(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164561
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】より低又は低GWPの冷媒又は冷媒ブレンドを用いて、PAG潤滑油又は冷媒を空調又はシステムに導入するための組成物、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
C09K 5/04 20060101AFI20231102BHJP
C10M 107/34 20060101ALI20231102BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20231102BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20231102BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20231102BHJP
【FI】
C09K5/04 F ZAB
C10M107/34
F25B1/00 396Z
C10N30:00 A
C10N40:30
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023147751
(22)【出願日】2023-09-12
(62)【分割の表示】P 2019009484の分割
【原出願日】2019-01-23
(31)【優先権主張番号】62/620,568
(32)【優先日】2018-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/745,447
(32)【優先日】2018-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】PCT/US2018/066601
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】WO
(71)【出願人】
【識別番号】515269383
【氏名又は名称】ザ ケマーズ カンパニー エフシー リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メアリー イー.コーバン
(72)【発明者】
【氏名】ニナ イー.グレイ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューバート メンツ ジュニア
(57)【要約】
【課題】手動インジェクタを使用することなく、潤滑油を迅速かつ便利にA/Cシステムへと搬送する方法へのニーズが存在する。
【解決手段】客室空調(A/C)システムを含む車両熱管理システム中で環境に優しい冷媒と連携するように設計された、潤滑油及び添加剤を導入するための組成物、システム、及び方法が開示される。環境に望ましい(低GWP)冷媒又は冷媒ブレンド組成物を用いて潤滑油、及び特定の添加剤を、HFO-1234yfを用いるシステムなどの環境に優しいシステムに充填するための方法もまた開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~15重量%の、二重末端キャップされたポリアルキレングリコール(PAG)潤滑油と、85~99重量%の、100未満の地球温暖化係数(GWP)を示すHFO-1234yf冷媒と、1~5重量%の酸捕捉剤とを含み、前記二重末端キャップされたポリアルキレングリコール(PAG)潤滑油と、前記100未満の地球温暖化係数(GWP)を示すHFO-1234yf冷媒と、前記酸捕捉剤との総量が最大100%である組成物。
【請求項2】
前記酸捕捉剤は、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、デカメチルシクロ-ペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、又はオクタメチルトリシロキサンからなる群から選択される、少なくとも1つの要素を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1~5重量%の性能向上剤を更に含む、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
1~15重量%の、二重末端キャップされたポリアルキレングリコール(PAG)潤滑油と、85~99重量%の、100未満の地球温暖化係数(GWP)を示すHFO-1234yf冷媒とを含む組成物であって、前記PAG潤滑油が、315kPa~435kPaの圧力範囲及び-18℃~37℃の温度範囲で前記冷媒と混和性である、組成物。
【請求項5】
1~10重量%の火炎抑制剤を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
容器であって、請求項1~5のいずれか一項に記載の前記組成物を、車両空調システム内に送達するように構成された、容器。
【請求項7】
前記容器内の圧力は、160kPa~945kPaである、請求項6に記載の容器。
【請求項8】
組成物を含む車両空調システムに組成物を送達するように構成された容器であって、前記組成物が、1~15重量%の、二重末端キャップされたポリアルキレングリコール(PAG)潤滑油と、85~99重量%の、100未満の地球温暖化係数(GWP)を示すHFO-1234yf冷媒とを含み、前記容器内の圧力が、160kPa~945kPaである、容器。
【請求項9】
前記組成物が、1~5重量%の酸捕捉剤をさらに含み、前記酸捕捉剤は、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、デカメチルシクロ-ペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、又はオクタメチルトリシロキサンからなる群から選択される、少なくとも1つの要素を含む、請求項8に記載の容器。
【請求項10】
1~5重量%の性能向上剤を更に含む、請求項8又は9に記載の容器。
【請求項11】
1~10重量%の火炎抑制剤を更に含む、請求項8~10のいずれか一項に記載の容器。
【請求項12】
ポリアルキレングリコール(PAG)潤滑油を、車両空調システム内に送達するための方法であって、前記方法が、
組成物を含む容器を、前記車両空調システムに接続することと、
前記組成物を前記車両空調システム内に移送することと、を含み、
前記組成物が、1~15重量%の、二重末端キャップされたポリアルキレングリコール(PAG)潤滑油と、85~99重量%の、100未満の地球温暖化係数(GWP)を示すHFO-1234yf冷媒とを含み、前記PAG潤滑剤が、315kPa~435kPaの圧力範囲及び-18℃~37℃の温度範囲で前記冷媒と混和性である、方法。
【請求項13】
前記方法が、酸捕捉剤、性能向上剤、又は火炎抑制剤を、前記車両空調システム内に送達することを更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記容器内の圧力は、160kPa~945kPaである、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
請求項6~11のいずれか一項に記載の容器から前記組成物を送達するためのシステムであって、前記容器と、コンプレッサと、凝縮装置と、乾燥機と、膨張弁と、蒸発装置と、を備える、システム。
【請求項16】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を、容器から自動車空調システムに送達するためのシステムであって、前記システムが、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を含む前記容器と、コンプレッサと、凝縮装置と、乾燥機と、膨張弁と、蒸発装置と、を備える、システム。
【請求項17】
キットであり、請求項6~11のいずれか一項に記載の容器と、前記組成物の空調システム内への流れを制御するための手動ディスペンサと、前記組成物を前記空調システムに搬送するためのホースと、を備えるキット。
【請求項18】
