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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016459
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】ドリー
(51)【国際特許分類】
   B62D 53/04 20060101AFI20230126BHJP
   B62D 53/08 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
B62D53/04 A
B62D53/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120786
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000229900
【氏名又は名称】日本フルハーフ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100102417
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100194629
【弁理士】
【氏名又は名称】小嶋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】西山 文人
(72)【発明者】
【氏名】作道 弘也
(57)【要約】
【課題】本体のフレーム構造及びカプラ自身の構造を変更することなく、そしてまた車両の運転性能を損なうことなく、本体が第二の支持軸を軸として揺動することが防止される、新規のドリーを提供すること。
【解決手段】本体6の上面における第二の支持軸26よりも後方又は前方、或いは後方及び前方の両方に、被牽引車T2の下面を支持して本体6が第二の支持軸26を軸として揺動することを制限する揺動制限装置28を設けると共に、揺動制限装置28において被牽引車T2の下面を支持するベース部32の上面に被牽引車T2の下面を追従させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
牽引車と被牽引車とを脱着可能に連結するドリーにして、
牽引車に連結されるアームと、被牽引車のキングピンに連結されるカプラを備えた本体とを含み、前記本体の前側端部が車幅方向に延びる第一の支持軸を介して前記アームの後側端部に接続されて、前記本体は前記アームに対して屈折可能であり、
前記本体は単一の車軸を有し、
前記カプラは前記本体の上面に固定されるカプラマウントと被牽引車の下面を支持するカプラベースとを備え、前記カプラベースは車幅方向に延びる第二の支持軸を介して前記カプラマウントに接続されて、前記カプラベースは前記カプラマウントに対し前記第二の支持軸を軸として揺動可能な、ドリーにおいて、
前記本体の上面における前記第二の支持軸よりも後方又は前方、或いは後方及び前方の両方には、被牽引車の下面を支持して前記本体が前記第二の支持軸を軸として揺動することを制限する揺動制限装置が設けられており、
前記揺動制限装置は前記本体の上面に固定されるマウント部と被牽引車の下面を支持するベース部とを備え、前記ベース部は接続手段を介して前記マウント部に接続されており、前記ベース部の上面が被牽引車の下面を追従する、ことを特徴とするドリー。
【請求項2】
前記接続手段は水平方向に延びる第三の支持軸であり、前記ベース部は前記マウント部に対し前記第三の支持軸を軸として揺動可能である、請求項1に記載のドリー。
【請求項3】
前記第三の支持軸は車幅方向に延びている、請求項2に記載のドリー。
【請求項4】
前記マウント部は前記本体の上面に対して垂直な一対のマウント側方壁を、前記ベース部は被牽引車の下面を支持するベース上面壁から下方に垂下する一対のベース側方壁を夫々有し、前記一対のマウント側方壁及び前記一対のベース側方壁は夫々前記第三の支持軸に対して垂直に配置され、前記一対のマウント側方壁の各々の内面が前記一対のベース側方壁の各々の外面と対向し、前記一対のマウント側方壁及び前記一対のベース側方壁には夫々前記第三の支持軸上に共通の貫通穴が形成されており、前記共通の貫通穴にはゴムブッシュが嵌め合わされている、請求項2又は3に記載のドリー。
【請求項5】
前記共通の貫通穴は、前記第三の支持軸に沿って前記揺動制限装置の内側に向かって内径が漸次低減する円錐台形状である、請求項4に記載のドリー。
【請求項6】
