(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016463
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】タンク
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
B41J2/175 121
B41J2/175 143
B41J2/175 133
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120793
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕也
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB21
2C056EB50
2C056EC20
2C056EC64
2C056KA01
2C056KB04
2C056KB11
2C056KB37
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】エアの抜け性の悪化によるインク吐出量不足の課題を解消できるタンクを提供する。
【解決手段】供給口21から吸引したインク5を貯留した後に排出口27から排出するインクタンク20と、インクタンク20内の空間の圧力を加減圧するエアポンプ22と、インクタンク20内の空間と大気を接続させる大気口24と、大気口24を遮断する大気弁25と、インク5の表面と空間との間に配置され圧力によって、供給口21からインクを吸引する第1の形状と、排出口27からインクを排出する第2の形状とに変形する液面封止部23とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給口から吸引したインクを貯留した後に排出口から排出するインクタンクと、
前記インクタンク内の圧力を加減圧するエアポンプと、
前記インクタンク内の空間と大気を接続させる大気口と、
前記大気口を遮断する大気弁と、
前記インクの表面と前記空間との間に配置され前記圧力によって、前記供給口からインクを吸引する第1の形状と、前記排出口からインクを排出する第2の形状とに変形する液面封止部と
を備えるタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット印刷装置にインクを供給するタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット印刷装置は、インクタンクから印刷ヘッドまでインクを送液する際に圧力を掛ける必要がある。大気をポンプ内に導入して加圧する方法は、大気取り込み口から異物が混入することを防止する目的でエアフィルターが設けられる(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、エアフィルターに目詰まりが生じると、エアの抜け性が悪くなる。その結果、エア流量が低下して圧力不足が生じ、インクの吐出量が不足してしまうという課題がある。
【0005】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、エアの抜け性の悪化によるインク吐出量不足の課題を解消できるタンクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の実施形態に係るタンクは、供給口から吸引したインクを貯留した後に排出口から排出するインクタンクと、前記インクタンク内の圧力を加減圧するエアポンプと、前記インクタンク内の空間と大気を接続させる大気口と、前記大気口を遮断する大気弁と、前記インクの表面と前記空間との間に配置され前記圧力によって、前記供給口からインクを吸引する第1の形状と、前記排出口からインクを排出する第2の形状とに変形する液面封止部とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、エアの抜け性の悪化によるインク吐出量不足の課題を解消できるタンクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係るタンクを搭載したインクジェット印刷装置のインク循環経路を模式的に示す図である。
【
図2】
図1に示す負圧タンクの動作を模式的に示す図であり、(a)は負圧時、(b)は大気解放時を示す。
【
図3】