キットであり、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物を含む容器と、前記組成物の空調システム内への流れを制御するための手動ディスペンサと、前記組成物を前記空調システムに搬送するためのホースと、を備えるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般には、客室空調(A/C)システムを含む車両熱管理システム中で環境に優しい冷媒と連携するように設計された潤滑油及び添加剤を導入する組成物、システム、及び方法に関する。より具体的には、本発明は、潤滑油、及び環境に望ましい(低GWP)冷媒又は冷媒ブレンド組成物を用いた特定の添加剤を、HFO-1234yfを用いるシステムなどの、環境に優しいシステムに充填するための方法に関する。本発明は更に、潤滑油及び特定の添加剤を含む冷媒を、HFO-1234yfを用いるシステムなどの、環境に優しいシステムに充填する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1990年代中盤より、自動車用空調(A/C)システムは蒸気圧縮サイクルのためにR-134a冷媒を使用してきた。現在では、環境的及び社会的圧力のために、全世界の自動車製造業者らは、車両A/C冷媒としては、低地球温暖化係数(GWP)冷媒のHFO-1234yf(2,3,3,3-テトラフルオロプロペン)へと移行しつつある。従来の蒸気圧縮A/Cシステムでは、冷却を達成するために、A/CコンプレッサがA/Cシステム内に冷媒を循環させる。このため、A/CコンプレッサはA/Cシステムの作動に不可欠である。A/Cコンプレッサは、A/Cシステムの心臓部として作動液をシステムに圧送する役割を果たす。A/Cコンプレッサが正しく作動しなければ、A/Cシステムは機能しない。
【0003】
適宜に作動するため、A/Cコンプレッサは正しい物理的パラメータ(粘度、湿度、TANなど)を備えた潤滑油を必要とする。潤滑油はA/Cシステム内を完全に循環しなくてはならない。潤滑油は冷媒によってシステムの一部分から次の部分まで輸送されなければならず、潤滑油はまた、コンプレッサ内部にあるとき、潤滑を提供すると同時に、冷媒をシステムの一部分からシステムの別の部分まで輸送することができなければならない。したがって、システムが有効に作動するには、0℃~40℃のA/Cシステム作動範囲にわたる冷媒/油の、相互相溶性が不可欠である。
【0004】
自動車用相手先商標製品製造者(OEM)は、一般には初期車両A/C充填プロセス中にA/C潤滑油を添加する。A/Cシステムが損なわれる部品故障(ホース又は配管の破断)又は車両事故に起因して、A/Cシステムが修理を必要とする場合がある。一般に、自動車補修部品市場又はサービス産業は、修理後に冷媒及び潤滑油をA/Cシステムに再注入/再充填するために、リカバリ、リサイクル、リチャージ、すなわち「R/R/R」機器を採用している。しかし、SAE J2843、具体的には上記のSAE規格のセクション8.9.5.1(参照により本明細書に援用される)に基づく、HFO-1234yfと併用するように設計された現行のR/R/R機器は、R/R/R機器による修理後に潤滑油をシステムに自動注入させることができない。潤滑油は、「手注入」又は「機械注入」する必要がある。これらの選択肢のそれぞれでは、潤滑油をインジェクタに充填してからA/Cシステムの低側にホースを取り付ける。車両を作動させると、A/Cシステムは最大冷却に設定され、これはまたA/Cコンプレッサを起動させる。A/Cコンプレッサが循環を開始すると、取り付けられたインジェクタは開放位置に向けられて、潤滑油がホースに沿ってA/Cシステムへと搬送される。
【0005】
この方法は使用することができるが、時間のかかるプロセスであり、また、接続されたホースを通して潤滑油をA/Cサービスポートまで圧送する手動ポンプ式機構の使用が必要とされる。潤滑油はA/Cコンプレッサによってシステム内に引き込まれる。送達プロセス中に潤滑油がホースの壁部に付着して、そのため十分な量の潤滑油をシステムに送達することが困難になる場合がある。したがって、当該技術分野では、手動インジェクタを使用することなく、潤滑油を迅速かつ便利にA/Cシステムへと搬送する方法へのニーズが存在する。
【0006】
場合によっては、この同じ搬送方法を用いて、冷媒、潤滑油を含有する冷媒、又はその他の性能向上添加剤を含有する冷媒をA/Cシステム内に送達するための類似の送達プロセスを使用することが有利となり得ることも留意されたい。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一般的なA/C補修部品市場の再充填ホースを使用して、潤滑油を低GWPのHFO-1234yf自動車用A/Cシステムに注入するために用いられ得る、低GWP冷媒を提供することによって、従来の組成物、システム、及び方法に付随する問題を解決する。手動インジェクタ又は手動ポンプ中で、潤滑油の流れは、潤滑油の粘度及びA/Cコンプレッサの吸引力によって制御される。本発明の方法では、潤滑油及び/又は潤滑油添加剤パッケージをホースに付着させることなく、A/Cホースを通して搬送するために冷媒が用いられ、それによって、より多くの潤滑油又は潤滑油/添加剤パッケージがA/Cシステム内に導入されることが確実となり、そのため材料の流れが改善される。
【0008】
手動インジェクタ又は手動ポンプを用いた結果、A/Cシステムと接続するホース配管に潤滑油が付着する場合がある。冷媒は、潤滑油を輸送し、潤滑油をA/Cシステム内に搬送するため、潤滑油をシステムへと移送するのに冷媒を用いることで、手動又はポンプインジェクタと比較して、より多くの潤滑油がA/Cシステム内に導入されることが確実となる。潤滑油又は潤滑油/添加剤及び冷媒は、潤滑油と冷媒とが混和性である条件下で、従来の容器又は缶に共包装される。小容器から排出されると、冷媒成分は圧縮液化ガスから気体へと状態変化し、一方で油成分は霧化される。このプロセスの間、潤滑油と混和性である冷媒は、潤滑油又は潤滑油/添加剤混合物を霧化し、潤滑油又は潤滑油/添加剤混合物がA/C再充填ホースの壁部上に沈殿し得る前に、潤滑油又は潤滑油/添加剤混合物をホースに沿ってA/Cシステム内へと更に搬送する。
【0009】
本発明の一態様は、約50~約80重量%のPAG潤滑油、及び約20~約50重量%の低GWP冷媒を含む、組成物に関する。
【0010】
本発明の別の態様は、約60~約65重量%のPAG潤滑油、及び約35~約40重量%の低GWP冷媒を含む、組成物に関する。
【0011】
本発明の別の態様は、約1~5重量%の酸捕捉剤を更に含む、上記の組成物に関する。
【0012】
本発明の別の態様は、約1~5重量%の性能向上剤を更に含む、上記の組成物のうちのいずれかに関する。
【0013】
本発明の更なる態様は、約1~10重量%の火炎抑制剤を更に含む、上記の組成物のうちのいずれかに関する。
【0014】
本発明の一態様は、上記の組成物のうちのいずれかを含み、組成物を車両A/Cシステム内に直接送達するのに用いるための容器に関する。
【0015】
本発明の一態様は、上記の組成物又は容器のうちのいずれかを用いて、PAG潤滑油を車両A/Cシステム内に送達するための方法に関する。
【0016】
本発明の別の態様は、上記の方法を含み、酸捕捉剤を車両A/Cシステム内に送達することを更に含む。
【0017】
本発明の別の態様は、上記の方法を含み、性能向上剤を車両A/Cシステム内に送達することを更に含む。
【0018】
本発明の別の態様は、上記の方法を含み、火炎抑制剤を車両A/Cシステム内に送達することを更に含む。
【0019】
本発明の更なる態様は、上記の方法を含み、方法は、潤滑油が冷媒と混和性となる圧力及び温度条件下で行われる。
【0020】
本発明の一態様は、上記の組成物、方法、及び容器のうちのいずれかを、組成物を含む容器、コンプレッサ、凝縮装置、乾燥機、膨張弁、及び蒸発装置を含む自動車用A/Cシステムに送達するためのシステムを含む。
【0021】
本発明の更なる態様は、上記の組成物及び方法のうちのいずれかで用いられる組成物を提供するために、
図2に示すキットを使用することを含む。
【0022】
本発明の別の態様は、約1~約15重量%のPAG潤滑油、及び約85~約99重量%の低GWP冷媒を含む、組成物に関する。
【0023】
本発明の更なる態様は、約1~約10重量%のPAG潤滑油、及び約90~約99重量%の低GWP冷媒を含む、組成物に関する。
【0024】
本発明の更なる態様は、約1~約5重量%のPAG潤滑油、及び約95~約99重量%の低GWP冷媒を含む、組成物に関する。
【0025】
本明細書に開示される様々な態様及び実施形態は、単独で、又は相互の様々な組み合わせで使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の組成物をA/Cシステムに導入するための、システムの概略図である。
【
図2】本発明の組成物を容器からA/Cシステム内に送達するのに使用するための、キットの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、一般に、環境に優しい冷媒と連携するように設計された潤滑油及び添加剤からなる組成物に関する。より具体的には、本発明は、A/Cシステムで用いるために、約50~約80重量%、約55~約70重量%、又は約60~約65重量%のPAG潤滑油と、約0~約5重量%の添加剤と、約20~約50重量%、約30~約45重量%、又は約35~約40重量%の低GWP冷媒又は冷媒ブレンドと、を含むか又はこれらから本質的になる組成物に関する。