前記一対のマウント側方壁の各々の外面には前記共通の貫通穴の外周縁を囲繞して前記第三の支持軸に沿って前記揺動制限装置の外側に向かって内径が漸次増大する案内筒壁が設けられており、前記ゴムブッシュは円錐台形状である、請求項4又は5に記載のドリー。
【請求項7】
前記ベース部の上面には合成樹脂製の板材が配設されており、前記ベース部は前記板材を介して被牽引車の下面を支持する、請求項1乃至6のいずれかに記載のドリー。
【請求項8】
前記カプラベースの上面が被牽引車の下面を支持しておらず且つ水平な状態にあっては、前記板材の上面は前記カプラベースの上面と同高又はこれよりも上方に位置する、請求項7に記載のドリー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、牽引車と被牽引車とを脱着可能に連結するドリーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1及び2には、フルトラクタの如き牽引車T1とセミトレーラーの如き被牽引車T2とを脱着可能に連結するドリーDが開示されている。図9-1(a)を参照して説明すると、かかるドリーDは、牽引車T1に連結されるアームAと、被牽引車T2のキングピンに連結されるカプラCを備えた本体Bとを備え、本体Bの前側端部が車幅方向に延びる第一の支持軸S1を介してアームAの後側端部に接続されて、本体BはアームAに対して屈折可能である。本体Bは単一の車軸WSを有している。カプラCは本体Bの上面に固定されるカプラマウントCMと被牽引車T2の下面を支持するカプラベースCBとを備えており、カプラベースCBは車幅方向に延びる第二の支持軸S2を介してカプラマウントCMに接続されて、カプラベースCBはカプラマウントCMに対し第二の支持軸S2を軸として揺動可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-335440号公報
【特許文献2】特開2002-200989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1及び2に開示されたドリーにあっては、第一の支持軸S1により本体BがアームAに対して屈折可能であること、第二の支持軸S2によりカプラベースCBがカプラマウントCMに対して揺動可能であること、そして、本体Bが単一の車軸WSを有していることに起因して、牽引車T1がドリーDを介して被牽引車T2を牽引する際に、図9-1(b)に示すとおり、本体Bの上面が被牽引車T2の下面に対して過剰に傾斜することで、本体Bの上面の後端部Brが被牽引車T2の下面に干渉する虞がある。
【0005】
上記虞を解消するために、(a)カプラマウントCMに対してカプラベースCBは揺動可能なままアームAに対して本体Bを固定する、或いは(b)アームAに対して本体Bは屈折可能なままカプラマウントCMに対するカプラベースCBの揺動を抑制乃至制限することが考えられる。上記(b)にあっては更に、(b-1)カプラマウントCMとカプラベースCBを一体構造としてカプラマウントCMに対するカプラベースCBの揺動を完全に抑制する、(b-2)カプラCの構造はそのまま、つまりカプラマウントCMに対してカプラベースCBは揺動可能な構造のまま、図9-2(c)に示すとおり、本体Bの上面における第二の支持軸S2よりも後方に、本体Bが第二の支持軸S2を軸として揺動することを制限するための固定枕の如き揺動制限装置Eを配設すること、が考えられる。
【0006】
然しながら、上記(a)にあっては、ドリーD全体の強度確保の観点から本体Bのフレームを大型化させる必要があり好ましくない。上記(b-1)にあっては、カプラC自身の構造を変更するため、カプラCの品質保証の観点から好ましくない。上記(b-2)にあっては、以下の理由により好ましくない。ドリーD及びこれによって連結された牽引車T1及び被牽引車T2は、走行中に路面の凹凸や風等から受ける外力によって上下及び左右方向にふらつくことがある。上下方向のふらつきによりドリーDの本体Bの上面が被牽引車T2の下面に対して第二の支持軸S2を軸として回動(揺動)し、図9-2(d)に示すとおり、揺動制限装置Eの後端縁Erが被牽引車T2の下面と当接すると、かかる当接は線接触(偏当たり)となって、揺動制限装置Eの後端縁Erが被牽引車T2の下面に噛み込む場合があり、噛み込みが生じると運転に支障をきたす。一方、左右方向にふらつくと、揺動制限装置Eの後端縁Erが被牽引車T2の下面と線接触乃至点接触(偏当たり)してこれをかじる場合があり、かじりが生じると被牽引車T2の下面に偏荷重がかかるため、上記ふらつきがより一層助長される。