図1に示す加圧タンクの動作を模式的に示す図であり、(a)は加圧時、(b)は大気解放時を示す。
【
図4】
図1に示す液面封止部の具体例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、各図面を通じて同一もしくは同等の部位や構成要素には、同一もしくは同等の符号を付し、その説明を省略もしくは簡略化する。
【0010】
図1は、本発明の実施形態に係るタンクを搭載したインクジェット印刷装置のインク循環経路を模式的に示す図である。
図1に示すインクジェット印刷装置1は、インクカートリッジ10、負圧タンク20、インクポンプ30、加圧タンク40、印刷ヘッド50、及び廃液タンク60で構成されるインク循環経路を備える。
【0011】
インクジェット印刷装置1は、印刷媒体を供給する媒体供給部、媒体搬送部、印刷部、制御部、及び操作部等の一般的な機能構成部を備える。これらの一般的な機能構成部の表記は省略する。
【0012】
(インク循環経路)
図1に示す太い実線は、インク循環経路を表す。インク循環経路は、インクカートリッジ10のインクが、負圧タンク20、インクポンプ30、加圧タンク40、印刷ヘッド50、再び負圧タンク20を循環する経路である。
【0013】
また、負圧タンク20からエア抜き弁26を介し、廃液タンク60に至る経路と、加圧タンク40からエア抜き弁46を介し、廃液タンク60に至る経路のエア抜き経路がある。エア抜き経路については後述する。
【0014】
インクカートリッジ10は、例えば、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンダ(M)、及びイエロー(Y)の各色があり、
図1はその内の一つを示す。他色のインク循環経路も同様である。
【0015】
インクカートリッジ10は、インクジェット印刷装置1に着脱可能である。インクジェット印刷装置1に装着されたインクカートリッジ10から吸い出されたインク5は、インク循環経路(以降、循環経路)内を充填する。以降、インク5の参照符号5は省略する。
【0016】
循環経路内にインクを充填する手順を簡単に説明する。インクカートリッジ10に、インクカートリッジ10が装着されると、カートリッジ内のインクを負圧タンク20に送る。負圧タンク20内のインクが所定量以上になると、インクポンプ30が作動し、負圧タンク20内のインクを加圧タンク40に送る。
【0017】
負圧タンク20内のインクが所定量以下になると、再びインクカートリッジ10内のインクを負圧タンク20に送る。負圧タンク20内のインクが所定量であるか否かは、液面センサ28で検出する。
【0018】
加圧タンク40内のインクが所定量以上になると、加圧タンク40内の空気を加圧し、印刷ヘッド50にインクを送る。加圧タンク40内のインクが所定量であるか否かは、液面センサ48で検出する。
【0019】
以上の動作を繰り返すことで、循環経路の全体にインクが充填される。
【0020】
(負圧タンク)
図2は、負圧タンク20の動作を模式的に示す図であり、(a)は負圧(減圧)時、(b)は大気解放時を示す。
【0021】
負圧タンク20は、供給口21、エアポンプ22、液面封止部23、大気口24、大気弁25、及び排出口27を備える。供給口21は、インクカートリッジ10からインクを吸い込む上側のカートリッジ側口21aと、印刷ヘッド50からインクを吸引する下側のヘッド側口21bの2つを備える。また、排出口27は、エア抜き弁26に接続される上側のエア抜き口27aと、インクポンプ30に接続される排出口27bとを備える。なお、
図2において、液面センサ28の表記は省略している。
【0022】
負圧タンク20は、インクカートリッジ10からインクを吸い込む場合に、エアポンプ22により負圧タンク20内の空気を外部に放出させて、負圧タンク20内の圧力を減圧させる。この場合、大気口24を遮断する大気弁は閉めておく。
【0023】
液面封止部23は、負圧タンク20内のインク5の表面に浮くように配置され、変形可能な部材である。液面封止部23の正面形状は、凡そアルファベットの「H」を90°回転させた形状である。
【0024】
負圧タンク20の上部の空間の圧力が低下すると、凡そアルファベットの「H」を90°回転させた液面封止部23の上辺は、上方向に凸形状で変形する。その変形により、インクカートリッジ10及び印刷ヘッド50からインクが吸引される。
【0025】