【0028】
本発明は更に、約1~約15重量%、約1~約10重量%、又は約1~約5重量%のPAG潤滑油と、約0~約5重量%の添加剤と、約85~約99重量%、約90~約99重量%、又は約95~約99重量%の低GWP冷媒又は冷媒ブレンドと、を含むか又はこれらから本質的になる組成物にも関する。
【0029】
潤滑油
この組成物のために選択された潤滑油は、好ましくは、潤滑油が蒸発装置からコンプレッサに戻り得ることを確実にするために、車両のA/C冷媒中で十分な可溶性を有する。更に、潤滑油が冷たい蒸発装置内を通過することができるように、潤滑油は好ましくは低温で相対的に低い粘度を有する。好ましい一実施形態では、潤滑油とA/C冷媒とは、幅広い温度範囲にわたって混和性である。好ましい潤滑油は、1つ以上の極性の、含酸素化合物であり得る。好ましい極性の含酸素化合物としては、ポリアルキレングリコール類(PAG)としても知られている、ポリアルキレンオキシドが挙げられる。
【0030】
本明細書で用いられるポリアルキレングリコールとしては、末端のうちの1つ以上が活性水素原子を含まない部分(基)によって開かれている、2つ以上のアルキレンオキシドを含む化合物が挙げられる。潤滑を促進する任意のアルキレンオキシドを、エチレンオキシドと共に使用することができ、プロピレンオキシドが好ましく、プロピレンオキシドがより好ましい。末端キャッピング部分としては、潤滑又は冷却に干渉しない任意の部分が挙げられる。好ましい末端キャッピング部分としては、低級アルキル基が挙げられ、C1~4の低級アルキル基がより好ましい。好ましいPAG潤滑油としては、アルキルエーテルでキャップされた化合物、エステルでキャップされた化合物、又は少なくとも1つのヒドロキシル基を有するモノオールのうちの、1つ又は任意の組み合わせが挙げられる。好ましいアルキレングリコールは、単末端キャップ又は二重末端キャップされており、二重キャップがより好ましい。
【0031】
好ましい実施形態では、潤滑油は約0℃~約100℃の温度、より好ましくは約0℃~約40℃の範囲内で、更により具体的には5℃~40℃で、車両A/Cシステム冷媒に可溶性である。別の一実施形態では、潤滑油をコンプレッサ中に維持するように試みることは優先事項ではないため、高温可溶性は好ましくない。本実施形態では、潤滑油は約70℃を超える温度で、より好ましくは約80℃を超える温度で、最も好ましくは90~95℃の温度で可溶性である。
【0032】
潤滑油は、約5cSt超、好ましくは約10cSt超、最も好ましくは約20cSt超の動粘度を有してもよい(ASTM D445に従い40℃で測定して)。潤滑油は、約600cSt未満、より好ましくは約320cSt未満、最も好ましくは約210cSt未満の動粘度を有してもよい(ASTM D445に従い40℃で測定して)。理想的には、潤滑油は、ASTM D445に従って40℃で測定したときに40~50cStの動粘度を有する。
【0033】
潤滑油は、好ましくは約1000~約4000、より好ましくは約1500~約3500の分子量を有する(ゲル透過クロマトグラフィ法(GPC)又は飛行時間型質量分析法(TOF-MS)によって測定して)。これらの範囲内の分子量を有する潤滑油は、これらの範囲外の分子量を有する潤滑油と比較して、より好都合なFalex摩耗試験結果を提供する。表1は、本発明の組成物と共に用いるための潤滑油の好適な特性を示す。
【0034】
【0035】
更に、本組成物中で使用されるPAG潤滑油は、一般的な車両A/Cシステムで用いられるエラストマー及びプラスチック類との材料適合性を有するべきである。使用されるPAG潤滑油は、ASHRAE 97:2007「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」によって100℃で2週間測定して、Neoprene WRT(ポリクロロプレン/2,3-ジクロロ-1,3-ブタジエンコポリマー)、HNBR(水添ニトリルブタジエンゴム)、NBR(ニトリルブタジエンゴム)、EPDM(エチレンプロピレンジエンモノマー)、シリコーン、及びブチルゴムなどのエラストマーとの良好な材料適合性を有するべきである。同様に、使用されるPAG潤滑油は、ASHRAE 97:2007「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」によって100℃で2週間測定して、プラスチック材料、すなわちポリエステル、ナイロン、エポキシ、ポリエチレン、テレフタレート、及びポリイミドとの良好な材料適合性を有するべきである。上記のPAG潤滑油及びHFO-1234yfと併用するプラスチック及びエラストマーは、デュロメータで測定して約10%未満、約8%未満、若しくは約7%未満の重量増加、又は約10%未満、約8%未満、若しくは約7%未満の線形膨張、又は約10未満、約8未満、若しくは約7未満の硬度変化を有するべきである。理想的には、プラスチック及びエラストマーは、デュロメータで測定して、少なくとも2つの特性で10%未満の重量増加、又は10%未満の線形膨張、又は硬度変化未満(less than a hardness change)を有し、好ましくは、3つ全ての特性で10%未満を有する。
【0036】
いくつかのPAG潤滑油は、所望の温度範囲にわたり特定の低GWP冷媒、すなわちHFO-1234yf(The Chemours CompanyからOpteon(商標)冷媒として入手可能)との必要な混和性を有し、所望の潤滑油粘度を有し、また所望のエラストマー/プラスチック材料適合性を有していることが判明した。具体的には、PAGは46cStタイプPAG油として知られており、以下の商標「ND-12」、「SP-A2」、「PS-D1」、及び「FD46XG」によって知られている。
【0037】
冷媒
混合物の冷媒部分は、少なくとも1種のハイドロフルオロオレフィン(又はより一般的にはHFO系冷媒と呼ばれる)を含むが、1種の特定のHFO冷媒には限定されない。ハイドロフルオロオレフィンは、地球温暖化係数(GWP)が低く、オゾン層破壊係数(ODP)が0である。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、フルオロカーボン類のGWPを定期的に審査及び規定している。本発明で具体化されるハイドロフルオロオレフィン冷媒は、GWPが約100GWP未満であるが、典型的にGWPは10未満であり、更には1GWPまで下がる。特に有用なハイドロフルオロオレフィンは、HFO-1234yfを含む。UN’s IPCC Fifth Assessment Report(AR5)によれば、HFO-1234yfはGWPが1未満である。
【0038】
地球温暖化係数(GWP)は、1キログラムの二酸化炭素の排出と比較した、1キログラムの特定の温室効果ガスの大気排出に起因する相対的な地球温暖化への寄与を推定するための指数である。GWPは、様々な対象期間について計算することができ、所与のガスの大気寿命の効果を示す。100年間の対象期間のGWPが、一般的に参照される値である。混合物については、各成分に関する個々のGWPに基づいて加重平均を計算することができる。
【0039】
Leckら(参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2007/0187639号、パラグラフ10)は、本発明でフルオロオレフィンとして使用可能な不飽和フルオロカーボン冷媒の例を更に列挙している。