つまり、走行中にドリーD又は被牽引車T2が受ける外力によって揺動制限装置Eの後端縁Erが被牽引車の下面に線接触乃至点接触することで、車両の運転性能が低下する虞がある。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、本体のフレーム構造及びカプラ自身の構造を変更することなく、そしてまた車両の運転性能を損なうことなく、本体が第二の支持軸を軸として揺動することが防止される、新規且つ改良されたドリーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、鋭意検討の結果、本体の上面における第二の支持軸よりも後方又は前方、或いは後方及び前方の両方に、被牽引車の下面を支持して本体が第二の支持軸を軸として揺動することを制限する揺動制限装置を設けると共に、揺動制限装置において被牽引車の下面を支持するベース部の上面に被牽引車の下面を追従させることで、上記主たる技術的課題を達成できることを見出した。
【0009】
即ち、本発明によれば、上記主たる技術的課題を達成するドリーとして、牽引車と被牽引車とを脱着可能に連結するドリーにして、
牽引車に連結されるアームと、被牽引車のキングピンに連結されるカプラを備えた本体とを含み、前記本体の前側端部が車幅方向に延びる第一の支持軸を介して前記アームの後側端部に接続されて、前記本体は前記アームに対して屈折可能であり、
前記本体は単一の車軸を有し、
前記カプラは前記本体の上面に固定されるカプラマウントと被牽引車の下面を支持するカプラベースとを備え、前記カプラベースは車幅方向に延びる第二の支持軸を介して前記カプラマウントに接続されて、前記カプラベースは前記カプラマウントに対し前記第二の支持軸を軸として揺動可能な、ドリーにおいて、
前記本体の上面における前記第二の支持軸よりも後方又は前方、或いは後方及び前方の両方には、被牽引車の下面を支持して前記本体が前記第二の支持軸を軸として揺動することを制限する揺動制限装置が設けられており、
前記揺動制限装置は前記本体の上面に固定されるマウント部と被牽引車の下面を支持するベース部とを備え、前記ベース部は接続手段を介して前記マウント部に接続されており、前記ベース部の上面が被牽引車の下面を追従する、ことを特徴とするドリーが提供される。
【0010】
好ましくは、前記接続手段は水平方向に延びる第三の支持軸であり、前記ベース部は前記マウント部に対し前記第三の支持軸を軸として揺動可能である。この場合には、前記第三の支持軸は車幅方向に延びているのがよい。さらに、前記マウント部は前記本体の上面に対して垂直な一対のマウント側方壁を、前記ベース部は被牽引車の下面を支持するベース上面壁から下方に垂下する一対のベース側方壁を夫々有し、前記一対のマウント側方壁及び前記一対のベース側方壁は夫々前記第三の支持軸に対して垂直に配置され、前記一対のマウント側方壁の各々の内面が前記一対のベース側方壁の各々の外面と対向し、前記一対のマウント側方壁及び前記一対のベース側方壁には夫々前記第三の支持軸上に共通の貫通穴が形成されており、前記共通の貫通穴にはゴムブッシュが嵌め合わされているのが好適である。前記共通の貫通穴は、前記第三の支持軸に沿って前記揺動制限装置の内側に向かって内径が漸次低減する円錐台形状であるのが好ましい。前記一対のマウント側方壁の各々の外面には前記共通の貫通穴の外周縁を囲繞して前記第三の支持軸に沿って前記揺動制限装置の外側に向かって内径が漸次増大する案内筒壁が設けられており、前記ゴムブッシュは円錐台形状であるのがよい。好適には、前記ベース部の上面には合成樹脂製の板材が配設されており、前記ベース部は前記板材を介して被牽引車の下面を支持する。この場合には、前記カプラベースの上面が被牽引車の下面を支持しておらず且つ水平な状態にあっては、前記板材の上面は前記カプラベースの上面と同高又はこれよりも上方に位置するのがよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のドリーにあっては、本体の上面における第二の支持軸よりも後方又は前方、或いは後方及び前方の両方に、被牽引車の下面を支持して本体が第二の支持軸を軸として揺動することを制限する揺動制限装置が設けられていることから、本体のフレーム構造及びカプラ自身の構造を変更することなく、本体が第二の支持軸を軸として揺動することを制限することができる。本発明のドリーにあっては更に、上記揺動制限装置において被牽引車の下面を支持するベース部の上面が被牽引車の下面を追従することから、走行中に外力を受けても揺動制限装置の上面が被牽引車の下面に偏当たりすることは防止され、これにより、車両の運転性能を損なうことは無い。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に従って構成されたドリーの側面図。