この時、液面封止部23の下辺の排出口27b側の端部は、排出口27bを塞ぐ。したがって、排出口27bとインクポンプ30の間に在るインクは、負圧ポンプ20に逆流しない。なお、液面封止部23の上辺と下辺は、供給口21側が低く、排出口27側が高くなるように斜めに取付けられている。
【0026】
次に、エアポンプ22を停止させた後に大気弁25を開放させる。そうすると、負圧タンク20の上部の空間の圧力は大気圧に戻る。この時、凸形状に変形していた液面封止部23の上辺は、元の平らな形状に戻る。この時、ヘッド側口21b側の端部は、ヘッド側口21bを塞ぐ。そして、供給口21のカートリッジ側口21aは開放のままである。
【0027】
したがって、負圧タンク20内のインクは、液面封止部23が元の形状に戻る動きにより、排出口27bからインクポンプ30に排出される。通常、エア抜き弁26は閉められているので、エア抜き口27aからインクが排出されることはない。
【0028】
なお、エア抜き弁26は、循環経路の全体にインクを充填させる上記の手順を行う場合に開放する。エア抜き弁26が解放された状態で、液面封止部23の上辺が凸形状から元の形状に戻ると、インク5の表面と液面封止部23との間に溜まった空気は、インク5と共に廃液タンク60に排出される。インク5の表面と液面封止部23との間に溜まった空気が抜けたかどうか、つまり、循環経路内のエア抜きが完了したか否かは、液面センサ28で検知する。
【0029】
このエア抜き動作は、循環経路にインクを充填させる場合に行う。よって、循環経路にインクを充填させる初期状態を除き、エア抜き弁26は常に閉められている。
【0030】
なお、排出口27bの上下方向の位置は、供給口21bよりも上である。後述する加圧タンク40についても同様である。これにより、タンク内で撹拌された顔料を均一に含むインクを排出させることができる。
【0031】
(加圧タンク)
図3は、加圧タンク40の動作を模式的に示す図であり、(a)は加圧時、(b)は大気解放時を示す。
【0032】
加圧タンク40は、供給口41、エアポンプ42、液面封止部43、大気口44、大気弁45、及び排出口47を備える。加圧タンク40の構成は、供給口41がインクポンプ30と接続される1つである点でのみ負圧ポンプ20と異なる。
【0033】
上側の排出口47aは、エア抜き弁46を介して廃液タンク60に接続される。下側の排出口47bは、印刷ヘッド50に接続される。
【0034】
図3(a)に示すように、加圧ポンプ40は、エアポンプ42によって加圧タンク40の上部の空間の圧力が加圧されると、液面封止部43上辺が凹む。その液面封止部43の上辺の凹みによって、加圧ポンプ40内のインクが印刷ヘッド50に排出される。この時、液面封止部43の下辺の供給口41側の端部は、供給口41を塞ぐ。
【0035】
よって、加圧ポンプ40内のインク5は、印刷ヘッド50へ排出される。この時、エア抜き弁46は閉められているので、加圧ポンプ40内のインク5が廃液タンク60に排出されることはない。エア抜き弁46は、負圧ポンプ20側のエア抜き弁26と同様に作用する。
【0036】
次に、エアポンプ24を停止させた後に大気弁45を開放させると、加圧タンク40の上部の空間の圧力は大気圧に戻る。この時、凹形状に変形していた液面封止部43の上辺は、元の平らな形状に戻り、供給口41からインクを吸引する。また、液面封止部43のヘッド側口47b側の端部は、ヘッド側口47bを塞ぐ。よって、加圧タンク40と印刷ヘッド50の間に在るインクは、加圧ポンプ40に逆流しない。
【0037】
(液面封止部)
図4は、液面封止部23の具体例を示す図である。加圧ポンプ40側の液面封止部43も、液面封止部23と同じである。
図4(a)は、液面封止部23の上から見た平面図、
図4(b)はその正面図である。
【0038】
図4(b)に示すように、液面封止部23を正面から見た形状は、凡そアルファベットの「H」を90°回転させた形状である。
図4(a)に示すように、その「H」状の上辺22aの平面形状は、例えば円形である。また、液面封止部23は、例えばゴム材で構成される。
【0039】
上辺22aは、同心円状に凸凹を持つ蛇腹を備え、上下方向に変形か可能である。つまり、上辺22aの中心部を凸凹させるように変形が可能である。
【0040】
液面封止部23は、棒部材22bと撹拌辺22cを備える。棒部材22bは、変形する上辺22aの中心部から下方向に延伸される棒状の部材である。撹拌辺22cは、棒部材22bの先端に接続される。