Leckらによる、パラグラフ10に記載されるとおり、代表的な不飽和フルオロカーボン冷媒又は蓄熱流体としては、1,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペン、1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-1-プロペン、1,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、2,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,3,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,1,2,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,1,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、1,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロペン、2,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,1,2-トリフルオロ-1-プロペン、1,1,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,2,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、1,1,1,2,3,4,4,4-オクタフルオロ-2-ブテン、1,1,2,3,3,4,4,4-オクタフルオロ-1-ブテン、1,1,1,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン、1,2,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン、1,1,1,2,3,4,4-ヘプタフルオロ-2-ブテン、1,3,3,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-2-プロペン、1,1,3,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン、1,1,2,3,4,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン、1,1,2,3,3,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン、2,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1,3,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン、1,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン、1,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン、1,1,2,3,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1,1,1,2,3,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1,1,1,3,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、1,1,2,3,3,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン、1,1,2,3,4,4-ヘキサフルオロ-1-ブテン、3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-1-プロペン、1,1,1,2,4-ペンタフルオロ-2-ブテン、1,1,1,3,4-ペンタフルオロ-2-ブテン、3,3,4,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン、1,1,1,4,4-ペンタフルオロ-2-ブテン、1,1,1,2,3-ペンタフルオロ-2-ブテン、2,3,3,4,4-ペンタフルオロ-1-ブテン、1,1,2,4,4-ペンタフルオロ-2-ブテン、1,1,2,3,3-ペンタフルオロ-1-ブテン、1,1,2,3,4-ペンタフルオロ-2-ブテン、1,2,3,3,4-ペンタフルオロ-1-ブテン、1,1,3,3,3-ペンタフルオロ-2-メチル-1-プロペン、2-(ジフルオロメチル)-3,3,3-トリフルオロ-1-プロペン、3,3,4,4-テトラフルオロ-1-ブテン、1,1,3,3-テトラフルオロ-2-メチル-1-プロペン、1,3,3,3-テトラフルオロ-2-メチル-1-プロペン、2-(ジフルオロメチル)-3,3-ジフルオロ-1プロペン、1,1,1,2-テトラフルオロ-2-ブテン、1,1,1,3-テトラフルオロ-2-ブテン、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-2-ペンテン、1,1,2,3,3,4,4,5,5,5-デカフルオロ-1-ペンテン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-(トリフルオロメチル)2-ブテン、1,1,1,2,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-2-ペンテン、1,1,1,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-2-ペンテン、1,2,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-1-ペンテン、1,1,3,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-1-ペンテン、1,1,2,3,3,4,4,5,5-ノナフルオロ-1-ペンテン、1,1,2,3,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-2-ペンテン、1,1,1,12,3,4,4,5,5-ノナフルオロ-2-ペンテン、1,1,1,2,3,4,5,5,5-ノナフルオロ-2-ペンテン、1,2,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1-ブテン、1,1,2,4,4,4-ヘキサフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1-ブテン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-2-ブテン、1,1,3,4,4,4-ヘキサフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1-ブテン、2,3,3,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-1-ペンテン、1,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ-1-ペンテン、3,3,4,4,4-ペンタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-1-ブテン、1,1,4,4,4-ペンタフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1-ブテン、1,3,4,4,4-ペンタフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1-ブテン、1,1,4,4,4-ペンタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-1-ブテン、1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-2-ペンテン、3,4,4,4-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1-ブテン、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン、2,3,3,4,4,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン、1,1,3,3,5,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン、1,1,1,2,4,4,4-ヘプタフルオロ-3-メチル-2-ブテン、2,4,4,4-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1-ブテン、1,4,4,4-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-1-ブテン、1,4,4,4-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-2-ブテン、2,4,4,4-テトラフルオロ-3-(トリフルオロメチル)-2-ブテン、3-(トリフルオロメチル)-4,4,4-トリフルオロ-2-ブテン、3,4,4,5,5,5-ヘキサフルオロ-2-ペンテン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-メチル-2-ブテン、3,3,4,5,5,5-ヘキサフルオロ-1-ペンテン、4,4,4-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-1-ブテン、1,1,2,3,3,4,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-1-ヘキセン