図2図1に示すドリーの平面図。
図3図1に示すドリーに設けられた揺動制限装置の正面図。
図4図3に示す揺動制限装置の側面図。
図5図3に示す揺動制限装置の構成部品を分解して示す斜視図。
図6図1に示すドリーを用いて牽引車と被牽引車とを連結した状態を示す側面図。
図7図6におけるカプラ近傍を拡大して示す図。
図8図6において、ドリーの本体フレームの上面が被牽引車の下面に対して第二の支持軸を軸として回動したときの、カプラ近傍を拡大して示す図。
図9-1】従来のドリーを用いて牽引車と被牽引車とを連結する際の問題点を説明するための図。
図9-2】従来のドリーを用いて牽引車と被牽引車とを連結する際の問題点を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成されたドリーの好適実施形態を示す添付図面を参照して、更に詳細に説明する。以下の説明における前後及び左右並びに上下の方向はいずれも、特に指定しない限り、車両進行方向を基準とし、図1、2及び6において紙面左が前方である。また、車幅とは左右方向幅のことを意味し、従って車幅方向とは左右方向と同義である。
【0014】
図1及び図2を参照して説明すると、全体を番号2で示すドリーはアーム4及び本体6を含んでいる。図示の実施形態においては、アーム4は所謂Aアームであって、平面視において略A字形状をなしている。所望ならば、アームは前後方向に直線状に延びるI字形状等適宜の形状であってよい。アーム4の前方頂部は車幅方向中央に位置し、かかる位置には周知のルネットアイ8が設けられている。ルネットアイ8に図示しない適宜のピンを挿通してアーム4は後述する牽引車の後端部に連結される。
【0015】
本体6は平面視において矩形形状の本体フレーム10を備えている。本体フレーム10の車幅方向長さはアーム4の後側端部の車幅方向長さと略同一で、本体フレーム10の前側端部は車幅方向に延びる第一の支持軸12を介してアーム4の後端部に接続され、本体6はアーム4に対して屈折可能である。本体6は更に、本体フレーム10の前後方向略中央において、車幅方向に延びる単一の車軸14を有している。車軸14上にはタイヤ16が本体フレーム10の両側に1つずつ配置されている。夫々のタイヤ16の上面はカウル18によって覆われている。図1及び図2では、タイヤ16及びカウル18を二点鎖線で示している。かかるカウル18は接続片19によって本体フレーム10に支持固定されている。本体フレーム10の上面には被牽引車のキングピンに連結されるカプラ20が設けられている。カプラ20は本体フレーム10に固定されるカプラマウント22と被牽引車の下面を支持するカプラベース24とを備え、カプラベース24は車幅方向に延びる第二の支持軸26を介してカプラマウント22に揺動可能に接続されている。図2を参照することによって理解されるとおり、第二の支持軸26は車軸14よりも僅かに後方に位置する。かようなカプラ20は例えばセミトラクタの如き牽引車がドリーを介さずにセミトレーラーの如き被牽引車を牽引する際に使用される、従来から存在する既知のカプラ(例えば特許第4146931号に示されるようなカプラ)であってよく、従ってカプラ20の詳細についての説明は省略する。本体フレーム10の上面における第二の支持軸26よりも前方には車幅方向に延びる枕27が固定されている。枕27は断面矩形の棒状であって、車幅方向両側端部の上面には合成樹脂製の板材27aがボルトの如き適宜の締結具により固定されている。
【0016】
本発明に従って構成されたドリーにあっては、本体6の上面における第二の支持軸26よりも後方又は前方、或いは後方及び前方の両方には、被牽引車の下面を支持して本体6が第二の支持軸26を軸として揺動することを制限する揺動制限装置28が設けられていることが重要である。揺動制限装置28について、主に図3乃至図5を参照して説明する。揺動制限装置28は本体6の上面に固定されるマウント部30と被牽引車の下面を支持するベース部32とを備え、ベース部32は接続手段を介してマウント部30に接続されている。図示の実施形態においては、接続手段は水平方向に延びる第三の支持軸36であり、ベース部32はマウント部30に対し第三の支持軸36を軸として揺動(ピッチング)可能である(後述するとおり、図示の実施形態においては、第三の支持軸36は車幅方向に延びている)。
