(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023164566
(43)【公開日】2023-11-10
(54)【発明の名称】自吸式ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 9/02 20060101AFI20231102BHJP
F04D 29/60 20060101ALI20231102BHJP
【FI】
F04D9/02 101H
F04D9/02 101K
F04D29/60 E
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149366
(22)【出願日】2023-09-14
(62)【分割の表示】P 2019171438の分割
【原出願日】2019-09-20
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170575
【弁理士】
【氏名又は名称】森 太士
(74)【代理人】
【識別番号】100141449
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 隆芳
(74)【代理人】
【識別番号】100142446
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 覚
(72)【発明者】
【氏名】内山 裕章
(72)【発明者】
【氏名】松山 直樹
(57)【要約】
【課題】組立性を向上させることができる自吸式ポンプを提供する。
【解決手段】自吸式ポンプ1は、羽根車2と、羽根車2を駆動する電動機3と、羽根車を収容するケーシング4と、を備える。電動機3は、ステータ5と、ステータ5をモールド樹脂部7によって被覆するステータモールド8と、羽根車2と一体に形成されるロータ10と、ロータ10を支持する軸11とを有する。ケーシング4は、羽根車2の外周を囲むボリュート31を備えるケーシング本体32と、ケーシング本体32に対して接合され、吸込室45及び吐出室46を備えるケーシングカバー36とを有する。電動機3のステータモールド8に、軸11の一端側を支持する第一軸支持部16が配設され、ケーシング4のケーシングカバー36には、軸11の他端側を支持する第二軸支持部47が配設される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根車と、
前記羽根車を駆動する電動機と、
前記羽根車を収容するケーシングと、を備え、
前記電動機は、
ステータと、
前記ステータをモールド樹脂部によって被覆するステータモールドと、
前記羽根車と一体に形成されるロータと、
前記ロータを支持する軸とを有し、
前記ケーシングは、
前記羽根車の外周を囲むボリュートを備えるケーシング本体と、
前記ケーシング本体に対して接合され、吸込室及び吐出室を備えるケーシングカバーとを有し、
前記ケーシングカバーは、
前記吸込室と前記吐出室とを区画形成する壁部と、
前記吐出室と前記吸込室とを連通する還流通路とを有し、
前記還流通路は、前記壁部に設けられる、
自吸式ポンプ。
【請求項2】
前記電動機の前記ステータモールドには、前記軸の一端側を支持する第一軸支持部が配設され、
前記ケーシングの前記ケーシングカバーには、前記軸の他端側を支持する第二軸支持部が配設され、
前記還流通路は、前記還流通路から前記吸込室へ流入する水の流れの延長線が前記第二軸支持部に重ならない位置に形成される、
請求項1に記載の自吸式ポンプ。
【請求項3】
前記還流通路は、前記羽根車への水の流れに沿う向きに形成される、請求項2に記載の自吸式ポンプ。
【請求項4】
前記還流通路は、前記ケーシングカバーにおける吐出口のある端部に対して最も遠い位置に形成される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自吸式ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自吸式ポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の自吸式ポンプは、羽根車と、羽根車を駆動する電動機と、羽根車を収容するケーシングとを備える。電動機は、ステータと、ステータをモールド樹脂部によって被覆するステータモールドと、羽根車と一体に形成されるロータと、ロータを支持する軸とを有する。ケーシングは、羽根車の外周を囲むボリュートを備えるポンプケースと、ポンプケースに対して接合され、吸込室及び吐出室を備えるカバーとを有する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の構成では、ステータブロックと、ポンプケースの側面を閉じる壁面部材とにそれぞれ、軸支持部が配設されており、ステータブロックとケースと壁面部材との間で軸の位置決めを精度よく行う必要があるため、組立性に難があるという課題を有していた。