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,6,6,6-ドデカフルオロ-3-ヘキセン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)-2-ブテン、1,1,1,4,4,5,5,5-オクタフルオロ-2-トリフルオロメチル-2-ペンテン、1,1,1,3,4,5,5,5-オクタフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-2-ペンテン、1,1,1,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-2-ペンテン、1,1,1,4,4,5,5,6,6,6-デカフルオロ-2-ヘキセン、1,1,1,2,2,5,5,6,6,6-デカフルオロ-3-ヘキセン、3,3,4,4,5,5,6,6,6-ノナフルオロ-1-ヘキセン、4,4,4-トリフルオロ-3,3-ビス(トリフルオロメチル)-1-ブテン、1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-3-メチル-2-(トリフルオロメチル)-2-ブテン、2,3,3,5,5,5-ヘキサフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-1-ペンテン、1,1,1,2,4,4,5,5,5-ノナフルオロ-3-メチル-2-ペンテン、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-2-ペンテン、3,4,4,5,5,6,6,6-オクタフルオロ-2-ヘキセン、3,3,4,4,5,5,6,6-オクタフルオロ-2-ヘキセン、1,1,1,4,4-ペンタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-2-ペンテン、4,4,5,5,5-ペンタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-1-ペンテン、3,3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-2-メチル-1-ペンテン、1,1,1,2,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7-テトラデカフルオロ-2-ヘプテン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,6,6,7,7,7-テトラデカフルオロ-2-ヘプテン、1,1,1,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7-トリデカフルオロ-2-ヘプテン、1,1,1,2,4,4,5,5,6,6,7,7,7-トリデカフルオロ-2-ヘプテン、1,1,1,2,2,4,5,5,6,6,7,7,7-トリデカフルオロ-3-ヘプテン、1,1,1,2,2,3,5,5,6,6,7,7,7-トリデカフルオロ-3-ヘプテン、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-2-ヘキセン、4,4,5,5,6,6,6-ヘプタフルオロ-1-ヘキセン、1,1,1,2,2,3,4-ヘプタフルオロ-3-ヘキセン、4,5,5,5-テトラフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-1-ペンテン、1,1,1,2,5,5,5-ヘプタフルオロ-4-メチル-2-ペンテン、1,1,1,3-テトラフルオロ-2-(トリフルオロメチル)-2-ペンテン、1,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロシクロブテン、3,3,4,4-テトラフルオロシクロブテン、3,3,4,4,5,5-ヘキサフルオロシクロペンテン、1,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロシクロペンテン、1,2,3,3,4,4,5,5,6,6-デカフルオロシクロヘキセン、1,1,1,2,3,4,5,5,5-ノナフルオロ-4-(トリフルオロメチル)-2-ペンテン、ペンタフルオロエチルトリフルオロビニルエーテル、トリフルオロメチルトリフルオロビニルエーテル、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0040】
更に、冷媒部分を含む1つ以上の非低GWP冷媒成分が存在してもよい。Minorら(参照により本明細書に援用される、米国特許出願公開第2007/0289317号)は、本発明でフルオロアルカンとして使用可能な飽和及び不飽和フルオロカーボン冷媒の例を更に列挙している。Minorらによる、パラグラフ81に記載されるとおり、代表的なハイドロフルオロカーボンは、式CxH2x+2yFy又はCxH2xyFyで表すことができ、式中、xは3~8と等しくてもよく、yは1~17と等しくてもよい。ハイドロフルオロカーボンは、約3~8の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖、又は環状の飽和又は不飽和化合物であってもよい。限定することなしに、用いられ得る代表的なフルオロアルカンとしては、Minorらによる、パラグラフ47~78に記載されるように、1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,3-トリフルオロプロパン、1,1,3-トリフルオロプロパン、1,3-ジフルオロプロパン、2-(ジフルオロメチル)-1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン、1,1,2,2,3,3,4,4-オクタフルオロブタン、1,1,1,2,2,4-ヘキサフルオロブタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、1、1-ジフルオロブタン、1,3-ジフルオロ-2-メチルプロパン、1,2-ジフルオロ-2-メチルプロパン、1,2-ジフルオロブタン、1,3-ジフルオロブタン、1,4-ジフルオロブタン、2,3-ジフルオロブタン、1,1,1,2,3,3,4,4-オクタフルオロ-2-(トリフルオロメチル)ブタン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5-ウンデカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロペンタン、1,1,1,2,2,3,3,5,5,5-デカフルオロペンタンが挙げられる。
【0041】
上記の発明の冷媒又は冷媒ブレンド部分のGWPは300未満となるが、具体的には150GWP未満、より具体的には75GWP未満であり、理想的には5GWP未満である。GWP<1となるように冷媒を使用することが可能である。
【0042】
上記のブレンドの冷媒部分の、最小発火エネルギー(MIE)は、ASTM E-582によって測定して、少なくとも300MJ/kgであり、好ましくは1,000MJ/kg超であり、より具体的には1,000MJ/kg~5,000MJであり、更により具体的には、少なくとも5,000MJ/kgである。American Society of Heating,Refrigeration and Air-conditioning Engineers(ASHRAE)規格34によって計算した燃焼熱は19,000kJ/kg未満となり、より具体的には8~12kJ/kg、更により具体的には9.5~11.5kJ/kgの範囲内となるべきである。冷媒部分の21℃における燃焼下限値は、ASTM E-681で測定して、実際には不燃性であってもよい。あるいは、冷媒部分が燃焼限界値を有する場合は、燃焼下限値は、ASTM E-681によって測定して、少なくとも5容積%であってよいが、より具体的には少なくとも6容積%、更により具体的には少なくとも6.2容積%である。
【0043】
結果として得られる全体的な組成物は、すなわち、本明細書に記載される潤滑油及び冷媒は、A/Cシステムに「後添加」してもよく、相対的に低い腐食性を有利に有し、その結果、組成物に接触するA/Cシステムの一部である金属(例えばアルミニウム、銅、又は鉄)が経験する腐食は、相対的に少ない。更に、175℃で14日間の試験を実施した後では、鋼鉄に曇りはなく、金属片に被膜又は目に見える腐食は存在せず、試験中に堆積物又は凝集塊は形成されなかった。
【0044】