【0041】
液面封止部23は、変形する部分の中心から下に延伸される棒部材22bの先端に接続される撹拌辺22cを備える。これにより、撹拌辺22cの上下動でインク5を攪拌することができる。
【0042】
また、撹拌辺22cの一方の端部は大気弁25を開放した場合に供給口21bを閉じ、撹拌辺22cの他方の端部は負圧タンク20内の空間を減圧した場合に排出口27bを閉じる。これにより、インク5を排出口27から排出させることができる。
【0043】
上記の実施形態は、負圧タンク20と加圧タンク40の2つを備える構成で説明したが、本発明はこの例に限定されない。負圧タンク20と加圧タンク40は、1つのインクタンクに集約してもよい。
【0044】
上記の説明で明らかなように、負圧タンク20と加圧タンク40は、供給口21,41からインクが吸引され、排出口27,47からインクを排出する点で同じである。よって、1つのインクタンクで上記の循環経路を構成することが可能である。
【0045】
このように、本実施形態に係るタンクは、供給口21から吸引したインクを貯留した後に排出口27から排出するインクタンク(負圧タンク)20と、インクタンク20内の圧力を加減圧するエアポンプ22と、インクタンク20内の空間と大気を接続させる大気口24と、大気口24を遮断する大気弁25と、インクの表面と空間との間に配置され圧力によって、供給口21からインクを吸引する第1の形状と、排出口27からインクを排出する第2の形状とに変形する液面封止部23とを備える。これにより、エアの抜け性の悪化によるインク吐出量不足の課題を解消できるインクジェット印刷装置を提供することができる。
【0046】
つまり、エアフィルターが不要になることで、エア抜け性悪化によるインク吐出量不足の課題を解消できる。また、液面封止部23は、大気口24,44へ、インク5が流れ込むことを防止するので、動作不良及びインク流出を防ぐ効果も得られる。
【0047】
インクタンク(負圧タンク20、加圧タンク40)内に、インクと大気を物理的に遮断する伸縮性シート(液面封止部23)を配置することで、大気口24,44からインクに異物が混入することを防止できる。
【0048】
なお、液面封止部23の形状は、上から見た平面が円形であり、正面がアルファベットの「H」を90°回転させた例を示したが、本発明はこの例に限定されない。撹拌辺22cの形状は、角棒でなくても構わない。また、撹拌辺22cの端部が供給口21及び排出口47を塞ぐ例を示したが、供給口21及び排出口47にそれぞれ一般的な弁を設けるようにしてもよい。また、インクポンプ30は無くても構わない。また、液面封止部23は斜めに取付けられる例を示したが、その上辺と下辺が水平になるように取付けてもよい。
【0049】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【0050】
[付記]
本出願は、以下の発明を開示する。
【0051】
(付記1)
供給口から吸引したインクを貯留した後に排出口から排出するインクタンクと、
前記インクタンク内の圧力を加減圧するエアポンプと、
前記インクタンク内の空間と大気を接続させる大気口と、
前記大気口を遮断する大気弁と、
前記インクの表面と前記空間との間に配置され前記圧力によって、前記供給口からインクを吸引する第1の形状と、前記排出口からインクを排出する第2の形状とに変形する液面封止部と
を備えるタンク。
【0052】
(付記2)
前記液面封止部は、
前記変形する部分の中心から下に延伸される棒部材の先端に接続される撹拌辺を
備える付記1に記載のタンク。
【0053】
(付記3)
前記撹拌辺の一方の端部は前記大気弁を開放した場合に前記供給口を閉じ、前記撹拌辺の他方の端部は前記空間を減圧した場合に前記排出口を閉じる
付記2に記載のタンク。
【0054】
(付記4)
前記排出口の上下方向の位置は、前記供給口よりも上である
付記1乃至3の何れかに記載のタンク。
【符号の説明】
【0055】
1 インクジェット印刷装置
10 インクカートリッジ
5 インク
20 負圧タンク(インクタンク)
21,21a,21b,41 供給口
22,42 エアポンプ
23,43 液面封止部
24,44 大気口
25,45 大気弁
26,46 エア抜き弁
27,27a,27b,47,47a,47b 排出口
28,48 液面センサ
30 インクポンプ
40 加圧タンク(インクタンク)
50 印刷ヘッド
60 廃液タンク