【0017】
マウント部30は、本体6の上面に適宜の固定手段によって固定されるマウント底壁38と、マウント底壁38の上面から上方に垂直に延びる(従って本体6の上面に対して垂直な)一対のマウント側方壁40とを備えている。一対のマウント側方壁40の各々は第三の支持軸36に対して垂直であって、第三の支持軸36上で間隔をおいて相互に平行である。一対のマウント側方壁40の各々には第三の支持軸36上にマウント貫通穴42が形成されている。マウント貫通穴42は、第三の支持軸36に沿って揺動制限装置28の内側に向かって内径が漸次低減する円錐台形状である。一対のマウント側方壁40の各々の外面にはマウント貫通穴42の外周縁を囲繞して第三の支持軸36に沿って揺動制限装置28の外側に向かって内径が漸次増大する案内筒壁44が設けられている。図示の実施形態においては、案内筒壁44は円錐台形状である。案内筒壁44とマウント底壁38との間にはマウント側方壁40の外面から第三の支持軸36に沿って揺動制限装置28の外側に向かって延びるリブ46が設けられている。
【0018】
ベース部32は、第三の支持軸36に対して垂直方向に貫通した角筒形状であって、被牽引車の下面を支持するベース上面壁48と、ベース上面壁48の両側縁から下方に垂下する一対のベース側方壁50とを備えている。ベース上面壁48は第三の支持軸36に対して垂直方向に長い矩形形状であって、その上面にはベース上面壁48と実質上同一形状の合成樹脂製の板材52が配設されている。板材52は高硬度で滑り性が良好で且つ耐荷重耐摩耗性に優れたエンジニアプラスチックであるのが良い。板材52はボルトの如き適宜の締結具によりベース上面壁48の上面に固定されている。ここで、カプラベース24の上面が被牽引車の下面を支持しておらず且つ水平な状態にあっては、板材52の上面はカプラベース24の上面と同高又はこれよりも上方に位置するのがよい。理由については後述する。一対のベース側方壁50は共に上辺が下辺よりも長い等脚台形形状であって、第三の支持軸36上で間隔をおいて相互に平行である。一対のベース側方壁50の各々には第三の支持軸36上にベース貫通穴54が形成されている。ベース貫通穴54もマウント貫通穴42同様、第三の支持軸36に沿って揺動制限装置28の内側に向かって内径が漸次低減する円錐台形状である。
【0019】
マウント部30及びベース部32は、一対のマウント側方壁40の各々の内面を一対のベース側方壁50の各々の外面と対向させると共に、マウント貫通穴42とベース貫通穴54とを整合せしめて第三の支持軸36上に共通の貫通穴56を形成し、かかる共通の貫通穴56にゴムブッシュ58を嵌め合わせることにより組み合わされる。マウント側方壁40の内面とベース側方壁50の外面との間には僅かな隙間が存在するのが良い。共通の貫通穴56は第三の支持軸36上の軸方向両側に1つずつ形成され、マウント貫通穴42及びベース貫通穴54は共に第三の支持軸36に沿って揺動制限装置28の内側に向かって内径が漸次低減する円錐台形状であることから、共通の貫通穴56も同様に第三の支持軸36に沿って揺動制限装置28の内側に向かって内径が漸次低減する円錐台形状となる。ゴムブッシュ58は共通の貫通穴56に対応した円錐台形状であって、マウント側方壁40の外面側から嵌め合わされる。つまり、ゴムブッシュ58は2つ存在し、ゴムブッシュ58は2つの共通の貫通穴56の各々に嵌め合わされる。ゴムブッシュ58には軸方向に直線状に延びて貫通する軸穴60が形成されており、2つのゴムブッシュ58の夫々の軸穴60には第三の支持軸36に沿って直線状に延びる断面円形の軸部材62が共通して挿通せしめられる。軸部材62の一端にはフランジ64が固定されており、フランジ64は一方のゴムブッシュ58の外側端面を支持する。軸部材62の他端は他方のゴムブッシュ58を完全に貫通し、軸部材62の他端部には円板66を介してナットの如き締結具68が締結されており(従って軸部材62の少なくとも他端部には雄螺条が形成されている)、円板66が他方のゴムブッシュ58の外側端面を支持する。
【0020】