潤滑油/冷媒組成物の相対的に低い腐食性は、冷媒組成物部分が以下の特性のうちの1つ又は任意の組み合わせを有利に示すようであってよい。ASHRAE 97:2007「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」に従って175℃で14日間エイジングさせた後の全酸価は、ASTM D664-01に従って測定して3.3mg KOH/g未満、1.5mg KOH/g未満、具体的には1.0mg KOH/g未満である。アルミニウム、銅、及び炭素鋼の金属片の場合、ASHRAE 97:2007「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」に従って175℃で14日間エイジングさせた後のハロゲン化物合計濃度(例えばフッ素イオン濃度)は、約100ppm未満、好ましくは50ppm未満、理想的には10ppm未満である。イオンクロマトグラフィによって測定したアルミニウム、銅、及び鉄の金属片の場合、ASHRAE 97:2007「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」に従って175℃で14日間エイジングさせた後の有機酸合計濃度は約300ppm未満である。
【0045】
冷媒及びA/Cの寿命、並びにコンプレッサの耐久性を改善することができる添加剤が望ましい。本発明の一態様では、組成物を含む本発明の冷媒は、潤滑油、並びにa)酸捕捉剤、b)性能向上剤、及びc)火炎抑制剤などのその他の添加剤をA/Cシステムに導入するために用いられる。
【0046】
酸捕捉剤
酸捕捉剤は、シロキサン、活性化芳香族化合物、又はその両方の組み合わせを含むことができる。参照により本明細書に援用されるSerranoら(パラグラフ38)は、シロキサンはシロキシ官能性を有する任意の分子であってよいことを開示している。シロキサンとしては、アルキルシロキサン、アリールシロキサン、又はアリール及びアルキル置換基の混合物を含むシロキサンが挙げられ得る。例えば、シロキサンは、ジアルキルシロキサン又はポリジアルキルシロキサンを含む、アルキルシロキサンであってもよい。好ましいシロキサンとしては、2つのケイ素原子と結合した酸素原子、すなわち構造SiOSiを有する基が挙げられる。例えば、シロキサンは、式IV:R1[Si(R2R3)4O]nSi(R2R3)R4のシロキサンであってもよく、式中、nは1以上である。式IVのシロキサンは、好ましくは2以上、より好ましくは3以上(例えば約4又はそれ以上)であるnを有する。式IVのシロキサンは、好ましくは約30以下、より好ましくは約12以下、最も好ましくは約7以下であるnを有する。好ましくは、R4基はアリール基又はアルキル基である。好ましくは、R2基は、アリール基、若しくはアルキル基、又はそれらの混合物である。好ましくは、R3基は、アリール基、若しくはアルキル基、又はそれらの混合物である。好ましくは、R4基はアリール基又はアルキル基である。好ましくは、R1、R2、R3、R4、又はこれらの任意の組み合わせは水素ではない。分子中のR2基は、同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、分子中のR2基は同一である。分子中のR2基は、R3基と同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、分子中のR2基とR3基とは同一である。好ましいシロキサンとしては、式IVのシロキサンが挙げられ、式中、R1、R2、R3、R4、R5、又はこれらの任意の組み合わせは、メチル基、エチル基、プロピル基、若しくはブチル基、又はこれらの任意の組み合わせである。用いることのできる例示的なシロキサンとしては、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、デカメチルシクロ-ペンタシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0047】
Serranoらのパラグラフ[0039]から参照により援用される内容は、本発明の一態様においては、シロキサンは、ヘキサメチルジシロキサンなどの、約1~約12の炭素原子を含むアルキルシロキサンであると記載している。シロキサンはまた、ポリジアルキルシロキサンなどのポリマーであってもよく、ここでアルキル基はメチル、エチル、プロピル、ブチル、又はこれらの任意の組み合わせである。好適なポリジアルキルシロキサンは、約100~約10,000の分子量を有する。非常に好ましいシロキサン類としては、ヘキサメチルジシロキサン、ポリジメチルシロキサン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。シロキサンは、ポリジメチルシロキサン、ヘキサメチルジソロキサン(hexamethyldisoloxane)、又はこれらの組み合わせから本質的に構成され得る。
【0048】
活性化芳香族化合物は、フリーデルクラフツ付加反応に向けて活性化された任意の芳香族分子、又はそれらの混合物であってよい。フリーデルクラフツ付加反応に向けて活性化された芳香族分子は、鉱酸との付加反応が可能な任意の芳香族分子であると定義される。特に、本願の環境(ACシステム)中、又はASHRAE 97:2007「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」熱安定性試験中のいずれかの鉱酸との付加反応が可能な芳香族分子。こうした分子又は化合物は、一般的には芳香環の水素原子を、NH2、NHR、NRz、ADH、AD、NHCOCH3、NHCOR、4OCH3、OR、CH3、4C2H5、R、又はC6H5の基のうちの1つと置換することによって活性化され、式中、Rは炭化水素(好ましくは約1~約100の炭素原子を含む炭化水素)である。活性化芳香族分子は、酸素原子(すなわち、アルコール又はエーテル基の酸素原子)が芳香族基に直接結合したアルコール又はエーテルであってもよい。活性化芳香族分子は、窒素原子(すなわち、アミン基の窒素原子)が芳香族基に直接結合したアミンであってもよい。例えば、活性化芳香族分子は式ArXRnを有していてもよく、式中XはO(すなわち酸素)又はN(すなわち窒素)であり、X:Oのときn:1であり、X:Nのときn:2であり、Arは芳香族基(すなわちC6H5基)であり、RはH又は炭素含有基であってもよく、n:2のとき、R基は同一であっても異なっていてもよい。例えば、RはH(すなわち水素)、Ar、アルキル基、又はこれらの任意の組み合わせであってもよく、本明細書の教示に基づく冷媒組成物中で用いられ得る例示的な活性化芳香族分子としては、ジフェニルオキシド(すなわちジフェニルエーテル)、メチルフェニルエーテル(例えばアニソール)、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。フリーデルクラフツ付加反応に向けて活性化された、1つの非常に好ましい芳香族分子は、ジフェニルオキシドである。
【0049】
Serranoらのパラグラフ[0045]から参照により援用すると、酸捕捉剤(例えば活性化芳香族化合物、シロキサン、又はその両方)は、比較的低い全酸価、比較的低いハロゲン化物合計濃度、比較的低い有機酸合計濃度、又はこれらの任意の組み合わせをもたらす任意の濃度で存在してもよい。酸捕捉剤は、冷媒組成物の全重量を基準に好ましくは約0.0050重量%超、より好ましくは約0.05重量%超、更により好ましくは約0.1重量%超(例えば約0.5重量%超)の濃度で存在する。酸捕捉剤は、冷媒組成物の全重量を基準に好ましくは約3重量%未満、より好ましくは約2.5重量%未満、最もより好ましくは約2重量%未満(例えば約1.8重量%未満)の濃度で存在する。
【0050】
冷媒組成物中に含まれてもよく、かつ好ましくは冷媒組成物から排除される酸捕捉剤の追加例としては、フェニルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエーテル、アルキレングリコールグリシジルエーテル、シクロヘキセンオキシド、オトレノキシド(otolenoxides)、又はエポキシ化大豆油などのエポキシ化合物のうちの1つ以上などの、Kaneko(参照により本明細書に明示的に援用される、米国特許出願公開第2007/0290164号として公開された、米国特許出願第11/575,256号のパラグラフ42)によって記載されるもの、及びSinghら(参照により本明細書に明示的に援用される、第20060116310号として公開された、米国特許出願第11/250,219号のパラグラフ34~42)によって記載されるものが挙げられる。
【0051】
性能向上剤
