんまいの寸法精度を改善するために繰り返すことができる。
【0017】
本方法のさらに他のステップにおいて(
図11)、シリコン酸化膜(SiO2)層10を、例えば、熱酸化もしくは化学的または物理的気相成長(CVD、PVD)によって、ウェハー8およびその計時器構成要素上に形成する。計時器構成要素を被覆するこのシリコン酸化膜層10は、これらの機械的強度を高める。ひげぜんまいの場合、シリコン酸化膜層10は、欧州特許第1422436号および欧州特許第2215531号に記載されているようにテンプ-ひげぜんまい発振子の周波数が温度に鈍感であるように、シリコンコアの弾性率の温度依存性変動ならびにひげぜんまいを備えることが意図されたテンプの慣性モーメントの温度依存変動を補償するのを可能にする厚さを有する。
【0018】
最後のステップにおいて、計時器構成要素をウェハー8の基本構造体から切り離す。
【0019】
酸化ステップ(
図7および9、適用できる場合は
図11)の間、ウェハー8は、好ましくは、
図12および13に示すように、手動またはロボットで操作することができる支持プレート11によって水平に支持される。この支持プレート11は、酸化処理に適合する材料、例えば、石英、シリコンまたは炭化ケイ素で作られている。ウェハー8の均一な酸化を可能にするために、ウェハー8は、何らかの構成要素を含まない領域(特に構成要素の間)でウェハー8を支持するスペーサー12によって、支持プレート11に対して持ち上げられる。ウェハー8は、ウェハー8の周辺端部と協働する保持要素13によって水平方向に移動するのが阻止される。スペーサー12および保持要素13は、略円筒形状である。これらは、支持プレート11に対して固定され、例えば、バヨネット(差し込み)式接続によって支持プレート11に取り付けられる。これらは、例えば、石英または炭化ケイ素で作られ、同じ材料または異なる材料で作ることができる。好ましい実施形態では、支持プレート11はシリコンで作られ、スペーサーおよび保持要素12、13は石英で作られる。また、スペーサー12および保持要素13を備えたこの支持プレート11は、
図11のステップの間に使用することができる(このステップがCVDまたはPVD堆積工程から成る場合)。
【0020】
好ましくは、
図9の酸化処理の間、ウェハー8は、
図7の酸化処理に対して逆の位置で支持プレート11上に配置される。同様に、
図11の酸化または堆積処理の間、ウェハー8は、
図9の酸化処理に対して逆の位置で支持プレート11上に配置される。これにより、重力および熱の影響下での計時器構成要素の永久変形を防止する、または少なくとも制限する。
【0021】
基板1(
図6)からウェハー8を離すステップは、化学的またはプラズマエッチングによって、下部シリコン層3全体および中間酸化シリコン層4全体を除去することによって行うことができる。もしくは、下部シリコン層3および中間酸化シリコン層4は、構成要素または構成要素グループの裏面でのみ除去することができ、これによりウェハー8はこれらの層3、4の一部を保持する。しかしながら、これらの工程は、時間および費用がかかる。本発明において、好ましくは、ウェハー8は、上部シリコン層2の一部によって形成され、その基板1から離すことは、以下に説明され、
図14および15に示される方法で行われる。
【0022】
図15に示されるように、エッチングされた基板1は、上部シリコン層2が下向きの状態で、従って下部シリコン層3が加熱要素14に接して上向きの状態で、閉鎖チャンバ15(
図14)内の加熱要素14に対して固定される。加熱要素14に対して基板1を固定する方法は、静電的に(電界を印加することで)または機械的に行なうことができる。フッ酸(HF)の溶液は、基板1と接触することなくチャンバ15内に加えられる。そのときにチャンバ15の内部を満たすフッ酸の蒸気は、シリコンをエッチングすることなく、中間酸化シリコン層4をエッチングする。温度調整された加熱要素14は、フッ酸とシリコン酸化膜との間の反応によって生成された水の凝縮を防止し、この凝縮は、離される部分が基板1の残部に付着されるようにするであろう。
【0023】
離される部分、すなわちウェハー8は、事前に上部シリコン層2のエッチング中に作られる、ウェハー8の周辺端部を形成する溝によって画定される。上部シリコン層2のこの同一のエッチング中に、例えば、
図15に示されるようなハッチング線の形態の開口部16は、構成要素を含む中央領域17の周りでウェハー8内にエッチングされる。これらの開口部16は、フッ酸蒸気の通過を可能にする。
【0024】
図15は、矩形部分または正方形部分から成る形状を有するウェハー8の実施例を示す。勿論、他の形状、例えば円形形状も考えられる。
図15では、ウェハー8によって運ばれ、ここではひげぜんまいから成る計時器構成要素18を見ることができる。これらの計時器構成要素は、図面の理解を容易にするために、実際の数と比較して少ない数で示されている。
【0025】
本発明による方法によって製造された計時器構成要素は、作業精度およびこれらを使用する機械の性能を改善することができる非常に正確な寸法および良好な表面仕上げを有することができる。
【0026】
勿論、上述のような本発明による方法の変更は可能である。
【0027】
例えば、それぞれ計時器構成要素の表面仕上げを改善して、それらの剛性を調整する(ひげぜんまいの場合)ための2つの酸化-脱酸ステップ(
図7、8および
図9、10)は、非常に好都合であり、表面仕上げを改善しかつ剛性を調整するのために、一方のみを提供することができ、これは剛性の決定のステップの前になるであろう
【0028】
もしくは、二重、三重、またはそれ以上のSOI基板、つまり、例えば
図16に示される基板20などの中間酸化シリコン層で分離された3以上のシリコン層を有する基板から始めて、その後に基板から離されることになる上層グループ内に計時器構成要素をエッチングする。その結果、計時器構成要素は、1又は2以上の中間酸化シリコン層を備える複合構造を有することになる。
【0029】
上部シリコン層2(
図3)を構造化するために使用されるフォトレジストマスク5は、シリコン酸化マスクに置き換えることができる。フォトレジストマスクとシリコン酸化膜マスクを関連付けて、上部シリコン層内または上部層グループ内でエッチングすることにより、多層計時器構成要素を製作することもできる。
【0030】
他の変形例において、基板は両面からエッチングすることができる。
【0031】
エッチングを停止する働きをするシリコン酸化膜層は、パリレンタイプの1又は2以上の層によって補強することができる。
【0032】
最後に、本発明は、エッチングを停止するための1又は2以上の金属層の使用を排除するものではない。
【外国語明細書】