【0005】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものである。そして、本発明の目的は、組立性を向上させることができる自吸式ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の態様に係る自吸式ポンプは、羽根車と、羽根車を駆動する電動機と、羽根車を収容するケーシングと、を備え、電動機は、ステータと、ステータをモールド樹脂部によって被覆するステータモールドと、羽根車と一体に形成されるロータと、ロータを支持する軸とを有し、ケーシングは、羽根車の外周を囲むボリュートを備えるケーシング本体と、ケーシング本体に対して接合され、吸込室及び吐出室を備えるケーシングカバーとを有し、ケーシングカバーは、吸込室と吐出室とを区画形成する壁部と、吐出室と吸込室とを連通する還流通路とを有し、還流通路は、壁部に設けられる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、組立性を向上させることができる自吸式ポンプを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る自吸式ポンプの側断面図である。
【
図2】実施形態に係る自吸式ポンプの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本実施形態を図面と共に詳述する。
【0010】
本実施形態に係る自吸式ポンプは、給湯機器及び暖房機器の循環用ポンプ、食器洗浄機及び洗濯機の給水ポンプ等の用途に適用することができる。
【0011】
図1及び
図2に示すように、自吸式ポンプ1は、羽根車2と、羽根車2を駆動する電動機3と、羽根車2を収容するケーシング4とを備える。なお、本実施形態では、
図1中の左側を「正面」又は「前面」と称し、
図1中の右側を「背面」又は「後面」と称する。
【0012】
羽根車2は、羽根車2の周方向に間隔をおいて複数配置される羽根(ブレード)2aと、羽根2aの一端側(前端側)を覆う前面シュラウド2bと、羽根2aの他端側(後端側)を覆う後面シュラウド2cとを有する。
【0013】
電動機3は、羽根車2を回転駆動するためのステータ5と、ステータ5及び制御基板6をモールド樹脂部7によって被覆するステータモールド8とを有する。また、電動機3は、羽根車2と一体に形成されるロータ10と、ロータ10を支持する軸11とを有する。
【0014】
ステータモールド8は、複数の金属板が積層されて形成されるステータコア12と、ステータコア12を覆う絶縁板13と、絶縁板13にコイル14が巻き回されて形成されるステータ5と、コイル14に流れる電流を制御する制御基板6とを有する。
【0015】
また、ステータモールド8には、羽根車2の軸11の一端側(後端側)を支持する円筒状の第一軸支持部(ボス)16が配設される。本実施形態では、モールド樹脂部7の内面に、分離板15が配置され、この分離板15に、第一軸支持部16が一体で成形される。なお、分離板15及び第一軸支持部16は、モールド樹脂部7とは別体で成形されているが、少なくとも第一軸支持部16は、モールド樹脂部7と一体で樹脂成形されていてもよい。
【0016】
ロータ10は、ステータ5の内周側に配置される円筒状のマグネット17と、マグネット17の外周側を覆うマグネットカバー18と、マグネット17の内周側を被覆するモールド樹脂部20とを有する。マグネットカバー18は、モールド樹脂部20とは別体で樹脂成形される。ロータ10(モールド樹脂部20)は、首部(接続部)9を介して羽根車2(後面シュラウド2c)に接続されている。ロータ10は、軸受21を介して軸11に支持されており、ロータ10及び羽根車2が、軸11を回転中心として回転できるようになっている。
【0017】
図1から
図3に示すように、ケーシング4は、羽根車2の外周を囲むボリュート31を備えるケーシング本体32を有する。ケーシング本体32の後面(
図1中の右側)に、Oリング33を介在させてステータモールド8の分離板15が接合される。
【0018】
その一方で、ケーシング本体32におけるステータモールド8とは反対側の前面(
図1中の左側)には、仕切板34及びパッキン(板状のシール材)35を介在させてケーシングカバー36が接合される。すなわち、ケーシング本体32とケーシングカバー36との間には、仕切板34及びパッキン35が介在されている。