好ましい添加剤としては、参照により本明細書に援用される、米国特許第5,152,926号、第4,755,316号に記載されるものが挙げられる。具体的には、好ましい極圧添加剤としては、(A)トリルトリアゾール又はその置換誘導体と、(B)アミン(例えばJeffamine M-600)と、(C)(i)エトキシ化リン酸エステル(例えばAntara LP-700タイプ)、若しくは(ii)リン酸アルコール(例えばZELEC 3337タイプ)、若しくは(iii)ジアルキルジチオリン酸亜鉛(例えばLubrizol 5139、5604、5178、又は5186タイプ)、若しくは(iv)メルカプトベンゾチアゾール、若しくは(v)2,5-ジメルカプト-1,3,4-トリアジアゾール(triadiaZole)誘導体(例えばCurvan 826)、又はこれらの混合物である第3の成分と、の混合物が挙げられる。使用され得る添加剤の追加的な例は、米国特許第5,976,399号(Schnur,5:12-6:51、参照により本明細書に援用される)に記載されている。
【0052】
酸価はASTM D664-01に従い、mgKOH/g単位で測定される。ハロゲン化物合計濃度、フッ素イオン濃度、及び有機酸合計濃度はイオンクロマトグラフィによって測定される。冷媒系の化学安定性は、ASHRAE 97:2007「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」に従って測定される。潤滑油の粘度は、ASTM D-7042に従って40℃で試験される。
【0053】
Mouliら(WO 2008/027595号)は、フルオロオレフィン含有冷媒組成物中の安定剤として、アルキルシランを用いることを教示している。特定の冷媒組成物では、リン酸塩、亜リン酸エステル、エポキシド、及びフェノール系添加剤も用いられてきた。これらは、例えばKaneko(米国特許出願公開第2007/0290164号として公開される、米国特許出願第11/575,256号)、及びSinghら(米国特許出願公開第2006/0116310号として公開される、米国特許出願第11/250,219号)によって説明されている。これらの上記出願の全てが、参照により本明細書に明示的に援用される。
【0054】
火炎抑制剤
好ましい火炎抑制剤としては、同様に参照により援用され、特許出願「Compositions comprising fluoroolefins and uses thereof(WO2009018117A1号)」で説明される、HFC-125及び/又はKrytox(登録商標)潤滑油などのフッ素化生成物と共に参照により援用される、「Compositions containing fluorine substituted olefins(カナダ国特許第2557873A1号)」の特許出願で説明されるものが挙げられる。
【0055】
混和性/パッケージ安定性
HFO-1234yfは、車両用A/Cシステムの主冷媒として用いられるときは、ポリアルキレングリコール又はPAGタイプ潤滑油と適合性があることが一般に判明しているが、全てのPAG潤滑油が、自動車用A/CシステムでHFO-1234yfと併用するために好適な他の特性の中でも、必要な混和性範囲、熱安定性、材料適合性、湿潤レベルを有しているわけではない。したがって、本発明の組成物は、上記の特性を欠くPAG潤滑油を実質的に含まない。「実質的に含まない」とは、本発明の組成物がHFO-1234yfを含む場合、組成物が5重量%未満、一般的には3重量%未満、場合によっては0.5重量%未満の、以下の二重末端キャップされたPAG ND-8、単末端キャップされたPAG Dow RL244を含むことを意味する。A/Cシステムで一般に使用される潤滑油の量は、A/C冷媒の量の約5~約10重量%の範囲である。例えば、A/C冷媒の充填量が600gであれば、60gの潤滑油が用いられる(冷媒90重量%/潤滑油10重量%)。しかし、冷媒は潤滑油をA/Cシステム内に移送するのに用いられるため、冷媒と併せて用いられるPAG油の量は、およそ潤滑油50~80重量%/冷媒20~50重量%(例えば潤滑油約60~約65重量%)と比較的大きくなる。
【0056】
本発明の組成物の主要成分は潤滑油を含み得るが、副成分(複数可)は、所望の性能特性を改善するいくつかの低量(0~5重量%)の添加剤を有する冷媒を含む。つまり、冷媒は、液体潤滑油及び添加剤をA/Cシステム内へと搬送又は移送するために使用される。
【0057】
貯蔵及び使用条件のために、潤滑油と冷媒ははるかに大きな範囲にわたり相互混和性を有さなければならない。37.5℃を超える温度を経験する都市は、世界中に数多く存在する。更に、潤滑油/油組成物が比較的高温の倉庫に貯蔵される、又は70日を超える期間、温度が37.5℃に達するおそれのある高温の車庫で使用されることが予測される。
【0058】
生成物が、前部の衝突など、深刻な車両システムの故障後の冬季数ヶ月間で使用され得ることもまた予想できる。
【0059】
潤滑油/冷媒組成物は約-20、-30、及び更には-40℃の温度で安定しており、これは上記の組成物を-20℃の温度で5日など長期間保存する上で、助けとなるであろう。
【0060】
驚くべきことに、本発明の組成物は広範な温度及び圧力条件にわたって、混和性を維持する(例えば、密封容器内で-18℃~37℃の範囲の温度、及び160kPa~945kPaの圧力にわたって混和性である、冷媒20~50重量%/潤滑油50~80重量%の組成物)。PAG潤滑油/冷媒の混和性は、ASHRAE 97:2007「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」法を用いて、所定の量の潤滑油及び冷媒(以下の表を参照)を密封されたチューブ内に投入することによって実施される。続いて、密封されたチューブを水浴内に配置して、混合物が温度範囲にわたって混和性であるかを判定する。試験は2セグメントで実施され、次のセグメントを開始する前にチューブが室温に戻るように、各セグメント間に24時間の期間が設けられる。低温セグメントは室温で開始し、温度を5℃刻みで徐々に-50℃まで低下させ、各温度で10分間保持し、各温度保持で目視観測を記録する。高温セグメントは室温で開始し、温度を5℃刻みにして試験を行い、徐々に90℃又は冷媒の臨界温度まで上昇させ、再び各温度で10分間保持し、各温度保持で目視観測を記録する。
【0061】
ASHRAE 97:2007「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」を用いて、PAG潤滑油/冷媒組成物の熱安定性を評価した。潤滑油/冷媒系は金属(Al、Cu、炭素鋼)片を含む、密封チューブ内にも配置され、175℃で2週間保持された。結果は、PAG潤滑油/低GWP冷媒(複数可)は高温下で熱安定していることを示し、これは組成物が貯蔵中に分解しないであろうということを示す。鋼鉄上に曇りはなく、金属片に被膜又は目に見える腐食は存在せず、フッ化物イオン又は酸は生成されなかった。試験中に堆積物又は凝集塊は形成されなかった。冷媒/潤滑油系には色変化は生じなかった。
【0062】
従来「HFO-1234yfと適合性」して記載されていた潤滑油が、混和性範囲全体にわたって混和性を有していないことは、知られざる結果であった。46cStタイプPAG油として知られており、以下の商標「ND-12」、「SP-A2」、「PS-D1」、及び「FD46XG」によって知られているPAG潤滑油が全ての所望の基準を満たすことが判明した。
【0063】
いかなる理論又は説明にも束縛されることを望むものではないが、冷媒濃度が上昇して組成物の主要部分になれば、潤滑油/潤滑油混和性の範囲は変化するものと考えられる。例えば、潤滑油30重量%/冷媒70重量%はA/Cシステムで使用する最低限度であるが、冷媒を用いて潤滑油をシステム内に移送させるのに十分な混和性に欠ける。
【0064】
R-134aと併用した従来のPAG潤滑油((Idemitsu(登録商標)ND-8)は、R-1234yf(不飽和低GWP冷媒)と同じ混和性範囲を有さず、同じ熱安定性も有さなかった。ASHRAE 97:2007「Sealed Glass Tube Method to Test the Chemical Stability of Materials for Use within Refrigerant Systems」密封チューブ試験に従って175℃で2週間試験した後で、1234yf/ND-8は所望より高いTAN値(>1.0mg KOH/g)、及びより高いハロゲン化物値(>100ppm)を生成したということが判明した。したがって、選択された二重末端キャップされたPAGのみが、低GWPのHFO-1234yf冷媒との所望の混和性及び熱安定性を有していることが判明した。
【0065】
低GWP冷媒/PAG油組成物、及び混和性範囲の例を表2に示し、表の上部はA/Cシステムにおける生成物の使用を示し、表の下部は製造及び貯蔵温度を示す(表中の「M」は混和性を意味し、「N」は非混和性を意味する)。
【0066】
【0067】