図示の実施形態にあっては、ゴムブッシュ58が共通の貫通穴56に嵌め合わされている、つまりマウント部30とベース部32とは弾力を有するゴム製のブッシュであるゴムブッシュ58により接続されていることに起因して、ベース部32はマウント部30に対して第三の支持軸36とは垂直方向に幾分移動可能である。更に、ゴムブッシュ58が円錐台形状であって且つマウント側方壁40の内面とベース側方壁50の外面との間には僅かな隙間が存在することに起因して、ベース部32はマウント部30に対して第三の支持軸36を軸として幾分ローリング及びヨーイングが可能である。つまり、ベース部32はマウント部30に対して第三の支持軸36を軸として揺動可能(ピッチング)だけでなく僅かにローリング及びヨーイングも可能である。
【0021】
図1及び図2を参照することによって理解されるとおり、図示の実施形態においては、揺動制限装置28は本体6の上面における第二の支持軸よりも後方における本体フレーム10の車幅方向両側端部に1つずつ設けられており、2つの揺動制限装置28が備える第三の支持軸36は共に車幅方向に延びている。
【0022】
図6には、ドリー2によって連結された牽引車T1及び被牽引車T2も二点鎖線で示されている。図示の実施形態においては、牽引車T1はフルトラクタであって、牽引車T1の後端にドリー2のルネットアイ8が接続されている。一方、被牽引車T2はセミトレーラーであって、被牽引車T2のキングピン(図示せず)にドリー2のカプラ20が接続されている。図6を参照することによって理解されるとおり、被牽引車T2は2つの車軸WSを有するが、いずれの車軸WSも車両の後側端部に位置して前側端部に車軸は存在せず、被牽引車T2の前側端部はドリー2の車軸14によって支持されている。従って、被牽引車T2は、ドリー2に接続されておらず単体のときは、自身が有する車軸WSのみでは図6に示す姿勢を維持することができずに前方端部が降下して接地してしまう。そのため、被牽引車T2は、車軸WSよりも前方であって且つキングピンよりも幾分後方位置に、上下方向に伸縮可能な補助脚Fを備え、ドリー2に連結されていないときは、補助脚Fを伸長させることで自身を支持する。そして、被牽引車T2とドリー2とを連結する際には、ドリー2が所要位置に配置された後に、補助脚Fを収縮せしめて被牽引車T2の前方端部を降下させてこれをドリー2のカプラ20の上面に支持させる。上述したとおり、図示の実施形態においては、ドリー2が備える揺動制限装置28のベース部32の上面には合成樹脂製の板材52が配設されており、カプラベース24の上面が被牽引車T2の下面を支持しておらず且つ水平な状態にあっては、板材52の上面はカプラベース24の上面と同高又はこれよりも上方に位置することから、被牽引車T2をドリー2に連結する際には、ドリー2のカプラ20の上面つまりカプラベース24の上面が被牽引車T2の下面に当接するよりも先に揺動制限装置28の板材52が被牽引車T2の下面に当接し、被牽引車T2の前方端部が降下するに従ってゴムブッシュ58が圧縮せしめられ、板材52の上面が被牽引車T2の下面と面接触した状態でカプラベース24の上面が被牽引車T2の下面を支持する。図7は、図6においてドリー2のカプラ20近傍を拡大して示した図であり、同図を参照することによって理解されるとおり、カプラ20のカプラベース24の上面及び揺動制限装置28のベース部32の上面は共に被牽引車T2の下面を支持、図示の実施形態においては、揺動制限装置28のベース部32は板材52を介して被牽引車T2の下面を支持している。
【0023】
図7に示す状態にあっては、ドリー2の本体フレーム10の上面は実質上水平であって、これは被牽引車T2の下面と実質上平行であり、カプラベース24の上面及び揺動制限装置28のベース部32に設けられた板材52の上面は共に被牽引車T2の下面と面接触している。このことから、カプラマウント22に対してカプラベース24が第二の支持軸26を軸として図7において時計方向に回動(揺動)することは揺動制限装置28の存在によって制限される。従って、本発明のドリーにあっては、本体6のフレーム構造及びカプラ20自身の構造を変更することなく、本体6が第二の支持軸26を軸として揺動することを制限することができ、これにより、本体6の上面が被牽引車T2の下面に対して過剰に傾斜してこれに干渉することは防止される。なお、カプラマウントに対してカプラベースが第二の支持軸26を軸として図7において反時計方向に回動(揺動)することは枕27によって制限される。
【0024】