【0019】
図3に示すように、ケーシングカバー36は、吸込口41と、吐出口42と、排水口43と、後述する吐出室46から吸込室45への還流通路44とを有する。ケーシング本体32におけるステータモールド8側とは反対側の前面に、ケーシングカバー36が仕切板34及びパッキン35を介在させて接合されることにより、ケーシングカバー36と仕切板34との間に、吸込室45及び吐出室46が形成される。
【0020】
また、ケーシングカバー36には、羽根車2の軸11の他端側(前端側)を支持する円筒状の第二軸支持部(ボス)47が配設される。この第二軸支持部47は、設置状態で後述する吸込穴53を貫通して、さらに、第一軸支持部16に向かって延在している。
【0021】
ケーシングカバー36には、吸込室45と吐出室46とを区画形成するための直線状壁部48及び曲線状壁部49が配設される。この曲線状壁部49は、第二軸支持部47の外周側に、第二軸支持部47と同心円状に形成されている。
【0022】
ところで、第二軸支持部47をケーシングカバー36に設けた場合、還流通路44から吸込室45内に流入する水の流れFaが第二軸支持部47に衝突して騒音が発生する可能性がある。そこで、
図4に示すように、還流通路44は、還流通路44から吸込室45へ流入する水の流れFaの延長線が第二軸支持部47に重ならない位置に形成される。すなわち、還流通路44は、還流通路44の周縁部からの延長線が第二軸支持部47に重ならないように、曲線状壁部49に形成される。
【0023】
また、還流通路44は、吸込室45内における羽根車2への水の流れFbに沿う向きに形成される。すなわち、還流通路44は、吸込室45内の水の流れFbにおける上流側から下流側に向かって傾斜するように、曲線状壁部49に形成される。
【0024】
さらに、還流通路44は、ケーシングカバー36における吐出口42のある端部に対して最も遠い位置に形成される。すなわち、還流通路44は、第二軸支持部47を間に挟んで吐出口42と対向するように、曲線状壁部49に形成される。
【0025】
図2に示すように、ケーシングカバー36に、ステータモールド8の分離板15と係合するための複数本(本実施形態では、四本)のボス51が配設され、ケーシング本体32には、ケーシングカバー36のボス51が挿通される挿通部52が配設される。
【0026】
これらのステータモールド8(電動機3)と、ケーシング本体32と、ケーシングカバー36とは、ビス(図示せず)を用いて固定される。
【0027】
図1及び
図2に示すように、仕切板34及びパッキン35は、重ね合わせて一体とされて、ケーシング本体32におけるケーシングカバー36側の前面を閉塞する。仕切板34には、吸込穴53と、吐出穴54と、自吸用の還流穴55とが形成される。
【0028】
仕切板34の吸込穴53は、設置状態での仕切板34の中央部分に形成される。吸込穴53は、ケーシングカバー36と仕切板34との間に形成される吸込室45と、ケーシング本体32内に配置される羽根車2の入口とを連通する。
【0029】
仕切板34の吐出穴54は、設置状態での仕切板34の上端側部分に形成される。吐出穴54は、ケーシング本体32に形成されるボリュート31の出口と、ケーシングカバー36と仕切板34との間に形成される吐出室46とを連通する。
【0030】
仕切板34の還流穴55は、設置状態での仕切板34の下端側部分に形成される。還流穴55は、ケーシングカバー36と仕切板34との間に形成される吐出室46と、ケーシング本体32に形成されるボリュート31内とを連通する。
【0031】
以下、以上のように構成された自吸式ポンプ1の動作を説明する。
【0032】
自吸式ポンプ1の動作には、ボリュート31及び配管内に気体がある状態で水を外部の水槽(図示せず)から吸い上げる自吸モードと、ボリュート31内及び配管内が満水(水のみで気体がない)の状態で水を外部に吐き出す通常動作モードとがある。
【0033】
先ず、水槽と自吸式ポンプ1の吸込口41とを配管(吸込配管)により接続し、自吸式ポンプ1の吐出口42に配管(吐出配管)を接続し、さらに、自吸式ポンプ1の排水口43に配管(排水配管)を接続する。
【0034】
次いで、自吸式ポンプ1の内部(ボリュート31内)に注水した後に、制御基板6に通電し、ステータ5から回転磁界を発生させることにより、ロータ10及び羽根車2を回転させる。
【0035】
水が羽根車2の回転による遠心力によって加圧されて、ボリュート31に沿って仕切板34の吐出穴54を通過し、ケーシングカバー36側の吐出室46に送られる。
【0036】