本発明の一態様は、潤滑油をA/Cシステム内に導入するための方法に関する。本発明の方法では、潤滑油及び/又は潤滑油添加剤パッケージを実質的にホースに付着させることなくA/Cホースを通して搬送し、それによって、より多くの潤滑油又は潤滑油/添加剤パッケージがA/Cシステム内に導入されることを確実にするために冷媒が用いられる(例えば、手動インジェクタ又は手動ポンプを用いた結果、A/Cシステムと接続するホース配管に潤滑油が付着する場合がある)。冷媒は潤滑油を輸送して、潤滑油をA/Cシステム内に搬送するため、潤滑油をシステムへと移送するのに冷媒を用いることで、手動又はポンプインジェクタと比較してより多くの潤滑油がA/Cシステム内に導入されることが確実となる。潤滑油又は潤滑油/添加剤及び冷媒は、潤滑油と冷媒とが混和性である条件下で、従来の容器又は缶に共包装される。小缶から出ると、冷媒は圧縮液化ガスから冷媒ガスへと状態変化する。このプロセスの間、潤滑油と混和性である冷媒は潤滑油又は潤滑油/添加剤混合物を霧化し、潤滑油又は潤滑油/添加剤混合物がA/C再充填ホースの壁部上に沈殿し得る前に、潤滑油又は潤滑油/添加剤混合物をホースに沿ってA/Cシステム内へと更に搬送する。
【0068】
本発明の別の態様は、環境に優しい冷媒をA/Cシステム内に導入するための方法に関する。この本発明の方法では、上記と同じ搬送方法を用いて添加剤パッケージを含む又は含まない冷媒/潤滑油がシステム内に導入され、上記と同じ肯定的な結果がもたらされた。
【0069】
本発明の組成物(潤滑油又は潤滑油/添加剤及び冷媒)は、一般的には8oz以下、より一般的には3~6oz、更により具体的には3~4ozである小型の密封缶にパッケージ化することができる。本発明の組成物は、一般的な補修部品市場の冷媒再充填ホースを用いて、車両のA/Cシステムに接続可能な穴開け式缶上部又は自己密封式缶上部を有する小型缶にパッケージ化されるべきである。
【0070】
一実施形態では、この製品はHFO-1234yfを含む低GWPのA/Cシステムで使用することを意図されているため、缶上部に使用される金具は、左ねじ式で雄型CGA166タイプ接続部と適合するべきである。この製品を缶から車両のA/Cシステムまで搬送するために用いられる、このタイプのホースの構造はSAE J2888規格と適合するべきである。ホースは2つの異なる金具を有するべきである。A/C再充填ホースの一方の端部は、小型の缶と接続可能であり、また小型缶内に収容された生成物を解放することが可能な穴あけ針、又は缶タップと呼ばれる場合もあるプランジャ式機構のいずれかを有するべきである。缶に接続する金具は、雌型CGA166タイプ金具となる。再充填ホースのもう一方の端部は、HFO-1234yf用に指定されたSAE J639低側急速接続カプラを有するべきであり、また低側サービスポートを介して車両のA/Cシステムに取り付け可能であるべきである。
【0071】
本発明の組成物をA/Cシステム内に搬送するためには、最初に潤滑油又は潤滑油/添加剤、及び冷媒を含む缶を十分に振るべきである。車両のエンジンを始動させ、続いてA/Cシステムを最大冷却に設定するべきである。続いて、上記の補修部品市場再充填ホースを缶に取り付けるべきである。ホースのもう一方の側は、車両のA/C低側サービスポートに接続するべきである。製品の分注を開始する準備ができたら、針又はプランジャ機構を使用して缶の内容物を解放するべきである。缶を左右にわずかに振って、缶内容物の解放を補助するべきである。このプロセスは約10~15分かけるべきである。
【0072】
即席性の組成物(instant composition)は、約0℃~約40℃の温度で潤滑油又は潤滑油/添加剤をA/Cシステムに添加するために用いることができ、より具体的には、本組成物は約10℃~約35℃の温度で用いることができ、更により具体的には約15℃~約30℃の温度で用いることができる。本発明の組成物は、下は約-20℃から上は約40℃~約45℃までの温度で貯蔵することができるが、一般的には、これは約10℃~約35℃の温度で、より具体的には約15℃~約30℃の温度で保管される。一般的に、A/Cシステムに接続されると、本発明の組成物は約315kPa~約435kPaの圧力で、又はより具体的には約330kPa~約410kPa、又は更により具体的には約360kPa~約400kPaの圧力で、A/Cシステムに送達される。
【0073】
本発明の別の態様は、自動車用A/Cシステムなどの熱管理システム内に本発明の組成物を導入するためのシステムに関する。ここで
図1を参照すると、
図1は、本発明の組成物を用いた潤滑油を自動車用A/Cシステム内に導入するためのシステム(100)を示す。本発明の組成物を自動車用A/Cシステムに送達するためのシステムは、組成物を含む容器(110)と、コンプレッサ(120)と、凝縮装置(130)と、乾燥機(140)と、膨張弁(150)と、蒸発装置(160)と、を備える。システム(100)は、低側サービスポート(170)と、高側サービスポート(180)と、を更に含む。本発明の組成物を収容する容器(110)又は缶は、ホース(190)を介してコンプレッサ(120)の低側サービスポート(170)に接続される。コンプレッサ、凝縮装置、乾燥機、膨張弁、及び蒸発装置を接続するホース(190)及び配管(195)は、当該技術分野で既知の、材料及び方法を用いて構築及び組み立てされる。
【0074】
本発明の更なる態様は、キットに関する。ここで
図2を参照すると、
図2は、容器カプラ(215)を有し、本発明の組成物を含む容器(210)、組成物の、A/Cシステム(230)内への流れを制御するための手動ディスペンサ(220)を備えるキット(200)を示す。ディスペンサ(220)は、本発明の組成物をA/Cシステム(230)内に移送するのを促進するために、容器カプラ(215)を取り付けるように構成されたディスペンサカプラ(240)を更に含む。ホース(250)はディスペンサ(220)をA/Cシステム(230)に接続し、また組成物をディスペンサ(220)からA/Cシステム(230)に搬送するように構成される。
【0075】
本発明で使用するとき、用語「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(includes)」、「含む(including)」、「有する(has)」、「有する(having)」、又はこれらの他の任意の変化形は、非排他的な包含を網羅することを意図する。例えば、列挙する要素を含む、組成物、プロセス、方法、物品、若しくは機器は、必ずしもそれらの要素のみに限定されるものではなく、明示的に列挙されない他の要素、又はそのような組成物若しくは、プロセス、方法、物品、若しくは機器などに内在する他の要素を包含し得る。更に、明示的にこれに反する記載がない限り、「又は」は、包括的な又はを指し、排他的な又はを指すものではない。例えば、条件A又はBは、以下のいずれか1つによって満たされる。すなわち、Aが真であり(又は存在し)かつBが偽である(又は存在しない)、Aが偽であり(又は存在しない)かつBが真である(又は存在する)、及びA及びBの両方が真である(又は存在する)。
【0076】
移行句「からなる」は、特定されていないいかなる要素、工程、又は成分も除外する。特許請求の範囲における場合には、材料に通常付随する不純物を除き、このような句は、列挙された材料以外の材料の包含を特許請求項から締め出す。語句「からなる」がプリアンブルの直後ではなく請求項の本文の節内で現れるとき、この語句はその節の中に示される要素のみを制限するものであり、他の要素が特許請求の範囲全体から除外されるわけではない。
【0077】
移行句「から本質的になる」は、文字通り開示されているものに加えて、材料、工程、特徴、成分、又は要素を含む、組成物、方法を定義するために使用されるが、ただし、これらの追加的に含まれる材料、工程、特徴、成分、又は要素は、請求される発明の基本的及び新規の特徴(複数可)、特に本発明の任意のプロセスの所望の結果を達成するための行動様式に実質的に影響を及ぼす。用語「から本質的になる」は、「含む」と「からなる」との間の中間の立場を占める。
【0078】
出願人らが、発明又はその一部分を、「含む」などの非限定的な用語で定義していた場合、(特に明記しない限り)その記載は、用語「から本質的になる」又は「からなる」を用いる発明も含むと解釈すべきであることは容易に理解されるはずである。
【0079】
また、「a」又は「an」の使用は、本明細書に記載される要素及び成分を説明するために採用される。これは、単に便宜上、及び本発明の範囲の一般的な意味を与えるためのものである。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むものと解釈されるべきであり、単数形は、別の意味を有することが明白でない限り、複数形も含む。
【0080】
特定の態様、実施形態、及び主体(principals)を上記で説明したが、この説明は例示のみを目的とし、本発明又は添付の特許請求の範囲を限定するものではないことが理解されよう。
【外国語明細書】