ところで、ドリー2及びこれによって連結された牽引車T1及び被牽引車T2は、走行中に路面の凹凸や風等から受ける外力によって上下及び左右にふらつくことがある。上下方向のふらつきによりドリー2の本体フレーム10の上面が被牽引車T2の下面に対して第二の支持軸26を軸として図7において反時計方向に回動(揺動)すると、第二の支持軸26よりも後方において、本体フレーム10の上面と被牽引車T2の下面との距離が漸次短くなることから揺動制限装置28の後端縁つまり板材52の上面の後端縁が被牽引車T2の下面と線接触してこれに噛み込みそうになる。然しながら、ベース部32はマウント部30に対し第三の支持軸36を軸として揺動可能であることに起因して、図8に示すとおり、ベース部32がマウント部30に対して第三の支持軸36を軸として揺動(ピッチング)して、板材52の上面は被牽引車T2の下面との面接触を維持することができ、これにより板材52の上面が被牽引車T2の下面と線接触してこれに噛み込むことは防止される。一方、左右方向のふらつきに対しても、上述したとおり、ベース部32はマウント部30に対して第三の支持軸36を軸として揺動可能(ピッチング)だけでなくローリング及びヨーイングも可能であることから、ベース部32の上面は被牽引車T2の下面を追従して面接触を維持することができ、これにより板材52の上面が被牽引車T2の下面と線接触乃至面接触してこれをかじることは防止される。
【0025】
つまり、本発明のドリー2にあっては、揺動制限装置28において被牽引車T2の下面を支持するベース部32の上面が被牽引車T2の下面を追従することから、走行中に外力を受けても揺動制限装置28の上面つまりベース上面壁48に配設された板材52の上面が被牽引車T2の下面に偏当たりすることは防止され、これにより、車両の運転性能を損なうことは無い。図示の実施形態においては更に、ドリー2が備える揺動制限装置28のベース部32の上面には合成樹脂製の板材52が配設されており、カプラベース24の上面が被牽引車T2の下面を支持しておらず且つ水平な状態にあっては、板材52の上面はカプラベース24の上面と同高又はこれよりも上方に位置することから、上述したとおり、ドリー2と被牽引車T2とを接続する際に板材52が圧縮されて弾性変形せしめられるため、板材52の上面は被牽引車T2の下面と充分確実に面接触することとなる。更に、揺動制限装置28におけるマウント部30及びベース部32の共通の貫通穴56にはゴムブッシュ58が嵌め合わされていることから、マウント部30とベース部32との間の衝撃を吸収することで、ベース部32は被牽引車T2の下面を容易に追従することができる。
【0026】
以上、本発明に従って構成されたドリーについて添付図面を参照して詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲内において適宜の修正や変更が可能である。例えば、図示の実施形態においては、揺動制限装置28は本体6の上面における第二の支持軸26よりも後方のみに配置されていたが、同一の揺動制限装置28を枕27に替えて配置つまり第二の支持軸26よりも前方にも配置してもよい。揺動制限装置28を第二の支持軸26よりも前方及び後方の両方に配置することで、上下方向のふらつきによりドリー2の本体フレーム10の上面が被牽引車T2の下面に対して第二の支持軸26を軸として図7において時計方向に回動(揺動)する場合であってもカプラマウント22に対するカプラベース24の揺動を制限することができると共に上記噛み込み及びかじりを防止することができる。また、図示の実施形態においては、揺動制限装置28は本体フレーム10の車幅方向両側端部に1つずつ設けられていたが、ベース部32の上面とカプラベース24の上面とによってバランスよく被牽引車T2の下面を支持することができれば、揺動制限装置28の数及び位置は任意であってよく、例えば、単一の揺動制限装置28を第二の支持軸26よりも後方又は前方の車幅方向中央に配置してもよい。さらにまた、上述したとおり、揺動制限装置28は第三の支持軸36に対してピッチングのみならずローリング及びヨーイングも可能であることから、第三の支持軸36は必ずしも車幅方向と同一でなくてもよい。また、揺動制限装置のベース部とマウント部とを接続する接続手段は必ずしも軸でなくてよく、両部を例えばゴムの如き比較的柔軟な素材で接続することもできる。
【符号の説明】
【0027】
2:ドリー
4:アーム
6:本体
12:第一の支持軸
14:車軸
20:カプラ
22:カプラマウント
24:カプラベース
26:第二の支持軸
28:揺動制限装置
30:マウント部
32:ベース部
36:第三の支持軸(接続手段)
52:板材
58:ゴムブッシュ
T1:牽引車
T2:被牽引車
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】