ボリュート31内の水が吐出室46に送り出されることにより、羽根車2の内側において負圧となり、水及び気体が、吸込口41、吸込室45、吸込穴53を通過して、ボリュート31内に送られる。
【0037】
自吸モードにおいては、ボリュート31から吐出室46に送られた水は、設置状態で自吸式ポンプ1の下端側にある還流穴55又は還流通路44を通過してボリュート31内に戻るため、気体のみが吐出室46から吐出口42に送られる。
【0038】
このため、ボリュート31内に残っている気体のみが吐出口42から配管へ徐々に吐き出されることにより、水槽内の水が自吸式ポンプ1により吸い上げられ、ボリュート31内及び配管内が満水の状態となる。
【0039】
ボリュート31内及び配管内が満水の状態となった以降は、自吸モードから、水のみが吐出口42から配管へ吐き出される通常動作モードとなる。
【0040】
通常動作モードにおいては、吐出室46に送られた水は、吐出口42から配管へ吐き出される水と、還流穴55を通過してボリュート31へと戻され、又は還流通路44を通過して吸込室45からボリュート31へと戻される水とに別れて流れる。
【0041】
なお、自吸式ポンプ1の内部の水の排水時には、ボリュート31内の水が、設置状態での自吸式ポンプ1の下端側にある還流穴55を通過して、排水口43から排出される。
【0042】
以下に、本実施形態による作用効果を説明する。
【0043】
(1)自吸式ポンプ1は、羽根車2と、羽根車2を駆動する電動機3と、羽根車2を収容するケーシング4と、を備える。電動機3は、ステータ5と、ステータ5をモールド樹脂部7によって被覆するステータモールド8と、羽根車2と一体に形成されるロータ10と、ロータ10を支持する軸11とを有する。ケーシング4は、羽根車2の外周を囲むボリュート31を備えるケーシング本体32と、ケーシング本体32に対して接合され、吸込室45及び吐出室46を備えるケーシングカバー36とを有する。電動機3のステータモールド8に、軸11の一端側を支持する第一軸支持部16が配設され、ケーシング4のケーシングカバー36には、軸11の他端側を支持する第二軸支持部47が配設される。
【0044】
このような自吸式ポンプ1によれば、電動機3のステータモールド8とケーシング4のケーシングカバー36との間で軸11の位置決めを行うため、自吸式ポンプ1の組立性を向上させることが可能になる。
【0045】
また、自吸式ポンプ1によれば、電動機3のステータモールド8とケーシング本体32と仕切板34との間で軸11の位置決めを相互に行う場合と比較して、軸11の位置の篏合ばらつきを低減することが可能になる。
【0046】
(2)ケーシングカバー36は、吐出室46と吸込室45とを連通する還流通路44を有する。還流通路44は、還流通路44から吸込室45へ流入する水の流れFaの延長線が第二軸支持部47に重ならない位置に形成される。
【0047】
このように還流通路44を構成することにより、還流通路44から吸込室45内に流入する水の流れFaが第二軸支持部47へ衝突することを避けて、ケーシングカバー36内における騒音の発生を抑制することが可能になる。
【0048】
(3)還流通路44は、羽根車2への水の流れFbに沿う向きに形成される。
【0049】
このように還流通路44を構成することにより、還流通路44から吸込室45内に流入する水の流れFaと吸込室45内における羽根車2へ向かう水の流れFbとの衝突(干渉)を避けて、騒音の発生を抑制することが可能になる。
【0050】
(4)還流通路44は、ケーシングカバー36における吐出口42のある端部に対して最も遠い位置に形成される。
【0051】
このように還流通路44を構成することにより、吐出口42の近傍を流れる水の流れへの影響を抑えて、吸込室45への還流通路44の配設による流量-揚程特性(性能曲線)の低下を抑制することが可能になる。
【0052】
実験において測定を行った結果として、本実施形態のように還流通路44を設けた場合には、還流通路44を吸込室45へ流入する水の流れFaの延長線が第二軸支持部47に重なる従来位置に設けた場合と比較して、騒音が5.8dB(A)低減された。
【0053】
なお、上述の実施形態は本開示の一例である。このため、本開示は、上述の実施形態に限定されることはなく、この実施形態以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1 自吸式ポンプ
2 羽根車
3 電動機
4 ケーシング
5 ステータ
7 モールド樹脂部
8 ステータモールド
10 ロータ
11 軸
16 第一軸支持部
31 ボリュート
32 ケーシング本体
36 ケーシングカバー
42 吐出口
44 還流通路
45 吸込室
46 吐出室
47 第二軸支持部